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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155029
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】立坑内点検装置及び立坑内点検方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 47/005 20120101AFI20221005BHJP
   E21D 11/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
E21B47/005
E21D11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058346
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】新原 喜美
(72)【発明者】
【氏名】永江 純一
(72)【発明者】
【氏名】山下 寛人
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155LA12
2D155LA13
(57)【要約】
【課題】立坑の内壁の修繕の要否を容易かつ高精度に確認することができる立坑内点検装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る立坑の点検装置は、立坑の内壁の剥離箇所の有無を点検する立坑内点検装置であって、前記立坑の内部に光を出射する照明部と、前記立坑の内部を撮像する撮像部と、撮像された前記立坑の内部の少なくとも前記剥離箇所にレーザ光を照射する照射部と、前記剥離箇所で反射した前記レーザ光を受光して、前記レーザ光の照射位置から前記剥離箇所までの距離を測定する距離測定部と、前記撮像部で撮像された前記剥離箇所の方向を特定する方位磁石と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立坑の内壁の剥離箇所の有無を点検する立坑内点検装置であって、
前記立坑の内部に光を出射する照明部と、
前記立坑の内部を撮像する撮像部と、
撮像された前記立坑の内部の少なくとも前記剥離箇所にレーザ光を照射する照射部と、
前記剥離箇所で反射した前記レーザ光を受光して、前記レーザ光の照射位置から前記剥離箇所までの距離を測定する距離測定部と、
前記撮像部で撮像された前記剥離箇所の方向を特定する方位磁石と、
を備える立坑内点検装置。
【請求項2】
前記照明部、前記撮像部、前記照射部、前記距離測定部及び前記方位磁石が設置される観測台を有する本体と、
前記本体の回転を抑制する錘と、
を備える請求項1に記載の立坑内点検装置。
【請求項3】
前記照明部が、前記本体の上部に斜め下向きに傾斜して設けられている請求項2に記載の立坑内点検装置。
【請求項4】
ネットワークカメラを備える請求項2又は3に記載の立坑内点検装置。
【請求項5】
前記ネットワークカメラが、前記撮像部、前記照射部及び前記距離測定部よりも前記本体の下側に設けられ、前記本体内に収容されている請求項4に記載の立坑内点検装置。
【請求項6】
前記本体が吊り下げ部材を介して前記錘に吊り下げられる、請求項2~5の何れか1項に記載の立坑内点検装置。
【請求項7】
前記距離測定部と前記方位磁石を撮像する第2の撮像部を備える請求項1~6の何れか1項に記載の立坑内点検装置。
【請求項8】
前記照明部、前記照射部、前記距離測定部及び前記方位磁石の少なくとも1つが、複数設けられる請求項1~7の何れか1項に記載の立坑内点検装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の立坑内点検装置を用いて、前記立坑内を点検する立坑内点検方法であって、
前記照明部によって、前記立坑の内部に向けて光を出射し、
前記撮像部によって、前記照明部に照らされた前記立坑の内壁を撮像し、
前記距離測定部によって、撮像された前記立坑の内壁の少なくとも前記剥離箇所に前記照射部より照射して反射した前記レーザ光を受光して、前記レーザ光の照射位置から前記剥離箇所までの距離を測定し、
前記方位磁石によって、撮像された前記剥離箇所の方向を特定する、
立坑内点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立坑内点検装置及び立坑内点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立坑を構築する方法として、レイズボーリング工法等がある。レイズボーリング工法は、上部に設置した機械でパイロットホールを削孔し、下部のトンネル内から立坑が切り上がっていく工法である。レイズボーリング工法では、下部坑道でパイロットビットを取り外し、拡幅用の大口径リーマービットに交換し、リーマービットを回転させながら上向きに引き上げる。これにより、所定の大きさの立坑が構築される。
【0003】
掘削された立坑の内壁は地層の違いにより平坦度合いが異なる。特に軟弱な地層部分の内壁状態を知ることは、立坑が自立できるか否かに影響する要素であるため、重要である。
【0004】
そこで、例えば、立坑内の点検に際し、蓋の周縁部寄りに設けられた人の出入可能な出入口部から立坑内にカメラを吊り下げて導入し、このカメラにより立坑内を撮影することで立坑内の腐食状態等を確認する立坑内点検装置が提案されている。
【0005】
このような立坑内点検装置として、例えば、出入口部の対向縁部間に架設状態に取り付けられる架設部材と、この架設部材に着脱自在に設けられ前記立坑上に配される取付部材と、この取付部材に設けられ前記カメラを吊り下げる吊り下げ部材とで構成された、立坑内の点検装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-223164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
立坑の内壁を点検するに当たり、点検の精度を高めるため、内壁の破損箇所に見られる内壁の凹凸及びひび割れの他に、周囲の地質も考慮して、立坑の修繕の要否を検討することが重要である。
【0008】
本発明の一態様は、立坑の内壁の修繕の要否を容易かつ高精度に確認することができる立坑内点検装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る立坑内点検装置の一態様は、立坑の内壁の剥離箇所の有無を点検する立坑内点検装置であって、前記立坑の内部に光を出射する照明部と、前記立坑の内部を撮像する撮像部と、撮像された前記立坑の内部の少なくとも前記剥離箇所にレーザ光を照射する照射部と、前記剥離箇所で反射した前記レーザ光を受光して、前記レーザ光の照射位置から前記剥離箇所までの距離を測定する距離測定部と、前記撮像部で撮像された前記剥離箇所の方向を特定する方位磁石と、を備える。
【0010】
本発明に係る立坑内点検方法の一態様は、上記の立坑内点検装置を用いて、前記立坑内を点検する立坑内点検方法であって、前記照明部によって、前記立坑の内部に向けて光を出射し、前記撮像部によって、前記照明部に照らされた前記立坑の内壁を撮像し、前記距離測定部によって、撮像された前記立坑の内壁の少なくとも前記剥離箇所に前記照射部より照射して反射したレーザ光を受光して、前記レーザ光の照射位置から前記剥離箇所までの距離を測定し、前記方位磁石によって、撮像された前記剥離箇所の方向を特定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る立坑内点検装置の一態様は、立坑の内壁の修繕の要否を容易かつ高精度に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る立坑内点検装置の構成を示す概略図である。
図2】立坑内点検装置の斜視図である。
図3図2のI-I断面図である。
図4図2のY軸方向視の図である。
図5図3中の架台の一部を切り出した状態で示す斜視図である。
図6図5の平面図である。
図7図3中の架台の一部を切り出した状態で示す斜視図である。
図8図7の平面図である。
図9図3中の架台の一部を示す正面図である。
図10】本発明の実施形態に係る立坑内点検方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0014】
<立坑内点検装置>
本発明の実施形態に係る立坑内点検装置について説明する。図1は、立坑内点検装置の構成を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態に係る立坑内点検装置1は、本体10、照明部20、照射部30、方位磁石40、距離測定部50、第2の撮像部である評価用撮像部60、撮像部70、ネットワークカメラ80、錘であるスウィベル90及び制御部100を備え、立坑200の内壁200aの剥離箇所の有無を点検する。
【0015】
立坑200の地上Gには、単管パイプによる簡易足場(以下、単に足場という)2が組み立てられ、足場2にローラ3が取り付けられている。ローラ3によってワイヤロープ4が地上Gから立坑200内に昇降自在としている。立坑内点検装置1は、ワイヤロープ4にスウィベル90で吊り下げられた状態で保持されており、電動ウィンチ5を稼働させて、巻取部6を回転させることにより、ワイヤロープ4を立坑200内で昇降させる。ワイヤロープ4の昇降に伴い、立坑内点検装置1を立坑200内で昇降させ、立坑200の内壁200aの剥離箇所の有無を点検する。
【0016】
立坑200は、円筒状の構築物であり、そのサイズは特に限定されないが、例えば、その直径が1.0m~4.0m、深さが20.0m~100.0mである。
【0017】
立坑内点検装置1は、照射部30、方位磁石40、距離測定部50及び撮像部70を備えることで、立坑200の内壁200aの剥離箇所の、位置、規模(例えば、深さ等)及び進展方向を取得できる。得られる剥離箇所に関する情報とその周囲の地質の情報に基づいて、立坑内点検装置1は、立坑200の内壁200aの剥離箇所の状態を適切に判断することができるため、立坑200の内壁200aの修繕の要否の確認作業の向上を図ることができる。
【0018】
なお、本明細書では、3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の3次元直交座標系を用い、本体10の一方の幅方向をX方向とし、他方をY方向とし、高さ方向をZ方向とする。本体10の下から上に向かう方向を+Z軸方向とし、その反対方向を-Z軸方向とする。以下の説明において、+Z軸方向を上又は上方といい、-Z軸方向を下又は下方という場合がある。
【0019】
立坑内点検装置1の各構成について説明する。
【0020】
図2は、立坑内点検装置の斜視図であり、図3は、図2のI-I断面図であり、図4は、図2のY軸方向視の図である。図2及び図3に示すように、本体10は、その上部に照明部20が設置されると共に、照射部30、方位磁石40、距離測定部50、評価用撮像部60、撮像部70及びネットワークカメラ80を収容する筐体である。本体10は、その上部に設けた照明部20に、吊り下げ部材であるチェーン110の両端が連結され、そのチェーン110によってスウィベル90に吊り下げられている。スウィベル90の上部はワイヤロープ4が連結されている。よって、本体10は、スウィベル90を介してワイヤロープ4によって立坑200内に吊り下げられた状態で保持されている。
【0021】
図2に示すように、本体10は、筒状に形成された架台11と、架台11の上部に設けられた保持部12と、架台11内に設けられた観察台13とを備える。架台11、保持部12及び観察台13は、それぞれ溶接等により連結できる。
【0022】
図2に示すように、架台11は、円筒状に形成されている。架台11は、その側面に開口部111を有する。開口部111は、開口部111A、111B及び111Cで構成されており、開口部111A、111B及び111Cは、架台11の側面の上下方向に、3段で上方から下方にかけてこの順に設けられている。それぞれの開口部111は、図4に示すように、架台11の正面視(Y軸方向視)において、各観察台13の位置と重ならない位置に設けられている。即ち、本体10の側面視において、開口部111Aは一方の観察台13の上方に位置し、開口部111Bは、2つの観察台13の間に位置し、開口部111Cは他方の観察台13の下方に位置するように設けられている。
【0023】
開口部111の大きさは、適宜設計可能であり、本体10内に、照射部30、方位磁石40、距離測定部50、評価用撮像部60、撮像部70及びネットワークカメラ80の挿脱が可能な大きさであればよい。
【0024】
また、架台11は、その側面に、照射部30のレーザ照射口及び距離測定部50の不図示のレーザ受光部の位置に対応するように設けられた貫通孔11aと、撮像部70で撮像可能に形成された貫通孔11bとを有する。貫通孔11a及び11bは、それぞれ、架台11の壁面に対向するように一対設けられている。
【0025】
貫通孔11a及び11bの大きさは、特に限定されず、照射部30のレーザ照射口、距離測定部50の不図示のレーザ受光部又は撮像部70の大きさ等に応じて適宜設計可能である。
【0026】
図2に示すように、保持部12は、架台11の上部に設けられ、平面視において、架台11よりも大きい円形に形成されている。
【0027】
観察台13は、架台11内に設けられている。観察台13は、観察台13A及び13Bで構成されており、観察台13A及び13Bは、架台11内の上下方向に、2段で上方から下方にかけてこの順に設けられている。
【0028】
観察台13A及び13Bは、それぞれ、その主面の一部に孔部131A及び131B(図5及び図7参照)を有し、立坑内点検装置1を構成する、照明器具22、照射部30、距離測定部50、評価用撮像部60、撮像部70等と制御部100とを接続する不図示の配線等が本体10の上下方向に貫通できるように設けられている。
【0029】
図2に示すように、照明部20は、一対の取っ手部21と、照明器具22とを有する。
【0030】
一対の取っ手部21は、保持部12の上部に設けられている。一対の取っ手部21は、チェーン110の両端が連結され、チェーン110によってスウィベル90のフック部分に吊り下げている。これにより、本体10は、チェーン110を介してスウィベル90で吊り下げられている。取っ手部21は、金属、ステンレス、合金等で形成してよい。取っ手部21は、本体10と溶接等により固定されている。なお、本実施形態では、取っ手部21としてチェーンを用い、直接、スウィベル90のフック部分に引っ掛けてもよい。
【0031】
照明器具22は、図1に示すように、本体10の上部に設けた一対の取っ手部21とは異なる位置に照射面が立坑200の内壁200a側に対向するように一対設けられており、立坑200の内壁200a側に向けて光を出射する。なお、照明器具22の数は、取っ手部21の数に応じて設定可能であり、1つだけでもよいし、3つ以上でもよい。
【0032】
照明器具22は、特に限定されず、立坑200の内部を照射できる照明装置であれば用いることができる。
【0033】
照明器具22は、一対の取っ手部21に固定できればよく、固定方法は特に限定されない。
【0034】
照明器具22は、図2及び図4に示すように、本体10の上部に、斜め下方向を向くように設けられることが好ましい。即ち、照明器具22は、本体10の上下方向に対して下向きに傾斜して設けることが好ましい。これにより、照明器具22は、光を斜め下向きに照射できるため、撮像部70の撮像部分をより明るくすることができると共に、ネットワークカメラ80により立坑200の内壁200aを視認し易くすることができる。
【0035】
照射部30は、図3に示すように、本体10内の観察台13Aの上の、架台11の内壁200aに沿うように1対設けられている。照射部30は、撮像された立坑200の内部の少なくとも剥離箇所にレーザ光を照射する。照射部30としては、レーザ光を照射できる装置であれば特に限定されない。
【0036】
図5は、図3中の架台11の一部を切り出した状態で示す斜視図であり、図6は、図5の平面図である。図5及び図6に示すように、1対の照射部30は、対向するように設けられ、それぞれ、内壁200aに設けた固定用ホルダー31に収容して固定されている。照射部30は、固定用ホルダー31に、レーザ光が架台11の貫通孔11aを貫通できるように設けられている。
【0037】
なお、照射部30の数は、適宜設定可能であり、3つ以上備えてもよい。
【0038】
方位磁石40は、図3に示すように、本体10内の観察台13Aの上に設けられている。図5及び図6に示すように、方位磁石40は、観察台13Aの上に一対設けられている。1対の方位磁石40は、並行するように設けられ、それぞれ、観察台13Aに設けた固定用ホルダー41に収容されている。
【0039】
方位磁石40は、方位を示し、撮像された剥離箇所の方向を特定できる。なお、方位磁石40は、方位を特定できればよく、特に限定されない。方位磁石40としては、例えば、方位磁石等を用いることができる。
【0040】
距離測定部50は、図3に示すように、本体10内の観察台13Aの上に設けられている。図5及び図6に示すように、距離測定部50は、観察台13Aの上に一対設けられている。1対の距離測定部50は、並行するように設けられ、それぞれ、観察台13Aに設けた固定用ホルダー51に収容されている。
【0041】
なお、距離測定部50の数は、適宜設定可能であり、距離測定部50の設置数に対応して設けることが好ましく、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0042】
距離測定部50は、照射部30で照射され、剥離箇所で反射したレーザ光を受光し、レーザ光の照射位置から立坑200の内壁200aの剥離箇所までの距離を測定する。距離測定部50は、立坑200の壁面との距離を測定できる装置であればよく、特に限定されない。距離測定部50としては、例えば、光波距離計等を用いることができる。
【0043】
なお、レーザ光の照射位置は、照射部30のレーザ光が出射する位置であり、本体10の外側に位置してもよいし、本体10内に位置してもよいし、本体10の側面と略同じ位置に設置されてもよい。中でも、レーザ光の照射位置は、本体10の側面と略同じ位置に設置されることが好ましい。レーザ光の照射位置が本体10の側面と略同じ位置に設置される場合には、レーザ光の照射位置から立坑200の内壁200aの剥離箇所までの距離は、本体10の側面から立坑200の内壁200aの剥離箇所までの距離と見なすことができ、本体10の側面と剥離箇所との距離が把握し易くなる。また、照射部30の位置が本体10内でズレてもレーザ光の照射が遮られることを低減できる。
【0044】
評価用撮像部60は、図3に示すように、本体10の保持部12の底面の下面に設けられ、方位磁石40と距離測定部50を撮像する。これにより、評価用撮像部60は、距離測定部50に表示される、距離測定部50で測定した距離と、方位磁石40が示す方向を撮像できる。
【0045】
評価用撮像部60としては、例えば、カメラ等を用いることができる。
【0046】
評価用撮像部60は、保持部12の底面の下面に不図示のホルダーを設けて、そのホルダーに収容して固定してもよいし、接着剤等の接合部材を用いて保持部12の底面の下面に固定してもよい。
【0047】
評価用撮像部60は、本体10の保持部12の底面の下側の、方位磁石40及び距離測定部50を撮像できる位置に設けられればよく、評価用撮像部60の設置位置は、方位磁石40及び距離測定部50の位置に応じて適宜選択することが好ましい。本実施形態では、方位磁石40及び距離測定部50が、観察台13Aの上の略中央部分に設けられているので、評価用撮像部60は、平面視において、保持部12の略中央位置に設けることが好ましい。
【0048】
撮像部70は、図3に示すように、本体10内に、照明部20及び照射部30よりも下方に設けられ、照明器具22に照らされた立坑200の内壁200aを撮像する。撮像部70は、本体10内の観察台13Bの上の、架台11の内壁200aに沿って1対設けられている。撮像部70としては、例えば、カメラ等を用いることができる。
【0049】
図7は、図3中の架台11の一部を切り出した状態で示す斜視図であり、図8は、図7の平面図である。図7及び図8に示すように、1対の撮像部70は、対向するように設けられ、それぞれ、内壁200aに設けた固定用ホルダー71に収容して固定されている。撮像部70は、固定用ホルダー71に、光が貫通孔11bを貫通できるように設けられている。
【0050】
なお、撮像部70の数は、適宜設定可能であり、3つ以上備えてもよい。
【0051】
ネットワークカメラ80は、図3に示すように、本体10内に、照明部20、照射部30及び撮像部70よりも下方に設けられている。図9は、図3中の架台11の一部を示す正面図である。図9に示すように、ネットワークカメラ80は、本体10内の観察台13Bの下面に設けられ、観察台13Bと架台11の下端との間に位置している。
【0052】
ネットワークカメラ80は、立坑200内の画像を撮像する。ネットワークカメラ80は、立坑200内を観察できると共に画像を撮像できればよく、特に限定されない。ネットワークカメラ80としては、例えば、一般的なネットワークカメラを用いることができる。
【0053】
図1に示すように、スウィベル90は、その上端でワイヤロープ4に連結され、下端でチェーン110を引っ掛けている。スウィベル90は、ワイヤロープ4によって立坑200内に吊り下げられている。スウィベル90は、本体10の回転を抑制する機能を有する。なお、本実施形態では、錘としてスウィベル90を用いているが、本体10を吊るした状態で把持しつつ本体10の回転を抑制できれば、特に限されず、スウィベル以外でもよい。
【0054】
図3に示すように、制御部100は、立坑200の底部Bに設けられている。制御部100は、立坑内点検装置1を構成する、照明部20、照射部30、距離測定部50、評価用撮像部60、撮像部70及びネットワークカメラ80と不図示のケーブル等を使用した通信回線により接続されており、これらの各種制御等を行う。なお、通信回線は、有線に限らず、無線通信回線でもよい。
【0055】
また、制御部100は、照明部20の照明のON/OFF状態、距離測定部50の測定結果、評価用撮像部60の撮像画像、撮像部70の撮像画像、ネットワークカメラ80の観察画像等を不図示の表示部等に表示できる。
【0056】
図1に示すように、立坑内点検装置1は、本体10の底部に立坑200の底部Bに設置された巻取部120から延びる金剛打ちロープ130が連結されている。立坑200内で立坑内点検装置1を昇降させる際、金剛打ちロープ130にテンションが生じるように巻取部120から金剛打ちロープ130を引っ張ることで、昇降時の本体10の回転及び揺れを軽減することができる。特に巻取部120により金剛打ちロープ130の位置が一定になり易いので、効果的に本体10の回転及び揺れを低減することができる。
【0057】
なお、巻取部120及び金剛打ちロープ130は、本体10の回転及び揺れを効果的に低減するため、それぞれ2つ以上設けてもよい。
【0058】
<立坑内点検方法>
本実施形態に係る立坑内点検方法について説明する。本実施形態に係る立坑内点検方法は、図1に示す立坑内点検装置1を用いて、立坑200内を点検する立坑内点検方法である。本実施形態に係る立坑内点検方法は、照明部20によって、立坑200の内部に向けて光を出射し、撮像部70によって、照明部20に照らされた立坑200の内壁200aを撮像し、距離測定部50によって、撮像された立坑200の内壁200aの少なくとも剥離箇所に照射部30より照射して反射したレーザ光を受光して、レーザ光の照射位置から剥離箇所までの距離を測定し、方位磁石40によって、撮像された剥離箇所の方向を特定する。
【0059】
本実施形態に係る立坑内点検方法は、照明部20によって、立坑200の内部に向けて光を出射する工程と、撮像部70によって、照明部20に照らされた立坑200の内壁200aを撮像し、距離測定部50によって、撮像された立坑200の内壁200aの少なくとも剥離箇所に照射部30より照射して反射したレーザ光を受光して、レーザ光の照射位置から剥離箇所までの距離を測定し、方位磁石40によって、撮像された剥離箇所の方向を特定する工程とを含むことが好ましい。即ち、本実施形態に係る立坑内点検方法は、撮像部70による撮像と、距離測定部50による、レーザ光の照射位置から剥離箇所までの距離の測定と、方位磁石40による剥離箇所の方向の特定とを少なくとも同時に行うことが好ましい。
【0060】
図10は、本実施形態に係る立坑内点検方法を示すフローチャートである。図10に示すように、本実施形態に係る立坑内点検方法は、まず、本体10の上部に設けた一対の取っ手部21同士をチェーン110が外れないように連結して、チェーン110をスウィベル90に吊り下げると共に、電動ウィンチ5に巻き付けられているワイヤロープ4の一端をスウィベル90に連結することで、本体10をスウィベル90を介してワイヤロープ4で立坑200内に吊り下げる(ステップS11)。
【0061】
次に、ワイヤロープ4の一端を電動ウィンチ5により立坑200内へ降下させ、ワイヤロープ4に吊り下げられている本体10を立坑200内に降下させる(ステップS12)。
【0062】
このとき、一対の照明器具22の電源をオンにして、立坑200の内壁200aに光を照射することが好ましい。照明器具22の電源のオンの制御は、制御部100で操作して行ってもよいし、検査作業員により照明器具22に設けられている電源を直接操作してよい。
【0063】
次に、本体10を立坑200内に降下させながら、ネットワークカメラ80で立坑200の内壁200aを観察する(ステップS13)。
【0064】
ネットワークカメラ80の向きの制御は、検査作業員によって制御部100を操作することにより行うことができる。
【0065】
次に、本体10が立坑200の底部Bに到達したら、電動ウィンチ5によりワイヤロープ4を巻き上げて、本体10を立坑200の地上Gまで引き上げる(ステップS14)。
【0066】
なお、本体10を立坑200の地上Gまで引き上げた後、次の工程を行う時間等に応じて、照明器具22の電源をオフにしてもよい。
【0067】
次に、ネットワークカメラ80による観察時に、内壁200aが変化して、剥離箇所があったか否かを判断する(ステップS15)。
【0068】
内壁200aが変化していた箇所が特に見られなかった場合(ステップS15:No)には、上記のステップS12に戻る。
【0069】
内壁200aが変化していた箇所が見られた場合(ステップS15:Yes)には、照射部30、距離測定部50、評価用撮像部60及び撮像部70の電源をオンにする(ステップS16)。
【0070】
これにより、一対の撮像部70によって、立坑200の内壁200aを撮像して画像を取得できると共に、距離測定部50によって、照射部30により剥離箇所に照射して反射したレーザ光を受光することで、レーザ照射位置と立坑200の内壁200aとの距離を測定できる状態とする。
【0071】
照射部30、距離測定部50、評価用撮像部60及び撮像部70の電源の制御は、制御部100で操作して行ってもよいし、検査作業員により照射部30等の電源を直接操作してよい。
【0072】
次に、再度、上記ステップS12と同様に、本体10を立坑200内に降下させる(ステップS17)。
【0073】
そして、本体10を立坑200内に降下させながら、一対の撮像部70によって、立坑200の内壁200aを撮像して画像を取得すると共に、距離測定部50によって、照射部30により剥離箇所に照射して反射したレーザ光を受光してレーザ照射位置と立坑200の内壁200aとの距離を測定する。
【0074】
また、評価用撮像部60により、方位磁石40及び距離測定部50を撮像して、方位磁石40の示す方位と、距離測定部50に表示される、レーザ照射位置と立坑200の内壁200aとの距離の測定値とを撮像する。
【0075】
なお、本体10を立坑200内に再度降下させる際も、上記と同様に、一対の照明器具22の電源をオンにして、立坑200の内壁200aに光を照射することが好ましい。立坑200の内壁200aに光を照射することで、内壁200aの撮像等を行い易くすることができる。
【0076】
次に、本体10が立坑200の底部Bに到達したら、上記のステップS14と同様、電動ウィンチ5によりワイヤロープ4を巻き上げて、本体10を立坑200の地上Gまで引き上げる(ステップS18)。
【0077】
次に、評価用撮像部60が取得した動画から、方位磁石40による方位情報に基づいて、剥離箇所の方位を取得すると共に、距離測定部50に表示される、レーザ照射位置と立坑200の内壁200aとの距離情報を取得する(ステップS19)。
【0078】
これにより、検査作業員は、破損箇所の画像と、本体10と立坑200の内壁200aとの距離と、方位磁石40の示す方位とに基づいて、破損箇所の、位置、規模及び進展方向を取得できる。検査作業員は、得られた破損箇所の情報から、予め取得してある画像の周辺の地質の情報を参考にすることで、立坑200の内壁200aの剥離箇所の状態を適切に判断できる。よって、本実施形態に係る立坑内点検方法を用いれば、検査作業員は、立坑200の内壁200aの修繕の要否を確認することができる。
【0079】
このように、本実施形態に係る立坑内点検装置1は、照明部20、照射部30、方位磁石40、距離測定部50及び撮像部70を備える。立坑内点検装置1は、照明部20で立坑200の内部を明るくして内壁200aを視認し易くすると共に、撮像部70で内壁200aを撮像する際、明るい画像を得ることができるため、撮像部70で撮像した画像から内壁200aの剥離箇所の位置を容易に確認することができる。また、立坑内点検装置1は、距離測定部50で照射部30から照射されたレーザ光の照射位置から剥離箇所までの距離を測定し、方位磁石40で剥離箇所の方向を特定することで、剥離箇所の規模(例えば、深さ等)と進展方向を確認できる。立坑内点検装置1は、得られる剥離箇所の位置等の情報を用い、剥離箇所を含む周囲の地質の情報を参考にすることで、内壁200aの剥離箇所の状態を判断することができるため、内壁200aの剥離箇所の進行度合いを容易に確認することができる。よって、立坑内点検装置1は、立坑200の内壁200aの修繕の要否を容易かつ高精度に確認することができる。
【0080】
立坑内点検装置1は、本体10と、スウィベル90とを備えることができる。これにより、立坑内点検装置1は、立坑200内において本体10の回転をスウィベル90により抑えることができるため、撮像部70によって撮像した画像の回転が抑えられ、立坑200の内壁200aを安定して撮像できる。そのため、立坑内点検装置1は、立坑200の内壁200aの状態を観察し易くすることができると共に、立坑200の内壁200aの剥離箇所の進行度合いをより確認し易くなる。よって、立坑内点検装置1は、立坑200の内壁200aの修繕の要否をより確実に確認することができる。
【0081】
立坑内点検装置1は、照明器具22を本体10の上部に斜め下向きに傾斜して設けることができる。これにより、立坑内点検装置1は、照明器具22から光を斜め下向きに照射できるため、撮像部70でより明るい画像を撮像することができる。よって、立坑内点検装置1は、内壁200aの剥離箇所をより確実に観察することができるため、立坑200の内壁200aの剥離箇所をより特定し易くすることができ、観察精度を向上させることができる。
【0082】
立坑内点検装置1は、ネットワークカメラ80を備えることができる。これにより、立坑内点検装置1は、立坑200内を下降させながら、内壁200aを観察し、内壁200aの剥離箇所を確認することができる。よって、立坑内点検装置1は、本体10を立坑200内に下降させる操作を行いながら、内壁200aの修繕の要否を簡易に確認することができる。
【0083】
立坑内点検装置1は、ネットワークカメラ80を、照射部30、距離測定部50及び撮像部70よりも本体10の下側に備えつつ本体10内に収容できる。即ち、立坑内点検装置1は、ネットワークカメラ80を本体10の高さ方向に対して撮像部70及び距離測定部50の下側の本体10内に位置するように設けることができる。これにより、立坑内点検装置1は、ネットワークカメラ80を水平方向に360°回転させても、照射部30、距離測定部50及び撮像部70により観察が遮られることを防ぐことができるため、立坑200の内壁200aを確実に観察でき、内壁200aの剥離箇所の見落としを抑制することができる。よって、立坑内点検装置1は、本体10を立坑200内に下降させる操作を行いながら、内壁200aの修繕の必要な箇所を確実に確認することができる。
【0084】
また、立坑内点検装置1は、ネットワークカメラ80を本体10内に収容できるため、ネットワークカメラ80が、例えば、立坑200の内壁200a及び底部等の外部に接触することを低減できる。よって、立坑内点検装置1は、ネットワークカメラ80の破損を抑制しながら検査を行うことができるため、立坑200の内壁200aの修繕の要否を安定かつ安全に確認することができる。
【0085】
立坑内点検装置1は、本体10をチェーン110を介してスウィベル90に吊り下げることができる。これにより、立坑内点検装置1は、本体10内に収容されている、照射部30、方位磁石40、距離測定部50及び撮像部70を立坑200内に同時に昇降して移動させることができるため、内壁200a、特に剥離箇所に対して、内壁200aの照射、剥離箇所の撮像、レーザ光の照射位置から内壁200aまでの距離の測定とを同時に簡易な構成で容易に行うことができる。
【0086】
立坑内点検装置1は、評価用撮像部60を備えることができる。これにより、立坑内点検装置1は、評価用撮像部60により、距離測定部50に表示された距離の測定値と、方位磁石40の示す方位とを同時に撮像することができるため、立坑200の内壁200aの剥離箇所のレーザ光の照射位置から内壁200aまでの距離と、剥離箇所の方位を確実に把握することができる。よって、立坑内点検装置1は、内壁200aの剥離箇所の位置、規模、方向等をさらに詳細に特定することができるため、内壁200aの破損箇所の特定をより容易に行うことができる。
【0087】
立坑内点検装置1は、照明器具22、照射部30、方位磁石40及び距離測定部50を、それぞれ2つ備えることができる。立坑内点検装置1は、照明器具22及び照射部30を対向するように、それぞれ1対備えることができるため、内壁200aのうち、対向する位置等、内壁200aの複数箇所に対して、同時に光を照射しつつ、レーザ光の照射位置から内壁200aまでの距離を測定できる。そのため、立坑内点検装置1は、内壁200aの検査をさらに効率良く行うことができる。また、立坑内点検装置1は、内壁200aに対して同じ高さで1対の照明器具22で照らすことができるため、立坑200の内部を略均等により明るくすることができる。よって、立坑内点検装置1は、内壁200aの剥離箇所をより確実に観察して特定することができるため、内壁200aの剥離箇所をより特定し易くすることができる。
【0088】
なお、本実施形態では、本体10に、照明部20、距離測定部50、方位磁石40、距離測定部50、評価用撮像部60、撮像部70及びネットワークカメラ80を設けて、これらをワイヤロープ4で立坑200内に設けているが、本体10を備えず、照明部20、距離測定部50、方位磁石40、距離測定部50、評価用撮像部60、撮像部70及びネットワークカメラ80をワイヤロープ4で立坑200内に直接吊してもよい。
【0089】
本実施形態では、立坑内点検装置1は、照明器具22、照射部30、方位磁石40及び距離測定部50を、それぞれ、1つでもよいし3つ以上備えてもよい。
【0090】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1 立坑内点検装置
10 本体
11 架台
12 保持部
13、13A、13B 観察台
20 照明部
21 取っ手部
22 照明器具
30 照射部
40 方位磁石
50 距離測定部
60 評価用撮像部(第2の撮像部)
70 撮像部
80 ネットワークカメラ
90 スウィベル(錘)
200 立坑
200a 内壁
111、111A、111B、111C 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10