(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154068
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム画像取得装置及び荷電粒子ビーム画像取得方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/2251 20180101AFI20221005BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G01N23/2251
H01L21/66 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056928
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】中島 和弘
(72)【発明者】
【氏名】白土 昌孝
【テーマコード(参考)】
2G001
4M106
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001AA10
2G001BA07
2G001CA03
2G001DA09
2G001HA13
2G001JA03
2G001KA03
2G001KA05
2G001LA11
2G001SA01
4M106AA01
4M106AA09
4M106BA02
4M106BA03
4M106CA38
4M106DB05
4M106DB30
4M106DH24
4M106DH33
4M106DJ03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マルチビームを用いて画像を取得する場合に、直前の走査の終点と次の走査の始点とが一定以上離れた位置になる走査が可能な装置を提供する。
【解決手段】荷電粒子ビーム画像取得装置は、第1の方向に基板面上において同一ピッチpでM個(Mは2以上の整数)並ぶ複数の荷電粒子ビームによって構成されるマルチビームを基板に照射する1次電子光学系151と、基板の検査領域が第1の方向にp/N(Nは3以上の整数)で得られるサイズかつ第1の方向に直交する第2の方向に所定のサイズで分割された複数のブロック領域のうち、マルチビームを一括して、ブロック領域群に偏向すると共に、ブロック領域群の走査が終了するごとに、新たなブロック領域群に偏向する主偏向器208と、ブロック領域群を走査するように、マルチビームを一括して偏向する副偏向器209と、を備え、NとMとは互いに素であり、かつM-1がNの倍数ではない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象基板を載置する移動可能なステージと、
第1の方向に前記基板面上において同一ピッチpでM個(Mは2以上の整数)並ぶ複数の荷電粒子ビームによって構成されるマルチビームを前記基板に照射する照明光学系と、
前記基板の検査領域が前記第1の方向にp/N(Nは3以上の整数)で得られるサイズかつ前記第1の方向に直交する第2の方向に所定のサイズで分割された複数のブロック領域のうち、前記第1の方向に前記ピッチpでM個並ぶ前記基板上のブロック領域群に前記マルチビームを一括して偏向すると共に、前記ブロック領域群の走査が終了するごとに前記第1の方向にM個離れた、前記第1の方向に前記ピッチpでM個並ぶ新たなブロック領域群に前記マルチビームを一括して偏向する第1の偏向器と、
前記ブロック領域群を走査するように、前記マルチビームを一括して偏向する第2の偏向器と、
前記基板に前記マルチビームを照射することに起因して前記基板から放出される2次電子を検出する検出器と、
を備え、
NとMとは互いに素であり、かつM-1がNの倍数ではない関係であり、前記第1の方向に連続して並ぶブロック領域群と前記第2に方向に隣接する前記第1の方向に連続して並ぶブロック群とが第1の方向にブロック領域の前記第1の方向の幅より小さいサイズで位置を互いにずらして配置されることを特徴とする荷電粒子ビーム画像取得装置。
【請求項2】
検査対象基板を載置する、移動可能なステージと、
第1の方向に前記基板面上において同一ピッチpでM個(Mは2以上の整数)並ぶ複数の荷電粒子ビームによって構成されるマルチビームで前記基板を照射する照明光学系と、
前記基板の検査領域が前記第1の方向にp/N(Nは3以上の整数)で得られるサイズかつ前記第1の方向に直交する第2の方向に所定のサイズで分割された複数のブロック領域のうち、前記第1の方向に前記ピッチpでM個並ぶ前記基板上のブロック領域群に前記マルチビームを一括して偏向すると共に、前記ブロック領域群の走査が終了するごとに前記第1の方向にM個離れた、前記第1の方向に前記ピッチpでM個並ぶ新たなブロック領域群に前記マルチビームを一括して偏向する第1の偏向器と、
前記ブロック領域群を走査するように、前記マルチビームを一括して偏向する第2の偏向器と、
前記基板に前記マルチビームを照射することに起因して前記基板から放出される2次電子を検出する検出器と、
を備え、
NとMとは互いに素であり、かつM-1がNの倍数ではない関係であり、
前記マルチビームの前記第2の方向に隣接するビーム同士が、前記第1の方向に相対的にSブロック領域分(Sは1以上の整数)、位置がずれて配列され、
|M-|S|-1|がNの倍数若しくは0ではなく、かつSはNの倍数ではない関係であることを特徴とする荷電粒子ビーム画像取得装置。
【請求項3】
検査対象基板を載置する、移動可能なステージと、
第1の方向に前記基板面上において同一ピッチpでM個(Mは2以上の整数)並ぶ複数の荷電粒子ビームによって構成されるマルチビームで前記基板を照射する照明光学系と、
前記基板の検査領域が前記第1の方向にp/N(Nは3以上の整数)で得られるサイズかつ前記第1の方向に直交する第2の方向に所定のサイズで分割された複数のブロック領域のうち、前記第1の方向に前記ピッチpでM個並ぶ前記基板上のブロック領域群に前記マルチビームを一括して偏向すると共に、前記ブロック領域群の走査が終了するごとに前記第1の方向にM個離れた、前記第1の方向に前記ピッチpでM個並ぶ新たなブロック領域群に前記マルチビームを一括して偏向する第1の偏向器と、
前記ブロック領域群を走査するように、前記マルチビームを一括して偏向する第2の偏向器と、
前記基板に前記マルチビームを照射することに起因して前記基板から放出される2次電子を検出する検出器と、
を備え、
NとMとは互いに素であり、かつM-1がNの倍数ではない関係であり、
前記複数のブロック領域は、前記第2の方向のビーム間ピッチ内に2個以上のブロック領域が配置されるサイズで形成されることを特徴とする荷電粒子ビーム画像取得装置。
【請求項4】
前記第1の方向に前記基板面上において同一ピッチpでM個(Mは2以上の整数)並ぶ複数の荷電粒子ビームによって構成されるマルチビームを用いて、前記基板の検査領域が前記第1の方向にp/N(Nは3以上の整数)で得られるサイズかつ前記第1の方向に直交する第2の方向に所定のサイズで分割された複数のブロック領域のうち、前記第1の方向に前記ピッチpでM個並ぶ前記基板上のブロック領域群を走査する工程と、
前記ピッチpでM個並ぶ前記ブロック領域群の走査が終了するごとに前記第1の方向にM個離れた、前記第1の方向に前記ピッチpでM個並ぶ新たなブロック領域群に前記マルチビームを一括して偏向する工程と、
前記第1の方向に連続して並ぶブロック領域群の走査が終了するごとに、前記第2の方向に隣接する前記ピッチpでM個並ぶ新たなブロック領域群に前記マルチビームを一括して偏向する工程と、
前記基板に前記マルチビームを照射することに起因して前記基板から放出される2次電子を検出する工程と、
を備え、
NとMとは互いに素であり、かつM-1がNの倍数ではない関係であり、前記第1の方向に連続して並ぶブロック領域群と前記第2に方向に隣接する前記第1の方向に連続して並ぶブロック群とが第1の方向にブロック領域の前記第1の方向の幅より小さいサイズで位置を互いにずらして配置されることを特徴とする荷電粒子ビーム画像取得方法。
【請求項5】
前記第1の方向に前記基板面上において同一ピッチpでM個(Mは2以上の整数)並ぶ複数の荷電粒子ビームによって構成されるマルチビームを用いて、前記基板の検査領域が前記第1の方向にp/N(Nは3以上の整数)で得られるサイズかつ前記第1の方向に直交する第2の方向に所定のサイズで分割された複数のブロック領域のうち、前記第1の方向に前記ピッチpでM個並ぶ前記基板上のブロック領域群を走査する工程と、
前記ピッチpでM個並ぶ前記ブロック領域群の走査が終了するごとに前記第1の方向にM個離れた、前記第1の方向に前記ピッチpでM個並ぶ新たなブロック領域群に前記マルチビームを一括して偏向する工程と、
前記基板に前記マルチビームを照射することに起因して前記基板から放出される2次電子を検出する工程と、
を備え、
NとMとは互いに素であり、かつM-1がNの倍数ではない関係であり、
前記マルチビームの前記第2の方向に隣接するビーム同士が、前記第1の方向に相対的にSブロック領域分(Sは1以上の整数)、位置がずれて配列され、
|M-|S|-1|がNの倍数若しくは0ではなく、かつSはNの倍数ではない関係であることを特徴とすることを特徴とする荷電粒子ビーム画像取得方法。
【請求項6】
前記第1の方向に前記基板面上において同一ピッチpでM個(Mは2以上の整数)並ぶ複数の荷電粒子ビームによって構成されるマルチビームを用いて、前記基板の検査領域が前記第1の方向にp/N(Nは3以上の整数)で得られるサイズかつ前記第1の方向に直交する第2の方向に所定のサイズで分割された複数のブロック領域のうち、前記第1の方向に前記ピッチpでM個並ぶ前記基板上のブロック領域群を走査する工程と、
前記ピッチpでM個並ぶ前記ブロック領域群の走査が終了するごとに前記第1の方向にM個離れた、前記第1の方向に前記ピッチpでM個並ぶ新たなブロック領域群に前記マルチビームを一括して偏向する工程と、
前記基板に前記マルチビームを照射することに起因して前記基板から放出される2次電子を検出する工程と、
を備え、
NとMとは互いに素であり、かつM-1がNの倍数ではない関係であり、
前記複数のブロック領域は、前記第2の方向のビーム間ピッチ内に2個以上のブロック領域が配置されるサイズで形成されることを特徴とする荷電粒子ビーム画像取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム画像取得装置及び荷電粒子ビーム画像取得方法に関する。例えば、電子線によるマルチビームを照射して放出されるパターンの2次電子画像を取得する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになっている。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。よって、半導体ウェハ上に転写された超微細パターンの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0003】
検査装置では、例えば、電子ビームを使ったマルチビームを検査対象基板に照射して、検査対象基板から放出される各ビームに対応する2次電子を検出して、パターン画像を撮像する。そして撮像された測定画像と、設計データ、あるいは基板上の同一パターンを撮像した測定画像と比較することにより検査を行う方法が知られている。例えば、同一基板上の異なる場所の同一パターンを撮像した測定画像データ同士を比較する「die to die(ダイ-ダイ)検査」がある。その他に、パターン設計された設計データをベースに設計画像データ(参照画像)を生成して、それとパターンを撮像した測定データとなる測定画像とを比較する「die to database(ダイ-データベース)検査」がある。撮像された画像は測定データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、測定データと参照データとを適切なアルゴリズムに従って比較する。そして、一致しない場合には、パターン欠陥有りと判定する。
【0004】
かかるマルチビームを用いたパターン検査装置では、検査対象基板の小領域毎に走査して2次電子を検出する。その際、直線上に同一ピッチで配列されるマルチビームを用いることで、限られた領域内に多数のビームを配置できるので、一度に多数の小領域の走査を同時に行うことが可能になる。
【0005】
しかし、ステージが連続移動しながらマルチビームで走査を行う場合、移動方向に並ぶ別のビームで既にパターン像を取得済の小領域が順に送られてくる。そのため、既にパターン像を取得済の小領域について無駄な走査を繰り返すことになってしまう。これを回避するために、ステージ移動方向にビームピッチを分割数で割った幅で並ぶ複数の小領域に検査領域を分割する。そして、ステージ移動方向にビームピッチでビーム本数並ぶ小領域群をマルチビームで走査する。次に、ステージ移動方向の逆方向にビーム本数分離れた、ビームピッチでビーム本数分並ぶ新たな小領域群をマルチビームで走査する。そして、かかる動作を繰り返す。ビーム本数の値と分割数の値との間の最大公約数が1になる組み合わせであれば、無駄な走査を繰り返すことなく全領域を走査できる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ここで、ビームが照射された各照射領域は程度の差はあるものの帯電を起こすことになる。画像の抜けが生じないように隣接する領域端部同士がオーバーラップするように走査する場合には重複部分の帯電量が大きくなる。帯電位置或いは近傍の走査を行った場合、得られる画像に帯電の影響が含まれることになる。
【0007】
しかし、上述した手法では、無駄な走査を繰り返すことは無くなるものの、直前の走査の終点と次の走査の始点とが極近傍の位置になる場合がある。かかる場合、直前の走査による帯電の影響を次の走査で得られるデータが受けてしまう。よって、帯電の影響が低減される走査手法が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の一態様は、マルチビームを用いて画像を取得する場合に、直前の走査の終点と次の走査の始点とが一定以上離れた位置になる走査が可能な装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム画像取得装置は、
検査対象基板を載置する移動可能なステージと、
第1の方向に基板面上において同一ピッチpでM個(Mは2以上の整数)並ぶ複数の荷電粒子ビームによって構成されるマルチビームを基板に照射する照明光学系と、
基板の検査領域が第1の方向にp/N(Nは3以上の整数)で得られるサイズかつ第1の方向に直交する第2の方向に所定のサイズで分割された複数のブロック領域のうち、第1の方向にピッチpでM個並ぶ基板上のブロック領域群にマルチビームを一括して偏向すると共に、ブロック領域群の走査が終了するごとに第1の方向にM個離れた、第1の方向にピッチpでM個並ぶ新たなブロック領域群にマルチビームを一括して偏向する第1の偏向器と、
ブロック領域群を走査するように、マルチビームを一括して偏向する第2の偏向器と、
基板にマルチビームを照射することに起因して基板から放出される2次電子を検出する検出器と、
を備え、
NとMとは互いに素であり、かつM-1がNの倍数ではない関係であり、第1の方向に連続して並ぶブロック領域群と第2に方向に隣接する第1の方向に連続して並ぶブロック群とが第1の方向にブロック領域の第1の方向の幅より小さいサイズで位置を互いにずらして配置されることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様の荷電粒子ビーム画像取得装置は、
検査対象基板を載置する、移動可能なステージと、
第1の方向に基板面上において同一ピッチpでM個(Mは2以上の整数)並ぶ複数の荷電粒子ビームによって構成されるマルチビームで基板を照射する照明光学系と、
基板の検査領域が第1の方向にp/N(Nは3以上の整数)で得られるサイズかつ第1の方向に直交する第2の方向に所定のサイズで分割された複数のブロック領域のうち、第1の方向にピッチpでM個並ぶ基板上のブロック領域群にマルチビームを一括して偏向すると共に、ブロック領域群の走査が終了するごとに第1の方向にM個離れた、第1の方向にピッチpでM個並ぶ新たなブロック領域群にマルチビームを一括して偏向する第1の偏向器と、
ブロック領域群を走査するように、マルチビームを一括して偏向する第2の偏向器と、
基板にマルチビームを照射することに起因して基板から放出される2次電子を検出する検出器と、
を備え、
NとMとは互いに素であり、かつM-1がNの倍数ではない関係であり、
マルチビームの第2の方向に隣接するビーム同士が、第1の方向に相対的にSブロック領域分(Sは1以上の整数)、位置がずれて配列され、
|M-|S|-1|がNの倍数若しくは0ではなく、かつSはNの倍数ではない関係であることを特徴とする。
【0012】
本発明の他の態様の荷電粒子ビーム画像取得装置は、
検査対象基板を載置する、移動可能なステージと、
第1の方向に基板面上において同一ピッチpでM個(Mは2以上の整数)並ぶ複数の荷電粒子ビームによって構成されるマルチビームで基板を照射する照明光学系と、
基板の検査領域が第1の方向にp/N(Nは3以上の整数)で得られるサイズかつ第1の方向に直交する第2の方向に所定のサイズで分割された複数のブロック領域のうち、第1の方向にピッチpでM個並ぶ基板上のブロック領域群にマルチビームを一括して偏向すると共に、ブロック領域群の走査が終了するごとに第1の方向にM個離れた、第1の方向にピッチpでM個並ぶ新たなブロック領域群にマルチビームを一括して偏向する第1の偏向器と、
ブロック領域群を走査するように、マルチビームを一括して偏向する第2の偏向器と、
基板にマルチビームを照射することに起因して基板から放出される2次電子を検出する検出器と、
を備え、
NとMとは互いに素であり、かつM-1がNの倍数ではない関係であり、
複数のブロック領域は、第2の方向のビーム間ピッチ内に2個以上のブロック領域が配置されるサイズで形成されることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム画像取得方法は、
第1の方向に基板面上において同一ピッチpでM個(Mは2以上の整数)並ぶ複数の荷電粒子ビームによって構成されるマルチビームを用いて、基板の検査領域が第1の方向にp/N(Nは3以上の整数)で得られるサイズかつ第1の方向に直交する第2の方向に所定のサイズで分割された複数のブロック領域のうち、第1の方向にピッチpでM個並ぶ基板上のブロック領域群を走査する工程と、
ピッチpでM個並ぶブロック領域群の走査が終了するごとに第1の方向にM個離れた、第1の方向にピッチpでM個並ぶ新たなブロック領域群にマルチビームを一括して偏向する工程と、
第1の方向に連続して並ぶブロック領域群の走査が終了するごとに、第2の方向に隣接するピッチpでM個並ぶ新たなブロック領域群にマルチビームを一括して偏向する工程と、
基板にマルチビームを照射することに起因して基板から放出される2次電子を検出する工程と、
を備え、
NとMとは互いに素であり、かつM-1がNの倍数ではない関係であり、第1の方向に連続して並ぶブロック領域群と第2に方向に隣接する第1の方向に連続して並ぶブロック群とが第1の方向にブロック領域の第1の方向の幅より小さいサイズで位置を互いにずらして配置されることを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様の荷電粒子ビーム画像取得方法は、
第1の方向に基板面上において同一ピッチpでM個(Mは2以上の整数)並ぶ複数の荷電粒子ビームによって構成されるマルチビームを用いて、基板の検査領域が第1の方向にp/N(Nは3以上の整数)で得られるサイズかつ第1の方向に直交する第2の方向に所定のサイズで分割された複数のブロック領域のうち、第1の方向にピッチpでM個並ぶ基板上のブロック領域群を走査する工程と、
ピッチpでM個並ぶブロック領域群の走査が終了するごとに第1の方向にM個離れた、第1の方向にピッチpでM個並ぶ新たなブロック領域群にマルチビームを一括して偏向する工程と、
基板にマルチビームを照射することに起因して基板から放出される2次電子を検出する工程と、
を備え、
NとMとは互いに素であり、かつM-1がNの倍数ではない関係であり、
マルチビームの第2の方向に隣接するビーム同士が、第1の方向に相対的にSブロック領域分(Sは1以上の整数)、位置がずれて配列され、
|M-|S|-1|がNの倍数若しくは0ではなく、かつSはNの倍数ではない関係であると好適であることを特徴とする。
【0015】
本発明の他の態様の荷電粒子ビーム画像取得方法は、
第1の方向に基板面上において同一ピッチpでM個(Mは2以上の整数)並ぶ複数の荷電粒子ビームによって構成されるマルチビームを用いて、基板の検査領域が第1の方向にp/N(Nは3以上の整数)で得られるサイズかつ第1の方向に直交する第2の方向に所定のサイズで分割された複数のブロック領域のうち、第1の方向にピッチpでM個並ぶ基板上のブロック領域群を走査する工程と、
ピッチpでM個並ぶブロック領域群の走査が終了するごとに第1の方向にM個離れた、第1の方向にピッチpでM個並ぶ新たなブロック領域群にマルチビームを一括して偏向する工程と、
基板にマルチビームを照射することに起因して基板から放出される2次電子を検出する工程と、
を備え、
NとMとは互いに素であり、かつM-1がNの倍数ではない関係であり、
複数のブロック領域は、第2の方向のビーム間ピッチ内に2個以上のブロック領域が配置されるサイズで形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、マルチビームを用いて画像を取得する場合に、直前の走査の終点と次の走査の始点とが一定以上離れた位置になる走査ができる。よって、帯電の影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
【
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
【
図3】実施の形態1におけるE×B分離器の一例を示す構成図である。
【
図4】実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と測定用画素との一例を示す図である。
【
図6】実施の形態1の比較例におけるスキャン動作の細部の一例を説明するための概念図である。
【
図7】実施の形態1におけるスキャン動作の細部の一例を説明するための概念図である。
【
図8】実施の形態1の比較例1におけるビーム本数と分割数との関係の一例を示す図である。
【
図9】実施の形態1におけるビーム本数と分割数との関係の一例を示す図である。
【
図10】実施の形態1におけるビーム本数と分割数との関係の他の一例を示す図である。
【
図11】実施の形態1におけるビーム本数と分割数との関係の他の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態1の比較例2を説明するための図である。
【
図13】実施の形態1におけるサブ照射領域の配置の一例を示す図である。
【
図14】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の他の一例を示す図である。
【
図15】実施の形態1における検査方法の要部工程の一部を示すフローチャート図である。
【
図16】実施の形態1における比較回路の内部構成を示す図である。
【
図17】実施の形態2におけるサブ照射領域の一例を示す図である。
【
図18】実施の形態2におけるスキャンストライプ領域の一例を示す図である。
【
図19】実施の形態2におけるスキャンストライプ領域の他の一例を示す図である。
【
図20】実施の形態3におけるサブ照射領域の一例を示す図である。
【
図21】実施の形態3におけるシフト量とビーム本数と分割数との関係を説明するための図である。
【
図22】実施の形態3における成形アパーチャアレイ基板の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態では、画像取得装置の一例として、検査装置について説明する。但し、これに限るものではない。荷電粒子ビームを用いて画像を取得する装置であればその他の装置であっても良い。また、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた場合について説明する。但し、これに限るものではない。イオンビーム等のその他の荷電粒子ビームを用いても構わない。
【0019】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、マルチ電子ビーム検査装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150、及び制御系回路160(制御部)を備えている。画像取得機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)、検査室103、検出回路106、チップパターンメモリ123、ステージ駆動機構142、及びレーザ測長システム122を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、一括偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、主偏向器208、副偏向器209、E×B分離器(ビームセパレーター)214、偏向器218、電磁レンズ224、偏向器226、及びマルチ検出器222が配置されている。
【0020】
電子銃201、電磁レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、一括偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、主偏向器208、及び副偏向器209によって1次電子光学系151(照明光学系)を構成する。また、偏向器218、電磁レンズ224、及び偏向器226によって2次電子光学系152(検出光学系)を構成する。
【0021】
検査室103内には、少なくともXY方向に移動可能なステージ105が配置される。ステージ105上には、検査対象となる基板101(試料)が配置される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されることになる。以下、基板101が半導体基板である場合を主として説明する。基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてステージ105に配置される。また、ステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。
【0022】
また、マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。
【0023】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、E×B制御回路132、磁気ディスク装置等の記憶装置109、モニタ117、メモリ118、及びプリンタ119に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146,148に接続される。DACアンプ146は、主偏向器208に接続され、DACアンプ144は、副偏向器209に接続される。DACアンプ148は、偏向器218に接続される。
【0024】
また、チップパターンメモリ123は、比較回路108に接続されている。また、ステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。駆動機構142では、例えば、ステージ座標系におけるX方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系が構成され、XYθ方向にステージ105が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。ステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、ステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でステージ105の位置を測長する。ステージ座標系は、例えば、マルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸(光軸)に直交する面に対して、1次座標系のX方向、Y方向、θ方向が設定される。
【0025】
電磁レンズ202、電磁レンズ205、電磁レンズ206、電磁レンズ207、及び電磁レンズ224は、レンズ制御回路124により制御される。E×B分離器214は、E×B制御回路132により制御される。また、一括偏向器212は、2極以上の電極により構成される静電型の偏向器であって、電極毎に図示しないDACアンプを介してブランキング制御回路126により制御される。副偏向器209は、4極以上の電極により構成される静電型の偏向器であって、電極毎にDACアンプ144を介して偏向制御回路128により制御される。主偏向器208は、4極以上の電極により構成される静電型の偏向器であって、電極毎にDACアンプ146を介して偏向制御回路128により制御される。偏向器218は、4極以上の電極により構成される静電型の偏向器であって、電極毎にDACアンプ148を介して偏向制御回路128により制御される。また、偏向器226は、4極以上の電極により構成される静電型の偏向器であって、電極毎に図示しないDACアンプを介して偏向制御回路128により制御される。
【0026】
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメントと引出電極間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、所定の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。
【0027】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0028】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状(行列状)の横(x方向)M列×縦(y方向)M’段(Mは2以上の整数、M’は1以上の整数)の穴(開口部)22がx方向に所定の配列ピッチL、y方向に所定の配列ピッチL′で形成されている。なお、マルチビームの縮小倍率がa倍(マルチビーム径を1/aに縮小して基板101に照射する場合)、基板101上でのx方向に対するマルチビームのビーム間ピッチをp、y方向に対するマルチビームのビーム間ピッチをp′とする場合、配列ピッチLは、L=(a×p)、L′=(a×p′)の関係となる。
図2の例では、M=5、M’=5の5×5本のマルチビーム形成用の穴22が形成される場合を示している。L=L′であっても良いし、LとL′が異なる値でも良い。
【0029】
画像取得機構150は、電子ビームによるマルチビームを用いて、図形パターンが形成された基板101から図形パターンの被検査画像を取得する。以下、検査装置100における画像取得機構150の動作について説明する。
【0030】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、電磁レンズ202によって屈折させられ、成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、
図2に示すように、複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、マルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0031】
形成されたマルチ1次電子ビーム20は、電磁レンズ205、及び電磁レンズ206によってそれぞれ屈折させられ、中間像およびクロスオーバーを繰り返しながら、マルチ1次電子ビーム20の各ビームの中間像面(像面共役位置)に配置されたE×B分離器214を通過して電磁レンズ207に進む。また、マルチ1次電子ビーム20のクロスオーバー位置付近に、通過孔が制限された制限アパーチャ基板213を配置することで、散乱ビームを遮蔽できる。また、一括偏向器212によりマルチ1次電子ビーム20全体を一括して偏向して、マルチ1次電子ビーム20全体を制限アパーチャ基板213で遮蔽することにより、マルチ1次電子ビーム20全体をブランキングできる。
【0032】
マルチ1次電子ビーム20が電磁レンズ207(対物レンズ)に入射すると、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20を基板101にフォーカス(結像)する。言い換えれば、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20で基板101を照射する。対物レンズ207により基板101(試料)面上に焦点が合わされ(合焦され)たマルチ1次電子ビーム20は、主偏向器208及び副偏向器209によって一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。このように、1次電子光学系151は、マルチ1次電子ビームで基板101面を照射する。
【0033】
基板101の所望する位置にマルチ1次電子ビーム20が照射されると、かかるマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して基板101からマルチ1次電子ビーム20の各ビームに対応する、反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)が放出される。
【0034】
基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、電磁レンズ207を通って、E×B分離器214に進む。
【0035】
図3は、実施の形態1におけるE×B分離器の一例を示す構成図である。
図3において、E×B分離器214は、コイルを用いた2極以上の複数の磁極と、2極以上の複数の電極とを有する。
図3の例では、90°ずつ位相をずらした4極の磁極17(電磁偏向コイル)と、同じく90°ずつ位相をずらした4極の電極18(静電偏向電極)とを有するE×B分離器の一例を示している。そして、例えば対向する2極の磁極をN極とS極とに設定することで、かかる複数の磁極によって指向性の磁界を発生させる。同様に、例えば対向する2極の電極に符号が逆の電位Vを印加することで、かかる複数の電極によって指向性の電界を発生させる。具体的には、E×B分離器214は、マルチ1次電子ビーム20の中心ビームが進む方向(軌道中心軸)に直交する面上において電界と磁界を直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。E×B分離器214に上側から侵入してくるマルチ1次電子ビーム20には、電界による力と磁界による力が打ち消し合い、マルチ1次電子ビーム20は下方に直進する。これに対して、E×B分離器214に下側から侵入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力と磁界による力がどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離する。4つの磁極17に流す電流と4つの電極18に印加する電圧とを調整することにより、電界および磁界の向き及び大きさを調整できる。よって、4つの磁極17に流す電流と4つの電極18に印加する電圧とを調整することにより、電界による力及び磁界による力の向き及び大きさを調整できる。
【0036】
斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、2次電子光学系152によってマルチ検出器222に導かれる。具体的には、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218によって偏向されることにより、さらに曲げられ、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から離れた位置で電磁レンズ224によって、集束方向に屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222(マルチ2次電子ビーム検出器)は、屈折させられ、投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ検出器222は、複数の検出エレメント(例えば図示しないダイオード型の2次元センサ)を有する。そして、マルチ1次電子ビーム20の各ビームは、マルチ検出器222の検出面において、マルチ2次電子ビーム300の各2次電子ビームに対応する検出エレメントに衝突して、電子を発生し、2次電子画像データを画素毎に生成する。マルチ検出器222にて検出された強度信号(輝度データ)は、検出回路106に出力される。
【0037】
図4は、実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
図4において、半導体基板(ウェハ)101の検査領域330には、複数のチップ(ウェハダイ)332が2次元のアレイ状に形成されている。各チップ332には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。各チップ332の領域は、例えばy方向に向かって所定の幅で複数のストライプ領域32に分割される。画像取得機構150によるスキャン動作は、例えば、ストライプ領域32毎に実施される。例えば、-x方向にステージ105を移動させながら、相対的にx方向にストライプ領域32のスキャン動作を進めていく。各ストライプ領域32は、長手方向に向かって複数の矩形領域33に分割される。対象となる矩形領域33へのビームの移動は、主偏向器208によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。例えば、一回のマルチ1次電子ビーム20全体の照射で照射可能な照射領域34の幅の自然数倍と同じ幅で短冊状の複数のストライプ領域32に仮想分割される。
図4の例では、照射領域34と同じ幅で短冊状の複数のストライプ領域32に仮想分割される。
【0038】
図5は、実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と測定用画素との一例を示す図である。
図5において、各ストライプ領域32は、例えば、マルチビームのビームサイズでメッシュ状の複数のメッシュ領域に分割される。かかる各メッシュ領域が、測定用画素36(単位照射領域)となる。そして、照射領域34内に、M×M’本の1回のマルチ1次電子ビーム20の照射で照射可能な複数の測定用画素28(1ショット時のビームの照射位置)が示されている。言い換えれば、隣り合う測定用画素28間のx方向のピッチp及びy方向のピッチp′が基板101上におけるマルチ1次電子ビーム20の各ビーム間のピッチとなる。
図5の例では、隣り合う4つの測定用画素28のうち1つの測定用画素28を矩形の4隅の1つとして、当該測定用画素28を起点にx,y方向にp×p′で囲まれた領域をx方向に分割数N(Nは3以上の整数)で割った、x方向にp/N、-y方向にp′のサイズの矩形領域で1つのサブ照射領域29(小領域)を構成する。
図5の例では、各サブ照射領域29(個別ビームスキャン領域)は、3×9画素で構成される場合を示している。
【0039】
図6は、実施の形態1の比較例におけるスキャン動作の細部の一例を説明するための概念図である。
図6の例では、実施の形態1の比較例として、M×M’本のマルチ1次電子ビーム20のうち、y方向に1段分のM本のマルチビームを示している。ここでは、同一ピッチpでx方向に並ぶM=5本のマルチビームを示している。実施の形態1の比較例では、同一ピッチpでx方向に並ぶM=5本のマルチビームの各ビームが、当該ビームの測定用画素28を起点にx,y方向にp×p′で囲まれた領域27をすべて走査した後に、次のp×p′で囲まれた領域27を走査する場合を示している。実施の形態1の比較例では、各ビームがp×p′で囲まれた領域を走査する間(t=t
0’~t
1’の期間)にXYステージ105がN・pだけ移動するようにステージ速度を制御する。その際、副偏向器208の偏向動作により各ビームが当該p×p′で囲まれた領域を走査できるように、主偏向器208によってトラッキング偏向を行う。そして、x方向に連続してM個並ぶp×p′で囲まれた領域27の走査が終了した時点(t=t
1’)で、走査領域が重ならないように、M=5本のマルチビームをx方向に一括して偏向することでトラッキングリセットを行う。かかる動作を繰り返すことで連続移動するステージ上の領域を走査領域が重ならないようにマルチビームで走査することができる。
図6の例では、(M-1)・p(=4p)だけx方向(或いは-x方向)にマルチビームを偏向する必要がある。ビーム本数Mが多くなると、かかるビーム偏向の振り幅が非常に大きくなってしまう。そのため、電子光学系の収差の影響が大きくなってしまう。
【0040】
図7は、実施の形態1におけるスキャン動作の細部の一例を説明するための概念図である。
図7の例では、実施の形態1として、M×M’本のマルチ1次電子ビーム20のうち、y方向に1段分のM本のマルチビームを示している。ここでは、
図6と同様、同一ピッチpでx方向に並ぶM=5本のマルチビームを示している。実施の形態1では、隣り合う4つの測定用画素28のうち1つの測定用画素28を矩形の4隅の1つとして、当該測定用画素28を起点にx,y方向にp×p′で囲まれた領域27をx方向に分割数Nで分割する。よって、x方向にp/N、y方向にp′のサイズ(所定のサイズ)の矩形領域で1つのサブ照射領域29(ブロック領域)を構成する。
図7の例では、分割数N=3の場合を示している。実施の形態1では、同一ピッチpでx方向に並ぶM=5本のマルチビームの各ビームが、当該ビームの測定用画素28を起点にx方向にp/N、y方向にp′のサイズ(所定のサイズ)のサブ照射領域29(ブロック領域)を走査する。そして、次に、x方向にM個分離れた次のサブ照射領域29を走査する場合を示している。
【0041】
図7において、実施の形態1では、副偏向器208で、各ビームが(p/N)×p′で囲まれたサブ照射領域29を走査する間(t=t
0~t
1の期間)に、ステージ速度の場合、XYステージ105がp/N・Mだけ移動する。その際、副偏向器208の偏向動作により各ビームがサブ照射領域29を走査できるように、サブ照射領域29をトラッキング領域33として、主偏向器208がトラッキング偏向を行う。そして、副偏向器209により、サブ照射領域29の走査が終了した時点(t=t
1)でトラッキングリセットを行う。トラッキングリセットでは、走査領域が重ならないように、主偏向器208がM=5本のマルチビームをx方向にM個のサブ照射領域29分だけ離れた位置に一括して偏向する。
図7の例では、主偏向器208が、5個のサブ照射領域29分離れた位置に5本のマルチビームを一括して偏向する。その際、副偏向器209の偏向位置は、サブ照射領域29内の最終画素36から最初の画素28にリセットされることは言うまでもない。t=t
1~t
2の期間、t=t
2~t
3の期間、・・・と、かかる動作を繰り返すことで、ステージを連続移動させる場合でも同じストライプ領域32上で走査領域が重ならないようにマルチビームで走査できる。実施の形態1では、かかる走査方法を適用するために、x方向のビーム本数Mと分割数Nとが、互いに素の関係である値を用いる。かかる条件にすることで、走査漏れ(歯抜け)或いは重複走査を回避できる。
【0042】
図8は、実施の形態1の比較例1におけるビーム本数と分割数との関係の一例を示す図である。
図8の比較例1では、x方向のビーム本数M=4で、分割数N=3の場合を示している。y方向のビーム数M′は1以上の整数であれば任意で良い。1巡目の走査で、y方向の各段において、4本のビームがピッチpの4個のサブ照射領域29を走査する。1巡目の走査が終了すると、トラッキングリセットによって主偏向器208によりx方向にサブ照射領域29×4つ分の距離だけ離れたピッチpの4個の新たなサブ照射領域29群に照射位置を移動する。そして、2巡目の走査として、かかる新たなサブ照射領域29群走査することになる。M′が2以上の場合、
図8に示すように、下のサブ照射領域29の1巡目走査終点と上のサブ照射領域29の2巡目走査始点とが近接する。
【0043】
各サブ照射領域29の走査を行う場合に、端部の画像の抜けが生じないように、マージンを取ってサブ照射領域29よりも若干広い範囲を走査することが行われる。そのため、下のサブ照射領域29の1巡目走査終点に近接する上のサブ照射領域29の2巡目走査始点付近は、1巡目の走査による帯電直後の箇所を走査することになる。このように、複数のビームが照射される領域では他の領域よりも多く帯電する。同じサブ照射領域29内で帯電量が違う領域を跨って走査すると、得られる画像データが段差の影響を受けてしまう。
【0044】
また、その場合、1巡目の最終走査ラインがマージン領域部分になる。よって、x方向に隣接する2巡目走査の対象となるサブ照射領域29の開始走査ラインは、1巡目の最終走査ラインと重複する。或いは、1巡目の最終走査ラインの近傍の走査ラインと重複する。よって、M′が1以上の場合、2巡目の開始走査ラインは、1巡目走査での帯電直後の箇所を走査することになる。このように、複数のビームが照射される領域では他の領域よりも多く帯電する。そのため、2巡目の開始走査ラインの走査で得られる画像データは、1巡目走査の帯電の影響を受けてしまう。
【0045】
よって、帯電の影響を避けるためには、x方向のビーム本数Mと分割数Nとが、互いに素の関係であるだけでは足りないことがわかる。
図8の比較例1では、M-1=Nであった。帯電の影響を避けるため、実施の形態1では、MとNとが互いに素である他に、さらなる条件として、M-1がNの倍数でない関係であることが必要となる。
【0046】
図9は、実施の形態1におけるビーム本数と分割数との関係の一例を示す図である。
図9の例では、x方向のビーム本数M=2で、分割数N=3の場合を示している。
図9の例では、MとNとが互いに素であり、かつM-1がNの倍数でない。y方向のビーム数M′は1以上の整数であれば任意で良い。1巡目の走査で、y方向の各段において、2本のビームがピッチpの2個のサブ照射領域29を走査する。1巡目の走査が終了すると、トラッキングリセットによって主偏向器208によりx方向にサブ照射領域29×2個分の距離だけ離れたピッチpの2個の新たなサブ照射領域29群に照射位置を移動する。そして、2巡目の走査として、かかる新たなサブ照射領域29群走査することになる。
図9の例では、2巡目のサブ照射領域29が1巡目のサブ照射領域29の1つ前の位置になるので、1巡目走査終点と2巡目走査始点とを少なくともサブ照射領域29の幅分だけ離すことができる。3巡目以降のk巡目走査においても、k-1巡目走査終点とk巡目走査始点とを少なくともサブ照射領域29の幅分だけ離すことができる。
【0047】
よって、k巡目の開始走査ラインは、k-1巡目走査での帯電直後の箇所上を走査しないようにできる。そのため、k巡目の開始走査ラインの走査で得られる画像データは、k-1巡目のサブ照射領域29の走査による帯電の影響を回避できる。
【0048】
また、y方向について、y方向のビーム数M′が2以上である場合でも、上のサブ照射領域29のk巡目走査始点で得られる画像データは、下のサブ照射領域29のk-1巡目走査終点の帯電の影響を回避できる。
【0049】
なお、マルチ1次電子ビームのx方向の本数Mは、2以上であれば良いが、検査時間の短縮の観点から9本以上であることが望ましい。9本以上の場合の例を以下に説明する。
【0050】
図10は、実施の形態1におけるビーム本数と分割数との関係の他の一例を示す図である。
図10では、M=9本のx方向のビームを用いて、分割数N=5の場合のスキャン動作を示している。また、
図10では、2巡目、3巡目の走査を行う毎に、それぞれ段をずらして示している。
図10の例では、MとNとが互いに素であり、かつM-1がNの倍数でない関係である。1巡目の走査で、9本のビームがピッチpの9個のサブ照射領域29を走査する。1巡目の走査が終了すると、トラッキングリセットによって主偏向器208によりx方向にサブ照射領域29×9個分の距離だけ離れたピッチpの9個の新たなサブ照射領域29群に照射位置を移動する。そして、2巡目の走査として、かかる新たなサブ照射領域29群走査することになる。
図10の例では、2巡目のサブ照射領域29が1巡目のサブ照射領域29の1つ前の位置になるので、1巡目走査終点と2巡目走査始点とを少なくともサブ照射領域29の幅分だけ離すことができる。3巡目以降のk巡目走査においても、k-1巡目走査終点とk巡目走査始点とを少なくともサブ照射領域29の幅分だけ離すことができる。
【0051】
よって、k巡目の開始走査ラインは、k-1巡目走査での帯電直後の箇所上を走査しないようにできる。そのため、k巡目の開始走査ラインの走査で得られる画像データは、k-1巡目のサブ照射領域29の走査による帯電の影響を回避できる。
【0052】
図11は、実施の形態1におけるビーム本数と分割数との関係の他の一例を示す図である。
図11では、M=12本のx方向のビームを用いて、分割数N=5の場合のスキャン動作を示している。また、
図11では、2巡目、3巡目の走査を行う毎に、それぞれ段をずらして示している。
図11の例では、MとNとが互いに素であり、かつM-1がNの倍数でない関係である。1巡目の走査で、12本のビームがピッチpの9個のサブ照射領域29を走査する。1巡目の走査が終了すると、トラッキングリセットによって主偏向器208によりx方向にサブ照射領域29×12個分の距離だけ離れたピッチpの12個の新たなサブ照射領域29群に照射位置を移動する。そして、2巡目の走査として、かかる新たなサブ照射領域29群走査することになる。
図11の例では、2巡目のサブ照射領域29が1巡目のサブ照射領域29の2つ前の位置になるので、1巡目走査終点と2巡目走査始点とをサブ照射領域29の幅の2倍分だけ離すことができる。3巡目以降のk巡目走査においても、k-1巡目走査終点とk巡目走査始点とをサブ照射領域29の幅の2倍分だけ離すことができる。
【0053】
よって、k巡目の開始走査ラインは、k-1巡目走査での帯電直後の箇所上を走査しないようにできる。そのため、k巡目の開始走査ラインの走査で得られる画像データは、k-1巡目のサブ照射領域29の走査による帯電の影響を回避できる。
【0054】
図12は、実施の形態1の比較例2を説明するための図である。
図12において、y方向の各段のビームは、下の段のビームとx方向の座標が同じ座標である。また、各ビームのサブ照射領域29内の走査は、例えば、下から上に向かうライン走査の繰り返しである。よって、各巡目のサブ照射領域29内の走査において、下のサブ照射領域29内の1回目の走査ライン終点と上のサブ照射領域29内の2回目の走査ライン始点とが近接してしまう。同様に、k回目の走査ライン終点と上のサブ照射領域29内のk+1回目の走査ライン始点とが近接してしまう。よって、y方向にM′=2本以上のマルチ1次電子ビーム20を用いて走査する場合には、さらなる改良が望ましい。
【0055】
図13は、実施の形態1におけるサブ照射領域の配置の一例を示す図である。
図13において、x方向に連続して並ぶサブ照射領域29群とy方向に1つ分ずれたx方向に連続して並ぶサブ照射領域29群とが、x方向に、サブ照射領域29のx方向の幅よりも小さいサイズで位置をずらして配置される。
図13に示すように、例えば、x方向に連続して並ぶサブ照射領域29群とy方向に隣接するx方向に連続して並ぶサブ照射領域29とがx方向にp/(2N)だけ位置を互いにずらして配置されると好適である。これにより、下のサブ照射領域29内のk回目の走査ライン終点と上のサブ照射領域29内のk+1回目の走査ライン始点とが近接してしまうことを回避できる。かかる場合、例えば、p/(2N)の距離を離すことができる。下のサブ照射領域29内のk回目の走査ライン終点と上のサブ照射領域29内のk+1回目の走査ライン始点とをどの程度離すかは、帯電の影響により設定すればよい。すべてのサブ照射領域29内の走査を同条件にする場合には、
図13に示すように、サブ照射領域29のx方向サイズの1/2の距離、x方向に連続して並ぶサブ照射領域29群とy方向に1つ分ずれたx方向に連続して並ぶサブ照射領域29群とをx方向にずらせばよい。
【0056】
図14は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の他の一例を示す図である。
図14の例では、
図2と同様、2次元状(行列状)の横(x方向)M列×縦(y方向)M’段(Mは2以上の整数、M’は2以上の整数)の穴(開口部)22がx方向に配列ピッチL、y方向に配列ピッチL′で形成されている。
図13で説明したように、y方向に隣接するサブ照射領域29同士をサブ照射領域29のx方向の幅よりも小さいサイズでずらす場合、マルチ1次電子ビーム20の配列を変える必要がある。
図14の例では、
図13のずらし方に応じて、y方向に成形アパーチャアレイ基板203に形成される横(x方向)M列×縦(y方向)M’段の穴22の配列を変える。例えば、サブ照射領域29のx方向の幅の1/2だけy方向に隣接するサブ照射領域29同士をx方向にずらす場合、y方向に隣接する穴22同士をL/(2N)だけx方向にずらせばよい。例えば、偶数段の各穴22の位置を-x方向にL/(2N)だけシフトすればよい。
【0057】
図15は、実施の形態1における検査方法の要部工程の一部を示すフローチャート図である。
図15では、検査方法の要部工程のうち、走査開始から終了までの工程を示している。
図15において、実施の形態1における検査方法は、基板搬送工程(S102)と、検査位置移動工程(S104)と、ステージ移動工程(等速移動開始)(S106)と、サブ領域走査工程(S108)と、判定工程(S110)と、トラッキングリセット工程(S112)と、判定工程(S114)と、ストライプ移動工程(S116)と、いう一連の各工程を実施する。
【0058】
基板搬送工程(S102)として、図示しない搬送機構を用いて、検査対象基板101を検査室103内に搬送し、XYステージ105上に載置する。
【0059】
検査位置移動工程(S104)として、ステージ制御回路114の制御の基、駆動機構142は、検査位置がマルチ1次電子ビーム20の照射可能位置に入るようにXYステージ105を移動させる。まずは、第1のストライプ領域32の左端側(例えば、照射領域34のサイズ2つ分外側)にマルチ1次電子ビーム20の照射領域34が位置するようにXYステージ105を移動させる。
【0060】
ステージ移動工程(等速連続移動開始)(S106)として、ステージ制御回路114の制御のもと、駆動機構142は、XYステージ105を例えば-x方向に速度Vで等速移動させる。これにより、等速連続移動が開始される。
【0061】
サブ領域走査工程(S108)として、電子光学画像取得機構150は、基板101の検査領域となる複数のサブ照射領域29(サブ領域;小領域)をM×M’個のサブ照射領域29群毎に走査する。具体的には、まず、偏向制御回路128による制御の基、主偏向器208は、マルチ1次電子ビーム20を用いて、基板101のストライプ領域32(検査領域)がx方向にp/N(Nは3以上の整数)で得られるサイズかつy方向にp′のサイズ(所定のサイズ)で分割された複数のサブ照射領域29のうち、x方向にピッチpでM個かつy方向にM’個並ぶ基板101上のM×M’個のサブ照射領域29群にマルチ1次電子ビーム20を一括して偏向する。ここでは、マルチ1次電子ビーム20の照射領域34内の複数のサブ照射領域29のうちx方向にピッチpで並ぶM×M’個のサブ照射領域29群をトラッキング領域として偏向する。主偏向器208は、トラッキング領域の基準位置(例えば中心)にマルチ1次電子ビーム20を一括して偏向する。そして、照明光学系である1次電子光学系151は、基板101面上においてx方向に同一ピッチpでM個(Mは2以上の整数)、y方向に同一ピッチp′でM′個(M′は1以上の整数)、並ぶ複数のマルチ1次電子ビーム20を基板101に照射する。主偏向器208は、XYステージ105の連続移動に追従するようにマルチ1次電子ビーム20をトラッキング偏向する。
【0062】
なお、M’が2以上の場合には、
図13に示したように、y方向に隣接するサブ照射領域29同士をx方向にサブ照射領域29のx方向の幅より小さいサイズで互いにずらして配置する。M’が1である場合には、y方向に隣接するサブ照射領域29同士をx方向にずらす必要はない。
【0063】
そして、主偏向器208は、トラッキングを開始し、XYステージ105が-x方向にM/N・pで得られる距離を連続移動する間、XYステージ105の連続移動に追従するようにマルチ1次電子ビーム20をトラッキング偏向しながら、かかるM×M’個のサブ照射領域29群を副偏向器209で走査する。
【0064】
具体的には、偏向制御回路128による制御の基、副偏向器209(第2の偏向器)は、マルチ1次電子ビーム20の各ビームが、対応するサブ照射領域29の、例えば、左下角の画素36に位置するように、マルチ1次電子ビーム20を一括して偏向する。実際には、対応するサブ照射領域29にマージンを加えた領域の例えば、左下角の画素36に位置するように、マルチ1次電子ビーム20を一括して偏向する。そして、XYステージ105の連続移動に追従するようにマルチ1次電子ビーム20がトラッキング偏向されている間に、M×M’個のサブ照射領域29群を走査するように、マルチ1次電子ビーム20を一括して偏向する。そして、各ショット時に、各ビームは、担当サブ照射領域29内の同じ位置に相当する1つの測定用画素36を照射することになる。そして、副偏向器209によってマルチ1次電子ビーム20全体を一括してy方向に走査することで、サブ照射領域29毎に走査ライン上を担当ビームで走査する。1つのビームで1つのサブ照射領域29内のすべての測定用画素36を順に照射していく。かかる動作が、M×M’本のマルチ1次電子ビーム20で同時に行われる。
【0065】
検出工程として、マルチ検出器222は、基板101にマルチ1次電子ビーム20を照射することに起因して基板101から放出される2次電子を検出する。各ビームは、それぞれ対応する1つのサブ照射領域29を走査することになる。マルチ1次電子ビーム20のショットにより、その都度、照射された測定用画素36から2次電子が上方に放出される。このように、基板101にマルチ1次電子ビーム20を照射することに起因して基板101から放出される2次電子をマルチ検出器222が検出する。マルチ検出器222は、各測定用画素36から上方に放出されたマルチ2次電子300を測定用画素36毎に検出する。
【0066】
判定工程(S110)として、制御計算機110は、マルチ1次電子ビーム20が、それぞれ担当するサブ照射領域29(具体的には走査領域31)内のすべての測定用画素36をスキャンすると、対象のストライプ32中のすべてのサブ照射領域29の走査が終了したかどうかを判定する。対象のストライプ32中のすべてのサブ照射領域29の走査が終了した場合には、判定工程(S114)に進む。対象のストライプ32中のすべてのサブ照射領域29の走査が終了していない場合には、トラッキングリセット工程(S112)に進む。
【0067】
トラッキングリセット工程(S112)として、副偏向器209の偏向動作によって、マルチ1次電子ビーム20により、それぞれ担当するサブ照射領域29(具体的には走査領域31)内のすべての測定用画素36がスキャンされると、主偏向器208は、-x方向にN/M・pで得られる距離のXYステージ105の移動が完了するまでに、M×M’個のサブ照射領域29群からx向にM個離れた、x方向にピッチpで並ぶ新たなM×M’個のサブ照射領域29群にマルチ1次電子ビーム20を一括して偏向し直すことでトラッキングリセットを行う。言い換えれば、主偏向器208は、M×M’個のサブ照射領域29群の走査が終了するごとにx方向にM個離れた、x方向にピッチpでM個並ぶ新たなM×M’個のサブ照射領域29群にマルチ1次電子ビーム20を一括して偏向する。
【0068】
そして、かかるトラッキング開始からトラッキングリセットまでのトラッキングサイクル、及びトラッキング中の走査を繰り返す。かかる動作を繰り返すことで、ストライプ領域32のすべての画素36を走査できる。
【0069】
判定工程(S114)として、制御計算機110は、すべてのストライプ32の走査が終了したかどうかを判定する。すべてのストライプ32の走査が終了した場合には、電子光学画像取得処理を終了する。すべてのストライプ32の走査が終了していない場合には、ストライプ移動工程(S116)に進む。
【0070】
ストライプ移動工程(S116)として、ステージ制御回路114の制御の基、駆動機構142は、次のストライプ領域32の左端側(例えば、照射領域34のサイズ1つ分外側)にマルチ1次電子ビーム20の照射領域34が位置するようにXYステージ105を移動させる。そして、上述した各工程を繰り返す。
【0071】
以上のように、電子光学画像取得機構150は、XYステージ105を連続移動させながら複数の電子ビームによるマルチ1次電子ビーム20を用いて、図形パターンが形成された被検査基板101上を走査する。そして、マルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して被検査基板101から放出される、マルチ2次電子300を検出する。走査(スキャン)の仕方、及びマルチ2次電子300の検出の仕方は上述した通りである。マルチ検出器222によって検出された各測定用画素36からの2次電子の検出データは、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、ストライプパターンメモリ123に格納される。そして、1つのストライプ領域32分(或いはチップ332分)の検出データが蓄積された段階で、ストライプパターンデータ(或いはチップパターンデータ)として、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
【0072】
一方、マルチビームスキャン及び2次電子検出工程と並行或いは前後して、参照画像が作成される。
【0073】
参照画像作成工程として、参照画像作成回路112は、基板101上の露光イメージが定義された露光イメージデータに基づいて、後述するフレーム領域の測定画像(電子光学画像)に対応する領域の参照画像を作成する。露光イメージデータの代わりに、複数の図形パターンの元になる設計パターンデータを用いても良い。
【0074】
具体的には、以下のように動作する。まず、参照画像作成回路112は、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータ(或いは露光イメージデータ)を読み出す。設計パターンデータ(或いは露光イメージデータ)には、例えば、座標(x、y)、辺の長さ、図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報が定義される。かかる情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等が定義される。
【0075】
そして、参照画像作成回路112は、読み出されたデータに定義された各フレーム領域の各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。具体的には、設計パターンデータ(或いは露光イメージデータ)が参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計画像データを展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/28(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。よって、画素毎に、8ビットの占有率データが演算される。かかるマス目は、測定用画素36と同サイズにすればよい。
【0076】
次に、参照画像作成回路112は、送られてきた図形のイメージデータである設計画像データに適切なフィルタ処理を施す。検出回路106から得られた光学画像としての測定データは、電子光学系によってフィルタが作用した状態である。よって、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データにもフィルタ処理を施す。これにより、測定データに合わせることができる。このようにしてフレーム領域の測定画像(光学画像)と比較する設計画像(参照画像)を作成する。作成された参照画像の画像データは比較回路108に出力され、比較回路108内に出力された参照画像は、それぞれメモリに格納される。
【0077】
図16は、実施の形態1における比較回路の内部構成を示す図である。
図16において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置50,52、分割部56、位置合わせ部58、及び比較部60が配置される。分割部56、位置合わせ部58、及び比較部60といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。分割部56、位置合わせ部58、及び比較部60内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリに記憶される。
【0078】
転送されたストライプパターンデータ(或いはチップパターンデータ)は、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、記憶装置50に一時的に格納される。同様に、参照画像データは、設計上の各位置を示す情報と共に、記憶装置52に一時的に格納される。
【0079】
次に、分割部56は、ストライプパターンデータ(或いはチップパターンデータ)をフレーム領域(単位検査領域)毎に分割し、複数のフレーム画像(検査画像)を生成する。得られる2次電子画像は、ビーム毎にその特性がずれる可能性があるので、1つの単位検査領域の画像は1本のビームによって得られた画像を用いることが望ましい。そこで、実施の形態1では、単位検査領域となるフレーム領域として、サブ照射領域29或いはサブ照射領域29を分割した領域を用いると良い。
【0080】
次に、位置合わせ部58は、画素36より小さいサブ画素単位で、フレーム画像(測定画像)と参照画像を位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。
【0081】
そして、比較部60は、当該フレーム画像(検査画像)と当該フレーム画像(検査画像)に対応する参照画像とを比較する。例えば、比較部60は、当該フレーム画像と参照画像とを画素36毎に比較する。比較部60は、所定の判定条件に従って画素36毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素36毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。或いは、形状欠陥検査よりも検査精度を落として、パターンの断線或いはショートの有無を検査してもよい。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、モニタ117、メモリ118、或いはプリンタ119より出力されればよい。
【0082】
以上のように、実施の形態1によれば、マルチビームを用いて画像を取得する場合に、直前の走査の終点と次の走査の始点とが一定以上離れた位置になる走査ができる。よって、帯電の影響を低減できる。よって、高精度な画像を得ることができる。
【0083】
実施の形態2.
実施の形態1では、M’が2以上である場合に、y方向に隣接するサブ照射領域29同士をx方向にサブ照射領域29の幅より小さいサイズでずらす構成について説明した。但し、これに限るものではない。実施の形態2では、別の構成について説明する。実施の形態2の検査装置100の構成は、
図1と同様である。また、実施の形態2の検査方法の要部工程は、
図15と同様である。以下、特に説明する点以外の内容は、実施の形態1と同様である。
【0084】
図17は、実施の形態2におけるサブ照射領域の一例を示す図である。実施の形態2では、複数のサブ照射領域29(ブロック領域)がy方向のビーム間ピッチp′内に2個以上のサブ照射領域29が配置されるサイズで形成される。具体的には、基板101の検査領域が、x方向にp/Nのサイズ、y方向にp′/n(nは2以上の整数)のサイズで複数のサブ照射領域29に分割される。言い換えれば、実施の形態1のサブ照射領域をy方向に2以上に分割したものとなる。
図17の例では、y方向のビーム間ピッチp′内に2個のサブ照射領域29が配置される場合を示している。なお、
図17の例では、y方向の各段のサブ照射領域29のサイズが同じサイズの場合を示しているが、これに限るものではない。y方向に異なるサイズで配置されても構わない。
【0085】
そして、実施の形態2では、y方向のビーム本数M’が2以上である場合に、y方向に隣接するサブ照射領域29同士をx方向にずらす必要は無い。よって、成形アパーチャアレイ基板203についても
図2の構成で良い。
【0086】
図17の例では、分割数N=3、x方向のビーム本数Mが2本、y方向のビーム本数M′が2本のマルチ1次電子ビーム20で走査する場合を示している。1巡目の走査では、y方向に隣接する2つのビームが走査するサブ照射領域29間に、走査されていないサブ照射領域29を挟むことができる。よって、各巡目のサブ照射領域29内の走査において、下のサブ照射領域29内のk回目の走査ライン終点と上のサブ照射領域29内のk+1回目の走査ライン始点とが近接してしまうことを回避できる。かかる場合、例えば、p′/nの距離を離すことができる。
【0087】
なお、副偏向器209による一括偏向によりx方向にピッチp、y方向にピッチp′で並ぶM×M′個のサブ照射領域29の走査が終了するごとに、主偏向器208は、x方向にM個離れた、x方向にピッチp、y方向にピッチp′で並ぶ新たなM×M’個のサブ照射領域29群にマルチ1次電子ビーム20を一括して偏向する点は実施の形態1と同様である。また、x方向のビーム本数Mと分割数Nとが、互いに素の関係であり、かつ、M-1がNの倍数でない関係である点は実施の形態1と同様である。かかる動作を繰り返し、x方向に連続して並ぶブロック領域群の走査が終了する。
【0088】
図18は、実施の形態2におけるスキャンストライプ領域の一例を示す図である。
図18の例では、M′=4本の場合を示している。また、n=2の場合を示している。
図18の例では、1回目のストライプ走査によって、第1ストライプ領域32のy方向に各ビーム間の領域のうち下半分の領域(第1スキャンストライプ領域)が並列的に走査される。よって、第1ストライプ領域32のうち、y方向に各ビーム間の領域のうち上半分の領域×M′の領域の走査が行われずに残ることになる。合計で1/2の領域の走査が行われずに残ることになる。
【0089】
第1ストライプ領域32のy方向に各ビーム間の領域のうち下半分の領域(第1スキャンストライプ領域)×M′の領域の走査が終了した後、主偏向器208は、第2ストライプ領域32にマルチ1次電子ビーム20を一括して偏向する。そして、2回目のストライプ走査によって、第2ストライプ領域32のy方向に各ビーム間の領域のうち下半分の領域(第2スキャンストライプ領域)が並列的に走査される。よって、第2ストライプ領域32のうち、y方向に各ビーム間の領域のうち上半分の領域×M′の領域の走査が行われずに残ることになる。合計で1/2の領域の走査が行われずに残ることになる。
【0090】
第2ストライプ領域32のy方向に各ビーム間の領域のうち下半分の領域(第2スキャンストライプ領域)×M′の領域の走査が終了した後、主偏向器208は、第3ストライプ領域32にマルチ1次電子ビーム20を一括して偏向する。そして、3回目のストライプ走査によって、第3ストライプ領域32のy方向に各ビーム間の領域のうち下半分の領域(第3スキャンストライプ領域)が並列的に走査される。よって、第3ストライプ領域32のうち、y方向に各ビーム間の領域のうち上半分の領域×M′の領域の走査が行われずに残ることになる。合計で1/2の領域の走査が行われずに残ることになる。
【0091】
第3ストライプ領域32のy方向に各ビーム間の領域のうち下半分の領域(第3スキャンストライプ領域)×M′の領域の走査が終了した後、主偏向器208は、第1ストライプ領域32にマルチ1次電子ビーム20を一括して偏向する。そして、4回目のストライプ走査によって、第1ストライプ領域32のy方向に各ビーム間の領域のうち上半分の領域(第4スキャンストライプ領域)が並列的に走査される。これにより第1ストライプ領域32の走査が完了する。
【0092】
第4ストライプ領域32のy方向に各ビーム間の領域のうち上半分の領域(第4スキャンストライプ領域)×M′の領域の走査が終了した後、主偏向器208は、第2ストライプ領域32にマルチ1次電子ビーム20を一括して偏向する。そして、5回目のストライプ走査によって、第2ストライプ領域32のy方向に各ビーム間の領域のうち上半分の領域(第5スキャンストライプ領域)が並列的に走査される。これにより第2ストライプ領域32の走査が完了する。
【0093】
第5ストライプ領域32のy方向に各ビーム間の領域のうち上半分の領域(第5スキャンストライプ領域)×M′の領域の走査が終了した後、主偏向器208は、第3ストライプ領域32にマルチ1次電子ビーム20を一括して偏向する。そして、6回目のストライプ走査によって、第3ストライプ領域32のy方向に各ビーム間の領域のうち上半分の領域(第6スキャンストライプ領域)が並列的に走査される。これにより第3ストライプ領域32の走査が完了する。
【0094】
以上のように、y方向に同時に走査していない少なくとも1個分のサブ照射領域29を空けて走査することにより、下のサブ照射領域29内のk回目の走査ライン終点と上のサブ照射領域29内のk+1回目の走査ライン始点とが近接してしまうことを回避できる。そして、ストライプ領域32内に走査が済んでいない領域を残して別のストライプ領域32の一部の領域の走査をした後に、戻って走査が済んでいない領域を走査する。これにより、走査が済んでいない領域を無くすことができる。
【0095】
図19は、実施の形態2におけるスキャンストライプ領域の他の一例を示す図である。
図19の例では、M′=4本の場合を示している。また、n=2の場合を示している。
図19の例では、1回目のストライプ走査によって、第1ストライプ領域32のy方向にビーム間の領域のうち下半分の領域(第1スキャンストライプ領域)×M′個の領域が並列的に走査される。よって、第1ストライプ領域32のうち、y方向にビーム間の領域のうち上半分の領域×M′個の領域の走査が行われずに残ることになる。合計で1/2の領域の走査が行われずに残ることになる。
【0096】
第1ストライプ領域32のy方向にビーム間の領域のうち下半分の領域(第1スキャンストライプ領域)×M′個の領域の走査が終了した後、主偏向器208は、y方向にサブ照射領域1個分だけ移動した位置にマルチ1次電子ビーム20を一括して偏向する。そして、2回目のストライプ走査によって、第1ストライプ領域32のy方向にビーム間の領域のうち上半分の領域(第2スキャンストライプ領域)×M′個の領域が並列的に走査される。これにより第1ストライプ領域32の走査が完了する。
【0097】
第1ストライプ領域32のy方向にビーム間の領域のうち上半分の領域(第2スキャンストライプ領域)×M′個の領域の走査が終了した後、主偏向器208は、第2ストライプ領域32にマルチ1次電子ビーム20を一括して偏向する。そして、3回目のストライプ走査によって、第2ストライプ領域32のy方向にビーム間の領域のうち下半分の領域(第3スキャンストライプ領域)×M′個の領域が並列的に走査される。よって、第2ストライプ領域32のうち、y方向にビーム間の領域のうち上半分の領域×M′個の領域の走査が行われずに残ることになる。合計で1/2の領域の走査が行われずに残ることになる。
【0098】
第2ストライプ領域32のy方向にビーム間の領域のうち下半分の領域(第3スキャンストライプ領域)×M′個の領域の走査が終了した後、主偏向器208は、y方向にサブ照射領域1個分だけ移動した位置にマルチ1次電子ビーム20を一括して偏向する。そして、4回目のストライプ走査によって、第2ストライプ領域32のy方向にビーム間の領域のうち上半分の領域(第4スキャンストライプ領域)×M′個の領域が並列的に走査される。これにより第2ストライプ領域32の走査が完了する。以降、同様に繰り返すことで、各ストライプ領域32の走査を完了することができる。
【0099】
以上のように、y方向に同時に走査していない少なくとも1個分のサブ照射領域29を空けて走査することにより、下のサブ照射領域29内のk回目の走査ライン終点と上のサブ照射領域29内のk+1回目の走査ライン始点とが近接してしまうことを回避できる。そして、ストライプ領域32内で走査が済んでいない領域の走査を完了してから次のストライプ領域32に移動する。これにより、走査が済んでいない領域を無くすことができる。
【0100】
実施の形態3.
実施の形態1では、M’が2以上である場合に、y方向に隣接するサブ照射領域29同士をx方向にサブ照射領域29の幅より小さいサイズでずらす構成について説明した。但し、これに限るものではない。実施の形態3では、サブ照射領域29の幅単位でx方向にずらす場合について説明する。実施の形態3の検査装置100の構成は、
図1と同様である。また、実施の形態3の検査方法の要部工程は、
図15と同様である。以下、特に説明する点以外の内容は、実施の形態1と同様である。
【0101】
図20は、実施の形態3におけるサブ照射領域の一例を示す図である。実施の形態3では、マルチ1次電子ビーム20のy方向に隣接するビーム同士が、基板上においてx方向に相対的にシフト量S×サブ照射領域29分(Sは1以上の整数)、位置がずれて配列される。
図20の例では、y方向に2段目のビーム列が-x方向にサブ照射領域29×1個分だけずれた位置を照射する場合を示している。
【0102】
図20の例では、分割数N=4、x方向のビーム本数Mが3本、y方向のビーム本数M′が2本以上(ここでは3本)のマルチ1次電子ビーム20で走査する場合を示している。1巡目の走査では、y方向に隣接する2つのビームが走査するサブ照射領域29がx方向に相対的に1個分ずれている。よって、各巡目のサブ照射領域29内の走査において、下のサブ照射領域29内のk回目の走査ライン終点と上のサブ照射領域29内のk+1回目の走査ライン始点とが近接してしまうことを回避できる。また、各走査巡目の下のサブ照射領域20の走査終了点と上のサブ照射領域20の走査開始点とが近接してしまうことを回避できる。
【0103】
なお、副偏向器209による一括偏向によりx方向にピッチp、y方向にピッチp′で並ぶM×M′個のサブ照射領域29の走査が終了するごとに、主偏向器208は、x方向にM個離れた、x方向にピッチp、y方向にピッチp′で並ぶ新たなM×M’個のサブ照射領域29群にマルチ1次電子ビーム20を一括して偏向する点は実施の形態1と同様である。また、x方向のビーム本数Mと分割数Nとが、互いに素の関係であり、かつ、M-1がNの倍数でない関係である点は実施の形態1と同様である。かかる動作を繰り返し、x方向に連続して並ぶブロック領域群の走査が終了する。
【0104】
図21は、実施の形態3におけるシフト量とビーム本数と分割数との関係を説明するための図である。
図21の例では、y方向に2段目のビーム列が基板101上において-x方向にシフト量S=2だけシフトする場合を示す。その他の構成は
図20と同様である。すなわち、分割数N=4、x方向のビーム本数Mが3本、y方向のビーム本数M′が2本以上(ここでは2本)のマルチ1次電子ビーム20で走査する場合を示している。S=2の場合、1巡目の下のサブ照射領域20の走査終了点と上のサブ照射領域20の走査開始点とが近接してしまう。よって、シフト量Sとビーム本数Mと分割数Nとのさらなる関係が必要である。
【0105】
実施の形態3では、さらなる関係として、x方向のビーム本数Mからシフト量の絶対値と1とを差し引いた値の絶対値(|M-|S|-1|)がNの倍数若しくは0ではなく、かつSがNの倍数ではない関係であることが必要となる。
図21の例では、M′が2以上である場合、S=0では、シフトしていないので、
図12と同じ走査手法となり、NGである。S=1では、
図19と同じ走査手法となり、OKとなる。S=2では、
図21の例に示すようにNGである。S=3ではOK、S=4ではNG、S=5ではOK、S=6ではNGとなる。
【0106】
図22は、実施の形態3における成形アパーチャアレイ基板の他の一例を示す図である。
図22の例では、
図2と同様、2次元状(行列状)の横(x方向)M列×縦(y方向)M’段(Mは2以上の整数、M’は2以上の整数)の穴(開口部)22がx方向に配列ピッチL、y方向に配列ピッチL′で形成されている。
図20で説明したように、y方向に隣接するサブ照射領域29同士をサブ照射領域29×S個だけx方向にシフトする。その場合、マルチ1次電子ビーム20の配列を変える必要がある。
図22の例では、
図20のずらし方に応じて、成形アパーチャアレイ基板203に形成される横(x方向)M列×縦(y方向)M’段の穴22の配列を変える。例えば、サブ照射領域29×1個分の距離だけy方向に隣接するサブ照射領域29同士を-x方向にずらす場合、y方向に隣接する穴22同士をS・L/Nだけ-x方向にずらせばよい。例えば、y方向に偶数段の各穴22の位置をS・L/Nだけ-x方向にずらせばよい。
【0107】
以上のようにy方向に隣接するビーム同士が走査するサブ照射領域29をx方向にシフトすることで、帯電の影響を低減できる。
【0108】
以上の説明において、一連の「~回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。
【0109】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。上述した例では、XYステージ105を等速で連続移動させる場合を示したが、これに限るものではない。制御のし易さからは等速連続移動が望ましいが、加減速を伴う連続移動であっても構わない。また、ステップアンドリピート方式で走査してもよい。
【0110】
また、上述した例では、トラッキング偏向とサブ照射領域29内の走査用の偏向とを主副2段の多段偏向器(主偏向器208及び副偏向器209)を用いる場合を示したがこれに限るものではない。同じ偏向器で、トラッキング偏向とサブ照射領域29内の走査用の偏向との両方の偏向制御を行っても好適である。かかる場合には、偏向器を構成する各電極に、それぞれトラッキング偏向用の偏向電圧とサブ照射領域29内の走査用の偏向用の偏向電圧とを加算した電圧を印加すればよい。かかる偏向電圧の制御は偏向制御回路128が行えばよい。
【0111】
また、サブ照射領域29内を走査する場合のビームの照射順序は、任意で構わない。但し、副偏向器208によりマルチ1次電子ビーム20全体が一括して偏向されるので、各照射領域29間では、同じ照射順序になる。
【0112】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0113】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0114】
17 磁極
18 電極
20 マルチ1次電子ビーム
22 穴
29 サブ照射領域
32 ストライプ領域
33 矩形領域
34 照射領域
100 検査装置
101 基板
102 電子ビームカラム
103 検査室
106 検出回路
107 位置回路
108 比較回路
109 記憶装置
110 制御計算機
112 参照画像作成回路
114 ステージ制御回路
117 モニタ
118 メモリ
119 プリンタ
120 バス
122 レーザ測長システム
123 チップパターンメモリ
124 レンズ制御回路
126 ブランキング制御回路
128 偏向制御回路
132 E×B制御回路
142 ステージ駆動機構
144,146,148 DACアンプ
150 画像取得機構
151 1次電子光学系
152 2次電子光学系
160 制御系回路
200 電子ビーム
201 電子銃
202,205,207 磁気レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
208 主偏向器
209 副偏向器
212 一括偏向器
213 制限アパーチャ基板
214 E×B分離器
216 ミラー
218 偏向器
222 マルチ検出器
224 投影レンズ
226 偏向器
300 マルチ2次電子ビーム
301 2次電子ビーム
330 検査領域
332 チップ