(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154351
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】アルミナスラリー
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20221005BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20221005BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20221005BHJP
B24C 11/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
B24B37/00 H
B24C11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057348
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 康行
(72)【発明者】
【氏名】増田 祐司
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA08
3C158DA17
3C158ED02
3C158ED12
3C158ED23
3C158ED24
3C158ED26
3C158ED28
(57)【要約】
【課題】長期保存後のハードケーキの形成を抑制できるアルミナスラリーを提供する。
【解決手段】(a)体積基準の積算粒子径分布において大粒子径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径が0.2μm以上70μm以下であるアルミナ粒子、(b)結晶セルロース、及び(c)水を含有し、pHが5以上11以下であるアルミナスラリー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)体積基準の積算粒子径分布において大粒子径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径が0.2μm以上70μm以下であるアルミナ粒子、(b)結晶セルロース、および(c)水を含有し、pHが5以上11以下であるアルミナスラリー。
【請求項2】
前記結晶セルロースの含有量が、前記アルミナスラリーに対して、1.1質量%以上5質量%以下である、請求項1に記載のアルミナスラリー。
【請求項3】
前記アルミナ粒子の含有量が、前記アルミナスラリーに対して、25質量%を超える、請求項1または2に記載のアルミナスラリー。
【請求項4】
カルボキシメチルセルロースまたはその塩をさらに含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のアルミナスラリー。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のアルミナスラリーを含有するウェットブラスト加工用スラリー。
【請求項6】
請求項5に記載のウェットブラスト加工用スラリーを用いたウェットブラスト加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルミナスラリーに関する。本開示は、特にウェットブラスト用のアルミナスラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に使用されるプラスチック製品や金属材料の研磨や表面処理には、酸化アルミニウム(アルミナ粒子)等を水でスラリー状にしたものが研磨剤として使用されている。しかし、従来の研磨用組成物では酸化アルミニウムが保存中に容器の底に固く沈殿する(ハードケーキを形成する)。このため、使用時にスラリーを縦横に振盪・撹拌して、酸化アルミニウムをスラリー中に均一に分散する必要があった。
【0003】
上記課題に対し、特許文献1には、水とアルミナ研磨材粉末と、蓚酸アルミニウム又は乳酸アルミニウムから選ばれた研磨促進剤と、結晶セルロース又はコロイダルアルミナから選ばれた沈降防止剤とから成るプラスチック研磨用組成物に係る発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような研磨用組成物であっても、数か月レベルの長期保存後には容器の底に固く沈殿し(ハードケーキを形成し)、スラリー製品が均一になるように振盪・攪拌することに非常に手間がかかった。また、スラリー製品の容器からの排出が困難であった。
【0006】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、長期保存後のハードケーキの形成を抑制できるアルミナスラリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、特定の大きさのアルミナ粒子および結晶セルロースを使用し、かつスラリーのpHを所定の範囲に調節することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、上記目的は、(a)体積基準の積算粒子径分布において大粒子径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径が0.2μm以上70μm以下であるアルミナ粒子、(b)結晶セルロース、及び(c)水を含有し、pHが5以上11以下であるアルミナスラリーによって達成できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアルミナスラリーによれば、長期保存後であっても、ハードケーキの形成を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るブラスト加工方法に用いられる装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、(a)体積基準の積算粒子径分布において大粒子径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径が0.2μm以上70μm以下であるアルミナ粒子、(b)結晶セルロース、及び(c)水を含有し、pHが5以上11以下であるアルミナスラリーに関する。かようなアルミナスラリーによれば、長期(例えば、1か月を超える、好ましくは90日以上)保存した後であっても、ハードケーキの形成(容器の底に固く沈殿する現象)を抑制できる。また、保存中の乾燥を抑制できる。このため、本開示に係るアルミナスラリーは、ウェットブラスト加工にも好適に使用できる。
【0012】
本明細書において、「体積基準の積算粒子径分布において大粒子径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径」を、単に「Dv50」または「Dv50%」とも称する。
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
【0014】
本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で行う。
【0015】
(アルミナ粒子)
本開示に係るアルミナスラリーは、アルミナ粒子を含む。
【0016】
アルミナ粒子は、シリカ粒子やセリア粒子と比べてモース硬度が高いため、金属やセラミックスの研磨や表面処理に好適に使用される。また、水を主成分とする溶媒にアルミナを分散させたアルミナスラリーは、アルミナ粒子の加工点への輸送に優れ、また潤滑効果や冷却効果が高いといった特徴がある。特にウェットブラスト加工は、アルミナスラリーを霧状に噴射して被加工物に衝突させる加工方法であるが、アルミナの粒子あたりの加工力はアルミナ粒子の質量に依存することから、粒子径が小さいと効果が小さいため、粒子径が0.2μm(200nm)以上のものを用いる必要がある。一方、粒子径が数百nm以上の大きさのアルミナ粒子を水に分散させたアルミナスラリーは、アルミナ粒子が沈降した場合に沈降層が密に詰まりやすく、ハードケーキといわれる硬い沈殿層を形成することがある。このハードケーキは撹拌や振盪を行っても容易に分散し難いことから取り扱いが困難であり、また加工性の低下を招くという問題がある。さらに、このようなハードケーキを形成しやすいアルミナスラリーをウェットブラスト加工に使用すると、スラリーが短時間で乾燥し、投射ガンのノズルのつまりを引き起こしたり、ブラスト装置内の壁面に固着して汚染の原因になることがある。このように、スラリー中のアルミナ粒子サイズが研磨や表面処理(特にウェットブラスト加工)において十分な加工性(大きな加工後のワーク質量の減少質量、高い加工能率)を示すサイズであり、長期保存下においてもアルミナ粒子のハードケーキ形成を抑制でき、乾燥抑制効果に優れたアルミナスラリーは得られていなかった。
【0017】
しかし、本開示によるように、アルミナ粒子の大きさ(Dv50、Dv50%)を特定の大きさとし、結晶セルロースを添加し、かつスラリーのpHを5以上11以下に調節することによって、長期(例えば、1か月を超える、好ましくは90日以上)保存下においてもアルミナ粒子のハードケーキの形成を抑制できる。また、本開示に係るアルミナスラリーは、乾燥抑制効果に優れる。
【0018】
アルミナ粒子は、公知の各種アルミナ粒子のなかから適宜選択して使用することができる。公知のアルミナとしては。例えば、α-アルミナ、γ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナ、η-アルミナ、およびκ-アルミナから選択される少なくとも1種を含むアルミナ等が挙げられる。また、製法による分類に基づきヒュームドアルミナと称されるアルミナ(典型的にはアルミナ塩を高温焼成する際に生産されるアルミナ微粒子)を使用してもよい。さらに、コロイダルアルミナまたはアルミナゾルと称されるアルミナ(例えばベーマイト等のアルミナ水和物)も、上記公知のアルミナの例に含まれる。本開示に係るアルミナ粒子は、このようなアルミナ粒子の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含むものであり得る。これらのなかでも、結晶相としてα相を含むアルミナ(α-アルミナを含むアルミナ)であることが好ましく、主となる結晶相としてα相を含むアルミナ(主成分としてα-アルミナを含むアルミナ)(α-アルミナ粒子)であることがより好ましい。
【0019】
本開示において、アルミナ粒子は、体積基準の積算粒子径分布において大粒子径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径(Dv50、Dv50%)が0.2μm以上70μm以下である。ここで、アルミナ粒子のDv50が0.2μm未満であると、加工性が低下する。一方、アルミナ粒子のDv50が70μmを超えると、加工面の面品質が低下する。加工性(大きな加工後のワーク質量の減少質量、高い加工能率)などの観点から、アルミナ粒子の体積基準の積算粒子径分布において大粒子径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径(Dv50、Dv50%)は、1.0μm以上であることが好ましく、1.2μm以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることがさらに好ましく、2.0μm以上であることが特に好ましい。加工面の面品質などの観点から、30.0μm以下であることが好ましく、10.0μm以下であることがより好ましく、6.0μm以下であることがさらに好ましく、5.0μm以下であることが特に好ましい。
【0020】
好ましい実施形態では、アルミナ粒子の体積基準の積算粒子径分布において大粒子径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径(Dv50、Dv50%)は、1.0μm以上30μm以下である。より好ましい実施形態では、アルミナ粒子の体積基準の積算粒子径分布において大粒子径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径(Dv50、Dv50%)は、1.2μm以上10μm以下である。さらに好ましい実施形態では、アルミナ粒子の体積基準の積算粒子径分布において大粒子径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径(Dv50、Dv50%)は、1.5μm以上6.0μm以下である。特に好ましい実施形態では、アルミナ粒子の体積基準の積算粒子径分布において大粒子径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径(Dv50、Dv50%)は、2.0μm以上5.0μm以下である。
【0021】
本明細書において、アルミナ粒子の体積基準の積算粒子径分布において大粒子径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径(Dv50、Dv50%)は、下記方法に従って測定された値である。
【0022】
[アルミナ粒子の体積基準の積算粒子径分布において大粒子径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径(Dv50、Dv50%)の測定]
電気抵抗式/精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、MultisizerTM 3)を用いて、アルミナ粒子の体積基準の積算粒子径分布を得る。当該粒子径分布に基づいて、大粒子径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%に相当する粒子径(Dv50、Dv50%)(μm)を求める。
【0023】
アルミナ粒子の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を適宜使用することができるが、ベーマイトなどのα相以外のアルミナを焼結して、主となる結晶相としてα相を含むアルミナ粒子を得る方法が好ましい。すなわち、アルミナ粒子は、焼結工程を経て製造されたアルミナ粒子であることが好ましい。焼結工程を経て得られたアルミナ粒子を所望のサイズに粉砕してもよい。
【0024】
または、アルミナ粒子は、市販品であってもよい。市販品としては、WA#4000、WA#2500、WA#6000(いずれも(株)フジミインコーポレーテッド製)などがある。
【0025】
アルミナ粒子の含有量は、アルミナスラリーに対して、3質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、25質量%を超えることがさらに好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。かような含有量であれば、研磨や表面処理(特にウェットブラスト加工)時に十分な加工性が得られる。アルミナ粒子の含有量は、アルミナスラリーに対して、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、55質量%未満であることがさらに好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。かような含有量であれば、十分なスラリーの流動性(粘度)を確保できるため、研磨や表面処理(特にウェットブラスト加工)には特に好適に適用できる。
【0026】
本発明の一実施形態では、アルミナ粒子の含有量は、アルミナスラリーに対して、3質量%以上60質量%以下である。本発明の一実施形態では、アルミナ粒子の含有量は、アルミナスラリーに対して、10質量%以上55質量%以下である。本発明の一実施形態では、アルミナ粒子の含有量は、アルミナスラリーに対して、25質量%を超え55質量%未満である。本発明の一実施形態では、アルミナ粒子の含有量は、アルミナスラリーに対して、30質量%以上50質量%以下である。
【0027】
(結晶セルロース)
本開示に係るアルミナスラリーは、結晶セルロースを含む。
【0028】
結晶セルロースは、高純度精製パルプ、製紙パルプ、溶解パルプ、コットンリンター等のセルロース質を原料とし、セルロースの結晶領域を取り出したものである。セルロースの結晶領域は、セルロースの分子鎖が緻密かつ規則的に存在する。結晶セルロースの製造方法は、米国特許第2,978,446号、特開平6-316535号公報、特開2004-39834号公報などで公知である。例えば、結晶セルロースは、上記したようなセルロース質を鉱酸またはアルカリで加水分解し、非結晶領域を洗浄・除去した後、摩砕、精製、乾燥することにより得られる。
【0029】
または、結晶セルロースは、市販品であってもよい。市販品としては、セオラス(登録商標)UFシリーズ、KGシリーズ、PHシリーズ、STシリーズ、FDシリーズ(いずれも旭化成(株)製)などがある。
【0030】
結晶セルロースの形状は、球状、繊維状、針状などが挙げられる。結晶セルロースの形態は、粉末状、コロイド状などが挙げられる。結晶セルロースの大きさ(粒子径(直径))は、例えば、170nmより大きく250nm以下、好ましくは170nmより大きく200nm以下程度である。
【0031】
結晶セルロースの含有量は、アルミナスラリーに対して、1.1質量%以上であることが好ましく、1.3質量%を超えることがより好ましく、1.5質量%以上であることがさらに好ましく、1.6質量%を超えることが特に好ましい。かような含有量であれば、アルミナスラリーのハードケーキの形成をより効果的に抑制できる。また、アルミナスラリーの乾燥抑制効果がより優れる。結晶セルロースの含有量は、アルミナスラリーに対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2.5質量%以下であることがさらに好ましく、2.0質量%未満であることが特に好ましい。かような含有量であれば、十分なスラリーの流動性(低粘性)を確保できるため、研磨や表面処理(特にウェットブラスト加工)には特に好適に適用できる。
【0032】
本発明の一実施形態では、結晶セルロースの含有量は、アルミナスラリーに対して、1.1質量%以上5質量%以下である。本発明の一実施形態では、結晶セルロースの含有量は、アルミナスラリーに対して、1.3質量%を超え3質量%以下である。本発明の一実施形態では、結晶セルロースの含有量は、アルミナスラリーに対して、1.5質量%以上2.5質量%以下である。本発明の一実施形態では、結晶セルロースの含有量は、アルミナスラリーに対して、1.6質量%を超え2.0質量%未満である。
【0033】
(水)
本開示に係るアルミナスラリーは、水を分散媒として含む。このように分散媒を含む本開示に係るアルミナスラリーは、ウェットブラスト用のブラスト材として好適に用いられる。ウェットブラスト加工は、粒子粉末(乾燥粉末)を用いるドライブラスト加工(サンドブラスト加工)に比べて、粒子が分散媒(液体)により運ばれるため空気抵抗を受けにくく、飛散による作業環境の悪化も生じにくい。また、加工対象物(ワーク)が分散媒(液体)により冷却されるため摩擦熱による加工対象物(ワーク)のダメージが抑えられる。さらに、加工対象物(ワーク)の表面上に分散媒(液体)の膜が形成され、噴射された粒子も分散媒(液体)によって洗浄されるため、加工対象物(ワーク)への粒子の食い込みが少ないといった利点がある。さらにまた、分散媒中に、必要に応じて添加される薬剤(添加剤)を溶解させることができるため、ブラスト加工と同時に上記薬剤による処理を行うこともできるという利点もある。
【0034】
分散媒として使用される水としては、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後、フィルタを通して異物を除去した純水や超純水、または蒸留水が好ましく使用される。特に、アルミナスラリーをウェットブラスト用のブラスト材として使用する場合には、水は、不純物をできる限り含有しないことが好ましいため、上記したような純水、超純水、または蒸留水を使用することが好ましい。分散媒は、水に加えて、水に可溶な有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール等の低級アルコール、またはアセトン等のケトン類をさらに含んでもよい。
【0035】
(他の成分)
本開示に係るアルミナスラリーは、アルミナ粒子、結晶セルロースおよび水に加えて、他の成分を含んでもよい。
【0036】
この際使用できる他の成分としては、カルボキシメチルセルロースおよびその塩(例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩)、キサンタンガム、デキストリン、食用油脂、カラヤガム、ヒドロキシプロピルエーテル化デンプン、難消化性デキストリン、ジェランガム等が挙げられる。なお、他の成分は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。これらのうち、結晶セルロースの分散性をより向上させる効果、アルミナ粒子の分散性をより向上させる効果(より高い分散促進効果)などの観点から、カルボキシメチルセルロースまたはその塩が好ましく、カルボキシメチルセルロースまたはその塩(特にカルボキシメチルセルロースナトリウム)がより好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、アルミナスラリーは、カルボキシメチルセルロースまたはその塩をさらに含有する。
【0037】
アルミナスラリーが他の成分を含む場合の、他の成分の含有量は、アルミナスラリーに対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.20質量%以上であることがより好ましい。また、他の成分の含有量は、アルミナスラリーに対して、1質量%以下であることが好ましく、0.50質量%以下であることがより好ましい。かような含有量であれば、アルミナ粒子または結晶セルロースをより容易に分散できる(スラリーのハードケーキの形成をより効果的に抑制できる)。
【0038】
本発明の一実施形態では、アルミナスラリーが他の成分を含む場合の、他の成分の含有量は、アルミナスラリーに対して、0.1質量%以上1質量%以下である。本発明の一実施形態では、アルミナスラリーが他の成分を含む場合の、他の成分の含有量は、アルミナスラリーに対して、0.20質量%以上0.5質量%以下である。
【0039】
または、アルミナスラリーが他の成分を含む場合の、他の成分の含有量は、結晶セルロース 100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。また、他の成分の含有量は、結晶セルロース 100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。かような含有量であれば、アルミナ粒子または結晶セルロースをより容易に分散できる(スラリーのハードケーキの形成をより効果的に抑制できる)。
【0040】
本発明の一実施形態では、アルミナスラリーが他の成分を含む場合の、他の成分の含有量は、結晶セルロース 100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下である。本発明の一実施形態では、アルミナスラリーが他の成分を含む場合の、他の成分の含有量は、結晶セルロース 100質量部に対して、10質量部以上20質量部以下である。
【0041】
なお、アルミナスラリーが上記他の成分を含む場合には、上記他の成分は、本開示に係るアルミナ粒子、結晶セルロースおよび水と混合しても、または上記いずれかと予め混合された市販品を使用してもよい。後者の場合の市販品としては、例えば、セオラス(登録商標)SC-900(結晶セルロース 73.0質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na;以下、同様) 5.0質量%、キサンタンガム 2.8質量%、デキストリン 19.0質量%、食用油脂 0.2質量%)、セオラス(登録商標)RC-591(結晶セルロース 89.0質量%、CMC-Na 11.0質量%)、セオラス(登録商標)RC-N81(結晶セルロース 80.0質量%、カラヤガム 10.0質量%、デキストリン10.0質量%)、セオラス(登録商標)RC-N30(結晶セルロース 75.0質量%、キサンタンガム 5.0質量%、デキストリン 20.0質量%)、セオラス(登録商標)CL-611S(結晶セルロース 85.0質量%、CMC-Na 15.0質量%)、セオラス(登録商標)DX-2(結晶セルロース 36.0質量%、カラヤガム 4.5質量%、デキストリン 59.5質量%)、セオラス(登録商標)DX-3(結晶セルロース 34.0質量%、キサンタンガム 18.0質量%、ヒドロキシプロピルエーテルカデンプン、2.0質量%、デキストリン 46.0質量%)、セオラス(登録商標)ファイバーDF-17(結晶セルロース 34.2質量%、難消化性デキストリン 65.0質量%、ジェランガム 0.8質量%)(いずれも旭化成(株)製)などがある。
【0042】
また、上記に代えてまたは上記に加えて、アルミナスラリーのpHを調節するために、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、硝酸、クエン酸等の酸、ならびに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリエタノールアミン等の塩基などのpH調整剤を加えてもよい。なお、pH調整剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0043】
pH調整剤の含有量は、特に制限されず、pH値を後述する好ましい範囲内の値とすることができる量であることが好ましい。
【0044】
また、上記に代えてまたは上記に加えて、アルミナ粒子の分散を容易にする分散助剤を添加してもよい。かような分散助剤としては、ポリカルボン酸またはその誘導体(例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体等のポリアクリル酸類およびその塩)、リグニンスルホン酸等が例示できる。分散助剤(アンチケーキ剤)の添加量は、アルミナスラリーに対し、例えば0.1質量%以上1.0質量%以下となる量である。
【0045】
また、上記に代えてまたは上記に加えて、アルミナスラリーは、必要に応じて、エッチング剤、界面活性剤、酸化剤、防食剤、キレート剤、防腐剤、防黴剤等の他の成分をさらに含んでもよい。アルミナスラリーが上記成分を含む場合の、各成分の添加量は、特に制限されず、従来と同様の量が採用できる。
【0046】
なお、本開示に係るアルミナスラリーは、シュウ酸アルミニウムおよび乳酸アルミニウムなどの他のアルミニウム源を含まないことが好ましい。特にシュウ酸アルミニウムおよび乳酸アルミニウムは、スラリーのpHを酸性側に低下させるために、含まないことが好ましい。一実施形態では、シュウ酸アルミニウムおよび乳酸アルミニウムの合計含有量は、アルミナスラリーに対して、0.5質量%未満(下限:0質量%)であり、好ましくは0.3質量%未満(下限:0質量%)である。
【0047】
(pH)
アルミナスラリーのpHは、5以上11以下である。アルミナスラリーのpHが5未満であると、アルミナスラリーのハードケーキ抑制効果が不十分である。また、アルミナスラリーのpHが11を超えると、ブラスト装置や被加工物の腐食を引き起こすことがある。アルミナスラリーのpHは、6.0以上10.0以下であることが好ましく、7.0以上9.0以下であることがより好ましく、7.0を超えて8.0未満であることが特に好ましい。
【0048】
(アルミナスラリーの製造方法)
アルミナスラリーの製造方法は、特に制限されず、例えば、アルミナ粒子、結晶セルロースおよび水ならびに必要に応じて他の成分を、攪拌混合することにより得ることができる。
【0049】
各成分を混合する際の温度は特に制限されず、例えば10℃以上40℃以下であり、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に制限されない。
【0050】
(用途)
本開示に係るアルミナスラリーは、様々な研磨や表面処理に使用できる。例えば、本開示に係るアルミナスラリーは、ブラスト加工用途、研磨剤などの加工用途、鋳込成形用セラミックス材料、陶磁器食器、衛生陶器、るつぼ、乳鉢などの製造原料に用いることができる。ここで、本開示に係るアルミナスラリーは、長期(例えば、1か月を超える、好ましくは90日以上)保存下においてもアルミナ粒子のハードケーキ形成を抑制できる。また、本開示に係るアルミナスラリーは、乾燥抑制効果に優れる(スラリー状態を維持できる)。加えて、アルミナスラリー中の粒子サイズ(D50)は、ウェットブラスト加工において十分な加工性を示すサイズである。ゆえに、上記用途の中でも、本開示に係るアルミナスラリーは、ウェットブラスト加工に特に好適に使用できる。すなわち、本発明は、本開示に係るアルミナスラリーを含有するウェットブラスト加工用スラリーが提供される。また、本発明は、上記ウェットブラスト加工用スラリーを用いたウェットブラスト加工方法が提供される。
【0051】
以下、上記形態を説明するが、本発明は、下記形態に限定されない。なお、以下では、ウェットブラスト加工用スラリーを、単に「ブラスト研磨用スラリー」とも称する。
【0052】
加工対象物(ワーク)に関しては、本開示のブラスト研磨用スラリーは、ディスプレイ用ガラス基板のほか、シリコンウエハ、水晶ウエハ、レンズやプリズム等の光学素子、宝石類、青色レーザーLED用サファイヤ基板、磁気ディスク用ガラス基板、磁気ヘッド等を加工対象物(ワーク)とした、ワーク表面の表面平滑化、ピーニング、バリ取り、エッチング(リブ形成)等のブラスト加工に用いることができる。好適には、本開示のブラスト研磨用スラリーは、ディスプレイ用ガラス基板のブラスト加工、特に表面平滑化(例えば切断面の平滑化)に用いられる。すなわち、本発明の一実施形態では、ガラス加工用であるブラスト研磨用スラリーが提供される。ガラス基板としては、例えば、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス等が例示できる。特に、本開示のブラスト研磨用スラリーは、ガラス基板の切断面に対して好適に使用できる。
【0053】
また、本開示のブラスト研磨用スラリーによれば、適度な加工能率および平滑性のバランスにて、加工対象物(ワーク)をブラスト加工できる。
【0054】
本開示の一実施形態では、上記のブラスト研磨用スラリーを用いるブラスト加工方法が提供される。ここで、ブラスト加工方法は本開示のブラスト研磨用スラリーを使用する以外は、従来と同様の方法が必要であれば適宜改変して適用できる。以下、
図1を参照しつつ、本形態についてより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲をなんら限定するものではない。
【0055】
図1は、本開示のブラスト加工方法に好適に用いられ得る装置の一具体例(ブラスト加工装置100)を表す概略図である。ブラスト加工装置100は、ブラスト加工室2、ブ
ラスト研磨用スラリー4を収容するタンク5、タンク5からブラスト加工室2へブラスト研磨用スラリー4を輸送するブラスト材輸送部6、ならびにコンプレッサーからブラスト加工室2へ圧縮空気を供給する圧縮空気供給部8からなる。ブラスト研磨用スラリー4が分散媒を含むスラリー状の場合、タンク5に収容されたブラスト研磨用スラリー4は任意の撹拌手段(図示せず)で撹拌されることが好ましい。撹拌手段を設けることにより、スラリー中の粒子を均一に分布させることができる。また、タンク5には、コンプレッサーからタンク5に加圧用気体(例えば、圧縮空気)を供給する圧縮空気供給部(図示せず)が連設されてもよい。
【0056】
ブラスト加工室2は、加工対象物1が配置されるステージ3、およびブラスト材輸送部6により輸送されたブラスト研磨用スラリー4を加工対象物1に噴射する噴射ノズル7を収容する。噴射ノズル7は研磨用スラリー4が噴射される噴射口が形成された開口部を有する。噴射ノズル7は、噴射口が、加工対象物1に対向するように設置され、任意に、
図1における矢印X方向に移動可能な態様であってもよい。噴射ノズル7の開口部の形状は特に制限されず、円形、幅広形状(例えば、加工対象物1の幅以上の幅を有する幅広形状)等であってもよい。加工対象物1は、通常は、噴射ノズル7の開口部と0.1mm以上10mm以下程度の距離を置いて配置される。噴射ノズル7は、ブラスト材輸送部6から輸送されたブラスト研磨用スラリー4を圧縮空気供給部8から供給される圧縮空気で加速して加工対象物1に噴射する。これによって、加工対象物1をブラスト加工する。ブラスト材(ブラスト研磨用スラリー4)噴射圧力は特に制限されないが、例えば、0.1MPa以上1MPa以下、好ましくは0.1MPa以上0.7MPa以下である。ブラスト材噴射量は、圧縮空気圧の調節等によって制御できる。
【0057】
本発明のブラスト研磨用スラリーは一液型であってもよいし、ブラスト研磨用スラリーの一部または全部を任意の混合比率で混合した二液型をはじめとする多液型であってもよい。また、ブラスト研磨用スラリーの供給経路を複数有する研磨装置を用いた場合、研磨装置上でブラスト研磨用スラリーが混合されるように、予め調整された2つ以上のブラスト研磨用スラリーを用いてもよい。
【0058】
また、本発明のブラスト研磨用スラリーは、原液の形態であってもよく、ブラスト研磨用スラリーの原液を水で希釈することにより調製されてもよい。ブラスト研磨用スラリーが二液型であった場合には、混合および希釈の順序は任意であり、例えば一方のスラリーを水で希釈後それらを混合する場合や、混合と同時に水で希釈する場合、また、混合されたブラスト研磨用スラリーを水で希釈する場合等が挙げられる。
【実施例0059】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0060】
実施例1
(アルミナスラリーの調製およびpHの測定)
2L容量の樹脂製ビーカーに、体積基準の積算粒子径分布において大粒子径側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%となる粒子径(Dv50;以下、同様)が3.2μmのα-アルミナ粒子((株)フジミインコーポレーテッド製、WA#4000)420gおよび水560gを入れ、アンカー型撹拌羽根を用いて300rpmで30分間撹拌してアルミナ粒子を分散させた。このビーカー内容物を撹拌しながら、結晶セルロース(粒子径(直径)=200nm) 17.8gおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)2.2g(結晶セルロース 100質量部に対するCMCNaとの混合質量=12.4質量部)を入れ、4時間撹拌して、アルミナスラリー1を調製した。このアルミナスラリー1のpHを、pHメーター(株式会社 堀場製作所製 型番:LAQUA(登録商標))によって測定したところ、7.8であった。
【0061】
このようにして調製されたアルミナスラリー1について、下記方法に従って、粘度、ハードケーキ形成および乾燥性を評価した。結果を下記表1に示す。なお、下記表1中、「CMCNa量/結晶セルロース」は、結晶セルロース 100質量部に対するカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)の混合質量を表す。
【0062】
(アルミナスラリーの粘度測定および評価)
アルミナスラリーのせん断速度4(1/sec)での粘度を、レオメーター((株)アントンパール・ジャパン製MCR302)でコーンプレートCP50-1を用いて測定した。また、測定値(粘度)を以下の基準で評価した。
【0063】
◎:粘度が1000mPa・s未満
○:粘度が1000mPa・s以上10000mPa・s未満
△:粘度が10000mPa・s以上。
【0064】
(アルミナスラリーのハードケーキの形成の有無の評価)
アルミナスラリー 50gを50mL容量樹脂製容器に入れ、25℃で3日間および90日間静置した。この容器を手で10回振とうし、容器の上下を逆にして立て、5分間静置したときの容器の元の底部(上下を逆さにしたときの上部)のアルミナ粒子のハードケーキの有無を以下の基準で評価した。下記表1において、3日間静置時のハードケーキの有無を「3日後のハードケーキ」と、90日間静置時のハードケーキの有無を「90日後のハードケーキ」と、それぞれ、示す。
【0065】
◎:沈降物がない
○:沈降物が容器の底面にわずかに付着している
×:沈降物が容器の底面に多量に付着している。
【0066】
(アルミナスラリーの乾燥性の評価)
直径90mmのガラス製時計皿に、アルミナスラリーを2.00gのせ、温度23℃、相対湿度35%RHで3時間乾燥させた。所定時間乾燥後のアルミナスラリーのスラリー重量変化(=2.00-乾燥後のアルミナスラリー質量(g))を蒸発量(g)(蒸発量1;表1中の「蒸発量(g)」)とした。同様の方法で、アルミナ粒子と水のみからなるアルミナ粒子濃度42質量%のアルミナスラリーの蒸発量(g)(蒸発量2)を測定した。上記蒸発量1および蒸発量2の値に基づいて、次式により乾燥減量率(%)を算出した。なお、アルミナスラリー1の場合には、蒸発量1=0.44g、蒸発量2=0.70gであったため、乾燥減量率=37.1%であった。
【0067】
【0068】
上記にて算出された乾燥減量率を乾燥抑制効果の指標とし、以下の基準で評価した。
【0069】
◎:乾燥減量率が30%以上
○:乾燥減量率が20%以上30%未満
×:乾燥減量率が20%未満。
【0070】
実施例2
(アルミナスラリーの調製およびpHの測定)
2L容量の樹脂製ビーカーに、Dv50が3.2μmのα-アルミナ粒子((株)フジミインコーポレーテッド製、WA#4000)420gおよび水550gを入れ、アンカー型撹拌羽根を用いて300rpmで30分間撹拌してアルミナ粒子を分散させた。このビーカー内容物を撹拌しながら、結晶セルロース(粒子径(直径)=200nm) 26.7gおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム3.3g(結晶セルロース 100質量部に対するCMCNaとの混合質量=12.4質量部)を入れ、4時間撹拌して、アルミナスラリー2を調製した。このアルミナスラリー2のpHを、pHメーター(株式会社 堀場製作所製 型番:LAQUA(登録商標))によって測定したところ、7.9であった。
【0071】
このようにして調製されたアルミナスラリー2について、実施例1と同様の方法に従って、粘度、ハードケーキ形成および乾燥性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0072】
実施例3
(アルミナスラリーの調製およびpHの測定)
2L容量の樹脂製ビーカーに、Dv50が3.2μmのα-アルミナ粒子((株)フジミインコーポレーテッド製、WA#4000)420gおよび水566gを入れ、アンカー型撹拌羽根を用いて300rpmで30分間撹拌してアルミナ粒子を分散させた。このビーカー内容物を撹拌しながら、結晶セルロース(粒子径(直径)=200nm) 12.5gおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム1.5g(結晶セルロース 100質量部に対するCMCNaとの混合質量=12.4質量部)を入れ、4時間撹拌して、アルミナスラリー3を調製した。このアルミナスラリー3のpHを、pHメーター(株式会社 堀場製作所製 型番:LAQUA(登録商標))によって測定したところ、7.7であった。
【0073】
このようにして調製されたアルミナスラリー3について、実施例1と同様の方法に従って、粘度、ハードケーキ形成および乾燥性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0074】
実施例4
(アルミナスラリーの調製およびpHの測定)
2L容量の樹脂製ビーカーに、Dv50が3.2μmのα-アルミナ粒子((株)フジミインコーポレーテッド製、WA#4000)420gおよび水560gを入れ、アンカー型撹拌羽根を用いて300rpmで30分間撹拌してアルミナ粒子を分散させた。このビーカー内容物を撹拌しながら、結晶セルロース(粒子径(直径)=200nm) 17.0gおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム3.0g(結晶セルロース 100質量部に対するCMCNaとの混合質量=17.6質量部)を入れ、4時間撹拌して、アルミナスラリー4を調製した。このアルミナスラリー4のpHを、pHメーター(株式会社 堀場製作所製 型番:LAQUA(登録商標))によって測定したところ、7.8であった。
【0075】
このようにして調製されたアルミナスラリー4について、実施例1と同様の方法に従って、粘度、ハードケーキ形成および乾燥性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0076】
実施例5
(アルミナスラリーの調製およびpHの測定)
2L容量の樹脂製ビーカーに、Dv50が3.2μmのα-アルミナ粒子((株)フジミインコーポレーテッド製、WA#4000)320gおよび水660gを入れ、アンカー型撹拌羽根を用いて300rpmで30分間撹拌してアルミナ粒子を分散させた。このビーカー内容物を撹拌しながら、結晶セルロース(粒子径(直径)=200nm) 17.8gおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム2.2g(結晶セルロース 100質量部に対するCMCNaとの混合質量=12.4質量部)を入れ、4時間撹拌して、アルミナスラリー5を調製した。このアルミナスラリー5のpHを、pHメーター(株式会社 堀場製作所製 型番:LAQUA(登録商標))によって測定したところ、7.7であった。
【0077】
このようにして調製されたアルミナスラリー5について、実施例1と同様の方法に従って、粘度およびハードケーキ形成を評価した。結果を下記表1に示す。
【0078】
また、上記にて調製されたアルミナスラリー5について、下記方法に従って、乾燥性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0079】
(アルミナスラリーの乾燥性の評価)
直径90mmのガラス製時計皿に、アルミナスラリーを2.00gのせ、温度23℃、相対湿度35%RHで3時間乾燥させた。所定時間乾燥後のアルミナスラリーのスラリー重量変化(=2.00-乾燥後のアルミナスラリー質量(g))を蒸発量(g)(蒸発量1’;表1中の「蒸発量(g)」)とした。同様の方法で、アルミナ粒子と水のみからなるアルミナ粒子濃度32質量%のアルミナスラリーの蒸発量(g)(蒸発量2’)を測定した。上記蒸発量1’および蒸発量2’の値に基づいて、次式により乾燥減量率(%)を算出した。なお、アルミナスラリー5の場合には、蒸発量1’=0.47g、蒸発量2’=0.72gであったため、乾燥減量率=34.7%であった。
【0080】
【0081】
上記にて算出された乾燥減量率を乾燥抑制効果の指標とし、以下の基準で評価した。
【0082】
◎:乾燥減量率が30%以上
○:乾燥減量率が20%以上30%未満
×:乾燥減量率が20%未満。
【0083】
実施例6
(アルミナスラリーの調製およびpHの測定)
2L容量の樹脂製ビーカーに、Dv50が3.2μmのα-アルミナ粒子((株)フジミインコーポレーテッド製、WA#4000)550gおよび水430gを入れ、アンカー型撹拌羽根を用いて300rpmで30分間撹拌してアルミナ粒子を分散させた。このビーカー内容物を撹拌しながら、結晶セルロース(粒子径(直径)=200nm) 17.0gおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム3.0g(結晶セルロース 100質量部に対するCMCNaとの混合質量=17.6質量部)を入れ、4時間撹拌して、アルミナスラリー6を調製した。このアルミナスラリー6のpHを、pHメーター(株式会社 堀場製作所製 型番:LAQUA(登録商標))によって測定したところ、7.9であった。
【0084】
このようにして調製されたアルミナスラリー6について、実施例1と同様の方法に従って、粘度およびハードケーキ形成を評価した。結果を下記表1に示す。
【0085】
また、上記にて調製されたアルミナスラリー6について、下記方法に従って、乾燥性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0086】
(アルミナスラリーの乾燥性の評価)
直径90mmのガラス製時計皿に、アルミナスラリーを2.00gのせ、温度23℃、相対湿度35%RHで3時間乾燥させた。所定時間乾燥後のアルミナスラリーのスラリー重量変化(=2.00-乾燥後のアルミナスラリー質量(g))を蒸発量(g)(蒸発量1”;表1中の「蒸発量(g)」)とした。同様の方法で、アルミナ粒子と水のみからなるアルミナ粒子濃度55質量%のアルミナスラリーの蒸発量(g)(蒸発量2”)を測定した。上記蒸発量1”および蒸発量2”の値に基づいて、次式により乾燥減量率(%)を算出した。なお、アルミナスラリー6の場合には、蒸発量1”=0.40g、蒸発量2”=0.68gであったため、乾燥減量率=41.2%であった。
【0087】
【0088】
上記にて算出された乾燥減量率を乾燥抑制効果の指標とし、以下の基準で評価した。
【0089】
◎:乾燥減量率が30%以上
○:乾燥減量率が20%以上30%未満
×:乾燥減量率が20%未満。
【0090】
実施例7
(アルミナスラリーの調製およびpHの測定)
2L容量の樹脂製ビーカーに、Dv50が3.2μmのα-アルミナ粒子((株)フジミインコーポレーテッド製、WA#4000)420gおよび水558.8gを入れ、アンカー型撹拌羽根を用いて300rpmで30分間撹拌してアルミナ粒子を分散させた。このビーカー内容物を撹拌しながら、結晶セルロース(粒子径(直径)=200nm) 17.8gおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム2.2g(結晶セルロース 100質量部に対するCMCNaとの混合質量=12.4質量部)を入れ、4時間撹拌した後、リン酸(関東化学(株)製、濃度85%)を1.2g添加して10分間撹拌して、アルミナスラリー7を調製した。このアルミナスラリー7のpHを、pHメーター(株式会社 堀場製作所製 型番:LAQUA(登録商標))によって測定したところ、6.7であった。
【0091】
このようにして調製されたアルミナスラリー7について、実施例1と同様の方法に従って、粘度、ハードケーキ形成および乾燥性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0092】
実施例8
(アルミナスラリーの調製およびpHの測定)
2L容量の樹脂製ビーカーに、Dv50が5.6μmのα-アルミナ粒子((株)フジミインコーポレーテッド製、WA#2500)420gおよび水560gを入れ、アンカー型撹拌羽根を用いて300rpmで30分間撹拌してアルミナ粒子を分散させた。このビーカー内容物を撹拌しながら、結晶セルロース(粒子径(直径)=200nm) 17.0gおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)3.0g(結晶セルロース 100質量部に対するCMCNaとの混合質量=17.6質量部)を入れ、4時間撹拌して、アルミナスラリー8を調製した。このアルミナスラリー8のpHを、pHメーター(株式会社 堀場製作所製 型番:LAQUA(登録商標))によって測定したところ、7.8であった。
【0093】
このようにして調製されたアルミナスラリー8について、実施例1と同様の方法に従って、粘度、ハードケーキ形成および乾燥性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0094】
実施例9
(アルミナスラリーの調製およびpHの測定)
2L容量の樹脂製ビーカーに、Dv50が3.2μmのα-アルミナ粒子((株)フジミインコーポレーテッド製、WA#4000)420gおよび水520gを入れ、アンカー型撹拌羽根を用いて300rpmで30分間撹拌してアルミナ粒子を分散させた。このビーカー内容物を撹拌しながら、結晶セルロース(粒子径(直径)=200nm) 53.4gおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)6.6g(結晶セルロース 100質量部に対するCMCNaとの混合質量=12.4質量部)を入れ、4時間撹拌して、アルミナスラリー9を調製した。このアルミナスラリー9のpHを、pHメーター(株式会社 堀場製作所製 型番:LAQUA(登録商標))によって測定したところ、8.0であった。
【0095】
このようにして調製されたアルミナスラリー9について、実施例1と同様の方法に従って、粘度、ハードケーキ形成および乾燥性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0096】
比較例1
2L容量の樹脂製ビーカーに、Dv50が3.2μmのα-アルミナ粒子((株)フジミインコーポレーテッド製、WA#4000)420gおよび水580gを入れ、アンカー型撹拌羽根を用いて300rpmで30分間撹拌してアルミナ粒子を分散させて、比較アルミナスラリー1を調製した。この比較アルミナスラリー1のpHを、pHメーター(株式会社 堀場製作所製 型番:LAQUA(登録商標))によって測定したところ、7.5であった。
【0097】
このようにして調製された比較アルミナスラリー1について、実施例1と同様の方法に従って、ハードケーキ形成および乾燥性を評価した。なお、比較アルミナスラリー1は調製直後に沈降が発生したため、比較アルミナスラリー1の粘度は測定できなかった。結果を下記表1に示す。
【0098】
比較例2
(アルミナスラリーの調製およびpHの測定)
2L容量の樹脂製ビーカーに、Dv50が1.9μmのαアルミナ((株)フジミインコーポレーテッド製、WA#6000)420gおよび水520gを入れ、アンカー型撹拌羽根を用いて300rpmで30分間撹拌してアルミナ粒子を分散させた。このビーカー内容物を撹拌しながら、結晶セルロース(粒子径(直径)=200nm) 17.8gおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム2.2g(結晶セルロース 100質量部に対するCMCNaとの混合質量=12.4質量部)を入れ、4時間撹拌した後、シュウ酸アルミニウムを40g添加して10分間撹拌して、比較アルミナスラリー2を調製した。この比較アルミナスラリー2のpHを、pHメーター(株式会社 堀場製作所製 型番:LAQUA(登録商標))によって測定したところ、3.3であった。
【0099】
このようにして調製された比較アルミナスラリー2について、実施例1と同様の方法に従って、粘度、ハードケーキ形成および乾燥性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0100】
【0101】
【0102】
表1に示されるように、実施例1~9のアルミナスラリー1~9は、90日間という長期の保存後であってもハードケーキをほとんど形成しなかった。また、実施例1~9のアルミナスラリー1~9は、乾燥抑制効果が高かった。さらに、実施例1~8のアルミナスラリー1~8をウェットブラスト加工に用いたところ、いずれも良好な加工性を示した。
【0103】
これに対して、結晶セルロースを含まない比較例1の比較アルミナスラリー1は、調製後短期間でハードケーキを多量に形成し、乾燥抑制効果も小さかった。また、pHが5未満である比較例2の比較アルミナスラリー2は、長期保存した場合のハードケーキ抑制効果がかなり劣った。