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特開2022-154145生活行動推定装置及びこの装置を用いた家人見守りシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154145
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】生活行動推定装置及びこの装置を用いた家人見守りシステム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
G08B25/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057038
(22)【出願日】2021-03-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.開催日 令和2年9月14日 集会名 「IEEE International Conference on Smart Computing(SMARTCOMP 2020)」 開催場所 オンライン開催(https://zoom.us/j/95895480584?pwd=Zi95b2JpYVluQmdUNDJDMTkvVWpQUT09) 2.掲載日 令和2年9月14日 掲載アドレス https://conferences.computer.org/smartcomp/#!/toc/0 https://conferences.computer.org/smartcomp/pdfs/SMARTCOMP2020-4Hjgt7Ifv9GdaywXmXXUSh/699700a302/699700a302.pdf https://drive.google.com/file/d/1VpNxHvz8AvpRuB_R4C5OFRcRNCk65fb1/preview 3.掲載日 令和2年9月14日 掲載アドレス https://www.computer.org/csdl/home https://www.computer.org/csdl/proceedings-article/smartcomp/2020/699700a302/1oxoe7wJ5ny 4.掲載日 令和3年1月15日 掲載アドレス https://myukk.org/SM2017/sm_pdf/SM2438.pdf 5.発行日 令和3年1月15日 刊行物名 「Sensors and Materials,Vol.33,No.1(2021)」 発行者名 株式会社ミュー
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】柴田 広之
(72)【発明者】
【氏名】岡 克己
(72)【発明者】
【氏名】塚本 兼大
(72)【発明者】
【氏名】山口 弘純
(72)【発明者】
【氏名】石津 紘太朗
(72)【発明者】
【氏名】水本 旭洋
(72)【発明者】
【氏名】東野 輝夫
【テーマコード(参考)】
5C087
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087AA04
5C087DD03
5C087DD24
5C087EE08
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF04
5C087FF10
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG70
5C087GG83
(57)【要約】
【課題】家人の状態をより正確に判定するために、消費電力データに基づいて、人の生活行動を分類できる技術を提供する。
【解決手段】生活行動推定装置は、家庭毎の消費電力を時系列で示す家庭消費電力データから所定の時間間隔で消費電力区間データを抽出する区間データ抽出部12と、消費電力区間データから前記消費電力に関する複数種類の特徴量群を算出する特徴量算出部13と、家人の実際の生活行動分類子と特徴量群とからなる学習データを生成する学習データ生成部20と、学習データを用いて、特徴量群を入力して家人の生活行動分類子を出力するランダムフォレストモデルを生成するランダムフォレスト生成部30とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家庭毎の消費電力を時系列で示す家庭消費電力データから所定の時間間隔で消費電力区間データを抽出する区間データ抽出部と、
前記消費電力区間データから前記消費電力に関する複数種類の特徴量群を算出する特徴量算出部と、
前記時間間隔における前記家庭における家人の実際の生活行動分類子と、前記時間間隔における前記特徴量群とからなる学習データを生成する学習データ生成部と、
前記学習データを用いて、前記特徴量群を入力して前記家人の生活行動分類子を出力するランダムフォレストモデルを生成するランダムフォレスト生成部と、
を備える生活行動推定装置。
【請求項2】
前記特徴量群には、前記時間間隔に実時刻を関係付ける時刻データが含まれている請求項1に記載の生活行動推定装置。
【請求項3】
前記時間間隔は数十分であり、前記生活行動分類子には、就寝、在宅、外出、調理が含まれ、前記特徴量の種類には、ピーク数、最小値、最大値、平均値、標準偏差、連続する微小時間における差分値、特定周期でのパワースペクトル、時系列で直前に算出された直前特徴量、時系列で直前に出力された前記生活行動分類子、から選択された少なくとも1つのものが含まれる請求項1または2に記載の生活行動推定装置。
【請求項4】
前記ランダムフォレスト生成部は、生活形式が異なる複数の家庭群毎に異なる前記ランダムフォレストモデルとして、複数種のサブランダムフォレストモデルを生成する請求項1から3のいずれか一項に記載の生活行動推定装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の生活行動推定装置によって生成された前記ランダムフォレストモデルを備えた家人見守りシステムであって、
前記消費電力区間データから算出された特徴量群に基づいて前記ランダムフォレストモデルから出力された前記時間間隔より長い推定期間での生活行動分類子群から生活行動パターンを算出する生活行動パターン算出部を備えている家人見守りシステム。
【請求項6】
前記生活行動パターン算出部によって算出された前記生活行動パターンに基づいて、前記家庭毎の家人の異常事態を判定する異常事態判定部が備えられている請求項5に記載の家人見守りシステム。
【請求項7】
前記異常事態判定部は、前記生活行動パターンを、過去に算出された生活行動パターン履歴と比較して、前記異常事態を判定する請求項6に記載の家人見守りシステム。
【請求項8】
前記生活行動パターン算出部は、生活形式が異なる複数の家庭群毎に異なる前記ランダムフォレストモデルとして生成されているサブランダムフォレストモデル群から、推定対象となる家庭に最適な最適サブランダムフォレストモデルを選択するモデル選択部を備えている請求項5または6に記載の家人見守りシステム。
【請求項9】
前記モデル選択部は、前記サブランダムフォレストモデルの作成に係る基準家庭の当該サブランダムフォレストモデルによる前記生活行動分類子の前記推定期間での分布割合と、当該サブランダムフォレストモデルから出力された推定対象となる家庭の前記生活行動分類子の前記推定期間での分布割合とを前記サブランダムフォレストモデル毎に比較して、前記分布割合同士が最も適合した前記サブランダムフォレストモデルを前記最適サブランダムフォレストモデルとして選択する請求項8に記載の家人見守りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家人の家庭における生活行動を消費電力データから推定する生活行動推定装置、及びこの生活行動推定装置を用いて遠隔地から家人の見守りを行う家人見守りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、住居で使用される電力に関する電力使用量データに基づいて、住居における居住者の異常の発生を検出する見守り装置が開示されている。この見守り装置では、時系列で取得される電力使用量データから時系列で算出された電力使用量の変化量に関する指標と、同じ時間帯の過去の指標との間の乖離度を算出し、算出された乖離度に基づき、居住者における異常の発生の有無が判定される。
【0003】
特許文献2には、住宅内での居住者を見守る見守り装置が開示されている。この見守り装置では、消費電力から抽出された複数の周波数成分に基づいて居住者による電気機器の操作結果である居住者の活動量を算出し、この活動量に基づいて居住者の安否が判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6185683号公報
【特許文献2】特許第5452558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、家庭の消費電力データから算出される変化量を同時間帯で比較し、その乖離度に基づいて居住者の異常が判定される。特許文献2では、家庭の消費電力データに対する周波数分析に基づいて居住者による電気機器の操作状態、つまり居住者の状態が判定される。つまり、特許文献1及び特許文献2では、見守りの基本データとして、家庭の消費電力データが用いられている。さらに、特許文献1では消費電力データの変化量が特徴量として採用され、特許文献2では消費電力データの周波数分析結果が特徴量として採用されている。しかしながら、調理したり、外出をしたりする等、ある程度活発に行動する家人の生活行動を分析するには、特定の特徴量だけでは、不十分であり、家人の状態を正確に判定することが困難である。
【0006】
上記実情に鑑み、本発明の目的は、家人の状態をより正確に判定するために、消費電力データに基づいて、人の生活行動を分類できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による生活行動推定装置は、家庭毎の消費電力を時系列で示す家庭消費電力データから所定の時間間隔で消費電力区間データを抽出する区間データ抽出部と、前記消費電力区間データから前記消費電力に関する複数種類の特徴量群を算出する特徴量算出部と、前記時間間隔における前記家庭における家人の実際の生活行動分類子と、前記時間間隔における前記特徴量群とからなる学習データを生成する学習データ生成部と、前記学習データを用いて、前記特徴量群を入力して前記家人の生活行動分類子を出力するランダムフォレストモデルを生成するランダムフォレスト生成部とを備える。
【0008】
この構成によれば、家庭消費電力データから所定の時間間隔で抽出された消費電力区間データを抽出し、同じ消費電力区間データから複数種類の特徴量が算出される。この複数種類の特徴量、つまり特徴量群を入力データとして、この時間間隔における家人の生活行動分類子を出力するランダムフォレストモデルが、学習を通じて生成される。その学習時に用いられる学習データは、時間間隔における家庭における家人の実際の生活行動分類子(正解データ)と、時間間隔における特徴量群とからなる。消費電力区間データ毎に算出された特徴量が組み合わされることで、この消費電力区間データ毎に生活行動分類子がランダムフォレストモデルから出力される。このランダムフォレストモデルでは、複数種類の特徴量から、ランダムに選択された特徴量の異なる組み合わせを用いて作成された複数の決定木からの複数の推定結果(生活行動分類子)が出力され、さらに、それらの推定結果に基づいて最終的な推定結果が出力される。つまり、複数の決定木からの推定結果を総括して、最終結論が得られる。このため、より正確な家人の生活行動の推定が可能となる。
【0009】
家人の生活行動の多くは、時刻帯に依存している。したがって、消費電力区間データが抽出される時間間隔に実時刻を関係付けると好都合である。特徴量として時刻データ(タイムスタンプ)も採用され、決定木での分岐条件の1つとして時刻帯が用いられることで、生活行動の推定がより正確となる。このことから、実施形態の1つでは、前記特徴量群には、前記時間間隔に実時刻を関係付ける時刻データ(タイムスタンプ)が含まれている。
【0010】
好適な実施形態の1つでは、前記時間間隔は数十分であり、前記生活行動分類子には、就寝、在宅、外出、調理(料理)が含まれ、前記特徴量の種類には、ピーク数、最小値、最大値、平均値、標準偏差、連続する微小時間における差分値、特定周期でのパワースペクトル、時系列で直前に算出された直前特徴量、時系列で直前に出力された前記生活行動分類子、から選択された少なくとも1つのものが含まれる。この構成では、生活行動分類子には、見守り対象となる家人の生活行動のうち、生活パターンを知る上で重要となる行動として、就寝、在宅、外出、調理が含まれている。それらの生活行動分類子に関係する消費電力区間データにおける消費電力に関する特徴量として、ピーク数、最小値、最大値、平均値、標準偏差、連続する微小時間における差分値、特定周期でのパワースペクトル、時系列で直前に算出された直前特徴量、時系列で直前に出力された生活行動分類子などが用いられる。このような多種の特徴量を用いることで、種々の決定特性を有する多数の決定木が作成される。これにより、家人の生活行動の推定がより正確となる。
【0011】
家人の生活行動は、家庭の特徴に依存する。例えば、北国の家庭と南国の家庭、都会の家庭と田舎の家庭、といった家庭の特徴、さらには季節によっても、家人の生活行動が異なることが少なくない。このため、このような様々な家庭に対して、共通のランダムフォレストモデルを適用することは、最良ではない。家庭を上記のような特徴、つまりその生活様式によって区分けし、各区分けされた家庭に適したランダムフォレストモデルが作成され、適正なランダムフォレストモデルが選択されることが好ましい。このことから、好適な実施形態の1つでは、前記ランダムフォレスト生成部は、生活形式が異なる複数の家庭群毎に異なる前記ランダムフォレストモデルとして、複数種のサブランダムフォレストモデルを生成する。
【0012】
本願は、上述した生活行動推定装置によって生成されたランダムフォレストモデルを用いて、家庭毎の消費電力を時系列で示す家庭消費電力データから家人の見守りを行う家人見守りシステムも発明の対象としている。この家人見守りシステムは、上述した生活行動推定装置によって生成された前記ランダムフォレストモデルと、前記消費電力区間データから算出された特徴量群に基づいて前記ランダムフォレストモデルから出力された前記時間間隔より長い推定期間での生活行動分類子群から生活行動パターンを算出する生活行動パターン算出部とを備えている。この推定期間が一日であれば、算出された生活行動パターンから、家人の基本的な生活単位である一日の様子が把握できる。毎日の家人の生活行動パターンが分かると、家人が異常な状態であるかどうかを判定することができるので、家人見守りシステムは、前記生活行動パターン算出部によって算出された前記生活行動パターンに基づいて、前記家庭毎の家人の異常事態を判定する異常事態判定部を備えている。なお、家人見守りシステムに備えられているランダムフォレストモデルは、生活行動推定装置によって学習された学習済ランダムフォレストモデルであるが、特に区別する必要がない限り、単にランダムフォレストモデルと称する。
【0013】
見守りが必要な家人は、多くの場合、日々、できるだけ規則正しい行動をするように指導されている場合が多い。したがって、過去の平均的な生活行動パターンから突出するような生活行動パターンが算出されると、異常な事態が発生している可能性が高い。このため、見守りが必要な家人の日々の生活行動パターンを履歴データとして格納しておき、この履歴データと、新たに算出された生活行動パターンとを比較して、現在の家人が異常な状態になっていないかどうかを判定することは好適である。このことから、前記異常事態判定部は、前記生活行動パターンを、過去に算出された生活行動パターン履歴と比較して、前記異常事態を判定するように構成されている。
【0014】
家人の正常な生活行動パターンは、上述したように、北国の家庭と南国の家庭、都会の家庭と田舎の家庭、さらには季節ごとの家庭の動向、といった家庭の特徴を決定する生活形式によって、異なったものとなる。このことから、見守りシステムにおいても、生活形式が異なる複数の家庭群毎に別々に生成された複数のサブランダムフォレストモデルから、見守り対象となる家庭に適したサブランダムフォレストモデルを用いることが好ましい。このことから、好適な実施形態の1つでは、前記生活行動パターン算出部は、生活形式が異なる複数の家庭群毎に異なる前記ランダムフォレストモデルとして生成されているサブランダムフォレストモデル群から、推定対象となる家庭に最適な最適サブランダムフォレストモデルを選択するモデル選択部を備えている。
【0015】
複数のサブランダムフォレストモデルから推定対象となる家庭に最適なモデルは、家庭の地域や季節から選択してもよいが、同じ地域、同じ季節であっても、他の家庭の特徴からかなり外れた特徴をもつ家庭もあり、そのような家庭の家人の行動パターンは、他の家庭の家人の行動パターンとはかなり異なることになる。このような問題を解消するための好適な実施形態の1つでは、前記モデル選択部は、前記サブランダムフォレストモデルの作成に係る基準家庭の当該サブランダムフォレストモデルによる前記生活行動分類子の前記推定期間での分布割合と、当該サブランダムフォレストモデルから出力された推定対象となる家庭の前記生活行動分類子の前記推定期間での分布割合とを前記サブランダムフォレストモデル毎に比較して、前記分布割合同士が最も適合した前記サブランダムフォレストモデルを前記最適サブランダムフォレストモデルとして選択する。この構成では、見守り対象となる家人の家庭から取得された家庭消費電力データが、全てのサブランダムフォレストモデル、または特定の複数のサブランダムフォレストモデルに適用される。これにより、各サブランダムフォレストモデルから見守り対象となる家人の推定期間(例えば一日)の生活行動分類子が出力され、この推定期間における生活行動分類子の分布割合が求められる。生活行動分類子の分布割合は、当該サブランダムフォレストモデルの作成に係る基準家庭における同じ推定期間での生活行動分類子の分布割合と比較される。この分布割合の比較処理は全てのサブランダムフォレストモデルに対して行われる。この比較処理において、最も分布割合が適合したサブランダムフォレストモデルが、推定対象となっている家人にとって、最も正確な生活行動分類子を出力するサブランダムフォレストモデル、つまり適合度が高い、最適サブランダムフォレストモデルとなる。したがって、この最適サブランダムフォレストモデルから出力される生活行動分類子から算出される生活行動パターンが家人の異常事態の判定に用いられることで、判定精度が向上する。
【0016】
本発明のその他の特徴、作用及び効果は、以下の図面を用いた本発明の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】生活行動推定装置及びこの装置を用いた家人見守りシステムの概略図である。
図2】生活行動推定装置の機能を示す機能ブロック図である。
図3】家人見守りシステムの基本構成を示す機能ブロック図である。
図4】ランダムフォレストを構成する決定木の学習状態を模式的に示す説明図である。
図5】生活行動推定装置によって生活行動分類子が出力される状態を模式的に示す説明図である。
図6】家人見守りシステムの実施形態の1つの構成を示す機能ブロック図である。
図7】各サブランダムフォレストによる基準家庭と推定対象家庭との活動比率を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて、本発明による生活行動推定装置APE及び家人見守りシステムWSの実施形態の1つを説明する。図1には、生活行動推定装置APE、及びこの生活行動推定装置APEによって生成されたランダムフォレストを用いた家人見守りシステムWSの概要が示されている。
【0019】
この実施形態では、家庭は、電力供給会社ECから電力の供給を受けており、家庭に装備されたメータ(電力量計)Mによって家庭毎の消費電力を時系列で示す家庭消費電力データは通信線を介して電力供給会社ECに送られる。生活行動推定装置APEと家人見守りシステムWSとを構築している管理コンピュータシステムCSは、電力供給会社ECから家庭消費電力データを受け取る。管理コンピュータシステムCSは、登録されたユーザ(家人)の見守り情報をインターネットや公衆回線を通じて通知するユーザ管理部UCも備えている。
【0020】
生活行動推定装置APEは、図2に示されているように、登録ユーザ家庭における家人の生活行動分類子をその家庭消費電力データに基づいて推定し、出力する。家人見守りシステムWSは、図3に示されているように、生活行動推定装置APEから出力された一日の生活行動分類子群から算出される生活行動パターンに基づいて、家人の異常事態を判定する。
【0021】
図2には、生活行動推定装置APEの機能を示す機能ブロックと情報の流れとが示されている。生活行動推定装置APEは、家庭消費電力データ入力部11、区間データ抽出部12、特徴量算出部13、学習データ生成部20、ランダムフォレスト生成部30、モデル作成管理部40を備えている。モデル作成管理部40は、家庭消費電力データ入力部11、区間データ抽出部12、特徴量算出部13、学習データ生成部20、ランダムフォレスト生成部30の各動作を制御する。図3には、生活行動推定装置APEによって生成されたランダムフォレストモデルを備えた家人見守りシステムWSの基本構成が示されている。
【0022】
家庭消費電力データ入力部11は、登録ユーザの家庭消費電力データを入力する。この実施形態では、家庭消費電力データは、30秒単位の時系列電力データである。さらに、この家庭消費電力データは、実際の時刻と電力との関係を示している。区間データ抽出部12は、家庭消費電力データから所定の時間間隔で消費電力区間データを抽出する。この実施形態では、所定の時間間隔として、30分が用いられている。もちろん、その他の時間間隔、家人の生活行動分類子が安定的に得られ、生活行動分類子に基づく生活行動パターンを通じて家人の異常事態が良好に判定できる時間間隔が用いられてもよい。なお、それぞれの消費電力区間データには、時刻(タイムスタンプ)が付与される。したがって、消費電力区間データから、特定年月日における特定時刻から特定時刻までの消費電力の挙動を取得することができる。
【0023】
特徴量算出部13は、消費電力区間データから消費電力に関する複数種類の特徴量群を算出する。この実施形態で用いられている特徴量群には、消費電力区間データにおけるピーク数、消費電力区間データにおける最小値、消費電力区間データにおける最大値、消費電力区間データにおける平均値、消費電力区間データにおける標準偏差、消費電力区間データをさらに区分けした微小区間における連続する微小区間(微小時間)での差分値、消費電力区間データにおけるパワースペクトルが含まれる。ここでのパワースペクトルには、特定周期でのパワースペクトル、例えば、1分周期でのパワースペクトル、2分周期でのパワースペクトル、・・・30分周期でのパワースペクトルが含まれる。さらに特徴量群には、処理対象となっている消費電力区間データの少なくとも直前の消費電力区間データを含む過去の消費電力区間データから算出された直前特徴量(過去特徴量)、例えば、過去3時間分の最小値、最大値、平均値、標準偏差なども含まれる。さらには、これらの直前特徴量を用いて、生活行動推定装置APEが出力(推定)した先行して得られた生活行動分類子、例えば直前の30分で得られた生活行動分類子も、生活行動推定装置APEに入力する特徴量として取り扱うことができる。
【0024】
ランダムフォレスト生成部30は、機械学習を通じて、特徴量群を入力して家人の生活行動分類子を出力するランダムフォレストモデルを生成する。ランダムフォレストモデルは、図4に示すように、複数の決定木から構成されている。学習データ生成部20は、ランダムフォレストモデルの各決定木を学習させるための学習データを生成して、ランダムフォレスト生成部30に与える。学習データは、説明変数と正解データとからなる。説明変数は、消費電力区間データから算出された特徴量群から抽出される。正解データは、特徴量群の算出のために用いられた消費電力区間データが抽出された時間間隔(時刻間隔)における家人が行った実際の生活行動の種類(生活行動分類子と称する)である。なお、家人が行った実際の生活行動の種類は、ユーザ管理部UCが構築しているオンラインユーザインタフェースなどを通じて家人によって入力される。この実施形態では、図4に示すように、生活行動分類子は、「就寝」、「在宅」、「外出」、「調理」である。
【0025】
図5に示すように、ランダムフォレストモデルは、互いに相関の低い複数の決定木から構成されている。学習データからランダムに抽出された選択学習データが、各決定木に与えられる。その際、学習データ内の最小の生活行動分類子の数に合わせて抽出数を調整するダウンサンプリングが実施される。つまり、学習のために抽出される選択学習データにおいて、正解データが、「就寝」、「在宅」、「外出」、「調理」となるデータ数は、ほぼ等しくされる。例えば、一日の学習データに、「就寝」が40個、「在宅」が50個、「外出」が30個、「調理」30個が含まれていた場合、ダウンサンプリングによって、実際に適用される選択学習データには、それぞれ、「就寝」が30個、「在宅」が30個、「外出」が30個、「調理」30個が含まれることになる。選択学習データは、ランダムフォレストモデルを構成する各決定木に与えられる。ランダムフォレストモデルでは、複数の決定木の出力結果に基づいて、例えば多数決で、ランダムフォレストモデルの出力結果(生活行動分類子)が決定され、出力される。
【0026】
なお、この実施形態では、特徴量群には、消費電力区間データの時間間隔に実時刻を関係付ける時刻データ(タイムスタンプ)が含まれているので、説明変数として、時刻データも用いられる。例えば、決定木のノードの選択肢として所定時刻以降という条件式や所定時刻以前という条件式などが用いられる。
【0027】
ランダムフォレスト生成部30は、学習が終了し、ランダムフォレストモデルが完成すると、当該ランダムフォレストモデルを規定するモデルパラメータを出力する。この実施形態では、ランダムフォレスト生成部30がこのモデルパラメータを家人見守りシステムWSに与えることで、家人見守りシステムWS内に、モデルパラメータに基づいてランダムフォレストモデル部50が構築される。つまり、ランダムフォレストモデル部50は、ランダムフォレスト生成部30によって学習された学習済ランダムフォレストモデル部である。
【0028】
家人見守りシステムWSの基本的な構成が、図3に示されている。この家人見守りシステムWSには、図3に示すように、学習済ランダムフォレストモデルとして機能するランダムフォレストモデル部50と、生活行動パターン算出部50Aと、異常事態判定部60と、報知部70が備えられている。生活行動パターン算出部50Aは、ランダムフォレストモデル部50から出力された所定の推定期間(好ましくは一日)分の生活行動分類子群から生活行動パターンを算出する。異常事態判定部60は、各家庭の家人の異常事態を判定する。報知部70は、異常事態判定部60により判定された異常事態を、該当する登録ユーザに報知する。家人見守りシステムWSは、生活行動推定装置APEの特徴量算出部13から、または生活行動推定装置APEに相当する機能を有する付属装置から、必要な特徴量群を取得し、ランダムフォレストモデル部50に与える。これにより、ランダムフォレストモデル部50から経時的に出力される生活行動分類子群から生活行動パターンが算出される。日々の生活行動パターンに基づいて、異常事態判定部60が家庭毎の家人の異常事態を判定する。例えば、「就寝」時間や「外出」時間が異常に長い、「調理」時間が欠落している、などの事象が生じると、異常事態が発生していると判定することができる。
【0029】
図3の構成では、生活行動推定装置APEの家庭消費電力データ入力部11、区間データ抽出部12、特徴量算出部13が、家人見守りシステムWSで流用される。これに代えて、家庭消費電力データ入力部11、区間データ抽出部12、特徴量算出部13が備えられると、家人見守りシステムWSは、生活行動推定装置APEとは独立したシステムとして構築できる。あるいは、生活行動推定装置APEと家人見守りシステムWSとが、一体化されてもよい。
【0030】
図6で示すように、この実施形態における家人見守りシステムWSは、図3で示した基本構成に比べて、より複雑な構成となっている。この家人見守りシステムWSでは、生活行動パターン算出部50Aは、サブモデル格納部51とサブモデル選択部52とを備えており、異常事態判定部60は、パターン履歴記憶部61を備えている。パターン履歴記憶部61は、過去に算出された生活行動パターンを生活行動パターン履歴として時系列で記憶している。異常事態判定部60は、推定当日の生活行動パターンと、パターン履歴記憶部61から読み出された過去の生活行動パターンとの類似度を算出し、類似度が閾値レベルより小さい場合、異常事態の発生を判定する。類似度を比較対象間の距離で算出する場合には、ユークリッド距離やマハラノビス距離などが用いられる。
【0031】
サブモデル格納部51には、生活行動推定装置APEのランダムフォレスト生成部30によって生活形式が異なる複数の家庭群毎に生成された、複数種のサブランダムフォレストモデル群が格納される。このため、生活行動推定装置APEのランダムフォレスト生成部30は、生活形式が異なる複数の家庭群毎に、複数種のサブランダムフォレストモデルを生成する機能を有する。
【0032】
サブモデル選択部52は、サブモデル格納部51に格納されている複数種のサブランダムフォレストモデルから、推定対象となっている家庭に最適な最適サブランダムフォレストモデルを選択する。選択された最適サブランダムフォレストモデルは、ランダムフォレストモデル部50に設定される。
【0033】
サブモデル選択部52による最適なサブランダムフォレストモデルの選択技術が、以下に説明される。まず、この技術の前提として、登録ユーザの家庭がその家庭の特徴や見守り対象となる家人の特徴に基づいていくつかに分類され、分類毎に、基準となった家庭が基準家庭として設定される。この分類の条件となる家庭特徴には、地域性(風土など)や住居規模などが含まれる。家人の特徴には、性別、年齢、健康状態などが含まれる。家庭特徴と家人特徴を組み合わせて家庭特徴として取り扱ってもよい。基準家庭から学習データが生成され、サブランダムフォレストモデルが生成され、サブモデル格納部51に格納される。さらに、選択サブランダムフォレストモデルの作成に用いられた家庭群における基準となる基準家庭が設定される。サブランダムフォレストモデル毎に設定された基準家庭は、ユーザ管理部UCで管理される。
【0034】
見守り処理では、サブモデル格納部51から順次サブランダムフォレストモデルが読み出される。読み出されたサブランダムフォレストモデルに設定されている基準家庭の特徴量群を入力データとして、当該サブランダムフォレストモデルから生活行動分類子を出力させる。さらに、一日分の生活行動分類子を統計処理して分布割合が求められる。この分布割合が基準家庭の活動比率、つまり基準生活行動パターンである。次に、このサブランダムフォレストモデルに推定対象となっている家庭の特徴量群を入力して、推定対象の生活行動分類子を出力させ、一日分の生活行動分類子の分布割合が求められる。この分布割合が推定対象となっている家人の活動比率、つまり行動パターンである。このような処理が、サブモデル格納部51に格納されている全てのサブランダムフォレストモデル、またはそこから選択されたサブランダムフォレストモデルに対して、行われる。この処理結果の一例が、図7に示されている。図7では、各サブランダムフォレストモデルは、単にモデルNo.1・・・モデルNo.8と名付けられている。図7には、推定対象である家庭に対して推定された活動比率(推定生活行動パターン)及び基準家庭の活動比率(基準生活行動パターン)がサブランダムフォレストモデル毎に示されている。次いで、基準生活行動パターンと推定生活行動パターンとが比較され、適合度が算出される。この適合度が最も高いサブランダムフォレストモデルが最適ランダムフォレストモデルとなる。
【0035】
この実施形態では、適合度として、以下に示す比率スコアが用いられている。比率スコアは、モデル家庭(基準家庭)の生活行動パターンと推定対象家庭の生活行動パターンとを変数とする比率スコア関数を用いて算出される。比率スコアがゼロに近いほど、適合度が高いことを示す。
【0036】
比率スコア関数は以下のように示される。
【数1】

ここで、
#a(TRi)が基準家庭の生活活動パターンであり、#a(fi(z))が推定対象家庭の生活活動パターンである。
さらに、
ACT={「外出」、「就寝」、「調理」、「在宅」}
a:セットACT内の各活動ラベル
#a:指令されたデータセット内の各活動ラベルaの出現数をカウントする関数
【0037】
この比率スコア関数を用いた比率スコアの算出例を以下に示す。
基準家庭の活動比率が、「外出」=20%、「就寝」=40%、「調理」=10%、「在宅」=30%とし、推定対象家庭の活動比率が、「外出」=20%、「就寝」=40%、「調理」=20%、「在宅」=20%とすると、
比率スコア=(1-0.2/0.2)+(1-0.4/0.4)+(1-0.1/0.2)+(1-0.2/0.3)=5/6=0.84となる。
なお、図7には、この比率スコア関数を用いて、算出された比率スコアが、サブランダムフォレストモデル毎に示されている。比率スコアがゼロに近いサブランダムフォレストモデルが最適サブランダムフォレストモデルとして採用される。
【0038】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、生活行動分類子として、「就寝」、「在宅」、「外出」、「調理」が取り扱われたが、それ以外の生活行動、「入浴」、「掃除」、「テレビ鑑賞」などを加えてもよいし、より少なくしてもよい。
【0039】
(2)上述した実施形態では、生活行動推定装置APEと家人見守りシステムWSとは、多くの家庭を管理する管理コンピュータシステムCSに構築されていたが、別々のコンピュータシステムに構築されてもよい。また、家人見守りシステムWSはスタンドアローンシステムとして各家庭に配置され、家人の家族などからアクセス可能に構成されてもよい。
【0040】
(3)この出願での家庭及び家人は広義に解釈される。例えば、養老施設等における区画された居住空間も家庭として取り扱われ、そこで生活している人は家人として取り扱われてもよい。
【0041】
(4)図2図3で示された機能ブロック図における各機能部の区分けは、説明を分かりやすくするための一例であり、種々の機能部を統合したり、単一の機能部を複数に分割したりすることは自由である。
【0042】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、家庭消費電力データに基づいて家人の生活行動分類子を出力するランダムフォレストモデルを有する生活行動推定装置APE、及びこの生活行動推定装置APEによって生成されたランダムフォレストモデルを用いて家人の異常を判定する家人見守りシステムWSに適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
11 :家庭消費電力データ入力部
12 :区間データ抽出部
13 :特徴量算出部
20 :学習データ生成部
30 :ランダムフォレスト生成部
40 :モデル作成管理部
60 :異常事態判定部
61 :パターン履歴記憶部
62 :サブモデル格納部
63 :サブモデル選択部
70 :報知部
APE :生活行動推定装置
CS :管理コンピュータシステム
EC :電力供給会社
UC :ユーザ管理部
WS :システム
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図7