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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156547
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】純水生成装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 9/12 20060101AFI20221006BHJP
   C02F 9/02 20060101ALI20221006BHJP
   C02F 9/04 20060101ALI20221006BHJP
   C02F 1/32 20060101ALI20221006BHJP
   B01D 53/64 20060101ALI20221006BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20221006BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20221006BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C02F9/12
C02F9/02 ZAB
C02F9/04
C02F1/32
B01D53/64
B01D53/78
C02F1/42 A
C02F1/42 G
B23Q11/10 Z
B23Q11/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060291
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幹
(72)【発明者】
【氏名】出島 健志
(72)【発明者】
【氏名】柏木 宏之
【テーマコード(参考)】
3C011
4D002
4D025
4D037
【Fターム(参考)】
3C011EE09
4D002AA31
4D002BA02
4D002CA01
4D002CA07
4D002DA35
4D002EA07
4D025AA09
4D025AB24
4D025BA07
4D025BB10
4D025CA01
4D025CA04
4D025DA04
4D025DA05
4D025DA10
4D037AA13
4D037AB08
4D037AB18
4D037BA18
4D037CA02
4D037CA03
4D037CA15
(57)【要約】
【課題】大掛かりな設備の追加の必要がなく、有毒ガスの問題を解決することができる純水生成装置を提供する。
【解決手段】排水L0を貯水する排水タンク21と、排水タンク21から送り出された排水L1を濾過する濾過部22と、濾過部22によって生成された清水L4を貯水する清水タンク23と、清水タンク23から送り出された清水L4に紫外線を照射して有機物を破壊する紫外線照射部24と、紫外線照射部24から送り出された清水L5を純水に精製するイオン交換樹脂部25と、イオン交換樹脂部25によって精製された純水L6を加工装置に供給する純水供給部27と、を少なくとも含み、排水タンク21には、排水L0から生じた有毒ガスG1を吸気してスクラバー52に供給し有毒成分を水に溶かすことにより有毒ガスG1を無毒化して排気する無毒化手段50が配設される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水から純水を生成する純水生成装置であって、
排水を貯水する排水タンクと、該排水タンクから送り出された排水を濾過する濾過部と、該濾過部によって生成された清水を貯水する清水タンクと、該清水タンクから送り出された清水に紫外線を照射して有機物を破壊する紫外線照射部と、該紫外線照射部から送り出された清水を純水に精製するイオン交換樹脂部と、該イオン交換樹脂部によって精製された純水を加工装置に供給する純水供給部と、を少なくとも含み、
該排水タンクには、排水から生じた有毒ガスを吸気してスクラバーに供給し有毒成分を水に溶かすことにより該有毒ガスを無毒化して排気する無毒化手段が配設される純水生成装置。
【請求項2】
該スクラバーに供給される水は、排水タンクに貯水された排水、濾過部によって濾過された清水、該イオン交換樹脂部によって精製された純水のいずれかが使用される請求項1の純水生成装置。
【請求項3】
該有毒成分を含む水は、該イオン交換樹脂部で純水に精製される請求項1に記載の純水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水から純水を生成する純水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画された表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削され所望の厚みに形成された後、ダイシング装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
研削装置、ダイシング装置は、加工水として純水が使用されることから、本出願人は、加工装置から排出される排水を純水に精製して循環させる装置を開発し提案している(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-214193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に記載された純水生成装置は、排水を貯水する排水タンクと、該排水タンクから送り出された排水を濾過する濾過部と、該濾過部によって生成された清水を貯水する清水タンクと、該清水タンクから送り出された清水に紫外線を照射して有機物を破壊する紫外線照射部と、該紫外線照射部から送り出された清水を純水に精製するイオン交換樹脂部と、該イオン交換樹脂部によって精製された純水を濾過する精密フィルター部と、該精密フィルター部から送り出された純水を加工装置に供給する純水供給部とを含み構成されている。
【0006】
上記の加工装置(研削装置、ダイシング装置等)において加工される被加工物がGaAs(ガリウムヒ素)で構成されたウエーハである場合、加工装置から排出されて排水タンクに貯水される排水から人体に危害を及ぼす虞がある有毒なアルシンガスが発生する。しかし、従来の純水生成装置では、該有毒ガスを処理できないため、排水タンクの上部に排気ポートを配設してこのガスを吸引して、別途の装置として配設された浄化装置に送り、これを無毒化したうえで該加工装置が配設されたクリーンルームの外に排出している。しかし、このような浄化装置を設置する場合、設備が大掛かりとなり、不経済であるという問題が発生するため対策が求められている。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、大掛かりな設備の追加の必要がなく、有毒ガスの問題を解決することができる純水生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、排水から純水を生成する純水生成装置であって、排水を貯水する排水タンクと、該排水タンクから送り出された排水を濾過する濾過部と、該濾過部によって生成された清水を貯水する清水タンクと、該清水タンクから送り出された清水に紫外線を照射して有機物を破壊する紫外線照射部と、該紫外線照射部から送り出された清水を純水に精製するイオン交換樹脂部と、該イオン交換樹脂部によって精製された純水を加工装置に供給する純水供給部と、を少なくとも含み、該排水タンクには、排水から生じた有毒ガスを吸気してスクラバーに供給し有毒成分を水に溶かすことにより該有毒ガスを無毒化して排気する無毒化手段が配設される純水生成装置が提供される。
【0009】
好ましくは、該スクラバーに供給される水は、排水タンクに貯水された排水、濾過部によって濾過された清水、該イオン交換樹脂部によって精製された純水のいずれかが使用される。また、より好ましくは、該有毒成分を含む水は、該イオン交換樹脂部で純水に精製される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の純水生成装置は、排水から純水を生成する純水生成装置であって、排水を貯水する排水タンクと、該排水タンクから送り出された排水を濾過する濾過部と、該濾過部によって生成された清水を貯水する清水タンクと、該清水タンクから送り出された清水に紫外線を照射して有機物を破壊する紫外線照射部と、該紫外線照射部から送り出された清水を純水に精製するイオン交換樹脂部と、該イオン交換樹脂部によって精製された純水を加工装置に供給する純水供給部と、を少なくとも含み、該排水タンクには、排水から生じた有毒ガスを吸気してスクラバーに供給し有毒成分を水に溶かすことにより該有毒ガスを無毒化して排気する無毒化手段が配設されることから、有毒ガスを無毒化するための大掛かりな設備を用意する必要がなく、純水生成装置によって有毒ガスを無毒化することができ、不経済であるという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の純水生成装置及びダイシング装置の全体斜視図である。
図2図1に示す純水生成装置の内部に収容された概略構成を分解して示す斜視図である。
図3図2に示す純水生成装置に配設された無毒化手段の概要を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に基づいて構成される純水生成装置に係る実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1には、周知のダイシング装置1に、本実施形態の純水生成装置20を適用した例が示されている。
【0013】
本実施形態のダイシング装置1は、略直方体状の装置ハウジング2を備え、被加工物であるウエーハ12を保持するチャックテーブル機構3と、チャックテーブル機構3に保持されたウエーハ12を切削する切削ブレード41を備えた切削手段4と、を含み構成されている。ダイシング装置1は、複数のウエーハ12を収容するカセット5(2点鎖線で示す)と、カセット5に収容されたウエーハ12を搬出して仮置きする仮置きテーブル6と、仮置きテーブル6にウエーハ12を搬出する搬出入手段7と、仮置きテーブル6に搬出されたウエーハ12をチャックテーブル機構3上に旋回して搬送する搬送手段8と、切削手段4により切削加工されたウエーハを洗浄する洗浄手段9(詳細は省略している)と、切削加工されたウエーハ12をチャックテーブル機構3から洗浄手段9へ搬送する洗浄搬送手段10と、チャックテーブル機構3上のウエーハ12を撮像する撮像手段11と、図示を省略する制御手段と、を備えている。カセット5は、図示しない昇降手段によって上下に移動可能に配設されたカセットテーブル5a上に載置されており、カセット5からウエーハ12を搬出入手段7によって搬出する際には、カセット5の高さが適宜調整される。なお、本実施形態で加工されるウエーハ12は、ガリウムヒ素(GaAs)基板からなるウエーハである。
【0014】
装置ハウジング2内には、チャックテーブル機構3と切削手段4とを相対的に移動させて加工送りする手段であって、チャックテーブル機構3に配設されたチャックテーブル30を切削送り方向である矢印Xで示すX方向に移動させるX方向送り手段と、切削手段4をX方向と直交する矢印Yで示すY方向に移動させるY方向送り手段と、切削手段4を該X方向及びY方向と直交する矢印Zで示すZ方向に移動させるZ方向送り手段(いずれも図示は省略する)とが配設されている。また、切削手段4には、チャックテーブル30に吸引保持されたウエーハを切削する際に、純水である加工水(切削水)を切削加工位置に供給する切削水供給ノズル42が配設されている。
【0015】
切削供給ノズル42から供給される切削水は、切削加工が実施される際に切削加工位置に供給された後、ダイシング装置1に配設された図示を省略する回収路によって回収され、装置ハウジング2から、排水L0として経路100を介して隣接して配設される本実施形態の純水生成装置20に送られる。純水生成装置20に送られた排水L0は、純水生成装置20によって精製されて純水L8となり、経路108を介して、再びダイシング装置1に切削水として供給される。
【0016】
上記の純水生成装置20について、図1に加え、図2を参照しながらより具体的に説明する。図2には、純水生成装置20のハウジング20Aの内部に収容される概略構成の斜視図が示されている。
【0017】
図2に示すように、純水生成装置20は、ダイシング装置1から経路100を介して排出された排水L0を貯水する排水タンク21と、排水タンク21から、ポンプP1の作用により経路102を経由して排出された排水L1を濾過する濾過部22と、濾過部22によって濾過され経路103を経由して送られた清水L3を貯水する清水タンク23と、経路104上に配設されたポンプP2の作用により清水タンク23から排出された清水L4に対して紫外線を照射し、清水L4中に含まれる有機物を破壊する紫外線照射部24と、紫外線照射部24によって有機物が破壊された後の清水L5が経路105を介して導入されて清水L5を純水L6に精製するイオン交換樹脂部25と、イオン交換樹脂部25に接続された経路106を介して導入された純水L6を高精度に濾過する精密フィルター部26と、精密フィルター部26によって濾過され、経路107を介して導入される純水L7を上記のダイシング装置1に供給する純水供給部27を備え、さらに、本実施形態の純水生成装置20の排水タンク21には、排水タンク21に収容された排水L0から生じた有毒ガスG1を吸気して該有毒ガスG1を無毒化して無害な排気ガスG2として排出する無毒化手段50が配設されている。
【0018】
図示の実施形態では、濾過部22は、第1濾過フィルター221、第2濾過フィルター222を備え、純水生成装置20の作動を止めることなく濾過部22の作動を継続することができるように、流路切換弁V1を備えている。一方の濾過フィルターを使用中に目詰まりが検出された場合には、流路切換弁V1を作動して、経路102から導かれる排水L1の流れを目詰まりしていない他方の濾過フィルターに導き、目詰まりが検出された濾過フィルターを新たな濾過フィルターに交換する。なお、濾過部22の濾過フィルターの目詰まりは、経路102上に配設された圧力センサM1によって経路102内の圧力を検出することで判定することが可能である。
【0019】
イオン交換樹脂部25は、第1イオン交換樹脂部251、第2イオン交換樹脂部252を備え、純水生成装置20の作動を止めることなくイオン交換樹脂部25の作動を継続することができるように、流路切換弁V2を備えている。例えば、第2イオン交換樹脂部252の消耗が検出される場合には、流路切換弁V2を作動することにより、経路105から導かれる清水L5を、消耗していない第1イオン交換樹脂部251に導き、その間、第2イオン交換樹脂部252を新しいイオン交換樹脂に交換する。なお、イオン交換樹脂の消耗の度合いは、経路106を流れる純水L6の比抵抗値を検出する比抵抗値センサM2によって検出される検出値に基づいて判定することが可能である。
【0020】
イオン交換樹脂部25によって生成された純水L6は、経路106を介して精密フィルター部26に送られる。精密フィルター部26において純水L6内に残存する不純物が除去された純水L7が生成される。なお、精密フィルター部26の目詰まりは、経路106上に配設された圧力センサM3によって圧力を検出することで判定することが可能である。
【0021】
純水供給部27は、図示を省略するポンプを備え、精密フィルター部26からから排出された純水L7を貯水すると共に該純水L7の温度を適宜調整し、温度調整が施された純水L8を、経路108を介してダイシング装置1に供給する。
【0022】
本実施形態の無毒化手段50について、図2図3を参照しながら、より具体的に説明する。無毒化手段50は、排水タンク21に配設されている。無毒化手段50は、ファン51と、スクラバー52とを備えている。図3に示すように、排水タンク21内には排水L0が貯水され、該排水L0から発生する有毒ガスG1が排水タンク21内の上部空間を満たしている。ファン51は、この排水タンク21内に充満する有毒ガスG1を吸気すべく、排水タンク21内の上部の空間に接続された経路101に配設されている。ファン51を作動することにより、排水タンク21内に充満する有毒ガスG1が吸気されて、スクラバー52に送気される。本実施形態のスクラバー52は、図に示すように、いわゆる湿式の洗浄システム(Scrubber System)であり、スクラバーケース53の下部空間54に、ファン51から送気された有毒ガスG1が導入される。
【0023】
スクラバーケース53の下部空間54の上方には、充填材55が装着されている。充填材55は、通気性を有し、下方から供給される有毒ガスG1と上方から供給される水とを接触させて有毒ガスG1の有毒成分を充填材55に供給された水に溶かし、該水を充填材55の下方に排出する機能を有する。また、充填材55は、有毒ガスG1に含まれる有毒成分によって化学変化が起きない物質が選択され、例えば、ポーラスセラミック、繊維の集合体等から選択される。充填材55の上方の上部空間56には、経路102から分岐した分岐経路102aに接続されたノズル部102bが配設されている。該ノズル部102bの下面には、均等間隔で形成された噴射口102cが形成され、該噴射口102cから下方に向けて経路102から導かれた排水L1が霧状に噴射される。該噴射口102cから噴射される排水L1は、充填材55の上面に供給され、充填材55内全体に浸透し保持される。ノズル部102bの上方には、防滴部材57が配設されている。防滴部材57は、充填材55の上方を覆い、上記した充填材55と同様の部材から構成することがでる。防滴部材57は、上部空間56から防滴部材57の上方の排気空間58に抜ける排気ガスG2に含まれる液体成分を捕らえ、充填材55側に滴下するように機能する。排気ガスG2は、排気空間58を経て排出部59から外部に排出される。スクラバーケース53の下面には、下部空間54と排水タンク21内の排水L0が貯留された領域とを接続する排水路53aが配設され、充填材55に供給された排水L1に有毒成分が溶けた排水L2を排水タンク21側に排出する。なお、排水L2と共に排水タンク21に排出された有毒成分は、後述するようにイオン交換樹脂部25において除去される。また、ダイシング装置1及び純水生成装置20がクリーンルームに設置されている場合は、該排出部59に対して、クリーンルーム外に排気ガスG2を排出するためのダクトを連結するようにしてもよい。
【0024】
図1に示すように、純水生成装置20には、図示を省略する制御装置と一体的に構成された操作パネル30が配設されている。該制御装置は、コンピュータによって構成され、上記したポンプP1、P2、流路切換弁V1、V2、ファン51等に電気的に接続されている。操作パネル30は、純水生成装置20の作動状態を示す表示手段、操作ボタン等を備えている。オペレータが該操作ボタンを操作することで、オペレータの指示が該制御装置で生成され、該制御装置からの指示信号により、ポンプP1、P2、流路切換弁V1、V2、ファン51等の作動が制御される。
【0025】
本実施形態のダイシング装置1、純水生成装置20は、概ね上記したとおりの構成を備えており、以下に、純水生成装置20の機能、作用について説明する。
【0026】
本実施形態において加工される被加工物は、上記したようにガリウムヒ素(GaAs)基板によって構成されたウエーハ12であって、図1に示すように、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたものであり、粘着テープTを介して環状のフレームFに支持されている。ダイシング装置1において、ウエーハ12に対する切削加工を実施する際には、上記した搬出入手段7、搬送手段8等を作動して、カセット5からウエーハ12を搬送して、チャックテーブル30の保持面に載置する。次いで、図示を省略する吸引手段を作動することにより、チャックテーブル30の保持面に対して吸引負圧を供給して、ウエーハ12をチャックテーブル30に吸引保持し、チャックテーブル30の外周に配設されたクランプ32によって固定する。チャックテーブル30にウエーハ12を保持したならば、図示を省略するX方向送り手段を作動して、チャックテーブル30を上記した撮像手段11の直下に位置付けてウエーハ12を撮像し、該分割予定ライン等の加工位置を検出するアライメント工程を実施する。次いで、該アライメント工程により検出したウエーハ12の加工位置情報に基づいて、チャックテーブル30を切削手段4の直下に位置付け、切削水供給ノズル42から切削水を噴出させながら、X方向送り手段と共に、上記したY方向送り手段及びZ方向送り手段を作動して切削手段4の切削ブレード41によってウエーハ12の該分割予定ラインを切削して、ウエーハ12を個々のデバイスチップに分割する。
【0027】
ここで、切削水供給ノズル42から噴出された切削水は、切削加工によって生じた切削屑等を含む排水L0となり、ダイシング装置1内に形成された図示を省略する回収路に流出する。該回収路に流出した排水L0は、ダイシング装置1から、経路100を介して、純水生成装置20に送られて、上記排水タンク21に貯水される。図2に基づき説明したように、排水タンク21に貯水された排水L0は、ポンプP1の作用により経路102を介して濾過部22に送られて濾過された後、清水タンク23、紫外線照射部24、イオン交換樹脂部25を経て純水L6とされ、該純水L6は、精密フィルター部26に導入される。該純水L6は、精密フィルター部26によって高精度に濾過されて純水L7とされ、上記した純水供給部27に貯水されると共に、適宜の温度調整が施された純水L8となり、経路108を介して、ダイシング装置1に再び投入される。
【0028】
本実施形態の純水生成装置20の排水タンク21には、図2図3に基づいて説明したように、無毒化手段50が配設されており、ファン51の作用により排水タンク21に貯水された排水L0から生じた有毒ガスG1が吸気されて、スクラバー52に供給される。図3に示すように、スクラバー52に供給された有毒ガスG1は、スクラバーケース53の下部空間54に導入される。下部空間54に導入された有毒ガスG1は、下部空間54側から充填材55内を通過して上昇する。他方、充填材55の上面には、上記したように、経路102から分岐したノズル部102bの噴射口102cから排水L1が噴射されて、充填材55内に保持されると共に、充填材55に保持しきれなくなった排水L1は、下部空間54側に滴下される。充填材55内で、気体である有毒ガスG1と排水L1が接触することにより、有毒ガスG1に含まれる有毒成分(アルシンガス等)が排水L1に溶け、アルシンガス等の有毒成分を含む排水L2が、排水路53aを介して排出されて排水タンク21に回収される。
【0029】
上部空間56に排出された排気G2は、通気性を有する防滴部材57を通過して排気空間58に排出される。排気G2が上部空間56を通過して上昇する際に、排気G2に含まれる水成分が除去されて、充填材55側に滴下される。排気空間58に排出された無毒化された排気G2は、排出部59から排出される。
【0030】
上記したように、排水タンク21内に貯水された排水L0にスクラバー52から排出された排水L2が導入されることで、排水L0は、アルシンガス等の有毒成分を含む排水となる。排水タンク21に貯水された排水L0は、ポンプP1に接続されたストレーナー21aから吸引されると共に圧送されて、経路102を介して濾過部22に送られて濾過され、その後、清水タンク23を経由して紫外線照射部24、イオン交換樹脂部25に送られる。紫外線照射部24においては、紫外線照射部24に導入される清水L4に紫外線が照射されることで、有毒成分(アルシンガス)が破壊されて、清水L5が排出される。さらに、イオン交換樹脂部25に該清水L5が導入されて、清水L5に対するイオン交換が施されることにより、清水L5に含まれる有毒成分も除去されて、清水L5が純水L6に精製される。次いで、純水L6が精密フィルター部26に導入され精密に濾過された純水L7が純水供給部27に送られる。純水供給部27では、導入された純水L7に対して温度制御等を施し、経路108を介して純水L8を加工装置、すなわちダイシング装置1に供給する。
【0031】
上記した実施形態によれば、有毒ガスを無毒化するための大掛かりな設備を用意する必要がなく、純水生成装置によって有毒ガスを無毒化することができ、不経済であるという問題が解消する。特に、本実施形態では、スクラバー52において有毒成分を溶かす水が、純水生成装置20において循環される水(本実施形態では排水L0)の一部が使用され、さらに、該有毒成分が溶かされた水に紫外線が照射されると共に、イオン交換樹脂部によってイオン交換が施されて純水とされることから、外部に有毒ガスを排出することなく、さらに、該有毒ガスは、純水生成装置20内で破壊されて処理されることから、既存の純水生成装置20を効率的に活用することが可能である。
【0032】
上記した実施形態では、無毒化手段50のスクラバー52に供給される水が、加工装置1から排出され排水タンク21に貯水された排水L0である例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図2に破線で示すように、濾過部22によって濾過された清水L4を無毒化手段50のスクラバー52に供給すべく、清水タンク23に接続された経路109上のポンプP3に導入経路102dを接続し、該導入経路102dをスクラバー52に接続すると共に、図3に基づき説明したノズル部102bに接続してスクラバー52の充填材55の上方に位置付けられる噴射口102cから、清水L4を噴射するようにしてもよい。また、これに替えて、図2に破線で示すように、イオン交換樹脂部25にてイオン交換された純水L6を無毒化手段50のスクラバー52に供給すべく、経路106に接続された経路110上のポンプP4に、導入経路102eを接続し、該導入経路102eをスクラバー52に接続すると共に、図3に基づき説明したノズル部102bに接続してスクラバー52の充填材55の上方に位置付けられる噴射口102cから、清水L6を噴射するようにしてもよい。なお、本発明は、無毒化手段50のスクラバー52に供給する水として、市水を除外するものではない。
【0033】
上記した実施形態では、純水生成装置1を、ダイシング装置1に適用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、研磨装置、研削装置に適用してもよい。また、上記した実施形態では、GaAs基板の加工に使用した後に排出される排水から純水を生成し、該排水からアルシンガスが発生する場合に適用した例を示したいが、本発明はこれに限定されず、水に溶かすことができる有毒成分を含む有毒ガスを無毒化する必要がある純水生成装置であれば、適用することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1:ダイシング装置
2:装置ハウジング
3:チャックテーブル機構
30:チャックテーブル
32:クランプ
4:切削手段
41:切削ブレード
42:切削水供給ノズル
5:カセット
6:仮置きテーブル
7:搬出入手段
8:搬送手段
9:洗浄手段
10:洗浄搬送手段
12:ウエーハ
20:純水生成装置
20A:ハウジング
21:排水タンク
22:濾過部
23:清水タンク
24:紫外線照射部
25:イオン交換樹脂部
26:精密フィルター部
27:純水供給部
50:無毒化手段
51:ファン
52:スクラバー
53:スクラバーケース
53a:排水路
54:下部空間
55:充填材
56:上部空間
57:防滴部材
58:排気空間
59:排出部
100~110:経路
102a:分岐経路
102b:ノズル部
102c:噴射口
102d、102e:導入経路
G1:有毒ガス
G2:排気ガス
図1
図2
図3