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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153259
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】共重合体の製造方法及び共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20221004BHJP
   C08F 4/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C08F293/00
C08F4/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004234
(22)【出願日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2021055169
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506076891
【氏名又は名称】ナンヤン テクノロジカル ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】新納 洋
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 俊介
(72)【発明者】
【氏名】許 書堯
(72)【発明者】
【氏名】後藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 逸超
【テーマコード(参考)】
4J015
4J026
【Fターム(参考)】
4J015EA06
4J015EA08
4J026HA06
4J026HA08
4J026HA11
4J026HA19
4J026HA20
4J026HA29
4J026HA32
4J026HA35
4J026HA38
4J026HA39
4J026HA48
4J026HB06
4J026HB07
4J026HB11
4J026HB19
4J026HB20
4J026HB22
4J026HB23
4J026HB29
4J026HB32
4J026HB38
4J026HB39
4J026HB42
4J026HB45
4J026HB47
4J026HE01
(57)【要約】
【課題】分子量及び分子量分布を充分に制御でき、分子量が充分に大きく、分子量分布が小さい共重合体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ビニル重合体(A)、ビニル単量体(B)及び重合触媒(C)を含む重合性組成物を重合する工程を有する共重合体の製造方法において、ビニル重合体(A)は分子内に0.8~2.9個のヨウ素原子を有し、かつ、数平均分子量をMn(A)が3,000~100,000であり、ビニル単量体(B)は分子内に2個以上のビニル基を有する単量体を30モル%以上含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル重合体(A)、ビニル単量体(B)及び重合触媒(C)を含む重合性組成物を重合する工程を有する、共重合体の製造方法であって、
前記ビニル重合体(A)が分子内に0.8~2.9個のヨウ素原子を有し、かつ、前記ビニル重合体(A)の数平均分子量をMn(A)としたとき、Mn(A)が3,000~100,000であり、
前記ビニル単量体(B)が、分子内に2個以上のビニル基を有する単量体を30モル%以上含む、共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記ビニル重合体(A)が、ヨウ素原子を含む官能基を有する、請求項1に記載の共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記ヨウ素原子を含む官能基が、下記式(I)で表される基である、請求項2に記載の共重合体の製造方法。
【化1】
(式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは-OC(O)R、-CONH、-CN、-COOR又はアリール基を表す。Rはアルキル基又はアリール基を表す。)
【請求項4】
前記重合触媒(C)が含窒素官能基を有する化合物及びヨウ化物塩から選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記共重合体の数平均分子量をMn、重量平均分子量をMwとしたとき、Mnが10万以上であり、Mw/Mnが1.1~3.0である、請求項1~4のいずれか一項に記載の共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記Mnが25万以上である、請求項5に記載の共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記共重合体の、動的光散乱法によって求めた平均粒子径が10~150nmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記ビニル単量体(B)が、ジビニル単量体又はトリビニル単量体を30モル%以上含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の共重合体の製造方法。
【請求項9】
前記ビニル単量体(B)が、ジビニル単量体を30モル%以上含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の共重合体の製造方法。
【請求項10】
構成単位(a)からなるブロックセグメントを含むブロックポリマー鎖を3本以上有する共重合体であって、
前記構成単位(a)は、分子内に2個以上のビニル基を有する単量体に由来する構成単位であり、
前記構成単位(a)からなるブロックセグメントは、共重合体の中心部で架橋構造を形成し、該架橋構造にヨウ素末端を有することを特徴とする共重合体。
【請求項11】
前記ブロックポリマー鎖が、少なくとも1つのブロックセグメント内に主鎖及び分岐鎖を有し、該分岐鎖が、その分岐が起きる部分の主鎖の構成単位と同じ構成単位からなる、請求項10に記載の共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体の製造方法及び共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル単量体を重合して得たビニル重合体は様々な用途に用いられており、特に機械物性要求に応える目的で、高分子量かつ分子量分布の制御されたビニル重合体が求められている。重合体の分子量及び分子量分布を同時に制御する方法としては、リビングアニオン重合法やリビングラジカル重合法等が挙げられる。これらの重合法によれば、高分子量かつ分子量分布が狭い重合体を得ることができる一方、特殊な化合物や金属触媒を使用する必要がある。そのため、これらの化合物や触媒を除去する工程が必要であり、工業的に煩雑という課題があった。
【0003】
そこで近年、特殊な化合物や金属触媒を使用しないリビングラジカル重合法として、可逆的移動触媒重合法(RTCP法)(特許文献1)や可逆的錯体形成媒介重合法(RCMP法)(特許文献2及び3)が開発されている。これらの重合法は、毒性の低い有機ヨウ素化合物やヨウ化物塩を触媒として用いるため除去工程の負荷が低く、かつ優れた重合制御を得られることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/139980号
【特許文献2】国際公開第2011/016166号
【特許文献3】国際公開第2013/027419号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に記載の方法においては、数平均分子量が10万以上の高分子量を有する重合体の合成は困難であった。特に、機械物性要求を満たすために必要な、高分子量かつ分子量分布が小さい重合体の合成はこれまでに報告されていない。
【0006】
本発明は、分子量及び分子量分布を充分に制御でき、分子量が充分に大きく、分子量分布が小さい共重合体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]ビニル重合体(A)、ビニル単量体(B)及び重合触媒(C)を含む重合性組成物を重合する工程を有する、共重合体の製造方法であって、前記ビニル重合体(A)が分子内に0.8~2.9個のヨウ素原子を有し、かつ、前記ビニル重合体(A)の数平均分子量をMn(A)としたとき、Mn(A)が3,000~100,000であり、前記ビニル単量体(B)が、分子内に2個以上のビニル基を有する単量体を30モル%以上含む、共重合体の製造方法。
[2]前記ビニル重合体(A)が、ヨウ素原子を含む官能基を有する、[1]に記載の共重合体の製造方法。
[3]前記ヨウ素原子を含む官能基が、下記式(I)で表される基である、[2]に記載の共重合体の製造方法。
【0008】
【化1】
【0009】
(式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは-OC(O)R、-CONH、-CN、-COOR又はアリール基を表す。Rはアルキル基又はアリール基を表す。)
[4]前記重合触媒(C)が含窒素官能基を有する化合物及びヨウ化物塩から選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
[5]前記共重合体の数平均分子量をMn、重量平均分子量をMwとしたとき、Mnが10万以上であり、Mw/Mnが1.1~3.0である、[1]~[4]のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
[6]前記Mnが25万以上である、[5]に記載の共重合体の製造方法。
[7]前記共重合体の、動的光散乱法によって求めた平均粒子径が10~150nmである、[1]~[6]のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
[8]前記ビニル単量体(B)が、ジビニル単量体又はトリビニル単量体を30モル%以上含む、[1]~[7]のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
[9]前記ビニル単量体(B)が、ジビニル単量体を30モル%以上含む、[1]~[8]のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
[10]構成単位(a)からなるブロックセグメントを含むブロックポリマー鎖を3本以上有する共重合体であって、前記構成単位(a)は、分子内に2個以上のビニル基を有する単量体に由来する構成単位であり、前記構成単位(a)からなるブロックセグメントは、共重合体の中心部で架橋構造を形成し、該架橋構造にヨウ素末端を有することを特徴とする共重合体。
[11]前記ブロックポリマー鎖が、少なくとも1つのブロックセグメント内に主鎖及び分岐鎖を有し、該分岐鎖が、その分岐が起きる部分の主鎖の構成単位と同じ構成単位からなる、[10]に記載の共重合体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分子量及び分子量分布を充分に制御でき、分子量が充分に大きく、分子量分布が小さい共重合体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施できる。
【0012】
[用語の説明]
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「構成単位」とは、単量体に由来する構成単位、すなわち単量体が重合することによって形成された構成単位、または重合体を処理することによって構成単位の一部が別の構造に変換された構成単位を意味する。
「ビニル単量体」とは、少なくとも1つのビニル基(炭素-炭素不飽和二重結合)を含む化合物を意味する。
「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又は「メタクリレート」を示す。
「(メタ)アクリロニトリル」とは、「アクリロニトリル」又は「メタクリロニトリル」を示す。
「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」又は「メタクリル酸」を示す。
「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイル」又は「メタクリロイル」を示す。
【0013】
[共重合体の製造方法]
本発明に係る共重合体の製造方法は、ビニル重合体(A)、ビニル単量体(B)及び重合触媒(C)を含む重合性組成物を重合する工程を有する。また、ビニル重合体(A)は分子内に0.8~2.9個のヨウ素原子を有し、かつ、ビニル重合体(A)の数平均分子量をMn(A)としたとき、Mn(A)が3,000~100,000であり、ビニル単量体(B)は、分子内に2個以上のビニル基を有する単量体を30モル%以上含む。
【0014】
<重合性組成物>
重合性組成物は、ビニル重合体(A)、ビニル単量体(B)及び重合触媒(C)を含む。重合性組成物は必要に応じて溶媒及びその他の添加剤を含んでいてもよい。以下、各成分について詳細に説明する。
【0015】
(ビニル重合体(A))
ビニル重合体(A)は、ビニル単量体に由来する構成単位を有する重合体であり、分子内に0.8~2.9個のヨウ素原子を有する。これにより、分子量が十分に大きく、かつ分子量分布が小さい共重合体が得られる。ヨウ素原子の数の下限は0.9個以上、上限は2.1個以下であることが好ましい。
【0016】
ビニル重合体(A)が分子内に有するヨウ素原子の数は、元素分析により求められるビニル重合体(A)のヨウ素原子の合計の割合(質量%)をx(%)とし、GPC測定により求められるビニル重合体(A)の数平均分子量Mn(A)をy(g/mol)として、下記式(II)により求めた値とする。
ビニル重合体(A)が分子内に有するヨウ素原子の数=(x/126.9)×y/100 ・・・(II)
【0017】
ビニル重合体(A)におけるヨウ素原子の位置は特に制限されないが、ビニル重合体(A)の末端の官能基に含まれることが好ましい。ヨウ素原子を含む官能基は特に制限されず、例えば、下記式(I)で表される基が挙げられる。
【0018】
【化2】
【0019】
式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは-OC(O)R、-CONH、-CN、-COOR又はアリール基を表す。Rはアルキル基又はアリール基を表す。
のアリール基の炭素原子数は、6~18が好ましい。Rとしては、-COOR又はアリール基が好ましい。
【0020】
のアルキル基としては、例えば炭素数1~20の分岐又は直鎖アルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基及びイコシル基を例示できる。
【0021】
のアリール基としては、例えば炭素数6~18のアリール基が挙げられる。具体的にはフェニル基、ベンジル基又はナフチル基を例示できる。
なおRのアルキル基又はアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、ハロゲン原子、アリル基、エポキシ基、アルコキシ基、及び親水性もしくはイオン性を示す基が挙げられる。なお親水性又はイオン性を示す基としては、例えばカルボキシ基のアルカリ塩又はスルホキシル基のアルカリ塩、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基等のポリ(アルキレンオキシド)基及び四級アンモニウム塩基等のカチオン性置換基が挙げられる。
【0022】
ビニル重合体(A)のMn(A)は、3,000~100,000である。Mn(A)が3,000以上であることにより、得られる共重合体の機械物性、特に弾性率が向上する。Mn(A)が100,000以下であることにより、共重合体の分子量を均等に増大させることができる。
【0023】
ビニル重合体(A)重量平均分子量をMw(A)としたとき、Mw(A)/Mn(A)は1.0~3.0であることが好ましい。これにより、分子量分布が小さい共重合体が得られる。なおMn(A)及びMw(A)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用し、ポリメチルメタクリレート(PMMA)の検量線から算出した値とする。
【0024】
ビニル重合体(A)が有するビニル単量体に由来する構成単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。
ビニル重合体(A)に用いるビニル単量体としては、例えば、スチレン系単量体、(メタ)アクリレート系単量体、カルボキシ基含有ビニル系単量体、酸無水物基含有ビニル系単量体、アミド基含有ビニル系単量体、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
【0025】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-、m-又はp-メチルスチレン、o-、m-又はp-メトキシスチレン、o-、m-又はp-t-ブトキシスチレン、o-、m-又はp-クロロメチルスチレン、o-、m-又はp-クロロスチレン、o-、m-又はp-ヒドロキシスチレン、o-、m-又はp-スチレンスルホン酸及びその誘導体、o-、m-又はp-スチレンスルホン酸ナトリウム、o-、m-又はp-スチレンボロン酸及びその誘導体等が挙げられる。
【0026】
(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルα-エチルアクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びそのアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート及びそのアルキルエーテル、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソブトキシエチル(メタ)アクリレート、t-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
カルボキシ基含有ビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等が挙げられる。
【0028】
酸無水物基含有ビニル系単量体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
アミド基含有ビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等が挙げられる。
【0029】
ビニル重合体(A)に用いるビニル単量体としては、入手のし易さの観点から、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びそのアルキルエーテル又はメトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0030】
ビニル重合体(A)の構造形態は特に制限されず、直鎖状のポリマー、ABブロックポリマー、ABAブロックポリマー、分岐型ポリマー、グラフトポリマー、スターポリマー等が挙げられる。
【0031】
重合性組成物におけるビニル重合体(A)の含有量は任意であるが、ビニル重合体(A)及びビニル単量体(B)の合計に対して0.01~50モル%であることが好ましい。これにより、得られる共重合体の分子量が増加する。ビニル重合体(A)の含有量の下限は0.1モル%以上、上限は30モル%以下であることがより好ましい。
【0032】
ビニル重合体(A)は公知の方法で製造でき、例えば、(逆)ヨウ素移動重合法((R)ITP法)、可逆的移動触媒重合法(RTCP法)、可逆的錯体形成媒介重合法(RCMP法)が挙げられる。これらの重合方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の水系分散重合法を用いることができる。
【0033】
具体的には、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法(米国特許4680352号明細書)により合成されたポリメチルメタクリレート(PMMA)マクロモノマーとn-ブチルアクリレート(BA)を、RCMP法により重合することでビニル重合体(A)を製造することができる。このとき、重合開始剤として2-ヨード-2-シアノプロパン(CP-I)、重合触媒としてテトラ-n-ブチルアンモニウムヨージド(BNI)等を用いてもよい。これにより、分子内に1個のヨウ素原子を有するビニル重合体(A)を製造することができる。
【0034】
また、上記の方法以外に、ヨウ素原子を含まないビニル重合体に、末端変化あるいは末端導入などの化学反応によりヨウ素原子を含む官能基を導入してビニル重合体(A)を製造することもできる。例えば、原子移動ラジカル重合(ATRP)法により1個の臭素原子を有するPMMAを製造し、次いでヨウ化ナトリウムと反応させることによって、臭素原子をヨウ素原子に置換することができる。
【0035】
(ビニル単量体(B))
ビニル単量体(B)は、分子内に2個以上のビニル基を有する単量体(以下、「単量体(B1)」とも称する。)を30モル%以上含む。これにより、得られる共重合体の分子量が増加する。ビニル単量体(B)は、単量体(B1)を50モル%以上含むことが好ましい。またビニル単量体(B)は、ジビニル単量体又はトリビニル単量体を30モル%以上含むことが好ましく、ジビニル単量体を30モル%以上含むことがより好ましい。
【0036】
単量体(B1)としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジブロモジビニルベンゼン、ジメトキシジビニルベンゼン、ジエトキシジビニルベンゼン、ジプロポキシシジビニルベンゼン、ジブトキシジビニルベンゼン、ジペンチルオキシジビニルベンゼン、ジヘキシルオキシジビニルベンゼン、ジヘプチルオキシジビニルベンゼン、ジオクチルオキシジビニルベンゼン、ジノニルオキシジビニルベンゼン、ジデジルオキシジビニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)オキシジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジウレタンジ(メタ)アクリレート、ビス(2-メタクリロイル)オキシエチルジスルフィド、ビス(2-アクリロイル)オキシエチルジスルフィド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
単量体(B1)としては、入手のし易さの観点から、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
ビニル単量体(B)は、分子内に1個のビニル基を有する単量体(以下、「単量体(B2)」とも称する。)を含んでいてもよい。単量体(B2)としては、例えば、上述のビニル重合体(A)の構成単位を与えるビニル単量体と同じものが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
単量体(B2)としては、重合制御の観点から、スチレン系単量体、(メタ)アクリレート系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。スチレン系単量体としてはスチレンが好ましい。(メタ)アクリレート系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びそのアルキルエーテル又はメトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0040】
重合性組成物におけるビニル単量体(B)の含有量は任意であるが、ビニル重合体(A)及びビニル単量体(B)の合計量に対して50~99.99モル%であることが好ましい。これにより、得られる共重合体の分子量が増加する。ビニル単量体(B)の含有量の下限は70モル%以上、上限は99.9モル%以下であることがより好ましい。
【0041】
(重合触媒(C))
重合触媒(C)は、ビニル重合体(A)における炭素原子-ヨウ素原子結合のヨウ素原子を引き抜く目的で用いられる。重合性組成物が重合触媒(C)を含むことにより、炭素原子-ヨウ素原子結合からのヨウ素原子の均一解離反応が促進されるため、重合速度が向上する。重合触媒(C)は含窒素官能基を有する化合物及びヨウ化物塩から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお含窒素官能基を有する化合物とは、含窒素官能基を有する高分子化合物も含む。
【0042】
含窒素官能基を有する化合物としては、例えば、トリアルキルアミン(トリエチルアミン、トリブチルアミン等)、テトラキスジメチルアミノエテン(TDAE)、1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカントリブチルホスフィン(TDME)、フタル酸イミド類、ピリジン類、ビピリジン類、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、エチレンジアミン、ジメチルエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルジアミノメタン、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス(2-(メチルアミノ)エチル)アミン、ヘマトポルフィリン、及びこれらの誘導体;スクシンイミド、2,2-ジメチルスクシンイミド、α,α-ジメチル-β-メチルスクシンイミド、3-エチル-3-メチル-2,5-ピロリジンジオン、シス-1,2,3,6-テトラヒドロフタルイミド、α-メチル-α-プロピルスクシンイミド、5-メチルヘキサヒドロイソインドール-1,3-ジオン、2-フェニルスクシンイミド、α-メチル-α-フェニルスクシンイミド、2,3-ジアセトキシスクシンイミド、マレイミド、フタルイミド、4-メチルフタルイミド、N-クロロフタルイミド、N-ブロモフタルイミド、4-ニトロフタルイミド、2,3-ナフタレンカルボキシイミド、ピロメリットジイミド、5-ブロモイソインドール-1,3-ジオン、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド(NIS)が挙げられる。これらの中でも、入手のし易さ、溶解性の点から、トリエチルアミン、トリブチルアミン、TDAE、TDME、PMDETA、スクシンイミド、フタルイミド、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド又はNISが好ましい。これらの含窒素官能基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
ヨウ化物塩としては、例えば、1-メチル-3-メチル-イミダゾリウムヨージド(EMIZI)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロマイド(EMIZBr)等のイミダゾール塩化合物;2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨージド(CMPI)等のピリジン塩化合物;テトラ-n-ブチルアンモニウムヨージド(BNI)、テトラ-n-ブチルアンモニウムトリヨージド(BNI3)、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロモジヨージド(BNBrI2)、テトラ-n-オクチルアンモニウムヨージド(ONI)等の4級アミン塩化合物;メチルトリブチルホスホニウム ヨージド(BMPI)等のホスホニウム塩化合物;テトラフェニルホスホニウムヨージド(PPI)、及びその誘導体;トリブチルスルホニウムヨージド(BSI)、及びその誘導体;ジフェニルヨードニウムヨージド(PII);ヘキサフェニルジホスファゼニウムクロリド(PPNCl)、及びその誘導体;ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム等のヨウ化アルカリ金属化合物;ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム等のヨウ化アルカリ土類金属化合物が挙げられる。これらの中でも、入手のし易さの点から、BNI、ONI、BNPI、ヨウ化ナトリウム又はヨウ化カリウムが好ましい。これらのヨウ化物塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
なお重合触媒(C)として、ラジカル重合開始剤が含まれてもよい。これにより共重合体の重合速度が向上する。ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物あるいはアゾ化合物を使用することができる。
有機過酸化物としては、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等を例示できる。
アゾ化合物としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)などを例示できる。
これらの中でも、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)が好ましい。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
重合性組成物における重合触媒(C)の含有量は、重合性組成物1リットルに対して0.1~2000ミリモルが好ましい。これにより共重合体の重合速度が充分に向上し、また、分子量分布の小さい共重合体を得ることができる。重合触媒(C)の含有量の下限は0.5ミリモル以上、上限は1500ミリモル以下がより好ましい。
【0046】
重合触媒(C)がラジカル重合開始剤を含む場合、重合性組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量は任意であるが、ビニル単量体(A)1モルに対して0.001~0.05モルであることが好ましい。これにより共重合体の重合速度が向上する。ラジカル重合開始剤の含有量の下限は0.002モル以上、上限は0.02モル以下がより好ましい。
【0047】
(溶媒)
溶媒としては、例えば、トルエン等の炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジグリム等のエーテル系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;アセトン等のケトン系溶剤;メタノール等のアルコール系溶剤;アセトニトリル等のニトリル系溶剤;酢酸エチル等のビニルエステル系溶剤;エチレンカーボネート等のカーボネート系溶剤;及び超臨界二酸化炭素が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合性組成物における溶媒の含有量は、20~90質量%であることが好ましい。
【0048】
(その他の添加剤)
その他の添加剤としては、例えば、メルカプタン等の連鎖移動剤及びヨウ素が挙げられる。
【0049】
<重合性組成物の重合>
重合性組成物を重合する方法としては、特に限定されず、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられる。
重合性組成物の重合は空気存在下で行ってもよいが、重合効率の点から、窒素やアルゴン等の不活性ガスで空気を置換した条件下で行うことが好ましい。
【0050】
重合中の重合性組成物の温度は、重合速度及び重合制御の観点から、0~150℃が好ましく、下限は20℃以上、上限は120℃以下がより好ましい。また重合性組成物の温度は、重合開始からビニル単量体(B)の転化率が50%に達するまで一定に維持することが好ましい。これにより、ビニル単量体(B)の転化率が高い領域まで重合が進行しやすくなる。ビニル単量体(B)の転化率が50%を超えた後の温度は特に限定されず、さらに昇温させてもよい。
【0051】
重合時間は特に限定されないが、一般的には0.5~72時間であることが好ましく、0.5~60時間であることがより好ましい。
【0052】
[共重合体]
本発明に係る共重合体の製造方法により製造される共重合体は、構成単位(a)からなるブロックセグメントを含むブロックポリマー鎖を3本以上有する。構成単位(a)は、分子内に2個以上のビニル基を有する単量体(単量体(B1))に由来する構成単位であり、構成単位(a)からなるブロックセグメントは、共重合体の中心部で架橋構造を形成し、該架橋構造にヨウ素末端を有する。
ここで、本明細書においては、共重合体の中心に存在するブロックセグメントをコア構造、該コア構造に接続したブロックセグメントをアーム構造とも称し、このようなコア構造及びアーム構造を有する共重合体を星形ポリマーとも称する。本発明に係る共重合体において、コア構造は前記構成単位(a)からなるブロックセグメントにより形成された架橋構造を有する。またアーム構造は、前記構成単位(a)を含まないブロックセグメントからなり、3本以上のアーム構造がコア構造に接続し、星形ポリマーを形成している。
【0053】
また、共重合体が有するブロックポリマー鎖は、少なくとも1つのブロックセグメント内に主鎖及び分岐鎖を有してもよい。またこのとき該分岐鎖が、その分岐が起きる部分の主鎖の構成単位と同じ構成単位からなることが好ましい。
【0054】
共重合体の構造については、粘度検出器を用いたGPC-TDA測定または多角度光散乱検出器を用いたGPC-MALS測定により分岐構造を確認することができる。架橋構造にある未反応ビニル基は、NMR測定により特定できる。ヨウ素原子の含有は元素分析測定により確認することができ、さらに、共重合体の切片をX線光電子分光(XPS)測定することによりヨウ素原子の所在位置を特定できる。
本発明に係る共重合体は、加水反応またはエステル交換反応により、共重合体の中心部に形成された架橋構造を分解することができ、共重合体のアーム構造に該当するポリマーのみを回収することができる。回収されたポリマーの構造については、NMR測定により、分解反応を実施する前に共重合体のコア構造に存在していた架橋構造にある未反応ビニル基を特定できる。また、共重合体が有するブロックポリマー鎖が、少なくとも1つのブロックセグメント内に主鎖及び分岐鎖を有し、該分岐鎖の分岐が起きる部分の主鎖の構成単位と同じ構成単位からなる場合も、同様に共重合体の分解反応を実施して回収されたポリマーを、NMR測定により特定できる。
これらにより、本発明に係る共重合体の製造方法により製造される共重合体の構造を確認することができる。
【0055】
本発明に係る共重合体の製造方法により製造される共重合体は、数平均分子量をMn、重量平均分子量をMwとしたとき、Mnが10万以上であり、Mw/Mnが1.1~3.0であることが好ましい。これにより、得られる共重合体の機械物性、特に弾性率が向上する。共重合体のMnは20万以上であることがより好ましく、25万以上であることがさらに好ましい。共重合体のMw/Mnは1.1~2.5であることがより好ましい。
【0056】
共重合体の動的光散乱法(DLS法)によって求めた平均粒子径は、10~150nmであることが好ましい。これにより共重合体を添加材として用いる際に、光散乱が生じにくくなる。
【0057】
本発明に係る共重合体の用途は特に限定されず、例えば、分散剤、樹脂添加剤、塗料用組成物、リソグラフィー用重合体が挙げられる。
【実施例0058】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0059】
[ビニル重合体(A)が分子内に有するヨウ素原子の数]
ビニル重合体(A)が分子内に有するヨウ素原子の数は、元素分析により求められるビニル重合体(A)のヨウ素原子の合計の割合(質量%)をx(%)とし、GPC測定により求められるビニル重合体(A)の数平均分子量Mn(A)をy(g/mol)として、下記式(II)により求めた。
ビニル重合体(A)が分子内に有するヨウ素原子の数=(x/126.9)×y/100 ・・・(II)
なお、GPCの測定条件は以下の通りとした。
カラム:TSK GUARD COLUMN SUPER HZ-L(4.6mm×35mm)とTSK-GEL SUPER HZM-N(6.0mm×150mm)の直列接続、
測定装置:東ソー社製「HLC-8220」、
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、
測定温度:40℃、
流速:0.6mL/分。
【0060】
[数平均分子量及び重量平均分子量]
ビニル重合体(A)の数平均分子量(Mn(A))及び重量平均分子量(Mw(A))、並びに共重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、GPCを使用し、PMMAの検量線から算出した。なお、GPCは上述の条件と同様にして測定した。
【0061】
[単量体の転化率]
各単量体の転化率は、NMR測定装置(Bruker社製、「BBF0400」、400MHz)を用いて求められる、残存単量体量と生成重合体量の総和に対する生成重合体量の比率として算出した。
【0062】
[ビニル重合体(A)の転化率]
ビニル重合体(A)の転化率は、GPC測定により重合前及び重合後におけるビニル重合体(A)のピーク面積を求め、重合後におけるピーク面積の減少率として算出した。なお、GPCは上述の条件と同様にして測定した。
【0063】
[共重合体の平均粒子径]
共重合体の平均粒子径は、光散乱装置(Malvern Panalytical社製、「ゼータサイザーナノZSP」)を用い、動的光散乱法(DLS法)により測定した。DLS測定は、5mgの固体試料を2mLのTHFで溶解させた溶液に対し、測定角度を173°として室温下で行った。平均粒子径は、得られた粒子径分布曲線の最大頻度における粒子径とした。
【0064】
[略称]
本実施例における略称は、以下のとおりである。
【0065】
<ビニル単量体(B)>
BA:n-ブチルアクリレート(東京化成工業社製)
BMA:n-ブチルメタクリレート(東京化成工業社製)
St:スチレン(東京化成工業社製)
LA:ラウリルアクリレート(東京化成工業社製)
AN:アクリロニトリル(東京化成工業社製)
PEGA:ポリエチレングリコールアクリレート(メーカー不明)
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート(東京化成工業社製)
DGDA:ジエチレングリコールジアクリレート(東京化成工業社製)
【0066】
<重合触媒(C)>
BNI:テトラ-n-ブチルアンモニウムヨージド(東京化成工業社製)
【0067】
<重合開始剤>
CP-I:2-ヨード-2-シアノプロパン(東京化成工業社製)
【0068】
<マクロモノマー>
PMMA-MM:ポリメチルメタクリレート系マクロモノマー(三菱ケミカル社製、Mn=3,800)
【0069】
[合成例1]
BAとPMMA-MMを、重合開始剤としてCP-I、重合触媒としてBNIを用い、表1に示す組成となるように混合した。次いで、得られた混合物をガラス製反応容器に移し、気相をアルゴンガスで置換した後、撹拌しながら重合温度を110℃とし、表1に示す重合時間で反応させた後、メタノールと水が7対3の重量比の混合溶媒を貧溶媒として再沈してビニル重合体(A1)を得た。得られたビニル重合体(A1)が分子内に有するヨウ素原子の数、Mn(A)及びMw(A)/Mn(A)を表1に示す。
ビニル重合体(A1)は、ヨウ素原子を含む官能基として、式(I)におけるRが水素原子であり、Rが-COORであり、Rがn-ブチル基である基を末端に有する。
【0070】
[合成例2~4]
BA、PMMA-MM、CP-I及びBNIの組成、及び重合時間を表1に示す通り変更した以外は、合成例1と同様の方法によりビニル重合体(A2)~(A4)を得た。得られたビニル重合体(A2)~(A4)が分子内に有するヨウ素原子の数、Mn(A)及びMw(A)/Mn(A)を表1に示す。
ビニル重合体(A2)~(A4)は、ヨウ素原子を含む官能基として、式(I)におけるRが水素原子であり、Rが-COORであり、Rがn-ブチル基である基を末端に有する。
【0071】
[合成例5~8]
ビニル単量体、CP-I、BNI及び溶媒の種類と含有量、2,2’-アゾビス(イソブチルニトリル)(AIBN)の使用、重合温度並びに重合時間を表1に示す通りに変更した以外は、合成例1と同様の方法でビニル重合体(A5)~(A8)を得た。得られたビニル重合体(A5)~(A8)が分子内に有するヨウ素原子の数、Mn(A)及びMw(A)/Mn(A)を表1に示す。
ビニル重合体(A5)は、ヨウ素原子を含む官能基として、式(I)におけるRが水素原子であり、Rがフェニル基である基を末端に有する。ビニル重合体(A6)は、ヨウ素原子を含む官能基として、式(I)におけるRが水素原子であり、Rが-COORであり、Rがn-ラウリル基である基を末端に有する。ビニル重合体(A7)は、ヨウ素原子を含む官能基として、式(I)におけるRが水素原子であり、Rが-CNである基を末端に有する。ビニル重合体(A8)は、ヨウ素原子を含む官能基として、式(I)におけるRがメチル基であり、Rが-COORであり、Rがメチル基を末端に有する。
【0072】
[合成例9]
重合開始剤として合成例8で合成したビニル重合体(A8)を用い、モノマー、CP-I及びBNIの種類と含有量を表1に示す通り変更した以外は、合成例1と同様の方法でビニル重合体(A9)を得た。得られたビニル重合体(A9)が分子内に有するヨウ素原子の数、Mn(A)及びMw(A)/Mn(A)を表1に示す。
ビニル重合体(A9)は、ヨウ素原子を含む官能基として、式(I)におけるRが水素原子であり、Rがポリエチレングリコール基である基を末端に有する。
【0073】
なお、表1において、「eq」は「モル当量数」を示す。[ビニル単量体]/[PMMA-MM]/[重合開始剤]/[BNI]/[AIBN]の欄は、ビニル重合体(A)の重合に用いる混合物中のビニル単量体、PMMA-MM、重合開始剤(CP-I又はビニル重合体(A8))、BNI及びAIBNのそれぞれのモル当量数を示している。
【0074】
【表1】
【0075】
[実施例1]
ビニル重合体(A)として合成例1において得られたビニル重合体(A1)を用い、ビニル単量体(B)としてEGDMA、重合触媒(C)としてBNI、溶媒として酢酸ブチルを用いて、表2に示す組成で重合性組成物を調製した。なお表2において、「eq」は「モル当量数」を示す。得られた重合性組成物をガラス製反応容器に移し、気相をアルゴンガスで置換した後、撹拌しながら重合温度110℃、重合時間24時間で重合を行い、共重合体を得た。得られた共重合体のMn、Mw/Mn及び平均粒子径を表3に示す。なお表3において、溶媒の含有量は、溶媒を含む全体の量を100質量%とした場合の溶媒量(質量%)を表す。
また該共重合体は、構成単位(a)からなるブロックセグメントを含むブロックポリマー鎖を3本以上有する共重合体であって、構成単位(a)からなるブロックセグメントは、共重合体の中心部で架橋構造を形成し、該架橋構造にヨウ素末端を有する。
【0076】
[実施例2~16]
ビニル重合体(A)、ビニル単量体(B)、重合触媒(C)及び溶媒の種類と含有量、並びに重合時間を表2に示す通り変更した以外は、実施例1と同様の方法により共重合体を得た。得られた共重合体のMn、Mw/Mn及び平均粒子径を表3に示す。
また該共重合体は、構成単位(a)からなるブロックセグメントを含むブロックポリマー鎖を3本以上有する共重合体であって、構成単位(a)からなるブロックセグメントは、共重合体の中心部で架橋構造を形成し、該架橋構造にヨウ素末端を有する。また実施例6~10および12において得られた共重合体は、少なくとも1つのブロックセグメント内に主鎖及び分岐鎖を有し、該分岐鎖が、その分岐が起きる部分の主鎖の構成単位と同じ構成単位からなる。
【0077】
[比較例1]
ビニル重合体(A)の代わりに分子内にヨウ素原子を有さないPMMA-MMを用い、ビニル単量体(B)としてBA、重合触媒(C)としてBNIおよびCP-Iを表2に示す組成で用いて重合性組成物を調製した。得られた重合性組成物をガラス製反応容器に移し、気相をアルゴンガスで置換した後、撹拌しながら重合温度110℃、重合時間24時間で重合を行い、共重合体を得た。得られた共重合体のMn、Mw/Mn及び平均粒子径を表3に示す。
【0078】
[比較例2]
ビニル単量体(B)の種類と含有量を表2に示す通り変更した以外は、比較例1と同様の方法により共重合体を得た。得られた共重合体はゲル化しており、Mn、Mw/Mn及び平均粒子径の評価ができなかった。
【0079】
[比較例3~4]
ビニル重合体(A)、ビニル単量体(B)、重合触媒(C)及び溶媒の種類と含有量、並びに重合時間を表2に示す通り変更した以外は、実施例1と同様の方法により共重合体を得た。得られた共重合体のMn、Mw/Mn及び平均粒子径を表3に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
表3に示されるように、既定のビニル重合体(A)、ビニル単量体(B)及び重合触媒(C)を含む重合性組成物を重合した実施例1~16では、いずれも分子量が十分に大きく、分子量分布が小さい共重合体が得られた。
【0083】
一方、ビニル重合体(A)の代わりに分子内にヨウ素原子を有さないPMMA-MMを用いた比較例1、及びビニル単量体(B)中の単量体(B1)の割合が規定値より小さい比較例3~4では、得られた共重合体の分子量はいずれも実施例と比較して小さい結果となった。またビニル重合体(A)の代わりに分子内にヨウ素原子を有さないPMMA-MMを用い、かつビニル単量体(B)中の単量体(B1)の割合が規定値より小さい比較例2では、得られた共重合体がゲル化してしまうという結果となった。