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特開2022-153968荷電粒子ビーム描画方法及び荷電粒子ビーム描画装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153968
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム描画方法及び荷電粒子ビーム描画装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20221005BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H01L21/30 541D
G03F7/20 504
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056763
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】西村 慎祐
【テーマコード(参考)】
5F056
【Fターム(参考)】
5F056AA04
5F056BA08
5F056BB07
5F056CC04
(57)【要約】
【課題】ドリフト補正を高精度に行い、パターンの描画精度を向上させる。
【解決手段】荷電粒子ビーム描画方法は、描画領域を複数の区画に分割する工程と、前記複数の区画毎に描画照射量を求める工程と、前記複数の区画毎に、予め求められた前記描画照射量と反射荷電粒子量との関係に基づき、前記描画照射量により描画中に発生する反射荷電粒子量と同じ荷電粒子量が発生するように、ビーム位置測定時の位置測定照射量を設定する工程と、前記複数の区画毎に前記ステージ上に設けられたマークに荷電粒子ビームを照射して反射荷電粒子を検出し、設定された位置測定照射量で前記複数の区画の各々に対応するビーム照射位置を連続して測定して、前記区画毎にドリフト量を算出する工程と、前記ドリフト量に基づいて前記複数の区画毎に前記荷電粒子ビームの照射位置を補正しながら、前記描画データを用いて前記基板にパターンを描画する工程と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ上に載置された描画対象の基板に対し荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する荷電粒子ビーム描画方法であって、
前記基板の描画領域の描画データに基づき、前記描画領域を複数の区画に分割する工程と、
前記描画データから、前記複数の区画毎に描画照射量を求める工程と、
前記複数の区画毎に、予め求められた前記描画照射量と反射荷電粒子量との関係に基づき、前記描画照射量により描画中に発生する反射荷電粒子量と同じ荷電粒子量が発生するように、ビーム位置測定時の位置測定照射量を設定する工程と、
前記複数の区画毎に前記ステージ上に設けられたマークに荷電粒子ビームを照射して反射荷電粒子を検出し、設定された位置測定照射量で前記複数の区画の各々に対応するビーム照射位置を連続して測定して、前記区画毎にドリフト量を算出する工程と、
前記ドリフト量に基づいて前記複数の区画毎に前記荷電粒子ビームの照射位置を補正しながら、前記描画データを用いて前記基板にパターンを描画する工程と、
を備える荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項2】
前記複数の区画は、それぞれ、前記複数の区画毎の前記描画時間と、前記ビーム位置測定時の位置測定時間とが一致するように分割されることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項3】
ショット時間、ショット数、各区画に対応する前記マーク上のビーム位置測定箇所の数、ビーム位置測定回数、ビーム寸法、セトリング時間の少なくともいずれかを変動させることにより、前記位置測定時間を前記複数の区画毎の前記描画時間に、又は前記位置測定照射量を反射荷電粒子量に合わせることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項4】
所定のタイミングで前記基板へのパターンの描画を中断し、前記マークに前記荷電粒子ビームを照射し、反射荷電粒子を検出してビーム照射位置を検出し、
前記パターンの描画の再開後、検出した前記ビーム照射位置と、パターン描画中の区画に対応するビーム照射位置測定結果とに基づいて、前記ドリフト量を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項5】
ステージ上に載置された基板の描画領域の描画データを読み込み、前記描画データに基づき前記描画領域を複数の区画に分割し、前記描画データから、前記複数の区画毎に描画照射量を求め、前記複数の区画毎に、予め求められた前記描画照射量と反射荷電粒子量との関係に基づき、描画中に発生する反射荷電粒子量と同じ荷電粒子量が発生するように、ビーム照射位置測定時の位置測定照射量を設定する測定条件設定部と、
前記複数の区画毎に前記ステージ上に設けられたマークに荷電粒子ビームを照射して反射荷電粒子を検出し、設定された位置測定照射量で前記複数の区画の各々に対応するビーム照射位置を連続して測定して、前記ビーム位置変動データに基づいて前記荷電粒子ビームのドリフト量を算出するドリフト補正部と、
前記ドリフト量に基づいて前記荷電粒子ビームの照射位置を補正しながら、前記描画データを用いて前記基板にパターンを描画する描画部と、
を備える荷電粒子ビーム描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画方法及び荷電粒子ビーム描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、縮小投影型露光装置を用いて、石英上に形成された高精度の原画パターン(マスク、或いは特にステッパやスキャナで用いられるものはレチクルともいう。)をウェーハ上に縮小転写する手法が採用されている。高精度の原画パターンは、電子ビーム描画装置によって描画され、所謂、電子ビームリソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
電子ビーム描画装置では、様々な要因により、描画中に電子ビームの照射位置が時間経過と共にシフトするビームドリフトと呼ばれる現象が発生し得る。例えば、描画装置の偏向電極等の照射系にコンタミネーションが付着し、描画対象基板からの散乱電子によりコンタミネーションが帯電することで、ビームドリフトが発生する。このビームドリフトをキャンセルするため、ドリフト補正が行われる。
【0004】
従来のドリフト補正では、描画処理を一時停止し、ステージ上に配置された測定用マークを電子ビームで走査して電子ビームの照射位置の測定を行い、前回測定値からの差分をドリフト補正量とし、描画処理を再開していた。描画処理の再開後は、このドリフト補正量を用いてビーム照射位置を補正していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-274002号公報
【特許文献2】特開平3-053440号公報
【特許文献3】特開昭63-177516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のドリフト測定では、ビーム照射位置の測定結果が、描画で発生するビームドリフトと、測定による(二次電子を含む)反射電子の影響で発生するビームドリフトとが重畳したものとなり、測定誤差が発生し、ドリフト補正の精度向上の妨げとなっていた。
【0007】
本発明は、ドリフト補正を高精度に行い、パターンの描画精度を向上させることができる荷電粒子ビーム描画方法及び荷電粒子ビーム描画装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画方法は、ステージ上に載置された描画対象の基板に対し荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する荷電粒子ビーム描画方法であって、前記基板の描画領域の描画データに基づき、前記描画領域を複数の区画に分割する工程と、前記描画データから、前記複数の区画毎に描画照射量を求める工程と、前記複数の区画毎に、予め求められた前記描画照射量と反射荷電粒子量との関係に基づき、前記描画照射量により描画中に発生する反射荷電粒子量と同じ荷電粒子量が発生するように、ビーム位置測定時の位置測定照射量を設定する工程と、前記複数の区画毎に前記ステージ上に設けられたマークに荷電粒子ビームを照射して反射荷電粒子を検出し、設定された位置測定照射量で前記複数の区画の各々に対応するビーム照射位置を連続して測定して、前記区画毎にドリフト量を算出する工程と、前記ドリフト量に基づいて前記複数の区画毎に前記荷電粒子ビームの照射位置を補正しながら、前記描画データを用いて前記基板にパターンを描画する工程と、を備えるものである。
【0009】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画装置は、ステージ上に載置された基板の描画領域の描画データを読み込み、前記描画データに基づき前記描画領域を複数の区画に分割し、前記描画データから、前記複数の区画毎に描画照射量を求め、前記複数の区画毎に、予め求められた前記描画照射量と反射荷電粒子量との関係に基づき、描画中に発生する反射荷電粒子量と同じ荷電粒子量が発生するように、ビーム照射位置測定時の位置測定照射量を設定する測定条件設定部と、前記複数の区画毎に前記ステージ上に設けられたマークに荷電粒子ビームを照射して反射荷電粒子を検出し、設定された位置測定照射量で前記複数の区画の各々に対応するビーム照射位置を連続して測定して、前記ビーム位置変動データに基づいて前記荷電粒子ビームのドリフト量を算出するドリフト補正部と、前記ドリフト量に基づいて前記荷電粒子ビームの照射位置を補正しながら、前記描画データを用いて前記基板にパターンを描画する描画部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ドリフト補正を高精度に行い、パターンの描画精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態による電子ビーム描画装置の概略図である。
図2】電子ビームの可変成形を説明する図である。
図3】ビーム照射位置の変動を推測する方法を説明するフローチャートである。
図4】ビーム位置測定条件の例を示す図である。
図5】マークスキャンの例を示す図である。
図6】ビーム照射位置の測定結果の例を示す図である。
図7】描画方法を説明するフローチャートである。
図8】ビーム照射位置の補間例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは電子ビームに限るものでなく、イオンビーム等でもよい。
【0013】
図1は本発明の実施形態に係る電子ビーム描画装置の概略図である。図1に示す描画装置1は、描画対象の基板56に電子ビームを照射して所望のパターンを描画する描画部30と、描画部30の動作を制御する制御部10とを備えた可変成形型の描画装置である。
【0014】
描画部30は、電子鏡筒32及び描画室34を有している。電子鏡筒32内には、電子銃40、ブランキングアパーチャ基板41、第1成形アパーチャ基板42、第2成形アパーチャ基板43、ブランキング偏向器44、成形偏向器45、対物偏向器46、照明レンズ47、投影レンズ48、及び対物レンズ49が配置されている。
【0015】
描画室34内には、移動可能に配置されたステージ50が配置される。ステージ50は、水平面内で互いに直交するX方向及びY方向に移動する。ステージ50上には、基板56が載置される。基板56は、例えば、半導体装置を製造する際の露光用マスク、マスクブランクス、半導体装置が製造される半導体基板(シリコンウェハ)等である。
【0016】
ステージ50上には、水平面内でのステージ50の位置を測定するためのミラー51が設けられている。また、ステージ50上には、電子ビームBのドリフト量を測定する際に使用されるマークMが設けられている。例えば、マークMはシリコン基板上に形成され、タンタルやタングステン等の重金属で構成されたマークである。マークの形状は特に限定されないが、例えば、図5に示すような十字マークJが形成される。
【0017】
ステージ50の上方には、マークMを電子ビームBで照射した際に、マークにより反射された反射電子を電流値として検出する検出器52が設けられている。ここで、反射電子は反射荷電粒子の一例であり、二次電子を含むものである。検出された電流値は、後述する制御計算機11に送信される。
【0018】
制御部10は、制御計算機11、ステージ位置測定部18、記憶装置20,22,24等を有している。制御計算機11は、ショットデータ生成部12、描画制御部13、測定条件設定部14、照射位置検出部15及びドリフト補正部16を有する。制御計算機11の各部の入出力データや演算中のデータはメモリ(図示略)に適宜格納される。
【0019】
制御計算機11の各部は、ハードウェアで構成してもよく、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、少なくとも一部の機能を実現するプログラムをCD-ROM等の記録媒体に収納し、電気回路を有するコンピュータに読み込ませて実行させてもよい。
【0020】
ステージ位置測定部18は、ステージ50上に固定されたミラー51にレーザ光を入反射させてステージ50の位置を測定するレーザ測長器を含む。ステージ位置測定部18は、測定したステージ位置を制御計算機11に通知する。
【0021】
記憶装置20は、設計上の図形パターンが配置されたレイアウトデータを描画装置1に入力可能なフォーマットに変換した描画データを格納する。描画データは、基板56の描画領域に描画される図形パターンが定義されたものである。
【0022】
ショットデータ生成部12が記憶装置20から描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を行って装置固有のショットデータを生成する。ショットデータには、例えば、図形種、図形サイズ、照射位置、照射時間等が定義される。描画制御部13は、ショットデータに基づき、描画部30を制御して描画処理を行う。
【0023】
照射位置検出部15は、検出器52で検出された電流値に基づくビームプロファイルと、ステージ位置測定部18が測定したステージ位置(マーク位置)とを用いて、ビーム照射位置を検出する。
【0024】
ドリフト補正部16は、照射位置検出部15が検出したビーム照射位置と基準照射位置との差分からドリフト量を算出し、ドリフト量をキャンセルするドリフト補正量を求める。ドリフト量の算出方法は後述する。ドリフト補正部16は、ドリフト補正量に基づいて、電子ビームBの偏向量(ビーム照射位置)の補正情報を生成し、描画制御部13に与える。描画制御部13は、この補正情報を用いて描画部30を制御し、ビーム照射位置を補正する。
【0025】
図1では、実施の形態を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置1は、その他の構成を備えていても構わない。
【0026】
電子鏡筒32内に設けられた電子銃40から放出された電子ビームBは、ブランキング偏向器44内を通過する際に、ブランキング偏向器44によって、ビームオンの状態ではブランキングアパーチャ基板41を通過し、ビームオフの状態では、ビーム全体がブランキングアパーチャ基板41で遮蔽されるように偏向される。ビームオフの状態からビームオンとなり、その後ビームオフになるまでにブランキングアパーチャ基板41を通過した電子ビームBが1回の電子ビームのショットとなる。
【0027】
ブランキング偏向器44とブランキングアパーチャ基板41を通過することによって生成された各ショットの電子ビームBは、照明レンズ47により、矩形の開口42a(図2参照)を有する第1成形アパーチャ基板42に照射される。第1成形アパーチャ基板42の開口42aを通過することで、電子ビームBは矩形に成形される。
【0028】
第1成形アパーチャ基板42を通過した第1アパーチャ像の電子ビームは、投影レンズ48により第2成形アパーチャ基板43上に投影される。第2成形アパーチャ基板43上での第1アパーチャ像の位置は、成形偏向器45によって制御される。これにより、第2成形アパーチャ基板43の開口43aを通過する電子ビームの形状と寸法を変化させる(可変成形を行う)ことができる。
【0029】
第2成形アパーチャ基板43を通過した電子ビームは、対物レンズ49により焦点が合わされ、対物偏向器46により偏向されて、XYステージ50上に載置された描画対象の基板56の所望する位置に照射される。このとき、第2成形アパーチャ基板43の開口43aを通過する電子ビームの寸法を変化させることで、基板56(又はマークM)に照射される電子ビームのビーム電流量を変えることができる。また、電子銃40のエミッション電流や照明レンズ47の設定を変動させることにより、ビーム電流密度を変えて、ビーム電流量を変えてもよい。
【0030】
描画装置1では、対物偏向器46等の電極に付着したコンタミネーションの帯電等によりビームドリフトが発生するため、ドリフト補正を行う必要がある。ドリフト補正では、マークMを電子ビームBで走査してビーム照射位置を検出し、基準位置からのずれ量をドリフト量として算出する。
【0031】
算出されるドリフト量は、描画時のドリフト成分と、マークからの反射電子(二次電子含む)に起因するビーム照射位置検出時のドリフト成分とを含むため、測定誤差が発生する。そこで、本実施形態では、描画処理(実描画)前に、実描画中に発生する反射電子量を模擬した条件でビーム位置測定を連続して行い、実描画中のビームドリフト(ビーム照射位置の変動)を推測する。そして、実描画中は、所定の時間間隔でビーム照射位置を測定し、ビーム照射位置を測定してから、次回の測定までの間は、事前に推測したビーム照射位置変動を参照してドリフト量を求める。
【0032】
実描画中のビーム照射位置の変動を推測する方法を、図3に示すフローチャートに沿って説明する。
【0033】
記憶装置20から描画データを読み出し、描画対象の基板56の描画領域を、対物偏向器46で偏向可能な幅で、x方向に延びる短冊状の複数のストライプ領域に仮想分割する(ステップS1)。そして、描画データに定義された図形パターンを各ストライプ領域に割り当てる。ストライプ分割及び図形パターンの割り当ては、ショットデータ生成部12が行ってもよいし、測定条件設定部14が行ってもよい。
【0034】
測定条件設定部14が、各ストライプを複数の区画に分割する(ステップS2)。測定条件設定部14は、ストライプに割り当てられている図形パターンの位置や面積密度に基づいて、1本のストライプを複数の区画に分割する。例えば、1本のストライプを長手方向に多数の微小領域に分割し、各微小領域の面積密度を求め、面積密度が同程度となる隣り合う微小領域を一纏めにして、1つの区画とする。例えば、図4に示すように、1本のストライプが10個の区画#1~#10に分割される。
【0035】
測定条件設定部14が、各区画の描画処理(実描画)を模擬するビーム位置測定条件を設定する(ステップS3)。図4に示すように、ビーム位置測定条件は、ビーム位置の測定に要する時間である位置測定時間や、ビーム位置測定時のビーム照射量である位置測定照射量を含む。
【0036】
各区画の描画に要する時間が、各区画の位置測定時間と一致するように、区画の分割を行ってもよい。ここで、「一致」とは、完全に一致する必要はなく、要求される測定精度に基づき誤差が許容される。
【0037】
位置測定照射量は、ビーム位置測定時(マーク走査時)の反射電子量と、実描画時の反射電子量とが同じになるように設定される。例えば、描画対象の基板56の入射電子の反射率が、マークMにおける入射電子の反射率の50%である場合、位置測定照射量を描画時照射量の50%とする。なお、「同じ」とは、厳密に反射電子量を等しくする必要はなく、要求される測定精度に基づき誤差が許容される。
【0038】
描画時照射量は、ショットデータ生成部12が生成するショットデータのうち、当該区画のショットデータから求めることができる。基板56やマークの反射率を示す反射率データが記憶装置22に格納されている。測定条件設定部14は、記憶装置22から反射率データを読み出し、描画時照射量と反射率とから、反射電子量が同じになる位置測定照射量を算出する。図4の例では、基板56の反射率とマークの反射率とを同等とし、描画時照射量=位置測定照射量としている。
【0039】
また、ビーム位置測定条件は、ショット時間、ショット数、各区画に対応する、マーク上のビーム位置測定箇所の数を示す「ライン数」や、ビーム位置測定回数を示す「加算数」といったパラメータを含む。加算数の数だけビーム位置を測定し、測定結果の平均値をビーム位置とする。例えば、図5に示す十字マークJの中心から上下左右に延びる直線部L1~L4に2ヶ所ずつビーム位置測定箇所を設定する場合、ライン数は8となる。ここで、加算数を64とした場合、8ヶ所のビーム位置測定箇所でビーム位置を8回ずつ測定し、64個の測定結果の平均値をビーム位置とする。これらのパラメータにより、位置測定照射量と位置測定時間を描画と合せることができる。そのほか、上述したようにビーム寸法の変動により位置測定照射量を、位置測定時のビーム照射時のセトリング時間の変動により位置測定時間をそれぞれ合わせることができる。
【0040】
ステップS3で設定した区画毎の測定条件で、マークを電子ビームBでスキャンし、照射位置検出部15が、ビーム照射位置を測定・検出する(ステップS4)。例えば、図4の例では、区画#1に対応するビーム位置測定は、第1照射量で第1時間かけて、ライン数に基づく箇所、加算数に基づく回数のマークスキャンを行い、ビーム位置を測定する。区画#2に対応するビーム位置測定は、第2照射量で第2時間かけて、ライン数に基づく箇所、加算数に基づく回数のマークスキャンを行い、ビーム照射位置を測定する。このようなビーム照射位置測定を、全てのストライプ、全ての区画について、連続して順(実描画と同じ順)に行う。
【0041】
例えば、図4の区画#1~#10に対応するビーム照射位置の測定結果は図6のようになる。
【0042】
このように、実描画と同じ時間をかけて、反射電子量が実描画と同じになるような照射量でマークをスキャンし、各区画に対応するビーム照射位置を求める。求めたビーム照射位置を、ストライプ順、区画順に並べて、実描画時のビーム照射位置の変動を推測したビーム位置変動データを生成する。ビーム位置変動データは記憶装置24に格納される。
【0043】
次に、ビーム位置変動データを使用してドリフト補正を行いながらパターンを描画する方法を、図7に示すフローチャートに沿って説明する。
【0044】
描画制御部13が、ショットデータに基づき、描画部30を制御してパターンの描画処理を行う(ステップS11)。所定のドリフト測定のタイミングになると(ステップS12_Yes、ステップS13_Yes)、描画処理を中断し、電子ビームBによりマークを走査して、ビーム照射位置を検出する(ステップS14)。具体的には、ステージ50を移動させ、マークを対物レンズ49の中心位置に合わせ、所定のビーム電流とした電子ビームBによりマークを走査し、検出器52が反射電子(二次電子含む)を検出する。照射位置検出部15が、検出器52の検出結果からビームプロファイルを測定して、マーク表面でのビーム照射位置を検出する。
【0045】
ドリフト補正部16が、検出されたビーム照射位置と、基準位置とのずれ量を、マーク表面でのドリフト量として算出する。描画制御部13は、描画処理を再開し、算出されたドリフト量に基づいて、ビーム照射位置を補正してパターンを描画する。
【0046】
描画を中断してビーム照射位置を測定する処理は一定の時間間隔で行われる。例えば、所定数のストライプ領域を描画する毎に、描画を中断してビーム照射位置を測定する。パターン描画を行っている間は、ビーム照射位置を測定できないため、その間のビーム照射位置を、ビーム位置変動データで補間する。
【0047】
ドリフト補正部16は、記憶装置24からビーム位置変動データを読み出し、ステップS14で検出したビーム照射位置を基点に、その後のビーム照射位置の変動を推測する。ドリフト補正部16は、ビーム照射位置の推測値と、基準位置とのずれ量からドリフト量を求める。描画制御部13は、求められたドリフト量に基づいて、ビーム照射位置を補正しながら描画処理を行う(ステップS15)。
【0048】
例えば、図8に示すように、ストライプ番号132のストライプ領域の描画後、ストライプ番号133のストライプ領域の描画前に描画処理を中断し、ビーム照射位置を測定する場合を考える。描画処理の再開後、ビーム位置変動データを参照し、ストライプ番号133のストライプ領域を描画している間のビーム照射位置の変動を推測する。そして、推測したビーム照射位置からドリフト量を求め、ビーム照射位置を補正してパターンを描画する。
【0049】
ビーム位置変動データに定義されている各区画のビーム照射位置は、この区画に実際にパターンを描画する際の描画時間及び反射電子量を模擬する条件で測定したものである。そのため、パターンを描画している間のビーム照射位置の変動を精度良く推測し、パターンを高精度に描画できる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 描画装置
10 制御部
11 制御計算機
12 ショットデータ生成部
13 描画制御部
14 測定条件設定部
15 照射位置検出部
16 ドリフト補正部
20,22,24 記憶装置
30 描画部
32 電子鏡筒
34 描画室
40 電子銃
41 ブランキングアパーチャ基板
42 第1成形アパーチャ基板
43 第2成形アパーチャ基板
44 ブランキング偏向器
45 成形偏向器
46 対物偏向器
47 照明レンズ
48 投影レンズ
49 対物レンズ
50 ステージ
52 検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8