(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153745
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】スピンドル回転数計測方法及び切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 49/12 20060101AFI20221005BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20221005BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20221005BHJP
B24B 47/12 20060101ALI20221005BHJP
B23Q 17/10 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B24B49/12
H01L21/78 F
B24B27/06 M
B24B47/12
B23Q17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056424
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 健太
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034BB93
3C034CA15
3C034CA22
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3C034DD10
3C034DD18
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3C158AA03
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3C158BB06
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3C158BC02
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3C158CB06
5F063AA26
5F063AA28
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5F063EE07
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5F063EE44
5F063FF01
(57)【要約】
【課題】専用の計測器を用いることなくスピンドルの回転数を計測可能な切削装置を用いたスピンドル回転数計測方法を提供する。
【解決手段】切削装置に備えられたスピンドルの回転数を計測するスピンドル回転数計測方法であって、切削装置は、スピンドルと、スピンドルの先端部に固定され切削ブレードが着脱可能に装着されるマウント部と、を有する切削ユニットと、切削ブレードの先端部が挿入される挿入部と、挿入部を挟むように配置される投光部及び受光部と、を有し、受光部の受光量を計測する計測ユニットと、を備え、回転部材をマウント部に装着する装着ステップと、回転部材の先端部を挿入部に挿入した状態で、投光部から受光部に向かって光を照射しつつスピンドルを回転させ、受光量を計測する計測ステップと、計測ステップにおいて計測された受光量の推移に基づいてスピンドルの回転数を算出する算出ステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削装置に備えられたスピンドルの回転数を計測するスピンドル回転数計測方法であって、
該切削装置は、
該スピンドルと、該スピンドルの先端部に固定され切削ブレードが着脱可能に装着されるマウント部と、を有する切削ユニットと、
該切削ブレードの先端部が挿入される挿入部と、該挿入部を挟むように配置される投光部及び受光部と、を有し、該受光部の受光量を計測する計測ユニットと、を備え、
回転中心から外周縁までの距離が一定でない回転部材を該マウント部に装着する装着ステップと、
該回転部材の先端部を該挿入部に挿入した状態で、該投光部から該受光部に向かって光を照射しつつ該スピンドルを回転させ、該受光量を計測する計測ステップと、
該計測ステップにおいて計測された該受光量の推移に基づいて該スピンドルの回転数を算出する算出ステップと、を含むことを特徴とするスピンドル回転数計測方法。
【請求項2】
予め設定された該スピンドルの回転数の参照値と、該算出ステップにおいて算出された該回転数とを比較した結果に基づいて、該スピンドルの回転数を補正する補正ステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のスピンドル回転数計測方法。
【請求項3】
被加工物を切削する切削装置であって、
スピンドルと、該スピンドルの先端部に固定され切削ブレードが着脱可能に装着されるマウント部を、有する切削ユニットと、
該切削ブレードの先端部が挿入される挿入部と、該挿入部を挟むように配置される投光部及び受光部と、を有し、該受光部の受光量を計測する計測ユニットと、
該スピンドルの回転数を算出する算出部と、を備え、
該マウント部には、回転中心から外周縁までの距離が一定でない回転部材を装着可能であり、
該算出部は、該回転部材の先端部を該挿入部に挿入した状態で該投光部から該受光部に向かって光を照射しつつ該スピンドルを回転させた際に、該計測ユニットによって計測された該受光量の推移に基づいて、該スピンドルの回転数を算出することを特徴とする切削装置。
【請求項4】
予め設定された該スピンドルの回転数の参照値と、該算出部によって算出された該回転数とを比較した結果に基づいて、該スピンドルの回転数を補正する補正部を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を切削する切削装置、及び、該切削装置に備えられたスピンドルの回転数を計測するスピンドル回転数計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造プロセスでは、格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)によって区画された複数の領域にそれぞれデバイスが形成されたウェーハが用いられる。このウェーハをストリートに沿って分割することにより、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが得られる。デバイスチップは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に組み込まれる。
【0003】
ウェーハの分割には、切削装置が用いられる。切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、被加工物に切削加工を施す切削ユニットとを備えている。切削ユニットはスピンドルを備えており、スピンドルの先端部には被加工物を切削する環状の切削ブレードが装着される。ウェーハをチャックテーブルで保持し、回転する切削ブレードをウェーハに切り込ませることにより、ウェーハが切削、分割される(特許文献1参照)。
【0004】
切削ブレードで被加工物を切削すると、被加工物と接触する切削ブレードの先端部に負荷がかかり、切削ブレードの先端部で欠けが発生することがある。そして、切削ブレードが欠けた状態で被加工物の切削を続行すると、切削ブレードの破損や被加工物の加工不良が生じるおそれがある。そのため、切削ブレードの欠けは速やかに検知されることが求められる。
【0005】
そこで、切削装置には、切削ブレードの先端部を検出して切削ブレードの状態を監視する検出ユニットが搭載されることがある。例えば特許文献2には、切削ブレードの先端部を挟むように配置される投光部と受光部とを備えた検出ユニット(光学検出手段)が開示されている。この光学検出手段は、投光部から受光部へと向かう光が切削ブレードによって遮光されるように配置される。
【0006】
被加工物の接着中に切削ブレードの先端部で欠けが発生すると、投光部から照射された光が切削ブレードの欠けを介して受光部に到達し、受光部の受光量が増加する。そのため、受光部の受光量を監視することにより、切削ブレードの先端部で欠けが発生しているか否かを判定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-129623号公報
【特許文献2】特開2002-370140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
切削装置で被加工物を切削する際には、被加工物の材質や加工の内容に応じてスピンドルの回転数(切削ブレードの回転数)が設定される。ただし、切削ブレードが被加工物に切り込むと、切削ブレードには被加工物の材質、加工内容等に応じて負荷(加工負荷)がかかり、スピンドルの回転数が変動することがある。この場合、オペレーターが切削装置に入力したスピンドルの回転数と実際のスピンドルの回転数との間に誤差が生じ、被加工物の切削が所望の加工条件で実施されないことになる。
【0009】
そこで、切削ユニットには、実際のスピンドルの回転数を計測する計測器が搭載されることがある。そして、切削ユニットに内蔵された計測器によってスピンドルの回転数が計測され、計測値に基づいてスピンドルの回転数が補正される。これにより、被加工物の切削中におけるスピンドルの回転数を維持することが可能になる。
【0010】
しかしながら、切削ユニットにスピンドルの回転数を計測する計測器を搭載する場合、計測器の準備及び設置に手間とコストがかかる上、切削ユニットのサイズが増大してしまう。特に、前述のように切削ユニットに切削ブレードの先端部を検出する検出ユニットが搭載されている場合には、切削ユニット内に更に計測器を設置するためのスペースを確保することが困難な場合もある。
【0011】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、専用の計測器を用いることなくスピンドルの回転数を計測可能な切削装置、及び、該切削装置を用いたスピンドル回転数計測方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、切削装置に備えられたスピンドルの回転数を計測するスピンドル回転数計測方法であって、該切削装置は、該スピンドルと、該スピンドルの先端部に固定され切削ブレードが着脱可能に装着されるマウント部と、を有する切削ユニットと、該切削ブレードの先端部が挿入される挿入部と、該挿入部を挟むように配置される投光部及び受光部と、を有し、該受光部の受光量を計測する計測ユニットと、を備え、回転中心から外周縁までの距離が一定でない回転部材を該マウント部に装着する装着ステップと、該回転部材の先端部を該挿入部に挿入した状態で、該投光部から該受光部に向かって光を照射しつつ該スピンドルを回転させ、該受光量を計測する計測ステップと、該計測ステップにおいて計測された該受光量の推移に基づいて該スピンドルの回転数を算出する算出ステップと、を含むスピンドル回転数計測方法が提供される。
【0013】
なお、好ましくは、該スピンドル回転数計測方法は、予め設定された該スピンドルの回転数の参照値と、該算出ステップにおいて算出された該回転数とを比較した結果に基づいて、該スピンドルの回転数を補正する補正ステップを更に含む。
【0014】
また、本発明の他の一態様によれば、被加工物を切削する切削装置であって、スピンドルと、該スピンドルの先端部に固定され切削ブレードが着脱可能に装着されるマウント部を、有する切削ユニットと、該切削ブレードの先端部が挿入される挿入部と、該挿入部を挟むように配置される投光部及び受光部と、を有し、該受光部の受光量を計測する計測ユニットと、該スピンドルの回転数を算出する算出部と、を備え、該マウント部には、回転中心から外周縁までの距離が一定でない回転部材を装着可能であり、該算出部は、該回転部材の先端部を該挿入部に挿入した状態で該投光部から該受光部に向かって光を照射しつつ該スピンドルを回転させた際に、該計測ユニットによって計測された該受光量の推移に基づいて、該スピンドルの回転数を算出する切削装置が提供される。
【0015】
なお、好ましくは、該切削装置は、予め設定された該スピンドルの回転数の参照値と、該算出部によって算出された該回転数とを比較した結果に基づいて、該スピンドルの回転数を補正する補正部を更に備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様においては、切削ブレードの先端部が挿入される挿入部と、挿入部を挟むように配置される投光部及び受光部とを有する計測ユニットが、スピンドルの回転数の算出に用いられる。これにより、切削ブレードの状態の監視とスピンドルの回転数の算出とを同一の計測ユニットを用いて実施することが可能となり、切削ユニットに専用の計測器を新たに搭載することなくスピンドルの回転数を算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図2(A)は切削ユニットを示す斜視図であり、
図2(B)は切削ユニットを示す一部断面側面図である。
【
図3】制御部及び計測ユニットを示すブロック図である。
【
図4】
図4(A)は非真円部材を回転させた際の受光量の推移を示すグラフであり、
図4(B)は偏心部材を回転させた際の受光量の推移を示すグラフである。
【
図5】スピンドルの回転数の計測手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る切削装置の構成例について説明する。
図1は、切削装置2を示す斜視図である。なお、
図1において、X軸方向(加工送り方向、左右方向、第1水平方向)とY軸方向(割り出し送り方向、前後方向、第2水平方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(鉛直方向、上下方向、高さ方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
【0019】
切削装置2は、切削装置2を構成する各構成要素を支持及び収容する基台4を備える。基台4の上側には、基台4の上面側を覆うカバー6が設けられている。カバー6の内部には被加工物11の加工が行われる空間(加工室)が形成されており、加工室内には被加工物11に切削加工を施す切削ユニット8が設けられている。
【0020】
切削ユニット8には、被加工物11を切削する工具である環状の切削ブレード36が装着される。また、切削ユニット8には、切削ユニット8をY軸方向及びZ軸方向に沿って移動させるボールねじ式の移動機構(不図示)が連結されている。
【0021】
切削ユニット8の下方には、被加工物11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)10が設けられている。チャックテーブル10の上面は、水平方向(XY平面方向)と概ね平行な平坦面であり、被加工物11を保持する保持面10aを構成している。保持面10aは、チャックテーブル10の内部に形成された流路(不図示)、バルブ等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0022】
チャックテーブル10には、チャックテーブル10をX軸方向に沿って移動させるボールねじ式の移動機構(不図示)が連結されている。また、チャックテーブル10には、チャックテーブル10をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0023】
基台4の前方側の角部には、カセット載置台12が設置されている。カセット載置台12の上面上には、複数の被加工物11を収容可能なカセット14が載置される。また、カセット載置台12には、カセット載置台12をZ軸方向に沿って移動(昇降)させる昇降機構(不図示)が連結されている。カセット14からの被加工物11の搬出、及び、カセット14への被加工物11の搬入が適切に行われるように、カセット14の高さ位置(Z軸方向における位置)が昇降機構によって調節される。
【0024】
例えば被加工物11は、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハであり、互いに概ね平行な表面及び裏面を備える。被加工物11は、互いに交差するように格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)によって、複数の矩形状の領域に区画されている。また、ストリートによって区画された領域の表面側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイスが形成されている。切削装置2によって被加工物11をストリートに沿って切削、分割すると、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが製造される。
【0025】
ただし、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば被加工物11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、サファイア、ガラス(石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等)、樹脂、セラミックス、金属等でなるウェーハ(基板)であってもよい。また、デバイスの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、被加工物11にはデバイスが形成されていなくてもよい。さらに、被加工物11は、CSP(Chip Size Package)基板、QFN(Quad Flat Non-leaded package)基板等のパッケージ基板であってもよい。
【0026】
切削装置2によって被加工物11を加工する際には、被加工物11の取り扱い(搬送、保持等)の便宜のため、被加工物11が環状のフレーム13によって支持される。フレーム13はSUS(ステンレス鋼)等の金属でなり、フレーム13の中央部にはフレーム13を厚さ方向に貫通する円形の開口が設けられている。フレーム13の開口の直径は被加工物11の直径よりも大きく、被加工物11はフレーム13の開口の内側に配置される。
【0027】
被加工物11及びフレーム13には、テープ15が貼付される。テープ15は、円形に形成されたフィルム状の基材と、基材上に設けられた粘着層(糊層)とを含む。例えば基材は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂でなる。また、粘着層は、エポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤等でなる。なお、粘着層は、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型の樹脂であってもよい。
【0028】
テープ15の中央部が被加工物11の裏面(下面)側に貼付されるとともに、テープ15の外周部がフレーム13に貼付されると、被加工物11がテープ15を介してフレーム13によって支持される。そして、被加工物11はフレーム13によって支持された状態でカセット14に収容される。
【0029】
カセット載置台12の近傍には、被加工物11を搬送する搬送機構(不図示)が設けられている。例えば搬送機構は、フレーム13の上面側を吸引保持する複数の吸引パッドを備える。そして、搬送機構は、カセット14からチャックテーブル10に未加工の被加工物11を搬送するとともに、チャックテーブル10からカセット14に加工済みの被加工物11を搬送する。
【0030】
カバー6の前面6a側には、表示部(表示ユニット)16が設けられている。表示部16は、各種のディスプレイによって構成され、切削装置2に関する情報を表示する。例えば表示部16は、操作画面、加工状況、加工条件、被加工物11の画像等を表示できる。
【0031】
なお、表示部16はタッチパネル式のディスプレイであってもよい。この場合には、表示部16がユーザーインターフェースとして機能し、オペレーターは表示部16のタッチ操作によって切削装置2に情報を入力できる。すなわち、表示部16は、切削装置2に情報を入力するための入力部(入力ユニット、入力装置)としても機能する。ただし、入力部は表示部16とは別途独立して設けられていてもよい。この場合、入力部としてはキーボード、マウス等を用いることができる。
【0032】
カバー6の上面側には、オペレーターに情報を報知する報知部(報知ユニット、報知装置)18が設けられている。例えば、報知部18として表示灯(警告灯)が設けられる。この場合、切削装置2で異常が発生すると、表示灯が所定の色又はパターンで点灯してオペレーターに異常を知らせる。また、報知部18として、音又は音声でオペレーターに情報を報知するスピーカーを用いることもできる。この場合、切削装置2で異常が発生すると、スピーカーが異常の発生を知らせる音又は音声を発信する。
【0033】
切削装置2を構成する各構成要素(切削ユニット8、チャックテーブル10、カセット載置台12、表示部16、報知部18等)は、制御部(制御ユニット、制御装置)20に接続されている。制御部20は、切削装置2の各構成要素の動作を制御する制御信号を生成し、切削装置2の稼働を制御する。
【0034】
例えば制御部20は、コンピュータによって構成される。具体的には、制御部20は、切削装置2の稼働に必要な演算を行うCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、切削装置2の稼働に用いられる各種の情報(データ、プログラム等)を記憶するROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリとを含んで構成される。
【0035】
カセット14に収容された被加工物11は、搬送機構によってチャックテーブル10上に搬送され、チャックテーブル10によって保持される。具体的には、被加工物11はテープ15を介してチャックテーブル10の保持面10a上に配置される。この状態で、保持面10aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、被加工物11がテープ15を介してチャックテーブル10によって吸引保持される。
【0036】
チャックテーブル10によって保持された被加工物11は、切削ユニット8によって加工される。具体的には、切削ユニット8は切削ブレード36を回転させて被加工物11に切り込ませることにより、被加工物11を切削する。なお、切削加工中は、被加工物11及び切削ブレード36に純水等の液体(切削液)が所定の流量で供給される。そして、加工後の被加工物11は搬送機構によって搬送され、カセット14に収容される。
【0037】
図2(A)は切削ユニット8を示す斜視図であり、
図2(B)は切削ユニット8を示す一部断面側面図である。なお、
図2(B)では、説明の便宜上、後述のブレードカバー42の図示を省略している。
【0038】
切削ユニット8は、筒状のハウジング30を備える。ハウジング30には、Y軸方向に沿って配置された円柱状のスピンドル32(
図2(B)参照)が収容されている。スピンドル32の先端部(一端側)は、ハウジング30から露出している。また、スピンドル32の基端部(他端側)には、スピンドル32を回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0039】
スピンドル32の先端部には、マウント部34(
図2(B)参照)が固定されている。マウント部34は、円盤状のフランジ部34aと、フランジ部34aの中央部から突出する円柱状の支持軸(ボス部)34bとを備える。マウント部34には、被加工物11を切削する環状の切削ブレード36が装着される。
【0040】
切削ブレード36としては、例えばハブタイプの切削ブレード(ハブブレード)が用いられる。ハブブレードは、金属等でなる環状の基台と、基台の外周縁に沿って形成された環状の切刃とが一体となって構成される。ハブブレードの切刃は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN:cubic Boron Nitride)等でなる砥粒がニッケルめっき層等の結合材によって固定された電鋳砥石によって構成される。
【0041】
ただし、切削ブレード36としてワッシャータイプの切削ブレード(ワッシャーブレード)を用いることもできる。ワッシャーブレードは、砥粒が金属、セラミックス、樹脂等でなる結合材によって固定された環状の切刃のみによって構成される。
【0042】
切削ブレード36の中央部には、切削ブレード36を厚さ方向に貫通する円柱状の開口が設けられている。そして、切削ブレード36は、開口に支持軸34bが挿入されるように、マウント部34に装着される。また、支持軸34bの先端部にはねじ溝(不図示)が形成されており、このねじ溝に切削ブレード36を固定するための固定ナット38が螺合される。
【0043】
切削ブレード36がマウント部34によって支持された状態で、固定ナット38を支持軸34bのねじ溝に締め付けると、切削ブレード36がフランジ部34aと固定ナット38とによって挟持され、マウント部34に装着される。また、固定ナット38を緩めて支持軸34bから取り外すことにより、切削ブレード36をマウント部34から取り外すことが可能となる。
【0044】
このようにして、切削ブレード36がマウント部34に着脱可能に装着される。そして、切削ブレード36は、回転駆動源からスピンドル32及びマウント部34を介して伝達される動力によって、Y軸方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
【0045】
ハウジング30の先端部には、板状の支持部材40が固定されている。そして、支持部材40の表面には、切削ブレード36を覆う箱型のブレードカバー42(
図2(A)参照)が装着されている。ブレードカバー42の一端部には、切削液を供給するチューブ(不図示)に接続される一対の第1接続部44が設けられている。また、ブレードカバー42の他端部には、切削液を供給するチューブ(不図示)に接続される第2接続部48及び第3接続部50が設けられている。
【0046】
一対の第1接続部44には、切削ブレード36の下端部を挟むように配置される一対のノズル(クーラーノズル)46が接続されている。一対のノズル46にはそれぞれ、切削ブレード36に向かって開口する供給口(不図示)が設けられている。第1接続部44に供給された切削液は、ノズル46に流入し、ノズル46の供給口から切削ブレード36の表面及び裏面に向かって供給される。
【0047】
第2接続部48には、ブレードカバー42の内部に設けられたノズル(シャワーノズル、不図示)が接続されている。シャワーノズルの先端は、切削ブレード36の外周縁に向かって開口している。第2接続部48に供給された切削液は、シャワーノズルに流入し、シャワーノズルの先端から切削ブレード36の外周縁に向かって供給される。
【0048】
第3接続部50には、下方に向かって開口する一対のノズル(スプレーノズル)52が接続されている。第3接続部50に供給された切削液は、ノズル52に流入し、ノズル52の先端からチャックテーブル10及び被加工物11(
図1参照)に向かって供給される。
【0049】
切削ブレード36を回転させ、チャックテーブル10(
図1参照)によって保持された被加工物11に切り込ませることにより、被加工物11が切削される。また、被加工物11の加工中は、ノズル46、シャワーノズル(不図示)、ノズル52から被加工物11及び切削ブレード36に切削液が供給される。これにより、被加工物11及び切削ブレード36が冷却されるとともに、被加工物11の切削によって生じた屑(切削屑)が洗い流される。
【0050】
また、ブレードカバー42の上部には、切削ユニット8に装着された切削ブレード36の先端部(刃先)の状態を監視する監視ユニット54が設けられている。
図2(B)に示すように、例えば監視ユニット54は、直方体状の枠体56を備える。枠体56の内側には、枠体56の下面側で開口する収容部56aが設けられている。そして、収容部56aには、光量を計測して切削ブレード36の先端部を検出する計測ユニット(検出ユニット)58が収容されている。
【0051】
計測ユニット58はナット部(不図示)を備え、このナット部には、Z軸方向に沿って配置されたボールねじ60が螺合されている。また、ボールねじ60の上端部にはパルスモータ62が連結されている。パルスモータ62によってボールねじ60を回転させると、計測ユニット58がZ軸方向に沿って移動(昇降)し、計測ユニット58の高さ位置が調節される。
【0052】
図3は、制御部20及び計測ユニット58を示すブロック図である。計測ユニット58は、光量を計測する光センサによって構成される。具体的には、計測ユニット58は、切削ブレード36の先端部を検出する検出部64を含む。検出部64は、直方体状の基部64aと、基部64aから下方に突出する投光部64b及び受光部64cとを備える。投光部64bと受光部64cとは、Y軸方向において離隔するように配置され、互いに対面している。また、投光部64bと受光部64cとの間の空間は、切削ブレード36の先端部が挿入される挿入部64dに相当する。
【0053】
投光部64bには、LED等の光源66が接続されている。光源66が発した光は、光ファイバー等を介して投光部64bに導かれ、投光部64bから受光部64cに向かって照射される。そして、投光部64bから照射された光は、受光部64cの受光面に到達し、受光部64cによって受光される。
【0054】
受光部64cには、受光部64cによって受光された光の量(受光量)に対応する信号を生成する光電変換部68が接続されている。光電変換部68は、受光部64cによって受光された光を電気信号(電圧)に変換する光電変換素子を備える。受光部64cによって受光された光は、光ファイバー等を介して光電変換部68に導かれ、光電変換部68によって電気信号に変換される。これにより、受光部64cの受光量に対応する信号が生成される。
【0055】
計測ユニット58は、切削ブレード36の先端部の状態を監視する。具体的には、切削ブレード36が切削ユニット8に装着されると、検出部64の高さ位置が調節され、切削ブレード36の先端部(上端部)が挿入部64dに挿入される。これにより、投光部64bと受光部64cとが切削ブレード36の先端部を挟むように配置される。このとき切削ブレード36は、投光部64bから受光部64cに向かって照射される光を遮光するように配置される。
【0056】
被加工物11(
図1参照)を加工する際は、切削ブレード36を回転させ、チャックテーブル10(
図1参照)によって保持された被加工物11に切り込ませる。なお、スピンドル32には、スピンドル32を回転させる回転駆動源70が連結されている。例えば回転駆動源70は、出力軸を含むモータと、モータを駆動する駆動回路とを備える。そして、モータの出力軸がスピンドル32に連結され、駆動回路によってモータの出力軸の回転数が制御される。これにより、被加工物11を切削する際におけるスピンドル32の回転数(切削ブレード36の回転数)が制御される。
【0057】
また、切削ブレード36による被加工物11の切削中は、投光部64bから受光部64cに向かって光が照射され、受光部64cの受光量が計測される。ここで、切削ブレード36の先端部で欠けや摩耗が生じていない場合には、投光部64bから照射された光が切削ブレード36の先端部によって遮光されるため、受光部64cの受光量は小さい。
【0058】
一方、切削ブレード36の先端部で欠け又は摩耗が生じ、切削ブレード36の欠け又は摩耗が生じた領域が投光部64bと受光部64cとの間に位置付けられると、投光部64bから照射された光が該領域を通過して受光部64cに到達し、受光部64cの受光量が増大する。また、切削ブレード36が偏心しており、切削ブレード36の回転中心から外周縁までの距離が一定でない場合には、受光部64cの受光量が一定に保たれずに増減する。
【0059】
そのため、受光部64cの受光量を計測して監視することにより、切削ブレード36の状態(欠け、摩耗、偏心の有無等)を判定できる。具体的には、受光部64cの受光量に対応する信号が光電変換部68によって生成され、制御部20に出力される。そして、制御部20は、計測ユニット58によって計測された受光量と、予め設定された受光量の基準値(閾値)とを比較することにより、受光量が正常値であるか異常値であるかを判定する。そして、受光量が異常値である場合には、切削ブレード36による被加工物11の切削が中断され、切削ブレード36の交換が行われる。
【0060】
さらに、本実施形態においては、計測ユニット58を用いてスピンドル32の回転数(切削ブレード36の回転数)が計測される。すなわち、計測ユニット58は、切削ブレード36の状態の監視だけでなくスピンドル32の回転数の計測にも用いられる。これにより、スピンドル32の回転数を計測するための計測器を計測ユニット58とは別途独立に設けることなく、スピンドル32の回転数を確認できる。
【0061】
スピンドル32の回転数を計測する際には、切削ユニット8に回転部材72が装着される。以下では一例として、切削ブレード36が回転部材72として用いられる場合について説明する(
図3参照)。ただし、回転部材72は切削ブレード36以外の部材であってもよい。例えば、ステンレス等の金属でなり切削ブレード36に対応する形状を有する円盤状の部材(検査用ブレード)を、回転部材72として用いることもできる。
【0062】
回転部材72の中央部には、回転部材72を厚さ方向に貫通する円柱状の開口が設けられている。なお、回転部材72の開口の直径は、マウント部34の支持軸34bの直径と概ね同一に設定される。そして、回転部材72は、開口に支持軸34bが挿入されるようにマウント部34に装着され、固定ナット38によってマウント部34に固定される。この状態でスピンドル32を回転させると、回転部材72がスピンドル32に連動してY軸方向に概ね平行な回転軸の周りを回転する。
【0063】
なお、回転部材72は、回転中心から外周縁までの距離が一定でない部材である。例えば回転部材72として、外周縁が真円でない部材(非真円部材)が用いられる。具体的には、切削ブレード36の外周部に欠けが形成されている場合や、切削ブレード36の外周部が不均一に摩耗している場合には、切削ブレード36の外周縁が非真円となり、切削ブレード36を非真円部材として用いることができる。
【0064】
また、回転部材72として、外周縁が真円ではあるものの外周縁の中心位置と回転中心(開口の中心)の位置とが一致していない部材(偏心部材)を用いることもできる。具体的には、切削ブレード36に欠けや摩耗が生じていなくても、切削ブレード36の開口と外周縁とが同心円状に配置されていない場合には、切削ブレード36は偏心した状態でマウント部34に装着され、回転する。この場合、切削ブレード36を偏心部材として用いることができる。
【0065】
回転部材72が切削ユニット8に装着された後、検出部64の高さ位置が調節され、回転部材72の先端部(上端部)が挿入部64dに挿入される。これにより、回転部材72の先端部が投光部64bと受光部64cとの間に位置付けられる。そして、投光部64bから受光部64cに向かって光が照射された状態で、スピンドル32が回転し、回転部材72がスピンドル32の回転軸を回転中心として回転する。
【0066】
回転部材72の回転中は、受光部64cの受光量が計測される。具体的には、受光部64cによって受光された光が光電変換部68に導かれ、受光量に対応する電気信号(電圧)に変換される。そして、光電変換部68によって生成された電気信号が制御部20に逐次入力される。
【0067】
図4(A)は、回転部材72(非真円部材)を回転させた際の受光量の推移を示すグラフである。例えば、回転部材72の先端部の1箇所に欠け(凹部)が形成されている場合、回転部材72の欠けた領域が投光部64bと受光部64cとの間に位置付けられると、投光部64bから照射された光が回転部材72の欠けた領域を通過して受光部64cに到達し、受光部64cの受光量が一時的に増大する。そのため、受光部64cの受光量を一定時間計測すると、
図4(A)に示すように所定の周期で受光量(電圧)のピークが表れる。このピークの周期T
1は、回転部材72が1回転する時間に相当する。
【0068】
図4(B)は、回転部材72(偏心部材)を回転させた際の受光量の推移を示すグラフである。回転部材72が偏心した状態で回転すると、回転部材72の上端の位置が連続的に変化する。そのため、受光部64cの受光量を一定時間計測すると、
図4(B)に示すように受光量(電圧)が周期的に変化する波形が得られる。この波形の周期T
2は、回転部材72が1回転する時間に相当する。
【0069】
従って、受光部64cの受光量を一定時間計測した後、受光量が所定の変化を示した回数をカウントすることにより、計測期間中におけるスピンドル32の回転数(回転部材72の回転数)を特定することができる。例えば
図4(A)においては、受光量のピークの数、すなわち、受光量が急増又は急減した回数をカウントすることにより、スピンドル32の回転数を特定できる。また、例えば
図4(B)においては、受光量が増加から減少に転じた回数(受光量が最大値となる回数)、又は、受光量が減少から増加に転じた回数(受光量が最小値となる回数)をカウントすることにより、スピンドル32の回転数を特定できる。
【0070】
スピンドル32の回転数は、光電変換部68によって生成された信号を制御部20で処理することによって算出できる。
図3に示すように、制御部20は処理部80と記憶部90とを含む。処理部80は、外部から入力された情報(信号、データ等)を処理するとともに、各種の情報(信号、データ等)を生成して外部に出力する。また、記憶部90は、処理部80における処理に用いられる情報(データ、プログラム等)を記憶する。
【0071】
具体的には、処理部80は、光電変換部68から出力された信号を受信する受信部82を含む。光電変換部68は、受光部64cが受光した光を電気信号(電圧)に変換し、電気信号を受信部82に逐次出力する。そして、受信部82は、光電変換部68から入力された電気信号を記憶部90に含まれる受光量記憶部92に書き込む。これにより、受光部64cの受光量に対応する電圧の推移が受光量記憶部92に記憶される。
【0072】
また、処理部80は、スピンドル32の回転数を算出する算出部84を含む。計測ユニット58による受光量の計測が所定の期間継続された後、算出部84は記憶部90にアクセスし、受光量記憶部92から受光量の推移情報(
図4(A)及び
図4(B)参照)を読み出す。そして、算出部84は、受光量の推移に基づいてスピンドル32の回転数を算出する。
【0073】
具体的には、算出部84は、所定の計測時間内において検出された受光量が所定の変化を示した回数をカウントする。例えば算出部84は、受光量記憶部92に蓄積された電圧値を順次読み出し、電圧のピークの数(電圧が急増又は急減した回数)、電圧が増加から減少に転じた回数、電圧が減少から増加に転じた回数等をカウントする。このカウント値が、所定の計測時間内におけるスピンドル32の回転数に相当する。
【0074】
算出部84によって算出されたスピンドル32の回転数は、制御信号生成部86に出力される。そして、制御信号生成部86は、算出されたスピンドル32の回転数を表示部16に表示させるための制御信号を生成し、表示部16に出力する。これにより、表示部16にスピンドル32の回転数の実測値が表示される。
【0075】
また、スピンドル32の回転数が許容範囲外(異常値)である場合には、制御信号生成部86は報知部18にエラーを発信させる制御信号を生成し、報知部18に出力する。その結果、報知部18が表示灯である場合には、表示灯が所定の色又はパターンで点灯する。また、報知部18がスピーカーである場合には、スピーカーから異常の発生を知らせる音又は音声が発信される。
【0076】
さらに、処理部80は、スピンドル32の回転数を補正する補正部88を含む。また、記憶部90は、スピンドル32の回転数の参照値(参照回転数)を記憶する参照回転数記憶部94を含む。例えば参照回転数記憶部94には、加工条件として入力された所望のスピンドル32の回転数、すなわち、スピンドル32の回転数の指定値(理想値)が記憶されている。
【0077】
補正部88には、算出部84によって算出されたスピンドル32の回転数(算出回転数)と、参照回転数記憶部94に記憶されている参照回転数とが入力される。そして、補正部88は、算出回転数と参照回転数とを比較した結果に基づいて、スピンドル32の回転数を補正する。
【0078】
具体的には、補正部88はまず、算出回転数と参照回転数との差分、すなわち、スピンドル32の回転数の指定値(理想値)と実測値との差(補正値)を算出する。そして、補正部88は、回転駆動源70に制御信号を出力し、スピンドル32の回転数が参照回転数に近づくように、スピンドル32の回転数を補正値分だけ増減させる。これにより、スピンドル32の回転数の誤差が低減される。
【0079】
次に、切削装置2に備えられたスピンドル32の回転数を計測するスピンドル回転数計測方法の具体例について説明する。
図5は、スピンドル32の回転数の計測手順を示すフローチャートである。以下では一例として、外周部に欠け(凹部)が形成された切削ブレード36が回転部材72(非真円部材)として用いられる場合について、主に
図3及び
図5を参照しつつ説明する。
【0080】
まず、回転部材72(切削ブレード36)を切削ユニット8のマウント部34に装着する(装着ステップ、ステップS1)。具体的には、外周部に欠けを有する切削ブレード36を、フランジ部34aと固定ナット38とで挟持することによってマウント部34に固定する。
【0081】
次に、回転部材72(切削ブレード36)の先端部を挿入部64dに挿入した状態で、投光部64bから受光部64cに向かって光を照射しつつスピンドル32を回転させ、受光部64cの受光量を計測する(計測ステップ、ステップS2)。計測ステップでは、まず、パルスモータ62(
図2(A)参照)をボールねじ60によって回転させ、切削ブレード36の先端部(上端部)が投光部64bと受光部64cとの間に位置付けられるように、検出部64の高さ位置を調節する。
【0082】
次に、投光部64bから受光部64cに向かって光を照射しつつ、スピンドル32を回転させることによって切削ブレード36を回転させる。そして、スピンドル32の回転中に受光部64cによって受光された光が、光電変換部68によって電気信号(電圧)に変換される。これにより、受光部64cの受光量が計測される。そして、計測された受光量が処理部80の受信部82に入力され、受光量記憶部92に書き込まれる。その結果、受光量記憶部92には受光量の推移情報(
図4(A)参照)が記憶される。
【0083】
次に、計測ステップにおいて計測された受光量の推移に基づいて、スピンドル32の回転数を算出する(算出ステップ、ステップS3)。算出ステップでは、受光量記憶部92に記憶された受光量の推移の情報が読み出され、算出部84に入力される。そして、算出部84は、例えば受光量のピークの数をカウントすることにより、スピンドル32の回転数を算出する。
【0084】
次に、予め設定されたスピンドル32の回転数の参照値(参照回転数)と、算出ステップにおいて算出されたスピンドル32の回転数(算出回転数)とを比較した結果に基づいて、スピンドル32の回転数を補正する(補正ステップ)。補正ステップでは、まず、補正部88が、算出部84から入力された算出回転数と参照回転数記憶部94から入力された参照回転数との差分(補正値)を算出し、算出回転数と参照回転数とが一致するか否かを判定する(ステップS4)。
【0085】
算出回転数と参照回転数とが一致する場合は(ステップS5でYES)、スピンドル32が所望の回転数で回転しているため、スピンドル32の回転数が維持される(ステップS6)。一方、算出回転数と参照回転数とが一致しない場合は(ステップS5でNO)、補正部88は回転駆動源70に制御信号を出力し、スピンドル32の回転数を補正値分だけ増減させる。これにより、スピンドル32の回転数が補正される(ステップS7)。
【0086】
上記のスピンドル回転数計測方法は、制御部20で切削装置2の各構成要素の動作を制御することによって実現される。具体的には、制御部20の記憶部90(メモリ)には、計測ステップ、算出ステップ、補正ステップを切削装置2に実行させるためのプログラムが記憶されている。このプログラムには、計測ステップ、算出ステップ、補正ステップを順に実行するために切削装置2の各構成要素に出力される制御信号を、制御部20に生成させる指令が含まれている。
【0087】
そして、スピンドル32の回転数を計測する際には、制御部20が記憶部90からプログラムを読み出して実行し、切削装置2の各構成要素に制御信号を出力する。これにより、計測ステップ、算出ステップ、補正ステップが自動で実施される。
【0088】
なお、切削装置2には、切削ユニット8のマウント部34に装着されている切削ブレード36を回転部材72に交換するブレード交換装置が搭載されていてもよい。この場合には、制御部20からブレード交換装置に出力される制御信号によって、ブレード交換装置の動作が制御される。そして、計測ステップ、算出ステップ、補正ステップと同様に、装着ステップもプログラムの実行によって自動で実施できる。
【0089】
以上の通り、本実施形態においては、切削ブレード36の先端部が挿入される挿入部64dと、挿入部64dを挟むように配置される投光部64b及び受光部64cとを有する計測ユニット58が、スピンドル32の回転数の算出に用いられる。これにより、切削ブレード36の状態の監視とスピンドル32の回転数の算出とを同一の計測ユニット58を用いて実施することが可能となり、切削ユニット8に専用の計測器を新たに搭載することなくスピンドル32の回転数を算出できる。
【0090】
なお、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0091】
11 被加工物
13 フレーム
15 テープ
2 切削装置
4 基台
6 カバー
6a 前面
8 切削ユニット
10 チャックテーブル(保持テーブル)
10a 保持面
12 カセット載置台
14 カセット
16 表示部(表示ユニット、表示装置)
18 報知部(報知ユニット、報知装置)
20 制御部(制御ユニット、制御装置)
30 ハウジング
32 スピンドル
34 マウント部
34a フランジ部
34b 支持軸(ボス部)
36 切削ブレード
38 固定ナット
40 支持部材
42 ブレードカバー
44 第1接続部
46 ノズル(クーラーノズル)
48 第2接続部
50 第3接続部
52 ノズル(スプレーノズル)
54 監視ユニット
56 枠体
56a 収容部
58 計測ユニット(検出ユニット)
60 ボールねじ
62 パルスモータ
64 検出部
64a 基部
64b 投光部
64c 受光部
64d 挿入部
66 光源
68 光電変換部
70 回転駆動源
72 回転部材
80 処理部
82 受信部
84 算出部
86 制御信号生成部
88 補正部
90 記憶部
92 受光量記憶部
94 参照回転数記憶部