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特開2022-156093端子付き電線および端子付き電線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156093
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】端子付き電線および端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20221006BHJP
   H01R 43/048 20060101ALI20221006BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01R4/18
H01R43/048 Z
H01B7/00 306
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059616
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉永 伎壱
【テーマコード(参考)】
5E063
5E085
5G309
【Fターム(参考)】
5E063CC05
5E063XA05
5E085BB02
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD14
5E085EE07
5E085FF01
5E085HH08
5E085JJ38
5G309FA04
5G309FA06
(57)【要約】
【課題】種々の圧着端子に対して扁平電線の圧着を容易に行うこと。
【解決手段】複数の素線から構成される導体部と、導体部を被覆する絶縁被覆とを有する扁平状の被覆電線と、絶縁被覆および絶縁被覆から露出した導体露出部が加締められた状態で、導体部が圧着接続された圧着端子と、を備え、被覆電線の圧着端子の側の近傍において、被覆電線の扁平状の面に対して略直交する側面の一方が、圧着端子の底部側になるように絶縁被覆が加締められ、被覆電線の導体露出部の側の近傍における絶縁被覆に切れ目が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線から構成される導体部と、前記導体部を被覆する絶縁被覆とを有する扁平状の被覆電線と、
前記絶縁被覆および前記絶縁被覆から露出した導体露出部が加締められた状態で、前記導体部が圧着接続された圧着端子と、を備え、
前記被覆電線の前記圧着端子の側の近傍において、前記被覆電線の扁平状の面に対して略直交する側面の一方が、前記圧着端子の底部側になるように前記絶縁被覆が加締められ、
前記被覆電線の前記導体露出部の側の近傍における前記絶縁被覆に切れ目が設けられている
ことを特徴とする端子付き電線。
【請求項2】
前記切れ目は、前記絶縁被覆が扁平状である部分に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の端子付き電線。
【請求項3】
前記切れ目は、前記絶縁被覆が扁平状である部分に対して側面の部分に設けられている
請求項1または2に記載の端子付き電線。
【請求項4】
前記切れ目は、前記絶縁被覆に複数設けられている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の端子付き電線。
【請求項5】
前記切れ目は、前記被覆電線の長手方向に沿って設けられている
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の端子付き電線。
【請求項6】
前記切れ目は、前記被覆電線の長手方向に対して所定の角度をなして設けられている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の端子付き電線。
【請求項7】
前記切れ目は、直線状、波形状、およびジグザグ形状の少なくとも1つの形状である
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の端子付き電線。
【請求項8】
前記切れ目の部分における前記絶縁被覆は、前記圧着端子によって前記導体露出部が加締められた部分の近傍において重ね合わされている
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の端子付き電線。
【請求項9】
前記圧着端子は、前記導体露出部を丸めて圧着接続するワイヤバレルと、前記絶縁被覆を丸めて圧着接続するインシュレーションバレルと、を有するオープンバレル形式の端子である
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の端子付き電線。
【請求項10】
前記ワイヤバレルおよび前記インシュレーションバレルの少なくとも一方の形状は、千鳥形状またはジグザグ形状である
ことを特徴とする請求項9に記載の端子付き電線。
【請求項11】
複数の素線で構成される導体部と、前記導体部を被覆する絶縁被覆と、を有する扁平状の被覆電線の一端部の前記絶縁被覆を切除して、前記導体部を露出させた導体露出部を形成する工程と、
前記絶縁被覆の前記導体露出部が形成される側の近傍に、前記絶縁被覆を部分的に切開した切れ目を形成する工程と、
前記切れ目の部分における前記絶縁被覆を重ね合わせる、または前記切れ目を狭めることにより、前記被覆電線を縮径させる工程と、
前記導体露出部および前記絶縁被覆の扁平率を低減させて圧着端子に収容し、収容した前記導体露出部および前記絶縁被覆を前記圧着端子により加締めて圧着接続する工程と、を含む
ことを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線および端子付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両においては、ハイブリッド自動車や電気自動車などに代表される電動化や、自動運転システムやコネクテッドカーなどに代表される多機能化または高機能化が急速に進んでいる。このため、このような車両に用いるワイヤハーネスは、複雑な配策経路に対応でき、しかも高い放熱性を有する必要がある。
【0003】
このような用途に対応したワイヤハーネスとして、複数の素線を並列させた帯状の扁平電線が用いられる場合がある。また、扁平電線の一端部には、圧着端子が圧着接続される。この場合、インシュレーションバレル片で加締められる絶縁被覆の上部側にしわがより絶縁被覆と素線との間に隙間が生じたり、余分な絶縁被覆の上部側がインシュレーションバレル上からはみ出したりすることがある。その結果、安定した圧着状態の確保が難しくなり、引張強度の確保や導通安定性の確保に懸念が生じる可能性があった。また、防水処理やコネクタへの収容に影響を及ぼす可能性があった。これに対し、特許文献1には、ワイヤバレル片の間隔を扁平電線の導体露出部の長さより長くし、インシュレーションバレル片の間隔を絶縁被覆の幅より長くすることによって、圧着しうる端子金具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-014283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、導体露出部や絶縁被覆で覆われた被覆部を事前に曲げるなどの処理を行うことなく圧着端子内に収容できるものの、扁平電線の形状に合わせた圧着端子とする必要がある。これに対し、既存の圧着端子を用いる場合、扁平電線の扁平の面に平行な幅がインシュレーションバレルの幅に収まらない可能性がある。そこで、既存の圧着端子のインシュレーションバレルに扁平電線の被覆を収めるために、圧着時または圧着後に絶縁被覆がバレル幅に収まるように前処理を行う必要がある。すなわち、複数の素線からなる導体露出部および絶縁被覆で被覆された被覆部が、前処理で丸められた後に、底辺がU字やV字型のオープンバレル形の圧着端子のワイヤバレルおよびインシュレーションバレルに圧着される。
【0006】
また、既存の圧着端子に対して扁平電線を水平に設置、すなわちU字型やV字型の底面部に対して、扁平電線の扁平な面を略平行に設置して圧着させようとすると、扁平な面が既存の圧着端子に収まらない場合もある。そのため、扁平電線を既存の圧着端子を含めた種々の圧着端子に容易に収めることができ、種々の圧着端子に対して扁平電線の圧着を容易に行うことできる技術が求められていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、種々の圧着端子に対して扁平電線の圧着を容易に行うことができる端子付き電線およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、上記目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線は、複数の素線から構成される導体部と、前記導体部を被覆する絶縁被覆とを有する扁平状の被覆電線と、前記絶縁被覆および前記絶縁被覆から露出した導体露出部が加締められた状態で、前記導体部が圧着接続された圧着端子と、を備え、前記被覆電線の前記圧着端子の側の近傍において、前記被覆電線の扁平状の面に対して略直交する側面の一方が、前記圧着端子の底部側になるように前記絶縁被覆が加締められ、前記被覆電線の前記導体露出部の側の近傍における前記絶縁被覆に切れ目が設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記切れ目は、前記絶縁被覆が扁平状である部分に設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記切れ目は、前記絶縁被覆が扁平状である部分に対して側面の部分に設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記切れ目は、前記絶縁被覆に複数設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記切れ目は、前記被覆電線の長手方向に沿って設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記切れ目は、前記被覆電線の長手方向に対して所定の角度をなして設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記切れ目は、直線状、波形状、およびジグザグ形状の少なくとも1つの形状であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記切れ目の部分における前記絶縁被覆は、前記圧着端子によって前記導体露出部が加締められた部分の近傍において重ね合わされていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記圧着端子は、前記導体露出部を丸めて圧着接続するワイヤバレルと、前記絶縁被覆を丸めて圧着接続するインシュレーションバレルと、を有するオープンバレル形式の端子であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一態様に係る端子付き電線は、この構成において、前記ワイヤバレルおよび前記インシュレーションバレルの少なくとも一方の形状は、千鳥形状またはジグザグ形状であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一態様に係る端子付き電線の製造方法は、複数の素線で構成される導体部と、前記導体部を被覆する絶縁被覆と、を有する扁平状の被覆電線の一端部の前記絶縁被覆を切除して、前記導体部を露出させた導体露出部を形成する工程と、前記絶縁被覆の前記導体露出部が形成される側の近傍に、前記絶縁被覆を部分的に切開した切れ目を形成する工程と、前記切れ目の部分における前記絶縁被覆を重ね合わせる、または前記切れ目を狭めることにより、前記被覆電線を縮径させる工程と、前記導体露出部および前記絶縁被覆の扁平率を低減させて圧着端子に収容し、収容した前記導体露出部および前記絶縁被覆を前記圧着端子により加締めて圧着接続する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る端子付き電線および端子付き電線の製造方法によれば、扁平電線の圧着端子への圧着前の前処理種々の圧着端子に対して扁平電線の圧着を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1の実施形態による端子付き電線における圧着端子と被覆電線との概略構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態による端子付き電線の側面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態による端子付き電線の長手方向に直交した、図2に示すIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態の第1変形例による端子付き電線の側面図である。
図5図5は、本発明の第1の実施形態の第1変形例による端子付き電線の下面図である。
図6図6は、第1変形例による図4および図5に示すIII-III線に沿った断面図である。
図7図7は、本発明の第1の実施形態の第2変形例による端子付き電線の側面図である。
図8図8は、第2変形例による図7に示すVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9図9は、本発明の第1の実施形態の第3変形例による端子付き電線の側面図である。
図10図10は、第3変形例による図9に示すX-X線に沿った断面図である。
図11図11は、本発明の第1の実施形態の第4変形例による端子付き電線の側面図である。
図12図12は、第4変形例による図11に示すXII-XII線に沿った断面図である。
図13図13は、本発明の第1の実施形態の第5変形例による端子付き電線の側面図である。
図14図14は、第5変形例による図13に示すXIV-XIV線に沿った断面図である。
図15図15は、本発明の第1の実施形態の第6変形例による端子付き電線の側面図である。
図16図16は、第6変形例による図15に示すXVI-XVI線に沿った断面図である。
図17図17は、本発明の第1の実施形態の第7変形例による端子付き電線の上面図である。
図18図18は、第7変形例による図17に示すXVIII-XVIII線に沿った断面図である。
図19図19は、本発明の第2の実施形態による端子付き電線における圧着端子と被覆電線との概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
【0022】
(第1の実施形態)
(圧着端子および被覆電線)
本発明の実施形態による端子付き電線1について説明する前に、図1を参照して、圧着端子および被覆電線の概略構成について説明する。図1に示すように、扁平状の被覆電線10は、導体11および絶縁被覆12を有する。導体11は、長手方向Xに延伸した複数の素線111が横並びに並べられて、それぞれの素線111が例えば2層に並列に配列された導体並列型の扁平状の導体部である。絶縁被覆12は、扁平状の導体11の外周に形成された絶縁性の被覆部である。なお、本明細書中において、長手方向Xとは、圧着端子20の長手方向を意味する。また、方向Yとは、圧着端子20の底面部に平行な平面内において方向Xに対し直交する方向を意味する。さらに、方向Zとは、方向Xおよび方向Yが含まれる平面に対して略直角の方向を意味する。
【0023】
扁平状の被覆電線10は、先端部において導体11の外周の絶縁被覆12が除去されて、所定の長さの導体11が露出した導体露出部112を有する。扁平状の被覆電線10の絶縁被覆12は、導体露出部112の側における一部に切れ目としてのスリット121が形成されている。以下の説明において、被覆電線10は、長手方向Xにおいて、前方側を先端側となる導体端部側とし、後方側を基端側となる被覆側とする。
【0024】
導体11は、複数の素線111から構成され、例えば純度の高いアルミニウム(Al)やアルミニウム合金(Al合金)からなるが、必ずしもこれらの材料に限定されない。本実施形態において被覆電線10は、断面積が例えば3.5mm2(3.5sq)以上90mm2(90sq)以下の、例えば20sqの電線である。被覆電線10の断面積は、それぞれの素線111の断面積の総和、すなわち総断面積である。絶縁被覆12は、絶縁性を有する例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンやノンハロゲン材料などの樹脂からなる。絶縁被覆12を構成する樹脂には、可塑剤などの添加剤が添加されていても良い。
【0025】
圧着接続前の圧着端子20は、オープンバレル形式の端子である。圧着端子20は、表面に錫メッキ(Snメッキ)処理が施された黄銅などの銅合金からなる板材が加工されて形成される。圧着端子20は、先端側である長手方向Xの前方から基端側である後方に向かって順次接続された、端子接続部(図示せず)、トランジション部22、ワイヤバレル23、およびインシュレーションバレル24を有する。導体圧着部は、導体露出部112がワイヤバレル23により丸められて圧着接続された部分であり、被覆圧着部は、絶縁被覆12により被覆された導体11がインシュレーションバレル24により丸めて圧着接続された部分である。図1に示すワイヤバレル23やインシュレーションバレル24の形状は、平面上にした、いわゆる平面形状が略矩形状であるが、平面形状が千鳥形状やジグザグ形状であっても良い。ワイヤバレル23やインシュレーションバレル24の形状を、千鳥形状やジグザグ形状とすることにより、被覆電線10の脱落や抜けをさらに抑制することが可能になる。
【0026】
端子接続部(図示せず)は、例えば、雌型圧着端子の接続構造やスリーブ形状の端子(以下、スリーブ端子)の接続構造からなる。なお、接続構造はこれに限定されず、雄型圧着端子や丸型圧着端子などの他の形状の接続構造であっても良い。トランジション部22は、端子接続部とワイヤバレル23とを接続する部分である。
【0027】
ワイヤバレル23は、YZ平面における断面が、高さ方向Zにおける上側に開口しているとともに下側に底部が位置するU字形状であって、かつ長手方向Xに延伸した形状を有する。インシュレーションバレル24も同様に、YZ平面における断面が、高さ方向Zにおける上側に開口しているとともに下側に底部が位置するU字形状であり、かつ長手方向Xに延在した形状を有する。ワイヤバレル23とインシュレーションバレル24とは下側で連結している。本実施形態においては、ワイヤバレル23およびインシュレーションバレル24は、ともにU字形状のものを使用しているが、V字形状のものなども使用できる。なお、本明細書において、高さ方向Zにおける上側および下側は、構成要素間の相対的な位置関係を説明するために便宜的に向きを特定したものである。ワイヤバレル23の表面23aには、複数のセレーション23bが形成されている。本実施形態におけるセレーション23bの本数は3本であるが、本数は3本に限定されるものではない。
【0028】
図2は、本実施形態による端子付き電線1の側面図である。図3は、本実施形態による端子付き電線1の長手方向に直交した図2に示すIII-III線に沿った断面図である。なお、扁平状の被覆電線10の幅方向は、被覆電線10の長手方向に対して直交する平面に沿った断面における略矩形状または略楕円状の形状において、長辺または長軸に平行な方向である。被覆電線10の幅方向に平行な面は、扁平状の面(以下、扁平面)である。被覆電線10の厚さ方向は、被覆電線10の長手方向に対して直交する平面に沿った断面における略矩形状または略楕円状の形状において、短辺または短軸に平行な方向である。被覆電線10の厚さ方向に平行な面は、被覆電線10の幅方向における側方の面(以下、側面)である。
【0029】
図2に示すように、本実施形態において被覆電線10は、長手方向が圧着端子20の長手方向Xに略平行になるとともに、幅方向が圧着端子20の高さ方向Z、厚さ方向が圧着端子20の幅方向Yに略平行になるように、圧着端子20に圧着されている。なお、本実施形態においてスリット121は例えば、被覆電線10の幅方向に沿った両側に直線状に形成されている。なお、スリット121は、被覆電線10の幅方向に沿った一方の側のみに形成しても良い。被覆電線10に形成されたスリット121は、圧着前および圧着時の少なくとも一方のタイミングで、幅が狭められたり、閉塞されたり、絶縁被覆12の一部が重ね合わされたりした状態で、圧着端子20に圧着されている。スリット121が閉塞されたり、端部の絶縁被覆12の一部が重ね合わされたりすることによって、絶縁性を確保することができる。図1および図3に示すように、本実施形態において、被覆電線10の導体11および絶縁被覆12が圧着端子20のインシュレーションバレル24に囲繞された状態で、圧着前に形成されていたスリット121の絶縁被覆12の一部が重ね合わされている。
【0030】
絶縁被覆12の一部にスリット121を設けることによって、圧着端子20に被覆電線10を圧着させる場合に、被覆電線10の長手方向に直交する断面における絶縁被覆12の一部を重ね合わせることで、周長を短くできる。なお、スリット121の形状によっては、スリット121の幅を狭めたり、スリット121を閉塞させたりしても良い。そのため、被覆電線10を圧着端子20に圧着させる前処理によって扁平形状の導体11の扁平率を容易に低減できる。被覆電線10の扁平率を容易に低減できることにより、導体露出部112および絶縁被覆12の先端部を容易に変形できるので、導体11および絶縁被覆12の断面形状を、圧着端子20の圧着部分に被覆電線10を収めやすい形状、例えば略円形状にできる。また、絶縁被覆12の一部にスリット121を設けることによって、被覆電線10の圧着部分の剛性を、扁平電線の圧着部分以外の他の部分の剛性より低くできる。これにより、ワイヤバレル23で導体露出部112を丸めて圧着する際に、インシュレーションバレル24により圧着される絶縁被覆12の端部側が導体露出部112の変形に追随して変形しやすくなり、圧着端子20への圧着が容易になる。
【0031】
(端子付き電線の製造方法)
次に、以上のように構成された第1の実施形態による被覆電線10を圧着端子20に接続する端子付き電線の製造方法について説明する。第1の実施形態による端子付き電線1を製造する場合には、まず、扁平状の被覆電線10の一端部の絶縁被覆12を切除して、導体11を露出させた導体露出部112を形成する。次に、絶縁被覆12の端部にスリット121を形成する。
【0032】
次に、導体露出部112およびスリット121の部分の扁平率を低減させて、その断面形状を圧着端子20の圧着部分に収めやすい形状、例えば略円形状に成形する。ここで、成形後の導体露出部112を丸めて扁平率を下げた状態や、スリット121の端部を重ねた状態を維持するために、治具によって導体露出部112やスリット121を把持したり押圧したりしても良い。同様に、導体露出部112やスリット121の成形後の状態を維持するために、導体露出部112の導体11やスリット121の絶縁被覆12に対して、予備加工などを行っても良い。
【0033】
次に、被覆電線10の長手方向を圧着端子20の長手方向Xに合わせ、被覆電線10の幅方向を圧着端子20の高さ方向Zに合わせる。換言すると、圧着端子20の圧着部分に対して、被覆電線10の扁平状の部分の断面が縦長になるように配置する。次に、導体露出部112がワイヤバレル23の底部に収容され、絶縁被覆12の先端側の一部がインシュレーションバレル24の底部に収容されるように、被覆電線10と圧着端子20とを重ね合わせる。
【0034】
導体露出部112については、少なくとも一部が超音波接合により断面形状が丸くなるように接合されていても良い。導体露出部112の一部を超音波接合する場合、導体露出部112の前方側、または後方側を超音波接合部としても良い。導体露出部112の一部を超音波接合することにより、ワイヤバレル23内への導体露出部112の収容を容易に行うことができるとともに、素線111間の導通性を確保することができる。
【0035】
次に、圧着端子20の外周に圧力を加えて、圧着端子20を導体露出部112と絶縁被覆12の一部とに圧着接続する圧着工程を行う。これにより、圧着端子20は、ワイヤバレル23が加締められて、その表面23aが導体露出部112と接触して導体11を包み込む。また、圧着工程によって、インシュレーションバレル24が絶縁被覆12の一部を包み込むように丸めて圧着接続される。すなわち、図2および図3に示すように、ワイヤバレル23は導体11の外周に沿って接触して圧着され、インシュレーションバレル24は絶縁被覆12の外周に沿って接触して圧着される。これにより端子付き電線1が完成する。
【0036】
従来、扁平状の被覆電線10を、U字形状またはV字形状の圧着端子で圧着する場合、扁平状の被覆電線10をその幅方向が圧着端子20の底部と平行になるように圧着させることは困難であった。これに対し、本実施形態においては、絶縁被覆12の導体11の露出側の近傍にスリット121を設けることにより、扁平状の被覆電線10と、ワイヤバレル23およびインシュレーションバレル24の形状がU字形状の圧着端子20とを圧着接続する場合に、導体圧着部および被覆圧着部を丸めて圧着しやすくなる。すなわち、本実施形態においては、絶縁被覆12の端部にスリット121を設けることによって、絶縁被覆12をインシュレーションバレル24の底面形状に沿うように縮めたり、インシュレーションバレル24によって絶縁被覆12の外周を丸めて圧着したりする際に、絶縁被覆12における、長手方向に直交する断面の周長を短くできるので、絶縁被覆12をインシュレーションバレル24の形状に沿って丸めやすくなる。これにより、絶縁被覆12をインシュレーションバレル24によって容易に圧着できる。さらに、スリット121によって絶縁被覆12が変形しやすくなることから、インシュレーションバレル24により丸めて圧着する際、導体11に無理な力が作用せず、断線の可能性も低減して、インシュレーションバレル24が絶縁被覆12の材料に起因した弾性力によって加締め切れないという問題を回避でき、接続信頼性を向上できる。
【0037】
(変形例)
以上説明した第1の実施形態において被覆電線10におけるスリット121は、幅方向から見た両側に直線状に形成されているが、必ずしも幅方向に沿った両側に直線状に形成するものに限定されない。以下に、第1の実施形態による被覆電線10の変形例について説明する。図4図7図9図11図13、および図15はそれぞれ、第1の実施形態の第1~第6変形例による端子付き電線の側面図である。図5は、第1変形例による端子付き電線の下面図である。図6図8図10図12図14図16、および図18はそれぞれ、第1の実施形態の第1~第7変形例による端子付き電線の断面図である。図17は、第1の実施形態の第7変形例による端子付き電線の上面図である。
【0038】
(第1変形例)
図4および図5に示すように、第1変形例による端子付き電線1Bは、被覆電線10Bの側面であって、圧着端子20の底部側にスリット122が形成されている。スリット122は、例えば被覆電線10Bの絶縁被覆12における先端側の導体露出部112の近傍から、後端側に向かって厚さ方向の幅が縮小する形状(図5中点線)に形成されている。図6に示すように、被覆電線10Bが圧着端子20のインシュレーションバレル24に加締められた状態においては、スリット122が閉塞されて、絶縁被覆12の端部が重ね合わされて、被覆電線10Bが縮径されている。
【0039】
(第2変形例)
図7に示すように、第2変形例による端子付き電線1Cは、被覆電線10Cの扁平面である幅方向に平行な面であって、圧着端子20の側部側にスリット123が形成されている。スリット123の被覆電線10Cの扁平面に沿った長手方向の形状は、例えば波形状である。スリット123は、被覆電線10Cの両側の扁平面、すなわち扁平形状の両面に形成されているが、片面であっても良い。図8に示すように、被覆電線10Cが圧着端子20のインシュレーションバレル24に加締められた状態においては、被覆電線10Cの扁平部分の両面のそれぞれのスリット123において、絶縁被覆12の端部が重ね合わされてスリット123が閉塞され、絶縁性を維持しつつ被覆電線10Cが縮径されている。
【0040】
(第3変形例)
図9に示すように、第3変形例による端子付き電線1Dは、被覆電線10Dの扁平面である幅方向に平行な面であって、圧着端子20の側部側にスリット124が形成されている。スリット124の被覆電線10Dの扁平面に沿った長手方向の形状は、例えばジグザグ形状(ギザギザ形状)である。スリット124は、被覆電線10Dの両側の扁平面、すなわち扁平形状の両面に形成されているが、片面であっても良い。図10に示すように、被覆電線10Dが圧着端子20のインシュレーションバレル24に加締められた状態においては、被覆電線10Dの扁平面の両面のそれぞれのスリット124において、絶縁被覆12の端部が重ね合わされてスリット124が閉塞され、絶縁性を維持しつつ被覆電線10Dが縮径されている。
【0041】
(第4変形例)
図11に示すように、第4変形例による端子付き電線1Eは、被覆電線10Eの扁平面である幅方向に平行な面であって、圧着端子20の側部側にスリット125が形成されている。スリット125の被覆電線10Eの扁平面に沿った形状は、例えば直線状であって、被覆電線10の長手方向に対して所定の角度を有し、いわゆる長手方向に対して斜めに形成されている。スリット125は、被覆電線10Eの扁平部分の両面に形成されているが、片面であっても良い。図12に示すように、被覆電線10Eが圧着端子20のインシュレーションバレル24に加締められた状態においては、被覆電線10Eの扁平面の両面のそれぞれのスリット125において、絶縁被覆12のスリット125の端部が重ね合わされてスリット125が閉塞され、絶縁性を維持しつつ被覆電線10Eが縮径されている。
【0042】
(第5変形例)
図13に示すように、第5変形例による端子付き電線1Fは、被覆電線10Fの扁平面である幅方向に平行な面であって、圧着端子20の側部側に複数、ここでは2本のスリット126a,126bが形成されている。2本のスリット126a,126bの被覆電線10Fの扁平面に沿った形状は、例えば直線状であって互いに略平行に形成されている。スリット126a,126bは、被覆電線10Fの扁平部分の両面に合計4本形成されているが、片面、すなわち一方の扁平面にのみ2本のスリット126a,126bが形成されていても良い。また、3本以上のスリットを形成しても良い。
【0043】
図14に示すように、被覆電線10Fが圧着端子20のインシュレーションバレル24に加締められた状態においては、被覆電線10Fの扁平面の両面のそれぞれのスリット126a,126bにおいて端部が重ね合わされて、スリット126a,126bが閉塞されて、絶縁性を維持しつつ被覆電線10Fが縮径されている。
【0044】
(第6変形例)
図15に示すように、第6変形例による端子付き電線1Gは、被覆電線10Gの扁平面であって、圧着端子20の側面側にスリット127が形成されている。スリット127は、例えば被覆電線10Gの絶縁被覆12における先端側の導体露出部112の近傍から、後端側に向かって一定の長さだけ、絶縁被覆12が除去されている。図16に示すように、被覆電線10Gが圧着端子20のインシュレーションバレル24に加締められた状態においては、スリット127の間隔が狭められて、絶縁被覆12における先端側の導体露出部112の近傍から、後端側に向かって厚さ方向の幅が拡大する形状となり、被覆電線10Gが縮径されている。
【0045】
(第7変形例)
図17に示すように、第7変形例による端子付き電線1Hは、被覆電線10Hの両側面であって、圧着端子20の上部側および底部側にそれぞれ、スリット128が形成されている。スリット128は、例えば被覆電線10Hの絶縁被覆12における先端側の導体露出部112の近傍から、後端側に向かって厚さ方向の幅が縮小する形状に形成されている。図18に示すように、被覆電線10Hが圧着端子20のインシュレーションバレル24に加締められた状態においては、スリット128の厚さ方向に沿った幅が狭められて、被覆電線10Hが縮径されている。
【0046】
上述した第1~第7変形例における絶縁被覆12の表面に沿ったスリット122~128の形状は、上述した形状に限定されない。スリットの形状としては、被覆電線10~10Hおよび圧着端子20の絶縁性および耐腐食性を確保可能であれば、その他の形状のスリットとしても良い。また、第1の実施形態、および第1変形例~第7変形例を適宜組み合わせることも可能であり、上述した形状や配置に限定されない。
【0047】
なお、第1の実施形態におけるワイヤバレル23およびインシュレーションバレル24については、両方がU字形状、V字形状などのオープンバレルの例を示しているが、一方がオープンバレル、他方が筒型形状のようなクローズバレルの例も適用することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態による管端子からなる端子付き電線の製造方法について説明する。図19は、第2の実施形態による端子付き電線の製造方法を説明するための斜視図である。
【0049】
(端子付き電線)
図19に示すように、クローズバレル形式の管端子からなる圧着端子20Aは、管状接続部30を有する。管状接続部30は、被覆圧着範囲30a、導体圧着範囲30b、および封止部30cを備える。被覆圧着範囲30aは、被覆電線10の絶縁被覆12を覆う範囲である。導体圧着範囲30bは、被覆電線10から露出した導体11と接続される範囲である。封止部30cは、導体圧着範囲30bより前方側が押しつぶされて封止された一方の端部側の部位である。第2の実施形態において、封止部30cは凹状封止部33を有して構成される。凹状封止部33は、封止されているとともに、例えば、長手方向Xの前方側から見て幅方向Yに広い断面略U字状に形成されている。管状接続部30は、バレル構成片32が丸められてバレル構成片32の対向端部同士を突き合せて溶接することによって、後方視略管形状に形成される。なお、第2の実施形態において、封止部30cは必ずしも設けられていなくても良く、例えば、導体圧着範囲30bの前方側が開放されていても良い。
【0050】
(端子付き電線の製造方法)
まず、被覆電線10の先端の絶縁被覆12を除去することにより、導体11の先端部に導体露出部112を露出させる。また、絶縁被覆12の導体露出部112側の先端部の近傍にスリット121を形成する。次に、導体露出部112および絶縁被覆12を、導体圧着範囲30bおよび被覆圧着範囲30aの内部形状に沿うように扁平率を下げる成形を行い、導体圧着範囲30bおよび被覆圧着範囲30aに被覆電線10を挿入する。被覆電線10は、被覆電線10の中心軸が管状接続部30の長手方向Xに平行になるように挿通される。この際、長手方向Xに沿った導体露出部112の先端の位置が管状接続部30における封止部30cより後方になるように挿通される。導体圧着範囲30bの前方側が開放された圧着端子20Aに挿通する場合は、長手方向Xに沿った導体露出部112の先端の位置が管状接続部30における導体圧着範囲30bの前方側端部付近になるように挿通すれば良い。
【0051】
次に、圧着端子20Aの外周に圧力を加えて、圧着端子20Aを導体露出部112と絶縁被覆12の一部とに丸めて圧着接続する圧着工程を行う。これにより、圧着端子20Aは、管状接続部30の導体圧着範囲30bおよび被覆圧着範囲30aが加締められる。すなわち、導体圧着範囲30bの内表面が導体露出部112と接触して導体11を包み込み、被覆圧着範囲30aが絶縁被覆12の一部を包み込むように圧着接続される。以上により、端子付き電線2が完成する。
【0052】
第2の実施形態においても、上述した第1~第7変形例によるスリット122~128や被覆電線10B~10Hを採用することが可能である。
【0053】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上述の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上述の実施形態において挙げた数値や材料はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値や材料を用いても良く、本発明は、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により限定されることはない。
【符号の説明】
【0055】
1,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,2 端子付き電線
10,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H 被覆電線
11 導体
12 絶縁被覆
20,20A 圧着端子
22 トランジション部
23 ワイヤバレル
23a 表面
23b セレーション
24 インシュレーションバレル
30 管状接続部
30a 被覆圧着範囲
30b 導体圧着範囲
30c 封止部
32 バレル構成片
33 凹状封止部
111 素線
112 導体露出部
121,122,123,124,125,126,126a,126b,127,128 スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19