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特開2022-155509袋入り粉末試料、袋入り粉末試料の製造方法、および透過X線吸収分光測定方法
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  • 特開-袋入り粉末試料、袋入り粉末試料の製造方法、および透過X線吸収分光測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155509
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】袋入り粉末試料、袋入り粉末試料の製造方法、および透過X線吸収分光測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/083 20180101AFI20221005BHJP
【FI】
G01N23/083
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036541
(22)【出願日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2021057219
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 奈織美
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA12
2G001CA01
2G001MA04
2G001QA02
(57)【要約】
【課題】粉末試料に対する透過X線吸収分光測定において、安全かつ作業効率を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】透過X線吸収分光測定用の袋入り粉末試料であって、内部に所定の大きさの第1空間が設けられた樹脂製の袋と、第1空間に封入された粉末試料と、を有し、第1空間の中央部に存在する前記粉末試料は、厚みが一定である、袋入り粉末試料。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過X線吸収分光測定用の袋入り粉末試料であって、
内部に所定の大きさの第1空間が設けられた樹脂製の袋と、
前記第1空間に封入された粉末試料と、を有し、
前記第1空間の中央部に存在する前記粉末試料は、厚みが一定である、袋入り粉末試料。
【請求項2】
前記厚みは、0.8mm以上6mm以下である、請求項1に記載の袋入り粉末試料。
【請求項3】
前記第1空間は平面視で長方形の形状であり、前記第1空間の横幅は、10mm以上15mm以下であり、前記第1空間の縦幅は、10mm以上20mm以下である、請求項1または請求項2に記載の袋入り粉末試料。
【請求項4】
前記粉末試料は、成型されていない、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の袋入り粉末試料。
【請求項5】
前記第1空間における、前記粉末試料の充填率は、90%以上である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の袋入り粉末試料。
【請求項6】
前記第1空間は、前記袋が熱圧着されて形成されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の袋入り粉末試料。
【請求項7】
前記粉末試料は、遷移金属の酸化物を含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の袋入り粉末試料。
【請求項8】
透過X線吸収分光測定用の袋入り粉末試料の製造方法であって、
樹脂製の袋に対して熱圧着をして、第1開口部を設けた第1空間を形成する第1熱圧着工程と、
前記第1開口部から、前記第1空間に粉末試料を充填する粉末試料充填工程と、
前記第1開口部を閉じるように熱圧着をして、前記第1空間に前記粉末試料を封入する第2熱圧着工程と、を有し、
前記第1空間の中央部に存在する前記粉末試料は、厚みが一定である、袋入り粉末試料の製造方法。
【請求項9】
前記第1熱圧着工程では、前記第1開口部に連結され、前記第1開口部よりも広い第2開口部を設けた第2空間を形成する、請求項8に記載の袋入り粉末試料の製造方法。
【請求項10】
樹脂製の袋に対して熱圧着をして、第1開口部を設けた第1空間を形成する第1熱圧着工程と、
前記第1開口部から、前記第1空間に粉末試料を充填する粉末試料充填工程と、
前記第1開口部を閉じるように熱圧着をして、前記第1空間に前記粉末試料を封入する第2熱圧着工程と、
前記粉末試料を前記袋に入れたまま、前記第1空間の中央部の厚み方向に対してX線を透過させることにより、前記粉末試料の透過X線吸収分光測定を行う工程と、を有する、透過X線吸収分光測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋入り粉末試料、袋入り粉末試料の製造方法、および透過X線吸収分光測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透過X線吸収分光法は、X線を試料前面に入射し、試料中をX線が透過し、試料裏面から出射してくるX線を検出し、入射X線強度と出射X線強度の比の対数で得られる吸光度を、入射X線エネルギーを振りながら測定する方法であり、試料中の着目元素の電子状態や配位構造の解析に幅広く用いられている。
【0003】
透過X線吸収分光法を行う場合、X線透過による吸収が最適になるように、試料の厚さを一定かつ所定の値にする必要がある。
【0004】
粉末試料の透過X線吸収分光測定においては、粉末試料をペレット化して測定位置に設置する方法が一般的に用いられる。また、特許文献1には、粉末試料を収容する開口が形成された測定用治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-183939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
粉末試料に対する透過X線吸収分光測定において、粉末試料をペレット化する方法は、試料のX線入射方向の厚さが、X線の照射される面積内で一定かつ測定時間内で一定であることにより、X線の吸収率データを安定して得られるという利点がある。一方で、ペレット成型には時間がかかり、成型が不充分であると、ペレットが割れ、作業効率を著しく悪化させていた。
【0007】
また、粉末試料が有害物を含む場合や、外気と触れて変質するような場合には、粉末試料をペレット化した後、樹脂製の袋で真空パックする方法も一般的に用いられるが、真空パック時にもペレットが割れる可能性があり、作業効率を悪化させていた。
【0008】
本発明の目的は、粉末試料に対する透過X線吸収分光測定において、安全かつ作業効率を向上させることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、
透過X線吸収分光測定用の袋入り粉末試料であって、
内部に所定の大きさの第1空間が設けられた樹脂製の袋と、
前記第1空間に封入された粉末試料と、を有し、
前記第1空間の中央部に存在する前記粉末試料は、厚みが一定である、袋入り粉末試料である。
【0010】
本発明の第2の態様は、
前記厚みは、0.8mm以上6mm以下である、上記第1の態様に記載の袋入り粉末試料である。
【0011】
本発明の第3の態様は、
前記第1空間は平面視で長方形の形状であり、前記第1空間の横幅は、10mm以上15mm以下であり、前記第1空間の縦幅は、10mm以上20mm以下である、上記第1または第2の態様に記載の袋入り粉末試料である。
【0012】
本発明の第4の態様は、
前記粉末試料は、成型されていない、上記第1から第3のいずれか1つの態様に記載の袋入り粉末試料である。
【0013】
本発明の第5の態様は、
前記第1空間における、前記粉末試料の充填率は、90%以上である、上記第1から第4のいずれか1つの態様に記載の袋入り粉末試料である。
【0014】
本発明の第6の態様は、
前記第1空間は、前記袋が熱圧着されて形成されている、上記第1から第5のいずれか1つの態様に記載の袋入り粉末試料である。
【0015】
本発明の第7の態様は、
前記粉末試料は、遷移金属の酸化物を含む、上記第1から第6のいずれか1つの態様に記載の袋入り粉末試料である。
【0016】
本発明の第8の態様は、
透過X線吸収分光測定用の袋入り粉末試料の製造方法であって、
樹脂製の袋に対して熱圧着をして、第1開口部を設けた第1空間を形成する第1熱圧着工程と、
前記第1開口部から、前記第1空間に粉末試料を充填する粉末試料充填工程と、
前記第1開口部を閉じるように熱圧着をして、前記第1空間に前記粉末試料を封入する第2熱圧着工程と、を有し、
前記第1空間の中央部に存在する前記粉末試料は、厚みが一定である、袋入り粉末試料の製造方法である。
【0017】
本発明の第9の態様は、
前記第1熱圧着工程では、前記第1開口部に連結され、前記第1開口部よりも広い第2開口部を設けた第2空間を形成する、上記第8の態様に記載の袋入り粉末試料の製造方法である。
【0018】
本発明の第10の態様は、
樹脂製の袋に対して熱圧着をして、第1開口部を設けた第1空間を形成する第1熱圧着工程と、
前記第1開口部から、前記第1空間に粉末試料を充填する粉末試料充填工程と、
前記第1開口部を閉じるように熱圧着をして、前記第1空間に前記粉末試料を封入する第2熱圧着工程と、
前記粉末試料を前記袋に入れたまま、前記第1空間の中央部の厚み方向に対してX線を透過させることにより、前記粉末試料の透過X線吸収分光測定を行う工程と、を有する、透過X線吸収分光測定方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、粉末試料に対する透過X線吸収分光測定において、安全かつ作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る、袋入り粉末試料100の一例を示す概略構成図である。
図2図2は、図1のP-P線断面図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る、袋入り粉末試料100の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係る、第1熱圧着工程S101を示す概略図である。
図5図5は、本発明の第1実施形態に係る、粉末試料充填工程S102を示す概略図である。
図6図6は、本発明の第1実施形態に係る、第2熱圧着工程S103を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の一実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
<本発明の第1実施形態>
(1)袋入り粉末試料
まず、本実施形態の袋入り粉末試料100について説明する。本実施形態の袋入り粉末試料100は、透過X線吸収分光測定の測定位置にそのまま(つまり、袋10から粉末試料20を出さずに)設置し、測定を行うことができる。
【0023】
図1は、本実施形態の袋入り粉末試料100の一例を示す概略構成図である。図1に示すように、袋入り粉末試料100は、例えば、樹脂製の袋10と、粉末試料20(ハッチングで示す)と、を有している。透過X線吸収分光測定は、袋入り粉末試料100の厚み方向(図1の紙面に垂直な方向)に対してX線を透過させることにより、測定を行う。
【0024】
袋10は、ポリエチレン、ナイロン、ビニール等の樹脂材料からなり、例えば、内部に所定の大きさの第1空間Z1が設けられている。第1空間Z1は、例えば、平面視で長方形の形状である。また、袋10には、第1空間Z1の上部に、所定の大きさの第2空間Z2がさらに設けられていてもよい。第2空間Z2は、例えば、平面視で逆台形の形状である。
【0025】
袋10は、通気性を有さない材質からなることが好ましい。本明細書において、通気性を有さないとは、例えば、水蒸気透過度が10g/m・24hr以下、または、酸素透過度が444ml/m・MPa・24hr以下であることを意味する。本実施形態では、袋10がナイロンとポリエチレンの積層フィルム(厚さ75μm)からなる場合を説明する。
【0026】
第1空間Z1には、粉末試料20が封入(密封ともいう)されている。また、第2空間Z2には、粉末試料20が封入されていてもよいし、封入されていなくてもよい。図1では、第2空間Z2の一部(下部)に、粉末試料20が封入されている場合を示している。第2空間Z2を設けることで、粉末試料20を第1空間Z1に充填する際、作業性を向上させることができる。
【0027】
粉末試料20は、例えば、透過X線吸収分光測定における着目元素である固体材料を含む粉体である。着目元素は、吸収端エネルギーが4000eV以上の元素であることが好ましい。このような高エネルギー領域での測定において、袋10は、着目元素の分析結果に影響を与えないため、粉末試料20が袋入りの状態であっても、透過X線吸収分光測定を行うことができる。着目元素の吸収端エネルギーの上限は、特に限定されないが、装置の実用上、例えば、72keV以下である。また、粉末試料20は、窒化ホウ素等の希釈用粉体(X線の吸収率が低く、安定な粉体が好ましい)を含んでいてもよい。窒化ホウ素等で粉末試料20を希釈することで、粉末試料20中の着目元素の濃度を制御することができる。なお、本実施形態では、粉末試料20が、着目元素である遷移金属の酸化物を含む粉体である場合を説明する。
【0028】
粉末試料20は、ペレット等に成型されていない状態である。なお、本明細書において、粉末を成型するとは、例えば、型に充填した粉末へ圧力を加える工程を意味する。本実施形態の袋入り粉末試料100は、粉末試料20が第1空間Z1に封入されているため、粉末試料20を成型する必要がない。これにより、作業効率を向上させることができる。
【0029】
第1空間Z1の中央部30に存在する粉末試料20は、厚みが一定となっている。ここで、第1空間Z1の中央部30とは、透過X線吸収分光測定におけるX線の照射箇所に相当する。具体的には、中央部30は、例えば、平面視で第1空間Z1の幾何中心を中心とした直径2mmの領域としてもよい。また、本明細書において、厚みが一定とは、完全に厚みが一定である場合の他、±0.1mm以下(または、厚みの平均値から±5%以下)の微差(変動幅)がある場合も含むものとする。本実施形態の袋入り粉末試料100は、X線の照射箇所に相当する中央部30に存在する粉末試料20の厚みが一定になっており、かつ、測定中に厚みが変化することもないため、X線の吸収率データを安定して得ることができる。
【0030】
中央部30に存在する粉末試料20の厚みは、例えば、0.8mm以上6mm以下とすることが好ましい。粉末試料20の厚みが0.8mm未満では、粉末試料20の厚みを一定に制御するのが困難となる場合がある。これに対し、粉末試料20の厚みを0.8mm以上とすることで、粉末試料20の厚みを一定に制御しやすくなる。一方、粉末試料20の厚みが6mmを超えると、窒化ホウ素等の希釈用粉体のX線吸収が大きくなり過ぎる可能性がある。これに対し、粉末試料20の厚みを6mm以下とすることで、窒化ホウ素等の希釈用粉体のX線吸収を低減することができる。
【0031】
第1空間Z1が平面視で長方形の形状の場合、第1空間Z1の横幅Wは、例えば、10mm以上15mm以下とし、縦幅Lは、例えば、例えば、10mm以上20mm以下とすることが好ましい。第1空間Z1の横幅Wおよび縦幅Lが上記範囲外では、中央部30に存在する粉末試料20の厚みが不均一になる場合がある。これに対し、第1空間Z1の横幅Wおよび縦幅Lを上記範囲内とすることで、中央部30に存在する粉末試料20の厚みを一定に制御しやすくなる。
【0032】
第1空間Z1は、平面視で縦長長方形の形状であることが好ましい。つまり、W≦Lとすることが好ましい。横幅Wが縦幅Lより大きい場合、中央部30に存在する粉末試料20の厚みが不均一になりやすい。これに対し、横幅Wを縦幅L以下とすることで、中央部30に存在する粉末試料20の厚みを均一に保ちやすくなる。
【0033】
第1空間Z1における、粉末試料20の充填率は、90%以上(より好ましくは95%以上)であることが好ましい。第1空間Z1における、粉末試料20の充填率とは、例えば、平面視で第1空間Z1の面積に対して、粉末試料20が充填されている面積の割合としてもよい。粉末試料20の充填率を上記範囲内とすることで、中央部30に存在する粉末試料20の厚みを一定に制御しやすくなる。
【0034】
第1空間Z1(および第2空間Z2)は、例えば、袋10が熱圧着されて形成されていることが好ましい。図1においては、A-B、B-C、C-D、D-E、E-F、B-E、およびA-Fの7箇所が熱圧着されている場合を示している。これにより、粉末試料20が飛散するリスクを低減することができるため、安全性が高くなる。
【0035】
図2は、図1のP-P線断面図である。図2に示すように、第1空間Z1は、袋10が熱圧着されて形成されているため、第1空間Z1の周辺部では、粉末試料20の厚みが変化(周辺へ向かうほど減少)している。しかしながら、第1空間Z1の中央部30では、粉末試料20は平坦(つまり、厚みが一定)となっている。このように、本実施形態の袋入り粉末試料100は、粉末試料20の成型を行わなくても、少なくとも中央部30に存在する粉末試料20の厚みを一定に制御することができるため、作業効率を向上させることが可能となる。
【0036】
(2)袋入り粉末試料の製造方法
次に、本実施形態の袋入り粉末試料100の製造方法について説明する。
【0037】
図3は、本実施形態の袋入り粉末試料100の製造方法の一例を示すフローチャートである。図3に示すように、本実施形態の袋入り粉末試料100の製造方法は、例えば、第1熱圧着工程S101と、粉末試料充填工程S102と、第2熱圧着工程S103と、を有している。
【0038】
(第1熱圧着工程S101)
図4は、第1熱圧着工程S101を示す概略図である。第1熱圧着工程S101は、例えば、樹脂製の袋10に対して熱圧着をして、第1開口部40を設けた第1空間Z1を形成する工程である。樹脂製の袋10に対する熱圧着は、一般的な熱圧着機を用いて行うことができる。
【0039】
図4に示すように、第1熱圧着工程S101では、例えば、B-C、C-D、およびD-Eの3箇所に熱圧着をして、第1開口部40を設けた第1空間Z1を形成する。第1開口部40は、後述する粉末試料充填工程S102にて、第1空間Z1に粉末試料20を充填するための開口である。
【0040】
図4に示すように、第1熱圧着工程S101では、例えば、A-B、およびE-Fにも熱圧着をして、第1開口部40に連結された第2空間Z2を形成してもよい。第2空間Z2は、例えば、平面視で逆台形の形状とし、第1開口部40よりも広い第2開口部50を設けることが好ましい。これにより、後述する粉末試料充填工程S102にて、第1空間Z1に粉末試料20を充填することが容易になる。
【0041】
(粉末試料充填工程S102)
図5は、粉末試料充填工程S102を示す概略図である。図5に示すように、粉末試料充填工程S102は、例えば、第1開口部40から、第1空間Z1に粉末試料20を充填する工程である。
【0042】
図5に示すように、粉末試料充填工程S102にて充填する粉末試料20の量は、第1空間Z1の上端部(つまり、第1開口部40)を超えるようにすることが好ましい。これにより、第1空間Z1における、粉末試料20の充填率を充分高くすることができるため、中央部30に存在する粉末試料20の厚みを一定に制御しやすくなる。
【0043】
粉末試料充填工程S102では、第1空間Z1に粉末試料20を充填する際、必要に応じてタッピング(袋10を上下に振動させること)を行ってもよい。これにより、粉末試料20の流動性が低い場合でも、第1空間Z1における、粉末試料20の充填率を高くすることができる。
【0044】
粉末試料充填工程S102では、第1空間Z1に粉末試料20を充填した後、中央部30が盛り上がっている場合、袋10を指等で押し均し、中央部30に存在する粉末試料20の厚みを一定にすることが好ましい。
【0045】
(第2熱圧着工程S103)
図6は、第2熱圧着工程S103を示す概略図である。図6に示すように、第2熱圧着工程S103は、例えば、第1開口部40を閉じるように熱圧着をして、第1空間Z1に粉末試料20を封入する工程である。
【0046】
図6に示すように、第2熱圧着工程S103では、例えば、B-Eに熱圧着をして、第1開口部40を閉じる。これにより、第1空間Z1に粉末試料20が密封されるため、透過X線吸収分光測定中に粉末試料20の厚みが変化するリスクを低減することができる。なお、粉末試料充填工程S102にて、第1開口部40を超えるように粉末試料20を充填している場合、第1開口部40を閉じる際、必ずしも第1空間Z1の上端部(B-E)に熱圧着をしなくてもよい。具体的には、第2空間Z2において、粉末試料20が充填されている高さまでの所定の位置(例えば、G-H)に熱圧着をして、第1開口部40を閉じてもよい。このように熱圧着をすることで、第1空間Z1の上端部を熱圧着する場合と比べて、熱圧着する箇所よりも上部に存在する粉末試料20の量が少なくなるため、熱圧着がしやすくなる。
【0047】
図6に示すように、第2熱圧着工程S103では、第1開口部40を閉じる前に、第2開口部50も閉じるように、例えば、A-Fに熱圧着をして、第2空間Z2を密閉することが好ましい。これにより、粉末試料20が飛散するリスクを低減することができるため、安全性が高くなる。
【0048】
第2熱圧着工程S103では、第1開口部40(または第2開口部50)を閉じる際、第1空間Z1(および第2空間Z2)内を真空引きしながら、熱圧着をしてもよい。これにより、粉末試料20が外気と触れて変質する可能性を低減することができる。なお、真空引きは、一般的な真空ポンプを用いて行うことができる。
【0049】
以上の工程により、第1空間Z1の中央部30に存在する粉末試料20の厚みが一定である、袋入り粉末試料100を製造することができる。
【0050】
なお、本発明は、透過X線吸収分光測定方法としても適用可能である。この場合、例えば、袋入り粉末試料100を製造した後、粉末試料20を袋10に入れたまま、第1空間Z1の中央部30の厚み方向に対してX線を透過させることにより、粉末試料20の透過X線吸収分光測定を行う工程を行えばよい。
【0051】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0052】
(a)本実施形態の透過X線吸収分光測定用の袋入り粉末試料100は、内部に所定の大きさの第1空間Z1が設けられた樹脂製の袋10と、第1空間Z1に封入された粉末試料20と、を有し、第1空間Z1の中央部30に存在する粉末試料20は、厚みが一定である。粉末試料20が密封されているため、安全性が高く、ペレットを成型する必要がないため、バインダ等を添加する必要がなく、試料準備にかかる時間を短縮でき、作業効率が高い。また、X線の照射箇所内で一定の厚みを保持でき、測定の間に厚さが変化することもないため、X線の吸収率データは、ペレット化する方法と同様に安定して得ることが可能となる。
【0053】
(b)本実施形態の袋入り粉末試料100において、中央部30に存在する粉末試料20の厚みは、例えば、0.8mm以上6mm以下とすることが好ましい。粉末試料20の厚みが0.8mm未満では、粉末試料20の厚みを一定に制御するのが困難となる場合がある。これに対し、粉末試料20の厚みを0.8mm以上とすることで、粉末試料20の厚みを一定に制御しやすくなる。一方、粉末試料20の厚みが6mmを超えると、窒化ホウ素等の希釈用粉体のX線吸収が大きくなり過ぎる可能性がある。これに対し、粉末試料20の厚みを6mm以下とすることで、窒化ホウ素等の希釈用粉体のX線吸収を低減することができる。
【0054】
(c)本実施形態の袋入り粉末試料100において、第1空間Z1は、平面視で長方形の形状であり、第1空間Z1の横幅Wは、例えば、10mm以上15mm以下とし、縦幅Lは、例えば、例えば、10mm以上20mm以下とすることが好ましい。第1空間Z1の横幅Wおよび縦幅Lが上記範囲外では、中央部30に存在する粉末試料20の厚みが不均一になる場合がある。これに対し、第1空間Z1の横幅Wおよび縦幅Lを上記範囲内とすることで、中央部30に存在する粉末試料20の厚みを一定に制御しやすくなる。
【0055】
(d)本実施形態の袋入り粉末試料100において、第1空間Z1における、粉末試料20の充填率は、90%以上(より好ましくは95%以上)であることが好ましい。第1空間Z1における、粉末試料20の充填率とは、例えば、平面視で第1空間Z1の面積に対して、粉末試料20が充填されている面積の割合としてもよい。粉末試料20の充填率を上記範囲内とすることで、中央部30に存在する粉末試料20の厚みを一定に制御しやすくなる。
【0056】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0057】
例えば、上述の実施形態では、第1空間Z1は、袋10が熱圧着されて形成されている場合について説明したが、第1空間Z1の形成手法は、熱圧着に限定されない。例えば、予め所定の大きさの第1空間Z1が設けられた袋10を準備してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 袋
20 粉末試料
30 中央部
40 第1開口部
50 第2開口部
100 袋入り粉末試料
Z1 第1空間
Z2 第2空間
S101 第1熱圧着工程
S102 粉末試料充填工程
S103 第2熱圧着工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6