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特開2022-153114画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153114
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
A61B6/00 360B
A61B6/00 330Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056178
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 崇文
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA11
4C093AA26
4C093CA18
4C093DA06
4C093FF15
4C093FF17
4C093FF35
(57)【要約】
【課題】スピキュラを短い処理時間で精度よく検出することを可能とする画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】画像処理装置は、被写体の複数の断層面を表す複数の断層画像の各々から放射状の線構造を有するスピキュラ候補領域を検出し、検出した複数のスピキュラ候補領域のうち、同一のスピキュラ構造を表す複数の前記スピキュラ候補領域に対応する複数の断層画像を断層画像群として選択し、選択した断層画像群を用いて合成2次元画像を生成する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサを備える画像処理装置であって、
前記プロセッサは、
被写体の複数の断層面を表す複数の断層画像の各々から放射状の線構造を有するスピキュラ候補領域を検出し、
検出した複数の前記スピキュラ候補領域のうち、同一のスピキュラ構造を表す複数の前記スピキュラ候補領域に対応する複数の前記断層画像を断層画像群として選択し、
選択した前記断層画像群を用いて合成2次元画像を生成する、
画像処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記合成2次元画像を解析することにより、前記スピキュラ候補領域がスピキュラであるか否かを判定する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記合成2次元画像を表示する制御を行い、かつ
前記合成2次元画像上に、前記スピキュラ候補領域がスピキュラであるか否かの判定結果を表示する制御を行う、
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記スピキュラ候補領域に加えて、放射状の線構造以外の構造を有する病変候補領域を検出し、
候補領域が前記スピキュラ候補領域でない場合には、候補領域が前記スピキュラ候補領域である場合よりも、前記断層画像群から少ない枚数の断層画像を選択して前記合成2次元画像を生成する、
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
被写体の複数の断層面を表す複数の断層画像の各々から放射状の線構造を有するスピキュラ候補領域を検出し、
検出した複数の前記スピキュラ候補領域のうち、同一のスピキュラ構造を表す複数の前記スピキュラ候補領域に対応する複数の前記断層画像を断層画像群として選択し、
選択した前記断層画像群を用いて合成2次元画像を生成する、
処理を画像処理装置が備えるプロセッサが実行する画像処理方法。
【請求項6】
被写体の複数の断層面を表す複数の断層画像の各々から放射状の線構造を有するスピキュラ候補領域を検出し、
検出した複数の前記スピキュラ候補領域のうち、同一のスピキュラ構造を表す複数の前記スピキュラ候補領域に対応する複数の前記断層画像を断層画像群として選択し、
選択した前記断層画像群を用いて合成2次元画像を生成する、
処理を画像処理装置が備えるプロセッサに実行させるための画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乳がんの早期発見を促すため、乳房を撮影する放射線画像撮影装置(マンモグラフィと呼ばれる)を用いた画像診断が注目されている。また、マンモグラフィにおいて、放射線源を移動させて複数の線源位置から乳房に放射線を照射して撮影を行い、これにより取得した複数の投影画像を再構成して所望の断層面を強調した断層画像を生成するトモシンセシス撮影が提案されている。トモシンセシス撮影では、撮影装置の特性及び必要な断層画像に応じて、放射線源を放射線検出器と平行に移動させたり、円又は楕円の弧を描くように移動させたりして、複数の線源位置において乳房を撮影することにより複数の投影画像を取得する。そして、単純逆投影法若しくはフィルタ逆投影法等の逆投影法、又は逐次再構成法等を用いて、取得した複数の投影画像を再構成して断層画像を生成する。
【0003】
このような断層画像を乳房における複数の断層面において生成することにより、乳房内において断層面が並ぶ深さ方向に重なり合った構造を分離することができる。このため、予め定められた方向から被写体に放射線を照射する、従来の単純撮影により取得される2次元画像(以下、「単純2次元画像」という)においては検出が困難であった病変等の異常部位を発見することが可能となる。
【0004】
また、トモシンセシス撮影により取得された、放射線検出器の検出面から放射線源側に向けた距離(高さ方向の位置)が異なる複数の断層画像を、加算法、平均法、最大値投影法又は最小値投影法等によって合成することにより、単純2次元画像に相当する擬似的な2次元画像(以下、「合成2次元画像」という)を生成する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
また、病変等の識別性を高めるために、3D体積データから病変等の候補となる物を識別して断層画像にタグ付けを行い、複数のタグ付けされた断層画像を順投影することで合成2次元画像を生成する技術が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-128716号公報
【特許文献2】特表2015-515296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2には、病変等の候補としてスピキュラを検出することについては記載されていない。スピキュラとは、乳がんが発育する過程で周囲組織を巻き込むことで生じる放射状の線構造である。正常乳腺のなかにも、スピキュラと紛らわしい放射状の構造を有するものが存在する。通常、一枚の断層画像では、スピキュラと正常乳腺とを判別することは容易でないため、3次元画像を用いた解析が行われている。特許文献2においても、3次元画像(3D体積データ)から病変等の候補となる物を識別するために3次元解析が行われている。3次元解析は処理に時間がかかるという問題がある。
【0008】
本開示は、以上の事情を鑑みてなされたものであり、スピキュラを短い処理時間で精度よく検出することを可能とする画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の画像処理装置は、少なくとも1つのプロセッサを備える画像処理装置であって、プロセッサは、被写体の複数の断層面を表す複数の断層画像の各々から放射状の線構造を有するスピキュラ候補領域を検出し、検出した複数のスピキュラ候補領域のうち、同一のスピキュラ構造を表す複数の前記スピキュラ候補領域に対応する複数の断層画像を断層画像群として選択し、選択した断層画像群を用いて合成2次元画像を生成する。
【0010】
プロセッサは、合成2次元画像を解析することにより、スピキュラ候補領域がスピキュラであるか否かを判定することが好ましい。
【0011】
プロセッサは、合成2次元画像を表示する制御を行い、かつ合成2次元画像上に、スピキュラ候補領域がスピキュラであるか否かの判定結果を表示する制御を行うことが好ましい。
【0012】
プロセッサは、スピキュラ候補領域に加えて、放射状の線構造以外の構造を有する病変候補領域を検出し、候補領域がスピキュラ候補領域でない場合には、候補領域がスピキュラ候補領域である場合よりも、断層画像群から少ない枚数の断層画像を選択して合成2次元画像を生成することが好ましい。
【0013】
本開示の画像処理方法は、被写体の複数の断層面を表す複数の断層画像の各々から放射状の線構造を有するスピキュラ候補領域を検出し、検出した複数のスピキュラ候補領域のうち、同一のスピキュラ構造を表す複数の前記スピキュラ候補領域に対応する複数の断層画像を断層画像群として選択し、選択した断層画像群を用いて合成2次元画像を生成する処理を画像処理装置が備えるプロセッサが実行するものである。
【0014】
本開示の画像処理プログラムは、被写体の複数の断層面を表す複数の断層画像の各々から放射状の線構造を有するスピキュラ候補領域を検出し、検出した複数のスピキュラ候補領域のうち、同一のスピキュラ構造を表す複数の前記スピキュラ候補領域に対応する複数の断層画像を断層画像群として選択し、選択した断層画像群を用いて合成2次元画像を生成する処理を画像処理装置が備えるプロセッサに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、スピキュラを短い処理時間で精度よく検出することを可能とする画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】放射線画像撮影システムの概略構成図である。
図2】放射線画像撮影装置を図1の矢印A方向に見た図である。
図3】画像処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図4】画像処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図5】投影画像の取得処理を説明するための図である。
図6】断層画像の生成処理を説明するための図である。
図7】複数の断層画像の一例を示す図である。
図8】断層画像群の選択処理を説明するための図である。
図9】合成2次元画像の生成処理を説明するための図である。
図10】スピキュラ候補領域の判定処理を説明するための図である。
図11】合成2次元画像及び判定結果の表示状態の一例を示す図である。
図12】合成2次元画像生成処理の一例を示すフローチャートである。
図13】合成2次元画像及び判定結果の表示状態の一例を示す図である。
図14】合成2次元画像及び判定結果の表示状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0018】
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る放射線画像撮影システム100の構成を説明する。図1及び図2に示すように、放射線画像撮影システム100は、乳房のトモシンセシス撮影を行って断層画像を生成するために、複数の線源位置から被写体である乳房Mを撮影して、複数の放射線画像、すなわち複数の投影画像を取得するためのものである。放射線画像撮影システム100は、マンモグラフィ撮影装置1、コンソール2、画像保存システム3、及び画像処理装置4を備える。
【0019】
マンモグラフィ撮影装置1は、不図示の基台に対して回転軸11により連結されたアーム部12を備えている。アーム部12の一方の端部には撮影台13が、その他方の端部には撮影台13と対向するように放射線照射部14が取り付けられている。アーム部12は、放射線照射部14が取り付けられた端部のみを回転することが可能に構成されており、これにより、撮影台13を固定して放射線照射部14のみを回転することが可能となっている。
【0020】
撮影台13の内部には、フラットパネルディテクタ等の放射線検出器15が備えられている。放射線検出器15は放射線の検出面15Aを有する。また、撮影台13の内部には、放射線検出器15から読み出された電荷信号を電圧信号に変換するチャージアンプ、チャージアンプから出力された電圧信号をサンプリングする相関2重サンプリング回路、及びアナログの電圧信号をデジタル信号に変換するAD(Analog-to-Digital)変換部等が設けられた回路基板等も設置されている。
【0021】
放射線照射部14の内部には、放射線源16が収納されている。放射線源16は放射線としてX線を出射する。放射線源16が放射線を照射するタイミング、及び放射線源16の放射線発生条件(例えば、管電圧、照射時間等)は、コンソール2により制御される。
【0022】
また、アーム部12には、撮影台13の上方に配置されて乳房Mを押さえつけて圧迫する圧迫板17と、圧迫板17を支持する支持部18と、支持部18を上下方向に移動させる移動機構19とが設けられている。なお、圧迫板17と撮影台13との間隔、すなわち圧迫乳房厚は、コンソール2に入力される。
【0023】
コンソール2は、無線通信LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して、不図示のRIS(Radiology Information System)等から取得した撮影オーダ及び各種情報と、技師等により直接行われた指示等とを用いて、マンモグラフィ撮影装置1の制御を行う機能を有している。具体的には、コンソール2は、マンモグラフィ撮影装置1に乳房Mのトモシンセシス撮影を行わせることにより、後述するように複数の投影画像を取得し、複数の投影画像を再構成して複数の断層画像を生成する。一例として、本実施形態では、サーバコンピュータをコンソール2として用いている。
【0024】
画像保存システム3は、マンモグラフィ撮影装置1により撮影された放射線画像及び断層画像等の画像データを保存するシステムである。画像保存システム3は、保存している画像データから、コンソール2及び画像処理装置4等からの要求に応じた画像データを取り出して、要求元の装置に送信する。画像保存システム3の具体例としては、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)が挙げられる。
【0025】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る画像処理装置4のハードウェア構成を説明する。図3に示すように、画像処理装置4は、CPU(Central Processing Unit)20、一時記憶領域としてのメモリ21、及び不揮発性の記憶部22を含む。また、画像処理装置4は、液晶ディスプレイ等のディスプレイ23、キーボードとマウス等の入力装置24、及びネットワークに接続されるネットワークI/F(InterFace)25を含む。CPU20、メモリ21、記憶部22、ディスプレイ23、入力装置24、及びネットワークI/F25は、バス27に接続される。CPU20は、本開示の技術に係る「プロセッサ」の一例である。
【0026】
記憶部22は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はフラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部22には、画像処理プログラム30が記憶される。CPU20は、記憶部22から画像処理プログラム30を読み出してからメモリ21に展開し、展開した画像処理プログラム30を実行する。
【0027】
次に、図4を参照して、本実施形態に係る画像処理装置4の機能的な構成について説明する。図4に示すように、画像処理装置4は、取得部40、検出部42、選択部44、合成部46、判定部48、及び表示制御部50を含む。CPU20が画像処理プログラム30を実行することにより、取得部40、検出部42、選択部44、合成部46、判定部48、及び表示制御部50として機能する。
【0028】
取得部40は、コンソール2がマンモグラフィ撮影装置1にトモシンセシス撮影を行わせることにより生成された複数の断層画像を取得する。取得部40は、コンソール2又は画像保存システム3からネットワークI/F25を介して複数の断層画像を取得する。
【0029】
ここで、コンソール2におけるトモシンセシス撮影及び断層画像の生成処理について説明する。コンソール2は、断層画像を生成するためのトモシンセシス撮影を行うに際し、アーム部12を回転軸11の周りに回転させることにより放射線源16を移動させる。また、コンソール2は、放射線源16の移動による複数の線源位置において、トモシンセシス撮影用の予め定められた撮影条件により被写体である乳房Mに放射線を照射させる。また、コンソール2は、乳房Mを透過した放射線が放射線検出器15により検出されることによって得られた複数の線源位置における複数の投影画像Gi(i=1~n;nは線源位置の数であり、例えばn=15)を取得する。
【0030】
図5に示すように、放射線源16を線源位置Si(i=1~n)の各々に移動し、各線源位置において放射線源16を駆動して乳房Mに放射線を照射する。乳房Mを透過した放射線を放射線検出器15が検出することにより、線源位置S1~Snの各々に対応して、投影画像G1,G2,・・・Gnが取得される。なお、線源位置S1~Snの各々においては、同一の線量の放射線が乳房Mに照射される。
【0031】
なお、図5において、線源位置Scは、放射線源16から出射された放射線の光軸X0が放射線検出器15の検出面15Aと直交する線源位置である。以下では、線源位置Scを基準線源位置Scと称する。
【0032】
コンソール2は、複数の投影画像Giを再構成することにより、乳房Mの所望とする断層面を強調した複数の断層画像を生成する。具体的には、コンソール2は、単純逆投影法又はフィルタ逆投影法等の周知の逆投影法等を用いて複数の投影画像Giを再構成する。これにより、図6に示すように、コンソール2は、乳房Mの複数の断層面のそれぞれを表す複数の断層画像Dj(j=1~m)を生成する。この際、乳房Mを含む3次元空間における3次元の座標位置が設定され、設定された3次元の座標位置に対して、複数の投影画像Giの対応する画素の画素値が再構成されて、その座標位置の画素値が算出される。
【0033】
コンソール2は、生成した断層画像Djを画像処理装置4に転送するか、又は画像保存システム3に転送する。
【0034】
一例として図7に示すように、検出部42は、取得部40により取得された複数の断層画像Djの各々からスピキュラ候補を含む領域(以下、スピキュラ候補領域という。)を検出する。スピキュラは、乳がんが発育する過程で周囲組織を巻き込むことで生じる放射状の線構造(以下、放射状構造という。)である。検出部42は、断層画像Djの各々から、放射状に広がった線構造を含む領域を、スピキュラ候補領域として検出する。なお、断層画像には、正常乳腺が、スピキュラに類似した放射状構造として現れる可能性がある。このため、スピキュラ候補領域には、正常乳腺が含まれる可能性がある。
【0035】
図7では、説明の簡略化のために、断層画像Djの枚数が5枚(すなわち、j=1~5)である場合を例示している。図7に示す例では、断層画像D2にスピキュラ候補領域K21が含まれ、断層画像D3にスピキュラ候補領域K31及びスピキュラ候補領域K32が含まれ、断層画像D4にスピキュラ候補領域K41及びスピキュラ候補領域K42が含まれ、断層画像D5にスピキュラ候補領域K51が含まれる。
【0036】
検出部42は、公知のコンピュータ支援画像診断(CAD:Computer Aided Diagnosis)のスピキュラ検出用のアルゴリズムを用いて、複数の断層画像Djの各々からスピキュラ候補領域を検出する。CADによるスピキュラ検出用のアルゴリズムにおいては、断層画像Djにおける画素がスピキュラ候補領域であることを表す確率(尤度)が導出され、その確率が予め定められた閾値以上となる画素がスピキュラ候補領域として検出される。1枚の断層画像Djだけでは、スピキュラと放射状に広がった正常乳腺とは区別がつきにくいため、放射状に広がった正常乳腺もスピキュラ候補領域として検出される。
【0037】
なお、スピキュラ候補領域の検出処理は、CADを用いるものに限定されない。例えば、スピキュラ候補領域の検出処理は、フィルタ(例えば、放射状フィルタ)によるフィルタリング処理によって、断層画像Djからスピキュラ候補領域を検出するものであってもよい。また、スピキュラ候補領域の検出処理は、ディープラーニング等により機械学習がなされた検出モデル等によって、断層画像Djからスピキュラ候補領域を検出するものであってもよい。
【0038】
選択部44は、検出部42により検出された複数のスピキュラ候補領域のうち、同一のスピキュラ構造(すなわち放射状構造)を表すと推測される複数のスピキュラ候補領域に対応する断層画像群をそれぞれ選択する。例えば、選択部44は、乳房の厚さ方向で連続する複数の断層画像Djに写っており、かつそれぞれの断層画像Dj内における平面位置が同じである複数のスピキュラ候補領域に対応する断層画像群をそれぞれ選択する。「断層画像Dj内における平面位置がほぼ同じ」とは、例えば、検出面15Aに平行な平面上に投影した場合に、断層画像間でスピキュラ候補領域の少なくとも一部が重なっていることを意味する。
【0039】
図7に示す例では、選択部44は、スピキュラ候補領域K21、K31、K41と、スピキュラ候補領域K32、K42、K51とのそれぞれが同一のスピキュラ構造を表すと推測する。具体的には、図8に示すように、選択部44は、スピキュラ候補領域K21、K31、K41は連続する断層画像D2~D4に写っており、かつそれぞれの断層画像D2~D4内における平面位置がほぼ同じであるため、断層画像D2~D4を第1断層画像群P1として選択する。また、選択部44は、スピキュラ候補領域K32、K42、K51は連続する断層画像D3~D5に写っており、かつそれぞれの断層画像D3~D5内における平面位置がほぼ同じであるため、断層画像D2~D4を第2断層画像群P2として選択する。
【0040】
以下の説明では、スピキュラ候補領域K21、K31、K41を包含する領域を第1領域R1とする。また、スピキュラ候補領域K32、K42、K51を包含する領域を第2領域R2とする。第1領域R1及び第2領域R2は、例えば矩形状の領域である。
【0041】
合成部46は、選択部44により選択された断層画像群を用いて合成2次元画像SGを生成する。合成2次元画像は、基準線源位置Sc(図5参照)から乳房Mに放射線を照射して撮影した単純2次元画像に相当する擬似的な2次元画像である。本実施形態においては、合成部46は、図9に示すように、複数の断層画像Djを積層した状態で、基準線源位置Scからの放射線検出器15へ向かう視点方向、すなわち光軸X0(図5参照)に沿って、各断層画像Djにおいて対応する画素の画素値を合成して、合成2次元画像を生成する。以下、合成2次元画像の生成処理の具体的な一例について説明する。
【0042】
本実施形態では、図9に示すように、第1領域R1については第1断層画像群P1に含まれる断層画像D2~D4が合成され、第2領域R2については第2断層画像群P2に含まれる断層画像D3~D5が合成される。また、第1領域R1及び第2領域R2以外の領域については、すべての断層画像D1~D5が合成される。例えば、合成部46は、合成対象の断層画像群において対応する画素位置について画素値の加算平均値を、合成2次元画像SGの画素値とする。
【0043】
判定部48は、合成部46により生成された合成2次元画像SGに基づき、スピキュラ候補領域がスピキュラであるか否かを判定する。図10に示すように、判定部48は、合成2次元画像SGにおけるスピキュラ候補領域の構造が放射状である場合には、当該スピキュラ候補領域を「スピキュラ」と判定する。一方、判定部48は、合成2次元画像SGにおけるスピキュラ候補領域の構造が放射状でない場合には、当該スピキュラ候補領域を「正常乳腺」と判定する。
【0044】
スピキュラは、乳がんが発育する過程で周囲組織を巻き込むことで生じる放射状構造であることから、合成対象の断層画像群に含まれるどの断層画像においても乳がんの核から放射状に線が広がる。すなわち、スピキュラは、断層画像間で放射状構造の中心位置はほぼ一致する。このため、スピキュラは、合成2次元画像SGにおいても、核を中心とした放射状構造となる。これに対して、スピキュラに類似した正常乳腺は、放射状に線が広がるものの、乳がんとは異なり核が存在しないので、断層画像間で放射状構造の中心位置は変化する。このため、正常乳腺は、合成2次元画像SGでは、放射状構造が消滅し、非放射状となる。判定部48は、本特徴を利用して上記判定を行う。
【0045】
図10に示す例では、第1領域R1については、放射状構造が検出されるので「スピキュラ」であると判定される。第2領域R2については、放射状構造は検出されないので「正常乳腺」であると判定される。
【0046】
判定部48は、検出部42と同様に、CADを用いて、放射状構造の検出及び判定を行う。放射状構造の検出及び判定処理には、フィルタ(例えば、放射状フィルタ)によるフィルタリング処理、又はディープラーニング等により機械学習がなされた検出モデル等を用いることも可能である。
【0047】
表示制御部50は、合成部46により生成された合成2次元画像SGをディスプレイ23に表示する制御を行う。
【0048】
また、表示制御部50は、判定部48によるスピキュラ候補領域の判定結果をディスプレイ23に表示する制御を行う。例えば、表示制御部50は、合成2次元画像SG上に判定結果を表示する制御を行う。図11に、この判定結果の表示状態の一例を示す。図11に示すように、表示制御部50は、判定部48による判定結果を表す文字列を、判定対象のスピキュラ候補領域の近傍に表示する制御を行う。図11に示す例では、スピキュラであると判定されたスピキュラ候補領域の近傍に「スピキュラ」との文字列が表示されている。なお、近傍に文字列が表示されていないスピキュラ候補領域は「正常乳腺」であることを意味している。
【0049】
次に、図12を参照して、本実施形態に係る画像処理装置4の作用を説明する。CPU20が画像処理プログラム30を実行することによって、図12に示す合成2次元画像生成処理が実行される。図12に示す合成2次元画像生成処理は、例えば、ユーザにより入力装置24を介して実行開始の指示が入力された場合に実行される。
【0050】
ステップS10で、取得部40は、コンソール2がマンモグラフィ撮影装置1にトモシンセシス撮影を行わせることにより生成された複数の断層画像Djを取得する。
【0051】
ステップS11で、検出部42は、前述したように、ステップS10で取得された複数の断層画像Djの各々からスピキュラ候補領域を検出する(図7参照)。
【0052】
ステップS12で、選択部44は、前述したように、ステップS11で検出部42により検出された複数のスピキュラ候補領域のうち、断層画像Dj内の同じ位置から検出されたスピキュラ候補領域に対応する断層画像群を選択する(図8参照)。
【0053】
ステップS13で、合成部46は、前述したように、選択部44により選択された断層画像群を用いて合成2次元画像SGを生成する(図8及び図9参照)。
【0054】
ステップS14で、判定部48は、前述したように、合成部46により生成された合成2次元画像SGを解析することにより、スピキュラ候補領域がスピキュラであるか否かを判定する(図10参照)。
【0055】
ステップS15で、表示制御部50は、前述したように、合成部46により生成された合成2次元画像SGをディスプレイ23に表示する制御を行う。
【0056】
ステップS16で、表示制御部50は、前述したように、判定部48によるスピキュラ候補領域の判定結果をディスプレイ23に表示する制御を行う(図11参照)。ステップS16の処理が終了すると、合成2次元画像生成処理が終了する。
【0057】
上述のとおり、本例の合成2次元画像生成処理では、断層画像Dj内の同じ平面位置から検出された複数のスピキュラ候補領域に対応する断層画像群を合成することにより合成2次元画像SGを生成している。このため、合成2次元画像SGにおいて、スピキュラ候補領域は、スピキュラである場合には放射状となり、正常乳腺である場合には非放射状となるので、スピキュラの有無を精度よく判定することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、断層画像からスピキュラ候補領域を検出しているので、従来のように3次元画像(3D体積データ)から病変等の候補を検出する場合と比較して、短い処理時間で合成2次元画像を生成してスピキュラを検出することが可能となる。すなわち、本実施形態によれば、スピキュラを短い処理時間で精度よく検出することが可能となる。これにより、医師等の診断者は、3次元画像ではなく、1枚の合成2次元画像を読影すればよいため、読影の負荷が軽減する。また、読影に不要になった断層画像を記憶装置上から削除することによって、記憶装置の容量節約にもつながる。
【0059】
なお、上記実施形態では、表示制御部50は、判定部48による判定結果を文字列により表示する制御を行っているが、図13に示すように、判定部48による判定結果を、判定結果を示すスピキュラ候補領域の色を、他の領域の色と異ならせることによって表示する制御を行ってもよい。図13に示す例では、スピキュラであると判定されたスピキュラ候補領域が破線で表示されている。破線は、他の領域と色が異なることを表している。
【0060】
また、図14に示すように、表示制御部50は、判定部48による判定結果を表すマーク60を、判定結果を示すスピキュラ候補領域の近傍に表示する制御を行ってもよい。図14に示す例では、スピキュラであると判定されたスピキュラ候補領域の近傍に三角形のマーク60が表示されている。
【0061】
また、上記実施形態では、合成部46は、断層画像Dj内における位置が同じである複数のスピキュラ候補領域を包含する領域(上記実施形態の第1領域R1及び第2領域R2)について、断層画像群において対応する画素位置について画素値の加算平均値を、合成2次元画像SGの画素値としている。これに代えて、合成部46は、断層画像Dj内における位置が同じである複数のスピキュラ候補領域の対応する画素位置の画素について、画素値の加算平均値を合成2次元画像SGの画素値としてもよい。この合成の際、合成部46は、複数のスピキュラ候補領域の何れか1つにのみ含まれる画素位置の画素については、その画素の画素値を合成2次元画像SGの画素値とする。
【0062】
また、上記実施形態では、合成部46は、選択部44により選択された断層画像群に含まれる断層画像をすべて合成しているが、当該断層画像群に含まれる一部の断層画像を合成してもよい。例えば、図8に示す例において、合成部46は、第1断層画像群P1に含まれる断層画像D2~D4のうち、断層画像D2及び断層画像D4のみを合成してもよい。すなわち、合成部46による合成処理は、連続する複数の断層画像を合成することには限定されず、不連続な複数の断層画像を合成してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、検出部42は、断層画像から放射状構造を有する領域をスピキュラ候補領域として検出しているが、放射状構造を有するスピキュラ候補領域に加えて、放射状構造以外の構造を有する領域を病変候補領域として検出してもよい。この場合、合成部46は、候補領域の種類に応じて、選択部44により選択された断層画像群から合成に用いる断層画像の枚数を変更することが好ましい。
【0064】
具体的には、合成部46は、候補領域がスピキュラ候補領域でない場合には、候補領域がスピキュラ候補領域である場合よりも、断層画像群から少ない枚数の断層画像を選択して合成処理を行う。例えば、合成部46は、候補領域がスピキュラ候補領域である場合には、断層画像群に含まれるすべてあるいは複数枚の断層画像を用いて合成処理を行い、候補領域が腫瘤候補領域の場合には、断層画像群に含まれる一部(好適には一枚)の断層画像を用いて合成処理を行う。例えば、腫瘤候補領域では、断層画像群に含まれるすべての断層画像を用いて合成しても、検出部42が誤検出した腫瘤状の正常乳腺が消滅する効果は見込めない。さらに、医師が良悪性を判定する上で重要な腫瘤辺縁の微細な構造が埋もれる可能性があるため、スピキュラ候補領域で採用する枚数より少ない枚数(望ましくは断層画像群に含まれる一枚)の断層画像を用いて合成処理を行うことがよい。
【0065】
また、上記実施形態では、合成2次元画像SGの画素の画素値として、選択された断層画像群の対応する画素の画素値の加算平均値を適用する場合について説明したが、これに限定されない。合成2次元画像SGの画素の画素値として、重み付け平均値、選択された断層画像群の対応する画素の画素値の中央値、最大値、又は最小値を適用する形態としてもよい。これに代えて、注目画素の画素値と断層画像群の全断層の平均値との差が設定値よりも大きい画素を有する断層画像、注目画素を含む注目領域の画素値の分散値が他よりも大きい画素を有する断層画像、又は、エッジ検出を使って検出された画素を有する断層画像を選択的に合成してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、判定部48が合成2次元画像SGに基づいてスピキュラ候補領域の判定を行っているが、判定部48は必須ではなく、判定部48を設けなくてもよい。この場合、ディスプレイ23に表示された合成2次元画像SGに基づいて、医師等の診断者が判定を行えばよい。
【0067】
また、上記実施形態において、例えば、取得部40、検出部42、選択部44、合成部46、判定部48、及び表示制御部50といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0068】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0069】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System on Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0070】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0071】
また、上記実施形態では、画像処理プログラム30が記憶部22に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。画像処理プログラム30は、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、画像処理プログラム30は、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 マンモグラフィ撮影装置
2 コンソール
3 画像保存システム
4 画像処理装置
11 回転軸
12 アーム部
13 撮影台
14 放射線照射部
15 放射線検出器
15A 検出面
16 放射線源
17 圧迫板
18 支持部
19 移動機構
20 CPU
21 メモリ
22 記憶部
23 ディスプレイ
24 入力装置
25 ネットワークI/F
27 バス
30 画像処理プログラム
40 取得部
42 検出部
44 選択部
46 合成部
48 判定部
50 表示制御部
60 マーク
100 放射線画像撮影システム
Dj 断層画像
Gi 投影画像
K21,K31,K32,K41,K42,K51 スピキュラ候補領域
M 乳房
P1 第1断層画像群
P2 第2断層画像群
R1 第1領域
R2 第2領域
SG 合成2次元画像
Sc 基準線源位置
Si 線源位置
X0 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14