(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156044
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】撮像装置、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/232 20060101AFI20221006BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20221006BHJP
G03B 37/00 20210101ALI20221006BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20221006BHJP
【FI】
H04N5/232 290
H04N5/232 380
G03B15/00 V
G03B15/00 W
G03B37/00 A
G06T7/00 650Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059542
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】篠田 兼崇
(72)【発明者】
【氏名】築山 大亮
(72)【発明者】
【氏名】大塚 大
(72)【発明者】
【氏名】大野 龍一
【テーマコード(参考)】
2H059
5C122
5L096
【Fターム(参考)】
2H059BA02
2H059BA11
5C122DA14
5C122EA42
5C122EA61
5C122FA02
5C122FA18
5C122FB06
5C122FH04
5C122FH09
5C122FH18
5C122HA77
5C122HA86
5C122HB01
5L096AA06
5L096BA04
5L096CA05
5L096DA02
5L096FA32
5L096FA66
5L096FA67
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】電子ジンバルによる補正を制御すること。
【解決手段】移動体に搭載可能な撮像装置は、被写体を撮像する撮像部と、前記撮像装置の姿勢の変化に関する第1情報を取得する取得部と、前記撮像部からの出力により生成された前記被写体の画像データに基づいて、移動体外を視認不可能な視認不可領域を特定する特定部と、前記取得部によって取得された第1情報に基づいて前記画像データからの出力対象画像データの抽出範囲の位置を変動させる変動パラメータを決定する第1決定処理と、前記第1決定処理とは異なる第2決定処理とのうち、前記特定部によって特定された視認不可領域に基づいて、いずれか一方の決定処理を実行する決定部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載可能な撮像装置であって、
被写体を撮像する撮像部と、
前記撮像装置の姿勢の変化に関する第1情報を取得する取得部と、
前記撮像部からの出力により生成された前記被写体の画像データに基づいて、移動体外を視認不可能な視認不可領域を特定する特定部と、
前記取得部によって取得された第1情報に基づいて前記画像データからの出力対象画像データの抽出範囲の位置を変動させる変動パラメータを決定する第1決定処理と、前記第1決定処理とは異なる第2決定処理とのうち、前記特定部によって特定された視認不可領域に基づいて、いずれか一方の決定処理を実行する決定部と、
を有する撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記視認不可領域に基づいて、前記撮像装置の姿勢の変化に関する第2情報を算出する算出部と、を有し、
前記決定部は、前記第1情報と前記算出部によって算出された第2情報とに基づいて、前記いずれか一方の決定処理を実行する、撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記第1情報の元となるデータを検出するセンサを有し、
前記第2決定処理は、前記センサによって検出されたデータの出力を停止する処理である、撮像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記第2決定処理は、前記画像データに基づいて前記抽出範囲の位置を変動させる変動パラメータを決定する処理である、撮像装置。
【請求項5】
請求項4に記載の撮像装置であって、
前記第2決定処理は、前記第1情報を用いずに、前記画像データからの出力対象画像データの抽出範囲の位置を変動させる変動パラメータを決定する、撮像装置。
【請求項6】
請求項4に記載の撮像装置であって、
前記撮像部からの出力により生成された時系列な画像データ群に基づいて、動きベクトルを検出する動き検出部を有し、
前記特定部は、前記動き検出部によって検出された動きベクトルに基づいて、前記視認不可領域を特定する、撮像装置。
【請求項7】
請求項4に記載の撮像装置であって、
前記画像データの輝度を検出する輝度検出部を有し、
前記特定部は、前記輝度検出部によって検出された輝度に基づいて、前記視認不可領域を特定する、撮像装置。
【請求項8】
請求項4に記載の撮像装置であって、
前記画像データの被写体距離を検出する距離検出部を有し、
前記特定部は、前記移動体内の内周壁までの基準距離と、前記距離検出部によって検出された被写体距離と、に基づいて、前記視認不可領域を特定する、撮像装置。
【請求項9】
請求項6に記載の撮像装置であって、
前記視認不可領域に基づいて、前記撮像装置の姿勢の変化に関する第2情報を算出する算出部を有し、
前記決定部は、前記第2決定処理において、前記算出部によって算出された第2情報を用いて前記抽出範囲の位置を変動させる変動パラメータを決定する、撮像装置。
【請求項10】
請求項6に記載の撮像装置であって、
前記特定部は、前記動きベクトルの方向および大きさに基づいて、前記視認不可領域を特定する、撮像装置。
【請求項11】
請求項6に記載の撮像装置であって、
前記動き検出部は、前記時系列な画像データ群の中の第1画像データから前記第1画像データよりも時間的に後の第2画像データへの注目領域の移動角度に基づいて、前記動きベクトルを検出する、撮像装置。
【請求項12】
請求項8に記載の撮像装置であって、
前記撮像部は、第1魚眼レンズと、前記第1魚眼レンズを介して第1被写体を撮像する第1撮像素子と、前記第1魚眼レンズと凹面どうしが対向するように配置される第2魚眼レンズと、前記第2魚眼レンズを介して第2被写体を撮像する第2撮像素子と、により構成され、
前記距離検出部は、前記第1撮像素子からの出力により生成された第1画像データと、前記第2撮像素子からの出力により生成された第2画像データと、の重複範囲に基づいて、前記被写体距離を検出する、撮像装置。
【請求項13】
移動体に搭載可能であり被写体を撮像する撮像装置の制御をプロセッサに実行させる制御プログラムであって、
前記プロセッサに、
前記撮像装置の姿勢の変化に関する情報を取得させ、
前記撮像装置によって撮像された前記被写体の画像データに基づいて、移動体外を視認不可能な視認不可領域を特定させ、
前記情報に基づいて前記画像データから出力対象画像データの抽出範囲の位置を変動させる変動パラメータを決定する第1決定処理と、前記第1決定処理とは異なる第2決定処理とのうち、前記視認不可領域に基づいて、いずれか一方の決定処理を実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加速度センサやジャイロセンサからの検出信号を用いて電子ジンバルにより姿勢を制御して撮像するカメラがある(たとえば、下記特許文献1を参照。)。しかしながら、上述した従来技術では、電子ジンバルを使用して撮像するモードと電子ジンバルを使用せずに撮像するモードとを自動的に切り替える点については、考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本願において開示される発明の一側面となる撮像装置は、移動体に搭載可能な撮像装置であって、被写体を撮像する撮像部と、前記撮像装置の姿勢の変化に関する第1情報を取得する取得部と、前記撮像部からの出力により生成された前記被写体の画像データに基づいて、移動体外を視認不可能な視認不可領域を特定する特定部と、前記取得部によって取得された第1情報に基づいて前記画像データからの出力対象画像データの抽出範囲の位置を変動させるパラメータを決定する第1決定処理と、前記第1決定処理とは異なる第2決定処理とのうち、前記特定部によって特定された視認不可領域に基づいて、いずれか一方の決定処理を実行する決定部と、を有する。
【0005】
本願において開示される発明の一側面となる制御プログラムは、移動体に搭載可能であり被写体を撮像する撮像装置の制御をプロセッサに実行させる制御プログラムであって、前記プロセッサに、前記撮像装置の姿勢の変化に関する情報を取得させ、前記撮像装置によって撮像された前記被写体の画像データに基づいて、移動体外を視認不可能な視認不可領域を特定させ、前記情報に基づいて前記画像データから出力対象画像データの抽出範囲の位置を変動させるパラメータを決定する第1決定処理と、前記第1決定処理とは異なる第2決定処理とのうち、前記視認不可領域に基づいて、いずれか一方の決定処理を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、自動車内に搭載した撮像装置による撮像例1を示す説明図である。
【
図2】
図2は、自動車内に搭載した撮像装置による撮像例2を示す説明図である。
【
図3】
図3は、自動車内に搭載した撮像装置による撮像例3を示す説明図である。
【
図4】
図4は、撮像装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、撮像装置の機能的構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、画像処理部による全天球画像データの生成例(前半)を示す説明図である。
【
図7】
図7は、画像処理部による全天球画像データの生成例(後半)を示す説明図である。
【
図8】
図8は、結合正距円筒変換画像データにおける視認可能領域および視認不可領域を示す説明図である。
【
図9】
図9は、結合正距円筒変換画像データにおける視認可能領域の動きベクトルを示す説明図である。
【
図10】
図10は、抽出範囲の位置に関する移動量を示す説明図である。
【
図11】
図11は、動き検出部によって得られる移動角度を示す説明図である。
【
図12】
図12は、重複領域における被写体距離の検出例を示す説明図である。
【
図13】
図13は、撮像装置による手動モード切替の処理手順例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、センサ使用モードにおける撮像装置による撮像処理手順例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、撮像装置の自動モード切替の処理手順例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、画像検出モードにおける撮像装置による撮像処理手順例1を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、画像検出モードにおける撮像装置による撮像処理手順例2を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、画像検出モードにおける撮像装置による撮像処理手順例3を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、全天球画像データの再生処理手順例を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、バイクに搭載した撮像装置による撮像例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本実施例にかかる撮像装置は、たとえば、移動体または移動体の搭乗者に搭載可能であり、被写体を撮像して全天球画像データを撮像する全天球型カメラ(または360度カメラともいう)を有する。このような撮像装置は、電子ジンバルを搭載する。この電子ジンバルは、撮像装置の傾きを検出して、当該傾きを打ち消すように、全天球画像データから出力対象画像データを抽出する抽出範囲の位置を補正する。
【0008】
撮像装置を移動体または移動体の搭乗者に搭載した場合、移動体の加減速や旋回により撮像装置に加速度がかかる。これにより、電子ジンバルが、実際には撮像装置は傾いていないのに、あたかも撮像装置が傾いたように、撮像した画像データを補正する。本実施例では、電子ジンバルによるこのような補正をしないように制御することにより、被写体が移動体ではない移動体外の画像データに基づいて、移動体の加減速や旋回による出力対象画像データを抽出する抽出範囲の誤った位置変更を抑制する。これにより、実際の移動体の走行に適した画像データを提供することができる。
【0009】
以下、本実施例について詳細に説明する。移動体には、たとえば、車両(たとえば、自動車やバイク、自転車、電車)、船舶、飛翔体(たとえば、飛行機やヘリコプタ、ドローン)、ロボットがあるが、以下の実施例では、移動体として自動車を例に挙げて説明する。移動体が自動車の場合、撮像装置は、車内または搭乗者に着脱自在に固定されるが、以下の実施例では、車内の任意の位置に固定された場合を例に挙げて説明する。
【0010】
また、全天球型カメラは、2個の撮像素子の裏面側を対向させ、各撮像素子の前段にそれぞれ画角が180度以上である魚眼レンズを設けたカメラである。両魚眼レンズの光軸は一致するものとする。全天球型カメラは、両撮像素子からの画像データを合成することにより、撮像装置を中心としてどの方向にも360度回転可能な全天球画像データを生成する。全天球型カメラは、電子ジンバルを搭載する。電子ジンバルは、加速度センサやジャイロセンサにより全天球型カメラの傾きを検出して、傾きを打ち消すように画像データを補正する。
【0011】
なお、全天球型カメラは、上下前後左右の6か所に撮像素子とレンズを設けた構成でもよい。また、全天球型カメラではなく、1つの撮像素子と1つの魚眼レンズを搭載したカメラでもよい。また、魚眼レンズではなく、画角が、たとえば、170°以上180°未満の超広角レンズでもよい。以下、実施例について説明する。
【0012】
<自動車内に搭載した撮像装置による撮像例>
図1~
図3は、自動車内に搭載した撮像装置による撮像例1~3を示す説明図である。
図1は、自動車100が加速した場合の撮像例1であり、
図2は、自動車100が減速した場合の撮像例2であり、
図3は、自動車100が進行方向右に旋回した場合の撮像例3である。自動車100が進行方向左に旋回した場合の撮像例は、撮像例3とは反対方向の旋回であるため、説明を省略する。なお、撮像装置101である全天球型カメラは、自動車100の進行方向および後退方向にそれぞれ撮像素子および魚眼レンズ102a,102bを向けて自動車100内に固定されているものとする。
【0013】
図1において、(A)は、自動車100が加速した場合に撮像装置101にかかる加速度の種類を示す。進行方向側の第1魚眼レンズ102aおよび後退方向側の第2魚眼レンズ102bの光軸OAは一致する。撮像方向CD1は、光軸OAの方向のうち進行方向側の撮像素子および第1魚眼レンズ102aが向いている方向を示す。自動車100が加速した場合、撮像装置101には、鉛直方向への重力加速度gと、自動車100の後退方向への加速度a1とがかかる。合成加速度ga1は、重力加速度gと加速度a1とを合成した加速度である。
【0014】
(B)は、自動車100が加速した場合の撮像装置101の傾き検出例を示す。撮像装置101の電子ジンバルは、合成加速度ga1により、撮像装置101の進行方向側がピッチ方向上方に傾いた(傾き角度α)と判断する(ただし、実際には撮像装置101は固定されているため傾かない)。電子ジンバルは、進行方向側の第1魚眼レンズ102aが進行方向正面を向くように、すなわち、その傾き角度αを打ち消すように、撮像方向CD1を撮像方向CD2に変更する。なお、撮像装置101は固定されているため、実際には光軸OAは、撮像方向CD2のようにずれることはない。
【0015】
(C)は、加速度a1が撮像装置101にかかっていない場合の撮像装置101による被写体の画像データの出力例を示す。具体的には、たとえば、(C)は、撮像方向CD1をステッチングされた画像データの投影方向とした場合における全天球画像データの抽出範囲110と、抽出範囲110で全天球画像データから抽出された出力対象画像データ111と、を示す。全天球画像データとは、ステッチング後の画像データを仮想球面に張り付けた画像データである。出力対象画像データ111のうち、画像データ111aがフロントガラス越しに撮像された車外の風景の画像データであり、画像データ111bが車内の画像データである。
【0016】
(D)は、加速度a1が撮像装置101にかかっている場合の撮像装置101による被写体の画像データの出力例を示す。具体的には、たとえば、(D)は、撮像方向CD2をステッチングされた全天球画像データの投影方向とした場合における全天球画像データの抽出範囲120と、抽出範囲120で全天球画像データから抽出された出力対象画像データ121と、を示す。出力対象画像データ121のうち、画像データ121aがフロントガラス越しに撮像された車外の風景の画像データであり、画像データ121bが車内の画像データである。
【0017】
(D)に示したように、加速度a1が撮像装置101にかかる都度、抽出範囲110が抽出範囲120に変更されるため、出力対象画像データ111から出力対象画像データ121にぶれてしまう。したがって、本来出力してほしい領域(本例では車外の景色の画像データ121a)の少なくとも一部が抽出範囲110外となって出力されず、余計な領域(本例では車内の画像データ121b)が抽出範囲110に含まれてしまう。
【0018】
図2において、(A)は、自動車100が減速した場合に撮像装置101にかかる加速度の種類を示す。自動車100が減速した場合、撮像装置101には、鉛直方向への重力加速度gと、自動車100の進行方向への加速度(負の加速度)a2とがかかる。合成加速度ga2は、重力加速度gと加速度a2とを合成した加速度である。
【0019】
(B)は、自動車100が減速した場合の撮像装置101の傾き検出例を示す。撮像装置101の電子ジンバルは、合成加速度ga2により、撮像装置101の進行方向側がピッチ方向下方に傾いた(傾き角度α)と判断する(ただし、実際には撮像装置101は固定されているため傾かない)。電子ジンバルは、進行方向側の第1魚眼レンズ102aが進行方向正面を向くように、すなわち、その傾き角度αを打ち消すように、撮像方向CD1を撮像方向CD3に変更する。なお、撮像装置101は固定されているため、実際には光軸OAは、撮像方向CD2のようにずれることはない。
【0020】
(C)は、加速度a2が撮像装置101にかかっていない場合の撮像装置101による被写体の撮像例を示す。具体的には、たとえば、(C)は、
図1の(C)と同様、撮像方向CD1をステッチングされた全天球画像データの投影方向とした場合における全天球画像データの抽出範囲110と、抽出範囲110で全天球画像データから抽出された出力対象画像データ111と、を示す。
【0021】
(D)は、加速度a2が撮像装置101にかかっている場合の撮像装置101による被写体の撮像例を示す。具体的には、たとえば、(D)は、撮像方向CD3をステッチングされた全天球画像データの投影方向とした場合における全天球画像データの抽出範囲130と、抽出範囲130で全天球画像データから抽出された出力対象画像データ131と、を示す。出力対象画像データ131は、フロントガラス越しに撮像された車外の風景の画像データである。
【0022】
(D)に示したように、加速度a2が撮像装置101にかかる都度、抽出範囲110が抽出範囲130に変更されるため、出力対象画像データ111から出力対象画像データ131にぶれてしまい、視認性が低下する。
【0023】
図3において、(A)は、自動車100が右方向に旋回した場合に撮像装置101にかかる加速度の種類を示す。自動車100が右方向に旋回した場合、撮像装置101には、鉛直方向への重力加速度gと、自動車100の旋回方向への加速度(求心加速度)とがかかる。合成加速度ga3は、重力加速度gと求心加速度とを合成した加速度である。
【0024】
(B)は、自動車100が右方向に旋回した場合の撮像装置101の傾き検出例を示す。撮像装置101の電子ジンバルは、合成加速度ga3により、撮像装置101の進行方向側が右ヨー方向に傾いた(傾き角度α)と判断する(ただし、実際には撮像装置101は固定されているため傾かない)。電子ジンバルは、進行方向側の第1魚眼レンズ102aが進行方向正面を向くように、すなわち、その傾き角度αを打ち消すように、撮像方向CD1を撮像方向CD4に変更する。なお、撮像装置101は固定されているため、実際には光軸OAは、撮像方向CD4のようにずれることはない。
【0025】
(C)は、求心加速度が撮像装置101にかかっていない場合の撮像装置101による被写体の撮像例を示す。具体的には、たとえば、(C)は、
図1の(C)と同様、撮像方向CD1をステッチングされた全天球画像データの投影方向とした場合における全天球画像データの抽出範囲110と、抽出範囲110で全天球画像データから抽出された出力対象画像データ111と、を示す。
【0026】
(D)は、求心加速度が撮像装置101にかかっている場合の撮像装置101による被写体の撮像例を示す。具体的には、たとえば、(D)は、撮像方向CD4をステッチングされた全天球画像データの投影方向とした場合における全天球画像データの抽出範囲140と、抽出範囲130で全天球画像データから抽出された出力対象画像データ141と、を示す。出力対象画像データ141のうち、画像データ141aがフロントガラス越しに撮像された車外の風景の画像データであり、画像データ141bが車内の画像データである。
【0027】
(D)に示したように、加速度a2が撮像装置101にかかる都度、抽出範囲110が抽出範囲130に変更されるため、出力対象画像データ111から出力対象画像データ131にぶれてしまい、視認性が低下する。
【0028】
このように、本実施例にかかる撮像装置101は、上述した視認性の低下を抑制するため、手動または自動で切り替え可能な2つのモードを実装する。1つは、通常通り、加速度センサやジャイロセンサからの検出信号を用いて電子ジンバルにより傾き検出を実行するセンサ使用モードである。
【0029】
センサ使用モードを適用した場合、撮像装置101を自動車100に搭載してもしていなくても、電子ジンバルは傾き検出を実行して、検出した傾きに応じて、投影方向により設定される抽出範囲を変更する。したがって、撮像装置101を自動車100に搭載すると、電子ジンバルの傾き検出により抽出範囲および出力対象画像データが、
図1~
図3の(C)から(D)に変更されることになる。
【0030】
もう1つのモードは、センサ使用モードとは異なるモード、すなわち、センサによる傾きの補正を抑制する抑制モードである。抑制モードには、具体的には、たとえば、停止モード、不使用モード、画像検出モードの3つのモードがある。停止モードは、加速度センサまたはジャイロセンサからの検出信号の出力を停止するモードである。不使用モードは、加速度センサまたはジャイロセンサからの検出信号を受け付けるが使用しないモードである。これにより、停止モードまたは不使用モードでは、電子ジンバルは、加速度センサまたはジャイロセンサからの検出信号を用いないため、上述した出力対象画像データの抽出範囲が変更されない。
【0031】
画像検出モードは、加速度センサまたはジャイロセンサからの検出信号に基づく補正をせずに画像データから車内の動きを検出する画像検出モードがある。画像検出モードにおいて、検出元の画像データは、全天球画像データではなく、球面貼り付け前のステッチング後の画像データである。車内の動きは微小であるため、傾きが発生してもセンサ使用モードに比べて視認性に影響しない。
【0032】
このように、撮像装置101を自動車100内に搭載する場合、ユーザは、抽出範囲110が変更されないようにあらかじめ抑制モードに設定しておくか、または、撮像装置101は、傾き検出した場合に自動的に抑制モードに切り替える。これにより、電子ジンバルが傾き検出した場合であっても、再生時に抽出範囲110を維持することができ、自動車100での走行時に撮影された画像データの視認性の向上を図ることができる。
【0033】
<撮像装置101のハードウェア構成例>
図4は、撮像装置101のハードウェア構成例を示すブロック図である。撮像装置101は、プロセッサ401と、記憶デバイス402と、操作デバイス403と、センサ404と、LSI(Large Scale Integration)405と、全天球型カメラ406と、通信IF(Interface)407と、を有する。これらは、バス408により接続されている。プロセッサ401は、撮像装置101を制御する。記憶デバイス402は、プロセッサ401の作業エリアとなる。
【0034】
記憶デバイス402は、各種プログラムやデータを記憶する非一時的なまたは一時的な記録媒体である。記憶デバイス402としては、たとえば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリがある。操作デバイス403は、データを操作する。操作デバイス403としては、たとえば、ボタン、タッチパネルがある。
【0035】
センサ404は、撮像装置101の姿勢に関する情報を生成するための加速度センサまたはジャイロセンサである。加速度センサは、加速度を検出するセンサ404である。X軸、Y軸、Z軸で張られるXYZ座標系(原点Oは撮像装置101の重心)では、たとえば、X軸は自動車100の進行方向、Z軸は鉛直方向、Y軸はX軸およびZ軸に平行方向である。この場合、加速度センサは、加速度v=(vx,vy,vz)を検出する。vxはX軸方向の加速度、vyはY軸方向の加速度、vzはZ軸方向の加速度である。
【0036】
ジャイロセンサは、角速度ω=(ωy,ωp,ωr)を検出するセンサ404である。ωyはZ軸回りのヨー角θyの角速度、ωpはY軸回りのピッチ角θpの角速度、ωrはX軸回りのロール角θrの角速度である。加速度vは、プロセッサ401またはLSI405により角速度ωに変換される。
【0037】
LSI405は、画像処理や圧縮伸張処理など、特定の処理を実行する集積回路である。全天球型カメラ406は、被写体を撮像して全天球画像データを生成する。全天球型カメラ406は、2個の撮像素子の裏面側を対向させ、各撮像素子の前段にそれぞれ画角が180度以上である魚眼レンズ102a,102bを設けたカメラである。通信IF407は、ネットワークを介して端末400と接続し
、データを送受信する。端末400は、撮像装置101から出力される全天球画像データを受信、記憶、再生可能である。
【0038】
<撮像装置101の機能的構成例>
図5は、撮像装置101の機能的構成例を示すブロック図である。撮像装置101は、撮像部501と、取得部502と、特定部503と、決定部504と、動き検出部505と、輝度検出部506と、距離検出部507と、算出部508と、を有する。
【0039】
撮像部501は、自動車100内において被写体を撮像する。撮像部501は、具体的には、たとえば、
図4に示した全天球型カメラ406である。撮像部501は、上述した第1魚眼レンズ102aと、第2魚眼レンズ102bと、第1撮像素子501aと、第2撮像素子501bと、画像処理部501cと、を有する。第1魚眼レンズ102aは、その前方の第1被写体からの光を集光して第1撮像素子501aに出射する。第2魚眼レンズ102bは、その前方の第2被写体からの光を集光して第2撮像素子501bに出射する。
【0040】
第1撮像素子501aは、第1魚眼レンズ102aを介して入射された第1被写体の光を受光して光電変換し、第1円周魚眼画像データを生成する。本例の場合、第1円周魚眼画像データは、第1被写体を車内から進行方向側の被写体として撮像した円周魚眼の画像データである。第2撮像素子501bは、第2魚眼レンズ102bを介して入射された第2被写体の光を受光して光電変換し、第2円周魚眼画像データを生成する。本例の場合、第2円周魚眼画像データは、第2被写体を車内から進行方向側の被写体として撮像した円周魚眼の画像データである。
【0041】
画像処理部501cは、第1円周魚眼画像データおよび第2円周魚眼画像データをそれぞれ第1正距円筒変換画像データおよび第2正距円筒変換画像データに変換し、第2正距円筒変換画像データを分割して、第1正距円筒変換画像データと結合(ステッチング)し、結合正距円筒変換画像データを出力する(
図8を参照。)。
【0042】
画像処理部501cは、結合正距円筒変換画像データを仮想球体の仮想球面に張り付けることで、撮像装置101の重心に相当する仮想球体の中心を回転中心として、どの方向にも360度回転可能な全天球画像データを生成する。画像処理部501cは、結合正距円筒変換画像データおよび全天球画像データを記憶デバイス402に格納する。
【0043】
なお、画像処理部501cは、
図4に示した記憶デバイス402に記憶されたプログラムをプロセッサ401に実行させることにより、または、LSI405により実現される。
【0044】
図6は、画像処理部501cによる全天球画像データの生成例(前半)を示す説明図である。
図6において、(A)は、第1魚眼レンズ102aおよび第2魚眼レンズ102bによる被写体像の結像状態を示す。(B)は、(A)の結像により、第1撮像素子501aおよび第2撮像素子501bから入力され、かつ、デベイヤ処理された第1円周魚眼画像データ601aおよび第2円周魚眼画像データ601bを示す。(C)は、正距円筒変換を示す。第1正距円筒変換画像データ602aおよび第2正距円筒変換画像データ602bはそれぞれ、第1円周魚眼画像データ601aおよび第2円周魚眼画像データ601bから正距円筒変換された画像データである。
【0045】
図7は、画像処理部501cによる全天球画像データの生成例(後半)を示す説明図である。
図7において、(D)は、後画像分割、すなわち、(C)の第2正距円筒変換画像データ602bを分割して得られた分割画像データ602b1,602b2を示す。(E)は、ステッチングを示す。結合正距円筒変換画像データ701は、第1円周魚眼画像データ601aおよび2つの分割画像データ602b1,602b2をステッチングすることにより得られた画像データである。
【0046】
(F)は、結合正距円筒変換画像データ701を仮想球体702の仮想球面703に張り付ける処理を示す。(G)は、仮想球面703に対する平行投影を示す。仮想球面703には結合正距円筒変換画像データ701が貼り付けられており、投影方向(たとえば、光軸OAの方向)から平行投影することにより、抽出範囲TAで仮想球面703から出力対象画像データ710が抽出される。(G)での抽出範囲TAは、(F)後の結合正距円筒変換画像データ701の再生時に設定される。
【0047】
図5に戻り、取得部502は、撮像装置101の姿勢の変化に関する第1情報を取得する。具体的には、たとえば、取得部502は、センサ404からの検出信号に基づいて、第1情報を取得する。センサ404がジャイロセンサである場合、検出信号は角速度であるため、取得部502は、角速度の検出信号を第1情報として取得する。また、センサ404が加速度センサである場合、検出信号は加速度であるため、取得部502は、加速度を角速度に変換する。
【0048】
具体的には、たとえば、取得部502は、加速度を積分し、XYZ座標系における単位時間での移動量(x2-x1,y2-y1,z2-z1)を算出する。座標値(x1,y1,z1)は移動前の位置、座標値(x2,y2,z2)は移動前の位置である。取得部502は、座標値(x1,y1,z1)と座標値(x2,y2,z2)と原点Oとにより、座標値(x1,y1,z1)から座標値(x2,y2,z2)への移動角度を求め、単位時間で微分することにより、単位時間あたりの移動角度として、角速度(ωy,ωp,ωr)を第1情報として算出する。
【0049】
なお、取得部502は、具体的には、たとえば、記憶デバイス402に記憶されたプログラムをプロセッサ401に実行させることにより、または、LSI405により、実現される。
【0050】
特定部503は、撮像部501からの出力により生成された被写体の画像データに基づいて、移動体外を視認不可能な視認不可領域を特定する。ここでいう画像データは、
図7の(E)における結合正距円筒変換画像データ701である。視認不可領域とは、具体的には、撮像装置101が搭載された移動体以外を視認できない領域である。移動体とは、移動体の運転席、助手席、後部座席などの車内空間や、当該内部空間から視認可能な移動体の外表面(たとえば、自動車のボンネット)を含む。移動体外を視認不可能な視認不可領域は、換言すれば、移動体の車内空間および移動体の外表面に遮蔽されて、移動体の内側から移動体の外側の風景が視認できない領域である。一方、視認可能領域とは、撮像装置101が搭載された移動体の内部空間から視認可能な移動体の外側の領域(たとえば、風景)である。
【0051】
図8は、結合正距円筒変換画像データ701における視認可能領域および視認不可領域を示す説明図である。たとえば、車内空間となる内周面、ドアパネルの裏面、ダッシュボード、アームレスト、センターコンソール、コンソールボックス、グローブボックス、インストルメントパメル、座席などがある。また、フロントガラス越しに見えるボンネットも視認不可領域となる。一方、フロントガラス越しに見える車外の景色は視認可能領域となる。ドアの窓は、窓ガラスの開閉を問わず車外の景色が視認可能であるため、視認可能領域となる。
【0052】
図9は、結合正距円筒変換画像データ701における視認可能領域の動きベクトルを示す説明図である。自動車100が走行中であれば、視認可能領域の景色は移り変わるが、視認不可領域は同じ景色となる。したがって、特定部503は、時系列な結合正距円筒変換画像データ701群から動きベクトルmvを検出し、動きベクトルmvが所定の大きさ以上の領域を視認可能領域として特定し、所定の大きさ未満の領域を視認不可領域として特定する。
【0053】
なお、特定部503は、具体的には、たとえば、記憶デバイス402に記憶されたプログラムをプロセッサ401に実行させることにより、または、LSI405により、実現される。
【0054】
決定部504は、第1決定処理と、第1決定処理とは異なる第2決定処理とのうち、特定部503によって特定された視認不可領域に基づいて、いずれか一方の決定処理を実行する。第1決定処理は、取得部502によって取得された第1情報に基づいて画像データからの出力対象画像データ710の抽出範囲TAの位置を変動させる変動パラメータを決定する処理である。
【0055】
具体的には、たとえば、第1決定処理は、上述したセンサ使用モードによる処理である。決定部504は、第1情報である角速度を積分して角度を求める。角速度の方向および求めた角度が、出力対象画像データ710の抽出範囲TAの位置を変動させる変動パラメータとなる。取得部502および決定部504の第1決定処理が電子ジンバルとして機能する。
【0056】
図10は、抽出範囲TAの位置の移動量を示す説明図である。投影線PD1は、結合正距円筒変換画像データ701内の抽出範囲TA1の重心を通る線分であり、
図7の(G)の投影方向となる。αは、第1情報である角速度を積分した角度、すなわち、抽出範囲TA1の位置に関する変動量である。変動量である角度αは、角速度の方向とともに、変動パラメータとなる。投影線PD2は、投影線PD1を原点Oから角度α分、その角速度の方向に遷移した線分であり、これにより、抽出範囲TA1が移動して抽出範囲TA2となる。投影線PD2は、抽出範囲TA2の重心を通る。
【0057】
図5に戻り、決定部504の第2決定処理とは、センサ使用モードとは異なるモード、すなわち、センサ404による傾きの補正を抑制する抑制モードである。より具体的には、たとえば、加速度センサまたはジャイロセンサからの検出信号の出力を停止する停止モード、当該検出信号を使用しない不使用モード、
図7(E)のステッチング後の結合正距円筒変換画像データに基づいて抽出範囲TAの位置を変動させる変動パラメータを決定する画像検出モードがある。
【0058】
画像検出モードにおいて、検出元の画像データは、全天球画像データではなく、
図7(E)のステッチング後の結合正距円筒変換画像データ701である。車内の動き、すなわち、変動パラメータの変動量(角度)は微小であるため、傾きが発生してもセンサ使用モードに比べて、抽出範囲TAの位置の変動に影響しない。
【0059】
なお、決定部504は、具体的には、たとえば、記憶デバイス402に記憶されたプログラムをプロセッサ401に実行させることにより、または、LSI405により、実現される。
【0060】
動き検出部505は、撮像部501からの出力により生成された時系列な画像データ群に基づいて、動きベクトルmvを検出する。この画像データは、
図7(E)のステッチング後の結合正距円筒変換画像データ701である。具体的には、たとえば、動き検出部505は、時間的に連続する2枚の結合正距円筒変換画像データにおける注目領域の移動角度に基づいて、動きベクトルmvを検出する。
【0061】
図11は、動き検出部505によって得られる移動角度を示す説明図である。点P1は時間的に連続する2枚の結合正距円筒変換画像データのうち先行する結合正距円筒変換画像データの注目領域上の点であり、点P2は後続の結合正距円筒変換画像データの注目領域上の点である。すなわち、点P1が点P2に移動したことを示している。正距円筒座標系において、点P1は、半径r、ヨー角θ1、ピッチ角φ1で特定される点であり、点P2は、半径r、ヨー角θ2、ピッチ角φ2で特定される点である。
【0062】
半径rは、視認不可領域となる車内の被写体(たとえば、車内空間の内周壁)までの被写体距離である。移動角度αは、線分OP1と線分OP2とのなす角度である。また、点P1を始点とし点P2を終点とする仮想球面703を通るベクトルが動きベクトルmvである。
【0063】
この場合、特定部503は、この動きベクトルmvに基づいて、上述した視認不可領域を特定する。たとえば、特定部503は、動きベクトルmv群の各動きベクトルmvの方向および大きさの差がともに許容範囲内である場合、その動きベクトルmv群が存在する領域ごとに、視認可能領域と視認不可領域とを特定する。具体的には、たとえば、各動きベクトルmvの方向および大きさが同じであり、かつ、各動きベクトルmvの大きさがしきい値以上であれば、当該動きベクトルmv群の存在領域を視認可能領域として特定する。
【0064】
すなわち、特定部503は、フロントガラス越しまたは窓ガラス越しに見える景色が移り変わっている様子を映す領域であると特定する。また、動きベクトルmvの方向が異なっており、かつ、大きさがしきい値未満であれば、当該動きベクトルmv群の存在領域を視認不可領域と特定する。すなわち、特定部503は、ほぼ変わることがない車内の様子を映す領域であると特定する。
【0065】
なお、動き検出部505は、センサ404からの検出信号(ジャイロセンサであれば角速度、加速度センサであれば加速度)を用いて、上述した動きベクトルmvを検出してもよい。ジャイロセンサからの検出信号であれば、動き検出部505は、角速度を結合正距円筒変換画像データ701のフレームレートで除算することで、移動角度を得ることができる。角速度の方向および移動角度が動きベクトルmvとして検出される。加速度センサの場合、取得部502と同様の極座標変換により、動き検出部505は、角速度の方向および移動角度に変換する。
【0066】
結合正距円筒変換画像データ701やジャイロセンサにより、角速度の方向および移動角度を求める場合、XYZ座標系から極座標系への変換が不要となるため、加速度センサから求めるよりも高精度化を図ることができる。
【0067】
なお、動き検出部505は、具体的には、たとえば、記憶デバイス402に記憶されたプログラムをプロセッサ401に実行させることにより、または、LSI405により、実現される。
【0068】
輝度検出部506は、結合正距円筒変換画像データ701の輝度を検出する。撮像装置101による撮像状態では、車外は車内に対し高輝度であると考えられる。したがって、輝度検出部506は、結合正距円筒変換画像データ701を視認可能領域と視認不可領域に区分けするために、結合正距円筒変換画像データ701の輝度を検出する。
【0069】
この場合、特定部503は、輝度検出部506によって検出された輝度に基づいて、視認不可領域を特定する。具体的には、たとえば、特定部503は、結合正距円筒変換画像データ701を領域分割し、分割した領域ごとに輝度を検出し、平均輝度を求める。そして、特定部503は、平均輝度より低い輝度の領域を視認不可領域、平均輝度以上の領域を視認可能領域と特定する。
【0070】
なお、平均輝度ではなく、しきい値となる輝度をあらかじめ設定しておき、特定部503は、当該しきい値より低い輝度の領域を視認不可領域、しきい値以上の輝度の領域を視認可能領域であると特定してもよい。
【0071】
なお、輝度検出部506は、具体的には、たとえば、記憶デバイス402に記憶されたプログラムをプロセッサ401に実行させることにより、または、LSI405により、実現される。
【0072】
距離検出部507は、画像データの被写体距離を検出する。すなわち、距離検出部507は、撮像装置101から結合正距円筒変換画像データとして撮像された被写体までの被写体距離を検出する。撮像部501は、第1魚眼レンズ102aと、第1撮像素子501aと、第2魚眼レンズ102bと、第2撮像素子501bと、を有する。第1魚眼レンズ102aおよび第2魚眼レンズ102bの画角はともに180度以上である。
【0073】
ここで、第1魚眼レンズ102aおよび第2魚眼レンズ102bの画角をともに200度とすると、160度から200度の範囲で、第1撮像素子501aからの出力により生成された第1画像データと、第2撮像素子501bからの出力により生成された第2画像データとが重複する。
【0074】
重複領域は、
図7(E)のステッチングで重ね合わされる。この重複領域について三角測量を用いることにより、距離検出部507は、重複領域における被写体距離を検出することができる。なお、重複領域以外の画角については、たとえば、超音波センサやLiDAR(Light Detection and Ranging)などの測距センサをセンサ404として搭載することで重複領域外の被写体距離を検出してもよい。
【0075】
この場合、特定部503は、あらかじめ設定された基準距離と、距離検出部507によって検出された被写体距離と、に基づいて、視認不可領域を特定する。基準距離とは、撮像装置101を車内の任意の位置に固定設置した場合の車内の内周壁までの最大距離であり、あらかじめ設定される。
【0076】
特定部503は、検出した被写体距離が基準距離以上であれば、その被写体は車外に存在すると判断して、その被写体像が結合正距円筒変換画像データ107中に存在する領域を視認可能領域であると特定する。また、特定部503は、検出した被写体距離が基準距離未満であれば、その被写体は車内に存在すると判断して、その被写体像が結合正距円筒変換画像データ107中に存在する領域を視認不可領域であると特定する。
【0077】
図12は、重複領域における被写体距離の検出例を示す説明図である。
図12では、撮像装置101は、第1魚眼レンズ102aおよび第2魚眼レンズ102bの画角が重複する重複領域に存在する被写体1200までの被写体距離Dを算出する。ここで、第1魚眼レンズ102aおよび第2魚眼レンズ102bの光軸OA上の既知の間隔をB、被写体1200から光軸OAまでの垂線(垂線の長さが被写体距離D)と光軸OAとの交点をC、第2魚眼レンズ102bの設置位置から交点Cまでの光軸OA上の未知の距離をXとする。
【0078】
γは、被写体1200に対する第1魚眼レンズ102aの画角であり、α=180-γ/2となる。βは、γに対応する被写体1200に対する第2魚眼レンズ102bの半画角であり、γが決まると一意に決まる。被写体距離Dは、下記式(1)、(2)で表される。
【0079】
D=Qtanα・・・・・・・(1)
D=(Q+B)tanβ・・・(2)
【0080】
上記式(1)、(2)から、未知の距離Qを消去することにより、下記式(3)により被写体距離Dが求められる。
【0081】
D=B×(tanα×tanβ)/(tanα-tanβ)・・・(3)
【0082】
したがって、重複領域が視認可能領域である場合、撮像装置101は、車外の被写体までの被写体距離を特定することができる。たとえば、重複領域がフロントガラスおよびリアガラスの視認可能領域となるように、撮像装置101を車内に設置すれば、自動車100の前後の被写体の各々の被写体間距離を特定することができる。
【0083】
なお、距離検出部507は、具体的には、たとえば、記憶デバイス402に記憶されたプログラムをプロセッサ401に実行させることにより、または、LSI405により、実現される。
【0084】
算出部508は、視認不可領域に基づいて、撮像装置101の姿勢の変化に関する第2情報を算出する。具体的には、たとえば、算出部508は、視認不可領域の動きベクトルmvから角速度を第2情報として算出する。この角速度についても、上述したように、動きベクトルmvから得られるXYZ座標系における単位時間での移動量(x2-x1,y2-y1,z2-z1)を算出する。
【0085】
座標値(x1,y1,z1)は移動前の位置、座標値(x2,y2,z2)は移動前の位置である。算出部508は、座標値(x1,y1,z1)と座標値(x2,y2,z2)と原点Oとにより、座標値(x1,y1,z1)から座標値(x2,y2,z2)への移動角度を求め、単位時間で微分することにより、単位時間あたりの移動角度として、角速度(ωy,ωp,ωr)を第2情報として算出する。第2情報の角速度は、自動車100の車内での動きを表現している。すなわち、第2情報の角速度は、自動車100自体の揺れとなるため、第1情報の角速度に比べて微小な値となる。
【0086】
算出部508は、たとえば、撮像装置101に第1決定処理と第2決定処理の自動切り替え機能が設定された場合に実行される。したがって、算出部508によって第2情報の角速度が算出された場合、決定部504は、第1情報の角速度と算出部508によって算出された第2情報の角速度とに基づいて、いずれか一方の決定処理に切り替えて実行する。
【0087】
たとえば、角速度差(微分した角度差でもよい)が所定のしきい値以上であれば、車内外での動きベクトルmvの差が大きいことになるため、決定部504は、自動車100が走行中であると判断する。したがって、
図1~
図3の(D)のような抽出範囲TAの変動を抑制するため、決定部504は、現在の決定処理が第2決定処理であれば、継続して第2決定処理を実行し、現在の決定処理が第1決定処理であれば、第2決定処理に切り替えて実行する。これにより、第1決定処理と第2決定処理とを自動的に切り替えることができ、ユーザによる手動切替の煩わしさが解消される。したがって、利便性の向上を図ることができる。
【0088】
なお、算出部508は、具体的には、たとえば、記憶デバイス402に記憶されたプログラムをプロセッサ401に実行させることにより、または、LSI405により、実現される。
【0089】
<手動モード切替の処理手順例>
図13は、撮像装置101による手動モード切替の処理手順例を示すフローチャートである。撮像装置101は、操作デバイス403から手動操作による設定入力を待ち受ける(ステップS1301:No)。設定入力があった場合(ステップS1301:Yes)、撮像装置101は、設定入力されたモードがセンサ使用モードであるか否かを判断する(ステップS1302)。
【0090】
センサ使用モードである場合(ステップS1302:Yes)、撮像装置101は、現在のモードをセンサ使用モードに切り替える(ステップS1303)。なお、現在のモードがセンサ使用モードであれば、撮像装置101は、センサ使用モードを維持する。一方、センサ使用モードでない場合(ステップS1302:No)、撮像装置101は、現在のモードを画像検出モードに切り替える(ステップS1304)。なお、現在のモードが画像検出モードであれば、撮像装置101は、画像検出モードを維持する。これにより、撮像装置101は、手動によるモード切替を終了する。
【0091】
このように、手動によるモード切替を実装することで、たとえば、ユーザが手に持って使用する場合は、手動操作によりセンサ使用モードに設定することで、センサ404からの検出信号に応じた撮像装置101の姿勢を用いて、
図1~
図3の(D)に示したように、撮像装置101の傾きに応じて抽出範囲TAの抽出位置を抽出範囲120,130,140に変更する。
【0092】
一方、たとえば、撮像装置101を自動車100に搭載した場合、手動操作により画像検出モードに設定することで、撮像装置101は、センサ404からの検出信号に応じた撮像装置101の姿勢を用いずに、
図1~
図3の(C)に示したような撮像装置101の抽出範囲TAの抽出位置を抽出範囲110で維持する。すなわち、撮像装置101は、自動車100の加減速や旋回による影響を無視して、あたかも自動車100が加減速や旋回がなかったかのように撮影することができる。
【0093】
<センサ使用モードにおける撮像装置101による撮像処理手順例>
図14は、センサ使用モードにおける撮像装置101による撮像処理手順例を示すフローチャートである。撮像装置101は、操作デバイス403から開始トリガ(たとえば、撮像開始ボタンの入力)を待ち受け(ステップS1401:No)、開始トリガがあった場合(ステップS1401:Yes)、センサ404からの検出信号により取得部502により角速度を取得し、単位時間(たとえば、全天球画像データのフレームレート)を乗じることにより、角度を求める。これにより、取得部502は、角速度が示す方向と、角度と、により構成される抽出範囲TAの位置を変動させる変動パラメータを取得する(ステップS1402)。
【0094】
また、撮像装置101は、第1撮像素子501aおよび第2撮像素子501bから画像データを取得して、
図6および
図7に示したように、全天球画像データを生成する(ステップS1403)。そして、撮像装置101は、ステップS1403で生成した全天球画像データとステップS1402で取得した変動パラメータとを関連付けて記憶デバイス402に保存する(ステップS1404)。
【0095】
撮像装置101は、操作デバイス403から終了トリガ(たとえば、撮像終了ボタンの入力)を待ち受ける(ステップS1405)。終了トリガがない場合(ステップS1405:No)、ステップS1402に戻る。ステップS1402~S1404を繰り返し実行することにより、時系列な全天球画像データ、すなわち、動画データを記憶デバイス402に保存することができる。終了トリガがあった場合(ステップS1405:Yes)、撮像装置101は、全天球画像データの撮像を終了する。
【0096】
全天球画像データと変動パラメータとを関連付けて保存することにより、再生時の抽出範囲TAは変動パラメータで示される変動方向(角速度の方向)および変動量(角度)によりその位置が変動する。したがって、撮像装置101の姿勢変化に応じた抽出範囲TAの画像を表示することが可能となる。
【0097】
<自動モード切替の処理手順例>
図15は、撮像装置101の自動モード切替の処理手順例を示すフローチャートである。なお、
図15では、センサ使用モードをデフォルトのモードとする。撮像装置101は、操作デバイス403から開始トリガ(たとえば、撮像開始ボタンの入力)を待ち受け(ステップS1501:No)、開始トリガがあった場合(ステップS1501:Yes)、
図7の(E)に示したように、結合正距円筒変換画像データEtを取得する(ステップS1502)。添え字tは、ステップS1502での取得した時点での結合正距円筒変換画像データEの時系列な番号を示す。
【0098】
撮像装置101は、取得部502により、センサ404からの検出信号から撮像装置101の姿勢に関する第1情報として第1角速度を取得する(ステップS1503)。撮像装置101は、取得した結合正距円筒変換画像データEtと時間的に1つ前に取得した結合正距円筒変換画像データEt-1とを用いて、動きベクトルmvを検出する(ステップS1504)。撮像装置101は、特定部503により、検出した動きベクトルmvから、結合正距円筒変換画像データEtにおいて視認可能領域と視認不可領域とを特定する(ステップS1505)。
【0099】
撮像装置101は、算出部508により、特定した視認不可領域の動きベクトルmvから、第2角速度を算出する(ステップS1506)。そして、撮像装置101は、第1角速度と第2角速度の角速度差を求め、角速度差の絶対値がしきい値以上であるか否かを判断する(ステップS1507)。ここでは、角速度差を用いているが、第1角速度および第2角速度に単位時間(たとえば、全天球画像データのフレームレート)を乗じることにより、第1角度および第2角度に変換して、その角度差を用いてもよい。
【0100】
角速度差(または角度差)の絶対値のしきい値未満であれば(ステップS1508:No)、自動車100は走行していないこととなり、撮像装置101は、センサ使用モードに切り替える(ステップS1508)。現在のモードがセンサ使用モードであれば、センサ使用モードを維持する。
【0101】
一方、角速度差(または角度差)の絶対値のしきい値以上であれば(ステップS1507:Yes)、自動車100が走行していることとなり、撮像装置101は、画像検出モードに切り替える(ステップS1509)。現在のモードが画像検出モードであれば、画像検出モードを維持する。
【0102】
撮像装置101は、操作デバイス403から終了トリガ(たとえば、撮像終了ボタンの入力)を待ち受ける(ステップS1510)。終了トリガがない場合(ステップS1510:No)、ステップS1502に戻る。ステップS1502~S1510を繰り返し実行することにより、常時自動車100の挙動を監視して、センサ使用モードおよび画像検出モードの自動切り替えを実行することができる。終了トリガがあった場合(ステップS1510:Yes)、撮像装置101は、自動モード切替を終了する。
【0103】
このように、自動モード切替では、センサ使用モードおよび画像検出モードの自動切り替えを実行することができるため、ユーザが手動で切り替える煩わしさがなく、利便性の向上を図ることができる。
【0104】
<画像検出モードにおける撮像装置101による撮像処理手順例>
図16は、画像検出モードにおける撮像装置101による撮像処理手順例1を示すフローチャートである。
図16の撮像処理手順例1は、動き検出部505により動きベクトルmvを検出する場合の処理手順例である。撮像装置101は、操作デバイス403から開始トリガ(たとえば、撮像開始ボタンの入力)を待ち受け(ステップS1601:No)、開始トリガがあった場合(ステップS1601:Yes)、
図7の(E)に示したように、結合正距円筒変換画像データEtを取得する(ステップS1502)。添え字tは、ステップS1602での取得した時点での結合正距円筒変換画像データEの時系列な番号を示す。
【0105】
撮像装置101は、動き検出部505により、取得した結合正距円筒変換画像データEtと時間的に1つ前に取得した結合正距円筒変換画像データEt-1とを用いて、動きベクトルmvを検出する(ステップS1603)。撮像装置101は、特定部503により、検出した動きベクトルmvから、結合正距円筒変換画像データEtにおいて視認可能領域と視認不可領域とを特定する(ステップS1604)。
【0106】
撮像装置101は、算出部508により、結合正距円筒変換画像データEtにおける視認不可領域の動きベクトルmvから第2角速度を算出する(ステップS1605)。撮像装置101は、算出した第2角速度に単位時間(たとえば、全天球画像データのフレームレート)を乗じることにより、第2角度を算出する(ステップS1606)。この第2角度は、視認不可領域の動きベクトルmv由来の角度であるため、自動車100の振動などにより生じる微小な角度である。この第2角度は、抽出範囲TAの位置を変動させる変動パラメータの変動量となる。
【0107】
そして、撮像装置101は、全天球画像データFtと変動パラメータ(第2角速度の方向および第2角度)とを関連付けて記憶デバイス402に保存する(ステップS1404)。撮像装置101は、操作デバイス403から終了トリガ(たとえば、撮像終了ボタンの入力)を待ち受ける(ステップS1608)。終了トリガがない場合(ステップS1608:No)、ステップS1602に戻る。ステップS1602~S1607を繰り返し実行することにより、画像検出モードでの撮像を実行することができる。終了トリガがあった場合(ステップS1608:Yes)、撮像装置101は、画像検出モードの処理を終了する。
【0108】
このように、画像検出モードでは、センサ404からの検出信号を用いないため、センサ404からの検出信号由来の角速度や角度の影響を受けない。したがって、電子ジンバルを機能させずに、
図1~
図3の(C)に示したような位置変動しない画像を表示することができる。
【0109】
図17は、画像検出モードにおける撮像装置101による撮像処理手順例2を示すフローチャートである。
図17の撮像処理手順例2は、輝度検出部506により輝度を検出する場合の処理手順例である。なお、
図16の撮像処理手順例1と同一処理については同一ステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0110】
撮像装置101は、輝度検出部506により、ステップS1602で取得した結合正距円筒変換画像データEtの各領域から輝度を検出する(ステップS1703)。撮像装置101は、特定部503により、検出した輝度から、結合正距円筒変換画像データEtにおいて視認可能領域と視認不可領域とを特定する(ステップS1704)。
【0111】
撮像装置101は、算出部508により、結合正距円筒変換画像データEt,Et-1から動きベクトルmvを求め、結合正距円筒変換画像データEtにおける視認不可領域の動きベクトルmvから第2角速度を算出する(ステップS1705)。
【0112】
このように、画像検出モードでは、センサ404からの検出信号を用いないため、センサ404からの検出信号由来の角速度や角度の影響を受けない。したがって、電子ジンバルを機能させずに、
図1~
図3の(C)に示したような位置変動しない画像を表示することができる。
【0113】
また、一般的に、車内は車外に比べて輝度が低い。たとえば、昼間は、車内空間の天井により太陽光が遮光されるため、車内は車外に比べて輝度が低い。また、夜間は、自動車100のヘッドライトや車外の照明により車内よりも明るいため、車内は車外に比べて輝度が低い。このような性質を利用することにより、動きベクトルmv検出を利用しなくても、結合正距円筒変換画像データEt単独で視認可能領域と視認不可領域とを特定することができ、処理速度の向上を図ることができる。
【0114】
図18は、画像検出モードにおける撮像装置101による撮像処理手順例3を示すフローチャートである。
図17の撮像処理手順例3は、距離検出部507により輝度を検出する場合の処理手順例である。なお、
図16の撮像処理手順例1と同一処理については同一ステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0115】
撮像装置101は、距離検出部507により、結合正距円筒変換画像データEtにおけるステッチング時の重複領域から被写体距離を検出する(ステップS1803)。撮像装置101は、あらかじめ設定された基準距離と被写体距離とを比較して、重複領域内において、視認可能領域と視認不可領域とを特定する(ステップS1804)。
【0116】
撮像装置101は、算出部508により、結合正距円筒変換画像データEt,Et-1の各重複領域から動きベクトルmvを求め、結合正距円筒変換画像データEtにおける重複領域内の視認不可領域の動きベクトルmvから第2角速度を算出する(ステップS1805)。
【0117】
このように、画像検出モードでは、センサ404からの検出信号を用いないため、センサ404からの検出信号由来の角速度や角度の影響を受けない。したがって、電子ジンバルを機能させずに、
図1~
図3の(C)に示したような位置変動しない画像を表示することができる。
【0118】
また、重複領域の被写体距離を求めるため、被写体が車内に存在するか車外に存在するかを空間的に特定することが可能となる。また、変動パラメータを求めるための処理すべき結合正距円筒変換画像データEtの範囲が重複領域に制限されるため、結合正距円筒変換画像データEtの全範囲を用いる必要がなく、画像検出モードの処理の効率化を図ることができる。
【0119】
<全天球画像データの再生処理手順例>
図19は、全天球画像データの再生処理手順例を示すフローチャートである。全天球画像データの再生処理は、たとえば、全天球画像データおよび変動パラメータの転送先である端末400で実行される。端末400は、再生開始トリガを待ち受ける(ステップS1901:No)。再生開始トリガがあった場合(ステップS1901:Yes)、端末400は、i番目の再生位置の全天球画像データFiおよび関連付けられた変動パラメータを読み込む(ステップS1902)。
【0120】
端末400は、全天球画像データFiおよび関連付けられた変動パラメータにより抽出範囲TAを更新する(ステップS1903)。端末400は、ステップS1903の更新後の抽出範囲TAの出力対象画像データ710を端末400の表示画面に表示する。端末400は再生位置iをインクリメントし(ステップS1905)、終了トリガが受け付けられたか否かを判断する(ステップS1906)。
【0121】
終了トリガが受け付けられていない場合(ステップS1906:No)、ステップS1902に戻る。これにより、次の全天球画像データFiについてステップS1902~S1904が実行される。終了トリガが受け付けられた場合(ステップS1906:Yes)、端末400は再生処理を終了する。
【0122】
このように、全天球画像データと変動パラメータとが関連付けられているため、再生時に抽出範囲TAを更新しながら出力対象画像データ710を表示することができる。したがって、センサ使用モードで撮像された全天球画像データについては、
図1~
図3の(D)のように抽出範囲TAの位置が抽出範囲120,130,140に変動して出力対象画像データ710が表示され、画像検出モードで撮像された全天球画像データについては、
図1~
図3の(C)のように抽出範囲TAの位置が抽出範囲110に維持されて出力対象画像データ710が表示される。
【0123】
<バイクへの応用例>
図20は、バイクに搭載した撮像装置101による撮像例を示す説明図である。(A)は、撮像装置101を搭載したバイク2000の側面図であり、(B)は、撮像装置101を搭載したバイク2000の平面図であり、(C)は、撮像装置101を搭載したバイク2000の正面図である。(C)は、旋回の遠心力cによりバイク2000が傾いている状態を示す。
【0124】
(A)に示すように、撮像装置101には重力加速度gがかかり、(B)に示すように、左旋回する場合には、撮像装置101には旋回の遠心力cがかかる。旋回する場合、バイク2000は傾くため、(C)に示すように、重力加速度gと旋回の遠心力cとの合成加速度gcが得られる。
【0125】
(D)は、旋回による遠心力gcがかかっていない場合の撮像装置101による被写体の撮像例を示す。具体的には、たとえば、(D)は、撮像方向CD1をステッチングされた全天球画像データの投影方向とした場合における全天球画像データの抽出範囲2001と、抽出範囲2001で全天球画像データから抽出された出力対象画像データ2010と、を示す。出力対象画像データ2010は、動きがないバイク2000の画像データ2011と、動きがある風景の画像データ2012と、を含む。
【0126】
(E)は、旋回による遠心力gcがかかっている場合の撮像装置101による被写体の撮像例を示す。具体的には、たとえば、(E)は、撮像方向CD1をステッチングされた全天球画像データの投影方向とした場合における全天球画像データの抽出範囲2002と、抽出範囲2002で全天球画像データから抽出された出力対象画像データ2020と、を示す。出力対象画像データ2020は、動きがないバイク2000の画像データ2021と、動きがある風景の画像データ2022と、を含む。
【0127】
(D)において、撮像装置101がセンサ使用モードである場合、(C)のようにバイク2000が傾くと、撮像装置101の電子ジンバルが合成加速度gcにより傾き補正をするため、抽出範囲TAの位置を変動させる変動パラメータを生成する。すなわち、バイク2000は傾いているが、電子ジンバルは、あたかも傾いていないかのように抽出範囲TAの位置を補正する。したがって、撮像装置101は、電子ジンバルの補正により、(D)に示した抽出範囲2001となる。
【0128】
(D)において、撮像装置101が画像検出モードである場合、(C)のようにバイク2000が傾くと、撮像装置101の電子ジンバルが合成加速度gcによる傾き補正をしないため、抽出範囲TAの位置をほぼ変動させない変動パラメータを生成する。したがって、撮像装置101は、電子ジンバルの補正がかからないため、(E)に示した抽出範囲2002となる。このように、バイク2000に適用した場合には、旋回によるバイク2000の傾きを考慮した出力対象画像データ710が得られるため、ダイナミックなツーリング映像の表示が可能となる。
【0129】
(1)以上説明したように、本実施例にかかる撮像装置101によれば、撮像装置101の姿勢の変化に関する第1情報(たとえば、第1角速度)に基づいて画像データからの出力対象画像データ710の抽出範囲TAの位置を変動させる変動パラメータを決定する第1決定処理(たとえば、センサ使用モードの処理)と、第1決定処理とは異なる第2決定処理と、の自動切替を実現することができる。
【0130】
(2)また、視認不可領域に基づいて、撮像装置101の姿勢の変化に関する第2情報(たとえば、第2角速度)を算出して、いずれか一方の決定処理を実行することにより、移動体の挙動に応じて第1決定処理と第2決定処理との自動切替を実現することができる。
【0131】
(3)また、第2決定処理をセンサ404によって検出されたデータの出力を停止する処理とすることにより、センサ404からのデータを強制的に遮断して、第2決定処理を実行することができる。
【0132】
(4)また、画像データに基づいて抽出範囲TAの位置を変動させる変動パラメータを決定することにより、センサ404からのデータを使用せずに第2決定処理を実行することができる。
【0133】
(5)また、撮像装置101の姿勢の変化に関する第1情報(たとえば、第1角速度)を用いずに、画像データからの出力対象画像データ710の抽出範囲TAの位置を変動させる変動パラメータを決定することにより、第2決定処理を、たとえば、画像検出モードとして実行することができる。
【0134】
(6)また、センサ404から得られるデータを用いずに、動きベクトルmvおよび視認不可領域を特定することができ、センサ404から得られるデータによる抽出範囲の位置の変動を抑制することができる。
【0135】
(7)また、動きベクトルmvを検出することなく、視認不可領域を特定することができ、特定処理の高速化を図ることができる。
【0136】
(8)また、移動体内の内周壁までの基準距離と、被写体距離と、に基づいて、視認不可領域を特定することにより、動きベクトルmvを検出することなく、視認不可領域を特定することができ、特定処理の高速化を図ることができる。
【0137】
(9)また、撮像装置101の姿勢の変化に関する第2情報を算出して抽出範囲TAの位置を変動させる変動パラメータを決定することにより、移動体本体の挙動(たとえば、加減速や旋回)ではなく、移動体内の挙動(たとえば、振動)を視認不可領域を介して特定し、抽出範囲TAに反映させることができる。したがって、振動がない場合は、抽出範囲TAには変動はなく、振動があれば抽出範囲TAは振動に追従して変動することになる。
【0138】
(10)また、動きベクトルmvの方向および大きさに基づいて、視認不可領域を特定することにより、視認不可領域の特定精度の向上を図ることができる。
【0139】
(11)また、結合正距円筒変換画像データEt-1から結合正距円筒変換画像データEtへの注目領域の移動角度に基づいて、動きベクトルmvを検出することにより、極座標系での計算となるため、動きベクトルmvの検出精度の向上を図ることができる。
【0140】
(12)また、第1正距円筒変換画像データ602aと第2正距円筒変換画像データ602bと、の重複範囲に基づいて、被写体距離Dを検出することにより、被写体が移動体内に存在するか移動体外に存在するかを空間的に特定することができる。また、変動パラメータを求めるための処理すべき範囲が重複領域に制限されるため、結合正距円筒変換画像データの全範囲を用いる必要がなく、第2決定処理の効率化を図ることができる。
【0141】
(13)また、本実施例にかかる制御プログラムによれば、撮像装置101の姿勢の変化に関する情報(たとえば、角速度)に基づいて画像データから出力対象画像データ710の抽出範囲TAの位置を変動させる変動パラメータを決定する第1決定処理と、第1決定処理とは異なる第2決定処理と、の自動切替を、ソフトウェアで実現することができる。したがって、制御プログラムがインストールされていない撮像装置に対しても、制御プログラムをインストールすることにより、当該撮像装置は、第1決定処理と第2決定処理との自動切替を実行することができる。
【0142】
また、上述した撮像装置101により撮像された画像データ(たとえば、全天球画像データ)と変動パラメータとを関連付けておき、再生装置(たとえば、端末400)が、全天球画像データから抽出範囲TAを指定して出力対象画像データを再生する場合、変動パラメータにより抽出範囲TAの位置が制御される。すなわち、第1決定処理により得られた変動パラメータであれば、抽出範囲TAの位置は変動するが、第2決定処理により得られた変動パラメータであれば、抽出範囲TAの位置はほぼ変動しない。
【0143】
このように、撮像装置101が移動体に搭載されていない場合は、第1決定処理を実行する。一方、撮像装置101が移動体に搭載された場合には、第1決定処理から第2決定処理に自動的に切り替えて実行するため、電子ジンバルの過補正を停止することで、撮像方向が安定した全天球画像データを表示することができる。
【符号の説明】
【0144】
100 自動車、101 撮像装置、102a 第1魚眼レンズ、102b 第2魚眼レンズ、107,701 結合正距円筒変換画像データ、TA,110,120,130,140,2001,2002 抽出範囲、111,121,131,141,710,2010,2020 出力対象画像データ、400 端末、401 プロセッサ、402 記憶デバイス、403 操作デバイス、404 センサ、406 全天球型カメラ、501 撮像部、501a 第1撮像素子、501b 第2撮像素子、501c 画像処理部、502 取得部、503 特定部、504 決定部、505 検出部、506 輝度検出部、507 距離検出部、508 算出部、1200 被写体、2000 バイク