(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156546
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】マイクロレンズ形成用組成物、当該組成物を用いたマイクロレンズの製造方法、硬化膜、固体撮像素子および撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20221006BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20221006BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20221006BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20221006BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20221006BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G03F7/027 515
G03F7/004 501
G03F7/004 503
G02B3/00 A
G02B1/04
C08F290/14
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060290
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 一幸
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J127
【Fターム(参考)】
2H197CA03
2H197CA04
2H197CA05
2H197CE01
2H197HA03
2H197HA08
2H197JA24
2H197JA30
2H225AC36
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2H225AE12P
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2H225CC13
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4J127BB041
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4J127CC112
4J127DA52
4J127FA17
4J127FA24
(57)【要約】
【課題】使用できる樹脂の限定が少なく、かつ現像時に残渣が生じにくいマイクロレンズ形成用組成物を提供すること。
【解決手段】本発明のマイクロレンズ形成用組成物は、(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(B)少なくとも1つ以上のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーと、(C)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と(D)光重合開始剤と、(E)紫外線吸収剤と、(F)溶剤と、を含む。前記(F)紫外線吸収剤の質量は、固形分の全質量に対して3質量%以上20質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロレンズパターンを形成するためのマイクロレンズ形成用組成物であって、
(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、
(B)少なくとも1つ以上のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーと、
(C)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、
(D)光重合開始剤と、
(E)紫外線吸収剤と、
(F)溶剤と、
を含み、
前記(E)紫外線吸収剤の含有量は、固形分の全質量に対して3質量%以上20質量%以下である、マイクロレンズ形成用組成物。
【請求項2】
前記(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(1)で表される樹脂である、請求項1に記載のマイクロレンズ形成用組成物。
【化1】
(式(1)中、Arは、それぞれ独立に炭素数が6~14の芳香族炭化水素基であり、結合している水素原子の一部分は炭素数が1~10の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数が6~10のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数が3~10のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数が1~5のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される基で置換されていてもよい。R
1は、それぞれ独立に炭素数が2~4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立に0~3の数である。Gは、それぞれ独立に(メタ)アクリロイル基、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される置換基であり、Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、それぞれ独立に水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、1個以上は下記一般式(4)で表される置換基である。nは平均値が1~20の数である。)
【化2】
【化3】
(式(2)、(3)中、R
2は水素原子またはメチル基であり、R
3は炭素数が2~10の2価のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R
4は炭素数が2~20の2価の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは0~10の数である。)
【化4】
(式(4)中、Wは2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数である。)
【請求項3】
前記(E)紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物およびトリアジン化合物からなる群から選ばれる、請求項1または請求項2に記載のマイクロレンズ形成用組成物。
【請求項4】
前記(E)紫外線吸収剤は、エチレン性不飽和基を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のマイクロレンズ形成用組成物。
【請求項5】
前記(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が1000以上40000以下であり、酸価が50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロレンズ形成用組成物。
【請求項6】
(G)成分として増感剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロレンズ形成用組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロレンズ形成用組成物を塗布し、乾燥させて、マイクロレンズ形成用組成物の塗膜を形成する塗膜層形成工程と、
前記塗膜の一部にフォトマスクを介して放射線を照射する露光工程と、
前記放射線を照射された塗膜を現像し未露光部を除去する現像工程と、
前記現像後の露光部を熱フローして、前記露光部をマイクロレンズ形状に加工しつつ、加熱硬化する熱フロー工程と、
を含む、マイクロレンズの製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロレンズ形成用組成物を塗布し、放射線を照射し、硬化させて、マイクロレンズ形成用組成物の樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
前記樹脂層の表面にエッチングレジスト層を形成する工程と、
前記エッチングレジスト層の一部にフォトマスクを介して放射線を照射する露光工程と、
前記放射線を照射されたエッチングレジスト層を現像する現像工程と、
前記現像後の露光部を熱フローして、前記露光部をマイクロレンズ形状に加工する熱フロー工程と、
前記熱フロー後の前記露光部をマスク層として前記樹脂層をドライエッチングし、前記マスク層の形状を前記樹脂層に転写する転写工程と、
を含む、マイクロレンズの製造方法。
【請求項9】
レンズ材料層上に、請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロレンズ形成用組成物を塗布し、乾燥させて、マイクロレンズ形成用組成物の塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜の一部にフォトマスクを介して放射線を照射する露光工程と、
前記放射線を照射された塗膜を現像し未露光部を除去する現像工程と、
前記現像後の塗膜を熱フローして、前記塗膜をマイクロレンズ形状に加工しつつ加熱硬化して、マイクロレンズパターンを有するマスク層を形成するマスク層形成工程と、
前記レンズ材料層および前記マスク層をドライエッチングして、前記マスク層の形状を前記レンズ材料層に転写する転写工程と、
を含む、マイクロレンズの製造方法。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロレンズ形成用組成物を硬化してなる硬化膜。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化膜からなるマイクロレンズ。
【請求項12】
請求項11に記載のマイクロレンズを有する固体撮像素子。
【請求項13】
請求項12に記載の固体撮像素子を有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズ形成用組成物、当該組成物を用いたマイクロレンズの製造方法、当該組成物を硬化してなる硬化膜、当該マイクロレンズを有する固体撮像素子、および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、カメラ付きの携帯電話等の撮像装置には、CCD(charge coupled device)イメージセンサやCMOS(complementaly metal-oxide semiconductor)イメージセンサなどの固体撮像素子が搭載されている。上記イメージセンサは、集光率の向上を目的として、微細な集光レンズ(マイクロレンズ)を有する。近年では、上記イメージセンサの高画素化、高感度化、微細化が求められており、それらに対応し得るマイクロレンズ用の材料の開発が行われている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、ガラス転移温度(Tg)が70℃以下であるアルカリ可溶性樹脂および感光剤を含む、マイクロレンズパターンの形成に用いられる樹脂組成物が開示されている。特許文献1によると、上記樹脂組成物は、低温(60~100℃)の熱フローによっても微細なドットパターンを形成することができるとされている。特許文献1には、上記樹脂組成物は、露光部を除去するポジ型のパターン形成により、マイクロレンズパターンを形成できると記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、シロキサン樹脂、金属含有粒子、およびエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物を含むシロキサン樹脂組成物が開示されている。特許文献2によると、上記シロキサン樹脂組成物は、金属含有粒子に含まれるTiとZrの比率を特定の範囲にすることにより、シロキサン樹脂組成物の硬化物の高屈折率を維持しつつ、耐光性をより高めることができるとされている。特許文献2には、上記シロキサン樹脂組成物は、未露光部を除去するネガ型のパターン形成により、マイクロレンズパターンを形成できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-100793号公報
【特許文献2】特開2019-173016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2に記載のように、マイクロレンズ形成用の樹脂組成物としては、ポジ型のパターン形成ができる樹脂組成物およびネガ型のパターン形成ができる樹脂組成物の両方が知られている。
【0007】
しかしながら、本発明者らの知見によると、特許文献1や特許文献2などに記載の従来の樹脂組成物は、現像時に残渣が生じやすいという問題があった。また、レンズ間距離が狭いときには、この残渣によりマイクロレンズ同士が繋がってしまうこともあった。一方で、マイクロレンズ形成用の樹脂組成物には、形成したマイクロレンズパターンが基板への良好な密着性を有することも要求される。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、使用できる樹脂の限定が少なく、現像時に残渣が生じにくく、かつ基板への密着性が良好なマイクロレンズパターンを形成できるマイクロレンズ形成用組成物、当該組成物を用いたマイクロレンズの製造方法、当該組成物を硬化してなる硬化膜、当該マイクロレンズを有する固体撮像素子および当該固体撮像素子を有する撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るマイクロレンズ形成用組成物は、マイクロレンズパターンを形成するためのマイクロレンズ形成用組成物であって、前記マイクロレンズ形成用組成物は、(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(B)少なくとも1つ以上のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーと、(C)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と(D)光重合開始剤と、(E)紫外線吸収剤と、(F)溶剤と、を含み、前記(E)紫外線吸収剤の含有量は、固形分の全質量に対して3質量%以上20質量%以下である。
【0010】
本発明に係るマイクロレンズの製造方法は、上記マイクロレンズ形成用組成物を塗布し、乾燥させて、マイクロレンズ形成用組成物の塗膜を形成する塗膜層形成工程と、前記塗膜の一部にフォトマスクを介して放射線を照射する露光工程と、前記放射線を照射された塗膜を現像し未露光部を除去する現像工程と、前記現像後の露光部を熱フローして、前記露光部をマイクロレンズ形状に加工しつつ、加熱硬化する熱フロー工程と、を含む。
【0011】
本発明に係る別のマイクロレンズの製造方法は、上記マイクロレンズ形成用組成物を塗布し、放射線を照射し、硬化させて、マイクロレンズ形成用組成物の樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の表面にエッチングレジスト層を形成する工程と、前記エッチングレジスト層の一部にフォトマスクを介して放射線を照射する露光工程と、前記放射線を照射されたエッチングレジスト層を現像する現像工程と、前記現像後の露光部を熱フローして、前記露光部をマイクロレンズ形状に加工する熱フロー工程と、前記熱フロー後の前記露光部をマスク層として前記樹脂層をドライエッチングし、前記マスク層の形状を前記樹脂層に転写する転写工程と、を含む。
【0012】
本発明に係る別のマイクロレンズの製造方法は、レンズ材料層上に、上記マイクロレンズ形成用組成物を塗布し、乾燥させて、マイクロレンズ形成用組成物の塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記塗膜の一部にフォトマスクを介して放射線を照射する露光工程と、前記放射線を照射された塗膜を現像し未露光部を除去する現像工程と、前記現像後の塗膜を熱フローして、前記塗膜をマイクロレンズ形状に加工しつつ加熱硬化して、マイクロレンズパターンを有するマスク層を形成するマスク層形成工程と、前記レンズ材料層および前記マスク層をドライエッチングして、前記マスク層の形状を前記レンズ材料層に転写する転写工程と、を含む。
【0013】
本発明に係る硬化膜は、上記マイクロレンズ形成用組成物を硬化してなる。
【0014】
本発明に係るマイクロレンズは、上記硬化膜からなる。
【0015】
本発明に係る固体撮像素子は、上記マイクロレンズを備える。
【0016】
本発明に係る撮像装置は、上記固体撮像素子を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、使用できる樹脂の限定が少なく、かつ現像時に残渣が生じにくいマイクロレンズ形成用組成物、当該組成物を用いたマイクロレンズの製造方法、当該組成物を硬化してなる硬化膜、当該マイクロレンズを備えた固体撮像素子および当該固体撮像素子を有する撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本発明において、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。
【0019】
1.マイクロレンズ形成用組成物
本発明の一実施形態に係るマイクロレンズ形成用組成物は、(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(B)少なくとも1つ以上のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーと、(C)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(D)光重合開始剤と、(E)紫外線吸収剤と、(F)溶剤と、を含む。
【0020】
なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸の両方を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方を意味し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方を意味する。
【0021】
[(A)成分]
(A)成分は、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂である。(A)成分を含むことにより、マイクロレンズ形成用組成物にアルカリ現像に対する可溶性を付与することができる。
【0022】
(A)成分である不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、1分子中に重合性不飽和基と、アルカリ可溶性を発現するための酸性基を有していることが好ましく、重合性不飽和基とカルボキシ基との両方を有していることがより好ましい。上記樹脂であれば、特に限定されることなく、広く使用することができる。
【0023】
基材への密着性を高める観点から、上記(A)成分は、下記一般式(1)で表される不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(以下、単に、「一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂」ともいう)であることが好ましい。
【0024】
【0025】
式(1)中、Arは、それぞれ独立に炭素数が6~14の芳香族炭化水素基であり、結合している水素原子の一部分は炭素数が1~10の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数が6~10のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数が3~10のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数が1~5のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される基で置換されていてもよい。R1は、それぞれ独立に炭素数が2~4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立に0~3の数である。Gは、それぞれ独立に(メタ)アクリロイル基、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される置換基であり、Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、それぞれ独立に水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、1個以上は下記一般式(4)で表される置換基である。nは平均値が1~20の数である。
【0026】
【0027】
【0028】
式(2)、(3)中、R2は水素原子またはメチル基であり、R3は炭素数が2~10の2価のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R4は炭素数が2~20の2価の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは0~10の数である。
【0029】
【0030】
式(4)中、Wは2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数である。
【0031】
次に、上記一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の製造方法について詳細に説明する。
【0032】
先ず、下記一般式(5)で表される、1分子内にいくつかのオキシアルキレン基を有するビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a)(以下、単に「一般式(5)で表されるエポキシ化合物(a)」ともいう)に、(メタ)アクリル酸、下記一般式(6)または下記一般式(7)で表される(メタ)アクリル酸誘導体のいずれか一方もしくは両方を反応させて、重合性不飽和基を含有するジオール化合物を得る。なお、上記ビスアリールフルオレン骨格は、ビスナフトールフルオレン骨格またはビスフェノールフルオレン骨格であることが好ましい。
【0033】
【0034】
式(5)中、Arは、それぞれ独立に、炭素数が6~14の芳香族炭化水素基であり、結合している水素原子の一部分は炭素数が1~10のアルキル基、炭素数が6~10のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数が3~10のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数が1~5のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される基で置換されていてもよい。R1は、それぞれ独立に、炭素数が2~4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立に、0~3の数である。
【0035】
【0036】
【0037】
式(6)、(7)中、R2は水素原子またはメチル基であり、R3は炭素数が2~10の2価のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R4は炭素数が2~20の2価の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは0~10の数である。
【0038】
上記一般式(5)で表されるエポキシ化合物(a)と上記(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸誘導体との反応は、公知の方法を使用することができる。たとえば、特開平4-355450号公報には、2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用することにより、重合性不飽和基を含有するジオール化合物が得られることが記載されている。本発明において、上記反応で得られる化合物は、下記一般式(8)で表される重合性不飽和基を含有するジオール(d)(以下、単に「一般式(8)で表されるジオール(d)」ともいう)である。
【0039】
【0040】
式(8)中、Arは、それぞれ独立に、炭素数が6~14の芳香族炭化水素基であり、結合している水素原子の一部分は炭素数が1~10のアルキル基、炭素数が6~10のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数が3~10のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数が1~5のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される基で置換されていてもよい。Gは、それぞれ独立に、(メタ)アクリロイル基、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される置換基であり、R1は、それぞれ独立して、炭素数が2~4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立して、0~3の数である。
【0041】
【0042】
【0043】
式(2)、(3)中、R2は水素原子またはメチル基であり、R3は炭素数が2~10の2価のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R4は炭素数が2~20の2価の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは0~10の数である。
【0044】
上記一般式(8)で表されるジオール(d)の合成、およびそれに続く多価カルボン酸またはその無水物を反応させての、上記一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の製造においては、通常、溶媒中で必要に応じて触媒を用いて反応を行う。
【0045】
溶媒の例には、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の高沸点のエーテル系もしくはエステル系の溶媒、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒等が含まれる。なお、使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、例えば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いることが好ましい。
【0046】
また、エポキシ基とカルボキシ基またはヒドロキシ基との反応においては触媒を使用することが好ましい。たとえば、特開平9-325494号公報には、テトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類の触媒が記載されている。
【0047】
次に、上記一般式(8)で表されるジオール(d)と、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはその酸無水物(b)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とを反応させることにより、1分子中に重合性不飽和基とアルカリ可溶性を発現するための酸性基を有する、上記一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を得ることができる。
【0048】
上記一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を合成するために使用される酸成分は、上記一般式(8)で表されるジオール(d)分子中の水酸基と反応し得る多価の酸成分であり、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)とテトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とを併用することが必要である。上記酸成分のカルボン酸残基は、飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基のいずれでもよい。また、これらのカルボン酸残基には-O-、-S-、カルボニル基等のヘテロ元素を含む結合を含んでいてもよい。
【0049】
上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)の例には、鎖式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、脂環式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、芳香族ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、またはそれらの酸一無水物等が含まれる。
【0050】
上記鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等、および任意の置換基が導入された上記鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸が含まれる。
【0051】
また、上記脂環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸、クロレンド酸、ヘキサヒドロトリメリット酸等、および任意の置換基が導入された上記脂環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸等が含まれる。
【0052】
また、上記芳香族ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入された上記芳香族ジカルボン酸またはトリカルボン酸が含まれる。
【0053】
上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはこれらの酸一無水物の中では、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テトラヒドロフタル酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸またはこれらの酸一無水物がより好ましい。
【0054】
また、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはその酸無水物(b)としては、酸一無水物を用いることが好ましい。上述したジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
また、上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)の例には、鎖式炭化水素テトラカルボン酸、脂環式炭化水素テトラカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸、またはそれらの酸二無水物等が含まれる。
【0056】
上記鎖式炭化水素テトラカルボン酸の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸、および脂環式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された上記鎖式炭化水素テトラカルボン酸等が含まれる。
【0057】
また、上記脂環式炭化水素テトラカルボン酸の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸、および鎖式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された上記脂環式テトラカルボン酸等が含まれる。
【0058】
また、芳香族テトラカルボン酸の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸等が含まれる。
【0059】
また、ビス無水トリメリット酸アリールエステル類を用いることもできる。ビス無水トリメリット酸アリールエステル類とは、例えば、国際公開第2010/074065号に記載された方法で製造される化合物群であり、構造的には芳香族ジオール(ナフタレンジオール、ビフェノール、ターフェニルジオール等)の2個のヒドロキシ基と2分子の無水トリメリット酸のカルボキシ基が反応してエステル結合した形の酸二無水物である。これらの化合物を以下、芳香族ジオールのビス無水トリメリット酸エステルと記載する。
【0060】
上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物の中では、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸が好ましく、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸がより好ましい。また、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)としては、酸二無水物を用いることが好ましい。さらに、ナフタレンジオールのビス無水トリメリット酸エステルも好ましく用いることができる。なお、上述したテトラカルボン酸またはその酸二無水物、および芳香族ジオールのビス無水トリメリット酸エステルは、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
上記一般式(8)で表されるジオール(d)と酸成分(b)および(c)との反応方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。たとえば、特開平9-325494号公報には、反応温度が90~140℃でエポキシ(メタ)アクリレートとテトラカルボン酸二無水物を反応させる方法が記載されている。
【0062】
ここで、化合物の末端がカルボキシ基となるように、重合性不飽和基を含有するジオール(d)、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、テトラカルボン酸二無水物(c)とのモル比が(d):(b):(c)=1.0:0.01~1.0:0.2~1.0となるように反応させることが好ましい。
【0063】
たとえば、酸一無水物(b)、酸二無水物(c)を用いる場合には、重合性不飽和基を含有するジオール(d)に対する酸成分の量〔(b)/2+(c)〕のモル比[(d)/〔(b)/2+(c)〕]が0.5~1.0となるように反応させることが好ましい。ここで、モル比が0.5以上の場合には、未反応の酸無水物の含有量が過剰になるのを抑制できることから、アルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性を高めることができる。また、モル比が1.0以下である場合には、未反応の重合性不飽和基を含有するジオールの含有量が過剰になるのを抑制できることから、アルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性を高めることができる。なお、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価、分子量を調整する目的で、(b)、(c)および(d)の各成分のモル比は、上述の範囲で任意に変更することができる。
【0064】
本発明において、(A)成分である一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の含有量は、固形分の全質量に対して10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、30質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。(A)成分の含有量が、10質量%以上とすることにより、微細なパターンであっても、現像密着性に優れ、パターンの剥離が生じるのを抑制でき、90質量%以下とすることにより、良好な光硬化性を示し、現像時の露光部、未露光部のコントラストに優れ、十分なフォトリソグラフィ性を得ることができる。
【0065】
また、上記一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価は、50mgKOH/g以上200mgKOH/gであることが好ましく、60mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価が50mgKOH/g以上である場合には、アルカリ現像時に残渣が残りにくくなり、200mgKOH/g以下である場合には、アルカリ現像液の浸透が早くなり過ぎないので、剥離現像を抑制することができる。なお、酸価は、例えば、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めることができる。
【0066】
また、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1000以上40000以下であることが好ましく、1500以上30000以下であることがより好ましく、2000以上15000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量(Mw)が1000以上の場合には、微細なパターンであっても、基板からパターン剥離が生じるのを抑制できる。また、重量平均分子量(Mw)が40000以下である場合には、未露光部のアルカリ現像液への溶解性が向上し、残渣の発生を抑制できる。なお、重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製)で求めることができる。
【0067】
また、(A)成分として好ましい樹脂の別の例には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体であって、(メタ)アクリロイル基およびカルボキシ基を有する樹脂が含まれる。上記樹脂の例には、グリシジル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル酸エステル類を溶剤中で共重合させて得られた共重合体に、(メタ)アクリル酸を反応させ、最後にジカルボン酸またはトリカルボン酸の無水物を反応させて得られる不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂が含まれる。上記共重合体は、特開2014-111722号公報に示されている、両端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化されたジエステルグリセロールに由来する繰返し単位20~90モル%、およびこれと共重合可能な1種類以上の重合性不飽和化合物に由来する繰返し単位10~80モル%で構成され、数平均分子量(Mn)が2000~20000かつ酸価が35~120mgKOH/gである共重合体、および特開2018-141968号公報に示されている、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来するユニットと、(メタ)アクリロイル基およびジまたはトリカルボン酸残基を有するユニットと、を含む、重量平均分子量(Mw)が3000~50000、酸価が30~200mgKOH/gの重合体である不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を参考にできる。
【0068】
なお、(A)成分の不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂については、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0069】
次に、本発明の一実施形態に係るマイクロレンズ形成用組成物に含まれる、上述の(B)~(G)成分について説明する。
【0070】
[(B)成分]
(B)成分は、少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーである。(B)成分を含むことにより、露光感度および現像性を良好なものとすることができる。
【0071】
(B)成分の例には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類、デンドリマー型多官能アクリレートなどが含まれる。これらの光重合性モノマーは、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して1質量部以上200質量部以下が好ましく、4質量部以上100質量部以下がより好ましく、10質量部以上70質量部以下がさらに好ましい。(B)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して1質量部以上である場合には、(B)成分による露光感度および現像性の向上効果が十分に奏される。また、(B)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して200質量部以下である場合には、酸性官能基濃度が十分高く、露光部におけるアルカリ現像液に対する良好な溶解性が得られることから、所望するパターンを形成できる。
【0073】
[(C)成分]
(C)成分は、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物である。(C)成分を含むことにより、十分な架橋構造を形成できるので、耐薬品性を向上させることができる。
【0074】
(C)成分の例には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、ジフェニルフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン骨格を含むフェノールノボラック化合物(例えば、NC-7000L:日本化薬株式会社製)、ビフェニル型エポキシ化合物(例えば、jERYX4000:三菱ケミカル株式会社製、「jER」は同社の登録商標)、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物(例えば、EPPN-501H:日本化薬株式会社製)、テトラキスフェノールエタン型エポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、メタクリル酸とメタクリル酸グリシジルの共重合体に代表される(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む(メタ)アクリル基を有するモノマーの共重合体、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、セロキサイド2021P:株式会社ダイセル製、「セロキサイド」は同社の登録商標)、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(例えば、エポリードGT401:株式会社ダイセル製、「エポリード」は同社の登録商標)、エポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物(例えば、HiREM-1:四国化成工業株式会社製)、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ化合物(例えば、HP7200シリーズ:DIC株式会社製)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えば、EHPE3150:株式会社ダイセル製)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、NISSO-PBJP-100:日本曹達株式会社製、「NISSO-PB」は同社の登録商標)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等が含まれる。なお、これらの化合物は、その1種類の化合物のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
(C)成分の中では、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物であることが好ましく、ビフェニル型エポキシ化合物であることがより好ましい。ビフェニル型のエポキシ化合物を用いることにより、要求特性に合わせた硬化物の機械的強度や耐薬品性と、光硬化時のマイクロレンズ形成用組成物のパターニング性を両立することができるとともに、マイクロレンズ形成用組成物を設計する自由度を大きくできる。
【0076】
(C)成分のエポキシ化合物のエポキシ当量は100g/eq以上300g/eq以下であることが好ましく、100g/eq以上250g/eq以下であることがより好ましい。また、(C)成分のエポキシ化合物の数平均分子量(Mn)は100以上5000以下であることが好ましい。上記エポキシ当量が100g/eq以上であり、上記エポキシ化合物の数平均分子量(Mn)が100以上であると、良好な耐溶剤性を有する硬化膜となり得、エポキシ当量が300g/eq以下であり、数平均分子量(Mn)が5000以下であると、後工程でアルカリ性の薬液を使う場合でも十分な耐アルカリ性を維持することができる。
【0077】
なお、(C)成分のエポキシ化合物のエポキシ当量は、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-過塩素酸溶液で滴定して求めることができる。また、上記エポキシ化合物の数平均分子量(Mn)は、例えば、上述のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製)で求めることができる。
【0078】
(C)成分の含有量は、固形分の全質量に対して1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、3質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。(C)成分のエポキシ化合物の含有量を1質量部以上とすることにより耐薬品性をより高めることができ、(C)成分のエポキシ化合物の含有量を30質量部以下とすることにより基板との密着性を十分に確保できる。
【0079】
[(D)成分]
(D)成分は、光重合開始剤である。(D)成分を含むことにより、光が照射された部分の反応が十分に進行し、現像時の硬化した部分の溶解性を低下させて所望する微細なパターンを形成することができる。
【0080】
(D)成分の例には、2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2、4,5-トリアリールビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2-ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類;2-トリクロロメチル-5-スチリル-1,3,4-オキサジアゾ-ル、2-トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類;2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4、6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル-s-トリアジン系化合物類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)(イルガキュアOXE01、BASFジャパン社製、「イルガキュア」は同社の登録商標)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾア-ト、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-ビシクロヘプチル-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ビシクロヘプタンカルボキシレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-トリシクロデカンカルボシキレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-アダマンタンカルボシキレート、1-[4-(フェニルスルファニル)フェニル]オクタン-1,2-ジオン=2-O-ベンゾイルオキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エタノン-O-アセチルオキシム、(2-メチルフェニル)(7-ニトロ-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル)-アセチルオキシム、エタノン,1-[7-(2-メチルベンゾイル)-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル]-1-(o-アセチルオキシム)、エタノン,1-(-9,9-ジブチル-7-ニトロ-9H-フルオレン-2-イル)-1-O-アセチルオキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(イルガキュアOXE02)等のO-アシルオキシム系化合物類;ベンジルジメチルケタール;2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物などが含まれる。なお、これら光重合開始剤は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
(D)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。(D)成分の含有量が0.1重量部以上の場合には、特に組成物の上面(放射線の照射側)において光重合をより十分に進行させることができる。また、(D)成分の含有量が30重量部以下の場合には、塗膜深部まで硬化反応が進行しにくくなり、熱フローによりレンズ形状を形成することが容易となる。
【0082】
[(E)成分]
(E)成分は、紫外線吸収剤である。ネガ型のパターン形成時には、基材界面に到達した後、界面に沿って広がった放射線により、放射線を照射していない部位においても、基材との界面で組成物が硬化してしまうことがある。これにより、基材界面に沿って硬化した樹脂が広がってしまい、この広がった樹脂が残差となってしまうと考えられる。これに対し、紫外線吸収剤は、照射された放射線を吸収して、余剰の放射線の基材界面に沿っての広がりを抑制する。そのため、マイクロレンズ形成用組成物が紫外線吸収剤を含むことにより、ネガ型のパターン形成時に特有の残渣の発生を抑制できると考えられる。また、残渣の抑制により、レンズ間距離が狭いときに生じるマイクロレンズ同士の繋がりも抑制できると考えられる。
【0083】
紫外線吸収剤は、250~400nmの波長の間に吸収ピークを有する化合物であることが好ましく、365nmの波長の光を効率的に吸収する化合物であることがより好ましい。
【0084】
(E)成分の例には、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物、サリチル酸化合物、ベンゾエート化合物、桂皮酸誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセンおよびその誘導体、ジナフタレン化合物、フェナントロリン化合物などが含まれる。なお、これらの紫外線吸収剤は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
本発明において、上記紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物およびトリアジン化合物からなる群から選ばれることが好ましい。これらの紫外線吸収剤は、放射線(例えば紫外線)のエネルギーを効率的に吸収し、余剰の放射線の基材界面に沿っての広がりを抑制して、現像後にパターン端部の残渣が生じるのを低減できる。
【0086】
ベンゾトリアゾール化合物の例には、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-{2’-ヒドロキシ-3’-(3’’,4’’,5’’,6’’-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、C7-C9-アルキル-3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオンエーテルなどが含まれる。
【0087】
ベンゾフェノン化合物の例には、4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノントリヒドレート、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、ナトリウム2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシドデシルベンゾフェノンなどが含まれる。
【0088】
トリアジン化合物の例には、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソオクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-[4((2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-[4-((2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンなどが含まれる。
【0089】
また、上記紫外線吸収剤としては、市販品を使用してもよい。市販品の例には、TinuvinPS、99-2、326、384-2、900、928、1130(BASF社製「Tinuvin」は同社の登録商標)、アデカスタブLA-24、29、31G、32、36(株式会社ADEKA製、「アデカスタブ」は同社の登録商標)などのベンゾトリアゾール化合物、UVINUL3049、3050(BASF社製、「UVINUL」は同社の登録商標)、アデカスタブ1413などのベンゾフェノン化合物、Tinuvin400、405、460、アデカスタブLA-46、F70などのトリアジン化合物が含まれる。
【0090】
また、本発明において、(E)成分である紫外線吸収剤は、感光性官能基を有する化合物であることが好ましく、を有するベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物であることがより好ましい。上記感光性官能基は、(A)成分および(B)成分との反応性を高める観点から、エチレン性不飽和基であることが好ましい。上記エチレン性不飽和基の例には、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、スチレニル基などが含まれる。これらの中では、(A)成分および(B)成分との反応性が高いアクリロイル基およびメタクリロイル基が好ましい。エチレン性不飽和基を有する紫外線吸収剤を用いることにより、紫外線吸収剤の感光性反応基と、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂もしくは光重合性モノマーとが反応して、紫外線吸収剤を樹脂中に取り込むことができる。これにより、基材への熱ダメージ低減の観点から、例えば、140℃のような低温で組成物を硬化させた場合であっても、紫外線吸収剤の溶剤への染み出しを抑制して、硬化物の耐薬品性を高めることができる。また、紫外線吸収剤の析出による着色や、ベーク時の昇華なども抑制することができる。
【0091】
エチレン性不飽和基を有するベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物およびトリアジン化合物の例には、2-[2-ヒドロキシ-5-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールなどが含まれる。
【0092】
また、上記紫外線吸収剤の市販品の例には、RUVA-93(大塚化学株式会社製)などが含まれる。
【0093】
(E)成分の含有量は、固形分の全質量に対して3質量%以上20質量%以下であり、4質量%以上20質量%以下であることが好ましく、6質量部以上18質量部以下であることがより好ましい。(E)成分の含有量を、3質量%以上とすることにより、基材界面に沿って広がる放射線の量を低減して、現像後にパターン端部の残渣が生じるのを低減することができる。(E)成分の含有量を、20質量%以下とすることにより、放射線が照射された部分の反応を十分に進行させることができるので、マイクロレンズ形成用組成物を十分に硬化させることができる。
【0094】
[(F)成分]
(F)成分は、溶剤である。(F)成分を含むことにより、上述の(A)~(E)、(G)成分を含む液体状のマイクロレンズ形成用組成物を得ることができる。
【0095】
溶剤の例には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-ヒドロキシ-2-ブタノン、ジアセトンアルコール等のアルコール類、α-もしくはβ-テルピネオール等のテルペン類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-ブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類等が含まれる。
【0096】
(F)成分の含有量は、マイクロレンズ形成用組成物の全質量に対して40質量%以上80質量%以下であることが好ましい。(F)成分の含有量が、40質量%以上であると、基板上にマイクロレンズ形成用組成物を塗布しやすい粘度とすることができ、80質量%以下であると、膜厚均一性に優れた塗膜を得ることができる。
【0097】
[(G)成分]
(G)成分は、増感剤である。(G)成分を含むことにより、(D)光重合開始剤による硬化反応をより精度良く制御できる。
【0098】
(G)成分の例には、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ベンゾフェノン、4,4’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン等のチオキサントン系、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が含まれる。なお、これら増感剤は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
また、(G)成分の含有量は、(D)成分の合計100質量部に対して、0.5質量部以上200質量部以下が好ましく、1質量部以上100質量部以下がより好ましい。(G)成分の含有量が、0.5質量部以上とすることにより、光照射によって十分に光重合開始剤を活性化させることができ、200質量部以下とすることにより、光重合開始剤による硬化反応をより精度良く制御できる。
【0100】
[その他の成分]
本発明のマイクロレンズ形成用組成物には、必要に応じて硬化剤、硬化促進剤、熱重合禁止剤および酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、充填剤、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤、カップリング剤、粘度調整剤等の添加剤を配合することができる。
【0101】
硬化剤の例には、エポキシ樹脂の硬化に寄与するアミン系化合物、多価カルボン酸系化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等が含まれる。
【0102】
硬化促進剤の例には、エポキシ樹脂の硬化促進に寄与する三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類等が含まれる。
【0103】
熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。
【0104】
連鎖移動剤の例には、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、β-メルカプトプロピオン酸、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、ステアリル-3-メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、3,3’-チオジプロピオン酸、ジチオジプロピオン酸、ラウリルチオプロピオン酸等のチオール化合物などが含まれる。
【0105】
可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。充填剤の例には、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等が含まれる。
【0106】
消泡剤やレベリング剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。
【0107】
界面活性剤の例には、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが含まれる。
【0108】
カップリング剤の例には、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0109】
本発明のマイクロレンズ形成用組成物は、上述の(A)~(G)成分、および任意のその他の成分を、混合して加熱することにより得ることができる。
【0110】
2.マイクロレンズ用組成物の製造方法
マイクロレンズ用組成物の製造方法(1)~(3)について、以下に説明する。
【0111】
[マイクロレンズの製造方法(1)]
本発明の一実施形態に係るマイクロレンズ用組成物の製造方法は、(i)上述のマイクロレンズ形成用組成物を塗布し、乾燥させて、マイクロレンズ形成用組成物の塗膜を形成する塗膜層形成工程と、(ii)塗膜の一部にフォトマスクを介して放射線を照射する露光工程と、(iii)放射線を照射された塗膜を現像し未露光部を除去する現像工程と、(iv)現像後の露光部を熱フローして、上記露光部をマイクロレンズ形状に加工しつつ、加熱硬化する熱フロー工程と、を含む。以下、各工程について説明する。
【0112】
[塗膜層形成工程]
塗膜層形成工程は、上述のマイクロレンズ形成用組成物を基材上に塗布し、乾燥させて、塗膜層を形成する工程である。
【0113】
上記基材は、公知のものを用いることができる。基材の例には、ガラス基板、シリコンウエハ、プラスチック基板、およびこれらの表面に着色レジスト、オーバーコート、反射防止膜、各種金属薄膜が形成された基板などが含まれる。プラスチック基板の例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチックからなる樹脂基板などが含まれる。基板には、フォトダイオードなどの受光素子、有機発光素子などの発光素子、カラーフィルターなどの色素含有素子などが設けられていてもよい。
【0114】
マイクロレンズ形成用組成物の塗布方法は、公知の塗布方法を用いることができる。上記塗布方法の例には、公知の溶液浸漬法、スプレー法、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコート機やスピナー機を用いる方法などが含まれる。これらの方法によって、マイクロレンズ形成用組成物を所望の厚さに塗布することができる。
【0115】
上述の方法で塗布されたマイクロレンズ形成用組成物の乾燥方法は、公知の乾燥方法を用いることができる。上記乾燥方法は、オーブン、熱風送風機、ホットプレート、赤外線ヒータ等による加熱、真空乾燥またはこれらの組み合わせることによって行うことができる。上記樹脂膜の加熱温度および加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択することができる。上記加熱温度および加熱時間は、例えば、80~120℃で、1~10分間行われることが好ましい。
【0116】
[露光工程]
露光工程は、上述の塗膜層の一部にフォトマスクを介して放射線を照射し、上記塗膜(マイクロレンズ形成用組成物)の一部を光硬化させる工程である。
【0117】
上記フォトマスクは公知のものを用いることができる。フォトマスクの例には、ハーフトーンマス、グレートーンマスク等の多階調マスクが含まれる。グレートーンマスクは、透光性を有する基板上に、遮光部および回折格子が形成される。回折格子はスリット、ドット、メッシュ等の光透過領域の間隔が、露光に用いる光の解像度限界以下の間隔であり、当該構成により、光の透過率を制御する。ハーフトーンマスクは、透光性を有する基板上に、遮光部および半透過部が形成される。半透過部により露光に用いる光の透過率を制御する。
【0118】
照射される放射線の例には、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線およびX線などが含まれる。上記放射線の中では、紫外線であることが好ましい。また、放射線を照射する装置には、公知の露光装置(超高圧水銀灯、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、遠紫外線灯等)を用いることができる。また、照射する放射線の波長は250nm以上400nm以下であることが好ましい。放射線の露光量は、25mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下であることが好ましく、50mJ/cm2以上2000mJ/cm2以下であることがより好ましい。
【0119】
[現像工程]
現像工程は、放射線が照射された塗膜をアルカリ現像し、未露光部の塗膜を除去する工程である。
【0120】
塗膜の現像方法の例には、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、およびパドル(液盛り)現像法などが含まれる。なお、上記現像方法は、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて行うことができる。
【0121】
また、現像に適した現像液の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ〔4.3.0〕-5-ノナンなどのアルカリ(塩基性化合物)の水溶液などが含まれる。現像条件は、マイクロレンズ形成用組成物により異なるが、20~30℃の温度で、10~120秒行うことが好ましい。
【0122】
[熱フロー工程]
熱フロー工程は、現像後の露光部(塗膜)を熱フローし、メルトフローさせて、上記露光部をマイクロレンズ形状に加工しつつ、加熱硬化する工程である。
【0123】
現像後の露光部を熱フローする方法は、公知の方法(オーブン、熱風送風機、ホットプレート、赤外線ヒータ等による加熱、真空乾燥またはこれらの組み合わせ)よって行うことができる。熱フローの温度は、塗膜がメルトフローする温度であれば特に制限されない。熱フローの温度は、140~250℃の温度で10~120分間行われることが好ましく、180~230℃の温度で30~90分間行われることがより好ましい。
【0124】
本発明のマイクロレンズ形成用組成物を用いることにより、製造方法(1)のようなネガ型のフォトリソグラフィ法によるマイクロレンズのパターン形成を行っても、基材界面に沿った放射線の広がりが抑制されて、現像後にパターン端部の残渣が低減するので、マイクロレンズ同士が繋がるのが抑制され、より良好か形状のマイクロレンズのパターンを形成することができる。
【0125】
[マイクロレンズの製造方法(2)]
本発明のマイクロレンズ形成用組成物は、上記製造方法(1)において残渣の抑制効果を十分に発揮できるが、以下の製造方法(2)や製造方法(3)によるマイクロレンズの形成にも好適に使用し得る。
【0126】
本発明の一実施形態に係るマイクロレンズ用組成物の製造方法は、(i)上記マイクロレンズ形成用組成物を塗布し、放射線を照射し、および硬化させて、マイクロレンズ形成用組成物の樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、(ii)樹脂層の表面にエッチングレジスト層を形成する工程と、(iii)エッチングレジスト層の一部にフォトマスクを介して放射線を照射する露光工程と、(iv)放射線を照射されたエッチングレジスト層を現像する現像工程と、(v)現像後の露光部を熱フローして、露光部をマイクロレンズ形状に加工する熱フロー工程と、(vi)熱フロー後の露光部をマスク層として樹脂層をドライエッチングし、上記マスク層の形状を上記樹脂層に転写する転写工程と、を含む。
【0127】
[樹脂層形成工程]
樹脂層形成工程は、基材表面に上記マイクロレンズ形成用組成物を塗布し、放射線を照射し、および乾燥させて、マイクロレンズ形成用組成物の樹脂層を形成する工程である。上記工程では、マイクロレンズ形成用組成物を塗布する前に、基材表面の凹凸を、透明樹脂をスピンコートで塗布して埋め込み、平坦化する。そして、平坦化した基材の表面にマイクロレンズ形成用組成物を塗布した後、放射線(例えば紫外線)を照射し、熱硬化させて樹脂層を形成する。なお、マイクロレンズ形成用組成物を塗布する方法、塗布したマイクロレンズ形成用組成物に、および放射線を照射する方法は、上述の製造方法(1)で用いた方法と同様の方法で行うことができる。上記熱硬化は、アルカリ可溶性樹脂およびエポキシ樹脂を含む組成物を熱硬化(ポストベーク)する通常の方法で行えばよい。
【0128】
[エッチングレジスト層を形成する工程]
エッチングレジスト層を形成する工程は、上記樹脂層の表面にエッチングレジスト層を形成する工程である。
【0129】
エッチングレジストの成分は、後述する転写工程においてマスク層として樹脂層にその形状を転写することができれば、特に制限されない。エッチングレジストは、ポジ型のレジストでもよいし、ネガ型のレジストでもよい。また、樹脂層の表面にエッチングレジスト層を形成する方法は、公知の方法を用いることができる。
【0130】
[露光工程]
露光工程は、エッチングレジスト層の一部にフォトマスクを介して放射線を照射し、上記エッチングレジスト層の一部を光硬化させる工程である。なお、エッチングレジスト層を露光する方法は、上述の製造方法(1)で用いた方法と同様の方法で、適宜温度等の条件をエッチングレジストの種類にあわせて変更して行うことができる。
【0131】
[現像工程]
現像工程は、放射線が照射されたエッチングレジスト層をアルカリ現像する工程である。エッチングレジストがポジ型であるときは露光部を除去し、エッチングレジストがネガ型であるときは露光部を除去する。アルカリ現像の方法は、エッチングレジストの種類にあわせて公知の方法から適宜選択すればよい。
【0132】
[熱フロー工程]
熱フロー工程は、現像後のエッチングレジスト層の露光部を熱フローして、メルトフローさせて、エッチングレジスト層の露光部をマイクロレンズ形状に加工する工程である。なお、熱フロー工程は、上述の製造方法(1)で用いた方法と同様の方法で、適宜温度等の条件をエッチングレジストの種類にあわせて変更して行うことができる。
【0133】
[転写工程]
転写工程は、熱フロー後のエッチングレジスト層の露光部をマスク層として上記樹脂層をドライエッチングし、上記マスク層の形状を上記樹脂層に転写する工程である。
【0134】
上記ドライエッチングは、公知の方法を用いることができる。ドライエッチング方法の例には、プラズマエッチング、イオンエッチング、反応性イオンエッチング、スパッタエッチングなどが含まれる。また、ドライエッチングには、公知の装置を用いることができる。ドライエッチングに用いることができるガスの例には、CHF3、CF4、C2F6、C3F8、SF6等のフッ素系ガス、Cl2、BCl3等の塩素系ガス、O2、O3等の酸素系ガス、H2、NH3、CO、CO2、CH4、C2H2、C2H4、C2H6、C3H4、C3H6、C3H8、HF、HI、HBr、HCl、NO、NH3、BCl3等の還元性ガス、He、N2、Arなどの不活性ガス等が含まれる。これらのガスは混合して用いることができる。
【0135】
[マイクロレンズの製造方法(3)]
本発明の一実施形態に係るマイクロレンズ用組成物の製造方法は、(i)レンズ材料層上に上記マイクロレンズ形成用組成物を塗布し、乾燥させて、マイクロレンズ形成用組成物の塗膜を形成する塗膜形成工程と、(ii)塗膜の一部にフォトマスクを介して放射線を照射する露光工程と、(iii)放射線を照射された塗膜を現像し未露光部を除去する現像工程と、(iv)上記現像後の塗膜を熱フローして、上記塗膜をマイクロレンズ形状に加工しつつ加熱硬化して、マイクロレンズパターンを有するマスク層を形成するマスク層形成工程と、(v)レンズ材料層および前記マスク層をドライエッチングし、上記塗膜層の形状を上記レンズ材料層に転写する転写工程と、を含む。
【0136】
[塗膜形成工程]
塗膜形成工程は、レンズ材料層上に上記マイクロレンズ形成用組成物を塗布し、乾燥させて、マイクロレンズ形成用組成物の塗膜を形成する工程である。このとき、レンズ材料層の表面は、マイクロレンズの製造方法(2)で記載した方法と同じ方法で平坦化されている。なお、マイクロレンズ形成用組成物を塗布する方法、塗布したマイクロレンズ形成用組成物を乾燥させる方法は、上述の製造方法(1)で用いた方法と同様の方法で行うことができる。
【0137】
レンズ材料層は、公知のレンズ材料による層であればよい。
【0138】
[露光工程および現像工程]
上記(ii)露光工程および(iii)現像工程は、マイクロレンズの製造方法(1)で記載した方法と同じ方法で行うことができる。
【0139】
[マスク層形成工程]
マスク層形成工程は、現像後の塗膜を熱フローし、メルトフローさせて、上記塗膜をマイクロレンズ形状に加工しつつ加熱硬化して、マイクロレンズパターンを有するマスク層を形成する工程である。上記塗膜の熱フローは、上述の製造方法(1)で用いた方法と同様の方法で行うことができる。
【0140】
[転写工程]
転写工程は、上述の製造方法(2)で用いた方法と同様のドライエッチング方法で行うことができる。
【0141】
本発明のマイクロレンズ形成用組成物を用いることにより、製造方法(3)のように、マイクロレンズ形成用組成物をレジスト材料とする方法であっても、レンズ層とエッチングレジスト層との界面に沿った放射線の広がりが抑制されて、レジストパターンの端部における残渣の発生を抑制することができる。そのため、本発明のマイクロレンズ形成用組成物の硬化物をマスクとして使用すれば、精度よくレンズ層をエッチングすることができ、より良好な形状のマイクロレンズのパターンを形成することができる。
【0142】
3.固体撮像素子
本発明の固体撮像素子は、上述のマイクロレンズを有する。本発明の固体撮像素子は、上述のマイクロレンズを有するための、高画素化および高感度化が可能となる。
【0143】
4.撮像装置
本発明の撮像装置は、上述の固体撮像素子を有する。本発明の撮像装置は、上述の固体撮像素子を有するための、高画質の画像を得ることができる。
【実施例0144】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0145】
まず、(A)成分である不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成例から説明するが、これらの合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
【0146】
なお、各種測定機器について、同一の機種を使用した場合には、2か所目から機器メーカー名を省略している。また、実施例で使用しているガラス基板は、全て同じ処理を施して使用している。また、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。
【0147】
[固形分濃度]
固形分濃度は、合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W0(g)〕に含浸させた重量〔W1(g)〕、および160℃にて2時間加熱した後の重量〔W2(g)〕を用いて次式により求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0)
【0148】
[エポキシ当量]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させた後に臭化テトラエチルアンモニウムの酢酸溶液を加え、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-過塩素酸溶液で滴定して求めた。
【0149】
[酸価]
酸価は、樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めた。
【0150】
[分子量]
分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuper H-2000(2本)+TSKgelSuper H-3000(1本)+TSKgelSuper H-4000(1本)+TSKgelSuper H-5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0151】
合成例で記載する略号は次のとおりである。
BPFE :ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(一般式(1)に示されるArがベンゼン環であり、lが0であるエポキシ樹脂、エポキシ当量256g/eq)
BNFE :ビスナフトールフルオレン型エポキシ樹脂(一般式(1)に示されるArがナフタレン環であり、lが0であるエポキシ樹脂、エポキシ当量281g/eq)
BPDA :3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA :1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
TPP :トリフェニルホスフィン
AA :アクリル酸
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
DCPMA :ジシクロペンタニルメタクリレート
GMA :グリシジルメタクリレート
St :スチレン
AIBN :アゾビスイソブチロニトリル
TDMAMP:トリスジメチルアミノメチルフェノール
HQ :ハイドロキノン
SA :無水コハク酸
TEA :トリエチルアミン
【0152】
[合成例1]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、上記反応生成物にPGMEA(25.00g)を加え、固形分が50質量%となるように調整した。
【0153】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(14.37g、0.05mol)およびTHPA(7.43g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)-1の樹脂溶液を得た。樹脂溶液の固形分濃度は57.0質量%であり、酸価(固形分換算)は96mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3600であった。
【0154】
[合成例2]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、上記反応生成物にPGMEA(25.00g)を加え、固形分が50質量%となるように調整した。
【0155】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(10.06g、0.03mol)およびTHPA(11.89g、0.08mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)-2の樹脂溶液を得た。樹脂溶液の固形分濃度は57.0質量%であり、酸価(固形分換算)は98mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは2300であった。
【0156】
[合成例3]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.07g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、上記反応生成物にPGMEA(25.00g)を加え固形分が50質量%となるように調整した。
【0157】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(19.25g、0.07mol)およびTHPA(0.30g、0.002mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)-3の樹脂溶液を得た。樹脂溶液の固形分濃度は56.3質量%であり、酸価(固形分換算)は97mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは4700であった。
【0158】
[合成例4]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BNFE(50.00g、0.09mol)、AA(12.82g、0.20mol)、TPP(0.23g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、上記反応生成物にPGMEA(25.00g)を加え、固形分が50質量%となるように調整した。
【0159】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(13.09g、0.04mol)およびTHPA(6.77g、0.04mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)-4の樹脂溶液を得た。樹脂溶液の固形分濃度は56.1質量%であり、酸価(固形分換算)は91mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3500であった。
【0160】
[合成例5]
還流冷却機付き1Lの四つ口フラスコ中に、PGMEA(300g)を入れ、フラスコ系内を窒素置換した後120℃に昇温した。フラスコ内にモノマー混合物(DCPMA(77.1g、0.35mol)、GMA(49.8g、0.35mol)、およびSt(31.2g、0.30mol)にAIBN(10g)を溶解した混合物を滴下ロートから2時間かけて滴下し、さらに120℃で2時間攪拌し、共重合体溶液を得た。
【0161】
次いで、フラスコ系内を空気に置換した後、得られた共重合体溶液にAA(24.0g、グリシジル基の95%)、TDMAMP(0.8g)およびHQ(0.15g)を添加し、120℃で6時間攪拌し、重合性不飽和基含有共重合体溶液を得た。得られた重合性不飽和基含有共重合体溶液にSA(30.0g、AA添加モル数の90%)、TEA(0.5g)を加え、120℃で4時間反応させ、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性共重合体樹脂溶液(A)-5の樹脂溶液を得た。樹脂溶液の固形分濃度は46.0質量%であり、酸価(固形分換算)は76mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは5300であった。
【0162】
表1に記載の配合量(単位は質量%)で実施例1~11、比較例1~3のマイクロレンズ形成用組成物を調製した。表1、2中で使用した配合成分は以下のとおりである。
【0163】
(不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂)
(A)-1:合成例1で得られた樹脂溶液(固形分濃度57.0質量%)
(A)-2:合成例2で得られた樹脂溶液(固形分濃度57.0質量%)
(A)-3:合成例3で得られた樹脂溶液(固形分濃度56.3質量%)
(A)-4:合成例4で得られた樹脂溶液(固形分濃度56.1質量%)
(A)-5:合成例5で得られた樹脂溶液(固形分濃度46.0質量%)
【0164】
(光重合性モノマー)
(B):ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート混合物(KAYARAD DPHA、日本化薬株式会社製、「KAYARAD」は同社の登録商標)
【0165】
(エポキシ化合物)
(C):ビフェニル型エポキシ樹脂(jER YX4000、三菱ケミカル株式会社製、「jER」は同社の登録商標、エポキシ当量180~192g/eq)
【0166】
(光重合開始剤)
(D)-1:Omnirad907(IGM Resins、B.V.社製、「Omnirad」は同社の登録商標)
(D)-2:Irgacure OXE-01(BASF社製、「Irgacure」は同社の登録商標)
【0167】
(紫外線吸収剤)
(E)-1:Tinuvin384-2(BASFジャパン社製、固形分濃度95質量%、「Tinuvin」は同社の登録商標)
(E)-2:Tinuvin400(固形分濃度85質量%)
(E)-3:アデカスタブ1413(株式会社ADEKA製、「アデカスタブ」は同社の登録商標)
(E)-4:RUVA-93(大塚化学株式会社製)
【0168】
(溶剤)
(F):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0169】
(増感剤)
(G):ミヒラーケトン
【0170】
【0171】
【0172】
[評価]
表1、2に示される実施例1~11、比較例1~3のマイクロレンズ形成用組成物を硬化してなる硬化膜について、以下の評価を行った。
【0173】
(屈折率測定用の硬化膜付き基板の作製)
表1、2に示したマイクロレンズ形成用組成物を、5inchの基板(シリコンウエハー)上に、加熱硬化後の膜厚が1.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて100℃で5分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、上記乾燥膜に、超高圧水銀ランプ(波長365nm、照度30mW/cm2)で500mJ/cm2の紫外線を照射して光硬化反応(露光)を行った後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、屈折率測定用の硬化膜付き基板を得た。
【0174】
[屈折率評価]
エリプソメーター(J.A.Woollam社製)を用いて、本硬化後の上記硬化膜付き基板の波長633nmにおける屈折率を測定した。
【0175】
(透過率測定用の硬化膜付き基板の作製)
表1、2に示したマイクロレンズ形成用組成物を、125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)(以下「ガラス基板」という)上に、加熱硬化後の膜厚が1.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて100℃で5分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、上記乾燥膜に、超高圧水銀ランプ(波長365nm、照度30mW/cm2)で300mJ/cm2の紫外線を照射して光硬化反応(露光)を行った後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)することにより、透過率測定用の硬化膜付き基板を得た。
【0176】
[透過率評価]
紫外可視赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、本硬化後の上記硬化膜付き基板の波長400nmにおける透過率を測定した。
【0177】
(パターン密着性およびパターン端部残渣評価用の硬化膜付き基板の作製)
表1、2に示したマイクロレンズ形成用組成物を、125mm×125mmのガラス基板上に、加熱硬化処理後の膜厚が2.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて100℃で5分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、上記乾燥膜に、超高圧水銀ランプ(波長365nm、照度30mW/cm2)で300mJ/cm2の紫外線を照射して、光硬化反応(露光)を行った。
【0178】
次いで、上記露光された乾燥膜(露光膜)を23℃の0.8%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)現像液により1kgf/cm2のシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から10秒の現像処理を行った後、5kgf/cm2のスプレー水洗を行い、上記露光膜の未露光部分を除去することによりガラス基板上に5μm径のドットパターンを得た。最後に、得られたドットパターンを、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)することにより、パターン密着性およびパターン端部残渣評価用の硬化膜付き基板を得た。
【0179】
[パターン密着性評価]
(評価方法)
上記基板上の5μm径のドットパターン(硬化膜)を、光学顕微鏡を用いて、ドットパターンの剥がれの有無を観察した。なお、△以上を合格とした。
【0180】
(評価基準)
○:ドットパターンに剥がれは確認されない
△:ドットパターンの一部に剥がれが確認される
×:ドットパターンの全てが剥離している
【0181】
[パターン端部の残渣評価]
(評価方法)
上記基板上の5μm径のドットパターン(硬化膜)を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、ドットパターン端部の残渣の有無を観察した。なお、△以上を合格とした。
【0182】
(評価基準)
○:パターン端部に残渣は確認されない
△:パターン端部の一部に残渣が確認される
×:パターン端部の残渣が顕著である
【0183】
(耐薬品性評価用の硬化膜付き基板の作製)
表1、2に示したマイクロレンズ形成用組成物を、ガラス基板上に、加熱硬化後の膜厚が2.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて100℃で5分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、上記乾燥膜に、超高圧水銀ランプ(波長365nm、照度30mW/cm2)で300mJ/cm2の紫外線を照射して光硬化反応(露光)を行った後、熱風乾燥機を用いて180℃で1時間、もしくは230℃で30分間本硬化(ポストベーク)し、耐薬品性評価用の硬化膜付き基板を得た。
【0184】
[耐溶剤性評価]
(評価方法)
本硬化(ポストベーク)後の硬化膜の膜厚(L1)、およびアセトンに10分間浸漬した後、洗浄し、乾燥させた後の上記硬化膜の膜厚(L2)を、それぞれ触針式段差形状測定装置「P-17」(ケーエルエー・テンコール株式会社製)を用いて測定し、下記式から残膜率(%)を算出した。なお、△以上を合格とした。
残膜率(%)=L2/L1×100
【0185】
(評価基準)
○:残膜率が90%以上である
△:残膜率が80%以上90%未満である
×:残膜率が80%未満である
【0186】
上記評価結果を表3、4に示す。
【0187】
【0188】
【0189】
実施例1~11に示されるように、本発明のマイクロレンズ形成用樹脂組成物を用いることにより、高い屈折率および高い透過率を有する硬化膜を形成できることがわかった。
【0190】
実施例1~11で示されるように、紫外線吸収剤を含む樹脂組成物を用いることにより、ネガ型のパターン形成時に特有の残渣の発生を抑制できることがわかった。これは、紫外線吸収剤が、照射された放射線を吸収して、余剰の放射線が基材界面に沿って広がるのを抑制し、放射線が照射されていない部位において、基材との界面で組成物が硬化してしまうのを抑制するためであると考えられる。
【0191】
また、実施例4~11で示されるように、エチレン性不飽和基を有する紫外線吸収剤を用いることにより、紫外線吸収剤の溶剤への染み出しを抑制して、硬化物の耐薬品性を高めることができることがわかった。これは、紫外線吸収剤の感光性反応基と、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂もしくは光重合性モノマーとが反応して、紫外線吸収剤を樹脂中に取り込むことができるためであると考えられる。