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  • 特開-反応装置の運転方法及び反応装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153013
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】反応装置の運転方法及び反応装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 45/18 20060101AFI20221004BHJP
   B01J 8/08 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C10G45/18
B01J8/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056008
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 安延
【テーマコード(参考)】
4G070
4H129
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AA03
4G070AB02
4G070BB11
4G070CB17
4G070CC20
4G070DA15
4G070DA21
4H129AA02
4H129CA08
4H129CA09
4H129CA10
4H129CA25
4H129DA16
4H129DA18
4H129KA07
4H129KA09
4H129KB03
4H129KC03Y
4H129KC04Y
4H129KD15Y
4H129KD24Y
4H129NA05
4H129NA37
4H129NA45
(57)【要約】
【課題】均一な触媒層を形成するように触媒を供給し、安定的な運転を実現する、反応装置の運転方法及び反応装置を提供する。
【解決手段】触媒層を備える反応容器を用いて、原料流体を反応させて反応流体を得る反応装置の運転方法であって、前記反応容器の下部から前記原料流体を供給し、前記反応容器の上部から前記反応流体を排出し、前記原料流体を供給しながら前記反応容器の上部から触媒を供給し、前記触媒の供給箇所における、前記触媒の供給流速Vと反応流体の流速Vとが、V>Vの関係を満たすように前記触媒を供給する、反応装置の運転方法、及び当該運転方法を行い得る反応装置である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒層を備える反応容器を用いて、原料流体を反応させて反応流体を得る反応装置の運転方法であって、
前記反応容器の下部から前記原料流体を供給し、前記反応容器の上部から前記反応流体を排出し、
前記原料流体を供給しながら前記反応容器の上部から触媒を供給し、
前記触媒の供給箇所における、前記触媒の供給流速Vと反応流体の流速Vとが、V>Vの関係を満たすように前記触媒を供給する、反応装置の運転方法。
【請求項2】
前記原料流体が、原料油及び気体を含む請求項1に記載の反応装置の運転方法。
【請求項3】
前記気体が、水素である請求項2に記載の反応装置の運転方法。
【請求項4】
前記原料油が、常圧蒸留残油(AR)、減圧蒸留残油(VR)、重質サイクル油(HCO)、接触分解残油(CLO)及び重質軽油留分(HGO)から選ばれる少なくとも一種の重油留分である請求項2又は3に記載の反応装置の運転方法。
【請求項5】
前記触媒が、スラリー状で供給される請求項1~4のいずれか1項に記載の反応装置の運転方法。
【請求項6】
重油直接脱硫の前処理に用いられる請求項1~5のいずれか1項に記載の反応装置の運転方法。
【請求項7】
前記前処理が、原料油の脱金属脱硫処理である請求項6に記載の反応装置の運転方法。
【請求項8】
触媒層を備える反応容器を用いて、原料流体を反応させて反応流体を得る反応装置であって、
前記反応容器の下部から前記原料流体を供給し、前記反応容器の上部から前記反応流体を排出し、
前記原料流体を供給しながら前記反応容器の上部から触媒を供給し、
前記触媒の供給箇所における、前記触媒の供給流速Vと反応流体の流速Vとが、V>Vの関係を満たすように前記触媒を供給する前記触媒の供給手段を備える、
反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応装置の運転方法及び反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原油を常圧蒸留、減圧蒸留等をすることにより得られる常圧蒸留残渣油、減圧蒸留残渣油等の残渣油(重質油)は、重油直接脱硫装置(「RH装置」とも称される。)、さらにはRH装置の触媒の劣化を抑制するために、必要に応じて当該RH装置の上流に設けられる脱金属前処理装置(「OCR装置」とも称される。)等において前処理した後、水素化分解等の精製工程を経て、灯油、自動車燃料、潤滑油基油等の各種用途に利用される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
既述の重質軽油留分は、水素化分解された後に、灯油、自動車燃料用等の基材(ガソリン基材)、潤滑油基油等の重要な用途に用いられることから、より安価に、安定してこれらの用途に合致する留分を製造し供給することが求められている。他方、上記のような精製処理を行う装置、すなわち水素化分解等の精製を行う装置、またその前処理となる脱金属前処理装置、重油直接脱硫装置等の各装置には触媒が用いられ、触媒は経時的に劣化するためにその劣化を抑制することが検討されている。上記特許文献1では、原料油の種類を調整することにより、触媒の劣化を抑制し、触媒を長寿命化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-145009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、原料油の種類を調整できないという制限が課されることがあると、上記特許文献1に記載される技術では対応できない場合がある。
ところで、上記のような精製処理を行う装置において、例えば脱金属前処理装置では、触媒を連続的又は断続的に交換しながら精製処理をすることが行われる場合がある。とりわけ、脱金属前処理装置で扱う原料油は上記のように残渣油(重質油)であり、触媒の失活が早いため高い頻度で触媒を交換する必要が生じる。しかし、この際、触媒の交換を円滑に行うことができず、触媒活性が著しく低下する、あるいは触媒の交換を行ったとしても優れた触媒活性が得られず、長期的に安定して優れた触媒活性を得ながら運転することができない、といった問題が生じる場合があった。
【0006】
そこで、本発明者らは、当該問題の発生の要因について詳細に検討したところ、触媒を反応容器内に供給する際に、触媒が当該容器内の触媒層上に均一に供給されず、触媒を供給するたびに、均一な触媒層が徐々に不均一となることで、徐々に触媒の交換を円滑に行いにくくなり、また触媒活性が低下し、安定的な運転ができないことが分かった。
【0007】
本発明は、均一な触媒層を形成するように触媒を供給し、安定的な運転を実現する、反応装置の運転方法及び反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により解決できることを見出した。すなわち本発明は、下記の構成を有する反応装置の運転方法及び反応装置を提供するものである。
【0009】
1.触媒層を備える反応容器を用いて、原料流体を反応させて反応流体を得る反応装置の運転方法であって、
前記反応容器の下部から前記原料流体を供給し、前記反応容器の上部から前記反応流体を排出し、
前記原料流体を供給しながら前記反応容器の上部から触媒を供給し、
前記触媒の供給箇所における、前記触媒の供給流速Vと反応流体の流速Vとが、V>Vの関係を満たすように前記触媒を供給する、反応装置の運転方法。
2.前記原料流体が、原料油及び気体を含む上記1に記載の反応装置の運転方法。
3.前記気体が、水素である上記2に記載の反応装置の運転方法。
4.前記原料油が、常圧蒸留残油(AR)、減圧蒸留残油(VR)、重質サイクル油(HCO)、接触分解残油(CLO)及び重質軽油留分(HGO)から選ばれる少なくとも一種の重質油留分である上記2又は3に記載の反応装置の運転方法。
5.前記触媒が、スラリー状で供給される上記1~4のいずれか1に記載の反応装置の運転方法。
6.重油直接脱硫装置の前処理に用いられる上記1~5のいずれか1に記載の反応装置の運転方法。
7.前記前処理が、原料油の脱金属脱硫処理である上記6に記載の反応装置の運転方法。
8.触媒層を備える反応容器を用いて、原料流体を反応させて反応流体を得る反応装置であって、
前記反応容器の下部から前記原料流体を供給し、前記反応容器の上部から前記反応流体を排出し、
前記原料流体を供給しながら前記反応容器の上部から触媒を供給し、
前記触媒の供給箇所における、前記触媒の供給流速Vと反応流体の流速Vとが、V>Vの関係を満たすように前記触媒を供給する前記触媒の供給手段を備える、
反応装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、均一な触媒層を形成するように触媒を供給し、安定的な運転を実現する、反応装置の運転方法及び反応装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の運転方法で用いられる反応装置の好ましい一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態(以後、単に「本実施形態」と称する場合がある。)に係る反応装置の運転方法及び反応装置について具体的に説明する。なお、本明細書中において、数値範囲の記載に関する「以下」、「以上」及び「~」に係る数値は任意に組み合わせできる数値であり、また実施例の数値は上限値又は下限値として用いられ得る数値である。例えば、とある数値範囲について「A~B」及び「C~D」と記載されている場合、「A~D」、「C~B」といった数値範囲も含まれる。「以上」、「以下」と記載されている場合も同様である。
【0013】
[反応装置の運転方法]
本実施形態の反応装置の運転方法は、触媒層を備える反応容器を用いて、原料流体を反応させて反応流体を得る反応装置の運転方法であって、前記反応容器の下部から前記原料流体を供給し、前記反応容器の上部から前記反応流体を排出し、前記原料流体を供給しながら前記反応容器の上部から触媒を供給し、前記触媒の供給箇所における、前記触媒の供給流速Vと反応流体の流速Vとが、V>Vの関係を満たすように前記触媒を供給する、というものである。
【0014】
既述のように、これまで触媒の供給及び排出を行いながら原料流体の触媒反応を行う場合、触媒の交換を円滑に行うことができない、また触媒の交換をしても優れた触媒活性が得られないといった問題が発生していた。そして、その問題が、触媒を供給する際に、触媒層の上に均一に供給されず、触媒を供給するたびに触媒層の均一性が失われて不均一となることによるものであることが分かった。より具体的には、触媒層が不均一になることで、特に触媒の排出を円滑に行いにくくなり、結果として触媒の供給及び排出(触媒の交換)を円滑に行えなくなること、また原料流体と触媒層との良好な接触状態が得られにくくなるため、優れた触媒活性が得られなくなること、により上記問題が発生していることが分かった。また、触媒層の不均一により原料流体と触媒との接触状態が悪化し、触媒層内が局所的に高温となるホットスポットが発生することで、触媒活性の低下が更に進んでいることが分かった。
【0015】
本発明者は、さらに詳細に検討した結果、その主要因が、反応装置内を通過する反応流体による影響であることを見出した。触媒は反応容器の上部から供給され、他方、原料流体は反応容器の下部から供給され、上部から反応流体として排出される。すなわち、反応容器内において、触媒は下降流を有し、反応流体は上昇流を有することから、触媒は流体の流動方向に対向するように供給されることになる。そのため、触媒が反応容器に供給されて触媒層の上に下降するまでに、反応流体の上昇流に影響されてしまい、触媒層の上に均一に供給されず、触媒層の均一性が徐々に失われ、様々な問題が生じていた。また、反応流体の上昇流による影響は、反応流体が液体と気体とを含む混合物である場合、特に気体の上昇流により、特に顕著であることが分かった。
【0016】
本発明者らは、上記の知見に基づき均一な触媒層を形成するにあたり、触媒の供給の際の下降流と原料流体(反応流体)の上昇流との関係に着目し、触媒の供給流速Vと反応流体の流速Vとが特定の関係を満たすように触媒を供給したところ、均一な触媒層を形成することができ、原料流体と触媒との接触状態を良好なものとし、触媒層内における局所的な高温となるホットスポットの発生を抑制し、優れた触媒活性を維持し、結果として安定的な運転を実現することが可能となった。
【0017】
(反応容器)
本実施形態の反応装置の運転方法について、図1を用いて説明する。図1には、本実施形態の運転方法に用いられる反応装置の好ましい一態様の模式図が示されている。
図1に示される、反応容器1は、触媒層2を備えるものである。また、反応容器1は、直胴部と鏡板部とを組み合わせた形状を有しており、触媒の供給口3及び排出口4、並びに原料流体の供給口5及び反応流体の排出口6を有しており、触媒の供給口3が排出口4よりも上部に設けられ、原料流体の供給口5が反応流体の排出口6よりも下部となるように設けられている。また触媒の供給口3より反応容器1の内部には、触媒供給ノズル7が設けられている。このような構成とすることで、原料流体を反応容器1の下部から供給し、反応流体を反応容器1の上部から排出することができ、また反応容器1の上部から触媒供給ノズル7を経て触媒を反応容器1内に供給することができる。
【0018】
触媒は反応容器1の上部から供給され、下部から排出されるため、触媒は反応容器1の上部から下部に向かって流動(移動)する。他方、原料流体は反応容器1の下部から供給され、触媒層2において触媒と接触することで反応が進行し、反応流体となって上部から排出されるため、原料流体及び反応流体は反応容器1の下部から上部に向かって流動(移動)する。ここで、本明細書において、「上部」及び「下部」は、反応容器1の垂直方向にみた際の上か下かの高さを基準とする、相対的な高さを意味する。
【0019】
触媒は、反応容器1内で触媒層2を形成するように存在しており、反応容器1の上部から供給される触媒は、触媒層2の上に堆積していくことになる。また、反応容器1は下部に触媒の排出口を有しており、必要に応じて触媒を排出することができる。
また、図1に示される反応容器1は、その内部に構造物9を備えており、原料流体を反応容器1内に分散させるためのインレットバスケット91及びチムニートレイ92、また触媒を保持するためのメッシュスクリーン93を有している。
【0020】
原料流体の供給口5の設置箇所は、反応容器1の下部に設けられていれば特に制限はなく、また反応流体の排出口6の設置箇所は、反応容器の上部に設けられていればその設置箇所には特に制限はない。原料流体は、反応容器1内の触媒層2の全てと接触できるように供給され、排出されることが好ましい。このような観点から、原料流体の供給口5は触媒層2よりも下部に設けられることが好ましく、また反応容器内で触媒を保持するためにメッシュスクリーン93が設けられる場合は、当該メッシュスクリーン93よりも下部に設けられることが好ましく、図1に示されるように塔底部に設けられていることがより好ましい。
また、原料流体の供給口5の設置箇所は、反応容器1の形状、供給口5の大きさに応じて変わり得るため一概にはいえないが、反応容器1の高さを100とした場合、好ましくは0~20の範囲、より好ましくは0~15、更に好ましくは0~10の範囲に設けられることが好ましい。また、塔底部に設けられない場合は、側面部に設けられる最も低い箇所に設けることが好ましい。
【0021】
反応流体の供給口5の出口、すなわち反応容器内側には、図1に示されるようにインレットバスケット91、チムニートレイ92等の反応流体を反応容器内に均一に分散させるための構造物9が設けられていることが好ましい。原料流体の反応容器内における分散性を向上させることができるため、反応流体と触媒(触媒層2)との接触状態が向上し、触媒活性が向上する。
【0022】
反応流体の排出口6の設置箇所は、反応容器1の上部に設けられていれば特に制限はないが、反応容器1内の触媒層2の全てと接触できるように供給され、排出されることが好ましい。よって、図1に示されるように塔頂部に設けられていることが好ましい。
また、反応流体の排出口6の設置箇所は、反応容器1の形状、排出口6の大きさに応じて変わり得るため一概にはいえないが、反応容器1の高さを100とした場合、好ましくは80~100の範囲、より好ましくは85~100、更に好ましくは90~100の範囲に設けられることが好ましい。また、塔頂部に設けられない場合は、側面部に設けられる最も高い箇所に設けることが好ましい。
【0023】
触媒の供給口3の設置箇所は、反応容器1の上部に設けられていれば特に制限はないが、触媒層2の容量をなるべく多く確保できるようにする観点から、なるべく上部であることが好ましい。例えば、図1に示されるような反応容器の鏡板のTL(タンジェントライン)よりも上部であることが好ましい。
触媒の供給口3の設置箇所は、反応容器1の形状、供給口3の大きさに応じて変わり得るため一概にはいえないが、反応容器1の高さを100とした場合、好ましくは70~100の範囲、より好ましくは80~100、更に好ましくは85~95の範囲に設けられることが好ましい。また、原料流体と触媒との接触をより有効に図り、触媒活性を向上させる観点から、供給口3は反応流体の排出口6よりも下部に設置されていることが好ましい。
【0024】
触媒の排出口4の設置箇所は、反応容器1の下部に設けられていれば特に制限はないが、触媒層2の容量をなるべく多く確保できるようにする観点から、なるべく下部であることが好ましい。例えば、図1に示されるように、チムニートレイ92等の構造物9を有する場合は、構造物9(チムニートレイ92)よりも上部に設けられていることが好ましい。また、図1に示されるように、触媒層2の下部にはメッシュスクリーン93が設けられており、下に凸のコーン型の形状となっている。排出口4は、当該コーン型の途中から触媒を抜き出すようになっていてもよいし、コーン型の部分ではなく、直胴型の下部に設けられていてもよい。またメッシュスクリーンがコーン型を呈さず平面型であり、反応容器1の直胴部の水平方向の断面と平行に設けられている場合は、メッシュスクリーンより上部に設けられることはいうまでもない。
【0025】
触媒の排出口4の設置箇所は、反応容器1の形状、排出口4の大きさに応じて変わり得るため一概にはいえないが、反応容器1の高さを100とした場合、好ましくは0~40の範囲、より好ましくは10~30、更に好ましくは15~25の範囲に設けられていることが好ましい。また、原料流体と触媒との接触をより有効に図り、触媒活性の向上を図る観点から、排出口4は流体の供給口5よりも上部に設置されていることが好ましい。
【0026】
(触媒の供給流速Vと反応流体の流速Vとの関係)
本実施形態の運転方法は、触媒を供給する際の供給流速Vと、触媒層を経た反応流体の流速Vとが、V>Vの関係を満たすように触媒を供給することを要する。ここで、触媒の供給速度V(以下、単に「供給速度V」、「V」等と称することがある。)及び反応流体の流速V(以下、単に「流速V」、「V」等と称することがある。)は、触媒が反応容器1内に供給される箇所における速度及び流速である。例えば、図1に示される反応容器1であれば、触媒供給ノズル7の先端における速度及び流速となり、触媒供給ノズル7を有さない場合は、触媒供給口3における速度及び流速となる。
【0027】
本関係を満たさないと、触媒は反応流体の上昇流の影響により触媒層上に均一に堆積せず、触媒層は不均一なものとなる。触媒が反応容器1内に供給される箇所において、触媒の供給速度Vが反応流体の流速V以下となると、触媒の少なくとも一部が反応流体の上昇流により反応容器1の内部に舞い上がり、反応容器1の内壁に沿って落下しやすくなるため、触媒層の表面は内壁に近づくにつれて盛り上がる、凹形状を呈しやすくなり、触媒層は不均一なものとなる。そして、触媒層の表面がより盛り上がった箇所の下部及び近傍は反応流体が流れにくくなるため滞留し、局所的に反応が過剰に進行し、局所的に高温となるホットスポットが発生しやすくなり、触媒活性が低下するものと考えられる。
【0028】
より均一な触媒層を形成するように触媒を供給し、より安定的な運転を実現する観点から、触媒の供給速度Vは、反応流体の流速Vの1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、1.5倍以上が更に好ましく、2.0倍以上がより更に好ましい。上限としては特に制限はないが、後述する供給速度Vと流速Vとの調整のしやすさを考慮すると、3.0以下とするとよい。
【0029】
供給速度Vは、触媒の供給速度(m/s)がそのまま適用される。また後述するように、触媒は固形物の状態で供給することもできるが、スラリー状にして供給することもできる。触媒をスラリー状にして供給する場合は、触媒の供給速度Vはスラリーとしての供給速度とする。触媒の供給速度Vの数値範囲については後述する。
【0030】
流速Vは、触媒が反応容器1内に供給される箇所における温度及び圧力条件に応じた流速(m/s)である。反応流体の流速Vを測定することは困難であるが、原料流体の流量は測定できることから、原料流体の流量をもとに、以下の方法により算出した値を流速Vとする。
反応流体が液体である場合は、原料流体の流量(m/s)を反応器の断面積(m)で除した値を、触媒の供給箇所における温度及び圧力条件をもとに換算した数値を流速Vとする。また、反応流体が液体と気体との混合物である場合は、原料流体として供給する液体及び気体の流量(m/s)、気体の気泡径、触媒層表面と触媒供給ノズルとの距離、反応温度及び反応圧力から流動解析(汎用熱流体解析ソフトウェア、Ansys Fluent)により算出される値を、流速Vとする。
【0031】
反応流体の流速Vとしては、V>Vの関係を満たしていれば特に制限はなく、触媒の供給速度Vcの値に応じて変わり得るため一概にはいえないが、通常1m/s以下であり、好ましくは0.5m/s以下、より好ましくは0.3m/s以下であり、下限としては小さければ小さいほど好ましく、通常0.001m/s以上である。
【0032】
供給速度Vと流速Vとの調整は、原料流体の供給量による調整、触媒の充填量(触媒層の高さ)による調整、触媒供給ノズル7の調整等により行うことができる。
原料流体の供給量は、後段の装置での反応流体の処理量が優先されるため、供給速度Vと流速Vとの調整のために供給量をかえることは通常行わないが、当該調整の手段として採用し得る。
触媒の充填量(触媒層の高さ)は、触媒供給ノズル7の調整と相関関係があり、触媒の充填量(触媒層の高さ)及び触媒供給ノズル7の調整は、触媒層の高さと触媒供給ノズル7の高さとの距離を調整することを意味する。触媒の充填量(触媒層の高さ)及び触媒供給ノズル7の調整が、最も容易かつ確実な調整方法である。
【0033】
(触媒の供給)
触媒の反応容器への供給は、触媒だけで供給することもできるし、スラリー状にして供給することもできる。より安定して触媒を供給する観点から、スラリー状にして供給することが好ましい。
スラリー状とする場合、固形物である触媒とともに用いる液体としては、水、油、有機溶剤、原料流体、反応流体のいずれを用いてもよいが、反応器内の触媒反応を考慮すると反応流体を用いることが好ましい。また、スラリー状とする場合、スラリー全量基準の触媒の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、上限として好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。含有量が上記範囲内であると、スラリーの流動性を確保でき、効率的に反応容器に触媒を供給しやすくなる。
【0034】
スラリー状とする場合、例えば触媒供給槽を設けて予め触媒と反応流体等の液体とを混合してスラリーを調製した後、反応容器に供給することが好ましい。これにより安定して触媒を反応器に供給することができる。また、触媒供給槽に反応流体等の液体を送液するための液体送液手段等の付随設備を有していてもよい。すなわち、本実施形態の反応装置は、反応容器以外に、例えば触媒供給槽、液体送液手段等を有することができる。また、後述する触媒供給ノズル7も反応容器以外に有し得る部材の一つである。
【0035】
反応容器内への触媒の供給は、反応容器が有する触媒供給口3から直接行ってもよいし、触媒供給口3より反応容器内部に触媒供給ノズル7を設けてもよい。供給速度Vと流速Vとの調整のしやすさを考慮すると、触媒供給ノズル7を設けることが好ましい。
触媒供給ノズル7は通常の配管の形状を有するもの(配管そのもの)を用いればよく、供給速度Vと流速Vとの調整が必要になった場合には、所望の触媒供給ノズル7の高さとなるような長さの配管に交換すればよい。また、触媒供給口3の形式は特に制限はなく、触媒供給ノズル7の交換のしやすさ等を考慮すると、例えばフランジを採用しておけばよい。触媒排出口4の形式も、触媒供給口3と同様である。
【0036】
触媒の供給は、連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよい。いずれの場合も、触媒層の高さの変動を緩やかにし、かつ効率的に供給することが好ましい。
断続的に行う場合は、週に通常1~7回、好ましくは1~3回、より好ましくは1回の供給を行うように供給すればよい。この場合、週ごとに供給する触媒量としては、反応容器における触媒の充填量に応じてかわるため一概にはいえないが、触媒層の高さの変動を緩やかにし、かつ効率的に供給する観点から、触媒の充填量(容量)を100とした場合に、好ましくは0.5~10%、より好ましくは1~7.5%、更に好ましくは1.5~5%である。週ごとに供給する触媒量が上記範囲内であれば、均一な触媒層を保持しやすく、安定して優れた触媒活性が得られる。
【0037】
供給速度Vとしては、反応容器の大きさ、触媒の大きさ等に応じて変わり得るため一概にはいえないが、通常0.05m/s以上5m/s以下とすればよく、好ましくは3m/s以下、より好ましくは1m/s以下であり、下限として好ましくは0.1m/s以上、より好ましくは0.3m/s以上である。
【0038】
また、供給速度Vに関し、触媒の供給の際の触媒層の高さの変動は、反応容器の大きさ、触媒の粒径等に応じてかわり得るため一概にはいえないが、好ましくは10cm/分以下、より好ましくは7.5cm/分以下、更に好ましくは5cm/分以下、より更に好ましくは3cm/分以下であり、下限としては0.1cm/分以上、より好ましくは0.5cm/分以上、更に好ましくは1cm/分以上である。高さの変動が上記範囲内であると、触媒層の高さの変動が緩やかとなり、かつ効率的に供給することができるので、均一な触媒層を保持しやすく、安定して優れた触媒活性が得られる。
【0039】
(触媒の排出)
本実施形態の運転方法において、触媒層2の高さを一定に保つため、触媒の排出を行うことが好ましい。
触媒の排出は、触媒の排出口4から排出すればよい。例えば、図1に示されるように、下に凸のコーン型の形状を有するメッシュスクリーン93上に触媒が充填されている場合は、コーン部のより下部から触媒の排出口4を連結する触媒排出ノズル8を有しているとよい。触媒の排出をより円滑に行うことができる。
【0040】
触媒の排出量は、上記触媒の供給量と同じとすればよく、触媒の排出速度も上記触媒の供給速度と同じとすればよい。触媒の供給と同様に、触媒層の高さの変動が緩やかとなり、かつ効率的に供給することができるので、均一な触媒層を保持しやすく、安定して優れた触媒活性が得られる。
【0041】
また、触媒の排出は、触媒の供給と同様に連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよい。また、触媒の供給及び触媒の排出を断続的に行う場合、触媒の供給と同時に行ってもよいし、ずらして行ってもよいが、より安定した操作性及び触媒活性を得る観点から、ずらして行うことが好ましい。
【0042】
(原料流体)
本実施形態の運転方法において、原料流体は触媒との接触により反応を生じ得るものであれば特に制限はないが、触媒の供給が必要であることを考慮すると、原料油を含むものであることが好ましい。
原料油としては、軽質油留分、重質油留分等を制限なく用いることができるが、近年重質油処理の需要が増大していることを考慮すると、重質油留分が好ましく、例えば、常圧蒸留残油(AR)、減圧蒸留残油(VR)、重質サイクル油(HCO)、接触分解残油(CLO)及び重質軽油留分(HGO)が好ましく挙げられる。本実施形態の運転方法においては、これらの重質油留分を単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0043】
また、本実施形態の運転方法において、原料流体は気体を含んでもよい。原料流体として気体を含む場合、通常反応流体も気体が含まれることとなるため、反応容器の上部から触媒を供給して均一な触媒層を保持するには、より厳しい環境になるといえる。そのような厳しい環境下においても、均一な触媒層を保持できるという効果が得られることから、本実施形態の運転方法は、原料流体として気体を含む場合により好適である。よって、本実施形態の運転方法において、原料流体としては、原料油及び気体を含むことが好ましい。
【0044】
原料油に含まれ得る気体としては、原料油と反応し得る気体であれば特に制限なく、例えば水素が好ましく挙げられる。
【0045】
(触媒)
本実施形態の運転方法において、触媒は所望の反応に応じて適宜選択して用いればよい。
例えば、後述する重油直接脱硫装置の前処理(脱金属前処理)に採用する場合は、例えばニッケル-モリブデン、コバルト-モリブデン、ニッケル-タングステン、コバルト-タングステン等を活性金属とし、担体をアルミナ、シリカ、チタニア等の多孔性無機担体とする触媒を用いればよい。
【0046】
触媒の形状、大きさも、所望の反応に応じて適宜選択すればよく、形状としては例えば球体、楕円球体等が挙げられる。また大きさとしては平均粒径として通常1mm以上5mm以下である。
【0047】
(運転方法の用途)
本実施形態の運転方法は、原料流体を反応容器の下部から供給し、触媒と反応した反応流体を反応容器の上部から排出し、また原料流体を供給しながら反応容器の上部から触媒を供給するような用途であれば、特に制限なく適用可能である。
このような用途としては、例えば重油直接脱硫装置(RH装置)の触媒の劣化を抑制するために、必要に応じて当該RH装置の上流に設けられる脱金属前処理装置(OCR装置)等の重油直接脱硫装置の前処理装置が好ましく挙げられる。脱金属前処理装置に供給される原料油としては、上記の重質油留分が主に挙げられ、また気体としては水素が用いられることから、本実施形態の運転方法は脱金属前処理装置に好適に採用され得る。
【0048】
本実施形態の運転方法が、上記重油直接脱硫装置の前処理(好ましくは脱金属前処理)に用いられる場合、気体(水素)の供給量は、水素/原料油比として通常300Nm/kL以上2000Nm/kL以下であり、好ましくは500Nm/kL以上1800Nm/kL以下、より好ましくは750Nm/kL以上1500Nm/kL以下である。上記供給量とすると、効率的に反応を進行させることができる。
【0049】
上記重油直接脱硫装置の前処理(好ましくは脱金属前処理)に用いられる場合、反応容器内における反応温度は、通常310℃以上450℃以下、好ましくは330℃以上420℃以下、より好ましくは350℃以上400℃以下である。
また、反応圧力は、通常80MPa以上200MPa以下、好ましくは100MPa以上180MPa以下、より好ましくは120MPa以上175MPa以下、更に好ましくは155MPa以上165MPa以下である。
【0050】
[反応装置]
本実施形態の反応装置は、触媒層を備える反応容器を用いて、原料流体を反応させて反応流体を得る反応装置であって、前記反応容器の下部から前記原料流体を供給し、前記反応容器の上部から前記反応流体を排出し、前記原料流体を供給しながら前記反応容器の上部から触媒を供給し、前記触媒の供給箇所における、前記触媒の供給流速Vと反応流体の流速Vとが、V>Vの関係を満たすように前記触媒を供給する前記触媒の供給手段を備える、というものである。
【0051】
本実施形態の反応装置を構成する反応容器、原料流体、反応流体、触媒、触媒の供給流速と反応流体の流速との関係は、上記の本実施形態の運転方法において説明した内容と同じである。
【実施例0052】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0053】
(実験装置1)
図1に示される反応装置を用意した。反応容器は、直胴部とコーン部とを有しており(直胴部直径:300mm、直胴部高さ:640mm)、底部に流体として液体及びガスの混合物を供給できる供給口、頂部に流体を排出できる排出口、また直胴部の上部に固形分(触媒を供給できる供給口、コーン部の下部に触媒を排出できる排出口が設けられている。また触媒の供給口には、触媒を触媒層の上に供給できるように触媒供給ノズルが設けられている。反応容器を構成する直胴部とコーン部は、透明の材料(材質:アクリル)を用いており、内部を視認できるようになっている。
【0054】
(評価方法)
各実施例及び比較例の触媒の供給試験後の反応容器内の状態を目視し、触媒層の上表面の均一性について、以下の基準で評価した。C評価は不合格である。
A:触媒層の上表面は均一になっていた。
B:触媒層の上表面は若干不均一な箇所はあったものの、実用上許容できる程度であった。
C:触媒層の上表面は不均一であった。
【0055】
(実施例1)
上記の実験装置1を用いる。触媒としてアルミナ(粒径:3~3.5mm)を用い、直胴部の端部から170mmの高さまで触媒を充填し、触媒層表面から触媒供給ノズルまでの距離(供給箇所)が、190mmとなるように調整した。
次いで、下部から原料流体(液体:水、気体:窒素)、液体流量:17L/分(反応容器内流速(空塔速度):0.004m/s)、気体流量:50L/分(反応容器内流速(空塔速度):0.012m/s))を供給し、その20秒後に、触媒(スラリー濃度:60質量%)を供給速度V:0.53m/s(10L/分)で触媒を供給した。触媒供給ノズルの供給箇所における温度は25℃、圧力は0.1MPa(大気圧)であり、触媒層を通過した反応流体の流速V:0.3m/sであった。触媒の供給を開始して20秒後に触媒の供給を停止し、その10秒後に原料流体の供給を停止し、触媒の供給試験を終了した。
試験後の触媒層の状態について、上記の方法により評価した。評価結果を第1表に示す。
また、流速Vは上記の流動解析により求められた流速であり、流速Vが0.3m/sとなるのは、気体が気泡として反応容器内を上昇するため、気泡径、触媒層表面からの距離によって触媒供給ノズルにおける流速Vは空塔速度よりも速くなり、また気体の流れに同伴されて液体の流速も同じ程度の速さとなるためであると考えられる。
【0056】
(実施例2、比較例1)
実施例1において、触媒層表面から触媒供給ノズルまでの距離を第1表に示されるものにかえた以外は実施例1と同様にして触媒の供給試験を行い、触媒層の状態を目視した。上記方法により評価した結果を第1表に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例1及び2と比較例1との対比から、触媒の供給箇所(触媒供給ノズル高さ)における触媒の供給速度Vが反応流体の流速Vよりも大きくならないと、すなわち、V>Vの関係を満たさないと、均一な触媒層は得られないことが確認された。なお、これらの実施例及び比較例では実際の反応は生じないが、触媒の挙動は反応が生じていなくても反応が生じている場合と同じである。そのため、反応が生じていないこれらの実施例及び比較例は、反応が生じている場合のものとみることができる。
【0059】
次に、流動解析(汎用熱流体解析ソフトウェア、Ansys Fluent)により、以下参考例のシミュレーションを行った。本シミュレーションにおいて想定する反応装置の構成は図1に示される構成である。
反応容器は、直胴部とコーン部とを有しており(直胴部直径:4400mm、直胴部高さ:8900mm)、底部に流体として液体及びガスの混合物を供給できる供給口、頂部に流体を排出できる排出口、また直胴部の上部に触媒を供給できる供給口、コーン部の下部に触媒を排出できる排出口が設けられている。また触媒の供給口には、触媒を触媒層の上に供給できるように触媒供給ノズルが設けられている。
【0060】
(参考例1)
上記反応装置において、触媒としてニッケル-モリブデン触媒(担体:シリカ・アルミナ、粒径:3~3.5mm)を用い、直胴部の端部から8000mmの高さまで触媒を充填し、触媒供給ノズルの高さ(供給箇所)が、触媒層の上表面の高さから455mm上となるように設定した。
次いで、下部から原料流体(液体:常圧残渣油(重質油留分、密度:814.5kg/m)、気体:水素)を供給(液体流速:0.003m/s、気体流速:0.0122m/s)し、次いで触媒(スラリー濃度:60質量%)を供給速度V:0.53m/sで触媒を供給するよう設定した。触媒供給ノズルの供給箇所における温度は390℃、圧力は16.0MPaであり、触媒層を通過した反応流体の流速V:0.5m/s(液体流速:0.5m/s、気体流速:0.5m/s)であった。
触媒の供給を開始した後の触媒の状態について、下記の基準により評価した。評価結果を第2表に示す。
【0061】
(触媒の状態の評価)
各参考例の触媒の供給を開始した後の触媒の状態について、以下の基準で評価した。C評価は不合格である。
A:触媒は舞い上がることなく触媒層に落下した。
C:触媒は舞い上がった後、触媒層に落下した。
【0062】
(参考例2及び3)
参考例1において、触媒供給ノズルの供給箇所の高さを第2表に示されるものにかえた以外は参考例1と同様にして触媒の供給を開始した。開始した後の触媒の状態について、上記の基準により評価した。評価した結果を第1表に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
参考例1及び2と参考例3との対比から、触媒の供給箇所(触媒供給ノズル高さ)における触媒の供給速度Vが反応流体の流速Vよりも大きくならないと、すなわち、V>Vの関係を満たさないと、触媒が舞い上がりながら、その後に触媒層に落下するため、均一な触媒層は得られないことが確認された。
参考例1及び2の場合、触媒は舞い上がらずに触媒層の真ん中近傍に落下し、反応流体の気体の作用により、触媒層の表面は平らになり、均一な触媒層が得られることも確認された。他方、参考例3の場合、触媒は舞い上がってしまい、その後触媒層の周辺に(反応容器の壁面近傍に沿って)集中して落下すること、また反応容器の壁面近傍は反応流体の気体による作用が真ん中に比べて小さく、参考例1及び2のように触媒層の表面は平らにならず、反応容器の壁面近傍にいくにしたがい盛り上がるような形状を呈したままとなり、均一な触媒層が得られないことが確認された。
以上の参考例の結果から、実施例1及び2、比較例1により確認されたV>Vの関係を満たせば、均一な触媒層が得られることが、シミュレーションの結果からも確認された。
【符号の説明】
【0065】
1:反応容器
2:触媒層
3:触媒の供給口
4:触媒の排出口
5:原料流体の供給口
6:反応流体の排出口
7:触媒供給ノズル
8:触媒排出ノズル
9:構造物
91:インレットバスケット
92:チムニートレイ
93:メッシュスクリーン
図1