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特開2022-152992全脂大豆粉末を使用した固形状大豆加工品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152992
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】全脂大豆粉末を使用した固形状大豆加工品
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/45 20210101AFI20221004BHJP
   A23L 11/00 20210101ALI20221004BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20221004BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20221004BHJP
【FI】
A23L11/45 Z
A23L11/00 Z
A23L29/244
A23L29/262
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055981
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柑本 雅司
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 敏樹
【テーマコード(参考)】
4B020
4B041
【Fターム(参考)】
4B020LB01
4B020LC04
4B020LG01
4B020LK02
4B020LK05
4B020LK07
4B020LP03
4B020LP08
4B020LP15
4B020LP23
4B020LR02
4B020LR07
4B041LC03
4B041LD01
4B041LE08
4B041LH08
4B041LH11
4B041LK02
4B041LK14
4B041LK25
4B041LP01
4B041LP10
4B041LP16
(57)【要約】
【課題】 原料に全脂大豆粉末を使用した固形状大豆加工品において、食感が豆腐と類似しており、また、固さの点において、豆腐として適度な固さ、やや硬い固さ、又はやや柔らかい固さであり、そして、滑らかな食感の固形状大豆加工品、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 全脂大豆粉末、乾燥卵白、メチルセルロース、及び水を含有する固形状大豆加工品で、固形状大豆加工品の全原料を100質量%とした場合、原料中の該全脂大豆粉末の含量が5.5~13質量%、該乾燥卵白の含量が2~7質量%、該メチルセルロースの含量が0.3~2質量%である固形状大豆加工品、及びその製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全脂大豆粉末、乾燥卵白、メチルセルロース、及び水を含有する固形状大豆加工品で、固形状大豆加工品の全原料を100質量%とした場合、原料中の該全脂大豆粉末の含量が5.5~13質量%、該乾燥卵白の含量が2~7質量%、該メチルセルロースの含量が0.3~2質量%であることを特徴とする固形状大豆加工品。
【請求項2】
さらに、前記原料に、蛋白凝固剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の固形状大豆加工品。
【請求項3】
さらに、前記原料に、グルコマンナンを含有し、固形状大豆加工品の全原料を100質量%とした場合、原料中の該グルコマンナンの含量が1.7質量%以下であり、かつ、原料中の該グルコマンナンと該乾燥卵白の質量比(グルコマンナン/乾燥卵白)が、40/100以下であり、原料中の該グルコマンナンと該乾燥卵白の合計量が、7.2質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の固形状大豆加工品。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の固形状大豆加工品を使用した食品。
【請求項5】
固形状大豆加工品の全原料を100質量%とした場合、全脂大豆粉末を5.5~13質量%、乾燥卵白を2~7質量%、メチルセルロースを0.3~2質量%、及び水を含む原料を使用した固形状大豆加工品の製造方法であって、
該全脂大豆粉末、及び水を混合して全脂大豆粉末分散水溶液を得る全脂大豆粉末分散水溶液調製工程と、
該全脂大豆粉末分散水溶液を70℃以上に加熱する加熱処理工程と、
該加熱された全脂大豆粉末分散水溶液を50℃以下に冷却する冷却工程と、
該冷却された全脂大豆粉末分散水溶液に、該乾燥卵白、及び該メチルセルロースを添加する添加工程と、
該添加工程により得られた全脂大豆粉末分散水溶液を60℃以上に加熱して固化させる固化工程と、
を含む固形状大豆加工品の製造方法。
【請求項6】
さらに、前記添加工程で、該冷却された全脂大豆粉分散水溶液に該蛋白凝固剤を添加することを特徴とする請求項5に記載の固形状大豆加工品の製造方法。
【請求項7】
さらに、前記添加工程で、該冷却された全脂大豆粉分散水溶液にグルコマンナンを添加し、固形状大豆加工品の全原料を100質量%とした場合、グルコマンナンが1.7質量%以下であり、かつ、該グルコマンナンと該乾燥卵白の質量比(グルコマンナン/乾燥卵白)が、40/100以下であり、該グルコマンナンと該乾燥卵白の合計量が、7.2質量%以下である原料を使用したことを特徴とする請求項5又は6に記載の固形状大豆加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全脂大豆粉末を使用した固形状大豆加工品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆加工品は、古くから豆腐、豆乳、納豆等として馴染み深く食されてきたが、近年では健康志向の高まりから、大豆に含まれる成分が注目されており、また、蛋白資源としても大豆は世界的に注目を集めている。
その中でも豆腐は日本の伝統的な食品であるが、近年、豆腐の製造者は減少しており、またその消費量も減少してきている。さらに、豆腐を製造すると、廃棄物としておからが発生してしまうという問題もあった。
一方で、がんもどき、揚げ豆腐、焼き豆腐等、豆腐を原料として製造される豆腐加工品は、現在もほぼ一定の市場を確保している。
しかし、上述したように、原料の豆腐を製造すると、廃棄物としておからが発生するという問題があり、また、豆腐は日持ちがしないので加工品の原料としては取り扱いが難しいという欠点があった。
その欠点を解消すべく、廃棄物としておからが発生しない豆腐様食品、例えば、全粒大豆粉末を原料として用いた豆腐様食品が開発されてきたが、全脂大豆粉末を使用して製造した豆腐様食品は、口当たりが粗くなってしまうという問題点があった。
そこで、全脂大豆粉末を原料として使用し、植物組織を崩壊させる酵素剤を作用させることで、伝統的の豆腐と同等の官能性を有する豆腐を製造できることが報告されていた(特許文献1)。
また、豆腐原料の日持ちがしないという欠点を解消するために、原料として豆腐を使用しないがんもどきの製造方法等も開発されていた(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-135419号公報
【特許文献2】特開2014-124138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、原料に全脂大豆粉末を使用した固形状大豆加工品において、食感が豆腐と類似しており、また、固さの点において、豆腐として適度な固さ、やや硬い固さ、又はやや柔らかい固さであり、そして、滑らかな食感の固形状大豆加工品、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、原料に全脂大豆粉末を使用した固形状大豆加工品において、原料に乾燥卵白、及びメチルセルロースを特定量使用すること、又はさらに蛋白凝固剤やグルコマンナンを特定量使用することで、食感が豆腐と類似しており、また、固さの点において、豆腐として適度な固さ、やや硬い固さ、又はやや柔らかい固さであり、そして、滑らかな食感の固形状大豆加工品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下に関するものである。
〔1〕全脂大豆粉末、乾燥卵白、メチルセルロース、及び水を含有する固形状大豆加工品で、固形状大豆加工品の全原料を100質量%とした場合、原料中の該全脂大豆粉末の含量が5.5~13質量%、該乾燥卵白の含量が2~7質量%、該メチルセルロースの含量が0.3~2質量%であることを特徴とする固形状大豆加工品。
〔2〕さらに、前記原料に、蛋白凝固剤を含有することを特徴とする〔1〕に記載の固形状大豆加工品。
〔3〕さらに、前記原料に、グルコマンナンを含有し、固形状大豆加工品の全原料を100質量%とした場合、原料中の該グルコマンナンの含量が1.7質量%以下であり、かつ、原料中の該グルコマンナンと該乾燥卵白の質量比(グルコマンナン/乾燥卵白)が、40/100以下であり、原料中の該グルコマンナンと該乾燥卵白の合計量が、7.2質量%以下であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の固形状大豆加工品。
〔4〕〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の固形状大豆加工品を使用した食品。
〔5〕 固形状大豆加工品の全原料を100質量%とした場合、全脂大豆粉末を5.5~13質量%、乾燥卵白を2~7質量%、メチルセルロースを0.3~2質量%、及び水を含む原料を使用した固形状大豆加工品の製造方法であって、
該全脂大豆粉末、及び水を混合して全脂大豆粉末分散水溶液を得る全脂大豆粉末分散水溶液調製工程と、
該全脂大豆粉末分散水溶液を70℃以上に加熱する加熱処理工程と、
該加熱された全脂大豆粉末分散水溶液を50℃以下に冷却する冷却工程と、
該冷却された全脂大豆粉末分散水溶液に、該乾燥卵白、及び該メチルセルロースを添加する添加工程と、
該添加工程により得られた全脂大豆粉末分散水溶液を60℃以上に加熱して固化させる固化工程と、
を含む固形状大豆加工品の製造方法。
〔6〕 さらに、前記添加工程で、該冷却された全脂大豆粉分散水溶液に該蛋白凝固剤を添加することを特徴とする〔5〕に記載の固形状大豆加工品の製造方法。
〔7〕 さらに、前記添加工程で、該冷却された全脂大豆粉分散水溶液にグルコマンナンを添加し、固形状大豆加工品の全原料を100質量%とした場合、グルコマンナンが1.7質量%以下であり、かつ、該グルコマンナンと該乾燥卵白の質量比(グルコマンナン/乾燥卵白)が、40/100以下であり、該グルコマンナンと該乾燥卵白の合計量が、7.2質量%以下である原料を使用したことを特徴とする〔5〕又は〔6〕に記載の固形状大豆加工品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、原料に全脂大豆粉末を使用していても、食感が豆腐と類似しており、また、固さの点において、豆腐として適度な固さ、やや硬い固さ、又はやや柔らかい固さであり、そして、食感が滑らかである固形状大豆加工品、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0009】
本発明の固形状大豆加工品は、全脂大豆粉末、乾燥卵白、メチルセルロース、及び水を含有する固形状大豆加工品で、該固形状大豆加工品の全原料中の該全脂大豆粉末の含量が5.5~13質量%、該乾燥卵白の含量が2~7質量%、該メチルセルロースの含量が0.3~2質量%である。
また、前記原料に、蛋白凝固剤を含有させることもできる。
【0010】
また、本発明の固形状大豆加工品は、全脂大豆粉末、乾燥卵白、メチルセルロース、グルコマンナン、及び水を含有する固形状大豆加工品で、該固形状大豆加工品の全原料中の該全脂大豆粉末の含量が5.5~13質量%、該乾燥卵白の含量が2~7質量%、該メチルセルロースの含量が0.3~2質量%、該グルコマンナンの含量が1.7質量%以下であり、かつ、該グルコマンナンと該乾燥卵白の質量比(グルコマンナン/乾燥卵白)が、40/100以下であり、該グルコマンナンと該乾燥卵白の合計量が、7.2質量%以下である。
また、前記原料に、蛋白凝固剤を含有させることもできる。
【0011】
〔全脂大豆粉末〕
まず、本発明に使用する全脂大豆粉末について説明をする。
本発明に使用する全脂大豆粉末は、市販品を使用することができ、加熱処理をした加熱脱臭タイプの全脂大豆粉末であっても、加熱処理をしていない生タイプの全脂大豆粉末であっても使用することができる。
また、例えば、原料としてリポキシゲナーゼ欠失大豆のような特殊な大豆品種を使用した全脂大豆粉末も使用することができる。
【0012】
本発明に使用する全脂大豆粉末は、平均粒径が10~60μmであることが好ましく、15~50μmであることがより好ましく、20~40μmであることがさらに好ましい。
全脂大豆粉末の平均粒径がかかる範囲であると、よりザラツキが少ない固形状大豆加工品を得ることができる。
ここで、本発明での全脂大豆粉末(固体状態)の平均粒径は、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、装置名:Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201,ISO9276-1)に基づいて、乾式測定により測定した値(d50)である。
【0013】
本発明に使用する全脂大豆粉末は、一般に行われている方法、すなわち、大豆の脱皮工程及び粉砕工程を経た製造方法により製造することができる。
全脂大豆粉末の製造では、加熱脱臭工程を行っても行わなくても良い。
脱皮工程では、脱皮機及び風力選別機を用いて大豆の脱皮を行うことができる。脱皮工程においては、脱皮機で大豆の脱皮を行った後、風力選別機により皮が取り除かれる。得られる全脂大豆粉末の風味をより向上させるために、皮だけではなく胚軸も取り除くことが好ましい。
粉砕工程は、ピンミルやハンマーミル等の粉砕機を用いて大豆の粉砕を行うことができる。粉砕は、全脂大豆粉末が100~200メッシュパスの粉末になるように行うことが好ましい。
また、全脂大豆粉末の平均粒径が、後述する平均粒径の値になるように粉砕することがさらに好ましい。
【0014】
全脂大豆粉末中の水分含量は、特に限定されないが、全脂大豆粉末中の水分含量が多い場合は全脂大豆粉末の品質劣化を招くおそれがあるため、8質量%以下であることが好ましく、4~8質量%であることがより好ましく、4~7質量%であることが最も好ましい。
【0015】
全脂大豆粉末は、原料大豆を入手し、先に説明した方法で製造しても良いが、市販品を使用することもできる。
全脂大豆粉末の市販品として、例えば、日清オイリオグループ(株)販売の生タイプの全脂大豆粉末(商品名「ソーヤフラワーNSA」、NSIは約90)、生タイプの全脂大豆粉末(商品名「モチフレッシュ」、NSIは約90)、加熱脱臭タイプの全脂大豆粉末(商品名「アルファプラスHS-600」)等が挙げられる。
なお、NSIは、試料中に含まれる全窒素に占める水溶性窒素の割合を示す指数である。具体的には、NSIは、試料に含まれる全窒素を100としたときに、試料の水抽出液に含まれる窒素量を相対量として表した数値である。
全脂大豆粉末のNSIは、基準油脂分析試験法((社)日本油化学会)1.8.1-2013水溶性窒素指数(40℃法)に基づいて算出することができる。
本発明において生タイプの全脂大豆粉末を使用する場合、そのNSIは、70~95であることが好ましく、75~90であることがより好ましく、80~90であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明の固形状大豆加工品の全原料中の全脂大豆粉末の含量は、固形状大豆加工品の全原料を100質量%として、5.5~13質量%であり、6~12質量%であることが好ましく、6.5~8.5質量%であることがより好ましい。
全脂大豆粉末の含量が、かかる範囲より少ないと、豆腐と類似した食感の固形状大豆加工品を得ることができず、また、かかる範囲より多いと、豆腐と類似した食感の固形状大豆加工品を得ることができず、得られる豆腐様食品の食感が粗いものとなってしまうからである。
【0017】
〔乾燥卵白〕
次に、本発明に使用する乾燥卵白について説明をする。
乾燥卵白は、卵の卵白の部分を乾燥させた食品のことをいう。乾燥卵白に対して水を7~8倍加えて混ぜることによって、卵白に還元することができ、水の量を調節すれば、好みの濃度の卵白を得ることができる。
卵の殻にはサルモネラ菌が発生しやすいが、乾燥卵白の場合、サルモネラ菌の心配がなく、安心して使用することができる。
本発明に使用する乾燥卵白は、市販品を使用することができる。
乾燥卵白の市販品として、例えば、キューピータマゴ(株)販売の商品「乾燥卵白K NO10」等が挙げられる。
【0018】
本発明の固形状大豆加工品の全原料中の乾燥卵白の含量は、固形状大豆加工品の全原料を100質量%として、2~7質量%であり、3~6質量%であることが好ましく、3~5質量%であることがより好ましい。
乾燥卵白の含量が、かかる範囲より少ないと、豆腐と類似した食感の固形状大豆加工品を得ることができず、得られる豆腐様食品の食感が粗くなってしまうからである。
また、乾燥卵白の含量が、かかる範囲より多いと、豆腐と類似した食感の固形状大豆加工品を得ることができないからである。
【0019】
〔メチルセルロース〕
次に、本発明に使用するメチルセルロースについて説明をする。
メチルセルロースは、セルロースの骨格にメトキシ基がついた構造をもつ高分子多糖類である。本発明に使用するメチルセルロースは、市販品を使用することができる。
メチルセルロースの市販品として、例えば、ユニテックフーズ(株)販売の商品「ヒートゲル 極」、信越化学工業(株)販売、「メトローズ MCE-100TS」等が挙げられる。
【0020】
本発明の固形状大豆加工品の全原料中のメチルセルロースの含量は、固形状大豆加工品の全原料を100質量%として、0.3~2質量%であり、0.3~1質量%であることが好ましく、0.3~0.8質量%であることがより好ましい。
乾燥卵白の含量が、かかる範囲より少ないと、豆腐と類似した食感の固形状大豆加工品を得ることができず、得られる豆腐様食品の食感が粗くなってしまうからである。
なお、メチルセルロースは、食品添加物の添加量規制により食品中の含量が2質量%以下とされている。
【0021】
〔蛋白凝固剤〕
本発明の固形状大豆加工品の原料には、蛋白凝固剤を含有させることもできる。
本発明に使用する蛋白凝固剤として、塩化マグネシウム(にがり)、硫酸カルシウム、グルコノデルタラクトン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
本発明の固形状大豆加工品の全原料中の蛋白凝固剤の含量は、固形状大豆加工品の全原料を100質量%として、1質量%以下であることが好ましく、0.1~0.5質量%であることがより好ましく、0.1~0.3質量%であることがさらに好ましい。かかる範囲であると、全脂大豆粉末分散水溶液を、より適度な固さに凝固できるからである。
蛋白凝固剤添加工程で添加する蛋白凝固剤は、蛋白凝固剤をそのまま使用することもできるが、全脂大豆粉末分散水溶液の不均一な凝固をより回避するために、蛋白凝固剤を水に溶解した蛋白凝固剤水溶液を使用することもできる。この場合、蛋白凝固剤水溶液に含まれる蛋白凝固剤の含量が上記のようになるように該蛋白凝固剤水溶液は添加される。
【0022】
〔グルコマンナン〕
本発明の固形状大豆加工品の原料には、グルコマンナンを含有させることもできる。
本発明のグルコマンナンを含有する固形状大豆加工品は、全脂大豆粉末、乾燥卵白、メチルセルロース、グルコマンナン、及び水を含有する固形状大豆加工品で、固形状大豆加工品の全原料を100質量%とした場合、原料中の該全脂大豆粉末の含量が5.5~13質量%、該乾燥卵白の含量が2~7質量%、該メチルセルロースの含量が0.3~2質量%、該グルコマンナンの含量が1.7質量%以下であり、かつ、該グルコマンナンと該乾燥卵白の質量比(グルコマンナン/乾燥卵白)が、40/100以下であり、該グルコマンナンと該乾燥卵白の合計量が、7.2質量%以下である。
また、前記原料に、蛋白凝固剤を含有させることもできる。
【0023】
グルコマンナンは、コンニャク芋から得られると水溶性の食物繊維である。
本発明に使用するグルコマンナンは、市販品を使用することができる。
グルコマンナンの市販品として、例えば、伊那食品工業(株)販売の商品「イナゲル ウルトラマンナン」等が挙げられる。
【0024】
グルコマンナンを含有する本発明の固形状大豆加工品の全原料中のグルコマンナンの含量は、1.7質量%以下であり、0.3~1.5質量%であることが好ましく、0.5~1.2質量%であることがより好ましい。
グルコマンナンの含量が、かかる範囲より多いと、豆腐と類似した食感の固形状大豆加工品を得ることができないからである。
また、グルコマンナンを配合する場合には、グルコマンナンと乾燥卵白の質量比(グルコマンナン/乾燥卵白)が、40/100以下であり、8/100~35/100であることが好ましく、12/100~34/100であることがより好ましく、また、グルコマンナンと乾燥卵白の合計量が、7.2質量%以下であり、3~7質量%であることが好ましく、4~7質量%であることがより好ましい。
グルコマンナンと乾燥卵白の質量比がかかる範囲外であると、得られる豆腐様食品の食感が粗くなってしまうからである。
また、グルコマンナンと乾燥卵白の合計量がかかる範囲外であると、豆腐と類似した食感の固形状大豆加工品を得ることができないからである。
【0025】
〔水〕
次に、本発明に使用する水について説明をする。
本発明に使用する水は特に限定されず、水道水、精製水、イオン交換水、井戸水等を使用することができる。
本発明の固形状大豆加工品の全原料中の水の含量は、固形状大豆加工品の全原料を100質量%として、80~90質量%であることが好ましく、83~90質量%であることがより好ましく、85~89質量%であることがさらに好ましい。
また、原料の水の一部を後述する蛋白凝固剤水溶液に使用する場合には、全脂大豆粉末分散水溶液調製工程で使用する水の量と、蛋白凝固剤水溶液に使用する水の量の合計量が、上記全原料中の水の含量になるようにすれば良い。
【0026】
〔その他の原料〕
本発明の固形状大豆加工品は、本発明の効果を損なわない限り、上記原料以外のその他の原料を含有してもよい。その他の原料として、例えば、油脂、酸味料、ビタミン類、アミノ酸、食塩、香料等が挙げられる。
油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、かぼちゃ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米糠油、パーム油、豚脂、牛脂、魚油等の各種植物油脂や各種動物油脂、これらの水素添加油脂、分別油脂、及びエステル交換油脂等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の油脂を配合することができる。
本発明の固形状大豆加工品の全原料中のその他の原料の含量は、固形状大豆加工品の全原料を100質量%として、0~12質量%であることが好ましく、0~7質量%であることがより好ましく、0~4質量%であることがさらにより好ましい。
【0027】
〔固形状大豆加工品〕
本発明の固形状大豆加工品は、特定量の全脂大豆粉末、及び水を含む全脂大豆粉末水溶液を、特定量の乾燥卵白、及び特定量のメチルセルロースで固化させた固形状の大豆加工品である。
また、本発明の固形状大豆加工品は、特定量の全脂大豆粉末、及び水を含む全脂大豆粉末水溶液を、特定量の乾燥卵白、特定量のメチルセルロース、及び蛋白凝固剤で固化させた固形状の大豆加工品である。
また、本発明の固形状大豆加工品は、特定量の全脂大豆粉末、及び水を含む全脂大豆粉末水溶液を、特定量の乾燥卵白、特定量のメチルセルロース、及び特定量のグルコマンナンで固化させた固形状の大豆加工品である。
また、本発明の固形状大豆加工品は、特定量の全脂大豆粉末、及び水を含む全脂大豆粉末水溶液を、特定量の乾燥卵白、特定量のメチルセルロース、特定量のグルコマンナン及び蛋白凝固剤で固化させた固形状の大豆加工品である。
本発明の固形状大豆加工品の固形状とは、室温(1~30℃)において、流動性が失われた状態のものであり、流動性を有さない半固形状のものも含む。
かかる固形状大豆加工品の例として、例えば、豆腐様食品、ゼリー状の食品等が挙げられる。
【0028】
〔固形状大豆加工品の製造方法〕
次に、本発明の固形状大豆加工品の製造方法について説明をする。
本発明の固形状大豆加工品は、特定量の全脂大豆粉末水を含む全脂大豆粉末水溶液を、特定量の乾燥卵白、及び特定量のメチルセルロースで固化させることにより製造することができる。
また、本発明の固形状大豆加工品は、特定量の全脂大豆粉末水を含む全脂大豆粉末水溶液を、特定量の乾燥卵白、特定量のメチルセルロース、及び蛋白凝固剤で固化させることにより製造することができる。
また、本発明の固形状大豆加工品は、特定量の全脂大豆粉末水を含む全脂大豆粉末水溶液を、特定量の乾燥卵白、特定量のメチルセルロース、及び特定量のグルコマンナンで固化させることにより製造することができる。
また、本発明の固形状大豆加工品は、特定量の全脂大豆粉末水を含む全脂大豆粉末水溶液を、特定量の乾燥卵白、特定量のメチルセルロース、特定量のグルコマンナン、及び蛋白凝固剤で固化させることにより製造することができる。
【0029】
詳しくは、本発明の固形状大豆加工品の製造方法は、固形状大豆加工品の全原料を100質量%とした場合、全脂大豆粉末を5.5~13質量%、乾燥卵白を2~7質量%、メチルセルロースを0.3~2質量%、及び水を含む原料を使用し、
該全脂大豆粉末、及び水を混合して全脂大豆粉末分散水溶液を得る全脂大豆粉末分散水溶液調製工程と、
該全脂大豆粉末分散水溶液を70℃以上に加熱する加熱処理工程と、
該加熱された全脂大豆粉末分散水溶液を50℃以下に冷却する冷却工程と、
該冷却された全脂大豆粉末分散水溶液に、該乾燥卵白、及び該メチルセルロースを添加する添加工程と、
添加工程により得られた全脂大豆粉末分散水溶液を60℃以上に加熱して固化させる固化工程と、
を含む方法である。
【0030】
また、本発明の固形状大豆加工品の製造方法は、固形状大豆加工品の全原料を100質量%とした場合、全脂大豆粉末を5.5~13質量%、乾燥卵白を2~7質量%、メチルセルロースを0.3~2質量%、水、及び蛋白凝固剤を含む原料を使用し、
該全脂大豆粉末、及び水を混合して全脂大豆粉末分散水溶液を得る全脂大豆粉末分散水溶液調製工程と、
該全脂大豆粉末分散水溶液を70℃以上に加熱する加熱処理工程と、
該加熱された全脂大豆粉末分散水溶液を50℃以下に冷却する冷却工程と、
該冷却された全脂大豆粉末分散水溶液に、該乾燥卵白、該メチルセルロース、及び蛋白凝固剤を添加する添加工程と、
該添加工程により得られた全脂大豆粉末分散水溶液を60℃以上に加熱して固化させる固化工程と、
を含む方法である。
【0031】
また、本発明の固形状大豆加工品の製造方法は、固形状大豆加工品の全原料を100質量%とした場合、全脂大豆粉末を5.5~13質量%、乾燥卵白を2~7質量%、メチルセルロースを0.3~2質量%、グルコマンナンを1.7質量%以下、及び水を含む原料を使用し、該グルコマンナンと該乾燥卵白の質量比(グルコマンナン/乾燥卵白)が、40/100以下であり、該グルコマンナンと該乾燥卵白の合計量が、7.2質量%以下であり、
該全脂大豆粉末、及び水を混合して全脂大豆粉末分散水溶液を得る全脂大豆粉末分散水溶液調製工程と、
該全脂大豆粉末分散水溶液を70℃以上に加熱する加熱処理工程と、
該加熱された全脂大豆粉末分散水溶液を50℃以下に冷却する冷却工程と、
該冷却された全脂大豆粉末分散水溶液に、該乾燥卵白、該メチルセルロース、及び該グルコマンナンを添加する添加工程と、
該添加工程により得られた全脂大豆粉末分散水溶液を60℃以上に加熱して固化させる固化工程と、
を含む方法である。
【0032】
また、本発明の固形状大豆加工品の製造方法は、固形状大豆加工品の全原料を100質量%とした場合、全脂大豆粉末を5.5~13質量%、乾燥卵白を2~7質量%、メチルセルロースを0.3~2質量%、グルコマンナンを1.7質量%以下、蛋白凝固剤、及び水を1.7質量%以下を含む原料を使用し、該グルコマンナンと該乾燥卵白の質量比(グルコマンナン/乾燥卵白)が、40/100以下であり、該グルコマンナンと該乾燥卵白の合計量が、7.2質量%以下であり、
該全脂大豆粉末、及び水を混合して全脂大豆粉末分散水溶液を得る全脂大豆粉末分散水溶液調製工程と、
該全脂大豆粉末分散水溶液を70℃以上に加熱する加熱処理工程と、
該加熱された全脂大豆粉末分散水溶液を50℃以下に冷却する冷却工程と、
該冷却された全脂大豆粉末分散水溶液に、該乾燥卵白、該メチルセルロース、該グルコマンナン、及び蛋白凝固剤を添加する添加工程と、
該添加工程により得られた全脂大豆粉末分散水溶液を60℃以上に加熱して固化させる固化工程と、
を含む方法である。
【0033】
〔全脂大豆粉末分散水溶液調製工程〕
前記全脂大豆粉末分散水溶液調製工程での混合は、撹拌棒等でかき混ぜても良く、ホモミキサー、プロペラ撹拌機等の機械を用いて混合しても良い。
【0034】
〔加熱処理工程〕
加熱処理工程では、得られた全脂大豆粉末分散水溶液を70℃以上に加熱する。
加熱処理工程での全脂大豆粉末分散水溶液の加熱温度は、70℃以上であり、70~98℃であることが好ましく、75℃~95℃であることがより好ましく、75℃~85℃であることがより好ましい。
加熱処理の時間は、10~60分であることが好ましく、15~40分であることがより好ましく、15~30分であることがさらに好ましい。
また、加熱している間は、全脂大豆粉末分散水溶液を撹拌棒等でかき混ぜたり、又はプロペラ撹拌機等の機械で撹拌することが好ましい。
また、加熱処理工程では、加熱処理前後の全脂大豆粉末分散水溶液の質量から、加熱により蒸発した水の量を算出し、蛋白凝固剤を添加する前に蒸発した量の水を補充するのが好ましい。
【0035】
〔冷却工程〕
冷却工程では、加熱した全脂大豆粉末分散水溶液を50℃以下に冷却できる方法であれば、その冷却方法は特に制限はなく、例えば、加熱した全脂大豆粉末分散水溶液が入った容器の周りを冷却水で冷却したり、熱した全脂大豆粉末分散水溶液が入った容器を放冷することにより行うことができる。
また、速く冷却するために、全脂大豆粉末分散水溶液を撹拌棒等でかき混ぜたり、又はプロペラ撹拌機等の機械で撹拌することが好ましい。
冷却工程での全脂大豆粉末分散水溶液の冷却温度は、50℃以下であり、1~50℃であることが好ましく、10℃~50℃であることがより好ましい。
【0036】
〔添加工程〕
添加工程では、冷却した全脂大豆粉末分散水溶液に、乾燥卵白、及びメチルセルロースを添加する。
また、蛋白凝固剤を使用する場合には、冷却した全脂大豆粉末分散水溶液に、乾燥卵白、メチルセルロース、及び蛋白凝固剤を添加する。
また、グルコマンナンを使用する場合には、冷却した全脂大豆粉末分散水溶液に、該乾燥卵白、メチルセルロース、及びグルコマンナン、を添加する添加工程、
また、グルコマンナン、及び蛋白凝固剤を使用する場合には、冷却した全脂大豆粉末分散水溶液に、該乾燥卵白、該メチルセルロース、該グルコマンナン、及び蛋白凝固剤を添加する。
添加工程では、全脂大豆粉末分散水溶液を撹拌棒等でかき混ぜたり、又はプロペラ撹拌機等の機械で撹拌することが好ましい。
【0037】
〔固化工程〕
固化工程では、添加工程により得られた全脂大豆粉末分散水溶液を60℃以上に加熱して固化させる。
固化工程での全脂大豆粉末分散水溶液の加熱温度は、60℃以上であり、60~90℃であることが好ましい。
固化工程での加熱は、全脂大豆粉末分散水溶液を容器に入れて、蒸しても良い。
【0038】
〔固形状大豆加工品を使用した食品〕
本発明の固形状大豆加工品は、そのまま豆腐様食品として食することもできるが、各種食品の原材料として使用することもできる。
固形状大豆加工品を使用した食品として、例えば、豆腐様食品含有ハンバーグ、豆腐様食品含有肉団子、豆腐様食品含有クリーム、豆腐様食品含有クリームコロッケ、マーボー豆腐様食品、豆腐様食品の白和え等が挙げられる。
これらの食品の製造方法は、原料として本発明の固形状大豆加工品を使用する以外は、公知の方法で製造することができる。例えば、食品の原料混合をする段階で固形状大豆加工品を添加し、他の原料と混合して食品を製造することができる。
【実施例0039】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0040】
・豆腐様食品の原料
表1に、後述する豆腐様食品の製造に使用した原料を示す。
原料に使用した生タイプの全脂大豆粉末又は加熱脱臭タイプの全脂大豆粉末のNSIは、基準油脂分析試験法((社)日本油化学会)1.8.1-2013水溶性窒素指数(40℃法)に基づいて測定した。
また、原料に使用した生タイプの全脂大豆粉末又は加熱脱臭タイプの全脂大豆粉末の平均粒径は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、装置名:Microtrac MT3300ExII)で、レーザー回折散乱法(ISO133201,ISO9276-1)基づいて、乾式測定により測定した。
詳しくは、粒度分布測定装置に乾式測定用ブロック(日機装株式会社製、名称:One-Shot Dry)を取り付け、試料0.2gを1.25ml容量の計量スプーンにとり、吸引させて測定した。1つのサンプルについて測定を3回行い、得られた粒度分布における積算値50%の粒径の測定値(d50)の平均値を、生タイプの全脂大豆粉末又は加熱脱臭タイプの全脂大豆粉末の平均粒径とした。
【0041】
【表1】
【0042】
・豆腐様食品の製造(比較例1:全脂大豆粉末以外1成分配合、比較例2~4:全脂大豆粉末以外に2成分配合)
表2に示す配合(総仕込み量500g)で、豆腐様食品(固形状大豆工品)の製造を行った。
参考として、配合表の下に、(グルコマンナン/乾燥卵白)の質量比、及びグルコマンナンと乾燥卵白の合計量を記載した。
まず、生タイプの全脂大豆粉末、及び水を、ホモミキサー(回転数:3000rpm)で1分間混合した後、10分間プロペラ撹拌(回転数:3000rpm)をして、全脂大豆粉末分散水溶液を得た(全脂大豆粉末分散水溶液調製工程)。
次に、得られた全脂大豆粉末分散水溶液を加熱し、80℃に保持した状態で20分間プロペラ撹拌(回転数:3000rpm)をした(加熱処理工程)。
加熱処理工程では、加熱処理前後の全脂大豆粉末分散水溶液の質量から、加熱により蒸発した水の量を算出し、蒸発した水量を補充した。
その後、加熱した全脂大豆粉末分散水溶液が入った容器の周りを冷却水で冷却し、全脂大豆粉末分散水溶液を40℃に冷却した(冷却工程)。
冷却後、全脂大豆粉末分散水溶液ににがりを添加し、5分間プロペラ撹拌をした(添加工程)。
その後、全脂大豆粉末分散水溶液を、耐熱容器に入れて95℃で60分間蒸したが(凝固工程)、全脂大豆粉末分散水溶液は固化せず、豆腐様食品が得られなかった(比較例1)。
【0043】
比較例1の製造方法で、にがりを添加する時に、メチルセルロースを添加して水の量を変えた以外は、比較例1と同様の方法で豆腐様食品(固形状大豆工品)を製造した(比較例2)。
また、比較例1の製造方法で、にがりを添加する時に、乾燥卵白を添加して水の量を変えた以外は、比較例1と同様の方法で豆腐様食品(固形状大豆工品)を製造した(比較例3)。
また、比較例1の製造方法で、にがりを添加する時に、グルコマンナンを添加して水の量を変えた以外は、比較例1と同様の方法で豆腐様食品(固形状大豆工品)を製造した(比較例4)。
【0044】
・豆腐様食品の食感評価
得られた各豆腐様食品を、専門パネルが食した時の食感に関し、豆腐との食感の類似性、固さ、及び滑らかさの3つの評価項目について、表3の評価基準に基づいて評価した。食感評価結果を表2の配合の下に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
表2の結果から、比較例1の配合では全脂大豆粉末分散水溶液は固化せず、保形性のないペースト状となり、豆腐様食品が得られないことがわかった。
また、比較例2~4の豆腐様食品は、その食感が豆腐とはまったく異なるものであることがわかった。
【0048】
・豆腐様食品の製造(実施例1、比較例5、6:生全脂大豆粉末以外に3成分を配合)
表4に示す配合(総仕込み量500g)で、豆腐様食品(固形状大豆工品)の製造を行った。
参考として、配合表の下に、(グルコマンナン/乾燥卵白)の質量比、及びグルコマンナンと乾燥卵白の合計量を記載した。
まず、生全脂大豆粉末、及び水を、ホモミキサー(回転数:3000rpm)で1分間混合した後、10分間プロペラ撹拌(回転数:3000rpm)をして、全脂大豆粉末分散水溶液を得た(全脂大豆粉末分散水溶液調製工程)。
次に、得られた全脂大豆粉末分散水溶液を加熱し、80℃に保持した状態で20分間プロペラ撹拌(回転数:3000rpm)をした(加熱処理工程)。
加熱処理工程では、加熱処理前後の全脂大豆粉末分散水溶液の質量から、加熱により蒸発した水の量を算出し、蒸発した水量を補充した。
その後、加熱した全脂大豆粉末分散水溶液が入った容器の周りを冷却水で冷却し、全脂大豆粉末分散水溶液を40℃に冷却した(冷却工程)。
冷却後、全脂大豆粉末分散水溶液に、メチルセルロース、グルコマンナン、及びにがりを添加し、5分間プロペラ撹拌をした(添加工程)。
その後、全脂大豆粉末分散水溶液を、耐熱容器に入れて95℃で60分間蒸して(凝固工程)、豆腐様食品(固形状大豆工品)を製造した(比較例5)。
【0049】
比較例5のメチルセルロースを乾燥卵白に代えて、水の量を変えた以外は、比較例5と同様の方法で豆腐様食品(固形状大豆工品)を製造した(比較例6)。
また、比較例5のグルコマンナンを乾燥卵白に代えて、水の量を変えた以外は、比較例5と同様の方法で豆腐様食品(固形状大豆工品)を製造した(実施例1)。
【0050】
・豆腐様食品の食感評価
得られた各豆腐様食品を専門パネルが食し、その食感を評価した。食感の評価は、豆腐との食感の類似性、固さ、及び滑らかさの3つの評価項目について、表3の評価基準に基づいて評価した。食感評価結果を表4の配合の下に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
表4の結果から、比較例5の豆腐様食品は、滑らかであったが、豆腐としては柔らかく、その食感は豆腐の食感とあまり似ていないことがわかった。また、比較例6の豆腐様食品は、滑らかで、豆腐としてやや硬さがある固さであったが、その食感は豆腐の食感とあまり似ていないことがわかった。
一方、実施例1の豆腐様食品は、非常に滑らかで、豆腐として適度な固さもあり、その食感は豆腐の食感にやや似ているものであることがわかった。
【0053】
・豆腐様食品の製造(実施例2、3、比較例7、8:乾燥卵白の量を変化)
乾燥卵白及びメチルセルロースを配合すると、本発明の効果を奏する豆腐様食品を製造することができたので、乾燥卵白の適正配合量を調べるために、表5に示す配合(総仕込み量500g)で、実施例1と同様の方法で豆腐様食品(固形状大豆工品)を製造した(実施例2、3、比較例7、8)
参考として、配合表の下に、(グルコマンナン/乾燥卵白)の質量比、及びグルコマンナンと乾燥卵白の合計量を記載した。
なお、効果の比較の参考のために、表5には、上述した実施例1の配合及び評価を記載しておく。
【0054】
・豆腐様食品の食感評価
得られた各豆腐様食品を、専門パネルが食した時の食感に関し、豆腐との食感の類似性、固さ、及び滑らかさの3つの評価項目について、表3の評価基準に基づいて評価した。食感評価結果を表5の配合の下に示す。
【0055】
【表5】
【0056】
表5の結果から、実施例1の豆腐様食品は、非常に滑らかで、豆腐として適度な硬さもあり、その食感は豆腐の食感にやや似ているということがわかった。また、実施例2の豆腐様食品は、豆腐としてはやや柔らかく非常に滑らかで、その食感は豆腐の食感にやや似ていることがわかった。また、実施例3の豆腐様食品は、豆腐としてやや硬い固さであって滑らかで、その食感は豆腐の食感にやや似ていることがわかった。
一方、比較例7及び比較例8の豆腐様食品は、その食感は豆腐の食感とは全く異なるものであることがわかった。
【0057】
・豆腐様食品の製造(実施例4:メチルセルロースの量を変化)
乾燥卵白及びメチルセルロースを配合すると、本発明の効果を奏する豆腐様食品を製造することができたので、メチルセルロースの適正配合量を調べるために、表6に示す配合(総仕込み量500g)で、実施例1と同様の方法で豆腐様食品(固形状大豆工品)を製造した(実施例4)
参考として、配合表の下に、(グルコマンナン/乾燥卵白)の質量比、及びグルコマンナンと乾燥卵白の合計量を記載した。
なお、効果の比較の参考のために、表6には、上述した実施例1及び比較例3の配合及び評価を記載しておく。
【0058】
・豆腐様食品の食感評価
得られた各豆腐を、専門パネルが食した時の食感に関し、豆腐との食感の類似性、固さ、及び滑らかさの3つの評価項目について、表3の評価基準に基づいて評価した。食感評価結果を表6の配合の下に示す。
【0059】
【表6】
【0060】
表6の結果から、比較例3の豆腐様食品は、豆腐としてやや硬い固さであって、その食感は豆腐の食感にやや似ていたが、少し粗いものであることがわかった。
一方、実施例1の豆腐様食品は、豆腐として適度な固さであって非常に滑らかで、その食感は豆腐の食感にやや似ているものであることがわかった。また、実施例4の豆腐様食品は、豆腐としてやや柔らかくて滑らかで、その食感は豆腐の食感にやや似ていることがわかった。
【0061】
・豆腐様食品の製造(実施例5~7、比較例9、10:生全脂大豆粉末の量を変化)
参考として、配合表の下に、(グルコマンナン/乾燥卵白)の質量比、及びグルコマンナンと乾燥卵白の合計量を記載した。
表7に示す配合(総仕込み量500g)で、豆腐様食品(固形状大豆工品)の製造を行った。
まず、生全脂大豆粉末、及び水を、ホモミキサー(回転数:3000rpm)で1分間混合した後、10分間プロペラ撹拌(回転数:3000rpm)をして、全脂大豆粉末分散水溶液を得た(全脂大豆粉末分散水溶液調製工程)。
次に、得られた全脂大豆粉末分散水溶液を加熱し、80℃に保持した状態で20分間プロペラ撹拌(回転数:3000rpm)をした(加熱処理工程)。
加熱処理工程では、加熱処理前後の全脂大豆粉末分散水溶液の質量から、加熱により蒸発した水の量を算出し、蒸発した水量を補充した。
その後、加熱した全脂大豆粉末分散水溶液が入った容器の周りを冷却水で冷却し、全脂大豆粉末分散水溶液を40℃に冷却した(冷却工程)。
冷却後、全脂大豆粉末分散水溶液に、乾燥卵白、メチルセルロース、グルコマンナン、及びにがりを添加し、5分間プロペラ撹拌をした(添加工程)。
その後、全脂大豆粉末分散水溶液を、耐熱容器に入れて95℃で60分間蒸して(凝固工程)、豆腐様食品(固形状大豆工品)を製造した(実施例5~7、比較例9、10)。
【0062】
・豆腐様食品の食感評価
得られた各豆腐様食品を専門パネルが食し、その食感を評価した。食感の評価は、豆腐様食品との食感の類似性、固さ、及び滑らかさの3つの評価項目について、表3の評価基準に基づいて評価した。食感評価結果を表7の配合の下に示す。
【0063】
【表7】
【0064】
表7の結果から、実施例5及び実施例7の豆腐様食品は、豆腐として適度な固さであって非常に滑らかで、その食感は豆腐の食感にやや似ていることがわかった。また、実施例6の豆腐様食品は適度な固さであって非常に滑らかで、その食感は豆腐の食感に似ていることがわかった。
一方、比較例9及び比較例10の豆腐様食品は、その食感は豆腐の食感にあまり似ていないことがわかった。
【0065】
・豆腐様食品の製造(実施例8、9、比較例11:グルコマンナンの量を変化)
次に、上述したグルコマンナン、乾燥卵白、及びメチルセルロースを配合した実施例6において、グルコマンナンの適正配合量を調べるために、表8に示す配合(総仕込み量500g)で、実施例6と同様の方法で豆腐様食品(固形状大豆工品)を製造した(実施例8、9、比較例11)。
参考として、配合表の下に、(グルコマンナン/乾燥卵白)の質量比、及びグルコマンナンと乾燥卵白の合計量を記載した。
なお、効果の比較の参考のために、表8には、上述した実施例1及び実施例6の配合及び評価を記載しておく。
【0066】
・豆腐様食品の食感評価
得られた各豆腐様食品を専門パネルが食し、その食感を評価した。食感の評価は、豆腐との食感の類似性、固さ、及び滑らかさの3つの評価項目について、表3の評価基準に基づいて評価した。食感評価結果を表8の配合の下に示す。
【0067】
【表8】
【0068】
表8の結果から、実施例8の豆腐様食品は、適度な固さであって非常に滑らかで、その食感は豆腐の食感に似ていることがわかった。また、実施例9の豆腐様食品は、豆腐としてやや硬い固さであって滑らかで、その食感は豆腐の食感にやや似ていることがわかった。
一方、比較例11の豆腐様食品は、豆腐として固すぎて粗く、その食感は豆腐とはまったく異なる食感であることがわかった。
【0069】
・豆腐様食品の製造(実施例10~13、比較例12~23:乾燥卵白及びグルコマンナンの量を変化)
次に、上述したグルコマンナン、乾燥卵白、及びメチルセルロースを配合した実施例6において、乾燥卵白及びグルコマンナンの適正配合量を調べるために、表9~表12に示す配合(総仕込み量500g)で、実施例6と同様の方法で豆腐様食品(固形状大豆工品)を製造した(実施例10~13、比較例12~23)。
参考として、配合表の下に、(グルコマンナン/乾燥卵白)の質量比、及びグルコマンナンと乾燥卵白の合計量を記載した。
【0070】
・豆腐様食品の食感評価
得られた各豆腐様食品を専門パネルが食し、その食感を評価した。食感の評価は、豆腐との食感の類似性、固さ、及び滑らかさの3つの評価項目について、表3の評価基準に基づいて評価した。食感評価結果を表9~表12の配合の下に示す。
【0071】
【表9】
【0072】
【表10】
【0073】
【表11】
【0074】
【表12】
【0075】
表9の結果から、比較例12及び比較例15の豆腐様食品は、食感が粗くて、その食感は豆腐の食感とはまったく異なっていることがわかった。また、比較例13及び比較例14の豆腐様食品は、少し粗くてその食感は豆腐の食感にあまり似ていないことがわかった。
表10の結果から、実施例10の豆腐様食品は、豆腐としてやや柔らかいものであって非常に滑らかで、その食感は豆腐の食感にやや似ていることがわかった。また、実施例11の豆腐様食品は、豆腐として適度な固さであって滑らかで、その食感は豆腐の食感にやや似ていることがわかった。
一方、比較例16の豆腐様食品は、豆腐としてやや硬いものであって、その食感は豆腐の食感にやや似ていたが、少し粗い食感であることがわかった。また、比較例17の豆腐様食品は、豆腐として柔らかすぎて粗く、その食感は豆腐とは全く異なる食感であることがわかった。
表11の結果から、実施例12及び実施例13の豆腐様食品は、豆腐としてやや硬い固さであって滑らかで、豆腐の食感にやや似ていることがわかった。
一方、比較例18の豆腐様食品は、豆腐としてやや硬くて少し粗く、その食感は豆腐と全く異なる食感であることがわかった。また、比較例19の豆腐様食品は、豆腐として硬すぎて粗く、その食感は豆腐と全く異なる食感であることがわかった。
表12の結果から、比較例20~23の豆腐様食品は、豆腐として硬すぎて粗く、その食感は豆腐とまったく異なる食感であることがわかった。
さらに、表9~表12の結果、特に比較例16及び比較例18の結果から、好ましい食感の豆腐様食品を得るためには、単に原料中の各成分の配合量だけではなく、原料中のグルコマンナンと乾燥卵白の質量比(グルコマンナン/乾燥卵白)を、40/100以下とし、原料中のグルコマンナンと乾燥卵白の合計量を、7.2質量%以下とする必要があることがわかった。
【0076】
・豆腐様食品の製造(実施例14:メチルセルロースの量を変化)
次に、上述したグルコマンナン、乾燥卵白、及びメチルセルロースの3成分を配合した実施例6において、メチルセルロースの適正配合量を調べるために、表13に示す配合(総仕込み量500g)で、実施例6と同様の方法で豆腐様食品(固形状大豆工品)を製造した(実施例14)。
参考として、配合表の下に、(グルコマンナン/乾燥卵白)の質量比、及びグルコマンナンと乾燥卵白の合計量を記載した。
なお、効果の比較の参考のために、表13には、上述した実施例6及び比較例6の配合及び評価を記載しておく。
【0077】
・豆腐様食品の食感評価
得られた各豆腐様食品を専門パネルが食し、その食感を評価した。食感の評価は、豆腐との食感の類似性、固さ、及び滑らかさの3つの評価項目について、表3の評価基準に基づいて評価した。食感評価結果を表13の配合の下に示す。
【0078】
【表13】
【0079】
表13の結果から、実施例14の豆腐様食品は、豆腐として適度な固さであって非常に滑らかで、その食感は豆腐の食感にやや似ていることがわかった。
【0080】
・豆腐様食品の製造(実施例15、16)
【0081】
表14に示す配合(総仕込み量500g)で、比較例5の蛋白凝固剤を乾燥卵白に代えて、水の量を変えた以外は、比較例5と同様の方法で豆腐様食品(固形状大豆工品)を製造した(実施例15)。
また、表14に示す配合(総仕込み量500g)で、生タイプの全脂大豆粉末を加熱脱臭タイプの全脂大豆粉末に代えた以外は、実施例6と同様の方法で豆腐様食品(固形状大豆工品)を製造した(実施例16)。
参考として、配合表の下に、(グルコマンナン/乾燥卵白)の質量比、及びグルコマンナンと乾燥卵白の合計量を記載した。
【0082】
・豆腐様食品の食感評価
得られた各豆腐様食品を専門パネルが食し、その食感を評価した。食感の評価は、豆腐との食感の類似性、固さ、及び滑らかさの3つの評価項目について、表3の評価基準に基づいて評価した。食感評価結果を表14の配合の下に示す。
【0083】
【表14】
【0084】
表14の結果から、実施例15の豆腐様食品は、豆腐として適度な固さであって非常に滑らかなで、その食感は豆腐の食感にやや似ていることがわかった。また。実施例16の豆腐様食品は、豆腐として適度な固さであって非常に滑らかなで、その食感は豆腐の食感に似ていることがわかった。
【0085】
・豆腐様食品の製造(比較例24、25:グルコマンナンを他の増粘剤に変更)
実施例6の配合のグルコマンナンの代わりに、他の増粘剤を使用した表15に示す配合(総仕込み量500g)で、実施例6と同様の方法で豆腐様食品(固形状大豆工品)を製造した(比較例24、25)。
なお、効果の比較の参考のために、表13には、上述した実施例6及び比較例6の配合及び評価を記載しておく。
【0086】
・豆腐様食品の食感評価
得られた各豆腐様食品を専門パネルが食し、その食感を評価した。食感の評価は、豆腐との食感の類似性、固さ、及び滑らかさの3つの評価項目について、表3の評価基準に基づいて評価した。食感評価結果を表15の配合の下に示す。
【0087】
【表15】
【0088】
表15の結果から、
表15の結果から、比較例24の豆腐様食品は、豆腐としてやや柔らかくて、非常に滑らかであったが、その食感は豆腐の食感にあまり似ていないものであることがわかった。また、比較例25の豆腐様食品は、非常に滑らかな食感であったが、豆腐として柔らかすぎ、その食感は豆腐とは全く異なる食感であることがわかった。