(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156210
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】表面処理組成物、表面処理組成物の製造方法、表面処理方法、及び半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221006BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20221006BHJP
C11D 1/02 20060101ALI20221006BHJP
C11D 1/66 20060101ALI20221006BHJP
C11D 1/14 20060101ALI20221006BHJP
C11D 1/29 20060101ALI20221006BHJP
C11D 1/22 20060101ALI20221006BHJP
C11D 1/28 20060101ALI20221006BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20221006BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
H01L21/304 644C
H01L21/304 622Q
C11D3/37
C11D1/02
C11D1/66
C11D1/14
C11D1/29
C11D1/22
C11D1/28
C11D1/68
C11D1/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059791
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】吉野 努
【テーマコード(参考)】
4H003
5F057
5F157
【Fターム(参考)】
4H003AB19
4H003AB22
4H003AB27
4H003AB31
4H003AC03
4H003AC08
4H003BA12
4H003CA15
4H003DA05
4H003DA09
4H003DC02
4H003EB28
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA15
4H003FA28
5F057AA21
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5F157AA28
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5F157BF54
5F157BF55
5F157BF59
5F157BF62
5F157BF63
5F157BF72
5F157DB03
(57)【要約】
【課題】窒化珪素又はポリシリコンを含む研磨済研磨対象物の表面に存在する有機物残渣を十分に除去することができる手段を提供する。
【解決手段】下記[化1]の式(1)で表される構成単位を有する重合体、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の少なくとも一方、及び水を含有し、研磨済研磨対象物の表面を処理するために用いられる、表面処理組成物であって、
【化1】
上記式(1)中、R1は炭素数1~5の炭化水素基であり、R2は水素原子又は炭素
数1~3の炭化水素基である、表面処理組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記[化1]の式(1)で表される構成単位を有する重合体、
アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の少なくとも一方、及び
水を含有し、
研磨済研磨対象物の表面を処理するために用いられる、表面処理組成物であって、
【化1】
上記式(1)中、R1は炭素数1~5の炭化水素基であり、R2は水素原子又は炭素
数1~3の炭化水素基である、表面処理組成物。
【請求項2】
前記アニオン性界面活性剤は、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、アルキルエーテル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、及びアルキルスルホコハク酸からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項3】
前記アニオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸アンモニウムを含む、請求項1又は2に記載の表面処理組成物。
【請求項4】
前記ノニオン性界面活性剤は、ポリグリセリン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項5】
前記ノニオン性界面活性剤は、ポリグリセリンラウリルエーテルを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項6】
pHが7以上12以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項7】
砥粒を実質的に含有しない、請求項1~6のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項8】
前記研磨済研磨対象物はポリシリコン又は窒化珪素を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項9】
前記重合体の重量平均分子量は、50,000以上900,000以下である、請求項1から8のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項10】
下記[化2]の式(1)で表される構成単位を有する重合体と、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の少なくとも一方と、水とを混合する工程を含む、表面処理組成物の製造方法であって、
【化2】
上記式(1)中、R1は炭素数1~5の炭化水素基であり、R2は水素原子又は炭素
数1~3の炭化水素基である、表面処理組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の表面処理組成物を用いて研磨済研磨対象物を表面処理して、前記研磨済研磨対象物の表面における有機物残渣を低減する、表面処理方法。
【請求項12】
前記表面処理は、リンス研磨又は洗浄を含む、請求項11に記載の表面処理方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の表面処理方法によって、研磨済研磨対象物の表面における有機物残渣を低減する表面処理工程を含み、
前記研磨済研磨対象物は研磨済半導体基板である、半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理組成物、表面処理組成物の製造方法、表面処理方法、及び半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板表面の多層配線化に伴い、半導体装置(デバイス)を製造する際に、半導体基板を研磨して平坦化する、いわゆる、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)技術が利用されている。CMPは、シリカやアルミナ、セリア等の砥粒、防食剤、界面活性剤などを含む研磨用組成物(スラリー)を用いて、半導体基板等の研磨対象物(被研磨物)の表面を平坦化する方法である。研磨対象物(被研磨物)は、シリコン、ポリシリコン、シリコン酸化膜(酸化ケイ素)、シリコン窒化物や、金属等からなる配線、プラグなどである。
【0003】
CMP工程後の半導体基板表面には、不純物(ディフェクト)が多量に残留している。不純物としては、CMPで使用された研磨用組成物由来の砥粒、金属、防食剤、界面活性剤等の有機物、研磨対象物であるシリコン含有材料、金属配線やプラグ等を研磨することによって生じたシリコン含有材料や金属、更には各種パッド等から生じるパッド屑等の有機物などが含まれる。
【0004】
半導体基板表面がこれらの不純物により汚染されると、半導体の電気特性に悪影響を与え、半導体装置の信頼性が低下する可能性がある。したがって、CMP工程後に洗浄工程を導入し、半導体基板表面からこれらの不純物を除去することが望ましい。
かような洗浄工程に用いられる洗浄液(洗浄用組成物)としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1には、水と、研磨砥粒と、ポリビニルアルコール構造単位を含む1種以上の水溶性重合体とを含有する、化学的機械研磨用のスラリー組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
研磨済研磨対象物の洗浄に際して、ディフェクトのさらなる低減が望まれている。
ここで、本発明者らは、研磨済研磨対象物の種類とディフェクトの種類との関係について検討を行った。その結果、窒化珪素又はポリシリコンを含む研磨済研磨対象物(例えば、研磨済半導体基板)の表面には有機物残渣が残留しやすく、かような有機物残渣は半導体装置の破壊の原因となりうることを見出した。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、窒化珪素又はポリシリコンを含む研磨済研磨対象物の表面に存在する有機物残渣を十分に除去することができる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を進めた。その結果、下記[化1]の式(1)で表される構成単位を有する重合体、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の少なくとも一方、及び水を含有する表面処理組成物を使用することにより、窒化珪素又はポリシリコンを含む研磨済研磨対象物の表面に存在する有機物残渣を十分に除去することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
【化1】
上記式(1)中、R1は炭素数1~5の炭化水素基であり、R2は水素原子又は炭素
数1~3の炭化水素基である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、窒化珪素又はポリシリコンを含む研磨済研磨対象物の表面に存在する有機物残渣を十分に除去することができる手段が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
また、本明細書において、化合物の具体名における表記「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」を、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」を表すものとする。
【0011】
[有機物残渣]
本明細書において、有機物残渣とは、研磨済研磨対象物表面に付着した異物のうち、有機低分子化合物や高分子化合物等の有機物や有機塩等からなる成分を表す。
洗浄対象物に付着する有機物残渣は、例えば、後述の研磨工程もしくは任意に設けてもよいリンス研磨工程において使用したパットから発生するパッド屑、又は研磨工程において用いられる研磨用組成物もしくはリンス研磨用工程において用いられるリンス研磨用組成物に含まれる添加剤に由来する成分等が挙げられる。
有機物残渣とその他の異物とは色及び形状が大きく異なることから、異物が有機物残渣であるか否かの判断は、SEM観察によって目視にて行うことができ、必要に応じて、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)による元素分析にて判断してもよい。
【0012】
[研磨済研磨対象物]
本明細書において、研磨済研磨対象物とは、研磨工程において研磨された後の研磨対象物を意味する。研磨工程としては、特に制限されないが、CMP工程であることが好ましい。
本発明の一形態に係る表面処理組成物は、窒化珪素(以下、単に「SiN」とも称する)、又はポリシリコン(以下、単に「Poly-Si」とも称する)を含む研磨済研磨対象物(以下、単に「洗浄対象物」とも称する)の表面に残留する有機物残渣を低減するために用いられることが好ましい。
【0013】
研磨済研磨対象物は、研磨済半導体基板であることが好ましく、CMP後の半導体基板であることがより好ましい。かかる理由は、特に有機物残渣は半導体装置の破壊の原因となりうるため、研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板である場合は、半導体基板の洗浄工程としては、有機物残渣をできる限り除去しうるものであることが必要とされるからである。
【0014】
窒化珪素又はポリシリコンを含む研磨済研磨対象物としては、特に制限されないが、窒化珪素及びポリシリコンのそれぞれ単体からなる研磨済研磨対象物や、窒化珪素又はポリシリコンに加え、これら以外の材料が表面に露出している状態の研磨済研磨対象物等が挙げられる。ここで、前者としては、例えば、半導体基板である窒化珪素基板又はポリシリコン基板が挙げられる。また、後者については、窒化珪素又はポリシリコン以外の材料は、特に制限されないが、例えば、タングステン等が挙げられる。かかる研磨済研磨対象物の具体例としては、タングステン上に、窒化珪素膜又はポリシリコン膜が形成された構造を有する研磨済半導体基板や、タングステン部分と、窒化珪素膜と、ポリシリコン膜が全て露出した構造を有する研磨済半導体基板等が挙げられる。
ここで、本発明の奏する効果の観点から、本発明の一形態に係る研磨済研磨対象物は、ポリシリコンを含むことが好ましい。
【0015】
[表面処理組成物]
本発明の一形態は、下記[化2]の式(1)で表される構成単位を有する重合体、及び水を含有し、研磨済研磨対象物の表面を処理するために用いられる、表面処理組成物である。
【0016】
【0017】
上記式(1)中、R1は炭素数1~5の炭化水素基であり、R2は水素原子又は炭素
数1~3の炭化水素基である。
本発明の一形態に係る表面処理組成物は、表面処理工程において、有機物残渣を選択的に除去するための有機物残渣低減剤として用いることが特に好ましい。
本発明者らは、本発明によって上記課題が解決されるメカニズムを以下のように推定している。表面処理組成物は、表面処理組成物に含有される各成分と、研磨済研磨対象物の表面及び異物とが相互作用する結果、化学的相互作用の結果として研磨済研磨対象物表面の異物を除去し、又は除去を容易にする機能を有する。
【0018】
式(1)で表される構成単位を有する重合体は、疎水性ウェーハ表面に物理的に吸着することで、親水性に表面を変化させることができる。ウェーハ上に付着している有機物残渣は、処理中に一旦浮き上がり、その後上記重合体がウェーハに吸着する。その結果、上記重合体により形成される層が有機物残渣の再付着防止層として機能し、ひいては有機物残渣を簡単にウェーハ上から除去することができる。例えば、上記重合体は、ウェーハの表面に現れているポリシリコン(Poly-Si)上を親水化し、有機残渣を除去する。
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
【0019】
以下、当該表面処理組成物に含まれる各成分について説明する。
[式(1)で表される構成単位を有する重合体]
上記式(1)中のR1で表される炭素数1~5の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基;シクロペンチル基等のシクロアルキル基等を挙げることができる。これらの中でも、アルキル基及びアルキニル基が好ましく、炭素数1~3の炭化水素基も好ましい。R1としては、メチル基、エチル基及びエテニル基(ビニル基)がより好ましく、メチル基及びエチル基がさらに好ましい。
【0020】
上記式(1)中のR2で表される炭素数1~3の炭化水素基としては、R1で表される炭素数1~5の炭化水素基として例示したもののうち、炭素数が1~3のものを挙げることができる。R2としては、水素原子及びメチル基が好ましい。
上記構成単位を与える不飽和単量体としては、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルプロピオンアミド、N-ビニルブチルアミド等を挙げることができるが、N-ビニルアセトアミド及びN-ビニルプロピオンアミドが好ましい。上記不飽和単量体は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
上記重合体の重量平均分子量(Mw)としては、通常30,000以上1000,000以下であり、50,000以上900,000以下であることが好ましく、50,000以上100,000以下であることがより好ましい。上記重合体の重量平均分子量(Mw)を上記範囲とすることで、研磨済研磨対象物表面の有機物残渣をより効果的に低減することができる。
式(1)で表される構成単位を有する重合体の含有量(2種以上の場合はその合計量)の下限としては、特に制限されないが、表面処理組成物の総量に対して、0.02質量%以上であることが好ましい。含有量が0.02質量%以上であると、研磨済研磨対象物表面の有機物残渣をより効果的に低減することができる。
【0022】
同様の観点から、式(1)で表される構成単位を有する重合体の含有量の下限値としては、表面処理組成物の総量に対して、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがさらに好ましい。一方、式(1)で表される構成単位を有する重合体の含有量の上限値としては、表面処理組成物の総量に対して、1質量%以下であることが好ましい。含有量が1質量%以下であると、表面処理後の式(1)で表される構成単位を有する重合体自体の除去が容易となる。同様の観点から、式(1)で表される構成単位を有する重合体の含有量の上限値としては、表面処理組成物の総量に対して、0.7質量%以下であることがより好ましく、0.5質量以下であることがさらに好ましい。
【0023】
上記重合体における上記構成単位の含有量としては、30mol%以上100mol%以下が好ましく、50mol%以上100mol%以下がより好ましく、70mol%以上100mol%以下がさらに好ましい。上記構成単位の含有量を上記範囲とすることで、研磨済研磨対象物表面の有機物残渣をより効果的に低減することができる。
【0024】
[グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子]
本発明の一形態に係る表面処理組成物は、グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子を含んでもよい。
グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子の好ましい例としては、ポリグリセリン(下記式(2)参照)、ポリグリセリンのアルキル(C10-14)エステル、ポリグリセリンアルキル(C10-14)エーテル、エチレンオキサイド変性ポリグリセリン、スルホン酸変性ポリグリセリン(例えば下記式(3)、(4)参照)、及びホスホン酸変性ポリグリセリン(例えば下記式(5)、(6)参照)からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0025】
【0026】
上記式(2)~(6)中のm及びnは、それぞれ独立して、繰り返し単位の数を表し、上記式(3)~(6)中のMは、それぞれ独立して、水素原子、Na、K、又はNH4+を表す。
なお、上記式(3)~(6)中の複数個のMは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。たとえば、上記式(3)中のn個のMはすべてNaであってもよいし、水素原子、Na、K、及びNH4+の2種以上の組み合わせであってもよい。また、たとえば、上記式(4)中のm個のMはすべてNaであってもよいし、水素原子、Na、K、及びNH4+の2種以上の組み合わせであってもよい。
【0027】
上記グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子の含有量(濃度)(2種以上の場合はその合計量)は、特に制限されないが、表面処理組成物の総量に対して、0.02質量%以上であることが好ましい。グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子の含有量が
0.02質量%以上であると、本発明の効果が向上する。
【0028】
同様の観点から、グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子の含有量(濃度)は、表面処理組成物の総量に対して、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがさらに好ましい。また、グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子の含有量(濃度)は、表面処理組成物の総量に対して、1質量%以下であることが好ましい。グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子の含有量(濃度)が1質量%以下であると、表面処理後のグリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子自体の除去が容易となる。同様の観点から、グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子の含有量(濃度)は、表面処理組成物の総量に対して、0.7質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であることが好ましい。重量平均分子量が1,000以上であると、異物の除去効果がより向上する。かかる理由は、グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子が洗浄対象物や異物を覆う際の被覆性がより良好となり、洗浄対象物表面からの異物の除去作用又は洗浄対象物表面への異物の再付着抑止作用がより向上するからであると推測される。同様の観点から、重量平均分子量は、3,000以上であることがより好ましく、8,000以上であることがさらに好ましい。また、グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子の重量平均分子量の上限値は、特に制限されないが、1,000,000以下であることが好ましく、100,000以下がより好ましく、50,000以下がさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、GPC装置(株式会社島津製作所製 型式:Prominence + ELSD検出器(ELSD-LTII))などを用いてポリエチレングリコール換算によって求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子は、市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。合成する場合の製造方法は特に制限されず、公知の重合法を用いることができる。
【0030】
[分散媒]
本発明の一形態に係る表面処理組成物は、分散媒(溶媒)として水を必須に含む。分散媒は、各成分を分散又は溶解させる機能を有する。分散媒は、水のみであることがより好ましい。また、分散媒は、各成分の分散又は溶解のために、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。この場合、用いられる有機溶媒としては、水と混和する有機溶媒であるアセトン、アセトニトリル、エタノール、メタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。また、これらの有機溶媒を水と混合せずに用いて、各成分を分散又は溶解した後に、水と混合してもよい。これら有機溶媒は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0031】
水は、洗浄対象物の汚染や他の成分の作用を阻害するという観点から、不純物をできる限り含有しない水が好ましい。例えば、遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下である水が好ましい。ここで、水の純度は、例えば、イオン交換樹脂を用いる不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって高めることができる。具体的には、水としては、例えば、脱イオン水(イオン交換水)、純水、超純水、蒸留水などを用いることが好ましい。
【0032】
[界面活性剤]
本発明の一形態に係る表面処理組成物は、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の少なくとも一方(すなわち、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、又は、それらの両方)を含む。アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、又は、それらを混合した界面活性剤は、表面処理組成物による異物の除去に寄与する。例えば、アニオン性界面活性剤とノニオン界面活性剤は、それぞれ、窒化珪素(SiN)上に付着したパーティクルと有機残渣とを分散させ、除去する。よって、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の少なくとも一方を含む表面処理組成物は、研磨済研磨対象物の表面処理(洗浄等)において、研磨済研磨対象物の表面に残留する異物(有機物残渣等を含む不純物)を十分に除去することができる。
【0033】
アニオン性界面活性剤の疎水性部における炭素(C)数は、8以上12以下であることが好ましい。アニオン性界面活性剤の疎水性部における炭素数が8以上12以下(すなわち、疎水性部のアルキル鎖が炭素数8~12の長さ)であれば、アニオン性界面活性剤は水に溶解し易く、表面処理組成物による洗浄性能を高く保持することができる。疎水性部における炭素数が15以上となると、アニオン性界面活性剤は水に溶解し難くなり、界面活性剤としての機能が低下する傾向がある。なお、後述の実施例に記載のドデシル硫酸アンモニウムは、アニオン性界面活性剤の一例であり、疎水性部における炭素数は12個である。
【0034】
同様に、ノニオン性界面活性剤の疎水性部における炭素(C)数は、8以上12以下であることが好ましい。ノニオン性界面活性剤の疎水性部における炭素数が8以上12以下(すなわち、疎水性部のアルキル鎖が炭素数8~12の長さ)であれば、ノニオン性界面活性剤は水に溶解し易く、表面処理組成物による洗浄性能を高く保持することができる。疎水性部における炭素数が15以上となると、ノニオン性界面活性剤は水に溶解し難くなり、界面活性剤としての機能が低下する傾向がある。なお、後述の実施例に記載のポリグリセリンラウリルエーテルは、ノニオン性界面活性剤の一例であり、疎水性部における炭素数は12個である。
【0035】
<アニオン性界面活性剤>
アニオン性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、アルキルエーテル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。これらのなかでも、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、アルキルエーテル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸が好ましい。後述の実施例に記載のドデシル硫酸アンモニウムは、アルキル硫酸エステルに分類される。なお、上記したアニオン性界面活性剤の各例は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
<ノニオン性界面活性剤>
ノニオン性界面活性剤の例としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、及びアルキルアルカノールアミド等が挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤の別の例として、ポリグリセリン系が挙げられる。ポリグリセリン系として、ポリグリセリンラウリルエステル、ポリグリセリンラウリルエーテル等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリグリセリン系が好ましく、ポリグリセリンラウリルエステル、ポリグリセリンラウリルエーテルがより好ましい。なお、上記したノニオン性界面活性剤の各例は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
[pH]
本発明の一形態に係る表面処理組成物は、pHの値が7以上であり、好ましくは7.5以上である。また、本発明の一形態に係る表面処理組成物は、pHの値が12以下であり、好ましくは11以下であり、より好ましくは10以下である。pHが7以上であると、表面処理組成物を負電荷に帯電しうる性質を有する異物や洗浄対象物に対して用いる場合、洗浄対象物の表面又は異物の表面を負電荷で帯電させることができ、静電的な反発により、高い異物の除去効果が得られる。
【0038】
なお、表面処理組成物のpH値は、pHメータ(株式会社堀場製作所製 製品名:LAQUA(登録商標))により確認することができる。
pH値を調整する際、本発明の一形態に係る表面処理組成物以外の成分は、異物の原因となりうるためできる限り添加しないことが望ましい。よって、表面処理組成物は、上記グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子、水、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の少なくとも一方のみで調製することが好ましい。しかしながら、これらのみによって所望のpHを得ることが困難である場合は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、任意に添加されうる添加剤(例えば、次に説明するpH調整剤)を用いて調整してもよい。
【0039】
<pH調整剤>
pH調節剤は、酸及びアルカリのいずれであってもよく、また、無機化合物及び有機化合物のいずれであってもよい。なお、本明細書において、上記のアニオン性界面活性剤は、ここで述べるpH調整剤としての酸とは異なるものとして取り扱う。酸は、主として表面処理組成物のpHを調整する目的で添加される。
【0040】
pH調整剤としての酸の具体例としては、無機酸や、カルボン酸、有機硫酸等の有機酸があげられる。無機酸の具体例としては、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸等があげられる。pH調整剤としては、無機酸を使用することが好ましく、その中でもリン酸系の無機酸がさらに好ましい。有機酸には、カルボン酸、及び有機硫酸、有機ホスホン酸が含まれる。カルボン酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸等があげられる。さらに、有機硫酸の具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸等があげられる。有機ホスホン酸の具体例としては、メタンホスホン酸、エチドロン酸、フェニルホスホン酸等があげられる。
【0041】
これらの酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。有機酸としては、カルボン酸系又はホスホン酸系の有機酸を使用することが好ましい。また、これらの酸は、表面処理組成物にpH調整剤として含まれていてもよいし、研磨速度の向上のための添加剤として含まれていてもよいし、これらの組み合わせでもよい。
【0042】
pH調整剤としての塩基の具体例としては、アルカリ金属の水酸化物又はその塩、アルカリ土類金属の水酸化物又はその塩、水酸化第四級アンモニウム又はその塩、アンモニア、アミン等があげられる。アルカリ金属の具体例としては、カリウム、ナトリウム等があげられる。また、アルカリ土類金属の具体例としては、カルシウム、ストロンチウム等があげられる。さらに、塩の具体例としては、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、酢酸塩等があげられる。さらに、第四級アンモニウムの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等があげられる。
【0043】
水酸化第四級アンモニウム化合物としては、水酸化第四級アンモニウム又はその塩を含み、具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等があげられる。さらに、アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン等があげられる。
【0044】
これらの塩基は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの塩基の中でも、アンモニア、アンモニウム塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属塩、水酸化第四級アンモニウム化合物、及びアミンが好ましく、さらに、アンモニア、カリウム化合物、水酸化ナトリウム、水酸化第四級アンモニウム化合物、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸ナトリウムがより好ましい。また、表面処理組成物には、塩基として、金属汚染防止の観点からカリウム化合物を含むことがさらに好ましい。カリウム化合物としては、カリウムの水酸化物又はカリウム塩があげられ、具体的には水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム等があげられる。
【0045】
[キレート剤]
本発明の一形態に係る表面処理組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて、キレート剤を任意の割合で含有していてもよい。例えば、キレート剤は、ホスホン酸基及びカルボン酸基の少なくとも一方を有する。すなわち、キレート剤は、ホスホン酸基のみを有してもよいし、カルボン酸基のみを有してもよいし、ホスホン酸基及びカルボン酸基の両方を有してもよい。
【0046】
キレート剤は、表面処理組成物に含まれ得る金属不純物と錯イオンを形成してこれを捕捉することにより、金属不純物による研磨済研磨対象物の汚染を抑制する働きをする。ホスホン酸基を有するキレート剤(以下、「ホスホン酸系キレート剤」とも称する)の例としては、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、ヘキサメタリン酸ナトリウム、又は、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸(PBTC)、が挙げられる。カルボン酸基を有するキレート剤(以下、「カルボン酸系キレート剤」とも称する)の例としては、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン-N,N′-ジコハク酸(EDDS)、コハク酸、グルタル酸、クエン酸、メルカプトコハク酸、が挙げられる。
【0047】
また、ホスホン酸系キレート剤及びカルボン酸系キレート剤は上記に限定されず、例えば、以下の例でもよい。
ホスホン酸系キレート剤の例には、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(EDTPO)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸及びα-メチルホスホノコハク酸が含まれる。なかでも好ましいものとして、EDTPO、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びジエチレントリアミン五酢酸が挙げられる。特に好ましいホスホン酸系キレート剤として、EDTPO及びジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。カルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸及びトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。キレート剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
[他の添加剤]
本発明の一形態に係る表面処理組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて、他の添加剤を任意の割合で含有していてもよい。ただし、本発明の一形態に係る表面処理組成物の必須成分以外の成分は、異物の原因となりうるため、できる限り添加しないことが望ましい。よって、必須成分以外の成分は、その添加量はできる限り少ないことが好ましく、含まないことがより好ましい。他の添加剤としては、例えば、砥粒、アルカリ、防腐剤、溶存ガス、還元剤、酸化剤及びアルカノールアミン類等が挙げられる。なかでも、異物除去効果のさらなる向上のため、表面処理組成物は、砥粒を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、「砥粒を実質的に含有しない」とは、表面処理組成物全体に対する砥粒の含有量が0.01質量%以下である場合をいう。
なお、上記異物(有機物残渣)の数は、実施例に記載の方法により表面処理を行った後、実施例に記載の方法により測定された値を採用する。
【0049】
[表面処理組成物の製造方法]
上記表面処理組成物の製造方法は特に制限されない。例えば、上記式(1)で表される構成単位を有する重合体と、水と、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の少なくとも一方とを混合することにより製造できる。すなわち、本発明の他の形態によれば、上記式(1)で表される構成単位を有する重合体と、水と、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の少なくとも一方とを混合することを含む、上記表面処理組成物の製造方法もまた提供される。
【0050】
上記式(1)で表される構成単位を有する重合体の種類、アニオン性界面活性剤の種類、ノニオン性界面活性剤の種類、及び添加量等は、前述の通りである。さらに、本発明の一形態に係る表面処理組成物の製造方法においては、必要に応じて、上記グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子(グリセリン系水溶性高分子)、pH調整剤、キレート剤、他の添加剤、水以外の分散媒等をさらに混合してもよい。これらの種類、添加量等は、前述の通りである。
【0051】
上記各成分の添加順、添加方法は特に制限されない。上記各材料を、一括してもしくは別々に、又は段階的にもしくは連続的に加えてもよい。また、混合方法も特に制限されず、公知の方法を用いることができる。好ましくは、上記表面処理組成物の製造方法は、グリセリン由来の構成単位を有する水溶性高分子と、水と、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の少なくとも一方と、必要に応じて添加されるpH調整剤等と、を順次添加し、水中で攪拌することを含む。加えて、上記表面処理組成物の製造方法は、pHが7以上12以下となるように、表面処理組成物のpHを測定し、調整することをさらに含んでいてもよい。
【0052】
[表面処理方法]
本発明の他の一形態は、上記表面処理組成物を用いて研磨済研磨対象物を表面処理することを含む、表面処理方法である。本明細書において、表面処理方法とは、研磨済研磨対象物の表面における異物を低減する方法をいい、広義の洗浄を行う方法である。
本発明の一形態に係る表面処理方法によれば、研磨済研磨対象物の表面に残留する異物を十分に除去することができる。すなわち、本発明の他の一形態によれば、上記表面処理組成物を用いて研磨済研磨対象物を表面処理する、研磨済研磨対象物の表面における異物低減方法が提供される。
【0053】
本発明の一形態に係る表面処理方法は、本発明に係る表面処理組成物を研磨済研磨対象物に直接接触させる方法により行われる。
表面処理方法としては、主として、(I)リンス研磨処理による方法、(II)洗浄処理による方法が挙げられる。すなわち、本発明の一形態に係る表面処理は、リンス研磨又は洗浄によって行われると好ましい。リンス研磨処理及び洗浄処理は、研磨済研磨対象物の表面上の異物(パーティクル、金属汚染、有機物残渣、パッド屑など)を除去し、清浄な表面を得るために実施される。上記(I)及び(II)について、以下、説明する。
【0054】
(I)リンス研磨処理
本発明に係る表面処理組成物は、リンス研磨処理において好適に用いられる。リンス研磨処理は、研磨対象物について最終研磨(仕上げ研磨)を行った後、研磨対象物の表面上の異物の除去を目的として、研磨パッドが取り付けられた研磨定盤(プラテン)上で行われる。このとき、本発明に係る表面処理組成物を研磨済研磨対象物に直接接触させることにより、リンス研磨処理が行われる。その結果、研磨済研磨対象物表面の異物は、研磨パッドによる摩擦力(物理的作用)及び表面処理組成物による化学的作用によって除去される。異物のなかでも、特にパーティクルや有機物残渣は、物理的な作用により除去されやすい。したがって、リンス研磨処理では、研磨定盤(プラテン)上で研磨パッドとの摩擦を利用することで、パーティクルや有機物残渣を効果的に除去することができる。
【0055】
具体的には、リンス研磨処理は、研磨工程後の研磨済研磨対象物表面を研磨装置の研磨定盤(プラテン)に設置し、研磨パッドと研磨済半導体基板とを接触させて、その接触部分に表面処理組成物(リンス研磨用組成物)を供給しながら研磨済研磨対象物と研磨パッドとを相対摺動させることにより行うことができる。
リンス研磨処理は、片面研磨装置、両面研磨装置のいずれを用いても行うことができる。また、上記研磨装置は、研磨用組成物の吐出ノズルに加え、リンス研磨用組成物の吐出ノズルを備えていると好ましい。研磨装置のリンス研磨処理時の稼働条件は特に制限されず、当業者であれば適宜設定可能である。
【0056】
(II)洗浄処理
本発明に係る表面処理組成物は、洗浄処理において好適に用いられる。洗浄処理は、研磨対象物について最終研磨(仕上げ研磨)を行った後、又は、上記リンス研磨処理を行った後、研磨対象物の表面上の異物の除去を目的として行われる。なお、洗浄処理と、上記リンス研磨処理とは、これらの処理を行う場所によって分類され、洗浄処理は、研磨済研磨対象物を研磨定盤(プラテン)上から取り外した後に行われる表面処理である。洗浄処理においても、本発明に係る表面処理組成物を研磨済研磨対象物に直接接触させて、当該対象物の表面上の異物を除去することができる。
【0057】
洗浄処理を行う方法の一例として、(i)研磨済研磨対象物を保持した状態で、洗浄ブラシを研磨済研磨対象物の片面又は両面とを接触させて、その接触部分に表面処理組成物を供給しながら洗浄対象物の表面を洗浄ブラシで擦る方法、(ii)研磨済研磨対象物を表面処理組成物中に浸漬させ、超音波処理や攪拌を行う方法(ディップ式)等が挙げられる。かかる方法において、研磨対象物表面の異物は、洗浄ブラシによる摩擦力又は超音波処理や攪拌によって発生する機械的力、及び表面処理組成物による化学的作用によって除去される。
【0058】
上記(i)の方法において、表面処理組成物(洗浄用組成物)の研磨済研磨対象物への接触方法としては、特に限定されないが、ノズルから研磨済研磨対象物上に表面処理組成物を流しながら研磨済研磨対象物を高速回転させるスピン式、研磨済研磨対象物に表面処理組成物を噴霧して洗浄するスプレー式などが挙げられる。
短時間でより効率的な汚染除去ができる点からは、洗浄処理は、スピン式やスプレー式を採用することが好ましく、スピン式であることがさらに好ましい。
【0059】
このような洗浄処理を行うための装置としては、カセットに収容された複数枚の研磨済研磨対象物を同時に表面処理するバッチ式洗浄装置、1枚の研磨済研磨対象物をホルダーに装着して表面処理する枚葉式洗浄装置などがある。洗浄時間の短縮等の観点からは、枚葉式洗浄装置を用いる方法が好ましい。
さらに、洗浄処理を行うための装置として、研磨定盤(プラテン)から研磨済研磨対象物を取り外した後、当該対象物を洗浄ブラシで擦る洗浄用設備を備えている研磨装置が挙げられる。このような研磨装置を用いることにより、研磨済研磨対象物の洗浄処理を、より効率よく行うことができる。
【0060】
かような研磨装置としては、研磨済研磨対象物を保持するホルダー、回転数を変更可能なモータ、洗浄ブラシ等を有する一般的な研磨装置を使用することができる。研磨装置としては、片面研磨装置又は両面研磨装置のいずれを用いてもよい。なお、CMP工程の後、リンス研磨工程を行う場合、当該洗浄処理は、リンス研磨工程にて用いた研磨装置と同様の装置を用いて行うことが、より効率的であり好ましい。
洗浄ブラシとしては、特に制限されないが、好ましくは、樹脂製ブラシを使用する。樹脂製ブラシの材質は、特に制限されないが、例えばPVA(ポリビニルアルコール)を使用するのが好ましい。そして、洗浄ブラシとしては、PVA製スポンジを用いることが特に好ましい。
【0061】
洗浄条件にも特に制限はなく、洗浄対象物の種類、ならびに除去対象とする有機物残渣の種類及び量に応じて、適宜設定することができる。例えば、洗浄ブラシの回転数は10rpm以上200rpm以下、洗浄対象物の回転数は、10rpm以上100rpm以下、洗浄対象物にかける圧力(研磨圧力)は、0.5psi以上10psi以下がそれぞれ好ましい。洗浄ブラシに表面処理組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法(掛け流し)が採用される。この供給量に制限はないが、洗浄ブラシ及び洗浄対象物の表面が常に表面処理組成物で覆われていることが好ましく、10mL/分以上5000mL/分以下であることが好ましい。洗浄時間も特に制限されないが、本発明の一形態に係る表面処理組成物を用いる工程については5秒間以上180秒間以下であることが好ましい。このような範囲であれば、異物をより効果的に除去することが可能である。
【0062】
洗浄の際の表面処理組成物の温度は、特に制限されず、通常は室温(25℃)でよいが、性能を損なわない範囲で、40℃以上70℃以下程度に加温してもよい。
上記(ii)の方法において、浸漬による洗浄方法の条件については、特に制限されず、公知の手法を用いることができる。
上記(i)、(ii)の方法による洗浄処理を行う前、後又はその両方において、水による洗浄を行ってもよい。
また、洗浄後の研磨済研磨対象物(洗浄対象物)は、スピンドライヤ等により表面に付着した水滴を払い落として乾燥させることが好ましい。また、エアブロー乾燥により洗浄対象物の表面を乾燥させてもよい。
【0063】
[半導体基板の製造方法]
本発明の一形態に係る表面処理方法は、研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板であるとき、好適に適用可能である。すなわち、本発明の他の一形態によれば、研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板であり、当該研磨済半導体基板を、上記表面処理組成物を用いて表面処理することを含む、半導体基板の製造方法もまた提供される。
かかる製造方法が適用される半導体基板の詳細については、上記表面処理組成物によって表面処理される研磨済研磨対象物の説明の通りである。
また、半導体基板の製造方法としては、研磨済半導体基板の表面を、本発明の一形態に係る表面処理組成物を用いて表面処理する工程(表面処理工程)を含むものであれば特に制限されない。かかる製造方法として、例えば、研磨済半導体基板を形成するための研磨工程及び洗浄工程を有する方法が挙げられる。また、他の一例としては、研磨工程及び洗浄工程に加え、研磨工程及び洗浄工程の間に、リンス研磨工程を有する方法が挙げられる。以下、これらの各工程について説明する。
【0064】
<研磨工程>
半導体基板の製造方法に含まれうる研磨工程は、半導体基板を研磨して、研磨済半導体基板を形成する工程である。
研磨工程は、半導体基板を研磨する工程であれば特に制限されないが、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)工程であることが好ましい。また、研磨工程は、単一の工程からなる研磨工程であっても複数の工程からなる研磨工程であってもよい。複数の工程からなる研磨工程としては、例えば、予
備研磨工程(粗研磨工程)の後に仕上げ研磨工程を行う工程や、1次研磨工程の後に1回又は2回以上の2次研磨工程を行い、その後に仕上げ研磨工程を行う工程等が挙げられる。本発明に係る表面処理組成物を用いた表面処理工程は、上記仕上げ研磨工程後に行われると好ましい。
【0065】
研磨用組成物としては、半導体基板の特性に応じて、公知の研磨用組成物を適宜使用することができる。研磨用組成物としては、特に制限されないが、例えば、砥粒、酸塩、分散媒、及び酸を含むもの等を好ましく用いることができる。かかる研磨用組成物の具体例としては、セリア、ポリアクリル酸、水及びマレイン酸を含む研磨用組成物等が挙げられる。
研磨装置としては、研磨対象物を保持するホルダーと回転数を変更可能なモータ等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。研磨装置としては、片面研磨装置又は両面研磨装置のいずれを用いてもよい。
【0066】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、及び多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、研磨液が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
研磨条件にも特に制限はなく、例えば、研磨定盤の回転数、ヘッド(キャリア)回転数は、10rpm以上100rpm以下が好ましく、研磨対象物にかける圧力(研磨圧力)は、0.5psi以上10psi以下が好ましい。研磨パッドに研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法(掛け流し)が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨用組成物で覆われていることが好ましく、10mL/分以上5000mL/分以下であることが好ましい。研磨時間も特に制限されないが、研磨用組成物を用いる工程については5秒間以上180秒間以下であることが好ましい。
【0067】
<表面処理工程>
表面処理工程とは、本発明に係る表面処理組成物を用いて研磨済研磨対象物の表面における異物を低減する工程をいう。半導体基板の製造方法において、リンス研磨工程の後、表面処理工程としての洗浄工程が行われてもよいし、リンス研磨工程のみ、又は洗浄工程のみが行われてもよい。
【0068】
(リンス研磨工程)
リンス研磨工程は、半導体基板の製造方法において、研磨工程及び洗浄工程の間に設けられてもよい。リンス研磨工程は、本発明の一形態に係る表面処理方法(リンス研磨処理方法)によって、研磨済研磨対象物(研磨済半導体基板)の表面における異物を低減する工程である。
研磨装置及び研磨パッド等の装置、ならびに研磨条件については、研磨用組成物を供給する代わりに本発明に係る表面処理組成物を供給する以外は、上記研磨工程と同様の装置及び条件を適用することができる。
リンス研磨工程で用いられるリンス研磨方法の詳細は、上記リンス研磨処理に係る説明に記載の通りである。
【0069】
(洗浄工程)
洗浄工程は、半導体基板の製造方法において、研磨工程の後に設けられてもよいし、リンス研磨工程の後に設けられてもよい。洗浄工程は、本発明の一形態に係る表面処理方法(洗浄方法)によって、研磨済研磨対象物(研磨済半導体基板)の表面における異物を低減する工程である。
洗浄工程で用いられる洗浄方法の詳細は、上記洗浄方法に係る説明に記載の通りである。
【実施例0070】
本発明を、以下の実施例及び比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)/相対湿度40~50%RHの条件下で行われた。
なお、各高分子化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した重量平均分子量(ポリエチレングリコール換算)の値を用い、より具体的には、下記の装置及び条件によって測定した。
【0071】
GPC装置:株式会社島津製作所製
型式:Prominence + ELSD検出器(ELSD-LTII)
カラム:VP-ODS(株式会社島津製作所製)
移動相 A:MeOH
B:酢酸1%水溶液
流量:1mL/分
検出器:ELSD temp.40℃、Gain 8、N2GAS 350kPa
オーブン温度:40℃
注入量:40μL
【0072】
<表面処理組成物の調製>
[実施例1:表面処理組成物(A-1)の調製]
ポリ-N-ビニルアセトアミド(重量平均分子量(Mw):50000;式(1)で表される構成単位が100mol%)1.25g/L、アニオン性界面活性剤としてのドデシル硫酸アンモニウム(重量平均分子量(Mw):288)1.00g/Lをそれぞれ水(脱イオン水)と混合し、pH調整剤としての酢酸アンモニウムをpHが8.7となる量で加え、表面処理組成物(A-1)を調製した。表面処理組成物(A-1)(液温:25℃)のpHについては、pHメータ(株式会社堀場製作所製 製品名:LAQUA(登録商標))により測定した。なお、表1中、PNVAは、「ポリ-N-ビニルアセトアミド」を示す。
【0073】
[実施例2~10及び比較例1~6:表面処理組成物(A-2)~(A-10)、及び(a-1)~(a-6)の調製]
表1に示す種類、分子量、及び含有量の各成分を用い、各表面処理組成物のpHを表1に示すpHに調整したこと以外は、実施例1と同様に操作して、各表面処理組成物を調製した。表1中、「-」はその成分を用いなかったことを示す。表1中、PSS-PAは、「ポリスチレンスルホン酸-アクリル酸共重合体」を示す。
【0074】
なお、PSS-PAは、アニオン性の高分子であり、界面活性剤ではない。すなわち、PSS-PAは、アニオン性の界面活性剤と比べて、疎水性部のアルキル鎖が長く、疎水性部の分子量が大きいため、界面活性剤として機能しない。
表1において、ドデシル硫酸アンモニウムはアニオン性界面活性剤に分類される。ポリグリセリンラウリルエーテルは、ノニオン性界面活性剤に分類される。ポリグリセリンラウリルエーテルは、ドデシル硫酸アンモニウムに比べて、全体の分子量は大きいが、ポリグリセリンラウリルエーテルの疎水性部はドデシル硫酸アンモニウムの疎水性部と同程度に低分子である。このため、ポリグリセリンラウリルエーテルは、界面活性剤として機能する。
【0075】
<評価>
<研磨済研磨対象物(表面処理対象物)の準備>
下記化学的機械的研磨(CMP)工程によって研磨された後の、研磨済窒化珪素基板及び研磨済ポリシリコン基板、又は、必要に応じてさらに下記リンス工程によって処理された後の研磨済窒化珪素基板及び研磨済ポリシリコン基板を、表面処理対象物として準備した。
【0076】
[CMP工程]
半導体基板である窒化珪素基板及びポリシリコン基板について、研磨用組成物M(組成;セリア、一次粒子径60nm、二次粒子径100nm)1質量%、濃度30質量%のマレイン酸水溶液0.18質量%、ポリアクリル酸(分子量:6,000)0.25質量%、溶媒:水)を使用し、それぞれ下記の条件にて研磨を行った。ここで、窒化珪素基板及びポリシリコン基板は、300mmウエハを使用した。
【0077】
(研磨装置及び研磨条件)
研磨装置:荏原製作所社製 FREX 300E
研磨パッド:フジボウ株式会社製 ソフトパッド H800
研磨圧力:2.0psi(1psi=6894.76Pa、以下同様)
研磨定盤回転数:90rpm
ヘッド回転数:90rpm
研磨用組成物の供給:掛け流し
研磨用組成物供給量:200mL/分
研磨時間:60秒間
【0078】
[リンス研磨処理工程]
上記CMP工程によって研磨された後の研磨済窒化珪素基板及び研磨済ポリシリコン基板について、研磨済の各基板を研磨定盤(プラテン)上から取り外した。続いて、同じ研磨装置内で、当該研磨済の各基板を別の研磨定盤(プラテン)上に取り付け、下記の条件にて、上記調製した各表面処理組成物を用い、各基板表面に対してリンス研磨処理を行った。
【0079】
(研磨装置及び研磨条件)
研磨装置:荏原製作所社製 FREX 300E
研磨パッド:フジボウ株式会社製 ソフトパッド H800
研磨圧力:1.0psi(1psi=6894.76Pa、以下同様)
研磨定盤回転数:60rpm
ヘッド回転数:60rpm
研磨用組成物の供給:掛け流し
研磨用組成物供給量:300mL/分
研磨時間:60秒間
(水洗工程)
上記得られたリンス研磨処理済の各基板について、リンス研磨後、洗浄部にて、PVAブラシを用いて脱イオン水(DIW)を掛けながら、60秒間洗浄した。その後、30秒間スピンドライヤにて乾燥させた。
【0080】
<評価>
上記得られた水洗工程後の各基板について、下記項目について測定し評価を行った。評価結果を表2に示す。
[ディフェクト数の測定]
上記得られた水洗工程後の表面処理後の窒化珪素基板(38nm超)及びポリシリコン基板(55nm超)のディフェクト数を測定した。ディフェクト数の測定にはKLA TENCOR社製ウェーハ欠陥検査装置SP-5を使用した。測定は、表面処理後の各基板表面の外周端部から幅3mmの部分(外周端部を0mmとしたときに、幅0mmから幅3mmまでの部分)を除外した残りの部分について測定を行った。
各表面処理組成物について、表面処理対象物として研磨済窒化珪素基板を用いた場合及び研磨済ポリシリコン基板を用いた場合の評価結果は、表1に示す通りである。
【0081】
【0082】
上記表1から明らかなように、アルカリ性である実施例の表面処理組成物は、アルカリ性である比較例の表面処理組成物に比べて、研磨済研磨対象物表面のディフェクト数を低減させうることが分かった。
具体的には、ポリ-N-ビニルアセトアミドと、ドデシル硫酸アンモニウムとを含み、pHが7.5以上12以下である実施例1~9の表面処理組成物は、ポリ-N-ビニルアセトアミドを含み、ドデシル硫酸アンモニウムは含まず、pHが9.3である比較例5、6と比べて、特に研磨済窒化珪素基板表面のディフェクト数を低減できることが分かった。また、ポリ-N-ビニルアセトアミドと、ポリグリセリンラウリルエーテルとを含み、pHが9.3である実施例10の表面処理組成物は、ポリ-N-ビニルアセトアミドを含み、ポリグリセリンラウリルエーテルは含まず、pHが9.3である比較例5、6と比べて、研磨済窒化珪素基板表面のディフェクト数を低減できることが分かった。
【0083】
この結果から、アルカリ性の表面処理組成物において、ドデシル硫酸アンモニウム又はポリグリセリンラウリルエーテルは、研磨済窒化珪素基板表面のディフェクト数を低減させる効果が大きいことが分かった。ディフェクト数低減のメカニズムとして、ドデシル硫酸アンモニウム又はポリグリセリンラウリルエーテルは、研磨済窒化珪素基板表面に付着したパーティクルと有機残渣とを分散させ、除去したものと考えられる。
【0084】
また、上記の実施例1~10の表面処理組成物は、ポリ-N-ビニルアセトアミドを含まず、ドデシル硫酸アンモニウム又はポリグリセリンラウリルエーテルは含み、pHが9.3である比較例3、4と比べて、研磨済窒化珪素基板表面及び研磨済ポリシリコン基板表面の各ディフェクト数を低減できることが分かった。特に、実施例1~10は、比較例3、4と比べて、研磨済ポリシリコン基板表面のディフェクト数の低減効果が大きい。この結果から、アルカリ性の表面処理組成物において、ポリ-N-ビニルアセトアミドは、研磨済窒化珪素基板表面及び研磨済ポリシリコン基板表面の各ディフェクト数を低減する効果があり、特に、研磨済ポリシリコン基板表面のディフェクト数を低減させる効果が大きいことが分かった。ディフェクト数低減のメカニズムとして、ポリ-N-ビニルアセトアミドは、研磨済ポリシリコン基板表面を親水化し、有機残渣を除去したものと考えられる。
【0085】
以上から、アルカリ性の表面処理組成物において、ポリ-N-ビニルアセトアミドと、ドデシル硫酸アンモニウム又はポリグリセリンラウリルエーテルと、を併用することで、研磨済窒化珪素基板表面及び研磨済ポリシリコン基板表面の各ディフェクト(例えば、有機物残渣)を十分に除去できることが分かった。