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特開2022-153301ゼオライト分離材およびエチレンアミン類と水を分離する方法
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  • 特開-ゼオライト分離材およびエチレンアミン類と水を分離する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153301
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ゼオライト分離材およびエチレンアミン類と水を分離する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/18 20060101AFI20221004BHJP
   C01B 39/14 20060101ALI20221004BHJP
   C01B 39/36 20060101ALI20221004BHJP
   C01B 39/24 20060101ALI20221004BHJP
   C01B 39/22 20060101ALI20221004BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20221004BHJP
   C07C 211/10 20060101ALI20221004BHJP
   C07C 209/84 20060101ALI20221004BHJP
   C07C 209/86 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B01J20/18 B
C01B39/14
C01B39/36
C01B39/24
C01B39/22
B01D15/00 M
C07C211/10
C07C209/84
C07C209/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043153
(22)【出願日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2021054718
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021169804
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智
(72)【発明者】
【氏名】山田 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】福井 めぐ
(72)【発明者】
【氏名】土谷 和愛
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
4G073
4H006
【Fターム(参考)】
4D017AA03
4D017BA01
4D017CA05
4D017CA17
4D017CB01
4D017CB05
4D017CB10
4D017DA01
4D017DA07
4D017DB03
4G066AA62B
4G066BA03
4G066BA36
4G066CA43
4G066DA10
4G066FA37
4G073BA04
4G073BA05
4G073BA11
4G073BA17
4G073BA57
4G073BA75
4G073BA81
4G073BD15
4G073BD18
4G073BD21
4G073CB03
4G073CE04
4G073CZ02
4G073CZ03
4G073CZ04
4G073CZ05
4G073CZ13
4G073CZ41
4G073DZ02
4G073FC04
4G073FC13
4G073GA01
4G073GA19
4G073GA40
4G073GB03
4G073GB08
4G073UA06
4G073UB40
4H006AA02
4H006AD17
(57)【要約】
【課題】 ゼオライト分離材と、エチレンアミン類を10~90重量%含む水溶液から、エチレンアミン類と水を安定的に分離する分離方法を提供する。
【解決手段】 エチレンアミン類を10~90重量%含む水溶液からエチレンアミン類と水を分離するためのSiO/Alモル比が2~40で、かつ、金属イオンの交換率合計が90%以上であるゼオライトを含有するゼオライト分離材。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンアミン類を10~90重量%含む水溶液からエチレンアミン類と水を分離するためのSiO/Alモル比が2~40で、かつ、金属イオンの交換率合計が90%以上であるゼオライトを含有するゼオライト分離材。
【請求項2】
ゼオライトがFAU構造である請求項1に記載のゼオライト分離材。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたゼオライト分離材を用いて、エチレンアミン類を10~90重量%含む水溶液からエチレンアミン類と水を分離する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト分離材およびエチレンアミン類と水を分離する方法に関するものであり、より詳しくはエチレンアミン類を含む水溶液から、エチレンアミン類と水を分離するゼオライト分離材および当該ゼオライト分離材を用いたエチレンアミン類と水を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンアミン類の製造方法としてEDC法がある。本方法はエチレンジクロライドとアンモニア水溶液を高温高圧下で反応させ、エチレンアミン類の塩酸塩水溶液を得る方法である。この反応液からエチレンアミン類を分離するために、これに水酸化ナトリウムを添加して、エチレンアミン類の塩酸塩及び塩化アンモニウムを複分解した後、遊離アンモニアを加熱回収し、ついで蒸発濃縮して塩化ナトリウムを晶出分離しエチレンアミン類を得る方法がある。
【0003】
しかしながら、該方法では反応に用いた多量の水を全て蒸発分離しなければならず、多量のエネルギーを必要とし、またエチレンアミン類から効率よく塩化ナトリウムを分離するためには複雑で高価な装置及び高度な操作を必要とする等の問題点を有している。
【0004】
このような問題点を解決する手法として、特許文献1、2、3において、ケトン基を有する有機溶剤、カルボン酸化合物あるいはアルキルリン酸化合物を含む有機溶剤、アンモニアの存在下でアルコールにより抽出分離する方法が検討・提案されている。
【0005】
一方、微量の水分を有する有機アミンから水分を除去する方法として、特許文献4において、ゼオライトを用いて数百ppmオーダーの水を簡便に除去する方法が検討・提案されている。
【0006】
また、ゼオライト膜を用いてアミン化合物を分離する方法も検討されている。特許文献5では、MFI型ゼオライトを有することを特徴とするアミン化合物分離用ゼオライト分離膜が請求されている。SiO/Alモル比が50~∞で結晶化されたMFI型ゼオライト膜を用いて、エチレンジアミン50モル%の水が浸透気化法にて65~88モル%と濃縮された実施例が報告されている。
【0007】
特許文献6では、少なくとも一方の表面が親水性ゼオライト膜で被覆された多孔質支持体からなる分離膜の2つの表面のうち一方の表面に含水エチレンアミンを接触させ、さらに含水エチレンアミンを接触させた表面側が接触させていない側に比べて高圧になるように圧力差を掛けることを特徴とする含水エチレンアミンの脱水濃縮方法が請求されている。
【0008】
SiO/Alモル比が240で結晶化されたMOR型ゼオライト膜を用いて、エチレンジアミン17.5モル%の水が浸透気化法にて水のみ透過した実施例が報告されている。
【0009】
また特許文献7において、ゼオライトは骨格のうちSi-O結合部位が、アルカリ性溶液中では加水分解されやすく、骨格が壊れてゼオライトが溶解してしまうため、アルカリ性の含水有機化合物からの水の分離は難しいと考えられていた、との課題が挙げられている。pH8~13の含水有機化合物から分離膜を用いて水を分離する方法であって、該分離膜としてゼオライト膜を用い、該ゼオライト膜を構成するゼオライトがSiO/Alモル比が5~40であるCHA型ゼオライトであることを特徴とする、アルカリ性含水有機化合物の水分離方法が請求されている。有機化合物としては、カルボン酸類、有機酸類、アルコール類、ケトン類、アルデヒド類、エーテル類、窒素を含む有機化合物(N含有有機化合物)、エステル類などが挙げられているが、有機化合物の実施例はエタノールのみである。
【0010】
ゼオライト膜の別の課題として、耐水性についても指摘されている。例えば、非特許文献1において、LTA型ゼオライト膜は水分含有量の多い条件では使用できず、耐水熱安定性の優れたゼオライト膜の開発が切望される、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭58-213738号公報
【特許文献2】特開昭59-20252号公報
【特許文献3】特開昭59-175457号公報
【特許文献4】特開平7-278064号公報
【特許文献5】特開2015-150527号公報
【特許文献6】特開2017-18848号公報
【特許文献7】特開2018-161647号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】科学研究費助成事業研究報告書(機関番号:15401,課題番号:25620151)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記したように、これまで、多量のエネルギーや有機溶剤を必要としない、エチレンアミン類を含む水溶液からエチレンアミン類と水を分離する分離材および分離方法は報告が殆どなかった。特に、耐アルカリ性と耐水性を併せ持つゼオライト分離材により、安定的に分離することができる方法は報告がなかった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、各種ゼオライトについてエチレンアミン類を含む水溶液からエチレンアミン類と水を分離する方法について検討を重ねた。その結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、エチレンアミン類を10~90重量%含む水溶液からエチレンアミン類と水を分離するためのSiO/Alモル比が2~40で、かつ、金属イオンの交換率合計が90%以上であるゼオライトを含有することを特徴とするゼオライト分離材等である。
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明のゼオライト分離材が含有するゼオライトは、SiO/Alモル比が2~40である。ゼオライトは、SiO/Alモル比が2未満にはならない。SiO/Alモル比が40より大きくなると、耐アルカリ性が小さくなるので不可である。SiO/Alモル比が大きくなるに従い、耐アルカリ性が小さくなり、かつ耐水性が大きくなることから、耐アルカリ性と耐水性を併せ持つことを考慮し、SiO/Alモル比は2~20が好ましく、2~10がより好ましく、2~6がさらに好ましく、2~3が最も好ましい。
【0017】
本発明のゼオライト分離材が含有するゼオライトは、金属イオンの交換率合計が90%以上であることが必須である。金属イオンの交換率はゼオライト中のAlモル数に対する金属イオンの等量数(モル数×等量)で表すことができる。交換率合計が90%未満であると、水素イオンがエチレンアミン類と化学吸着し、水を選択的に吸着できない、且つ吸着したエチレンアミン類の脱着のために多くのエネルギーが必要となるために好ましくない。交換率合計は95%以上が好ましく、98%以上が更に好ましい。交換率合計は、通常120%以下である。金属イオンは、Li,Na,K,Rbなどのアルカリ金属イオン、Mg,Ca,Srなどのアルカリ土類金属イオン、Fe,Co,Niなどの遷移金属イオン、La,Ce,Prなどの希土類イオン等が挙げられる。これらの金属イオンの中では、コストと耐水性の点から、Na,K,Mg,Ca,La,Ceが好ましく、Na,K,Ca,Laが特に好ましく、Na,Ca,Laが最も好ましい。金属イオンは1種でも良いし、2種以上の複合でも良い。
【0018】
本発明のゼオライト分離材は、粉末、成形体(ビーズ状、ペレット状)、膜の何れの形態であっても良い。
【0019】
本発明のゼオライト分離材が含有するゼオライトは、例えば、FAU構造、LTA構造、CHA構造、MFI構造等があげられるが、これらのなかで、水がアクセス可能な体積が大きいため、FAU構造であることが好ましい。ここに、○○構造とは、国際ゼオライト協会(IZA)において3文字のコードで規定された構造である。
【0020】
本発明のゼオライト分離材を成形体として使用する場合は、粘土、アルミナ、シリカなどのバインダー等の作用のために、セルロース、アルコール、リグニン、スターチ、グァーガムなどの添加剤等を含んでもよい。添加剤等は、単独で用いても良いし、複数で用いてもよい。添加部数は制限されない。
【0021】
本発明のゼオライト分離材が分離の対象とするエチレンアミン類とは、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、アミノエチルピペラジン、ピペラジン等の鎖状、環状エチレンアミンのことを示す。
【0022】
エチレンアミン類は、例えば、エチレンアミン単独でも良いし、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの混合物でも良い。エチレンアミン各成分の濃度は特に制限されない。
【0023】
本発明の方法では、エチレンアミン類を10~90重量%含む水溶液を対象とする。エチレンアミン類と水以外に共存する成分としては特に制限は受けない。共存成分としては、NaCl等が例示できる。
【0024】
本発明の方法では、エチレンアミン類を10~90重量%を対象とする。10重量%未満は、エチレンアミン類の製造方法としてはコスト的には不利である。90重量%を超えると脱水量が少ないため、耐アルカリ性と耐水性を併せ持たないゼオライトを再利用しないで使い捨てが可能である。エチレンアミン類は30~70重量%が好ましく、40~60重量%が更に好ましい。
【0025】
エチレンアミン類を10~90重量%含む水溶液の室温でのpHは、少なくとも13以上、通常14以上である。そのため、ゼオライトには耐アルカリ性が必要である。
【0026】
エチレンアミン類を10~90重量%含む水溶液からエチレンアミン類と水を接触させる方法としては、バッチ法、流通法等が例示できる。
【0027】
接触させる温度としては、室温から200℃までが例示でき、特に前工程からの熱損失を小さくするため、100~200℃が好ましく、120~160℃が特に好ましい。接触させる時間も特に制限されない。
【0028】
本発明のゼオライト分離材は、耐アルカリ性と耐水性を併せ持つゼオライトにより、エチレンアミン類と水を安定的に分離することができる。必要に応じて適当なゼオライト再生方法を用いれば、連続的な使用や繰り返し再使用が可能となる。ゼオライト再生方法としては、吸着した水を脱離するための熱処理が例示できる。熱処理としては、350℃以上、1時間以上の滞在が例示できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、エチレンアミン類を含む水溶液からエチレンアミン類と水を安定的に分離するゼオライト分離材および分離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例11の膜の脱水テストでの透過係数の時間変化を示した図である。
図2】実施例11の膜の脱水テストでの分離係数の時間変化を示した図である。
図3】実施例12の膜の脱水テストでの透過係数の時間変化を示した図である。
図4】実施例12の膜の脱水テストでの分離係数の時間変化を示した図である。
【実施例0031】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。しかし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例における各測定方法は、以下の通りである。
【0032】
<エチレンアミン水溶液浸漬テスト1>
エチレンアミン50重量%、水50重量%(pH電極によるpHは14.4;室温)を用いて、ゼオライトの水吸着選択性、耐アルカリ性のテストを実施した。
【0033】
ゼオライト粉末2g、50重量%のエチレンアミン水溶液50gを80mlのステンレス容器に入れ均一混合し容器を密閉した。ステンレス容器を回転式オートクレーブ(水熱合成反応装置)にセットし、回転状態で140℃、48時間保持した。
【0034】
容器を放熱後に取り出し、濾紙を用いて、固液分離後、200gの純水で固形分を洗浄した。洗浄した濾過ケークを60℃、一晩乾燥機で乾燥させ、浸漬テスト後のゼオライトとした。
【0035】
浸漬テスト後のゼオライトについて熱分析を行い、ゼオライトの水吸着選択性の評価とした。また、浸漬前後のゼオライトについて、粉末X線回折測定を行い、耐アルカリ性の評価とした。
【0036】
<エチレンアミン水溶液浸漬テスト2>
回転式オートクレーブ(水熱合成反応装置)にセットし、回転状態で160℃、4ヶ月間保持した以外は、エチレンアミン水溶液浸漬テスト1と同様のテストを行った。
【0037】
<熱分析>
熱分析装置(商品名:TG/DTA6300、エスアイアイナノテクノロジー製)を用いて、空気流通下、10℃/minの昇温速度で測定した。室温から200℃までの重量減少を水吸着量、200℃から600℃までの重量減少をエチレンアミン吸着量と評価した。
【0038】
<水吸着選択性>
熱分析から評価した水吸着量、エチレンアミン吸着量から、下式を用いて水吸着選択性とした。
【0039】
水吸着選択性=水吸着量/(水吸着量+エチレンアミン吸着量)
<粉末X線回折>
粉末X線回折装置(商品名:UltimaIV、リガク製)を使用し、試料の粉末X線回折測定を行った。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を用い、測定範囲は2θ=5°~43°とした。
【0040】
エチレンアミン水溶液浸漬テストの前後、または耐熱水蒸気テストの前後の粉末X線回折パターンを比較し、所定のピーク強度比から結晶保持率を算出した。
【0041】
<耐熱水蒸気テスト1>
ゼオライト粉末0.5gを坩堝(るつぼ)に入れ、その坩堝を700mlのステンレス容器に入れた。ステンレス容器の底には、140gの純水を入れ、ゼオライト粉末と液相の水は接触できないようにして容器を密閉した(ゼオライト粉末は所定温度の蒸気圧で水蒸気と接触することができる)。ステンレス容器を乾燥機に入れ、静置状態で140℃、48時間保持した。
【0042】
容器を放熱後に取り出し、耐熱水蒸気テスト後のゼオライトとした。
【0043】
耐熱水蒸気テスト前後のゼオライトについて、粉末X線回折測定を行い、耐熱水蒸気性の評価とした。
【0044】
<耐熱水蒸気テスト2>
ステンレス容器を乾燥機に入れ、静置状態で160℃、4ヶ月間保持した以外は、耐熱水蒸気テスト1と同様のテストを行った。
【0045】
<膜のX線回折>
X線回折装置(商品名:SmartLab、リガク製)を使用し、膜表面のX線回折測定を行った。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を用い、測定範囲は2θ=5°~45°とした。
【0046】
<膜の組成分析>
走査型電子顕微鏡付属のEDS分析装置(商品名:JSM-IT200、日本電子株式会社製)を使用し、膜表面の組成分析を行った。
【0047】
<膜の脱水テスト>
膜評価装置にて、以下の条件にて脱水テストを実施した。
【0048】
方式:PV評価(浸透気化評価)
評価液:エチレンアミン水溶液(エチレンアミン50重量%、水50重量%)
温度:130℃
流量:5L/min
真空度:<2kPa
膜有効面積:0.0019m
評価時間:30時間
評価項目としては、透過係数と分離係数とした。算出方法は以下の通りである。
【0049】
透過係数(kg/m/h/kPa)=透過流速(kg/m/h)/圧力(kPa)
分離係数(-)=[(100-透過濃度(重量%))/透過濃度(重量%)] / [(100-供給濃度(重量%))/供給濃度(重量%)]
実施例1
ケイ酸ソーダ42g、アルミン酸ソーダ55g、48%苛性2g、水120mlをSi/Al=2.0(mol/mol)の比率で混合し、90℃、6時間で結晶化を行ない、NaA型ゼオライトを含むスラリーを得た。結晶化後のスラリーをろ過・洗浄・乾燥し、NaA型ゼオライト粉末(ゼオライト分離材)を得た。
【0050】
当該ゼオライト粉末の一部を硝酸・フッ酸の混合溶液に溶解して、ICP-AES分析をして組成分析したところ、SiO/Al=2.0、Na/Al=100%であった。
【0051】
実施例2
ケイ酸ソーダ56g、アルミン酸ソーダ50g、48%苛性7g、水120mlをSi/Al=3.0(mol/mol)の比率で混合し、90℃、6時間で結晶化を行ない、NaX型ゼオライトを含むスラリーを得た。結晶化後のスラリーをろ過・洗浄・乾燥し、NaX型ゼオライト粉末(ゼオライト分離材)を得た。
【0052】
当該ゼオライト粉末の一部を硝酸・フッ酸の混合溶液に溶解して、ICP-AES分析をして組成分析したところ、SiO/Al=2.5、Na/Al=100%であった。
【0053】
実施例3
ケイ酸ソーダ27g、アルミン酸ソーダ34g、48%苛性1g、水138mlをSi/Al=10(mol/mol)の比率で混合し、90℃、30時間で結晶化を行ない、NaY型ゼオライトを含むスラリーを得た。結晶化後のスラリーをろ過・洗浄・乾燥し、NaY型ゼオライト粉末(ゼオライト分離材)を得た。
【0054】
当該ゼオライト粉末の一部を硝酸・フッ酸の混合溶液に溶解して、ICP-AES分析をして組成分析したところ、SiO/Al=5.7、Na/Al=100%であった。
【0055】
実施例4
10%のNaCl水溶液100gにZSM-5型ゼオライト粉末(商品名:HSZ(登録商標)-820NHA、東ソー製)を10g加え、室温で1時間攪拌した。得られたゼオライトスラリーをヌッチェと濾過瓶を用いた濾過し、その後、純水200gで洗浄し、Na部分交換のZSM-5型ゼオライト粉末を得た。
【0056】
得られたNa部分交換のZSM-5型ゼオライト粉末に対して、10%のNaCl水溶液100gを用いた更に上記の操作(添加-攪拌-濾過-洗浄)を2回繰り返して、Na完全交換のZSM-5型ゼオライト粉末(ゼオライト分離材)を得た。
【0057】
当該ゼオライト粉末の一部を硝酸・フッ酸の混合溶液に溶解して、ICP-AES分析をして組成分析したところ、SiO/Al=24、Na/Al=100%であった。
【0058】
実施例5
実施例1で得られたゼオライト分離材(NaA型ゼオライト粉末(LTA構造、SiO/Al=2.0、Na/Al=100%→金属イオン交換率合計=100%))を用いて、エチレンアミン水溶液浸漬テスト1および2、耐熱水蒸気テスト1および2を行った。粉末X線回折による評価では、2θ=24.0°のピーク強度を用いて結晶保持率を算出した。結果を表1、表2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
実施例6
実施例2で得られたゼオライト分離材(NaX型ゼオライト粉末(FAU構造、SiO/Al=2.5、Na/Al=100%→金属イオン交換率合計=100%))を用いて、エチレンアミン水溶液浸漬テスト1および2、耐熱水蒸気テスト1および2を行った。粉末X線回折による評価では、2θ=23.3°のピーク強度を用いて結晶保持率を算出した。結果を表1、表2に示す。
【0062】
実施例7
実施例3で得られたゼオライト分離材(NaY型ゼオライト粉末(FAU構造、SiO/Al=5.7、Na/Al=100%→金属イオン交換率合計=100%))を用いて、エチレンアミン水溶液浸漬テスト1および2、耐熱水蒸気テスト1および2を行った。粉末X線回折による評価では、2θ=23.6°のピーク強度を用いて結晶保持率を算出した。結果を表1、表2に示す。
【0063】
実施例8
実施例4で得られたゼオライト分離材(ZSM-5型ゼオライト粉末(MFI構造、SiO/Al=24、Na/Al=100%→金属イオン交換率合計=100%))を用いて、エチレンアミン水溶液浸漬テスト1、耐熱水蒸気テスト1を行った。粉末X線回折による評価では、2θ=23.0°のピーク強度を用いて結晶保持率を算出した。結果を表1、表2に示す。
【0064】
実施例9
ケイ酸ソーダ108g、アルミン酸ソーダ54g、99%苛性13g、48%苛性カリ36g、水13mlをSi/Al=2.0(mol/mol)の比率で混合し、70℃、8時間で結晶化を行ない、(Na,K)LSX型ゼオライトを含むスラリーを得た。結晶化後のスラリーをろ過・洗浄・乾燥し、(Na,K)LSX型ゼオライト粉末(ゼオライト分離材)を得た。
【0065】
実施例10
実施例9で得られたゼオライト分離材((Na,K)LSX型ゼオライト粉末(FAU構造、SiO/Al=2.0、Na/Al=72%、K/Al=28%→金属イオン交換率合計=100%))を用いて、エチレンアミン水溶液浸漬テスト1および2、耐熱水蒸気テスト1および2を行った。粉末X線回折による評価では、2θ=23.3°のピーク強度を用いて結晶保持率を算出した。結果を表1、表2に示す。
【0066】
実施例11
NaY型ゼオライト膜について、ムライト多孔質管状膜(外径12mm)を支持体として、反応液組成25SiO:1Al:22NaO:990HOで、100℃、2.5時間水熱合成した。
【0067】
得られた膜の膜表面のX線回折により、FAU構造由来の強いピークと支持体由来の弱いピークが確認できた。また、膜表面の組成分析をEDS分析で行ったところ、SiO/Al=4.2、Na/Al=96%であった。
【0068】
また得られた膜の脱水テストを行った。図1に透過係数の時間変化を示し、図2に分離係数の時間変化を示す。透過係数が0より大きい値であることから、また分離係数が1より大きいことから、水が選択的に透過できていることを確認できた。また、30時間までの透過係数と分離係数の時間変化は小さく、30時間までの連続分離が可能であること確認できた。
【0069】
実施例12
NaX型ゼオライト膜について、ムライト多孔質管状膜(外径12mm)を支持体として、反応液組成8SiO:1Al:72NaO:4720HOで、80℃、5時間水熱合成した。
【0070】
得られた膜の膜表面のX線回折により、FAU構造由来の強いピークと支持体由来の弱いピークが確認できた。また、膜表面の組成分析をEDS分析で行ったところ、SiO/Al=2.4、Na/Al=94%であった。
【0071】
また得られた膜の脱水テストを行った。図3に透過係数の時間変化を示し、図4に分離係数の時間変化を示す。透過係数が0より大きい値であることから、また分離係数が1より大きいことから、水が選択的に透過できていることを確認できた。また、30時間までの透過係数と分離係数の時間変化は小さく、30時間までの連続分離が可能であること確認できた。
【0072】
実施例13
実施例2で得られたゼオライト分離材(NaX型ゼオライト粉末(FAU構造、SiO/Al=2.5、Na/Al=100%→金属イオン交換率合計=100%))に対して、塩化カルシウム水溶液を用いてカルシウムにイオン交換、その後、洗浄、乾燥して、CaNaX型ゼオライト粉末(FAU構造、SiO/Al=2.5、2Ca/Al=88%、Na/Al=9%→金属イオン交換率合計=97%)を得た。得られたCaNaX型ゼオライト粉末の分離材を用いて、エチレンアミン水溶液浸漬テスト1および2、耐熱水蒸気テスト1および2を行った。粉末X線回折による評価では、2θ=23.3°のピーク強度を用いて結晶保持率を算出した。結果を表1、表2に示す。
【0073】
実施例14
実施例2で得られたゼオライト分離材(NaX型ゼオライト粉末(FAU構造、SiO/Al=2.5、Na/Al=100%→金属イオン交換率合計=100%))に対して、塩化ランタン水溶液を用いてランタンにイオン交換、その後、洗浄、乾燥して、LaNaX型ゼオライト粉末(FAU構造、SiO/Al=2.5、3La/Al=36%、Na/Al=55%→金属イオン交換率合計=91%)を得た。得られたLaNaX型ゼオライト粉末の分離材を用いて、エチレンアミン水溶液浸漬テスト1および2、耐熱水蒸気テスト1および2を行った。粉末X線回折による評価では、2θ=23.3°のピーク強度を用いて結晶保持率を算出した。結果を表1、表2に示す。
【0074】
実施例15
実施例3で得られたゼオライト分離材(NaY型ゼオライト粉末(FAU構造、SiO/Al=5.7、Na/Al=100%→金属イオン交換率合計=100%))に対して、塩化カルシウム水溶液を用いてカルシウムにイオン交換、その後、洗浄、乾燥して、CaNaY型ゼオライト粉末(FAU構造、SiO/Al=5.7、2Ca/Al=86%、Na/Al=17%→金属イオン交換率合計=103%)を得た。得られたCaNaY型ゼオライト粉末の分離材を用いて、エチレンアミン水溶液浸漬テスト1および2、耐熱水蒸気テスト1および2を行った。粉末X線回折による評価では、2θ=23.6°のピーク強度を用いて結晶保持率を算出した。結果を表1、表2に示す。
【0075】
製造例1
実施例3で得られたNaY型ゼオライト粉末を酸処理と熱処理を繰り返すことにより、USY型ゼオライト粉末(SiO/Al=115、H/Al≒100%→金属イオン交換率合計=0%)を得た。
【0076】
製造例2
沈降法シリカ43g、40%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド22g、水15mlを混合し、(Si/Al=3000(mol/mol))、150℃、48時間で結晶化を行ない、シリカライト粉末を含むスラリーを得た。結晶化後のスラリーをろ過・洗浄・乾燥・焼成し、シリカライト粉末(SiO/Al=2000、H/Al≒100%→金属イオン交換率合計=0%)を得た。
【0077】
製造例3
シリカアルミナゲル33g、48%苛性4g、48%苛性カリ2g、25%の1-アダマンタンアンモニウムヒドロキシド23g、水19mlをSi/Al=18(mol/mol)の比率で混合し、150℃、72時間で結晶化を行ない、SSZ-13型ゼオライトを含むスラリーを得た。結晶化後のスラリーをろ過・洗浄・乾燥・焼成・酸処理・洗浄・乾燥し、SSZ-13型ゼオライト粉末(SiO/Al=14、H/Al≒100%→金属イオン交換率合計=0%)を得た。
【0078】
製造例4
シリカアルミナゲル33g、48%苛性3g、48%苛性カリ2g、25%の1-アダマンタンアンモニウムヒドロキシド23g、水19mlをSi/Al=22(mol/mol)の比率で混合し、150℃、72時間で結晶化を行ない、SSZ-13型ゼオライトを含むスラリーを得た。結晶化後のスラリーをろ過・洗浄・乾燥・焼成・酸処理・洗浄・乾燥し、SSZ-13型ゼオライト粉末(SiO/Al=17、H/Al≒100%→金属イオン交換率合計=0%)を得た。
【0079】
比較例1
製造例1で得られたゼオライト分離材(USY型ゼオライト粉末(FAU構造、SiO/Al=115、H/Al≒100%→金属イオン交換率合計=0%))を用いて、エチレンアミン水溶液浸漬テスト1、耐熱水蒸気テスト1を行った。粉末X線回折による評価では、2θ=23.8°のピーク強度を用いて結晶保持率を算出した。結果を表1、表2に示す。
【0080】
比較例2
製造例2で得られたゼオライト分離材(シリカライト粉末(MFI構造、SiO/Al=2000、H/Al≒100%→金属イオン交換率合計=0%))を用いて、エチレンアミン水溶液浸漬テスト1、耐熱水蒸気テスト1を行った。粉末X線回折による評価では、2θ=23.1°のピーク強度を用いて結晶保持率を算出した。結果を表1、表2に示す。
【0081】
比較例3
製造例3で得られたゼオライト分離材(SSZ-13型ゼオライト粉末(CHA構造、SiO/Al=14、H/Al≒100%→金属イオン交換率合計=0%))を用いて、エチレンアミン水溶液浸漬テスト1、耐熱水蒸気テスト1を行った。粉末X線回折による評価では、2θ=20.7°のピーク強度を用いて結晶保持率を算出した。結果を表1、表2に示す。
【0082】
比較例4
製造例4で得られたゼオライト分離材(SSZ-13型ゼオライト粉末(CHA構造、SiO/Al=17、H/Al≒100%→金属イオン交換率合計=0%))を用いて、エチレンアミン水溶液浸漬テスト1、耐熱水蒸気テスト1を行った。粉末X線回折による評価では、2θ=20.7°のピーク強度を用いて結晶保持率を算出した。結果を表1、表2に示す。
【0083】
表1、2によれば、SiO/Alモル比が2~40、かつ金属イオンの交換率合計が90%以上のゼオライトを用いた実施例5~8および10は、エチレンアミン水溶液浸漬テストでの水吸着選択性、結晶保持率、耐熱水蒸気テストでの結晶保持率が何れも大きく、安定的に分離する分離材および分離方法として利用できる。一方、比較例1~4は何れかの評価値において小さく安定的に分離する分離材および分離方法として利用できない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のゼオライト分離材は、エチレンアミン類を10~90重量%含む水溶液から、エチレンアミン類と水を安定的に分離する分離材および分離方法として利用できる。
図1
図2
図3
図4