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特開2022-154592セメントサイロ及びエアースライダーの増設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154592
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】セメントサイロ及びエアースライダーの増設方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 7/24 20060101AFI20221005BHJP
   B65G 65/40 20060101ALI20221005BHJP
   B65D 88/70 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
E04H7/24
B65G65/40 B
B65D88/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057703
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】栗山 英司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】厚井 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】水谷 裕和
(72)【発明者】
【氏名】酒見 昌利
【テーマコード(参考)】
3E170
3F075
【Fターム(参考)】
3E170AA16
3E170AB12
3E170WC12
3E170WC20
3E170WD02
3F075AA08
3F075BA04
3F075BB01
3F075CA04
3F075DA14
(57)【要約】
【課題】長期間に亘ってセメントの導出を継続することが可能なセメントサイロを提供すること。
【解決手段】セメントサイロ100は、セメントCを収容する収容部35を有するサイロ本体30と、収容部35からセメントCを導出する第1エアースライダー10及び第2エアースライダー20と、第1エアースライダー10及び第2エアースライダー20で導出されるセメントCを搬送する搬送装置42A,42Bと、を備える。第2エアースライダー20は第1エアースライダー10よりも短く、第2エアースライダー20の先端部25は、第1エアースライダー10の先端部15よりも尖っている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを収容する収容部を有するサイロ本体と、前記収容部から前記セメントを導出する第1エアースライダー及び第2エアースライダーと、前記第1エアースライダー及び前記第2エアースライダーで導出される前記セメントを搬送する搬送装置と、を備えるセメントサイロであって、
前記第2エアースライダーは前記第1エアースライダーよりも短く、
前記第2エアースライダーの前記搬送装置側とは反対側の端部は、前記第1エアースライダーの前記搬送装置側とは反対側の端部よりも尖っている、セメントサイロ。
【請求項2】
前記第2エアースライダーは、前記収容部において前記第1エアースライダーに沿うように、前記第1エアースライダーの上方に設けられる、請求項1に記載のセメントサイロ。
【請求項3】
前記サイロ本体は、平面視で円形をなす側壁と、前記円形の径方向に沿って貫通し前記搬送装置が配置されるトンネルと、を有し、
前記トンネルの内壁側から前記側壁側に向かうように、複数の前記第1エアースライダーと複数の前記第2エアースライダーとが延びており、
複数の前記第2エアースライダーの前記搬送装置側の端部が、複数の前記第1エアースライダーの前記搬送装置側の端部よりも、前記サイロ本体の側壁寄りに偏って設けられている、請求項1又は2に記載のセメントサイロ。
【請求項4】
前記サイロ本体の前記収容部における底面は凹凸構造を有しており、
前記第1エアースライダーの前記端部及び前記第2エアースライダーの前記端部は、それぞれ、凸部の頂部よりも低い位置に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載のセメントサイロ。
【請求項5】
セメントを収容する収容部を有するサイロ本体と、前記収容部から前記セメントを導出する第1エアースライダーと、前記第1エアースライダーで導出される前記セメントを搬送する搬送装置と、を備えるセメントサイロにおけるエアースライダーの増設方法であって、
前記第1エアースライダーよりも短く、一方の端部が前記第1エアースライダーよりも尖っている第2エアースライダーを、前記端部を前記収容部の外側から内側に向かって挿入する挿入工程を有する、エアースライダーの増設方法。
【請求項6】
前記挿入工程では、前記第2エアースライダーの前記端部を、前記収容部に収容されている前記セメント内に挿入する、請求項5に記載のエアースライダーの増設方法。
【請求項7】
複数ある前記第1エアースライダーのうち、前記セメントの抜出し不良が生じている前記第1エアースライダーを選択する選択工程を有し、
前記挿入工程では、複数ある前記第1エアースライダーのうち、前記選択工程で選択した前記第1エアースライダーに最も近接する位置において、前記第2エアースライダーを前記セメント中に挿入する、請求項6に記載のエアースライダーの増設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セメントサイロ及びエアースライダーの増設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント工場において、セメントを貯蔵する貯蔵庫としてセメントサイロが用いられている。特許文献1に示されるように、セメントサイロ中に貯蔵されているセメントは、エアースライダーで導出し、コンベア等の輸送装置によって港まで輸送される。このようなセメントサイロは、通常巨大であるため、エアースライダーから離れた位置では、吸湿及び圧密等の影響によって硬化し、セメントサイロ内にセメントの塊が生じる。
【0003】
セメントサイロ内にセメントの塊が生じると、セメントサイロの内部が閉塞しエアースライダーでセメントを抜き出すことが困難となる。このようなエアースライダーの閉塞が生じると、セメントサイロを休止して人力によるセメントの塊の除去作業が必要となる。この除去作業の間、セメントサイロを使用することができないうえに、セメントの塊の除去作業には多くの人手と費用が必要となる。このため、特許文献1では、ガス噴射手段を設けてサイロ内でのセメントの圧密と堆積の進行を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-197190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セメントの塊(以下、「セメント塊」という。)によってエアースライダーが閉塞し、セメントサイロからのセメントの導出が困難になると、セメントサイロを休止してセメントサイロを開放し、セメント塊の除去作業を行う必要がある。セメントサイロが大型になると、このようなセメント塊の除去作業には、数ヶ月もの長期間を所要する。そうすると、セメントの製造自体も制約を受けてしまうことが懸念される。
【0006】
そこで、本発明では、長期間に亘ってセメントの導出を継続することが可能なセメントサイロを提供する。また、セメントサイロが運転中であってもエアースライダーを円滑に増設することが可能なエアースライダーの増設方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、セメントを収容する収容部を有するサイロ本体と、収容部からセメントを導出する第1エアースライダー及び第2エアースライダーと、第1エアースライダー及び第2エアースライダーで導出されるセメントを搬送する搬送装置と、を備えるセメントサイロであって、第2エアースライダーは第1エアースライダーよりも短く、第2エアースライダーの搬送装置側とは反対側の端部は、第1エアースライダーの搬送装置側とは反対側の端部よりも尖っている、セメントサイロを提供する。
【0008】
上記セメントサイロは、第1エアースライダーよりも短い第2エアースライダーを備える。この第2エアースライダーの搬送装置側とは反対側の端部は、第1エアースライダーの搬送装置側とは反対側の端部よりも尖っている。このような第2エアースライダーは、第1エアースライダーよりも短く且つ一端が尖っているため、この尖っている端部を先方としてセメントサイロ内に挿入することができる。このため、第1エアースライダーが閉塞しても第2エアースライダーから継続してセメントの導出することができる。したがって、長期間に亘ってセメントの導出を継続することができる。
【0009】
第2エアースライダーは、収容部において第1エアースライダーに沿うように、第1エアースライダーの上方に設けられることが好ましい。これにより、第1エアースライダーの搬送装置側の端部にセメント塊が生じた場合でも、第2エアースライダーから、継続してセメントの導出することができる。サイロ本体からセメントを抜き出したい場合は、例えば、エアースライダー1つ1つの流量を制御することはせず、所望の流量を満たすことができるエアースライダーを開く、閉めるの制御をする。したがって、所望の流量を満たせないエアースライダーは、セメントの抜き出しにはあまり適していないことになる。一方、サイロ本体から、セメントは均等に抜き出さないと、セメント塊の発生頻度が上昇してしまう。第1エアースライダーは、例えば、セメントを均等に抜き出せるようにサイロ本体内に均等に配置される。したがって、サイロ設計当初の抜き出し配置を利用し、セメントを均等に抜き出すため、第2エアースライダーは、収容部において第1エアースライダーに沿うように、第1エアースライダーの上方に設けられることが好ましい。
【0010】
上記セメントサイロにおけるサイロ本体は、平面視で円形をなす側壁と、円形の径方向に沿って貫通し搬送装置が配置されるトンネルと、を有し、トンネルの内壁側から側壁側に向かうように、複数の第1エアースライダーと複数の第2エアースライダーとが延びており、複数の第2エアースライダーの搬送装置側の端部が、複数の第1エアースライダーの搬送装置側の端部よりも、サイロ本体の側壁寄りに偏って設けられていることが好ましい。サイロ本体の収容部に収容されているセメントは、サイロ本体の中央部分よりも側壁寄りの部分の方が外部の湿気等の影響を受けやすい。そして、この側壁寄りの部分のうち、第1エアースライダーのトンネルの内壁側の端部の近傍は、第1エアースライダーからのセメントの導出によるセメントの流動量が少ないため、セメントが特に固化しやすい。上記セメントサイロは、第1エアースライダーと第2エアースライダーとを複数有するうえに、複数の第2エアースライダーの搬送装置側の端部が、側壁寄りに偏って設けられている。これによって、セメントが固化し易い領域からセメントを抜き出すことが可能となり、一層長い期間に亘って、セメントの導出を継続することができる。
【0011】
上記サイロ本体の収容部における底面は凹凸構造を有しており、第1エアースライダーの端部及び第2エアースライダーの端部は、それぞれ、凸部の頂部よりも低い位置に配置されることが好ましい。このように、サイロ本体の底面に凹凸構造を有する場合、セメントの在庫量が十分に少なくできるものの、凹部においてセメントが固化しやすい。そこで、第1エアースライダー及び第2エアースライダーの端部を、凸部の頂部よりも低い位置に配置することによって、セメントの閉塞を十分に抑制し、セメントが十分に低在庫になるまでセメントを抜き出すことができる。
【0012】
本発明は、セメントを収容する収容部を有するサイロ本体と、収容部からセメントを導出する第1エアースライダーと、第1エアースライダーで導出されるセメントを搬送する搬送装置と、を備えるセメントサイロにおけるエアースライダーの増設方法であって、第1エアースライダーよりも短く、一方の端部が第1エアースライダーよりも尖っている第2エアースライダーを、端部を収容部の外側から内側に向かって挿入する挿入工程を有する、エアースライダーの増設方法を提供する。
【0013】
上述の増設方法によれば、セメントサイロが運転中であり、第1エアースライダーが設けられているサイロ本体の収容部にセメントが収容されている状態であっても、新たに、第2エアースライダーを挿入してエアースライダーを増設することができる。なお、セメントサイロが運転中であっても、サイロ本体の収容部に収用されるセメントが少なければ少ないほど増設を簡便に行うことができる。つまり、セメントサイロの運転を止めずに第2エアースライダーを増設できるという観点で好ましい。第2エアースライダーは、第1エアースライダーよりも短く、一方の端部が第1エアースライダーよりも尖っているため、円滑に第2エアースライダーを挿入して増設することができる。これによって、第1エアースライダーが閉塞しても、第2エアースライダーによってセメントの導出を継続することができる。
【0014】
上記挿入工程では、第2エアースライダーの端部を、収容部に収容されているセメント内に挿入することが好ましい。第2エアースライダーは、第1エアースライダーよりも短く、一方の端部が第1エアースライダーよりも尖っているため、収容部でセメントが固化してセメント塊が生じていても、第2エアースライダーを挿入してセメント塊を破砕し、サイロ本体の収容部からのセメントの導出を継続することができる。
【0015】
複数ある第1エアースライダーのうち、セメントの抜出し不良が生じている第1エアースライダーを選択する選択工程を有し、上記挿入工程では、複数ある第1エアースライダーのうち、選択工程で選択した第1エアースライダーに最も近接する位置において、第2エアースライダーをセメント中に挿入することが好ましい。第1エアースライダーにおいてセメントの導出不良が生じると、当該第1エアースライダーの近傍のセメントの流動性が低下し、セメント塊が大きくなり易い。そこで、選択工程で選択した第1エアースライダーに最も近接する位置において、第2エアースライダーをセメント中に挿入することによって、セメント塊が大きくなることを抑制し、サイロ本体の収容部からのセメントの導出を継続することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、長期間に亘ってセメントの導出を継続することが可能なセメントサイロを提供することができる。また、セメントサイロが運転中であってもエアースライダーを円滑に増設することが可能なエアースライダーの増設方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】セメントサイロを正面からみたときの図である。
図2】セメントサイロの平面図である。
図3】トンネルの内壁に設けられる貫通孔の配置を示す図である。
図4】第1エアースライダーの搬送装置側とは反対側の端部を示す斜視図である。
図5】第2エアースライダーの搬送装置側とは反対側の端部を示す斜視図である。
図6】(A)は第1エアースライダーの搬送装置側とは反対側の端部を示す平面図である。(B)は第2エアースライダーの搬送装置側とは反対側の端部を示す平面図である。
図7】サイロ本体におけるトンネルの内壁近傍の構造を示す断面図である。
図8図2のVIII-VIII線に沿って切断したときの断面の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、場合により図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0019】
図1は、一実施形態のセメントサイロを正面からみたときの図である。ただし、図1では、セメントサイロの内部構造の理解のため、収容部35内の構造物も実線で示している。図1のセメントサイロ100は、セメントCを収容する収容部35を有するサイロ本体30と、収容部35からセメントCを導出する第1エアースライダー10及び第2エアースライダー20と、第1エアースライダー10及び第2エアースライダー20で導出されるセメントCを搬送する搬送装置42とを備える。収容部35は、円筒状の側壁31、側壁の上端側を覆う天板32、及び、トンネル40の内壁44によって、外部と区画されている。天板32は、セメントCを収容部35に導入する導入口(不図示)を有していてよい。
【0020】
サイロ本体30は、平面視で円形をなす側壁31と、円形の径方向に沿って貫通し搬送装置42A,42Bが配置されるトンネル40とを備える。本実施形態では、長手方向に沿って互いに平行になるように2つの搬送装置42A,42Bが並列して設けられているが、搬送装置は1つであってよく、3つ以上が並列に設けられていてもよい。搬送装置42A,42Bは、サイロ本体30の収容部35から、第1エアースライダー10及び第2エアから抜き出されたセメントCを他の設備に搬送する装置であり、例えばフローコンベアであってよい。
【0021】
サイロ本体30の収容部35における底面34は、側壁31からトンネル40の内壁44に近接するにつれて徐々に低くなるように傾斜している。この底面34に沿って、収容部35に収容されるセメントCを搬送装置42に抜き出す第1エアースライダー10が設けられている。第1エアースライダー10の先端部15は収容部35の側壁31付近に配置され、第1エアースライダー10の基端部16は搬送装置42に接続されている。第1エアースライダー10の基端部16は、搬送装置42側の端部であり、先端部15は搬送装置42側とは反対側の端部である。第1エアースライダー10は、基端部16付近においてトンネル40の内壁44を貫通している。これによって、収容部35内のセメントCを収容部35の外部に抜き出すことができる。
【0022】
第2エアースライダー20は、収容部35において第1エアースライダー10に沿うように、第1エアースライダー10の上方に設けられている。第2エアースライダー20の先端部25は収容部35の内壁44付近に配置され、第2エアースライダー20の基端部26はトンネル40内において、第1エアースライダー10の基端部16付近に接続されている。第2エアースライダー20の基端部26は、搬送装置42側の端部であり、先端部25は搬送装置42側とは反対側の端部である。第2エアースライダー20は、基端部26付近においてトンネル40の内壁44を貫通している。これによって、収容部35内のセメントCを収容部35の外部に抜き出すことができる。
【0023】
第2エアースライダー20は、第1エアースライダー10よりも短い。収容部35における第1エアースライダー10の長さをL1、及び、収容部35における第2エアースライダー20の長さをL2としたときに、L2/L1は、0.05~0.5であってよく、0.1~0.4であってもよい。第1エアースライダー10の長さL1は、例えば5~20mであってよい。第2エアースライダー20の長さL2は、例えば、0.5~4mであってよい。第1エアースライダー10が複数ある場合、L1は最も短い第1エアースライダー10の長さである。一方、第2エアースライダー20が複数ある場合、L2は最も長い第2エアースライダー20の長さである。
【0024】
第1エアースライダー10の先端部15は、トンネル40の内壁44よりも側壁31寄りに配置されている。一方、第2エアースライダー20の先端部25は、側壁31よりもトンネル40の内壁44寄りに配置されている。これによって、収容部35においてセメントCの導入口となる先端部15及び先端部25が分散配置されることとなり、セメントCの導入口が配置されない所謂デッドスペースを小さくすることができる。また、収容部35内のうち、第1エアースライダー10の基端部16付近の上方でセメント塊が成長することを抑制し、第2エアースライダー20から継続してセメントCの導出を行うことができる。
【0025】
ただし、先端部15,25の配置はこれに限定されるものではなく、変形例では、第1エアースライダー10の先端部15が、側壁31よりもトンネル40の内壁44寄りに配置されていてよい。また、別の変形例では、第2エアースライダー20の先端部25がトンネル40の内壁44よりも側壁31寄りに配置されていてもよい。
【0026】
図2は、セメントサイロ100の平面図である。セメントサイロ100は、ただし、図2では、サイロ本体30の収容部35内における第1エアースライダー10と第2エアースライダー20の位置関係を理解し易くするため、第2エアースライダー20を実線で示している。図2に示すとおり、セメントサイロ100は、複数の第1エアースライダー10と複数の第2エアースライダー20とを有する。
【0027】
具体的には、一方の搬送装置42Aに接続される9本の第1エアースライダー10が、内壁44側から側壁31側に向かって延びている。他方の搬送装置42Bに接続される第1エアースライダー10が、内壁44側から側壁31側に向かって延びている。搬送装置42A(42B)に接続される9本の第1エアースライダー10は、搬送装置42Aの搬送方向に沿って所定の間隔で並んでおり、隣り合う第1エアースライダー10は互いに平行に延びている。隣り合う第1エアースライダー10の長さは互いに異なっており、これによって、搬送装置42A(42B)から延びる第1エアースライダー10の先端部15は、側壁31の内側を円周方向に沿って並んで配置されている。
【0028】
第2エアースライダー20は、複数ある第1エアのうち、一部の上方に設けられている。具体的には、一方の搬送装置42Aから延びる9本の第1エアースライダー10のうち、最も側壁31寄りに配置される一対の第1エアースライダー10と、これに隣接する第1エアースライダー10のそれぞれの上方において、先端部25が側壁31に向かうようにして4本の第2エアースライダー20が延びている。4本の第2エアースライダー20は、互いに平行に並んで延びている。これと同様に、他方の搬送装置42Bから延びる9本の第1エアースライダー10のうち、最も側壁31寄りに配置される一対の第1エアースライダー10と、これに隣接する第1エアースライダー10のそれぞれの上方において、先端部25が側壁31に向かうようにして4本の第2エアースライダー20が延びている。したがって、セメントサイロ100は、合計18本の第1エアースライダー10と、合計8本の第2エアースライダー20を備える。
【0029】
収容部35内において、側壁31に近接する領域は湿気の影響を受けやすい。このような収容部35の外周領域のうち、最も外側に配置されるエアースライダーと側壁の間の領域65は、セメントが流動し難く固まりやすい領域である。本実施形態では、図2に示されるように、複数の第2エアースライダー20の基端部26が、複数の第1エアースライダー10の基端部16よりも、サイロ本体30の側壁31寄りに偏って設けられている。これによって、複数の第2エアースライダー20の先端部25が、複数の第1エアースライダー10の先端部15よりも、トンネル40の開口46寄りに偏って配置されることとなる。したがって、領域65においてセメントが固まることを抑制し、一層長期間に亘ってセメントCを安定的に導出することができる。
【0030】
図3は、トンネル40の内壁44に設けられる貫通孔14,24の配置を示す図である。図3は、トンネル40の内部から側壁31に向かって、内壁44をみたときの図である。貫通孔14には、第1エアースライダー10が挿入され、貫通孔24には第2エアースライダー20が挿入される。なお、図3は、貫通孔14,24の配置を示すものであるため、第1エアースライダー10及び第2エアースライダー20は示されていない。複数の第1エアースライダー10は、互いに同じ高さにある貫通孔14に挿通される。また、複数の第2エアースライダー20も、互いに同じ高さにある貫通孔24に挿通される。第2エアースライダー20が挿入される貫通孔24は、第1エアースライダー10が挿入される貫通孔14よりもトンネル40の開口46寄りに偏っている。
【0031】
なお、本実施形態では、複数の第1エアースライダー10のうち、最も外側に配置される第1エアースライダー10とその内側にある第1エアースライダー10の上方にのみ第2エアースライダー20が設けられているが、これに限定されない。例えば、変形例では、第2エアースライダー20は、最も外側に配置される第1エアースライダー10の上方のみに設けられてもよい。また、第1エアースライダー10及び第2エアースライダー20の数も適宜変更してもよいし、全ての第1エアースライダー10の上方に第2エアースライダー20を設けてもよい。また、第2エアースライダー20は第1エアースライダー10の鉛直上方に限定されず、鉛直上方からずれていてもよい。例えば、隣り合う2つの第1エアースライダー10の中間点の上方に一つの第2エアースライダー20を設けてもよい。複数の第1エアースライダー10は、同じ高さではなくてもよく、互いに異なる高さに設けられてもよい。複数の第2エアースライダー20も、同じ高さではなくてもよく、互いに異なる高さに設けられてもよい。
【0032】
図4は、第1エアースライダー10の先端部15を示す斜視図である。第1エアースライダー10は、空気の流路をなす金属製のチャンネル部材11と、チャンネル部材11の上面を覆い、セメントCの搬送面をなす布キャンバス12とを備える。チャンネル部材11の底面には空気を供給する空気管17が、チャンネル部材11の長手方向に沿って所定の間隔で接続されている。空気管17には、サイロ本体30の外部にあるブロア(不図示)から空気が導入される。
【0033】
チャンネル部材11と布キャンバス12は空気室を構成しており、空気管17から空気室に供給された空気は、空気室を流通して布キャンバス12の上面(搬送面)から吹き出すようになっている。このように空気が吹き出すことによってセメントCが流動し、第1エアの先端部15に沿ってセメントCが流動する。流動したセメントCは、先端部15に露出している布キャンバス12上を流動し、布キャンバス12を覆うように設けられた蓋部材13の入口13aから蓋部材13と布キャンバス12の間に流入し、第1エアースライダー10内を流通して搬送装置42A(42B)まで流動する。このようにして、サイロ本体30の収容部からセメントCが抜き出される。この入口13aがセメント塊で塞がれたり、蓋部材13と布キャンバス12の間でセメントが詰まったりすると、第1エアースライダー10による導出が困難となる。なお、効率よくセメントCを搬送する観点から、蓋部材13は、基端部16側にのみついていればよく、例えば、サイロ本体30中には蓋部材13はなくてもよい。
【0034】
図5は第2エアースライダー20の先端部25を示す斜視図である。第2エアースライダー20は、空気の流路をなす金属製のチャンネル部材21と、チャンネル部材21の上面を覆い、セメントCの搬送面をなす布キャンバス22とを備える。チャンネル部材21の底面には空気を供給する空気管27が、チャンネル部材21の長手方向に沿って所定の間隔で接続されている。空気管27には、サイロ本体30の外部にあるブロア(不図示)から空気が導入される。
【0035】
チャンネル部材21と布キャンバス22は空気室を構成しており、空気管27から空気室に供給された空気は、空気室を流通して布キャンバス22の上面(搬送面)から吹き出すようになっている。このように空気が吹き出すことによってセメントCが流動し、第2エアの先端部25に沿ってセメントCが流動する。流動したセメントCは、先端部25に露出している布キャンバス22上を流動し、布キャンバス22を覆うように設けられた蓋部材23の入口23aから蓋部材13と布キャンバス12の間に流入し、第2エアースライダー20内を流通して搬送装置42A(42B)まで流動する。このように、第2エアースライダー20も、第1エアースライダー10と同様にして、サイロ本体30の収容部からセメントCを抜き出す。
【0036】
第2エアースライダー20の先端部25は、中央部が突出するように尖っている。すなわち、第1エアースライダー10の先端部15は、平らになっているのに対し、第2エアースライダー20の先端部25は三角屋根状の形状を有しており、先端が尖っている。このため、第2エアースライダー20は、第1エアースライダー10よりもセメントC中に円滑に挿入することができる。なお、先端部25の形状は、アーチ状又はピラミッド状であってもよい。
【0037】
図6の(A)は第1エアースライダー10の先端部15の平面図であり、図6の(B)は第2エアースライダー20の先端部25の平面図である。第1エアースライダー10の先端部15は、図6に示すように平らになっているのに対し、第2エアースライダー20の先端部25は中央部が突出して三角形状を呈している。このように、第2エアースライダー20は、先端部25に舟形形状を有している。このため、第2エアースライダー20を舟形スライダーと称することもできる。
【0038】
図6に示すような平面視における第2エアースライダー20の先端部25の角度θは、第2エアースライダー20のサイロ本体30の収容部35への挿入を円滑にする観点から、好ましくは120°以下であり、より好ましくは90°以下であり、さらに好ましくは60°以下であり、特に好ましくは45°以下である。一方、第2エアースライダー20の先端部25の変形を抑制する観点から、先端部25の角度θは、好ましくは15°以上であり、より好ましくは30°以上である。
【0039】
第1エアースライダー10の幅W1は、設置スペースと十分なセメントCの導出量を確保する観点から50~500mmであることが好ましく、150~350mmであることがより好ましい。第2エアースライダー20の幅W2は、設置スペースと十分なセメントCの導出量を確保する観点から50~500mmであることが好ましく、150~350mmであることがより好ましい。既設の搬送装置42を利用できる観点から、第1エアースライダー10の幅W1と、第2エアースライダー20の幅W2とは差が小さいことが好ましく、差がないことがより好ましい。
【0040】
図7は、サイロ本体におけるトンネルの内壁44の近傍の構造を示す断面図である。図7は、鉛直方向に沿って、第1エアースライダー10の基端部16及び第2エアースライダー20を通るように切断されたときの断面を示している。図7に示すように、第1エアースライダー10及び第2エアースライダー20は、貫通孔14及び貫通孔24を挿通して設けられている。第1エアースライダー10の基端部16は搬送装置42Aに接続されている。第2エアースライダー20の基端部26は、第1エアースライダー10の基端部16に接続されている。第2エアースライダー20の基端部26には、開閉可能なバルブが設けられており、セメントCの導出の有無を切り替えることができる。なお、図7には示されていないが、第1エアースライダー10も基端部16に同様のバルブを有していてもよい。
【0041】
第1エアースライダー10がセメント塊で閉塞しても、第1エアースライダー10の上方に配置される第2エアースライダー20によってセメントCの導出を継続することができる。第2エアースライダー20の上方にはエアレーション用の配管が内壁44の貫通孔からセメントCの収容部に挿入されている。エアレーション用の配管から空気を吹き込むことによって、セメントCの流動性を確保し、セメントCが固まることを抑制することができる。
【0042】
図8は、図2のVIII-VIII線に沿って切断したときの断面の一部を示す断面図である。図8には、サイロ本体30の底面34と、底面34上に配置された第1エアースライダー10及び第2エアースライダー20との位置関係が示されている。底面34は、凸部と凹部と交互に連なる凹凸構造を有している。この凹凸構造は、トンネル40の貫通方向に沿って凹凸が交互に連なるように構成されている。このような凹凸構造を有することによって、サイロ本体30の収容部からセメントCの収容量が十分に減るまでセメントCを抜き出すことができる。
【0043】
複数の第1エアースライダー10は、複数の凹部39の長手方向に沿って、凹部39内に配置されている。複数の第2エアースライダー20は、最も側壁31寄りにある凹部39とその隣にある凹部39の長手方向に沿って、凹部39内に配置されている。第1エアースライダー10の先端部15及び第2エアースライダー20の先端部25は、凸部の頂部37よりも低い位置に配置される。これによって、凹部39においてセメントCが固まって導出が困難になることを抑制するとともに、収容部に残存するセメントCが十分に低在庫となるまでセメントCを抜き出すことを可能にしている。
【0044】
なお、本実施形態では、サイロ本体30の底面34が凹凸構造を有していたが、これに限定されず、凹凸構造を有していなくてもよい。また、凹凸構造が底面34の一部に設けられていてもよい。また、凹部39の全てに第1エアースライダー10を配置してもよいし、凹部39の一部に第1エアースライダー10を配置してもよい。
【0045】
一実施形態のエアースライダーの増設方法は、第1エアースライダー10よりも短く、第1エアースライダー10の先端部15よりも尖っている先端部25を有する第2エアースライダー20を、先端部25を収容部35の外側から内側に向かって挿入する挿入工程を有する。この挿入工程は、エアースライダーとして、第1エアースライダー10のみを有するセメントサイロを用いて行ってもよいし、既に第1エアースライダー10及び第2エアースライダー20を有するセメントサイロを用いて行ってもよい。ここでは、セメントサイロ100に第2エアースライダー20を増設する場合を説明する。
【0046】
まず、セメントCの導出不良が生じている第1エアースライダー10を選択する(選択工程)。ここで、図3の貫通孔14Aに挿入されている第1エアースライダー10を選択した場合、その上方において、既設の貫通孔24の隣に新たに貫通孔24を形成する。貫通孔24の形成は、通常のドリル等を用いて行ってよい。この新たに形成した貫通孔24に、第2エアースライダー20の先端部25が収容部35のセメントCに向かうようにして、第2エアースライダー20を挿入する。このとき、図5及び図6(B)に示す先端部25がセメントC中を進入し、第2エアが増設されることとなる。その後、図7に示すように第2エアースライダー20の基端部26を第1エアースライダー10の基端部16に接続し、バルブ26Vを開放することによって、増設した第2エアースライダー20によるセメントCの導出を開始することができる。これによって、貫通孔14Aに設けられている第1エアースライダー10が閉塞によって導出不良になっていても、セメントCの導出量を確保し、セメントCの導出を継続することができる。
【0047】
第2エアースライダー20は、第1エアースライダー10よりも短いことから、トンネル40内に搬送装置42A(42B)が配置され十分な作業空間の確保が難しい場合であっても、増設作業を円滑に行うことができる。なお、第2エアースライダー20の収容部35内への挿入は、サイロ本体30の収容部35にセメントが収容されていないときに行ってもよい。ただし、収容部35にセメントCが収容されている状態で第2エアースライダー20の収容部35内のセメントC中に挿入することができるため、セメントサイロ100を休止することなく、運転を継続できるという利点がある。なお、セメントサイロの休止中に、貫通孔を形成しておき、第1エアースライダー10の閉塞が生じた場合に、予め形成していた貫通孔に第2エアースライダー20の先端部25を挿入することによって第2エアを増設してもよい。
【0048】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、図2では、隣り合う第1エアースライダー10及び隣り合う第2エアースライダー20がそれぞれ平行になっているが、これに限定されない。例えば、第1エアースライダー10及び第2エアースライダー20は、平面視において放射状に拡がるように設けられていてもよい。また、第1エアースライダー10及び第2エアースライダー20は、布キャンバス12,22をそれぞれ有していたが、これに限定されない。例えば、多孔質板など、セメントが空気室に流入することを防止できる材質のものを適宜用いることができる。また、エアースライダーの増設方法は、セメントサイロ100に第2エアースライダー20を増設する場合を例にして説明したが、別の構造を有するセメントサイロに第2エアースライダー20を増設してもよい。また、増設する第2エアースライダー20の数に特に制限はない。また、第2エアースライダー20の基端部26は、第1エアースライダー10の基端部16ではなく、搬送装置42A,42Bに直接接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…第1エアースライダー、20…第2エアースライダー、11,21…チャンネル部材、12,22…布キャンバス、13,23…蓋部材、13a,23a…入口、14,24…貫通孔、15,25…先端部、16,26…基端部、26V…バルブ、17,27…空気管、30…サイロ本体、31…側壁、32…天板、34…底面、35…収容部、37…頂部、39…凹部、40…トンネル、42,42A,42B…搬送装置、44…内壁、46…開口、65…領域、100…セメントサイロ。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8