(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152947
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物及びこれを用いた配線材
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20221004BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20221004BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20221004BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20221004BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20221004BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20221004BHJP
H01B 7/295 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L23/26
C08K3/22
C08K3/34
C08K9/04
H01B7/02 Z
H01B7/295
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055915
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
(72)【発明者】
【氏名】水野 晃一
(72)【発明者】
【氏名】白井 友之
【テーマコード(参考)】
4J002
5G309
5G315
【Fターム(参考)】
4J002BB053
4J002BB061
4J002BB073
4J002BB143
4J002BB212
4J002DE146
4J002DJ037
4J002EN138
4J002FB087
4J002FD136
4J002FD137
4J002FD138
4J002GQ01
5G309RA04
5G309RA07
5G309RA12
5G315CA03
5G315CB02
5G315CD02
5G315CD03
5G315CD13
(57)【要約】
【課題】難燃性及び機械特性に優れた成形体を成形可能とするノンハロゲン系難燃性樹脂組成物、及びこの組成物で形成された被覆層を有する配線材を提供する。
【解決手段】MFRが2~15g/10minであるエチレン酢酸ビニル共重合体を60~100質量%、酸変性ポリオレフィン重合体を20質量%以下、及びαオレフィン重合体を20質量%以下含有するベース樹脂100質量部に対して、金属水和物を100~250質量部、粘土鉱物及び4級アンモニウム塩を合計量で2~30質量部含有し、かつMFRが0.3g/10min以上であるノンハロゲン系難燃性樹脂組成物、及びこの組成物で形成された被覆層を導体の外周面上に有する配線材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレート(測定温度190℃、荷重2.16kg)が2~15g/10minであるエチレン酢酸ビニル共重合体を60~100質量%、酸変性ポリオレフィン重合体を20質量%以下、及びαオレフィン重合体を20質量%以下含有するベース樹脂100質量部に対して、
金属水和物を100~250質量部、粘土鉱物及び4級アンモニウム塩を合計量で2~30質量部含有し、かつ
メルトフローレート(測定温度190℃、荷重10kg)が0.3g/10min以上である、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
前記αポリオレフィン重合体が、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも1種を含む、請求項1に記載のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸変性ポリオレフィン重合体が、無水マレイン酸変性ポリエチレン、アクリル酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン及びアクリル酸変性ポリプロピレンの少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
導体の外周面上に被覆層を有する配線材であって、
前記被覆層が請求項1~3のいずれか1項に記載のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で形成されている、配線材。
【請求項5】
前記配線材が絶縁電線又は電力ケーブルである、請求項4に記載の配線材。
【請求項6】
前記配線材が光ケーブルである、請求項4又は5に記載の配線材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物及びこれを用いた配線材に関する。
【背景技術】
【0002】
配線材(絶縁電線若しくはケーブル、(電気)コード、光ファイバコード、光ケーブル等)は、電力の輸送や情報の伝達に用いられる。特に、情報伝達には、伝送容量の大きさ、伝送ロスの少なさから光ファイバを用いた伝送が主流となっている。光ファイバの中でも、遠距離での大容量伝送には多数の光ファイバ心線若しくは光ファイバテープ心線を収めた多芯の光ファイバケーブル(光ケーブルともいう。)が用いられる。例えば、情報を一括管理するデータセンタが各地に建設され稼働しており、そこで扱われる情報量は膨大なものになっているため、データセンタ間の情報伝達には多芯の光ケーブルが用いられる。また、データセンタ内におけるデータサーバ間の情報伝達も、同様に、光ケーブルが用いられる。
これらの配線材は、通常、導体若しくはファイバ芯線等の外周面に種々の樹脂組成物で形成された被覆層を設けて、導体若しくはファイバ芯線を保護するとともに、電気絶縁性を確保している。また、データセンタ等の家屋内に配設される配線材、特に光ケーブルには、火災時の延焼を防ぐ目的で、難燃性樹脂組成物で形成した被覆層を有する難燃性の配線材が必要とされる。更に、火災時には延焼を防ぐだけでなく、人的な被害を防止する目的で低発煙かつ有毒ガスの発生が少ないとされる、ハロゲンを含有する難燃剤を含有しないノンハロゲン系難燃材の使用が推奨されている。
このような被覆層は、難燃剤としてノンハロゲン系難燃剤や金属水和物、更に各種添加剤を含有する樹脂組成物が検討されている。例えば、特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂に、特定量の脂肪酸系処理剤及びシランカップリング剤で表面処理された金属水酸化物を添加したノンハロゲン難燃性樹脂組成物において、上記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、上記金属水酸化物を150~300質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.5~10質量部、硫黄系酸化防止剤を0.2~5質量部添加して形成されたノンハロゲン難燃性樹脂組成物が記載されている。また、特許文献2には、「ベース樹脂100質量部に対して、粘土鉱物及び4級アンモニウム塩を合計量で2~15質量部含有する樹脂組成物であって、ベース樹脂が、酸変性ポリオレフィン樹脂を10~30質量%、前記酸変性ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂(X)を70~90質量%含む、樹脂組成物」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-084524号公報
【特許文献2】特開2020-164695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物は、難燃剤の種類、難燃性発現機構等にもよるが、通常は、難燃剤を多量に含有させて所定の難燃性を発現させている。そのため、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物は、溶融粘度が高くなり、過度な負荷をかけなければ配線材の製造(成形)が難しく(成形性に劣る)、製造できたとしても所定の形状及び寸法を実現できない。また、難燃剤として金属水酸化物を多量に含有させると、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で形成した被覆層の機械特性、特に機械強度が低下して、配線材の要求特性を満足できなくなる。
このように、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物としての成形性と、その成形体としての難燃性及び機械特性とはトレードオフの関係にあり、その両立が望まれている。しかし、特許文献1及び特許文献2では、この観点からの検討はなされていない。
【0005】
本発明は、難燃性及び機械特性に優れた成形体を成形可能とするノンハロゲン系難燃性樹脂組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、上記ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物を用いて難燃性及び機械特性に優れた被覆層を形成した、配線材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物について鋭意検討したところ、ノンハロゲン系難燃剤、及び金属水酸化物等の金属水和物の種類(組み合わせ)や含有量の設定のみでは、成形性と難燃性及び機械特性とをバランスよく両立できないとの結論に達した。そのため、引き続いて検討を進めたところ、金属水和物に対して粘土鉱物及び4級アンモニウム塩からなるノンハロゲン系難燃剤を併用したうえで、特定のメルトフローレート(MFR)を示すエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベース樹脂と混合することにより、成形性と難燃性及び機械特性とを両立しうるとの着想を得た。この着想に基づいて、更に検討を重ねた結果、金属水和物、上記ノンハロゲン系難燃剤及びベース樹脂としてエチレン酢酸ビニル共重合体を特定の割合で含有させることにより、成形性と難燃性及び機械特性とをバランスよく両立でき、機械特性及び難燃性に優れた配線材(被覆層)を高い生産性で(高い成形性を実現しつつ)製造できることを見出した。
本発明者らはこの知見に基づき更に研究を重ね、本発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、本発明の課題は以下の手段によって達成された。
<1>メルトフローレート(測定温度190℃、荷重2.16kg)が2~15g/10minであるエチレン酢酸ビニル共重合体を60~100質量%、酸変性ポリオレフィン重合体を20質量%以下、及びαオレフィン重合体を20質量%以下含有するベース樹脂100質量部に対して、
金属水和物を100~250質量部、粘土鉱物及び4級アンモニウム塩を合計量で2~30質量部含有し、かつ
メルトフローレート(測定温度190℃、荷重10kg)が0.3g/10min以上である、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物。
<2>前記αポリオレフィン重合体が、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも1種を含む、<1>に記載のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物。
<3>前記酸変性ポリオレフィン重合体が、無水マレイン酸変性ポリエチレン、アクリル酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン及びアクリル酸変性ポリプロピレンの少なくとも1種を含む、<1>又は<2>に記載のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物。
<4>導体の外周面上に被覆層を有する配線材であって、
前記被覆層が上記<1>~<3>のいずれか1項に記載のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で形成されている、配線材。
<5>前記配線材が絶縁電線又は電力ケーブルである、<4>に記載の配線材。
<6>前記配線材が光ケーブルである、<4>又は<5>に記載の配線材。
【0008】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物は、過度な負荷をかけることなくスムーズな成形を可能とする高い成形性を実現しながらも、難燃性及び機械特性に優れた被覆層(成形体)を形成できる。また、本発明の配線材は、上記ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物を用いて形成した、難燃性及び機械特性に優れた被覆層を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本発明の光ケーブルの一態様の構造を表す断面図である。
【
図2】
図2は本発明の光ケーブルの別の一態様の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物]
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物は、MFR(測定温度190℃、荷重2.16kg)が2~15g/10minであるエチレン酢酸ビニル共重合体を60~100質量部、酸変性ポリオレフィン重合体を20質量部以下、及びαオレフィン重合体を20質量部以下含有するベース樹脂100質量部と、金属水和物100~250質量部と、粘土鉱物及び4級アンモニウム塩(合計量で)2~30質量部とを含有する樹脂組成物であって、0.3g/10min以上のMFR(測定温度190℃、荷重10kg)を示す。これにより、特定の割合(含有量)で含有する上記各成分が相乗的に各機能を果たして上記MFRを発現し、その結果、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物に、優れた成形性と、高い難燃性と、優れた機械特性(特に高い機械強度)とをバランスよく発現させることができる。なお、本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物は、ハロゲン系難燃剤及び難燃助剤を含有しないため、これらに由来する発煙、有毒ガスの発生を抑制できる。
そのため、本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物を用いると、高い難燃性と優れた機械特性(特に高い機械強度)とを示す被覆層、更にこの被覆層を備えた配線材を、高い生産性で(過度な負荷をかけることなくスムーズな成形を可能とする高い成形性を実現しつつ)製造することができる。このように、本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物は、(押出)成形用組成物として好適であり、更に配線材の被覆層形成材料(押出被覆層形成材料)として好適である。
【0012】
本発明のノンハロゲン系樹脂組成物は、0.3g/10min以上のMFR(測定温度190℃、荷重10kg)を示し、優れた成形性を発現する。本発明のノンハロゲン系樹脂組成物が示すMFR(測定温度190℃、荷重10kg)は、成形性の更なる改善の点で、0.5g/10min以上であることが好ましく、0.75g/10min以上であることがより好ましい。一方、MFRの上限は、(特に難燃性試験における垂れを防止して)難燃性の低下を抑制できる点で、2.5g/10min以下であることが実際的であり、1.5g/10min以下であることが好ましく、優れた難燃性を維持できる点で、1.0g/10min以下であることがより好ましい。
ノンハロゲン系樹脂組成物のMFRは、ノンハロゲン系樹脂組成物が含有する成分、特にベース樹脂、金属水和物の種類及び含有量、更には滑剤成分、粘土鉱物及び4級アンモニウム塩の種類及び含有量等により、適宜に調整できる。例えば、ベース樹脂中のエチレン酢酸ビニル共重合体の含有量を多くすると、エチレン酢酸ビニル共重合体のMFRを高くすると、更には高いMFRを示す共重合体の含有量を多くすると、ノンハロゲン系樹脂組成物のMFRを大きくすることができる。
本発明において、共重合体又は樹脂組成物のMFRは、日本産業規格(JIS) K 7210-1に規定の方法に基づき、測定温度190℃、荷重10kg又は2.16kgの条件で計測した値とする。
【0013】
以下に、本発明に用いる各成分及び含有量について説明する。
<ベース樹脂>
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物又はその成形体のベースとなるベース樹脂は、MFR(測定温度190℃、荷重2.16kg)が2~15g/10minであるエチレン酢酸ビニル共重合体60~100質量部と、酸変性ポリオレフィン重合体20質量部以下と、αオレフィン重合体20質量部以下とを含有する。
【0014】
(エチレン酢酸ビニル共重合体)
エチレン酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体(通常樹脂)であればよく、エチレン成分及び酢酸ビニル成分が交互に重合してなる交互共重合体であってもよく、また、エチレン成分の重合ブロック及び酢酸ビニル成分の重合ブロックが結合してなるブロック共重合体でもよく、更にエチレン成分及び酢酸ビニル成分がランダムに重合しているランダム共重合体であってもよい。
【0015】
エチレン酢酸ビニル共重合体は、上記測定方法によるMFR(測定温度190℃、加重2.16kg)が2g/10分以上の共重合体を用いる。これにより、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物のMFRを上記範囲に調整して優れた成形性の実現に寄与できる。エチレン酢酸ビニル共重合体のMFRは、成形性、難燃性及び機械特性をバランスよく鼎立できる点で、2~15g/10minであり、上記特性を高い水準でバランスよく鼎立できる点で、3~10g/10minであることが好ましく、4~10g/10minであることがより好ましい。
上記組成及びMFRを示すノンハロゲン系難燃性樹脂組成物にベース樹脂としてエチレン酢酸ビニル共重合体を後述する特定の含有量で含有させることにより、金属水和物を含有していても組成物のMFRを大きくして成形性を改善できるうえ、難燃性及び機械特性をも改善できる。
【0016】
エチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量(VA量ともいう。)は、特に制限されず、この共重合体のMFR、更には成形性、難燃性及び機械特性を考慮して適宜に決定される。例えば、本発明において、VA量は、エチレン酢酸ビニル共重合体中、20~35質量%であることが好ましく、25~30質量%であることがより好ましい。エチレン酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量はJIS K 7192に準拠して求めることができる。
【0017】
ベース樹脂として含有するエチレン酢酸ビニル共重合体は1種でよく2種以上でもよい。
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物(ベース樹脂)が2種以上のエチレン酢酸ビニル共重合体を含有する場合、すべてのエチレン酢酸ビニル共重合体が上記範囲の酢酸ビニル含有量、更には上記範囲のVA量を満たすことが好ましいが、酢酸ビニル含有量又はVA量を満たさないエチレン酢酸ビニル共重合体を含有していてもよい。この場合、エチレン酢酸ビニル共重合体全体として上記範囲の酢酸ビニル含有量、更には上記範囲のVA量を満たすことが好ましい。
【0018】
エチレン酢酸ビニル共重合体の含有量は、ベース樹脂100質量%中において、60~100質量%であり、成形性を維持しながらも難燃性及び機械特性を高い水準で両立できる点で、65~90質量%であることが好ましく、75~85質量%であることがより好ましい。
【0019】
(酸変性ポリオレフィン重合体)
酸変性ポリオレフィン重合体としては、後述するポリオレフィン重合体を不飽和カルボン酸化合物(単に不飽和カルボン酸ともいう。)又はその無水物により変性した重合体(通常、樹脂)を、好適に用いることができる。
上記組成及びMFRを示すノンハロゲン系難燃性樹脂組成物にベース樹脂として酸変性ポリオレフィン重合体を後述する特定の含有量で含有させることにより、優れた成形性及び難燃性を維持しながらも機械特性、特に機械強度を強化できる。
【0020】
酸変性されるポリオレフィン重合体としては、αオレフィンの重合体であれば特に限定されず、例えば後述するαオレフィン重合体が挙げられ、機械特性の強化の点で、ポリエチレン又はポリプロピレンが好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂を形成するポリオレフィン重合体は1種でも2種以上でもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂を形成する不飽和カルボン酸(無水物を含む。)としては、特に制限されず、上記ポリオレフィン重合体と反応(例えばラジカル付加反応)しうる不飽和結合を有するカルボン酸が好適に挙げられる。この不飽和カルボン酸は、カルボキシ基を1つ有するものでも2つ以上有するものでもよい。好ましい不飽和カルボン酸としては、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、及びフマル酸、並びにこれらの金属塩若しくは有機塩、更には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸等の不飽和カルボン酸無水物等が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
酸変性ポリオレフィン重合体は、上記ポリオレフィン重合体に対して不飽和カルボン酸の不飽和基が反応して、不飽和カルボン酸由来の基を、通常は側鎖(ペンダント鎖、グラフト鎖等)として有する。
【0021】
酸変性ポリオレフィン重合体は、粘土鉱物との親和性の観点から、無水マレイン酸若しくはアクリル酸によって変性された、ポリエチレン若しくはポリプロピレンの少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物において、酸変性ポリオレフィン重合体として、無水マレイン酸変性ポリエチレン、アクリル酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン及びアクリル酸変性ポリプロピレンの少なくとも1種を含むことが好ましい。中でも、機械特性(機械強度)の改善効果が高い点で、無水マレイン酸変性ポリエチレンが好ましい。
酸変性ポリオレフィン重合体における不飽和カルボン酸による変性量は、特に限定されないが、(変性前の)ポリオレフィン重合体に対して、0.1~2.0質量%が好ましく、0.2~1.0質量%がより好ましい。
【0022】
酸変性ポリオレフィン重合体は、適宜に合成してもよく、市販品を用いてもよい。酸変性ポリオレフィン重合体を合成する場合、通常、ポリオレフィン重合体と不飽和カルボン酸を有機過酸化物の存在下で、有機過酸化物の分解温度以上の温度で加熱混合することにより、ポリオレフィン重合体を変性(不飽和カルボン酸と反応)させて、得ることができる。
【0023】
ベース樹脂として含有する酸変性ポリオレフィン重合体は1種でよく2種以上でもよい。
酸変性ポリオレフィン重合体の含有量は、ベース樹脂100質量%中において、20質量%以下であり、成形性及び難燃性を維持しながらも機械特性、特に機械強度を高めることができる点で、5~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましく、8~12質量%であることが更に好ましい。
【0024】
(αオレフィン重合体)
αオレフィン重合体は、エチレン性不飽和結合を末端に有するαオレフィン化合物(通常、末端にエチレン性不飽和結合を有するアルケン)を単独重合又は共重合して得られる重合体(通常、樹脂)であって、酸変性されていないものであれば、特に限定されるものではなく、従来、公知の重合体を用いることができる。本発明において、酸変性されていないとは、αオレフィン重合体の変性量が0質量%である態様に加えて、上記酸変性ポリオレフィン重合体と区別可能な程度(例えば、変性量が0.1質量%未満)に酸変性されている態様を包含する。
本発明に好ましく用いられるαオレフィン重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、酸共重合成分(酸エステル共重合成分を含む。)を有する共重合体等の各樹脂が挙げられる。
【0025】
ベース樹脂として含有するαオレフィン重合体は1種でよく2種以上でもよい。本発明においては、αオレフィン重合体として、ポリエチレンとポリプロピレンとを併用することが好ましい。
αオレフィン重合体の合計含有量は、ベース樹脂100質量%中において、20質量%以下であり、良好な成形体表面性を得られる温度幅を広くできる点で、5~20質量%であることが好ましく、燃焼特性への影響を考慮すると5~15質量%であることがより好ましい。
【0026】
- ポリエチレン -
ポリエチレンは、エチレン構成成分を含む重合体であればよく、エチレンの単独重合体(ホモポリエチレン)、エチレンとエチレン以外のαオレフィン(好ましくは5mol%以下)との共重合体(エチレン-αオレフィン共重合体)(後述のポリプロピレンに該当するものを除く。)、並びに、エチレンと官能基に炭素原子、酸素原子及び水素原子だけを持つ非オレフィン(好ましくは1mol%以下)との共重合体を包含する。なお、上述のα-オレフィン及び非オレフィンはポリエチレンの共重合成分として従来用いられる公知のものを特に制限されることなく用いられる。例えば、αオレフィンとしては、特に限定されないが、炭素数3~12のαオレフィン(具体的には、1-プロピレン、1-ブテン、1-へキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン又は1-ドデセン)が挙げられる。
エチレン-αオレフィン共重合体としては、好ましくは、エチレンと上記炭素数3~12のαオレフィンとの共重合体(後述するポリプロピレンに該当するものを除く。)が挙げられる。
【0027】
ポリエチレンとしては、エチレンの単独重合体、エチレン-αオレフィン共重合体が好ましく、中でも、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)又は超低密度ポリエチレン(VLDPE)がより好ましく、直鎖型低密度ポリエチレンが特に好ましい。
【0028】
ベース樹脂として含有するポリエチレンは1種でよく2種以上でもよい。
ポリエチレンの含有量は、αオレフィン重合体の上記合計含有量を考慮して適宜に決定される。例えば、ベース樹脂100質量%中において、20質量%以下であり、燃焼性に悪影響を与えない範囲で特に押出温度幅を広くできる点で、0~15質量%以下であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましく、8~10質量%であることが更に好ましい。
【0029】
- ポリプロピレン -
ポリプロピレンは、主成分としてプロピレン構成成分を含む重合体を含むものであればよく、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体等を包含する。
エチレン-プロピレンランダム共重合体は、エチレン成分の含有量が1~10質量%程度のものをいい、エチレン成分がプロピレン鎖中にランダムに取り込まれているものをいう。ここで、エチレン成分含有量はASTM D3900に記載の方法に準拠して測定される値である。また、エチレン-プロピレンブロック共重合体は、エチレンやエチレン-プロピレンゴム(EPR)成分の含有量が5~20質量%程度のものをいい、プロピレン成分の中にエチレンやEPR成分が独立して存在する海島構造であるものをいう。
【0030】
ポリプロピレンとしては、押出表面性の点で、エチレン-プロピレンランダム共重合体が好ましい。
【0031】
ベース樹脂として含有するポリプロピレンは1種でよく2種以上でもよい。
ポリプロピレンの含有量は、αオレフィン重合体の上記合計含有量を考慮して適宜に決定される。例えば、ベース樹脂100質量%中において、15質量%以下であり、燃焼性に悪影響を与えない範囲で押出表面性を改善できる点で、0~15質量%以下であることが好ましく、2~12質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることが更に好ましい。
αオレフィン重合体としてポリエチレンとポリプロピレンとを含有する場合、ポリエチレンの上記含有量とポリプロピレンの上記含有量との比[ポリエチレンの上記含有量/ポリプロピレンの上記含有量]は、適宜に決定されるが、例えば、0.5~3であることが好ましく、0.8~1.2であることがより好ましい。
【0032】
- 酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体 -
酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体を構成する酸共重合成分は、主鎖に組み込まれており、この点で、上記の酸変性ポリオレフィン重合体とは異なる。酸共重合成分としては、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸等のカルボン酸化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸アルキルのアルキル基は、炭素数1~12のものが好ましい。酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体としては、例えば、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体等が挙げられる。
【0033】
ベース樹脂として含有する酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体樹脂は1種でよく2種以上でもよい。
酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体の含有量は、αオレフィン重合体の上記合計含有量を考慮して適宜に決定される。例えば、ベース樹脂100質量%中において、20質量%以下であり、0~10質量%以下であることが好ましい。
【0034】
<金属水和物>
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物は金属水和物を含有する。
金属水和物としては、樹脂組成物にフィラーとして通常用いられるものを特に制限されることなく用いることができる。
このような金属水和物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の水酸基若しくは結晶水を有する化合物のような金属水和物が挙げられる。
【0035】
金属水和物は、シランカップリング剤等で表面処理した金属水和物を使用することができる。例えば、キスマ5L、キスマ5P(いずれも商品名、水酸化マグネシウム、協和化学工業社製等)が挙げられる。シランカップリング剤による金属水和物の表面処理量は、特に限定されないが、例えば3質量%以下であることが好ましい。
金属水和物は、通常、粉体若しくは粒子として含有される。このときの平均粒径は、特に制限されないが、0.2~10μmが好ましい。平均粒径が上記範囲内にあると、2次凝集を抑制できる。平均粒径は、無機フィラーをアルコールや水で分散させて、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置等の光学式粒径測定器によって求められる。
【0036】
金属水和物は、上記した中でも、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物が好ましく、燃焼時に殻を形成する能力が高く、高度な難燃性を発揮する点で水酸化マグネシウムが好ましい。一方、本発明は、金属水和物を後述する粘土鉱物及び4級アンモニウム塩を含む難燃助剤及び特定のベース樹脂と併用することにより、成形性及び機械特性を維持しながらも高い難燃性を実現可能とする。そのため、金属水和物として燃焼時の殻形成能が水酸化マグネシウムよりも劣る水酸化アルミニウムを含有していても、その低い殻形成能を補強して、目的とする高い難燃性を実現できる。すなわち、本発明によれば、殻形成能が劣る水酸化アルミニウムを用いた場合に低下しやすい難燃性を逆に高めることができ、高い難燃性向上効果を発揮する。この点で、本発明においては、金属水和物として安価で汎用性の高い水酸化アルミニウムを好ましく用いることができる。
【0037】
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物が含有する金属水和物は1種でも2種以上でもよい。
金属水和物の、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物中の含有量は、ベースゴム100質量部に対して、100~250質量部である。この範囲であれば金属水和物の含有による機械特性の低下を抑制できる。含有量の下限は、機械特性及び成形性を維持しながら高い難燃性を可能とする点で、120質量%以上であることが好ましく、140質量%以上であることがより好ましく、160質量%以上であることが更に好ましい。一方、上限は、組成物のMFRを低下させて成形性を悪化させることを抑制できる点で、220質量%以下であることが好ましく、200質量%以下であることがより好ましく、180質量%以下であることが更に好ましい。
【0038】
<粘土鉱物及び4級アンモニウム塩>
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物は、粘土鉱物及び4級アンモニウム塩を含有している。互いに共存している粘土鉱物及び4級アンモニウム塩は、ベース樹脂及び金属水和物と共働してノンハロゲン系難燃性樹脂組成物の難燃性を高める。特に、ベース樹脂として高い含有量で上記エチレン酢酸ビニル共重合体を採用しても、この共重合体の含有によるノンハロゲン系難燃性樹脂組成物の難燃性の低下(殻形成能の低下)を補強して、優れた難燃性(例えば、後述する実施例における難燃性試験における垂れ落ち防止作用)を維持できる。更に機械特性の改善も可能となる。
粘土鉱物及び4級アンモニウム塩がノンハロゲン系難燃性樹脂組成物及びその成形体(被覆層)中において、含有若しくは存在する形態は、特に制限されず、例えば、それぞれ単独で含有若しくは存在している形態、混合物や複合体を形成して含有若しくは存在する形態、これらの態様が併存する態様が挙げられる。ここで、混合物や複合体は、粘土鉱物と4級アンモニウム塩とで形成されたものをいい、粘土鉱物と、4級アンモニウム塩を構成するイオンとで形成されていてもよい。このような混合物や複合体としては、例えば、通常の条件で粘土鉱物を4級アンモニウム塩で処理して得られるものが挙げられ、具体的には、BYK-MAX CT 4260(商品名、BYK社製)、RXG7581(商品名、BYK社製、ジアルキルジメチルアンモニウム塩(CAS.61789-80-8)で処理されたベントナイト)、クニピアF、クニピアG、クニピアG4、クニピアG10(いずれも、商品名、クニミネ工業社製)等が挙げられる。
【0039】
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物が含有する粘土鉱物及び4級アンモニウム塩(混合物若しくは複合体等)は、1種でも2種以上でもよい。
粘土鉱物及び4級アンモニウム塩の、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物中の合計含有量は、ベースゴム100質量部に対して、2~30質量部である。これにより、特定量のベース樹脂及び金属水和物と共働して、成形性、難燃性及び機械特性を鼎立できる。上記合計含有量の下限は、機械特性及び成形性を維持しながら高い難燃性を可能とする点で、8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上であることが更に好ましい。一方、上限は、優れた難燃性及び機械特性を維持しながらも成形性の悪化を抑制できる点で、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。
粘土鉱物と4級アンモニウム塩との含有量の比(粘土鉱物:4級アンモニウム塩、質量比)は、特に制限されないが、例えば90:10~60:40が好ましい。
【0040】
(粘土鉱物)
粘土鉱物は、金属水和物等と共働してノンハロゲン系難燃性樹脂組成物の難燃性向上に寄与する。粘土鉱物は、樹脂組成物に通常使用されているものを特に制限なく使用することができる。主成分としてケイ酸塩鉱物を含む粘土鉱物が好ましく、層状の結晶構造を有するケイ酸塩鉱物を含む粘土鉱物がより好ましい。層状化合物である場合、粘土鉱物はノンハロゲン系難燃性樹脂組成物及びその成形体中において、層状構造(積層状態)が崩壊して構成層が単独で存在していてもよい。粘土鉱物として、具体的には、カオリン鉱物(カオリナイト、ナクライト、デイッカイト、ハロイサイト)、雲母粘土鉱物、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライトなど)及び混合層鉱物等が挙げられる。
ケイ酸塩鉱物は、陽イオンを含んでいることが好ましく、層間に陽イオンを有していることが好ましい。陽イオンは通常Ca+、Na+、K+等の金属カチオンが挙げられる。
粘土鉱物は、天然物であっても、水熱合成、溶融法、固相法等による合成物であってもよい。粘土鉱物は、含まれるケイ酸塩が有する陽イオンの一部が、後述する4級アンモニウム塩に由来する4級アンモニウムカチオンにより置換された物質(例えば複合体)の市販品を用いることもできる。粘土鉱物は、粘土中に含まれた形態でもよい。粘土としては、モンモリロナイトを多く含む酸性白土、ベントナイト、カオリン鉱物を多く含むカオリン等が挙げられ、ベントナイトが好ましい。
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物が含有する粘土鉱物は、1種でも2種以上でもよい。
粘土鉱物の、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物中の含有量は、上記合計含有量を考慮して適宜に決定される。例えば、ベースゴム100質量部に対して1~20質量部とすることができる。
【0041】
(4級アンモニウム塩)
4級アンモニウム塩は、ベース樹脂への粘土鉱物の分散性を高める働きをする。粘土鉱物の分散性をより高める観点からは、粘土鉱物及び4級アンモニウム塩は、予め、混合した混合物又は複合体として、用いることが好ましい。
4級アンモニウム塩は、特に限定されず、例えば、NR4
+X-で表されるものが挙げられる。式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基(-R1OH、R1はアルキレン基を示す。)、-(R2O)nH(R2はアルキレン基を示し、nは1~20の整数である。)、又はアリール基を示す。ただし、4つのRのうち少なくとも1つのRは、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、-(R2O)nH又はアリール基であり、アルキル基が好ましい。Rとして採りうるアルキル基としては、特に制限されないが、炭素数1~20のアルキル基が好ましい。R1又はR2として採りうるアルキレン基としては、特に制限されないが、エチレン基が好ましい。単一の分子が有する複数のRは同一でも異なっていてもよい。nは、1~20の整数が好ましく、1~10の整数がより好ましく、1~5の整数がさらに好ましく、1が特に好ましい。X-はカウンターイオンを示す。X-としては、特に制限されず、各種アニオンが適宜に選択されるが、ハロゲンイオンが好ましく、例えばCl-、Br-等が挙げられる。
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物が含有する4級アンモニウム塩は、1種でも2種以上でもよい。
4級アンモニウム塩の、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物中の含有量は、上記合計含有量を考慮して適宜に決定される。例えば、ベースゴム100質量部に対して0.2~12質量部とすることができる。
【0042】
<その他の重合体>
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物は、上記ベース樹脂を構成する重合体以外の重合体(樹脂、エラストマー、ゴムを問わない)を含有していてもよい。例えば、スチレン系エラストマー、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム等が挙げられる。その他の重合体の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜に決定され、例えばベース樹脂100質量%に対して30質量%以下とすることができる。
【0043】
<その他の添加剤>
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲において、樹脂組成物に一般的に使用される各種の添加剤等を含有することができる。添加剤としては、例えば、難燃助剤、老化防止剤(酸化防止剤)、滑剤、架橋剤、架橋助剤等を挙げることができる。
ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物が含有してもよい各添加剤は1種でも2種以上でもよい。
【0044】
(難燃助剤)
難燃助剤としては、樹脂組成物に通常用いられるものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。難燃助剤としては、例えば、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛等が挙げられる。また、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミニウムウイスカ、塩基性炭酸マグネシウム、タルク、更には、窒化ホウ素、シリカ(結晶質シリカ、非晶質シリカ等)、カーボン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、石英、ホワイトカーボン、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛等も挙げられる。中でも、メラミンシアヌレート及び硫化亜鉛を併用することが好ましい。
難燃助剤の、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物中の(合計)含有量は、本発明の効果を損なわない範囲に設定され、例えば、ベース樹脂100質量部に対して5~100質量部とすることができる。特に、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレートの含有量はベース樹脂100質量部に対して5~50質量部とすることができ、硫化亜鉛の含有量はベース樹脂100質量部に対して1~10質量部とすることができる。
【0045】
(老化防止剤)
老化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン酸化防止剤、フェノール酸化防止剤、硫黄酸化防止剤等が挙げられ、フェノール酸化防止剤が好ましい。
老化防止剤の、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物中の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲に設定され、例えば、ベース樹脂100質量部に対して0.2~10質量部とすることができる。
【0046】
(滑剤)
滑剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン化合物、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド等が挙げられ、シリコーン化合物が好ましい。
滑剤の、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物中の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲に設定され、例えば、ベース樹脂100質量部に対して0.5~10質量部とすることができる。
【0047】
<架橋剤及び架橋助剤>
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物が架橋性組成物である場合、架橋方法に応じて適宜の架橋剤、更には架橋助剤を含有してもよい。本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物に適用可能は架橋方法としては、特に制限されないが、電子線架橋法、化学架橋法が好ましい。化学架橋法としては、例えば、フェノール架橋、アミン架橋、シラン架橋又はパーオキサイド架橋等が挙げられる。各架橋法に用いる架橋剤及び架橋助剤は公知のものを特に制限されることなく用いることができる。
【0048】
<物性ないしは特性>
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物は、架橋樹脂組成物であっても非架橋樹脂組成物であってもよく、用途、要求特性に応じて適宜に選択される。配線材、特に光ケーブルの被覆形成材料として用いる場合、非架橋樹脂組成物であることが好ましい。
(成形性)
上記組成を有する本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物は、0.3g/10min以上のMFR(測定温度190℃、荷重10kg)を発現して、高い成形性を示す。そのため、本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物を用いて成形すると、成形機に過度な負荷をかけることなく、成形機の許容範囲内の負荷でスムーズな成形が可能となる。また、高い成形性を活かして、成形体(被覆層)を形成でき、望ましくは所定の形状及び寸法の成形体を形成できる。
【0049】
(難燃性)
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物、及びその成形体が達成する難燃性は、後述する実施例における難燃性試験において、垂れ落ちがなく、消炎時間が90秒以内という高度の難燃性である。
【0050】
(機械特性)
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物、及びその成形体が達成する引張強度は、用途、要求特性に応じて変動するので一義的ではないが、例えば、5MPa以上であることが好ましく、7~20MPaがより好ましい。破断伸びは、用途、要求特性等に応じて変動するので一義的ではないが、例えば、100%以上が好ましく、150%以上がより好ましく、上限は特に限定されないが、200%程度が実際的である。また、100%モジュラス(100%Mと表記することがある。)は、用途、要求特性に応じて変動するので一義的ではないが、例えば、4MPa以上であることが好ましく、5~10MPaがより好ましい。上記引張強度、破断伸び及び100%モジュラスは、後述する実施例で説明の測定方法により測定した値とする。
【0051】
<ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物の用途>
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物は、上述の優れた特性を示すため、配線材、特に配線材の被覆層を形成する材料として、好適に用いることができる。また、一般的な成型品(シール材、パッキン等)にも適用することができる。このときの成形法は、公知の各種の成形法を特に制限されることなく適用できるが、優れた成形性(MFR)を利用して、押出成形、射出成形が好ましい。
【0052】
<本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物の調製方法>
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物は、ベース樹脂、金属水和物、粘土鉱物、4級アンモニウム塩、適宜にその他の添加物を、溶融混練して、調製できる。
混練方法としては、ゴム若しくは樹脂組成物の調製に通常採用される方法であれば、特に限定されない。例えば、一軸混錬機、二軸混錬機、ロール、バンバリーミキサー、各種のニーダー等の各種混合装置を用いて混合することができる。混練温度や混練時間などの混練条件は、特に限定されず、ベース樹脂の溶融温度以上の温度範囲内で適宜に設定できる。混練温度は、例えば、120~220℃とすることが好ましい。溶融混練により、各成分が均一に分散(混合)された、未架橋又は非架橋の樹脂組成物を得ることができる。
【0053】
各成分の混合において、混練の際には、上記各成分を一度に溶融混練することもできるし、適宜の順で各成分を順次混合することもできる。本発明においては、粘土鉱物と4級アンモニウム塩とは、予めこれらを混合して混合物若しくは複合体としてから、上記各成分と混練することが好ましい。4級アンモニウム塩と粘土鉱物との混合物又は複合体の市販品を使用することもできる。このような混合物又は複合体を、ベース樹脂と混練すると、混練時のせん断力により粘土鉱物の凝集が解かれ、粘土鉱物がより高度に分散した樹脂組成物を得ることができると考えられる。
好ましい調製方法によれば、粘土鉱物と4級アンモニウム塩とを予め混合した(4級アンモニウム塩で処理(混合)した)粘土鉱物と、ベース樹脂及び金属水和物とを上記特定の割合で混合してなる本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物が調製される。
【0054】
[配線材]
以下に、本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で形成した管状成形体を被覆層として用いた配線材について説明する。
本発明の配線材は、導体の外周面上に、本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で形成された被覆層(絶縁層、シース等を含む。)を有している。この配線材は、難燃性及び機械特性、更には配線性に優れる。
本発明の配線材は、導体(光ファイバ心線、光ファイバ心線束等を含む。)の外周面に本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物からなる被覆層を少なくとも1層有していればよく、それ以外の構成は配線材の通常の構成と同様とすることができる。例えば、導体の外周面に少なくとも1層の被覆層を有する絶縁電線、このような絶縁電線若しくはこれら絶縁電線を複数束ねた電線束の外周面に被覆層としてのシースを形成したケーブル等が挙げられる。また、本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物からなる被覆層は、導体の外周面上に直接設けられても、接着層等の他の層を介して間接的に設けられてもよい。被覆層は単層でも複層でもよく、複層である場合少なくとも1層が本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で形成されていればよい。また、ケーブルのシースを本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で形成してもよい。
【0055】
導体としては、配線材に応じた適宜の導体を用いることができる。例えば、適宜に、単線の導体、撚線の導体(抗張力繊維を縦添え若しくは撚り合わせた撚線を含む。)を用いることができる。例えば、絶縁電線等に用いる導体としては、裸線でも錫メッキ若しくはエナメル被覆したものでもよい。導体を形成する金属材料としては軟銅、銅合金、アルミニウム等が挙げられる。導体の外径等は用途等に応じて適宜に決定され、各用途に用いられる通常の配線材と同様に設定できる。例えば0.5~4.0mmとすることができる。
光ケーブルにおける導体としては、上記導体の他に、光ファイバ心線、複数の光ファイバ心線を束ねた光ファイバ心線束、更には複数の上記絶縁電線を束ねた電線束等が挙げられる。
被覆層の厚さ(肉厚)は、用途等に応じて適宜に決定されるが、各用途に用いられる通常の配線材と同様の厚さに設定でき、例えば、絶縁電線等では、通常、0.15~10mm程度に設定される。
【0056】
配線材としては、例えば、絶縁電線若しくはケーブル、(電気)コード、光ファイバコード、光ケーブル等が挙げられる。これらは、電気・電子機器の内部配線若しくは外部配線に使用される配線材、屋内に配設される配線材、屋外に配設される配線材を含む。本発明の配線材は、好ましくは、車両(自動車若しくは鉄道車両等)用絶縁電線若しくはケーブル、通信用電線若しくはケーブル、通信用光ケーブル、又は、電力用電線若しくは電力ケーブルとして用いることができる。特に、データセンタ等に配設される、大容量の情報の伝達に用いる光ケーブル等が好ましい。
本発明の配線材としては、例えば、特許文献1の
図1に示される電線の絶縁体層3を本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で形成した電線、同特許文献2の
図2に示されるケーブルにおいて絶縁体23及び/又はシース24を本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で形成したケーブルを挙げることができる。また、特許文献2の
図1に示される光ケーブルの被覆層20を本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で形成した光ケーブル、同特許文献の
図2に示される光ケーブルの被覆層21を本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で形成した光ケーブルを挙げることができる。
【0057】
配線材が、光ケーブルである場合の一実施形態について
図1を参照しながら説明する。
図1は、光ケーブルの長尺方向に垂直な断面を示す。
図1に示す光ケーブル1は、導体としての光ファイバ心線10と、光ファイバ心線10の周囲(外周面)に本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で形成された被覆層(シース)20とを有する。
光ケーブル1は、上記構成を有していれば、その他の形態は特に限定されず、被覆層20の数、光ファイバ心線10の数、光ファイバ心線10の配置等は用途に応じて適宜設定することができる。被覆層が複層構造を有する場合、少なくとも1層の被覆層が本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物により形成されていればよい。この場合、他の層、例えば中間層は、光ケーブルに通常用いられる樹脂又はその組成物で形成することができる。
光ケーブル1は単心の光ファイバ心線10を有しており、この光ファイバ心線10は通常のものを特に制限されることなく用いることができ、光ファイバ素線そのものでもよく、光ファイバ素線の外周面に絶縁テープの巻回体又は被覆層を有するものでもよい。光ファイバ素線上に被覆層等を有する場合は、上記
図1の構成において、被覆層が複層構造である場合に相当する。光ファイバ心線としては、通常のものを用いることができる。光ファイバ素線は石英ファイバ製の素線が好ましい。
光ケーブル1、光ファイバ芯線10の外径は、用途等に応じて、適宜に設定される。被覆層、特に本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で形成された被覆層20の厚さは、用途等に応じて適宜に設定されるが、本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物が有する優れた特性を発揮する点で0.2~5mmが好ましい。
【0058】
光ケーブル1は、テンションメンバ(
図1において図示しない。)を有していてもよい。テンションメンバは、光ケーブルに通常適用されるものを特に制限されることなく用いることができる。また、テンションメンバの配置数及び位置も、特に制限されず、適宜に設定され、例えば、光ファイバ心線の外周を覆うように配置されていてもよく、光ファイバ心線から離間して配置されていてもよい。
【0059】
図2は、本発明の配線材(光ケーブル)における別の一実施形態について、長尺方向に垂直な断面を示す図である。
この光ケーブル2は、
図1に示されるように、導体としての光ファイバ心線束11と、光ファイバ心線束11の周囲(外周面)に巻回された不織布テープ12と、不織布テープ12の周囲(外周面)に本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で形成されたシース21と、光ファイバ心線束11に沿ってシース21内に埋設された2本のテンションメンバ13とを有している。
光ケーブル2は、上記構成を有していれば、その他の形態は特に限定されず、光ファイバ心線束11を構成する光ファイバ心線の数、不織布テープ12の有無、テンションメンバ13の数及び配置、シース21の層数等は用途に応じて適宜設定することができる。シース21が複層構造を有する場合、少なくとも1層のシース21が本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物により形成されていればよい。この場合、他の層、例えば中間層は、光ケーブルに通常用いられる樹脂又はその組成物で形成することができる。
光ケーブル2は、光ファイバ心線束11を有しており、この光ファイバ心線束11は通常のものを特に制限されることなく用いることができる。光ファイバ心線束11を構成する光ファイバ心線の数としては、通常2本以上とされるが、性能や用途に応じて適宜に設定され、高性能用途では、例えば、288本、864本、更には1728本とすることもできる。光ファイバ心線束11は複数の光ファイバ心線を束ねたものであればよく、撚線であっても引き揃え線であってもよく適宜に設定される。一方、光ファイバ心線束11を単心の光ファイバ心線とすることもできる。各光ファイバ心線は光ファイバ素線そのものでもよく、光ファイバ素線の外周面に絶縁テープの巻回体又は被覆層を有するものでもよい。光ファイバ素線としては、通常のものを用いることができ、例えば石英ファイバ製の素線が好ましい。
光ファイバ心線束11の周囲には不織布テープ12が巻回されて、光ファイバ心線束11を一括して被覆している。不織布テープ12に代えて絶縁テープ等の通常用いられる材料を適宜に用いることもできる。
不織布テープ12の周囲には単層のシース21が設けられており、その内部に中心角が約180°となる(光ファイバ心線束11を挟んで対面する)ように2本のテンションメンバ13が埋設されている。テンションメンバ13は、光ケーブルに通常適用されるもの、例えば金属、樹脂等で形成された線条体を特に制限されることなく用いることができる。
光ケーブル2、光ファイバ芯線束11、テンションメンバ13の各外径は、用途等に応じて、適宜に設定される。シース21、特に本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で形成されたシース21の厚さは、用途等に応じて適宜に設定されるが、本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物が有する優れた特性を発揮する点で0.2~5mmが好ましい。
【0060】
<配線材の製造方法>
本発明の配線材は、適宜の方法により製造することができるが、本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物を導体の外周面上に配置し、適宜に架橋反応処理して、製造することが好ましい。
【0061】
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物を導体の外周面上に配置する方法は、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で導体を被覆できる方法であればよく、適宜の成形方法が適用される。例えば、成形方法としては、押出機を用いた押出成形、射出成形機を用いた射出成形、その他の成形機を用いた成形が挙げられる。本発明においては、高い成形性を利用して、押出成形又は射出成形が好ましく、導体とノンハロゲン系難燃性樹脂組成物とを共押出する押出成形が好ましい。
押出成形は、汎用の押出成形機を用いて、行うことができる。押出成形温度は、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物の融点、押出速度(引取り速度)の諸条件に応じて適宜に設定される。本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物が架橋性樹脂組成物である場合は、架橋反応の生起を抑えるため、架橋反応が生起する温度(例えば有機過酸化物の分解温度)未満の温度に設定される。このような押出成形温度としては、例えば、本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物の調製方法における混錬温度と同じ温度に設定することが好ましい。その他の押出成形条件は適宜に設定される。
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物を導体の外周面上に配置する方法(ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物の配置)は、押出機を用いて、本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物の調製方法(押出機内でのノンハロゲン系難燃性樹脂組成物の調製)と連続して一連の工程として(一挙に)に行うこともできる。
【0062】
本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物が架橋性樹脂組成物である場合、次いで、導体の外周面上に配置したノンハロゲン系難燃性樹脂組成物を架橋反応処理する。この架橋反応処理は、架橋性組成物に適用した各架橋法に通常適用される方法、条件を特に制限されることなく適用できる。例えば、パーオキサイド架橋の場合は、加熱炉、加熱管等の加熱装置を用いて、本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物を外周面上に配置(押出成形、押出被覆)した導体をパーオキサイドが分解する温度以上の温度に加熱する方法が挙げられる。電子線架橋法の場合は、例えば1~30Mradの線量で電子線を照射する方法が挙げられる。シラン架橋法の場合は水と接触させる。
【0063】
このようにして、本発明のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物を用いて、難燃性及び機械特性に優れた被覆層を備えた配線材を、成形機に過度な負荷をかけることなく高い生産性で製造することができる。
【実施例0064】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
下記表1-1及び表1-2(併せて表1という。)において、各例の配合量に関する数値は特に断らない限り質量基準である。なお、空欄は該当する成分の配合量が0質量%又は0質量部であることを示す。
【0065】
実施例及び比較例に用いた各化合物の詳細を以下に示す。
<エチレン酢酸ビニル共重合体>
EV180:商品名、三井・ダウポリケミカル社製、MFR0.2、VA量33
V421:商品名、三井・ダウポリケミカル社製、MFR4、VA量28
EV260:商品名、三井・ダウポリケミカル社製、MFR6、VA量28
EV450:商品名、三井・ダウポリケミカル社製、MFR15、VA量25
V406:商品名、 三井・ダウポリケミカル社製、MFR20、VA量20
EV150:商品名、三井・ダウポリケミカル社製、MFR30、VA量33
なお、MFRは測定温度190℃、荷重2.16kgの条件における測定値であり、単位はg/10minである。また、VA量はエチレン酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量であり、単位は質量%である。
【0066】
<酸変性ポリオレフィン重合体>
L6100M:商品名、日本ポリエチレン社製、マレイン酸変性ポリエチレン
<αオレフィン重合体>
LLDPE:エボリュー0540(商品名)、プライムポリマー社製、MFR3.8
ランダムPP:PM921V(商品名)、サンアロマー社製、MFR25
EEA:レクスパールA1150(商品名)、日本ポリエチレン社製、酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体(エチレン-エチルメタアリレート共重合体)、MFR(190℃、荷重2.16kg)0.8、エチルメタアリレート(EA)含量15%
<金属水和物>
水酸化アルミニウム:BF013S(商品名)、日本軽金属社製、平均粒径1μm、表面処理剤:脂肪酸
<粘土鉱物及び4級アンモニウム塩>
BYK-MAX CT 4260(商品名)、BYK社製、アンモニウム塩で処理されたケイ酸アルミニウム(上述の、粘土鉱物と4級アンモニウム塩との混合物又は複合体として用いた。)
クニピアF(商品名)、クニミネ工業社製
<その他の添加剤>
滑剤:ジニオプラストガム(商品名)、旭化成ワッカーシリコーン社製、シリコーンガム
老化防止剤:イルガノックス1010(商品名)、BASFジャパン社製、ペンタエリスリトールテトラキス-(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
メラミンシアヌレート:MC6000(商品名)、日産化学社製、難燃助剤
硫化亜鉛:サハトリスHD-S(商品名)、Sactkeben社製、難燃助剤
ホウ酸亜鉛: SZB-2335(商品名) 堺化学工業社製、難燃助剤
【0067】
[実施例1~14及び比較例1~10]
(ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物の調製及び成形)
表1に示す各成分を2Lインテンシブミキサー(日本ロール社製)に投入し、140~150℃で混練を開始し、ローター回転数40~45rpmで7分間混錬した。引き続き、170~180℃で3分混練して、内温170~180℃で排出して、ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物を調製した。
次いで、このノンハロゲン系難燃性樹脂組成物を、ロール加工機(山鐵社製)を用いて、厚さ3mmのシートにプレス成形して、シート状試験片を得た。また、上記ノンハロゲン系難燃性樹脂組成物をペレット化した。
【0068】
調製したノンハロゲン系難燃性樹脂組成物のMFR、製造した各シート状試験片、又はペレットで作製した試験片について、下記試験をして、その結果を表1に示した。
【0069】
<MFRの測定>
調製したノンハロゲン系難燃性樹脂組成物について、JIS K 7210-1に規定の方法に基づき、測定温度190℃、荷重10kgの条件でMFRを測定した。
【0070】
<ラボプラストミル試験>
混錬・押出成形評価試験装置:Labo Plastomill 10C100(製品名、東洋精機社製)に、調製したノンハロゲン系難燃性樹脂組成物を250cc(充填量80%)投入して、投入後30秒以内で、かつ予熱開始40秒後に、温度170℃、回転数40rpmの条件で、試験を開始した。
試験中において、最高値トルクと、4~6分経過時の定常トルクとを加工実績のある標準材料と比較して、混錬負荷を評価した。
評価は、下記評価基準に当てはめて行い、「◎」及び「〇」が本試験の合格レベルである。
- 評価基準 -
◎:定常トルク80N・m以下(充分に低く、溶融粘度も充分低い)
〇:定常トルク80N・mを超え120N・m以下(定常トルクが実績ある材料と同等で加工性に問題ない)
×:定常トルク120N・mを超える(定常トルクが高く、押出成形困難)
【0071】
<機械特性試験>
(試験片の作製)
ダイス温度170℃に設定した押出機(シリンダー径25mm、L/D=22)を用いて、各実施例及び比較例で調製したノンハロゲン系難燃性樹脂組成物のペレットを、厚さ1mm、幅25mmのテープ状サンプルに押出成形した。なお、比較例1、6、8及び10は押出成形できなかった。
このテープ状サンプルから、JIS K 6251(2010)に規定の「3号ダンベル試験片」を作製した。ただし、厚さは1mmとする。
(機械特性の測定)
作製した試験片を用いて、JIS K 6251に規定の方法に従って、下記条件で、引張試験を行い、引張強度、100%モジュラス及び破断伸びをそれぞれ測定した。
引張強度は、5MPa以上が本試験の合格レベルであり、
100%モジュラスは、4MPa以上が本試験の合格レベルであり、
破断伸びは、100%以上が本試験の合格レベルである。
- 試験条件 -
標線間距離:20mm
引張速度:200mm/min
その他の条件は、JIS K 6251に規定された条件に従う。
【0072】
<難燃性試験>
(試験片の作製)
以下のようにして、幅が6mm、厚さが3mm、長さが170mmの短冊状試験片を作製した。
すなわち、各実施例及び比較例で調製したノンハロゲン系難燃性樹脂組成物のペレットを、熱プレス成形機にて厚さ3mmのシートに成形した。このシートから切り出して所定の試験片を得た。
(難燃性試験)
作製した試験片を垂直に配置して、試験片の最下端から、外炎長を20mmに調整したバーナーの炎を30秒接炎した(UL94燃焼試験に準ずる)。なお、燃焼ガスはプロパンガスを用いた。
こうして試験片を燃焼させて、接炎開始から消炎するまでの時間(消炎時間)を計測するとともに、燃焼状態を観察して、試験片から被覆層の垂れ落ちの有無及びその程度を確認した。その結果を下記評価基準に当てはめて難燃性を評価した。
なお、比較例2及び3は、たれ落ちが激しく試験継続が不可能であったため、「消炎時間」欄に「-」を記載した。
- 評価基準 -
(1)消炎時間
消炎時間が90秒以内である場合を本試験の合格レベルとした。
(2)垂れ落ちの有無及びその程度
〇:垂れ落ちがない(消炎する。垂れ落ちもなく延焼を防止できる)
×:垂れ落ちが発生した(垂れ落ち後に消炎又は延焼する)
【0073】
【0074】
【0075】
表1に示す結果から明らかなように、特定の組成を有するベース樹脂に対して、金属水和物100~250質量部、並びに粘土鉱物及び4級アンモニウム塩を2~30質量部の割合で含有しない比較例1~10のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物は、MFRが小さく成形性に劣るか、又は優れた難燃性及び機械特性を両立できない。
これに対して、特定のMFRを示すエチレン酢酸ビニルを60質量%以上含有するベース樹脂と、金属水和物100~250質量部と、粘土鉱物及び4級アンモニウム塩を2~30質量部とを含有する実施例1~14のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物は、いずれも、MFRが0.3g/10min以上で成形性に優れ、しかも優れた難燃性及び機械特性を両立している。これらの試験結果から、実施例1~14のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物で形成した被覆層を備えた配線材であれば、高い生産性で製造され、しかも優れた難燃性及び機械特性を示すことが分かる。