(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152942
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】電線配索構造
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20221004BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20221004BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20221004BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H02G11/00
B60R16/02 620A
B60N2/90
B60N2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055909
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】山村 円博
【テーマコード(参考)】
3B087
5G371
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087DE09
5G371AA01
5G371BA01
5G371CA01
(57)【要約】
【課題】スライドシート4の進退に伴うケーブル配索体40の損傷を抑えられる電線配索構造を提供することを目的とする。
【解決手段】ケーブル配索体40を配索して固定レール2の前後方向Xに沿って進退可能にスライド支持されたスライドシート4に対して電気を供給する電線配索構造であって、固定レール2に沿って配置され、ケーブル配索体40を前後方向Xに沿って収容する収容ケース80と、収容ケース80から引き出されたケーブル配索体40の引出部分40bを保持する保持部材90とが備えられ、保持部材90は、収容ケース80内をスライドシート4の進退に追従して前後方向Xに進退可能に構成され、収容ケース80は、ケーブル配索体40における一方の端部を保持する基部816と、保持部材90が進退する開口部80aとが設けられ、ケーブル配索体40は、保持部材90の進退に追従できる長さで形成されたことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部が車体側電線と電気的に接続され、他方の端部がシート側電線と電気的に接続された帯状電線を配索して、車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対して、電気を供給する電線配索構造であって、
前記固定レールに沿って配置され、前記帯状電線を前記長手方向に沿って収容する収容ケースと、
前記収容ケースから引き出された前記帯状電線の引出部分を保持する保持部材とが備えられ、
該保持部材は、
前記収容ケース内を前記スライドシートの進退に追従して、前記長手方向に進退可能に構成され、
前記収容ケースは、
前記帯状電線における前記一方の端部を保持する基部と、
前記長手方向に延びて開口するとともに、前記保持部材が進退する開口部とが設けられ、
前記帯状電線は、
前記保持部材の進退に追従できる長さで形成された
電線配索構造。
【請求項2】
前記収容ケースの前記開口部は、
前記収容ケースの上方へ向けて開口された
請求項1に記載の電線配索構造。
【請求項3】
前記収容ケースの前記開口部は、
前記収容ケースにおける略水平方向の一方側へ向けて開口された
請求項1に記載の電線配索構造。
【請求項4】
前記収容ケース内において、
前記帯状電線は、
前記収容ケースの前記基部に保持された部分と前記引出部分との間が曲げ返し部で曲げ返されたU字状で収容され、
前記収容ケースは、
前記基部の近傍における前記U字状の内側において、前記帯状電線の前記曲げ返し部側に向かって突出し、前記帯状電線の曲げを規制するケース側曲げ規制部が設けられ、
前記保持部材は、
前記帯状電線の前記U字状の内側において、前記帯状電線の前記曲げ返し部側に向かって突出し、前記帯状電線の曲げを規制する保持部材側曲げ規制部が設けられた
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の電線配索構造。
【請求項5】
前記収容ケースは、
前記基部よりも前記帯状電線の前記曲げ返し部側において、前記基部から前記長手方向の一方へ向けて配索された前記帯状電線に対して、前記帯状電線の厚み方向で対向する傾斜壁部が設けられ、
該傾斜壁部は、
前記長手方向の一方へ向かうほど漸次、前記傾斜壁部に対向する対向面部に近接する
請求項4に記載の電線配索構造。
【請求項6】
前記基部から前記曲げ返し部へ向かう前記長手方向とは逆方向を、長手方向の他方側とし、
前記収容ケースは、
前記基部よりも前記長手方向の他方側において、前記長手方向に沿って配索された前記帯状電線の厚み方向で対向する一対の側壁部が設けられ、
該一対の側壁部のうち、前記基部側の側壁部は、
他の部分よりも前記保持部材側の側壁部に近接する
請求項4又は請求項5に記載の電線配索構造。
【請求項7】
前記収容ケース内において、
前記帯状電線は、
前記収容ケースの前記基部に保持された部分と前記引出部分との間が、前記基部から前記長手方向の一方側へ向けて配索されたのち第1曲げ返し部で曲げ返されるとともに、前記第1曲げ返し部から前記長手方向の他方側へ向けて配索されたのち第2曲げ返し部で曲げ返された状態で収容され、
前記収容ケースは、
前記第1曲げ返し部で曲げ返された前記帯状電線の前記基部側において、前記基部の近傍に、前記帯状電線の前記第1曲げ返し部側に向かって突出し、前記帯状電線の曲げを規制するケース側曲げ規制部が設けられ、
前記保持部材は、
前記第2曲げ返し部で曲げ返された前記帯状電線の前記保持部材側において、前記帯状電線の前記第2曲げ返し部側に向かって突出し、前記帯状電線の曲げを規制する保持部材側曲げ規制部が設けられた
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の電線配索構造。
【請求項8】
前記基部は、前記収容ケースの前記長手方向における中間位置に配置された
請求項4乃至請求項7のうちいずれかに記載の電線配索構造。
【請求項9】
前記帯状電線は、複数枚が厚み方向に積層され、
前記保持部材は、
前記長手方向に沿って複数配置されるとともに、積層された前記帯状電線のうち少なくとも1枚をそれぞれ保持する構成である
請求項4乃至請求項8のうちいずれかに記載の電線配索構造。
【請求項10】
前記帯状電線は、
前記収容ケースの内部において、厚み方向が略鉛直方向となるように配置された
請求項1乃至請求項9のうちいずれかに記載の電線配索構造。
【請求項11】
前記帯状電線は、
前記収容ケースの内部において、厚み方向が略水平方向となるように配置された
請求項1乃至請求項9のうちいずれかに記載の電線配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車などの車両において、車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対して配索して給電するフレキシブルフラットケーブルの電線配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車などの車両は、例えばスライドシートの電動化や、スライドシートへの電装品の装着により、スライドシートに対して車体側から電気を供給している。
例えば、特許文献1には、車体に固定された固定レール(スライドレール)の長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシート側に設けたシート側電線と、車体側に設けた車体側電線とを、帯状電線(フレキシブルフラットケーブル)で接続した給電装置が開示されている。
【0003】
具体的には、特許文献1の帯状電線は、一端がスライダに固定した第1コネクタに接続され、他端が固定レールの後端に固定した第2コネクタに接続されている。そして、特許文献1の帯状電線は、固定レールの内部において、略U字状に反転した状態で収容され、固定レールのスリットを介して外部に引き出されている。
【0004】
ところで、固定レールのスリットは、スライダが進退可能な幅広に開口されており、異物の侵入口となり易い。このため、特許文献1では、固定レールの内部に配索された帯状電線が、固定レールの内部に侵入した異物との摺動によって損傷するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑み、スライドシートの進退に伴う帯状電線の損傷を抑えられる電線配索構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、一方の端部が車体側電線と電気的に接続され、他方の端部がシート側電線と電気的に接続された帯状電線を配索して、車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対して、電気を供給する電線配索構造であって、前記固定レールに沿って配置され、前記帯状電線を前記長手方向に沿って収容する収容ケースと、前記収容ケースから引き出された前記帯状電線の引出部分を保持する保持部材とが備えられ、該保持部材は、前記収容ケース内を前記スライドシートの進退に追従して、前記長手方向に進退可能に構成され、前記収容ケースは、前記帯状電線における前記一方の端部を保持する基部と、前記長手方向に延びて開口するとともに、前記保持部材が進退する開口部とが設けられ、前記帯状電線は、前記保持部材の進退に追従できる長さで形成されたことを特徴とする。
【0008】
上記帯状電線は、並置された複数の導体が絶縁シートで挟み込まれたフレキシブルフラットケーブル、あるいは断面丸形の被覆電線が複数並置されたフラットケーブルなどのことをいう。
【0009】
この発明によれば、電線配索構造は、スライドシートの進退に伴う帯状電線の損傷を抑えることができる。
具体的には、保持部材が固定レールのスリットではなく、収容ケースの開口部を進退可能に構成されているため、電線配索構造は、スライドシートを支持するスライダに比べて、保持部材を幅狭に形成することができる。
【0010】
このため、電線配索構造は、固定レールのスリットよりも幅狭な大きさで収容ケースの開口部を形成することができる。これにより、電線配索構造は、固定レールに比べて、収容ケースの内部への異物の侵入を抑えることができる。
【0011】
さらに、収容ケースに収容された帯状電線が、収容ケースの基部及び保持部材に保持されているため、電線配索構造は、スライドシートの進退に伴って固定レールと収容ケースとの間を往復動することがない。このため、電線配索構造は、固定レールとの摺動による帯状電線の損傷を防止できる。
【0012】
よって、電線配索構造は、スライドシートの進退に伴う帯状電線の損傷を抑えることができる。加えて、帯状電線の損傷を抑えられるため、電線配索構造は、例えば帯状電線を保護する保護チューブを不要して、部品点数の低減を図ることができる。
【0013】
この発明の態様として、前記収容ケースの前記開口部は、前記収容ケースの上方へ向けて開口されてもよい。
この構成によれば、スライドシートの進退に伴って、保持部材が長手方向に傾いた場合であっても、電線配索構造は、保持部材が開口部の縁端に接触することがない。
【0014】
これにより、電線配索構造は、スライドシートの進退に追従して、保持部材を長手方向へ向けてスムーズにスライド移動させることができる。このため、電線配索構造は、例えば保持部材のスムーズなスライド移動が阻害されることで、帯状電線が意図せず折れ曲がることを防止できる。
よって、電線配索構造は、スライドシートの進退に伴う帯状電線の損傷をより防止することができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記収容ケースの前記開口部は、前記収容ケースにおける略水平方向の一方側へ向けて開口されてもよい。
この構成によれば、電線配索構造は、例えば上方へ向けて開口した開口部に比べて、収容ケースの内部への上方からの異物の侵入を抑えることができる。このため、電線配索構造は、収容ケースの内部において、異物との摺動による帯状電線の損傷を抑えることができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記収容ケース内において、前記帯状電線は、前記収容ケースの前記基部に保持された部分と前記引出部分との間が曲げ返し部で曲げ返されたU字状で収容され、前記収容ケースは、前記基部の近傍における前記U字状の内側において、前記帯状電線の前記曲げ返し部側に向かって突出し、前記帯状電線の曲げを規制するケース側曲げ規制部が設けられ、前記保持部材は、前記帯状電線の前記U字状の内側において、前記帯状電線の前記曲げ返し部側に向かって突出し、前記帯状電線の曲げを規制する保持部材側曲げ規制部が設けられてもよい。
【0017】
上記帯状電線の曲げを規制するとは、曲げ返し部の曲率半径が所定の値を下回らないように規制することをいう。
この構成によれば、電線配索構造は、スライドシートの進退に伴う帯状電線の損傷をより抑えられるとともに、帯状電線の導電性を安定して確保することができる。
【0018】
具体的には、固定レールと収容ケースとの間を帯状電線が往復動することがないため、帯状電線は、収容ケースに収容される部分の長さが、スライドシートの進退に伴って変化することがない。
【0019】
このため、収容ケースの内部において、帯状電線の曲げ返し部は、保持部材の進退に伴って曲率半径が徐々に変化するように変形する。
この際、電線配索構造は、保持部材側曲げ規制部及びケース側曲げ規制部により、曲げ返し部の曲率半径の変化を規制することができる。
【0020】
例えば、曲げ返し部側へ向けて保持部材が移動した場合、電線配索構造は、保持部材側曲げ規制部により、曲げ返し部の曲率半径が極端に小さくなる、あるいは保持部材近傍を起点に帯状電線が折れ曲がることを防止できる。
【0021】
一方、曲げ返し部とは逆側へ保持部材が移動した場合、電線配索構造は、ケース側曲げ規制部により、曲げ返し部の曲率半径が極端に小さくなる、あるいは基部近傍を起点に帯状電線が折れ曲がることを防止できる。
これにより、電線配索構造は、スライドシートの進退に伴う帯状電線の損傷をより抑えることができるとともに、帯状電線の導電性を安定して確保することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記収容ケースは、前記基部よりも前記帯状電線の前記曲げ返し部側において、前記基部から前記長手方向の一方へ向けて配索された前記帯状電線に対して、前記帯状電線の厚み方向で対向する傾斜壁部が設けられ、該傾斜壁部は、前記長手方向の一方へ向かうほど漸次、前記傾斜壁部に対向する対向面部に近接してもよい。
【0023】
この構成によれば、電線配索構造は、基部よりも長手方向の一方側において、厚み方向における収容ケースの長さを、長手方向の一方へ向かうほど漸次、短くすることができる。
さらに、帯状電線の曲げ返し部は、保持部材が長手方向の一方側へ移動するほど、曲率半径が小さくなる。
【0024】
このため、電線配索構造は、傾斜壁部と帯状電線との接触によって保持部材の進退が阻害されることがない。
よって、電線配索構造は、保持部材のスムーズな進退を阻害することなく、収容ケースの小型化を図ることができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記基部から前記曲げ返し部へ向かう前記長手方向とは逆方向を、長手方向の他方側とし、前記収容ケースは、前記基部よりも前記長手方向の他方側において、前記長手方向に沿って配索された前記帯状電線の厚み方向で対向する一対の側壁部が設けられ、該一対の側壁部のうち、前記基部側の側壁部は、他の部分よりも前記保持部材側の側壁部に近接してもよい。
【0026】
この構成によれば、電線配索構造は、基部よりも長手方向の他方側において、厚み方向における収容ケースの大きさを小さくすることができる。このため、電線配索構造は、帯状電線の損傷を抑えて、収容ケースの小型化をより図ることができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記収容ケース内において、前記帯状電線は、前記収容ケースの前記基部に保持された部分と前記引出部分との間が、前記基部から前記長手方向の一方側へ向けて配索されたのち第1曲げ返し部で曲げ返されるとともに、前記第1曲げ返し部から前記長手方向の他方側へ向けて配索されたのち第2曲げ返し部で曲げ返された状態で収容され、前記収容ケースは、前記第1曲げ返し部で曲げ返された前記帯状電線の前記基部側において、前記基部の近傍に、前記帯状電線の前記第1曲げ返し部側に向かって突出し、前記帯状電線の曲げを規制するケース側曲げ規制部が設けられ、前記保持部材は、前記第2曲げ返し部で曲げ返された前記帯状電線の前記保持部材側において、前記帯状電線の前記第2曲げ返し部側に向かって突出し、前記帯状電線の曲げを規制する保持部材側曲げ規制部が設けられてもよい。
【0028】
この構成によれば、第2曲げ返し部側へ向けて保持部材が移動した際、電線配索構造は、ケース側曲げ規制部及び保持部材側曲げ規制部により、第1曲げ返し部及び第2曲げ返し部の曲率半径が極端に小さくなることを防止できる。
【0029】
あるいは、第2曲げ返し部側へ向けて保持部材が移動した際、電線配索構造は、基部及び保持部材近傍を起点に帯状電線が折れ曲がることを防止できる。
これにより、電線配索構造は、スライドシートの進退に伴う帯状電線の損傷をより抑えることができるとともに、帯状電線の導電性を安定して確保することができる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記基部は、前記収容ケースの前記長手方向における中間位置に配置されてもよい。
この構成によれば、電線配索構造は、長手方向における収容ケースの一端近傍に基部を設けた場合に比べて帯状電線の全長を短くできるため、重量増加を抑えることができる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記帯状電線は、複数枚が厚み方向に積層され、前記保持部材は、前記長手方向に沿って複数配置されるとともに、積層された前記帯状電線のうち少なくとも1枚をそれぞれ保持する構成であってもよい。
【0032】
上記複数の保持部材は、例えば1つのスライドシートに追従して進退可能な複数の保持部材、あるいは異なるスライドシートにそれぞれ追従して進退可能な複数の保持部材などのことをいう。
【0033】
この構成によれば、少なくとも1枚の帯状電線を保持する複数の保持部材により、電線接続構造は、1つの収容ケースに収容された複数の帯状電線を、長手方向の異なる位置に配置されたシート側電線に接続することができる。
【0034】
例えば、1つのスライドシートに追従して進退可能な2つの保持部材を設けた場合、電線配索構造は、スライドシートの前脚近傍に設けたシート側電線と、スライドシートの後脚近傍に設けたシート側電線とに、1つの収容ケースに収容された複数の帯状電線を接続することができる。
【0035】
あるいは、固定レールに配置された2つのスライドシートの一方に追従して進退可能な第1の保持部材と、他方のスライドシートに追従して進退可能な第2の保持部材とした場合、電線配索構造は、1つの収容ケースに収容された複数の帯状電線を、一方のスライドシートに設けたシート側電線と、他方のスライドシートに設けたシート側電線とに接続することができる。
【0036】
これにより、電線配索構造は、複数の収容ケースを複数設けることなく、長手方向の異なる位置に配置されたシート側電線に電気を供給することができる。このため、電線配索構造は、車室内の限られたスペースが複数の収容ケースによって圧迫されることを防止できる。
【0037】
またこの発明の態様として、前記帯状電線は、前記収容ケースの内部において、厚み方向が略鉛直方向となるように配置されてもよい。
この構成によれば、例えば複数の帯状電線を厚み方向に積層する場合であっても、電線配索構造は、水平方向における収容ケースの長さを一定にできる。
【0038】
これにより、電線配索構造は、複数の帯状電線を収容ケースに収容する場合であっても、水平方向における収容ケースの大型化を抑えられるため、車室内のレイアウトの自由度が損なわれることを防止できる。
【0039】
またこの発明の態様として、前記帯状電線は、前記収容ケースの内部において、厚み方向が略水平方向となるように配置されてもよい。
この構成によれば、例えば複数の帯状電線を厚み方向に積層する場合であっても、電線配索構造は、鉛直方向における収容ケースの長さを一定にできる。
【0040】
これにより、電線配索構造は、複数の帯状電線を収容ケースに収容する場合であっても、鉛直方向における収容ケースの大型化を抑えられるため、車室内のレイアウトの自由度が損なわれることを防止できる。
【発明の効果】
【0041】
本発明により、スライドシートの進退に伴う帯状電線の損傷を抑えられる電線配索構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】シートスライド機構の概略を説明する説明図。
【
図3】側面視における収容ケースの外観を示す側面図。
【
図5】スライドシートが前方へ移動した状態におけるケーブル配索体の状態を説明する説明図。
【
図6】スライドシートが後方へ移動した状態におけるケーブル配索体の状態を説明する説明図。
【
図7】別の実施形態における給電装置の外観を示す側面図。
【
図8】別の実施形態における給電装置の外観を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態は、自動車などの車両において、車体に固定した固定レールの長手方向に沿って進退可能にスライド支持されたスライドシートに対して配索して給電するフレキシブルフラットケーブルの電線配索構造について、
図1から
図6を用いて説明する。
【0044】
なお、
図1はシートスライド機構1の概略を説明する説明図を示し、
図2は給電装置5の外観斜視図を示し、
図3は収容ケース80の側面図を示し、
図4は
図3中のA-A矢視断面図を示している。
また、図示を明確にするため、
図3中において収容ケース80の蓋体82の図示を省略し、
図4中において保持部材90の位置を二点鎖線で図示している。
【0045】
また、
図1中の上側を給電装置5の上方側、
図1中の下側を給電装置5の下方側として、図中の矢印Xは固定レール2の長手方向となる前後方向(以降、前後方向Xと呼ぶ)を示し、矢印Yは前後方向Xに平面視直交する方向(以降、幅方向Yと呼ぶ)を示している。
【0046】
さらに、前後方向Xにおいて、
図1中の右側から左側へ向かう方向を前方とし、
図1中の左側から右側へ向かう方向を後方とする。加えて、幅方向Yから見た状態を側面視として説明する。
【0047】
まず、シートスライド機構1は、
図1に示すように、前後方向Xに延びるとともに、車両の車体に固定された左右一対の固定レール2と、固定レール2を摺動する左右一対のスライダ3と、左右のスライダ3に支持されて前後方向Xに進退可能なスライドシート4とを備えている。
【0048】
さらに、シートスライド機構1は、
図1に示すように、固定レールの長手方向、すなわち前後方向Xに沿って進退可能にスライド支持されたスライドシート4に対して、電気を給電する給電装置5を備えている。
【0049】
具体的には、一対の固定レール2は、
図1に示すように、幅方向Yに所定間隔を隔てて配置されるとともに、支持ブラケット(図示省略)を介して車両の車体に固定されている。
【0050】
この固定レール2は、詳細な図示を省略するが、幅方向Yに沿った縦断面における断面形状が、略矩形の閉断面の上面における幅方向Yの中央に開口を設けた開断面形状に形成されている。なお、前後方向Xに延びる開断面形状の開口を、固定レール2のスリットとする。
【0051】
また、スライダ3は、前後方向Xに延びる固定レール2のスリットを、前後方向Xに沿って摺動可能に構成されている。
また、スライドシート4は、スライダ3の上部に固定され、スライダ3と一体的に前後方向Xにスライド移動可能に配置されている。このスライドシート4には、例えば電気で操作するシートリフター機構及びリクライニング機構、あるいはシートヒータなどの電装機器が内蔵されている。
【0052】
また、給電装置5は、
図1に示すように、一方の端部が車体側ワイヤーハーネス6と電気的に接続され、他方の端部がシート側ワイヤーハーネス7と電気的に接続され、スライダ3のスライド移動に追従しながらスライドシート4に対して電気を供給可能に構成されている。
【0053】
なお、車体側ワイヤーハーネス6及びシート側ワイヤーハーネス7は、車体側ワイヤーハーネス6が例えば車両のバッテリや制御装置に接続され、シート側ワイヤーハーネス7がスライドシート4に設けた電装機器に接続されている。
【0054】
詳述すると、給電装置5は、
図1及び
図2に示すように、車体側ワイヤーハーネス6をシート側ワイヤーハーネス7に接続する第1コネクタ10、第1ワイヤーハーネス20、車体側電線接続部30、ケーブル配索体40、シート側電線接続部50、第2ワイヤーハーネス60、及び第2コネクタ70を備えている。
【0055】
さらに、給電装置5は、
図1及び
図3に示すように、車体側電線接続部30及びケーブル配索体40が収容される収容ケース80と、ケーブル配索体40を保持するとともに、スライダ3に連結される保持部材90とを備えている。
【0056】
第1ワイヤーハーネス20は、
図1から
図3に示すように、一端側が第1コネクタ10を介して、車体側ワイヤーハーネス6に接続され、他端側が車体側電線接続部30に接続されている。この第1ワイヤーハーネス20は、導体を絶縁被覆で被覆した断面丸型の被覆電線を複数本束ねて構成されている。
【0057】
また、車体側電線接続部30は、
図3に示すように、収容ケース80の内部において、第1ワイヤーハーネス20とケーブル配索体40とを電気的に接続している。
この車体側電線接続部30は、
図3に示すように、収容ケース80の内部における前後方向Xの略中央下部に配置されるとともに、適宜の手段で収容ケース80に固定されている。
【0058】
なお、車体側電線接続部30は、詳細な図示を省略するが、ケーブル配索体40を構成するフレキシブルフラットケーブル41に第1ワイヤーハーネス20を接続する複数の接続端子と、接続端子を収容保持する複数の端子ホルダとで構成されている。
【0059】
また、ケーブル配索体40は、
図2に示すように、一端が固定された車体側電線接続部30を介して第1ワイヤーハーネス20に接続され、他端がシート側電線接続部50を介して第2ワイヤーハーネス60に接続されている。
【0060】
このケーブル配索体40は、複数のフレキシブルフラットケーブル41を、フレキシブルフラットケーブル41の厚み方向に積層するとともに、粘着テープ(図示省略)で束ねて構成されている。
例えば、ケーブル配索体40は、
図4に示すように、6枚のフレキシブルフラットケーブル41を厚み方向に積層して構成されている。
【0061】
より詳しくは、フレキシブルフラットケーブル41は、所定方向に延びる断面略矩形の平角導体を並置するとともに、並置された複数の平角導体を絶縁シートであるラミネートシートで挟み込んで形成されている。このフレキシブルフラットケーブル41は、前後方向Xへの保持部材90の進退に追従できる長さで形成されている。
【0062】
このようなケーブル配索体40は、
図3及び
図4に示すように、フレキシブルフラットケーブル41の厚み方向が上下方向と一致するようにして、収容ケース80の内部にU字状に配索されている。
【0063】
より詳しくは、ケーブル配索体40は、
図3に示すように、前後方向Xの略中央下部に固定された車体側電線接続部30から収容ケース80の下部を通って前後方向Xと略平行に前方へ向けて配索されたのち、上方後方へ向けて曲げ返されている。
【0064】
さらに、ケーブル配索体40は、上方後方へ向けて曲げ返された曲げ返し部40aから後方へ延びる部分が、収容ケース80の上部を通って前後方向Xと略平行に配索されている。
【0065】
そして、ケーブル配索体40は、曲げ返し部40aから後方へ延びる部分の端部近傍を、幅方向Yの一方側へ折り曲げて形成した引出部分40bが、保持部材90の内部を通って収容ケース80から外部に引き出されたのち、シート側電線接続部50に接続されている。
なお、ケーブル配索体40の引出部分40bは、保持部材90の内部において、上方へ向けて湾曲したのち、幅方向Yの他方側へ向けて湾曲した状態で配索されている。
【0066】
また、シート側電線接続部50は、
図2に示すように、ケーブル配索体40と第2ワイヤーハーネス60とを電気的に接続している。このシート側電線接続部50は、後述する保持部材90の上部に適宜の手段で固定されるとともに、図示を省略した適宜のケースに収容されている。
なお、シート側電線接続部50は、上述した車体側電線接続部30と同様、複数の接続端子と、複数の接続端子を収容保持する複数の端子ホルダとで構成されている。
【0067】
また、第2ワイヤーハーネス60は、
図1及び
図2に示すように、一端側がシート側電線接続部50に接続され、他端側が第2コネクタ70を介してシート側ワイヤーハーネス7に接続されている。この第2ワイヤーハーネス60は、導体を絶縁被覆で被覆した断面丸型の被覆電線を複数本束ねて構成されている。
【0068】
また、収容ケース80は、
図1に示すように、固定レール2に沿うように固定レール2の幅方向Yの一方側に隣接して配置され、固定レール2を支持する支持ブラケットを介して車体に固定されている。
【0069】
この収容ケース80は、
図2から
図4に示すように、幅方向Yに厚みを有する内部中空の箱状であって、幅方向Yの一方が開口したケース本体81と、ケース本体81の開口を覆う蓋体82とを幅方向Yに組付けて構成している。
【0070】
より詳しくは、ケース本体81は、
図2に示すように、幅方向Yで蓋体82に対向する主面部811と、主面部811の縁端から幅方向Yへ立設した前面部812、後面部813、上面部814、及び底面部815とで、幅方向Yの一方が開口した略箱状に形成されている。
【0071】
さらに、ケース本体81には、
図2に示すように、車体側電線接続部30近傍のケーブル配索体40を保持する基部816と、車体側電線接続部30近傍において、ケーブル配索体40の曲げを規制するケース側曲げ規制部817とが設けられている。
【0072】
詳述すると、主面部811は、
図2から
図4に示すように、幅方向Yに厚みを有する板状であって、前後方向Xに略平行な上端縁と、上下方向に凹凸な下端縁とを有する形状に形成されている。
【0073】
具体的には、主面部811は、
図3に示すように、ケース本体81の前端から後端に至る前後方向Xの長さを有する前後方向Xに長い側面視略矩形の矩形部分と、矩形部分の前部下端から下方へ延設された逆台形状の突出部分とで、下端縁が凹凸な形状に形成されている。
【0074】
また、前面部812は、
図2及び
図3に示すように、主面部811の前端縁から幅方向Yの一方へ向けて立設され、収容ケース80の前面を形成している。
また、後面部813は、
図2及び
図3に示すように、主面部811の後端縁から幅方向Yの一方へ向けて立設され、収容ケース80の後面を形成している。
【0075】
また、上面部814は、
図2及び
図3に示すように、主面部811の上端縁から幅方向Yの一方へ向けて立設され、収容ケース80の上面を形成している。この上面部814には、
図2及び
図4に示すように、蓋体82側の縁端を前後方向Xに長い平面視略矩形に切り欠いた切欠き部分81aが形成されている。
【0076】
また、底面部815は、
図2及び
図3に示すように、主面部811の下端縁の凹凸に沿って幅方向Yの一方側へ向けて立設され、収容ケース80の底面を形成している。この底面部815は、
図2及び
図3に示すように、傾斜部分815a、中央部分815b、起立部分815c、及び後方部分815dを、前方から後方へ向けてこの順番で連結して構成している。
【0077】
具体的には、傾斜部分815aは、
図3に示すように、側面視において、前面部812の下端から後方へ向かうほど漸次、下方へ傾斜した形状に形成されている。換言すると、傾斜部分815aは、前方へ向かうほど漸次、上面部814に近接する形状に形成されている。
【0078】
なお、傾斜部分815aは、
図3に示すように、ケース本体81の前部における前後方向Xの略中央から前端に至る範囲に形成されている。
中央部分815bは、
図3に示すように、車体側電線接続部30の後方に至る前後方向Xの長さで、傾斜部分815aの後端から上面部814と略平行に後方へ向けて延設されている。
【0079】
起立部分815cは、
図3に示すように、側面視において、上面部814と中央部分815bとの間における上下方向の略中央に至る長さで、中央部分815bの後端から後方上方へ向けて立ち上がるように延設されている。この起立部分815cには、
図2に示すように、第1ワイヤーハーネス20が挿通される貫通孔が開口形成されている。
【0080】
後方部分815dは、
図3に示すように、側面視において、上面部814と中央部分815bとの間における上下方向の略中央に形成されている。この後方部分815dは、上面部814と略平行に起立部分815cの上端から後面部813の後端にかけて延設されている。このため、後方部分815dは、底面部815における他の部分よりも上面部814に最も近接した位置に配置されている。
【0081】
また、ケーブル配索体40を保持する基部816は、
図2及び
図3に示すように、収容ケース80の下部において、車体側電線接続部30の前方に隣接して形成されている。なお、詳細な図示を省略するが、基部816は、車体側電線接続部30近傍のケーブル配索体40を内部で保持可能に形成されている。
【0082】
また、ケース側曲げ規制部817は、
図2及び
図3に示すように、基部816の前面部分に一体形成され、曲げ返し部40aが所望される曲率半径を下回らないようにケーブル配索体40の曲げを規制可能に構成されている。
【0083】
具体的には、ケース側曲げ規制部817は、
図3に示すように、側面視において、ケーブル配索体40の曲げ返し部40aに向かう方向、すなわち前方へ向けて突出した略半円状の円弧面で構成されている。
【0084】
また、蓋体82は、
図2に示すように、ケース本体81と略同じ大きさ、かつ同形状の主面部821と、主面部821の前端縁からケース本体81へ向けて立設された前面部822と、主面部821の後端縁からケース本体81へ向けて立設された後面部823とを備えている。
【0085】
さらに、蓋体82は、
図2及び
図4に示すように、主面部821の上端縁からケース本体81へ向けて立設された上面部824と、主面部821の下端縁からケース本体81へ向けて立設された底面部825とを備えている。
【0086】
なお、蓋体82の前面部822、後面部823、上面部824、及び底面部825は、それぞれケース本体81の前面部812、後面部813、上面部814、及び底面部815の外面に重なり合うように形成されている。
さらに、蓋体82の上面部824には、
図2及び
図4に示すように、ケース本体81側の縁端を前後方向Xに長い平面視略矩形に切り欠いた切欠き部分82aが形成されている。
【0087】
この切欠き部分82aは、
図2及び
図4に示すように、ケース本体81と蓋体82とが組付けられた状態において、ケース本体81の切欠き部分81aとで後述する保持部材90が進退する収容ケース80の開口部80aを構成している。
なお、開口部80aは、
図1及び
図4に示すように、固定レール2のスリット、及び後述する保持部材90の本体部91よりも短い幅方向Yの長さで、上方へ向けて開口されている。
【0088】
また、保持部材90は、収容ケース80から引き出されたケーブル配索体40の引出部分40bを保持するとともに、スライドシート4の進退に追従して前後方向Xに進退可能な状態で収容ケース80に支持されている。
【0089】
この保持部材90は、
図2及び
図3に示すように、収容ケース80の開口部80aを貫通するように上下方向に延びる側面視略矩形の本体部91と、本体部91の上端から幅方向Yへ延びる連結部92と、本体部91の下端に設けられた保持部材側曲げ規制部93とで構成されている。
【0090】
より詳しくは、本体部91は、
図1及び
図2に示すように、上下方向に長い側面視略矩形であって、固定レール2のスリットよりも短い幅方向Yの長さに形成されている。
この本体部91は、
図2及び
図3に示すように、収容ケース80の内部において、幅方向Yの一方側へ折り返されたケーブル配索体40の引出部分40bを内部で保持するように構成されている。さらに、本体部91は、ケーブル配索体40の引出部分40bを上端から幅方向Yの他方側へ向けて導出可能に形成されている。
【0091】
連結部92は、
図1及び
図2に示すように、本体部91の上端から幅方向Yの他方側へ延設され、スライダ3の前部に連結されている。さらに、連結部92には、
図2に示すように、シート側電線接続部50が適宜の手段で載置固定されている。
【0092】
保持部材側曲げ規制部93は、
図2及び
図3に示すように、本体部91の下端に一体形成され、曲げ返し部40aが所望される曲率半径を下回らないようにケーブル配索体40の曲げを規制可能に構成されている。
【0093】
具体的には、保持部材側曲げ規制部93は、
図2及び
図3に示すように、側面視において、ケーブル配索体40の曲げ返し部40aに向かう方向、すなわち前方へ向けて突出した略半円状の円弧面を前面に有する形状に形成されている。
なお、保持部材側曲げ規制部93の円弧面は、ケース側曲げ規制部817の円弧面と略同径の略半円状に形成されている。
【0094】
次に、上述した構成の給電装置5において、スライドシート4が最も前方へ移動した状態と、スライドシート4が最も後方へ移動した状態について、
図5及び
図6を用いて説明する。
なお、
図5はスライドシート4が前方へ移動した状態におけるケーブル配索体40の状態を説明する説明図を示し、
図6はスライドシート4が後方へ移動した状態におけるケーブル配索体40の状態を説明する説明図を示している。
【0095】
まず、スライドシート4が前方へ向けて移動開始すると、給電装置5の保持部材90は、
図5に示すように、スライドシート4の前方への移動に追従して、収容ケース80の開口部80aに沿って前方へ向けて移動する。
【0096】
この際、ケーブル配索体40の曲げ返し部40aは、保持部材90の前方への移動に伴って曲率半径が漸次小さくなるように変形するとともに、保持部材90の保持部材側曲げ規制部93に接触開始する。
そして、ケーブル配索体40の曲げ返し部40aは、
図5に示すように、スライドシート4が最も前方へ移動した状態において、保持部材側曲げ規制部93の円弧面に沿った形状に変形する。
【0097】
すなわち、ケーブル配索体40の曲げ返し部40aは、保持部材側曲げ規制部93によって曲げ規制され、曲率半径が最も小さい状態となる。
この際、ケーブル配索体40は、曲げ返し部40aの下端と基部816との間が略直線的に延びる配索状態となる。
【0098】
一方、スライドシート4が後方へ向けて移動開始すると、給電装置5の保持部材90は、
図6に示すように、スライドシート4の後方への移動に追従して、収容ケース80の開口部80aに沿って後方へ向けて移動する。
【0099】
この際、ケーブル配索体40の曲げ返し部40aは、保持部材90の後方への移動に伴って曲率半径が漸次小さくなるように変形するとともに、収容ケース80のケース側曲げ規制部817に接触開始する。
そして、ケーブル配索体40の曲げ返し部40aは、
図6に示すように、スライドシート4が最も後方へ移動した状態において、ケース側曲げ規制部817の円弧面に沿った形状に変形する。
【0100】
すなわち、ケーブル配索体40の曲げ返し部40aは、ケース側曲げ規制部817によって曲げ規制され、曲率半径が最も小さい状態となる。
この際、ケーブル配索体40は、曲げ返し部40aの上端と保持部材90との間が略直線的に延びる配索状態となる。
【0101】
以上のように、本実施形態の電線配索構造は、一方の端部が車体側ワイヤーハーネス6と電気的に接続され、他方の端部がシート側ワイヤーハーネス7と電気的に接続されたケーブル配索体40を配索して、車体に固定した固定レール2の前後方向Xに沿って進退可能にスライド支持されたスライドシート4に対して、電気を供給している。
【0102】
この電線配索構造は、固定レール2に沿って配置され、ケーブル配索体40を前後方向Xに沿って収容する収容ケース80と、収容ケース80から引き出されたケーブル配索体40の引出部分40bを保持する保持部材90とが備えられたものである。
さらに、保持部材90は、収容ケース80内をスライドシート4の進退に追従して、前後方向Xに進退可能に構成されたものである。
【0103】
さらにまた、収容ケース80は、ケーブル配索体40における一方の端部を保持する基部816と、前後方向Xに延びて開口するとともに、保持部材90が進退する開口部80aとが設けられたものである。
そして、ケーブル配索体40は、保持部材90の進退に追従できる長さで形成されたものである。
【0104】
これによれば、電線配索構造は、スライドシート4の進退に伴うケーブル配索体40の損傷を抑えることができる。
具体的には、保持部材90が固定レール2のスリットではなく、収容ケース80の開口部80aを進退可能に構成されているため、電線配索構造は、スライドシート4を支持するスライダ3に比べて、保持部材90を幅狭に形成することができる。
【0105】
このため、電線配索構造は、固定レール2のスリットよりも幅狭な大きさで収容ケース80の開口部80aを形成することができる。これにより、電線配索構造は、固定レール2に比べて、収容ケース80の内部への異物の侵入を抑えることができる。
【0106】
さらに、収容ケース80に収容されたケーブル配索体40が、収容ケース80の基部816及び保持部材90に保持されているため、電線配索構造は、スライドシート4の進退に伴って固定レール2と収容ケース80との間を往復動することがない。このため、電線配索構造は、固定レール2との摺動によるケーブル配索体40の損傷を防止できる。
【0107】
よって、電線配索構造は、スライドシート4の進退に伴うケーブル配索体40の損傷を抑えることができる。加えて、ケーブル配索体40の損傷を抑えられるため、電線配索構造は、例えばケーブル配索体40を保護する保護チューブを不要して、部品点数の低減を図ることができる。
【0108】
また、収容ケース80の開口部80aは、収容ケース80の上方へ向けて開口されたものである。
この構成によれば、スライドシート4の進退に伴って、保持部材90が前後方向Xに傾いた場合であっても、電線配索構造は、保持部材90が開口部80aの縁端に接触することがない。
【0109】
これにより、電線配索構造は、スライドシート4の進退に追従して、保持部材90を前後方向Xへ向けてスムーズにスライド移動させることができる。このため、電線配索構造は、例えば保持部材90のスムーズなスライド移動が阻害されることで、ケーブル配索体40が意図せず折れ曲がることを防止できる。
よって、電線配索構造は、スライドシート4の進退に伴うケーブル配索体40の損傷をより防止することができる。
【0110】
また、収容ケース80内において、ケーブル配索体40は、収容ケース80の基部816に保持された部分と引出部分40bとの間が曲げ返し部40aで曲げ返されたU字状で収容されている。
【0111】
さらに、収容ケース80は、基部816の近傍におけるU字状の内側において、ケーブル配索体40の曲げ返し部40a側に向かって突出し、ケーブル配索体40の曲げを規制するケース側曲げ規制部817が設けられたものである。
【0112】
加えて、保持部材90は、ケーブル配索体40のU字状の内側において、ケーブル配索体40の曲げ返し部40a側に向かって突出し、ケーブル配索体40の曲げを規制する保持部材側曲げ規制部93が設けられたものである。
【0113】
この構成によれば、電線配索構造は、スライドシート4の進退に伴うケーブル配索体40の損傷をより抑えられるとともに、ケーブル配索体40の導電性を安定して確保することができる。
【0114】
具体的には、固定レール2と収容ケース80との間をケーブル配索体40が往復動することがないため、ケーブル配索体40は、収容ケース80の収容される部分の長さが、スライドシート4の進退に伴って変化することがない。
【0115】
このため、収容ケース80の内部において、ケーブル配索体40の曲げ返し部40aは、保持部材90の進退に伴って曲率半径が徐々に変化するように変形する。
この際、電線配索構造は、保持部材側曲げ規制部93及びケース側曲げ規制部817により、曲げ返し部40aの曲率半径の変化を規制することができる。
【0116】
例えば、曲げ返し部40a側へ向けて保持部材90が移動した場合、電線配索構造は、保持部材側曲げ規制部93により、曲げ返し部40aの曲率半径が極端に小さくなる、あるいは保持部材90近傍を起点にケーブル配索体40が折れ曲がることを防止できる。
【0117】
一方、曲げ返し部40aとは逆側へ保持部材90が移動した場合、電線配索構造は、ケース側曲げ規制部817により、曲げ返し部40aの曲率半径が極端に小さくなる、あるいは基部816近傍を起点にケーブル配索体40が折れ曲がることを防止できる。
これにより、電線配索構造は、スライドシート4の進退に伴うケーブル配索体40の損傷をより抑えることができるとともに、ケーブル配索体40の導電性を安定して確保することができる。
【0118】
また、収容ケース80は、基部816よりもケーブル配索体40の曲げ返し部40a側において、基部816から前方へ向けて配索されたケーブル配索体40に対して、ケーブル配索体40の厚み方向で対向する傾斜部分815aが設けられている。この傾斜部分815aは、前方へ向かうほど漸次、上面部814に近接したものである。
【0119】
この構成によれば、電線配索構造は、基部816よりも前方において、厚み方向における収容ケース80の長さを、前方へ向かうほど漸次、短くすることができる。
さらに、ケーブル配索体40の曲げ返し部40aは、保持部材90が前方へ向かうほど、曲率半径が小さくなる。
【0120】
このため、電線配索構造は、傾斜部分815aとケーブル配索体40との接触によって保持部材90の進退が阻害されることがない。
よって、電線配索構造は、保持部材90のスムーズな進退を阻害することなく、収容ケース80の小型化を図ることができる。
【0121】
また、収容ケース80は、基部816よりも後方において、前後方向Xに沿って配索されたケーブル配索体40の厚み方向で対向する上面部814及び底面部815が設けられている。この上面部814及び底面部815のうち、底面部815は、他の部分よりも上面部814に近接したものである。
【0122】
この構成によれば、電線配索構造は、基部816よりも後方において、厚み方向における収容ケース80の大きさを小さくすることができる。このため、電線配索構造は、ケーブル配索体40の損傷を抑えて、収容ケース80の小型化をより図ることができる。
【0123】
また、基部816は、収容ケース80の前後方向Xにおける中間位置に配置されたものである。
この構成によれば、電線配索構造は、前後方向Xにおける収容ケース80の一端近傍に基部816を設けた場合に比べてケーブル配索体40の全長を短くできるため、重量増加を抑えることができる。
【0124】
また、ケーブル配索体40は、収容ケース80の内部において、厚み方向が略鉛直方向(上下方向)となるように配置されたものである。
この構成によれば、例えば複数のフレキシブルフラットケーブル41を厚み方向に積層する場合であっても、電線配索構造は、水平方向(幅方向Y)における収容ケース80の長さを一定にできる。
【0125】
これにより、電線配索構造は、複数のフレキシブルフラットケーブル41を収容ケース80に収容する場合であっても、水平方向における収容ケース80の大型化を抑えられるため、車室内のレイアウトの自由度が損なわれることを防止できる。
【0126】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の車体側電線は、実施形態の車体側ワイヤーハーネス6に対応し、
以下同様に、
シート側電線は、シート側ワイヤーハーネス7に対応し、
帯状電線は、フレキシブルフラットケーブル41に対応し、
長手方向は、前後方向Xに対応し、
傾斜壁部は、傾斜部分815aに対応し、
対向面部は、上面部814に対応し、
一対の側壁部は、上面部814及び底面部815に対応し、
基部側の側壁部は、底面部815に対応し、
保持部材側の側壁部は、上面部814に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0127】
例えば、上述した実施形態において、一方の固定レール2に隣接して給電装置5を配置したが、これに限定せず、他方の固定レール2に隣接して給電装置5を配置してもよい。あるいは、左右の固定レール2にそれぞれ給電装置5を配置してもよい。
【0128】
また、幅方向Yに厚みを有する収容ケース80の内部に、フレキシブルフラットケーブル41の厚み方向が上下方向となるように、ケーブル配索体40を配置したが、これに限定しない。
例えば、上下方向に厚みを有する収容ケースの内部に、フレキシブルフラットケーブル41の厚み方向が幅方向Yとなるように、ケーブル配索体40を配置した構成であってもよい。この場合、収容ケースの上面または側面に、保持部材がスライド移動する開口部を形成する。
【0129】
これによれば、収容ケースの内部において、フレキシブルフラットケーブル41の厚み方向が幅方向Yとなるように、ケーブル配索体40が配置されるため、電線配索構造は、例えば複数のフレキシブルフラットケーブル41を厚み方向に積層する場合であっても、鉛直方向(上下方向)における収容ケースの長さを一定にできる。
【0130】
これにより、電線配索構造は、複数のフレキシブルフラットケーブル41を収容ケースに収容する場合であっても、鉛直方向における収容ケースの大型化を抑えられるため、車室内のレイアウトの自由度が損なわれることを防止できる。
【0131】
また、上方へ向けて開口した開口部80aを有する収容ケース80としたが、これに限定せず、略水平方向、すなわち幅方向Yの一方側へ向けて開口した開口部を有する収容ケースであってもよい。
【0132】
これによれば、電線配索構造は、例えば上方へ向けて開口した開口部に比べて、収容ケースの内部への上方からの異物の侵入を抑えることができる。このため、電線配索構造は、収容ケースの内部において、異物との摺動によるケーブル配索体40の損傷を抑えることができる。
【0133】
また、第1ワイヤーハーネス20及び第2ワイヤーハーネス60を、複数の被覆電線で構成したが、これに限定せず、接続端子を介してケーブル配索体40と接続可能であれば、第1ワイヤーハーネスまたは/および第2ワイヤーハーネスをフレキシブルフラットケーブルなどで構成してもよい。
【0134】
また、複数のフレキシブルフラットケーブル41を積層したケーブル配索体40を、収容ケース80の内部に配索したが、これに限定せず、少なくとも1枚のフレキシブルフラットケーブル41を、収容ケース80の内部に配索した構成であってもよい。
【0135】
また、フレキシブルフラットケーブル41を用いて説明したが、これに限定せず、帯状電線であれば、断面丸形の被覆電線を並置したリボンケーブル(フラットケーブルともいう)などであってもよい。
また、保持部材90がスライダ3に連結された給電装置5としたが、これに限定せず、保持部材がスライドシート4の下面に連結された給電装置であってもよい。
【0136】
また、ケーブル配索体40が、U字状の状態で収容ケース80の内部に配索された構成としたが、これに限定せず、ケーブル配索体40がZ字状の状態で収容ケース80の内部に配索された構成であってもよい。
【0137】
具体的には、別の実施形態における給電装置の側面図を示す
図7のように、収容ケース80の内部において、ケーブル配索体40が、基部816から収容ケース80の下部を通って前後方向Xと略平行に前方へ向けて配索されたのち、上方後方へ向けて曲げ返されている。
【0138】
さらに、ケーブル配索体40は、上方後方へ向けて曲げ返された第1曲げ返し部40cから後方へ延びる部分が、収容ケース80の上下方向の略中央を通って前後方向Xと略平行に配索されたのち、上方前方へ向けて曲げ返されている。
【0139】
そして、ケーブル配索体40は、上方前方へ向けて曲げ返された第2曲げ返し部40dから前方へ向けて延びる部分が保持部材90に保持された構成であってもよい。
【0140】
この場合、ケース側曲げ規制部817は、上述の実施形態と同様に、第1曲げ返し部40cで曲げ返されたケーブル配索体40の基部816側において、ケーブル配索体40の第1曲げ返し部40cへ向けて突出した円弧面で形成する。
一方、保持部材側曲げ規制部94は、第2曲げ返し部40dで曲げ返されたケーブル配索体40の保持部材90側において、ケーブル配索体40の第2曲げ返し部40dに向かう方向、すなわち後方へ向けて突出した略半円状の円弧面を後面に有する形状に形成する。
【0141】
これによれば、後方へ向けて保持部材90が移動した際、電線配索構造は、ケース側曲げ規制部817及び保持部材側曲げ規制部93により、第1曲げ返し部40c及び第2曲げ返し部40dの曲率半径が極端に小さくなることを防止できる。
【0142】
あるいは、後方へ向けて保持部材90が移動した際、電線配索構造は、基部816及び保持部材90近傍を起点にケーブル配索体40が折れ曲がることを防止できる。
これにより、電線配索構造は、スライドシート4の進退に伴うケーブル配索体40の損傷をより抑えることができるとともに、ケーブル配索体40の導電性を安定して確保することができる。
【0143】
また、収容ケース80の開口部80aを1つの保持部材90がスライド移動する構成としたが、これに限定せず、収容ケース80の開口部80aを複数の保持部材90がスライド移動する構成であってもよい。
【0144】
具体的には、別の実施形態における給電装置の側面図を示す
図8のように、前後方向Xに所定間隔を隔てて離間した第1の保持部材90a及び第2の保持部材90bが、収容ケース80の開口部80aを前後方向Xに沿って進退可能に支持された構成でであってもよい。
【0145】
この場合、第1の保持部材90aは、一端が基部816に保持された第1のケーブル配索体42を保持している。一方、第2の保持部材90bは、一端が基部816に保持された第2のケーブル配索体43を保持している。
【0146】
なお、第1のケーブル配索体42は、上述した実施形態と同様に、基部816から収容ケース80の下部を通って前後方向Xと略平行に前方へ向けて配索されたのち、上方後方へ向けて曲げ返されている。
【0147】
一方、第2のケーブル配索体43は、基部816から収容ケース80の下部を通って前後方向Xと略平行に前方へ向けて配索されたのち、第1のケーブル配索体42よりも後方の位置で、上方後方へ向けて曲げ返されている。
【0148】
これによれば、少なくとも1枚のフレキシブルフラットケーブル41を保持する第1の保持部材90a及び第2の保持部材90bにより、電線接続構造は、1つの収容ケース80に収容された複数のフレキシブルフラットケーブル41を、前後方向Xの異なる位置に配置されたシート側ワイヤーハーネスに接続することができる。
【0149】
例えば、1つのスライドシートに追従して進退可能な第1の保持部材90a及び第2の保持部材90bとした場合、電線配索構造は、スライドシートの前脚近傍に設けたシート側ワイヤーハーネスと、スライドシートの後脚近傍に設けたシート側ワイヤーハーネスとに、1つの収容ケース80に収容された複数のフレキシブルフラットケーブル41を接続することができる。
【0150】
あるいは、固定レール2に配置された2つのスライドシートの一方に追従して進退可能な第1の保持部材90aと、他方のスライドシートに追従して進退可能な第2の保持部材90bとした場合、電線配索構造は、1つの収容ケース80に収容された複数のフレキシブルフラットケーブル41を、一方のスライドシートに設けたシート側ワイヤーハーネスと、他方のスライドシートに設けたシート側ワイヤーハーネスとに接続することができる。
【0151】
これにより、電線配索構造は、複数の収容ケースを複数設けることなく、前後方向Xの異なる位置に配置されたシート側ワイヤーハーネスに電気を供給することができる。このため、電線配索構造は、車室内の限られたスペースが複数の収容ケースによって圧迫されることを防止できる。
【符号の説明】
【0152】
2…固定レール
4…スライドシート
6…車体側ワイヤーハーネス
7…シート側ワイヤーハーネス
40a…曲げ返し部
40b…引出部分
40c…第1曲げ返し部
40d…第2曲げ返し部
41…フレキシブルフラットケーブル
80…収容ケース
80a…開口部
90…保持部材
90a…第1の保持部材
90b…第2の保持部材
93,94…保持部材側曲げ規制部
814…上面部
815…底面部
815a…傾斜部分
816…基部
817…ケース側曲げ規制部
X…前後方向