(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154003
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】二酸化炭素分離用組成物、及び当該組成物を用いた二酸化炭素の分離方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/22 20060101AFI20221005BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20221005BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20221005BHJP
C07C 215/14 20060101ALI20221005BHJP
C07D 295/088 20060101ALN20221005BHJP
C07D 487/08 20060101ALN20221005BHJP
【FI】
B01J20/22 A
B01D53/14 100
C01B32/50
C07C215/14
C07D295/088
C07D487/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056813
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤原 裕志
(72)【発明者】
【氏名】迫田 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 学
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮太郎
(72)【発明者】
【氏名】木曾 浩之
【テーマコード(参考)】
4C050
4D020
4G066
4G146
4H006
【Fターム(参考)】
4C050AA03
4C050BB08
4C050CC08
4C050EE02
4C050FF02
4C050GG01
4C050HH01
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB01
4D020BB07
4D020BC01
4D020BC02
4D020CA05
4D020DA03
4D020DB07
4G066AA05C
4G066AA12C
4G066AA16C
4G066AA20C
4G066AA22C
4G066AA23C
4G066AA30C
4G066AA50C
4G066AA70C
4G066AB06B
4G066AB10B
4G066AB12B
4G066AB13B
4G066BA20
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA01
4G066FA37
4G066GA01
4G146JA02
4G146JB04
4G146JC08
4G146JC28
4G146JC30
4G146JD03
4H006AA03
4H006AB80
4H006BN10
4H006BU32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】二酸化炭素の吸収量や放散効率に優れ、耐久性に優れた二酸化炭素分離用組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式で表されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のアミン化合物と担体を含む組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
[上記式中、R
1及びR
2は、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基
を表す。nは、0又は1を表す。]
で表されるアミン化合物、及び下記一般式(3)
【化2】
[上記式中、R
9は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~4のアミノアルキル基、又は炭素数1~4のヒドロキシアルキル基を表す。R
10及びR
11は、各々独立して、炭素数1~4のアルキレンを表す。]
で表されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のアミン化合物(A)と担体を含む組成物であって、前記アミン化合物(A)が前記担体に担持されていることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記の担体が、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、活性炭、マグネシア、チタニア、ジルコニア、セリア、珪藻土、ヒドロキシアパタイト、多孔性ガラス、多孔性樹脂、及び繊維からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記の担体が、シリカ、アルミナ、活性炭、又はアルミノシリケートであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記の一般式(1)において、R1及びR2が、水素原子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記の一般式(3)において、R9が水素原子であり、R10及びR11が、各々独立して、エチル基、又はn-プロピル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アミン化合物(A)と前記担体に加えて、更に下記一般式(2)
【化3】
[上記式中、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。R
8は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基を表す。]
で表されるアミン化合物を含み、当該アミン化合物も前記担体に担持されていることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
一般式(2)において、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が、水素原子であり、aが0であり、bが1である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記の組成物に対する全アミン化合物の担持量が、前記の組成物 100重量部に対して、20重量部を超え、70重量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
二酸化炭素を含むガスを、上記請求項1乃至8のいずれかに記載の組成物に接触させて、該混合ガス中の二酸化炭素を前記の組成物に吸収させる工程を含むことを特徴とする二酸化炭素の分離方法。
【請求項10】
上記請求項1乃至8のいずれかに記載の組成物からなる二酸化炭素分離材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素含有混合ガスからの二酸化炭素を選択的に分離するための二酸化炭素分離用組成物、及び当該組成物を用いた二酸化炭素の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題のため、二酸化炭素の分離・回収が注目されており、二酸化炭素分離化合物の開発が盛んに行われている。二酸化炭素の分離方法は化学吸収法と物理吸収法に分類され、化学吸収法には回収した二酸化炭素が高純度で得られる利点がある。
【0003】
化学吸収法の二酸化炭素分離化合物としては、アミンの水溶液が一般的に知られている。当該化学吸収法は、低温で吸収した二酸化炭素を、高温にして二酸化炭素を脱離させ回収する方法であるが、高温にする際に水溶液を加熱するため、水の高い潜熱、比熱が影響して、二酸化炭素の回収に多くのエネルギーが必要になる。
【0004】
このため、水の加熱が不要で、二酸化炭素回収エネルギーを低く抑えられる固体型二酸化炭素分離材の開発が近年行われている。例えば、モノエタノールアミンを支持体に担持した二酸化炭素分離材(特許文献1)、テトラエチレンペンタミンなどのポリアミンをシリカゲルに担持した二酸化炭素吸着剤(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2011/013332
【特許文献2】特開2017-164656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来公知のアミンを担体に担持した固体型二酸化炭素分離材は、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)が十分でなく、また、繰り返し使用や、酸素や窒素酸化物の存在下で、徐々に性能が低下していくという課題があった。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)に優れ、かつ、寿命に優れた二酸化炭素分離用組成物、並びに二酸化炭素の分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定のアミン化合物を担体に担持した組成物が、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)に優れ、かつ、寿命に優れることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下に示すとおりの組成物、及び当該組成物を用いた二酸化炭素の分離方法である。
[1]
下記一般式(1)
【0010】
【0011】
[上記式中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基
を表す。nは、0又は1を表す。]
で表されるアミン化合物、及び下記一般式(3)
【0012】
【0013】
[上記式中、R9は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~4のアミノアルキル基、又は炭素数1~4のヒドロキシアルキル基を表す。R10及びR11は、各々独立して、炭素数1~4のアルキレンを表す。]
で表されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のアミン化合物(A)と担体を含む組成物であって、前記アミン化合物(A)が前記担体に担持されていることを特徴とする、組成物。
[2]
前記の担体が、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、活性炭、マグネシア、チタニア、ジルコニア、セリア、珪藻土、ヒドロキシアパタイト、多孔性ガラス、多孔性樹脂、及び繊維からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする[1]に記載の組成物。
[3]
前記の担体が、シリカ、アルミナ、活性炭、又はアルミノシリケートであることを特徴とする[1]に記載の組成物。
[4]
前記の一般式(1)において、R1及びR2が、水素原子である、[1]に記載の組成物。
[5]
前記の一般式(3)において、R9が水素原子であり、R10及びR11が、各々独立して、エチル基、又はn-プロピル基である、[1]に記載の組成物。
[6]
前記アミン化合物(A)と前記担体に加えて、更に下記一般式(2)
【0014】
【0015】
[上記式中、R3、R4、R5、R6及びR7は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。R8は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基を表す。]
で表されるアミン化合物を含み、当該アミン化合物も前記担体に担持されていることを特徴とする、[1]に記載の組成物。
[7]
一般式(2)において、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が、水素原子であり、aが0であり、bが1である、[6]に記載の組成物。
[8]
前記の組成物に対する全アミン化合物の担持量が、前記の組成物 100重量部に対して、20重量部を超え、70重量部以下であることを特徴とする[1]に記載の組成物。
[9]
二酸化炭素を含むガスを、上記[1]乃至[8]のいずれかに記載の組成物に接触させて、該混合ガス中の二酸化炭素を前記組成物に吸収させる工程を含むことを特徴とする二酸化炭素の分離方法。
[10]
上記[1]乃至[8]のいずれかに記載の組成物からなる二酸化炭素分離材。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の二酸化炭素分離用組成物は、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)に優れるため、低エネルギーで効率的な二酸化炭素ガスの回収分離が可能となり、環境負荷影響を低減できる効果を奏する。また、寿命に優れているため、火力発電所やセメント工場などから排出される実排ガスにも適用可能であり、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願発明を詳細に説明する。
【0018】
まず、本発明の二酸化炭素分離用の組成物について説明する。
【0019】
本発明の二酸化炭素分離用の組成物は、上記一般式(1)で示されるアミン化合物、及び上記一般式(3)で示されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のアミン化合物(A)と担体を含む組成物であって、前記アミン化合物(A)が前記担体に担持されていることを特徴とする。
【0020】
本発明において上記一般式(1)で示されるアミン化合物、及び上記一般式(3)で示されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のアミン化合物(A)が担体に担持された組成物は、二酸化炭素を吸着、脱着する役割を担う。
【0021】
本発明は、前記の一般式(1)で示されるアミン化合物、及び前記の一般式(3)で示されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のアミン化合物(A)が担体に担持された組成物であることを特徴とする組成物であるが、当該組成物については、担体に担持されるアミン化合物としては、前記の一般式(1)で示されるアミン化合物のみであってもよいし、一般式(3)で示されるアミン化合物のみであってもよいし、一般式(1)で示されるアミン化合物と一般式(3)で示されるアミン化合物の混合物であってもよい。ただし、本発明の組成物については、二酸化炭素分離性能に優れる点で、担体に担持されるアミン化合物としては、前記の一般式(1)で示されるアミン化合物(A)であることが好ましい。
【0022】
本発明において、上記一般式(1)におけるR1又はR2は、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0023】
上記の炭素数1~4のアルキル基については、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、又はターシャリーブチル基等を例示することができる。
【0024】
前記のR1又はR2については、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)に優れる点で、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又はn-ブチル基であることが好ましく、各々独立して、水素原子、又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0025】
上記一般式(1)において、nは、0又は1を表す。
【0026】
前記のnについては、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)に優れる点で、1であることが好ましい。
【0027】
本発明において、上記一般式(1)で示されるアミン化合物としては、具体例としては、例えば、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン(R1=R2=水素原子、n=1)、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-ピペラジン(R1=水素原子、R2=メチル基、n=1)、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-ピペラジン(R1=メチル基、R2=メチル基、n=1)、1-(2-ヒドロキシ-3-エトキシプロピル)-ピペラジン(R1=水素原子、R2=エチル基、n=1)、又は1-(2,3-ジエトキシプロピル)-ピペラジン(R1=R2=エチル基、n=1)、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン(R2=水素原子、n=0)、1-(2-メトキシエチル)ピペラジン(R2=メチル基、n=0)、1-(2-エトキシエチル)ピペラジン(R2=エチル基、n=0)、又は1-(2-ブトキシエチル)ピペラジン(R2=ブチル基、n=0)等を挙げることができる。
【0028】
上記一般式(1)で示されるアミン化合物については、入手容易性の観点から、R1及びR2が、水素原子であるものが好ましく、下記式(5)
【0029】
【0030】
で示されるアミン化合物、すなわち、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン(上記の一般式(1)において、R1=R2=水素原子、n=1、以下、DHPPとも称す)、又は、下記式(6)
【0031】
【0032】
で示されるアミン化合物、すなわち、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン(上記の一般式(1)において、R2=水素原子、n=0、以下、HEPとも称す)であることがより好ましい。
【0033】
本発明において、上記一般式(1)で示されるアミン化合物は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。また、上記一般式(1)で示されるアミン化合物の純度としては、特に限定するものではないが、95重量%以上が好ましく、99重量%以上が特に好ましい。
【0034】
なお、上記の1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジンについては、ピペラジンと2,3-ジヒドロキシクロロプロパンを反応させることによって製造することができる。
【0035】
本発明において、上記一般式(3)におけるR9は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~4のアミノアルキル基、又は炭素数1~4のヒドロキシアルキル基を表す。R10及びR11は、各々独立して、炭素数1~4のアルキレンを表す。
【0036】
上記の炭素数1~4のアルキル基については、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、又はターシャリーブチル基等を例示することができる。上記の炭素数3~4のアミノアルキル基については、特に限定するものではないが、例えば、3-アミノプロピル基、又は4-アミノブチル基等を例示することができる。上記の炭素数1~4のヒドロキシアルキル基については、特に限定するものではないが、例えば、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、又は4-ヒドロキシブチル基等を例示することができる。
【0037】
上記の炭素数1~4のアルキレンについては、特に限定するものではないが、例えば、1,2-エチレン、1,3-プロピレン、1,2-プロピレン、又は1,4-ブチレン等を例示することができる。
【0038】
前記のR9については、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)に優れる点で、水素原子、メチル基、エチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、又は3-アミノプロピル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0039】
前記のR10及びR11については、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)に優れる点で、各々独立して、1,2-エチレン、又は1,3-プロピレンであることが好ましく、1,2-エチレンであることがより好ましい。
【0040】
本発明において、上記一般式(3)で示されるアミン化合物としては、具体例としては、例えば、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール(R9=水素原子、R10=R11=1,2-エチレン)、N-(3-アミノプロピル)-2-アミノエタノール(R9=水素原子、R10=1,2-エチレン、R11=1,3-プロピレン)、N-(2-アミノプロピル)-2-アミノエタノール(R9=水素原子、R10=1,2-エチレン、R11=1,2-プロピレン)、N-(4-アミノブチル)-2-アミノエタノール(R9=水素原子、R10=1,2-エチレン、R11=1,4-ブチレン)、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロパノール(R9=水素原子、R10=1,3-プロピレン、R11=1,2-エチレン)、N-(3-アミノプロピル)-3-アミノプロパノール(R9=水素原子、R10=R11=1,3-プロピレン)、N-(2-アミノプロピル)-3-アミノプロパノール(R9=水素原子、R10=1,3-プロピレン、R11=1,2-プロピレン)、N-(4-アミノブチル)-3-アミノプロパノール(R9=水素原子、R10=1,3-プロピレン、R11=1,4-ブチレン)、N-(2-アミノエチル)-4-アミノブタノール(R9=水素原子、R10=1,4-ブチレン、R11=1,2-エチレン)、N-(3-アミノプロピル)-4-アミノブタノール(R9=水素原子、R10=1,4-ブチレン、R11=1,3-プロピレン)、N-(2-アミノプロピル)-4-アミノブタノール(R9=水素原子、R10=1,4-ブチレン、R11=1,2-プロピレン)、又はN-(4-アミノブチル)-4-アミノブタノール(R9=水素原子、R10=R11=1,4-ブチレン)等を挙げることができる。
【0041】
上記一般式(3)で示されるアミン化合物については、入手容易性の観点から、R9が水素原子であり、R10及びR11が、各々独立して、エチル基、又はn-プロピル基であるものが好ましく、下記式
【0042】
【0043】
で示されるアミン化合物、すなわち、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール(上記の一般式(3)において、R9=水素原子、R10=R11=1,2-エチレン、以下、AEEAとも称す。)、及びN-(3-アミノプロピル)-2-アミノエタノール(上記の一般式(3)において、R9=水素原子、R10=1,2-エチレン、R11=1,3-プロピレン、以下、APEAとも称す。)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物であることがより好ましい。
【0044】
本発明において、上記一般式(3)で示されるアミン化合物は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。また、上記一般式(3)で示されるアミン化合物の純度としては、特に限定するものではないが、95重量%以上が好ましく、99重量%以上が特に好ましい。
【0045】
本発明における担体としては、特に限定するものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、活性炭、マグネシア、チタニア、ジルコニア、セリア、珪藻土、ヒドロキシアパタイト、多孔性ガラス、多孔性樹脂、及び繊維からなる群より選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。これらのうち、好ましくは、シリカ、アルミナ、活性炭、又はアルミノシリケートである。また、これらの担体については、1種に限定して用いることもできるし、担体を2種以上組み合わせても良く、2種以上を組み合わせる場合は、その種類及び比率は任意に変更することができる。
【0046】
上記のシリカについては、特に限定するものではないが、例えば、シリカゲル、石英ガラス、コロイダルシリカ、メソポーラスシリカ、又はフュームドシリカ等を例示することができる。
【0047】
上記のアルミノシリケートについては、特に限定するものではないが、例えば、天然ゼオライト、又は合成ゼオライト等を挙げることができる。
【0048】
上記の多孔性樹脂については、特に限定するものではないが、例えば、多孔質ポリエチレン、多孔質ポリプロピレン、多孔質ポリメチルメタアクリレート、又は多孔質フッ素樹脂等を挙げることができる。
【0049】
担体の原材料、合成法、表面積、細孔径等は従来公知のものを使用することができる。また、担体の形状としては、特に限定するものではないが、例えば、球状(球状粒子等)、粒状、繊維状、顆粒状、モノリスカラム、中空糸、又は膜状(平膜等)等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、球状、膜状、粒状、又は繊維状である。
【0050】
本発明の組成物については、上記のアミン化合物(A)及び上記の担体に加えて、更にアミン化合物(A)とは異なるアミン化合物を含有していてもよい。なお、当該アミン化合物(A)とは異なるアミン化合物については、上記のアミン化合物(A)と同じように上記の担体に担持されていることが好ましい。すなわち、本発明の組成物が、上記のアミン化合物(A)と上記のアミン化合物(A)とは異なるアミン化合物の両方を含有する場合は、上記のアミン化合物(A)と上記のアミン化合物(A)とは異なるアミン化合物の混合物が担体に担持されていることが好ましい。
【0051】
前記のアミン化合物(A)とは異なるアミン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、上記の一般式(2)で表されるアミン化合物、又はアルカノールアミン類、プロピレンジアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、モルホリン類、ピロリジン類、アゼパン類、及びポリエチレンポリアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物(B)(ただし、上記のアミン化合物(A)を含まない)を挙げることができる。当該一般式(2)で表されるアミン化合物、及び/又はアミン化合物(B)を共存させることで、二酸化炭素分離用組成物の単位重量当たりのN原子含有量を増やすことができる場合があり、二酸化炭素分離用組成物の単位重量当たりの二酸化炭素吸収量を増やせる可能性がある点で、工業的に有利である場合がある。
【0052】
上記一般式(2)におけるR3、R4、R5、R6、及びR7は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。
【0053】
本発明において、上記一般式(2)における、R3、R4、R5、R6、及びR7は、上記の定義に該当すればよく、特に限定するものではないが、各々独立して、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、又はsec-ブトキシ基を挙げることができる。これらのうち、二酸化炭素の放散効率に優れる点で、好ましくは、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-ブチル基、ヒドロキシメチル基、又はメトキシ基である。
【0054】
また、上記一般式(2)におけるR8は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基を表す。
【0055】
本発明において、上記一般式(2)におけるR8は、上記の定義に該当すればよく、特に限定するものではないが、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基を挙げることができる。これらのうち、二酸化炭素の放散効率に優れる点で、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n-ブチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基である。
【0056】
上記の一般式(2)において、a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。
【0057】
上記の一般式(2)で示されるアミン化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物(例示化合物1~28)を挙げる事ができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
【0059】
前記の一般式(2)において、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8については、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)に優れる点で、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又はブチル基であることが好ましく、各々独立して、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
【0060】
さらに、前記のR3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、入手容易性の観点から、水素原子であることがより好ましい。
【0061】
前記のa及びbについては、aが0であり、bが1であることが好ましい。 上記一般式(2)で示されるアミン化合物については、入手容易性の観点から、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が、水素原子であり、aが0であり、bが1であるものが好ましく、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(R3=R4=R5=R6=R7=R8=水素原子、a=0、b=1、上記の例示化合物1であり、以下、DABCOMとも称す。)であることがより好ましい。
【0062】
本発明において、上記一般式(2)で示されるアミン化合物は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。また、上記一般式(2)で示されるアミン化合物の純度としては、特に限定するものではないが、95%以上が好ましく、99%以上が特に好ましい。純度が95%を下回ると、二酸化炭素の吸収量が低下する恐れがある。
【0063】
なお、上記一般式(2)で示されるアミン化合物は、特に限定するものではないが、例えば、ジヒドロキシアルキルピペラジン類(例えば、2,3-ジヒドロキシプロピルピペラジン)の環化反応により製造することができる(例えば、特開2010-37325公報参照)。
【0064】
前記のアルカノールアミン類としては、具体例としては、例えば、エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]-N-メチルエタノールアミン、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-N-エチルエタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、2-[2-(ジエチルアミノ)エトキシ]エタノール、N-[2-(2-アミノエトキシ)エチル]エタノールアミン、N-[2-{2-(ジメチルアミノ)エトキシ}エチル]-N-メチルエタノールアミン、又はN-[2-{2-(ジエチルアミノ)エトキシ}エチル]-N-エチルエタノールアミン等が挙げられる。これらのうち、入手のし易さ、及び製造コストの観点から、アルカノールアミン類としては、エタノールアミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、及び2-(2-アミノエトキシ)エタノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0065】
前記のプロピレンジアミン類としては、具体例としては、例えば、1,3-ビス(ジメチルアミノ)プロパン、又は1,3-ビス(ジエチルアミノ)プロパン等が挙げられる。
【0066】
前記のピペラジン類としては、具体例としては、例えば、ピペラジン、1-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-メチルピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-エチルピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-プロピルピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-ブチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-メチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-エチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-プロピルピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-ブチルピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-メチルピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-エチルピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-プロピルピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-ブチルピペラジン、又は1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0067】
本発明において、前記のピペリジン類としては、具体例としては、例えば、ピペリジン、2-メチルピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-メチルピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-エチルピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-プロピルピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-ブチルピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-ピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-メチルピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-エチルピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-プロピルピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-ブチルピペリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-ピペリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-メチルピペリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-エチルピペリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-プロピルピペリジン、又は1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-ブチルピペリジン等が挙げられる。
【0068】
本発明において、前記のモルホリン類としては、具体例としては、例えば、モルホリン、2-メチルモルホリン、2,6-ジメチルモルホリン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-モルホリン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-モルホリン、又は1-(2,3-ジメトキシプロピル)-モルホリン等が挙げられる。
【0069】
本発明において、ピロリジン類としては、具体例としては、例えば、ピロリジン、2-メチルピロリジン、2,5-ジメチルピロリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピロリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-ピロリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-ピロリジン、又は1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン等が挙げられる。
【0070】
本発明において、前記のアゼパン類としては、具体例としては、例えば、アゼパン、2
-メチルアゼパン、2,7-ジメチルアゼパン、又は1,8-ジアザビシクロ[5.4.
0]-7-ウンデセン等が挙げられる。
【0071】
本発明において、前記のポリエチレンポリアミン類としては、具体例としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、ヘキサエチレンヘプタミン(HEHA)、又は8以上のアミノ基を有するポリエチレンポリアミン等が挙げられる。
【0072】
ここで、前記の「TETA」とは、4つのアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を4つ有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。TETAの具体的な化合物名としては、例えば、1,4,7,10-テトラアザデカン、N,N-ビス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン、又は1、4-ビス(2-アミノエチル)-ピペラジン等が挙げられる。
【0073】
また、前記の「TEPA」とは、5つのアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を5つ有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。TEPAの具体的な化合物名としては、例えば、1,4,7,10,13-ペンタアザトリデカン、N,N,N’-トリス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、1-[2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン、又はビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]アミン等が挙げられる。
【0074】
また、前記の「PEHA」とは、6つのアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を6つ有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。PEHAの具体的な化合物名としては、例えば、1,4,7,10,13,16-ヘキサアザヘキサデカン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、N,N-ビス(2-アミノエチル)-N’-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、1-[2-[2-[2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、又はN,N’-ビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]-1,2-エタンジアミン等が挙げられる。
【0075】
また、前記の「HEHA」とは、7つのアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を7つ有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。HEHAの具体的な化合物名としては、例えば、1,4,7,10,13,16,19-ヘプタアザノナデカン、N-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-N,N’,N’-トリス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、又はN-(2-アミノエチル)-N,N’-ビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]-1,2-エタンジアミン等が挙げられる。
【0076】
また、前記の「8以上のアミノ基を有するポリエチレンポリアミン」とは、8つ以上のアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を8つ以上有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。8以上のアミノ基を有するポリエチレンポリアミンの具体例としては、例えば、商品名「Poly8」(東ソー株式会社製)、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0077】
これらのうち、入手のし易さ、及び取得コストの観点から、ポリエチレンポリアミン類としては、ジエチレントリアミン(DETA)、1,4,7,10-テトラアザデカン、N,N-ビス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン、及び1、4-ビス(2-アミノエチル)-ピペラジンの混合物よりなるトリエチレンテトラミン(TETA)、1,4,7,10,13-ペンタアザトリデカン、N,N,N’-トリス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、1-[2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン、及びビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]アミンの混合物よりなるテトラエチレンペンタミン(TEPA)、1,4,7,10,13,16-ヘキサアザヘキサデカン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、N,N-ビス(2-アミノエチル)-N’-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、1-[2-[2-[2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、及びN,N’-ビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]-1,2-エタンジアミンの混合物よりなるペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、1,4,7,10,13,16,19-ヘプタアザノナデカン、N-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-N,N’,N’-トリス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、N-(2-アミノエチル)-N,N’-ビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]-1,2-エタンジアミンの混合物よりなるヘキサエチレンヘプタミン(HEHA)、並びに8以上のアミノ基を有するポリエチレンポリアミンである商品名「Poly8」(東ソー株式会社製)からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0078】
本発明において、アミン化合物(B)は、市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。また、アミン化合物(B)の純度としては、特に限定するものではないが、95%以上であることが好ましく、99%以上であることが特に好ましい。純度が95%を下回ると、二酸化炭素の吸収量が低下する恐れがある。
【0079】
以上の通り、本発明の組成物については、上記のアミン化合物(A)及び担体を含むことを必須とし、上記のアミン化合物(A)とは異なるアミン化合物(特に限定するものではないが、例えば、上記の一般式(2)で表されるアミン化合物、又はアミン化合物(B))を含んでいてもよい。
【0080】
本発明の組成物におけるアミン化合物(上記のアミン化合物(A)及び上記のアミン化合物(A)とは異なるアミン化合物の全量)の含有量は、当該組成物の単位重量当たりの二酸化炭素吸収量を増やすという観点から、特に限定されるものではないが、組成物全体の5~80重量%であることが好ましく、10~75重量%であることがより好ましく、20重量%を超え、70重量%以下であることがより好ましく、30~70重量%であることがより好ましい。
【0081】
なお、上記のアミン化合物(A)と、上記のアミン化合物(A)とは異なるアミン(上記の一般式(2)で表されるアミン化合物、又はアミン化合物(B))を併用する場合、これらのアミン化合物の全量のうち、40重量%以上がアミン化合物(A)であることが好ましく、50重量%以上がアミン化合物(A)であることがより好ましく、60重量%以上がアミン化合物(A)であることがより好ましい。
【0082】
本発明のアミン化合物を担体に担持させる方法としては、特に限定するものではないが、例えば、物理的に担持させる方法、化学的に担持させる方法が挙げられる。
【0083】
物理的に担持させる方法としては、例えば、含浸法が挙げられる。本発明の含浸法において、アミン化合物は、通常、溶媒に溶解させた溶液の状態で用いられる。溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、水、メタノール、エタノール等が挙げられる。これらの溶媒に溶解させたアミン化合物の溶液を、以下、「アミン溶液」と略す。
【0084】
含浸法の手法としては、例えば、平衡吸着法、インシピエントウェットネス法、蒸発乾固法が挙げられる。平衡吸着法は、過剰量のアミン溶液に担体を浸漬し、アミン化合物を担体に吸着させた後、担体を濾過や遠心分離等の操作によって回収し、乾燥させる方法である。インシピエントウェットネス法は、担体の細孔容積に等しい量のアミン溶液を、担体を撹拌しながら、担体の表面に少しずつ加え、担体表面が均一に濡れた状態にして、アミン化合物を担体に固定化させる方法である。蒸発乾固法は、アミン溶液に担体を浸漬し、溶媒を蒸発させて、アミン化合物を担体に固定化させる方法である。
【0085】
化学的に担持させる方法としては、例えば、アミン化合物が持つアミノ基や水酸基を、担体が持つアミノ基や水酸基と反応する置換基と反応させ、化学的結合を形成し、担持させる方法が挙げられる。
【0086】
次に、本発明の組成物を用いた二酸化炭素の分離方法について説明する。
【0087】
本発明の組成物は固体吸収法として広く知られた二酸化炭素の分離方法に適用できる。固体吸収法は、二酸化炭素吸収放散剤と二酸化炭素を含むガスを接触させ、二酸化炭素吸収放散剤に二酸化炭素を吸収させた後、当該二酸化炭素吸収放散剤を加熱する又は減圧環境に晒すことにより吸収された二酸化炭素を放散させる方法を表す。固体吸収法では、一般的に二酸化炭素を放散させる温度は100℃以上とされるが、本発明の二酸化炭素分離組成物を使用する場合には、特に温度に関する制約は無く、100℃未満としてもよい。すなわち、本発明の組成物は、固体吸収法における二酸化炭素吸収放散剤として使用することができる。
【0088】
上記の二酸化炭素を含むガスについては、純粋な二酸化炭素ガスであってもよいし、二酸化炭素とその他ガスを含む混合ガスであってもよい。前記のその他のガスとしては、特に限定するものではないが、例えば、大気、窒素、酸素、水素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、一酸化炭素、水蒸気、メタン、又は窒素酸化物等が挙げられる。
【0089】
本発明の二酸化炭素の分離方法に適用できる二酸化炭素を含むガスについては、二酸化炭素を含む純ガス又は混合ガスであれば特に制限されないが、二酸化炭素と他のガスとの分離性能を向上させるためには、二酸化炭素濃度が5容量%以上であるものが好ましく、より好ましくは10容量%以上であるものが望ましい。
【0090】
本発明の二酸化炭素の分離方法においては、上記の工程(吸収工程、放散工程)以外の工程を追加して実施しても一向に差し支えない。例えば、冷却工程、加熱工程、洗浄工程、抽出工程、超音波処理工程、蒸留工程、乾燥工程、その他薬液で処理する工程などを適宜実施することができる。
【0091】
本発明の二酸化炭素の分離方法は、特に限定するものではないが、例えば、火力発電所、鉄鋼プラント、及びセメント工場などで発生する燃焼排ガスからの二酸化炭素(CO2)の分離や、水蒸気改質プロセスで得られる水蒸気改質ガスからの二酸化炭素(CO2)の分離に適用することができる。
【実施例0092】
本願発明を以下の実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本願発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0093】
なお、実施例、比較例における測定方法、評価方法は以下のとおりである。
【0094】
<二酸化炭素ガスの吸収量の測定方法>
後述する実施例で調製した組成物(二酸化炭素分離材) 10gをガラス製U字管に充填し、23℃で、40mL/分の二酸化炭素ガスと160mL/分の窒素ガスの混合気体(合計で200mL/分)を23℃の温度条件で15分間流通させた。流通後のガスの二酸化炭素濃度を濃度計を用いて測定し、前記の組成物(二酸化炭素分離材)1kg当たりのCO2吸収量(g)を算出した。
【0095】
<二酸化炭素ガスの放散効率の測定方法>
前記の二酸化炭素ガスの吸収量の測定方法を実施した後の組成物(二酸化炭素分離材)が充填されたガラス製U字管を60℃に加熱し、1kPa以下の減圧条件で1時間処理して二酸化炭素を脱離させた。その後、40mL/分の二酸化炭素ガスと160mL/分の窒素ガスの混合気体(合計で200mL/分)を23℃の温度条件で15分間流通させた。流通後のガスの二酸化炭素濃度を濃度計を用いて測定し、前記の組成物(二酸化炭素分離材)1kg当たりのCO2吸収量(g)を算出した。このCO2吸収量が加熱によって脱離した二酸化炭素の量であるとして、CO2放散量(g)とした。これらより、二酸化炭素ガス放散効率(=CO2放散量(g)÷CO2吸収量(g))を算出した。
【0096】
<放散時揮発量の測定方法>
前記の<二酸化炭素ガスの吸収量の測定方法>を行った後のCO2を吸収した状態組成物(二酸化炭素分離材)の重量(A)を測定した。その後、<二酸化炭素ガスの放散効率の測定方法>を行った後のCO2を吸収した状態組成物(二酸化炭素分離材)の重量(B)を測定した。重量(A)と重量(B)から放散時揮発量(wt%)=[重量(A)-重量(B)]÷重量(A)×100を算出した。放散時揮発量が正の数を表す場合、上記の操作によって組成物中のアミン化合物が揮発して損失していることを表す。数値が小さければ小さいほどアミン化合物損失が抑えられて好ましい。
【0097】
<繰り返し使用時の耐久性の測定方法>
後述する実施例で調製した組成物(二酸化炭素分離材)について、前記の吸収、及び、放散の操作を繰り返し、前記の組成物(二酸化炭素分離材)1kg当たりのCO2吸収量(g)を追跡した。
<評価に用いた材料>
以下の実験に用いた化合物について、略称及びその構造を示す。
【0098】
DHPP :1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン(Sigma-Aldrich社製)
DABCOM:1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー社製)
HEP :ヒドロキシエチルピペラジン(Sigma-Aldrich社製)
AEEA :2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(東京化成工業社製)
TEPA :テトラエチレンペンタミン(東ソー社製)
MEA :2-アミノエタノール(東京化成工業社製)
実施例1 (DHPP担持シリカ1の調製)
500mLのナスフラスコに、DHPP 12.0g、シリカ(富士シリシア化学社製、CARiACT Q-10、粒状、粒径 1.18-2.36mm)18.0g、メタノール 90.0gを仕込み、室温で2時間撹拌した。その後、メタノール分の重量が減少するまで80℃で減圧乾燥し、メタノールを除去した。このようにして、DHPP担持シリカ1(組成物全体に対するDHPPの担持量40重量%)の白色粒状組成物 30.0gを得た。
【0099】
実施例2 (HEP担持シリカ2の調製)
500mLのナスフラスコに、HEP 12.0g、シリカ(富士シリシア化学社製、CARiACT Q-10、粒状、粒径 1.18-2.36mm)18.0g、メタノール 90.0gを仕込み、室温で2時間撹拌した。その後、メタノール分の重量が減少するまで80℃で減圧乾燥し、メタノールを除去した。このようにして、HEP担持シリカ2(組成物全体に対するHEPの担持量40重量%)の白色粒状組成物 30.0gを得た。
【0100】
実施例3 (AEEA担持シリカ3の調製)
500mLのナスフラスコに、AEEA 12.0g、シリカ(富士シリシア化学社製、CARiACT Q-10、粒状、粒径 1.18-2.36mm)18.0g、メタノール 90.0gを仕込み、室温で2時間撹拌した。その後、メタノール分の重量が減少するまで80℃で減圧乾燥し、メタノールを除去した。このようにして、AEEA担持シリカ3(組成物全体に対するAEEAの担持量40重量%)の白色粒状組成物 30.0gを得た。
【0101】
実施例4 (DHPP-DABCOM担持シリカ4の調製)
500mLのナスフラスコに、DHPP 9.9g、DABCOM 2.1g、シリカ(富士シリシア化学社製、CARiACT Q-10、粒状、粒径 1.18-2.36mm)18.0g、メタノール 90.0gを仕込み、室温で2時間撹拌した。その後、メタノール分の重量が減少するまで80℃で減圧乾燥し、メタノールを除去した。このようにして、DHPP-DABCOM担持シリカ4(組成物全体に対するDHPPの担持量33重量%、DABCOMの担持量7重量%)の白色粒状組成物 30.0gを得た。
【0102】
実施例5 (DHPP-DABCOM担持シリカ5の調製)
500mLのナスフラスコに、DHPP 6.0g、DABCOM 6.0g、シリカ(富士シリシア化学社製、CARiACT Q-10、粒状、粒径 1.18-2.36mm)18.0g、メタノール 90.0gを仕込み、室温で2時間撹拌した。その後、メタノール分の重量が減少するまで80℃で減圧乾燥し、メタノールを除去した。このようにして、DHPP-DABCOM担持シリカ5(組成物全体に対するDHPPの担持量20重量%、DABCOMの担持量20重量%)の白色粒状組成物 30.0gを得た。
【0103】
実施例6 (DHPP担持シリカ6の調製)
500mLのナスフラスコに、DHPP 7.7g、シリカ(富士シリシア化学社製、CARiACT Q-10、粒状、粒径 1.18-2.36mm)18.0g、メタノール 90.0gを仕込み、室温で2時間撹拌した。その後、メタノール分の重量が減少するまで80℃で減圧乾燥し、メタノールを除去した。このようにして、DHPP担持シリカ6(組成物全体に対するDHPPの担持量30重量%)の白色粒状組成物 25.7gを得た。
【0104】
実施例7 (DHPP担持アルミナ7の調製)
500mLのナスフラスコに、DHPP 4.5g、アルミナ(住友化学社製、NKHD-24、粒状、粒径 2.36-4.00mm)18.0g、メタノール 90.0gを仕込み、室温で2時間撹拌した。その後、メタノール分の重量が減少するまで80℃で減圧乾燥し、メタノールを除去した。このようにして、DHPP担持シリカ7(組成物全体に対するDHPPの担持量20重量%)の白色粒状組成物 22.5gを得た。
【0105】
実施例8 (DHPP担持活性炭8の調製)
500mLのナスフラスコに、DHPP 2.7g、活性炭(和光純薬工業社製、活性炭素、粉末)24.3g、メタノール 90.0gを仕込み、室温で2時間撹拌した。その後、メタノール分の重量が減少するまで80℃で減圧乾燥し、メタノールを除去した。このようにして、DHPP担持活性炭8(組成物全体に対するDHPPの担持量10重量%)の黒色粉末状組成物 27.0gを得た。
【0106】
比較例1 (TEPA担持シリカ9の調製)
500mLのナスフラスコに、TEPA 12.0g、シリカ(富士シリシア化学社製、CARiACT Q-10、粒状、粒径 1.18-2.36mm)18.0g、メタノール 90.0gを仕込み、室温で2時間撹拌した。その後、メタノール分の重量が減少するまで80℃で減圧乾燥し、メタノールを除去した。このようにして、TEPA担持シリカ9(組成物全体に対するTEPAの担持量40重量%)の白色粒状組成物 30.0gを得た。
【0107】
比較例2 (MEA担持シリカ10の調製)
500mLのナスフラスコに、MEA 12.0g、シリカ(富士シリシア化学社製、CARiACT Q-10、粒状、粒径 1.18-2.36mm)18.0g、メタノール 90.0gを仕込み、室温で2時間撹拌した。その後、メタノール分の重量が減少するまで80℃で減圧乾燥し、メタノールを除去した。このようにして、MEA担持シリカ10(組成物全体に対するMEAの担持量40重量%)の白色粒状組成物 30.0gを得た。
【0108】
実施例9~16 (二酸化炭素分離性能の評価)
実施例1~8で調製した組成物(二酸化炭素分離材)について、上記の<二酸化炭素ガスの吸収量の測定方法>、<二酸化炭素ガスの放散効率の測定方法>、<放散時揮発量の測定方法>、及び<繰り返し使用時の耐久性の測定方法>により測定した。結果を表1及び表2に示した。
【0109】
比較例3~4 (二酸化炭素分離性能の評価)
比較例1~2で調製した組成物(二酸化炭素分離材)について、上記の<二酸化炭素ガスの吸収量の測定方法>、<二酸化炭素ガスの放散効率の測定方法>、<放散時揮発量の測定方法>、及び<繰り返し使用時の耐久性の測定方法>により測定した。結果を表2に示した。
【0110】
【0111】
【0112】
実施例と比較例との比較から明らかなように、本発明の組成物は、比較例3の組成物に比べ、CO2放散量が高く、放散効率が高かった。また、本発明の組成物は、比較例4の組成物に比べ、放散時の揮発量が抑制された。さらに、本発明の組成物は、比較例3~4の組成物に比べ、5回繰り返し使用時のCO2吸収量が高く、耐久性に優れていた。
【0113】
実施例12~13から明らかなように、本発明の組成物は、担体に担持するアミン化合物について、複数のアミン化合物を併用することで、相乗効果が生じ、CO2吸収量を向上することが可能であった。
【0114】
実施例15~16から明らかなように、本発明の組成物は、担体を変更しても、優れた二酸化炭素分離性能を発揮するものであった。