(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154801
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】メラミンシアヌレート粒子を含む塗布用組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 173/00 20060101AFI20221005BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20221005BHJP
C09D 105/14 20060101ALI20221005BHJP
C09D 105/08 20060101ALI20221005BHJP
C09D 105/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C09D173/00
C09D5/02
C09D105/14
C09D105/08
C09D105/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058010
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小出 泰之
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038BA012
4J038BA022
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA01
4J038NA09
4J038NA25
4J038PC02
4J038PC03
(57)【要約】
【課題】金型等への潤滑性被膜を付与するためのメラミンシアヌレートを含む水系塗布剤において、メラミンシアヌレートの分散性安定性に優れ、長期間に渡ってメラミンシアヌレートの沈降を抑制できる塗布用組成物、さらには、スプレー等の噴霧塗布が可能であり、かつ噴霧塗布後に塗布面に液ダレが生じ難い、塗布用組成物を提供すること。
【解決手段】メラミンシアヌレート粒子、高分子多糖類、及び水を含む塗布用組成物であって、前記塗布用組成物の全質量に対して、高分子多糖類を0.05質量%超1.0質量%未満にて含む、塗布用組成物、並びに該塗布用組成物をスプレー塗布し被膜を形成する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミンシアヌレート粒子、高分子多糖類、及び水を含む塗布用組成物であって、
前記塗布用組成物の全質量に対して、高分子多糖類を0.05質量%超1.0質量%未満にて含む、
塗布用組成物。
【請求項2】
上記メラミンシアヌレート粒子が、0.1~100μmの平均粒子径を有する、請求項1に記載の塗布用組成物。
【請求項3】
上記高分子多糖類が、水中でカルボキシラートアニオンを有する多糖類である、請求項1又は請求項2に記載の塗布用組成物。
【請求項4】
上記高分子多糖類が、セルロース、キチン、キトサン、及びそれらのカルボン酸変性物からなる群から選択される非水溶性多糖類である、請求項1又は請求項2に記載の塗布用組成物。
【請求項5】
上記高分子多糖類が、ヒアルロン酸、ジェランガム、脱アシル化ジェランガム、ラムザンガム、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラギーナン、それらの塩、及びそれらのカルボン酸変性物からなる群から選択される水溶性多糖類である、請求項1又は請求項2に記載の塗布用組成物。
【請求項6】
上記高分子多糖類が、該塗布用組成物の全質量に対して、0.1~0.5質量%の割合にて含有されてなる、請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の塗布用組成物。
【請求項7】
上記メラミンシアヌレート粒子が、該塗布用組成物の全質量に対して、0.1~20質量%の割合にて含有されてなる、請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載の塗布用組成物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のうち何れか一項に記載の塗布用組成物を、基材にスプレー塗布し、メラミンシアヌレート粒子を含む被膜を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメラミンシアヌレート粒子を含む水系の塗布用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トリアジン誘導体は、難燃剤、酸化防止剤、防錆剤、工業用防腐剤、また潤滑剤として種々の産業分野において使用されている。トリアジン誘導体の中でもメラミンシアヌレートは有機固体潤滑剤として、潤滑油やグリースに、またバインダ(結合材)とともに塗料や摺動部材の潤滑性被膜などに配合されている。
例えばメラミンシアヌレートを基材に塗布して用いるべく、メラミンシアヌレートに加え、潤滑油、ワックス、アニオン系界面活性剤及び水性溶剤を含む潤滑剤組成物の提案がある(特許文献1)。
また、分岐カルボン酸と固体皮膜成分とを配合してなる固体に対する水系潤滑皮膜処理剤において、高い加工荷重での潤滑を補助する働きや極圧効果を発揮する補足成分としてメラミンシアヌレートが例示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-088297号公報
【特許文献2】特開2006-335838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の潤滑性組成物は、メラミンシアヌレートに沈降性があり、使用時に再分散が必要になるため、取り扱い性が悪い。
また、特許文献2では、液安定性として加速試験(80℃/120時間処理)における分散微粒子の凝集性について評価しているが、分散微粒子の沈降性については評価されていない。また補足成分として例示されたメラミンシアヌレートを水系潤滑皮膜処理剤に配合した実施例が存在せず、同文献の技術によるメラミンシアヌレートの水分散安定性については確認できない。
【0005】
本発明は、金型等への潤滑性被膜を付与するためのメラミンシアヌレートを含む水系塗布剤において、メラミンシアヌレートの分散性安定性に優れ、長期間に渡ってメラミンシアヌレートの沈降を抑制できる塗布用組成物、さらには、スプレー等の噴霧塗布が可能であり、かつ噴霧塗布後に塗布面に液ダレが生じ難い、塗布用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討を行なった結果、メラミンシアヌレート粒子と水とを含む塗布用組成物において、分散剤として特定の高分子多糖類を採用することにより、該組成物中においてメラミンシアヌレート粒子の沈降が抑制され、保存安定性に優れた組成物となること、さらには、スプレー噴霧による塗布が可能であり、液ダレが生じることなく均一な塗布面が得られ、塗布対象である金型等への塗布性に優れる組成物となることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、第1観点として、メラミンシアヌレート粒子、高分子多糖類、及び水を含む塗布用組成物であって、前記塗布用組成物の全質量に対して、高分子多糖類を0.05質量%超1.0質量%未満にて含む、塗布用組成物に関する。
第2観点として、上記メラミンシアヌレート粒子が、0.1~100μmの平均粒子径を有する、第1観点に記載の塗布用組成物に関する。
第3観点として、上記高分子多糖類が、水中でカルボキシラートアニオンを有する多糖類である、第1観点又は第2観点に記載の塗布用組成物に関する。
第4観点として、上記高分子多糖類が、セルロース、キチン、キトサン、及びそれらのカルボン酸変性物からなる群から選択される非水溶性多糖類である、第1観点又は第2観点に記載の塗布用組成物に関する。
第5観点として、上記高分子多糖類が、ヒアルロン酸、ジェランガム、脱アシル化ジェランガム、ラムザンガム、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラギーナン、それらの塩、及びそれらのカルボン酸変性物からなる群から選択される水溶性多糖類である、第1観点又は第2観点に記載の塗布用組成物に関する。
第6観点として、上記高分子多糖類が、該塗布用組成物の全質量に対して、0.1~0.5質量%の割合にて含有されてなる、第1観点乃至第5観点のうち何れか一項に記載の塗布用組成物に関する。
第7観点として、上記メラミンシアヌレート粒子が、該塗布用組成物の全質量に対して、0.1~20質量%の割合にて含有されてなる、第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載の塗布用組成物に関する。
第8観点として、第1観点乃至第7観点のうち何れか一項に記載の塗布用組成物を、基材にスプレー塗布し、メラミンシアヌレート粒子を含む被膜を形成する方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分散媒体である水中におけるメラミンシアヌレート粒子の沈降が抑制され、またスプレー噴霧による基材へ塗布後においても液ダレせず、保存安定性並びに塗布性に優れる、潤滑性被膜を形成するための塗布用組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述の特許文献1に挙げるように、塗布によりメラミンシアヌレートを含む潤滑性被膜を形成する技術はこれまでにも提案されているが、長期間に渡って水系媒体中のメラミンシアヌレート粒子の沈降を抑制することは容易でない。
また粒子分散の技術分野において、粒子と分散媒には相性があり、ある粒子の分散に優れる分散媒を、別の粒子の分散媒として直ちに転用することはできないことが知られている。粒子の種類や大きさ、分散媒の種類や粘度等、化学的性質や物理的特性によっても分散性は大きく変化し、仮に同種の粒子・分散媒を選択したとしても、性質や特性に僅かな変化がある場合には、それらの分散性を予測することは難しい。
【0010】
本発明者らは、メラミンシアヌレート粒子を含む水系の塗布組成物の設計を進める中、従来の界面活性剤等の低分子分散剤や、ポリマー型の高分子分散剤等の種々の分散剤において、長期間、例えば10時間、該粒子の沈降を抑制するという要求性能を満たす分散剤を検討した。
特に本発明者らは、粒子サイズが比較的大きいミクロンオーダーの粒子であっても、長期間の沈降を抑制できる分散剤の検討を進めた。ミクロンサイズの粒子にあっては、界面活性剤型の低分子分散剤や、水溶性高分子等の従来の高分子分散剤の適用では、沈降を抑制することは難しい。また水中で三次元ネットワークを形成する構造体において、細胞や組織を浮遊(分散)させて培養する技術が提案されているものの(例えば国際公開第2014/017513号)、こうした構造体において、ミクロンサイズの粒子を分散できるかどうかはこれまでのところ確認できていない。
さらに本発明者らは、上記塗布組成物の使用性を考慮し、被対象物への塗布性、特にスプレー噴霧において、液ダレ等を生じない良好な塗布性を実現できる塗布組成物の検討を進めた。液ダレ発生/防止には組成物の粘度よりもむしろチキソトロピー性が関係するところ、仮に液ダレが抑制される粘度範囲を満たす噴霧組成物を設計したとしても、十分な
チキソトロピー性を発現するかどうかは定かでなく、チキソトロピー性を発現しない系では液ダレが発生する虞がある。
【0011】
本発明者らは、粒子と分散媒の相性、そしてチキソトロピー性の発現などを種々検討し、メラミンシアヌレートの水系分散体において、分散剤として高分子多糖類、特にカルボキシ基やカルボキシ基の塩を含む高分子多糖類を採用することにより、ミクロンオーダーのメラミンシアヌレート粒子の沈降が抑制できるとともに、噴霧塗布における液ダレを抑制できることを見出した。
以下、本発明を詳述する。
【0012】
[メラミンシアヌレート粒子]
メラミンシアヌレートは、メラミンとシアヌル酸またはイソシアヌル酸との付加化合物であり、6員環構造のメラミン分子とシアヌル酸(イソシアヌル酸)分子が水素結合により結合し平面に配列した構造を有する。そしてその平面構造が層状に重なり合い、多層構造(雲母状)を形成することで劈開性を有し、固体潤滑性に貢献していると考えられる。
本発明で使用するメラミンシアヌレート粒子は、例えば0.1~100μmの平均粒子径を有する粒子を使用することができる。好ましくは、本発明で使用するメラミンシラヌレート粒子の平均粒子径を0.2~20μm、より好ましくは1~14μmとすることができる。ここで上記平均粒子径は、レーザー回折式散乱法により測定することができる。
上記メラミンシアヌレート粒子として、市販品を使用可能であり、例えば日産化学(株)製のMC-4000、MC-4500、MC-6000等を挙げることができる。
【0013】
一般に、水系の分散媒等に粒子を分散する場合、該粒子の沈降を防ぐべく、例えば1μm以下、ナノメートルオーダーの粒子径を有する極めて微細な粒子を用いることが望まれ、メラミンシアヌレート粒子に関しても例外ではない。
本発明にあっては、こうしたナノメートルオーダーの粒子と比べると、比較的大きいミクロンサイズの平均粒子径を有するメラミンシアヌレート粒子であっても、該粒子の沈降を長期間抑制することができる。
【0014】
本発明の塗布用組成物において、メラミンシアヌート粒子の配合量は、後述する高分子多糖類の種類や使用量、該組成物の使用目的、該組成物の適用方法(スプレー塗布)などを種々考慮し適宜設定できる。
例えば、組成物の全質量に対して、0.1~20質量%の割合にて配合することができる。
【0015】
[高分子多糖類]
本発明の塗布用組成物は高分子多糖類を含有する。高分子多糖類は、メラミンシアヌレート粒子の沈降防止や塗布性を改善する働きを有し得る。該高分子多糖類は、該組成物中で、水に溶解若しくは分散した状態で存在する。
【0016】
高分子多糖類は、セルロース、キチン及びキトサンからなる群から選択される非水溶性多糖類;又はヒアルロン酸、ジェランガム、脱アシル化ジェランガム、ラムザンガム、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラギーナン及びそれらの塩からなる群から選択される水溶性多糖類を使用することができる。さらにこれら非水溶性多糖類若しくは水溶性多糖類のカルボン酸変性物を使用することができる。
これらはそれぞれ単独で、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
これら高分子多糖類は、ファイバー形状を有していることが好ましい。
【0017】
これら高分子多糖類の中でも、その高分子鎖に、水中でカルボキシラートアニオンを有する多糖類を好ましく用いることができる。水中でカルボキシラートアニオンを有すると
は、すなわち、多糖類がカルボキシ基(-COOH)やカルボキシ基の塩の構造(-COOM)を有し、水中でカルボキシラートイオン(-COO-)を形成するものを指す。
例えば上述の非水溶性多糖類及び水溶性多糖類として挙げた具体的化合物において、水中でカルボキシラートアニオンを有する多糖類(カルボキシ基及び/又はカルボキシ基の塩の構造を有する多糖類)、また上記化合物が水中でカルボキシラートアニオンを有するものではない多糖類(カルボキシ基等を含まない多糖類)である場合には、該多糖類のカルボン酸変性物(カルボキシ基及び/又はカルボキシ基の塩の構造を導入した多糖類)を好ましく用いることができる。
上記カルボキシ基の塩としては、Na、K等のアルカリ金属の塩、Ca、Mg等のアルカリ土類金属の塩が挙げられる。
上記高分子多糖類が、その高分子鎖にカルボキシ基及び/又はカルボキシ基の塩の構造を有する、すなわち水中でカルボキシラートイオン(-COO-)を形成するものを有するものとすることにより、これらイオン同士の反発やファンデルワールス力などの相互作用により、媒体中で三次元の構造体を形成しやすくなり、例えば該構造体にメラミンシアヌレート粒子が捕捉されることで、メラミンシアヌレート粒子の沈降を抑制する効果が高まると推測される。
【0018】
上記多糖類、特に水中でカルボキシラートイオンを形成する、カルボキシ基及び/又はカルボキシ基の塩の構造を有する多糖類として、中でもカルボキシ基を有するセルロースや、脱アシル化ジェランガムを好適に用いることができる。
上記脱アシル化ジェランガムはカチオンの存在により強固なゲルを形成し、特にCaイオン等の多価陽イオンの存在下では、カルボキシ基間をイオン的に架橋し、ゲル(三次元網目)を形成することが知られている。
【0019】
これら多糖類、例えばカルボキシ基及び/又はカルボキシ基の塩の構造を有する多糖類は、市販品を用いることができる。
上記カルボキシ基を有する高分子多糖類の一例であるカルボキシ基が導入されたセルロースとしては、製品名「レオクリスタ(登録商標)」シリーズ(第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。
また、カルボキシ基を有する高分子多糖類の一例である脱アシル化ジェランガムとして、商品名「KELCOGEL(登録商標)CG-LA」(三晶株式会社)等が挙げられる。
【0020】
本発明の塗布用組成物において、高分子多糖類の配合量は組成物の全質量に対して、0.05質量%超1.0質量%未満、好ましくは0.1~0.5質量%とすることができる。上記配合量範囲とすることにより、水を主とする媒体中でメラミンシアヌレート粒子の沈降を抑制でき、また、スプレー塗布した際に噴霧面に液ダレが生じにくいものとなる。
【0021】
本発明の塗布用組成物は、上記メラミンシアヌレート粒子、上記高分子多糖類、そして水を含む。
塗布用組成物における水の含有量は、79.5質量%~99.8質量%である。
【0022】
[その他成分]
本発明の塗布用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、上記以外のその他成分を含んでいてもよい。
その他成分としては、例えばメラミンシアヌレート粒子以外の固体潤滑剤、界面活性剤、水溶性有機溶剤等を挙げることができる。
【0023】
上記固体潤滑剤としては、例えばグラファイト、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0024】
界面活性剤は、メラミンシアヌレート粒子やその他の固体潤滑剤の分散性の向上や沈降抑制する目的で使用され、例えば下記(1)~(4)に挙げる界面活性剤を使用することができる。
(1)アニオン界面活性剤
(1-1)カルボン酸型:脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルサルコシン塩、N-アシルグルタミン酸塩等。
(1-2)スルホン酸型:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル(分岐鎖)ベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N-メチル-N-アリルタウリン塩等。
(1-3)硫酸エステル型:アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、油脂硫酸エステル塩等。
(1-4)リン酸エステル型:ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩等。
(2)ノニオン界面活性剤
(2-1)エステル型:グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等。
(2-2)エーテル型:ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等。
(2-3)エステルエーテル型:脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等。
(2-4)アルカノールアミド型:脂肪酸アルカノールアミド等。
(3)カチオン界面活性剤
(3-1)アルキルアミン型:モノアルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩等。
(3-2)第4級アンモニウム塩型:ハロゲン化(塩化、臭化、またはヨウ化)アルキルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化(塩化、臭化、またはヨウ化)ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルベンザルコニウム等。
(4)両性界面活性剤
(4-1)カルボキシベタイン型:アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン等。
(4-2)2-アルキルイミダゾリンの誘導型:2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等。
(4-3)グリシン型:アルキル(またはジアルキル)ジエチレントリアミノ酢酸等。
(4-4)アミンオキシド型:アルキルアミンオキシド等。
【0025】
上記水溶性有機溶剤としては、アルコール系(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール)、グリコール系(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ)等が挙げられる。
【0026】
本発明の塗布用組成物は、ハケやブラシを用いて、あるいはスプレーにより、又は塗布用組成物中への浸漬塗布などによって、塗布対象物に対して適用することができる。
また本発明は、上記塗布用組成物を、基材にスプレー塗布し、メラミンシアヌレート粒子を含む被膜を形成する方法も対象とするものである。
【実施例0027】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0028】
下記表1~表4に示す配合量にて、実施例並びに比較例の塗布用組成物を調製した。
なお、塗布用組成物の調製に用いた各成分の詳細は以下のとおりである。
【0029】
(1)メラミンシアヌレート(MC)粒子:
(1-1)MC-6000(日産化学株式会社製、平均粒子径<2μm)
(1-2)MC-4500(日産化学株式会社製、平均粒子径<10μm)
【0030】
(2)分散剤
(2-1)カルボキシ基含有高分子多糖類
カルボキシ基が導入されたセルロースナノファイバー2.0質量%水分散液(レオクリスタ(登録商標)I-2SX、第一工業製薬株式会社製)を分散剤(2-1)水分散液とした。
(2-2)カルボキシ基の塩含有高分子多糖類
ジェランガムを主体とするポリマーFP001(日産化学(株)製)をカルボキシ基の塩含有高分子多糖類として用いた。詳細には、脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL(登録商標)CG-LA、三晶株式会社)の0.8質量%水溶液を調製し、これを、オートクレーブにて121℃、20分間、熱処理した。次いで、上記の熱処理した脱アシル化ジェランガム(FP001)40gを70℃で加熱撹拌し、ここに脱アシル化ジェランガムの濃度が0.25質量%となるように、7mM塩化カルシウム水溶液88gをゆっくりと滴下して混合し、分散剤(2-2)水溶液を調製した。
(2-3)カルボキシ基非含有高分子化合物
ポリビニルアルコール(Mowiol(登録商標)10-98、重量平均分子量~61,000、シグマアルドリッチ社)の2.0質量%水溶液を調製(90℃にて加熱溶解)し、分散剤(2-3)水溶液を調製した。
(2-4)低分子化合物
カルボキシ基を含む界面活性剤である、下記式[1]で表されるポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(ポリオキシエチレンの平均繰り返し単位:4.5)(別名:POEラウリルエーテル酢酸ナトリウム,4.5EO)を25質量%含む溶液(日光ケミカルズ(株)製)を分散剤(2-4)水溶液として使用した。
【化1】
【0031】
(実施例1)
容器にメラミンシアヌレート粒子(1-1)を0.75g秤量し、分散剤(2-1)水分散液を7.5g、さらに純水を加えて合計30gとした。室温下で2時間撹拌し、カルボキシ基含有のセルロースナノファイバーを含む実施例1の塗布用組成物を得た。
(実施例2~15、比較例1~3)
分散剤(2-1)水分散液、及び、メラミンシアヌレート粒子(1-1)の配合量を変更した以外は、実施例1と同様の手順にて、実施例2~15及び比較例1~3の塗布用組成物を得た。
表1に実施例1~15及び比較例1~3の各塗布用組成物における分散剤(2-1:セルロースナノファイバー)及びメラミンシアヌレート粒子(MC(1-1))の各濃度を示す。
【0032】
(実施例16)
容器にメラミンシアヌレート粒子(1-2)を0.75g秤量し、分散剤(2-1)水分散液を7.5g、さらに純水を加えて合計30gとした。室温下で2時間撹拌し、カルボキシ基含有のセルロースナノファイバーを含む実施例16の塗布用組成物を得た。
(実施例17~29、比較例4~6)
分散剤(2-1)水分散液、及び、メラミンシアヌレート粒子(1-2)の配合量を変更した以外は、実施例16と同様の手順にて、実施例17~29及び比較例4~6の塗布用組成物を得た。
表2に実施例16~29及び比較例4~6の各塗布用組成物における分散剤(2-1:セルロースナノファイバー)及びメラミンシアヌレート粒子(MC(1-2))の各濃度を示す。
【0033】
(実施例30)
容器にメラミンシアヌレート粒子(1-1)を0.75g秤量し、分散剤(2-2)水溶液を28.8g、さらに純水を加えて合計30gとした。室温下で2時間撹拌し、脱アシル化ジェランガムを含む実施例30のメラミンシアヌレート塗布用組成物を得た。
(実施例31~38、比較例7~9)
分散剤(2-2)水溶液、及び、メラミンシアヌレート粒子(1-1)の配合量を変更した以外は、実施例30と同様の手順にて、実施例31~38及び比較例7~9の塗布用組成物を得た。
表3に実施例30~38及び比較例7~9の各塗布用組成物における分散剤(2-2:脱アシル化ジェランガム)及びメラミンシアヌレート粒子(MC(1-1))の各濃度を示す。
【0034】
(比較例10)
容器にメラミンシアヌレート粒子(1-1)を0.75g秤量し、分散剤(2-3)水溶液を7.5g、さらに純水を加えて合計30gとした。室温下で2時間撹拌し、ポリビニルアルコールを含む比較例10の塗布用組成物を得た。
(比較例11~24)
分散剤(2-3)水溶液、及び、メラミンシアヌレート粒子(1-1)の配合量を変更した以外は、比較例10と同様の手順にて、比較例11~24の塗布用組成物を得た。
表4に比較例10~24の各塗布用組成物における分散剤(2-3:ポリビニルアルコール)及びメラミンシアヌレート粒子(MC(1-1))の各濃度を示す。
【0035】
(比較例25)
容器にメラミンシアヌレート粒子(1-1)を0.75g秤量し、分散剤(2-4)水溶液を7.5g、さらに純水を加えて合計30gとした。室温下で2時間撹拌し、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウムを含む比較例25の塗布用組成物を得た。(比較例26~31)
分散剤(2-4)水溶液、及び、メラミンシアヌレート粒子(1-1)の配合量を変更した以外は、比較例25と同様の手順にて、比較例26~31の塗布用組成物を得た。
表5に比較例25~31の各塗布用組成物における分散剤(2-4:ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム)及びメラミンシアヌレート粒子(MC(1-1))の各濃度を示す。
【0036】
(比較例32)
容器にメラミンシアヌレート粒子(1-2)を0.75g秤量し、分散剤(2-4)水溶液を7.5g、さらに純水を加えて合計30gとした。室温下で2時間撹拌し、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウムを含む比較例32の塗布用組成物を得た。(比較例33~38)
分散剤(2-4)水溶液、及び、メラミンシアヌレート粒子(1-2)の配合量を変更した以外は、比較例32と同様の手順にて、比較例33~38の塗布用組成物を得た。
表6に比較例32~38の各塗布用組成物における分散剤(2-4:ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム)及びメラミンシアヌレート粒子(MC(1-2))
の各濃度を示す。
【0037】
[1]沈降抑制評価
実施例及び比較例の塗布用組成物におけるメラミンシアヌレート粒子の沈降性を、以下の方法で評価した。
住友ベークライト(株)製15mL遠沈管(MS-56150、PP製)に、上記実施例及び比較例の各塗布用組成物を、該遠沈管の目盛り14mLまで充填した。
表1~表6に示す所定の経過時間(0時間~168時間)にて、該遠沈管中のメラミンシアヌレート粒子の沈降の程度を目視にて確認した。遠沈管中の組成物において、透明部分と白濁部分(粒子含有部分)への分離が認められた場合、メラミンシアヌレート粒子の沈降が生じたとし、該遠沈管における、塗布用組成物の最上部の液面(組成物最上部目盛)と、白濁部分の最上部の目盛(メラミンシアヌレート粒子沈降目盛)より、沈降保持率(%)[=(メラミンシアヌレート粒子沈降目盛/組成物最上部目盛)×100]を算出した。沈降保持率が24時間経過後において99%以上、168時間経過後において94%以上であれば好適と評価できる。
得られた結果を表1~表6に示す。
【0038】
[2]スプレー塗布における液ダレ性評価
実施例及び比較例の塗布用組成物のスプレー塗布における液ダレ性を、以下の方法で評価した。
TRUSCO キャップボトル フィンガースプレー付 TFSB-20(トラスコ中山株式会社製、容量20mL)に、実施例及び比較例の各塗布用組成物を10~15mL充填した。ガラス基板(青板ガラス、純水とイソプロパノールで洗浄後、乾燥して準備)を垂直に立て、該ガラス基板表面に対して、上記キャップボトルに充填した塗布用組成物をスプレー塗布(ガラス基板に対して垂直方向となるように吐出、ガラス基板から8cmの位置から1プッシュ)した。ガラス基板表面上のスプレー塗布物の液ダレの有無を目視にて確認し、以下の評価基準に従い評価した。得られた結果を表1~表6に示す。
<液ダレ性 評価基準>
○:液ダレが起こらない、又は液ダレがほとんど起こらない
×:スプレー塗布物がガラス基板に付着したと同時に液ダレが確認される。
【0039】
【0040】
表1に示すように、高分子多糖類であるカルボキシ基含有のセルロースナノファイバー[分散剤(2-1)]を用いた実施例の塗布用組成物は、168時間経過後においても9
4%以上の沈降保持率を示し、またスプレー塗布における液ダレ評価ではほとんど液ダレは起こらず、高い沈降保持率と良好な液ダレ抑制効果を両立できることが確認された。
一方、分散剤(2-1)の配合量を0.05質量%以下とした比較例の塗布用組成物では、24時間後の沈降保持率が96%以下、168時間経過後には90%を下回る結果となり、沈降抑制とスプレー塗布における液ダレ抑制の双方ともを満足する結果を得ることはできなかった。
【0041】
【0042】
また表2に示すように、粒子径が大きいメラミンシアヌレート粒子MC-4500(平均粒子径<10μm)を用いた場合においても、高分子多糖類であるカルボキシ基含有のセルロースナノファイバー[分散剤(2-1)]を用いた実施例の塗布用組成物では168時間経過後に97%以上の高い沈降保持率を示した。またスプレー塗布における液ダレ評価でもほとんど液ダレは起こらず、高い沈降保持率と良好な液ダレ抑制効果を両立できることが確認された。
一方、分散剤(2-1)の配合量を0.05質量%以下とした比較例の塗布用組成物では、24時間後の沈降保持率は比較的高い値(97%以上)を維持してはいたものの、メラミンシアヌレート粒子の配合量を増やした場合、168時間経過後には沈降保持率が大きく低下した。また何れの場合も液ダレが確認され、沈降抑制とスプレー塗布における液ダレ抑制の双方ともを満足する結果を得ることはできなかった。
【0043】
【0044】
表3に示すように、高分子多糖類である脱アシル化ジェランガム[分散剤(2-2)]を用いた実施例の塗布用組成物は、168時間経過後においても98%以上の沈降保持率を示し、またスプレー塗布における液ダレ評価でもほとんど液ダレは起こらず、高い沈降保持率と良好な液ダレ抑制効果を両立できることが確認された。
一方、比較例の塗布用組成物では沈降抑制とスプレー塗布における液ダレの双方とも満足する結果を得ることはできなかった。
【0045】
【0046】
表4に示すように、カルボキシ基非含有高分子化合物(非高分子多糖類)であるポリビニルアルコール[分散剤(2-3)]を用いた場合、7時間経過後には24時間経過後には沈降保持率がすでに99%を下回り、ほとんどの場合においてスプレー塗布における液ダレを確認した。
【0047】
【0048】
【0049】
また表5と表6に示すように、カルボキシ基を含む界面活性剤(低分子化合物であるポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム)[分散剤(2-4)]を用いた場合、ある程度の沈降抑制効果はあるといえるものの、24時間経過後に99%以上、168時間経過後に94%以上といった高い沈降保持率の獲得には至らず、またスプレー塗布においてすべての例において液ダレを確認した。
【0050】
以上の結果は、高分子多糖類を配合した実施例1~15、実施例16~29、実施例30~38の塗布用組成物は、高分子多糖類に替えてポリビニルアルコールを配合した比較例10~比較例24、及び界面活性剤(低分子化合物)を配合した比較例25~比較例38に比べて該粒子の沈降が抑制された組成物となり、またスプレー塗布性にも優れる組成物となることが確認された。