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特開2022-153291光学式濃度測定装置、光学式濃度測定装置用モジュール、および光学式濃度測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153291
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】光学式濃度測定装置、光学式濃度測定装置用モジュール、および光学式濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20221004BHJP
【FI】
G01N21/3504
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037590
(22)【出願日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2021056034
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100213333
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿山 昌代
(72)【発明者】
【氏名】一色 翔太
(72)【発明者】
【氏名】カマルゴ エジソン
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC04
2G059CC09
2G059CC13
2G059EE01
2G059EE11
2G059GG02
2G059GG03
2G059HH01
2G059JJ03
2G059KK03
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】干渉ガスによる光吸収の影響を除去しつつ、測定対象ガスの濃度を高精度に測定することが可能な光学式濃度測定装置を提供する。
【解決手段】光学式濃度測定装置1は、測定対象ガスおよび干渉ガスが赤外線を吸収する波長を含む波長帯域を第1透過帯域とする第1光学フィルタ41と、測定対象ガスおよび干渉ガスが赤外線を吸収する波長を含む波長帯域を第2透過帯域とする第2光学フィルタ42と、演算部60と、を備え、第1実効感度スペクトルのピーク波長と第2実効感度スペクトルのピーク波長との差は、第1実効感度スペクトルの半値全幅の±0.2倍以上±0.8倍以下である。演算部60は、第1減衰量に比例定数を掛けた量から第2減衰量を減算、又は、第2減衰量に異なる比例定数を掛けた量から第1減衰量を減算し、干渉ガスによる第1強度の減衰量および干渉ガスによる第2強度の減衰量を除去する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象ガスおよび干渉ガスが混在したガスに含まれる前記測定対象ガスの濃度を測定する光学式濃度測定装置であって、
赤外線を放射する第1光源と、
前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスが前記赤外線を吸収する波長を含む波長帯域を第1透過帯域とする第1光学フィルタと、
前記第1透過帯域に感度を有し、受光した光の第1強度に応じた第1検出信号を出力する第1受光部と、
前記赤外線を前記第1受光部へ導く第1導光部と、
前記赤外線を放射する第2光源と、
前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスが前記赤外線を吸収する波長を含む波長帯域を第2透過帯域とする第2光学フィルタと、
前記第2透過帯域に感度を有し、受光した光の第2強度に応じた第2検出信号を出力する第2受光部と、
前記赤外線を前記第2受光部へ導く第2導光部と、
前記第1検出信号に基づいて、前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスによる前記第1強度の第1減衰量を演算し、前記第2検出信号に基づいて、前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスによる前記第2強度の第2減衰量を演算し、前記第1減衰量および前記第2減衰量に基づいて、前記測定対象ガスの濃度を演算する演算部と、
を備え、
前記第1受光部における前記第1透過帯域に基づく第1実効感度スペクトルのピーク波長と前記第2受光部における前記第2透過帯域に基づく第2実効感度スペクトルのピーク波長との差は、前記第1実効感度スペクトルの半値全幅の±0.2倍以上±0.8倍以下であり、
前記演算部は、前記第1減衰量に比例定数を掛けた量から前記第2減衰量を減算、又は、前記第2減衰量に前記比例定数とは異なる比例定数を掛けた量から前記第1減衰量を減算し、前記干渉ガスによる前記第1強度の減衰量および前記干渉ガスによる前記第2強度の減衰量を除去する、
光学式濃度測定装置。
【請求項2】
前記第1実効感度スペクトル又は前記第2実効感度スペクトルの半値全幅は、80nm以上300nm以下である、
請求項1に記載の光学式濃度測定装置
【請求項3】
前記第1透過帯域の中心波長は、3.2μm以上3.4μm以下である、
請求項1又は2に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項4】
前記第1導光部により導かれる前記赤外線の第1光路長が、前記第2導光部により導かれる前記赤外線の第2光路長より長い場合、前記第1光路長と前記第2光路長との差は、前記第1光路長の0%以上5%以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項5】
前記第2導光部により導かれる前記赤外線の第2光路長が、前記第1導光部により導かれる前記赤外線の第1光路長より長い場合、前記第1光路長と前記第2光路長との差は、前記第2光路長の0%以上5%以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項6】
前記第1光源および前記第2光源は、同一である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項7】
前記第1光源および前記第2光源、又は、前記第1受光部および前記第2受光部は、半導体又は化合物半導体で構成される、
請求項1から6のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項8】
測定対象ガスおよび干渉ガスが混在したガスに含まれる前記測定対象ガスの濃度を測定する光学式濃度測定装置用モジュールであって、
赤外線を放射する第1光源と、
前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスが前記赤外線を吸収する波長を含む波長帯域を第1透過帯域とする第1光学フィルタと、
前記第1透過帯域に感度を有し、前記第1光学フィルタを透過した光を受光する第1受光部と、
前記赤外線を前記第1受光部へ導く第1導光部と、
前記赤外線を放射する第2光源と、
前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスが前記赤外線を吸収する波長を含む波長帯域を第2透過帯域とする第2光学フィルタと、
前記第2透過帯域に感度を有し、前記第2光学フィルタを透過した光を受光する第2受光部と、
前記赤外線を前記第2受光部へ導く第2導光部と、
を備え、
前記第1受光部における前記第1透過帯域に基づく第1実効感度スペクトルのピーク波長と前記第2受光部における前記第2透過帯域に基づく第2実効感度スペクトルのピーク波長との差は、前記第1実効感度スペクトルの半値全幅の±0.2倍以上±0.8倍以下である、
光学式濃度測定装置用モジュール。
【請求項9】
測定対象ガスおよび干渉ガスが混在したガスに含まれる前記測定対象ガスの濃度を測定する光学式濃度測定装置の光学式濃度測定方法であって、
前記光学式濃度測定装置は、
赤外線を放射する第1光源と、
前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスが前記赤外線を吸収する波長を含む波長帯域を第1透過帯域とする第1光学フィルタと、
前記第1透過帯域に感度を有し、受光した光の第1強度に応じた第1検出信号を出力する第1受光部と、
前記赤外線を前記第1受光部へ導く第1導光部と、
前記赤外線を放射する第2光源と、
前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスが前記赤外線を吸収する波長を含む波長帯域を第2透過帯域とする第2光学フィルタと、
前記第2透過帯域に感度を有し、受光した光の第2強度に応じた第2検出信号を出力する第2受光部と、
前記赤外線を前記第2受光部へ導く第2導光部と、
演算部と、
を備え、
前記第1受光部における前記第1透過帯域に基づく第1実効感度スペクトルのピーク波長と前記第2受光部における前記第2透過帯域に基づく第2実効感度スペクトルのピーク波長との差は、前記第1実効感度スペクトルの半値全幅の±0.2倍以上±0.8倍以下であり、
前記演算部が、前記第1検出信号に基づいて、前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスによる前記第1強度の第1減衰量を演算するステップと、
前記演算部が、前記第2検出信号に基づいて、前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスによる前記第2強度の第2減衰量を演算するステップと、
前記演算部が、前記第1減衰量および前記第2減衰量に基づいて、前記測定対象ガスの濃度を演算するステップと、
を含み、
前記測定対象ガスの濃度を演算するステップは、前記演算部が、前記第1減衰量に比例定数を掛けた量から前記第2減衰量を減算、又は、前記第2減衰量に前記比例定数とは異なる比例定数を掛けた量から前記第1減衰量を減算し、前記干渉ガスによる前記第1強度の減衰量および前記干渉ガスによる前記第2強度の減衰量を除去するステップを含む、
光学式濃度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式濃度測定装置、光学式濃度測定装置用モジュール、および光学式濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光源ではなく、タングステンランプなどスペクトル幅の広い光源を用いて、測定対象ガスおよび干渉ガスが混在したガスに含まれる測定対象ガスの濃度を測定し、低消費電力化を実現した光学式濃度測定装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、赤外線を放射する光源と、測定対象ガスのみが赤外線を吸収する波長帯域を透過帯域とするフィルタを有する第1受光部と、該波長帯域とは異なる波長帯域を透過帯域とするフィルタを有する第2受光部と、を備えることで、干渉ガスによる赤外線吸収の影響を除去しつつ、測定対象ガスの濃度を測定するセンサが開示されている。
【0004】
例えば、特許文献2には、赤外線を放射する光源と、測定対象ガスの吸収帯の赤外線を透過させる第1フィルタおよび測定対象ガスの非吸収帯の赤外線を透過させる第2フィルタと、各フィルタを選択的に回転させる回転部材と、各フィルタを透過した赤外線を受光する受光部と、を備えることで、小型化を実現したガス濃度測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-138499号公報
【特許文献2】国際公開第2016/002468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の光学式濃度測定装置は、干渉ガスによる赤外線吸収の影響を避けるため、測定対象ガスのみが赤外線を吸収する波長帯域を透過帯域とする光学フィルタを用いていた。このため、測定対象ガスのみが赤外線を吸収する波長帯域が狭い場合、受光部が受光する光の量が極端に削られて、光学式濃度測定装置の測定精度が悪化してしまうという問題があった。
【0007】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、干渉ガスによる光吸収の影響を除去しつつ、測定対象ガスの濃度を高精度に測定することが可能な光学式濃度測定装置、光学式濃度測定装置用モジュール、および光学式濃度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る光学式濃度測定装置は、測定対象ガスおよび干渉ガスが混在したガスに含まれる前記測定対象ガスの濃度を測定する光学式濃度測定装置であって、赤外線を放射する第1光源と、前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスが前記赤外線を吸収する波長を含む波長帯域を第1透過帯域とする第1光学フィルタと、前記第1透過帯域に感度を有し、受光した光の第1強度に応じた第1検出信号を出力する第1受光部と、前記赤外線を前記第1受光部へ導く第1導光部と、前記赤外線を放射する第2光源と、前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスが前記赤外線を吸収する波長を含む波長帯域を第2透過帯域とする第2光学フィルタと、前記第2透過帯域に感度を有し、受光した光の第2強度に応じた第2検出信号を出力する第2受光部と、前記赤外線を前記第2受光部へ導く第2導光部と、前記第1検出信号に基づいて、前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスによる前記第1強度の第1減衰量を演算し、前記第2検出信号に基づいて、前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスによる前記第2強度の第2減衰量を演算し、前記第1減衰量および前記第2減衰量に基づいて、前記測定対象ガスの濃度を演算する演算部と、を備え、前記第1受光部における前記第1透過帯域に基づく第1実効感度スペクトルのピーク波長と前記第2受光部における前記第2透過帯域に基づく第2実効感度スペクトルのピーク波長との差は、前記第1実効感度スペクトルの半値全幅の±0.2倍以上±0.8倍以下であり、前記演算部は、前記第1減衰量に比例定数を掛けた量から前記第2減衰量を減算、又は、前記第2減衰量に前記比例定数とは異なる比例定数を掛けた量から前記第1減衰量を減算し、前記干渉ガスによる前記第1強度の減衰量および前記干渉ガスによる前記第2強度の減衰量を除去する。
【0009】
一実施形態に係る光学式濃度測定装置用モジュールは、測定対象ガスおよび干渉ガスが混在したガスに含まれる前記測定対象ガスの濃度を測定する光学式濃度測定装置用モジュールであって、赤外線を放射する第1光源と、前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスが前記赤外線を吸収する波長を含む波長帯域を第1透過帯域とする第1光学フィルタと、前記第1透過帯域に感度を有し、前記第1光学フィルタを透過した光を受光する第1受光部と、前記赤外線を前記第1受光部へ導く第1導光部と、前記赤外線を放射する第2光源と、前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスが前記赤外線を吸収する波長を含む波長帯域を第2透過帯域とする第2光学フィルタと、前記第2透過帯域に感度を有し、前記第2光学フィルタを透過した光を受光する第2受光部と、前記赤外線を前記第2受光部へ導く第2導光部と、を備え、前記第1受光部における前記第1透過帯域に基づく第1実効感度スペクトルのピーク波長と前記第2受光部における前記第2透過帯域に基づく第2実効感度スペクトルのピーク波長との差は、前記第1実効感度スペクトルの半値全幅の±0.2倍以上±0.8倍以下である。
【0010】
一実施形態に係る光学式濃度測定方法は、測定対象ガスおよび干渉ガスが混在したガスに含まれる前記測定対象ガスの濃度を測定する光学式濃度測定装置の光学式濃度測定方法であって、前記光学式濃度測定装置は、赤外線を放射する第1光源と、前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスが前記赤外線を吸収する波長を含む波長帯域を第1透過帯域とする第1光学フィルタと、前記第1透過帯域に感度を有し、受光した光の第1強度に応じた第1検出信号を出力する第1受光部と、前記赤外線を前記第1受光部へ導く第1導光部と、前記赤外線を放射する第2光源と、前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスが前記赤外線を吸収する波長を含む波長帯域を第2透過帯域とする第2光学フィルタと、前記第2透過帯域に感度を有し、受光した光の第2強度に応じた第2検出信号を出力する第2受光部と、前記赤外線を前記第2受光部へ導く第2導光部と、演算部と、を備え、前記第1受光部における前記第1透過帯域に基づく第1実効感度スペクトルのピーク波長と前記第2受光部における前記第2透過帯域に基づく第2実効感度スペクトルのピーク波長との差は、前記第1実効感度スペクトルの半値全幅の±0.2倍以上±0.8倍以下であり、前記演算部が、前記第1検出信号に基づいて、前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスによる前記第1強度の第1減衰量を演算するステップと、前記演算部が、前記第2検出信号に基づいて、前記測定対象ガスおよび前記干渉ガスによる前記第2強度の第2減衰量を演算するステップと、前記演算部が、前記第1減衰量および前記第2減衰量に基づいて、前記測定対象ガスの濃度を演算するステップと、を含み、前記測定対象ガスの濃度を演算するステップは、前記演算部が、前記第1減衰量に比例定数を掛けた量から前記第2減衰量を減算、又は、前記第2減衰量に前記比例定数とは異なる比例定数を掛けた量から前記第1減衰量を減算し、前記干渉ガスによる前記第1強度の減衰量および前記干渉ガスによる前記第2強度の減衰量を除去するステップを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、干渉ガスによる光吸収の影響を除去しつつ、測定対象ガスの濃度を高精度に測定することが可能な光学式濃度測定装置、光学式濃度測定装置用モジュール、および光学式濃度測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る光学式濃度測定装置の構成の一例を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る光学式濃度測定装置の構成の一例を示す一部を透過させた斜視図である。
図3A】二酸化炭素が赤外線を吸収する場合における波長と吸収係数との関係の一例を示す図である。
図3B】メタンガスが赤外線を吸収する場合における波長と吸収係数との関係の一例を示す図である。
図3C】水蒸気が赤外線を吸収する場合における波長と吸収係数との関係の一例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る第1実効感度スペクトルおよび第2実効感度スペクトルにおける波長と実効感度スペクトルの強度比との関係の一例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る第1実効感度スペクトルおよび第2実効感度スペクトルにおける水蒸気の濃度と赤外線の減衰量との関係の一例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る第1実効感度スペクトルおよび第2実効感度スペクトルにおける水蒸気の濃度と赤外線の減衰量比との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、重複する説明を省略する。各図において、説明の便宜上、各構成の縦横の比率を実際の比率から誇張して示している
【0014】
また、以下、「赤外線」とは、波長2.0μmから波長10.0μmまでの電磁波を意味する。また、「透過」とは、光学フィルタを透過する光の量が、光学フィルタへ入射する光の量の3%以上であることを意味する。また、「感度」とは、受光部が所定の波長帯域の光を吸収し、電流信号又は電圧信号を出力することを意味する。また、「受光感度帯域」とは、受光部が感度を有する波長帯域の中で、最も感度が高い波長を中心波長とした場合に、中心波長から±50nm以上±500nm以下の波長を含む波長帯域を意味する。ただし、これらの用語は、便宜的に定められたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0015】
<光学式濃度測定装置>
図1乃至図6を参照して、本実施形態に係る光学式濃度測定装置1の構成の一例について説明する。
【0016】
光学式濃度測定装置1は、ガスの種類により吸収される赤外線の波長が異なることを利用して、測定対象ガスおよび干渉ガスが混在したガスに含まれる測定対象ガスの濃度を測定するNDIR(Non Dispersive InfraRed)方式の装置である。
【0017】
測定対象ガスは、例えば、二酸化炭素、メタン、水蒸気、プロパン、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、一酸化窒素、アンモニア、二酸化硫黄、アルコール、代替フロンなどである。
【0018】
干渉ガスは、測定対象ガス以外のガスであり、例えば、二酸化炭素、メタン、水蒸気、プロパン、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、一酸化窒素、アンモニア、二酸化硫黄、アルコール、代替フロンなどである。干渉ガスは、単数であっても複数であってもよい。
【0019】
例えば、光学式濃度測定装置1は、屋内又は屋外における二酸化炭素の濃度を測定する。例えば、光学式濃度測定装置1は、自然界に約2.0ppmしか存在しないメタンを主成分とする天然ガスを輸送するパイプラインにおいて、天然ガスの漏洩を検知するために、メタンの濃度を測定する。
【0020】
光学式濃度測定装置1は、第1導光部21と、第2導光部22と、第1光源31と、第2光源32と、第1光学フィルタ41と、第2光学フィルタ42と、第1受光部51と、第2受光部52と、演算部60と、駆動部70と、基板80と、を備える。
【0021】
〔第1光源〕
第1光源31は、インコヒーレント光源であることが好ましく、例えば、LED(Light Emitting Diode)、有機発光素子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ヒータなどである。第1光源31は、駆動部70から供給される駆動電流又は駆動電圧に基づいて、赤外線を放射する。第1光路Lは、測定対象ガスおよび干渉ガスが存在する空間において、第1光源31により放射された赤外線が第1導光部21を介して第1受光部51へ導かれるまでの赤外線の経路である。第1光路長lは、該経路の平均光学的距離である。
【0022】
第1光源31は、第2光源32に統合されてよい。第1光源31が第2光源32に統合された場合、光源により放射された赤外線をそれぞれの導光部へ取り出されるように、第1導光部21および第2導光部22が構成されればよい。なお、この場合、第1光源31又は第2光源32の何れかの光量が十分大きいことが必要である。
【0023】
〔第2光源〕
第2光源32は、インコヒーレント光源であることが好ましく、例えば、LED(Light Emitting Diode)、有機発光素子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ヒータなどである。第2光源32は、駆動部70から供給される駆動電流又は駆動電圧に基づいて、赤外線を放射する。第2光路Lは、測定対象ガスおよび干渉ガスが存在する空間において、第2光源32により放射された赤外線が第2導光部22を介して第2受光部52へ導かれるまでの赤外線の経路である。第2光路長lは、該経路の平均光学的距離である。
【0024】
第2光源32は、第1光源31に統合されてよい。第2光源32が第1光源31に統合された場合、光源により放射された赤外線をそれぞれの導光部へ取り出されるように、第1導光部21および第2導光部22が構成されればよい。なお、この場合、第1光源31又は第2光源32の何れかの光量が十分大きいことが必要である。
【0025】
第2光源32は、製造材料、製造プロセスなどが、第1光源31と同じであることが好ましい。特に、第1光源31が半導体又は化合物半導体により構成されるLEDである場合、第1光源31から放射される赤外線の波長は、バンドギャップによる温度特性の影響を受け易くなる。このため、温度特性を揃える観点から、第2光源32もまた、LEDであり、かつ、第1光源31と同一であることが好ましい。
【0026】
〔第1光学フィルタ〕
第1光学フィルタ41は、第1透過帯域の光を透過させる。第1透過帯域は、測定対象ガスおよび干渉ガスが赤外線を吸収する波長を含む波長帯域である。
【0027】
図3Aに示すように、例えば、二酸化炭素は、主に、波長4.0μmから波長4.5μmまでの波長帯域の赤外線を吸収する。図3Bに示すように、例えば、メタンは、主に、波長3.1μmから波長3.7μmまでの波長帯域の赤外線、波長7.1μmから波長8.5μmまでの波長帯域の赤外線を吸収する。この波長帯域は、メタンの分子振動モードに基づいて定められている。図3Cに示すように、例えば、水蒸気は、主に、波長2.5μmから波長3.0μmまでの波長帯域の赤外線、波長5.0μmから波長8.0μmまでの波長帯域の赤外線を吸収する。
【0028】
例えば、測定対象ガスが二酸化炭素、干渉ガスが水蒸気である場合、第1光学フィルタ41における第1透過帯域の中心波長は、波長4.0μm以上波長4.5μm以下であることが好ましい(図3Aおよび図3C参照)。
【0029】
例えば、測定対象ガスがメタン、干渉ガスが水蒸気である場合、第1光学フィルタ41における第1透過帯域の中心波長は、波長3.2μm以上波長3.4μm以下であることが好ましい(図3Bおよび図3C参照)。なお、波長7.1μm以上波長8.5μm以下の波長帯域では、メタンが赤外線を吸収する波長帯域と水蒸気が赤外線を吸収する波長帯域との重なりが大きいため、第1透過帯域は、上述の範囲であることが好ましい。
【0030】
また、第1光学フィルタ41を透過した光の透過スペクトルの半値全幅は、80nm以上300nm以下であることが好ましい。半値全幅が広い方が、測定対象ガスが赤外線を吸収する波長を多く取り込めるため、赤外線の減衰を多く生じさせることができるが、その一方で、不必要に幅広い波長範囲の光を取り込むと、赤外線の吸収に無関係な光の量も増えるため、赤外線の減衰率が相対的に小さくなってしまう。このため、半値全幅は、上述の範囲であることが好ましい。
【0031】
〔第2光学フィルタ〕
第2光学フィルタ42は、第2透過帯域の光を透過させる。第2透過帯域は、測定対象ガスおよび干渉ガスが赤外線を吸収する波長を含む波長帯域である。
【0032】
第2光学フィルタ42を透過した光の透過スペクトルの半値全幅は、80nm以上300nm以下であることが好ましい。半値全幅が広い方が、測定対象ガスが赤外線を吸収する波長を多く取り込めるため、赤外線の減衰を多く生じさせることができるが、その一方で、不必要に幅広い波長範囲の光を取り込むと、赤外線の吸収に無関係な光の量も増えるため、赤外線の減衰率が相対的に小さくなってしまう。このため、半値全幅は、上述の範囲であることが好ましい。
【0033】
第2光学フィルタ42は、第1受光部51および第2受光部52が同じ構成である場合、第1光学フィルタ41とは異なる構成であることが好ましい。
【0034】
〔第1受光部〕
第1受光部51は、例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタなどである。第1受光部51は、第1透過帯域に感度を有し、第1光学フィルタ41を透過した光を受光する。第1受光部51における第1受光感度帯域は、第1透過帯域に対して最適化されることが好ましい。また、第1受光感度帯域は、第1透過帯域を包含していることが好ましい。第1受光感度帯域が第1透過帯域を包含することで、第1受光部51は、第1光学フィルタ41を透過した光を高効率で受光することが可能となる。
【0035】
第1受光部51は、受光した光の第1強度に応じた第1検出信号を生成し、演算部60へ出力する。第1検出信号は、電流信号又は電圧信号である。この第1検出信号に基づいて、演算部60により、後述する第1減衰量が演算される。
【0036】
例えば、第1受光部51は、第1光路Lに測定対象ガスおよび干渉ガスが存在する場合において、受光した光の第1強度に応じた第1検出信号を、演算部60へ出力する。また、例えば、第1受光部51は、第1光路Lに測定対象ガスおよび干渉ガスが存在しない場合において、受光した光の第1強度に応じた第1検出信号を、演算部60へ出力する。第1減衰量は、第1光路Lに測定対象ガスおよび干渉ガスが存在しない場合において第1受光部51から出力される第1検出信号と、第1光路Lに測定対象ガスおよび干渉ガスが存在する場合において第1受光部51から出力される第1検出信号との差に基づいて演算部60により、演算される量である。なお、第1受光部51は、実使用環境にて、第1光路Lに測定対象ガスおよび干渉ガスが存在しない場合における第1検出信号を検出することは困難である。したがって、第1光路Lに測定対象ガスおよび干渉ガスが存在しない場合における第1検出信号は、あらかじめ設定されて演算部60に記憶されてもよいし、周辺温度などの環境情報に基づいて、演算部60により演算されてもよい。
【0037】
〔第2受光部〕
第2受光部52は、例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタなどである。第2受光部52は、第2透過帯域に感度を有し、第2光学フィルタ42を透過した光を受光する。第2受光部52における第2受光感度帯域は、第2透過帯域に対して最適化されることが好ましい。また、第2受光感度帯域は、第2透過帯域を包含していることが好ましい。第2受光感度帯域が第2透過帯域を包含することで、第2受光部52は、第2光学フィルタ42を透過した光を高効率で受光することが可能となる。
【0038】
第2受光感度帯域は、第1受光感度帯域とは異なり、第2透過帯域に最適化されてもよいが、第1透過帯域と第2透過帯域とが異なる場合には、第1受光感度帯域と等しくてもよい。
【0039】
第2受光部52は、受光した光の第2強度に応じた第2検出信号を生成し、演算部60へ出力する。第2検出信号は、電流信号又は電圧信号である。この第2検出信号に基づいて、演算部60により、後述する第2減衰量が演算される。
【0040】
例えば、第2受光部52は、第2光路Lに測定対象ガスおよび干渉ガスが存在する場合において、受光した光の第2強度に応じた第2検出信号を、演算部60へ出力する。また、例えば、第2受光部52は、第2光路Lに測定対象ガスおよび干渉ガスが存在しない場合において、受光した光の第2強度に応じた第2検出信号を、演算部60へ出力する。第2減衰量は、第2光路Lに測定対象ガスおよび干渉ガスが存在しない場合において第2受光部52から出力される第2検出信号と、第2光路Lに測定対象ガスおよび干渉ガスが存在する場合において第2受光部52から出力される第2検出信号との差に基づいて演算部60により、演算される量である。なお、第2受光部52は、実使用環境にて、第2光路Lに測定対象ガスおよび干渉ガスが存在しない場合における第2検出信号を検出することは困難である。したがって、第2光路Lに測定対象ガスおよび干渉ガスが存在しない場合における第2検出信号は、あらかじめ設定されて演算部60に記憶されてもよいし、周辺温度などの環境情報に基づいて、演算部60により演算されてもよい。
【0041】
第2受光部52は、製造材料、製造プロセスなどが、第1受光部51と同じであることが好ましい。特に、第1受光部51が半導体又は化合物半導体により構成されるフォトダイオード又はフォトトランジスタである場合、第1受光部51の第1受光感度帯域は、温度特性の影響を受け易くなる。このため、温度特性を揃える観点から、第2受光部52もまた、フォトダイオード又はフォトトランジスタで第1受光部51と同じであることが好ましい。
【0042】
なお、第1受光部51は、第1透過帯域以外の波長帯域におけるプロセッサなどの熱を含むものから放射される赤外線を検出しない。同様に、第2受光部52も、第2透過帯域以外の波長帯域におけるプロセッサなどの熱を含むものから放射される赤外線を検出しない。したがって、第1受光部51と第2受光部52とは、それぞれの直上に、異なる光学フィルタを備えることが好ましい。
【0043】
〔実効感度スペクトル〕
ここで、図4を参照して、第1実効感度スペクトルおよび第2実効感度スペクトルについて説明する。横軸は波長[μm]を表し、縦軸は実効感度スペクトルの強度比[a.u.]を表している。また、実線は第1実効感度スペクトルを表し、破線および一点鎖線は第2実効感度スペクトルを表している。
【0044】
第1受光部51の第1実効感度スペクトルは、第1受光部51が実効的な感度を有する波長帯域の光のスペクトルであり、第1光学フィルタ41における第1透過帯域と第1受光部51における第1受光感度帯域の光のスペクトルとを掛け合わせたスペクトルとして定義される。つまり、第1受光部51の第1実効感度スペクトルは、第1透過帯域に基づいて、概ねの特性が決まると言ってよい。
【0045】
第2受光部52の第2実効感度スペクトルは、第2受光部52が実効的な感度を有する波長帯域の光のスペクトルであり、第2光学フィルタ42における第2透過帯域と第2受光部52における第2受光感度帯域の光のスペクトルとを掛け合わせたスペクトルとして定義される。つまり、第2受光部52の第2実効感度スペクトルは、第2透過帯域に基づいて、概ねの特性が決まると言ってよい。
【0046】
第1実効感度スペクトルの半値全幅は、80nm以上300nm以下であることが好ましい。同様に、第2実効感度スペクトルの半値全幅は、80nm以上300nm以下であることが好ましい。各実効感度スペクトルの半値全幅が広い方が、測定対象ガスが赤外線を吸収する波長を多く取り込めるため、赤外線の減衰を多く生じさせることができるが、その一方で、不必要に幅広い波長範囲の光を取り込むと、赤外線の吸収に無関係な光の量も増えるため、赤外線の減衰率が相対的に小さくなってしまう。このため、第1実効感度スペクトルの半値全幅および第2実効感度スペクトルの半値全幅は、上述の範囲であることが好ましい。
【0047】
図4に示すように、第1実効感度スペクトルのピーク波長Pと第2実効感度スペクトルのピーク波長Pとの差ΔPは、第1実効感度スペクトルの半値全幅Wの0.2倍以上0.8倍以下であることが好ましい。つまり、第2実効感度スペクトルのピーク波長Pは、第1実効感度スペクトルの半値全幅Wの0.2倍以上0.8倍以下だけ、第1実効感度スペクトルのピーク波長Pから低エネルギー側へ、ピークシフトした波長であることが好ましい。あるいは、第2実効感度スペクトルのピーク波長Pは、第1実効感度スペクトルの半値全幅Wの0.2倍以上0.8倍以下だけ、第1実効感度スペクトルのピーク波長Pから高エネルギー側へ、ピークシフトした波長であることが好ましい。
【0048】
例えば、第1実効感度スペクトルのピーク波長Pが3.3μm、第1実効感度スペクトルの半値全幅Wが140nm、である場合、第2実効感度スペクトルのピーク波長Pは、第1実効感度スペクトルの半値全幅W140nmの0.5倍(=70nm)高エネルギー側へピークシフトした波長である3.23μm(=3.3μm-0.07μm)、あるいは、第1実効感度スペクトルの半値全幅W140nmの0.5倍(=70nm)低エネルギー側へピークシフトした波長である3.37μm(=3.3μm+0.07μm)であることが好ましい。
【0049】
第1実効感度スペクトルのピーク波長Pと第2実効感度スペクトルのピーク波長Pとの差ΔPが、第1実効感度スペクトルの半値全幅Wの0.2倍以上0.8倍以下であることで、光学式濃度測定装置1は、従来の光学式濃度測定装置のように、干渉ガスによる赤外線吸収の影響を避けるため、測定対象ガスのみが赤外線を吸収する波長帯域を透過帯域とする光学フィルタを用いずに済む。したがって、測定対象ガスが赤外線を吸収する波長帯域が狭い場合であっても、受光部は十分な量の光を受光することができるため、信頼性の高い測定を行うことが可能な光学式濃度測定装置1を実現できる。
【0050】
また、第1実効感度スペクトルのピーク波長Pと第2実効感度スペクトルのピーク波長Pとの差ΔPが、第1実効感度スペクトルの半値全幅Wの0.2倍以上0.8倍以下であることで、第1光学フィルタ41および第2光学フィルタ42の構造又は組成を近づけることができる。これにより、温度特性の改善が期待できる。
【0051】
ここで、温度特性の改善が期待できる理由について説明する。
【0052】
従来の光学式濃度測定装置は、例えば、測定対象ガスと干渉ガスが赤外線を吸収する波長帯域を透過帯域とする第1光学フィルタを有する受光部と、干渉ガスのみが赤外線を吸収する波長帯域を透過帯域とする第2光学フィルタを有する受光部と、を備えることで、2つの光学フィルタの透過帯域を完全に分離し、干渉ガスによる赤外線吸収の影響を除去していた。このため、第1光学フィルタおよび第2光学フィルタの構造又は組成を近づけ難く、2つの光学フィルタの温度特性に差分が生じ、この差分によっても、光学式濃度測定装置の測定精度が悪化していた。
【0053】
しかしながら、本実施形態に係る光学式濃度測定装置1は、従来の光学式濃度測定装置のように、2つの光学フィルタの透過帯域を完全に分離せずとも、透過帯域の近い2つの光学フィルタを用いて、さらに、詳細については後述する演算部60による干渉除去演算を適用することで、干渉ガスによる赤外線吸収の影響を除去できる。つまり、2つの光学フィルタの透過帯域を完全に分離する必要がなく、第1光学フィルタ41および第2光学フィルタ42の構造又は組成を近づけることができるため、第1光学フィルタ41および第2光学フィルタ42の温度特性の差分を生じ難くすることが可能となる。したがって、温度特性の差分によって生じる測定精度の悪化を回避した光学式濃度測定装置1を実現できる。
【0054】
また、第1実効感度スペクトルと第2実効感度スペクトルとは、重なる領域が広い程、第1透過帯域,第1受光感度帯域と、第2透過帯域,第2受光感度帯域とは近くなる。したがって、光学式濃度測定装置1において、第1光学フィルタ41および第2光学フィルタ42の構造又は組成を近づけ、さらに、第1光源31および第2光源32の構造又は組成、ならびに、第1受光部51および第2受光部52の構造又は組成も近づけることで、さらなる温度特性の改善が期待できる。
【0055】
上述のように、第1実効感度スペクトルのピーク波長に対する第2実効感度スペクトルのピーク波長におけるピークシフトが適切に調整されることで、測定対象ガスが赤外線を吸収する波長帯域が狭い場合であっても、第1受光部51および第2受光部52が受光する光の量が極端に削られることなく、さらには、温度特性を改善しつつ、測定対象ガスの濃度を高精度に測定することが可能な光学式濃度測定装置1を実現できる。
【0056】
〔第1導光部〕
第1導光部21は、第1光源31から放射される赤外線を、第1受光部51へ導く。例えば、第1導光部21は、赤外線を複数回反射させる、又は、赤外線放射時の放射角度を回転変換させることで、第1光源31から放射される赤外線を最終的に第1受光部51へ到達させる。
【0057】
第1導光部21は、ミラー211およびミラー212を備える。ミラー211,212は、同じ材料で形成されることが好ましく、例えば、金属、ガラス、セラミックス、ステンレスなどで形成されることが好ましい。
【0058】
ミラー211,212は、感度向上の観点から、光の吸収係数が小さく、且つ、反射率が高い材料で形成されることが好ましい。このような材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀を含む合金、誘電体、又はこれらの積層体のコーティングが施された樹脂筐体などが挙げられる。樹脂筐体の材料としては、例えば、LCP(液晶ポリマー)、PP(ポリプロピレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PA(ポリアミド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PC(ポリカーボネート)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、又はこれらの2つ以上を混合した硬質樹脂などが挙げられる。
【0059】
また、ミラー211,212は、信頼性の向上および経時劣化抑制の観点から、金又は金を含む合金層でコーティングされた樹脂筐体で形成されることが好ましい。さらに、反射率を高めるために、金属層の表面に誘電体積層膜が形成されることが好ましい。第1導光部21の内面が、樹脂筐体上に蒸着又はめっきが施されて形成される場合、生産性を向上させ、且つ、軽量化を図ることができる。
【0060】
なお、第1導光部21は、ミラー211,212に限定されず、光学素子であればよい。例えば、第1導光部21は、複数のレンズであってよい。例えば、第1導光部21は、複数のミラーおよび複数のレンズの組み合わせであってよい。
【0061】
〔第2導光部〕
第2導光部22は、第2光源32から放射される赤外線を、第2受光部52へ導く。例えば、第2導光部22は、赤外線を複数回反射させる、又は、赤外線放射時の放射角度を回転変換させることで、第2光源32から放射される赤外線を最終的に第2受光部52へ到達させる。
【0062】
第2導光部22は、ミラー221およびミラー222を備える。ミラー221,222は、同じ材料で形成されることが好ましく、例えば、金属、ガラス、セラミックス、ステンレスなどで形成されることが好ましい。
【0063】
ミラー221,222は、感度向上の観点から、光の吸収係数が小さく、且つ、反射率が高い材料で形成されることが好ましい。このような材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀を含む合金、誘電体、又はこれらの積層体のコーティングが施された樹脂筐体などが挙げられる。樹脂筐体の材料としては、例えば、LCP(液晶ポリマー)、PP(ポリプロピレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PA(ポリアミド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PC(ポリカーボネート)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、又はこれらの2つ以上を混合した硬質樹脂などが挙げられる。
【0064】
また、ミラー221,222は、信頼性の向上および経時劣化抑制の観点から、金又は金を含む合金層でコーティングされた樹脂筐体で形成されることが好ましい。さらに、反射率を高めるために、金属層の表面に誘電体積層膜が形成されることが好ましい。第2導光部22の内面が、樹脂筐体上に蒸着又はめっきが施されて形成される場合、生産性を向上させ、且つ、軽量化を図ることができる。
【0065】
なお、第2導光部22は、ミラー221,222に限定されず、光学素子であればよい。例えば、第2導光部22は、複数のレンズであってよい。例えば、第2導光部22は、複数のミラーおよび複数のレンズの組み合わせであってよい。
【0066】
〔演算部〕
演算部60は、駆動部70、読み込むプログラムに応じた機能を実行する汎用プロセッサ、および特定の処理に特化した専用のプロセッサの少なくとも1つを含んでよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(ASIC;Application Specific Integrated Circuit)又は不揮発性/揮発性メモリを含んでよい。
【0067】
演算部60は、第1受光部51から出力される第1検出信号に基づいて、第1光路Lに存在する測定対象ガスおよび干渉ガスによる赤外線の第1強度の第1減衰量を演算する。第1減衰量は、第1光路Lに測定対象ガスおよび干渉ガスが存在しない場合において第1受光部51から出力される第1検出信号と、第1光路Lに測定対象ガスおよび干渉ガスが存在する場合において第1受光部51から出力される第1検出信号との差に基づいて演算される量である。
【0068】
次に、演算部60は、第2受光部52から出力される第2検出信号に基づいて、第2光路Lに存在する測定対象ガスおよび干渉ガスによる赤外線の第2強度の第2減衰量を演算する。第2減衰量は、第2光路Lに測定対象ガスおよび干渉ガスが存在しない場合において第2受光部52から出力される第2検出信号と、第2光路Lに測定対象ガスおよび干渉ガスが存在する場合において第2受光部52から出力される第2検出信号との差に基づいて演算される量である。
【0069】
次に、演算部60は、第1減衰量および第2減衰量に基づいて、測定対象ガスの濃度を演算する。例えば、演算部60は、第1減衰量に比例定数を掛けた量から第2減衰量を減算し、第1光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第1強度の減衰量、および第2光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第2強度の減衰量を除去する干渉除去演算を行い、測定対象ガスの濃度を演算する。例えば、演算部60は、第2減衰量に比例定数を掛けた量から第1減衰量を減算し、第1光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第1強度の減衰量、および第2光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第2強度の減衰量を除去する干渉除去演算を行い、測定対象ガスの濃度を演算する。
【0070】
ここで、第1光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第1強度の減衰量と第2光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第2強度の減衰量とが比例関係にある、ということについて説明する。例えば、測定対象ガスがメタン、干渉ガスが水蒸気である場合について説明する。
【0071】
ガスによる赤外線の強度の減衰量ΔIは、ランベルトベール則により、次式(1)で表される。
【0072】
【数1】
は、光路にガスが存在しない場合における赤外線の強度である。eは、ガス固有の吸収係数である。cは、ガス濃度である。lは、ガスが存在する範囲の光路長である。
【0073】
式(1)から、ガスによる赤外線の強度の減衰量ΔIが、指数関数的に振る舞うことがわかる。しかし、eclが0に近い値である場合、ガスによる赤外線の強度の減衰量ΔIは、指数関数のマクローリン展開である多項式を用いて、次式(2)で表される。
【0074】
【数2】
【0075】
特に、eclが0近傍の値である場合、ガスによる赤外線の強度の減衰量ΔIは、線形関数のように振る舞う。例えば、メタンの濃度100ppmを測定したいとき、水蒸気の濃度は、温度25℃、相対湿度50%R.H.の環境において、約15,000ppmであるため、水蒸気の濃度はメタンの濃度の約150倍となる。しかし、図3Bおよび図3Cに示すように、波長3.3μm付近において、メタンによる赤外線の吸収係数は、極めて大きいが、水蒸気による赤外線の吸収係数は、極めて小さい。つまり、水蒸気による赤外線の強度の減衰量は、水蒸気の濃度に対して線形関数となる。
【0076】
図5は、第1実効感度スペクトルおよび第2実効感度スペクトルにおける水蒸気の濃度と水蒸気による赤外線の強度の減衰量との関係を示す図である。横軸は水蒸気の濃度[ppm]を表し、縦軸は赤外線の強度の減衰量[%]を表している。なお、図5に示されるグラフは、ピーク波長Pが3.3μm、半値全幅Wが140nmのスペクトルを第1実効感度スペクトルとし、ピーク波長Pに対するピーク波長Pのピークシフトが±70nmのスペクトルを第2実効感度スペクトルとして(図4参照)、計算されたグラフである。
【0077】
実線のグラフ201は、第1実効感度スペクトルにおける水蒸気の濃度と水蒸気による赤外線の強度の減衰量との関係を示すグラフである。破線のグラフ202は、第2実効感度スペクトルにおける水蒸気の濃度と水蒸気による赤外線の強度の減衰量との関係を示すグラフである。一点鎖線のグラフ203は、第2実効感度スペクトルにおける水蒸気の濃度と水蒸気による赤外線の強度の減衰量との関係を示すグラフである。
【0078】
図5から、グラフ201は、線形関数であり、第1実効感度スペクトルにおける水蒸気による赤外線の強度の減衰量は、水蒸気の濃度に比例していることがわかる。また、グラフ202は、線形関数であり、第2実効感度スペクトルにおける水蒸気による赤外線の強度の減衰量は、水蒸気の濃度に比例していることがわかる。また、グラフ203は、線形関数であり、第2実効感度スペクトルにおける水蒸気による赤外線の強度の減衰量は、水蒸気の濃度に比例していることがわかる。
【0079】
また、図5から、グラフ201、グラフ202、およびグラフ203は、それぞれの線形関数の傾きが異なることがわかる。つまり、実効感度スペクトルが変化することで、それぞれの線形関数の傾きが変化することがわかる。これは、実効感度スペクトルが変化することで、式(2)におけるeの値が変化するためである。
【0080】
図6は、第1実効感度スペクトルおよび第2実効感度スペクトルにおける水蒸気の濃度と水蒸気による赤外線の強度の減衰量比との関係を示す図である。横軸は水蒸気の濃度[ppm]を表し、縦軸は赤外線の強度の減衰量比[a.u.]を表している。比率の基準として、第1実効感度スペクトルにおける水蒸気の濃度による赤外線の強度の減衰量をとっている。なお、図6に示されるグラフは、ピーク波長Pが3.3μm、半値全幅Wが140nmのスペクトルを第1実効感度スペクトルとし、ピーク波長Pに対するピーク波長Pのピークシフトが±70nmのスペクトルを第2実効感度スペクトルとして(図4参照)、計算されたグラフである。
【0081】
実線のグラフ301は、基準とする第1実効感度スペクトルにおける水蒸気の濃度と水蒸気による赤外線の強度の減衰量比との関係を示すグラフである。破線のグラフ302は、第1実効感度スペクトルにおける水蒸気の濃度と水蒸気による赤外線の強度の減衰量に対する、第2実効感度スペクトルにおける水蒸気の濃度と水蒸気による赤外線の強度の減衰量比との関係を示すグラフである。一点鎖線のグラフ303は、第1実効感度スペクトルにおける水蒸気の濃度と水蒸気による赤外線の強度の減衰量に対する、第2実効感度スペクトルにおける水蒸気の濃度と水蒸気による赤外線の強度の減衰量比との関係を示すグラフである。
【0082】
図6から、グラフ302は、略水平であり、減衰量比が略1.3を維持していることがわかる。グラフ303は、略水平であり、減衰量比が略0.6を維持していることがわかる。つまり、実効感度スペクトルが変化しても、減衰量比は、水蒸気の濃度に依存せず、略一定となることがわかる。
【0083】
したがって、図5および図6から、第1光路Lに存在する水蒸気による赤外線の第1強度の減衰量と第2光路Lに存在する水蒸気による赤外線の第2強度の減衰量とが比例関係にある、ということわかる。
【0084】
上述したように、第1光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第1強度の減衰量と第2光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第2強度の減衰量とが比例関係にあることで、演算部60は、第1減衰量に比例定数を掛けた量から第2減衰量を減算することで、第1光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第1強度の減衰量、および第2光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第2強度の減衰量を、除去することができる。あるいは、第1光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第1強度の減衰量と第2光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第2強度の減衰量とが比例関係にあることで、演算部60は、第2減衰量に比例定数を掛けた量から第1減衰量を減算することで、第1光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第1強度の減衰量、および第2光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第2強度の減衰量を、除去することができる。
【0085】
一般的に、光学式濃度測定装置が、測定対象ガスおよび干渉ガスが混在したガスに含まれる測定対象ガスの濃度を測定する際、測定対象ガスによる赤外線の強度の減衰量がどの程度であるか、干渉ガスによる赤外線の強度の減衰量がどの程度であるか、を特定することは極めて困難である。しかしながら、図5および図6から明らかであるように、第1光路Lに存在する水蒸気による赤外線の第1強度の減衰量と第2光路Lに存在する水蒸気による赤外線の第2強度の減衰量とは比例関係にある。このため、演算部60は、図5および図6に示される線形関数の傾きの比率を比例定数として演算に用いることで、簡単に、水蒸気による赤外線吸収の影響を除去することができる。
【0086】
したがって、光学式濃度測定装置1は、従来の光学式濃度測定装置のように、2つの光学フィルタの透過帯域を完全に分離せずとも、透過帯域の近い2つの光学フィルタを用いて、上述した演算部60による干渉除去演算を行うことで、干渉ガスによる赤外線吸収の影響を除去できる。これにより、測定対象ガスが赤外線を吸収する波長帯域が狭い場合であっても、第1受光部51および第2受光部52が受光する光の量が極端に削られることがないため、測定対象ガスの濃度を高精度に測定することが可能となる。
【0087】
また、第1減衰量と第2減衰量とで、SNR(Signal to Noise Ratio)は略等しいことが好ましい。演算部60が、第1減衰量および第2減衰量に基づいて、測定対象ガスの濃度を演算する際、SNRが悪い方の影響を必ず受けるためである。したがって、第1導光部21により導かれる赤外線の第1光路長lと第2導光部22により導かれる赤外線の第2光路長lとの差は、第1光路長lが第2光路長lに対し長い関係(l≧l)を満たす場合、第1光路長lの0%以上5%以下であることが好ましい。あるいは、第1導光部21により導かれる赤外線の第1光路長lと第2導光部22により導かれる赤外線の第2光路長lとの差は、第2光路長lが第1光路長lに対し長い関係(l≧l)を満たす場合、第2光路長lの0%以上5%以下であることが好ましい。また第1導光部21により導かれる赤外線の第1光路長lと第2導光部22により導かれる赤外線の第2光路長lとの差がない場合、第1減衰量および第2減衰量のSNRに光路長差に起因する差が生じないのでより好ましい。
【0088】
〔駆動部〕
駆動部70は、第1光源31を駆動又は停止させるための駆動電流又は駆動電圧を、第1光源31へ供給する。例えば、駆動部70は、第1光源31を停止させる場合、第1光源31のアノード電極および第1光源31のカソード電極に、等しい電圧を供給する。例えば、駆動部70は、第1光源31を駆動させる場合、第1光源31のアノード電極および第1光源31のカソード電極に、異なる電圧を供給する。なお、駆動部70から出力される第1光源31を駆動又は停止させるための駆動電流信号又は駆動電圧信号は、演算部60が演算を行う際に利用されてよい。
【0089】
また、駆動部70は、第2光源32を駆動又は停止させるための駆動電流又は駆動電圧を、第2光源32へ供給する。例えば、駆動部70は、第2光源32を停止させる場合、第2光源32のアノード電極および第2光源32のカソード電極に、等しい電圧を供給する。例えば、駆動部70は、第2光源32を駆動させる場合、第2光源32のアノード電極および第2光源32のカソード電極に、異なる電圧を供給する。なお、駆動部70から出力される第2光源32を駆動又は停止させるための駆動電流信号又は駆動電圧信号は、演算部60が演算を行う際に利用されてよい。
【0090】
駆動部70は、例えば、電源装置、アンプなどにより構成される。駆動部70は、演算部60と一体化されて設けられていてもよいし、演算部60と別々に設けられていてもよい。また、駆動部70は、基板80上に搭載されていてもよいし、基板80の外部に設けられていてもよい。
【0091】
〔基板〕
基板80は、第1導光部21、第2導光部22、第1光源31、第2光源32、第1光学フィルタ41、第2光学フィルタ42、第1受光部51、第2受光部52、演算部60、駆動部70などを搭載する。基板80は、搭載される各種の電子部品を電気的に接続する。なお、演算部60および駆動部70は、基板80の外部に設けられていてもよい。
【0092】
基板80は、FR-1、FR-2、FR-3、FR-4、FR-5、GPY、CEM-1、CEM-3といわれるような、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アルミナ樹脂などを有する材料で形成されることが好ましい。
【0093】
なお、第1光源31,第2光源32と第1受光部51,第2受光部52とは、同一基板上に搭載されることが好ましい。これらの部材が同一基板上に搭載されることで、別々に基板を用意せずに済むため、製造コストを下げることができると共に、測定精度を高められる。
【0094】
本実施形態に係る光学式濃度測定装置1は、第1実効感度スペクトルのピーク波長と第2実効感度スペクトルのピーク波長との差が、第1実効感度スペクトルの半値全幅の0.2倍以上0.8倍以下であり、且つ、演算部60が上述のような干渉除去演算を行う。これにより、従来の光学式濃度測定装置のように、2つの光学フィルタの透過帯域を完全に分離せずとも、干渉ガスによる赤外線吸収の影響を除去することができ、また、測定対象ガスが赤外線を吸収する波長帯域が狭い場合であっても、従来の光学式濃度測定装置と比較して、受光部が受光する光の量を格段に増やすことができる。したがって、干渉ガスによる光吸収の影響を除去しつつ、測定対象ガスの濃度を高精度に測定することが可能な光学式濃度測定装置1を実現できる。
【0095】
<光学式濃度演算方法>
次に、本実施形態に係る光学式濃度測定方法について、具体例を挙げながら説明する。例えば、測定対象ガスがメタン、干渉ガスが水蒸気である場合について説明する。
【0096】
まず、演算部60は、第1受光部51から出力される第1検出信号に基づいて、第1光路Lに存在する測定対象ガスおよび干渉ガスによる赤外線の第1強度の第1減衰量を演算する。
【0097】
【0098】
【数3】
【0099】
次に、演算部60は、第2受光部52から出力される第2検出信号に基づいて、第2光路Lに存在する測定対象ガスおよび干渉ガスによる赤外線の第2強度の第2減衰量を演算する。
【0100】
【0101】
【数4】
【0102】
本来は、メタンおよび水蒸気の両方の影響を示す高次の吸収項が存在するが、水蒸気の吸収量はマクローリン展開で表せるほど小さい。このため、高次の吸収項は無視できる。
【0103】
次に、演算部60は、第1減衰量および第2減衰量に基づいて、測定対象ガスの濃度を演算する。上述したように、第1光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第1強度の減衰量と第2光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第2強度の減衰量とは、比例関係にある。
【0104】
従って、まず、演算部60は、第1減衰量に比例定数を掛けた量から第2減衰量を減算し、第1光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第1強度の減衰量、および第2光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第2強度の減衰量を除去することにより、干渉ガスによる赤外線の影響を除去した干渉除去演算を行う。あるいは、演算部60は、第2減衰量に比例定数を掛けた量から第1減衰量を減算し、第1光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第1強度の減衰量、および第2光路Lに存在する干渉ガスによる赤外線の第2強度の減衰量を除去することにより、干渉ガスによる赤外線の影響を除去した干渉除去演算を行う。これにより、演算部60は、干渉ガスの濃度がわからなくても、測定対象ガスの濃度を演算することが可能となる。
【0105】
【0106】
【数5】
【0107】
【0108】
【0109】
【数6】
【0110】
【0111】
最後に、演算部60は、干渉ガスによる赤外線吸収の影響を除去した干渉除去演算後の出力に対し、濃度演算テーブル又は指数関数のフィッティングを適用することで、測定対象ガスの濃度を演算する。演算部60は、式(2)における3次以上の多項式を用いて、測定対象ガスの濃度を演算することが好ましい。これにより、演算部60は、測定対象ガスの濃度を、高精度且つ容易に演算することができる。
【0112】
本実施形態に係る光学式濃度測定方法は、第1実効感度スペクトルのピーク波長と第2実効感度スペクトルのピーク波長との差が、第1実効感度スペクトルの半値全幅の0.2倍以上0.8倍以下と規定された場合に、第1光路に存在する干渉ガスによる赤外線の第1強度の減衰量と第2光路に存在する干渉ガスによる赤外線の第2強度の減衰量とが比例関係にある、ということを利用して、干渉ガスによる赤外線吸収の影響を除去した干渉除去演算を行う。当該光学式濃度測定方法を適用した光学式濃度測定装置1は、干渉ガスによる光吸収の影響を除去しつつ、測定対象ガスの濃度を高精度に測定することが可能となる。
【0113】
<変形例>
本明細書では、図4に示される実効感度スペクトルの強度分布を示す関数として、ガウシアンを選択して説明を行ったが、実効感度スペクトルの強度分布を示す関数は、これに限定されない。例えば、ローレンツ関数が選択されてもよい。また干渉除去演算の原理説明として光源または光路の波長特性について言及しなかったが、これらの波長特性を含めても同じ結果を得ることができる。例えば、光源から放射される赤外線の波長分布を表すプランクの法則を掛け合わせて、光源の波長特性を含めてもよい。また、状態密度分布関数に光学素子の反射率特性を掛け合わせて、光源および光路の波長特性を含めてもよい。
【0114】
また、本明細書では、干渉ガスが単数である場合を一例に挙げて説明したが、干渉ガスの数は、単数に限定されず、複数であってもよい。干渉ガスが複数であっても、各種の干渉ガスによる赤外線の第1強度の減衰量と各種の干渉ガスによる赤外線の第2強度の減衰量とは比例関係にあるため、上述した演算方法を適用することで、各種の干渉ガスによる赤外線の第1強度の減衰量および各種の干渉ガスによる赤外線の第2強度の減衰量を、除去する干渉除去演算を行うことができる。つまり、干渉ガスが単数であっても複数であっても、光学式濃度測定装置1は、干渉ガスによる光吸収の影響を除去しつつ、測定対象ガスの濃度を高精度に測定することが可能となる。
【0115】
<その他の変形例>
また、光学式濃度測定装置において演算部を必須の構成要素としないものは、光学式濃度測定装置用モジュールとして、独立した実施形態として理解される。
【0116】
<実施形態の適用>
本実施形態に係る光学式濃度測定装置1は、種々の機器に適用することが可能である。例えば、天然ガスを輸送するパイプラインにおいて、天然ガスの漏洩を検知するための機器、自動車、電車、航空機などの移動手段に含まれるガス濃度を検出するための機器、特定のガス濃度を検出するための機器などに適用することが可能である。
【0117】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。例えば、実施形態に記載の各演算の順序は、上記に限定されず適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0118】
1 光学式濃度測定装置
21 第1導光部
22 第2導光部
31 第1光源
32 第2光源
41 第1光学フィルタ
42 第2光学フィルタ
51 第1受光部
52 第2受光部
60 演算部
70 駆動部
80 基板
211 ミラー
212 ミラー
221 ミラー
222 ミラー
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6