(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154400
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】地盤試料採取装置、ガイド体および地盤試料採取方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/04 20060101AFI20221005BHJP
E21B 25/00 20060101ALI20221005BHJP
G01N 1/08 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
E02D1/04
E21B25/00
G01N1/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057426
(22)【出願日】2021-03-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「洋上風力発電施設のための海底地盤の経済的な調査方法」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】谷 和夫
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 優介
(72)【発明者】
【氏名】池谷 毅
(72)【発明者】
【氏名】稲津 大祐
【テーマコード(参考)】
2D043
2G052
【Fターム(参考)】
2D043AC01
2D043BA08
2D043BB09
2G052AA19
2G052AC03
2G052AC06
2G052AD12
2G052AD32
2G052AD52
2G052BA29
2G052JA04
2G052JA07
(57)【要約】
【課題】水底または陸域における連続した地盤試料を容易に採取する。
【解決手段】連続した地盤試料を採取するための地盤試料採取装置1は、複数のロッド部2と、ロッド部2を囲繞可能に構成されており、係合部3aを有する複数のガイド体3,3Tと、ガイド体3,3Tに上下から挟み込まれ、係合部3aに係合支持される複数のサンプラー部4と、複数のサンプラー部4を閉鎖する複数のシャッター部5と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した地盤試料を採取するための地盤試料採取装置であって、
複数のロッド部と、
前記ロッド部を囲繞可能に構成されており、係合部を有する複数のガイド体と、
前記ガイド体に上下から挟み込まれ、前記係合部に係合支持される複数のサンプラー部と、
前記複数のサンプラー部を閉鎖する複数のシャッター部と、
を備えることを特徴とする地盤試料採取装置。
【請求項2】
前記複数のガイド体は、先端のガイド体を除き、前記ロッド部に固定されないことを特徴とする請求項1に記載の地盤試料採取装置。
【請求項3】
前記係合部はフック状に形成され、前記サンプラー部は、その上端および下端に設けられた切り欠きにより前記係合部に係合することを特徴とする請求項1または2に記載の地盤試料採取装置。
【請求項4】
前記ガイド体は、第1の構成部材と第2の構成部材を有しており、前記第1の構成部材と前記第2の構成部材が前記ロッド部を囲繞するように環状に組み合わさることにより前記係合部が形成されるように構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の地盤試料採取装置。
【請求項5】
前記第1の構成部材と前記第2の構成部材は、ヒンジを介して開閉可能に連結されていることを特徴とする請求項4に記載の地盤試料採取装置。
【請求項6】
前記サンプラー部が前記係合部に係合することにより、前記第1の構成部材と前記第2の構成部材が開かないようにロックされることを特徴とする請求項5に記載の地盤試料採取装置。
【請求項7】
前記ガイド体は、一体的に形成された環状の構成部材を有し、前記係合部は前記環状の構成部材の外周面に突設されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の地盤試料採取装置。
【請求項8】
前記複数のガイド体のうち、先端のロッド部に固定されるガイド体は、側面視で前記ロッド部の先端に向かうにつれて先鋭化する形状のシューを有することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の地盤試料採取装置。
【請求項9】
前記シューには、前記サンプラー部および前記シャッター部を支持する支持台が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の地盤試料採取装置。
【請求項10】
前記シューの内径は、前記サンプラー部の内径よりも小さいことを特徴とする請求項8または9に記載の地盤試料採取装置。
【請求項11】
前記サンプラー部および前記シャッター部は、横断面が円弧状であり、
前記サンプラー部は、前記シャッター部よりも開口角が広いことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の地盤試料採取装置。
【請求項12】
前記サンプラー部の開口角は180°以上であることを特徴とする請求項11に記載の地盤試料採取装置。
【請求項13】
前記複数のロッド部のうち先端に位置するロッド部の下端にプローブが設けられていることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の地盤試料採取装置。
【請求項14】
連続した地盤試料を採取するための地盤試料採取装置に用いられるガイド体であって、
ロッド部を囲繞可能に構成されており、係合部を有し、前記係合部によりサンプラー部を係合支持することを特徴とするガイド体。
【請求項15】
前記ガイド体は第1の構成部材と第2の構成部材を有しており、前記第1の構成部材と前記第2の構成部材が前記ロッド部を囲繞するように環状に組み合わさることにより前記係合部が形成されるように構成されていることを特徴とする請求項14に記載のガイド体。
【請求項16】
前記第1の構成部材と前記第2の構成部材は、ヒンジを介して開閉可能に連結されていることを特徴とする請求項15に記載のガイド体。
【請求項17】
請求項1~13のいずれかに記載の地盤試料採取装置を用いて地盤を採取する方法であって、
前記複数のロッド部のうちの第1のロッド部に前記複数のガイド体のうちの第1のガイド体を固定するステップと、
前記第1のガイド体と、前記複数のガイド体のうちの第2のガイド体とにより前記複数のサンプラー部のうちの第1のサンプラー部を係合支持させて前記第1のロッド部に併設するステップと、
前記第1のロッド部を前記第1のサンプラー部とともに地盤中に貫入させるステップと、
前記第1のロッド部に前記複数のロッド部のうちの第2のロッド部を継ぎ足し、前記第2のガイド体と、前記複数のガイド体のうちの第3のガイド体とにより前記複数のサンプラー部のうちの第2のサンプラー部を係合支持させて前記第2のロッド部に併設するステップと、
前記第2のロッド部を前記第2のサンプラー部とともに地盤中に貫入させるステップと、
前記複数のシャッター部を前記複数のサンプラー部に沿って前記複数のサンプラー部を閉鎖するように貫入させるステップと、
前記複数のロッド部を引き上げ、上側のロッド部から順に回収するステップと、
を備えることを特徴とする地盤試料採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤試料採取装置、ガイド体および地盤試料採取方法に関し、より詳しくは、水底または陸域における連続した地盤試料を採取するための地盤試料採取装置、当該装置に用いられるガイド体、および当該装置を用いた地盤試料採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、洋上または海中施設の建設や海底資源の開発等のために、水底地盤の試料を連続的に採取するための装置および方法の開発が求められている。たとえば洋上風力発電施設を建設するために基礎地盤調査を行う場合、数十メートル程度の水深の水底地盤を採取することが求められる。
【0003】
従来、連続した地盤試料を採取するための地盤試料採取装置が知られている。特許文献1には、側面の一部を開放した採取箱と、蓋板とを有する採取装置が記載されている。この装置では、採取箱を先行して地中に貫入させ、その後、採取箱に係合させながら蓋板を地中に貫入させることで土砂サンプルを採取する。また、特許文献2には、第1の本体および第2の本体を有する地質調査用サンプラーが記載されている。第1の本体および第2の本体は、互いに係合することで管状となるように構成されており、別個に地盤に埋め込まれ、地盤を採取する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-147928号公報
【特許文献2】特開2003-96759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2はいずれも、互いに係合する2つの部材を用いて地盤試料を採取するものである。
【0006】
しかしながら、たとえば水面から深い位置にある水底地盤の採取を行う場合、地盤に貫入させる部材が長尺化することから、十分な剛性を確保すること、貫入方向を一定に保つことが困難である。地表面から深い位置にある地盤を採取する場合も同様である。
【0007】
このように、従来の地盤試料採取装置では、水面や地表面から深い位置にある地盤試料を連続的に採取することは容易でなかった。
【0008】
本発明は、かかる認識に基づいてなされたものであり、水底または陸域における連続した地盤試料を容易に採取するための地盤試料採取装置、当該装置に用いられるガイド体、および当該装置を用いた地盤試料採取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る地盤試料採取装置は、
連続した地盤試料を採取するための地盤試料採取装置であって、
複数のロッド部と、
前記ロッド部を囲繞可能に構成されており、係合部を有する複数のガイド体と、
前記ガイド体に上下から挟み込まれ、前記係合部に係合支持される複数のサンプラー部と、
前記複数のサンプラー部を閉鎖する複数のシャッター部と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記地盤試料採取装置において、
前記複数のガイド体は、先端のガイド体を除き、前記ロッド部に固定されないようにしてもよい。
【0011】
また、前記地盤試料採取装置において、
前記係合部はフック状に形成され、前記サンプラー部は、その上端および下端に設けられた切り欠きにより前記係合部に係合するようにしてもよい。
【0012】
また、前記地盤試料採取装置において、
前記ガイド体は、第1の構成部材と第2の構成部材を有しており、前記第1の構成部材と前記第2の構成部材が前記ロッド部を囲繞するように環状に組み合わさることにより前記係合部が形成されるように構成されているようにしてもよい。
【0013】
また、前記地盤試料採取装置において、
前記第1の構成部材と前記第2の構成部材は、ヒンジを介して開閉可能に連結されているようにしてもよい。
【0014】
また、前記地盤試料採取装置において、
前記サンプラー部が前記係合部に係合することにより、前記第1の構成部材と前記第2の構成部材が開かないようにロックされるようにしてもよい。
【0015】
また、前記地盤試料採取装置において、
前記ガイド体は、一体的に形成された環状の構成部材を有し、前記係合部は前記環状の構成部材の外周面に突設されていてもよい。
【0016】
また、前記地盤試料採取装置において、
前記複数のガイド体のうち、先端のロッド部に固定されるガイド体は、側面視で前記ロッド部の先端に向かうにつれて先鋭化する形状のシューを有してもよい。
【0017】
また、前記地盤試料採取装置において、
前記シューには、前記サンプラー部および前記シャッター部を支持する支持台が設けられていてもよい。
【0018】
また、前記地盤試料採取装置において、
前記シューの内径は、前記サンプラー部の内径よりも小さいようにしてもよい。
【0019】
また、前記地盤試料採取装置において、
前記サンプラー部および前記シャッター部は、横断面が円弧状であり、
前記サンプラー部は、前記シャッター部よりも開口角が広いようにしてもよい。
【0020】
また、前記地盤試料採取装置において、
前記サンプラー部の開口角は180°以上であるようにしてもよい。
【0021】
また、前記地盤試料採取装置において、
前記複数のロッド部のうち先端に位置するロッド部の下端にプローブが設けられていてもよい。
【0022】
本発明に係るガイド体は、
連続した地盤試料を採取するための地盤試料採取装置に用いられるガイド体であって、
ロッド部を囲繞可能に構成されており、係合部を有し、前記係合部によりサンプラー部を係合支持することを特徴とする。
【0023】
また、前記ガイド体において、
前記ガイド体は第1の構成部材と第2の構成部材を有しており、前記第1の構成部材と前記第2の構成部材が前記ロッド部を囲繞するように環状に組み合わさることにより前記係合部が形成されるように構成されていてもよい。
【0024】
また、前記ガイド体において、
前記第1の構成部材と前記第2の構成部材は、ヒンジを介して開閉可能に連結されているようにしてもよい。
【0025】
本発明に係る地盤試料採取方法は、
前記地盤試料採取装置を用いて地盤を採取する方法であって、
前記複数のロッド部のうちの第1のロッド部に前記複数のガイド体のうちの第1のガイド体を固定するステップと、
前記第1のガイド体と、前記複数のガイド体のうちの第2のガイド体とにより前記複数のサンプラー部のうちの第1のサンプラー部を係合支持させて前記第1のロッド部に併設するステップと、
前記第1のロッド部を前記第1のサンプラー部とともに地盤中に貫入させるステップと、
前記第1のロッド部に前記複数のロッド部のうちの第2のロッド部を継ぎ足し、前記第2のガイド体と、前記複数のガイド体のうちの第3のガイド体とにより前記複数のサンプラー部のうちの第2のサンプラー部を係合支持させて前記第2のロッド部に併設するステップと、
前記第2のロッド部を前記第2のサンプラー部とともに地盤中に貫入させるステップと、
前記複数のシャッター部を前記複数のサンプラー部に沿って前記複数のサンプラー部を閉鎖するように貫入させるステップと、
前記複数のロッド部を引き上げ、上側のロッド部から順に回収するステップと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、水底または陸域における連続した地盤試料を容易に採取するための地盤試料採取装置、当該装置に用いられるガイド体、および当該装置を用いた地盤試料採取方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態に係る地盤試料採取装置の先端領域における側面図である。
【
図2】
図1から、シャッター部と、サンプラー部(先端のものを除く)とを取り外した状態を示す側面図である。
【
図3】
図2から、サンプラー部と、ガイド体(先端のものを除く)とを取り外した状態を示す側面図である。
【
図4A】実施形態に係る継ぎ足し可能なロッド部の断面図である。
【
図4B】実施形態の変型例に係る継ぎ足し可能なロッド部を示す図であり、(a)はロッド本体の断面図であり、(b)はロッドカプラの断面図である。
【
図5】実施形態に係るガイド体の構成を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は平面図であり、(c)は正面図である。
【
図6】
図5に示すガイド体の開いた状態を示す平面図である。
【
図7】実施形態に係る、先端のロッド部に固定されるガイド体の構成を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は平面図であり、(c)は正面図である。
【
図8】
図7に示すガイド体の開いた状態を示す平面図である。
【
図9】実施形態に係るサンプラー部の構成を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は平面図であり、(c)は正面図である。
【
図10】実施形態に係るシャッター部の構成を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は平面図であり、(c)は背面図である。
【
図12】設定可能な開口角の範囲を示すグラフである。
【
図13】実施形態の変型例1に係るガイド体の構成を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は平面図であり、(c)は正面図である。
【
図14】
図13に示すガイド体の開いた状態を示す平面図である。
【
図15】実施形態の変型例1に係るサンプラー部の構成を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
【
図16】実施形態の変型例1に係るシャッター部の構成を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
【
図17】実施形態の変型例2に係る、周面に凹部が設けられたロッド部と、当該凹部に配置されたガイド体を示す図である。
【
図18】実施形態の変型例3に係るロッドカプラと、当該ロッドカプラに配置されたガイド体を示す図である。
【
図19】(a)はヒンジのないガイド体の側面図であり、(b)は当該ガイド体の平面図である。
【
図20】実施形態に係る地盤試料採取装置を用いた陸域地盤の採取方法を説明するための図である。
【
図21】実施形態に係る地盤試料採取装置を用いた水底地盤の採取方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0029】
<<地盤試料採取装置>>
実施形態に係る地盤試料採取装置1について説明する。この地盤試料採取装置1は、陸域または水底の地盤を連続的に採取するための装置である。
【0030】
図1に示すように、地盤試料採取装置1は、貫入ロッドを構成する複数のロッド部2と、ロッド部2を囲繞する複数のガイド体3,3Tと、貫入ロッドに併設される複数のサンプラー部4と、複数のサンプラー部4を閉鎖する複数のシャッター部5と、先端のロッド部2に設けられたプローブ6と、を備えている。
【0031】
ロッド部2は、継ぎ足し可能に構成された棒状の部材である。複数のロッド部2が継ぎ足されることで、所望の長さを有する長尺の貫入ロッドが構成される。
【0032】
ガイド体3,3Tは、貫入ロッドの長手方向に沿って、ロッド部2を囲繞するように所定の間隔で配置される。配置間隔はサンプラー部4の長さに略等しい。
【0033】
ガイド体3は、貫入ロッドの先端以外のロッド部2に配置されるガイド体である。ガイド体3Tは、貫入ロッドの先端のロッド部2に配置されるガイド体である。ガイド体3Tはロッド部2に固定されているのに対し、ガイド体3はロッド部2に固定されていない。すなわち、最下端のガイド体3Tは、ねじ孔3hを介してねじ(図示せず)によりロッド部2に固定されており、これに対し、最下端以外のガイド体3はねじで固定されず、ロッド部2を回転可能に囲繞する。
【0034】
なお、ガイド体3Tは、ねじ止めに限らず、溶接など別の手段により先端のロッド部2に固定されてもよいし、あるいは、後述の
図17または
図18に示すような態様でロッド部2の長手方向に移動が規制されるようにロッド部2に装着されてもよい。
【0035】
ガイド体3,3Tは、ロッド部2を囲繞可能に構成された構造体であり、ロッド部2に併設されるようにサンプラー部4をガイドするとともに、サンプラー部4を支持するように構成されている。
図2および
図3に示すように、ガイド体3,3Tは係合部3aを有する。詳しくは後述するが、係合部3aはロッド部2を囲繞することで形成され、ガイド体3,3Tは係合部3aによりサンプラー部4を係合支持する。
【0036】
サンプラー部4は、
図2に示すように、上下からガイド体3(3T)により挟み込まれるように配置され、ガイド体3(3T)の係合部3aに係合し支持される。
【0037】
複数のサンプラー部4がガイド体3を挟んで貫入ロッドの長手方向に連なるように配置されることで、地盤試料を採取するための長尺のサンプラーが構成される。なお、詳しくは後述するが、各サンプラー部4は、対応するロッド部2とともに地盤に貫入される。
【0038】
シャッター部5は、サンプラー部4と組み合わさって略筒状の試料収納空間を画成する。複数のシャッター部5が貫入ロッドの長手方向に連なるように配置されることで、長尺のサンプラーを閉鎖する長尺のシャッターが構成される。なお、詳しくは後述するが、シャッター部5は、地盤に貫入された長尺のサンプラー(複数のサンプラー部4)に沿って貫入される。
【0039】
プローブ6は複数のロッド部2のうち先端のロッド部2の下端に設けられており、先端コーン、抵抗体(抵抗翼など)および計測器(荷重計など)を有する。プローブ6を設けることで、地盤試料のサンプリングとともに、サウンディングも可能となる。プローブ6を地盤に貫入または引き上げる際、計測器で抵抗力等を計測する。この計測結果に基づいて水底地盤の力学特性等が評価される。なお、プローブ6は、地盤のサウンディングを行わない場合は省略可能である。サウンディング手法としては、静的サウンディングと動的サウンディングが知られている。静的サウンディングには、コーン貫入試験(Cone Penetration Test:CPT)や、円筒ゴム膜を用いたプレッシャーメータ試験(Pressuremeter Test:PMT)などがある。一方、動的サウンディングには、標準貫入試験(Standard Penetration Test:SPT)や動的コーン貫入試験などがある。
【0040】
以下、地盤試料採取装置1の各構成要素について詳しく説明する。
【0041】
<ロッド部2>
図4Aを参照して、本実施形態に係るロッド部2の詳細について説明する。
【0042】
ロッド部2は、剛性の高い筒状の部材であり、一端側には雄ねじ2aが形成され、他端側には雌ねじ2bが形成されている。ロッド部2同士の継合は、一方のロッド部の雄ねじ2aと、他方のロッド部の雌ねじ2bを螺合させることにより行う。
【0043】
ロッド部2は、サンプラー部4よりも高い剛性を有することが望ましい。たとえば、ロッド部2は、鋼、ステンレス等の金属材料により、肉厚な筒状体として形成される。
【0044】
なお、本実施形態では、ロッド部2は、プローブ6に接続する電気配線を通すために筒状であるが、プローブ6を設けない場合は中実であってもよい。
【0045】
また、ロッド部2がケーシング(後述の筒部20)に挿入され地盤に貫入される場合には、中心軸をケーシングの中心軸にできるだけ一致させるために、長手方向に延在するセンタライザー(図示せず)がロッド部2の外周面に設けられてもよい。
【0046】
なお、ロッド部2は上記の構成(一端に雄ねじ2aが形成され、他端に雌ねじ2bが形成されている。)に限らない。たとえば、
図4B(a),(b)に示すように、ロッド部2はロッド本体2Pおよびロッドカプラ2Qから構成されてもよい。ロッド本体2Pは両端に雌ねじ2bが形成され、ロッドカプラ2Qは両端に雄ねじ2aが形成されている。この場合、ロッド本体2Pの雌ねじ2bとロッドカプラ2Qの雄ねじ2aを螺合させることでロッド部2が構成される。その他、複数の部材が組み合わさってロッド部2が構成されてよい。
【0047】
また、互いに長さの異なる複数種類のロッド部2を用意してもよい。
【0048】
また、短尺のロッド部2を継ぎ足して貫入ロッドを構成する場合に限られず、既存の貫入ロッドにロッド部2を後付けで継ぎ足して貫入ロッドの長尺化を図ってもよい。この場合、既存の貫入ロッドが長尺のロッド部に相当し、既存の貫入ロッドに一つまたは複数の短尺のロッド部を継ぎ足すことにより、地盤に貫入される貫入ロッドが形成される。
【0049】
<ガイド体3,3T>
図5~
図8等を参照して、本実施形態に係るガイド体3,3Tの詳細について説明する。
【0050】
まず、ガイド体3の構造について説明する。
図5(a),(b),(c)はそれぞれ、ガイド体3の側面図、平面図および正面図である。正面とは、
図1~
図3において右側から見た面のことである(以下同じ)。
【0051】
ガイド体3は、構成部材31(第1の構成部材)と構成部材32(第2の構成部材)を有しており、構成部材31と構成部材32がロッド部2を囲繞するように環状に組み合わさることによりフック状の係合部3aが形成されるように構成されている。
【0052】
より詳しくは、構成部材31および構成部材32は、部分係合部31aおよび部分係合部32aをそれぞれ有する。構成部材31と構成部材32が環状をなすように閉じることにより、部分係合部31aと部分係合部32aが重なって係合部3aが形成される。
【0053】
図6に示すように、構成部材31と構成部材32は、ヒンジ33を介して開閉可能に連結されている。ヒンジ33を用いることで、構成部材31と構成部材32がばらばらにならず、ガイド体3が取り扱い易くなる。
【0054】
次に、先端のロッド部2に固定されるガイド体3Tの構造について説明する。
図7(a),(b),(c)はそれぞれ、ガイド体3Tの側面図、平面図および正面図である。
【0055】
ガイド体3Tは、構成部材31T(第1の構成部材)と構成部材32T(第2の構成部材)を有している。構成部材32Tには、ガイド体3Tをロッド部2に固定するためのねじ孔3hが設けられている。
【0056】
構成部材31Tと構成部材32Tがロッド部2を囲繞するように環状に組み合わさることにより係合部3aが形成される。この係合部3aは、ガイド体3と同様に、構成部材31Tの部分係合部31aと構成部材32Tの部分係合部32aとが重なることで形成される。
【0057】
図8に示すように、構成部材31Tと構成部材32Tは、ヒンジ33を介して開閉可能に連結されている。ヒンジ33を用いることで、構成部材31Tと構成部材32Tがばらばらにならず、ガイド体3Tが取り扱い易くなる。
【0058】
なお、ガイド体3,3Tの構成は、ヒンジ33で連結される場合に限られない。たとえば、構成部材31(31T)に凸部を設け、構成部材32(32T)に凹部を設けておき、凸部と凹部により構成部材31(31T)と構成部材32(32T)が互いに嵌め合わさることにより、ガイド体3(3T)が構成されるようにしてもよい。
【0059】
ガイド体3Tはシュー3sを有する。このシュー3sは、側面視でロッド部2の先端に向かうにつれて先鋭化する形状を有する。シュー3sは、構成部材31Tの部分シュー31sと構成部材32Tの部分シュー32sとが重なることで形成される。ガイド体3Tのうち少なくともシュー3sは金属等の硬い材料からなることが望ましい。
【0060】
シュー3sには、サンプラー部4およびシャッター部5を支持する支持台(肩部)3ssが設けられている。先端のサンプラー部4およびシャッター部5が支持台3ssの上に載置される(
図11B参照)。
【0061】
なお、シュー3sの内径D
1(
図7(b)参照)は、サンプラー部4の内径D
2(
図9(b)参照)よりも小さい。これにより、引上げ時に試料収納空間から試料が脱落することを抑制ないし防止できる。また、貫入時にサンプラー部4の内壁と地盤との間の摩擦を低減することができる
上記のようにガイド体3Tにシュー3sが設けられることにより、貫入性能を向上させることができる。また、支持台3ss上のサンプラー部4を保護するとともに、引上げ時に最深部の試料が脱落することを防止ないし抑制することができる。
【0062】
<サンプラー部、シャッター部>
次に、
図9~
図11Bを参照してサンプラー部4およびシャッター部5の詳細について説明する。
図9(a),(b),(c)はそれぞれ、サンプラー部4の側面図、平面図および正面図である。
図10(a),(b),(c)はそれぞれ、シャッター部5の側面図、平面図および背面図である。ここで、背面とは、
図1~
図3において左側から見た面のことである。
図11Aは
図1のI-I線に沿う断面図であり、
図11Bは
図1のII-II線に沿う断面図である。
【0063】
本実施形態に係るサンプラー部4およびシャッター部5は、横断面が円弧状である。詳しくは、サンプラー部4は、樋状ないし溝状の部材であり、たとえば半割の円管である。シャッター部5は、上端から下端にわたって長手方向に開口が設けられた略円筒状の部材である。
【0064】
サンプラー部4およびシャッター部5の材料は、強度および剛性が大きくかつ地盤試料との間に作用する摩擦が小さいものが好ましく、たとえば、鋼、ステンレス等の金属材料、あるいは塩化ビニル等の合成樹脂である。
【0065】
サンプラー部4の上端および下端には切り欠き4nが設けられている。フック状の係合部3aが切り欠き4nに係合することにより、サンプラー部4はガイド体3,3Tに支持される。また、係合部3aが切り欠き4nに係合することにより、構成部材31(31T)と構成部材32(32T)は開かないようにロックされる。
【0066】
図11Aおよび
図11Bに示すように、シャッター部5の半径はサンプラー部4よりも大きい。シャッター部5は、長手方向に沿ってサンプラー部4を覆うように組み合わさることでサンプラー部4を閉鎖する。これにより、地盤試料を格納する空間(地盤試料収納空間)が形成される。
【0067】
サンプラー部4は、シャッター部5よりも開口角が広い。ここで、サンプラー部4の開口角とは、
図9(b)に示すように、サンプラー部4を平面視したとき、中心点O
1と開口端4aとを結ぶ2つの直線のなす角度θ
1である。シャッター部5の開口角とは、
図10(b)に示すように、シャッター部5を平面視したとき、中心点O
2と開口端5aとを結ぶ2つの直線のなす角度θ
2である。
【0068】
サンプラー部4の開口角θ1は、本実施形態では約180°である。開口角θ1は180°より大きい角度であってもよい。サンプラー部4の開口角を180°以上とすることで、ロッド部2とともにサンプラー部4を地盤に貫入させる際にサンプラー部4内部が地盤試料で閉塞することを抑制ないし防止できる。
【0069】
シャッター部5の開口角θ
2は、サンプラー部4の開口角θ
1が180°以上ならば、
図10(b)に示すように、180°未満(たとえば、60°~70°)である。すなわち、サンプラー部4の開口角θ
1とシャッター部5の開口角θ
2の和は360°よりも小さい。このように、θ
1+θ
2<360°を満たすように開口角θ
1とθ
2が設定される。
【0070】
図12のグラフは、開口角θ
1とθ
2の設定可能範囲Aを示している。この範囲A内であれば、サンプラー部4の開口角θ
1は180°以上なので閉塞を防止できるとともに、サンプラー部4の開口角θ
1とシャッター部5の開口角θ
2の和が360°よりも小さいのでシャッター部5がサンプラー部4から外れることを抑制ないし防止できる。
【0071】
好ましくは、サンプラー部4の開口角とシャッター部5の開口角は、シャッター部5がサンプラー部4の周方向に回転してもサンプラー部4とシャッター部5の重なりが失われないように(すなわち、地盤試料の収納空間が開放されたり、シャッター部5がサンプラー部4から脱落しないように)設定される。
【0072】
以上説明したように、本実施形態に係る地盤試料採取装置1では、ガイド体3はロッド部2を囲繞可能に構成され、サンプラー部4はガイド体3がロッド部2を囲繞することで形成される係合部3aに係合し、ガイド体3に上下から挟み込まれるように支持され、ロッド部2に併設される。このようにガイド体3をロッド部2に固定せずともサンプラー部4をロッド部2に併設できることから、地盤採取作業における手間と時間を大幅に軽減することができる。
【0073】
また、本実施形態では、複数のロッド部2、サンプラー部4およびシャッター部5が継ぎ足されることで、調査深度に応じた所望の長さの貫入ロッド、長尺のサンプラーおよび長尺のシャッターをそれぞれ構成することができる。このため、水底地盤や、地表から深い陸域地盤であっても、連続した地盤試料を採取することができる。
【0074】
また、本実施形態では、先端のガイド体3Tにシュー3sが設けられているため、貫入性能が高い。このため、地盤試料採取装置1は、軟弱な地盤から硬質の地盤まで広い範囲の地盤に適用することが可能である。例えば、軟弱粘性土(0<N<4)や緩い砂(0<N<10)から、硬質粘性土(15<N<40)や密な砂(30<N<50)まで適用可能である。さらには、軟岩やメタンハイドレート(50<N)にも適用可能である。
【0075】
また、本実施形態では、先端のロッド部2にプローブ6が設けられているため、地盤試料の採取(サンプリング)だけでなく、サウンディングも同時に実施することができる。たとえば、サンプリングと前述のコーン貫入試験を同時に行ったり、サンプリングと引上げ試験(PUT:Pull-Up Test)を同時に行うことができる。
【0076】
<変型例1>
図13~
図16を参照して、上記の実施形態に係る変型例1について説明する。
図13(a),(b),(c)はそれぞれ、本変型例に係るガイド体3Wの側面図、平面図および正面図である。
図14は、ガイド体3Wの開いた状態を示す平面図である。
図15(a),(b)はそれぞれ、本変型例に係るサンプラー部4Wの平面図および正面図である。
図16(a),(b)はそれぞれ、本変型例に係るシャッター部5Wの平面図および正面図である。
【0077】
上記の実施形態では、ガイド体3,3Tがロッド部2を囲繞することにより、フック状ないし凸状の係合部3aが形成された。これに対し、本変型例では、ガイド体3Wがロッド部2を囲繞することにより、凹部を有する係合部3Waが形成される。以下、本変型例について詳しく説明する。
【0078】
ガイド体3Wは、
図13(a)~(c)に示すように、構成部材31W(第1の構成部材)と構成部材32W(第2の構成部材)を有している。
図14に示すように、構成部材31Wと構成部材32Wは、ヒンジ33を介して開閉可能に連結されている。構成部材31Wと構成部材32Wがロッド部2を囲繞するように環状に組み合わさることにより、係合部3Waが形成される。この係合部3Waは溝部3agを有する
詳しくは、構成部材31Wおよび構成部材32Wは、部分係合部31Waおよび部分係合部32Waをそれぞれ有する。構成部材31Wと構成部材32Wが環状をなすように閉じることにより、部分係合部31Waと部分係合部32Waが重なって係合部3Waが形成される。
【0079】
部分係合部31Waおよび32Waの各々には、上下に2つの溝部3agが形成されている。溝部3agには、サンプラー部4Wの切り欠き4Wnの縁部4eが挿入される。
【0080】
サンプラー部4Wは、
図15(a),(b)に示すように、正面側に上端から下端にわたって長手方向に開口が設けられた角筒状の部材である。
【0081】
サンプラー部4Wの上端および下端には切り欠き4Wnが設けられている。切り欠き4Wnの縁部4eがガイド体3Wの溝部3agに係合することにより、サンプラー部4Wはガイド体3Wに支持される。このように係合部3Waが切り欠き4Wnに係合することで、構成部材31Wと構成部材32Wは開かないようにロックされる。
【0082】
シャッター部5Wは、
図16(a),(b)に示すように、板状の部材であり、サンプラー部4Wと組み合わさって試料収納空間を画成する。シャッター部5Wの両側面には、上端から下端にわたって長手方向に延びる溝部5gが形成されている。シャッター部5Wは、溝部5gがサンプラー部4Wの縁部4fと係合した状態で地盤に貫入される。
【0083】
本変型例によっても、実施形態と同様の効果を得ることができる。特に、ガイド体3Wをロッド部2に固定せずともサンプラー部4Wをロッド部2に併設できることから、地盤採取作業における手間と時間を大幅に軽減することができる。
【0084】
<変型例2>
図17を参照して、実施形態に係る変型例2について説明する。
図17は、本変型例に係るロッド部とガイド体を示している。
【0085】
図17に示すように、本変型例では、ロッド部2の周面に環状溝部としての凹部2cが設けられている。凹部2cの長手方向の幅(高さ)はガイド体3の高さと同じかあるいは少し大きい。また、凹部2cの深さはガイド体3のリング部分(構成部材31,32)がロッド部2の周面から飛び出ない程度に設定されている。
【0086】
図17に示すように、ガイド体3はロッド部2の凹部2cに嵌合するように設けられる。これにより、ガイド体3がロッド部2の長手方向(上下方向)に移動することが規制される。なお、ガイド体3は、実施形態と同様に、ねじ等でロッド部2に固定されていないため、ロッド部2の中心軸のまわりに回転可能である。
【0087】
本変型例によれば、実施形態の場合と同様に、貫入時においては、ロッド部2にねじ等を用いずにガイド体3を容易に装着することができ、引上げ時においては、ロッド部2からガイド体3を容易に取り外すことができる。
【0088】
さらに、本変型例によれば、ガイド体3がロッド部2に対して上下方向にずれることが防止される。これにより、貫入時または引上げ時にガイド体3が上下方向に移動してサンプラー部4がガイド体3から外れてしまうことを抑制できる。
【0089】
また、ガイド体3のリング部分がロッド部2の周面から飛び出ない程度に凹部2cの深さが設定されているため、ガイド体3の係合部3aのみがロッド部2の周面から突出するようになる。その結果、貫入時にガイド体3と地盤との間の摩擦を低減することができ、貫入性能を向上させることができる。
【0090】
<変型例3>
図18を参照して、実施形態に係る変型例3について説明する。
図18は、本変型例に係るロッドカプラと、当該ロッドカプラに配置されたガイド体を示している。
【0091】
本変型例では、ロッドカプラ2Qの、ねじが設けられていない中央部分の一部(
図18では中央部分の上半分)が切削され細径化されて、環状段部としての凹部2dが形成されている。凹部2dの長手方向の幅(高さ)はガイド体3の高さと同じかあるいは少し大きい。また、凹部2dの深さはガイド体3のリング部分(構成部材31,32)がロッド本体2Pの周面から飛び出ない程度に設定されている。
【0092】
図18に示すように、ガイド体3は、ロッドカプラ2Qの凹部2dを囲繞するように設けられる。ロッドカプラ2Qをロッド本体2Pに接続することにより、ガイド体3が装着されたロッド部2が得られる。ロッド本体2Pとロッドカプラ2Qが接続された状態において、ガイド体3はロッド部2の長手方向(上下方向)に移動することが規制される。
【0093】
なお、ロッドカプラ2Qをロッド本体2Pに接続した後に、ヒンジ33を設けたガイド体3をロッドカプラ2Qの細径部に装着してもよい。
【0094】
ロッドカプラ2Qにガイド体3を予め装着する場合は、ガイド体3として、
図19に示すように、ヒンジが設けられておらず、リング部分として一体的に形成された環状の構成部材34を有するガイド体3Uを用いてもよい。係合部3aは構成部材34の外周面に突設されている。なお、係合部3aは、部分係合部31a,32aが組み合わさって形成されるのでなく、一体的に形成されていてもよい。
【0095】
ロッドカプラ2Qはロッド本体2Pよりも短いので、このようにヒンジの設けられていないガイド体であっても比較的手間をかけずにロッドカプラ2Qに装着できる。したがって、ガイド体3Uについても、前述のガイド体3と同様、ロッド部2(ロッドカプラ2Q)を囲繞可能に構成されている。
【0096】
このようなガイド体3Uを用いることで、ガイド体の部品点数を減らし構造を簡易化することができる。
【0097】
本変型例によれば、実施形態の場合と同様に、貫入時においては、ロッド部2にねじ等を用いずにガイド体3を容易に装着することができ、引上げ時においては、ロッド部2からガイド体3を容易に取り外すことができる。
【0098】
ヒンジを設けないガイド体3Uを用いる場合は、予めガイド体3Uをロッド部2に装着しておくことで、ガイド体が組み込まれたロッド部として取り扱えるようになるため、毎回の試料採取においてガイド体をロッド部に装着したり取り外したりする作業を省くことができる。
【0099】
さらに、本変型例によれば、ガイド体3がロッド部2に対して上下方向にずれることが防止される。これにより、貫入時または引上げ時にガイド体3が上下方向に移動してサンプラー部4がガイド体3から外れてしまうことを抑制できる。
【0100】
また、ガイド体3のリング部分がロッド部2の周面から飛び出ない程度に凹部2dの深さが設定されているため、ガイド体3の係合部3aのみがロッド部2の周面から突出するようになる。その結果、貫入時にガイド体3と地盤との間の摩擦を低減することができ、貫入性能を向上させることができる。
【0101】
また、ヒンジが設けられていないガイド体を適用することが可能になるため、ガイド体の低コスト化を図ることができる。
【0102】
<<地盤採取方法>>
次に、
図20および
図21を参照して、上述した地盤試料採取装置1を用いた地盤試料採取方法の一例について説明する。
図20は陸域地盤の採取方法を説明するための図であり、
図21は水底地盤の採取方法を説明するための図である。
【0103】
まず、
図20を参照して陸域地盤の採取方法について説明する。
【0104】
ステップS11:プローブ6が先端に設けられたロッド部2の所定の位置にガイド体3Tをねじで固定する。次に、サンプラー部4をガイド体3Tの係合部3aに係合させた後、係合部3aがサンプラー部4の上端の切り欠き4nに係合するようにガイド体3をロッド部2に装着する(
図2参照)。詳しくは、ガイド体3Tの係合部3aがサンプラー部4の下端の切り欠き4nに係合し、ガイド体3の係合部3aがサンプラー部4の上端に切り欠き4nに係合するように、ガイド体3を配置する。これにより、サンプラー部4は、ガイド体3およびガイド体3Tにより上下から挟み込まれた状態にロッド部2に併設される。
【0105】
ガイド体3をロッド部2に装着した後、ロッド部2の基端に貫入装置10を取り付け、貫入装置10によりロッド部2およびサンプラー部4を地盤に貫入させる。貫入装置10は、たとえばバイブロハンマーである。貫入装置10はロッド部2の上部に取り付けられたプレート(図示せず)を把持し、ロッド部2を静的に下方に圧入したり上下に振動させることにより地盤に貫入させる。
【0106】
なお、貫入装置10は貫入方法に応じて他の装置(打撃貫入用の装置など)であってもよい。
【0107】
また、ステップS11において、ロッド部2を貫入する前に、プローブ6による計測および記録を開始してもよい。このタイミングで計測を開始することで、プローブ6が地盤に貫入する際の抵抗力(荷重)に関するデータを得ることができる。
【0108】
ステップS12:貫入したロッド部2に別のロッド部2を継ぎ足す。そして、継ぎ足したロッド部2に、ステップS11と同様にして新たなガイド体3を装着し、新たなサンプラー部4をロッド部2に併設する。この際、ガイド体3をロッド部2に固定する必要はないため、作業性を大幅に改善することができる。プローブ6が所定の深さに達するまで、ロッド部2を継ぎ足し、サンプラー部4を追加していく。すなわち、ロッド部2を継ぎ足し、継ぎ足したロッド部2にガイド体3を用いてサンプラー部4を追加することを繰り返す。
【0109】
ステップS13:プローブ6が陸域地盤の所定の深さに達した状態である。
【0110】
ステップS14:最上部のサンプラー部4と組み合わさるようにシャッター部5を貫入装置10により地盤に貫入させる。最下端のシャッター部5がガイド体3Tの支持台3ssに当接するまで、シャッター部5を1つずつ、地盤に貫入させていく。
【0111】
ステップS15:最下端のシャッター部5がガイド体3Tの支持台3ssに当接した状態である。この状態において、複数のサンプラー部4および複数のシャッター部5により形成された試料収納空間に陸域地盤の試料が収納されている。
【0112】
ステップS16:地盤に貫入された複数のロッド部2からなる貫入ロッドを、複数のサンプラー部4および複数のシャッター部5とともに引き上げる。引上げ作業は、一組のロッド部2、サンプラー部4および複数のシャッター部5ごとに行う。詳しくは、最も上部にあるガイド体3をロッド部2から取り外し、内部に地盤試料が収納された一組のサンプラー部4およびシャッター部5を当該ロッド部2から取り外す。ガイド体3はロッド部2にねじ等で固定されていないことから、ロッド部2から容易に取り外すことができる。一組のサンプラー部4およびシャッター部5を単位として回収し、保管箱(コア箱)に格納するため、作業性を向上させることができる。
【0113】
なお、ステップS16では、貫入ロッドを引上げる際、プローブ6の抵抗体にかかる荷重が計測器により計測される。
【0114】
上記方法によれば、地盤試料採取装置1を用いることで、陸域地盤の採取作業において従来に比べて格段に施工性ないし作業性を向上させることができる。
【0115】
次に、
図21を参照して水底地盤の採取方法について説明する。
【0116】
ステップS21:筒部(ケーシング)20を水面から水底地盤に建て込む。本ステップは、たとえば、船上で短尺筒部材を継合して筒部20を形成し、形成した筒部20を船上に設置されたウインチから巻き出された懸垂ロープで吊して水面から降下させていき、水底地盤に着底させる。その後、筒部20の基端の把持部材(図示せず)にバイブロハンマーを取り付け、筒部20を振動させ、水底地盤の所定の深さまで貫入させる。このようにして建て込まれた筒部20は、ロッド部2、サンプラー部4およびシャッター部5の貫入路となる。
【0117】
ステップS22:S11と同様にして、プローブ6が先端に設けられたロッド部2にガイド体3Tを固定し、サンプラー部4をガイド体3Tの係合部3aに係合させた後、ガイド体3をロッド部2に装着し、サンプラー部4を固定する。プローブ6が水底面に着底するまで、ロッド部2を継ぎ足し、継ぎ足したロッド部2にガイド体3を用いてサンプラー部4を追加することを繰り返す。
【0118】
ステップS23:プローブ6が水底面に着底した後、ロッド部2の基端に貫入装置10を取り付け、貫入装置10により、プローブ6が水底地盤の所定の深さに達するまでロッド部2およびサンプラー部4を地盤に貫入させる。この際、ロッド部2を継ぎ足し、継ぎ足したロッド部2にガイド体3を用いてサンプラー部4を追加することを繰り返す。
【0119】
貫入装置10は、たとえばバイブロハンマーであるが、貫入方法に応じて他の装置(打撃貫入用の装置など)であってもよい。なお、水底地盤が軟弱なために筒部20が自沈または静的な載荷により所望の深さまで貫入する場合には、筒部20に振動や打撃を加えなくてもよい。
【0120】
なお、ステップS23において、ロッド部2を貫入する前に、プローブ6による計測および記録を開始してもよい。このタイミングで計測を開始することで、プローブ6が水底地盤に貫入する際の抵抗力(荷重)に関するデータを得ることができる。
【0121】
ステップS24:プローブ6が水底地盤の所定の深さに達した状態である。
【0122】
ステップS25:貫入ロッドに併設された複数のサンプラー部4に沿ってシャッター部5を水底面に一つずつ落としていく。その後、最上部のシャッター部5を貫入装置10により地盤に貫入させ、最下端のシャッター部5がガイド体3Tの支持台3ssに当接するまで、シャッター部5を1つずつ、地盤に貫入させていく。
【0123】
ステップS26:最下端のシャッター部5がガイド体3Tの支持台3ssに当接した状態である。この状態において、複数のサンプラー部4および複数のシャッター部5により形成された試料収納空間に水底地盤の試料が収納されている。
【0124】
ステップS27:地盤に貫入された複数のロッド部2からなる貫入ロッドを、複数のサンプラー部4および複数のシャッター部5とともに引き上げる。引上げ作業は、陸域地盤の場合と同様に、一組のロッド部2、サンプラー部4および複数のシャッター部5ごとに行う。ガイド体3はロッド部2にねじ等で固定されていないことから、ロッド部2から容易に取り外すことができる。
【0125】
なお、ステップS27では、ウインチで貫入ロッドを引上げる際、プローブ6の抵抗体にかかる荷重が計測器により計測される。
【0126】
ステップS28:すべてのロッド部2、サンプラー部4およびシャッター部5を揚収した後、筒部20を回収する。
【0127】
上記方法によれば、地盤試料採取装置1を用いることで、水底地盤の採取作業において従来に比べて格段に施工性ないし作業性を向上させることができる。
【0128】
以上説明したように、地盤試料採取装置1を用いた地盤試料採取方法によれば、貫入時においては、ロッド部2にねじ等を用いずにガイド体3を容易に装着することができ、引上げ時においては、ロッド部2からガイド体3を容易に取り外すことができる。また、サンプラー部4は、ガイド体3により係合支持されることから、サンプラー部4をロッド部2に設けるために複雑な作業が発生することはない。
【0129】
よって、本実施形態に係る地盤試料採取方法によれば、陸域地盤および水底地盤のいずれであっても、連続した地盤試料の採取に係る作業を手間や時間をかけずに容易に経済的に行うことができるようになる。特に、作業時間の削減に対する要請の高い水底地盤の調査において有用性が高い。
【0130】
さらに、本実施形態に係る地盤試料採取方法によれば、サンプラー部4が大きく開口しているため、貫入時に地盤試料により閉塞することを防止できる。
【0131】
また、サンプラー部4は剛性の高いロッド部2に併設されるため、サンプラー部4を地盤中にまっすぐに貫入させることができる。
【0132】
また、貫入装置10がロッド部2に振動または打撃を加えることで貫入がなされるため、貫入時におけるサンプラー部4への負荷を軽減することができる。
【0133】
本発明は、たとえば、防波護岸など、沿岸の港湾インフラや、洋上風力発電など、沖合のエネルギーインフラを建設するための基礎的地盤調査に適用することが可能である。その他、表層型メタンハイドレートなど、大水深の海底エネルギー資源や、熱水鉱床など、海底鉱物資源の賦存量や性状などの調査に適用することも可能である。
【0134】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0135】
1 地盤試料採取装置
2 ロッド部
2a 雄ねじ
2b 雌ねじ
2c,2d 凹部
2P ロッド本体
2Q ロッドカプラ
3,3T,3U,3W ガイド体
3a 係合部
3ag 溝部
3h ねじ孔
3s シュー
3ss 支持台
31,32,34 構成部材
31a,32a 部分係合部
31T,32T 構成部材
31s,32s 部分シュー
33 ヒンジ
4 サンプラー部
4a 開口端
4e,4f 縁部
4n 切り欠き
5,5W シャッター部
5a 開口端
5g 溝部
6 プローブ
10 貫入装置
20 筒部
A 設定可能範囲
D1,D2 内径
O1,O2 中心点
S 船
θ1,θ2 開口角