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特開2022-153384調整可能な大きい垂直磁気異方性を有する磁気トンネル接合
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153384
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】調整可能な大きい垂直磁気異方性を有する磁気トンネル接合
(51)【国際特許分類】
   H01L 43/08 20060101AFI20221004BHJP
   H01L 43/10 20060101ALI20221004BHJP
   H01L 43/12 20060101ALI20221004BHJP
   H01L 21/8239 20060101ALI20221004BHJP
   H01F 10/14 20060101ALI20221004BHJP
   H01F 10/16 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H01L43/08 H
H01L43/10
H01L43/08 Z
H01L43/12
H01L27/105 447
H01F10/14
H01F10/16
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022105377
(22)【出願日】2022-06-30
(62)【分割の表示】P 2020552211の分割
【原出願日】2019-02-19
(31)【優先権主張番号】62/650,444
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュエ, リン
(72)【発明者】
【氏名】チン, チー ホン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, シャオトン
(72)【発明者】
【氏名】パカラ, マヘンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ロンジュン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大きい垂直磁気異方性を保持しながら高温熱処理に耐える磁気トンネル接合(MTJ)構造体を提供する。
【解決手段】MRAM用途および関連するMTJデバイスのために、基板200上に配置された膜積層体からMTJ構造を形成するための方法は、十分に大きい垂直磁気異方性(PMA)を有する膜積層体を生成するように、膜積層体の材料層の膜特性を形成することを含む。鉄含有酸化物キャッピング層250aが、望ましいPMAを生成するために利用される。鉄含有酸化物キャッピング層を利用することにより、キャッピング層の厚さを、より細かく制御することができ、磁気記憶層245a~cとキャッピング層250a~d、xとの界面でのホウ素への依存が低減される。
【選択図】図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッファ層と、
前記バッファ層の上に配置されたシード層と、
前記シード層の上に配置された第1のピン止め層と、
前記第1のピン止め層の上に配置された合成フェリ磁性体(SyF)結合層と、
前記SyF結合層の上に配置された第2のピン止め層と、
前記第2のピン止め層の上に配置された構造ブロッキング層と、
前記構造ブロッキング層の上に配置された磁気参照層と、
前記磁気参照層の上に配置されたトンネル障壁層と、
前記トンネル障壁層の上に配置された磁気記憶層と、
前記磁気記憶層の上に配置されたキャッピング層であって、Fe含有酸化物材料層を含むキャッピング層と、
を含む磁気トンネル接合膜積層体。
【請求項2】
前記キャッピング層が、Ir含有層、Ru含有層、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上を、さらに含む、請求項1に記載の膜積層体。
【請求項3】
前記Fe含有酸化物材料層が、CoFe酸化物材料、CoFeB酸化物材料、NiFe酸化物材料、FeB酸化物材料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料である、請求項1に記載の膜積層体。
【請求項4】
前記SyF結合層が、Ir含有層を含む、請求項1に記載の膜積層体。
【請求項5】
前記バッファ層が、CoFeB含有層を含む、請求項1に記載の膜積層体。
【請求項6】
前記シード層が、
(a)NiCr含有層、または
(b)Pt含有層、Ir含有層、およびRu含有層のうちの1つ以上
を含む、請求項1に記載の膜積層体。
【請求項7】
前記シード層が、NiCr含有層を含み、
前記バッファ層が、TaN含有層およびTa含有層のうちの1つ以上をさらに含み、前記バッファ層のCoFeB含有層が、前記バッファ層の前記TaN含有層および前記バッファ層の前記Ta含有層のうちの1つ以上の上に配置されている、請求項6に記載の膜積層体。
【請求項8】
前記シード層が、Pt含有層、Ir含有層、およびRu含有層のうちの1つ以上を含み、
前記バッファ層が、TaN含有層およびTa含有層のうちの1つ以上をさらに含み、前記バッファ層のCoFeB含有層が、前記バッファ層の前記TaN含有層および前記バッファ層の前記Ta含有層のうちの1つ以上の下に配置されている、請求項6に記載の膜積層体。
【請求項9】
CoFeB含有層を含むバッファ層と、
前記バッファ層の上に配置されたシード層と、
前記シード層の上に配置された第1のピン止め層と、
前記第1のピン止め層の上に配置された合成フェリ磁性体(SyF)結合層であって、Ir含有層を含むSyF結合層と、
前記SyF結合層の上に配置された第2のピン止め層と、
前記第2のピン止め層の上に配置された構造ブロッキング層と、
前記構造ブロッキング層の上に配置された磁気参照層と、
前記磁気参照層の上に配置されたトンネル障壁層と、
前記トンネル障壁層の上に配置された磁気記憶層と、
前記磁気記憶層の上に配置されたキャッピング層であって、Fe含有酸化物材料層を含むキャッピング層と、
前記キャッピング層の上に配置されたハードマスクと、
を含む磁気トンネル接合膜積層体。
【請求項10】
前記Fe含有酸化物材料層が、前記磁気記憶層上に前記磁気記憶層と接触して配置されている、請求項9に記載の膜積層体。
【請求項11】
前記Fe含有酸化物材料層が、CoFe酸化物材料、CoFeB酸化物材料、NiFe酸化物材料、FeB酸化物材料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料である、請求項10に記載の膜積層体。
【請求項12】
Ir含有層、Ru含有層、またはそれらの組み合わせが、前記Fe含有酸化物材料層上に前記Fe含有酸化物材料層と接触して配置されている、請求項9に記載の膜積層体。
【請求項13】
バッファ層と、
前記バッファ層上に前記バッファ層と接触して配置されたシード層と、
前記シード層上に前記シード層と接触して配置された第1のピン止め層と、
前記第1のピン止め層上に前記第1のピン止め層と接触して配置された合成フェリ磁性体(SyF)結合層と、
前記SyF結合層上に前記SyF結合層と接触して配置された第2のピン止め層と、
前記第2のピン止め層上に前記第2のピン止め層と接触して配置された構造ブロッキング層と、
前記構造ブロッキング層上に前記構造ブロッキング層と接触して配置された磁気参照層と、
前記磁気参照層上に前記磁気参照層と接触して配置されたトンネル障壁層と、
前記トンネル障壁層上に前記トンネル障壁層と接触して配置された磁気記憶層と、
前記磁気記憶層上に前記磁気記憶層と接触して配置されたキャッピング層であって、Fe含有酸化物材料層を含むキャッピング層と、
前記キャッピング層上に前記キャッピング層と接触して配置されたハードマスクと、
を含む磁気トンネル接合膜積層体。
【請求項14】
前記Fe含有酸化物材料層が、CoFe酸化物材料、CoFeB酸化物材料、NiFe酸化物材料、FeB酸化物材料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料である、請求項13に記載の膜積層体。
【請求項15】
Ir含有層、Ru含有層、またはそれらの組み合わせが、前記Fe含有酸化物材料層上に前記Fe含有酸化物材料層と接触して配置されている、請求項13に記載の膜積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示の実施形態は、スピン注入磁気ランダムアクセスメモリ(STT-MRAM)用途で使用される構造およびデバイスを製造するための方法に関する。より具体的には、本開示の実施形態は、調整可能な大きい垂直磁気異方性を有する磁気トンネル接合の製造方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)は、電子の電荷の代わりに抵抗値を用いてデータを記憶するMRAMセルのアレイを含む、メモリデバイスの一種である。一般に、各MRAMセルは、磁気トンネル接合(MTJ)構造を含む。MTJ構造は、典型的には、2つの強磁性層が、薄い非磁性誘電体、例えば絶縁性トンネル層によって分離される構成を有する磁性層の積層体を含む。上部電極と下部電極を利用して、MTJ構造を挟み、上部電極と下部電極の間に電流が流れるようにする。
【0003】
[0003] MRAMセルの1つのタイプは、スピン注入磁気ランダムアクセスメモリ(STT-MRAM)である。このような製造プロセスフローでは、高温バックエンド熱処理に耐えながらも、高いトンネル磁気抵抗(TMR)比を生成するために、安定な磁気トンネル接合(MTJ)積層体が利用される。MTJ積層体は、後続の層の接着およびシーディングを改善するために、多くの場合、バッファ層を利用する。MTJ積層体はまた、第1のピン止め層と第2のピン止め層とを反平行に結合するための合成フェリ磁性体(SyF)結合層を含む。MTJ積層体の上部にキャッピング層が利用されて、積層体を腐食から保護し、またハードマスクエッチングのためのエッチストップ層としても作用する。MTJの磁気記憶層と界面接触するキャッピング層を利用して、データ保持エネルギー障壁を提供するのに十分な垂直磁気異方性(PMA)を生成する。
【0004】
[0004] 従来のキャッピング層は、十分なPMAを維持するために、磁気記憶層との界面においてホウ素を利用する。しかし、高温熱処理後、ホウ素は、界面から離れて拡散し、磁気記憶層のPMAを弱める。このような従来のキャッピング層は、酸化マグネシウム(MgO)材料を利用するが、適切なPMAを維持するために、より厚いMgO材料が利用される。より厚いMgO材料は、界面の表面粗さを増加させ、TMRを減少させる。
【0005】
[0005] したがって、当技術分野では、STT-MRAM用途のMTJ構造を製造するための改良された方法が必要とされている。また、大きいPMAを保持しながら高温熱処理に耐えることができる改良されたMTJ積層体が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 一実施形態では、磁気トンネル接合膜積層体が提供される。膜積層体は、バッファ層と、バッファ層の上に配置されたシード層と、シード層の上に配置された第1のピン止め層と、第1のピン止め層の上に配置された合成フェリ磁性体結合層とを含む。合成フェリ磁性体結合層の上に第2のピン止め層が配置され、第2のピン止め層の上に構造ブロッキング層が配置され、構造ブロッキング層の上に磁気参照層が配置され、磁気参照層の上にトンネル障壁層が配置される。磁気記憶層が、トンネル障壁層の上に配置され、キャッピング層が、磁気記憶層の上に配置される。キャッピング層は、Fe含有酸化物材料層を含む。
【0007】
[0007] 別の実施形態では、磁気トンネル接合膜積層体が提供される。膜積層体は、CoFeB含有層を含むバッファ層と、バッファ層の上に配置されたシード層と、シード層の上に配置された第1のピン止め層と、第1のピン止め層の上に配置された、Ir含有層を含む合成フェリ磁性体結合層とを含む。合成フェリ磁性体結合層の上に第2のピン止め層が配置され、第2のピン止め層の上に構造ブロッキング層が配置され、構造ブロッキング層の上に磁気参照層が配置され、磁気参照層の上にトンネル障壁層が配置される。磁気記憶層が、トンネル障壁層の上に配置され、Fe含有酸化物材料層を含むキャッピング層が、磁気記憶層の上に配置され、ハードマスクが、キャッピング層の上に配置される。
【0008】
[0008] さらに別の実施形態では、磁気トンネル接合膜積層体が提供される。膜積層体は、バッファ層と、バッファ層上にバッファ層と接触して配置されるシード層と、シード層上にシード層と接触して配置される第1のピン止め層と、第1のピン止め層上に第1のピン止め層と接触して配置される合成フェリ磁性体結合層とを含む。第2のピン止め層が、合成フェリ磁性体結合層上に合成フェリ磁性体結合層と接触して配置され、構造ブロッキング層が、第2のピン止め層上に第2のピン止め層と接触して配置され、磁気参照層が、構造ブロッキング層上に構造ブロッキング層と接触して配置され、トンネル障壁層が、磁気参照層上に磁気参照層と接触して配置される。磁気記憶層が、トンネル障壁層上にトンネル障壁層と接触して配置され、Fe含有酸化物材料層を含むキャッピング層が、磁気記憶層上に磁気記憶層と接触して配置され、ハードマスクが、キャッピング層上にキャッピング層と接触して配置される。
【0009】
[0009] 本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、上記で簡単に要約した本開示のより具体的な説明を、実施形態を参照することによって行うことができ、そのいくつかを添付の図面に示す。しかしながら、添付の図面は、例示的な実施形態のみを例示し、したがって、その範囲を限定すると見なされるべきではなく、他の同等に有効な実施形態を認めることができることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本明細書に記載の一実施形態による、磁気トンネル接合(MTJ)構造の製造方法を示す流れ図を示す。
図2A】本明細書に記載の実施形態による、膜積層体の一部の概略図を示す。
図2B】本明細書に記載の実施形態による、膜積層体の一部の概略図を示す。
図2C】本明細書に記載の実施形態による、膜積層体の一部の概略図を示す。
図3A】本明細書に記載の実施形態による、キャッピング層の概略図を示す。
図3B】本明細書に記載の実施形態による、キャッピング層の概略図を示す。
図3C】本明細書に記載の実施形態による、キャッピング層の概略図を示す。
図3D】本明細書に記載の実施形態による、キャッピング層の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0018] 理解を容易にするために、図面に共通する同一の要素は、可能であれば、同一の参照番号を使用して示してある。1つの実施形態の要素および特徴は、さらなる列挙なしに他の実施形態に有益に組み込まれ得ることが、企図される。しかしながら、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示し、したがって、本開示は他の等しく有効な実施形態を認めることができるので、その範囲を限定すると見なされるべきではないことに留意されたい。
【0012】
[0019] 本開示の実施形態は、MRAM用途および関連するMTJデバイスのために基板上に配置された膜積層体からMTJ構造を形成するための方法を提供する。本明細書に記載の方法は、十分に大きい垂直磁気異方性(PMA)を有する膜積層体を生成するように、膜積層体の材料層の膜特性を形成することを含む。鉄含有酸化物キャッピング層が、望ましいPMAを生成するために利用される。鉄含有酸化物キャッピング層を利用することにより、キャッピング層の厚さを、より細かく制御することができ、磁気記憶層とキャッピング層との界面でのホウ素への依存が低減される。
【0013】
[0020] 図1は、本開示の一実施形態による、MRAM用途のために基板上にMTJ構造を製造するためのプロセス100を示す流れ図を示す。いくつかの実施形態では、プロセス100は、プロセスフローであり、工程101~106は、個々のプロセスである。プロセス100は、プラズマ処理チャンバおよび熱処理チャンバまたは他の適切なプラズマ浸漬イオン注入システムもしくはエッチングチャンバ内で実行されるように構成される。プロセス100はまた、PVDチャンバ、CVDチャンバ、およびリソグラフィツールなどの他のツールを使用することもできる。
【0014】
[0021] プロセス100は、上に膜積層体が配置された基板を用意することによって、工程101で開始する。いくつかの実施形態では、基板は、金属またはガラス、シリコン、誘電性バルク材料および金属合金または複合ガラス、結晶性シリコン(例えば、Si<100>またはSi<111>)、酸化シリコン、ひずみシリコン、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、ドープまたは非ドープポリシリコン、ドープまたは非ドープシリコンウェハおよびパター二ングまたは非パター二ングウェハシリコンオンインシュレータ(SOI)、カーボンドープ酸化シリコン、窒化シリコン、ドープシリコン、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、ガラス、またはサファイアを含む。基板は、約200mm、約300mm、約450mmまたは他の直径などの様々な寸法を有することができ、さらに長方形または正方形のパネルであってもよい。特に断りのない限り、本明細書に記載の例は、直径200mm、直径300mm、または直径450mmの基板上で実施される。一実施形態では、基板は、基板上に配置された膜積層体を含む。
【0015】
[0022] 固定磁性層、任意選択の構造デカップリング層、トンネル障壁層、磁気記憶層、磁気参照層、およびキャッピング層は、PVDプロセスなどの、適切な手法と適切な方法によって形成され得ることに留意されたい。これらの層を形成するために使用できるシステムの例には、カリフォルニア州サンタクララのアプライドマテリアルズ社から入手可能なENDURA(登録商標)PVDシステムが含まれる。他の製造業者から入手可能なものを含む他の処理システムが、本開示を実施するように適合され得ることが企図される。
【0016】
[0023] 工程102でMTJ積層体堆積を実行する前に、他のプロセスを利用して、当業者に知られているトランジスタおよび相互接続層を形成することができる。工程106でポストパターニングアニールを実行した後、残りの相互接続層およびコンタクトパッドを完成させるための工程などの追加の工程を実行することができる。
【0017】
[0024] 工程102~104で、MTJ積層体堆積、プレパターニングアニール、およびMTJパターニングが実行される。工程102~104は、下にある基板が露出されるまで、エッチングマスク層(図示せず)によって露出および画定された膜積層体の一部を基板から除去するために実行されるパターニングプロセス、例えば、エッチングプロセスを含む。膜積層体をパター二ングするためのパター二ングプロセスは、各層に含まれる材料に応じて、異なる層をエッチングするための異なるガス混合物またはエッチャントを供給するように構成された、いくつかの個別の工程または異なるレシピを含む。パターニング中、エッチングガス混合物または異なるエッチング種を有するいくつかのガス混合物が、基板表面に順次供給されて、膜積層体の一部を基板から除去する。工程104でのパターニングプロセスの終点は、時間または他の適切な方法によって制御される。例えば、パター二ングプロセスは、基板が露出されるまで約200秒間と約10分間の間の時間パター二ングプロセスを実行した後に終了される。別の例では、パター二ングプロセスは、終点検出器からの決定によって終了される。
【0018】
[0025] 工程104でのパター二ングプロセス中に膜積層体が除去された基板の部分上に、封止および絶縁層を形成するために、さらなる堆積プロセスが実行される。封止は、適切なステップカバレッジと気密性を可能にし、多くの場合、窒化ケイ素系の材料で構成される材料の堆積を含む。絶縁は、酸化物系の材料を利用し、封止材料の厚さよりも厚い材料の堆積を含む。絶縁層は、適切な絶縁材料から形成され、その後、一連のエッチングおよび堆積プロセスによって処理されて、絶縁層内に相互接続構造を形成して(例えば、バックエンドプロセス)、デバイス構造製造プロセスを完了する。一例では、絶縁層は、酸化ケイ素層または他の適切な材料である。
【0019】
[0026] 工程106で、熱アニーリングプロセスが実行される。アニーリングに使用できるシステムの例には、急速熱アニールチャンバが含まれる。急速熱アニールチャンバの一例は、カリフォルニア州サンタクララのアプライドマテリアルズ社から入手可能なRADIANCE(登録商標)チャンバである。他の製造業者から入手可能なものを含む他の処理システムが、本開示を実施するように適合され得ることが企図される。熱アニーリングプロセスは、膜積層体、詳細には膜積層体に含まれる磁気記憶層および磁気参照層の格子構造を修復、緻密化、および強化するために実行される。熱アニーリングプロセスの後、磁気記憶層および磁気参照層は、実質的に単一平面内に結晶配向を有する結晶化磁気記憶層および結晶化磁気参照層に変換される。磁気記憶層および磁気参照層の所望の結晶化が得られると、MTJデバイスを製造するための膜積層体の全体的な電気的特性が改善される。
【0020】
[0027] いくつかの実施形態では、所望の実施態様に応じて、工程103および106のうちの1つ(または任意の他の同等のアニールプロセス)を使用することができる。以下に説明するように、本開示のMTJ膜積層体は、高温熱プロセスに耐え、電気的および磁気的特性を改善することができる。
【0021】
[0028] 図2A図2Cのそれぞれは、様々な実施形態による、膜積層体の一部の概略図を個別に示している。膜積層体は、基板200および底部コンタクト204を含む。一実施形態では、底部コンタクト204は、パター二ングされている。一実施形態では、底部コンタクト204は、基板200上に基板200と接触して配置されている。図2A図2Cには示されていないが、1つ以上の層の形態のトランジスタおよび相互接続構造などの他の層が、基板200と底部コンタクト204との間に配置されてもよい。図2B図2Cに示されている膜積層体の違いには、バッファ層205/205’、シード層210/210’、および第1のピン止め層215/215’が含まれる。いくつかの実施形態では、膜積層体は、底部コンタクト、バッファ層、シード層、第1のピン止め層、合成フェリ磁性体(SyF)結合層、第2のピン止め層、構造ブロッキング層、磁気参照層、トンネル障壁層、磁気記憶層、キャッピング層、およびハードマスクのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、これらの層のそれぞれが、個別に1つ以上の層を含む。
【0022】
[0029] いくつかの実施形態では、図2A図2Cに示されるように、磁気トンネル接合(MTJ)構造を形成するために利用される膜積層体は、底部コンタクト204の上に配置される。MTJ構造は、底部コンタクト204の上に配置されたバッファ層205/205’、バッファ層205/205’の上に配置されたシード層210/210’、シード層210/210’の上に配置された第1のピン止め層215/215’、第1のピン止め層215/215’の上に配置された合成フェリ磁性体(SyF)結合層220、SyF結合層220の上に配置された第2のピン止め層225、第2のピン止め層225の上に配置された構造ブロッキング層230、構造ブロッキング層230の上に配置された磁気参照層235、磁気参照層235の上に配置されたトンネル障壁層240、トンネル障壁層240の上に配置された磁気記憶層245、磁気記憶層245の上に配置されたキャッピング層250であって、1つ以上の層を含むキャッピング層、およびキャッピング層250の上に配置されたハードマスク255を含み、キャッピング層、バッファ層、およびSyF結合層のうちの少なくとも1つは、Ruから製造されていない。一実施形態では、膜積層体の隣接する層が、隣接する層の上または下に配置されていると言及される場合、各層は、互いに接触して配置されていると見なされる。
【0023】
[0030] 膜積層体は、底部コンタクト204の上に配置されたバッファ層205/205’を含む。バッファ層205/205’は、底部コンタクト204とシード層210/210’との間に挟まれている。一実施形態では、バッファ層205/205’は、その後に堆積される層の接着およびシーディングを改善する。一実施形態では、バッファ層205/205’は、1つ以上の層を含む。一実施形態では、バッファ層205/205’は、Ruから製造されていない。
【0024】
[0031] 一実施形態では、バッファ層205/205’は、CoFeB含有層205a/205a’を含む。バッファ層205/205’中のホウ素(B)の重量%(wt%)は、約10wt%から約40wt%の間、例えば、約20wt%から40wt%の間、例えば、約25wt%から約40wt%の間である。バッファ層205/205’中の鉄のwt%は、約20wt%から約60wt%の間、例えば、約40wt%から60wt%の間、例えば、約45wt%から約60wt%の間である。CoFeB含有層205a/205a’の厚さは、約0Åから約20Åの間、例えば、約10Åである。
【0025】
[0032] 一実施形態では、バッファ層205/205’は、TaN含有層205b/205b’および/またはTa含有層205c/205c’を含む。一実施形態では、TaN含有層205b/205b’およびTa含有層205c/205c’は、CoFeB層205aの上に配置されている。あるいは、TaN含有層205b/205b’およびTa含有層205c/205c’は、CoFeB層205a’の下に配置されてもよい。TaN含有層およびTa含有層の厚さは、約0Åから約40Åの間、例えば、約15Åである。
【0026】
[0033] 膜積層体は、バッファ層205/205’の上に配置されたシード層210/210’を含む。シード層210/210’は、バッファ層205/205’と第1のピン止め層215/215’との間に挟まれている。
【0027】
[0034] いくつかの実施形態では、シード層210は、Pt含有層、Ir含有層、およびRu含有層のうちの1つ以上を含む。Pt含有層、Ir含有層、およびRu含有層のうちの1つ以上を有するシード層210の厚さは、約0Åから約60Åの間、例えば、約25Åである。実施形態において、シード層210が、Pt含有層、Ir含有層、およびRu含有層のうちの1つ以上を含む場合、バッファ層205/205’のCoFeB含有層205aは、バッファ層205/205’のTaN含有層205b(および/またはTa含有層205c)の下に配置される。
【0028】
[0035] いくつかの実施形態では、シード層210’は、NiCr含有層を含む。NiCr含有層を有するシード層210’の厚さは、約0Åから約100Åの間、例えば、約50Åである。実施形態において、シード層が、NiCr含有層を含む場合、バッファ層205/205’のCoFeB含有層205a’は、バッファ層205/205’のTaN含有層205b’(および/またはTa含有層205c’)の上に配置される。
【0029】
[0036] 一実施形態では、膜積層体は、シード層210/210’の上に配置された第1のピン止め層215/215’を含む。第1のピン止め層215/215’は、シード層210/210’とSyF結合層220との間に挟まれている。第1のピン止め層215/215’は、1つ以上の層を含み得る。第1のピン止め層215/215’は、ドーパント、例えば、ホウ素ドーパント、酸素ドーパントを含む金属合金、または他の適切な材料などの、いくつかの磁性材料から製造される。適切な金属合金には、Ni含有材料、Pt含有材料、Ru含有材料、Co含有材料、Ta含有材料、およびPd含有材料が含まれる。磁性材料の適切な例には、Ru、Ta、Co、Pt、Ni、TaN、NiFeOx、NiFeB、CoFeOxB、CoFeB、CoFe、NiOxB、CoBOx、FeBOx、CoFeNiB、CoPt、CoPd、CoNi、およびTaOxが含まれる。
【0030】
[0037] 一実施形態では、第1のピン止め層215は、Co/Pt含有層215aの上に配置されたCo含有層215bを含む。Co含有層215bの厚さは、約0Åから約10Åの間、例えば、約5Åである。Co/Pt含有層215aは、
[Co(x)/Pt(y)
を含む組成物を有することができ、ここで、xは、約0Åから約10Åの間、例えば、約0.5Åから約7Åの間のCoの厚さを有し、yは、約0Åから約10Åの間、例えば、約0.5Åから約8Åの間のPtの厚さを有し、mは、約3から約10の間の整数であり、ここで、mは、膜積層体内に繰り返し形成されたCo/Pt含有層215aの数を表す。例えば、xが5Å、yが3Å、mが整数2の場合、Co/Pt層は、Co層(5Å)/Pt層(3Å)/Co層(5Å)/Pt層(3Å)で構成される。
【0031】
[0038] 一実施形態では、第1のピン止め層215’は、Co/Ni含有層215a’の上に配置されたCo含有層215b’を含む。Co含有層215bの厚さは、約0Åから約10Åの間、例えば、約5Åである。Co/Ni含有層215a’は、
[Co(x1)/Ni(y1)
を含む組成物を有することができ、ここで、x1は、約0Åから約10Åの間、例えば、約1Åから約8Åの間のCoの厚さを有し、y1は、約0Åから約10Åの間、例えば、約1Åから約8Åの間のNiの厚さを有し、nは、約1から約10の間の整数であり、ここで、nは、膜積層体内に繰り返し形成されたCo/Ni含有層215a’の数を表す。
【0032】
[0039] 実施形態において、第1のピン止め層215が、Co/Pt含有層215aを含む場合、シード層210は、Pt含有層、Ir含有層、およびRu含有層のうちの1つ以上を含む。実施形態において、第1のピン止め層215’が、Co/Ni含有層215a’を含む場合、シード層210は、NiCr含有層を含む。
【0033】
[0040] 膜積層体は、第1のピン止め層215/215’の上に配置された合成フェリ磁性体(SyF)結合層220を含む。一実施形態では、SyF結合層220は、第1のピン止め層215/215’と第2のピン止め層225との間に挟まれている。SyF結合層220は、第1のピン止め層215/215’と第2のピン止め層225を反平行に結合するために使用される。一実施形態では、SyF結合層220は、Ir含有層、Ru含有層、Rh含有層、およびCr含有層のうちの1つ以上を含む。一実施形態では、SyF結合層は、Ir含有層である。別の実施形態では、SyF結合層は、Ruから製造されていない。SyF結合層220の厚さは、約3Åから約10Åの間である。SyF結合層220が、Ru含有層である場合、SyF結合層220の厚さは、約4Åから約5Åの間、または約7Åから約9Åの間である。SyF結合層220が、Ir含有層である場合、SyF結合層220の厚さは、約4Åから約6Åの間である。
【0034】
[0041] 膜積層体は、SyF結合層220の上に配置された第2のピン止め層225を含む。一実施形態では、第2のピン止め層225は、SyF結合層220と構造ブロッキング層230との間に挟まれている。一実施形態では、第2のピン止め層225は、1つ以上の層を含む。第2のピン止め層225は、ドーパント、例えば、ホウ素ドーパント、酸素ドーパントを含む金属合金、または他の適切な材料などの、いくつかの磁性材料から製造される。適切な金属合金には、Ni含有材料、Pt含有材料、Ru含有材料、Co含有材料、Ta含有材料、およびPd含有材料が含まれる。磁性材料の適切な例には、Ru、Ta、Co、Pt、Ni、TaN、NiFeOx、NiFeB、CoFeOxB、CoFeB、CoFe、NiOxB、CoBOx、FeBOx、CoFeNiB、CoPt、CoPd、CoNi、およびTaOxが含まれる。
【0035】
[0042] 一実施形態では、第2のピン止め層225は、Co/Pt含有層215aの上に配置されたCo含有層225bを含む。Co含有層225bの厚さは、約0Åから約10Åの間、例えば、約5Åである。Co/Pt含有層215aは、
[Co(x2)/Pt(y2)
を含む組成物を有することができ、ここで、x2は、約0Åから約10Åの間、例えば、約0.5Åから約7Åの間のCoの厚さを有し、y2は、約0Åから約10Åの間、例えば、約0.5Åから約8Åの間のPtの厚さを有し、pは、約0から約5の間の整数であり、ここで、pは、膜積層体内に繰り返し形成されたCo/Pt含有層225aの数を表す。
【0036】
[0043] 膜積層体は、第2のピン止め層225の上に配置された構造ブロッキング層230を含む。一実施形態では、構造ブロッキング層230は、第2のピン止め層225と磁気参照層235との間に挟まれている。一実施形態では、構造ブロッキング層230は、1つ以上の層を含む。一実施形態では、構造ブロッキング層230は、金属含有材料または磁性材料のうちの1つ以上、例えば、Mo、Ta、W、CoFe、およびCoFeB、Ta含有層、Mo含有層、およびW含有層のうちの1つ以上を含む。第2のピン止め層225の厚さは、約0Åから約8Åの間、例えば、約4Åである。
【0037】
[0044] 膜積層体は、構造ブロッキング層230の上に配置された磁気参照層235を含む。一実施形態では、磁気参照層235は、構造ブロッキング層230とトンネル障壁層240との間に挟まれている。一実施形態では、磁気参照層235は、1つ以上の層を含む。磁気参照層235は、ドーパント、例えば、ホウ素ドーパント、酸素ドーパントを含む金属合金、または他の適切な材料などの、いくつかの磁性材料から製造される。適切な金属合金には、Ni含有材料、Pt含有材料、Ru含有材料、Co含有材料、Ta含有材料、およびPd含有材料が含まれる。磁性材料の適切な例には、Ru、Ta、Co、Pt、Ni、TaN、NiFeOx、NiFeB、CoFeOxB、CoFeB、CoFe、NiOxB、CoBOx、FeBOx、CoFeNiB、CoPt、CoPd、CoNi、およびTaOxが含まれる。
【0038】
[0045] 一実施形態では、磁気参照層235の層のうちの1つ以上の層が、CoFeB含有層を含む。磁気参照層235中のホウ素(B)の重量%(wt%)は、約10wt%から約40wt%の間、例えば、約20wt%から40wt%の間、例えば、約25wt%から約40wt%の間である。磁気参照層235中の鉄のwt%は、約20wt%から約60wt%の間、例えば、約40wt%から60wt%の間、例えば、約45wt%から約60wt%の間である。磁気参照層235の厚さは、約5Åから約20Åの間、例えば、約10Åである。
【0039】
[0046] 一実施形態では、膜積層体は、磁気参照層235の上に配置されたトンネル障壁層240を含む。一実施形態では、トンネル障壁層240は、磁気参照層235と磁気記憶層245との間に挟まれている。一実施形態では、トンネル障壁層240は、酸化物障壁層である。この実施形態では、トンネル障壁層240は、MgO、HfO、TiO、TaOx、Al、または他の適切な材料を含む。一実施形態では、トンネル障壁層240は、約1Åから約15Åの間、例えば、約10Åの厚さを有するMgOである。トンネル障壁層240は、例えば、急速熱アニール(RTP)プロセスを使用して、堆積中または堆積後のいずれかにアニールされてもよい。
【0040】
[0047] 一実施形態では、膜積層体は、トンネル障壁層240の上に配置された磁気記憶層245を含む。一実施形態では、磁気記憶層245は、トンネル障壁層240とキャッピング層250との間に挟まれている。磁気記憶層245は、ドーパント、例えば、ホウ素ドーパント、酸素ドーパントを含む金属合金、または他の適切な材料などの、いくつかの磁性材料から製造される。適切な金属合金には、Ni含有材料、Pt含有材料、Ru含有材料、Co含有材料、Ta含有材料、および/またはPd含有材料が含まれる。磁性材料の適切な例には、Ru、Ta、Co、Pt、Ni、TaN、NiFeOx、NiFeB、CoFeOxB、CoFeB、CoFe、NiOxB、CoBOx、FeBOx、CoFeNiB、CoPt、CoPd、CoNi、およびTaOxが含まれる。
【0041】
[0048] 一実施形態では、磁気記憶層245は、CoFeB含有材料、CoFeNiB含有材料、Ta含有材料、Mo含有材料、もしくはW含有材料、それらの組み合わせ、または他の適切な層である。例えば、図2に示される実施形態では、磁気記憶層245は、中間層245bを挟む第1のCoFeB含有層245aおよび第2のCoFeB含有層245cを含む。第1のCoFeB含有層245aは、約5Åから約20Å、例えば、約10Åの厚さを有する。第1のCoFeB含有層245a中のホウ素(B)の重量%(wt%)は、約10wt%から約40wt%の間、例えば、約20wt%から40wt%の間、例えば、約25wt%から約40wt%の間である。第1のCoFeB含有層245a中の鉄のwt%は、約20wt%から約60wt%の間、例えば、約40wt%から60wt%の間、例えば、約45wt%から約60wt%の間である。
【0042】
[0049] 第2のCoFeB含有層245cは、約5Åから約20Å、例えば、約10Åの厚さを有する。第2のCoFeB含有層245c中のホウ素(B)の重量%(wt%)は、約10wt%から約40wt%の間、例えば、約20wt%から40wt%の間、例えば、約25wt%から約40wt%の間である。第2のCoFeB含有層245a中の鉄のwt%は、約20wt%から約60wt%の間、例えば、約40wt%から60wt%の間、例えば、約45wt%から約60wt%の間である。
【0043】
[0050] 磁気記憶層245の中間層245bは、Ta含有層、Mo含有層、およびW含有層のうちの少なくとも1つ以上の1つ以上の層を含む。中間層245bは、約0Åから約8Å、例えば、約3Åの厚さを有する。
【0044】
[0051] 膜積層体は、磁気記憶層245の上に配置されたキャッピング層250を含む。一実施形態では、キャッピング層250は、磁気記憶層245とハードマスク255との間に挟まれている。MTJ積層体の上部にキャッピング層250が利用されて、積層体を腐食から保護し、またハードマスクエッチングのためのエッチストップ層としても作用する。一実施形態では、キャッピング層250は、単一の層を含む。別の実施形態では、キャッピング層250は、複数の層から形成される。この実施形態では、キャッピング層250は、第1の層250a、第2の層250b、第3の層250c、および第4の層250dを含む。
【0045】
[0052] 第1の層250aは、Fe含有酸化物材料などの酸素含有層の1つ以上の層を含む。一実施形態では、酸素含有層は、Fe酸化物材料、CoFe酸化物材料、CoFeB酸化物材料、NiFe酸化物材料、FeB酸化物材料、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上である。第1の層250aは、約0Åから約15Åの間、例えば、約2Åから約10Åの間の厚さを有する。
【0046】
[0053] 一実施形態では、第1の層250aは、磁気記憶層245上にFe含有金属をスパッタリング(すなわち、PVD堆積プロセス)することによって製造される。この実施形態で、Fe含有金属は、続いて、酸素含有周囲環境中で酸化される。酸素含有周囲環境がプロセスチャンバ内に形成されて、またはFe含有金属が大気に曝露されて、Fe含有酸化物材料を形成することができる。別の実施形態では、Fe含有金属が、酸素含有ガスの存在下で磁気記憶層245上に反応的にスパッタリングされて、Fe含有酸化物材料を形成する。この実施形態では、酸素含有ガスは、約1sccmから約60sccmの間、例えば、約10sccmから約30sccmの間、例えば、約20sccmの流量でプロセス環境に送られる。
【0047】
[0054] Fe材料の酸化を促進するための酸素曝露の期間は、約1秒から約180秒の間、例えば、約5秒から約60秒の間である。一例では、Fe含有金属は、約10秒間、酸素含有環境(大気または酸素含有ガスのいずれか)に曝され、その結果、膜積層体は、約581Oeの保磁力場(Hc)と約41kTのデータ保持障壁(Eb)を示す。別の例では、Fe含有金属は、約30秒間、酸素含有環境(大気または酸素含有ガスのいずれか)に曝され、その結果、膜積層体は、約918Oeの保磁力場(Hc)と約45kTのデータ保持障壁(Eb)を示す。別の例では、Fe含有金属は、約60秒間、酸素含有環境(大気または酸素含有ガスのいずれか)に曝され、その結果、膜積層体は、約1029Oeの保磁力場(Hc)と約51kTのデータ保持障壁(Eb)を示す。
【0048】
[0055] さらに別の実施形態では、Fe含有酸化物材料が、磁気記憶層245上に直接スパッタリングされて、Fe含有酸化物材料を形成する。前述の実施形態のうちの1つ以上において、Fe金属の酸化は、その後の大気への曝露および自然Fe酸化物の形成を回避するために、インシトゥ(その場)で行われる。
【0049】
[0056] 磁気記憶層245と直接界面接触するキャッピング層250aにFe含有酸化物材料を利用することにより、いくつかの利点の実現が可能になる。Fe含有酸化物材料は、MTJのPMAを増加させる従来のキャッピング層材料よりも強いバルクPMAを有する。さらに、PMAの増加により、キャッピング層250aと磁気記憶層245との間の界面でのホウ素への依存が減少し、特定の実施形態では、実質的に除去され、ホウ素は、典型的には、MTJの熱処理中に界面から離れて拡散する。さらに、PMAは、Fe含有酸化物材料の厚さを制御することによって調整できる。したがって、適切なPMAを提供するFe含有酸化物材料の十分に薄い層を利用しながら、膜表面粗さの望ましくない増加を回避し、MTJのTMRへの影響を回避することができる。その結果、電気的性能、材料の安定性、調整可能性、製造可能性などのMTJの性能が向上する。
【0050】
[0057] 第2の層250bは、Ru含有層および/またはIr含有層の1つ以上の層を含む。第2の層250bは、約0Åから約30Åの間、例えば、約20Åの厚さを有する。第3の層250cは、Ta含有材料の1つ以上の層を含む。第3の層250cは、約0Åから約30Åの間、例えば、約10Åの厚さを有する。第4の層250dは、Ir含有層およびRu含有層の1つ以上の層、例えば、1つ以上のIr含有層を含む。第4の層250dは、約0Åから約50Åの間、例えば、約30Åの厚さを有する。
【0051】
[0058] 一実施形態では、キャッピング層250は、任意選択の層250xを含む。任意選択の層250xは、第1の層250aと第2の層250bとの間に配置される。一実施形態では、任意選択の層250xは、Ir含有層および/またはRu含有層の1つ以上の層を含む。別の実施形態では、任意選択の層250xは、上記のものなどのFe含有酸化物材料である。任意選択の層250xは、約0Åから約30Åの間、例えば、約20Åの厚さを有する。
【0052】
[0059] 実施形態では、キャッピング層250が、任意選択の層250xを含む場合、第2の層250bは、使用されない。そのような実施形態では、任意選択の層250xは、第1の層250aの上にある。一実施形態では、任意選択の層250xは、直接に第1の層250a上に第1の層250aと接触して配置される。
【0053】
[0060] 図3A図3Dは、上で論じたようなキャッピング層250の様々な実施形態を示している。図3Aは、第1の層250a、第1の層250aの上に配置された任意選択の層250x、任意選択の層250xの上に配置された第2の層250b、第2の層250bの上に配置された第3の層250c、および第3の層250cの上に配置された第4の層250d、を含むキャッピング層250を示している。層250a、250x、250b、250c、250dのそれぞれの材料、組成、および厚さの範囲は、上で議論されている。
【0054】
[0061] 図3Bは、第1の層250a、第1の層250aの上に配置された第2の層250b、第2の層250bの上に配置された第3の層250c、および第3の層250cの上に配置された第4の層250d、を含むキャッピング層250を示している。層250a、250b、250c、250dのそれぞれの材料、組成、および厚さの範囲は、上で議論されている。
【0055】
[0062] 図3Cは、第1の層250a、第1の層250aの上に配置された任意選択の層250x、任意選択の層250xの上に配置された第3の層250c、および第3の層250cの上に配置された第4の層250d、を含むキャッピング層250を示している。層250a、250x、250c、250dのそれぞれの材料、組成、および厚さの範囲は、上で議論されている。
【0056】
[0063] 図3Dは、第1の層250aおよび第1の層250aの上に配置された任意選択の層250xを含むキャッピング層250を示している。層250a、250xのそれぞれの材料、組成、および厚さの範囲は、上で議論されている。
【0057】
[0064] 図2A図2Cは、バッファ層、SyF結合層、およびキャッピング層のうちの1つ以上がRuから製造されていない例示的なMTJ膜積層体を示している。いくつかの実施形態では、MTJ膜積層体は、CoFeBベースのバッファ層205/205’を含み、これは、任意選択で、いくらかのTaNおよび/またはTaを含み得る。CoFeB層は、TaNおよび/またはTaを含む層の上または下に配置することができる。CoFeBベースのバッファ層のホウ素のwt%は、約10wt%より大きく、例えば、約25wt%より大きくなければならない。いくつかの実施形態では、Ir、Ru、Rh、および/またはCrが、SyF結合層220として使用され得る。いくつかの実施形態では、Irおよび/またはRuは、キャッピング層250の最上層金属であり得る。
【0058】
[0065] Ru含有バッファ層の代わりにCoFeBベースのバッファ層を使用すると、450℃までの温度でアニーリングした後でも優れた磁気ピン止めでトンネル磁気抵抗(TMR)が増加することが実証されている。強いSyF結合、固定層と参照層の大きい垂直磁気異方性、および自由層の制御可能な垂直磁気異方性が実現される。CoFeBバッファ層(25wt%のホウ素を含む)を実装するいくつかの実施形態は、従来のTa/Ru/Taバッファ層から10%を超えるTMR(%)の改善を示す。CoFeB層は、増加した粗さが底部コンタクトからMTJ膜積層体に達するのをブロックする。
【0059】
[0066] さらに、SyF結合層とキャッピング層でRuをIrに置き換えると、450℃までの温度でアニーリングした後でもTMR(%)が増加することが実証されている。Ir含有SyF結合層を実装するいくつかの実施形態は、従来のRu含有SyF結合層から10%を超えるTMR(%)の改善を示す。さらに、SyF結合層とキャッピング層のRuを除去することにより、膜のTMRが、MgOへのRuの拡散を除去することにより、向上する。RuOよりも高いIrOの熱安定性が、拡散を除去することにおいて役割を果たしている可能性がある。
【0060】
[0067] 図2A図2Cのような構成は、従来の膜積層体よりも優れた利点を提供する。第1の利点は、高温熱プロセスでもバッファがアモルファスのままであり、底部コンタクトからのテクスチャをブロックすることである。第2の利点は、Irによってもたらされるピン止め層間の強い反平行結合である。第3の利点は、新しいバッファ層を使用し、積層体からRuを除去することによる、TMRの改善である。これらの利点により、MTJの性能が向上し(高いTMR、強いSyF結合、固定層と参照層の大きい垂直磁気異方性、自由層の制御可能な垂直磁気異方性など)、製造可能性が向上する。MTJ膜積層体は、STT-MRAM用途のメモリセルや、MTJをユニットビルディングブロックとして使用する他のメモリおよびロジックデバイスの製造に使用できる。物理気相堆積システム(ENDURA(登録商標)STTMRAMなど)を使用して、高性能STT-MRAMチップ用のMTJ膜積層体を堆積できる。本明細書に記載されるように、高温熱プロセスに耐えることができるMTJ膜積層体は、MTJの電気的および磁気的特性の両方を改善する。
【0061】
[0068] 表1および表2は、基板上に磁気トンネル接合(MTJ)構造を形成するために利用される膜積層体の例示的な組成を示している。ハードマスク層および底部コンタクト層の材料、組成、および厚さは、当業者に既知である。
【0062】
[0069] 上記のように(250xで表される)、キャッピング層内の追加の(および任意選択の)Irおよび/またはRu層を、酸素含有層の上に配置することができる。この層の厚さは、約0Åから約30Åの間であり得る。いくつかの実施形態では、追加のIrおよび/またはRu層が使用される場合、キャッピング層のCoFeB層は使用されない。
【0063】
組成と厚さの全ての値は、おおよその範囲として載せている。
【0064】
組成と厚さの全ての値は、おおよその範囲として載せている。
【0065】
[0070] 本明細書の開示は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、これらの実施形態は、本開示の原理および適用の単なる例示であることが理解されるべきである。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本開示の方法および装置に様々な修正および変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内にある修正および変形を含むことが意図されている。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
【手続補正書】
【提出日】2022-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッファ層と、
前記バッファ層の上に配置されたシード層と、
前記シード層の上に配置された合成フェリ磁性体(SyF)結合層と、
前記SyF結合層の上に配置された磁気参照層と、
前記磁気参照層の上に配置されたトンネル障壁層と、
前記トンネル障壁層の上に配置された磁気記憶層と、
前記磁気記憶層の上に配置されたキャッピング層と、
を含む磁気トンネル接合膜積層体。
【請求項2】
前記キャッピング層が、Ir含有層、Ru含有層、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上を、さらに含む、請求項1に記載の膜積層体。
【請求項3】
前記キャッピング層が、CoFe酸化物材料、CoFeB酸化物材料、NiFe酸化物材料、FeB酸化物材料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料である、請求項1に記載の膜積層体。
【請求項4】
前記キャッピング層が、前記磁気記憶層上に前記磁気記憶層と接触して配置されている、請求項3に記載の膜積層体。
【請求項5】
前記キャッピング層が、Ta含有層をさらに含む、請求項3に記載の膜積層体。
【請求項6】
前記キャッピング層が、Ir含有層、Ru含有層、またはそれらの組み合わせを含む、請求項4に記載の膜積層体。
【請求項7】
前記キャッピング層が、約2Åから約10Åの間の厚さを有する、請求項1に記載の膜積層体。
【請求項8】
前記SyF結合層が、Ir含有層を有する、請求項1に記載の膜積層体。
【請求項9】
前記バッファ層が、CoFeB含有層を含む、請求項1に記載の膜積層体。
【請求項10】
前記バッファ層中のホウ素のwt%が、約20wt%から約40wt%の間である、請求項9に記載の膜積層体。
【請求項11】
前記シード層が、
(a)NiCr含有層、または
(b)Pt含有層、Ir含有層、およびRu含有層のうちの1つ以上
を含む、請求項1に記載の膜積層体。
【請求項12】
前記バッファ層が、TaN含有層およびTa含有層のうちの1つ以上をさらに含み、前記バッファ層のCoFeB含有層が、前記バッファ層の前記TaN含有層および前記バッファ層の前記Ta含有層のうちの1つ以上の上に配置されている、請求項9に記載の膜積層体。
【請求項13】
前記シード層が、Pt含有層、Ir含有層、およびRu含有層のうちの1つ以上を含む、請求項12に記載の膜積層体。
【請求項14】
合成フェリ磁性体(SyF)結合層と、
前記SyF結合層の上に配置されたピン止め層と、
前記ピン止め層の上に配置された構造ブロッキング層と、
前記構造ブロッキング層の上に配置された磁気参照層と、
前記磁気参照層の上に配置されたトンネル障壁層と、
前記トンネル障壁層の上に配置された磁気記憶層と、
前記磁気記憶層の上に配置されたFe含有酸化物材料層と、
を含む磁気トンネル接合膜積層体。
【請求項15】
前記Fe含有酸化物材料層が、前記磁気記憶層上に前記磁気記憶層と接触して配置されている、請求項14に記載の膜積層体。
【請求項16】
前記Fe含有酸化物材料層が、CoFe酸化物材料、CoFeB酸化物材料、NiFe酸化物材料、FeB酸化物材料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料である、請求項15に記載の膜積層体。
【請求項17】
Ir含有層、Ru含有層、またはそれらの組み合わせが、前記Fe含有酸化物材料層上に前記Fe含有酸化物材料層と接触して配置されている、請求項14に記載の膜積層体。
【請求項18】
合成フェリ磁性体(SyF)結合層と、
前記SyF結合層上に前記SyF結合層と接触して配置されたピン止め層と、
前記ピン止め層上に前記ピン止め層と接触して配置された構造ブロッキング層と、
前記構造ブロッキング層上に前記構造ブロッキング層と接触して配置された磁気参照層と、
前記磁気参照層上に前記磁気参照層と接触して配置されたトンネル障壁層と、
前記トンネル障壁層上に前記トンネル障壁層と接触して配置された磁気記憶層と、
前記磁気記憶層上に前記磁気記憶層と接触して配置されたFe含有酸化物材料層と、
を含む磁気トンネル接合膜積層体。
【請求項19】
前記Fe含有酸化物材料層が、CoFe酸化物材料、CoFeB酸化物材料、NiFe酸化物材料、FeB酸化物材料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料である、請求項18に記載の膜積層体。
【請求項20】
Ir含有層、Ru含有層、またはそれらの組み合わせが、前記Fe含有酸化物材料層上に前記Fe含有酸化物材料層と接触して配置されている、請求項18に記載の膜積層体。
【外国語明細書】