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特開2022-155639樹脂フィルム、積層体、カバーレイフィルム、樹脂付き銅箔、金属張積層板、回路基板及び多層回路基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155639
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】樹脂フィルム、積層体、カバーレイフィルム、樹脂付き銅箔、金属張積層板、回路基板及び多層回路基板
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20221006BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20221006BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20221006BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20221006BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20221006BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20221006BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20221006BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20221006BHJP
   C09J 179/08 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
B32B27/34
B32B15/08 J
C08G73/10
H05K1/03 610N
H05K3/28 C
H05K3/28 F
C09J7/30
C09J7/20
C09J179/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058969
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095588
【弁理士】
【氏名又は名称】田治米 登
(74)【代理人】
【識別番号】100094422
【弁理士】
【氏名又は名称】田治米 惠子
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】西山 哲平
(72)【発明者】
【氏名】平石 克文
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J004
4J040
4J043
5E314
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AC02
4F071AC12
4F071AC19
4F071AF20
4F071AF40Y
4F071AG05
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH13
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC02
4F100AB00E
4F100AB17B
4F100AK49A
4F100AT00B
4F100BA02
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4F100BA07
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4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA10E
4F100CB00A
4F100DC21A
4F100DC21E
4F100EJ05A
4F100GB43
4F100JA05
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4J043UB131
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(57)【要約】

【課題】 10GHz~40GHzの周波数帯の全域で低い誘電正接を示し、高周波信号の伝送損失をより効果的に低減することが可能な樹脂フィルムを提供する
【解決手段】 樹脂成分として、全ジアミン残基に対し、ダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を30モル%以上含有するポリイミドを含有し、23℃、50%RHの恒温恒湿条件(常態)のもと24時間調湿後に、スプリッドシリンダ共振器(SCDR)により測定される10GHzにおける誘電正接(Tanδ)及び28GHzにおける誘電正接(Tanδ)がいずれも0.0025未満であり、Tanδに対するTanδの比(Tanδ/Tanδ)が0.5以上1.0以下である樹脂フィルム。
【選択図】 なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分としてポリイミドを含有する樹脂フィルムであって、
前記ポリイミドは、テトラカルボン酸無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有し、全ジアミン残基に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸残基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を30モル%以上含有するものであり、
23℃、50%RHの恒温恒湿条件(常態)のもと24時間調湿後に、スプリッドシリンダ共振器(SCDR)により測定される10GHzにおける誘電正接(Tanδ)及び28GHzにおける誘電正接(Tanδ)がいずれも0.0025未満であり、前記Tanδに対する前記Tanδの比(Tanδ/Tanδ)が0.5以上1.0以下であることを特徴とする樹脂フィルム。
【請求項2】
前記Tanδ及び前記Tanδの差分の絶対値が0.0010以下である請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
23℃、50%RHの恒温恒湿条件(常態)のもと24時間調湿後に、スプリッドシリンダ共振器(SCDR)により測定される40GHzにおける誘電正接(Tanδ)が0.0025未満である請求項1又は2に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
前記Tanδに対する前記Tanδの比(Tanδ/Tanδ)が0.5以上1.0以下である請求項3に記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
前記Tanδ及び前記Tanδの差分の絶対値が0.0011未満である請求項3又は4に記載の樹脂フィルム。
【請求項6】
前記ポリイミドをイミン結合によって架橋形成させた架橋ポリイミドを含む請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
【請求項7】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、を有する積層体であって、
前記接着剤層が、請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とする積層体。
【請求項8】
カバーレイ用フィルム材層と、該カバーレイ用フィルム材層に積層された接着剤層とを有するカバーレイフィルムであって、
前記接着剤層が、請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とするカバーレイフィルム。
【請求項9】
接着剤層と銅箔とを積層した樹脂付き銅箔であって、
前記接着剤層が、請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とする樹脂付き銅箔。
【請求項10】
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【請求項11】
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された接着剤層と、前記接着層を介して前記絶縁樹脂層に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、
前記接着剤層が、請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【請求項12】
第1の金属層と、前記第1の金属層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、を有する第1の片面金属張積層板と、
第2の金属層と、前記第2の金属層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、を有する第2の片面金属張積層板と、
前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するように配置されて、前記第1の片面金属張積層板と前記第2の片面金属張積層板との間に積層された接着剤層と、を備えた金属張積層板であって、
前記接着剤層が、請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【請求項13】
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の一方の面に積層された金属層と、を有する片面金属張積層板と、前記絶縁樹脂層のもう一方の面に積層された接着剤層と、を備え、前記接着剤層が請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とする金属張積層板。
【請求項14】
請求項10から13のいずれか1項に記載の金属張積層板の前記金属層を配線加工してなる回路基板。
【請求項15】
第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とする回路基板。
【請求項16】
第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とする回路基板。
【請求項17】
第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、前記第1の基材及び前記第2の基材の前記接着剤層とは反対側の面にそれぞれ積層された配線層と、を備えた回路基板であって、
前記接着剤層が、請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とする回路基板。
【請求項18】
積層された複数の絶縁樹脂層を含む積層体と、該積層体の内部に埋め込まれた少なくとも1層以上の配線層と、を備えた多層回路基板であって、
前記複数の絶縁樹脂層のうちの少なくとも一層以上が、接着性を有するとともに前記配線層を被覆する接着剤層により形成されており、
前記接着剤層が、請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂フィルムからなることを特徴とする多層回路基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の材料として有用な樹脂フィルム、積層体、カバーレイフィルム、樹脂付き銅箔、金属張積層板、回路基板及び多層回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブルプリント配線板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、スマートフォン等の電子機器の可動部分の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。
【0003】
FPCの一態様として、耐熱性、屈曲性に優れるポリイミドフィルム上に回路パターンを形成し、その表面に接着剤層を有するカバーレイフィルムが貼り合された構造のものが挙げられる。また、このような構造のカバーレイフィルムの接着剤層の材質としても、ポリイミドが用いられている。例えば、特許文献1では、ダイマー酸から誘導されるダイマージアミンを原料とするポリイミドと、少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物と、を反応させて得られる架橋ポリイミドを、カバーレイフィルムの接着剤層に適用することが提案されている。ここで、ダイマー酸は、例えば大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、菜種油脂肪酸等の天然の脂肪酸及びこれらを精製したオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等を原料に用いてディールス-アルダー反応させて得られる二量体化脂肪酸であり、ダイマー酸から誘導される多塩基酸化合物は、原料の脂肪酸や三量体化以上の脂肪酸の組成物として得られることが知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-1730号公報
【特許文献2】特開2017-137375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在では、機器の高性能化が進んだことから、伝送信号の高周波化への対応が必要とされている。高周波信号を伝送する際に、伝送経路における伝送損失が大きい場合、電気信号のロスや信号の遅延時間が長くなるなどの不都合が生じる。FPCについても、5G(第5世代移動通信システム)に対応するため、Sub6(例えば3.6GHz~6GHz未満)及びミリ波(例えば28GHz~300GHz)の両方の周波数帯での伝送損失を効果的に低減することが重要である。そのため、FPCの構成材料としての樹脂フィルムについても誘電特性のさらなる改善が必要であり、GHz帯域の周波数(例えば、1~50GHzを意味する)、特に10GHz~40GHzの周波数帯の全域で、伝送損失に関係が深い誘電正接が一定以下の低い値を示すことが好ましいと考えられる。しかしながら、従来のポリイミドを使用した樹脂フィルムは、誘電正接が周波数の増加に伴って大きくなる傾向(周波数依存性)を示すことから、その改善が強く求められていた。
【0006】
従って、本発明の目的は、10GHz~40GHzの周波数帯の全域で低い誘電正接を示し、高周波信号の伝送損失をより効果的に低減することが可能な樹脂フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究の結果、ダイマージアミンを原料とするポリイミドを用いた樹脂フィルムは、誘電正接の周波数依存性がないか、あるいは周波数の増加に逆行して誘電正接が低下する傾向を示すことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の樹脂フィルムは、樹脂成分としてポリイミドを含有する樹脂フィルムであって、前記ポリイミドは、テトラカルボン酸無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有し、全ジアミン残基に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸残基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を30モル%以上含有するものである。そして、本発明の樹脂フィルムは、23℃、50%RHの恒温恒湿条件(常態)のもと24時間調湿後に、スプリッドシリンダ共振器(SCDR)により測定される10GHzにおける誘電正接(Tanδ)及び28GHzにおける誘電正接(Tanδ)がいずれも0.0025未満であり、前記Tanδに対する前記Tanδの比(Tanδ/Tanδ)が0.5以上1.0以下である。
【0008】
本発明の樹脂フィルムは、前記Tanδ及び前記Tanδの差分の絶対値が0.0010以下であってもよい。
【0009】
本発明の樹脂フィルムは、23℃、50%RHの恒温恒湿条件(常態)のもと24時間調湿後に、スプリッドシリンダ共振器(SCDR)により測定される40GHzにおける誘電正接(Tanδ)が0.0025未満であってもよい。
【0010】
本発明の樹脂フィルムは、前記Tanδに対する前記Tanδの比(Tanδ/Tanδ)が0.5以上1.0以下であってもよい。
【0011】
本発明の樹脂フィルムは、前記Tanδ及び前記Tanδの差分の絶対値が0.0011未満であってもよい。
【0012】
本発明の樹脂フィルムは、前記ポリイミドをイミン結合によって架橋形成させた架橋ポリイミドを含むものであってもよい。
【0013】
本発明の積層体は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、を有する積層体であって、前記接着剤層が、上記いずれかの樹脂フィルムからなる。
【0014】
本発明のカバーレイフィルムは、カバーレイ用フィルム材層と、該カバーレイ用フィルム材層に積層された接着剤層とを有するカバーレイフィルムであって、前記接着剤層が、上記いずれかの樹脂フィルムからなる。
【0015】
本発明の樹脂付き銅箔は、接着剤層と銅箔とを積層した樹脂付き銅箔であって、前記接着剤層が、上記いずれかの樹脂フィルムからなる。
【0016】
本発明の第1の観点の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、上記いずれかの樹脂フィルムからなる。
【0017】
本発明の第2の観点の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された接着剤層と、前記接着剤層を介して前記絶縁樹脂層に積層された金属層と、を有する金属張積層板であって、前記接着剤層が、上記いずれかの樹脂フィルムからなる。
【0018】
本発明の第3の観点の金属張積層板は、第1の金属層と、前記第1の金属層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、を有する第1の片面金属張積層板と、
第2の金属層と、前記第2の金属層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、を有する第2の片面金属張積層板と、
前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するように配置されて、前記第1の片面金属張積層板と前記第2の片面金属張積層板との間に積層された接着剤層と、を備えた金属張積層板であって、
前記接着剤層が、上記いずれかの樹脂フィルムからなる。
【0019】
本発明の第4の観点の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の一方の面に積層された金属層と、を有する片面金属張積層板と、前記絶縁樹脂層のもう一方の面に積層された接着剤層と、を備え、前記接着剤層が上記いずれかの樹脂フィルムからなる。
【0020】
本発明の第1の観点の回路基板は、上記金属張積層板の前記金属層を配線加工してなるものである。
【0021】
本発明の第2の観点の回路基板は、第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、を備えた回路基板であって、前記接着剤層が、上記いずれかの樹脂フィルムからなる。
【0022】
本発明の第3の観点の回路基板は、第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された配線層と、前記第1の基材の前記配線層側の面において前記配線層を覆うように積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、を備えた回路基板であって、前記接着剤層が、上記いずれかの樹脂フィルムからなる。
【0023】
本発明の第4の観点の回路基板は、第1の基材と、前記第1の基材の少なくとも一方の面に積層された接着剤層と、前記接着剤層の前記第1の基材とは反対側の面に積層された第2の基材と、前記第1の基材及び前記第2の基材の前記接着剤層とは反対側の面にそれぞれ積層された配線層と、を備えた回路基板であって、前記接着剤層が、上記いずれかの樹脂フィルムからなる。
【0024】
本発明の多層回路基板は、積層された複数の絶縁樹脂層を含む積層体と、該積層体の内部に埋め込まれた少なくとも1層以上の配線層と、を備えた多層回路基板であって、
前記複数の絶縁樹脂層のうちの少なくとも一層以上が、接着性を有するとともに前記配線層を被覆する接着剤層により形成されており、前記接着剤層が、上記いずれかの樹脂フィルムからなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の樹脂フィルムは、ダイマージアミンを原料とするポリイミドを使用することによって、10GHz~40GHzの周波数帯の全域において、低い誘電正接を示すだけでなく、周波数が増加しても誘電正接が一定であるか、むしろ低下する傾向を示す。そのため、本発明の樹脂フィルムは、Sub6及びミリ波の両方を含む周波数帯の高周波信号を伝送する回路基板等へ適用した場合に、伝送損失を効果的に低減することが可能であり、5G対応の通信機器への適用において非常に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施の形態に係る積層体の断面の構成を示す模式図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る金属張積層板の断面の構成を示す模式図である。
図3】本発明の別の実施の形態に係る金属張積層板の断面の構成を示す模式図である。
図4】本発明のさらに別の実施の形態に係る金属張積層板の断面の構成を示す模式図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る回路基板の断面の構成を示す模式図である。
図6】本発明の別の実施の形態に係る回路基板の断面の構成を示す模式図である。
図7】本発明のさらに別の実施の形態に係る回路基板の断面の構成を示す模式図である。
図8】本発明の一実施の形態に係る多層回路基板の断面の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態について、適宜図面を参照して説明する。本発明の一実施の形態に係る樹脂フィルムは、樹脂成分としてポリイミドを含有する樹脂フィルムである。本実施の形態で用いるポリイミドは、接着性を有するポリイミド(以下、「接着性ポリイミド」と記すことがある。)である。以下では、まず、接着性ポリイミドについて説明し、次に樹脂フィルムについて説明する。
【0028】
[接着性ポリイミド]
接着性ポリイミドは、テトラカルボン酸無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有する。本発明において、「テトラカルボン酸残基」とは、テトラカルボン酸二無水物から誘導された4価の基のことを表し、「ジアミン残基」とは、ジアミン化合物から誘導された2価の基のことを表す。原料であるテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物をほぼ等モルで反応させた場合には、原料の種類とモル比に対して、ポリイミド中に含まれるテトラカルボン酸残基及びジアミン残基の種類とモル比をほぼ対応させることができる。
なお、本発明で「ポリイミド」という場合、ポリイミドの他、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリシロキサンイミド、ポリベンズイミダゾールイミドなど、分子構造中にイミド基を有するポリマーからなる樹脂を意味する。
【0029】
(酸無水物)
接着性ポリイミドは、原料として一般に熱可塑性ポリイミドに使用されるテトラカルボン酸二無水物を特に制限なく使用できるが、全テトラカルボン酸無水物成分に対して、下記の一般式(1)及び/又は(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物を合計で90モル%以上含有する原料を用いることが好ましい。換言すれば、接着性ポリイミドは、全テトラカルボン酸残基に対して、下記の一般式(1)及び/又は(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を、合計で90モル%以上含有することが好ましい。下記の一般式(1)及び/又は(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を、全テトラカルボン酸残基に対して合計で90モル%以上含有させることによって、接着性ポリイミドの柔軟性と耐熱性の両立が図りやすく好ましい。下記の一般式(1)及び/又は(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基の合計が90モル%未満では、接着性ポリイミドの溶剤溶解性が低下する傾向になる。
【0030】
【化1】
【0031】
一般式(1)中、Xは、単結合、または、下式から選ばれる2価の基を示し、一般式(2)中、Yで表される環状部分は、4員環、5員環、6員環、7員環又は8員環から選ばれる環状飽和炭化水素基を形成していることを示す。
【0032】
【化2】
【0033】
上記式において、Zは-C-、-(CH)n-又は-CH-CH(-O-C(=O)-CH)-CH-を示すが、nは1~20の整数を示す。
【0034】
上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物(BPADA)、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TAHQ)、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート(TMEG)などを挙げることができる。これらの中でも特に3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)が好ましい。BTDAを使用する場合は、カルボニル基(ケトン基)が接着性に寄与するため、接着性ポリイミドの接着性を向上させることができる。また、BTDAは分子骨格に存在するケトン基と、後述する架橋形成のためのアミノ化合物のアミノ基が反応してC=N結合を形成する場合があり、耐熱性を向上させる効果を発現しやすい。このような観点から、全テトラカルボン酸残基に対して、BTDAから誘導されるテトラカルボン酸残基を好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上含有することがよい。
【0035】
また、一般式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘプタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-シクロオクタンテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。
【0036】
接着性ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、上記一般式(1)及び一般式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物以外の酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を含有することができる。そのようなテトラカルボン酸残基としては、特に制限はないが、例えば、ピロメリット酸二無水物、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-又は2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基が挙げられる。
【0037】
(ジアミン)
接着性ポリイミドは、原料として一般に熱可塑性ポリイミドに使用されるジアミン化合物を特に制限なく使用できるが、全ジアミン成分に対して、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物を30モル%以上含有する原料を用いる。換言すれば、接着性ポリイミドは、全ジアミン残基に対し、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を30モル%以上含有する。
全ジアミン残基に対し、ダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基の含有量を30モル%以上、好ましくは40モル%以上、より好ましくは70~99モル%の範囲内、さらに好ましくは80~95モル%の範囲内とすることによって、ポリイミドの比誘電率及び誘電正接を低下させることができる。ダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基の含有量が30モル%未満では、相対的にポリイミド中に含まれる極性基が増加することによって比誘電率及び誘電正接が上昇しやすくなる。また、ダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基を上記の量で含有することによって、ポリイミドのガラス転移温度の低温化(低Tg化)による熱圧着特性の改善及び低弾性率化による内部応力を緩和することができる。
【0038】
ダイマージアミン組成物は、下記の成分(a)を主成分として含有するとともに、成分(b)及び(c)の量が制御されている精製物である。
【0039】
(a)ダイマージアミン;
(a)成分のダイマージアミンとは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基(-COOH)が、1級のアミノメチル基(-CH-NH)又はアミノ基(-NH)に置換されてなるジアミンを意味する。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の分子間重合反応によって得られる既知の二塩基酸であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されており、炭素数が11~22の不飽和脂肪酸を粘土触媒等にて二量化して得られる。工業的に得られるダイマー酸は、オレイン酸やリノール酸、リノレン酸などの炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られる炭素数36の二塩基酸が主成分であるが、精製の度合いに応じ、任意量のモノマー酸(炭素数18)、トリマー酸(炭素数54)、炭素数20~54の他の重合脂肪酸を含有する。また、ダイマー化反応後には二重結合が残存するが、本発明では、更に水素添加反応して不飽和度を低下させたものもダイマー酸に含めるものとする。(a)成分のダイマージアミンは、炭素数18~54の範囲内、好ましくは22~44の範囲内にある二塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるジアミン化合物、と定義することができる。
【0040】
ダイマージアミンの特徴として、ダイマー酸の骨格に由来する特性を付与することができる。すなわち、ダイマージアミンは、分子量約560~620の巨大分子の脂肪族であるので、分子のモル体積を大きくし、ポリイミドの極性基を相対的に減らすことができる。このようなダイマー酸型ジアミンの特徴は、ポリイミドの耐熱性の低下を抑制しつつ、誘電率と誘電正接を小さくして誘電特性を向上させることに寄与すると考えられる。また、2つの自由に動く炭素数7~9の疎水鎖と、炭素数18に近い長さを持つ2つの鎖状の脂肪族アミノ基とを有するので、ポリイミドに柔軟性を与えるのみならず、ポリイミドを非対称的な化学構造や非平面的な化学構造とすることができるので、ポリイミドの低誘電率化を図ることができると考えられる。
【0041】
ダイマージアミン組成物は、分子蒸留等の精製方法によって(a)成分のダイマージアミン含有量を96重量%以上、好ましくは97重量%以上、より好ましくは98重量%以上にまで高めたものを使用することがよい。(a)成分のダイマージアミン含有量を96重量%以上とすることで、ポリイミドの分子量分布の拡がりを抑制することができる。なお、技術的に可能であれば、ダイマージアミン組成物のすべて(100重量%)が、(a)成分のダイマージアミンによって構成されていることが最もよい。なお、ダイマージアミン組成物は、分子骨格として6員芳香環を有するダイマージアミンを含有してもよい。接着性ポリイミドでは、イミド結合部位に直結する芳香族モノマーの割合を制御の対象としているが、6員芳香環を有するダイマージアミンにおいては、6員芳香環が炭素数7以上の長さを持つ脂肪鎖を介したイミド結合であるので、接着性ポリイミドにおける6員芳香環の制御の対象とはならない。従って、ダイマージアミンに由来する6員芳香環は、接着性ポリイミドにおける6員芳香環由来の炭素原子の含有率から除くものとする。なお、ダイマージアミンに由来する芳香環の割合は、1H-NMRによる定量化によってアミノ基1モルに対して20モル以下であることが好ましい。
【0042】
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物;
炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物は、ダイマー酸の原料に由来する炭素数10~20の範囲内にある一塩基性不飽和脂肪酸、及びダイマー酸の製造時の副生成物である炭素数21~40の範囲内にある一塩基酸化合物の混合物である。モノアミン化合物は、これらの一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるものである。
【0043】
(b)成分のモノアミン化合物は、ポリイミドの分子量増加を抑制する成分である。ポリアミド酸又はポリイミドの重合時に、該モノアミン化合物の単官能のアミノ基が、ポリアミド酸又はポリイミドの末端酸無水物基と反応することで末端酸無水物基が封止され、ポリアミド酸又はポリイミドの分子量増加を抑制する。
【0044】
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く);
炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物は、ダイマー酸の製造時の副生成物である炭素数41~80の範囲内にある三塩基酸化合物を主成分とする多塩基酸化合物である。また、炭素数41~80のダイマー酸以外の重合脂肪酸を含んでいてもよい。アミン化合物は、これらの多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるものである。
【0045】
(c)成分のアミン化合物は、ポリイミドの分子量増加を助長する成分である。トリマー酸を由来とするトリアミン体を主成分とする三官能以上のアミノ基が、ポリアミド酸又はポリイミドの末端酸無水物基と反応し、ポリイミドの分子量を急激に増加させる。また、炭素数41~80のダイマー酸以外の重合脂肪酸から誘導されるアミン化合物も、ポリイミドの分子量を増加させ、ポリアミド酸又はポリイミドのゲル化の原因となる。
【0046】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いた測定によって各成分の定量を行う場合、ダイマージアミン組成物の各成分のピークスタート、ピークトップ及びピークエンドの確認を容易にするために、ダイマージアミン組成物を無水酢酸及びピリジンで処理したサンプルを使用し、また内部標準物質としてシクロヘキサノンを使用する。このように調製したサンプルを用いて、GPCのクロマトグラムの面積パーセントで各成分を定量する。各成分のピークスタート及びピークエンドは、各ピーク曲線の極小値とし、これを基準にクロマトグラムの面積パーセントの算出を行うことができる。
【0047】
また、ダイマージアミン組成物は、GPC測定によって得られるクロマトグラムの面積パーセントで、成分(b)及び(c)の合計が4%以下、好ましくは4%未満がよい。成分(b)及び(c)の合計を4%以下とすることで、ポリイミドの分子量分布の拡がりを抑制することができる。
【0048】
また、(b)成分のクロマトグラムの面積パーセントは、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下がよい。このような範囲にすることで、ポリイミドの分子量の低下を抑制することができ、更にテトラカルボン酸無水物成分及びジアミン成分の仕込みのモル比の範囲を広げることができる。なお、(b)成分は、ダイマージアミン組成物中に含まれていなくてもよい。
【0049】
また、(c)成分のクロマトグラムの面積パーセントは、2%以下であり、好ましくは1.8%以下、より好ましくは1.5%以下がよい。このような範囲にすることで、ポリイミドの分子量の急激な増加を抑制することができ、更に樹脂フィルムの広域の周波数での誘電正接の上昇を抑えることができる。なお、(c)成分は、ダイマージアミン組成物中に含まれていなくてもよい。
【0050】
また、成分(b)及び(c)のクロマトグラムの面積パーセントの比率(b/c)が1以上である場合、テトラカルボン酸無水物成分及びジアミン成分のモル比(テトラカルボン酸無水物成分/ジアミン成分)は、好ましくは0.97以上1.0未満とすることがよく、このようなモル比にすることで、ポリイミドの分子量の制御がより容易となる。
【0051】
また、成分(b)及び(c)の前記クロマトグラムの面積パーセントの比率(b/c)が1未満である場合、テトラカルボン酸無水物成分及びジアミン成分のモル比(テトラカルボン酸無水物成分/ジアミン成分)は、好ましくは0.97以上1.1以下とすることがよく、このようなモル比にすることで、ポリイミドの分子量の制御がより容易となる。
【0052】
ダイマージアミン組成物は、市販品が利用可能であり、(a)成分のダイマージアミン以外の成分を低減する目的で精製することが好ましく、例えば(a)成分を96面積%以上とすることが好ましい。精製方法としては、特に制限されないが、蒸留法や沈殿精製等の公知の方法が好適である。ダイマージアミン組成物の市販品としては、例えばクローダジャパン社製のPRIAMINE1073(商品名)、同PRIAMINE1074(商品名)、同PRIAMINE1075(商品名)等が挙げられる。
【0053】
接着性ポリイミドは、上記以外のジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含んでいてもよい。そのようなジアミン残基としては、例えば、ビスアニリンフルオレン(BAFL)、9,9‐ビス(3‐メチル‐4‐アミノフェニル)フルオレン、9,9‐ビス(3‐フルオロ‐4‐アミノフェニル)フルオレン、9,9‐ビス[4‐(アミノフェノキシ)フェニル]フルオレンなどのフルオレン骨格を有するジアミン化合物から誘導されるジアミン残基や、下記の一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が好ましい。特にBAFLに代表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物から誘導されるジアミン残基は、4つの芳香環を含むことから、芳香環濃度の調節の目的で有利に使用できる。
【0054】
【化3】
【0055】
式(B1)~(B7)において、Rは独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-COO-、-CH-、-C(CH-、-NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、nは独立に0~4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。ここで、「独立に」とは、上記式(B1)~(B7)の内の一つにおいて、または二つ以上において、複数の連結基A、複数のR若しくは複数のnが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。なお、上記式(B1)~(B7)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR(ここで、R,Rは、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
【0056】
式(B1)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B1)」と記すことがある)は、2つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B1)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B1)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH-、-C(CH-、-CO-、-SO-、-S-が好ましい。
【0057】
ジアミン(B1)としては、例えば、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン等を挙げることができる。
【0058】
式(B2)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B2)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B2)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B2)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
【0059】
ジアミン(B2)としては、例えば1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン等を挙げることができる。
【0060】
式(B3)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B3)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B3)は、1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B3)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
【0061】
ジアミン(B3)としては、例えば1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン等を挙げることができる。
【0062】
式(B4)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B4)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B4)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B4)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH-、-C(CH-、-SO-、-CO-、-CONH-が好ましい。
【0063】
ジアミン(B4)としては、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド等を挙げることができる。
【0064】
式(B5)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B5)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B5)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B5)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
【0065】
ジアミン(B5)としては、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン等を挙げることができる。
【0066】
式(B6)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B6)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B6)は、少なくとも2つのエーテル結合を有することで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B6)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-C(CH-、-O-、-SO-、-CO-が好ましい。
【0067】
ジアミン(B6)としては、例えば、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)等を挙げることができる。
【0068】
式(B7)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B7)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B7)は、ジフェニル骨格の両側に、それぞれ屈曲性の高い2価の連結基Aを有するため、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B7)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
【0069】
ジアミン(B7)としては、例えば、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル等を挙げることができる。
【0070】
接着性ポリイミドは、全ジアミン残基に対して、フルオレン骨格を有するジアミン化合物及びジアミン(B1)~ジアミン(B7)から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を、合計で70モル%以下、好ましくは60モル%以下、より好ましくは1~30モル%の範囲内、更に好ましくは5~20モル%の範囲内で含有してもよい。フルオレン骨格を有するジアミン化合物は芳香環濃度の調節に有効であり、ジアミン(B1)~ジアミン(B7)は、屈曲性を有する分子構造を持つため、これらから選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物を上記範囲内の量で使用することによって、ポリイミド分子鎖の柔軟性を向上させ、熱可塑性を付与することができる。
【0071】
接着性ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、さらに上記以外のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含むことができる。
【0072】
接着性ポリイミドは、上記の酸無水物成分とジアミン成分を溶媒中で反応させ、ポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、酸無水物成分とジアミン成分をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0~100℃の範囲内の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5~50重量%の範囲内、好ましくは10~40重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5~50重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0073】
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸の溶液の粘度は、500mPa・s~100000mPa・sの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
【0074】
ポリアミド酸をイミド化させてポリイミドを形成させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80~400℃の範囲内の温度条件で1~24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。また、温度は一定の温度条件で加熱しても良いし、工程の途中で温度を変えることもできる。
【0075】
接着性ポリイミドにおいて、上記酸無水物成分及びジアミン成分の種類や、2種以上の酸無水物成分又はジアミン成分を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、誘電特性、熱膨張係数、引張弾性率、ガラス転移温度等の物性を制御することができる。また、接着性ポリイミドが構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
【0076】
接着性ポリイミドのイミド基濃度は、好ましくは22重量%以下、より好ましくは20重量%以下がよい。ここで、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(-(CO)-N-)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。イミド基濃度が22重量%を超えると、樹脂自体の分子量が小さくなるとともに、極性基の増加によって低吸湿性も悪化し、Tg及び弾性率が上昇する。
【0077】
接着性ポリイミドは、完全にイミド化された構造が最も好ましい。但し、ポリイミドの一部がアミド酸となっていてもよい。そのイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、1回反射ATR法にてポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1015cm-1付近のベンゼン環吸収体を基準とし、1780cm-1のイミド基に由来するC=O伸縮の吸光度から算出することができる。
【0078】
(接着性ポリイミドの架橋形成)
接着性ポリイミドがケトン基を有する場合に、該ケトン基と、少なくとも2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物(以下、「架橋形成用アミノ化合物」と記すことがある)のアミノ基を反応させてC=N結合を形成させることによって、架橋構造を形成することができる。このような架橋構造を形成したポリイミド(以下「架橋ポリイミド」と記すことがある)は、接着性ポリイミドの応用例であり、好ましい形態となる。なお、架橋形成によって重量平均分子量が大きく変動するため、架橋形成前の接着性ポリイミドが後述する重量平均分子量を満たしていればよく、架橋ポリイミドは後述する重量平均分子量を満たさなくてもよい。また、ケトン基を有する接着性ポリイミドに架橋剤を配合したポリイミド組成物は接着性ポリイミドの別の応用例であり、好ましい形態となる。架橋構造の形成によって、接着性ポリイミドの耐熱性を向上させることができる。ケトン基を有する接着性ポリイミドを形成するために好ましいテトラカルボン酸二無水物としては、例えば3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を、ジアミン化合物としては、例えば、4,4’―ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BABP)、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン(BABB)等の芳香族ジアミンを挙げることができる。
【0079】
架橋構造を形成させる目的において、特に、全テトラカルボン酸残基に対して、BTDAから誘導されるBTDA残基を、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上含有する上記の接着性ポリイミドに対し、架橋形成用アミノ化合物を作用させることが好ましい。なお、本発明において、「BTDA残基」とは、BTDAから誘導された4価の基のことを意味する。
【0080】
架橋形成用アミノ化合物としては、(I)ジヒドラジド化合物、(II)芳香族ジアミン、(III)脂肪族アミン等を例示することができる。これらの中でも、ジヒドラジド化合物が好ましい。ジヒドラジド化合物以外の脂肪族アミンは、室温でも架橋構造を形成しやすく、ワニスの保存安定性の懸念があり、一方、芳香族ジアミンは、架橋構造の形成のために高温にする必要がある。このように、ジヒドラジド化合物を使用した場合は、ワニスの保存安定性と硬化時間の短縮化を両立させることができる。ジヒドラジド化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4-ビスベンゼンジヒドラジド、1,4-ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6-ピリジン二酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物が好ましい。以上のジヒドラジド化合物は、単独でもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。
【0081】
また、上記(I)ジヒドラジド化合物、(II)芳香族ジアミン、(III)脂肪族アミン等のアミノ化合物は、例えば(I)と(II)の組み合わせ、(I)と(III)との組み合わせ、(I)と(II)と(III)との組み合わせのように、カテゴリーを超えて2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0082】
また、架橋形成用アミノ化合物による架橋によって形成される網目状の構造をより密にするという観点から、本発明で使用する架橋形成用アミノ化合物は、その分子量(架橋形成用アミノ化合物がオリゴマーの場合は重量平均分子量)が5,000以下であることが好ましく、より好ましくは90~2,000、更に好ましくは100~1,500がよい。この中でも、100~1,000の分子量をもつ架橋形成用アミノ化合物が特に好ましい。架橋形成用アミノ化合物の分子量が90未満になると、架橋形成用アミノ化合物の1つのアミノ基が接着性ポリイミドのケトン基とC=N結合を形成するにとどまり、残りのアミノ基の周辺が立体的に嵩高くなるために残りのアミノ基はC=N結合を形成しにくい傾向となる。
【0083】
接着性ポリイミド中のケトン基と架橋形成用アミノ化合物とを架橋形成させる場合は、接着性ポリイミドを含む樹脂溶液に、上記架橋形成用アミノ化合物を加えて、接着性ポリイミド中のケトン基と架橋形成用アミノ化合物の第1級アミノ基とを縮合反応させる。この縮合反応により、樹脂溶液は硬化して硬化物となる。この場合、架橋形成用アミノ化合物の添加量は、ケトン基1モルに対し、第1級アミノ基が合計で0.004モル~1.5モル、好ましくは0.005モル~1.2モル、より好ましくは0.03モル~0.9モル、最も好ましくは0.04モル~0.6モルとすることができる。ケトン基1モルに対して第1級アミノ基が合計で0.004モル未満となるような架橋形成用アミノ化合物の添加量では、架橋形成用アミノ化合物による架橋が十分ではないため、硬化後の耐熱性が発現しにくい傾向となり、架橋形成用アミノ化合物の添加量が1.5モルを超えると未反応の架橋形成用アミノ化合物が熱可塑剤として作用し、接着剤層としての耐熱性を低下させる傾向がある。
【0084】
架橋形成のための縮合反応の条件は、接着性ポリイミドにおけるケトン基と上記架橋形成用アミノ化合物の第1級アミノ基が反応してイミン結合(C=N結合)を形成する条件であれば、特に制限されない。加熱縮合の温度は、縮合によって生成する水を系外へ放出させるため、又は接着性ポリイミドの合成後に引き続いて加熱縮合反応を行なう場合に当該縮合工程を簡略化するため等の理由で、例えば120~220℃の範囲内が好ましく、140~200℃の範囲内がより好ましい。反応時間は、30分~24時間程度が好ましい。反応の終点は、例えばフーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1670cm-1付近のポリイミド樹脂におけるケトン基に由来する吸収ピークの減少又は消失、及び1635cm-1付近のイミン基に由来する吸収ピークの出現により確認することができる。
【0085】
接着性ポリイミドのケトン基と上記架橋形成用アミノ化合物の第1級のアミノ基との加熱縮合は、例えば、
(1)接着性ポリイミドの合成(イミド化)に引き続き、架橋形成用アミノ化合物を添加して加熱する方法、
(2)ジアミン成分として予め過剰量のアミノ化合物を仕込んでおき、接着性ポリイミドの合成(イミド化)に引き続き、イミド化若しくはアミド化に関与しない残りのアミノ化合物を架橋形成用アミノ化合物として利用して接着性ポリイミドとともに加熱する方法、
又は、
(3)上記の架橋形成用アミノ化合物を添加した接着性ポリイミドの組成物を所定の形状に加工した後(例えば任意の基材に塗布した後やフィルム状に形成した後)に加熱する方法、
等によって行うことができる。
【0086】
接着性ポリイミドの耐熱性付与のため、イミン結合の形成によって架橋構造とした架橋ポリイミドの例を挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、ポリイミドの硬化方法として、例えばエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、マレイミド、活性化エステル樹脂、スチレン骨格を有する樹脂等の不飽和結合を有する化合物等を配合し硬化することも可能である。
【0087】
接着性ポリイミドは、ポリイミド中の全原子の合計含有量に対する6員芳香環由来の炭素原子(ダイマージアミン組成物に由来する6員芳香環の炭素原子を除く)の含有率が、12~40重量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは17~38重量%の範囲内、さらに好ましくは20~30重量%の範囲内である。6員芳香環由来の炭素原子の含有率は、接着性ポリイミド中に含まれる芳香環の含有量(芳香環濃度)を意味する。6員芳香環由来の炭素原子の含有率を12~40重量%の範囲内とすることによって、ポリイミド中の芳香環同士の相互作用により分子の運動が制限され、低誘電正接化の効果が発現する。6員芳香環由来の炭素原子の含有率が12重量%未満では、ポリイミドの分子鎖の運動を抑制できないため、誘電正接が高くなる。6員芳香環由来の炭素原子の含有率が40重量%を超えると分子の極性が大きくなり、誘電正接が高くなる。
【0088】
ベンゼン環などの芳香環は、高周波によって振動し、熱損失を増加させる。そのため、一般的傾向として、ポリイミド中に含まれる芳香環濃度が増加するに伴って誘電正接が増加していく。ところが、接着性ポリイミドは、芳香環濃度が12~40重量%の範囲内であれば、芳香環濃度が増加しても誘電正接が増加せず、むしろ、ある芳香環濃度までは誘電正接が低下する傾向を示す。このような挙動を示す原因は未だ明らかではないが、接着性ポリイミドは、ダイマージアミン組成物を原料とするため、芳香族ジアミンのみを原料とするポリイミドに比べて相対的に芳香環濃度が低く、このように芳香環濃度が低い状態から芳香環の濃度を少しずつ高めていくと、芳香環同士の相互作用により分子の運動が制限され、誘電正接が低く抑えられるものと推測される。そして、芳香環濃度が40重量%に達するまでの間は、周波数の増加にかかわらず、十分に低い誘電正接を維持できると考えられる。
【0089】
接着性ポリイミドは、重量平均分子量(Mw)が10,000~200,000の範囲内であることが好ましく、10,000~60,000の範囲内であることがより好ましい。接着性ポリイミドのMwが10,000未満であると、ポリイミド分子鎖において高極性の末端基が増加するために比誘電率及び誘電正接が上昇しやすくなるが、10,000以上であることにより、高極性の末端基の増加が抑えられ、比誘電率及び誘電正接の上昇を抑制することができる。一方、Mwが200,000を超える場合、ワニスにしたときに高粘度となり、ハンドリング性が低下したり、コーティング時に厚みムラが生じやすくなったりする。接着性ポリイミドのMwのさらに好ましい範囲は15,000~60,000の範囲内であり、最も好ましくは18,000~50,000の範囲内である。Mwが15,000未満の場合、ポリイミド分子鎖において高極性の酸末端が増加するために比誘電率及び誘電正接が上昇しやすくなることがある。Mwが60,000を超える場合、分子鎖長が長くなるために、脂環式ジアミンもしくは芳香族ジアミン導入の効果が発現しにくくなり、比誘電率及び誘電正接が上昇しやすくなることがある。
【0090】
また、接着性ポリイミドは、Mwと数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が好ましくは1.5~2.5の範囲内、より好ましくは1.8~2.0にあることがよい。
比Mw/Mnは多分散度を表しており、接着性ポリイミドは比Mw/Mnを1.5以上とすることが好ましい。Mnが同程度であっても、分散度が高いほど高分子量体の頻度が多くなることから、分子の絡み合いによる運動抑制が高まり、低誘電正接化、引き裂き強度の向上などが図られる。また、Mnは、Mwよりも直接的にポリイミド鎖の末端数を表すため、比Mw/Mnを2.5以下とし、ある程度の分散度を確保しつつMnとのバランスを図ることにより、ポリイミド分子鎖における高極性の末端の増加を抑え、比誘電率及び誘電正接の上昇を抑制することができる。Mnの制御は、ダイマージアミン組成物中のダイマージアミンの含有量を高めること(つまり、トリマー成分及びモノマー成分を低減すること)によって可能であり、これにより接着性ポリイミドの分子量の拡がりを抑制することができるとともに、周波数依存性の改善にも寄与していると考えられる。
【0091】
接着性ポリイミドは、樹脂組成物の形態で用いることができる。例えば、下記(A)成分及び(B)成分、
(A)ケトン基を有する接着性ポリイミド、
及び
(B)前記ケトン基と求核付加反応する官能基を有する架橋剤、
を含有するポリイミド組成物の形態とすることができる。ここで、(B)成分の架橋剤としては、上述の架橋形成用アミノ化合物を使用できる。
【0092】
ポリイミド組成物は、好ましくは樹脂成分の主成分として、より好ましくは樹脂成分の70重量%以上、さらに好ましくは樹脂成分の90重量%以上、最も好ましくは樹脂成分の全部として接着性ポリイミドを含有する。なお、樹脂成分の主成分とは、全樹脂成分に対して50重量%を超えて含まれる成分を意味する。また、ポリイミド組成物は、(A)成分中のケトン基1モルに対し、前記官能基が合計で0.04~0.50モルの範囲内、好ましくは0.04~0.40モルの範囲内、より好ましくは0.06~0.30モルの範囲内となるように(B)成分を含有することができる。ケトン基1モルに対して架橋剤の官能基が合計で0.04モル未満では、架橋形成が十分に進行しないため、硬化後の耐熱性が発現しにくい傾向となる。一方で、0.5モルを超えると、誘電正接を増加させる傾向がある。これは、過剰な架橋剤によってポリイミド分子鎖の運動性が制限されて、硬化時に誘電正接の抑制に有効な分子鎖の規則構造の形成が阻害されるためと推測される。また、架橋剤の量が多すぎると、未反応の架橋剤が熱可塑剤として作用し、接着剤層としての耐熱性を低下させる傾向がある。
【0093】
ポリイミド組成物は、ケトン基含有ポリイミド中のケトン基と架橋剤の官能基とを求核付加反応させることによって架橋形成し、硬化物である架橋ポリイミドとなる。架橋形成のための求核付加反応の条件は特に制限されず、架橋剤の種類に応じて選択できる。例えば、架橋形成用アミノ化合物の第1級アミノ基をケトン基含有ポリイミドにおけるケトン基と反応させる場合は、加熱による縮合反応によってイミン結合(C=N結合)が生成し、架橋構造が形成される。
【0094】
また、接着性ポリイミドは溶剤可溶性であるため、ポリイミド組成物は、溶剤を含む形態で用いることができる。溶剤としては、接着性ポリイミドを溶解できるものであれば特に制限はなく、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、クレゾール、アセトン等が挙げられる。これらの溶剤を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。
【0095】
ポリイミド組成物において、接着性ポリイミドと溶剤との配合比は、組成物を塗工可能な程度の粘度に維持できれば特に制限はない。ポリイミド組成物の粘度は、例えば、500mPa・s~100000mPa・sの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、塗工作業の際に樹脂フィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
【0096】
ポリイミド組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの他の硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、有機フィラー、無機フィラー、カップリング剤、難燃剤などを適宜配合することができる。
【0097】
[樹脂フィルム]
本実施の形態に係る樹脂フィルムは、上記接着性ポリイミド又は架橋ポリイミドをフィルム状に加工したものである。樹脂フィルムは、樹脂成分の主成分として、好ましくは樹脂成分の60重量%以上、より好ましくは樹脂成分の90重量%以上、最も好ましくは樹脂成分の全部として、上記接着性ポリイミド又は架橋ポリイミドを含有するフィルムであれば特に限定されるものではない。なお、樹脂成分の主成分とは、全樹脂成分に対して50重量%を超えて含まれる成分を意味する。樹脂フィルムは、接着性ポリイミド又は架橋ポリイミドからなるフィルム(シート)であってもよいし、例えば、銅箔、ガラス板などの無機材料の基材や、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの樹脂基材に積層された状態であってもよい。樹脂フィルムは、任意成分として、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの他の硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、有機フィラー、無機フィラー、カップリング剤、難燃剤などを適宜配合することができる。
【0098】
(誘電正接)
本実施の形態の樹脂フィルムは、23℃、50%RHの恒温恒湿条件(常態)のもと24時間調湿後に、スプリッドシリンダ共振器(SCDR)により測定される10GHzにおける誘電正接(Tanδ)及び28GHzにおける誘電正接(Tanδ)がいずれも0.0025未満である。誘電正接(Tanδ及びTanδ)が上記数値を超えると、回路基板に適用した際に、誘電損失の増大に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。誘電正接(Tanδ及びTanδ)を0.0025未満とすることで、高周波信号伝送時の誘電損失を効果的に低減できる。ここで、10GHzにおける誘電正接(Tanδ)が0.0025未満であることは、Sub6用途の周波数帯での伝送損失を効果的に低減できることを意味している。また、28GHzにおける誘電正接(Tanδ)が0.0025未満であることは、Sub6から10GHzを超えてミリ波を含む周波数帯での伝送損失を効果的に低減できることを意味している。
【0099】
また、本実施の形態の樹脂フィルムは、Tanδに対するTanδの比(Tanδ/Tanδ)が0.5以上1.0以下、好ましくは0.6以上1.0以下、より好ましくは0.7以上1.0以下である。比(Tanδ/Tanδ)は、周波数依存性の指標となるものであり、0.5以上1.0以下であることによって、10~28GHzの周波数帯で周波数が増加しても、誘電正接が増加せず、同じか、むしろ減少することを意味する。そのため、10GHz以上の信号伝送時の損失を効果的に低減できることになり、Sub6からミリ波までの高周波信号の伝送回路への適用において好適な性質である。比(Tanδ/Tanδ)が0.5未満であると周波数による変動が大きくなることから、幅広い周波数帯に対応する材料としての使用が困難となり、1.0を超えると、周波数の増加に伴って伝送損失が大きくなるため好ましくない。
【0100】
また、本実施の形態の樹脂フィルムは、Tanδ及びTanδの差分の絶対値が0.0010以下であることが好ましい。この絶対値が0.0010を超えると、周波数による変動が大きくなることから、Sub6からミリ波までの幅広い周波数帯に対応する材料として使用が難しくなる。そのため、Tanδ及びTanδの差分の絶対値は、0.00060以下がより好ましく、0.00040以下が最も好ましい。なお、Tanδ及びTanδの差分の絶対値とは、|Tanδ-Tanδ|又は|Tanδ-Tanδ|の両方を意味する。
【0101】
また、本実施の形態の樹脂フィルムは、23℃、50%RHの恒温恒湿条件(常態)のもと24時間調湿後に、スプリッドシリンダ共振器(SCDR)により測定される40GHzにおける誘電正接(Tanδ)が0.0025未満であることが好ましい。誘電正接(Tanδ)が上記数値を超えると、回路基板に適用した際に、誘電損失の増大に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。誘電正接(Tanδ)を0.0025未満とすることで、高周波信号伝送時の誘電損失を効果的に低減できる。特に、40GHzにおける誘電正接(Tanδ)が0.0025未満であることは、ミリ波を含む周波数帯での伝送損失を効果的に低減できることを意味している。
【0102】
また、本実施の形態の樹脂フィルムは、Tanδに対するTanδの比(Tanδ/Tanδ)が0.5以上1.0以下、好ましくは0.6以上1.0以下、より好ましくは0.7以上1.0以下である。比(Tanδ/Tanδ)は、周波数依存性の指標となるものであり、0.5以上1.0以下であることによって、10~40GHzの周波数帯で周波数が増加しても、誘電正接が増加せず、同じか、むしろ減少することを意味する。そのため、10GHz以上の信号伝送時の損失を効果的に低減できることになり、Sub6からミリ波までの高周波信号の伝送回路への適用において好適な性質である。なお、比(Tanδ/Tanδ)が0.5未満であると周波数による変動が大きくなることから、幅広い周波数帯に対応する材料としての使用が困難となり、1.0を超えると周波数の増加に伴って伝送損失が大きくなるため好ましくない。
【0103】
また、本実施の形態の樹脂フィルムは、Tanδ及びTanδの差分の絶対値が0.0011未満であることが好ましい。この絶対値が0.0011以上であると、周波数による変動が大きくなることから、Sub6からミリ波までの幅広い周波数帯に対応する材料として使用が難しくなる。そのため、Tanδ及びTanδの差分の絶対値は、0.00070以下がより好ましく、0.00045以下が最も好ましい。なお、Tanδ及びTanδの差分の絶対値とは、|Tanδ-Tanδ|又は|Tanδ-Tanδ|の両方を意味する。
【0104】
(比誘電率)
本実施の形態の樹脂フィルムは、23℃、50%RHの恒温恒湿条件(常態)のもと24時間調湿後に、スプリッドシリンダ共振器(SCDR)により測定される10GHz~40GHzの周波数帯における比誘電率(ε)が、どの周波数においても3.0以下、好ましくは2.7以下であることがよい。比誘電率(ε)が上記数値を超えると、回路基板に適用した際に、誘電損失の増大に繋がり、GHz帯域(例えば1~50GHz)の高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
【0105】
(ガラス転移温度)
本実施の形態の樹脂フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が250℃以下であることが好ましく、40℃以上200℃以下の範囲内であることがより好ましい。樹脂フィルムのTgが250℃以下であることによって、低温での熱圧着が可能になるため、積層時に発生する内部応力を緩和し、回路加工後の寸法変化を抑制できる。樹脂フィルムのTgが250℃を超えると、接着温度が高くなり、回路加工後の寸法安定性を損なう恐れがある。
【0106】
(引張弾性率)
樹脂フィルムの引張り弾性率は、3000MPa以下がよく、好ましくは100MPa以上2500MPa以下の範囲内、より好ましくは200MPa以上2000MPa以下の範囲内である。引張弾性率が100MPa未満の場合、フィルムに皴が入りやすい、また、積層時の空気噛みこみの発生などハンドリング性が悪くなることがある。また、引張弾性率が3000MPaを超えると基材と樹脂フィルムを積層したとき、反りの発生や寸法安定性が低下したりする。上記の引張弾性率にすることで、ハンドリング性が良好で、反りを抑制し寸法安定性に優れる積層体を得ることができる。
【0107】
(厚み)
本実施の形態の樹脂フィルムの厚みには特に制限はないが、例えば、自己支持性のフィルムとする場合の厚みは、5μm以上125μm以下の範囲内が好ましく、8μm以上100μm以下の範囲内であることがより好ましい。樹脂フィルムの厚みが5μmに満たないと、樹脂フィルムの製造等における搬送時にシワが入るなどの不具合が生じるおそれがあり、一方、樹脂フィルムの厚みが125μmを超えると樹脂フィルムの生産性低下の虞がある。
一方、本実施の形態の樹脂フィルムを基材や任意の樹脂層と積層した状態で用いる場合は、その厚みの下限値は、例えば0.1μm以上であればよい。
【0108】
本実施の形態の樹脂フィルムの用途は、特に限定されないが、GHz帯域(例えば1~50GHz)の高周波伝送基板用途であることが好ましく、5Gで使用される伝送回路基板用途や、自動車等のセンサーで使用されるミリ波伝送基板等が例示される。高周波伝送FPCには、液晶ポリマー(LCP)が使用されることがあるが、LCPは、信号の周波数増加に伴って誘電正接が上昇する傾向(周波数依存性)があり、芳香族系ポリイミドにおいても同様に周波数増加に伴い誘電正接が上昇する周波数依存性を示す。従来の材料の中には、周波数増加に伴い誘電正接が低下するものも存在するが、その場合のGHz帯域での誘電正接は0.003以上であり、高周波信号の伝送に好適ではない。それに対して、本実施の形態の樹脂フィルムは、上述のとおり、誘電正接(Tanδ、Tanδ及びTanδ)が0.0025未満と非常に低いにもかかわらず、周波数が増加しても誘電正接が一定であるか、あるいは、逆行して誘電正接が低減するという優れた特長(周波数非依存性)を有しているため、GHz帯域での使用に特に適している。
【0109】
本実施の形態の樹脂フィルムの好ましい形態として、接着剤フィルムを挙げることができる。
【0110】
本実施の形態の樹脂フィルムの製造方法については特に限定されないが、以下の[1]~[3]の方法を例示できる。
[1]任意の基材に、接着性ポリイミドを溶液の状態(例えば、ポリイミド組成物の状態)で塗布して塗布膜を形成し、これを例えば80~180℃の温度で乾燥させてフィルム化した後、必要に応じて基材から剥離する方法。
[2]任意の基材に、接着性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、イミド化してフィルム化した後、必要に応じて基材から剥離する方法。
[3]任意の基材に、接着性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、ポリアミド酸のゲルフィルムを基材から剥がし、イミド化して樹脂フィルムとする方法。
接着性ポリイミドの溶液(又はポリアミド酸溶液)を基材上に塗布する方法としては特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
【0111】
次に、樹脂フィルムを適用した好ましい実施の形態である積層体、金属張積層板、回路基板及び多層回路基板について、具体例を挙げて説明する。
【0112】
[積層体]
本発明の一実施の形態に係る積層体100は、例えば図1に示すように、基材10と、この基材10の少なくとも一方の面に積層された接着剤層20と、を有し、接着剤層20が上記樹脂フィルムからなるものである。なお、積層体100は、上記以外の任意の層を含んでいてもよい。積層体100における基材10としては、例えば、銅箔、ガラス板などの無機材料の基材や、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの樹脂材料の基材を挙げることができる。積層体100は、基材10から剥離しない点を除き、上記樹脂フィルムの製造方法の[1]~[3]のいずれかに準じて製造できる。また、基材10と樹脂フィルムを別々に準備し、貼り合わせることによって積層体100を製造してもよい。
積層体100の好ましい態様として、カバーレイフィルム、樹脂付き銅箔などを挙げることができる。
【0113】
(カバーレイフィルム)
積層体100の一態様であるカバーレイフィルムは、図示は省略するが、基材10としてのカバーレイ用フィルム材層と、該カバーレイ用フィルム材層の片側の面に積層された接着剤層20とを有し、接着剤層20が上記樹脂フィルムからなるものである。なお、カバーレイフィルムは、上記以外の任意の層を含んでいてもよい。
【0114】
カバーレイ用フィルム材層の材質は、特に限定されないが、例えばポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等のポリイミド系フィルムや、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルムなどを用いることができる。これらの中でも、優れた耐熱性を持つポリイミド系フィルムを用いることが好ましい。また、カバーレイ用フィルム材層は、遮光性、隠蔽性、意匠性等を効果的に発現させるために、黒色顔料を含有することもでき、また誘電特性の改善効果を損なわない範囲で、表面の光沢を抑制するつや消し顔料などの任意成分を含むことができる。
【0115】
カバーレイ用フィルム材層の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば5μm以上100μm以下の範囲内が好ましい。
また、接着剤層20の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば10μm以上75μm以下の範囲内が好ましい。
【0116】
本実施の形態のカバーレイフィルムは、以下に例示する方法で製造できる。
まず、第1の方法として、カバーレイ用のフィルム材層の片面に接着剤層20となるポリイミドを溶液の状態(例えば、溶剤を含有するワニス状がよく、好ましくはポリイミド組成物がよい)で塗布した後、例えば80~180℃の温度で乾燥させて接着剤層20を形成することにより、カバーレイ用フィルム材層と接着剤層20を有するカバーレイフィルムを形成できる。
【0117】
また、第2の方法として、任意の基材上に、接着剤層20用のポリイミドを溶液の状態(例えば、溶剤を含有するワニス状がよく、好ましくはポリイミド組成物がよい)で塗布し、例えば80~180℃の温度で乾燥した後、剥離することにより、接着剤層20用の樹脂フィルムを形成し、この樹脂フィルムを、カバーレイ用のフィルム材層と例えば60~220℃の温度で熱圧着させることによってカバーレイフィルムを形成できる。
【0118】
(樹脂付き銅箔)
積層体100の別の態様である樹脂付き銅箔は、図示は省略するが、基材10としての銅箔の少なくとも片側に接着剤層20を積層したものであり、接着剤層20が上記樹脂フィルムからなるものである。なお、本実施の形態の樹脂付き銅箔は、上記以外の任意の層を含んでいてもよい。
【0119】
樹脂付き銅箔における接着剤層20の厚みは、例えば0.1~125μmの範囲内にあることが好ましく、0.3~100μmの範囲内がより好ましい。接着剤層20の厚みが上記下限値に満たないと、十分な接着性が担保出来なかったりするなどの問題が生じることがある。一方、接着剤層20の厚みが上記上限値を超えると、寸法安定性が低下するなどの不具合が生じる。また、低誘電率化及び低誘電正接化の観点から、接着剤層20の厚みを3μm以上とすることが好ましい。
【0120】
樹脂付き銅箔における銅箔の材質は、銅又は銅合金を主成分とするものが好ましい。銅箔の厚みは、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは5~25μmの範囲内がよい。生産安定性及びハンドリング性の観点から、銅箔の厚みの下限値は5μmとすることが好ましい。なお、銅箔は圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。また、銅箔としては、市販されている銅箔を用いることができる。
【0121】
樹脂付き銅箔は、例えば、樹脂フィルムに金属をスパッタリングしてシード層を形成した後、例えば銅メッキによって銅層を形成することによって調製してもよく、あるいは、樹脂フィルムと銅箔とを熱圧着などの方法でラミネートすることによって調製してもよい。さらに、樹脂付き銅箔は、銅箔の上に接着剤層20を形成するため、接着性ポリイミド又はその前駆体の塗布液をキャストし、乾燥して塗布膜とした後、必要な熱処理を行って調製してもよい。
【0122】
[金属張積層板]
(第1の態様)
本発明の一実施の形態に係る金属張積層板は、絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を備え、絶縁樹脂層の少なくとも1層が、上記樹脂フィルムからなるものである。なお、本実施の形態の金属張積層板は、上記以外の任意の層を含んでいてもよい。
【0123】
(第2の態様)
本発明の別の実施の形態に係る金属張積層板は、例えば図2に示すように、絶縁樹脂層30と、絶縁樹脂層30の少なくとも片側の面に積層された接着剤層20と、この接着剤層20を介して絶縁樹脂層30に積層された金属層Mと、を備えた、いわゆる3層金属張積層板101であり、接着剤層20が、上記樹脂フィルムからなるものである。なお、3層金属張積層板101は、上記以外の任意の層を含んでいてもよい。3層金属張積層板101は、接着剤層20が、絶縁樹脂層30の片面又は両面に設けられていればよく、金属層Mは、接着剤層20を介して絶縁樹脂層30の片面又は両面に設けられていればよい。つまり、3層金属張積層板101は、片面金属張積層板でもよいし、両面金属張積層板でもよい。3層金属張積層板101の金属層Mをエッチングするなどして配線回路加工することによって、片面FPC又は両面FPCを製造することができる。
【0124】
3層金属張積層板101における絶縁樹脂層30としては、電気的絶縁性を有する樹脂により構成されるものであれば特に限定はなく、例えばポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ETFEなどを挙げることができるが、ポリイミドによって構成されることが好ましい。絶縁樹脂層30を構成するポリイミド層は、単層でも複数層でもよいが、非熱可塑性ポリイミド層を含むことが好ましい。
【0125】
3層金属張積層板101における絶縁樹脂層30の厚みは、例えば1~125μmの範囲内にあることが好ましく、5~100μmの範囲内がより好ましい。絶縁樹脂層30の厚みが上記下限値に満たないと、十分な電気絶縁性が担保出来ないなどの問題が生じることがある。一方、絶縁樹脂層30の厚みが上記上限値を超えると、金属張積層板の反りが生じやすくなるなどの不具合が生じる。
【0126】
3層金属張積層板101における接着剤層20の厚みは、例えば0.1~125μmの範囲内にあることが好ましく、0.3~100μmの範囲内がより好ましい。本実施の形態の3層金属張積層板101において、接着剤層20の厚みが上記下限値に満たないと、十分な接着性が担保出来なかったりするなどの問題が生じることがある。一方、接着剤層20の厚みが上記上限値を超えると、寸法安定性が低下するなどの不具合が生じる。また、絶縁樹脂層30と接着剤層20との積層体である絶縁層全体の低誘電率化及び低誘電正接化の観点から、接着剤層20の厚みは、3μm以上とすることが好ましい。
【0127】
また、絶縁樹脂層30の厚みと接着剤層20との厚みの比(絶縁樹脂層30の厚み/接着剤層20の厚み)は、例えば0.1~3.0の範囲内が好ましく、0.15~2.0の範囲内がより好ましい。このような比率にすることで、3層金属張積層板101の反りを抑制することができる。また、絶縁樹脂層30は、必要に応じて、フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、有機ホスフィン酸の金属塩等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0128】
(第3の態様)
本発明のさらに別の実施の形態に係る金属張積層板は、例えば図3に示すように、少なくとも2つの片面金属張積層板を、接着剤層20を介して貼合せてなる貼合せ型金属張積層板102である。貼合せ型金属張積層板102は、第1の片面金属張積層板41と、第2の片面金属張積層板42と、第1の片面金属張積層板41と第2の片面金属張積層板42との間に積層された接着剤層20と、を備えており、接着剤層20が、上記樹脂フィルムからなるものである。
ここで、第1の片面金属張積層板41は、第1の金属層M1と、この第1の金属層M1の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層31と、を有している。第2の片面金属張積層板42は、第2の金属層M2と、この第2の金属層M2の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層32と、を有している。接着剤層20は、第1の絶縁樹脂層31及び第2の絶縁樹脂層32に当接するように配置されている。なお、貼合せ型金属張積層板102は、上記以外の任意の層を含んでいてもよい。
【0129】
貼合せ型金属張積層板102における第1の絶縁樹脂層31及び第2の絶縁樹脂層32は、第2の態様の3層金属張積層板101の絶縁樹脂層30と同様の構成であってよい。
貼合せ型金属張積層板102は、第1の片面金属張積層板41と第2の片面金属張積層板42をそれぞれ準備し、第1の絶縁樹脂層31と第2の絶縁樹脂層32との間に樹脂フィルムを配置して貼り合わせることによって製造できる。
【0130】
(第4の態様)
本発明のさらに別の実施の形態に係る金属張積層板は、例えば図4に示すように、絶縁樹脂層33と、この絶縁樹脂層33の一方の面に積層された金属層Mと、を有する片面金属張積層板と、絶縁樹脂層33のもう一方の面に積層された接着剤層20と、を備えた接着剤層付き金属張積層板103であり、接着剤層20が、上記樹脂フィルムからなるものである。なお、接着剤層付き金属張積層板103は、上記以外の任意の層を含んでいてもよい。
接着剤層付き金属張積層板103における絶縁樹脂層33は、第2の態様の3層金属張積層板101の絶縁樹脂層30と同様の構成であってよい。
接着剤層付き金属張積層板103は、絶縁樹脂層33と金属層Mとを有する片面金属張積層板を準備し、その絶縁樹脂層33の側に樹脂フィルムを貼り合わせることによって製造できる。
【0131】
上記例示の第1~第4の態様のいずれかの金属張積層板において、金属層M(第1の金属層M1及び第2の金属層M2を含む。以下同様である)の材質としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。なお、後述する回路基板における配線層の材質も金属層Mと同様である。
【0132】
金属層Mの厚みは特に限定されるものではないが、例えば銅箔等の金属箔を用いる場合、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは5~25μmの範囲内がよい。生産安定性及びハンドリング性の観点から金属箔の厚みの下限値は5μmとすることが好ましい。なお、銅箔を用いる場合は、圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。また、銅箔としては、市販されている銅箔を用いることができる。また、金属箔は、例えば、防錆処理や、接着力の向上を目的として、例えばサイディング、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等による表面処理を施してもよい。
【0133】
[回路基板]
(第1の態様)
本発明の実施の形態に係る回路基板は、上記いずれかの実施の形態の金属張積層板の金属層を配線加工してなるものである。金属張積層板の一つ以上の金属層を、常法によってパターン状に加工して配線層(導体回路層)を形成することによって、FPCなどの回路基板を製造できる。なお、回路基板は、配線層を被覆するカバーレイフィルムを備えていてもよい。
【0134】
(第2の態様)
本発明の別の実施の形態に係る回路基板200は、例えば図5に示すように、第1の基材11と、第1の基材11の少なくとも一方の面に積層された配線層50と、第1の基材11の配線層50側の面において配線層50を覆うように積層された接着剤層20と、を備えており、接着剤層20が上記樹脂フィルムからなるものである。なお、回路基板200は、上記以外の任意の層を含んでいてもよい。
回路基板200における第1の基材11は、上記金属張積層板の絶縁樹脂層と同様の構成であってよい。回路基板200は、第1の基材11と、この第1の基材11の少なくとも一方の面に積層された配線層50とを備えた回路基板の配線層50側に樹脂フィルムを貼合せることによって製造できる。
【0135】
(第3の態様)
本発明のさらに別の実施の形態に係る回路基板201は、例えば図6に示すように、第1の基材11と、第1の基材11の少なくとも一方の面に積層された配線層50と、第1の基材11の配線層50側の面において配線層50を覆うように積層された接着剤層20と、接着剤層20の第1の基材11とは反対側の面に積層された第2の基材12と、を備えており、接着剤層20が上記樹脂フィルムからなるものである。なお、回路基板201は、上記以外の任意の層を含んでいてもよい。回路基板201における第1の基材11及び第2の基材12は、上記金属張積層板の絶縁樹脂層と同様の構成であってよい。
回路基板201は、第1の基材11と、この第1の基材11の少なくとも一方の面に積層された配線層50とを備えた回路基板の配線層50側に樹脂フィルムを介して第2の基材12を貼合せることによって製造できる。
【0136】
(第4の態様)
本発明のさらに別の実施の形態に係る回路基板202は、例えば図7に示すように、第1の基材11と、第1の基材11の少なくとも一方の面に積層された接着剤層20と、この接着剤層20の第1の基材11とは反対側の面に積層された第2の基材12と、第1の基材11及び第2の基材12の接着剤層20とは反対側の面にそれぞれ積層された配線層50,50と、を備えており、接着剤層20が上記樹脂フィルムからなるものである。なお、回路基板202は、上記以外の任意の層を含んでいてもよい。回路基板202における第1の基材11及び第2の基材12は、上記金属張積層板の絶縁樹脂層と同様の構成であってよい。
回路基板202は、第1の基材11と、この第1の基材11の少なくとも一方の面に積層された配線層50とを備えた第1の回路基板と、第2の基材12と、この第2の基材12の少なくとも一方の面に積層された配線層50とを備えた第2の回路基板を、それぞれ準備し、第1の回路基板の第1の基材11と、第2の回路基板の第2の基材12との間に樹脂フィルムを配置して貼合せることによって製造できる。
【0137】
[多層回路基板]
本発明の一実施の形態に係る多層回路基板は、複数の絶縁樹脂層が積層された積層体と、該積層体の内部に埋め込まれた1層以上の配線層と、を備え、複数の絶縁樹脂層のうちの少なくとも一層以上が、接着性を有するとともに配線層を被覆する接着剤層20により形成されており、該接着剤層20が上記樹脂フィルムからなるものである。なお、本実施の形態の多層回路基板は、上記以外の任意の層を含んでいてもよい。
例えば図8に示すように、本実施の形態の多層回路基板203は、少なくとも2層以上の絶縁樹脂層34及び少なくも2層以上の配線層50を有するものであり、配線層50の少なくとも1層は接着剤層20で被覆されている。配線層50を被覆する接着剤層20は、配線層50の表面を部分的に被覆するものでもよいし、配線層50の全表面に亘って被覆するものでもよい。また、多層回路基板203は、任意に多層回路基板203の表面に露出する配線層50を有してもよい。また、配線層50に接する層間接続電極(ビア電極)を有しても良い。配線層50は、絶縁樹脂層34の片面又は両面において、所定のパターンで導体回路が形成されたものである。導体回路は、絶縁樹脂層34の表面においてパターン形成されたものでもよいし、ダマシン(埋め込み)式にパターン形成されたものでもよい。多層回路基板203における絶縁樹脂層34は、上記金属張積層板の絶縁樹脂層と同様の構成であってよい。
【0138】
上記各実施の形態の回路基板及び多層回路基板は、接着性ポリイミドを含む接着剤層20を備えているため、高周波伝送においても伝送損失の低減が可能である。
【実施例0139】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0140】
[アミン価の測定方法]
約2gのダイマージアミン組成物を200~250mLの三角フラスコに秤量し、指示薬としてフェノールフタレインを用い、溶液が薄いピンク色を呈するまで、0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液を滴下し、中和を行ったブタノール約100mLに溶解させる。そこに3~7滴のフェノールフタレイン溶液を加え、サンプルの溶液が薄いピンク色に変わるまで、0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液で攪拌しながら滴定する。そこへブロモフェノールブルー溶液を5滴加え、サンプル溶液が黄色に変わるまで、0.2mol/Lの塩酸/イソプロパノール溶液で攪拌しながら滴定する。
アミン価は、次の式(1)により算出する。
アミン価={(V×C)-(V×C)}×MKOH/m ・・・(1)
ここで、アミン価はmg-KOH/gで表される値であり、MKOHは水酸化カリウムの分子量56.1である。また、V、Cはそれぞれ滴定に用いた溶液の体積と濃度であり、添え字の1、2はそれぞれ0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液、0.2mol/Lの塩酸/イソプロパノール溶液を表す。さらに、mはグラムで表されるサンプル重量である。
【0141】
[ポリイミドの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の測定]
重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー株式会社製、HLC-8220GPCを使用)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にテトラヒドロフラン(THF)を用いた。
【0142】
[Cp値の算出方法]
ポリイミド中の全原子の合計含有量に対する6員芳香環由来の炭素原子(ダイマージアミン組成物に由来する6員芳香環の炭素原子を除く)の重量含有率をCp値とした。
【0143】
[ガラス転移温度(Tg)]
ガラス転移温度(Tg)は、5mm×20mmのサイズの接着剤フィルムを、熱機械分析装置(TMA:ネッチ社製、商品名;TMA4000SA)を用いて、0℃から300℃まで昇温速度5℃/分で測定を行った。昇温時の伸びの変曲点となる温度をガラス転移温度とした。
ここで、「熱可塑性ポリイミド」とは、一般に加熱によって軟化し、冷却によって固化し、これを繰り返すことができ、ガラス転移温度が明確に確認できるポリイミドを指すが、本発明では、150℃以下の温度域でガラス転移温度が明確に確認できるポリイミドを意味する。また、熱可塑性ポリイミドは、低温での熱圧着性の観点から、100℃以下の温度域でガラス転移温度が明確に確認できるポリイミドが好ましく、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、かつ、ガラス転移温度+30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa未満を示すものがより好ましい。これに対して、「非熱可塑性ポリイミド」とは、加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドを指すが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、かつ、300℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上を示すものを意味する。
【0144】
[引張弾性率]
引張弾性率は、以下の手順で測定した。まず、テンションテスター(オリエンテック社製、商品名;テンシロン)を用いて、接着剤フィルムから、試験片(幅12.7mm×長さ127mm)を作製した。この試験片を用い、50mm/minで引張試験を行い、25℃における引張弾性率を求めた。
【0145】
[比誘電率及び誘電正接の測定]
ネットワークアナライザ(キーサイト・テクノロジー社製、商品名;ネットワークアナライザN5290A)及びスプリットシリンダ共振器(SCDR)を用いて、温度;23℃、湿度;50%のもと、樹脂シートの所定枚数を重ね合わせて、合計厚みが約100μmの評価サンプルとしたのち、北川精機社製小型精密プレス機で、温度;180℃、圧力;2MPa、1.0時間の条件で熱処理し、温度;23℃、湿度;50%の条件下で、24時間以上調湿した後、周波数10GHzにおける比誘電率(ε)および誘電正接(Tanδ)、及び、周波数28GHzにおける比誘電率(ε)および誘電正接(Tanδ)、及び、周波数40GHzにおける比誘電率(ε)および誘電正接(Tanδ)を測定した。また、誘電正接の周波数依存性の指標となる値を次式により算出した。
12値=Tanδ/Tanδ
12値=Tanδ-Tanδ
13値=Tanδ/Tanδ
13値=Tanδ-Tanδ
【0146】
[反りの評価方法]
反りの評価は、以下の方法で行った。厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名;カプトン100EN)の上、又は12μmの銅箔の上に、乾燥後の厚さが25μmになるようにポリイミド溶液、または接着剤組成物を塗布し、試験片を作製した。この状態でポリイミドフィルム又は銅箔が下面になるように置き、試験片の4隅の反り上がっている高さの平均を測定し、5mm以下を「良」、5mmを超える場合を「不可」とした。
【0147】
[GPC及びクロマトグラムの面積パーセントの算出]
GPCは、20mgのダイマージアミン組成物を200μLの無水酢酸、200μLのピリジン及び2mLのTHFで前処理した100mgの溶液を、10mLのTHF(1000ppmのシクロヘキサノンを含有)で希釈し、サンプルを調製した。調製したサンプルを東ソー株式会社製、商品名;HLC-8220GPCを用いて、カラム:TSK-gel G2000HXL,G1000HXL、フロー量:1mL/min、カラム(オーブン)温度:40℃、注入量:50μLの条件で測定した。なお、シクロヘキサノンは流出時間の補正のために標準物質として扱った。
【0148】
このとき、シクロヘキサノンのメインピークのピークトップがリテンションタイム27分から31分になるように、且つ、前記シクロヘキサノンのメインピークのピークスタートからピークエンドが2分になるように調整し、シクロヘキサノンのピークを除くメインピークのピークトップが18分から19分になるように、且つ、前記シクロヘキサノンのピークを除くメインピークのピークスタートからピークエンドまでが2分から4分30秒となる条件で、各成分(a)~(c);
(a)メインピークで表される成分;
(b)メインピークにおけるリテンションタイムが遅い時間側の極小値を基準にし、それよりも遅い時間に検出されるGPCピークで表される成分;
(c)メインピークにおけるリテンションタイムが早い時間側の極小値を基準にし、それよりも早い時間に検出されるGPCピークで表される成分;
を検出した。
【0149】
本実施例で用いた略号は以下の化合物を示す。
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
6FDA:4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
BPDA:3,3',4,4'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
DDA:炭素数36の脂肪族ジアミン(クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1074を精製したもの、a成分;97.9%、b成分;0.3%、c成分;1.8%、アミン価;210mgKOH/g、環状構造及び鎖状構造のダイマージアミンの混合物)
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
BAFL:ビスアニリンフルオレン
N-12:ドデカン二酸ジヒドラジド
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
OP935:ホスフィン酸のアルミニウム塩(クラリアント社製、商品名;Exolit OP935、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、リン含有量23%、平均粒子径2μm)
SR‐3000:リン酸エステル(大八化学工業株式会社製、商品名;SR‐3000、非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、リン含有量;7.0%)
なお、上記DDAにおいて、a成分、b成分及びc成分の「%」は、GPC測定におけるクロマトグラムの面積パーセントを意味する。また、上記DDAの分子量は次式により算出した。
分子量=56.1×2×1000/アミン価
【0150】
[実施例1]
1000mlのセパラブルフラスコに、21.35gのBTDA(0.0663モル)、29.44gの6FDA(0.0663モル)、63.72gのDDA(0.1193モル)、5.44gのBAPP(0.0133モル)、168.0gのNMP及び112.0gのキシレンを装入し、40℃で1時間良く混合して、ポリアミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、5時間加熱、攪拌し、固形分が30重量%となるようにキシレンを加えてイミド化を完結したポリイミド溶液1(重量平均分子量;41,428、数平均分子量;21,924、C;19.90%)を調製した。
【0151】
[実施例2~4]
表1に示す原料組成とした他は、実施例1と同様にして、ポリイミド溶液2~4を調製した。
【0152】
【表1】
【0153】
[実施例5]
ポリイミド溶液1を離型PETフィルム1(東山フィルム社製、商品名;HY-S05、縦×横×厚さ=200mm×300mm×25μm)の片面に塗布し、120℃で10分間乾燥を行い、接着剤層を離型PETフィルム1から剥離することによって、厚さが25μmの接着剤フィルム1を調製した。接着剤フィルム1の各種評価結果は以下のとおりである。
ε;2.5、Tanδ;0.00141
ε;2.5、Tanδ;0.00132
ε;2.5、Tanδ;0.00128
12値=Tanδ/Tanδ=0.94
12値=Tanδ-Tanδ=0.00009
13値=Tanδ/Tanδ=0.91
13値=Tanδ-Tanδ=0.00013
Tg;46℃(熱可塑性)、引張弾性率;590MPa
【0154】
[実施例6~8]
ポリイミド溶液2~4を使用したこと以外、実施例5と同様にして、接着剤フィルム2~4を調製した。各種特性評価結果は表2に示す。
【0155】
【表2】
【0156】
[実施例9]
100gのポリイミド溶液4(固形分として30g)に1.1gのN-12(0.004モル)を配合し、7.5gのOP935、及び14.0gのキシレンを加えて希釈し、更に1時間攪拌することで接着剤組成物9を調製した。
【0157】
接着剤組成物9を離型PETフィルム1の片面に塗布し、120℃で10分間乾燥を行い、接着剤層の厚さが25μmの樹脂積層体を得た後、接着剤層を離型PETフィルム1から剥離することによって、厚さが25μmの接着剤フィルム9を調製した。
【0158】
接着剤フィルム9を北川精機社製小型精密プレス機で、温度;180℃、圧力;2MPa、1.0時間の条件で熱処理し、樹脂シート9を調製した。樹脂シート9のレーザーラマン分光光度計(日本分光社製、商品名;NRS-3100)のスペクトル測定によって、1575cm-1付近に架橋形成によるピークを確認した。
樹脂シート9の各種評価結果は以下のとおりである。
ε;2.7、Tanδ;0.00182
ε;2.7、Tanδ;0.00156
ε;2.7、Tanδ;0.00146
12値=Tanδ/Tanδ=0.86
12値=Tanδ-Tanδ=0.00026
13値=Tanδ/Tanδ=0.80
13値=Tanδ-Tanδ=0.00036
Tg;51℃(熱可塑性)、引張弾性率;1,500MPa
【0159】
[実施例10]
100gのポリイミド溶液4(固形分として30g)に1.1gのN-12(0.004モル)を配合し、6.0gのSR-3000、及び14.0gのキシレンを加えて希釈し、更に1時間攪拌することで接着剤組成物10を調製した。
【0160】
接着剤組成物10を使用したこと以外、実施例9と同様にして、接着剤フィルム10を得、樹脂シート10を調製した。
樹脂シート10の各種評価結果は以下のとおりである。
ε;2.7、Tanδ;0.00170
ε;2.6、Tanδ;0.00164
ε;2.6、Tanδ;0.00158
12値=Tanδ/Tanδ=0.96
12値=Tanδ-Tanδ=0.00006
13値=Tanδ/Tanδ=0.93
13値=Tanδ-Tanδ=0.00012
Tg;48℃(熱可塑性)、引張弾性率;1,100MPa
【0161】
比較例1
LCPフィルム(液晶ポリマーフィルム、クラレ社製、商品名;ベクスターCT-Z、厚さ;100μm)の誘電特性は以下の通りである。
ε;3.5、Tanδ;0.00210
ε;3.5、Tanδ;0.00240
13値=Tanδ/Tanδ=1.14
13値=Tanδ-Tanδ=-0.00030
【0162】
実施例9、10及び比較例1の各種特性評価結果をまとめて表3に示す。
【0163】
【表3】
【0164】
[実施例11]
接着剤組成物9を厚み12μmの電解銅箔の片面に塗布し、120℃で30分間乾燥を行い、接着剤層の厚さが50μmの樹脂付き銅箔11を調製した。樹脂付き銅箔11の反りの状態は「良」であった。
【0165】
[実施例12]
樹脂付き銅箔11の接着剤層の表面に、更に接着剤組成物9を塗布し、120℃、30分間乾燥を行い、接着剤層の合計の厚さが100μmの樹脂付き銅箔12を調製した。樹脂付き銅箔12の反りの状態は「良」であった。
【0166】
[実施例13]
接着剤組成物9をポリイミドフィルム1(東レ・デュポン社製、商品名;カプトン50EN、ε=3.6、tanδ=0.0084、縦×横×厚さ=200mm×300mm×12μm)の片面に塗布し、120℃で10分間乾燥を行い、接着剤層の厚さが25μmのカバーレイフィルム13を調製した。カバーレイフィルム13の反りの状態は「良」であった。
【0167】
[実施例14]
カバーレイフィルム13の接着剤層側に離型PETフィルム1が接するように積層して、真空ラミネーターを用いて温度160℃、圧力0.8MPa、2分間圧着した。その後、接着剤層側に離型PETフィルム1を圧着したカバーレイフィルム13のポリイミドフィルム1側に接着剤組成物9を乾燥後の厚みが25μmになるように塗布して120℃で10分間乾燥を行った。そして接着剤組成物9を塗布乾燥した面に離型PETフィルム1が接するように積層して、真空ラミネーターを用いて温度160℃、圧力0.8MPa、2分間圧着して、ポリイミドフィルムの両面に接着剤を備えたポリイミド接着剤積層体14を調製した。
【0168】
[実施例15]
厚み12μmの電解銅箔上に、接着剤フィルム9、ポリイミドフィルム2(デュポン社製、商品名;カプトン100-EN、厚み25μm、ε=3.6、tanδ=0.0084)、接着剤フィルム9及び厚み12μmの電解銅箔を順次積層して、真空ラミネーターを用いて温度160℃、圧力0.8MPa、2分間圧着した後、室温から160℃まで昇温、160℃で4時間熱処理して、銅張積層板15を調製した。
【0169】
[実施例16]
厚み12μmの電解銅箔上に、カバーレイフィルム13の接着剤層側が銅箔に接するよう積層して、真空ラミネーターを用いて温度160℃、圧力0.8MPa、2分間圧着した後、室温から160℃まで昇温、160℃で2時間熱処理して、銅張積層板16を調製した。
【0170】
[実施例17]
厚み12μmの圧延銅箔上に、接着剤フィルム9を積層し、カバーレイフィルム13のポリイミドフィルム1側が接着剤フィルム9に接するように積層し、更にカバーレイフィルム13の接着剤層側に厚み12μmの圧延銅箔を順次積層して、真空ラミネーターを用いて温度160℃、圧力0.8MPa、2分間圧着した後、室温から160℃まで昇温、160℃で2時間熱処理して、銅張積層板17を調製した。
【0171】
[実施例18]
樹脂付き銅箔11を2枚用意し、2枚の樹脂付き銅箔11の接着剤層側にポリイミドフィルム3(デュポン社製、商品名;カプトン200-EN、厚み50μm、ε=3.6、tanδ=0.0084)が接するように積層して、真空ラミネーターを用いて温度160℃、圧力0.8MPa、5分間圧着した後、室温から160℃まで昇温、160℃で4時間熱処理して、銅張積層板18を調製した。
【0172】
[実施例19]
接着剤組成物9を片面銅張積層板1(日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名;エスパネックスMC12-25-00UEM、縦×横×厚さ=200mm×300mm×25μm)のポリイミド側に塗布し、120℃で30分間乾燥を行い、接着剤層の厚さが50μmの接着剤付銅張積層板19を調製した。接着剤付銅張積層板19の接着剤層側に片面銅張積層板1のポリイミド側の面が接するように積層して、小型精密プレス機を用いて温度160℃、圧力4.0MPa、120分間圧着して、銅張積層板19を調製した。
【0173】
[実施例20]
2枚の接着剤付銅張積層板19を接着剤層側の面が接するように積層して、小型精密プレス機を用いて温度160℃、圧力4.0MPa、120分間圧着して、銅張積層板20を調製した。
【0174】
[実施例21]
片面銅張積層板1の樹脂層側に、接着剤フィルム9を積層し、更にその上に片面銅張積層板1の樹脂層側が接着剤フィルム9と接するように積層して、小型精密プレス機を用いて温度160℃、圧力4.0MPa、120分間圧着して、銅張積層板21を調製した。
【0175】
[実施例22]
接着剤組成物9を離型PETフィルム1の片面に塗布し、120℃で15分間乾燥を行い、接着剤層を離型PETフィルム1から剥離することによって、厚さが15μmの接着剤フィルム22を得た。
【0176】
片面銅張積層板1の樹脂層側に、接着剤フィルム22を積層し、更にその上に片面銅張積層板1の樹脂層側が接着剤フィルム22と接するように積層して、小型精密プレス機を用いて温度160℃、圧力4.0MPa、120分間圧着して、銅張積層板22を調製した。
【0177】
[実施例23]
両面銅張積層板2(日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名;エスパネックスMB12-25-00UEG)を準備し、一方の面の銅箔にエッチングによる回路加工を施し、導体回路層を形成した配線基板2Aを調製した。
【0178】
両面銅張積層板2の一方の面の銅箔をエッチング除去し、銅張積層板2Bを調製した。
【0179】
配線基板2Aの導体回路層側の面と、銅張積層板2Bの樹脂層側の面との間に接着剤フィルム22を挟み、積層した状態で、温度160℃、圧力4.0MPa、120分間熱圧着して、多層回路基板23を調製した。
【0180】
[実施例24]
液晶ポリマーフィルム(クラレ社製、商品名;CT-Z、厚さ;50μm、CTE;18ppm/K、熱変形温度;300℃、ε=3.40、tanδ=0.0022)を絶縁性基材とし、その両面に厚さ18μmの電解銅箔が設けられた両面銅張積層板24を準備し、一方の面の銅箔にエッチングによる回路加工を施し、導体回路層を形成した配線基板24Aを調製した。
【0181】
両面銅張積層板24の片面の銅箔をエッチング除去し、銅張積層板24Bを調製した。
【0182】
配線基板24Aの導体回路層側の面と、銅張積層板24Bの絶縁性基材層側の面との間に接着剤フィルム22を挟み、積層した状態で、温度160℃、圧力4.0MPa、120分間熱圧着して、多層回路基板24を調製した。
【0183】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0184】
10…基材、11…第1の基材、12…第2の基材、20…接着剤層、30,33,34…絶縁樹脂層、31…第1の絶縁樹脂層、32…第2の絶縁樹脂層、41…第1の片面金属張積層板、42…第2の片面金属張積層板、50…配線層、M…金属層、M1…第1の金属層、M2…第2の金属層、100…積層体、101…3層金属張積層板、102…貼合せ型金属張積層板、103…接着剤層付き金属張積層板、200,201,202…回路基板、203…多層回路基板

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8