(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022155744
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】フレキシブルコンテナバッグ及び当該コンテナバッグを用いた脱水方法
(51)【国際特許分類】
B65D 88/22 20060101AFI20221006BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20221006BHJP
B01J 20/12 20060101ALI20221006BHJP
B01J 20/04 20060101ALI20221006BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20221006BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20221006BHJP
C02F 11/128 20190101ALI20221006BHJP
【FI】
B65D88/22 A ZAB
B01J20/28 A
B01J20/12 A
B01J20/04 B
C02F1/28 B
C02F1/28 E
B01D29/10 510A
C02F11/128
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059119
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】中村 丞吾
(72)【発明者】
【氏名】秋山 達志
(72)【発明者】
【氏名】小堺 規行
【テーマコード(参考)】
3E170
4D059
4D116
4D624
4G066
【Fターム(参考)】
3E170AA29
3E170AB30
3E170DA11
3E170DA13
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3E170RA01
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3E170WG06
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4G066AA47B
4G066AA66B
4G066AC07C
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4G066AC23C
4G066AC26C
4G066AC27C
4G066BA01
4G066BA09
4G066BA23
4G066BA26
4G066CA46
4G066CA47
4G066CA50
4G066DA08
4G066FA12
(57)【要約】
【課題】
重金属を含有する含水土砂中の水分を排出する透過性を有するとともに、含水土砂中の水分に該土砂中から溶出した重金属を有効に吸着捕獲することができる、フレキシブルコンテナバッグ及び当該コンテナバックを用いた脱水方法を提供する。
【解決手段】
フレキシブルコンテナバッグは、汚染物質捕獲性及び透水性を有する柔軟な袋体であって、該袋体は、不織布に重金属を吸着する吸着材が担持された1枚以上の吸着シートから構成され、前記不織布は単位面積あたり10~650g/m
2で、前記吸着シートの各貫通孔中、最も狭い部分の孔径が10nm~100μmで、前記吸着材は吸着シートあたり10~5000g/m
2である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質捕獲性及び透水性を有する柔軟な袋体であって、該袋体は、不織布に重金属を吸着する吸着材が担持された1枚以上の吸着シートから構成され、前記不織布は単位面積あたり10~650g/m2で、前記吸着シートの各貫通孔中、最も狭い部分の孔径が10nm~100μmで、前記吸着材は吸着シートあたり10~5000g/m2であることを特徴とする、フレキシブルコンテナバッグ。
【請求項2】
請求項1記載のフレキシブルコンテナバッグにおいて、前記吸着材は、平均粒径が3~100μmの粉末状であって、ドロマイト系化合物を含むことを特徴とする、フレキシブルコンテナバッグ。
【請求項3】
請求項2記載のフレキシブルコンテナバッグにおいて、前記吸着材は、さらに酸性硫酸塩を含むことを特徴とする、フレキシブルコンテナバッグ。
【請求項4】
請求項2又は3記載のフレキシブルコンテナバッグにおいて、前記袋体の底部以外の外側が遮水シートで被覆されていることを特徴とする、フレキシブルコンテナバッグ。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかの項記載のフレキシブルコンテナバッグにおいて、前記袋体が、1枚以上の前記吸着シートの縫合体であって、該縫合体の縫合手段には前記吸着材が担持されていることを特徴とする、フレキシブルコンテナバッグ。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかの項記載のフレキシブルコンテナバッグにおいて、前記袋体の内部に前記吸着材が担持された透水性パイプ又は前記吸着材が担持された透水性フィルターを更に設置することを特徴とする、フレキシブルコンテナバッグ。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかのフレキシブルコンテナバッグに、汚染物質を含有する含水土砂を収容し、含水土砂から溶出した汚染物質を含む水分を汚染物質吸着材が担持されている吸着シートと接触させて汚染物質含有水から汚染物質を吸着捕獲し、次いで、水分を外部へ排出することを特徴とする、フレキシブルコンテナバッグを用いた脱水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルコンテナバッグ及び当該コンテナバッグを用いた脱水方法に関し、特に、フレキシブルコンテナバッグに収容された、建築・土木工事で発生する含水土砂中の水分に、土砂中から溶出する重金属等の汚染物質を有効に捕獲することができるとともに、土砂中の水分を取り除くことができる、柔軟なフレキシブルコンテナバッグ及び当該コンテナバッグを用いた脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル、ダム、造成などの建設・土木工事を実施する際には、掘削によって掘り起こし残土として、含水掘削ずりが発生する。
高含水の土砂は、そのままでは大容積であり、運搬や保管が困難であった。したがって、脱水処理をしてから運搬・保管する方法が実施されてきた。
【0003】
例えば、特開2018-94556号公報(特許文献1)には、透水性を有する柔軟な袋体であるフレキシブルコンテナバッグ内に詰められ収容された土砂に荷重を加えて水分を取り除く、フレキシブルコンテナバッグの脱水方法であって、前記フレキシブルコンテナバッグ内に水分を吸引可能な排水材を略水平に、かつ、平面視において少なくとも一端側が前記フレキシブルコンテナバッグの内面と隣接し、他端側が該フレキシブルコンテナバッグの中心付近を通るように配置し、前記フレキシブルコンテナバッグを少なくとも外周からの排水が可能な容器内に収容し、前記荷重を垂直方向に加えて前記水分を前記排水材を介して水平方向に排出することで脱水処理をすることを特徴とするフレキシブルコンテナバッグの脱水方法が開示されている。
【0004】
高含水土砂には、自然由来または人工的な汚染物質が含まれることがあるため、汚染物質を含む掘削ずり等の含水土砂は、これらの汚染物質に対する有効な除去処理が求められている。
【0005】
例えば、特開2013-186012号公報(特許文献2)には、排水中に含まれる放射性セシウムを分離除去する方法であって、フレコンの外径(DF)より大きな内径(DT)をもつ有底筒状体であり、その底部近くに水平なストレーナ(2)をそなえ、最上部に被処理水(WR)の供給管(8)が開口するとともに、上部に処理済み水(WT)の排出口(3)を備えた吸着タンク(1)の内部に、側面にラミネート(6)を施して透水性を失わせ、または不透水性の生地を用い、その一方で底面にはメッシュ生地(7)を用いて透水性を高めたフレコンバッグ(5)の内部に吸着剤(Ab)を充填したものを配置し、上記供給管から被処理水を供給してフレコンの吸着剤に接触させ、降下する被処理水に含まれる放射性セシウムを吸着させて水から分離し、放射性セシウムを含有しなくなった処理済み水をフレコン底部のメッシュを通して吸着タンクの側方を上昇させ、上記排出口を通して排出し、放射性セシウムを吸着した吸着剤を収容するフレコンは吸着タンクから取出すことからなる方法が開示されている。
【0006】
また特開2016-151415号公報(特許文献3)には、所定の形状を有する網状体、布またはシートの周辺に吊り上げ用ベルトが取り付けられて、物品を引き上げて移動させるためのモッコに使用される遮水性の弾性体シートであって、
前記弾性体シートは、放射線吸収剤が配合された弾性体のシートであり、該シートの周辺部に前記吊り上げ用ベルトと係合する係合孔を有することを特徴とする弾性体シートが開示されている。
【0007】
上記したように、従来は、汚染物質が含有される土壌の運搬や一時保管については、遮水性フレキシブルコンテナバッグが通常利用されてきている。
しかし、建築・土木工事で発生する含水掘削ずり等の含水掘り起こし残土や高含水汚泥等の含水土砂を収容袋に収容した際に、透水性が劣ると大容量となるとともに重量も重くなり、運搬や保管が困難である。また含水土壌に含まれる重金属が透過水とともに収容袋から排水されると環境に悪影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-94556号公報
【特許文献2】特開2013-186012号公報
【特許文献3】特開2016-151415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記課題を解決し、重金属を含有する含水土砂中の水分を排出する透過性を有するとともに、含水土砂中の水分に該土砂中から溶出した重金属を有効に吸着捕獲することができる、フレキシブルコンテナバッグ及び当該コンテナバックを用いた脱水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、重金属等の汚染物質吸着材が不織布に担持されている特定のシートを用いたフレキシブルコンテナバッグにより上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
(1)汚染物質捕獲性及び透水性を有する柔軟な袋体であって、該袋体は、不織布に重金属を吸着する吸着材が担持された1枚以上の吸着シートから構成され、前記不織布は単位面積あたり10~650g/m2で、前記吸着シートの各貫通孔中、最も狭い部分の孔径が10nm~100μmで、前記吸着材は吸着シートあたり10~5000g/m2であることを特徴とする、フレキシブルコンテナバッグである。
【0011】
(2)好ましくは、上記(1)のフレキシブルコンテナバッグにおいて、前記吸着材は、平均粒径が3~100μmの粉末状であって、ドロマイト系化合物を含むことを特徴とする、フレキシブルコンテナバッグである。
(3)更に好ましくは、上記(2)のフレキシブルコンテナバッグにおいて、前記吸着材は、さらに酸性硫酸塩を含むことを特徴とする、フレキシブルコンテナバッグである。
【0012】
(4)より好ましくは、上記(2)又は(3)記載のフレキシブルコンテナバッグにおいて、前記袋体の底部以外の外側が遮水シートで被覆されていることを特徴とする、フレキシブルコンテナバッグである。
(5)更により好ましくは、上記(1)~(4)のいずれかに記載のフレキシブルコンテナバッグにおいて、前記袋体が、1枚以上の前記吸着シートの縫合体であって、該縫合体の縫合手段には前記吸着材が担持されていることを特徴とする、フレキシブルコンテナバッグである。
(6)更により好ましくは、上記(1)~(5)のいずれかに記載のフレキシブルコンテナバッグにおいて、前記袋体の内部に前記吸着材が担持された透水性パイプ又は前記吸着材が担持された透水性フィルターを更に設置することを特徴とする、フレキシブルコンテナバッグである。
【0013】
本発明のフレキシブルコンテナバッグを用いた脱水処理方法は、上記(1)~(6)のいずれかのフレキシブルコンテナバッグに、汚染物質を含有する含水土砂を収容し、含水土砂から溶出した汚染物質を含む水分を汚染物質吸着材が担持されている吸着シートと接触させて汚染物質含有水から汚染物質を吸着捕獲し、次いで、水分を外部へ排出することを特徴とする、フレキシブルコンテナバッグを用いた脱水処理方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフレキシブルコンテナバッグは、建築・土木工事で発生する、重金属等の汚染物質を含有する含水掘削ずり等の掘り起こし残土や汚泥等の含水土砂中の水分に該土砂中から溶出した汚染物質を吸着捕獲することが可能となるため、外部へ汚染物質を排出することを防止することができるとともに、収容された含水土砂中の水分を汚染物質を含むことなく外部へ排出して脱水することができ、その結果、減容させることができ、運搬や保管に有効に利用することが可能となる。
【0015】
従って、従来は、汚染物質を含む土砂を収容する場合には、遮水性を有するフレキブルコンテナバッグを使用していたため運搬時には重量が重く、また運搬環境によっては収容されている汚染物質が漏れてしまい、更には保管時に広い施設等を準備する必要があったが、本発明においては、含水土砂の水分を排出することができ、運搬性が向上するとともに、保管場所も小さくすることが可能となる。
【0016】
また、土砂が収容されたフレキシブルコンテナバッグを保管している際に、雨水が浸透しても、透水性が高く、また汚染物質が流出されることもないため、環境的に良好な保管をすることができる。
更に、使用後のフレキシブルコンテナバッグは、例えばセメント工場の燃料として利用することが可能である。
【0017】
更に、フレキシブルコンテナバッグの底部以外の外側を遮水シートで被覆することで、上記効果に加えて、汚染物質を含有する水分が不織布内の汚染物質吸着材と接触する時間が増加するため、より安全にフレキシブルコンテナバッグ内の水分を排出することが可能となる。
更に、フレキシブルコンテナバッグ袋体の中央部に前記吸着材が担持された透水性パイプ又は前記吸着材が担持された透水性フィルターを設置することにより、上記効果に加えて、フレキシブルコンテナバッグに収容された中央部の土砂中に含まれる水分を迅速に排出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一例のフレキシブルコンテナバッグを模式的に示す図である。
【
図2】本発明の他の一例のフレキシブルコンテナバッグを模式的に示す図である。
【
図3】本発明の他の一例のフレキシブルコンテナバッグを模式的に示す図である。
【
図4】本発明の他の一例のフレキシブルコンテナバッグを模式的に示す図である。
【
図5(a)】本発明の他の一例のフレキシブルコンテナバッグを模式的に示す図である。
【
図5(b)】本発明の他の一例のフレキシブルコンテナバッグを模式的に示す図である。
【
図6(a)】汚染物質吸着材が吸着シートの不織布繊維に担持された状態を模式的に示す図である。
【
図6(b)】
図6(a)中のX部分を拡大して模式的に示した図である。
【
図7】本発明のフレキブルコンテナバッグを構成する吸着シートの各貫通孔の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を以下の好適例により説明が、これらに限定されるものではない。
本発明のフレキシブルコンテナバッグは、汚染物質捕獲性及び透水性を有する柔軟な袋体であって、該袋体は、不織布に重金属を吸着する吸着材が担持された1枚以上の吸着シートから構成され、前記不織布は単位面積あたり10~650g/m2で、前記吸着シートの各貫通孔中、最も狭い部分の孔径が10nm~100μmで、前記吸着材は吸着シートあたり10~5000g/m2である、フレキシブルコンテナバッグである。
【0020】
すなわち、上記特定の吸着シートからフレキシブルコンテナバッグを構成することで、不織布に担持される汚染物質吸着材により、重金属等の汚染物質を吸着捕獲して外部へ汚染物質が排出されることを抑制し、更に、透水性にも優れることで減容化が図れる、柔軟性を有するフレキシブルコンテナバッグである。
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明のフレキシブルコンテナバッグを例示して説明する。
なお、フレキシブルコンテナバッグは袋状であるが、
図1~4では、フレキシブルコンテナバッグを模式的に直方体等で示す。本発明のフレキシブルコンテナバッグは、袋体であれば、直方体であっても円筒状であっても円錐状であっても、含水土砂を収容できる形状であれば、公知の任意の形状を採用することができる。
【0022】
図1は、本発明のフレキシブルコンテナバッグの一例を模式的に示す図である。
1は模式的に示した一例のフレキシブルコンテナバッグ、2は土砂、3はフレキシブルコンテナバッグを構成する吸着シートである。
図1に示すように、本発明のフレキシブルコンテナバッグは、内部に土砂2を収容する。
土砂としては、例えば、残土、建設発生土または汚泥等であって、水分を含み、更に重金属等の汚染物質を含む土砂(以下、「汚染物質を含む含水土砂」)を例示できるが、これらに限定されるものではない。含水量は高含水であってもかまわない。
また、フレキシブルコンテナバッグ中の含水土砂中に、必要に応じて減水剤を含有させてもよい。
【0023】
本発明のフレキシブルコンテナバッグは、特定の汚染物質吸着材が担持された吸着シート3を袋体に加工するものである。
当該袋体は上記特定の吸着シートから構成されているため、透水性も良好で、溶出した重金属等の汚染物質は、該吸着シートと接触することで、吸着シートに担持されている吸着材に吸着捕獲される。
また、吸着シートは、1枚以上を積層して構成することができ、収容される土砂の重量等に応じて吸着シートの積層枚数を任意に決定して用いることが可能である。
【0024】
本発明のフレキシブルコンテナバッグを構成する、特定の吸着シート3は、収容されている土砂中に含まれる水分に、当該土砂中に含有される汚染物質が溶け出すが、汚染物質を含む水分が、フレキシブルコンテナバッグを構成する吸着シートと接触することで、当該吸着シートに担持されている吸着材に汚染物質が接触して吸着除去されることとなる。
これにより、フレキシブルコンテナバッグから排出された透過水には、汚染物質が含まれず、環境的に安全に水分を外部へ排出されることを可能にする。
【0025】
図2は、本発明のフレキシブルコンテナバッグの他の一例を模式的に示す図である。
4は模式的に示した他の一例のフレキシブルコンテナバッグ、2は土砂、3はフレキシブルコンテナバッグを構成する吸着シート、5は遮水シートである。
具体的には、フレキシブルコンテナバッグ4の袋体の底部以外の外側が遮水シート5で被覆される。
遮水シート5としては、例えば合成ゴムや低密度ポリエチレン、塩化ビニル樹脂などの合成樹脂等の材料のシートを例示することができるが、遮水性があるものであれば、特に限定されず任意の公知のシートを用いることが可能である。
また、遮水シート5は、底部面全体にわたって被覆せずに水分が底部面全体から排出されるようにしても、底部面の一部だけ被覆しないで水分の排出口を狭めてもかまわない。
【0026】
図2のフレキシブルコンテナバッグは、遮水シートで底部面以外が被覆されているため、土砂に含まれる水分は、遮水シートで被覆されておらず吸着シートが露出している底部口からのみ透過されるため、遮水シートの内側のフレキシブルコンテナバッグを構成している吸着シートに担持されている吸着材と、含有される汚染物質との十分な接触時間がより有効に確保することができることとなる。
【0027】
図3は、本発明のフレキシブルコンテナバッグの他の一例を模式的に示す図である。
6は模式的に示した他の一例のフレキシブルコンテナバッグ、3はフレキシブルコンテナバッグを構成する吸着シート、7は縫合手段である。
具体的には、フレキシブルコンテナバッグ6の袋体を構成する吸着シートを接ぎ合わせる際に用いる縫合糸等の縫合手段7は、重金属等の汚染物質を吸着する吸着材が担持されている縫合糸等の縫合手段である。
例えば、吸着材を担持している繊維からなる縫合糸等の縫合手段で、吸着シートを繋ぎ合わせ、次いで、例えば熱を負荷して圧着して隙間をなくすように接合する。
これにより任意の大きさのフレキシブルコンテナバッグを調製することができるとともに、吸着シートのつなぎ目からの汚染物質含有水の漏洩や拡散を防止することが可能となる。
【0028】
図4は、本発明のフレキシブルコンテナバッグの他の一例を模式的に示す図である。
8は模式的に示した他の一例のフレキシブルコンテナバッグ、2は土砂、3はフレキシブルコンテナバッグを構成する吸着シート、9は汚染物質吸着材コーティング透水性パイプ又は汚染物質吸着材担持筒状フィルターである。
具体的には、汚染物質吸着材コーティング透水性パイプ又は汚染物質吸着材担持筒状フィルター9は、フレキシブルコンテナバッグの垂直方向、例えば中央に垂直に位置させて、下端部はフレキシブルコンテナバッグの底部を貫通して外部へ繋がるように設置されている。
【0029】
なお、
図4では、汚染物質吸着材コーティング透水性パイプ又は汚染物質吸着材担持筒状フィルター9の下端部は、上記したように、フレキシブルコンテナバッグの底部を貫通して外部へ繋がるように設置されているが、当該下端部はフレキシブルコンテナバッグを貫通することなく、当該フレキシブルコンテナバッグを構成する汚染物質吸着材が担持された吸着シート3に袋体内から接した状態で設置されていてもかまわない。
このように、汚染物質吸着材コーティング透水性パイプ又は汚染物質吸着材担持筒状フィルター9をフレキシブルコンテナバッグの内部、例えば中央部に設置することで、内部、例えば中央部に収容されている土壌中の脱水を促進し、減容性能を向上させることが可能となる。
【0030】
図5は、本発明のフレキシブルコンテナバッグの他の例を模式的に示す図である。
図5は、上記
図4で使用する汚染物質吸着材コーティング透水性パイプ又は汚染物質吸着材担持筒状フィルターで9を、フレキシブルコンテナバッグ内に水平横方向に設置した例である。
具体的には、汚染物質吸着材コーティング透水性パイプ又は汚染物質吸着材担持筒状フィルター9を、フレキシブルコンテナバッグの水平横方向、例えば水平横方向に中央に位置させ、当該パイプ又はフィルターの両端をフレキシブルコンテナバッグを構成する汚染物質吸着材が担持された吸着シート3に袋体内から接した状態(
図5(b))で設置しても、片端のみをフレキシブルコンテナバッグを構成する汚染物質吸着材が担持された吸着シート3に袋体内から接した状態(
図5(a))で設置してもかまわない。
このように、フレキシブルコンテナバッグの水平横方向に、汚染物質吸着材コーティング透水性パイプ又は汚染物質吸着材担持筒状フィルター9を設置することで、当該バッグ内の内部、例えば中央部に位置する土壌からの脱水を促進して、減容効果を更に向上させることが可能となるとともに、当該コンテナバッグを積層して運搬する際にも、邪魔にならず利便性が高くなる。
【0031】
上記透水性パイプは、例えば塩化ビニルパイプに孔を設け、汚染物質吸着材が担持されている吸着シートを当該パイプに貼り付けること、特に当該パイプの外側に張り付けることで調製することができる。
また、透水性フィルターは、汚染物質吸着材が担持されている繊維を束ねて繊維巻きフィルターとして調製することができる。
【0032】
本発明のフレキシブルコンテナバッグを構成する汚染物質吸着材が担持された吸着シート3は、1シートで構成されていても、2シート以上を積層して用いてもよく、さらに、必要に応じて、当該吸着シートを、不織布からなる保護シートで挟持して用いてもよい。
また、使用後のフレキシブルコンテナバッグは、例えばセメント工場の燃料として利用することが可能である。
【0033】
本発明のフレキシブルコンテナバッグを構成する吸着シート3は、不織布に重金属を吸着する吸着材が担持されてなるものである。
図6(a)は、汚染物質吸着材が不織布繊維に担持された状態を模式的に示す図であり、
図6(b)は、
図6(a)中のX部分を拡大して模式的に示した図である。
本発明のフレキシブルコンテナバッグを構成する吸着シート3を構成する不織布11は、重金属等の汚染物質を吸着する吸着材12を担持できれば特に限定されるものではなく、市場で入手できる任意の不織布を用いることができる。
【0034】
また、本発明のフレキシブルコンテナバッグを構成する吸着シートは、吸着材を担持した不織布の表と裏とを貫く各貫通孔の最も狭い部分の孔径が、10nm(10-8m)~100μm(10-4m)とすることができれば、その繊度、繊維長は特に限定されず、市場で入手できる任意の公知の不織布を用いることができる。
また、不織布11は、不織布を構成する通常の公知の任意の有機繊維を使用することができ、かかる有機繊維としては、親水性有機繊維や疎水性有機繊維が挙げられ、好ましくは疎水性有機繊維からなることが長期に強度を保持して有効な耐久性を備える点から望ましい。
これらの不織布繊維としては、例えば、パルプ、古紙パルプ、リンター、麻、綿、ケナフ等から調製される天然セルロース繊維や、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド、ポリイミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、スチレン-エチレン共重合体、スチレン-アクリル共重合体、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(PVA)等のポリビニルアルコール系樹脂等の繊維を例示することができる。
【0035】
また、不織布の製造方法は特に限定されず、通常の製造方法を適用して、本発明に用いる不織布を製造することができる。
不織布の一般的な製造工程としては、原料繊維からウェブを形成するウェブ形成工程と、ウェブ中の原料繊維を結合させる繊維結合工程とを有する方法があり、ウェブ形成工程としてエアレイド法が採用された不織布(エアレイド不織布)や、ウェブ形成工程としてカーディング法が採用された不織布がある。また、不織布の形態としては、例えばウェブ形成工程の違いに基づいて、乾式不織布、湿式不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布などがあり、いずれのものも使用することが可能である。
【0036】
また、不織布のウェブ繊維結合方法としては、公知の任意の方法を適用することができ、例えば、ケミカルボンド法(浸漬法・スプレー法)、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流交絡法等を用いることができる。
【0037】
また、不織布の単位面積あたりの質量(目付)は、特に限定されないが、好ましくは10~650g/m2が望ましく、より好ましくは10~600g/m2、さらに好ましくは200~600g/m2であることが望ましい。
目付がかかる範囲であると、軽量で施工性がよく、また、吸着材を担持した不織布の各貫通孔の中で最も狭い部分の孔径が上記特定の範囲であることの相乗効果で、汚染物質を良好に捕獲することができる吸着シートを得ることができる。
【0038】
好ましくは、本発明のフレキシブルコンテナバッグを構成する吸着シート3は、例えば透水係数が10-5cm/s以上であることが望ましく、より好ましくは10-4cm/s以上である。
汚染物質を含む汚染水が吸着シートと十分に接触して、建設・土木工事等から発生する掘り起こし残土等から浸出する汚染物質を含む含水土砂から流出した汚染物質を、更に有効に捕獲除去し、また、汚染水が吸着シート中の汚染物質吸着材と十分に接触して捕獲されるためには、更に好ましくは透水係数が10-1cm/s以下であることが望ましい。
【0039】
上記吸着シート3を構成する不織布11に担持される、重金属を吸着する吸着材12としては、特に限定されず、公知の重金属等吸着材を用いることができる。
好ましくは、当該吸着材は、粉末状であることが、不織布繊維に広く分散されて担持されることができるため望ましい。また、粉末形態とすることで汚染物質を含む汚染水と速やかに反応することが可能であり、汚染物質である重金属等を効率的に吸着して捕獲することができる。
かかる粉末の平均粒径は、好ましくは3~100μm、より好ましくは30~100μmであることが、汚染水の透水性を良好に保持するために望ましい。
【0040】
また、重金属等を吸着できる吸着材12としては、公知の任意の吸着材を用いることができるが、特に、ドロマイト系化合物を含む吸着材が、汚染物質である重金属等を有効に捕獲して固定することができることから望ましい。
【0041】
ここで、汚染物質とは、重金属やハロゲンを意味し、重金属としては、例えば、マンガン、クロム、銅、カドミウム、水銀、セレン、鉛、砒素、カドミウム等の1種若しくは2種以上のもので、かつ重金属単体及びその化合物が例示でき、またハロゲンとしてはフッ素、塩素等の単体及びその化合物が例示できる。さらにこれらに加え、重金属等には土壌汚染対策法に規定される第2種特定有害物質も含むものであり、例えばホウ素単体及びその化合物を例示することができる。
【0042】
汚染物質吸着材として好適に用いられるドロマイト系化合物は、MgO、CaMg(CO3)2及びCaCO3を必須含有成分とするものである。
当該成分を含有するドロマイト系化合物としては、例えば、MgO、CaCO3、CaMg(CO3)2を主成分とする半焼成ドロマイトが挙げられる。
前記ドロマイトは、市場で入手し得る任意のものを用いることができ、産地は問わない。
また、市場で入手し得る任意の半焼成ドロマイトや、市場で入手し得る任意のドロマイトを焼成して得られた半焼成ドロマイトを用いることができ、産地や原料ドロマイトの組成等は問わない。半焼成ドロマイトは、分解反応が完全に完了するまでドロマイトを焼成して得られるものではなく、MgO、CaMg(CO3)2及びCaCO3を必須成分として含むものである。
【0043】
ドロマイトは、石灰石CaCO3とマグネサイトMgCO3のモル比が1:1となる複塩構造を有しており、CO3
2-基を挟んでCa2+イオンとMg2+イオンが交互に層を成して、一般に、MgCO3の割合が10~45質量%のものをいう。ドロマイトは、国内に多量に存在しており、ドロマイトを使用した吸着材は、コストや環境負荷の点からも有利である。
【0044】
上記半焼成ドロマイトとしては、粉末X線回折によるリートベルト法を用いて解析したドロマイト焼成物中の残留CaMg(CO3)2相の含有量xが、0.4≦x≦35.4(質量%)となる半焼成ドロマイトを好適に用いることができる。
半焼成ドロマイト中に含まれるCaMg(CO3)2相を定量して、上記範囲内のCaMg(CO3)2相残留量の半焼成ドロマイトを好適に用いることで、原料となるドロマイト鉱石の産地による組成の相違や、焼成温度等の焼成条件の設定などに関係なく、ドロマイトが最大に優れた重金属等吸着性能を有することが更に可能となる。
【0045】
ドロマイトは焼成することで、CaMg(CO3)2→MgO+CaCO3+CO2で表わされる分解反応を示す。また、ドロマイトの焼成による上記熱分解により、細孔が形成されて重金属等捕獲性能を発揮しているものと考えられる。本発明においては、ドロマイトを焼成した半焼成ドロマイト中のドロマイト相(CaMg(CO3)2相)の残留量を粉末X線回折によるリートベルト法により解析して、残留CaMg(CO3)2相の含有量xが、0.4≦x≦35.4(質量%)、好ましくは1.8≦x≦17.4(質量%)とすることで、特に好適に、重金属等を、より良好に捕獲することを実現することが可能となる。
【0046】
例えば、かかる好適な半焼成ドロマイトは、粉末X線回折によるリートベルト法を用いて解析したドロマイト焼成物中の残留CaMg(CO3)2相の含有量xが、好ましくは0.4≦x≦35.4(質量%)、より好ましくは1.8≦x≦17.4(質量%)となるように焼成することで製造することができる。
ドロマイトを焼成する温度は、特に限定されず、通常ドロマイトを焼成して半焼成ドロマイトを製造する温度、例えば650~1000℃で焼成することができる。残留CaMg(CO3)2相の含有量が、0.4≦x≦35.4(質量%)となるように焼成すれば焼成時間も特に制限されるものではない。
【0047】
上記汚染物質吸着シート3に担持される吸着材中のMgO含有量は、好ましくは粉末X線回折によるリートベルト法を用いて解析した値で14~23質量%であり、さらに好適には14~21質量%である。
かかる吸着材中のMgOは、含有されるドロマイト系化合物由来のものであり、具体的には、ドロマイトを焼成して得られた半焼成ドロマイト等由来のものであり、更に好ましくは半焼成ドロマイト由来のものである。
MgO含有量が14質量%未満では、鉛やフッ素等に対する吸着能力が低下する場合があったり、23質量%を超えると、MgOのpHがアルカリ性であるため、フレキシブルコンテナバッグ中の土壌に含まれる汚染物質を吸着したあとの排出水中の水のpHが10以上のアルカリ性を示す場合があり、望ましくない。
【0048】
上記吸着材に含まれるドロマイト系化合物は、必須含有成分MgO、CaMg(CO3)2、CaCO3が含まれるように1種類及び/又は2種類以上の材料を任意に混合することができる。
一例として21質量%のMgOを含有する半焼成ドロマイトを使用した場合においては、吸着材中の半焼成ドロマイト配合比を80~99質量%とすることにより、本発明に用いる吸着材中のMgOの含有量を16~21質量%とすることができるが、使用するドロマイト系材料に応じて、上記配合比率の制約を受けるものではない。
【0049】
更に、上記吸着材には、望ましくは酸性硫酸塩を含む。
酸性硫酸塩としては、例えば、硫酸第一鉄、硫酸アルミニウム等が例示でき、好ましくは硫酸第一鉄を含有する。
酸性硫酸塩を含有することにより、硫酸第一鉄のようにその高い還元作用によって、砒素や六価クロム等の重金属等に対して、より有効に捕獲することができるとともに、酸性であるため、他のドロマイト系化合物中の含有材料の配合比率を調整することで、当該吸着材を用いて処理した排水を中性付近に保持することを可能とする。
【0050】
また、上記吸着材に含まれる酸性硫酸塩は、ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩の合量中、内割で、酸性硫酸塩を1~40質量%、好ましくは14~21質量%の割合で含む。
かかる割合で、吸着材中に、ドロマイト系化合物と酸性硫酸塩とを含むことが望ましい。
【0051】
吸着材の一例としては、上記したように、ドロマイト系化合物、酸性硫酸塩を含み、ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩の合量中、酸性硫酸塩は1~40質量%の割合で含有され、且つ、吸着材中にMgOを14~23質量%含む吸着材が望ましい。
また上記吸着材を適用することで、汚染物質を吸着後の透過水を、中性付近に維持することが可能である。
【0052】
更に好ましくは、上記吸着材中に、上記ドロマイト系化合物、酸性硫酸塩を含有し、これらの各含有量を上記範囲内の量とすることで、特に、重金属等をより有効に捕獲することができる。
【0053】
上記吸着シート中の前記吸着材の含量は、吸着シートあたり10~5000g/m2、好ましくは、50~3000g/m2である。
これにより、汚染物質を吸着する性能を有効に発揮することができるとともに、上記不織布に効果的に吸着材を担持させることが可能となる。
【0054】
上記不織布に、前記吸着材を担持する方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができ、例えば、上記した不織布のウェブ繊維結合方法としての、公知の任意の方法、例えば、ケミカルボンド法(浸漬法・スプレー法)、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流交絡法等をおいて、使用する液体である水中に前記吸着材を分散させて、不織布中に吸着材を均一に担持させることが可能である。
【0055】
また、吸着材が担持された不織布の貫通孔13の状態の例を
図7(a)~(c)に示す。
本発明においては、吸着シート3の各貫通孔13の中でもっとも狭い部分の孔径14が、10nm(10
-8m)~100μm(10
-4m)、好ましくは100nm(10
-7m)~10μm(10
-5m)、より好ましくは1μm(10
-6m)~10μm(10
-5m)の範囲にある。即ち、吸着剤が担持された不織布に含まれる全貫通孔について、各貫通孔の最も狭い部分の孔径が上記範囲内に入っているものである。
ここで、貫通孔13の孔径は、例えば、直径2.5cmの円形サンプルを吸着シートから採取して、パーム・ポロメーター(PMI社製、細孔径分布測定器)を用いて測定することができ、本発明に用いる吸着シートは、各貫通孔13の中で最も狭い部分の孔径14が、上記範囲内の孔径を有するものとする。
図7中の14で示す部分が、貫通孔13の中でもっと狭い部分の孔径を示すものであり、この孔径は、貫通孔を通過できる物の最大サイズでもある。
【0056】
汚染物質を含む汚染水が吸着シート上に滞留すると、汚染水が吸着シートと十分に接触することなく、当該シートの周囲にあふれてしまい、汚染物質を有効に除去することができなくなることが発生するが、吸着シート内の全ての貫通孔13において、各貫通孔のもっとも狭い部分の孔径14が上記範囲内に入ることにより、重金属等の汚染物質を有効に除去することができるとともに、建設・土木工事等から発生する掘り起こし残土等から浸出する汚染物質を含む汚染水や工場からの排水が吸着シートに滞留することなく通過でき、掘り起こし残土等に含まれる汚染物質を含む汚染水等と吸着シートとを効率的に接触させることができる。更に、汚染水や工場からの排水に含まれる重金属、更に必要に応じて前処理して生成された重金属水酸化物や重金属凝集体や汚染物質の懸濁物を有効に捕獲除去することが可能となる。
更に、汚染水が吸着シート中の汚染物質吸着材と十分に接触する時間がなく直ちに通過してしまうと汚染物質を有効に吸着除去することができない場合があるが、本発明においては吸着シートの全ての貫通孔13の中のもっとも狭い部分の孔径14が上記範囲内であることにより、有効に汚染物質を捕獲することが可能となる。
【0057】
上記したように、重金属には、重金属単体及びその化合物が例示でき、例えば重金属酸水酸化物や重金属酸化物や、重金属のキレート錯体も含まれ、汚染物質が含まれる残土、建設発生土、汚泥または排水に含まれる汚染物質が、例えば重金属水酸化物等の場合には、吸着シート3の貫通孔13の中でもっとも狭い部分の孔径14の多くが、上記範囲内の小さい数値を有する吸着シートを用いることが望ましく、また重金属酸化物等の場合には上記孔径範囲内の比較的大きい数値を有する吸着シートを用いることができる。
吸着シート3の各貫通孔13中のもっとも狭い部分の孔径14の分布を測定して、汚染物質が有効に吸着できるように、残土、建設発生土、汚泥または排水に含まれる汚染物質の大きさに応じた吸着シートを選択して用いることが可能である。
【0058】
また本発明のフレキシブルコンテナバッグを用いた脱水処理方法は、本発明のフレキシブルコンテナバッグに、汚染物質を含有する含水土砂を収容し、含水土砂から溶出した汚染物質を含む水分を汚染物質吸着材が担持されている吸着シートと接触させて汚染物質含有水から汚染物質を吸着捕獲し、次いで、水分を外部へ排出する、フレキシブルコンテナバッグを用いた脱水処理方法である。
【0059】
まず、上記本発明のフレキシブルコンテナバッグに、汚染物質を含有する含水土砂を収容する。収容された含水土砂から汚染物質が溶出・滲出して、汚染物質を含む水分がフレキシブルコンテナバッグ中に含まれることとなる。当該汚染物質を含む水分と、汚染物質吸着材が担持されている、フレキシブルコンテナバッグを構成する吸着シートとが接触することで、汚染物質含有水から汚染物質が吸着捕獲される。次いで、汚染物質含有水に含まれる汚染物質が吸着除去された水分が外部へ排出されることとなる。
フレキシブルコンテナバッグから水を脱水処理する手段としては、含水土砂の自重により、または物理的な任意の手段で荷重を加えることにより脱水処理することができる。
【実施例0060】
本発明を次の実施例及び比較例により説明する。
図2に示すフレキシブルコンテナバッグを、以下の実施例及び比較例の、汚染物質吸着材を担持した不織布により構成した。
【0061】
(実施例1~14及び比較例1~6)
以下に、本発明のフレキシブルコンテナバッグに適用される吸着シートを、汚染物質吸着材としてドロマイト系吸着材を例に挙げて、他のドロマイト系吸着材担持シートと比較しながら、具体的に例示して説明する。
【0062】
汚染物質吸着シートに担持される吸着材としてドロマイト系吸着材を以下の材料により調製した。
・半焼成ドロマイト(粉末):栃木県葛生産のドロマイトを焼成
・酸性硫酸塩:硫酸第一鉄一水和物粉末
【0063】
上記半焼成ドロマイト(粉末)について、粉末X線回折によるリートベルト法を用いて各成分の含有量を測定した。
その結果を表1に示す。
【0064】
なお以下、本発明のフレキシブルコンテナバッグを構成し、本発明の脱水処理方法に適切に適用することができる吸着シートを例1~14とし、比較として用いたものを参考例1~6とした。
【0065】
【0066】
(吸着材)
上記半焼成ドロマイトと硫酸第一鉄とを質量比で表2~4に記載の配合比で混合して、種々の吸着材を調製した。調製した各吸着材の各平均粒径を、表2~4に示す。
【0067】
(不織布)
吸着シートを構成する不織布として、ポリプロピレン繊維からなり、目付けが表2~4に示すものをそれぞれ不織布として用いた。なお、不織布としては同じ状態のものを用いたものであり、目付の相違は、厚みの相違に反映されている。
【0068】
上記不織布を、ケミカルボンド法にて製造する際に、バインダー液体に浸漬するが、当該バインダー液体内に上記吸着材を均一に含有させておき、かかる吸着材含有バインダー液体中に不織布を浸漬することで、不織布中に吸着材を均一に分散させて担持させ、各汚染物質吸着シートを製造した。
各シート中の吸着材の担持量を、それぞれ下記表2~4に示す。
【0069】
得られた各汚染物質吸着シートの透水係数もそれぞれ下記表2~4に示す。
なお、不織布の目付、吸着材の担持量や平均粒径、透水係数は以下の方法により測定した値である。
・不織布の目付:JIS L 1913:2010一般不織布試験方法の6.2 単位面積当たりの質量(ISO法)に準拠した値である。
・吸着材の平均粒径:マイクロトラックMT3000II(日機装(株)製)にて測定した値である。
・吸着材の担持量:電子天秤にて、吸着材を担持させた吸着シートの質量から、不織布の質量を減じて、吸着材の担持量を計算した値である。
・透水係数:JIS A 1218に準じて測定した値である。
・吸着シートの各貫通孔の最も狭い部分の孔径:吸着シートから直径2.5cmの円形サンプルを採取して、パーム・ポロメーター(PMI社製、細孔径分布測定器)を用いて、当該吸着シートを表から裏に貫いている孔であって、その孔の中で最も狭い部分の孔径値を測定した値である(
図7参照)。
評価:各貫通孔の最も狭い部分の孔径の分布範囲が10nm(10
-8m)~100μm(10
-4m)・・・〇
各貫通孔の最も狭い部分の孔径の分布範囲が100μmより大きい孔径が存在する場合・・・・・・×(大)
各貫通孔の最も狭い部分の孔径の分布の範囲が10nmより小さい孔径が存在する場合・・・・・・×(小)
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
(試験例1~3)
上記例1~14及び比較例1~6の各吸着シートを、縦×横が30cm×25cmの各試験シートにして、下記の各試験を実施し、その結果を、上記表2~4に示す。
(試験例1 砒素(As)吸着試験)
(1)汚染物質として、重金属である砒素を用いた吸着試験を実施した。
具体的には、砒素(砒素標準液(As-1000) 関東化学社製(株))を水に1mg/Lとなるように溶解させて、砒素水溶液を調製した。前記砒素水溶液100mlを、250mlのポリ容器に投入して、各試験シート30×25cm/枚を4分割して、投入した。
次いで、60分間、振とう後、ろ過して、残存溶液中の砒素濃度(mg/l)を測定した(例1~14、比較例1~6)。
(2)鉛(鉛標準液(Pb-1000)関東化学社製(株))を水に0.1mg/Lとなるように溶解させて、水溶液を調製した。前記溶液42mLを500mLのポリ容器に投入して、各試験シートφ9cm/枚投入した。次いで、6時間振とう後、ろ過して、残存溶液中の鉛の濃度(mg/L)を測定した(例5~7)。
(3)カドミウム(カドミウム標準液(Cd-1000)関東化学社製(株))を水に0.1mg/Lとなるように溶解させて、水溶液を調製した。前記溶液42mLを500mLのポリ容器に投入して、各試験シートφ9cm/枚投入した。次いで、6時間振とう後、ろ過して、残存溶液中のカドミウムの濃度(mg/L)を測定した(例5~7)。
(4)水銀(水銀標準液(Hg-1000)富士フィルム和光純薬工業社製(株))を水に0.0025mg/Lとなるように溶解させて、水溶液を調製した。前記溶液42mLを500mLのポリ容器に投入して、各試験シートφ9cm/枚投入した。次いで、6時間振とう後、ろ過して、残存溶液中の水銀の濃度(mg/L)を測定した(例5~7)。
【0074】
(試験例2 施工性(曲げやすさ(柔軟性)))
施工性は、曲げやすさ(伸び率(%))で評価した。
具体的には、各試験シートの縦方向の伸び率を、JIS L 1913:2010 一般不織布試験方法の「6.3 引張強さ及び伸び率(ISO法)」に準拠して測定した。
その結果を、上記表2~3に示す。
なお、上記表2~3中の評価基準は以下のとおりである。
◎:100%以上
〇:80以上~100%未満
△:50以上~80%未満
×:50%未満
【0075】
(試験例3 耐久性1(引張強さ))
表2~3中の耐久性1は、引張強さ(引張強力)で評価した。
具体的には、各試験シートの縦方向の引張強力(N/5cm)を、JIS L 1913:2010 一般不織布試験方法の「6.3 引張強さ及び伸び率(ISO法)」に準拠して測定した。
その結果を、上記表2~3に示す。
なお、上記表2~3中の評価基準は以下のとおりである。
◎:1000(N/5cm)以上
〇:500以上~1000(N/5cm)未満
△:300以上~500(N/5cm)未満
×:300(N/5cm)未満
【0076】
(試験例4 耐久性2(粉漏れ))
表4中の耐久性2は、粉漏れ評価した。
具体的には、各試験シートの表面に担持された吸着材粉の吹き出し状態を確認するとともに、手でシートを持って、3回叩き、吸着材粉のシートからの漏れ具合を目視で確認した。
その結果を、上記表4に示す。
なお、上記表4中の評価基準は以下のとおりである。
◎:吸着材粉の吹き出し、粉漏れ無し
〇:吸着材粉の吹き出しは無いが、若干の吸着材粉漏れ有り
△:若干の吸着材粉の吹き出し有り且つ若干の吸着材粉の漏れ有り
×:吸着材粉の吹き出し有り且つ吸着材粉の漏れ有り
【0077】
(試験例5 排水性)
表4中の排水性は、各試験シートに水を10ccスポイトで滴下し、滴下直後から120秒後の間の水の浸透状況を確認した。
その結果を、上記表4に示す。
なお、上記表4中の評価基準は以下のとおりである
◎:滴下直後10秒以内に10ccの水がすぐに浸透する
〇:滴下直後から11~60秒かけて水が徐々に浸透する
△:水が徐々に浸透するが、シート表面に水が残存している
×:水がシート上にほとんど残存しており浸透していない
【0078】
上記表2~4より、不織布の目付が単位面積あたり10~650g/m2であり、不織布に担持される吸着材がシートあたり10~5000g/m2であり、当該シートの透水係数が10-5cm/s以上である吸着シートは、重金属を例とした汚染物質を含む排水と接触することで、汚染物質を有効に吸着することができ、透水性能も良好であることが明らかである。
本発明のフレキシブルコンテナバッグは、重金属等の汚染物質を含有する高含水土壌を収容するために、適切に適用することができる。特に、例えば、トンネルやダム等の掘削工事や建設工事等によって大量に発生する重金属等が溶出する含水汚染土壌の含水掘削ずり等の脱水処理等にも有効に適用することが可能となる。