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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155640
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】両面金属張積層板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B32B15/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058971
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095588
【弁理士】
【氏名又は名称】田治米 登
(74)【代理人】
【識別番号】100094422
【弁理士】
【氏名又は名称】田治米 惠子
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】重松 義浩
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB01E
4F100AB17A
4F100AB17E
4F100AB33A
4F100AB33E
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK49C
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100CB00C
4F100EH46C
4F100EJ17
4F100EJ19
4F100EJ42B
4F100EJ86C
4F100GB41
4F100JA02C
4F100JA06
4F100JA07C
4F100JG04B
4F100JG04D
4F100YY00
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】ロール・トゥ・ロール方式で両面金属張積層板を連続的に製造する場合にしわによる外観不良の発生を防止する。
【解決手段】 第1の金属張積層板10と接着剤層付金属張積層板20Aとを重ね合わせて連続的に一対の加圧ロール40A,40B間を通過させることによって、第1の金属張積層板10と接着剤層付金属張積層板20Aとを熱圧着して両面金属張積層板100を製造する。熱圧着の際の加圧ロール40A,40Bの距離は、しわの発生を防止する観点から、両面金属張積層板100の総厚みT1に対して70%以上97%以下の範囲内に調節する。熱圧着時の圧力は、1.0MPa以下とすることが好ましい。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属層と、前記第1の金属層の片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、を有する第1の片面金属張積層板と、
第2の金属層と、前記第2の金属層の片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、を有する第2の片面金属張積層板の前記第2の金属層と反対の面に接着剤層が積層されている接着剤層付片面金属張積層板と、
を、前記第1の絶縁樹脂層と前記接着剤層とが接するように重ね合わせて連続的に一対のラミネートロール間を通過させることによってラミネートして両面金属張積層板を製造する方法であって、
前記一対のラミネートロールの間の距離を、前記両面金属張積層板の厚みに対して70%以上97%以下の範囲内に調節してラミネートすることを特徴とする両面金属張積層板の製造方法。
【請求項2】
前記接着剤層付片面金属張積層板が、前記第2の片面金属張積層板の前記第2の金属層と反対の面に樹脂組成物を塗布・乾燥して前記接着剤層を形成する工程を経て得られたものである請求項1に記載の両面金属張積層板の製造方法。
【請求項3】
第1の金属層と、前記第1の金属層の片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、を有する第1の片面金属張積層板と、
第2の金属層と、前記第2の金属層の片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、を有する第2の片面金属張積層板と、
自己支持性の接着性フィルムと、
を、前記第1の絶縁樹脂層と前記第2の絶縁樹脂層との間に前記接着性フィルムが介在するように重ね合わせて連続的に一対のラミネートロール間を通過させることによってラミネートして両面金属張積層板を製造する方法であって、
前記一対のラミネートロールの間の距離を、前記両面金属張積層板の厚みに対して70%以上97%以下の範囲内に調節してラミネートすることを特徴とする両面金属張積層板の製造方法。
【請求項4】
前記接着性フィルムが、
基材に樹脂組成物を塗布・乾燥して自己支持性フィルムを形成する工程と、
前記自己支持性フィルムを前記基材上から剥離する工程と、
を経て得られたものである請求項3に記載の両面金属張積層板の製造方法。
【請求項5】
前記一対のラミネートロールによる圧力を1.0MPa以下とする請求項1から4のいずれか1項に記載の両面金属張積層板の製造方法。
【請求項6】
前記一対のラミネートロールの少なくとも一方が、金属ロールの表面に弾性体による被覆層を有する被覆ロールである請求項1~5のいずれか1項に記載の両面金属張積層板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子製品に使用されるフレキシブル回路基板(FPC;Flexible Printed Circuits)などの材料となる両面金属張積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FPCは、一般に、絶縁樹脂層と銅層を積層した銅張積層板(CCL;Copper Clad Laminate)の銅層をエッチングして回路配線加工することによって製造される。FPCに使用されるCCLは、絶縁樹脂層の片側のみに銅箔が積層する片面銅張積層板(以下、片面CCL)、絶縁樹脂層の両側に銅箔が積層する両面銅張積層板(以下、両面CCL)が知られている。
【0003】
CCLの製造方法として、例えば金属製のプレスロールを用いて、銅箔と樹脂フィルムとを熱圧着するラミネート法が知られている。このラミネート法でCCLを製造する際に、少なくとも片側の加圧ロールの圧迫面をフィルム状緩衝材によって被覆した状態で熱圧着を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、ラミネート法に関し、液晶ポリマーフィルムと金属箔とを積層する際に、積層体の外観を良好にするため、金属製のプレスロールの表面に厚さ0.02~5mmのフッ素ゴム、シリコンゴム又はポリイミドの樹脂被覆層を設けたものを使用することが提案されている(例えば、特許文献2)。
【0005】
ところで、最近では機器の高性能化が進んだことから、伝送信号の高周波化への対応が必要とされている。高周波信号を伝送する際に、伝送経路における伝送損失が大きい場合、電気信号のロスや信号の遅延時間が長くなるなどの不都合が生じる。そのため、FPCについても、高周波信号の伝送損失を抑制することが強く求められている。FPCの伝送損失を抑制するための一つのアプローチとして、絶縁樹脂層全体の厚みを大きくすることが効果的であることから、絶縁樹脂層を50μm以上の厚みに形成することが検討されている。
【0006】
なお、絶縁樹脂層の厚みが大きなCCLの製造方法として、ポリイミドの前駆体溶液をキャストする工程を複数回くり返すことによって絶縁樹脂層を厚膜化する方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-6685号公報(特許請求の範囲など)
【特許文献2】特開2004-358678号公報(特許請求の範囲など)
【特許文献3】特開2017-149128号公報(特許請求の範囲など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ロール・トゥ・ロール方式で両面CCLを連続的に製造する際に、絶縁樹脂層の厚みを大きくするために、片面CCLを出発材料として、他の被圧着材料(接着性シートや他の片面CCLなど)とラミネートすることがある。しかし、片面CCLを他の被圧着材料とともに一対のラミネートロール間に導入し、熱圧着させる場合に、被圧着材料の合計厚みが50μmを超えると、製造された両面CCLの表面にしわが発生し、外観不良を引き起こすことがあり、その解決が求められていた。
【0009】
従って本発明は、ロール・トゥ・ロール方式で両面金属張積層板を連続的に製造する場合にしわによる外観不良の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ロール・トゥ・ロール方式で両面CCLを連続的に製造する際に発生するしわは、連続搬送によって生じた撓みをラミネート時に巻き込んでしまうことが原因であり、材料として使用する片面CCLの熱膨張係数が低い一方で、絶縁樹脂層の厚みを大きくするために介在させる厚みの大きな接着剤層の熱膨張係数が大きい場合にしわが発生しやすくなるとの知見を得た。そして、ロール・トゥ・ロール方式で両面金属張積層板を製造する際に、一対の加圧ロール間のクリアランスを考慮して熱圧着を行うことによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の第1の観点の両面金属張積層板の製造方法は、
第1の金属層と、前記第1の金属層の片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、を有する第1の片面金属張積層板と、
第2の金属層と、前記第2の金属層の片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、を有する第2の片面金属張積層板の前記第2の金属層と反対の面に接着剤層が積層されている接着剤層付片面金属張積層板と、
を、前記第1の絶縁樹脂層と前記接着剤層とが接するように重ね合わせて連続的に一対のラミネートロール間を通過させることによってラミネートして両面金属張積層板を製造する方法である。
そして、本発明の第1の観点の両面金属張積層板の製造方法は、前記一対のラミネートロールの間の距離を、前記両面金属張積層板の厚みに対して70%以上97%以下の範囲内に調節してラミネートすることを特徴とする。
【0012】
本発明の第1の観点の両面金属張積層板の製造方法は、前記接着剤層付片面金属張積層板が、前記第2の片面金属張積層板の前記第2の金属層と反対の面に樹脂組成物を塗布・乾燥して前記接着剤層を形成する工程を経て得られたものであってよい。
【0013】
本発明の第2の観点の両面金属張積層板の製造方法は、
第1の金属層と、前記第1の金属層の片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、を有する第1の片面金属張積層板と、
第2の金属層と、前記第2の金属層の片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、を有する第2の片面金属張積層板と、
自己支持性の接着性フィルムと、
を、前記第1の絶縁樹脂層と前記第2の絶縁樹脂層との間に前記接着性フィルムが介在するように重ね合わせて連続的に一対のラミネートロール間を通過させることによってラミネートして両面金属張積層板を製造する方法である。
そして、本発明の第2の観点の両面金属張積層板の製造方法は、前記一対のラミネートロールの間の距離を、前記両面金属張積層板の厚みに対して70%以上97%以下の範囲内に調節してラミネートすることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の観点の両面金属張積層板の製造方法は、前記接着性フィルムが、
基材に樹脂組成物を塗布・乾燥して自己支持性フィルムを形成する工程と、
前記自己支持性フィルムを前記基材上から剥離する工程と、
を経て得られたものであってよい。
【0015】
本発明の第1及び第2の観点の両面金属張積層板の製造方法は、前記一対のラミネートロールによる圧力を1.0MPa以下としてもよい。
【0016】
本発明の第1及び第2の観点の両面金属張積層板の製造方法は、前記一対のラミネートロールの少なくとも一方が、金属ロールの表面に弾性体による被覆層を有する被覆ロールであってよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ロール・トゥ・ロール方式で両面金属張積層板を製造する際に、一対のラミネートロールの間の距離を、両面金属張積層板の厚みに対して70%以上97%以下の範囲内に調節し、熱圧着時に被圧着材料に過剰な圧力を加えないことによって、しわの発生を効果的に防止できる。したがって、本発明方法によれば、相間の密着性に優れ、しわがなく、外観が良好な両面金属張積層板を効率良く製造することが可能となり、両面金属張積層板の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施の形態の両面金属張積層板の製造方法を説明する図面である。
図2】一対の加圧ロール間の距離を説明する図面である。
図3】第1の実施の形態の製造される両面金属張積層板の断面構造を示す説明図である。
図4】第1の実施の形態の両面金属張積層板の製造方法の概略工程図である。
図5】本発明の第2の実施の形態の両面金属張積層板の製造方法を説明する図面である。
図6A】第2の実施の形態の両面金属張積層板の製造方法の概略工程図である。
図6B図6Aに続く工程を説明する概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図面において、各構成部分の大きさ、長さ、厚み、距離、これらの比率などは、説明の便宜上、誇張して図示していることがある。
【0020】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る両面金属張積層板の製造方法の要部説明図である。図2は、この方法に使用する被覆加圧ロールの拡大断面図である。本実施の形態の両面金属張積層板の製造方法は、第1の金属張積層板10と接着剤層付金属張積層板20Aとを重ね合わせて連続的に一対の加圧ロール40A,40B間を通過させることによって、第1の金属張積層板10と接着剤層付金属張積層板20Aとを熱圧着して両面金属張積層板100を製造する。なお、図1では、長尺な第1の金属張積層板10、接着剤層付金属張積層板20Aの一部分のみを図示している。また、図1中の矢印は、搬送方向や回転方向を示しており、巻出ロール、巻取ロール、ガイドロールなどの図示は省略している。また、一対の加圧ロール40A,40Bは、それぞれ加熱機構(図示省略)を備えていてもよい。
【0021】
第1の金属張積層板10は、図示は省略するが、第1の金属層と、第1の金属層に積層された第1の絶縁樹脂層と、を有する片面金属張積層板である。第1の金属張積層板10は、長尺に形成され、図1において、加圧ロール40Aに接する側に第1の金属層が接するような向きで搬送される。
接着剤層付金属張積層板20Aは、第2の金属張積層板20と接着剤層30とが積層された構造を有する。第2の金属張積層板20は、図示は省略するが、第2の金属層と、第2の金属層に積層された第2の絶縁樹脂層と、を有する片面金属張積層板である。この第2の金属張積層板20の第2の金属層と反対の面に接着剤層30が積層されている。接着剤層付金属張積層板20Aは、長尺に形成され、図1において、加圧ロール40Bに接する側に第2の金属層が接するような向きで搬送される。
なお、第1の金属張積層板10と第2の金属張積層板20の構成は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
図1において、片側の加圧ロール40Aは、被覆層50を有する金属製ロールであり、他方の加圧ロール40Bは被覆層50を有しない金属製ロールである。加圧ロール40A,40Bの片方を被覆加圧ロールとし、他方のロールを、被覆層50を有さず、加熱機構(図示省略)を有する金属製ロールとすることは、圧着部位に熱を効率的に伝えるために有効である。
【0023】
図1では、接着剤層付金属張積層板20Aの側の加圧ロール40Bを、被覆層50を有しない金属製ロールとしているが、第1の金属張積層板10の側に被覆層50を有さず、加熱機構(図示省略)を有する金属製ロールを配置してもよい。また、加圧ロール40A,40Bの両方が被覆層50を有する被覆加圧ロールであってもよい。加圧ロール40A,40Bの両方を被覆加圧ロールとすることは、しわなどの外観不良の発生防止に有効である。
【0024】
被覆層50は、熱圧着時の圧力の偏りを緩和して圧力を均等に配分する作用を有し、第1の金属張積層板10と接着剤層付金属張積層板20Aとを均一に接着させる効果がある。被覆層50は、例えば、シリコンゴム、天然ゴム、エラストマー、フッ素ゴム、ウレタンなどの弾性体によって形成されていることが好ましい。被覆層50を構成している材料の硬度は、圧力を均等に配分する緩衝材としての機能を担保するために、JIS K6301に従うA型スプリング式硬さ試験に基づくスプリング硬さ(JISA)で、例えば60~90度の範囲内であることが好ましい。
【0025】
被覆層50の厚みは、特に限定されないが、例えば1~50mmの範囲内であることが好ましく、3~15mmの範囲内であることがより好ましい。被覆層50の厚みの下限は、圧力を均等に配分する緩衝材としての機能を担保するために3mm以上であることが好ましく、上限は、熱を効率的に伝えるために15mm以下であることが好ましい。
【0026】
ここで、本実施の形態の方法によって製造される両面金属張積層板100の好ましい構成例について、図3を参照しながら説明する。図3は、両面金属張積層板100の断面構造を示す模式図である。両面金属張積層板100は、第1の金属層及び第2の金属層としての金属層101,101と、第1の絶縁樹脂層及び第2の絶縁樹脂層としてのポリイミド層110,110と、接着剤層30を備えている。ここで、金属層101およびポリイミド層110は、第1の金属張積層板10又は第2の金属張積層板20から形成されたものであり、接着剤層30は接着剤層付金属張積層板20Aの接着剤層30から形成されたものである。図3における符号T1は、両面金属張積層板100の総厚みを示しており、符号T2は、両面金属張積層板100から2つの金属層101を除いた絶縁樹脂積層全体の厚みを示し、符号T3は、接着剤層30の厚みを示している。
【0027】
第1の絶縁樹脂層及び第2の絶縁樹脂層の厚みは、共に、例えば、10~50μmの範囲内にあることが好ましく、12~38μmの範囲内がより好ましい。第1の絶縁樹脂層及び第2の絶縁樹脂層の厚みが上記の下限値に満たないと、両面金属張積層板100の反りなどの問題が生じることがある。第1の絶縁樹脂層及び第2の絶縁樹脂層の厚みが上記の上限値を超えると、生産性が低下するなどの不具合が生じる。なお、第1の絶縁樹脂層と第2の絶縁樹脂層は、必ずしも同じ厚みでなくてもよい。
【0028】
また、接着剤層30の厚みT3は、例えば12~450μmの範囲内にあることが好ましく、25~250μmの範囲内がより好ましく、50~100μmの範囲内が更に好ましい。接着剤層30の厚みT3が上記下限値に満たないと、高周波基板として伝送損失が大きくなることがある。一方、接着剤層30の厚みT3が上記上限値を超えると、寸法安定性が低下するなどの不具合が生じることがある。
【0029】
両面金属張積層板100の総厚みT1は、両面金属張積層板100のフレキシブル性及び耐折り曲げ性並びに高周波伝送における伝送損失を低減するため、例えば50μm以上、好ましくは50~200μmの範囲内に形成されていてもよい。また、両面金属張積層板100において絶縁樹脂層全体の厚みT2は、高周波伝送における伝送損失を低減するため、例えば38μm以上、好ましくは50~200μmの範囲内、より好ましくは50~150μmの範囲内に形成されていてもよい。また、絶縁樹脂層全体の厚みT2に対して、接着剤層30の厚みT3の比率(T3/T2)は、寸法安定性を確保しつつ、絶縁樹脂積層体の厚みを大きくして誘電特性を改善する観点から、例えば0.3~0.8の範囲内、好ましくは0.5~0.8の範囲内の厚み比率で形成されていてもよい。
【0030】
金属層101の材質として、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス、鉄、銀、パラジウム、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、ジルコニウム、金、コバルト、チタン、タンタル、亜鉛、鉛、錫、シリコン、ビスマス、インジウム又はこれらの合金などから選択される金属を挙げることができる。導電性の点で特に好ましいものは銅又は銅合金である。
【0031】
ポリイミド層110,110は、いずれも、複数のポリイミド層が積層された構造であってもよい。例えば、図3に示す態様では、ベース層として、非熱可塑性ポリイミドからなる非熱可塑性ポリイミド層111,111と、非熱可塑性ポリイミド層111,111の両側にそれぞれ設けられた、熱可塑性ポリイミドからなる熱可塑性ポリイミド層112,112とを備えた3層構造をなしている。ここで、「非熱可塑性ポリイミド」とは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa以上であるポリイミドをいう。また、「熱可塑性ポリイミド」とは、一般にガラス転移温度(Tg)が明確に確認できるポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、320℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa未満であるポリイミドをいう。なお、ポリイミド層110,110は、それぞれ3層構造に限らない。
【0032】
非熱可塑性ポリイミド層111に用いるポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸無水物成分を含む酸無水物成分と、脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミン等を含むジアミン成分と、を反応させて得られる非熱可塑性ポリイミドが好ましい。酸無水物成分及びジアミン成分としては、非熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマーを使用できる。
また、熱可塑性ポリイミド層112に用いるポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸無水物成分を含む酸無水物成分と、脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミンと、を反応させて得られる熱可塑性ポリイミドが好ましい。酸無水物及びジアミンとしては、熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマーを使用できる。
非熱可塑性ポリイミド層111及び熱可塑性ポリイミド層112において、上記酸無水物成分及びジアミン成分の種類や、2種以上の酸無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張性、接着性、ガラス転移温度等を制御することができる。
【0033】
図3に示す両面金属張積層板100において、第1の金属張積層板10と第2の金属張積層板20における外側の熱可塑性ポリイミド層112,112は、それぞれ接着剤層30に貼り合わされ、両面金属張積層板100を形成している。
接着剤層30は、両面金属張積層板100において、第1の金属張積層板10と第2の金属張積層板20を貼り合わせるための接着層であり、かつ、寸法安定性を確保しつつ、絶縁樹脂積層全体の厚みT2を大きくして誘電特性を改善する機能を有するものである。接着剤層30を構成する樹脂材料としては、特に制限はなく、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂によって構成されてよい。そのような樹脂としては、例えばポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂(液晶ポリエステル樹脂を含む)、フェノール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、スチレン-マレイミド共重合体、マレイミド-ビニル化合物共重合体、又は(メタ)アクリル共重合体、ベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネートエステル樹脂等を挙げることができる。
【0034】
接着剤層30を構成する樹脂としては、樹脂成分の主成分として熱可塑性ポリイミドを含有する樹脂が好ましく、より好ましくは樹脂成分の70重量%以上、さらに好ましくは樹脂成分の90重量%以上、最も好ましくは樹脂成分の全部として熱可塑性ポリイミドを含有することがよい。なお、樹脂成分の主成分とは、全樹脂成分に対して50重量%を超えて含まれる成分を意味する。接着剤層30の形成に用いる好ましい熱可塑性ポリイミドとしては、芳香族テトラカルボン酸無水物成分を含む酸無水物成分と、脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミンと、を反応させて得られる熱可塑性ポリイミドが好ましい。酸無水物及びジアミンとしては、熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマーを使用できるが、全ジアミン成分に対して、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物を、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80~99モル%の範囲内で使用して得られる熱可塑性ポリイミドがよい。ダイマージアミン組成物を上記の量で使用することによって、ポリイミドのガラス転移温度の低温化(低Tg化)による熱圧着特性の改善及び低弾性率化による内部応力の緩和が可能になる。
【0035】
接着剤層30は、良好な接着性を担保する観点から、周波数11Hzで測定される50℃における貯蔵弾性率が1800MPa以下であってもよい。また、接着剤層30の熱膨張係数は110ppm/Kであってもよい。このように柔軟性に富み、熱膨張係数が大きく、かつ厚みT3が比較的大きな接着剤層30を、相対的に熱膨張係数が小さな第1の金属張積層板10とロール・トゥ・ロール方式で連続的に貼り合わせるために、本実施の形態の製造方法では、次に述べるような熱圧着条件を採用している。
【0036】
<熱圧着条件>
図2に示すように、加圧ロール40A,40Bの距離(クリアランス)Lは、しわの発生を防止する観点から、両面金属張積層板100の総厚みT1に対して70%以上97%以下の範囲内、好ましくは80%以上97%以下の範囲内に調節することがよい。しわの発生は、貯蔵弾性率が低く、熱膨張係数が大きく、かつ、厚みが大きな接着剤層30を有する接着剤層付金属張積層板20Aを、相対的に熱膨張係数が小さな第1の金属張積層板10と連続搬送することによって第1の金属張積層板10及び/又は接着剤層付金属張積層板20Aに撓みが生じ、この撓みを熱圧着時に巻き込んでしまうことが原因であると考えられる。一般的に、総厚みが50μm未満の両面金属張積層板を製造する場合には、加圧ロール40A,40Bの距離Lを0μmに設定することが多いが、本実施の形態では、両面金属張積層板100の総厚みT1を考慮して距離Lを上記範囲に調節し、熱圧着時に被圧着材料である第1の金属張積層板10及び接着剤層付金属張積層板20Aに過剰な圧力を加えないことによって、たわみを逃がし、しわの発生を効果的に防止している。
なお、距離Lは、加圧ロール40Aの表面と、加圧ロール40Bの被覆層50の表面との間隔であり、加圧ロール40A,40Bを加熱する前に、加圧ロール40A,40Bの軸方向の両端部において計測される間隔を意味する。
【0037】
加圧ロール40A,40Bによって、第1の金属張積層板10と接着剤層付金属張積層板20Aとを熱圧着する時の圧力は、特に限定されないが、しわの発生を防止する観点から、例えば1.0MPa以下とすることが好ましく、0~0.5MPaの範囲内がより好ましい。上記のとおり、しわの発生は、貯蔵弾性率が低く、熱膨張係数が大きく、かつ、厚みが大きな接着剤層30を有する接着剤層付金属張積層板20Aを、相対的に熱膨張係数が小さな第1の金属張積層板10と連続搬送することによって第1の金属張積層板10及び/又は接着剤層付金属張積層板20Aに撓みが生じ、この撓みを熱圧着時に巻き込んでしまうことが原因であると考えられるため、熱圧着時に被圧着材料である第1の金属張積層板10及び接着剤層付金属張積層板20Aに加わる圧力を1.0MPa以下に調節することによって、たわみを逃がし、しわの発生を防止できる。
なお、熱圧着時の圧力とは、加圧ロール40A,40Bの軸方向における平均の圧力である。加圧方式は、所定の圧力を加えることができるものであれば特に限定されず、例えば、油圧方式、空気圧方式、ギャップ間圧力方式等が挙げられる。
【0038】
また、熱圧着時の温度は、例えば50℃以上が好ましく、より好ましくは60~130℃の範囲内である。加圧ロール40A,40Bの加熱方法は、特に限定されず、例えば、熱媒循環方式、熱風加熱方式、誘電加熱方式等が挙げられる。なお、熱圧着時の温度は、加熱機構を有する金属製ロール表面の温度を意味する。
【0039】
熱圧着における第1の金属張積層板10の加圧ロール40Aへの挿入角θは、特に限定されるものではないが、熱膨張によって生じた両面金属張積層板100の撓みが拡幅しやすいという理由から、例えば3~45°の範囲内とすることが好ましい。また、熱圧着における接着剤層付金属張積層板20Aの加圧ロール40Bへの挿入角(図示せず)は、特に限定されるものではないが、熱膨張によって生じた両面金属張積層板100の撓みが拡幅しやすいという理由から、例えば3~45°の範囲内とすることが好ましい。なお、第1の金属張積層板10の加圧ロール40Aへの挿入角θは、第1の金属張積層板10と断面円形の加圧ロール40Aとが接触する部位(接触点)における接線方向に対して第1の金属張積層板10がなす角度を意味し、接着剤層付金属張積層板20Aの加圧ロール40Bへの挿入角(図示せず)は、接着剤層付金属張積層板20Aと断面円形の加圧ロール40Bとが接触する部位(接触点)における接線方向に対して接着剤層付金属張積層板20Aがなす角度を意味する。
【0040】
図4は、本実施の形態の両面金属張積層板の製造工程の一例を示す説明図である。本実施の形態では、接着剤層付金属張積層板20Aが、第2の金属張積層板20の第2の金属層と反対の面に樹脂組成物を塗布・乾燥して接着剤層30を形成する工程を経て得られたものである。
【0041】
第2の金属張積層板20は、長尺に形成されており、ロール・トゥ・ロール方式で搬送される構成となっている。つまり、本実施の形態では、長尺状の第2の金属張積層板20が、巻出ロール201と巻取ロール202との間で搬送可能に形成されている。第2の金属張積層板20をロール・トゥ・ロール方式で搬送しながら、その第2の絶縁樹脂層側に、塗布装置210によって接着剤層30となる溶液状の樹脂組成物Sを塗布する。接着剤層30がポリイミドからなる場合は、樹脂組成物Sとして、ポリイミド溶液又はポリアミド酸溶液を用いることができる。塗布された樹脂組成物Sは、加熱部220において加熱乾燥され、接着剤層30となる。このように搬送途中で接着剤層付金属張積層板20Aが作製され、一対の加圧ロール40A,40Bへ搬送されていく。一方、加圧ロール40A,40Bの手前では、供給ロール230から第1の金属張積層板10が供給され、加圧ロール40A,40Bによって、第1の金属張積層板10と接着剤層付金属張積層板20Aとが熱圧着され、積層されることによって両面金属張積層板100が製造される。両面金属張積層板100は、巻取ロール202によって巻き取られ、製品として回収される。
【0042】
図4に例示する製造工程において、加圧ロール40A,40Bの距離Lを、両面金属張積層板100の総厚みT1に対して70%以上97%以下の範囲内に調節し、熱圧着時に第1の金属張積層板10及び接着剤層付金属張積層板20Aに過剰な圧力を加えないことによって、しわの発生を効果的に防止できる。したがって、本実施の形態の製造方法によれば、しわがなく、外観が良好な両面金属張積層板100を効率良く製造することが可能となり、両面金属張積層板100の生産性を高めることができる。また、本実施の形態の方法によって製造された両面金属張積層板100は、しわの発生が防止されていることにより、外観良好であるだけでなく、両面金属張積層板100を回路加工して得られる回路基板の信頼性向上にも寄与する。
【0043】
[第2の実施の形態]
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る両面金属張積層板の製造方法の要部説明図である。本実施の形態の両面金属張積層板100の製造方法は、第1の金属張積層板10と接着性シート30Aと第2の金属張積層板20とをこの順序で重ね合わせて連続的に一対の加圧ロール40A,40B間を通過させることによって、第1の金属張積層板10と接着性シート30Aと第2の金属張積層板20とを熱圧着して両面金属張積層板100を製造する。なお、図5では、長尺な第1の金属張積層板10、接着性シート30A、第2の金属張積層板20の一部分のみを図示している。また、図5中の矢印は、搬送方向や回転方向を示しており、巻出ロール、巻取ロール、ガイドロールなどの図示は省略している。
【0044】
本実施の形態において、第1の金属張積層板10、第2の金属張積層板20、一対の加圧ロール40A,40B及び両面金属張積層板100の構成は、第1の実施の形態と同様である。また、接着性シート30Aは、自己支持性のフィルムである点を除き、その材質、厚み、物性などは第1の実施の形態の接着剤層30と同様である。第1の金属張積層板10は、図5において、加圧ロール40Aに接する側に第1の金属層が接するような向きで搬送される。第2の金属張積層板20は、図5において、加圧ロール40Bに接する側に第2の金属層が接するような向きで搬送される。そして、第1の金属張積層板10の第1の絶縁樹脂層と第2の金属張積層板20の第2の絶縁樹脂層との間に接着性シート30Aが介在するように重ね合わせて連続的に一対の加圧ロール40A,40B間を通過させることによってラミネートして両面金属張積層板100を製造する。
【0045】
第1の金属張積層板10と接着性シート30Aと第2の金属張積層板20とをラミネートするための熱圧着条件は、第1の実施の形態と同様である。
すなわち、図2に示すように、加圧ロール40A,40Bの距離(クリアランス)Lは、しわの発生を防止する観点から、両面金属張積層板100の総厚みT1に対して70%以上97%以下の範囲内、好ましくは80%以上97%以下の範囲内に調節することがよい。しわの発生は、貯蔵弾性率が低く、熱膨張係数が大きく、かつ、厚みが大きな接着性シート30Aを、相対的に熱膨張係数が小さな第1の金属張積層板10及び第2の金属張積層板20と連続搬送することによって第1の金属張積層板10及び/又は第2の金属張積層板20に撓みが生じ、この撓みを熱圧着時に巻き込んでしまうことが原因であると考えられる。一般的に、総厚みが50μm未満の両面金属張積層板を製造する場合には、加圧ロール40A,40Bの距離Lを0μmに設定することが多いが、本実施の形態では、両面金属張積層板100の総厚みT1を考慮して距離Lを上記範囲に調節し、熱圧着時に被圧着材料である第1の金属張積層板10と接着性シート30Aと第2の金属張積層板20に過剰な圧力を加えないことによって、たわみを逃がし、しわの発生を効果的に防止している。
なお、距離Lは、加圧ロール40A,40Bを加熱する前に、加圧ロール40A,40Bの軸方向の両端部において計測される間隔を意味する。
【0046】
加圧ロール40A,40Bによる第1の金属張積層板10と接着性シート30Aと第2の金属張積層板20との熱圧着時の圧力は特に限定されないが、しわの発生を防止する観点から、例えば1.0MPa以下とすることが好ましく、0~0.5MPaの範囲内がより好ましい。上記のとおり、しわの発生は、貯蔵弾性率が低く、熱膨張係数が大きく、かつ、厚みが大きな接着性シート30Aを、相対的に熱膨張係数が小さな第1の金属張積層板10及び第2の金属張積層板20と連続搬送することによって第1の金属張積層板10及び/又は第2の金属張積層板20に撓みが生じ、この撓みを熱圧着時に巻き込んでしまうことが原因であると考えられるため、熱圧着時に被圧着材料である第1の金属張積層板10と接着性シート30Aと第2の金属張積層板20に加わる圧力を1.0MPa以下に調節することによって、たわみを逃がし、しわの発生を防止できる。
なお、熱圧着時の圧力とは、加圧ロール40A,40Bの軸方向における平均の圧力である。加圧方式は、所定の圧力を加えることができるものであれば特に限定されず、例えば、油圧方式、空気圧方式、ギャップ間圧力方式等が挙げられる。
【0047】
また、熱圧着時の温度は、例えば50℃以上が好ましく、より好ましくは60~130℃の範囲内である。
【0048】
熱圧着における第1の金属張積層板10の加圧ロール40Aへの挿入角θは、特に限定されるものではないが、熱膨張によって生じた両面金属張積層板100の撓みが拡幅しやすいという理由から、例えば3~45°の範囲内とすることが好ましい。
また、熱圧着における第2の金属張積層板20の加圧ロール40Bへの挿入角θは、特に限定されるものではないが、熱膨張によって生じた両面金属張積層板100の撓みが拡幅しやすいという理由から、例えば3~45°の範囲内とすることが好ましい。
さらに、熱圧着における接着性シート30Aの加圧ロール40Bへの挿入角(図示せず)は、特に限定されるものではないが、熱膨張によって生じた両面金属張積層板100の撓みが拡幅しやすいという理由から、例えば3~45°の範囲内とすることが好ましい。
なお、第1の金属張積層板10の加圧ロール40Aへの挿入角θは、第1の金属張積層板10と断面円形の加圧ロール40Aとが接触する部位(接触点)における接線方向に対して第1の金属張積層板10がなす角度を意味し、第2の金属張積層板20の加圧ロール40Bへの挿入角θは、第2の金属張積層板20と断面円形の加圧ロール40Bとが接触する部位(接触点)における接線方向に対して第2の金属張積層板20がなす角度を意味する。また、接着性シート30Aの加圧ロール40Bへの挿入角(図示せず)は、第2の金属張積層板20と断面円形の加圧ロール40Bとが接触する部位(接触点)における接線方向に対して接着性シート30Aがなす角度を意味する。
【0049】
図6A及び図6Bは、本実施の形態の両面金属張積層板の製造工程の一例を示す説明図である。本実施の形態では、接着性シート30Aが、基材に樹脂組成物Sを塗布・乾燥して自己支持性フィルムを形成する工程と、自己支持性フィルムを基材上から剥離する工程と、を経て得られたものである。
【0050】
まず、図6Aに示すように、基材としての離型フィルム30Bは、長尺に形成されており、ロール・トゥ・ロール方式で搬送される構成となっている。つまり、長尺状の離型フィルム30Bは、巻出ロール203と巻取ロール204との間で搬送可能に形成されている。離型フィルム30Bをロール・トゥ・ロール方式で搬送しながら、その片面側に、塗布装置210によって接着性シート30Aとなる溶液状の樹脂組成物Sを塗布することによって塗布膜付離型フィルム30Cを形成する。接着性シート30Aがポリイミドからなる場合は、樹脂組成物Sとして、ポリイミド溶液又はポリアミド酸溶液を用いることができる。
【0051】
塗布膜付離型フィルム30Cは、加熱部220を通過することによって塗布膜の加熱乾燥が行われ、自己支持性の接着性シート30Aが形成された接着剤層付離型フィルム30Dとなる。次に、供給ロール240から保護フィルム30Eが供給され、加圧ロール40C,40Dにより接着剤層付離型フィルム30Dの接着剤層30側に保護フィルム30Eを仮圧着することによって、保護フィルム付接着性シート30Fとして巻取ロール204に回収される。
【0052】
図6Bは、図6Aに続く工程を示している。図6Bに示すように、長尺状の保護フィルム付接着性シート30Fを巻出ロール205から巻取ロール206へ向けて搬送する。その途中で、保護フィルム30Eと離型フィルム30Bを剥離することによって、自己支持性の接着性シート30Aとする。なお、保護フィルム30Eと離型フィルム30Bは、それぞれ巻取ロール208,209によって回収する。次に、自己支持性の接着性シート30Aを搬送しながら、その片面側に供給ロール250から供給される第1の金属張積層板10が、他の面側に供給ロール260から供給される第2の金属張積層板20が重なるように、一対の加圧ロール40A,40Bで熱圧着し、積層することによって両面金属張積層板100が製造される。両面金属張積層板100は、巻取ロール206によって巻き取られ、製品として回収される。
【0053】
なお、保護フィルム付接着性シート30Fを巻取ロール204に回収する工程と巻出ロール205から搬送する工程を含まずに、図6Aに示す工程と図6Bに示す工程を連続して行うこともできる。
【0054】
図6A図6Bに例示する製造工程において、加圧ロール40A,40Bの距離Lを、両面金属張積層板100の総厚みT1に対して70%以上97%以下の範囲内に調節し、熱圧着時に第1の金属張積層板10、接着性シート30A及び第2の金属張積層板20に過剰な圧力を加えないことによって、しわの発生を効果的に防止できる。したがって、本実施の形態の製造方法によれば、しわがなく、外観が良好な両面金属張積層板100を効率良く製造することが可能となり、両面金属張積層板100の生産性を高めることができる。また、本実施の形態の方法によって製造された両面金属張積層板100は、しわの発生が防止されていることにより、外観良好であるだけでなく、両面金属張積層板100を回路加工して得られる回路基板の信頼性向上にも寄与する。
なお、第2の実施の形態における他の構成及び効果は第1の実施の形態と同様である。
【実施例0055】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0056】
[熱膨張係数(CTE)の測定]
接着性フィルムから3mm×20mmのサンプルを切り出し、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から265℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、240℃から100℃までの平均熱膨張係数(線熱膨張係数)を求めた。
【0057】
[貯蔵弾性率の測定]
貯蔵弾性率は、接着性フィルムから5mm×20mmに切り出し、120℃のオーブンで2時間、170℃で3時間加熱した。得られたサンプルを動的粘弾性装置(DMA:ユー・ビー・エム社製、商品名;E4000F)を用いて、昇温速度4℃/分で30℃から400℃まで段階的に加熱し、周波数11Hzで測定を行った。
【0058】
[密着状態の観察]
熱圧着後の両面銅張積層板から、片面銅張積層板を全幅に渡り引き剥がし、接着性フィルム表面を目視で観察し、全面が均一な色調であるものを全面密着性が「良好」とし、色調が異なる部分があるものを「不良」とした。
【0059】
[アミン価の測定方法]
約2gのダイマージアミン組成物を200~250mLの三角フラスコに秤量し、指示薬としてフェノールフタレインを用い、溶液が薄いピンク色を呈するまで、0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液を滴下し、中和を行ったブタノール約100mLに溶解させる。そこに3~7滴のフェノールフタレイン溶液を加え、サンプルの溶液が薄いピンク色に変わるまで、0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液で攪拌しながら滴定する。そこへブロモフェノールブルー溶液を5滴加え、サンプル溶液が黄色に変わるまで、0.2mol/Lの塩酸/イソプロパノール溶液で攪拌しながら滴定する。
アミン価は、次の式(1)により算出する。
アミン価={(V×C)-(V×C)}×MKOH/m ・・・(1)
ここで、アミン価はmg-KOH/gで表される値であり、MKOHは水酸化カリウムの分子量56.1である。また、V、Cはそれぞれ滴定に用いた溶液の体積と濃度であり、添え字の1、2はそれぞれ0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液、0.2mol/Lの塩酸/イソプロパノール溶液を表す。さらに、mはグラムで表されるサンプル重量である。
【0060】
[GPC及びクロマトグラムの面積パーセントの算出]
(a)ダイマージアミン
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く)
【0061】
GPCは、20mgのダイマージアミン組成物を200μLの無水酢酸、200μLのピリジン及び2mLのテトラヒドロフラン(THF)で前処理した100mgの溶液を、10mLのTHF(1000ppmのシクロヘキサノンを含有)で希釈し、サンプルを調製した。調製したサンプルを東ソー株式会社製、商品名;HLC-8220GPCを用いて、カラム:TSK-gel G2000HXL,G1000HXL、フロー量:1mL/min、カラム(オーブン)温度:40℃、注入量:50μLの条件で測定した。なお、シクロヘキサノンは流出時間の補正のために標準物質として扱った。
【0062】
このとき、シクロヘキサノンのメインピークのピークトップがリテンションタイム27分から31分になるように、且つ、前記シクロヘキサノンのメインピークのピークスタートからピークエンドが2分になるように調整し、シクロヘキサノンのピークを除くメインピークのピークトップが18分から19分になるように、且つ、前記シクロヘキサノンのピークを除くメインピークのピークスタートからピークエンドまでが2分から4分30秒となる条件で、上記の各成分(a)~(c)として、
(a)メインピークで表される成分;
(b)メインピークにおけるリテンションタイムが遅い時間側の極小値を基準にし、それよりも遅い時間に検出されるGPCピークで表される成分;
(c)メインピークにおけるリテンションタイムが早い時間側の極小値を基準にし、それよりも早い時間に検出されるGPCピークで表される成分;
を検出した。
【0063】
[粘度の測定]
E型粘度計(DV-II+ProCP型)を用いて、ポリイミド溶液を温度;25℃、回転数;100RPM、測定時間;2分の条件下で、重合直後の粘度を測定した。
【0064】
[ポリイミドの重量平均分子量(Mw)の測定]
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー株式会社製、HLC-8220GPCを使用)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にテトラヒドロフラン(THF)を用いた。
【0065】
実施例等で用いた略号は、以下の化合物を示す。
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
DDA:クローダジャパン株式会社製(商品名;PRIAMINE1075を蒸留精製したもの(a成分;99.2%、b成分:0%、c成分;0.8%、アミン価:210mgKOH/g)
N-12:ドデカン二酸ジヒドラジド
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
なお、上記DDAにおいて、a成分、b成分、c成分の「%」は、GPC測定におけるクロマトグラムの面積パーセントを意味する。また、上記DDAの分子量は次式により算出した。
分子量=56.1×2×1000/アミン価
【0066】
(合成例1)
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、44.98gのBTDA(0.139モル)、75.02gのDDA(0.140モル)、168gのNMP及び112gのキシレンを装入し、40℃で1時間間良く混合して、ポリアミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、5時間加熱攪拌し、112gのキシレンを加えてイミド化を完結したポリイミド接着剤溶液1を調製した。得られたポリイミド接着剤溶液1における固形分は29.1重量%であり、粘度は7,800cpsであった。ま
た、ポリイミドの重量平均分子量(Mw)は87,700であった。
【0067】
(合成例2)
合成例1で得られたポリイミド接着剤溶液1を34.4g(固形分として10g)と1.25gのN-12および2.5gのExolit OP935(商品名、クラリアントジャパン株式会社製、ジエチルホスフィン酸アルミニウム)を配合し、1.297gのNMPと3.869gのキシレンを加えて希釈してポリイミド接着剤溶液2を調製した。
【0068】
(作製例1)
ポリイミド接着剤溶液1を長尺状の離型PETフィルム1(東山フィルム社製、商品名;HY-S05、厚み;25μm)の片面に乾燥後の厚みが50μmとなるように塗布し、80℃から160℃まで段階的に加熱乾燥し溶媒を除去し、接着剤層を離型PETフィルム1から剥離することによって、厚さが50μmの接着性フィルム1を得た。接着性フィルム1のCTEは95ppm/K、貯蔵弾性率は1220MPaであった。
【0069】
(作製例2)
乾燥後の厚みが75μmとなるように塗布したこと以外、作製例1と同様にして、厚さが75μmの接着性フィルム2を得た。接着性フィルム2のCTEは95ppm/K、貯蔵弾性率は1220MPaであった。
【0070】
[実施例1]
長尺状の片面金属張積層板1a(日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名;エスパネックスFC12-25-00UEJ、電解銅箔厚さ;12μm、絶縁樹脂層の厚さ;25μm、横幅;530mm)の絶縁樹脂層側の面にダイコーターを用いて、合成例2で調製したポリイミド接着剤溶液2を乾燥後の厚みが50μmとなるように連続的に、均一に塗布した後、80℃から160℃まで段階的に加熱乾燥し溶媒を除去し、接着層付片面金属張積層板1a’を得た。
【0071】
次に、接着層付片面金属張積層板1a’の接着層側の面と、もう一つの片面金属張積層板1aの絶縁樹脂層側の面が接するように配置し、これらを、ガイドロールを経由して搬送しながら連続的に、少なくとも1対の、金属製加熱加圧ロールとシリコンゴム(厚さ;10mm)を被覆したロールとを有する加熱加圧装置を用いて重ね合わせて連続的に熱圧着させて、両面銅張積層板1を得た。両面銅張積層板1はシワも無く、全面密着性も良好であった。なお、熱圧着の条件は以下のとおりである。ここで、ラミネート圧力とは、1対のラミネートロールの両端のそれぞれに加えるシリンダからの圧力を指す。
金属製加熱加圧ロール表面とシリコンゴム被覆表面との距離(L);120μm
ロール表面温度;100℃
ラミネート圧力;0.5MPa
搬送速度;2.0m/分
接着層付片面金属張積層板1a’の金属製加熱加圧ロールへの挿入角;45°
片面金属張積層板1aのシリコンゴム被覆ロールへの挿入角;45°
【0072】
[実施例2]
Lの値を100μmとしたこと以外、実施例1と同様にして、両面銅張積層板2を得た。両面銅張積層板2はシワも無く、全面密着性も良好であった。
【0073】
[実施例3]
ラミネート圧力を0.1MPaとしたこと以外、実施例1と同様にして、両面銅張積層板3を得た。両面銅張積層板3はシワも無く、全面密着性も良好であった。
【0074】
[実施例4]
Lの値を100μmとし、ラミネート圧力を0.1MPaとしたこと以外、実施例1と同様にして、両面銅張積層板4を得た。両面銅張積層板4はシワも無く、全面密着性も良好であった。
【0075】
[実施例5]
ポリイミド接着剤溶液2の乾燥後の厚みが75μmとなるようにしたこと以外、実施例1と同様にして、両面銅張積層板5を得た。両面銅張積層板5はシワも無く、全面密着性も良好であった。
【0076】
[実施例6]
ポリイミド接着剤溶液2の乾燥後の厚みが75μmとなるようにし、ラミネート圧力を0.1MPaとしたこと以外、実施例1と同様にして、両面銅張積層板6を得た。両面銅張積層板6はシワも無く、全面密着性も良好であった。
【0077】
[実施例7]
接着性フィルム1の両面に、2つの長尺状の片面金属張積層板1aの絶縁樹脂層の面が接するように配置し、これらを、ガイドロールを経由して搬送しながら連続的に、少なくとも1対の、金属製加熱加圧ロールとシリコンゴム(厚さ;10mm)を被覆したロールとを有する加熱加圧装置を用いて重ね合わせて連続的に熱圧着させて、両面銅張積層板7を得た。両面銅張積層板7はシワも無く、全面密着性も良好であった。なお、熱圧着の条件は以下のとおりである。
金属製加熱加圧ロール表面とシリコンゴム被覆表面との距離(L);120μm
ロール表面温度;100℃
ラミネート圧力;0.5MPa
搬送速度;2.0m/分
片面金属張積層板1aの金属製加熱加圧ロールへの挿入角;45°
接着性フィルム1の金属製加熱加圧ロールへの挿入角;3°
片面金属張積層板1aのシリコンゴム被覆ロールへの挿入角;45°
【0078】
[実施例8]
接着性フィルム1の代わりに接着性フィルム2を使用したこと以外、実施例7と同様にして、両面銅張積層板8を得た。両面銅張積層板8はシワも無く、全面密着性も良好であった。
【0079】
(比較例1)
Lの値を0μmとしたこと以外、実施例1と同様にして、両面銅張積層板9を得た。両面銅張積層板9における全面密着性は良好であったが、シワが発生した。
【0080】
(比較例2)
Lの値を0μmとし、ラミネート圧力を0.1MPaとしたこと以外、実施例1と同様にして、両面銅張積層板10を得た。両面銅張積層板10における全面密着性は良好であったが、シワが発生した。
【0081】
(比較例3)
Lの値を80μmとしたこと以外、実施例1と同様にして、両面銅張積層板11を得た。両面銅張積層板11における全面密着性は良好であったが、シワが発生した。
【0082】
(比較例4)
Lの値を125μmとしたこと以外、実施例1と同様にして、両面銅張積層板12を得た。両面銅張積層板12におけるシワは無かったが、全面密着性は不良であった。
【0083】
以上、詳述したように、本実施の形態の金属張積層板の製造方法によれば、外観が良好であり、全面に密着した両面金属張積層板が得られる。このようにして製造された両面金属張積層板をFPCなどの回路基板材料として用いることによって、密着性・信頼性に優れた回路基板を歩留まり良く製造できる。従って、本発明により、回路基板及び回路基板を使用する電子製品の歩留まりと信頼性を向上させることができる。
【0084】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。
【符号の説明】
【0085】
10…第1の金属張積層板、20…第2の金属張積層板、20A…接着剤層付金属張積層板、30…接着剤層、30A…接着性シート、30B…離型フィルム、30C…塗布膜付離型フィルム、30D…接着剤層付離型フィルム、30E…保護フィルム、30F…保護フィルム付接着性シート、40A,40B…加圧ロール、50…被覆層、80A,80B…ガイドロール、100…両面金属張積層板、101…金属層、110…ポリイミド層、111…非熱可塑性ポリイミド層、112…熱可塑性ポリイミド層、201,203,205…巻出ロール、202,204,206,208,209…巻取ロール、210…塗布装置、220…加熱部、230,240,250,260…供給ロール

図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B