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特開2022-153149ラテックス組成物、フォームラバー、およびパフ、ならびにラテックス組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153149
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ラテックス組成物、フォームラバー、およびパフ、ならびにラテックス組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/04 20060101AFI20221004BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20221004BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20221004BHJP
   C08J 9/30 20060101ALI20221004BHJP
   C08J 3/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C08L9/04
C08K3/30
C08K3/32
C08J9/30 CEQ
C08J3/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056239
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石葉 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】谷山 友哉
【テーマコード(参考)】
4F070
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA07
4F070AC12
4F070AC20
4F070AC32
4F070AC50
4F070AE14
4F070AE28
4F070AE30
4F070CA03
4F070CA19
4F070CA20
4F074AA12A
4F074AC30
4F074AC31
4F074AD15
4F074CB52
4F074DA33
4F074DA45
4J002AC071
4J002AC081
4J002BP011
4J002DG046
4J002DH046
4J002EG020
4J002FD206
4J002FD310
4J002GB00
4J002GC00
4J002GM00
4J002HA07
(57)【要約】
【課題】貯蔵安定性に優れ、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性に優れたラテックス組成物を提供すること。
【解決手段】重合体ラテックスと、前記重合体ラテックス中の重合体成分100重量部に対して0.5~20重量部の2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩とを含み、固形分濃度が60重量%以上であり、25℃における粘度が1500cps以下であるラテックス組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体ラテックスと、前記重合体ラテックス中の重合体成分100重量部に対して0.5~20重量部の2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩とを含み、
固形分濃度が60重量%以上であり、
25℃における粘度が1500cps以下であるラテックス組成物。
【請求項2】
前記重合体ラテックスが、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスである、請求項1に記載のラテックス組成物。
【請求項3】
25℃における粘度が1000cps以下である請求項1または2に記載のラテックス組成物。
【請求項4】
前記2価以上の多塩基酸が、リン酸および硫酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれかに記載のラテックス組成物。
【請求項5】
前記アルカリ金属がカリウムである、請求項1~4のいずれかに記載のラテックス組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のラテックス組成物を発泡成形してなるフォームラバー。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載のラテックス組成物を発泡成形してなるパフ。
【請求項8】
重合体ラテックスを調製する調製工程と、
前記重合体ラテックスに、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を添加し、濃縮を行うことにより、肥大化された重合体ラテックスを含有し、固形分濃度が60重量%以上であり、25℃における粘度が1500cps以下であるラテックス組成物を得る粒径肥大化・濃縮工程と、
を備え、前記粒径肥大化・濃縮工程において、前記重合体ラテックス中の重合体成分100重量部に対して、前記2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を0.5~20重量部添加する、ラテックス組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラテックス組成物、フォームラバー、およびパフ、ならびにラテックス組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合体ラテックスを用いて製造されたフォームラバー(ゴム発泡体)は、マットレス、化粧用スポンジ(パフ)、ロール、衝撃吸収剤等として種々の用途に使用されている。
【0003】
このようなゴム発泡体を得るための重合体ラテックスとして、耐油性が良好であるという観点より、従来から、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)ラテックス、およびこれを含有するラテックス組成物が用いられている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5859693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたラテックス組成物は、貯蔵安定性が十分なく、そのため、貯蔵安定性の改善が望まれていた。また、ラテックス組成物を、フォームラバー用として用いる際には、ゲル化性に優れ、かつ、フォームラバー成形時の収縮抑制性にも優れたものが求められている。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、貯蔵安定性に優れ、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性に優れたラテックス組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、重合体ラテックスと、特定量の2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩とを含み、特定範囲の固形分濃度および特定範囲の粘度を有するラテックス組成物によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、重合体ラテックスと、前記重合体ラテックス中の重合体成分100重量部に対して0.5~20重量部の2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩とを含み、固形分濃度が60重量%以上であり、25℃における粘度が1500cps以下であるラテックス組成物が提供される。
【0009】
本発明のラテックス組成物が、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスであることが好ましい。
本発明のラテックス組成物は、25℃における粘度が1000cps以下であることが好ましい。
本発明のラテックス組成物において、前記2価以上の多塩基酸が、リン酸および硫酸からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明のラテックス組成物において、前記アルカリ金属がカリウムであることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、上記ラテックス組成物を発泡成形してなるフォームラバーが提供される。
さらに、本発明によれば、上記ラテックス組成物を発泡成形してなるパフが提供される。
さらに、本発明によれば、重合体ラテックスを調製する調製工程と、前記重合体ラテックスに、2価以上の多塩基酸とアルカリ金属との塩を添加し、濃縮を行うことにより肥大化された重合体ラテックスを含有し、固形分濃度が60重量%以上であり、25℃における粘度が1500cps以下であるラテックス組成物を得る粒径肥大化・濃縮工程と、を備え、前記粒径肥大化・濃縮工程において、前記重合体ラテックス中の重合体成分100重量部に対して、前記2価以上の多塩基酸とアルカリ金属との塩を0.5~20重量部添加する、ラテックス組成物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、貯蔵安定性に優れ、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性に優れるラテックス組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のラテックス組成物は、重合体ラテックスと、前記重合体ラテックス中の重合体成分100重量部に対して0.5~20重量部の2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩とを含み、固形分濃度が60重量%以上であり、25℃における粘度が1500cps以下である。
【0013】
<重合体ラテックス>
本発明のラテックス組成物に含まれる重合体ラテックスは、重合体粒子が水中に分散してなる分散液である。
【0014】
重合体粒子を構成する重合体としては、特に限定されないが、たとえば、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体;スチレン-ブタジエン共重合体;合成ポリイソプレン;スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS);ポリブタジエン;天然ゴム;脱蛋白質天然ゴムなどが挙げられる。これらの中でも、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体またはスチレンブタジエン共重合体が好ましい。得られるフォームラバーを、風合い、および、耐油性、耐摩耗性等の耐久性に優れたものとすることができることから、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体がより好ましい。重合体粒子を構成する重合体は、1種単独であってもよく、あるいは2種以上であってもよい。
【0015】
重合体粒子を構成する重合体は、カルボキシル基などの変性基を有するものであってもよいが、ゲル化性の観点から、カルボキシル基を有しない重合体が好ましい。なお、カルボキシル基を有しない重合体としては、カルボキシル基を実質的に有しない重合体であればよく、たとえば、不純物等に起因する程度の量(たとえば、単量体単位換算で、0.05重量%未満程度の量)であれば、カルボキシル基が含まれるものであってもよい。
【0016】
ニトリル基含有共役ジエン系共重合体は、共役ジエン単量体と、エチレン性不飽和ニトリル単量体とを共重合してなる共重合体であり、これらに加えて、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を共重合してなる共重合体であってもよい。
【0017】
共役ジエン単量体としては、たとえば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよびクロロプレンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。これらの共役ジエン単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、共役ジエン単量体により形成される共役ジエン単量体単位の含有割合は、好ましくは20~95重量%であり、より好ましくは30~85重量%、さらに好ましくは40~80重量%である。共役ジエン単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーを、風合いおよび耐久性に優れたものとすることができる。
【0018】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を含有するエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリルなどが挙げられる。なかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。これらのエチレン性不飽和ニトリル単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、エチレン性不飽和ニトリル単量体により形成されるエチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、好ましくは5~80重量%であり、より好ましくは15~70重量%、さらに好ましくは20~60重量%である。エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーを、風合いおよび耐久性に優れたものとすることができる。
【0019】
共役ジエン単量体およびエチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノまたはジメチル、マレイン酸モノまたはジ-n-ブチル、フマル酸モノまたはジエチル、フマル酸モノまたはジ-n-ブチル、イタコン酸モノまたはジ-n-ブチル等のエチレン性不飽和カルボン酸のモノまたはジアルキルエステル;メトキシアクリレート、エトキシアクリレート、メトキシエトキシエチルアクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸のアルコキシアルキルエステル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド及びその誘導体;ジメチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノメチルアクリレート等のアミノ基を有するアクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン;ジシクロペンタジエン、ビニルノルボルネン等の非共役ジエン単量体などを挙げることができる。これらの単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、その他のエチレン性不飽和単量体により形成されるその他の単量体単位の含有割合は、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。その他の単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーを、風合いおよび耐久性に優れたものとすることができる。
【0020】
また、スチレン-ブタジエン共重合体は、共役ジエン単量体としての1,3-ブタジエンにスチレンを共重合してなる共重合体であり、これらに加えて、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を共重合してなる共重合体であってもよい。
【0021】
本発明のラテックス組成物に含まれる重合体ラテックスは、さらに、スルホン酸塩構造を有する界面活性剤を含んでいてもよい。
【0022】
スルホン酸塩構造を有する界面活性剤は、スルホン酸アニオン基(-SO )と対カチオンとの塩からなる構造を少なくとも1つ有する界面活性剤である。スルホン酸塩構造を有する界面活性剤としては、たとえば、β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(NASF)等のナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸カリウム等の直鎖状あるいは分岐鎖状のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩などが挙げられる。スルホン酸塩構造を有する界面活性剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
スルホン酸塩構造を有する界面活性剤としては、貯蔵安定性により優れ、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたラテックス組成物を得ることができることから、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩または直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩またはアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩がより好ましく、β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(NASF)またはアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩がさらに好ましく、β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(NASF)が特に好ましい。
【0024】
重合体ラテックスがスルホン酸塩構造を有する界面活性剤を含有する場合における、上記スルホン酸塩構造を有する界面活性剤の含有割合は、重合体ラテックス中に含まれる重合体成分100重量部に対して0.15重量部以上5.0重量部未満であることが好ましい。スルホン酸塩構造を有する界面活性剤の含有割合を上記範囲とすることにより、貯蔵安定性、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたラテックス組成物を得ることができる。スルホン酸塩構造を有する界面活性剤の含有割合は、重合体ラテックス中の重合体成分100重量部に対して、より好ましくは0.1~4.0重量部であり、さらに好ましくは1.0~3.0重量部である。
【0025】
<2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩>
本発明のラテックス組成物は、上述した重合体ラテックスと、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩とを含み、重合体ラテックス100重量部に対して、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を0.5~20重量部含む。本発明においては、重合体ラテックスと共に上記2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を含むことにより、優れた貯蔵安定性、および優れたゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性を有するラテックス組成物とすることができる。
【0026】
2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩の添加量が0.5重量部未満であると、固形分濃度を60重量%以上とした場合における、粘度が高くなり過ぎてしまい、フォームラバー用途として用いることが困難となる。2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩の添加量が20重量部を超えると、ラテックスの凝析が起こる可能性があるため好ましくない。
【0027】
なお、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩は、重合体ラテックスを構成する重合体粒子を合一化させることで、粒径を肥大化させる作用を有することから、本発明のラテックス組成物を構成する重合体ラテックスは、乳化重合により得られた重合体ラテックスを構成する重合体粒子が合一化され、粒径が肥大化した肥大化された重合体ラテックスであってもよい。
【0028】
2価以上の多塩基酸としては、炭酸、硫酸、リン酸、亜硫酸、チオ硫酸およびクロム酸からなる群から選択される少なくとも1種を用いることができ、硫酸またはリン酸であることが好ましく、リン酸であることが特に好ましい。2価以上の多塩基酸として上記のものを用いることにより、貯蔵安定性、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性をより高めることができる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウムまたはカリウムが好ましく、カリウムであることが特に好ましい。
【0029】
本発明のラテックス組成物は、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩として、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、硫酸ナトリウムおよび硫酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、リン酸三カリウムおよび硫酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0030】
本発明のラテックス組成物は、重合体ラテックス100重量部に対して、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を、好ましくは0.5重量部以上10重量部未満、より好ましくは0.5~5重量部含有する。
【0031】
また、本発明のラテックス組成物は、固形分濃度が、60重量%以上であり、25℃における粘度が1500cps以下である。固形分濃度および25℃における粘度がこの範囲にあることにより、本発明のラテックス組成物をフォームラバー用途に用いた場合に、十分な強度を有するフォームラバーを適切に得ることができる。
【0032】
ラテックス組成物の固形分濃度は、60重量%以上であり、好ましくは60~75重量%、より好ましくは60~70重量%である。固形分濃度が低すぎると、成形時の収縮率が高くなりすぎしてしまい、製造安定性や寸法安定性に劣るものとなってしまう。
【0033】
ラテックス組成物の25℃における粘度は、1500cps以下であり、好ましくは1200cps以下、より好ましくは1000cps以下である。なお、粘度の下限は、特に限定されないが、好ましくは100cpsである。粘度が高すぎると、ゲル化性に非常に劣るものとなり、フォームラバーを適切に得ることができない。なお、本発明のラテックス組成物25℃における粘度は、B型粘度計を用い、温度25℃、回転速度60rpmの条件にて測定することができる。
本発明のラテックス組成物は、固形分濃度が60重量%以上であり、その固形分濃度(たとえば、実際に使用に供する固形分濃度)において、25℃における粘度が上記範囲であればよいが、固形分濃度65重量%とした場合に、25℃における粘度が上記範囲であることが好ましい。この場合において、ラテックス組成物の固形分濃度が65重量%未満である場合には、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法で濃縮操作を行って固形分濃度を調整した後に、ラテックス組成物の固形分濃度が65重量%を超える場合には、水を添加して希釈することにより固形分濃度を調整した後に、上記粘度測定を行うことができる。
【0034】
本発明のラテックス組成物に含まれる、重合体ラテックス中の重合体粒子の数平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは100~600nm、より好ましくは150~600nm、さらに好ましくは200~500nmである。重合体粒子の数平均分子量が上記範囲にあることにより、ラテックス組成物の貯蔵安定性をより高めることができる。本発明のラテックス組成物に含まれる、重合体ラテックス中の重合体粒子の数平均粒子径は、光散乱回折粒径測定装置(型式「LS-13320」、ベックマンコールター社製)を用いて測定することができる。ラテックス組成物に含まれる重合体ラテックスが、乳化重合により得られた重合体ラテックスについて、所定の肥大化処理を施すことにより、粒径が肥大化されたものである場合には、肥大化された重合体ラテックスを構成する重合体粒子の粒子径が上記範囲であればよい。
【0035】
本発明のラテックス組成物は、架橋剤を含んでいてもよい。
【0036】
架橋剤としては、たとえば、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノール・ジスルフィド、N,N’-ジチオ-ビス(ヘキサヒドロ-2H-アゼピノン-2)、含りんポリスルフィド、高分子多硫化物、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の硫黄含有化合物が挙げられる。これらのなかでも、硫黄が好ましく使用できる。架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
ラテックス組成物中の架橋剤の含有量は、特に限定されないが、ラテックス組成物中の重合体成分100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.2~3重量部である。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーの強度を高めることができる。
【0038】
また、本発明のラテックス組成物は、さらに架橋促進剤を含むことが好ましい。
【0039】
架橋促進剤としては、フォームラバーの製造において通常用いられるものが使用でき、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ-2-エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2-メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2-(2,4-ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2-(N,N-ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(2,6-ジメチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2-(4’-モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4-モルホニリル-2-ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3-ビス(2-ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられるが、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、2ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。架橋促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
架橋促進剤の含有量は、ラテックス組成物中の重合体成分100重量部に対して、好ましくは0.05~5重量部であり、より好ましくは0.1~2重量部である。架橋剤促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーの強度を高めることができる。
【0041】
また、本発明のラテックス組成物は、さらに酸化亜鉛を含むことが好ましい。
【0042】
酸化亜鉛の含有量は、特に限定されないが、ラテックス組成物に含まれる重合体100重量部に対して、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは0.2~2重量部である。酸化亜鉛の含有量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーの強度を高めることができる。
【0043】
本発明のラテックス組成物は、気泡安定剤;キレート剤;脱酸素剤;老化防止剤;防腐剤;抗菌剤;消泡剤;着色剤;増粘剤;カーボンブラック、シリカ、タルク等の補強剤;炭酸カルシウム、クレー等の充填剤;紫外線吸収剤;可塑剤;pH調整剤などをさらに含有していてもよい。
【0044】
気泡安定剤としては、フォームラバーの製造において通常用いられるものが使用でき、たとえば、エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物(たとえば、商品名「トリメンベース」、Crompton Corp社製)、ヘキサフルオロケイ酸塩などが挙げられる。気泡安定剤の配合量は、ラテックス組成物中の重合体成分100重量部に対して、好ましくは0.4~10重量部、より好ましくは0.4~6重量部である。気泡安定剤の配合量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーに含まれる気泡を微細で均一なものとすることができ、柔軟性および強度を向上させることができる。
【0045】
pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物;等が挙げられるが、アルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。
【0046】
本発明のラテックス組成物の製造方法は、特に限定されないが、次の方法により製造することができる。
【0047】
本発明の一の態様において、ラテックス組成物の製造方法は、
重合体ラテックスを調製する調製工程と、
前記重合体ラテックスに、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を添加し、濃縮を行うことにより、肥大化された重合体ラテックスを含有し、固形分濃度が60重量%以上であり、25℃における粘度が1500cps以下であるラテックス組成物を得る粒径肥大化・濃縮工程と、を備える。
このような製造方法によれば、肥大化された重合体ラテックスと、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩とを含むラテックス組成物を得ることができる。
【0048】
(調製工程)
本発明のラテックス組成物に含まれる、重合体ラテックスを調製する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。重合体粒子が水中に分散してなる重合体ラテックスを調製する方法としては、たとえば、上記した単量体を乳化重合する方法、上記した単量体を溶液重合することにより得られる重合体の溶液を、乳化剤の存在下に、水中で乳化し、必要により有機溶媒を除去する方法、固体の重合体を有機溶媒に溶解または微分散してなる重合体の溶液または重合体の水性分散液を、乳化剤の存在下に、水中で乳化し、必要により有機溶媒を除去する方法が挙げられる。なかでも、生産性の観点から、単量体を乳化重合することにより重合体ラテックスを得る方法が好ましい。すなわち、調製工程において、単量体を乳化重合することが好ましい。
【0049】
単量体を乳化重合することにより重合体ラテックスを得る方法としては、乳化剤の存在下に、水中で、単量体を乳化重合する方法であればよく、従来公知の方法を採用することができる。この際においては、単量体としては、上記した単量体を上記した割合で用いればよい。また、たとえば、単量体を乳化重合する際には、通常用いられる、重合開始剤、キレート剤、酸素補足剤、分子量調整剤、pH調整剤等の重合副資材を使用することができる。これら重合副資材の添加方法は特に限定されず、初期一括添加法、分割添加法、連続添加法などいずれの方法でもよい。
【0050】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤などが挙げられる。アニオン性乳化剤としては、たとえば、牛脂脂肪酸カリウム、部分水添牛脂脂肪酸カリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩;ロジン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム、水添ロジン酸カリウム、水添ロジン酸ナトリウム等の樹脂酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。ノニオン性乳化剤としては、たとえば、ポリエチレングリコールエステル型、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体等のプルロニック(登録商標)型等の乳化剤が挙げられる。これらのなかでも、樹脂酸塩または脂肪酸塩が好ましく、ロジン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、オレイン酸カリウムがさらに好ましい。また、これらの乳化剤は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。乳化剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上10重量部未満であり、より好ましくは1~9重量部、さらに好ましくは1~5重量部、よりさらに好ましくは1~4重量部である。
【0051】
重合開始剤としては、特に限定されないが、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-α-クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部、より好ましくは0.01~2重量部である。
【0052】
また、過酸化物開始剤は還元剤との組み合わせで、レドックス系重合開始剤として使用することができる。この還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物100重量部に対して3~1000重量部であることが好ましい。
【0053】
分子量調整剤としては、たとえば、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;α-ベンジルオキシスチレン、α-ベンジルオキシアクリロニトリル、α-ベンジルオキシアクリルアミド、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-エチルヘキシルチオグリコレート、α-メチルスチレンダイマー、ターピノレンなどが挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。分子量調整剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対し、好ましくは0.1~3重量部、より好ましくは0.2~2重量部、特に好ましくは0.3~1.5重量部である。分子量調整剤の使用量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーの強度を向上させることができる。
【0054】
乳化重合する際に使用する水の量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、80~600重量部が好ましく、100~200重量部がさらに好ましい。
【0055】
乳化重合反応は、連続式、回分式のいずれでもよく、重合時間等も特に限定されない。単量体の添加方法としては、たとえば、反応容器に使用する単量体を一括して添加する方法、重合の進行に従って連続的または断続的に添加する方法、単量体の一部を添加して特定の転化率まで反応させ、その後、残りの単量体を連続的または断続的に添加して重合する方法等が挙げられ、いずれの方法を採用してもよい。単量体を混合して連続的または断続的に添加する場合、混合物の組成は、一定としても、あるいは変化させてもよい。また、各単量体は、使用する各種単量体を予め混合してから反応容器に添加しても、あるいは別々に反応容器に添加してもよい。なお、重合体ラテックスとして、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスを製造する場合において、重合反応を開始した後に、単量体の一部を反応器に添加して重合を継続する方法を用いる場合には、たとえば、エチレン性不飽和ニトリル単量体および共役ジエン単量体の一部を反応器に添加して、重合反応を開始した後、反応器内の重合反応率が20~65%である間に、共役ジエン単量体の残部を一括または分割して反応器に添加し、さらに重合反応を継続する方法が挙げられる。この際においては、重合反応を開始した後に添加する共役ジエン単量体の割合は、重合に用いる共役ジエン単量体全量の20~60重量%とすることが好ましい。
【0056】
以上のように単量体混合物を乳化重合し、所定の重合転化率に達した時点で、重合系を冷却したり、重合停止剤を添加したりして、重合反応を停止する。重合を停止する際の重合転化率は、特に限定されないが、好ましくは75重量%以上である。重合転化率は低すぎても、高すぎても、生産性が低下する傾向にある。重合温度は、特に限定されないが、好ましくは0~50℃、より好ましくは5~35℃である。
【0057】
重合停止剤としては、特に限定されないが、たとえば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノン誘導体、カテコール誘導体、ならびに、ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸およびこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。重合停止剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.05~2重量部である。
【0058】
以上のようにして重合反応を行い、重合体粒子が水中に分散してなる重合体ラテックスを得ることができる。必要に応じて重合体ラテックスから未反応単量体を除去してもよい。
【0059】
乳化重合により得られる重合体ラテックス中における重合体粒子の数平均粒子径は400nm以下であることが好ましい。重合体粒子の数平均粒子径は、ラテックス組成物の生産性の観点から、50nm以上300nm以下が好ましく、50nm以上250nm以下がより好ましい。ゴム粒子の数平均粒子径は、光散乱回折粒径測定装置(型式「LS-13320」、ベックマンコールター社製)を用いて測定することができる。
【0060】
重合体粒子の数平均粒子径は、単量体を乳化重合することにより重合体ラテックスを得る場合には、乳化剤の種類および量、開始剤の種類および量、水量、重合時間等の重合条件を調整することにより、制御することができる。また、重合体の溶液または重合体の水性分散液を、乳化剤の存在下に、水中で乳化することにより重合体ラテックスを得る場合には、乳化剤の種類および量、水量、重合体の溶液または重合体の水性分散液と水との混合条件等の乳化条件を調整することにより、制御することができる。
【0061】
重合体ラテックスの固形分濃度は、通常、10重量%~50重量%である。重合体ラテックスの固形分濃度は、40重量%未満であってもよい。重合体ラテックスの固形分濃度は、安定化ラテックスの固形分濃度の測定方法として後述する方法により測定することができる。
【0062】
(安定化工程)
本発明のラテックス組成物の製造方法は、上記スルホン酸塩構造を有する界面活性剤を添加し、安定化ラテックスを得る安定化工程を必要に応じて備えることができる。安定化工程においては、上記した調製工程で得られた重合体ラテックスに、スルホン酸塩構造を有する界面活性剤を、重合体成分100重量部に対して0.15重量部以上5.0重量部未満の割合で添加することができる。スルホン酸塩構造を有する界面活性剤の添加量は、重合体成分100重量部に対して、より好ましくは0.1~4.0重量部であり、さらに好ましくは1.0~3.0重量部である。
【0063】
また、安定化工程においては、重合体ラテックスにスルホン酸塩構造を有する界面活性剤を添加する前、あるいは、添加した後に、必要に応じて重合体ラテックスの固形分濃度を調整することにより、ラテックスの固形分濃度を40重量%以上60重量%未満の範囲とすることが好ましい。
【0064】
重合体ラテックスの固形分濃度の調整は、特に限定されないが、調製工程により得られた重合体ラテックスの固形分濃度に応じて、重合体ラテックスを濃縮または希釈する方法により行うことができる。
【0065】
重合体ラテックスを濃縮する方法としては、特に限定されないが、たとえば、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法が挙げられる。重合体ラテックスを濃縮する方法としては、貯蔵安定性に優れ、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたラテックスを、より高い生産性にて生産することができることから、蒸留が好ましく、減圧蒸留がより好ましい。また、重合体ラテックスを希釈する方法としては、水を添加する方法が挙げられる。
【0066】
蒸留を行う際の温度としては、30℃~100℃が好ましく、40℃~90℃がより好ましい。蒸留を行う際の圧力(ゲージ圧)としては、-0.1~0.0MPa0MPaが好ましく、-0.05~-0.099MPaがより好ましい。
【0067】
遠心分離は、たとえば、連続遠心分離機を用いて、遠心力を、好ましくは100~10,000G、遠心分離前の重合体ラテックスの固形分濃度を、好ましくは2~15重量%、遠心分離機に送り込む流速を、好ましくは500~1700Kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)を、好ましくは0.03~1.6MPaの条件にて実施することが好ましく、遠心分離後の軽液として、安定化ラテックスを得ることができる。
【0068】
安定化ラテックスの固形分濃度は、貯蔵安定性に優れ、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたフォームラバー用ラテックスを、より高い生産性にて生産することができることから、好ましくは20~55重量%であり、より好ましくは25~50重量%である。
【0069】
(粒径肥大化・濃縮工程)
本発明のラテックス組成物の製造方法は、調製工程、および任意に設けられる安定化工程を経て得られた重合体ラテックスに、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を添加し濃縮する、粒径肥大化・濃縮工程を備える。粒径肥大化・濃縮工程においては、重合体ラテックス中の重合体成分100重量部に対する、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩の添加量を0.5~20重量部の範囲とする。
【0070】
粒径肥大化・濃縮工程によれば、重合体ラテックス中の重合体成分100重量部に対して0.5~20重量部の範囲で添加される2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩と濃縮の作用により、調製工程、および任意に設けられる安定化工程を経て得られた重合体ラテックスを構成する重合体粒子を合一化させ、粒径を肥大化させることができ、これにより、肥大化した重合体ラテックスを含有する組成物を得ることができる。本発明の製造方法によれば、粒径肥大化・濃縮工程を経ることで粒径の肥大化および濃縮を行うことにより、固形分濃度60重量%以上であり、かつ、25℃における粘度が1500cps以下であるものとすることができる。
【0071】
粒径肥大化・濃縮工程における、重合体ラテックス中の重合体成分100重量部に対する2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩の添加量が0.5重量部未満であると、粒径の肥大化が十分に進まず、ラテックス組成物の固形分濃度を60重量%以上とした場合における、粘度が高くなり過ぎてしまい、貯蔵安定性、ゲル化性およびフォームラバー成形性に劣る傾向にある。また、重合体ラテックス中の重合体成分100重量部に対する2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩の添加量が20重量部を超えると、重合体粒子の肥大化よりも、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩の凝析が進み、ラテックス状態を保つことが困難になる。
粒径肥大化・濃縮工程において添加される2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩量は、重合体ラテックス中の重合体成分100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上10重量部未満であり、より好ましくは0.5~5重量部である。
【0072】
2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を重合体ラテックスに添加する際には、全量の2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を一度に添加してもよく、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を複数回に分割して添加してもよく、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を連続的に添加してもよい。得られるラテックス組成物の安定性の観点から、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を複数回に分割して安定化ラテックスに添加する方法、または、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を連続的に安定化ラテックスに添加する方法が好ましい。
【0073】
2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を複数回に分割して重合体ラテックスに添加する方法、または、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を連続的に重合体ラテックスに添加する方法において、重合体ラテックスへの2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩の添加を開始してから、添加を終了するまでの時間は、ゲル化性および発泡体成形時の収縮抑制性により優れたラテックス組成物を、より高い生産性にて生産することができることから、0.5~120分間が好ましく、0.5~60分間がより好ましい。
【0074】
粒径肥大化・濃縮工程においては、貯蔵安定性に優れ、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたラテックス組成物を、より高い生産性にて生産することができることから、重合体ラテックスを撹拌しながら2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を添加することが好ましい。重合体ラテックスの撹拌方法としては、たとえば、パドル型撹拌翼等の撹拌装置を用いて、回転速度50~2,500rpmで撹拌する方法が挙げられる。
【0075】
また、粒径肥大化・濃縮工程においては、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を重合体ラテックスに添加した後に、重合体ラテックスを撹拌してもよい。2価以上の多塩基酸とアルカリ金属との塩を添加した後の、ラテックス組成物の撹拌条件としては、貯蔵安定性、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたラテックス組成物を、より高い生産性にて生産することができることから、回転速度は50~2,500rpmが好ましく、50~1000rpmがより好ましく、撹拌時間は0.5時間~12時間が好ましく、0.5時間~5時間がより好ましい。
【0076】
2価以上の多塩基酸とアルカリ金属との塩を重合体ラテックスに添加する方法としては、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を、そのまま、重合体ラテックスに添加する方法や、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩の溶液または分散液を調製し、得られた溶液または分散液を重合体ラテックスに添加する方法が挙げられる。ラテックス組成物の安定性および生産性の観点から、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩の溶液または分散液を調製し、得られた溶液または分散液を重合体ラテックスに添加する方法が好ましい。2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩の溶液または分散液中における、上記塩の濃度は、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩の種類や、安定化ラテックスの固形分濃度等に応じて適宜決定すればよいが、ラテックス組成物の貯蔵安定性、ゲル化性、安定性および生産性の観点から、0.5重量%~15重量%が好ましく、0.5重量%~10重量%がより好ましい。
【0077】
上記した通り、重合体ラテックスに、2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を添加した後、重合体ラテックスおよび2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を含む組成物を濃縮し、固形分濃度が60重量%以上であり、25℃における粘度が1500cps以下であるラテックス組成物を得る。重合体ラテックスおよび2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を含む組成物は濃縮時の流動性に優れており、固形分濃度を容易に60重量%以上(フォームラバー製造用途として好適な固形分濃度)とすることができる。ラテックス組成物の固形分濃度を60重量%以上に濃縮することにより、ラテックス組成物を、フォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたものとすることができ、さらには、得られるフォームラバーの品質(たとえば、気泡の均一性や強度)を向上させることもできる。
【0078】
重合体ラテックスおよび2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を含む組成物を濃縮する方法としては、重合体ラテックスを濃縮する方法として上述した方法およびその条件を適宜採用することができる。重合体ラテックスおよび2価以上の多塩基酸のアルカリ金属塩を含む組成物を濃縮する方法としては、貯蔵安定性、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたラテックス組成物を、より高い生産性にて生産することができることから、蒸留が好ましく、減圧蒸留がより好ましい。
【0079】
<フォームラバー>
本発明のフォームラバーは、上述した本発明のラテックス組成物を用いて得られるものである。本発明のラテックス組成物は、貯蔵安定性、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性に優れている。よって、本発明のラテックス組成物を用いることで、収縮の抑制された高品質のフォームラバーを高い生産性にて製造することができる。フォームラバーの製造方法としては、本発明のラテックス組成物を、発泡および凝固させる製造方法が好ましい。
【0080】
本発明のラテックス組成物を発泡させる際には、通常空気が用いられる。たとえば、ラテックス組成物を攪拌し、空気を巻き込むことで発泡させることができる。この際、たとえば、オークス発泡機、超音波発泡機等を用いることができる。また、炭酸アンモニウム、重炭酸ソーダ等の炭酸塩;アゾジカルボン酸アミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド等のガス発生物質を、本発明のラテックス組成物に添加して発泡させることもできる。
【0081】
本発明のラテックス組成物を発泡させて、発泡物を得た後、発泡状態を固定化するために、発泡物を凝固させることが好ましい。凝固方法は、発泡物をゲル化し、固化させることができる方法であればよく、従来公知の方法を用いることができるが、たとえば、ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム(珪フッ化ナトリウム)、ヘキサフルオロ珪酸カリウム(珪フッ化カリウム)、チタン珪フッ化ソーダ等のフッ化珪素化合物などの常温凝固剤を、発泡物に添加するダンロップ法(常温凝固法);オルガノポリシロキサン、ポリビニルメチルエーテル、硫酸亜鉛アンモニウム錯塩などの感熱凝固剤を、発泡物に添加する感熱凝固法;冷凍凝固法等が使用される。常温凝固剤、感熱凝固剤などの凝固剤の使用量は、特に限定されないが、発泡物中の重合体成分100重量部に対して、好ましくは0.5~10重量部、より好ましくは0.5~8重量部である。
【0082】
そして、発泡物に凝固剤を添加した後、所望の形状の型に移し、凝固を行うことで、フォームラバーを得ることができる。また、凝固を行った後に、発泡物を架橋させるために、加熱してもよい。架橋の条件は、好ましくは100~160℃の温度で、好ましくは15~120分の加熱処理を施す条件とすることができる。
【0083】
得られたフォームラバーは、型から取り出した後、洗浄することが好ましい。洗浄の方法としては、特に限定されないが、たとえば、洗濯機等を用い、20~70℃程度の水で、5~15分程度攪拌して洗浄する方法が挙げられる。洗浄後、水切りをし、フォームラバーの風合いを損なわないように30~90℃程度の温度で乾燥することが好ましい。このようにして得られたフォームラバーは、たとえば、所定の厚さにスライスし、所定形状に切断した後、側面を回転砥石等で研磨することによって、パフ(化粧用スポンジ)等として用いることができる。
【0084】
本発明のラテックス組成物を用いて得られるフォームラバーは、マットレス、パフ(化粧用スポンジ)、ロール、衝撃吸収剤等の各種用途に好適に用いることができる。
【実施例0085】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0086】
<凝集物量>
ラテックス組成物の固形分濃度を測定した後、そのラテックス組成物約100gを精秤した後、重量既知の80メッシュのSUS製金網でろ過し、金網上の凝集物を数回水洗して、ラテックス組成物を除去した。これを、105℃で60分間、乾燥した後、その乾燥重量を測定し、凝集物の含有量を、ラテックス組成物中に含まれる重合体の成分の量を100%とした際の割合として求めた(単位:%)。凝集物の含有量が少ないほど、ラテックス組成物の安定性に優れる。
【0087】
<固形分濃度>
アルミ皿(重量:X1)に試料2gを精秤し(重量:X2)、これを105℃の熱風乾燥器内で2時間乾燥させた。次いで、デシケーター内で冷却した後、アルミ皿ごと重量を測定し(重量:X3)、下記の計算式にしたがって、固形分濃度を算出した。
固形分濃度(%)=(X3-X1)×100/X2
【0088】
<重合体粒子の数平均粒子径>
光散乱回折粒径測定装置(型式「LS-13320」、ベックマンコールター社製)を用いて、ラテックス組成物を構成する重合体粒子の数平均粒子径(nm)を求めた。
【0089】
<粘度>
各実施例および比較例にて得られた、肥大化処理後のラテックス組成物について、温度25℃の条件にて、B型粘度計を使用して回転速度60rpmにて測定することにより、B型粘度を測定した。
【0090】
<遠心分離後の凝集物量>
各実施例および比較例にて得られた、肥大化処理後のラテックス組成物30gを、遠心分離機(商品名「H-2000B」、コクサン社製)を用いて、1000Gで遠心分離を行った。その後、重量既知の80メッシュのSUS製金網でろ過し、金網上の凝集物を数回水洗して、ラテックス組成物を除去した。これを、105℃で60分間、乾燥した後、その乾燥重量を測定し、凝集物の含有量を、ラテックス組成物中に含まれる重合体の成分の量を100%とした際の割合として求めた(単位:%)。凝集物の含有量が少ないほど、ラテックス組成物の安定性に優れる。
【0091】
<ゲル化時間>
ラテックス組成物中の重合体成分100部に対して、加硫系水分散液(コロイド硫黄/ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤ノクセラーEZ(大内新興化学工業社製)/チアゾール系加硫促進剤ノクセラーMZ(大内新興化学工業社製)=2/1/1(重量比)、固形分濃度50%)4部、酸化亜鉛水分散液(固形分濃度50%)3部、気泡安定剤(トリメンベース:CromptonCorp製)1部を添加し、十分に分散させることで、ラテックス組成物を得た。得られたラテックス組成物について、以下の方法にしたがって、ゲル化時間を評価した。
ラテックスを、スタンドミキサー(エレクトロラックス社製、ESM945)を用いて攪拌して発泡させ、攪拌前の体積に対して5.0倍の体積を有する発泡物を得た。得られた発泡物に、珪フッ化ナトリウム水分散液(固形分濃度20重量%)を、得られた発泡物中の重合体成分100部に対する珪フッ化ナトリウムの添加量が1.5部となるように添加し、さらに1分間撹拌することで、ゲル化性発泡物を得た。ゲル化性発泡物を得てから、ゲル化性発泡物を手で触れてもゲル化性発泡物が付着しなくなるまでの時間を求め、以下の基準で評価した。
○:ゲル化時間が5分以内であった。
△:ゲル化時間が5分超10分以内であった。
×:ゲル化時間が10分超であった。
ゲル化時間が短いほど、ラテックスがゲル化性に優れることを意味する。
【0092】
<フォームラバー成形性>
全ての実施例および比較例において、同じ形状のシャーレを用いた。ゲル化時間測定と同時にしてゲル化性発泡物を得た。予め決定した高さ(すなわち架橋前の発泡物の高さ)まで、ゲル化性発泡物をシャーレに流し入れ、110℃で40分間架橋させ、得られた架橋物の高さを測定し、以下の基準で評価した。
〇:減衰率10%未満
×:減衰率10%以上
【0093】
<実施例1>
(調製工程)
耐圧反応容器に、水200部、オレイン酸カリウム(OLK)1部、アクリロニトリル55部、t-ドデシルメルカプタン0.5部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.03部、硫酸第一鉄0.003部、エチレンジアミン四酢酸・ナトリウム0.008部を添加し、十分に脱気した後、1,3-ブタジエン25部を添加した。次いで、重合開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド0.05部を添加して、反応温度5℃で乳化重合を開始した。重合転化率が40%に達した時点で、1,3-ブタジエンを10部添加し、重合反応を継続した。さらに、重合転化率が60%に達した時点で、1,3-ブタジエンを10部添加し、重合反応を継続した。重合転化率が80%になった時点で、ジエチルヒドロキシルアミン0.25部および水5部からなる重合停止剤溶液を添加して重合反応を停止させ、未反応単量体を除去し、重合体ラテックスを得た。重合体ラテックス中の重合体粒子の数平均粒子径は、90nmであった。
【0094】
(安定化工程)
得られた重合体ラテックスに、NASF水溶液(β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(NASF)の濃度45重量%水溶液、製品名「デモールT-45」、花王社製)を、重合体成分100部に対するNASF量が2部となるように添加した後、-0.05MPa(ゲージ圧)の減圧条件下、70℃で加熱することにより、安定化ラテックスを得た。
【0095】
(粒径肥大化・濃縮工程)
得られた安定化ラテックスに、消泡剤としての鉱油を基剤とする変性炭化水素油(商品名「DF714S」、星光PMC社製)0.01部を添加し、パドル型攪拌翼を用いて、回転速度100rpmで撹拌した。撹拌を継続したまま、リン酸三カリウムを、安定化ラテックス100部に対するリン酸三カリウムの割合が0.5部となるように添加した。なお、リン酸三カリウムの添加は複数回に分割して行い、リン酸三カリウムの添加を開始してから、添加を終了するまでの時間は、30分間であった。リン酸三カリウムの添加を終了した後、1.0時間撹拌を継続した後、-0.05MPa(ゲージ圧)の減圧条件下、80℃で加熱して濃縮を行い、固形分濃度65量%のラテックス組成物を得た。ラテックス組成物は、流動性に優れるものであった。ラテックス組成物について、上記方法に従って、濃縮後の凝集物量、固形分濃度、重合体粒子の数平均粒子径、粘度、遠心分離後の凝集物量、ゲル化時間およびフォームラバー成形時の成形性を測定・評価した。結果を表1に示す。
【0096】
<実施例2>
調製工程におけるオレイン酸カリウム量を3部に変更したこと、安定化工程を行わなかったこと、粒径肥大化・濃縮工程におけるリン酸三カリウム量を1部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物を得た。ラテックス組成物は、流動性に優れるものであった。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0097】
<実施例3>
調製工程におけるオレイン酸カリウム量を3部に変更したこと、安定化工程にけるNASF水溶液をぺレックスNBL(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムの濃度35重量%水溶液,花王社製)に変更したこと、粒径肥大化・濃縮工程におけるリン酸三カリウム量を5部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物を得た。ラテックス組成物は、流動性に優れるものであった。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0098】
<実施例4>
粒径肥大化・濃縮工程におけるリン酸三カリウムを硫酸カリウムに変更し、その添加量を、重合体ラテックス中の重合体成分100部に対する硫酸カリウム量が1部となる量に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、ラテックス組成物を得た。ラテックス組成物は、流動性に優れるものであった。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0099】
<比較例1>
調製工程におけるオレイン酸カリウム量を10部に変更したこと、安定化工程を行わなかったこと、粒径肥大化・濃縮工程におけるリン酸三カリウム量を5部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、肥大化された重合体ラテックスを得た。得られた肥大化された重合体ラテックスを、-0.05MPa(ゲージ圧)の減圧条件下、70℃で加熱したところ、ラテックスが著しく増粘し、固形分濃度が58重量%となった時点で濃縮が困難となったため、加熱を停止して、ラテックス組成物を得た。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0100】
<比較例2>
安定化工程におけるNASF水溶液の添加量を、重合体ラテックス中の重合体成分100部に対するNASF量が5部となる量に変更したこと、粒径肥大化・濃縮工程におけるリン酸三カリウム量を3.7部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてラテックス組成物を得た。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0101】
<比較例3>
粒径肥大化・濃縮工程におけるリン酸三カリウムに代えて、塩化ナトリウム(NaCl)を、重合体ラテックス中の重合体成分100部に対して5部の割合で添加した以外は、実施例1と同様にして、フォームラバー用ラテックスを得た。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
表1に示すように、重合体ラテックスと、多塩基酸とアルカリ金属との塩とを含み、特定範囲の固形分濃度と特定範囲の粘度を有するラテックス組成物によれば、貯蔵安定性、ゲル化性およびフォームラバー成形時の成形性に優れたラテックス組成物を得ることができた(実施例1~4)。実施例のラテックス組成物は、遠心分離後の凝集物量が抑制されていて、ラテックスの安定性に優れるため、貯蔵安定性に優れることがわかる。
【0104】
一方、ラテックス組成物の固形分濃度が60%未満である場合や(比較例1)、ラテックス組成物の25℃における粘度が1500cpsを超える場合には(比較例1および2)、得られるラテックス組成物は、フォームラバー成形時の成形性に劣るものであった。比較例2においては、ゲル化が起こらなかった。
【0105】
また、多塩基酸とアルカリ金属との塩に代えて、NaClを用いた場合には(比較例3)、ラテックス組成物の25℃における粘度が1500cpsを超え増粘してしまい、フォームラバー成形時の成形性に劣るものであった。