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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152967
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】チェッキング抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/80 20170101AFI20221004BHJP
【FI】
A21D13/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055938
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 喬比古
(72)【発明者】
【氏名】小堀 悟
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 恵
(72)【発明者】
【氏名】大島 耕児
(72)【発明者】
【氏名】平松 佑佳
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB21
4B032DB22
4B032DB23
4B032DG02
4B032DK02
4B032DK03
4B032DK09
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK21
4B032DK47
4B032DK66
4B032DK70
4B032DP08
4B032DP24
4B032DP29
4B032DP40
4B032DP60
(57)【要約】
【課題】焼菓子におけるチェッキングの発生を抑制し、かつ良好な食感の焼菓子をもたらすチェッキング抑制剤を提供する。
【解決手段】糖鎖長が5以上の糖アルコールの含有量1質量部に対する、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和の質量比が0.1~4.5である糖アルコール組成物を含有する、チェッキング抑制剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖鎖長が5以上の糖アルコールの含有量1質量部に対する、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和の質量比が0.1~4.5である糖アルコール組成物を含有する、チェッキング抑制剤。
【請求項2】
糖アルコール組成物の糖組成における、5糖以上の糖アルコールの含有量が15~65質量%である、請求項1に記載のチェッキング抑制剤。
【請求項3】
糖アルコール組成物が還元水飴類である、請求項1または請求項2に記載のチェッキング抑制剤。
【請求項4】
還元水飴類に含有される還元水飴が、次の条件(1)、(2)のいずれか1つ以上を満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載のチェッキング抑制剤。
(1)ガラス転移温度が50~180℃である還元水飴である
(2)還元前の水飴のデキストロース当量(Dextrose Equivalent値;DE)が50以下である
【請求項5】
さらに有機酸モノグリセリドを含有し、該有機酸モノグリセリドの含有量が、前記糖アルコール組成物の固形分1質量部に対して、0.03~2質量部である、請求項1~4のいずれか一項に記載のチェッキング抑制剤。
【請求項6】
連続相が油相である、請求項1~5のいずれか一項に記載のチェッキング抑制剤。
【請求項7】
連続相が水相である、請求項1~5のいずれか一項に記載のチェッキング抑制剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のチェッキング抑制剤を含有する焼菓子生地。
【請求項9】
蛋白質含量が4~20質量%である、請求項8に記載の焼菓子生地。
【請求項10】
請求項8又は請求項9記載の焼菓子生地を加熱して得られる焼菓子。
【請求項11】
請求項8又は請求項9記載の焼菓子生地を用いて製造された複合菓子。
【請求項12】
糖鎖長が5以上の糖アルコールの含有量1質量部に対する、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和の質量比が0.1~4.5である糖アルコール組成物を焼菓子生地中に含有させることを特徴とする、焼菓子のチェッキング抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼菓子に生じるチェッキングの発生を抑制するチェッキング抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
焼菓子は、一般に小麦粉や米粉などの穀粉類を主原料とする生地を成形し、焼成されるものである。香ばしさを付与する観点から、とりわけクッキーやビスケット、クラッカー、ウエハース等の焼菓子は、通常高温で焼成され、これに伴い、水分含量が少なく硬い物性とされる。
【0003】
ここで、焼成により水分含量が少なくなる際は、焼菓子生地の表面や端部は容易に水分含量を少なくすることができるが、焼成条件によっては焼菓子生地の中心部は十分に低いものとはならない。このように焼成により得られた焼菓子の内部で水分の偏在が生じることにより、チェッキングと呼ばれるひび割れが生じることが知られている。
【0004】
高温で焼成することにより、焼菓子の表面や端部は水分値が低くなるが、中心部まで十分に水分値が低くなっていない場合(いわゆる火抜けが悪い場合)、焼菓子の表面と中心部、あるいは焼菓子の端部と中心部との間で水分値の差が大きくなりやすく、焼成直後は問題ないように見えても、その後中心部から焼菓子表面或いは焼菓子の端部へ焼成により抜けきらなかった水分が、全体にいきわたる過程で、焼菓子の形状が歪み、チェッキングが生じると当業者間では考えられている。
【0005】
これまで、このチェッキングの発生を抑制するために、温度や時間等の焼成条件の調整や、焼菓子生地に特定の甘味料を含有させるなど、生地配合側からのアプローチが検討されてきた。焼成条件によるチェッキングの発生を抑制する方法としては、例えば、低温且つ長時間で焼成する方法が挙げられる。また、焼菓子生地に特定の甘味料を含有させることによりチェッキングを抑制する方法として、例えば、特許文献1では焼菓子の生地において、穀粉100重量部に対して単糖または二糖の糖アルコールを6重量部以上含有させることを特徴とする、焼菓子の割れを防止する方法が提案されており、特許文献2では配合の主体となる穀物粉100部に対し、1.0~7.0%重量のグリセリンを含有することを特徴とする、焼成直後の水分値が10%未満の焼き菓子が提案されており、特許文献3では焼き菓子生地に大豆蛋白含有素材、タピオカ澱粉およびトレハロースを用いることを特徴とする焼き菓子の製造法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-180359号公報
【特許文献2】特開2010-104259号公報
【特許文献3】特開平11-009176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
低温且つ長時間で焼成することによれば、チェッキングの発生を有効に抑制しうるが、焼菓子に要求されるサクサクとした食感を得ることが難しく、また、製造効率の観点からは高温且つ短時間で焼成することが好ましく、低温且つ長時間で焼成する方法は工業的に採用することが難しかった。
【0008】
また、特許文献1~3の技術によれば、チェッキングの発生を抑制できない場合があり、噛みだしが硬く、サクサクとした良好な食感を有する焼菓子が得られない場合があった。
【0009】
ところで、近年は消費者の健康志向の高まりに伴い、焼菓子においても、特定の栄養素を強化した栄養強化食品への需要が高まっており、特に、三大栄養素の一つであるタンパク質を強化した、プロテインクッキーとも呼称される、大豆蛋白質や乳蛋白質等の蛋白質分を多く含有させた焼菓子が販売されている。
【0010】
しかしながら、蛋白質は一般的に吸水性が高いことが知られている。このため、焼菓子生地中の蛋白質含有量を増加させると、焼菓子生地の伸展性が低下し、成形性が悪くなるという課題があった。また、蛋白質に吸収された水分は蒸発し難く、焼成時に火通りが悪いため、十分に焼菓子生地に火を通そうとすると製品表面が焦げ、中心部が生焼け状態になり易く、チェッキングが発生しやすいという課題があった。さらに、焼菓子生地中の蛋白質含有量を増加させると、蛋白質の熱変性の影響を受けやすくなり、焼成中の生地の固化がより早く進行するため、焼成時に火通りが悪くなり、結果的にチェッキングが発生しやすくなるという課題があった。
【0011】
すなわち、従前のチェッキングの発生を抑制する手法では、低温且つ長時間で焼成した場合において、チェッキングを抑制することができても、良好な食感や風味を有するものを得ることが困難であり、特許文献1~3のような特定の甘味料を含有させる手法によれば、焼き色が付きやすくなり製品表面の焦げや中心部の生焼けといった現象を誘発させやすく、チェッキングを十分に抑制することが困難であった。
【0012】
このように、通常の焼菓子のみならず、蛋白質を多く含有する焼菓子においても、従前知られた焼成条件の調整や特定の甘味料を含有させる手法によっては、チェッキングを抑制することが困難であった。
【0013】
したがって本発明は、以下の(1)および(2)を課題とする。
(1)チェッキングの発生が抑制された焼菓子を得ること
(2)良好な食感を有する焼菓子を得ること
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の組成を有する糖アルコール組成物を焼菓子生地中に含有させることにより、焼成後のチェッキングの発生が有意に抑制されることを知見した。
【0015】
また、特定の組成を有する糖アルコール組成物を含有させて製造された焼菓子は、良好な食感を有することを知見した。
【0016】
本願発明は上記知見に基づくものであり、本発明は、以下の内容を含む。
[1] 糖鎖長が5以上の糖アルコールの含有量1質量部に対する、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和の質量比が0.1~4.5である糖アルコール組成物を含有する、チェッキング抑制剤。
[2] 糖アルコール組成物の糖組成における、5糖以上の糖アルコールの含有量が15~65質量%である、[1]に記載のチェッキング抑制剤。
[3] 糖アルコール組成物が還元水飴類である、[1]または[2]に記載のチェッキング抑制剤。
[4] 還元水飴類に含有される還元水飴が、次の条件(1)、(2)のいずれか1つ以上を満たす、[1]~[3]のいずれかに記載のチェッキング抑制剤。
(1)ガラス転移温度が50~180℃である還元水飴である
(2)還元前の水飴のデキストロース当量(Dextrose Equivalent値;DE)が50以下である
[5] さらに有機酸モノグリセリドを含有し、該有機酸モノグリセリドの含有量が、前記糖アルコール組成物の固形分1質量部に対して、0.03~2質量部である、[1]~[4]のいずれかに記載のチェッキング抑制剤。
[6] 連続相が油相である、[1]~[5]のいずれかに記載のチェッキング抑制剤。
[7] 連続相が水相である、[1]~[5]のいずれかに記載のチェッキング抑制剤。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載のチェッキング抑制剤を含有する焼菓子生地。
[9] 蛋白質含量が4~20質量%である、[8]に記載の焼菓子生地。
[10] [8]又は[9]記載の焼菓子生地を加熱して得られる焼菓子。
[11] [8]又は[9]記載の焼菓子生地を用いて製造された複合菓子。
[12] 糖鎖長が5以上の糖アルコールの含有量1質量部に対する、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和の質量比が0.1~4.5である糖アルコール組成物を焼菓子生地中に含有させることを特徴とする、焼菓子のチェッキング抑制方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、焼菓子におけるチェッキングの発生を抑制することができる。また、本発明のチェッキング抑制剤を使用して焼菓子を製造することで、良好な食感を有する焼菓子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0019】
[チェッキング抑制剤]
本発明のチェッキング抑制剤は、糖鎖長が5以上の糖アルコールの含有量1質量部に対する、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和の質量比(以下、単に「糖アルコール質量比」ともいう。)が0.1~4.5である糖アルコール組成物を含有することを特徴とする。
【0020】
なお、本発明において、「糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和」とは、単糖アルコールと二糖アルコールのそれぞれの含有量を足し合わせたものである。
【0021】
本発明のチェッキング抑制剤は、上記構成を有することにより、焼成後の焼菓子において、チェッキングの発生を抑制することができる。また、良好な食感を有する焼菓子を得ることができる。
【0022】
<糖アルコール組成物>
糖アルコール組成物とは、糖鎖長あるいはその構成糖が異なる複数種の糖アルコールを含有する組成物のことを指し、本発明のチェッキング抑制剤に含有される糖アルコール組成物は、糖アルコール質量比が0.1~4.5である。
【0023】
糖アルコール組成物の糖アルコール質量比が0.1未満であると、焼菓子のチェッキングは抑制しうるものの、該チェッキング抑制剤を使用して得られる焼菓子の食感が硬くなり、ガリガリとした不良な食感となってしまう。また、該糖アルコール質量比が4.5超であると、焼菓子のチェッキングの発生を十分に抑制することができない。
【0024】
得られる焼菓子におけるチェッキングの発生を十分に抑制し、かつ良好な食感の焼菓子を得る観点から、本発明のチェッキング抑制剤において、糖アルコール組成物の糖アルコール質量比は、好ましくは0.2以上又は0.25以上、より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは1.0以上、さらにより好ましくは1.3以上、特に好ましくは2.0以上、2.2以上、2.4以上又は2.5以上であり、その上限は、好ましくは4.0以下又は3.8以下、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.3以下である。したがって好適な一実施形態において、糖アルコール組成物の糖アルコール質量比は0.25~3.8であり、より好適には0.4~3.5、さらに好適には1.0~3.5、さらにより好適には1.3~3.5、特に好適には2.5~3.3である。
【0025】
チェッキングの発生をいっそう抑制し、良好な食感を得る観点から、糖アルコール組成物の糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含有量は、好ましくは14質量%以上、より好ましくは14.5質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上又は15.5質量%以上であり、その上限は、好ましくは75質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらにより好ましくは40質量%以下、特に好ましくは35質量%以下又は30質量%以下である。したがって好適な一実施形態において、糖アルコール組成物の糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含有量は15~65質量%であり、より好適には15~50質量%、さらに好適には15~40質量%、さらにより好適には15~35質量%、特に好適には15~30質量%である。
【0026】
同様の観点から、糖アルコール組成物の糖組成における糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和は、好ましくは15質量%以上又は17質量%以上、より好ましくは20質量%以上又は25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、35質量%以上、36質量%以上、38質量%以上又は39質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、45質量%以上、46質量%以上又は48質量%以上であり、その上限は、好ましくは68質量%以下、より好ましくは66質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下、さらにより好ましくは64質量%以下、62質量%以下又は60質量%以下である。したがって好適な一実施形態において、糖アルコール組成物の糖組成における糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和は17~65質量%であり、より好適には25~65質量%、さらに好適には30~60質量%、さらにより好適には39~60質量%、特に好適には48~60質量%である。
【0027】
本発明のチェッキング抑制剤において、糖アルコール組成物は、上記の糖アルコール質量比を満たし且つ本発明の効果を損ねない範囲で、上記の糖鎖長が1又は2の糖アルコール及び糖鎖長が5以上の糖アルコールに加えて、糖鎖長が3又は4の糖アルコール、単糖、二糖、三糖、四糖以上のオリゴ糖、でんぷん、食物繊維、水等を含有してもよい。また糖アルコール組成物の形態は特に制限されず、例えば、粉末状や、小片状等の形状を有する固体であってもよく、流動性を有するペースト状、液状であってもよい。
【0028】
糖アルコール組成物は、上記の糖アルコール質量比を満たす限り任意の手法で調製してよい。例えば、上記の糖アルコール質量比を満たすように、精製された各糖鎖長の糖アルコールを混合して糖アルコール組成物を調製する方法を挙げることができる。また、上記の糖アルコール質量比を満たす還元水飴や、上記の糖アルコール質量比を満たすように異なる糖組成を有する2以上の還元水飴を混合したもの(以下、「還元水飴混合物」ともいう。)、上記の糖アルコール質量比を満たすように還元水飴と任意の糖鎖長の糖アルコールを混合したもの(以下、「還元水飴-糖アルコール混合物」ともいう。)を使用してもよい。以下、還元水飴、還元水飴混合物及び還元水飴-糖アルコール混合物を総称して「還元水飴類」という場合がある。
【0029】
チェッキングの発生をいっそう好ましく抑制する観点や、良好な食感を有する焼菓子を得る観点から、糖アルコール組成物として還元水飴類を使用することが好ましく、還元水飴類のうちでも、上記の糖アルコール質量比を満たす還元水飴や上記の糖アルコール質量比を満たす還元水飴混合物を使用することがより好ましい。したがって好適な一実施形態において、糖アルコール組成物は還元水飴類であり、より好適には糖アルコール組成物は1種又は2種以上の還元水飴、すなわち還元水飴又は還元水飴混合物である。
【0030】
本発明において、糖アルコール組成物の糖組成は、常法に則って測定することができ、例えば以下の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いる方法で測定することができる。
【0031】
すなわち、糖アルコール組成物を試料としてHPLCに供し、クロマトグラムを得る。得られたクロマトグラムにおいて、全ピークの面積の総和が「糖の総質量」に、各ピークの面積が「各糖の質量」にそれぞれ対応する。そして、試料における各糖の質量百分率を、検出された全ピークの面積の総和に対する各ピークの面積の割合として算出することができる。HPLCの条件は、定法に従って適宜設定してよく、例えば、下記条件としてよい。本発明における糖アルコール組成物の糖組成は、下記条件のHPLC測定に基づく。
【0032】
(HPLCの条件)
カラム;Shodex SUGAR KS-802 HQ(8.0mm ID x 300mm) 2本
溶離液;高純水
流速;1.0mL/分
注入量;200μL
カラム温度;50℃
検出;示差屈折率検出器Shodex RI
【0033】
-還元水飴-
本発明のチェッキング抑制剤において、糖アルコール組成物として、上述のとおり還元水飴類を使用することができる。
【0034】
還元水飴とは、澱粉を酸や酵素で加水分解(以下、「糖化」と記載する場合がある。)して得られる水飴を主原料とし、触媒の存在下で水飴に高圧接触還元(水素添加)を行うことで、水飴のグルコース残基を還元することにより製造される単糖、オリゴ糖、多糖の糖アルコールの混合物をさす。
【0035】
還元水飴は、原料とする水飴の糖化の程度により、高糖化還元水飴、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴に分類される場合がある。
【0036】
高糖化還元水飴とは、その糖組成において単糖アルコールが30~50質量%、二糖アルコールが20~50質量%、三糖以上の糖アルコールが25質量%以下のものを一般に指し、
中糖化還元水飴とは、その糖組成において、単糖アルコールが30質量%未満かつ五糖以上の糖アルコールが50質量%未満のものを一般に指し、
低糖化還元水飴とは、その糖組成において、五糖以上の糖アルコールが50質量%以上のものを一般に指す。
【0037】
本発明においては、チェッキングの発生を抑制し、食感の良好な焼菓子を得る観点から、特に中糖化還元水飴、低糖化還元水飴のいずれか一つ以上を、糖アルコール組成物として含有することが好ましい。
【0038】
本発明に用いられる還元水飴の形態は、粉末や顆粒、粒状、水溶液(液状)などのいずれの形態であってもよく、工業的な生産性や焼菓子の種類、焼菓子の食感等に応じて任意に選択される。また、後述する本発明のチェッキング抑制剤の形態によっても任意に選択することができる。
【0039】
なお、本発明に用いられる還元水飴が水溶液の形態をとる場合は、使用する還元水飴の固形分濃度が60~80%であることが好ましい。
【0040】
本発明のチェッキング抑制剤において、糖アルコール組成物は、市販されている糖アルコール、あるいは還元水飴をそのまま用いてもよく、公知の方法に従って製造して用いてもよい。
【0041】
-還元水飴に係る条件-
本発明において、糖アルコール組成物として還元水飴類を用いる場合、チェッキングの発生を抑制し、良好な食感を有する焼菓子を得る観点から、還元水飴類は、次の条件(1)、(2)のいずれか1つ以上を満たす還元水飴を含有することが好ましく、次の条件(1)、(2)の両方を満たす還元水飴を含有することがより好ましい。
(1)ガラス転移温度が50~180℃である還元水飴である
(2)還元前の水飴のデキストロース当量(Dextrose Equivalent値;DE)が50以下である
【0042】
--条件(1)--
条件(1)は、還元水飴のガラス転移温度に関する。
【0043】
糖アルコール組成物として還元水飴類を使用する場合、良好な食感を有していながらチェッキングの発生が抑制された焼菓子を得る観点から、使用する還元水飴類は、ガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう。)が50~180℃である還元水飴を含有することが好ましい。ここで、ガラス転移温度とは、ガラス転移が起こる温度を指し、ガラス転移とは、加熱により一旦溶融し融点以下に過冷却された液体が結晶化することなく非晶質となる現象(ガラス化)を指す。
【0044】
本発明のチェッキング抑制剤は、糖アルコール組成物中にTgが50~180℃である還元水飴を含有することにより、得られる焼菓子のチェッキングの発生を好ましく抑制することができる。
【0045】
チェッキングの発生を抑制すると共に良好な食感を有する焼菓子を得るという本発明の効果をより享受し得る観点から、還元水飴のTgは、より好ましくは50~150℃、さらに好ましくは50~120℃、さらにより好ましくは50~90℃、特に好ましくは50~75℃である。
【0046】
還元水飴のTgを測定する方法としては特に限定されないが、示差走査熱量計を用いて熱容量変化を測定し、ガラス転移に伴う熱容量変化をベースラインの吸熱シフトとして捉え、その開始点からガラス転移温度を求めることができる。例えば、示差走査熱量測定を用い、試料を0℃から180℃まで10℃/分で推移させた際の比熱を測定し、比熱が変化する前の比熱変化曲線の延長と、比熱が変化している間の比熱変化曲線の接線の交点(補外ガラス転移開始温度)をガラス転移点とすることができる。
【0047】
--条件(2)--
条件(2)は、還元前の水飴のデキストロース当量に関する。
【0048】
糖アルコール組成物として還元水飴類を使用する場合、良好な食感を有していながらチェッキングの発生が抑制された焼菓子を得る観点から、還元水飴類に含有される還元水飴について、還元前の水飴のデキストロース当量(Dextrose Equivalent値;DE)が50以下であることが好ましい。すなわち、還元水飴類は、DEが50以下である水飴由来の還元水飴を含有することが好ましい。
【0049】
還元水飴の原料である水飴の糖化の程度の指標には、一般に、デキストロース当量(DE)が用いられる。DEは、試料中の還元糖をぶどう糖として測定したときの、当該還元糖の全固形分に対する割合(百分率)である。DEの最大値は100で、固形分がすべてぶどう糖であることを意味し、DEが小さくなるほどオリゴ糖類や多糖類が多く含まれることを意味する。
【0050】
本発明では、好ましくはDEが50以下の水飴を還元することにより得られる還元水飴を用いることにより、焼菓子のチェッキングの発生を抑制することができ、さらには得られる焼菓子の良好な食感を増強することができる。
【0051】
チェッキングの発生を抑制する観点と良好な食感を有する焼菓子を得る観点から、本発明で用いられる還元水飴の原料である水飴のDE値は、より好ましくは20~50、さらに好ましくは25~50、さらにより好ましくは35~50である。
【0052】
還元水飴の原料である水飴のDEは、下記の方法により測定することができる。
【0053】
(デキストロース当量(DE)の測定方法)
試料2.5gを正確に量り、水で溶かして200mLとする。この液10mLを量り、0.04mol/Lヨウ素溶液(※1)10mLと0.04mol/L水酸化ナトリウム溶液(※2)15mLを加えて20分間暗所に放置する。次に、2mol/L塩酸(※3)を5mL加えて混和した後、0.04mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液(※4)で滴定する。滴定の終点近くで液が微黄色になったら、デンプン指示薬(※5)2滴を加えて滴定を継続し、液の色が消失した時点を滴定の終点とする。水を用いてブランク値を求め、次式によりDE値を求める。
【0054】
DE=(b-a)×f×3.602/(1/1000)/(200/10)/[A×(100-B)/100]×100
式中、a:滴定値(mL)、b:ブランク値(mL)、f:チオ硫酸ナトリウム溶液のファクター値、A:試料の秤取量(g)、B:試料の水分値(%)である。
【0055】
(※1)0.04mol/Lヨウ素溶液:ヨウ化カリウム20.4gとヨウ素10.2gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加えて調製する。
(※2)0.04mol/L水酸化ナトリウム溶液:水酸化ナトリウム3.2gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加えて調製する。
(※3)2mol/L塩酸:水750mLに塩酸150mLをかき混ぜながら徐々に加えて調製する。
(※4)0.04mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液:チオ硫酸ナトリウム20gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加えて調製する。
(※5)デンプン指示薬:可溶性デンプン5gを水500mLに溶解し、これに塩化ナトリウム100gを溶解して調製する。
【0056】
-還元水飴類中の還元水飴の含量-
糖アルコール組成物として還元水飴類を使用する場合、還元水飴類中に占める、上記(1)、(2)の条件のいずれか一つ以上を満たす還元水飴の含量は、焼菓子のチェッキングの発生を抑制すると共に良好な食感を有する焼菓子を得るという本発明の効果をより享受し得る観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは87質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上、92質量%以上、94質量%以上又は95質量%以上である。該還元水飴の含量の上限は特に限定されず、100質量%であってよい。したがって好適な一実施形態において、還元水飴類中の上記(1)、(2)の条件のいずれか一つ以上を満たす還元水飴の含量は80~100質量%であり、より好適には87~100質量%、さらに好適には95~100質量%である。
【0057】
なお、還元水飴類として還元水飴混合物を選択する場合における、還元水飴類中に占める上記(1)、(2)の条件のいずれか一つ以上を満たす還元水飴の含量は、上記(1)、(2)の条件のいずれか一つ以上を満たす、一又は二以上の還元水飴の含量の総和により判断する。また、還元水飴類として、還元水飴混合物を選択する場合、混合する還元水飴のいずれもが上記(1)、(2)の条件のいずれか一つ以上を満たすことが好ましい。
【0058】
<有機酸モノグリセリド>
本発明のチェッキング抑制剤は、上述の糖アルコール組成物に加えて、有機酸モノグリセリドを含有してよい。有機酸モノグリセリドをさらに含有することにより、いっそう好ましくチェッキングの発生を抑制することができる。
【0059】
有機酸モノグリセリドとは、グリセリン1分子に脂肪酸1分子と有機酸1分子が結合した構造、詳細にはグリセリンの持つ3つのヒドロキシ基のうち1つに脂肪酸が、もう1つに有機酸がそれぞれエステル結合した構造を有し、一般的には、有機酸の酸無水物と脂肪酸モノグリセリドを反応させることにより得られる。
【0060】
本発明において、有機酸モノグリセリドを構成する有機酸としては、例えば、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸などを挙げることができる。チェッキングの発生を抑制する観点からはコハク酸、クエン酸、ジアセチル酒石酸が好ましく、とりわけジアセチル酒石酸が好ましい。
【0061】
本発明において、有機酸モノグリセリドを構成する脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸などの炭素数8~22の飽和または不飽和の脂肪酸を挙げることができる。チェッキングの発生をいっそう抑制する観点からは、有機酸モノグリセリドの構成脂肪酸の70質量%以上が飽和脂肪酸であるものが好ましい。
【0062】
また、本発明において、有機酸モノグリセリドのHLBは8~10の範囲にあることが好ましい。
【0063】
なお、有機酸モノグリセリドとしては1種のみを用いてもよく、これを構成する有機酸や脂肪酸が異なるものを2種以上混合して用いてもよい。本発明の効果をより享受し得る観点から、1種の有機酸モノグリセリドを単独で使用することが好ましく、ジアセチル酒石酸モノグリセリドのみを使用することがより好ましい。
【0064】
本発明のチェッキング抑制剤中の有機酸モノグリセリドの含有量は、後述するチェッキング抑制剤の態様や、焼菓子中の蛋白質含量によって好適値が異なるが、糖アルコール組成物の固形分1質量部に対して、好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.07質量部以上であり、その上限は、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.6質量部以下、さらに好ましくは1.2質量部以下である。したがって好適な一実施形態において、有機酸モノグリセリドの含有量は、糖アルコール組成物の固形分1質量部に対して、0.03~2.0質量部であり、より好適には0.05~2.0質量部、さらに好適には0.05~1.6質量部である。
【0065】
例えば、チェッキング抑制剤の使用対象である焼菓子中の蛋白質含量が5質量%未満の場合には、有機酸モノグリセリドの含有量は、糖アルコール組成物の固形分1質量部に対して、好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.07質量部以上であり、その上限は、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.35質量部以下、さらに好ましくは0.25質量部以下である。したがって好適な一実施形態において、有機酸モノグリセリドの含有量は、糖アルコール組成物の固形分1質量部に対して、0.03~0.5質量部であり、より好適には0.05~0.35質量部、さらに好適には0.07~0.25質量部である。また、チェッキング抑制剤の使用対象である焼菓子中の蛋白質含量が5質量%以上である場合には、有機酸モノグリセリドの含有量は、糖アルコール組成物の固形分1質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.65質量部以上、さらに好ましくは0.8質量部以上であり、その上限は、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.6質量部以下、さらに好ましくは1.2質量部以下である。したがって好適な一実施形態において、有機酸モノグリセリドの含有量は、糖アルコール組成物の固形分1質量部に対して、0.5~2.0質量部であり、より好適には0.65~1.6質量部、さらに好適には0.80~1.2質量部である。
【0066】
なお、有機酸モノグリセリドを複数種使用する場合には、それらの含量の総和が上記範囲内であることが好ましい。
【0067】
<チェッキング抑制剤の態様>
本発明のチェッキング抑制剤は、糖アルコール質量比が0.1~4.5である糖アルコール組成物を含有する限り、その態様は特に制限されず、連続相が油相や水相であってもよく、固体であってもよい。
【0068】
-連続相が油相であるチェッキング抑制剤について-
本発明において、チェッキング抑制剤の連続相が油相であるとは、チェッキング抑制剤が、マーガリンやファットスプレッド、バター等のような油中水型乳化物や油中水中油型乳化物、ショートニングや粉末油脂、液状油等のような水分を殆ど含有しない油脂組成物の態様をとることを指す。
【0069】
連続相が油相であるチェッキング抑制剤において、上記糖アルコール組成物の含有量は、チェッキング抑制剤中の油脂分100質量部に対して、固形分として、好ましくは3質量部以上であり、その上限は、好ましくは25質量部以下、より好ましくは21質量部以下、さらに好ましくは16質量部以下である。したがって好適な一実施形態において、糖アルコール組成物の含有量は、チェッキング抑制剤中の油脂分100質量部に対して、固形分として、3~25質量部であり、より好適には3~21質量部、さらに好適には3~16質量部である。
【0070】
なお、連続相が油相である場合においては、本発明のチェッキング抑制剤は可塑性を有することが好ましい。可塑性を有することにより、本発明のチェッキング抑制剤が焼菓子生地中に行きわたりやすくなり、本発明の効果が得られやすくなる。
【0071】
連続相が油相であるチェッキング抑制剤に用いられる油脂としては、食用の油脂であれば特に制限なく用いることができる。具体的には、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、落花生油、カポック油、胡麻油、月見草油、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂及びイリッペ脂等の各種植物油脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油及び鯨油等の各種動物油脂、並びにこれらの油脂を原料として水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂を使用することができる。これらの油脂は1種単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
なお、健康への影響の観点から実質的にトランス脂肪酸を含まない油脂を使用することが好ましい。ここでいう「実質的にトランス脂肪酸を含まない」とは、油脂中の脂肪酸残基組成中、トランス脂肪酸の含有量が5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下であることを意味する。
【0073】
連続相が油相であるチェッキング抑制剤において、該チェッキング抑制剤中の油脂分の含有量は、後述するその他原料中の油脂分も含めて、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、その上限は、好ましくは98質量%以下、96質量%以下又は95質量%以下である。したがって好適な一実施形態において、チェッキング抑制剤中の油脂分の含有量は50~98質量%であり、より好適には60~96質量%、さらに好適には70~95質量%である。
【0074】
以下、連続相が油相であるチェッキング抑制剤の製造方法について述べる。該チェッキング抑制剤の製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いて製造してよい。以下、好ましい一態様である可塑性を有する油中水型乳化物の態様をとるチェッキング抑制剤を製造する場合の好適な一例を示す。
【0075】
好ましくは、糖アルコール質量比が0.1~4.5である糖アルコール組成物を溶解させた水相を調製し、該水相と溶解した油相とを混合・乳化して混合液を調製し、得られた混合液を冷却することにより、連続相が油相であるチェッキング抑制剤を得ることができる。
【0076】
具体的には、まず油相を溶解し、必要に応じてその他溶解した油相と水相とを混合乳化し、乳化物を得る。油相と水相との混合割合は、質量比率(油相:水相)で、好ましくは80:20~95:5である。得られた乳化物を殺菌処理することが望ましい。殺菌方式は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続方式でも構わない。殺菌温度は好ましくは80~100℃、より好ましくは80~95℃、さらに好ましくは80~90℃である。その後、必要により油脂結晶が析出しない程度に殺菌処理した乳化物を予備冷却する。予備冷却の温度は、好ましくは40~60℃、より好ましくは40~55℃、さらに好ましくは40~50℃である。次に、予備冷却した乳化物に対し冷却、好ましくは急冷可塑化を行う。この急冷可塑化は、コンビネーター、ボテーター、パーフェクター、ケムテーターなどの密閉型連続式掻き取りチューブチラー冷却機(Aユニット)、プレート型熱交換機等を用いて行うことができる。また開放型冷却機のダイヤクーラーとコンプレクターとを組合わせて冷却を行ってもよい。この急冷可塑化を行うことにより、可塑性を有する、連続相が油相であるチェッキング抑制剤が得られる。急冷可塑化の際に、ピンマシン等の捏和装置(Bユニット)やレスティングチューブ、ホールディングチューブを使用してもよい。
【0077】
得られた連続相が油相であるチェッキング抑制剤は、任意の形状、例えば、シート状、ブロック状、円柱状又は直方体等の形状に成形してよい。各々の形状についての好ましいサイズは下記のとおりである。
【0078】
シート状:縦50~1000mm、横50~1000mm、厚さ1~50mm
ブロック状:縦50~1000mm、横50~1000mm、厚さ50~500mm
円柱状:直径1~25mm、長さ5~100mm、
直方体:縦5~50mm、横5~50mm、高さ5~100mm。
【0079】
上記の製造工程において、窒素、空気等を含気させてもよく、含気させなくてもよい。
【0080】
なお、水相を調製する際において、一旦系外で糖アルコール組成物を調製した後に水相中に溶解させてもよく、糖アルコール組成物の調製に使用する糖アルコールその他の原料を逐次水相に溶解させることにより、糖アルコール組成物を調製してもよく、糖アルコール組成物が還元水飴類(但し、粉末等の固体である場合を除く)である場合には、還元水飴類自体を水相としてもよい。また、還元水飴類が粉末等の固体であり、チェッキング抑制剤の連続相が油相であって水分を殆ど含有しない油脂組成物の態様をとる場合においては、油相に分散させてもよい。
【0081】
-連続相が水相であるチェッキング抑制剤について-
本発明において、チェッキング抑制剤の連続相が水相であるとは、チェッキング抑制剤が、純生クリームやコンパウンドクリーム、植物性クリーム、ホイップクリーム、牛乳等のような水中油型乳化物、もしくは水性液の態様をとることを指す。
【0082】
なお、ここでいう水性液とは水溶液のほか、水に不溶の成分が分散した懸濁液や、ごく少量の油脂や油溶性成分が分散した水中油型乳化物などの、水性相を連続相とする液状物を意味するものとする。
【0083】
連続相が水相であるチェッキング抑制剤において、上記糖アルコール組成物の含有量は、製造のしやすさの観点から、チェッキング抑制剤中の水分100質量部に対して、固形分として、50~200質量部の範囲が好ましい。
【0084】
連続相が水相であるチェッキング抑制剤に用いられる油脂としては、食用の油脂であれば特に制限なく用いることができ、例えば、連続相が油相であるチェッキング抑制剤に関連して先述したものと同じものを用いてよい。実質的にトランス脂肪酸を含まない油脂を使用することが好ましいことも同様である。
【0085】
連続相が水相であるチェッキング抑制剤において、該チェッキング抑制剤中の油脂分の量は、後述するその他原料中の油脂分も含めて、好ましくは0~60質量%の範囲、より好ましくは0~50質量%の範囲、さらに好ましくは0~40質量%の範囲である。
【0086】
以下、連続相が水相であるチェッキング抑制剤の製造方法について述べる。該チェッキング抑制剤の製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いて製造してよい。以下、好ましい一態様である水中油型乳化物の態様をとるチェッキング抑制剤を製造する場合の好適な一例を示す。
【0087】
具体的には、まず油脂を溶解し、必要に応じて後述するその他原料を含有させた油相と、糖アルコール質量比が0.1~4.5である糖アルコール組成物を含有し、必要に応じて後述するその他原料を含有させた水相とをそれぞれ個別に調製する。次に、該油相と該水相とを混合乳化し、水中油型に乳化することにより、連続相が水相であるチェッキング抑制剤を得ることができる。これを、必要により、バルブ式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル等の均質化装置により、圧力0~100MPaの範囲で均質化しても良い。また、必要によりインジェクション式、インフージョン式等の直接加熱方式、或いはプレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT・HTST・低温殺菌、バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌又は加熱殺菌処理を施しても良く、或いは直火等の加熱処理により加熱しても良い。また、加熱後に必要に応じて再度均質化しても良い。さらに、必要により急速冷却、徐冷却等の冷却操作を施しても良い。
【0088】
本発明のチェッキング抑制剤が水性液の形態をとる場合には、糖アルコール組成物を含有する水相を調製したものをそのままチェッキング抑制剤としてもよく、必要に応じて均質化、加熱殺菌処理、冷却操作を施したものをチェッキング抑制剤としてもよい。
【0089】
なお、水相を調製する際において、一旦系外で糖アルコール組成物を調製した後に水相中に溶解させてもよく、糖アルコール組成物の調製に使用する糖アルコールその他の原料を逐次水相に溶解させることにより、糖アルコール組成物を調製してもよく、糖アルコール組成物が還元水飴類(但し、粉末等の固体である場合を除く)である場合には、還元水飴類自体を水相としてもよい。
【0090】
<その他原料>
本発明のチェッキング抑制剤は、いずれの態様をとる場合であっても、上記の糖アルコール組成物や有機酸モノグリセリド以外に、本発明の効果を損ねない範囲で、その他原料を含有していてもよい。
【0091】
その他原料としては、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、ステビア等の甘味料、乳化剤、澱粉類、デキストリン、食物繊維、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、牛乳・脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・脱脂濃縮乳、蛋白質濃縮ホエイ等の乳や乳製品、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β-カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、全卵・卵黄・酵素処理卵黄・卵白・卵蛋白質等の卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。その他原料は、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いてよい。
【0092】
なお、チェッキングの発生を抑制するという本発明の効果を損ねる場合があるため、本発明のチェッキング抑制剤を製造する際に、糖アルコール組成物とは別に甘味料を含有させる場合は、チェッキング抑制剤中の該甘味料の含有量は、好ましくは0~10質量%の範囲、より好ましくは0~6質量%の範囲、さらに好ましくは0~2質量%の範囲とすることが好適である。
【0093】
乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の天然乳化剤が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いてよい。チェッキング抑制剤中の乳化剤の含有量は、特に制限はないが、好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~7質量%、さらに好ましくは0~4質量%である。
【0094】
[焼菓子生地]
次に、本発明の焼菓子生地について述べる。
【0095】
本発明の焼菓子生地は、上記のチェッキング抑制剤を原料の一つとして用いたものである。
【0096】
本発明のチェッキング抑制剤を使用することができる焼菓子生地としては、例えば、パイ生地やペストリー生地、パウンドケーキ生地、フルーツケーキ生地、マドレーヌ生地、バウムクーヘン生地、カステラ生地等のバターケーキ生地、アイスボックスクッキー生地、ワイヤーカットクッキー生地、サブレ生地、ラングドシャクッキー生地等のクッキー生地、ビスケット生地、クラッカー生地、ウエハース生地等が挙げられる。特にチェッキングの発生が抑制されていながら良好な食感を有する焼菓子を得る観点からは、焼菓子生地は、クッキー生地やビスケット生地、クラッカー生地、ウエハース生地等であることが好ましい。
【0097】
これらの焼菓子生地は、シュガーバッター法、フラワーバッター法、オールインミックス法等、公知の方法によって製造することができる。本発明のチェッキング抑制剤は、その形態や焼菓子生地の製造方法に応じて、焼菓子生地の製造過程の任意の時点で含有させてよい。
【0098】
なお、本発明のチェッキング抑制剤が可塑性を有し、連続相が油相である形態をとる場合、あるいは起泡性を有する水中油型乳化物である場合には、泡立て器やミキサー等で撹拌した後に、焼菓子生地中に加えてもよい。
【0099】
本発明の焼菓子生地には、本発明のチェッキング抑制剤の他、その他原料として、穀粉類、イースト、酵素、糖類、甘味料、油脂類、卵類、乳製品、各種蛋白質、水、食塩、澱粉類、調味料、香辛料、着香料、着色料、ココア、チョコレート、ナッツ類、ヨーグルト、チーズ、抹茶、紅茶、コーヒー、豆腐、黄な粉、豆類、野菜類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、果物、ハーブ、肉類、魚介類、酸化剤、還元剤、イーストフード、乳化剤、保存料、日持ち向上剤などを適宜用いてよい。なお、上記穀粉類としては、小麦粉(薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉)をはじめ、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉等を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いてよい。本発明では、これらの中でも、穀粉類中、好ましくは小麦粉を50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは100質量%使用することが好適である。
【0100】
本発明の焼菓子生地における本発明のチェッキング抑制剤の含有量は、目的とする焼菓子の種類によっても異なり、また本発明のチェッキング抑制剤の態様によっても変更される。例えば、焼菓子生地がクッキー生地である場合、該焼菓子生地の製造に使用される穀粉類100質量部に対して、該チェッキング抑制剤中の糖アルコール組成物が、固形分として、好ましくは1~20質量部の範囲、より好ましくは2~20質量部の範囲、さらに好ましくは2~15質量部の範囲、さらにより好ましくは3~12質量部の範囲となるような量にてチェッキング抑制剤を使用することが好適である。
【0101】
本発明の焼菓子生地における蛋白質の含有量は、目的とする焼菓子の種類によっても異なるが(蛋白質を多く含有する焼菓子についての蛋白質含量の好適範囲は別途後述する。)、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、4質量%以上又は5質量%以上である。該蛋白質の含有量の上限は、特に限定されず、例えば、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下などとし得、一実施形態では30質量%以下(好ましくは25質量%以下又は20質量%以下)である。したがって好適な一実施形態において、焼菓子生地中の蛋白質の含有量は0.5~50質量%であり、より好適には1~50質量%、さらに好適には2~45質量%、4~45質量%、4~40質量%、4~30質量%又は4~20質量%である。
【0102】
-蛋白質を多く含有する焼菓子生地-
先述のとおり、蛋白質を多く含有する焼菓子は、一般的な焼菓子に比しチェッキングが発生しやすい。この点、本発明のチェッキング抑制剤を含有する本発明の焼菓子生地は、蛋白質を多く含有する場合であっても、チェッキングの発生が抑制された焼菓子をもたらすことができる。本発明は、このようにチェッキングの発生を抑制し得る、蛋白質を多く含有する焼菓子生地も提供する。以下、蛋白質を多く含有する焼菓子を「蛋白質高含有焼菓子」ともいい、蛋白質を多く含有する焼菓子生地を「蛋白質高含有焼菓子生地」ともいう。
【0103】
本発明の蛋白質高含有焼菓子生地に含有させることができる蛋白質は、通常食品に用いられる蛋白質であれば、特に限定されるものではなく、動物性蛋白質あるいは植物性蛋白質のいずれであってもよい。動物性蛋白質としては、例えば、カゼイン蛋白質やホエイ蛋白質等の乳タンパク質や、卵白等を挙げることができ、コラーゲン、ゼラチンを含む。また、植物性蛋白質としては、例えば、小麦蛋白質や大豆蛋白質等を挙げることができる。本発明の蛋白質高含有焼菓子生地において、蛋白質は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよく、動物性蛋白質と植物性蛋白質を混合して使用してもよい。
【0104】
また、蛋白質の形態は、特に限定されるものではないが、取り扱いが簡便であり、且つ生地中に均質に混合しやすいため、粉末が好ましい。
【0105】
なお、焼菓子生地中に可溶性の蛋白質が多く含有されると、蛋白質の吸水により、チェッキングが発生しやすくなるため、蛋白質高含有焼菓子生地に用いる蛋白質原料は、吸水性を低下させるための、吸水遅延処理を施したものであることが好ましい。該吸水性遅延処理としては、例えば、酵素処理やカルシウム等ミネラルの添加による処理等を挙げることができる。
【0106】
蛋白質高含有焼菓子生地中の蛋白質の含有量は、好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上、11質量%以上又は12質量%以上である。該蛋白質の含有量の上限は、先述のとおりである。したがって好適な一実施形態において、蛋白質高含有焼菓子生地中の蛋白質の含有量は、8~50質量%の範囲、より好適には10~50質量%の範囲、さらに好適には10~45質量%、11~45質量%又は12~45質量%の範囲である。
【0107】
また、蛋白質高含有焼菓子生地中のチェッキング抑制剤の含有量は、目的とする焼菓子の種類によっても異なり、また本発明のチェッキング抑制剤の態様によっても変更されるものである。例えば、蛋白質高含有焼菓子生地がクッキー生地である場合、該蛋白質高含有焼菓子生地中の穀粉類と蛋白質粉末の含量の合算値100質量部に対して、該チェッキング抑制剤中の糖アルコール組成物が、固形分として、好ましくは1~8.5質量部の範囲、より好ましくは1.5~7.0質量部の範囲、さらに好ましくは2.0~5.5質量部の範囲となるような量にてチェッキング抑制剤を使用することが好適である。
【0108】
なお、本発明における蛋白質高含有焼菓子生地および蛋白質高含有焼菓子は、その製造にあたり蛋白質を多く含有する他は、使用可能原料やその製造方法、加熱条件等は、通常の焼菓子生地および焼菓子と同様である。
【0109】
[焼菓子]
次に、本発明の焼菓子について述べる。本発明の焼菓子は、本発明のチェッキング抑制剤を含有する上記の焼菓子生地あるいは蛋白質高含有焼菓子生地を加熱することにより得られる。
【0110】
本発明の焼菓子、特にクッキーやビスケット、クラッカー、ウエハース等は、本発明のチェッキング抑制剤を用いて製造されるため、含有される蛋白質の量によらず、良好な食感を有しており、且つチェッキングの発生が抑制されている。
【0111】
なお、本発明の焼菓子を得る際の焼菓子生地の成型は、ワイヤーカット成型、モールド成型、棒状成型、デポジット成型、シート成型等のいずれでもよく、また、機械成型、手成型の別は問わない。
【0112】
本発明の焼菓子を得る際の、焼菓子生地の加熱については、任意の手法をとることができるが、オーブン等による焼成を行うことが好ましい。
【0113】
本発明の焼菓子を得る際の焼成に際し、焼成時間は、焼菓子生地の水分が逸散し、軽い食感になるまで行われ、概ね10~25分間である。また、焼成温度は、一般的な温度を採用してよく、例えば、180~210℃程度の焼成温度により焼成することができる。
【0114】
従前、チェッキングの発生の抑制を目的として低温で且つ長時間焼成する場合があったが、本発明の焼菓子においては、チェッキングの発生の抑制を目的とする場合において、そうした焼成は必要としない。なお、勿論、食感や風味を良好にする観点から低温で焼成してもよく、その場合、120~150℃付近での焼成、あるいは100℃付近で乾燥焼きしてもよい。
【0115】
上記のようにして得られる焼菓子中の蛋白質の含量は、目的とする焼菓子の種類や焼菓子の製造に用いる焼菓子生地の配合によっても異なるが、その下限は、例えば、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、4質量%以上などとし得、またその上限は、例えば、50質量%以下、45質量%以下などとし得る。したがって一実施形態において、本発明の焼菓子中の蛋白質の含量は0.5~50質量%であり、より好適には1~50質量%、さらに好適には2~45質量%、4~45質量%、4~40質量%、4~30質量%又は4~20質量%である。蛋白質高含有焼菓子の場合、焼菓子中の蛋白質の含量は、好適には8~50質量%であり、より好適には10~50質量%、さらに好適には10~45質量%、11~45質量%又は12~45質量%である。
【0116】
[複合菓子]
次に、本発明の複合菓子について述べる。
【0117】
本発明の複合菓子は、本発明のチェッキング抑制剤を用いて製造された本発明の焼菓子と油性菓子とを組合せたものである。本発明において、焼菓子と油性菓子とを組合せるとは、焼菓子生地の加熱前に、成形した焼菓子生地の表面に油性菓子を配置するか、又は焼菓子生地中に油性菓子を配置することをいう。
【0118】
通常、焼菓子と油性菓子とを組み合わせた場合、焼成後の冷却の過程で、複合された油性菓子の周辺は、焼菓子の縮みが不均一になりやすく、また油性菓子の周辺の焼菓子が薄くなることから、結果としてチェッキングが発生しやすいことが指摘されてきた。これに対し、本発明の複合菓子は、焼菓子中に本発明のチェッキング抑制剤を含有しているため、該焼菓子と油性菓子とを組み合わせた場合であっても、焼菓子のチェッキングの発生が好ましく抑制される。
【0119】
本発明の複合菓子における油性菓子としては、例えば、ナッツ類及びチョコレート類等が挙げられる。
【0120】
上記ナッツ類としては、例えば、ピーナッツ、アーモンド、カシューナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ピーカンナッツ、オーナッツ、マカデミアナッツ、ブラジルナッツ、ココナッツ、松、けし、ひまわり等の種実や堅果、それらのホール品・割物品・スライス品、それらを用いたペースト・ピューレ等の加工品等が挙げられる。
【0121】
上記チョコレート類とは、カカオマスやココアパウダー等のカカオ成分を含有し、カカオ成分にさらに粉乳等の各種粉末食品、油脂類、糖類、乳化剤、香料、色素等の中から選択した原料を任意の割合で混合し、常法によりロール掛け、コンチング処理して得たものを意味する。もちろん、気相や水相を含有するものも使用することができる。
【0122】
上記各種粉末食品としては、例えば、脱脂粉乳、全粉乳、果実粉末、果汁粉末、生クリーム粉末、チーズ粉末、コーヒー粉末、ヨーグルト粉末等が例示される。各種粉末食品を使用する場合、その配合量は、チョコレート中、好ましくは0.5~60質量%、さらに好ましくは1~50質量%である。
【0123】
上記油脂類としては、例えば、カカオバター、その他の動植物性油脂、及びこれらの分別油、硬化油、エステル交換油脂等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用することができ、好ましくはテンパリング型のものを使用する。油脂類の配合量は、チョコレート中、好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは30~60質量%である。
【0124】
上記乳化剤としては、特に限定されず、必要に応じて粘度上昇を抑制する目的で、レシチン、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を用いることができる。チョコレート中の乳化剤の配合量は、チョコレート中、好ましくは0.01~10質量%、さらに好ましくは0.1~5質量%である。
【0125】
本発明の複合菓子において、油性菓子を焼菓子と組み合わせる方法、すなわち複合化方法としては、例えば、油性菓子がチョコレートの場合は、チョコレートをフィリング用、サンド用、トッピング用、コーティング用、エンローバー用等として焼菓子と組合せる方法が挙げられる。また焼成前の焼菓子生地に小片状のチョコレートを分散させる方法も挙げられる。油性菓子がナッツ類の場合についても、これに準じて複合することができる。
【0126】
[焼菓子のチェッキング抑制方法]
次に、本発明の焼菓子のチェッキング抑制方法(以下、単に「本発明の方法ともいう。)について述べる。
【0127】
本発明の方法は、糖鎖長が5以上の糖アルコールの含有量1質量部に対する、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和の質量比が0.1~4.5である糖アルコール組成物を焼菓子生地中に含有させることを特徴とする。
【0128】
本発明の方法によれば、焼菓子におけるチェッキングの発生が抑制され、焼菓子の製造効率や歩留まりが向上する。また、蛋白質高含有焼菓子においても、チェッキングの発生が抑制される。
【0129】
本発明の方法を適用することができる焼菓子としては、例えば、パイやペストリー、パウンドケーキ、フルーツケーキ、マドレーヌ、バウムクーヘン、カステラ等のバターケーキ、アイスボックスクッキー、ワイヤーカットクッキー、サブレ、ラングドシャクッキー等のクッキー、ビスケット、クラッカー、ウエハース等が挙げられ、特にチェッキングの発生が抑制されていながら良好な食感を有する焼菓子を得る観点からは、クッキーやビスケット、クラッカー、ウエハース等であることが好ましい。
【0130】
本発明の方法において使用する上記糖アルコール組成物は、その好適な組成や好適な配合量をはじめ、上記[チェッキング抑制剤]及び[焼菓子生地]欄等において上述したとおりである。
【0131】
本発明の方法において、上記特定の糖アルコール組成物を焼菓子生地中に含有させる限りにおいて、該糖アルコール組成物に加えて他の成分を焼菓子生地中に含有させてもよい。斯かる他の成分としては、有機酸モノグリセリドや油脂、その他原料が挙げられ、これらは上記[チェッキング抑制剤]欄等において上述したとおりである。
【実施例0132】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0133】
[原料]
実施例及び比較例で使用した原料は以下のとおりである。
【0134】
還元水飴A:エスイー100(物産フードサイエンス(株)製;低糖化還元水飴;還元前の水飴のDE15;糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含量73質量%;糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和14.5質量%;糖アルコール質量比0.2;Tg146℃;固形分濃度70質量%)
還元水飴B:エスイー30(物産フードサイエンス(株)製;低糖化還元水飴;還元前の水飴のDE30;糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含量59.5質量%;糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和20.5質量%;糖アルコール質量比0.3;Tg80℃;固形分濃度70質量%)
還元水飴C:エスイー57(物産フードサイエンス(株)製;中糖化還元水飴;還元前の水飴のDE40;糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含量21.5質量%;糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和55.5質量%;糖アルコール質量比2.6;Tg58℃;固形分濃度70質量%)
還元水飴D:エスイー600(物産フードサイエンス(株)製;高糖化還元水飴;還元前の水飴のDE70;糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含量3質量%;糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和85質量%;糖アルコール質量比28.3;Tg16℃;固形分濃度70質量%)
水飴砂糖混合物:ニューフラクトR40(昭和産業(株)製;水飴;グルコース、オリゴ糖、デキストリンの混合物で、糖アルコールを含有しない。)と砂糖(日新製糖(株)製;上白糖;固形分95質量%以上)とを30:70の質量比で混合したもの。(固形分濃度98質量%、Tg58℃)
ジアセチル酒石酸モノグリセリドA:PANODAN U 2010(ダニスコジャパン(株)製;構成脂肪酸残基の70質量%以上が飽和脂肪酸残基;HLBは8~10の範囲)
ジアセチル酒石酸モノグリセリドB:PANODAN AB 100 VEG(ダニスコジャパン(株)製;構成脂肪酸残基の70質量%以上が不飽和脂肪酸残基;HLBは8~10の範囲)
コハク酸モノグリセリド:ポエムB-10(理研ビタミン(株)製;構成脂肪酸残基の70%以上が飽和脂肪酸残基;HLB=5.5)
ソルビタン脂肪酸エステル:GRINSTED SMS MB(ダニスコジャパン(株)製;構成脂肪酸残基の70質量%以上が不飽和脂肪酸残基;HLBは4~6の範囲)
脂肪酸モノグリセリド:エマルジーMS(理研ビタミン(株)製;構成脂肪酸残基の70%以上が飽和脂肪酸残基;HLB=4.3)
【0135】
[製造例]
実施例及び比較例で使用した糖アルコール組成物は以下のとおり製造した。
【0136】
(製造例1:糖アルコール組成物1)
還元水飴Aをそのまま糖アルコール組成物1とした。
【0137】
(製造例2:糖アルコール組成物2)
還元水飴Bをそのまま糖アルコール組成物2とした。
【0138】
(製造例3:糖アルコール組成物3)
還元水飴Cをそのまま糖アルコール組成物3とした。
【0139】
(製造例4:糖アルコール組成物4)
還元水飴A 70質量部と還元水飴C 30質量部とを混合して、糖アルコール組成物4とした。
なお、糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含量57.6質量%、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和26.8質量%、糖アルコール質量比0.5、固形分濃度70質量%である。
【0140】
(製造例5:糖アルコール組成物5)
還元水飴B 70質量部と還元水飴C 30質量部とを混合して、糖アルコール組成物5とした。
なお、糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含量48.1質量%、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和31質量%、糖アルコール質量比0.6、固形分濃度70質量%である。
【0141】
(製造例6:糖アルコール組成物6)
還元水飴A 50質量部と還元水飴C 50質量部とを混合して、糖アルコール組成物6とした。
なお、糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含量47.3質量%、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和35質量%、糖アルコール質量比0.7、固形分濃度70質量%である。
【0142】
(製造例7:糖アルコール組成物7)
還元水飴B 50質量部と還元水飴C 50質量部とを混合して、糖アルコール組成物7とした。
なお、糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含量40.5質量%、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和38質量%、糖アルコール質量比0.9、固形分濃度70質量%である。
【0143】
(製造例8:糖アルコール組成物8)
還元水飴A 30質量部と還元水飴C 70質量部とを混合して、糖アルコール組成物8とした。
なお、糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含量37質量%、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和43.2質量%、糖アルコール質量比1.2、固形分濃度70質量%である。
【0144】
(製造例9:糖アルコール組成物9)
還元水飴B 30質量部と還元水飴C 70質量部とを混合して、糖アルコール組成物9とした。
なお、糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含量32.9質量%、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和45質量%、糖アルコール質量比1.4、固形分濃度70質量%である。
【0145】
(製造例10:糖アルコール組成物10)
還元水飴Dをそのまま糖アルコール組成物10とした。
【0146】
(製造例11:糖アルコール組成物11)
還元水飴C 92質量部と還元水飴D 8質量部とを混合して、糖アルコール組成物11とした。
なお、糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含量20.0質量%、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和57.9質量%、糖アルコール質量比2.9、固形分濃度70質量%である。
【0147】
(製造例12:糖アルコール組成物12)
還元水飴C 85質量部と還元水飴D 15質量部とを混合して、糖アルコール組成物12とした。
なお、糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含量18.7質量%、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和59.9質量%、糖アルコール質量比3.2、固形分濃度70質量%である。
【0148】
(製造例13:糖アルコール組成物13)
還元水飴C 70質量部と還元水飴D 30質量部とを混合して、糖アルコール組成物13とした。
なお、糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含量16.0質量%、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和64.3質量%、糖アルコール質量比4.0、固形分濃度70質量%である。
【0149】
(製造例14:糖アルコール組成物14)
還元水飴C 55質量部と還元水飴D 45質量部とを混合して、糖アルコール組成物14とした。
なお、糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含量13.2質量%、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和68.8質量%、糖アルコール質量比5.2、固形分濃度70質量%である。
【0150】
(製造例15:糖アルコール組成物15)
還元水飴C 40質量部と還元水飴D 60質量部とを混合して、糖アルコール組成物15とした。
なお、糖組成における糖鎖長が5以上の糖アルコールの含量10.4質量%、糖鎖長が1又は2の糖アルコールの含有量の総和73.2質量%、糖アルコール質量比7.0、固形分濃度70質量%である。
【0151】
<検討1:糖組成の影響について>
検討1において、焼菓子のチェッキングの発生及び食感に対する糖組成の影響を検討した。
【0152】
〔1-1.連続相を油相とするチェッキング抑制剤の製造〕
まず、上記のようにして得られた、糖アルコール組成物1~15、水飴砂糖混合物を用いて、以下の方法により、連続相を油相とするチェッキング抑制剤を製造した。
【0153】
ショートニング((株)ADEKA製「プレミアムショートCF」、油分含量100%)を83質量部、糖アルコール組成物1~15のいずれか、若しくは水飴砂糖混合物を17質量部だけボウルにとり、ミキサーで撹拌し、十分に混合し、チェッキング抑制剤を得た。
【0154】
以下、使用した糖アルコール組成物に付された番号に対応して、チェッキング抑制剤1~15とも記載する。また、水飴砂糖混合物を使用して製造されたものについては、チェッキング抑制剤16と記載する。
なお、チェッキング抑制剤1~9、11~13は実施例に相当し、チェッキング抑制剤10、14~16は比較例に相当する。
【0155】
〔1-2.焼菓子の製造〕
次いで、製造したチェッキング抑制剤1~16を用いて、以下の手順に従って焼菓子(クッキー)を製造した。
【0156】
(1)クッキー生地の製造
15℃に調温したチェッキング抑制剤1~16のうち1つを40質量部、上白糖を30質量部だけミキサーボウルに量って、卓上ミキサーにセットし、軽く混合した後、高速で7分間クリーミングした。次いで、低速で混合しながら、水5質量部を添加した後、全卵10質量部、食塩0.5質量部を添加し、さらに1分混合し、混合物を得た。得られた混合物に、予め混合して篩っておいた薄力粉100質量部と脱脂粉乳5質量部の混合物を添加し、低速で1分混合して、クッキー生地1~16を得た。ここで、クッキー生地の番号は、使用したチェッキング抑制剤に付された番号に対応する(後述するクッキーの番号も同様)。
なお、クッキー生地1~15は、穀粉類100質量部に対して、糖アルコール組成物の固形分が4.8質量部含有されている生地である。
【0157】
(2)クッキーの製造
得られたクッキー生地1~16を、それぞれ厚さ5ミリとなるように圧延し、クッキー用の抜型(φ49×H45mm)を用いて、成型した。成型したクッキー生地を、各クッキー生地につき20枚分ずつ、オーブン(フジサワ社製)で、上火210℃下火190℃にて12分焼成後、天板の上でそのまま冷却し、クッキー1~16を得た。
【0158】
〔1-3.評価〕
得られた焼菓子(クッキー)1~16について、チェッキングと食感を、以下の評価方法・基準に基づき評価した。
【0159】
(1)焼菓子のチェッキングの評価
冷却後の焼菓子のヒビや割れの有無を目視で観察し、以下の評価基準で評点を付けた。なお、本評価では、+++、++、+、±の評点が付されたものを合格品とした。
【0160】
評価基準:
+++:20枚のうち、ヒビや割れが確認されたものが0~1枚であった。
++:20枚のうち、ヒビや割れが確認されたものが2~3枚であった。
+:20枚のうち、ヒビや割れが確認されたものが4~5枚であった。
±:20枚のうち、ヒビや割れが確認されたものが6~7枚であった。
-:20枚のうち、ヒビや割れが確認されたものが8~9枚であった。
--:20枚のうち、ヒビや割れが確認されたものが10枚以上であった。
【0161】
(2)焼菓子の食感の評価
得られたクッキーを、パネラー10名により、以下の評価基準に基づいて評価を行った。そして、パネラー10名の合計点を評価点数として、評価点数が38~40点を+++、35~37点を++、32~34点を+、28~31点を±、21~27点を-、20点以下を--とした。なお、評価に先立ち、パネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。
【0162】
評価基準:
4点:非常に口溶けやバラけがよく、良好なサクサクとした噛みだしを有している。
3点:口溶け・バラけがよく、やや目が詰まった食感を有するが、サクサクとした噛みだしを有している。
2点:口溶けやバラけがやや悪く、目が詰まった食感を有し、固い噛みだしを有している。若しくは、口溶け・バラけはよいが、軟らかく、サクサクとした噛みだしが乏しかった。
1点:口溶け・バラけが悪い上、噛みだしが固く、ガリガリとした食感を有している。若しくは、口溶け・バラけはよいが、軟らかく、サクサクとした噛みだしが感じられなかった。
【0163】
検討1における評価結果を表1に示す。
【0164】
【表1】
【0165】
<検討2:乳化剤の効果について>
検討2において、焼菓子のチェッキングの抑制に与える乳化剤の影響を検討した。
【0166】
検討2では、糖アルコール組成物3と水飴砂糖混合物、ジアセチル酒石酸モノグリセリドA及びB、コハク酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリドを用いて、以下のとおり、連続相を油相とするチェッキング抑制剤17~23を製造した。
【0167】
なお、チェッキング抑制剤17~21は、糖アルコール組成物の固形分1質量部に対して、0.08質量部の乳化剤を含有しており、チェッキング抑制剤22は、糖アルコール組成物の固形分1質量部に対して、0.04質量部の乳化剤を含有している。
【0168】
(チェッキング抑制剤17)
ショートニング((株)ADEKA製「プレミアムショートCF」、油分含量100%)を82質量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリドAを1質量部、糖アルコール組成物3を17質量部だけボウルにとり、ミキサーで撹拌し、十分に混合し、チェッキング抑制剤17を得た。
【0169】
(チェッキング抑制剤18)
ジアセチル酒石酸モノグリセリドAに代えてジアセチル酒石酸モノグリセリドBを使用した以外は、チェッキング抑制剤17と同様にして、チェッキング抑制剤18を得た。
【0170】
(チェッキング抑制剤19)
ジアセチル酒石酸モノグリセリドAに代えてコハク酸モノグリセリドを使用した以外は、チェッキング抑制剤17と同様にして、チェッキング抑制剤19を得た。
【0171】
(チェッキング抑制剤20)
ジアセチル酒石酸モノグリセリドAに代えてソルビタンモノ脂肪酸エステルを使用した以外は、チェッキング抑制剤17と同様にして、チェッキング抑制剤20を得た。
【0172】
(チェッキング抑制剤21)
ジアセチル酒石酸モノグリセリドAに代えて脂肪酸モノグリセリドを使用した以外は、チェッキング抑制剤17と同様にして、チェッキング抑制剤21を得た。
【0173】
(チェッキング抑制剤22)
ショートニング((株)ADEKA製「プレミアムショートCF」、油分含量100%)を82.5質量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリドAを0.5質量部、糖アルコール組成物3を17質量部だけボウルにとり、ミキサーで撹拌し、十分に混合し、チェッキング抑制剤22を得た。
【0174】
(チェッキング抑制剤23)
糖アルコール組成物3に代えて水飴砂糖混合物を使用した以外は、チェッキング抑制剤17と同様にして、チェッキング抑制剤23を得た。
【0175】
なお、チェッキング抑制剤17~22は実施例に相当し、チェッキング抑制剤23は比較例に相当する。
【0176】
得られたチェッキング抑制剤17~23を用いて、検討1と同様の手順で焼菓子(クッキー)17~23を製造し、検討1と同様の方法で評価を行った。
【0177】
検討2における評価結果を表2に示す。なお、参考としてチェッキング抑制剤3を用いて製造されたクッキーの評価も示す。
【0178】
【表2】
【0179】
<検討3:連続相の影響について>
検討3では、検討1および2と異なり、連続相を水相とするチェッキング抑制剤を製造し、その効果を検討した。
【0180】
(チェッキング抑制剤24)
糖アルコール組成物3を84質量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリドAを10.5質量部、水5.5質量部をボウルにとり、ミキサーで撹拌し、十分に混合し、チェッキング抑制剤24を得た。
【0181】
(チェッキング抑制剤25)
糖アルコール組成物3を75.5質量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリドAを9.5質量部、水15質量部をボウルにとり、ミキサーで撹拌し、十分に混合し、チェッキング抑制剤25を得た。
【0182】
(チェッキング抑制剤26)
糖アルコール組成物3を66.7質量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリドAを8.3質量部、水25質量部をボウルにとり、ミキサーで撹拌し、十分に混合し、チェッキング抑制剤26を得た。
【0183】
(チェッキング抑制剤27)
糖アルコール組成物3を48.9質量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリドAを6.1質量部、水45質量部をボウルにとり、ミキサーで撹拌し、十分に混合し、チェッキング抑制剤27を得た。
【0184】
(チェッキング抑制剤28)
糖アルコール組成物3を60質量部と水40質量部をボウルにとり、ミキサーで撹拌し、十分に混合し、連続相を水相とするチェッキング抑制剤28を得た。
【0185】
〔焼菓子の製造〕
調製したチェッキング抑制剤24~28を用いて、以下の手順に従って焼菓子(クッキー)を製造した。
【0186】
(1)クッキー生地の製造
クッキー生地は、表3に示す配合に従って製造した。まずマーガリン((株)ADEKA製「ブロンテ」、油分含量83質量%)と上白糖をミキサーボウルに量って、卓上ミキサーにセットし、軽く混合した後、高速で7分間クリーミングした。次いで、低速で混合しながら、チェッキング抑制剤24~28のいずれか1つ及び必要に応じて水を添加した後、全卵、食塩を添加し、さらに1分混合し、混合物を得た。得られた混合物に、予め混合して篩っておいた薄力粉と脱脂粉乳の混合物を添加し、低速で1分混合して、ワイヤーカットクッキー生地24~28を得た。ここで、クッキー生地の番号は、使用したチェッキング抑制剤に付された番号に対応する(後述するクッキーの番号も同様)。
なお、クッキー生地24~28は、穀粉類100質量部に対して、糖アルコール組成物の固形分が2.6質量部含有されている生地であった。
【0187】
(2)クッキーの製造
得られたクッキー生地24~28を、それぞれ厚さ5ミリとなるように圧延し、クッキー用の抜型(φ49×H45mm)を用いて、成型した。成型したクッキー生地を、各クッキー生地につき20枚分ずつ、オーブン(フジサワ社製)で、上火210℃下火190℃にて12分焼成後、天板の上でそのまま冷却し、クッキー24~28を得た。
【0188】
得られた焼菓子(クッキー)24~28について、検討1と同様の評価方法・基準に基づき評価を行った。検討3における評価結果を表4に示す。
【0189】
【表3】
【0190】
【表4】
【0191】
<検討4:蛋白質高含有焼菓子生地に対するチェッキング抑制剤の適用>
検討4において、焼菓子生地配合中に含有される蛋白質の量を高めた、蛋白質高含有焼菓子生地に対して、チェッキング抑制剤を適用した際の効果を検討した。
【0192】
(チェッキング抑制剤29)
ショートニング((株)ADEKA製「プレミアムショートCF」、油分含量100%)を80質量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリドAを3質量部、糖アルコール組成物2を8質量部、水9質量部だけボウルにとり、ミキサーで撹拌し、十分に混合し、チェッキング抑制剤29を得た。
【0193】
(チェッキング抑制剤30)
糖アルコール組成物2に代えて糖アルコール組成物3を使用した以外は、チェッキング抑制剤29と同様にして、チェッキング抑制剤30を得た。
【0194】
(チェッキング抑制剤31)
ショートニング((株)ADEKA製「プレミアムショートCF」、油分含量100%)を78質量部、ジアセチル酒石酸モノグリセリドAを5質量部、糖アルコール組成物3を8質量部、水9質量部だけボウルにとり、ミキサーで撹拌し、十分に混合し、チェッキング抑制剤31を得た。
【0195】
(チェッキング抑制剤32)
糖アルコール組成物2に代えて糖アルコール組成物8を使用した以外は、チェッキング抑制剤29と同様にして、チェッキング抑制剤32を得た。
【0196】
(チェッキング抑制剤33)
ショートニング((株)ADEKA製「プレミアムショートCF」、油分含量100%)を83質量部、糖アルコール組成物3を8質量部、水9質量部だけボウルにとり、ミキサーで撹拌し、十分に混合し、チェッキング抑制剤33を得た。
【0197】
〔焼菓子の製造〕
製造したチェッキング抑制剤29~33を用いて、以下の手順に従って焼菓子(クッキー)を製造した。
【0198】
(1)クッキー生地の製造
クッキー生地は、表5に示す配合に従って製造した。まずチェッキング抑制剤29~33のいずれか1つと上白糖をミキサーボウルに量って、卓上ミキサーにセットし、軽く混合した後、高速で7分間クリーミングした。次いで、低速で混合しながら、水を添加した後、全卵、食塩を添加し、さらに1分混合し、混合物を得た。得られた混合物に、予め混合して篩っておいた薄力粉((株)日清製粉製「ハート」、蛋白質含量8.3質量%)とホエイ蛋白質濃縮物( SAPUTO CHEESE USA INC.製「WPC-80」、蛋白質含量77質量%)、ベーキングパウダーの混合物を添加し、低速で1分混合して、クッキー生地29~33を得た。ここで、クッキー生地の番号は、使用したチェッキング抑制剤に付された番号に対応する(後述するクッキーの番号も同様)。
なお、クッキー生地29~33は、穀粉類と蛋白質粉末の合算値100質量部に対して、糖アルコール組成物の固形分が2.8質量部含有されている生地であった。
【0199】
得られたクッキー生地29~33を、それぞれ厚さ5ミリとなるように圧延し、クッキー用の抜型(φ49×H45mm)を用いて、成型した。成型したクッキー生地を、各クッキー生地につき20枚分ずつ、オーブン(フジサワ社製)で、上火210℃下火190℃にて12分焼成後、天板の上でそのまま冷却し、クッキー29~33を得た。
【0200】
得られた焼菓子(クッキー)29~33について、検討1と同様の評価方法・基準に基づき評価を行った。検討4における評価結果を表6に示す。
【0201】
【表5】
【0202】
【表6】
【0203】
<検討5:チェッキング抑制剤の量の影響について>
検討5において、焼菓子生地配合中に含有されるチェッキング抑制剤の量を変えて、チェッキング抑制効果に与える影響を検討した。
【0204】
本検討では、チェッキング抑制剤3、9及び13を用いて、各チェッキング抑制剤につき、焼菓子生地の製造に使用される穀粉類100質量部に対し、該チェッキング抑制剤中の糖アルコール組成物が固形分として1.2質量部、2.4質量部、3.6質量部となるような量にてチェッキング抑制剤の配合量を変えた。
【0205】
〔焼菓子34の製造〕-チェッキング抑制剤3(固形分として1.2質量部)-
(1)クッキー生地の製造
15℃に調温したチェッキング抑制剤3を10質量部、ショートニング((株)ADEKA製「プレミアムショートCF」、油分含量100%)30質量部、上白糖を30質量部だけミキサーボウルに量って、卓上ミキサーにセットし、軽く混合した後、高速で7分間クリーミングした。次いで、低速で混合しながら、水5質量部を添加した後、全卵10質量部、食塩0.5質量部を添加し、さらに1分混合し、混合物を得た。得られた混合物に、予め混合して篩っておいた薄力粉100質量部と脱脂粉乳5質量部の混合物を添加し、低速で1分混合して、クッキー生地34を得た。
なお、クッキー生地34は、穀粉類100質量部に対して、糖アルコール組成物の固形分が1.2質量部含有されている生地であった。
【0206】
(2)クッキーの製造
得られたクッキー生地34を、厚さ5ミリとなるように圧延し、クッキー用の抜型(φ49×H45mm)を用いて、成型した。成型したクッキー生地を、20枚だけ、オーブン(フジサワ社製)で、上火210℃下火190℃にて12分焼成後、天板の上でそのまま冷却し、クッキー34を得た。
【0207】
〔焼菓子35の製造〕-チェッキング抑制剤3(固形分として2.4質量部)-
15℃に調温したチェッキング抑制剤3の配合量を10質量部から20質量部に変更した点、ショートニングの配合量を30質量部から20質量部に変更した点以外は、焼菓子34の製造と同様にして、クッキー生地35およびクッキー35を得た。
なお、クッキー生地35は、穀粉類100質量部に対して、糖アルコール組成物の固形分が2.4質量部含有されている生地であった。
【0208】
〔焼菓子36の製造〕-チェッキング抑制剤3(固形分として3.6質量部)-
15℃に調温したチェッキング抑制剤3の配合量を10質量部から30質量部に変更した点、ショートニングの配合量を30質量部から10質量部に変更した点以外は、焼菓子34の製造と同様にして、クッキー生地36およびクッキー36を得た。
なお、クッキー生地36は、穀粉類100質量部に対して、糖アルコール組成物の固形分が3.6質量部含有されている生地であった。
【0209】
〔焼菓子37の製造〕-チェッキング抑制剤9(固形分として1.2質量部)-
チェッキング抑制剤3に代えてチェッキング抑制剤9を使用した以外は、焼菓子34の製造と同様にして、クッキー生地37及びクッキー37を得た。
なお、クッキー生地37は、穀粉類100質量部に対して、糖アルコール組成物の固形分が1.2質量部含有されている生地であった。
【0210】
〔焼菓子38の製造〕-チェッキング抑制剤9(固形分として2.4質量部)-
チェッキング抑制剤3に代えてチェッキング抑制剤9を使用した以外は、焼菓子35の製造と同様にして、クッキー生地38及びクッキー38を得た。
なお、クッキー生地38は、穀粉類100質量部に対して、糖アルコール組成物の固形分が2.4質量部含有されている生地であった。
【0211】
〔焼菓子39の製造〕-チェッキング抑制剤9(固形分として3.6質量部)-
チェッキング抑制剤3に代えてチェッキング抑制剤9を使用した以外は、焼菓子36の製造と同様にして、クッキー生地39及びクッキー39を得た。
なお、クッキー生地39は、穀粉類100質量部に対して、糖アルコール組成物の固形分が3.6質量部含有されている生地であった。
【0212】
〔焼菓子40の製造〕-チェッキング抑制剤13(固形分として1.2質量部)-
チェッキング抑制剤3に代えてチェッキング抑制剤13を使用した以外は、焼菓子34の製造と同様にして、クッキー生地40及びクッキー40を得た。
なお、クッキー生地40は、穀粉類100質量部に対して、糖アルコール組成物の固形分が1.2質量部含有されている生地であった。
【0213】
〔焼菓子41の製造〕-チェッキング抑制剤13(固形分として2.4質量部)-
チェッキング抑制剤3に代えてチェッキング抑制剤13を使用した以外は、焼菓子35の製造と同様にして、クッキー生地41及びクッキー41を得た。
なお、クッキー生地41は、穀粉類100質量部に対して、糖アルコール組成物の固形分が2.4質量部含有されている生地であった。
【0214】
〔焼菓子42の製造〕-チェッキング抑制剤13(固形分として3.6質量部)-
チェッキング抑制剤3に代えてチェッキング抑制剤13を使用した以外は、焼菓子36の製造と同様にして、クッキー生地42及びクッキー42を得た。
なお、クッキー生地42は、穀粉類100質量部に対して、糖アルコール組成物の固形分が3.6質量部含有されている生地であった。
【0215】
得られた焼菓子(クッキー)34~42について、検討1と同様の評価方法・基準に基づき評価を行った。検討5における評価結果を表7に示す。
【0216】
【表7】
【0217】
<検討6:焼菓子生地中の油脂分量の影響について>
検討6において、焼菓子生地配合中の油脂分量を増加させた場合における、チェッキング抑制剤が与える影響を検討した。
【0218】
〔焼菓子43の製造〕
(1)クッキー生地の製造
15℃に調温したバター(よつ葉乳業(株)製「よつ葉無塩バター」、油脂分83質量%)75質量部、上白糖35質量部、食塩1質量部をボウルに量ってすり混ぜた後、卵黄18質量部を少しずつ加えながら混合した。ここに篩っておいた薄力粉100質量部、ベーキングパウダー1質量部を加えて混合し、5℃の冷蔵庫で60分休ませて、クッキー生地を得た。
【0219】
(2)クッキーの製造
得られたクッキー生地を7mmに圧延し、クッキー用の抜型(φ49×H45mm)を用いて、成型した。成型したクッキー生地を、20枚だけ、オーブン(フジサワ社製)で、上火170℃下火170℃にて20分焼成後、天板の上でそのまま冷却し、クッキー43を得た。
【0220】
〔焼菓子44の製造〕
バターに代えてチェッキング抑制剤3を使用した以外は、焼菓子43の製造と同様にして、クッキー44を得た。
【0221】
〔焼菓子45の製造〕
バターに代えてチェッキング抑制剤17を使用した以外は、焼菓子43の製造と同様にして、クッキー45を得た。
【0222】
〔焼菓子46の製造〕
バターに代えてチェッキング抑制剤18を使用した以外は、焼菓子43と同様にして、クッキー46を得た。
【0223】
〔焼菓子47の製造〕
バターに代えてチェッキング抑制剤23を使用した以外は、焼菓子43と同様にして、クッキー47を得た。
【0224】
得られた焼菓子(クッキー)43~47について、検討1と同様の評価方法・基準に基づき評価を行った。検討6における評価結果を表8に示す。
【0225】
【表8】
【0226】
<検討7:複合菓子におけるチェッキング抑制剤の効果について>
検討7において、焼菓子と油性菓子とを組み合わせてなる複合菓子(チョコチップクッキー)を製造し、該複合菓子に与えるチェッキング抑制剤の影響を検討した。
【0227】
〔複合菓子48の製造〕
(1)油性菓子と複合化された焼菓子生地(チョコチップ入りクッキー生地)の製造
15℃に調温したマーガリン((株)ADEKA製「ブロンテ」、油分含量83質量%)54質量部、上白糖を40質量部だけミキサーボウルに量って、卓上ミキサーにセットし、軽く混合した後、高速で7分間クリーミングした。次いで、低速で混合しながら、水6質量部、全卵20質量部、食塩0.5質量部、重炭安1質量部を、少しずつ添加し、さらに1分混合し、混合物を得た。得られた混合物に、予め混合して篩っておいた薄力粉100質量部、重曹1質量部、チョコチップ35質量部を添加し、軽く混合して、クッキー生地48を得た。
【0228】
(2)複合菓子(チョコチップクッキー)の製造
得られたクッキー生地48を15gずつ分割し丸めて、成型した。成型したクッキー生地を、20枚だけ、オーブン(フジサワ社製)で、上火180℃下火170℃にて20分焼成後、天板の上でそのまま冷却し、チョコチップクッキー48を得た。
【0229】
〔複合菓子49の製造〕
マーガリンに代えてチェッキング抑制剤3を使用した以外は、複合菓子48の製造と同様にして、チョコチップクッキー49を得た。
【0230】
〔複合菓子50の製造〕
マーガリンに代えてチェッキング抑制剤17を使用した以外は、複合菓子48の製造と同様にして、チョコチップクッキー50を得た。
【0231】
〔複合菓子51の製造〕
マーガリンに代えてチェッキング抑制剤18を使用した以外は、複合菓子48の製造と同様にして、チョコチップクッキー51を得た。
【0232】
〔複合菓子52の製造〕
マーガリンに代えてチェッキング抑制剤23を使用した以外は、複合菓子48の製造と同様にして、チョコチップクッキー52を得た。
【0233】
得られた複合菓子(チョコチップクッキー)48~52について、検討1と同様の評価方法・基準に基づき評価を行った。検討7における評価結果を表9に示す。
【0234】
【表9】