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特開2022-155442アウターロータ、アウターロータ型電動モータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155442
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】アウターロータ、アウターロータ型電動モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20060101AFI20221005BHJP
   H02K 1/27 20220101ALI20221005BHJP
【FI】
H02K15/03 C
H02K1/27 502A
H02K1/27 502D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154690
(22)【出願日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2021057624
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 匡
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA01
5H622CA05
5H622CA10
5H622DD04
5H622PP20
5H622QA03
5H622QA10
(57)【要約】
【課題】 アンカー部近傍でマグネット部にクラックが発生することを抑制可能なアウターロータの一例を開示する。
【解決手段】 アンカー部7には、第1母線Lb1を超えて回転方向一方の向きに膨出する第1膨出部7A、及び第2母線Lb2を超えて回転方向他方の向きに膨出する第2膨出部7Bが設けられている。したがって、第1膨出部7A及び第2膨出部7Bにより、回転中心O1に向かって収縮するバインダの収縮を抑制することが可能となる。このため、マグネット部5の収縮に伴うひずみが、第1膨出部7A及び第2膨出部7Bを挟んで外周側と内周側とに分散され得るので、アンカー部7近傍でマグネット部5にクラックが発生することを抑制され得る。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータのアウターロータにおいて、
金属にて構成された環状のロータコアと、
前記ロータコアの内周面に設けられ、当該ロータコアの回転中心軸線側に向けて突出したアンカー部と、
前記ロータコアの内周面に設けられ、ボンド磁石にて構成されたマグネット部であって、前記アンカー部全体を前記内周面側から覆うように環状に構成されたマグネット部と、
前記アンカー部に設けられ、回転方向一方の向きに膨出する第1膨出部と、
前記アンカー部に設けられ、回転方向他方の向きに膨出する第2膨出部とを備え、
前記ロータコアの回転中心軸線と直交する仮想平面に投影された前記アンカー部の図心をアンカー中心とし、
前記アンカー中心と前記仮想平面に投影された前記回転中心軸線とを通る仮想線をアンカー中心線とし、
前記仮想平面に投影された前記回転中心軸線を通り、かつ、前記アンカー中心線に対して回転方向一方の向きに予め決められた中心角だけずれた仮想線であって、前記第1膨出部を横断する仮想線を第1母線とし、
前記仮想平面に投影された前記回転中心軸線を通り、かつ、前記アンカー中心線に対して回転方向他方の向きに予め決められた中心角だけずれた仮想線であって、前記第2膨出部を横断する仮想線を第2母線としたとき、
前記第1母線の方向において、前記第1膨出部を挟んで一方側及び他方側に前記マグネット部が存在し、
さらに、前記第2母線の方向において、前記第2膨出部を挟んで一方側及び他方側に前記マグネット部が存在するアウターロータ。
【請求項2】
複数の前記アンカー部が円周方向に沿って等間隔で設けられており、
前記マグネット部の内周面から当該マグネット部の外周面までの寸法であって径方向と平行な部位の寸法を厚み寸法としたとき、
円周方向に沿って隣合う2つの前記アンカー部間の中央位置における厚み寸法は、他の位置における厚み寸法より小さいことを特徴とする請求項1に記載のアウターロータ。
【請求項3】
前記ロータコアのうち前記中央位置に対応する部位には、前記回転中心軸線側に向けて突出した山部が設けられており、
前記山部の頂部の曲率半径は、前記アンカー部の頂部の曲率半径より大きいことを特徴とする請求項2に記載のアウターロータ。
【請求項4】
前記ロータコアの内周面のうち、円周方向に沿って隣合う2つの前記山部間には、当該ロータコアの外周面側に窪んだ谷部が設けられており、
前記山部の頂部の曲率半径は、前記谷部の窪みを構成する円弧部の曲率半径より小さいことを特徴とする請求項3に記載のアウターロータ。
【請求項5】
前記山部の頂部から前記回転中心軸線までの寸法は、前記アンカー部の頂部から前記回転中心軸線までの寸法より小さいことを特徴とする請求項3又は4に記載のアウターロータ。
【請求項6】
前記マグネット部のうち複数の前記アンカー部の頂部に対応する位置のそれぞれには、ボンド磁石の注入口を示すゲート痕が存在することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載のアウターロータ。
【請求項7】
前記ロータコアの外周のうち、いずれか前記山部に対応する部位には、当該ロータコアの内周面側に陥没した凹部が設けられていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載のアウターロータ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のアウターロータと、
前記アウターロータ内に配置されたインナーステータと
を備えるアウターロータ型電動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動モータのアウターロータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のアウターロータは、金属にて構成された略円筒状のロータコア、当該ロータコアの内側に配置された略円筒状のマグネット部等を有して構成されている。
【0003】
そして、ロータコアの内周面には、当該ロータコアの回転中心側に向けて突出した複数のアンカー部が設けられている。各アンカー部は、ロータコアに対してマグネット部が円周方向及び回転軸線方向にずれることを規制するための係止部である。
【0004】
マグネット部は、所定形状に成形されたボンド磁石にて構成された永久磁石である。ボンド磁石は、微小な磁石粉と樹脂製のバインダとが混合されたものであって、射出成形方法等により所定形状に成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-111738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マグネット部は、溶融状態のバインダ(樹脂)を射出して成形される。このため、射出成形後に発生するバインダ(樹脂)の収縮により、マグネット部にクラックが発生し易い。
【0007】
本開示は、マグネット部にクラックが発生することを抑制可能なアウターロータの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
電動モータのアウターロータは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。すなわち、当該構成要件は、金属にて構成された環状のロータコア(3)と、ロータコア(3)の内周面に設けられ、当該ロータコア(3)の回転中心軸線側に向けて突出したアンカー部(7)と、ロータコア(3)の内周面に設けられ、ボンド磁石にて構成されたマグネット部(5)であって、アンカー部(7)全体を内周面側から覆うように環状に構成されたマグネット部(5)と、アンカー部(7)に設けられ、回転方向一方の向きに膨出する第1膨出部(7A)と、アンカー部(7)に設けられ、回転方向他方の向きに膨出する第2膨出部(7B)とを備え、第1母線(Lb1)の方向において、第1膨出部(7A)を挟んで一方側及び他方側にマグネット部(5)が存在し、さらに、第2母線(Lb2)の方向において、第2膨出部(7B)を挟んで一方側及び他方側にマグネット部(5)が存在することが望ましい。
【0009】
なお、仮想平面とは、ロータコア(3)の回転中心軸線と直交する仮想の平面をいう。第1母線(Lb1)とは、仮想平面に投影された回転中心軸線(以下、回転中心という。)を通り、かつ、アンカー中心線(Lo)に対して回転方向一方の向きに予め決められた中心角だけずれた仮想線であって、第1膨出部(7A)を横断する仮想線をいう。
【0010】
第2母線(Lb2)とは、回転中心を通り、かつ、アンカー中心線(Lo)に対して回転方向他方の向きに予め決められた中心角だけずれた仮想線であって、第2膨出部(7B)を横断する仮想線をいう。
【0011】
アンカー中心(Go)とは、仮想平面に投影されたアンカー部(7)の外縁を示す図形の図心をいう。なお、図心は、仮想平面に投影されたアンカー部(7)の外縁において、面積モーメント(断面一次モーメントともいう。)が釣り合う点である。
【0012】
そして、当該アウターロータでは、第1母線(Lb1)を超えて回転方向一方の向きに膨出する第1膨出部(7A)、及び第2母線(Lb2)を超えて回転方向他方の向きに膨出する第2膨出部(7B)が設けられているので、回転中心軸線に向かって収縮するバインダの収縮を抑制することが可能となる。
【0013】
このため、マグネット部(5)の収縮に伴うひずみが、第1膨出部(7A)及び第2膨出部(7B)を挟んで外周側(径方向における外側)と内周側(径方向における内側)とに分散され得る。延いては、当該アウターロータによれば、マグネット部にクラックが発生することを抑制され得る。
【0014】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係るアウターロータを示す図である。
図2】第1実施形態に係るアウターロータの端面図である。
図3】第1実施形態に係るアウターロータの一部拡大図である。
図4】第2実施形態に係るアウターロータの端面図である。
図5】第2実施形態に係るアウターロータの一部拡大図である。
図6】第2実施形態に係るロータコアの一部拡大図である。
図7】その他の実施形態に係るロータコアの一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0017】
なお、各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び各部材又は部位の形状を理解し易くするために記載されたものである。したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されない。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示すものではない。
【0018】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示されたアウターロータは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0019】
(第1実施形態)
<1.アウターロータの概要>
本実施形態は、スタータモータ等の内燃機関の始動用電動モータ用のアウターロータに本開示に係るアウターロータの一例が適用されたものである。図1に示されるように、アウターロータ1は、ロータコア3及びマグネット部5等を有して構成されている。なお、マグネット部5は、二点鎖線の斜線が付された部位である。
【0020】
ロータコア3は、マグネット部5の外周側に位置する部材であって、金属にて構成された略円筒状の部材である。具体的には、当該ロータコア3は、電磁鋼板等の鉄損が小さい鋼板3Aが、当該ロータコア3の回転中心軸線Lrと平行な方向に多数枚積層されて円筒状に構成されたものである。
【0021】
マグネット部5は、ロータコアの内側に配置された略円筒状の部材である。当該マグネット部5は、所定形状に成形されたボンド磁石である。ボンド磁石は、微小な磁石粉と樹脂製のバインダとが混合されたものであって、射出成形方法等により略円筒状に成形された永久磁石である。
【0022】
そして、ロータコア3の内周面には、回転中心軸線Lr側に向けて突出した複数のアンカー部7が設けられている。各アンカー部7は、ロータコア3に対してマグネット部5が円周方向及び回転中心軸線Lrの方向(以下、軸線方向という。)にずれることを規制するための係止部である。
【0023】
なお、各アンカー部7は、ロータコア3と共に一体形成された部位である。つまり、各アンカー部7は、ロータコア3を構成する各鋼板3Aと共にプレス成形にて一体成形された部位である。このため、各アンカー部7は、軸線方向に延びる突条となっている。なお、複数のアンカー部7は、円周方向に沿って等間隔で設けられている。
【0024】
<2.アウターロータの詳細>
<アンカー部の詳細>
図2は、回転中心軸線Lrと直交する仮想平面に投影されたアウターロータ1を示している。具体的には、図2は、図1に示されるアウターロータ1の軸線方向端面図に等しい。なお、以下、当該仮想平面に投影された回転中心軸線Lrを回転中心O1という。
【0025】
当該仮想平面に投影されたロータコア3(以下、ロータコア3と略す。)は、図2に示されるように、略環状に構成されている。当該仮想平面に投影されたアンカー部7(以下、アンカー部7と略す。)は、ロータコア3の内周面において回転中心O1側に向けて突出した突起状の部位である。
【0026】
当該仮想平面に投影されたマグネット部5(以下、マグネット部5と略す。)は、ロータコア3の内周面に設けられ、各アンカー部7全体を内周面側から覆うよう略環状に構成されている。
【0027】
そして、図3に示されるように、各アンカー部7の一方側の側面には、第1膨出部7Aが設けられている。各アンカー部7の他方側の側面には、第2膨出部7Bが設けられている。アンカー部7の側面とは、当該アンカー部7の突出方向及び軸線方向と直交する方向、つまり、アウターロータ1の回転方向の端面をいう。
【0028】
したがって、各第1膨出部7Aは、当該第1膨出部7Aが設けられたアンカー部7から回転方向一方の向きに膨出した部位である。各第2膨出部7Bは、当該第2膨出部7Bが設けられたアンカー部7から回転方向他方の向きに膨出した部位である。
【0029】
なお、各第1膨出部7A及び各第2膨出部7Bは、対応するアンカー部7と共に一体成形された部位である。具体的には、第1膨出部7A、第2膨出部7B及びアンカー部7は、ロータコア3を構成する鋼板3Aと共にプレス成形にて一体成形された部位である。
【0030】
<第1膨出部及び第2膨出部の詳細>
図3に示されるように、第1母線Lb1の方向において、第1膨出部7Aを挟んで一方側及び他方側にマグネット部5が存在する。第2母線Lb2の方向において、第2膨出部7Bを挟んで一方側及び他方側にマグネット部5が存在する。
【0031】
つまり、図3においては、第1膨出部7Aの紙面上側及び紙面下側にマグネット部5が存在し、かつ、第2膨出部7Bの紙面上側及び紙面下側にマグネット部5が存在する。なお、第1母線Lb1及び第2母線Lb2の定義は、以下の通りである。
【0032】
<用語の定義>
第1母線Lb1とは、回転中心O1を通り、かつ、アンカー中心線Loに対して回転方向一方の向きに予め決められた中心角θ1だけずれた仮想線であって、第1膨出部7Aを横断する仮想線をいう。
【0033】
第2母線Lb2とは、回転中心O1を通り、かつ、アンカー中心線Loに対して回転方向他方の向きに予め決められた中心角θ2だけずれた仮想線であって、第2膨出部7Bを横断する仮想線をいう。
【0034】
アンカー中心線Loとは、アンカー中心Goと回転中心O1とを通る仮想線をいう。アンカー中心Goとは、アンカー部7の外縁を示す図形の図心をいう。なお、図心は、アンカー部7の外縁において、断面一次モーメントが釣り合う点をいう。
【0035】
<3.本実施形態に係るアウターロータの特徴>
本実施形態に係るアウターロータ1の各アンカー部7には、第1母線Lb1を超えて回転方向一方の向きに膨出する第1膨出部7A、及び第2母線Lb2を超えて回転方向他方の向きに膨出する第2膨出部7Bが設けられている(図3参照)。
【0036】
したがって、第1膨出部7A及び第2膨出部7Bにより、回転中心軸線Lrに向かって収縮するバインダの収縮を抑制することが可能となる。このため、マグネット部5の収縮に伴うひずみが、第1膨出部7A及び第2膨出部7Bを挟んで外周側と内周側とに分散され得る。延いては、当該アウターロータ1によれば、マグネット部5にクラックが発生することを抑制され得る。
【0037】
特に、マグネット部5における内周側からクラックが発生することを抑制され得る。さらには、アンカー部7近傍におけるマグネット部5にクラックが発生することを抑制され得る。
【0038】
(第2実施形態)
上述の実施形態に係るアウターロータ1では、マグネット部5の厚み寸法が、アンカー部7が設けられた部位を除いて、円周方向全域に亘って均一であった。なお、厚み寸法とは、マグネット部5の内周面から当該マグネット部5の外周面までの寸法であって径方向と平行な部位の寸法をいう。
【0039】
これに対して、本実施形態に係るアウターロータ1では、図4に示されるように、厚み寸法が部位によって異なる。具体的には、円周方向に沿って隣合う2つのアンカー部7間の中央位置におけるマグネット部5の厚み寸法T1(図5参照)は、他の位置における厚み寸法より小さい。
【0040】
換言すれば、ロータコア3のうち上記(アンカー部7間)の中央位置に対応する部位には、回転中心O1側に向けて突出した山部8が設けられている。このため、本実施形態では、複数の山部8が円周方向に沿って等間隔で設けられた構成となる。
【0041】
ロータコア3の内周面のうち、円周方向に沿って隣合う2つの山部8間には、当該ロータコア3の外周面側に窪んだ谷部9が設けられている。そして、図6に示されるように、各山部8の頂部の曲率半径R1は、アンカー部7の頂部の曲率半径R2より大きくなっている。
【0042】
各山部8の頂部の曲率半径R1は、各谷部9の窪みを構成する円弧部9Aの曲率半径R3より小さい。さらに、図4に示されるように、各山部8の頂部から回転中心O1までの寸法R4は、アンカー部7の頂部から回転中心O1までの寸法R5より小さい。
【0043】
ロータコア3の外周には、少なくとも1つ(本実施形態では、複数)の凹部10が設けられている。具体的には、各凹部10は、ロータコア3の外周のうちいずれか山部8に対応する部位に設けられている。
【0044】
各凹部10は、ロータコア3の内周面側に陥没した部位である。なお、本実施形態に係る各凹部10は、回転中心軸線Lrと平行な方向に延びる溝状の陥没部である。そして、マグネット部5のうち各アンカー部7の頂部に対応する位置のそれぞれには、ボンド磁石の注入口を示すゲート痕5Aが存在する。
【0045】
<本実施形態に係るアウターロータの特徴>
本実施形態では、円周方向に沿って隣合う2つのアンカー部7間の中央位置における厚み寸法T1が他の位置における厚み寸法より小さい。したがって、アンカー部7近傍における応力集中を避けることができ得る。延いては、マグネット部5の割れを抑制でき得る。
【0046】
換言すると、アンカー部7は、隣合う2つの山部8間の中央位置である谷部9に位置している。当該部位は、マグネット部5の厚みが最も厚く成形収縮が大きいため、磁石内部に発生する歪みが大きくなるため割れ易い。
【0047】
しかし、本実施形態では、アンカー部7が設けられているので、磁石内部に発生する歪みが緩和し、効果的に応力集中を避けることができ得る。延いては、マグネット部5の割れを抑制でき得る。
【0048】
本実施形態に係る磁極間の境界は、円周方向に沿って隣合う2つのアンカー部7間の中央位置に設定され、かつ、当該中央位置におけるマグネット部5の厚み寸法T1は、他の位置における厚み寸法より小さい。
【0049】
そして、磁極間の境界付近の磁力は、アウターロータ1の回転に寄与し難いので、本実施形態のようにアンカー部7間の中央位置であるマグネット部5の厚みが小さい構成であれば、回転トルクを維持したまま磁石使用量を少なくすることができる。
【0050】
本実施形態では、山部8の頂部の曲率半径R1がアンカー部7の頂部の曲率半径R2より大きい。これにより、山部8の近傍において応力集中が発生することを回避でき得る。
【0051】
本実施形態では、谷部9の付近での磁力を確保しつつ、山部8の近傍にて応力集中が発生することを回避でき得る。
【0052】
本実施形態では、山部8の頂部から回転中心O1までの寸法R4がアンカー部7の頂部から回転中心O1までの寸法R5より小さい。これにより、谷部9の付近における磁力をより確保し易くなり得る。
【0053】
本実施形態では、マグネット部5のうち各アンカー部7の頂部に対応する位置のそれぞれには、ボンド磁石の注入口を示すゲート痕5Aが存在する。これにより、ウェルド部をクラックが発生し易い部位、つまり応力が集中し易い位から外すことが可能となり得る。なお、ウェルド部とは、異なる注入口から射出されたボンド磁石が合わさる部位をいう。
【0054】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係るアンカー部7は、アンカー中心線Loに対して線対称な形状であって、かつ、中心角θ1と中心角θ2とは同一の角度であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、アンカー中心線Loに対して非対称な形状のアンカー部7、又は中心角θ1と中心角θ2とが異なる値であってもよい。
【0055】
上述の実施形態では、アンカー部7が複数設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、アンカー部7は、少なくとも1つ設けられていれば十分である。つまり、アンカー部7の個数は、図2に示された個数に限定されない。
【0056】
上述の実施形態に係るアウターロータ1は、始動用電動モータに用いられるものであった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ワイパーモータやパワーウインドウモータ等、その他の電動モータにも適用可能である。
【0057】
上述の実施形態に係るアンカー部7は、図3に示されるように、円弧を組み合わせた形状であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、図7に示されるように、円弧と直線とが組み合わされた形状を有するアンカー部7であってもよい。
【0058】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1… アウターロータ
3… ロータコア
5… マグネット部
7… アンカー部
7A… 第1膨出部
7B… 第2膨出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7