(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152940
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】帯状電線配索構造
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20221004BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H02G11/00
B60R16/02 620A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055907
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】山村 円博
【テーマコード(参考)】
5G371
【Fターム(参考)】
5G371AA01
5G371BA01
5G371CA01
(57)【要約】
【課題】フレキシブルフラットケーブル41の積層枚数が増加した場合であっても、折り曲げられたフレキシブルフラットケーブル41を収容する第2収容ケース90が大きくなることを抑えられる帯状電線配索構造を提供することを目的とする。
【解決手段】複数のフレキシブルフラットケーブル41を配索して、スライドシート4に対して電気を供給する帯状電線配索構造であって、複数のフレキシブルフラットケーブル41は、厚み方向に積層された状態で固定レール2内に配索され、固定レール2内に配索されたフレキシブルフラットケーブル41において、前後方向Xに交差する下方に折り曲げられて固定レール2から引き出される引出部分(第1引出部分402、第2引出部分403、第3引出部分404)は、折り曲げ位置が前後方向Xに異なる複数箇所に形成されたことを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部が車体側電線と電気的に接続され、他方の端部がシート側電線と電気的に接続された複数の帯状電線を配索して、車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対して、電気を供給する帯状電線配索構造であって、
複数の前記帯状電線は、厚み方向に積層された状態で電線収容部の内部に配索され、
前記電線収容部の内部に配索された前記帯状電線において、前記長手方向に交差する方向に折り曲げられて前記電線収容部から引き出される引出部分は、
折り曲げ位置が前記長手方向に異なる複数箇所に形成された
帯状電線配索構造。
【請求項2】
厚み方向に積層された複数の前記帯状電線が内部に配索された前記電線収容部は、前記固定レールである
請求項1に記載の帯状電線配索構造。
【請求項3】
厚み方向に積層された複数の前記帯状電線が内部に配索された前記電線収容部は、前記固定レールとは別体で設けられた電線収容ケースである
請求項1に記載の帯状電線配索構造。
【請求項4】
複数の前記引出部分の少なくともひとつは、複数の前記帯状電線が積層された
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の帯状電線配索構造。
【請求項5】
複数の前記引出部分における前記帯状電線の積層枚数が同数である
請求項4に記載の帯状電線配索構造。
【請求項6】
複数の前記引出部分の少なくとも一つは、
前記帯状電線の積層枚数が、他の前記引出部分における積層枚数と異なる
請求項4に記載の帯状電線配索構造。
【請求項7】
複数の前記引出部分は、
前記長手方向に沿って配索された前記帯状電線の厚み方向から見て、前記長手方向に直交する直交方向の一方側、且つ同じ前記長手方向に対する角度で折り曲げられて、前記長手方向に隣接配置された
請求項1乃至請求項6のうちいずれかに記載の帯状電線配索構造。
【請求項8】
複数の前記引出部分のうち少なくともひとつは、
前記長手方向に沿って配索された前記帯状電線の厚み方向から見て、前記長手方向に直交する直交方向の一方側に引き出された他の前記引出部分と同じ前記直交方向の一方側、且つ前記長手方向に対する角度が前記他の引出部分と異なる角度で折り曲げられた
請求項1乃至請求項6のうちいずれかに記載の帯状電線配索構造。
【請求項9】
複数の前記引出部分のうち少なくともひとつは、
前記長手方向に沿って配索された前記帯状電線の厚み方向から見て、前記長手方向に直交する直交方向の一方側に引き出された他の前記引出部分に対して、前記直交方向の他方側に折り曲げられた
請求項1乃至請求項6のうちいずれかに記載の帯状電線配索構造。
【請求項10】
前記引出部分は、
前記スライドシートを支持するとともに、前記固定レールに対して進退方向にスライドするスライダに連結された収容ケースに収容された
請求項1乃至請求項9のうちいずれかに記載の帯状電線配索構造。
【請求項11】
前記引出部分の先端は、
前記収容ケースの内部において、導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線と接続端子を介して接続された
請求項10に記載の帯状電線配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車などの車両において、車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対して配索して給電するフレキシブルフラットケーブルの帯状電線配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車などの車両は、例えばスライドシートの電動化や、スライドシートへの電装品の装着により、スライドシートに対して車体側から電気を供給している。
例えば、特許文献1には、車体に固定された固定レール(スライドレール)の長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシート側に設けたシート側電線と、車体側に設けた車体側電線とを、帯状電線(フレキシブルフラットケーブル)で接続した給電装置が開示されている。
【0003】
具体的には、特許文献1の帯状電線は、一端が固定レール(スライドレール)の後端に固定された第1コネクタを介して車体側電線に接続され、他端がスライダに固定された第2コネクタを介してシート側電線に接続されている。
【0004】
さらに、特許文献1は、固定レールの内部において、長手方向に対して交差する方向に帯状電線を折り返して、固定レールのスリットから外部へ引き出すことで、他端を固定レールの外部に設けた第2コネクタに接続可能にしている。
【0005】
ところで、このような給電装置では、シート側電線の増加に伴って、複数の帯状電線が必要となる。この場合、帯状電線の厚み方向に複数の帯状電線を積層して、固定レールの内部に配索することが考えられる。
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、固定レールの内部において、積層された帯状電線を一か所で折り曲げて固定レールから引き出す場合、折り曲げ位置で折り曲げられて重なり合った折り曲げ部分の厚み方向の長さが、積層された帯状電線の厚みの2倍となる。
【0007】
例えば20枚の帯状電線を一か所で折り曲げて固定レールから引き出す場合、折り曲げ部分における厚み方向の長さが、帯状電線40枚分相当の厚みとなる。
【0008】
このように、積層された帯状電線を一か所で折り曲げた場合、積層枚数の増加に伴って折り曲げ部分における厚み方向の長さが長くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑み、帯状電線の積層枚数が増加した場合であっても、折り曲げ部分における厚み方向の長さを抑えられる帯状電線配索構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、一方の端部が車体側電線と電気的に接続され、他方の端部がシート側電線と電気的に接続された複数の帯状電線を配索して、車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対して、電気を供給する帯状電線配索構造であって、複数の前記帯状電線は、厚み方向に積層された状態で電線収容部の内部に配索され、前記電線収容部の内部に配索された前記帯状電線において、前記長手方向に交差する方向に折り曲げられて前記電線収容部から引き出される引出部分は、折り曲げ位置が前記長手方向に異なる複数箇所に形成されたことを特徴とする。
【0012】
上記帯状電線とは、例えば並置された導体を絶縁シートで挟み込んだフレキシブルフラットケーブル、断面丸形の被覆電線を並置したリボンケーブル(フラットケーブルともいう)などのこという。
上記電線収容部は、例えば固定レール、あるいは固定レールとは別体で設けた収容ケースなどのことをいう。
【0013】
この発明によれば、長手方向の異なる折り曲げ位置から引出部分が引き出されるため、帯状電線配索構造は、複数の帯状電線を一か所で折り曲げて引き出した場合に比べて、折り曲げ位置で重なり合う帯状電線の枚数を低減することができる。
【0014】
これにより、帯状電線配索構造は、帯状電線の積層枚数が増加した場合であっても、折り曲げ部分における厚み方向の長さを抑えることができる。このため、帯状電線配索構造は、折り曲げ部分を収容するための収容部の大型化を抑えることができる。
【0015】
さらに、帯状電線が折り曲げられることで、帯状電線配索構造は、帯状電線に作用する長手方向の荷重が、引出部分の先端に直接的に加わることを防止できる。このため、帯状電線配索構造は、例えば帯状電線の引出部分と接続端子との接続状態を安定して確保することができる。
【0016】
この発明の態様として、厚み方向に積層された複数の前記帯状電線が内部に配索された前記電線収容部は、前記固定レールであってもよい。
この構成によれば、帯状電線配索構造は、帯状電線が配索される電線収容部を、固定レールとは別体で設けた場合に比べて、部品点数の増加を抑えることができる。さらに、帯状電線の引出部分を固定レールの開口を介して容易に引き出せるため、帯状電線配索構造は、引出部分を引き出すための開口を固定レールに別途設けることを不要にできる。
【0017】
またこの発明の態様として、厚み方向に積層された複数の前記帯状電線が内部に配索された前記電線収容部は、前記固定レールとは別体で設けられた電線収容ケースであってもよい。
この構成によれば、帯状電線配索構造は、複数の帯状電線を一か所で折り曲げて引き出した場合に比べて、厚み方向における電線収容ケースの大型化を抑えることができる。
【0018】
さらに、帯状電線の積層枚数を抑えた引出部分となるため、帯状電線配索構造は、引出部分が通過する電線収容ケースの開口部の大きさを抑えることができる。このため、帯状電線配索構造は、開口部を介した電線収容ケースの内部への異物の侵入を抑えて、異物との接触による帯状電線の損傷を防止することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、複数の前記引出部分の少なくともひとつは、複数の前記帯状電線が積層されてもよい。
この構成によれば、帯状電線配索構造は、一枚ごとに帯状電線を折り曲げた場合に比べて、折り曲げ位置の増加を抑えることができる。
【0020】
これにより、帯状電線配索構造は、折り曲げ部分を収容する収容空間が長手方向に長くなることを抑えるとともに、一枚ごとに帯状電線を折り曲げた場合に比べて、帯状電線の全長を抑えることができる。
【0021】
またこの発明の態様として、複数の前記引出部分における前記帯状電線の積層枚数が同数であってもよい。
この構成によれば、帯状電線配索構造は、折り曲げ部分における厚み方向の長さを、各折り曲げ位置で均等にすることができる。このため、帯状電線配索構造は、折り曲げ部分を収容する収容部が部分的に大型化することを抑えられる。
【0022】
またこの発明の態様として、複数の前記引出部分の少なくとも一つは、前記帯状電線の積層枚数が、他の前記引出部分における積層枚数と異なってもよい。
この構成によれば、帯状電線配索構造は、例えば電線の本数が異なる接続対象に帯状電線を接続する場合であっても、帯状電線を接続対象に応じて適切に分配することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、複数の前記引出部分は、前記長手方向に沿って配索された前記帯状電線の厚み方向から見て、前記長手方向に直交する直交方向の一方側、且つ同じ前記長手方向に対する角度で折り曲げられて、前記長手方向に隣接配置されてもよい。
この構成によれば、帯状電線配索構造は、複数の引出部分を見栄え良く電線収容部の外部へ引き出すことができる。
【0024】
さらに、例えば各引出部分が接続される接続対象が長手方向に並置されている場合、帯状電線配索構造は、接続対象に適した折り曲げ位置で帯状電線を折り曲げることで、引出部分の配索経路を短くすることができる。このため、帯状電線配索構造は、引出部分の長さを抑えられるとともに、引出部分を収容する収容部の大型化を抑えることができる。
【0025】
またこの発明の態様として、複数の前記引出部分のうち少なくともひとつは、前記長手方向に沿って配索された前記帯状電線の厚み方向から見て、前記長手方向に直交する直交方向の一方側に引き出された他の前記引出部分と同じ前記直交方向の一方側、且つ前記長手方向に対する角度が前記他の引出部分と異なる角度で折り曲げられてもよい。
この構成によれば、帯状電線配索構造は、接続対象に向けた適切な方向へ引出部分を引き出すことができる。
【0026】
例えば引出部分が接続される接続対象が長手方向に大きく離間している場合であっても、帯状電線配索構造は、長手方向で近接した折り曲げ位置から接続対象へ向けて引出部分を引き出すことができる。
【0027】
これにより、帯状電線配索構造は、長手方向に折り曲げ位置が離間することで、帯状電線の全長が長くなることを防止できる。さらに、電線配索構造は、引出部分の配索経路を短くできるため、引出部分の長さを抑えることができる。
このため、帯状電線配索構造は、帯状電線を収容する収容部の大型化をさらに抑えることができる。
【0028】
またこの発明の態様として、複数の前記引出部分のうち少なくともひとつは、前記長手方向に沿って配索された前記帯状電線の厚み方向から見て、前記長手方向に直交する直交方向の一方側に引き出された他の前記引出部分に対して、前記直交方向の他方側に折り曲げられてもよい。
この構成によれば、帯状電線配索構造は、接続対象に向けた適切な方向へ引出部分を引き出すことができる。
例えば引出部分が接続される接続対象が、帯状電線を挟んで対向配置された場合であっても、帯状電線配索構造は、接続対象へ向けて引出部分を引き出すことができる。
【0029】
またこの発明の態様として、前記引出部分は、前記スライドシートを支持するとともに、前記固定レールに対して進退方向にスライドするスライダに連結された収容ケースに収容されてもよい。
上記収容ケースは、引出部分の全体を収容するケース、あるいは引出部分の先端を収容するケース、もしくは引出部分の一部を収容するケースのことをいう。
【0030】
この構成によれば、帯状電線配索構造は、電線収容部の外部に引き出された引出部分が、異物との接触によって損傷する、あるいは外力が加わることで損傷することを収容ケースによって防止できる。このため、帯状電線配索構造は、帯状電線の導電性を安定して確保することができる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記引出部分の先端は、前記収容ケースの内部において、導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線と接続端子を介して接続されてもよい。
上記被覆電線は、車体側電線またはシート側電線に接続される電線、あるいは車体側電線またはシート側電線のことをいう。
【0032】
この構成によれば、帯状電線配索構造は、線種の異なる帯状電線と被覆電線とを容易に接続できるとともに、直接的に接続した場合に比べて接続強度を向上することができる。
さらに、帯状電線と被覆電線との接続箇所が収容ケースで覆われるため、帯状電線配索構造は、例えば外力の作用によって帯状電線と被覆電線との接続が解除されることを防止できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、帯状電線の積層枚数が増加した場合であっても、折り曲げ部分における厚み方向の長さを抑えられる帯状電線配索構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】シートスライド機構の概略を説明する説明図。
【
図2】幅方向に沿った縦断面におけるシートスライド機構の断面形状を説明する説明図。
【
図5】シート側電線接続部近傍及び第2収容ケースの構成を示す分解斜視図。
【
図6】シート側電線接続部近傍のケーブル配索体の外観を示す外観斜視図。
【
図7】ケーブル配索体の分配状態の概略を後方上方視で説明する説明図。
【
図8】ケーブル配索体の分配状態の概略を側方視で説明する説明図。
【
図9】別の実施形態におけるシートスライド機構の概略を断面で説明する説明図。
【
図10】別の実施形態におけるケーブル配索体の分配状態を説明する説明図。
【
図11】別の実施形態におけるケーブル配索体の分配状態を説明する説明図。
【
図12】別の実施形態におけるケーブル配索体の分配状態を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態は、自動車などの車両において、車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対して配索して給電するフレキシブルフラットケーブルの帯状電線配索構造について、
図1から
図8を用いて説明する。
【0036】
なお、
図1はシートスライド機構1の概略を説明する説明図を示し、
図2は幅方向Yに沿った縦断面におけるシートスライド機構1の断面形状を説明する説明図を示し、
図3は給電装置5の外観斜視図を示し、
図4は電線接続部の概略を説明する説明図を示している。
【0037】
さらに、
図5はシート側電線接続部50近傍及び第2収容ケース90の分解斜視図を示し、
図6はシート側電線接続部50近傍のケーブル配索体40の外観斜視図を示している。
さらにまた、
図7はケーブル配索体40の分配状態の概略を後方上方視で説明する説明図を示し、
図8はケーブル配索体40の分配状態の概略を側方視で説明する説明図を示している。
【0038】
加えて、
図2(a)は固定レール2における前端近傍の断面図を示し、
図2(b)は第2収容ケース90の後部を通る幅方向Yに沿った縦断面におけるシートスライド機構1の断面図を示している。
また、
図3中において、図示を明確にするため、スライダ3及び第1収容ケース80の蓋体82の図示を省略するとともに、第2収容ケース90を二点鎖線で図示している。
【0039】
また、
図1中の上側を給電装置5の上方側、
図1中の下側を給電装置5の下方側として、図中の矢印Xは固定レール2の長手方向となる前後方向(以降、前後方向Xと呼ぶ)を示し、矢印Yは前後方向Xに平面視直交する方向(以降、幅方向Yと呼ぶ)を示している。
【0040】
さらに、前後方向Xにおいて、
図1中の右側から左側へ向かう方向を前方とし、
図1中の左側から右側へ向かう方向を後方とする。加えて、幅方向Yから見た状態を側面視として説明する。
【0041】
まず、シートスライド機構1は、
図1に示すように、前後方向Xに延びるとともに、車両の車体に固定された左右一対の固定レール2と、固定レール2を摺動する左右一対のスライダ3と、左右のスライダ3に支持されて前後方向Xに進退可能なスライドシート4とを備えている。
【0042】
さらに、シートスライド機構1は、
図1に示すように、固定レールの長手方向、すなわち前後方向Xに沿って進退可能にスライド支持されたスライドシート4に対して、電気を給電する給電装置5を備えている。
【0043】
具体的には、一対の固定レール2は、
図1に示すように、幅方向Yに所定間隔を隔てて配置されるとともに、車両の床面に固定されている。
この固定レール2は、
図2(a)に示すように、幅方向Yに沿った縦断面において、断面略矩形の上面における幅方向Yの中央が開口した開断面形状に形成されている。
【0044】
より詳しくは、固定レール2は、
図2(a)に示すように、上下方向に厚みを有する平板状の底面部2aと、幅方向Yにおける底面部2aの両端から上方へ立設した一対の外側面部2bとが一体形成されている。さらに、固定レール2は、
図2(a)に示すように、幅方向Yの略中央近傍へ向けて外側面部2bの上端から延設した上面部2cと、上面部2cから下方へ垂設した内側面部2dとが一体形成されている。
【0045】
このような構成のため、固定レール2には、
図2に示すように、幅方向Yの略中央に前後方向Xに延びるスリットが、一対の内側面部2dによって形成されている。
また、スライダ3は、一対の内側面部2dで形成された前後方向Xに延びる固定レール2のスリットを、前後方向Xに沿って摺動可能に構成されている。
【0046】
また、スライドシート4は、スライダ3の上部に固定され、スライダ3と一体的に前後方向Xにスライド移動可能に配置されている。このスライドシート4には、例えば電気で操作するシートリフター機構及びリクライニング機構、あるいはシートヒータなどの電装機器が内蔵されている。
【0047】
また、給電装置5は、
図1及び
図3に示すように、一方の端部が車体側ワイヤーハーネス6と電気的に接続され、他方の端部がシート側ワイヤーハーネス7と電気的に接続され、スライダ3のスライド移動に追従しながらスライドシート4に対して電気を供給可能に構成されている。
【0048】
なお、車体側ワイヤーハーネス6及びシート側ワイヤーハーネス7は、車体側ワイヤーハーネス6が例えば車両のバッテリや制御装置に接続され、シート側ワイヤーハーネス7がスライドシート4に設けた電装機器に接続されている。
【0049】
詳述すると、給電装置5は、
図3に示すように、車体側ワイヤーハーネス6をシート側ワイヤーハーネス7に接続する第1コネクタ10、第1ワイヤーハーネス20、車体側電線接続部30、ケーブル配索体40、シート側電線接続部50、第2ワイヤーハーネス60、及び第2コネクタ70を備えている。
【0050】
さらに、給電装置5は、
図1及び
図3に示すように、車体側電線接続部30及びケーブル配索体40が収容される第1収容ケース80と、ケーブル配索体40及びシート側電線接続部50が収容される第2収容ケース90とを備えている。
【0051】
第1ワイヤーハーネス20は、
図3に示すように、一端側が第1コネクタ10を介して、車体側ワイヤーハーネス6に接続され、他端側が車体側電線接続部30に接続されている。この第1ワイヤーハーネス20は、導体を絶縁被覆で被覆した断面丸型の被覆電線21(
図4参照)を複数本束ねて構成されている。
【0052】
また、車体側電線接続部30は、
図3に示すように、第1収容ケース80を介して車体に固定され、第1ワイヤーハーネス20とケーブル配索体40とを電気的に接続している。
【0053】
この車体側電線接続部30は、
図4に示すように、ケーブル配索体40を構成するフレキシブルフラットケーブル41に第1ワイヤーハーネス20を接続する接続端子31と、接続端子31を収容保持する端子ホルダ(図示省略)とで構成されている。
【0054】
より詳しくは、接続端子31は、
図4に示すように、第1ワイヤーハーネス20の被覆電線21における絶縁被覆を圧着保持する被覆圧着部31aと、被覆電線21の導体を圧着保持する導体圧着部31bと、フレキシブルフラットケーブル41が溶着される溶着部31cとで一体形成されている。
【0055】
そして、接続端子31は、
図4に示すように、ラミネートシートを部分的に除去した露出させたフレキシブルフラットケーブル41の平角導体41aと、被覆電線21が接続された接続端子31の溶着部31cとを、例えば抵抗溶接で溶着して電気的に接続している。
【0056】
また、ケーブル配索体40は、
図3に示すように、一端が固定された車体側電線接続部30を介して第1ワイヤーハーネス20に接続され、他端がシート側電線接続部50を介して第2ワイヤーハーネス60に接続されている。
【0057】
このケーブル配索体40は、18枚のフレキシブルフラットケーブル41を、フレキシブルフラットケーブル41の厚み方向に積層するとともに、粘着テープ42(
図5参照)で束ねて構成されている。
【0058】
具体的には、フレキシブルフラットケーブル41は、
図4に示すように、所定方向に延びる断面略矩形の平角導体41aを並置するとともに、並置された複数の平角導体41aを絶縁シートであるラミネートシートで挟み込んで形成されている。このフレキシブルフラットケーブル41は、前後方向Xへのスライダ3の移動距離よりも長く形成されている。
【0059】
このようなケーブル配索体40は、
図2(a)に示すように、フレキシブルフラットケーブル41の厚み方向が幅方向Yと一致するようにして、第1収容ケース80の内部に配索されている。
【0060】
より詳しくは、ケーブル配索体40は、
図3に示すように、第1収容ケース80の内部において、車体側電線接続部30から前後方向Xと略平行に後方へ向けて配索されている。さらに、ケーブル配索体40は、反転部40aを介して幅方向Yの一方側へ略半円状に折り返されたのち、前後方向Xと略平行に前方へ向けて配索されている。
【0061】
その後、ケーブル配索体40は、
図3に示すように、車体側電線接続部30の前方で幅方向Yの他方側へ略半円状に折り返されて第1収容ケース80から導出されている。
そして、ケーブル配索体40は、
図2(b)に示すように、固定レール2における一方の外側面部2bと内側面部2dとの間を通って前後方向Xと略平行に配索されたのち、固定レール2の内側面部2dの間から固定レール2の外部に引き出されて、シート側電線接続部50に接続されている。
【0062】
また、シート側電線接続部50は、
図1及び
図3に示すように、ケーブル配索体40と第2ワイヤーハーネス60とを電気的に接続するとともに、第2収容ケース90を介してスライダ3に連結されている。
【0063】
このシート側電線接続部50は、
図4に示すように、上述した車体側電線接続部30と同様、フレキシブルフラットケーブル41に第2ワイヤーハーネス60を接続する複数の接続端子51と、複数の接続端子51を収容保持する複数の端子ホルダ52(
図6参照)とで構成されている。
【0064】
より詳しくは、接続端子51は、
図4に示すように、接続端子31と同様に、被覆圧着部51a、導体圧着部51b、及び溶着部51cで一体形成されている。
そして、接続端子51は、第2ワイヤーハーネス60の被覆電線61を、被覆圧着部51a及び導体圧着部51bで圧着保持している。
【0065】
さらに、接続端子51は、ラミネートシートを部分的に除去した露出させたフレキシブルフラットケーブル41の平角導体41aと、接続端子51の溶着部51cとを、例えば抵抗溶接で溶着して電気的に接続している。
【0066】
一方、端子ホルダ52は、
図6に示すように、1本のフレキシブルフラットケーブル41に対して1つずつ設けられ、その内部にフレキシブルフラットケーブル41の平角導体41aに対応する数量の接続端子51を収容保持している。
【0067】
さらに、シート側電線接続部50は、
図6に示すように、接続端子51を収容した端子ホルダ52を上下方向に6つ積層した状態を一組として、前後方向Xに所定間隔を隔てて3つ並べて配置している。
【0068】
ここで、シート側電線接続部50のうち、最も前方に位置する端子ホルダ52の組で構成された部分を第1の接続部50aとする。さらに、前後方向Xの中央に位置する端子ホルダ52の組で構成された部分を第2の接続部50bとし、最も後方に位置する端子ホルダ52の組で構成された部分を第3の接続部50cとする。
【0069】
また、第2ワイヤーハーネス60は、
図3に示すように、一端側がシート側電線接続部50に接続され、他端側が第2コネクタ70を介してシート側ワイヤーハーネス7に接続されている。この第2ワイヤーハーネス60は、導体を絶縁被覆で被覆した断面丸型の被覆電線61(
図4参照)を複数本束ねて構成されている。
【0070】
また、第1収容ケース80は、
図1及び
図3に示すように、上下方向に厚みを有する内部中空の箱状であって、固定レール2の幅方向Yに隣接して、車体に固定されている。
【0071】
なお、第1収容ケース80は、
図3に示すように、前部及び後部にそれぞれ側面視略半円状の突出した部分を有するとともに、側面視略半円状の前部と後部とを側面視略矩形の部分で連結した形状に形成されている。
【0072】
この第1収容ケース80は、
図1及び
図3に示すように、車体に固定されるとともに、ケーブル配索体40が載置されるケース本体81と、ケース本体81の上方の開口を覆う蓋体82とを、ケーブル配索体40を挟んで上下方向に組付けて構成している。
【0073】
また、第2収容ケース90は、
図1及び
図2(b)に示すように、内部中空の箱状であって、その後部がスライダ3の前部に連結されるとともに、スライドシート4のスライド移動に追従して、固定レール2を前後方向Xにスライド移動可能に構成されている。
【0074】
この第2収容ケース90は、
図2及び
図5に示すように、固定レール2の内部において、ケーブル配索体40を下方から覆う下部ケース91と、シート側電線接続部50が収容される上部ケース92と、上部ケース92の上方の開口を覆うケース蓋部93とで構成されている。
【0075】
具体的には、下部ケース91は、
図2及び
図5に示すように、上方が開口した断面略U字状で、前後方向Xに延びてケーブル配索体40が収容される下方溝部91aと、幅方向Yの一方側における第2収容ケース90の側面となる縦壁部91bとを備えている。
【0076】
また、上部ケース92は、
図2及び
図5に示すように、下方が開口した断面略U字状で、前後方向Xに延びる上方溝部92aと、上方溝部92aの上方かつ固定レール2の上方に配置され、シート側電線接続部50が収容される収容部92bとを備えている。
なお、上方溝部92aは、下部ケース91の下方溝部91aに収容されたケーブル配索体40を上方から覆う形状に形成されている。
【0077】
一方、収容部92bは、上方及び幅方向Yの一方側が開口した略箱状に形成されている。この収容部92bにおける幅方向Yの開口は、下部ケース91の縦壁部91bが上下方向に沿って組付けられることで閉塞される。
また、ケース蓋部93は、
図2(b)及び
図5に示すように、下部ケース91と上部ケース92とを組付けて形成された上方の開口を覆っている。
【0078】
次に、固定レール2の内部に配索されたケーブル配索体40について、さらに詳述する。
固定レール2の内部を通るケーブル配索体40は、
図6に示すように、外側面部2bと内側面部2dとの間に配置された本体部分401と、本体部分401から分配され、固定レール2の外部へ引き出される第1引出部分402、第2引出部分403、及び第3引出部分404とを形成している。
【0079】
本体部分401は、
図6に示すように、18枚のフレキシブルフラットケーブル41を厚み方向に積層するとともに、厚み方向を幅方向Yに一致させた状態で固定レール2の内部に配索された部分である。
【0080】
ここで、以降の説明を容易にするため、ケーブル配索体40の本体部分401において、固定レール2の内側面部2dに近接対向するフレキシブルフラットケーブル41から数えて、1枚目から6枚目のフレキシブルフラットケーブル41を第1の配索体43とする。
【0081】
さらに、7枚目から12枚目のフレキシブルフラットケーブル41を第2の配索体44とし、13枚目から18枚目のフレキシブルフラットケーブル41を第3の配索体45として説明する。
【0082】
また、第1引出部分402、第2引出部分403、及び第3引出部分404は、
図7及び
図8に示すように、前後方向Xに所定間隔を隔てて隣接した位置で本体部分401からそれぞれ同角度かつ同方向へ向けて分配されるとともに、第2収容ケース90の内部に配索されている。
【0083】
なお、ケーブル配索体40は、シート側電線接続部50における第1の接続部50a、第2の接続部50b、及び第3の接続部50cと略同じ間隔を隔てた位置で分配されている。
【0084】
第1引出部分402は、
図6に示すように、ケーブル配索体40の第1の配索体43を折り返して形成され、その先端がシート側電線接続部50の第1の接続部50aに接続されている。
具体的には、第1引出部分402は、
図7及び
図8に示すように、本体部分401の第1の配索体43を、幅方向Yから見て前後方向Xに直交する方向である下方側へ向けて折り曲げて形成している。
【0085】
この際、第1引出部分402は、
図8に示すように、第1の配索体43の長手方向の向きが前後方向Xに対して直角となるように折り曲げられている。
なお、第1引出部分402は、
図7に示すように、下方へ向けて折り曲げられた状態において、本体部分401の第1の配索体43と幅方向Yで当接している。
【0086】
また、第2引出部分403は、
図6に示すように、粘着テープ42で束ねられた第2の配索体44及び第3の配索体45のうち、第2の配索体44を折り返して形成され、その先端がシート側電線接続部50の第2の接続部50bに接続されている。
【0087】
具体的には、第2引出部分403は、
図7及び
図8に示すように、第1引出部分402の後方側に隣接して形成されている。この第2引出部分403は、本体部分401の第2の配索体44を、幅方向Yから見て前後方向Xに直交する方向である下方側へ向けて折り曲げて形成している。
【0088】
この際、第2引出部分403は、
図8に示すように、第2の配索体44の長手方向の向きが前後方向Xに対して直角となるように折り曲げられている。
なお、第2引出部分403は、
図7に示すように、下方へ向けて折り曲げられた状態において、本体部分401の第2の配索体44と幅方向Yで当接している。
【0089】
また、第3引出部分404は、
図6に示すように、粘着テープ42で束ねられたケーブル配索体40の第3の配索体45を折り返して形成され、その先端がシート側電線接続部50の第3の接続部50cに接続されている。
【0090】
具体的には、第3引出部分404は、
図7及び
図8に示すように、第1引出部分402と第2引出部分403との間隔に略同じ間隔を隔てて、第2引出部分403の後方側に隣接して形成されている。
この第3引出部分404は、本体部分401の第3の配索体45を、幅方向Yから見て前後方向Xに直交する方向である下方側へ向けて折り曲げて形成している。
【0091】
この際、第3引出部分404は、
図8に示すように、第3の配索体45の長手方向の向きが前後方向Xに対して直角となるように折り曲げられている。
なお、第3引出部分404は、
図7に示すように、下方へ向けて折り返された状態において、本体部分401の第3の配索体45と幅方向Yで当接している。
【0092】
このように、ケーブル配索体40は、固定レール2の内部において、第1の配索体43、第2の配索体44、及び第3の配索体45を、それぞれ前後方向Xの異なる折り曲げ位置で折り曲げて、固定レール2の内部から外部へ引き出している。
【0093】
このため、ケーブル配索体40は、本体部分401と第1引出部分402とが重なり合う折り曲げ部分において、幅方向Yの長さが最も長くなる。この際、本体部分401と第1引出部分402とが重なり合う折り曲げ部分は、本体部分401を折り曲げて重ね合わせた場合に比べて、幅方向Yの長さが2/3の長さとなる。
【0094】
このようにして、帯状電線配索構造は、第2収容ケース90の下方溝部91a及び上方溝部92aが幅方向Yに長くなることを抑えて、第2収容ケース90の大型化を抑制している。
【0095】
以上のように、本実施形態の帯状電線配索構造は、一方の端部が車体側ワイヤーハーネス6と電気的に接続され、他方の端部がシート側ワイヤーハーネス7と電気的に接続された複数のフレキシブルフラットケーブル41を配索して、車体に固定した固定レール2の前後方向Xに沿って進退可能にスライド支持されたスライドシート4に対して、電気を供給するものである。
【0096】
そして、複数のフレキシブルフラットケーブル41は、厚み方向に積層された状態で固定レール2の内部に配索されている。
【0097】
さらに、固定レール2の内部に配索されたフレキシブルフラットケーブル41において、下方に折り曲げられて固定レール2から引き出される引出部分(第1引出部分402、第2引出部分403、第3引出部分404)は、折り曲げ位置が前後方向Xに異なる複数箇所に形成されたものである。
【0098】
これによれば、前後方向Xの異なる折り曲げ位置から引出部分(第1引出部分402、第2引出部分403、第3引出部分404)が引き出されるため、帯状電線配索構造は、複数のフレキシブルフラットケーブル41を一か所で折り曲げて引き出した場合に比べて、折り曲げ位置で重なり合うフレキシブルフラットケーブル41の枚数を低減することができる。
【0099】
これにより、帯状電線配索構造は、フレキシブルフラットケーブル41の積層枚数が増加した場合であっても、折り曲げ部分における厚み方向の長さ(幅方向Yの長さ)を抑えることができる。このため、帯状電線配索構造は、第2収容ケース90の大型化を抑えることができる。
【0100】
さらに、フレキシブルフラットケーブル41が折り曲げられることで、帯状電線配索構造は、フレキシブルフラットケーブル41に作用する前後方向Xの荷重が、引出部分の先端に直接的に加わることを防止できる。このため、帯状電線配索構造は、フレキシブルフラットケーブル41の引出部分と接続端子51との接続状態を安定して確保することができる。
【0101】
また、厚み方向に積層された複数のフレキシブルフラットケーブル41が、固定レール2の内部に配索されているため、帯状電線配索構造は、フレキシブルフラットケーブル41が配索される電線収容部を、固定レール2とは別体で設けた場合に比べて、部品点数の増加を抑えることができる。
【0102】
さらに、フレキシブルフラットケーブル41の引出部分(第1引出部分402、第2引出部分403、第3引出部分404)を固定レール2のスリットを介して容易に引き出せるため、帯状電線配索構造は、引出部分を引き出すための開口を固定レール2に別途設けることを不要にできる。
【0103】
また、第1引出部分402、第2引出部分403、及び第3引出部分404は、複数のフレキシブルフラットケーブル41が積層されたものである。
この構成によれば、帯状電線配索構造は、一枚ごとにフレキシブルフラットケーブル41を折り曲げた場合に比べて、折り曲げ位置の増加を抑えることができる。
【0104】
これにより、帯状電線配索構造は、第2収容ケース90が前後方向Xに長くなることを抑えられるとともに、一枚ごとにフレキシブルフラットケーブル41を折り曲げた場合に比べて、フレキシブルフラットケーブル41の全長を抑えることができる。
【0105】
また、第1引出部分402、第2引出部分403、及び第3引出部分404におけるフレキシブルフラットケーブル41の積層枚数が同数である。
この構成によれば、帯状電線配索構造は、折り曲げ部分における厚み方向の長さを、各折り曲げ位置で均等にすることができる。このため、帯状電線配索構造は、第2収容ケース90が部分的に大型化することを抑えられる。
【0106】
また、第1引出部分402、第2引出部分403、及び第3引出部分404は、前後方向Xに沿って配索されたフレキシブルフラットケーブル41の厚み方向(幅方向Y)から見て、前後方向Xに直交する直交方向の一方側(下方側)、且つ同じ前後方向Xに対する角度で折り曲げられて、前後方向Xに隣接配置されたものである。
この構成によれば、帯状電線配索構造は、第1引出部分402、第2引出部分403、及び第3引出部分404を見栄え良く固定レール2の外部へ引き出すことができる。
【0107】
さらに、帯状電線配索構造は、シート側電線接続部50の各接続部(第1の接続部50a、第2の接続部50b、第3の接続部50c)に適した折り曲げ位置でフレキシブルフラットケーブル41を折り曲げることで、引出部分の配索経路を短くすることができる。このため、帯状電線配索構造は、引出部分の長さを抑えられるとともに、第2収容ケース90の大型化を抑えることができる。
【0108】
また、引出部分(第1引出部分402、第2引出部分403、第3引出部分404)は、スライドシート4を支持するとともに、固定レール2に対して進退方向にスライドするスライダ3に連結された第2収容ケース90に収容されたものである。
【0109】
この構成によれば、帯状電線配索構造は、固定レール2の外部に引き出された引出部分(第1引出部分402、第2引出部分403、第3引出部分404)が、異物との接触によって損傷する、あるいは外力が加わることで損傷することを第2収容ケース90によって防止できる。このため、帯状電線配索構造は、フレキシブルフラットケーブル41の導電性を安定して確保することができる。
【0110】
また、引出部分(第1引出部分402、第2引出部分403、第3引出部分404)の先端は、第2収容ケース90の内部において、第2ワイヤーハーネス60の被覆電線61と接続端子51を介して接続されたものである。
【0111】
この構成によれば、帯状電線配索構造は、線種の異なるフレキシブルフラットケーブル41と第2ワイヤーハーネス60の被覆電線61とを容易に接続できるとともに、直接的に接続した場合に比べて接続強度を向上することができる。
【0112】
さらに、フレキシブルフラットケーブル41と第2ワイヤーハーネス60の被覆電線61との接続箇所が第2収容ケース90で覆われるため、帯状電線配索構造は、例えば外力の作用によってフレキシブルフラットケーブル41と被覆電線61との接続が解除されることを防止できる。
【0113】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の車体側電線は、実施形態の車体側ワイヤーハーネス6に対応し、
以下同様に、
シート側電線は、シート側ワイヤーハーネス7に対応し、
帯状電線は、フレキシブルフラットケーブル41に対応し、
長手方向は、前後方向Xに対応し、
電線収容部は、固定レール2に対応し、
長手方向に交差する方向は、下方に対応し、
引出部分は、第1引出部分402、第2引出部分403、及び第3引出部分404に対応し、
収容ケースは、第2収容ケース90に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0114】
例えば、上述した実施形態において、給電装置5を固定レール2の幅方向Yに隣接して配置したシートスライド機構1としが、これに限定せず、例えば、給電装置を固定レール2の下方に配置したシートスライド機構であってもよい。この際、給電装置は、厚み方向が幅方向Yに一致するように配置する、あるいは第1収容ケースの厚み方向が上下方向に一致するように配置してもよい。
【0115】
また、一方の固定レール2に隣接して給電装置5を配置したが、これに限定せず、他方の固定レール2に隣接して給電装置5を配置してもよい。あるいは、左右の固定レール2にそれぞれ給電装置5を配置してもよい。
【0116】
また、第1ワイヤーハーネス20及び第2ワイヤーハーネス60を、複数の被覆電線21,61で構成したが、これに限定せず、接続端子を介してケーブル配索体40と接続可能であれば、第1ワイヤーハーネスまたは/および第2ワイヤーハーネスをフレキシブルフラットケーブルなどで構成してもよい。
【0117】
また、厚み方向に積層された複数のフレキシブルフラットケーブル41を、固定レール2の内部に配置し、固定レール2の内部で折り曲げられて外部に引き出す構成としたが、これに限定しない。
【0118】
例えば、別の実施形態におけるシートスライド機構の概略を断面で説明する説明図を示す
図9のように、固定レール2の外部に別体で設けた電線収容ケース100の内部に、厚み方向に積層されたケーブル配索体40を配置し、引出部分410が電線収容ケース100の内部で折り曲げられて外部に引き出される構成であってもよい。
【0119】
なお、この場合、電線収容ケース100は、固定レール2と第1収容ケース80との間に配置されるとともに、第1収容ケース80の前部に連結される。
さらに、ケーブル配索体40の引出部分410は、
図9に示すように、電線収容ケース100の開口部100aを通過して外部に引き出されるとともに、開口部100aに沿ってスライド移動する第2収容ケース90の内部に収容保持される。
【0120】
これによれば、帯状電線配索構造は、複数のフレキシブルフラットケーブル41を一か所で折り曲げて引き出した場合に比べて、厚み方向における電線収容ケース100の大型化を抑えることができる。
さらに、フレキシブルフラットケーブル41の積層枚数を抑えた引出部分410となるため、帯状電線配索構造は、引出部分410が通過する電線収容ケース100の開口部100aの大きさを抑えることができる。
【0121】
このため、帯状電線配索構造は、開口部100aを介した電線収容ケース100の内部への異物の侵入を抑えて、異物との接触によるフレキシブルフラットケーブル41の損傷を防止することができる。
【0122】
また、車体側電線接続部30において、フレキシブルフラットケーブル41と第1ワイヤーハーネス20とを、被覆圧着部31a及び導体圧着部31bを有する接続端子31を介して接続したが、これに限定しない。
【0123】
例えば、フレキシブルフラットケーブル41と第1ワイヤーハーネス20とをバスバーを介して接続してもよい。この場合、フレキシブルフラットケーブル41の平角導体41a及び第1ワイヤーハーネス20の導体をバスバーに溶接して接続する。
同様に、シート側電線接続部50において、フレキシブルフラットケーブル41と第2ワイヤーハーネス60とを、バスバーを介して接続してもよい。
【0124】
また、フレキシブルフラットケーブル41を用いて説明したが、これに限定せず、帯状電線であれば、断面丸形の被覆電線を並置したリボンケーブル(フラットケーブルともいう)などであってもよい。
また、18本のフレキシブルフラットケーブル41を積層して束ねたケーブル配索体40としたが、これに限定せず、フレキシブルフラットケーブル41の積層枚数は適宜の枚数であってもよい。
【0125】
また、3か所の折り曲げ位置で6枚のフレキシブルフラットケーブル41を折り曲げて分配したが、これに限定せず、少なくとも2か所以上の折り曲げ位置で適宜の枚数のフレキシブルフラットケーブル41を折り曲げて分配してもよい。
【0126】
また、第1引出部分402、第2引出部分403、及び第3引出部分404におけるフレキシブルフラットケーブル41の積層枚数をそれぞれ6枚としたが、これに限定せず、少なくとも1つの引出部分における積層枚数が、他の引出部分における積層枚数と異なっていてもよい。
【0127】
これによれば、帯状電線配索構造は、被覆電線の本数が異なるシート側電線接続部の各接続部に、フレキシブルフラットケーブル41を接続する場合であっても、フレキシブルフラットケーブル41を接続部に応じて適切に分配することができる。
【0128】
また、ケーブル配索体40における第1の配索体43、第2の配索体44、及び第3の配索体45を順番に折り返して、第1引出部分402、第2引出部分403、及び第3引出部分404を形成したが、引出部分が前後方向Xに沿って隣接配置される構成であれば、これに限定しない。
【0129】
例えば、別の実施形態におけるケーブル配索体の分配状態を説明する説明図を示す
図10のように、ケーブル配索体40における第1の配索体43を折り曲げて第1引出部分402を形成する。そして、第1引出部分402に対して後方に離間した位置で、第2の配索体44を折り曲げて第3引出部分405を形成し、第1引出部分402と第3引出部分405との間で、第3の配索体45を折り曲げて第2引出部分406を形成してもよい。
【0130】
また、同方向かつ同角度で折り曲げられた第1引出部分402、第2引出部分403、及び第3引出部分404としたが、これに限定せず、少なくとも1つの引出部分が、他の引出部分に対して同方向かつ異なる角度で折り曲げられてもよい。
【0131】
例えば、別の実施形態におけるケーブル配索体の分配状態を説明する説明図を示す
図11のように、下方へ向けて折り曲げて形成した第1引出部分407、第2引出部分403、及び第3引出部分408が、それぞれ異なる角度で折り曲げられてもよい。
【0132】
具体的には、
図11に示すように、第1引出部分407が前後方向Xに対して鋭角となる角度で折り曲げられ、第2引出部分403が前後方向Xに対して直角となる角度で折り曲げられ、第3引出部分408が前後方向Xに対して鈍角となる角度で折り曲げられてもよい。
【0133】
これによれば、帯状電線配索構造は、各接続部に向けた適切な方向へ引出部分を引き出すことができる。
具体的には、シート側電線接続部の第1の接続部と第3の接続部とが前後方向Xに大きく離間している場合であっても、帯状電線配索構造は、前後方向Xで近接した折り曲げ位置から第1の接続部及び第3の接続部へ向けて第1引出部分407及び第3引出部分408を引き出すことができる。
【0134】
これにより、帯状電線配索構造は、前後方向Xに折り曲げ位置が離間することで、フレキシブルフラットケーブル41の全長が長くなることを防止できる。さらに、電線配索構造は、引出部分の配索経路を短くできるため、引出部分の長さを抑えることができる。このため、帯状電線配索構造は、第2収容ケース90の大型化をさらに抑えることができる。
【0135】
また、同方向かつ同角度で折り曲げられた第1引出部分402、第2引出部分403、及び第3引出部分404としたが、これに限定せず、少なくとも1つの引出部分が、他の引出部分に対して異なる方向に折り曲げられてもよい。
【0136】
例えば、別の実施形態におけるケーブル配索体の分配状態を説明する説明図を示す
図12のように、下方へ向けて折り曲げて形成した第1引出部分402及び第3引出部分404に対して、第2引出部分409が前後方向Xに直交する上方へ向けて折り曲げられてもよい。
【0137】
これによれば、帯状電線配索構造は、各接続部に向けた適切な方向へ引出部分を引き出すことができる。
具体的には、シート側電線接続部の第1の接続部及び第3の接続部に対して、第2の接続部がケーブル配索体40を挟んで対向配置された場合であっても、帯状電線配索構造は、第1の接続部及び第3の接続部へ向けて第1引出部分402及び第3引出部分404を引き出し、第2の接続部へ向けて第2引出部分409を引き出すことができる。
【符号の説明】
【0138】
2…固定レール
3…スライダ
4…スライドシート
6…車体側ワイヤーハーネス
7…シート側ワイヤーハーネス
51…接続端子
61…被覆電線
90…第2収容ケース
41…フレキシブルフラットケーブル
402,407…第1引出部分
403,406,409…第2引出部分
404,405,408…第3引出部分
X…前後方向