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特開2022-1549584-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体及びその合成中間体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154958
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体及びその合成中間体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 213/08 20060101AFI20221005BHJP
   C07C 217/84 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C07C213/08
C07C217/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058237
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】狭場 諭
(72)【発明者】
【氏名】井内 透
(72)【発明者】
【氏名】伊逹 睦廣
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB20
4H006AC43
4H006BB14
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC19
4H006BJ50
4H006BM71
4H006BP30
4H006BU46
(57)【要約】
【課題】 4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体及びその合成中間体を高い収率で得るための製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】 本発明は、110~140℃且つ0.3~0.9MPaの条件下で、3,4,5-トリフルオロアニリンをMOR(Rは、炭素数1~6のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子を表す。)と反応させる工程を有する、下記一般式[1]で示される化合物の製造方法等に関する。
(一般式[1]中、Rは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
110~140℃且つ0.3~0.9MPaの条件下で、3,4,5-トリフルオロアニリンをMOR(Rは、炭素数1~6のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子を表す。)と反応させる工程を有する、下記一般式[1]で示される化合物の製造方法。
(一般式[1]中、Rは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。)
【請求項2】
水分含有量500ppm以下の溶媒下で行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
不活性ガス雰囲気下で行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
110~140℃且つ0.3~0.9MPaの条件下で、3,4,5-トリフルオロアニリンをMOR(Rは、炭素数1~6のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子を表す。)と反応させて下記一般式[1]で示される化合物を得る第一工程と、
第一工程で得られた一般式[1]で示される化合物を、下記一般式[6]で示される化合物と反応させて、下記一般式[2]で示される化合物を得る第二工程とを有する、
下記一般式[2]で示される化合物の製造方法。
(一般式[6]中、Rは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数7~14のアリールアルキル基を表し、2つのRは同一の基を表す。)
(一般式[1]中、Rは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。
一般式[2]中、R及びRは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。)
【請求項5】
前記第一工程を水分含有量500ppm以下の溶媒下で行う、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第一工程を不活性ガス雰囲気下で行う、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
110~140℃且つ0.3~0.9MPaの条件下で、3,4,5-トリフルオロアニリンをMOR(Rは、炭素数1~6のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子を表す。)と反応させて下記一般式[1]で示される化合物を得る第一工程と、
第一工程で得られた一般式[1]で示される化合物を、下記一般式[6]で示される化合物と反応させて、下記一般式[2]で示される化合物を得る第二工程と、
第二工程で得られた一般式[2]で示される化合物をR(Rは、アルケニル基又はアルキル基を表し、Xは、ハロゲノ基を表す。)と反応させて下記一般式[3]で示される化合物を得る第三工程と、
第三工程で得られた一般式[3]で示される化合物のアミノ基を脱保護して下記一般式[4]で示される化合物を得る第四工程と、
第四工程で得られた一般式[4]で示される化合物をR(Rは、アルケニル基、又は置換基として水酸基、アルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、短鎖脂肪酸由来のアシル基、短鎖脂肪酸由来のアシルアミノ基もしくは短鎖脂肪酸由来のアシルオキシ基を有していてもよいアルキル基を表し、Xは、ハロゲノ基を表す。)と反応させて下記一般式[5]で示される化合物又はその塩を得る第五工程とを有する、
下記一般式[5]で示される化合物又はその塩の製造方法。
(一般式[6]中、Rは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数7~14のアリールアルキル基を表し、2つのRは同一の基を表す。)
(一般式[1]中、Rは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。
一般式[2]中、R及びRは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。
一般式[3]中、R、R及びRは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。
一般式[4]中、R及びRは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。
一般式[5]中、R、R及びRは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。)
【請求項8】
前記第一工程を水分含有量500ppm以下の溶媒下で行う、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第一工程を不活性ガス雰囲気下で行う、請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体及びその合成中間体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシ-4-フルオロアニリン(FDAOS)を始めとする4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体は、臨床検査における被酸化性呈色試薬として重要な化合物である。
【0003】
4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体の製造方法としては、3,5-ジアルコキシアニリンを出発原料としてフッ素化剤でフッ素化する方法が知られている。
例えば、特許文献1では、3,5-ジアルコキシアニリンを始めとするアニリン誘導体におけるアミノ基をアルコキシカルボニル基で保護した後、N-フルオロピリジニウム塩等のフッ素化剤でフッ素化し、水酸化ナトリウム等の無機又は有機のアルカリで脱保護することにより4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体を始めとする種々の4-フルオロアニリン誘導体を得る方法が開示されている。
また、特許文献2では、3,5-ジアルコキシアニリンにおけるアミノ基を環状アシル基で保護した後にフッ素化剤でフッ素化する、N-エチル-3,5-ジメトキシ-4-フルオロアニリン(4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体の合成中間体の1つ)の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-202164号公報
【特許文献2】特開平11-5770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の製造方法では、フッ素化と同時に保護基であるアルコキシカルボニル基の脱離も生じ、さらにフッ素化時の位置選択性も悪いため、4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体の収率が10%未満と非常に低いという問題があった。また、上述した特許文献2に記載の製造方法では、フッ素化時の保護基の脱離を抑制するために保護基をアルコキシカルボニル基から環状アシル基に変更しているものの、フッ素化時の位置選択性は依然として悪いため、4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体の収率は20%程度と低く、収率の大幅向上は成し得なかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、上述の如き問題を解決する優れた4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体の製造方法、及び4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体の合成中間体の1つである、4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリンの製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の温度条件且つ圧力条件下で、3,4,5-トリフルオロアニリンを出発原料として4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリンを製造することにより、最終目的物である4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体を高い収率で得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明[i]~[ix]を内包する。
[i]110~140℃且つ0.3~0.9MPaの条件下で、3,4,5-トリフルオロアニリンをMOR(Rは、炭素数1~6のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子を表す。)と反応させる工程を有する、下記一般式[1]で示される化合物の製造方法(以下、本発明の第一製造方法と略記する場合がある。)。
(一般式[1]中、Rは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。)
[ii]水分含有量500ppm以下の溶媒下で行う、前記発明[i]に記載の製造方法。
[iii]不活性ガス雰囲気下で行う、前記発明[i]又は[ii]に記載の製造方法。
[iv]110~140℃且つ0.3~0.9MPaの条件下で、3,4,5-トリフルオロアニリンをMOR(Rは、炭素数1~6のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子を表す。)と反応させて下記一般式[1]で示される化合物を得る第一工程と、
第一工程で得られた一般式[1]で示される化合物を、下記一般式[6]で示される化合物と反応させて、下記一般式[2]で示される化合物を得る第二工程とを有する、
下記一般式[2]で示される化合物の製造方法(以下、本発明の第二製造方法と略記する場合がある。)。
(一般式[6]中、Rは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数7~14のアリールアルキル基を表し、2つのRは同一の基を表す。)
(一般式[1]中、Rは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。
一般式[2]中、R及びRは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。)
[v]前記第一工程を水分含有量500ppm以下の溶媒下で行う、前記発明[iv]に記載の製造方法。
[vi]前記第一工程を不活性ガス雰囲気下で行う、前記発明[iv]又は[v]に記載の製造方法。
[vii]110~140℃且つ0.3~0.9MPaの条件下で、3,4,5-トリフルオロアニリンをMOR(Rは、炭素数1~6のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子を表す。)と反応させて下記一般式[1]で示される化合物を得る第一工程と、
第一工程で得られた一般式[1]で示される化合物を、下記一般式[6]で示される化合物と反応させて、下記一般式[2]で示される化合物を得る第二工程と、
第二工程で得られた一般式[2]で示される化合物をR(Rは、アルケニル基又はアルキル基を表し、Xは、ハロゲノ基を表す。)と反応させて下記一般式[3]で示される化合物を得る第三工程と、
第三工程で得られた一般式[3]で示される化合物のアミノ基を脱保護して下記一般式[4]で示される化合物を得る第四工程と、
第四工程で得られた一般式[4]で示される化合物をR(Rは、アルケニル基、又は置換基として水酸基、アルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、短鎖脂肪酸由来のアシル基、短鎖脂肪酸由来のアシルアミノ基もしくは短鎖脂肪酸由来のアシルオキシ基を有していてもよいアルキル基を表し、Xは、ハロゲノ基を表す。)と反応させて下記一般式[5]で示される化合物又はその塩を得る第五工程とを有する、
下記一般式[5]で示される化合物又はその塩の製造方法(以下、本発明の第三製造方法と略記する場合がある。)。
(一般式[6]中、Rは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数7~14のアリールアルキル基を表し、2つのRは同一の基を表す。)
(一般式[1]中、Rは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。
一般式[2]中、R及びRは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。
一般式[3]中、R、R及びRは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。
一般式[4]中、R及びRは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。
一般式[5]中、R、R及びRは上記と同じであり、2つのRは同一の基を表す。)
[viii]前記第一工程を水分含有量500ppm以下の溶媒下で行う、前記発明[vii]に記載の製造方法。
[ix]前記第一工程を不活性ガス雰囲気下で行う、前記発明[vii]又は[viii]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法を用いることにより、合成中間体である4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリンを効率的に生成し、4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体製造時のアルコキシ基の位置選択性を向上させ、最終目的物である4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体を高い収率で得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、Meはメチル基を、Etはエチル基を、Prはプロピル基を、Buはブチル基をそれぞれ表す。また、本明細書において、n-はnormal-体を、i-はiso-体を、t-はtert-体をそれぞれ表す。
【0011】
[本発明の第一製造方法]
本発明の第一製造方法は、110~140℃且つ0.3~0.9MPaの条件下で、3,4,5-トリフルオロアニリンをMOR(R及びMは上記と同じ。)と反応させる工程を有する、上記一般式[1]で示される化合物、すなわち最終目的物である4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体の合成中間体である4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリンを製造する方法に係るものである。
【0012】
本発明の第一製造方法における温度条件は110~140℃であり、好ましくは120~140℃、より好ましくは125~135℃である。
温度条件が110℃より低い場合には、副生成物である3,4-ジフルオロ-5-アルコキシアニリンの生成反応が促進されるため、目的物である4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリンの収率が低下する。温度条件が140℃より高い場合には、副生成物である3,4-ジフルオロ-5-ヒドロキシアニリンの生成反応が促進されるため、目的物の収率が低下する。
【0013】
本発明の第一製造方法における圧力条件は0.3~0.9MPaであり、好ましくは0.3~0.6MPa、より好ましくは0.3~0.5MPaである。
圧力条件が0.3MPaより低い場合には、副生成物である3,4-ジフルオロ-5-アルコキシアニリンの生成反応が促進されるため、目的物の収率が低下する。温度条件が0.9MPaより高い場合には、副生成物である3,4-ジフルオロ-5-ヒドロキシアニリンの生成反応が促進されるため、目的物の収率が低下する。
【0014】
上記MORにおけるRの炭素数1~6のアルキル基としては、炭素数1~4のものが好ましく、炭素数1~2のものがより好ましい。また、当該アルキル基としては、直鎖状、分枝状又は環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分枝状が好ましい。
具体的には例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0015】
上記MORにおけるMのアルカリ金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、ナトリウムが好ましい。
【0016】
本発明の第一製造方法におけるMORとしては、具体的には例えば、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウム n-プロポキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウム n-ブトキシド、リチウム t-ブトキシド等のリチウムアルコキシド;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム n-プロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウム n-ブトキシド、ナトリウム t-ブトキシド等のナトリウムアルコキシド;カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム n-プロポキシド、カリウムイソプロポキシド、カリウム n-ブトキシド、カリウム t-ブトキシド等のカリウムアルコキシド等が挙げられる。これらの中でも、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシドが好ましく、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドがより好ましく、ナトリウムメトキシドが特に好ましい。
【0017】
上記一般式[1]における2つのRは共に、上記MORにおけるRと同一の基である。
【0018】
上記一般式[1]で示される化合物としては、具体的には例えば、4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリン、4-フルオロ-3,5-ジエトキシアニリン、4-フルオロ-3,5-ジ(n-プロポキシ)アニリン、4-フルオロ-3,5-ジ(イソプロポキシ)アニリン、4-フルオロ-3,5-ジ(n-ブトキシ)アニリン、4-フルオロ-3,5-ジ(t-ブトキシ)アニリン等が挙げられ、4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリン、4-フルオロ-3,5-ジエトキシアニリンが好ましく、4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリンが特に好ましい。
【0019】
本発明の第一製造方法におけるMORの使用量としては、3,4,5-トリフルオロアニリン1 molに対して通常2~20当量、好ましくは5~15当量である。
【0020】
本発明の第一製造方法は、溶媒下で行うのが好ましく、水分含有量500ppm以下の溶媒下で行うのがより好ましい。
当該水分含有量は、水分測定装置を用いて測定した対象溶媒の水分量を示しており、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。当該水分測定装置としては、測定原理としてカールフィッシャー法を用いる水分測定装置が挙げられ、具体的には例えば、京都電子工業(株)のカールフィッシャー水分計MKV-710M等が挙げられる。なお、カールフィッシャー法とは、測定対象とする試料をアルコールをベースとした溶剤に溶かし、カールフィッシャー試薬(ヨウ素、二酸化硫黄、塩基、及びアルコール等の溶剤より構成される試薬)と反応させ、カールフィッシャー試薬の消費量から試料内の水分量を求める方法である。
【0021】
本発明の第一製造方法における溶媒としては、通常この分野で用いられる有機溶媒が挙げられ、アルコール系溶媒が好ましく、モノアルコール系溶媒がより好ましい。具体的には、R’OH(R’は炭素数1~6のアルキル基を表す。)で示されるモノアルコール系溶媒が挙げられる。
上記R’OHにおけるR’の炭素数1~6のアルキル基としては、上記MORにおけるRの炭素数1~6のアルキル基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。上記R’OHにおけるR’は、上記MORにおけるRと同一の基であるのが好ましい。
【0022】
上記R’OHとしては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール、1-ペンタノール、イソペンタノール、シクロペンタノール、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール等が挙げられ、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、t-ブチルアルコールが好ましく、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールが特に好ましい。
【0023】
本発明の第一製造方法における溶媒の使用量としては、3,4,5-トリフルオロアニリン1 molに対して通常10~100当量、好ましくは20~50当量である。
【0024】
本発明の第一製造方法は、不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
当該不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられ、アルゴンが好ましい。
【0025】
本発明の第一製造方法は、高圧反応器(オートクレーブ)中で行うのが好ましい。
当該高圧反応器は、設定可能な温度範囲及び圧力範囲が本発明の第一製造方法における温度条件及び圧力条件を満たすものであれば、特に限定されない。
【0026】
本発明の第一製造方法の反応時間は、その反応条件により変化し得る為一概に言えるものではないが、通常10~30時間である。
【0027】
本発明の第一製造方法後に得られた生成物に対し、必要に応じて、通常この分野で行われる一般的な後処理操作及び精製操作を行ってもよい。具体的には例えば、ろ過、洗浄、抽出、減圧濃縮、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィ-等を行ってもよい。
【0028】
[本発明の第二製造方法]
本発明の第二製造方法は、次の第一工程及び第二工程を有する、上記一般式[2]で示される化合物を製造する方法に係るものである。
第一工程:110~140℃且つ0.3~0.9MPaの条件下で、3,4,5-トリフルオロアニリンをMOR(R及びMは上記と同じ。)と反応させて上記一般式[1]で示される化合物を得る。
第二工程:第一工程で得られた一般式[1]で示される化合物を、上記一般式[6]で示される化合物と反応させて、上記一般式[2]で示される化合物を得る。
【0029】
本発明の第二製造方法における第一工程において、温度条件、圧力条件、MOR及びその使用量、並びにその他の条件(溶媒、雰囲気、触媒等)は、本発明の第一製造方法におけるそれらと同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0030】
上記一般式[6]におけるRの炭素数1~6のアルキル基としては、炭素数1~4のものが好ましい。また、当該アルキル基としては、直鎖状、分枝状又は環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分枝状が好ましい。
具体的には例えば、上記MORにおけるRの炭素数1~6のアルキル基と同じものが挙げられ、中でも、メチル基、エチル基、t-ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基がより好ましく、t-ブチル基が特に好ましい。
【0031】
上記一般式[6]におけるRの炭素数6~10のアリール基としては、炭素数6のものが好ましい。具体的には例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0032】
上記一般式[6]におけるRの炭素数7~14のアリールアルキル基としては、炭素数7のものが好ましい。具体的には例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基等が挙げられ、ベンジル基が好ましい。
【0033】
上記一般式[6]におけるRとしては、メチル基、エチル基、t-ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられ、t-ブチル基、フェニル基、ベンジル基が好ましく、t-ブチル基が特に好ましい。
【0034】
上記一般式[6]で示される化合物としては、具体的には例えば、二炭酸ジメチル、二炭酸ジエチル、二炭酸ジ-t-ブチル、二炭酸ジ-t-アミル(二炭酸ビス(1,1-ジメチルプロピル))、二炭酸ジフェニル、二炭酸ジナフチル、二炭酸ジベンジル等が挙げられ、二炭酸ジ-t-ブチル、二炭酸ジフェニル、二炭酸ジベンジルが好ましく、二炭酸ジ-t-ブチルが特に好ましい。
【0035】
上記一般式[2]における2つのRは共に、上記MORにおけるRと同一の基である。
【0036】
上記一般式[2]におけるRは、上記一般式[6]におけるRと同一の基である。
【0037】
上記一般式[2]で示される化合物としては、具体的には例えば、t-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)カルバメート、t-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)カルバメート、t-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジ(n-プロポキシ)フェニル)カルバメート、t-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジ(イソプロポキシ)フェニル)カルバメート、t-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジ(n-ブトキシ)フェニル)カルバメート、t-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジ(t-ブトキシ)フェニル)カルバメート、フェニル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)カルバメート、フェニル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)カルバメート、フェニル(4-フルオロ-3,5-ジ(n-プロポキシ)フェニル)カルバメート、フェニル(4-フルオロ-3,5-ジ(イソプロポキシ)フェニル)カルバメート、フェニル(4-フルオロ-3,5-ジ(n-ブトキシ)フェニル)カルバメート、フェニル(4-フルオロ-3,5-ジ(t-ブトキシ)フェニル)カルバメート、ベンジル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)カルバメート、ベンジル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)カルバメート、ベンジル(4-フルオロ-3,5-ジ(n-プロポキシ)フェニル)カルバメート、ベンジル(4-フルオロ-3,5-ジ(イソプロポキシ)フェニル)カルバメート、ベンジル(4-フルオロ-3,5-ジ(n-ブトキシ)フェニル)カルバメート、ベンジル(4-フルオロ-3,5-ジ(t-ブトキシ)フェニル)カルバメート等が挙げられ、t-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)カルバメート、t-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)カルバメート、t-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジ(n-プロポキシ)フェニル)カルバメート、t-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジ(イソプロポキシ)フェニル)カルバメート、t-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジ(n-ブトキシ)フェニル)カルバメート、t-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジ(t-ブトキシ)フェニル)カルバメートが好ましく、t-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)カルバメート、t-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)カルバメートがより好ましく、t-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)カルバメートが特に好ましい。
【0038】
本発明の第二製造方法における第二工程の一般式[6]で示される化合物の使用量としては、本発明の第二製造方法における第一工程で得られた一般式[1]で示される化合物1 molに対して通常1~10当量、好ましくは1~5当量である。
【0039】
本発明の第二製造方法における第二工程は、Schotten-Baumann条件下、すなわち水酸化ナトリウム水溶液や炭酸ナトリウム水溶液等の塩基存在下で行うのが好ましい。当該塩基の使用量としては、本発明の第二製造方法における第一工程で得られた一般式[1]で示される化合物1 molに対して通常1~10当量、好ましくは1~5当量である。
【0040】
本発明の第二製造方法における第二工程は、溶媒下で行うのが好ましい。
当該溶媒としては、通常この分野で用いられる有機溶媒が挙げられ、具体的には、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、酢酸エチル等が挙げられ、1,4-ジオキサンが好ましい。また、当該溶媒の使用量としては、該当反応の原料が十分に溶解する量以上であれば特に制限されず、本発明の第二製造方法における第一工程で得られた一般式[1]で示される化合物1 molに対して通常0.1~10 Lである。
【0041】
本発明の第二製造方法における第二工程は、本発明の第二製造方法における第一工程において得られた一般式[1]で示される化合物のアミノ基の保護反応が滞りなく進行可能な反応条件(温度、圧力、雰囲気等)であれば特に制限はなく、例えば20~60℃、常圧、不活性ガス雰囲気下で行えばよい。また、本発明の第二製造方法における第二工程での反応時間は、その反応条件により変化し得る為一概に言えるものではないが、通常1~10時間である。
【0042】
本発明の第二製造方法における第二工程後に得られた生成物に対し、必要に応じて、通常この分野で行われる一般的な後処理操作及び精製操作を行ってもよい。具体的には例えば、ろ過、洗浄、抽出、減圧濃縮、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィ-等を行ってもよい。
【0043】
[本発明の第三製造方法]
本発明の第三製造方法は、次の第一~第五工程を有する、上記一般式[5]で示される化合物又はその塩、すなわち最終目的物である4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体を製造する方法に係るものである。
第一工程:110~140℃且つ0.3~0.9MPaの条件下で、3,4,5-トリフルオロアニリンをMOR(R及びMは上記と同じ。)と反応させて上記一般式[1]で示される化合物を得る。
第二工程:第一工程で得られた一般式[1]で示される化合物を、上記一般式[6]で示される化合物と反応させて、上記一般式[2]で示される化合物を得る。
第三工程:第二工程で得られた一般式[2]で示される化合物をR(R及びXは上記と同じ。)と反応させて上記一般式[3]で示される化合物を得る。
第四工程:第三工程で得られた一般式[3]で示される化合物のアミノ基を脱保護して上記一般式[4]で示される化合物を得る。
第五工程:第四工程で得られた一般式[4]で示される化合物をR(R及びXは上記と同じ。)と反応させて上記一般式[5]で示される化合物又はその塩を得る。
【0044】
本発明の第三製造方法における第一工程において、温度条件、圧力条件、MOR及びその使用量、並びにその他の条件(溶媒、雰囲気、触媒等)は、本発明の第一製造方法におけるそれらと同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0045】
本発明の第三製造方法における第二工程において、上記一般式[6]で示される化合物、その使用量、並びにその他の条件(溶媒、反応条件、反応時間等)は、本発明の第二製造方法の第二工程におけるそれらと同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0046】
本発明の第三製造方法における第三工程において、上記RにおけるRのアルケニル基としては、炭素数2~12のものが挙げられ、炭素数2~6のものが好ましく、炭素数2~4のものがより好ましい。また、当該アルケニル基としては、直鎖状、分枝状又は環状のいずれであってもよく、直鎖状が好ましい。
具体的には例えば、ビニル基(エテニル基)、1-プロペニル基、アリル基(2-プロペニル基)、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、イソブテニル基、メタリル基(2-メチルアリル基)、プレニル基(ジメチルアリル基)、n-ペンテニル基、イソペンテニル基、シクロペンテニル基、n-ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、n-ヘプテニル基、n-オクテニル基、n-ノネニル基、n-デセニル基、n-ウンデセニル基、n-ドデセニル基等が挙げられる。これらの中でも、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、n-ペンテニル基、n-ヘキセニル基が好ましく、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基がより好ましい。
【0047】
上記RにおけるRのアルキル基としては、炭素数1~12のものが挙げられ、炭素数1~6のものが好ましく、炭素数1~4のものがより好ましい。また、当該アルキル基としては、直鎖状、分枝状又は環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分枝状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
具体的には例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘプチル基、n-オクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、シクロノニル基、n-デシル基、シクロデシル基、n-ウンデシル基、シクロウンデシル基、n-ドデシル基、シクロドデシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基がさらに好ましい。
【0048】
上記RにおけるRとしては、炭素数2~6のアルケニル基又は炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数2~4のアルケニル基又は炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基がさらに好ましい。より具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましい。
【0049】
上記RにおけるXのハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられ、ヨード基が好ましい。
【0050】
本発明の第三製造方法における第三工程のRとしては、ヨードメタン、ヨードエタン、1-ヨードプロパン、2-ヨードプロパン、1-ヨードブタン、2-ヨード-2-メチルプロパン、1-ヨードペンタン、1-ヨードヘキサンが好ましく、ヨードメタン、ヨードエタン、1-ヨードプロパン、1-ヨードブタンがより好ましく、ヨードメタン、ヨードエタンがさらに好ましい。
【0051】
上記一般式[3]における2つのRは共に、上記MORにおけるRと同一の基である。
【0052】
上記一般式[3]におけるRは、上記一般式[6]におけるRと同一の基である。
【0053】
上記一般式[3]におけるRは、上記RにおけるRと同一の基である。
【0054】
上記一般式[3]で示される化合物としては、具体的には例えば、N-メチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-t-ブチルカルバメート、N-メチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)-t-ブチルカルバメート、N-メチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジ(n-プロポキシ)フェニル)-t-ブチルカルバメート、N-メチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジ(イソプロポキシ)フェニル)-t-ブチルカルバメート、N-メチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジ(n-ブトキシ)フェニル)-t-ブチルカルバメート、N-メチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジ(t-ブトキシ)フェニル)-t-ブチルカルバメート、N-エチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-t-ブチルカルバメート、N-エチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)-t-ブチルカルバメート、N-エチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジ(n-プロポキシ)フェニル)-t-ブチルカルバメート、N-エチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジ(イソプロポキシ)フェニル)-t-ブチルカルバメート、N-エチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジ(n-ブトキシ)フェニル)-t-ブチルカルバメート、N-エチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジ(t-ブトキシ)フェニル)-t-ブチルカルバメート等が挙げられ、N-メチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-t-ブチルカルバメート、N-メチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)-t-ブチルカルバメート、N-エチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-t-ブチルカルバメート、N-エチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)-t-ブチルカルバメートが好ましく、N-エチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-t-ブチルカルバメートが特に好ましい。
【0055】
本発明の第三製造方法における第三工程のRの使用量としては、本発明の第三製造方法における第二工程で得られた一般式[2]で示される化合物1 molに対して通常1~10当量、好ましくは1~5当量である。
【0056】
本発明の第三製造方法における第三工程は、水素化ナトリウム等の強塩基の存在下で行うのが好ましい。当該強塩基の使用量としては、本発明の第三製造方法における第二工程で得られた一般式[2]で示される化合物1 molに対して通常0.5~10当量、好ましくは1~5当量である。
【0057】
本発明の第三製造方法における第三工程は、溶媒下で行うのが好ましい。
当該溶媒としては、通常この分野で用いられる有機溶媒が挙げられ、具体的には、テトラヒドロフラン、N, N-ジメチルホルムアミド等が挙げられ、テトラヒドロフランが好ましい。また、当該溶媒の使用量としては、該当反応の原料が十分に溶解する量以上であれば特に制限されず、本発明の第三製造方法における第二工程で得られた一般式[2]で示される化合物1 molに対して通常0.1~10 Lである。
【0058】
本発明の第三製造方法における第三工程は、本発明の第三製造方法における第二工程において得られた一般式[2]で示される化合物とRとの反応が滞りなく進行可能な反応条件(温度、圧力、雰囲気等)であれば特に制限はなく、例えば20~60℃、常圧、不活性ガス雰囲気下で行えばよい。また、本発明の第三製造方法における第三工程での反応時間は、その反応条件により変化し得る為一概に言えるものではないが、通常1~10時間である。
【0059】
本発明の第三製造方法における第三工程後に得られた生成物に対し、必要に応じて、通常この分野で行われる一般的な後処理操作及び精製操作を行ってもよい。具体的には例えば、ろ過、洗浄、抽出、減圧濃縮、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィ-等を行ってもよい。
【0060】
上記一般式[4]における2つのRは共に、上記MORにおけるRと同一の基である。
【0061】
上記一般式[4]におけるRは、上記RにおけるRと同一の基である。
【0062】
上記一般式[4]で示される化合物としては、具体的には例えば、N-メチル-4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリン、N-メチル-4-フルオロ-3,5-ジエトキシアニリン、N-メチル-4-フルオロ-3,5-ジ(n-プロポキシ)アニリン、N-メチル-4-フルオロ-3,5-ジ(イソプロポキシ)アニリン、N-メチル-4-フルオロ-3,5-ジ(n-ブトキシ)アニリン、N-メチル-4-フルオロ-3,5-ジ(t-ブトキシ)アニリン、N-エチル-4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリン、N-エチル-4-フルオロ-3,5-ジエトキシアニリン、N-エチル-4-フルオロ-3,5-ジ(n-プロポキシ)アニリン、N-エチル-4-フルオロ-3,5-ジ(イソプロポキシ)アニリン、N-エチル-4-フルオロ-3,5-ジ(n-ブトキシ)アニリン、N-エチル-4-フルオロ-3,5-ジ(t-ブトキシ)アニリン等が挙げられ、N-メチル-4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリン、N-メチル-4-フルオロ-3,5-ジエトキシアニリン、N-エチル-4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリン、N-エチル-4-フルオロ-3,5-ジエトキシアニリンが好ましく、N-エチル-4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリンが特に好ましい。
【0063】
本発明の第三製造方法における第四工程は、トリフルオロ酢酸や塩化水素(塩酸)-酢酸エチル溶液等の強酸により、酸性条件下(pH=1~3の条件下)で行われる。当該強酸の使用量としては、本発明の第三製造方法における第三工程において得られた一般式[3]で示される化合物1 molに対して通常2~20当量、好ましくは2~10当量である。
【0064】
本発明の第三製造方法における第四工程は、本発明の第三製造方法における第三工程において得られた一般式[3]で示される化合物のアミノ基における脱保護反応が滞りなく進行可能な反応条件(温度、圧力、雰囲気等)であれば特に制限はなく、例えば0~10℃、常圧、不活性ガス雰囲気下で行えばよい。また、本発明の第三製造方法における第四工程での反応時間は、その反応条件により変化し得る為一概に言えるものではないが、通常1~10時間である。
【0065】
本発明の第三製造方法における第四工程後に得られた生成物に対し、必要に応じて、通常この分野で行われる一般的な後処理操作及び精製操作を行ってもよい。具体的には例えば、ろ過、洗浄、抽出、減圧濃縮、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィ-等を行ってもよい。
【0066】
本発明の第三製造方法における第五工程において、上記RにおけるRのアルケニル基としては、本発明の第三製造方法における第三工程のRにおけるRのアルケニル基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0067】
上記RにおけるRの「置換基として水酸基、アルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、短鎖脂肪酸由来のアシル基、短鎖脂肪酸由来のアシルアミノ基もしくは短鎖脂肪酸由来のアシルオキシ基を有していてもよいアルキル基」におけるアルコキシ基としては、炭素数1~6のものが挙げられ、炭素数1~4のものが好ましい。また、当該アルコキシ基としては、直鎖状、分枝状又は環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分枝状が好ましい。
具体的には例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基が好ましい。
【0068】
上記RにおけるRの「置換基として水酸基、アルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、短鎖脂肪酸由来のアシル基、短鎖脂肪酸由来のアシルアミノ基もしくは短鎖脂肪酸由来のアシルオキシ基を有していてもよいアルキル基」における短鎖脂肪酸由来のアシル基としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸等の炭素数2~6の短鎖脂肪酸(低級脂肪酸)由来のアシル基が挙げられる。
具体的には例えば、アセチル基、プロピオニル基、n-ブチリル基、イソブチリル基、n-ペンタノイル基、イソペンタノイル基、n-ヘキサノイル基等が挙げられ、アセチル基、プロピオニル基、n-ブチリル基が好ましい。
【0069】
上記RにおけるRの「置換基として水酸基、アルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、短鎖脂肪酸由来のアシル基、短鎖脂肪酸由来のアシルアミノ基もしくは短鎖脂肪酸由来のアシルオキシ基を有していてもよいアルキル基」における短鎖脂肪酸由来のアシルアミノ基としては、上述の短鎖脂肪酸由来のアシル基を置換基として有するアミノ基が挙げられる。
具体的には例えば、アセトアミド基(アセチルアミド基)、プロピオンアミド基(プロパンアミド基)、n-ブチルアミド基、イソブチルアミド基、n-ペンタンアミド基、イソペンタンアミド基、n-ヘキサンアミド基等が挙げられ、アセトアミド基、プロピオンアミド基、n-ブチルアミド基が好ましい。
【0070】
上記RにおけるRの「置換基として水酸基、アルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、短鎖脂肪酸由来のアシル基、短鎖脂肪酸由来のアシルアミノ基もしくは短鎖脂肪酸由来のアシルオキシ基を有していてもよいアルキル基」における短鎖脂肪酸由来のアシルオキシ基としては、上述の短鎖脂肪酸由来のアシルオキシ基が挙げられる。
具体的には例えば、アセトキシ基(アセチルオキシ基)、プロピルカルボキシ基、n-ブチルカルボキシ基、イソブチルカルボキシ基、n-ペンタンカルボキシ基、イソペンタンカルボキシ基、n-ヘキサンカルボキシ基等が挙げられ、アセトキシ基、プロピルカルボキシ基、n-ブチルカルボキシ基が好ましい。
【0071】
上記RにおけるRの「置換基として水酸基、アルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、短鎖脂肪酸由来のアシル基、短鎖脂肪酸由来のアシルアミノ基もしくは短鎖脂肪酸由来のアシルオキシ基を有していてもよいアルキル基」におけるアルキル基としては、炭素数1~12のものが挙げられ、炭素数1~6のものが好ましく、炭素数2~6のものがより好ましい。また、当該アルキル基としては、直鎖状、分枝状又は環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分枝状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
具体的には例えば、本発明の第三製造方法における第三工程のRにおけるRのアルキル基と同じものが挙げられ、中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基が好ましく、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基がより好ましい。
【0072】
上記RにおけるRの「置換基として水酸基、アルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、短鎖脂肪酸由来のアシル基、短鎖脂肪酸由来のアシルアミノ基もしくは短鎖脂肪酸由来のアシルオキシ基を有していてもよいアルキル基」としては、置換基を複数個有していても無置換でもよく、置換基を1~3個有している又は無置換のものが好ましく、置換基を1~2個有している又は無置換のものがより好ましく、置換基を1~2個有しているものがさらに好ましく、置換基を2個有しているものが特に好ましい。また、複数種類の置換基を有していてもよく、1~2種類が好ましく、2種類がより好ましい。
当該置換基としては、水酸基、炭素数1~6のアルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数2~6の短鎖脂肪酸由来のアシル基、炭素数2~6の短鎖脂肪酸由来のアシルアミノ基もしくは炭素数2~6の短鎖脂肪酸由来のアシルオキシ基が好ましく、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基がより好ましく、水酸基、スルホン酸基がさらに好ましい。より具体的には、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、アセチル基、プロピオニル基、n-ブチリル基、アセトアミド基、プロピオンアミド基、n-ブチルアミド基、アセトキシ基、プロピルカルボキシ基、n-ブチルカルボキシ基が好ましく、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基がより好ましく、水酸基、スルホン酸基がさらに好ましい。
【0073】
上記RにおけるRの「置換基として水酸基、アルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、短鎖脂肪酸由来のアシル基、短鎖脂肪酸由来のアシルアミノ基もしくは短鎖脂肪酸由来のアシルオキシ基を有していてもよいアルキル基」としては、水酸基、炭素数1~6のアルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数2~6の短鎖脂肪酸由来のアシル基、炭素数2~6の短鎖脂肪酸由来のアシルアミノ基及び炭素数2~6の短鎖脂肪酸由来のアシルオキシ基から選ばれる置換基を1~3個有している又は無置換の炭素数1~12のアルキル基が好ましく、水酸基、スルホン酸基及びカルボキシル基から選ばれる置換基を1~2個有している又は無置換の炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、水酸基、スルホン酸基及びカルボキシル基から選ばれる置換基を1~2個有している炭素数1~6のアルキル基がさらに好ましく、置換基として水酸基1個及びスルホン酸基又はカルボキシル基1個を有している炭素数2~6のアルキル基がさらにより好ましく、置換基として水酸基1個及びスルホン酸基1個を有している炭素数2~6のアルキル基が特に好ましい。
【0074】
上記RにおけるRとしては、炭素数2~6のアルケニル基、又は水酸基、炭素数1~6のアルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、炭素数2~6の短鎖脂肪酸由来のアシル基、炭素数2~6の短鎖脂肪酸由来のアシルアミノ基及び炭素数2~6の短鎖脂肪酸由来のアシルオキシ基から選ばれる置換基を1~3個有しているもしくは無置換の炭素数1~12のアルキル基が好ましく;炭素数2~4のアルケニル基、又は水酸基、スルホン酸基及びカルボキシル基から選ばれる置換基を1~2個有しているもしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基がより好ましく;水酸基、スルホン酸基及びカルボキシル基から選ばれる置換基を1~2個有している炭素数1~6のアルキル基がさらに好ましく;置換基として水酸基1個及びスルホン酸基又はカルボキシル基1個を有している炭素数2~6のアルキル基がさらにより好ましく;置換基として水酸基1個及びスルホン酸基1個を有している炭素数2~6のアルキル基が特に好ましい。より具体的には、下記官能基(R-1)~(R-32)が好ましく、官能基(R-19)~(R-32)がより好ましく、官能基(R-19)~(R-25)がさらに好ましく、官能基(R-20)~(R-24)が特に好ましい。
【0075】
また、上記RにおけるRにおいて塩構造を形成していても良い。
具体的には例えば、上記RにおけるRの「置換基として水酸基、アルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、短鎖脂肪酸由来のアシル基、短鎖脂肪酸由来のアシルアミノ基もしくは短鎖脂肪酸由来のアシルオキシ基を有していてもよいアルキル基」におけるスルホン酸基又はカルボキシル基において、アルカリ金属塩構造を形成しているものが挙げられる。当該アルカリ金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム等が挙げられ、ナトリウムが好ましい。
【0076】
上記RにおけるXのハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられ、クロロ基が好ましい。
【0077】
本発明の第三製造方法における第五工程のRとしては、クロロメタノール、2-クロロエタノール、3-クロロ-n-プロパノール、4-クロロ-n-ブタノール、5-クロロ-n-ペンタノール、6-クロロ-n-ヘキサノール、クロロメタンスルホン酸、2-クロロエタンスルホン酸、3-クロロ-n-プロパンスルホン酸、4-クロロ-n-ブタンスルホン酸、5-クロロ-n-ペンタンスルホン酸、6-クロロ-n-ヘキサンスルホン酸、クロロ酢酸、3-クロロプロピオン酸、4-クロロ酪酸、5-クロロ吉草酸、6-クロロカプロン酸、7-クロロ-n-へプタン酸、2-クロロ-2-ヒドロキシエタンスルホン酸、3-クロロ-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸、4-クロロ-2-ヒドロキシ-n-ブタンスルホン酸、4-クロロ-3-ヒドロキシ-n-ブタンスルホン酸、5-クロロ-2-ヒドロキシ-n-ペンタンスルホン酸、5-クロロ-4-ヒドロキシ-n-ペンタンスルホン酸、6-クロロ-2-ヒドロキシ-n-ヘキサンスルホン酸、3-クロロ-3-ヒドロキシプロピオン酸、4-クロロ-3-ヒドロキシ酪酸、5-クロロ-3-ヒドロキシ吉草酸、5-クロロ-4-ヒドロキシ吉草酸、6-クロロ-3-ヒドロキシカプロン酸、6-クロロ-5-ヒドロキシカプロン酸、7-クロロ-3-ヒドロキシ-n-へプタン酸、又はこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。これらの中でも、2-クロロ-2-ヒドロキシエタンスルホン酸、3-クロロ-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸、4-クロロ-2-ヒドロキシ-n-ブタンスルホン酸、4-クロロ-3-ヒドロキシ-n-ブタンスルホン酸、5-クロロ-2-ヒドロキシ-n-ペンタンスルホン酸、5-クロロ-4-ヒドロキシ-n-ペンタンスルホン酸、6-クロロ-2-ヒドロキシ-n-ヘキサンスルホン酸、3-クロロ-3-ヒドロキシプロピオン酸、4-クロロ-3-ヒドロキシ酪酸、5-クロロ-3-ヒドロキシ吉草酸、5-クロロ-4-ヒドロキシ吉草酸、6-クロロ-3-ヒドロキシカプロン酸、6-クロロ-5-ヒドロキシカプロン酸、7-クロロ-3-ヒドロキシ-n-へプタン酸、又はこれらのアルカリ金属塩が好ましく、2-クロロ-2-ヒドロキシエタンスルホン酸、3-クロロ-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸、4-クロロ-2-ヒドロキシ-n-ブタンスルホン酸、4-クロロ-3-ヒドロキシ-n-ブタンスルホン酸、5-クロロ-2-ヒドロキシ-n-ペンタンスルホン酸、5-クロロ-4-ヒドロキシ-n-ペンタンスルホン酸、6-クロロ-2-ヒドロキシ-n-ヘキサンスルホン酸、又はこれらのナトリウム塩がより好ましく、3-クロロ-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸、4-クロロ-2-ヒドロキシ-n-ブタンスルホン酸、4-クロロ-3-ヒドロキシ-n-ブタンスルホン酸、5-クロロ-2-ヒドロキシ-n-ペンタンスルホン酸、5-クロロ-4-ヒドロキシ-n-ペンタンスルホン酸、又はこれらのナトリウム塩がさらに好ましく、3-クロロ-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸、3-クロロ-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0078】
上記一般式[5]における2つのRは共に、上記MORにおけるRと同一の基である。
【0079】
上記一般式[5]におけるRは、上記RにおけるRと同一の基である。
【0080】
上記一般式[5]におけるRは、上記RにおけるRと同一の基である。
【0081】
上記一般式[5]で示される化合物としては、具体的には例えば、3-(メチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸、3-(メチル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸、3-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸、3-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸、4-(メチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-ブタンスルホン酸、4-(メチル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-ブタンスルホン酸、4-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-ブタンスルホン酸、4-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-ブタンスルホン酸、4-(メチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-3-ヒドロキシ-n-ブタンスルホン酸、4-(メチル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)アミノ)-3-ヒドロキシ-n-ブタンスルホン酸、4-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-3-ヒドロキシ-n-ブタンスルホン酸、4-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)アミノ)-3-ヒドロキシ-n-ブタンスルホン酸、5-(メチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-ペンタンスルホン酸、5-(メチル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-ペンタンスルホン酸、5-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-ペンタンスルホン酸、5-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-ペンタンスルホン酸、5-(メチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-4-ヒドロキシ-n-ペンタンスルホン酸、5-(メチル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)アミノ)-4-ヒドロキシ-n-ペンタンスルホン酸、5-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-4-ヒドロキシ-n-ペンタンスルホン酸、5-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)アミノ)-4-ヒドロキシ-n-ペンタンスルホン酸、又はこれらのナトリウム塩等が挙げられる。これらの中でも、3-(メチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸、3-(メチル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸、3-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸、3-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸、又はこれらのナトリウム塩が好ましく、3-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸、3-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジエトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸、又はこれらのナトリウム塩がより好ましく、3-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸、3-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-n-プロパンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0082】
本発明の第三製造方法における第五工程のRの使用量としては、本発明の第三製造方法における第四工程で得られた一般式[4]で示される化合物1 molに対して通常1~10当量、好ましくは1~5当量である。
【0083】
本発明の第三製造方法における第五工程は、水酸化ナトリウム水溶液や炭酸ナトリウム水溶液等の塩基の存在下で行うのが好ましい。当該塩基の使用量としては、本発明の第三製造方法における第四工程で得られた一般式[4]で示される化合物1 molに対して通常1~10当量、好ましくは1~5当量である。
【0084】
本発明の第三製造方法における第五工程は、溶媒下で行うのが好ましい。
当該溶媒としては、通常この分野で用いられる有機溶媒が挙げられ、具体的には、イソプロピルアルコール、エタノール、1-ブタノール等が挙げられ、イソプロピルアルコールが好ましい。また、当該溶媒の使用量としては、該当反応の原料が十分に溶解する量以上であれば特に制限されず、本発明の第三製造方法における第四工程で得られた一般式[4]で示される化合物1 molに対して通常0.1~10 Lである。
【0085】
本発明の第三製造方法における第五工程は、本発明の第三製造方法における第四工程において得られた一般式[4]で示される化合物とRとの反応が滞りなく進行可能な反応条件(温度、圧力、雰囲気等)であれば特に制限はなく、例えば60~100℃、常圧、不活性ガス雰囲気下で行えばよい。また、本発明の第三製造方法における第五工程での反応時間は、その反応条件により変化し得る為一概に言えるものではないが、通常1~10時間である。
【0086】
本発明の第三製造方法における第五工程後に得られた生成物に対し、必要に応じて、通常この分野で行われる一般的な後処理操作及び精製操作を行ってもよい。具体的には例えば、ろ過、洗浄、抽出、減圧濃縮、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィ-等を行ってもよい。
【0087】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【実施例0088】
実施例1 4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリンの製造
超脱水メタノール(水分含有量10ppm以下;富士フイルム和光純薬(株)製)3.25 L(80.3 mmol)にナトリウムメトキシド(富士フイルム和光純薬(株)製)1102 g(20.4 mmol)を加えて溶解させた。次いで、3,4,5-トリフルオロアニリン(shanghai sunway (株)製)300 g(2.04 mol)を添加し、高圧反応器に投入し、反応器内をアルゴンガスで満たし、130℃で17時間攪拌した。このとき内圧は0.4MPaであった。
【0089】
反応後、室温まで冷却した後、反応物を回収し、6mol/L塩酸でpH5.5~6.0に調整した。次いで、エバポレーターでメタノールを減圧留去し、pH6.5~pH7.5であることを確認した。この水溶液をクロロホルム(富士フイルム和光純薬(株)製)16 Lで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過後、濾液のクロロホルムを留去した。得られた粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて10-15% メタノール/クロロホルム溶離液で精製し、褐色結晶性粉末の4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリンを得た(収率:60%)。
【0090】
実施例2 4-フルオロ-3,5-ジエトキシアニリンの製造
実施例1で使用している溶媒:メタノールおよび試薬:ナトリウムメトキシドの代わりにエタノールおよびナトリウムエトキシド(富士フイルム和光純薬(株)製)を用いた以外は実施例1と同様の方法により行い、4-フルオロ-3,5-ジエトキシアニリンを得た(収率:45%)。
【0091】
比較例1-4 反応温度による反応への影響
実施例1の反応温度をそれぞれ65℃、80℃、100℃、150℃に変えた以外は実施例1と同様の方法により行った。
【0092】
実施例1及び2、並びに比較例1-4における反応スキームを以下に示す。尚、カッコ内の生成物BおよびCは目的物以外の副産物を表す。
(反応スキーム中、Rはメチル基又はエチル基を表し、5つのRは同一の基を表す。)
【0093】
実施例1及び2、並びに比較例1-4における反応の条件[反応溶媒、反応温度、内圧]、目的物A、副生成物B及び副生成物Cの収率について表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
表1の結果より、反応温度を130℃までを上げることで副生成物Bの生成が抑制され、目的物Aの収率が高くなることが分かった。一方、反応温度を150℃まで上げると副生成物Cの生成反応が促進され、目的物の収率が低くなることが分かった。
従って、本発明の製造方法を用いて3,5-ジアルコキシ-4-フルオロアニリンを製造することにより、目的物Aの収率が向上することが分かった。
【0096】
比較例5-7 触媒による反応への影響
実施例1の反応温度を65℃に変更し、且つ、触媒としてそれぞれNaOH、KOH、18-クラウン-6を使用した以外は、実施例1と同様の方法により行った。
当該反応の条件[反応温度、内圧、使用触媒]、目的物A、副生成物B及び副生成物Cの収率について、実施例1のそれらと併せて表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
表2の結果より、いずれの触媒を用いても副生成物Bの生成反応が進行し、目的物Aの生成反応は進まないことが分かった。
【0099】
実施例3 t-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)カルバメートの製造
実施例1で得られた4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリン全量(1.02 mol)を1,4-ジオキサン(富士フイルム和光純薬(株)製)1 Lと純水 0.63 Lで溶解し、氷冷条件下で1規定の水酸化ナトリウム水溶液を添加した。次いで、1,4-ジオキサン 0.5 Lで溶解した二炭酸ジ-tert-ブチル(富士フイルム和光純薬(株)製)382 g(1.75 mol)を滴下し、40℃で5時間攪拌した。
【0100】
反応後、20%硫酸水素ナトリウム水溶液で中和し、酢酸エチルで3回洗浄した。有機層を冷やした0.1規定塩酸水溶液、飽和重曹水、及び純水で順に洗浄し、有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過後、有機層を減圧下除去することで、白茶色粉末状のt-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)カルバメートを得た(収率:98%)。
【0101】
実施例4 N-エチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-t-ブチルカルバメートの製造
アルゴン雰囲気下でテトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬(株)製)1.8 Lに水素化ナトリウム 68.5 g(1.71 mol)を添加し、室温下で攪拌した。10~20℃に冷却した後、実施例3で得られたt-ブチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)カルバメート全量(1.14 mol)をテトラヒドロフラン 1.2 Lで溶解して滴下し、1時間攪拌した。次いで、テトラヒドロフラン 0.92 Lで溶解したヨードエタン(富士フイルム和光純薬(株)製)356 g(2.28 mol)を室温条件下で滴下し、アルゴンを停止した後、65℃で2時間攪拌した。
【0102】
反応後、室温まで冷却して純水でクエンチし、10%硫酸水素ナトリウム水溶液 0.92 Lで中和した。40℃以下においてテトラヒドロフランを減圧下除去し、イソプロピルエーテル(富士フイルム和光純薬(株)製)で洗浄した。有機層を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過後、有機層を減圧下除去することで、薄茶色粉末状のN-エチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-t-ブチルカルバメートを得た(収率:99%)。
【0103】
実施例5 N-エチル-4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリンの製造
実施例4で得られたN-エチル-N-(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-t-ブチルカルバメート全量(1.16 mol)を酢酸エチルに溶解し、氷冷下、塩化水素・酢酸エチル溶液(富士フイルム和光純薬(株)製)618 mL(2.47 mol)を添加し、pH1~3の酸性条件下、5℃で4時間攪拌した。
【0104】
反応終了後、析出した固体を濾取し、純水で溶解させ、5N-水酸化ナトリウム水溶液で中和した。酢酸エチルで洗浄し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、有機層を減圧下除去することで茶色結晶状のN-エチル-4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリンを得た(収率:78%)。
【0105】
実施例6 3-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムの製造
【0106】
実施例5で得られたN-エチル-4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリン全量(0.89 mol)を純水 880 mL、イソプロピルアルコール(富士フイルム和光純薬(株)製)880 mLで溶解し、次いで、3-クロロ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)349 g(1.78 mol)、1規定水酸化ナトリウム水溶液 883 mLを添加し、85℃で6時間攪拌した。
【0107】
反応後、室温まで冷却し、イソプロピルエーテルで5回洗浄した後、水層を粉末活性炭(商品名:白鷺A、大阪ガスケミカル(株)製)30 gを添加した。白鷺Aを濾過し、濾液をある程度濃縮した後、温純水を投入して10℃以下で終夜静置した。翌日、析出した固体を濾取し、純水でかけ洗浄した後、乾燥させることで3-(エチル(4-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムを得た(収率:78%)。
【0108】
実施例3-6の反応スキームを以下に示す。
なお、反応スキーム中の「(Boc)2O」は二炭酸ジ-tert-ブチルを、「Boc」はtert-ブトキシカルボニル基を、「THF」はテトラヒドロフランを、「EtOAc」は酢酸エチルを、「IPA」はイソプロピルアルコールを、それぞれ表す。
【0109】
実施例3-6の結果より、本発明の製造方法を用いて4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリンを製造することにより、続く製造工程でも高い収率を維持したまま、最終目的物である4-フルオロ-3,5-ジアルコキシアニリン誘導体を得られることが分かった。