(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155480
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】テトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07D 309/04 20060101AFI20221005BHJP
C01B 39/48 20060101ALI20221005BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C07D309/04 CSP
C01B39/48
B01J29/70 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006755
(22)【出願日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2021058427
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 真人
(72)【発明者】
【氏名】中西 勇介
(72)【発明者】
【氏名】石川 智也
(72)【発明者】
【氏名】中尾 圭太
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA04
4G073BA57
4G073BA63
4G073BA75
4G073BB03
4G073BB04
4G073BB29
4G073BB48
4G073BD21
4G073CZ17
4G073CZ41
4G073FB28
4G073FC12
4G073FC19
4G073FC30
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA08
4G073GA11
4G073GB02
4G073UA02
4G073UA05
4G169AA01
4G169AA08
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC31B
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169FA01
4G169ZA14A
4G169ZA14B
4G169ZC02
4G169ZC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ゼオライト製造用の有機構造指向剤として利用可能な新規の四級アンモニウム塩、その製造方法及びこれを使用するゼオライトの製造方法を提供する。
【解決手段】式(1)で表されるテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩。
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基(これらの基は、各々独立して、ハロゲン基、ヒドロキシ基、-ORで表されるアルコキシ基(Rは、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す)、及びアミノ基の群から選択される1つ以上で置換されていてもよい)を表す。Y
-は、任意の陰イオンを表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩。
【化1】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基(これらの基は、各々独立して、ハロゲン基、ヒドロキシ基、-ORで表されるアルコキシ基(Rは、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す)、及びアミノ基の群から選択される1つ以上で置換されていてもよい)を表す。Y
-は、任意の陰イオンを表す。)
【請求項2】
前記の式(1)において、R1、R2、及びR3が、各々独立して、メチル基又はエチル基(これらの基は、ハロゲン基、ヒドロキシ基、-ORで表されるアルコキシ基(Rは、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す)、及びアミノ基の群から選択される1つ以上で置換されていてもよい)である、請求項1に記載のテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩。
【請求項3】
前記の式(1)において、R1、R2、及びR3が、メチル基である、請求項1又は2に記載のテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩。
【請求項4】
前記の式(1)において、Y-が、Cl-(塩化物イオン)、Br-(臭化物イオン)、I-(ヨウ化物イオン)、C6H5SO2O-(ベンゼンスルホン酸イオン)、p-CH3C6H4SO2O-(p-トルエンスルホン酸イオン)、CH3SO2O-(メタンスルホン酸イオン)、CF3SO2O-(トリフルオロメタンスルホン酸イオン)、又はOH-(水酸化物イオン)である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源及び水を含む組成物を結晶化させる結晶化工程、を有することを特徴とするゼオライトの製造方法。
【請求項6】
前記ゼオライトがCHA型ゼオライトである、請求項5に記載のゼオライトの製造方法。
【請求項7】
前記ゼオライトの粉末X線回折パターンにおいて、少なくとも以下の粉末X線回折ピークを有する、請求項5又は6に記載のゼオライトの製造方法。
【表1】
【請求項8】
粉末X線回折パターンにおいて、少なくとも以下の粉末X線回折ピークを有する、ゼオライト。
【表2】
【請求項9】
前記ゼオライトがCHA型ゼオライトである、請求項8に記載のゼオライト。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のゼオライトを含む触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新規なテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩化合物として、特許文献1に記載の化合物が報告されている。特許文献1では、該四級アンモニウム塩化合物は有機合成用の基質としての用途で利用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示では、新規の四級アンモニウム塩、その製造方法及びその用途の少なくともいずれかを提供することを目的とし、特に、本開示ではゼオライト製造用の有機構造指向剤として利用可能な新規の四級アンモニウム塩及びその製造方法、並びに、これを使用するゼオライトの製造方法及びこれにより得られるゼオライト、の少なくともいずれかを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、下記一般式(1)で表されるテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩を見出し、なおかつ、当該四級アンモニウム塩が、ゼオライト製造用の有機構造指向剤として作用することを見出し、本開示に係る発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は特許請求項の範囲に示すとおりであり、本開示の要旨は以下のとおりである。
[1] 一般式(1)で表されるテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩。
【0007】
【0008】
(式中、R1、R2、及びR3は、各々独立して、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基(これらの基は、各々独立して、ハロゲン基、ヒドロキシ基、-ORで表されるアルコキシ基(Rは、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す)、及びアミノ基の群から選択される1つ以上で置換されていてもよい)を表す。Y-は、任意の陰イオンを表す。)
[2] 前記の式(1)において、R1、R2、及びR3が、各々独立して、メチル基又はエチル基(これらの基は、ハロゲン基、ヒドロキシ基、-ORで表されるアルコキシ基(Rは、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す)、及びアミノ基の群から選択される1つ以上で置換されていてもよい)である、上記[1]に記載のテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩。
[3] 前記の式(1)において、R1、R2、及びR3が、メチル基である、上記[1]又は[2]に記載のテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩。
[4] 前記の式(1)において、Y-が、Cl-(塩化物イオン)、Br-(臭化物イオン)、I-(ヨウ化物イオン)、C6H5SO2O-(ベンゼンスルホン酸イオン)、p-CH3C6H4SO2O-(p-トルエンスルホン酸イオン)、CH3SO2O-(メタンスルホン酸イオン)、CF3SO2O-(トリフルオロメタンスルホン酸イオン)、又はOH-(水酸化物イオン)である、[1]乃至[3]のいずれかひとつに記載のテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩。
[5] 上記[1]乃至[4]のいずれかひとつに記載のテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源及び水を含む組成物を結晶化させる結晶化工程、を有することを特徴とするゼオライトの製造方法。
[6] 前記ゼオライトがCHA型ゼオライトである、上記[5]に記載のゼオライトの製造方法。
[7] 前記ゼオライトの粉末X線回折パターンにおいて、少なくとも以下の粉末X線回折ピークを有する、上記[5]又は[6]に記載のゼオライトの製造方法。
【0009】
【0010】
[8] 粉末X線回折パターンにおいて、少なくとも以下の粉末X線回折ピークを有する、ゼオライト。
【0011】
【0012】
[9] 前記ゼオライトがCHA型ゼオライトである、上記[8]に記載のゼオライト。
[10] 上記[8]又は[9]に記載のゼオライトを含む触媒。
【発明の効果】
【0013】
本開示により、新規の四級アンモニウム塩、その製造方法及びその用途の少なくともいずれかを提供することができ、特に、本開示ではゼオライト製造用の有機構造指向剤として作用する新規なテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩及びその製造方法、並びに、これを使用するゼオライトの製造方法及びこれにより得られるゼオライトの少なくともいずれかを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例2-1のCHA型ゼオライトのXRDパターン
【
図2】実施例2-1のCHA型ゼオライトのSEM観察図
【
図3】実施例2-2のCHA型ゼオライトのXRDパターン
【
図4】実施例2-2のCHA型ゼオライトのSEM観察図
【
図5】窒素酸化物還元率を示すグラフ(a:実施例、b:参考例)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示について、実施形態の一例を示して説明する。
【0016】
まず一般式(1)中のR1、R2、R3及びY-の定義について詳細に説明する。
【0017】
R1、R2、及びR3は、各々独立して、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基(これらの基は、各々独立して、ハロゲン基、ヒドロキシ基、-ORで表されるアルコキシ基(Rは、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す)、及びアミノ基の群から選択される1つ以上で置換されていてもよい)を表す。
【0018】
R1、R2、及びR3で表される炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基は、特に限定するものではないが、例えば、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、若しくはtert-ブチル基が例示できる。
【0019】
R1、R2、及びR3で表される、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基については、上記の通り、各々独立に、ハロゲン基、ヒドロキシ基、-ORで表されるアルコキシ基(Rは、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す)、及びアミノ基の群から選択される1つ以上で置換されていてもよい。
【0020】
上記のRにおける、炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基については、R1、R2、及びR3で表される炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基と同義である。
【0021】
前記の-ORで表されるアルコキシ基としては、特に限定するものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、2-メチルプロポキシ基、若しくはtert-ブトキシ基等が例示できる。
【0022】
R1、R2、及びR3で表される基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、ペルフルオロ(1-メチルプロピル)基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ペルフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-メチル-3,3,3-トリフルオロプロピル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、2-クロロエチル基、3-ブロモプロピル、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、メトキシメチル基、2-メトキシエチル基、2-メトキシプロピル基、3-メトキシプロピル、4-メトキシブチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、2-エトキシプロピル基、3-エトキシプロピル、4-エトキシブチル基、アミノメチル基、2-アミノエチル基、2-アミノプロピル基、3-アミノプロピル基、4-アミノブチル基を挙げることができる。
【0023】
R1、R2、及びR3は、ゼオライトの収率に優れる点で、各々独立して、メチル基又はエチル基(これらの基は、ハロゲン基、ヒドロキシ基、-ORで表されるアルコキシ基(Rは、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す)、及びアミノ基の群から選択される1つ以上で置換されていてもよい)であることが好ましく、各々独立して、メチル基又はエチル基(これらの基は、ハロゲン基、ヒドロキシ基、メトキシ基、及びアミノ基の群から選択される1つ以上で置換されていてもよい)であることがより好ましく、各々独立して、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0024】
Y-は、任意の陰イオンを表す。
【0025】
当該任意の陰イオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、ハロゲン化物イオン、スルホン酸化合物イオン、カルボン酸イオン、又は水酸化物イオン(OH-)を挙げることができる。
【0026】
前記のハロゲン化物イオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン又はヨウ化物イオンを例示することができる。
【0027】
前記のスルホン酸化合物イオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、R4SO2O-(R4は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基、又は4-メチルフェニル基を表す)で表されるスルホン酸化合物イオンを挙げることができ、例えば、スルホン酸イオン、メチルスルホン酸イオン、エチルスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、フェニル硫酸イオン等を例示することができる。
【0028】
前記のカルボン酸イオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、R5COO-(R5は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~4の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、炭素数1から4のフルオロアルキル基、又はフェニル基(該フェニル基は、メチル基、エチル基、炭素数3~4の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基で置換されていてもよい)を表す)で表されるカルボン酸イオンを挙げることができ、例えば、蟻酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、安息香酸イオン、又は4-メチル安息香酸イオン等を例示することができる。
【0029】
なお、Y-(R4及びR5)における炭素数3~4の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基については、R1、R2、及びR3における炭素数3~4の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基と同義である。
【0030】
R5における炭素数1から4のフルオロアルキル基については、直鎖状、分岐状、若しくは環状のいずれかのフルオロアルキル基であればよく、特に限定するものではないが、例えば、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、ペルフルオロ(1-メチルプロピル)基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ペルフルオロシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロプロピル基、ペルフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-メチル-3,3,3-トリフルオロプロピル基、ペルフルオロシクロブチル基、又は2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロシクロブチル基が例示できる。
【0031】
R4における炭素数1から4のアルコキシ基については、直鎖状、分岐状、若しくは環状のいずれかのアルコキシ基であればよく、特に限定するものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、2-メチルプロポキシ基、シクロプロポキシ基、tert-ブトキシ基、又はシクロブトキシ基が例示できる。
【0032】
なお、Y-は、ゼオライトの収率に優れる点で、Cl-(塩化物イオン)、Br-(臭化物イオン)、I-(ヨウ化物イオン)、C6H5SO2O-(ベンゼンスルホン酸イオン、PhOSO2
-)、p-CH3C6H4SO2O-(p-トルエンスルホン酸イオン、TsO-)、CH3SO2O-(メタンスルホン酸イオン、MeOSO2
-)、CF3SO2O-(トリフルオロメタンスルホン酸イオン、TfO-)、又はOH-(水酸化物イオン)であることが好ましく、Br-(臭化物イオン)、Cl-(塩化物イオン)、又はOH-(水酸化物イオン)であることがより好ましい。
【0033】
本実施形態のテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩(1)(以下、「本実施形態の四級アンモニウム塩(1)」ともいう。)の具体例としては、以下の(1-1)から(1-60)を例示できるが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
なお、本明細書中のMeはメチル基、Etはエチル基、n-Prはノルマルプロピル基、Phはフェニル基、TsO-はp-トルエンスルホン酸イオン、TfO-はトリフルオロメタンスルホン酸イオン、PhOSO2
-はベンゼンスルホン酸イオン、MeOSO2
-はメタンスルホン酸イオン、MeOCO-は酢酸イオン、CF3OCO-はトリフルオロ酢酸イオン、PhOCO-は安息香酸イオンを表す。
【0038】
(1-1)から(1-60)で示される化合物のうち、本実施形態のテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩としては(1-4)、(1-7)、(1-8)、(1-9)、(1-15)、(1-16)、(1-21)、(1-27)、(1-28)、及び(1-33)の群から選ばれる1以上で示される化合物が、合成が容易な点で好ましい。
【0039】
次に、本実施形態の四級アンモニウム塩(1)の製造方法について説明する。
【0040】
<製造方法の実施形態1>
本実施形態の四級アンモニウム塩(1)の製造方法として、一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物とを反応させる工程(以下、「反応工程」ともいう)、を含む、一般式(1a)で表されるテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩の製造方法(以下、「製法1」ともいう。)を挙げることができる。
【0041】
【0042】
(式中、R6は、各々独立して、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基(これらの基は、各々独立して、ハロゲン基、ヒドロキシ基、-ORで表されるアルコキシ基(Rは、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す)、及びアミノ基の群から選択される1つ以上で置換されていてもよい)を表す。)
上記のR6における基の定義及び好ましい範囲については、R1、R2、及びR3における基の定義及び好ましい範囲と同じである。
【0043】
【0044】
(式中、R7は、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基(これらの基は、ハロゲン基、ヒドロキシ基、-ORで表されるアルコキシ基(Rは、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す)、及びアミノ基の群から選択される1つ以上で置換されていてもよい)を表し、Yaは、ハロゲン原子、又はR4SO2O-で表される有機スルホニルオキシ基を表す。)
上記のR7における基の定義及び好ましい範囲については、R1、R2、及びR3における基の定義及び好ましい範囲と同じである。
【0045】
R4は、上記のY-におけるR4と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0046】
【0047】
(式中、R6は、一般式(2)におけるR6同義である。R7は、一般式(3)におけるR7と同義である。Ya-は、ハロゲン化物イオン又はR4SO2O-で表されるスルホン酸イオンを表す。R4は、一般式(3)におけるR4と同義である。)
上記のR6及びR7で表される各置換基については、R1、R2、及びR3における各置換基の定義と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0048】
当該製法1において、一般式(2)で表される化合物については、市販品をそのまま用いることもできるし、市販の4-アミノメチルテトラヒドロピランを公然公知の方法でアルキル化して合成したものを用いることもできる。
【0049】
当該製法1において、一般式(3)で表される化合物については、市販のものを用いることができる。
【0050】
当該製法1の反応において、一般式(2)で表される化合物に対する、一般式(3)で表される化合物の量は、反応収率に優れる点で、一般式(2)で表される化合物 1モルに対して、2~100モルであることが好ましく、2~10モルであることがより好ましい。
【0051】
製法1の反応において、一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物は、溶媒中で反応させることが好ましい。該溶媒としては、反応を阻害しないものであれば制限は無く、例えば、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ハロゲン系溶媒、アミド系溶媒、ウレア系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド系溶媒、アルコール系溶媒及び水が挙げられる。
【0052】
これらの溶媒の具体的なものとして、芳香族炭化水素系溶媒としてトルエン、及びキシレンが、エーテル系溶媒としてテトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン及び1,4-ジオキサンが、エステル系溶媒として酢酸エチル又は酢酸ブチルが、ハロゲン系溶媒としてクロロホルム、四塩化炭素、及びクロロベンゼンが、アミド系溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド又はN,N-ジメチルアセトアミドが、ウレア系溶媒として、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン又は1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2(1H)-オンが、ケトン系溶媒としてアセトン又はメチルエチルケトンが、ニトリル系溶媒としてアセトニトリル、プロピオニトリル及びベンゾニトリルが、スルホキシド系溶媒としてジメチルスルホキシドが、アルコール系溶媒としてメタノール、エタノール及びプロパノールが、それぞれ、例示できる。
【0053】
前記の溶媒については、ハロゲン系溶媒及びアルコール系溶媒からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、ジクロロメタン、エタノール及びメタノールからなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。
【0054】
製法1において、反応温度としては、0℃以上200℃以下の任意の温度が好ましく、20℃以上80℃以下がより好ましい。また、反応時間としては、1時間以上100時間以下が好ましい。
【0055】
製法1については、前記の反応工程に加えて、前記の反応工程で得られた一般式(1a)で表されるテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩を単離する工程(以下、「単離工程」ともいう。)を含んでいてもよく、更に必要に応じて、前記の単離工程で単離されたテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩をイオン交換する工程(以下、「イオン交換工程」ともいう。)を含んでいてもよい。
【0056】
前記の単離工程において、テトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩(1a)が反応混合物から単離できればその単離方法については任意であるが、当該単離方法としては、当業者が通常用いる一般的な精製方法を適用することが出来、特に限定するものではないが、例えば、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶などが例示できる。
【0057】
前記のイオン交換工程では、単離工程で単離したテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩(1a)をイオン交換する工程を表す。当該イオン交換工程(上記のYa-で表されるアニオンを下記のYb-で表されるアニオンにイオン交換する工程)により、一般式(1b)で表されるテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩を得ることができる。
【0058】
【0059】
(式中、R6、及びR7は一般式(1a)におけるR6、及びR7と同義であり、Yb-はハロゲン化物イオン又は水酸化物イオンを表す。)
イオン交換の方法としては、当業者が四級アンモニウム塩のイオン交換に用いる一般的な方法を用いることが出来、例えばテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩(1a)と、イオン交換樹脂とを接触させればよい。イオン交換樹脂として、交換基Yb-を有するイオン交換樹脂であればよく、例えば、ダイヤイオンSA10A、ダイヤイオンSA12A、又はダイヤイオンSA11Aが例示でき、好ましくはダイヤイオンSA10Aが例示できる。
【0060】
イオン交換は、イオン交換を阻害しない溶媒中で実施すればよい。該溶媒として、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アルコール系溶媒及び水の群から選択される1つ以上が挙げられる。具体的な溶媒は、それぞれ、前述の製法1の説明で例示した具体的な溶媒と同じものが例示できる。
【0061】
<一般式(2)で表される4-ジアルキルアミノメチルテトラヒドロピランの製造方法>
製法1に供する4-ジアルキルアミノメチルテトラヒドロピラン(2)の製造方法の実
施形態の一例として、一般式(4)で表される4-アミノメチルテトラヒドロピランと、還元剤と、一般式(5)で表されるカルボニル化合物から選ばれる1種以上の化合物とを反応させる工程、を有することを特徴とする、4-ジアルキルアミノメチルテトラヒドロピラン(2)の製造方法(以下、「原料製法1」ともいう。)、を挙げることができる。
【0062】
【0063】
【0064】
(式中、Xは、各々独立に、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基(これらの基は、各々独立して、ハロゲン基、ヒドロキシ基、-ORで表されるアルコキシ基(Rは、メチル基、エチル基、又は炭素数3~4の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す)を表す。)。
【0065】
Xは、各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基であることが好ましく、殊更、水素原子であることがより好ましい。
【0066】
前記の還元剤については、特に限定するものではないが、原料製法1の中間生成物であるイミニウムカチオン化合物を還元しうるものであれば特に限定するものではないが、例えば、ギ酸、ギ酸アンモニウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、ピリジンボラン、2-ピコリンボラン、又は5-エチル-2-メチルピリジンボラン等を例示することができる。
【0067】
原料製法1において、4-アミノメチルテトラヒドロピラン(4)に対する、還元剤の添加量は、2~50モル当量であることが好ましく、4~10モル当量であることがより好ましい。
【0068】
原料製法1において、4-アミノメチルテトラヒドロピラン(4)に対する、カルボニル化合物(5)の添加量は、2~50モル当量であることが好ましく、4~10モル当量であることがより好ましい。
【0069】
原料製法1は、4-アミノメチルテトラヒドロピラン(4)と、還元剤と、カルボニル化合物(5)とを溶媒中で反応させることで行うことができる。該溶媒は反応を阻害しないものであればよく、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒、及びメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒及び水が例示でき、好ましい溶媒としてアルコール系溶媒又は水が、より好ましい溶媒としてメタノール又は水が、例示できる。
【0070】
原料製法1において、反応温度としては、特に限定するものではないが、例えば、20℃以上150℃以下の任意の温度が好ましく、より好ましい反応温度として40℃以上120℃以下が挙げられる。反応時間としては、特に限定するものではないが、例えば、1時間以上100時間以下が挙げられる。
【0071】
なお、当該原料製法1においては、反応を促進させる触媒を添加して行ってもよい。当該触媒としては、特に限定するものではないが、例えば、パラジウム錯体、ルテニウム錯体、ロジウム錯体、又はイリジウム錯体を挙げることができる。
【0072】
原料製法1は、上記反応によって得られた4-ジアルキルアミノメチルテトラヒドロピラン(2)を単離する工程、を含んでいてもよい。
単離方法その他の条件は、製法1の単離工程と同じ条件が例示できる。
【0073】
<ゼオライトの製造方法>
本実施形態の四級アンモニウム塩(1)は、公知の四級アンモニウム塩の用途に適用できる。このような用途として、特に限定するものではないが、例えば、遷移金属触媒の配位子や、ゼオライトの製造用の有機構造指向剤(以下、「SDA」ともいう。)が挙げられる。本実施形態の四級アンモニウム塩(1)は、ゼオライト製造用のSDA、更には小細孔ゼオライト製造用のSDA、また更にはCHA型ゼオライト製造用のSDAとして使用されることがより好ましい。
【0074】
本実施形態の四級アンモニウム塩(1)を使用するゼオライトの製造方法として、一般式(1)で表されるテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩を含む有機構造指向剤、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源及び水を含む組成物を結晶化させる結晶化工程、を有することを特徴とするゼオライトの製造方法が挙げられる。
【0075】
以下、本実施形態の四級アンモニウム塩(1)をSDAとして使用するゼオライトの製造方法として、小細孔ゼオライトであるCHA型ゼオライトの製造方法を一例に挙げ、説明する。
【0076】
本実施形態のCHA型ゼオライトの製造方法は、一般式(1)で表されるテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩を含む有機構造指向剤、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源及び水を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化させる結晶化工程、を有することを特徴とする。
【0077】
「アルミノシリケート」は、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とが酸素(O)を介したネットワークの繰返しからなる構造を有する複合酸化物である。アルミノシリケートのうち、その粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンにおいて、結晶性のXRDピークを有するものが「結晶性アルミノシリケート」であり、結晶性のXRDピークを有さないものが「非晶質アルミノシリケート」である。
【0078】
本実施形態におけるXRDパターンはCuKα線を線源として測定され、測定条件として、以下の条件が挙げられる。
【0079】
加速電流・電圧 : 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : 連続スキャン
スキャン条件 : 40°/分
測定範囲 : 2θ=3°から43°
発散縦制限スリット: 10mm
発散/入射スリット: 1°
受光スリット : open
受光ソーラースリット : 5°
検出器 : 半導体検出器(D/teX Ultra)
フィルター : Niフィルター
結晶性のXRDピークは、一般的な解析ソフト(例えば、SmartLab StudioII、リガク社製)を使用したXRDパターンの解析においてピークトップの2θが特定され検出されるピークである。特に限定されるものではないが、XRDピークの半値幅(半値全幅)としては、2θ=0.50°以下を例示できる。XRDパターンの解析条件として、以下の条件が挙げられる。
【0080】
フィッティング条件 :自動、バックグラウンドを精密化
分散型擬Voigt関数(ピーク形状)
バックグラウンド除去方法 :フィッティング方式
Kα2除去方法 :Kα1/Kα2比=0.497
平滑化方法 :B-Spline曲線
平滑化条件 :二次微分法、σカット値=3、χ閾値=1.5
アルミナに対するシリカのモル比等、本実施形態における組成は、一般的な誘導結合プラズマ発光分析装置(例えば、OPTIMA7300DV、PERKIN ELMER社製)によるICP分析により測定すればよい。
【0081】
「ゼオライト」とは、骨格原子(以下、「T原子」ともいう。)が酸素(O)を介した規則的構造を有する化合物であり、T原子が金属原子からなる化合物である。ゼオライトには、T原子として、2以上の金属原子が含有されていてもよい。なお、本実施形態において金属原子とは、金属元素からなる原子と半金属元素からなる原子の両方を含む概念である。
【0082】
「ゼオライト類似物質」とは、T原子が酸素を介した規則的構造を有する化合物であり、T原子として少なくとも金属以外の原子(以下、「非金属原子」ともいう)を含む化合物である。一例としては、ゼオライト類似物質には、T原子として、金属原子と非金属原子が含有される。具体的なゼオライト類似物質として、アルミノフォスフェート(AlPO)やシリコアルミノフォスフェート(SAPO)など、T原子としてリン(P)を含む複合リン化合物が例示できる。本実施形態におけるゼオライトは、T原子としてリンを含まないことが好ましく、リンを含まないことがより好ましい。
【0083】
ゼオライトやゼオライト類似物質における「規則的構造(以下、「ゼオライト構造」ともいう。)」とは、国際ゼオライト学会(International ZeoliteAssociation)のStructure Commissionが定めている構造コード(以下、単に「構造コード」ともいう。)で特定される骨格構造である。例えば、CHA構造は構造コード「CHA」として特定される骨格構造である。Collection of simulated XRD powder patterns for zeolites,Fifth revised edition(2007)に記載された各構造のXRDパターン(以下、「参照パターン」ともいう。)との対比によって、ゼオライト構造は同定できる。ゼオライト構造に関し、骨格構造、結晶構造又は結晶相はそれぞれ同義で使用される。
【0084】
「類縁構造」とは、ゼオライト構造に含まれる構造ユニット(Building Unit)が連結して構成される構造であり、なおかつ、参照パターンとの対比においてゼオライト構造として同定されない構造である。
【0085】
本実施形態において、「CHA型ゼオライト」など、「~型ゼオライト」は、当該構造コードのゼオライト構造を有するゼオライトを意味し、好ましくは当該構造コードのゼオライト構造のみを有するゼオライトを意味し、より好ましくは当該構造コードのゼオライト構造を有する結晶性アルミノシリケートを意味し、更に好ましくは当該構造コードのゼオライト構造を有する結晶性アルミノシリケートを意味する。
【0086】
シリカ源は、シリカ(SiO2)又はその前駆体となるケイ素化合物であり、例えば、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート、沈殿法シリカ、ヒュームドシリカ、結晶性アルミノシリケート及び非晶質アルミノシリケートの群から選ばれる1以上が挙げられ、結晶性アルミノシリケート、非晶質アルミノシリケート及び珪酸ナトリウムの群から選ばれる1以上であることが好ましい。
【0087】
アルミナ源は、アルミナ(Al2O3)又はその前駆体となるアルミニウム化合物であり、例えば、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、非晶質アルミノシリケート、結晶性アルミノシリケート及び金属アルミニウムの群から選ばれる1以上が挙げられ、硫酸アルミニウム、結晶性アルミノシリケート及び非晶質アルミノシリケートの群から選ばれる1以上であることが好ましい。
【0088】
有機構造指向剤は、一般式(1)で表されるテトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩を含む。テトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウムカチオンがゼオライトを指向するSDAとして機能する。
【0089】
有機構造指向剤は、本実施形態の四級アンモニウム塩(1)を含んでいればよく、また、本実施形態の四級アンモニウム塩(1)のみであってもよい。一方、原料組成物は、CHA型ゼオライトを指向する公知のSDAや他のアンモニウム塩を含んでいてもよい。例えば、CHA型ゼオライトを指向する公知のSDAとして、トリアルキルアダマンタンアンモニウムカチオン、トリアルキルシクロヘキシルアンモニウムカチオン及びキヌクリジンカチオンの群から選ばれる1以上、等が挙げられる。
【0090】
アルカリ源は、アルカリ金属元素を含む化合物であればよく、アルカリ金属の水酸化物及びハロゲン化物の少なくともいずれかが挙げられる。アルカリ金属はナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる1以上、ナトリウム及びカリウムの少なくともいずれか、ナトリウム及びカリウム、若しくは、ナトリウムが好ましい。
【0091】
水は、純水や、シリカ源等の他の出発物質の溶媒として水や構造水であることが挙げられる。
【0092】
本実施形態において、原料組成物は以下に示す組成のいずれかの組合せを有することが好ましい。
SiO2/Al2O3 : 5以上、7以上又は10以上、かつ
100以下、50以下又は30以下
SDA/SiO2 : 0.01以上、0.06以上又は0.10以上、かつ、
2.0以下、0.50以下又は0.30以下
M/SiO2 : 0.06以上、0.10以上又は0.15以上、かつ、
1.0以下、0.60以下又は0.40以下
OH/SiO2 : 0.10以上、0.15以上、0.20以上、0.25以上又は0.30以上、かつ、
1.0以下、0.80以下又は0.70以下
H2O/SiO2 : 5以上、6以上、7以上、8以上又は10以上、かつ、
60以下、30以下又は20以下
【0093】
上記組成において、SiO2/Al2O3は原料組成物中のアルミナに対するシリカのモル比であり、OH/SiO2、M/SiO2、SDA/SiO2及びH2O/SiO2は、それぞれ、原料組成物中のシリカに対する、水酸化物イオン、アルカリ金属、SDA又は水のモル比である。Mはアルカリ金属であり、アルカリ金属がナトリウムである場合、又は、アルカリ金属がナトリウムとカリウムである場合、M/SiO2は、それぞれ、Na/SiO2、又は(Na+K)/SiO2となる。また、SDAは4-トリメチルアンモニオメチルテトラヒドロピランカチオン(以下、「TMAMTHP+」ともいう。)であることが好ましい。
【0094】
本実施形態において、原料組成物は種晶を含んでいてもよい。種晶を含む場合、原料組成物の種晶の含有量は、原料組成物(種晶を含まない)中のケイ素をシリカ(SiO2)換算した質量に対する種晶中のケイ素をシリカ換算した質量割合として、0質量%超又は0.5質量%以上であり、10.0質量%以下、5.0質量%以下又は3.5質量%以下であることが挙げられる。
【0095】
種晶は、結晶構造中に奇数員環を含まないゼオライトであればよく、例えば、FAU、CHA、AEI、LEV、AFX、ERI、OFF、LTL及びGMEの群から選ばれるいずれかゼオライト構造を有するゼオライトであることが好ましく、CHA、AEI、LEV、AFX及びERIの群から選ばれるいずれかのゼオライト構造を有するゼオライトであることがより好ましく、CHA型ゼオライトであることが更に好ましい。
【0096】
本実施形態において、結晶化工程では原料組成物を結晶化する。結晶化は、原料組成物を水熱処理すればよい。水熱処理は、原料組成物を密閉耐圧容器に入れ、これを加熱すればよい。水熱処理条件として以下のものを挙げることができる。
処理温度 :80℃以上又は140℃以上、かつ、190℃以下又は180℃以下
処理時間 :2時間以上500時間以下
処理圧力 :自生圧
【0097】
結晶化における原料組成物の状態は任意であり、静置下又は攪拌下のいずれでもよいが、攪拌下であることが好ましい。
【0098】
本実施形態のゼオライト製造方法は、洗浄工程、乾燥工程、SDA除去工程、又は、アンモニウム処理工程などの後処理工程を含んでもよい。
【0099】
洗浄工程は、ゼオライトを洗浄する。洗浄方法は任意であるが、ゼオライトを十分量の純水と接触させることが例示できる。
【0100】
乾燥工程は、ゼオライトから水分を除去する。乾燥方法は任意であるが、ゼオライトを、大気中、100℃以上、150℃以下で2時間以上処理することが例示できる。
【0101】
SDA除去工程は、ゼオライトに残存するSDAを除去する。SDA除去方法として、大気中、400℃以上700℃以下で、1~2時間処理することが挙げられる。
【0102】
アンモニウム処理工程は、ゼオライトからのアルカリ金属の除去、及び、カチオンタイプをアンモニウム型(以下、「NH4
+型」とする。)にする。アンモニウム処理方法は、アンモニウムイオンを含有する水溶液とゼオライトと接触させることが挙げられる。なお、NH4
+型のゼオライトを、熱処理し、カチオンタイプがプロトン型(以下、「H+型」とする。)のゼオライトとしてもよい。具体的な熱処理条件として、大気中、500℃、1~2時間が例示できる。
【0103】
以上、小細孔ゼオライトとしてCHA型ゼオライトを例示して、本実施形態の四級アンモニウム塩(1)を使用したゼオライトの製造方法を説明したが、CHA型ゼオライト以外のゼオライト、例えば、他の小細孔ゼオライト、すなわち最大細孔が酸素8員環以下のゼオライト構造を有するゼオライトであってCHA型ゼオライト以外のものの製造において、本実施形態の四級アンモニウム塩(1)をSDAとして使用する場合、上記の原料組成物の組成及び結晶化条件を適宜設定すればよい。
【0104】
本実施形態の製造方法により得られるゼオライト(以下、「本ゼオライト」ともいう。)は任意であるが、小細孔ゼオライトであることが好ましい。
【0105】
本ゼオライトの一例として、CHA型ゼオライトが挙げられる。CHA型ゼオライトは、SiO2/Al2O3比は5以上又は8以上であり、50以下、30以下又は15以下であること、平均結晶粒径が0.05μm以上又は0.1μm以上であり、0.8μm以下、0.5μm以下又は0.35μm以下であること、が例示できる。
【0106】
好ましい本ゼオライトとして、その粉末X線回折パターンにおいて、少なくとも以下の粉末X線回折ピークを有するゼオライト(以下、「ZTS-7」ともいう。)が挙げられる。
【0107】
【0108】
ZTS-7は、上述のXRDピークに加え、以下のXRDピークを含んでいてもよい。
【0109】
【0110】
なお、ZTS-7のXRDパターンにおいて、相対ピーク強度が10%未満のXRDピークを含んでいてもよく、これらのXRDピークは骨格構造の同定において考慮しなくてもよい。
【0111】
ZTS-7はCHA型ゼオライトであり、なおかつ、従来のCHA型ゼオライトとは異なるXRDピークを有する。これにより、SiO2/Al2O3比が低い場合であても、従来のCHA型ゼオライトと比べて、耐熱性が高くなりやすい。
【0112】
ZTS-7のSiO2/Al2O3比は、5以上、7以上又は8以上であり、50以下、30以下又は15以下であることが挙げられる。SiO2/Al2O3比が高くなるほど耐熱性が高くなる傾向があるが、ZTS-7は、SiO2/Al2O3比が13以下、更には10以下であっても、同程度のSiO2/Al2O3比を有する従来のCHA型ゼオライト以上の耐熱性を示す。
【0113】
ZTS-7は、個々の一次粒子より形成された結晶粒子、及び、一次粒子同士が化学的に凝集して形成された結晶粒子(アグリゲート:aggregate)の少なくともいずれか、を含むことが挙げられる。本実施形態の結晶粒子の形状は任意である。ZTS-7の結晶粒子として、菱面体及び立方体(全ての辺の長さが等しい六面体)のいずれかの形状を有した結晶粒子、菱面体又は立方体の少なくともいずれかの形状を有する一次粒子の一部の面を含んだ多面体状の結晶粒子、及び、不定形の結晶粒子、の群から選ばれる少なくとも1以上が例示できる。ZTS-7の結晶粒子は、菱面体又は立方体の少なくともいずれかの形状を有する一次粒子の一部の面を有さない結晶粒子であってもよく、例えば、球状に近い不定形状の結晶粒子、更には略球状の結晶粒子を含むことが挙げられる。
【0114】
ZTS-7に含まれる結晶粒子において確認される菱面体及び立方体は、の一辺の長さが0.1μm以上又は0.15μm以上であり、また、0.7μm以下又は0.5μm以下であることが例示できる。
【0115】
ZTS-7の平均結晶粒径は0.05μm以上、0.1μm以上又は0.3μm以上であり、また、2.0μm以下、1.0μm以下、0.8μm以下、0.5μm以下又は0.35μm以下であること、が例示できる。
【0116】
ZTS-7は、フッ素(F)やリン(P)を含まないことが好ましく、ZTS-7のフッ素及びリンの含有量は、それぞれ、測定限界以下(例えば、フッ素含有量が1ppm以下、リン含有量が1ppm以下、若しくは、フッ素含有量及びリン含有量が1ppm以下)であることが挙げられる。
【0117】
ZTS-7は、活性金属元素を含有していてもよい。活性金属元素は、遷移金属元素であることが好ましく、周期表の8族、9族、10族及び11族の群から選ばれる1以上の元素、更には白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、鉄(Fe)、銅(Cu)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)及びインジウム(In)の群から選ばれる1以上、また更にはコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)及び銅(Cu)の群から選ばれる1以上の金属元素、また更には鉄及び銅の少なくともいずれか、また更には銅、である。
【0118】
活性金属元素は、T原子以外の状態、例えば、細孔及びイオン交換サイトの少なくともいずれかに担持されている、など、ゼオライト骨格外に担持された状態で含有されていることが好ましい。
【0119】
ZTS-7は、活性金属元素の含有量が2.5質量%以上、3.0質量%以上又は3.5質量%以上であり、6.5質量%以下、6.0質量%以下又は5.5質量%以下であればよい。
【0120】
本ゼオライトの製造方法により得られるゼオライトは、公知のゼオライトの用途に適用することができ、例えば、吸着剤、触媒、吸着剤の担体又は触媒担体など、公知のゼオライトの用途に使用することができる。また、窒素酸化物還元触媒、更にはSCR触媒、又は、これらの担体としても使用することができる。
【実施例0121】
次に、本実施形態の実施例を示す。しかしながら、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
(H1-NMRおよびC13-NMR)
JEOL ECZ400(400MHz、日本電子社製)を使用して、試料のH1-NMRおよびC13-NMRスペクトルを測定した。測定溶媒として、重クロロホルム(CDCl3)又は重水(D2O)を用い、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて、試料のH1-NMRスペクトルを測定した。測定データは、化学シフト、多重度、カップリング定数(Hz)及び積分値の順に記載した。
(粉末X線回折)
一般的なX線回折装置(装置名:UltimaIV Protectus 、リガク社製)を使用し、試料のXRDを測定した。測定条件は以下のとおりである。
加速電流・電圧 : 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : 連続スキャン
スキャン条件 : 40°/分
測定範囲 : 2θ=3°から43°
発散縦制限スリット: 10mm
発散/入射スリット: 1°
受光スリット : open
受光ソーラースリット : 5°
検出器 : 半導体検出器(D/teX Ultra)
フィルター : Niフィルター
試料測定の結果得られたXRDのパターンと参照パターンとを比較することによって、試料のゼオライト構造を同定した。
【0122】
(組成分析、ケイ素、アルミニウムの定量)
一般的な誘導結合プラズマ発光分析装置(装置名:OPTIMA3300DV、PERKIN ELMER社製)を用いて、試料の組成分析を行った。試料をフッ酸と硝酸の混合溶液に溶解させ、測定溶液を調製した。得られた測定溶液を装置に投入して試料の組成を分析した。得られたケイ素(Si)、アルミニウム(Al)のモル濃度から、SiO2/Al2O3を算出した。
【0123】
合成例1
【0124】
【0125】
ホルムアルデヒド(38%水溶液,46g,0.56mol)を反応容器に投入して0℃に氷冷し、これに4-アミノメチルテトラヒドロピラン(フルオロケム社製,25g,0.22mol)を30分かけて滴下し、さらにギ酸(98%水溶液,55g,1.2mol)を30分かけて滴下した。滴下後、85℃に昇温し、24時間攪拌した。その間、二酸化炭素の発泡が観測された。得られた反応液について、氷浴を用いて冷却を行い、水溶液の液性がpHを11になるまで48%のNaOH水溶液を添加した。テトラヒドロフランおよび酢酸エチルで抽出した後に、抽出液に無水硫酸ナトリウムを添加し、撹拌した後、固形分をろ別し、液状組成物を得た。回転式エバポレーターで液状組成物からテトラヒドロフランおよび酢酸エチルを除去し、残った単黄色オイルを減圧蒸留することで、4-ジメチルアミノメチルテトラヒドロピランを無色透明オイルとして得た(23.8g,収率76%)。
【0126】
4-ジメチルアミノメチルテトラヒドロピランのNMRスペクトル:1H-NMR(400MHz,D2O,20℃):δ3.76(dd,J=12.0Hz,J=4.0Hz,2H),3.27(ddd,J=12.0Hz,J=12.0Hz,J=4.0Hz,2H),2.01(d,J=7.6Hz,2H),1.96(s,6H),1.64(m,1H),1.46(brd,J=12.0Hz,2H),1.03(ddd,J=12.0Hz,J=12.0Hz,J=4.0Hz,2H)。13C{1H}-NMR(100MHz,D2O):δ67.51(2C),64.86(1C),44.36(2C),31.60(1C),30.66(2C)。
【0127】
(テトラヒドロピラニル基を有する四級アンモニウム塩の合成)
実施例1-1
【0128】
【0129】
合成例1で得られた4-ジメチルアミノメチルテトラヒドロピラン(23.8g,0.166mol)のジクロロメタン溶液(100mL)を反応容器に投入して0℃に氷冷し、ここにヨードメタン(75g,0.52mol)を30分かけて滴下した。前記の滴下後、50℃に昇温し、24時間攪拌した。次いで、得られた反応液について、氷浴を用いて冷却を行い、反応液中に析出した白色固体をろ取した。ろ取物をエタノールで洗浄することで、白色固体状の4-トリメチルアンモニオメチルテトラヒドロピラン=ヨージド(37.6g,収率79%)を得た。
【0130】
4-トリメチルアンモニオメチルテトラヒドロピラン=ヨージドのNMRスペクトル:1H-NMR(400MHz,D2O,20℃):δ3.84(dd,J=11.2Hz,J=3.2Hz,2H),3.44(dd,J=12.0Hz,J=12.0Hz,2H),3.19(d,J=5.2Hz,2H),3.05(s,9H),2.19(m,1H),1.72(brd,J=12.0Hz,2H),1.40(ddd,J=12.0Hz,J=12.0Hz,J=3.2Hz,2H)。13C{1H}-NMR(100MHz,D2O):δ72.10(1C),67.04(2C),53.69(3C),32.01(2C),29.39(1C)。
【0131】
実施例1-2
【0132】
【0133】
上記の実施例1-1で得られた4-トリメチルアンモニオメチルテトラヒドロピラン=ジヨージド(35g,0.12mol)の水溶液(100mL)に対し、陰イオン交換樹脂(三菱ケミカル社製,ダイヤイオン(登録商標)SA10A,OH-型,400cm3)を添加し、12時間静置した。ろ過により前記の陰イオン交換樹脂を分離した後、水溶液の総重量が75gになるまで回転式エバポレーターで濃縮を行うことで、4-トリメチルアンモニオメチルテトラヒドロピラン=ヒドロキシド(以下、「TMAMTHPOH」ともいう。)を29重量%水溶液として得た(収率96%)。
【0134】
(CHA型ゼオライトの合成)
実施例2-1
実施例1-2で得られたTMAMTHPOHの29質量%水溶液、SiO2/Al2O3が10.4の非晶質アルミノシリケート、48%水酸化ナトリウム及び水を混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。なお、以下の組成におけるSDAはTMAMTHP+である。
【0135】
SiO
2/Al
2O
3 = 10.4
SDA/SiO
2 = 0.17
Na/SiO
2 = 0.22
OH/SiO
2 = 0.39
H
2O/SiO
2 = 14
得られた原料組成物に、種晶としてCHA型ゼオライトを2.0質量%となるように添加及び混合した後、これを密閉容器に充填し、160℃で72時間水熱処理して、CHA型ゼオライトの単一相からなる結晶化物を得た。得られた結晶化物を固液分離で回収した後、十分量の純水で洗浄し、これを大気中で乾燥した後、600℃で焼成して本実施例のCHA型ゼオライトを得た。乾燥後の結晶化物のXRDパターンを
図1に、相対ピーク強度が10%以上のXRDピークを下表に示した。
【0136】
【0137】
本実施例のゼオライトは、CHA型ゼオライトの単一相からなるZTS-7であり、SiO
2/Al
2O
3が9.5、Na/Alが0.55、及び平均結晶粒径が0.31μmであった。本実施例のCHA型ゼオライトのSEM観察図を
図2に示す。本実施例のゼオライトは、菱面体形状を有しており、CHA構造の一次粒子が、化学的凝集することなく成長した結晶粒子であった。また、当該菱面体の一辺の長さは0.18~0.48μmであった。
【0138】
実施例2-2
原料組成物として、以下のモル組成を有する原料組成物を用いたこと以外は実施例2-1と同様な方法で本実施例のゼオライトを得た。なお、以下の組成におるSDAはTMAMTHP+である。
【0139】
SiO2/Al2O3 = 13.2
SDA/SiO2 = 0.15
Na/SiO2 = 0.20
OH/SiO2 = 0.35
H2O/SiO2 = 14
本実施例のゼオライトはCHA型ゼオライトの単一相からなるZTS-7であり、SiO2/Al2O3が12.4、Na/Alが0.44であり、平均粒子径は0.31μmであった。
【0140】
乾燥後の結晶化物のXRDパターンを
図3に、相対ピーク強度が10%以上のXRDピークを下表に、本実施例のCHA型ゼオライトのSEM観察図を
図4に示す。
【0141】
【0142】
実施例3
実施例2-2で得られたCHA型ゼオライトに、硝酸銅水溶液を滴下した後、乳鉢で10分間混合した。混合後、大気中で、110℃、一晩乾燥させた後、大気中、550℃で1時間焼成することで銅を4.7質量%担持した金属含有CHA型ゼオライト(銅担持CHA型ゼオライト)とした。
【0143】
銅担持CHA型ゼオライトを成形及び破砕し、凝集径12~20メッシュの凝集粒子とした。凝集粒子3mLを常圧固定床流通式反応管(以下、単に「反応管」ともいう。)に充填した後、以下の条件で水熱耐久処理した。
【0144】
処理雰囲気 :水分含有量10体積%の空気流通雰囲気
空間速度 :9,000h-1
処理温度 :800℃
処理時間 :16時間
試料の窒素酸化物還元率は、以下に示すアンモニアSCR方法により測定した。
【0145】
プレス成形後、12メッシュ~20メッシュに整粒した試料1.5mLを反応管に充填した。その後、以下の条件で処理ガスを当該反応管に流通させた。
【0146】
処理ガス組成 :NO 200ppm
NH3 200ppm
O2 10容量%
H2O 3容量%
残部 N2
処理ガスの流量 :1.5L/min
空間速度(SV) :60,000hr-1
反応管に流通させた処理ガス中の窒素酸化物濃度(200ppm)に対する、触媒流通後の処理ガス中の窒素酸化物濃度(ppm)を求め、以下の式に従って、窒素酸化物還元率を求めた。
【0147】
窒素酸化物還元率(%)={1-(接触後の処理ガス中の窒素酸化物濃度
/接触前の処理ガス中の窒素酸化物濃度)}×100
耐久処理後試料の評価結果を
図5に示す。また、参考例として、SDAとしてN,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウムカチオンを含む原料組成物を結晶化して得られた従来のCHA型ゼオライト(SiO
2/Al
2O
3=13.0、平均粒子径=1.45μm)を使用したこと以外は同様な方法で、同量の銅を担持して得られた銅担持CHA型ゼオライトの評価結果を合わせて示した。
【0148】
図5から明らかなように、実施例の銅担持CHA型ゼオライトは、SiO
2/Al
2O
3比が高い従来のCHA型ゼオライトに比べて、400℃以上の高温域における窒素酸化物還元特性が高いことが確認できる。