IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジミインコーポレーテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155531
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】研磨用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20221005BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
H01L21/304 622B
H01L21/304 622D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047812
(22)【出願日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2021057294
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 景智
【テーマコード(参考)】
5F057
【Fターム(参考)】
5F057AA02
5F057AA03
5F057AA21
5F057AA28
5F057BA12
5F057BA15
5F057BB03
5F057BB05
5F057BB16
5F057CA11
5F057CA25
5F057DA03
5F057DA26
5F057DA38
5F057EA01
5F057EA07
5F057EA16
5F057EA17
5F057EA21
5F057EA23
5F057EA26
5F057EA32
5F057EB08
5F057EB27
5F057EC30
5F057FA37
5F057FA39
(57)【要約】
【課題】酸性のpHを有するとともに、研磨後の研磨対象物の表面の不純物を低減させることができる研磨用組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、研磨粒子と、粘度が10mPa・s以上500mPa・s以下である湿潤剤と、を含み、かつpHが2以上6以下である研磨用組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨粒子と、粘度が10mPa・s以上500mPa・s以下である湿潤剤と、を含み、かつpHが2以上6以下である研磨用組成物。
【請求項2】
前記研磨粒子がスルホン酸固定化コロイダルシリカである、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記湿潤剤が、ポリビニルアルコールおよびポリ-N-ビニルアセトアミドの少なくとも一方である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
ポリエーテルをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記ポリエーテルがポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
キレート剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
前記キレート剤がクエン酸塩である、請求項6に記載の研磨用組成物。
【請求項8】
pH調整剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項9】
前記pH調整剤が硝酸である、請求項8に記載の研磨用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体業界では、大型半導体集積回路(Large-Scale Integrated circuits)を中心とした半導体製造プロセス技術の開発が絶えず進んでいる。近年、ウェーハの表面品質に対する要求の高まりに伴い、様々な研磨用組成物または研磨方法の技術が次々と生まれている。
【0003】
例えば、特許文献1は、研磨材と水溶性高分子とを含有するスラリー組成物を開示している。当該水溶性高分子の溶解度パラメータは9.0~14.0であり、研磨処理における当該水溶性高分子のpHは7~12であることが好ましい。特許文献1のスラリー組成物は、シリコンウェーハの鏡面研磨の研磨速度を損なうことなく、シリコンウェーハのエッジ近傍の平坦性を改善することができるとされている。
【0004】
特許文献2は、スルホン酸固定化コロイダルシリカと、N-ビニルピロリドン繰り返し単位を有する水溶性高分子とを含み、かつpHが2~8である化学機械研磨用水系分散体を開示している。特許文献2の水系分散体は、研磨半導体装置のアルミニウム配線層の研磨に用いる。当該水系分散体を研磨に使用することで、アルミニウム配線層のアルミニウム膜厚を制御し、研磨後のアルミニウム膜が薄くなりすぎないようにすることができるとされている。
【0005】
特許文献3は、シリカと水溶性高分子とを含有する研磨用組成物を開示している。当該水溶性高分子は、シリカに吸着することができ、当該研磨用組成物のpHは9.0~11.5である。特許文献3の研磨用組成物は、平滑性および低欠陥性を有する被研磨面を実現することができるとされている。
【0006】
特許文献4は、シリカ粒子と、窒素含有塩基性化合物と、水溶性高分子とを含有し、かつpHが8.0~12.0であるシリコンウェーハ用研磨液組成物を開示している。当該組成物は保存安定性に優れ、研磨速度を確保するとともに、シリコンウェーハの表面ヘイズと表面欠陥を低減させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2014/174365号
【特許文献2】特開2013-043893号公報
【特許文献3】国際公開第2017/126268号
【特許文献4】国際公開第2013/157554号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
研磨工程を行った半導体基板の表面には不純物(欠陥)が残る。不純物は、研磨用組成物に由来する研磨粒子、レジスト、界面活性剤などの残留物、研磨対象物(例えば、ケイ素含有材料、金属配線、プラグなど)自体が研磨されることによって生成する残留物、および研磨パッドから発生する破片などの有機物を含む。半導体基板の表面が上記の不純物で汚染されると、半導体の電気的特性に悪影響を及ぼし、デバイスの信頼性を低下させる。そのため、研磨工程後の研磨対象物(研磨された研磨対象物)の表面にある当該不純物を除去する改善策が求められる。
【0009】
上記特許文献1および2の組成物および水性分散液の機能は、研磨であり、研磨対象物の表面不純物の除去とは関係がない。また、上記特許文献3および4の組成物は、研磨対象物の表面の不純物(欠陥)を低減させることができるが、これら組成物のpHは塩基性である。上記特許文献では、酸性のpHを有するとともに、不純物を除去することができる研磨用組成物についての検討が欠けていた。
【0010】
上記のことに鑑み、本発明は、酸性のpHを有するとともに、研磨後の研磨対象物の表面上の不純物の量を低減させることができる研磨用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究および検討結果の分析を行った結果、下記の第1~第20実施形態の研磨用組成物により上記課題を解決できることを見出した。
【0012】
本発明の第1実施形態の研磨用組成物は、研磨粒子と、粘度が10mPa・s以上500mPa・s以下である湿潤剤を含み、かつpHが2以上6以下である。
【0013】
本発明の第2実施形態の研磨用組成物は、第1実施形態の研磨用組成物であって、前記研磨粒子がスルホン酸固定化コロイダルシリカである。
【0014】
本発明の第3実施形態の研磨用組成物は、第1実施形態または第2実施形態の研磨用組成物であって、前記湿潤剤がポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol、以下、「PVA」とも称する)またはポリ-N-ビニルアセトアミド(Poly(N-vinylacetamide)、以下、「PNVA」とも称する)である。
【0015】
本発明の第4実施形態の研磨用組成物は、第1実施形態~第3実施形態のいずれか一つの実施形態の研磨用組成物であって、ポリエーテルをさらに含む。
【0016】
本発明の第5実施形態の研磨用組成物は、第4実施形態の研磨用組成物であって、前記ポリエーテルがポリエチレングリコール(polyethylene glycol、以下、「PEG」とも称する)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol、以下、「PPG」とも称する)、またはポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体である。
【0017】
本発明の第6実施形態の研磨用組成物は、第1実施形態~第5実施形態のいずれか一つの実施形態の研磨用組成物であって、キレート剤をさらに含む。
【0018】
本発明の第7実施形態の研磨用組成物は、第6実施形態の研磨用組成物であって、前記キレート剤がクエン酸塩である。
【0019】
本発明の第8実施形態の研磨用組成物は、第1実施形態~第7実施形態のいずれか一つの実施形態の研磨用組成物であって、pH調整剤をさらに含む。
【0020】
本発明の第9実施形態の研磨用組成物は、第8実施形態の研磨用組成物であって、前記pH調整剤が硝酸である。
【0021】
本発明の第10実施形態の表面処理方法は、第1実施形態~第9実施形態のいずれか一つの実施形態の研磨用組成物を用いて研磨対象物を表面処理する工程を含む。
【0022】
本発明の第11実施形態の表面処理方法は、第10実施形態の表面処理方法であって、上記研磨対象物が疎水性材料を含む。
【0023】
本発明の第12実施形態の表面処理方法は、第10実施形態または第11実施形態の表面処理方法であって、上記表面処理により研磨対象物の表面上の不純物を除去できる。
【0024】
本発明の第13実施形態の表面処理装置は、第1実施形態~第9実施形態のいずれか一つの実施形態の研磨用組成物を用いて研磨対象物を表面処理する手段を含む。
【0025】
本発明の第14実施形態の表面処理装置は、第13実施形態の表面処理装置であって、上記研磨対象物が疎水性材料を含む。
【0026】
本発明の第15実施形態の表面処理装置は、第13実施形態または第14実施形態の表面処理装置であって、上記表面処理により研磨対象物の表面上の不純物を除去できる。
【0027】
本発明の第16実施形態の半導体の製造方法は、第13実施形態~第15実施形態のいずれか一つの実施形態の表面処理装置を使用する工程を含む。
【0028】
本発明の第17実施形態の半導体製造設備は、第13実施形態~第15実施形態のいずれか一つの実施形態の表面処理装置を含む。
【0029】
本発明の第18実施形態の使用は、第1実施形態~第9実施形態のいずれか一つの実施形態の研磨用組成物を表面処理に用いる。
【0030】
本発明の第19実施形態の使用は、第18実施形態の使用であって、上記表面処理の研磨対象物は疎水性材料を含む。
【0031】
本発明の第20実施形態の使用は、第18実施形態または第19実施形態の使用であって、上記表面処理により研磨対象物の表面上の不純物を除去できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、酸性のpHを有するとともに、研磨後の研磨対象物の表面の不純物を低減させることができる研磨用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。
【0034】
[研磨用組成物]
本発明の研磨用組成物は、研磨粒子と、粘度が10mPa・s以上500mPa・s以下である湿潤剤と、を含み、かつpHが2以上6以下である。
【0035】
[研磨粒子]
本発明の研磨用組成物は、研磨粒子を含む。研磨粒子は、無機粒子および有機粒子のいずれかであってもよい。無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化セリウム、酸化チタンなどの金属酸化物からなる粒子が挙げられる。有機粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)粒子が挙げられる。その中でもシリカ粒子が好ましく、コロイダルシリカがより好ましい。上記研磨粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
研磨用組成物中の研磨粒子の含有量は、研磨用組成物の全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、よりさらに好ましくは0.5質量%以上である。研磨粒子の含有量が増加するにつれて、研磨対象物(例えば、ケイ素、またはシリコンゲルマニウム材料を含む研磨対象物)への研磨速度を増加させることができる。研磨用組成物中の研磨粒子の含有量は、研磨用組成物の全質量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下であり、また3質量%以下であってもよい。研磨粒子の含有量が減少するにつれて、研磨用組成物の材料コストを削減することに加え、研磨粒子の凝集を起こしにくくすることができる。
【0037】
研磨粒子の平均一次粒子径は5nm以上が好ましく、7nm以上であるとより好ましく、10nm以上であるとさらに好ましく、25nm以上であるとよりさらに好ましく、30nm以上であると特に好ましい。研磨粒子の平均一次粒子径が大きくなるにつれて、研磨対象物(例えば、ケイ素、またはシリコンゲルマニウム材料を含む研磨対象物)に対する研磨速度が高まる。なお、研磨粒子の平均一次粒子径は、BET法により研磨粒子の比表面積を測定することができ、測定された比表面積に基づいて、研磨粒子の平均一次粒子径の値を算出できる。また、研磨粒子の平均一次粒子径は、120nm以下が好ましく、80nm以下であるとより好ましく、50nm以下であるとさらに好ましく、40nm以下であるとよりさらに好ましい。研磨粒子の平均一次粒子径が小さくなるにつれて、研磨用組成物を用いて研磨対象物に研磨を行う際、スクラッチのより少ない研磨面を容易に得ることができるようになる。
【0038】
研磨粒子の平均二次粒子径は、10nm以上が好ましく、20nm以上であるとより好ましく、30nm以上であるとさらに好ましく、50nm以上であると特に好ましい。研磨粒子の平均二次粒子径が大きくなるにつれて、研磨対象物(例えば、ケイ素、またはシリコンゲルマニウム材料を含む研磨対象物)に対する研磨速度が高まる。また、研磨粒子の平均二次粒子径は、250nm以下が好ましく、200nm以下であるとより好ましく、150nm以下がさらに好ましく、100nm以下であると特に好ましい。研磨粒子の平均二次粒子径が小さくなるにつれ、研磨用組成物を用いて研磨対象物に研磨を行う際、スクラッチのより少ない研磨面を容易に得ることができるようになる。研磨粒子の平均二次粒子径の数値は、適した方法、例えばレーザー光散乱法により測定することができる。
【0039】
研磨粒子は表面修飾されていることが好ましい。酸性条件下で研磨粒子のゼータ電位が比較的大きい正または負の値を有するよう表面修飾された研磨粒子は、酸性条件下においても互いに強く反発して良好に分散する。その結果、研磨用組成物の保存安定性が向上する。このような表面修飾された研磨粒子は、例えば、アルミニウム、チタンもしくはジルコニウムなどの金属、またはこれら金属の酸化物を研磨粒子と混合し、研磨粒子の表面にドープさせることにより得られる。
【0040】
研磨用組成物に含まれる、表面修飾された研磨粒子としては、有機酸が表面に固定化されたシリカを使用してもよい。その中でも有機酸が表面に固定化されたコロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカの表面への有機酸の固定化は、コロイダルシリカの表面に有機酸の官能基が化学的に結合することにより行われている。コロイダルシリカと有機酸を単に共存させただけではコロイダルシリカへの有機酸の固定化は果たされない。有機酸の一種のスルホン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Sulfonic acid-functionalized silica through quantitative oxidation of thiol groups”, Chem. Commun.246-247(2003)に記載の方法で行うことができる。具体的には、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン((3-mercaptopropyl)trimethoxysilane)などのチオール基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に過酸化水素でチオール基を酸化することにより、スルホン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。本発明の実施例で使用するコロイダルシリカは、上記の方法で製造してもよい。
【0041】
あるいは、カルボン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Novel Silane Coupling Agents Containing a Photolabile 2-Nitrobenzyl Ester for Introduction of a Carboxy Group on the Surface of Silica Gel”, Chemistry Letters, 3, 228-229(2000)に記載の方法で行うことができる。具体的には、光反応性2-ニトロベンジルエステル(2-nitrobenzyl ester)を含むシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に光照射することにより、カルボン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。
【0042】
本発明に係る研磨粒子は、スルホン酸固定化コロイダルシリカであることが好ましい。
【0043】
[湿潤剤]
研磨対象物が疎水性材料を含む場合、研磨を行う際、研磨対象物の疎水性表面は、研磨粒子や研磨パッドの破片を吸着したり、研磨工程中に乾燥しやすくなったりするので、その後の洗浄工程を行う時に、表面に吸着された研磨粒子や研磨パッドの破片は除去されにくく、多くの不純物(欠陥)が研磨済研磨対象物の表面上に残りやすくなる。この研磨済研磨対象物の表面上の不純物(欠陥)の数を低減させる目的で、本発明に係る研磨用組成物は、湿潤剤を含む。
【0044】
本発明の研磨用組成物に含まれる湿潤剤は、親水性基を有する水溶性高分子であってもよい。このような水溶性高分子であれば、研磨対象物の疎水性表面に吸着し、当該表面を親水性にすることができる。湿潤剤が研磨対象物の表面に吸着して湿潤剤層を形成することにより、研磨粒子や研磨パッドの破片などの不純物が研磨対象物の表面に直接付着するのを防ぐとともに、研磨対象物の表面が乾燥するのを防ぐことができる。そのため、洗浄工程により不純物を簡単に除去することができ、同時に湿潤剤を除去することができる。
【0045】
本発明に用いられる湿潤剤の粘度は、10mPa・s以上500mPa・s以下である。粘度が500mPa・sを超えると、洗浄工程で研磨対象物の表面の湿潤剤層を除去することが困難になり、不純物(欠陥)が増える可能性がある。一方、粘度の下限は親水性向上効果の観点から、10mPa・s以上であることが必要である。本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明に用いられる湿潤剤の粘度は、500mPa・s以下、400mPa・s以下、300mPa・s以下、200mPa・s以下、100mPa・s以下、または50mPa・s以下であってもよい。また、本発明の他のいくつかの実施形態によれば、本発明に用いられる湿潤剤の粘度は、10mPa・s以上、20mPa・s以上、30mPa・s以上、50mPa・s以上、80mPa・s以上、または100mPa・s以上であってもよい。
【0046】
上記湿潤剤の粘度は、湿潤剤を4質量%の水溶液に調製し、20℃で粘度計(回転粘度計)を用いて測定した粘度値を指す。上記回転粘度計としては、例えば、Brookfield社製DVE デジタル粘度計が挙げられる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明に用いられる湿潤剤の重量平均分子量(Mw)は、1000000以下、100000以下、または10000以下であってもよい。また、本発明の他のいくつかの実施形態によれば、本発明に用いられる湿潤剤の重量平均分子量(Mw)は、100以上、1000以上、または5000以上であってもよい。本明細書中の重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質とするゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)法で測定されたものである。
【0048】
本発明の湿潤剤は、親水性側鎖を有することが好ましい。具体的には、側鎖にヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、アルカノール基、アミド基などの構造を有する重合体が挙げられ、側鎖にアミド基を有する重合体または側鎖にヒドロキシ基構造を有する重合体が好ましい。
【0049】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、本発明の湿潤剤は、ポリビニルアルコールなどの、側鎖にヒドロキシ基構造を有する重合体である。好ましくは、上記ポリビニルアルコールは、ヒドロキシ基とは異なる親水性側鎖、例えば、スルホン酸基およびアルカノール基の少なくとも一方を有する。上記のアルカノール基は、好ましくは炭素数1~5のアルキレンポリオール基、より好ましくはエチレングリコール基である。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の湿潤剤は、側鎖にアミド基を有する重合体である。例えば、以下の一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体が挙げられる。
【0051】
【化1】
【0052】
上記一般式(1)において、Rは炭素数1~5の炭化水素基であり、Rは水素原子または炭素数1~3の炭化水素基である。本発明のいくつかの実施形態によれば、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基またはペンチルなどの炭素数1~5のアルキル基であってもよい。本発明のいくつかの実施形態によれば、Rは、水素原子、またはメチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1~3のアルキル基であってもよい。一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体の具体例としては、例えば、ポリ-N-ビニルアセトアミドが挙げられる。
【0053】
上記湿潤剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明の研磨用組成物中の湿潤剤の含有量の上限は、研磨用組成物の全質量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5質量%以下である。また、本発明の研磨用組成物中の湿潤剤の含有量の下限は、研磨用組成物の全質量に対して、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、よりさらに好ましくは0.01質量%以上である。
【0054】
本発明に係る湿潤剤は、ポリビニルアルコールおよびポリ-N-ビニルアセトアミドの少なくとも一方であることが好ましい。
【0055】
[ポリエーテル]
本発明の研磨用組成物は、上記の研磨粒子および上記の湿潤剤に加えて、ポリエーテルをさらに含んでもよい。本発明の研磨用組成物におけるポリエーテルは、シリコンの研磨を阻害する作用がある。ポリエーテルの例としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリエチレングリコール、アルキルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリエチレングリコール、アルケニルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルポリエチレングリコールグリコールアルケニルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリプロピレングリコール、アルキルポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリプロピレングリコール、アルケニルポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルケニルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンジグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリプロピレンアルキルエーテル、またはこれらの共重合体などが挙げられる。これらポリエーテルの中でも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明に用いられるポリエーテルの重量平均分子量(Mw)は、100000以下、10000以下、または1000以下であってもよい。また、本発明の他のいくつかの実施形態によれば、本発明に用いられる湿潤剤の重量平均分子量(Mw)は、100以上、300以上、または500以上であってもよい。この明細書において、重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質とするゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography,GPC)法で測定されたものである。上記ポリエーテルは、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明の研磨用組成物中のポリエーテルの含有量の上限は、研磨用組成物の全質量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%以下である。本発明の研磨用組成物中のポリエーテルの含有量の下限は、研磨用組成物の全質量に対して、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、よりさらに好ましくは0.05質量%以上である。
【0057】
[キレート剤]
本発明の研磨用組成物は、上記研磨粒子および上記湿潤剤に加えて、キレート剤をさらに含んでいてもよい。本発明の研磨用組成物に含まれるキレート剤は、金属不純物と錯イオンを形成することにより、基板の金属汚染を抑制する効果を達成する。本発明で使用されるキレート剤は、この技術分野で一般的に使用されるキレート剤から選択してもよい。いくつかの実施形態において、本発明の研磨用組成物に係るキレート剤は、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、イミノ二酢酸、およびイタコン酸などのポリカルボン酸またはそれらの塩を含む。このような酸は、複数のカルボニル基を介して、研磨対象物上に残留する不純物(パーティクルなど)に対して配位することができる(キレート作用)。このキレート作用により、研磨用組成物中で不純物が分散しやすくなり、不純物の除去効果がより向上する。不純物の除去性を向上させる観点から、キレート剤は、好ましくは、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、イミノ二酢酸、ならびにそれらのアンモニウム塩およびアミン塩からなる群から選択される少なくとも1つを含む。それらの中でも、クエン酸またはその塩が好ましく、クエン酸塩がより好ましい。金属汚染を抑制できるという観点から、クエン酸の塩としては、アンモニウム塩が好ましく、例えば、クエン酸水素二アンモニウム、クエン酸トリアンモニウムなどが好ましく挙げられる。キレート剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0058】
キレート剤の含有量の下限は、研磨用組成物の総質量に対して、0.0001質量%以上であってもよく、より好ましくは0.0005質量%以上である。キレート剤の含有量を増やすことで、処理対象物に残留する金属不純物の抑制効果を高めることができる。また、研磨用組成物中のキレート剤の含有量の上限は、研磨用組成物の総質量に対して、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。キレート剤の含有量を減らすことで、研磨用組成物の保存安定性をより良好に維持することができる。
【0059】
[pH調整剤]
本発明の研磨用組成物はpH調整剤を含むことが好ましい。pH調整剤を用いることによって、研磨用組成物のpHを所望の値に調整することができる。pH調整剤としては、公知の酸性化合物または塩基性化合物を用いてもよい。pH調整剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0060】
酸性化合物は、無機酸または有機酸であってもよい。無機酸としては、例えば、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、硝酸(HNO)、フッ化水素酸(HF)、ホウ酸(HBO)、炭酸(HCO)、次亜リン酸(HPO)、亜リン酸(HPO)およびリン酸(HPO)を挙げることができる。これら無機酸のうち、好ましいのは、塩酸、硫酸、硝酸、およびリン酸であり、より好ましくは硝酸である。
【0061】
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、ヒドロキシ酢酸(hydroxyacetic acid)、サリチル酸(salicylic acid)、グリセリン酸(glyceric acid)、シュウ酸(oxalic acid)、マロン酸(malonic acid)、コハク酸(succinic acid)、グルタル酸(glutaric acid)、アジピン酸(adipic acid)、ピメリン酸(pimelic acid)、マレイン酸(maleic acid)、フタル酸(phthalic acid)、リンゴ酸(malic acid)、酒石酸(tartaric acid)、クエン酸(citric acid)、乳酸(lactic acid)、グリオキシル酸(glyoxylic acid)、2-フランカルボン酸(2-furancarboxylic acid)、2,5-フランジカルボン酸(2,5-furandicarboxylic acid)、3-フランカルボン酸(3-furancarboxylic acid)、2-テトラヒドロフランカルボン酸(2-tetrahydrofuran carboxylic acid)、メトキシ酢酸(methoxyacetic acid)、メトキシフェニル酢酸(methoxyphenylacetic acid)およびフェノキシ酢酸(Phenoxyacetic acid)等を挙げることができる。また、メタンスルホン酸(methanesulfonic acid)、エタンスルホン酸(ethanesulfonic acid)およびイセチオン酸(2-hydroxyethanesulfonic acid)などのスルホン酸を使用してもよい。これら有機酸のうち、好ましいのは、酢酸などのモノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、および酒石酸などのジカルボン酸、ならびにクエン酸などのトリカルボン酸である。
【0062】
塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物またはその塩、第2族元素の水酸化物またはその塩、水酸化第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミンなどが挙げられる。アルカリ金属としては、カリウム、ナトリウムなどが挙げられる。
【0063】
本発明の研磨用組成物のpHは6以下、好ましくは5以下である。pHが6を超えると、研磨粒子が凝集しやすく、本発明の清浄効果が影響される。また、本発明の研磨用組成物のpHの下限は、製造プロセスの安全性や廃液処理の負担を考慮すると、2以上であり、好ましくは3以上、または4以上であってもよい。本発明の研磨用組成物のpHは、2以上6以下である。
【0064】
本発明におけるpHは、25℃でのpHを指す。25℃でのpHは、pHメーターで測定することができ、pHメーターの電極を25℃の研磨用組成物に1分間浸した後に測定される数値である。
【0065】
[その他の成分]
本発明の効果を阻害しない限り、本発明の研磨用組成物は、その他の成分を含むことができる。その他の成分としては、界面活性剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、酸化剤、防腐剤、防カビ剤、およびその他研磨用組成物に用いられる周知の添加物などが挙げられる。
【0066】
[分散媒]
本発明の研磨用組成物は、分散媒(「溶媒」と称してもよい)を含むことが好ましい。分散媒は、研磨用組成物中の各成分を分散または溶解させるために用いることができる。本発明において、研磨用組成物は、分散媒として水を含んでいてよい。他の成分への作用を抑制するという観点から、できる限り不純物を含まない水が好ましい。より具体的には、イオン交換樹脂で不純物イオンを除去した後、フィルターを通して異物を除去した純水もしくは超純水、または蒸留水が好ましい。
【0067】
本発明の一実施形態では、研磨用組成物は、研磨粒子、湿潤剤、ポリエーテル、キレート剤、pH調整剤、酸化剤、および水、ならびに防カビ剤および有機溶媒の少なくとも一方から実質的に構成される。
【0068】
上記形態において、「研磨用組成物が、Xから実質的に構成される」とは、Xの合計含有量が、研磨用組成物の総質量を100質量%として(研磨用組成物に対して)、99質量%を超える(上限:100質量%)ことを意味する。好ましくは、研磨用組成物は、Xから構成される(上記合計含有量=100質量%)。例えば、「研磨用組成物が、研磨粒子、湿潤剤、ポリエーテル、キレート剤、pH調整剤、酸化剤、および水、ならびに防カビ剤および有機溶媒の少なくとも一方から実質的に構成される」とは、研磨粒子、湿潤剤、ポリエーテル、キレート剤、pH調整剤、酸化剤、および水、ならびに防カビ剤および有機溶媒の少なくとも一方の合計含有量が、研磨用組成物の総質量を100質量%として(研磨用組成物に対して)、99質量%を超える(上限:100質量%)ことを意味し、研磨粒子、湿潤剤、ポリエーテル、キレート剤、pH調整剤、酸化剤、および水、ならびに防カビ剤および有機溶媒の少なくとも一方から構成される(上記合計含有量=100質量%)ことが好ましい。
【0069】
[研磨工程(表面処理工程)]
本発明の研磨用組成物は、半導体製造プロセスにおける研磨工程で使用することができ、半導体基板を研磨する工程である限り、特に限定されるものではないが、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)工程が好ましい。また、研磨工程は、単一のステップからなる研磨工程であってもよく、複数のステップからなる研磨工程であってもよい。複数のステップからなる研磨工程としては、例えば、予備研磨ステップ(粗研磨ステップ)の後に仕上げ研磨ステップを行う工程、または一次研磨ステップの後に1回または2回以上の二次研磨ステップを行い、その後、仕上げ研磨ステップを行う工程が挙げられる。本発明に係る研磨工程は、研磨対象物の表面上の不純物を除去する工程でもあることから、表面処理工程であるとも言える。
【0070】
[研磨対象物]
本発明の研磨用組成物で処理される研磨対象物は、ケイ素-ケイ素結合および窒素-ケイ素結合の少なくとも一方を含むことが好ましい。ケイ素-ケイ素結合を含む研磨対象物としては、例えば、ポリシリコン、アモルファスシリコン、単結晶シリコン、n型ドープ単結晶シリコン、p型ドープ単結晶シリコン、SiGeなどのSi系合金などが挙げられる。窒素-ケイ素結合を含む研磨対象物としては、例えば、窒化ケイ素膜、SiCN(窒化炭化ケイ素)などが挙げられる。また、研磨対象物は、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)由来の酸化ケイ素(SiO)等の酸化ケイ素を含んでもよい。
【0071】
[研磨装置(表面処理装置)]
本発明の研磨用組成物を使用するための研磨装置(表面処理装置)は、特に制限されない。研磨装置としては、研磨対象物(表面処理対象物)を保持するホルダーと回転数を変更可能なモータなどとが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼付し得る研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。研磨装置としては、片面研磨装置または両面研磨装置のいずれを用いてもよい。具体的には、例えばアプライドマテリアルズ社製MirraMesa、株式会社荏原製作所製、FREX 300Eなどを用いることができる。
【0072】
上記の研磨パッドとしては、特に制限されないが、例えば、一般の不織布、ポリウレタン樹脂製パッド(ポリウレタン製パッド)、および多孔質フッ素樹脂製パッド等を使用することが可能である。さらに、必要に応じて、研磨パッドに溝加工を施すこともでき、これにより、研磨用組成物が研磨パッドの溝中にたまるようになる。
【0073】
[研磨方法(表面処理方法)および研磨済基板(研磨済研磨対象物)の製造方法]
本発明の他の一態様は、上記の研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する、研磨方法に関する。本発明に係る研磨方法は、研磨対象物の表面上の不純物を除去する方法でもあることから、表面処理方法であるとも言える。本発明の一実施形態に係る研磨方法(表面処理方法)において、使用する研磨用組成物および適用する研磨対象物の詳細は、それぞれ、上記で説明した通りである。
【0074】
本発明の一実施形態に係る研磨方法(表面処理方法)において、研磨手法および研磨条件等の詳細については、特に制限されず、公知の手法および条件および装置等を使用することができる。
【0075】
研磨工程(表面処理工程)のパラメータ条件にも特に制限はなく、実際の必要に応じて調整を行うことができる。研磨定盤の回転速度は、特に制限されないが、例えば、10rpm以上500rpm以下(0.2s-1以上8.3s-1以下、なお、60rpm=1s-1である。以下同様)とすることができ、キャリアの回転速度は、特に制限されないが、例えば、10rpm以上500rpm以下(0.2s-1以上8.3s-1以下)とすることができる。また、研磨対象物にかける圧力(研磨圧力、表面処理圧力)は、特に制限されないが、例えば、0.1psi以上10psi以下(0.7kPa以上68.9kPa以下、なお、1psi=6894.76Paである。以下同様)とすることができる。研磨時間(表面処理時間)は、特に制限されないが、例えば、10秒以上180秒以下とすることができる。研磨用組成物の流量は、特に制限されないが、例えば、10ml/min以上500ml/min以下とすることができる。研磨用組成物を研磨パッドへ供給する方法にも特に制限はなく、例えば、ポンプ等による連続供給の方法を採用できる。
【0076】
研磨工程(表面処理工程)終了後、水流中で研磨対象物を洗浄し、回転乾燥機等で研磨対象物に付着している水滴を飛ばして乾燥してもよい。
【0077】
本発明のその他の一態様は、上記の研磨用組成物を用いて基板を研磨することを含む、または、研磨対象物が基板であり、上記の研磨方法によって基板を研磨することを含む、研磨済基板の製造方法に関する。本発明の一実施形態に係る研磨済基板の製造方法において、使用する研磨用組成物、適用する研磨対象物、および使用する研磨方法の詳細は、それぞれ、上記で説明した通りである。
【実施例0078】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明の範囲は後述する実施例に限定されるものではない。また、特に説明がない限り、研磨操作は、いずれも室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行われる。
【0079】
[研磨用組成物の調製]
実施例および比較例で使用した湿潤剤の詳細な構成を以下の表1に示す。下記の表2に示す組成で、研磨粒子、湿潤剤、ポリエーテル、キレート剤、および酸化剤を分散媒(超純水)中で混合しながら(混合温度:約25℃、混合時間:約10分)、pH調整剤でpHを調整することにより研磨用組成物を調製した。研磨用組成物のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製 型番:LAQUA)により確認した(pH測定時の研磨用組成物の温度は25℃)。また、表2中の「-」は該成分が未添加であることを示す。表1および表2における各成分および番号について、以下に説明する。
【0080】
研磨粒子:スルホン酸固定化コロイダルシリカ(表2ではSiOと表記)[平均一次粒子径:35nm、平均二次粒子径:70nm]
pH調整剤:硝酸(濃度70質量%)
PNVA-1:昭和電工株式会社製のGE191-107
PNVA-2:昭和電工株式会社製のGE191-104
PVA-1:日本酢ビ・ポバール株式会社製のJMR-10HH
PVA-2:三菱ケミカル株式会社製のゴーセネックス CKS-50
PVA-3:三菱ケミカル株式会社製のニチゴーG-ポリマー
PPG 400:メルク株式会社製のポリプロピレングリコール(MW:400)
DAHC:クエン酸水素二アンモニウム(diammonium hydrogen citrate)
TEOS:オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)由来の酸化ケイ素(SiO)。
【0081】
【表1】
【0082】
[研磨速度の測定]
上記調製方法で得られた研磨用組成物を用いて、各研磨対象物(SiGe、ポリシリコン、TEOS)を研磨したときの研磨速度を測定した。なお、SiGeは、Silicon Valley Microelectronic, Inc製を、ポリシリコン(poly-Si)基板は、アドバンスマテリアルズテクノロジー株式会社製を、TEOS基板は、アドバンスマテリアルズテクノロジー株式会社製を、それぞれ用いた。
【0083】
研磨装置:株式会社荏原製作所製のFREX 300E
研磨パット:ニッタ・デュポン株式会社製のIC1010
ドレッサー:3M社製のA188
研磨時間:60秒
研磨圧力:1psi(1psi=6894.76Pa)
プラテン(定盤)回転速度:90rpm
ヘッド(キャリア)回転速度:90rpm
研磨用組成物の供給速度:300ml/分。
【0084】
研磨対象物の研磨前および研磨後の厚さを、光干渉式膜厚測定システム(フィルメトリクス社製;Filmetric F20により測定し、研磨速度を次式により算出した。研磨速度の評価結果を下記表2に示す。
【0085】
【数1】
【0086】
[洗浄処理および乾燥処理]
上記と同じ研磨条件で研磨した研磨後のシリコンウェーハを洗浄液に6分間浸漬して洗浄(SC-1洗浄)した後に、脱イオン水に浸漬した状態で超音波発振器を用いて超音波処理を行った。そして、2-プロパノールを用いて水分を除去し乾燥した。なお、洗浄液は、濃度29質量%のアンモニア水、濃度31質量%の過酸化水素水、脱イオン水を体積比1:3:30で混合した混合液である。
【0087】
なお、用いたシリコンウェーハの直径は12インチ、導電タイプはP型、抵抗率は0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満である。
【0088】
[不純物(欠陥)数測定]
研磨、洗浄、および乾燥を行ったシリコンウェーハに対し、KLA-Tencor社製のウェーハ検査装置(製品名:Surfscan SP2)を使用して、シリコンウェーハ上の不純物(欠陥)の数を測定した。表2に示す不純物数は、シリコンウェーハの表面に存在する0.1μmを超えるサイズの不純物(欠陥)の数である。測定結果を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
上記表2に示すように、比較例2の組成物は湿潤剤を含まないため、それを使用して研磨を行ったシリコンウェーハは、不純物(欠陥)数が多すぎて(60000を超える)測定不能(overload)となった。また、表2に示すとおり、実施例1、2に比べ、比較例1で使用した湿潤剤は粘度が高すぎ、比較例3、4で使用した湿潤剤は粘度が低すぎるため、比較例1、3および4の組成物を用いて研磨を行ったシリコンウェーハは、実施例1、2よりも不純物(欠陥)数が多い。