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特開2022-156603樹脂組成物、フィルム、積層フィルムおよび機能性フィルム
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  • 特開-樹脂組成物、フィルム、積層フィルムおよび機能性フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156603
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】樹脂組成物、フィルム、積層フィルムおよび機能性フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20221006BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20221006BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20221006BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221006BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G02B5/22
C08K5/00
C08L33/04
B32B27/30 A
G02F1/1335
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060381
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】駒場 澄香
(72)【発明者】
【氏名】田中 由紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 済
【テーマコード(参考)】
2H148
2H291
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA14
2H148CA24
2H148CA29
2H291FA02X
2H291FA13X
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA81Z
2H291FA94X
2H291FA94Z
2H291FA95Z
2H291HA06
2H291HA11
2H291HA15
2H291LA40
4F100AK01A
4F100AK25B
4F100AK41A
4F100AK42A
4F100AK49A
4F100AL05B
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100CA02B
4F100CA13B
4F100EH46B
4F100EJ05B
4F100EJ38A
4F100EJ42B
4F100GB41
4F100JA05B
4F100JB07
4F100JD10
4F100JK12C
4F100JL13C
4F100JN01
4F100YY00A
4F100YY00B
4J002BG021
4J002DD017
4J002DD037
4J002DF037
4J002DG047
4J002DK007
4J002EA037
4J002EE046
4J002EU026
4J002EV237
4J002EY017
4J002FD096
4J002FD207
4J002GP00
(57)【要約】
【課題】色素化合物の色素活性を失活させないように硬化させることができ、耐溶剤性に優れ、特定の波長、特に近赤外を吸収することができるフィルムを提供する。
【解決手段】波長650~950nmに、極大値の吸光係数が1.0×10L/(mоl・cm)以上である吸収ピークを少なくとも1つ以上有する化合物(A)、および、シロキサン結合を含む架橋樹脂(B)を含む架橋樹脂層を備えたフィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長650~950nmに、極大値の吸光係数が1.0×10L/(mоl・cm)以上である吸収ピークを少なくとも1つ以上有する化合物(A)、および、シロキサン結合を含む架橋樹脂(B)を含む架橋樹脂層を備えたフィルム。
【請求項2】
前記化合物(A)の含有割合が、前記架橋樹脂(B)100質量部に対して0.01質量部~20質量部である請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記架橋樹脂(B)がアクリル系樹脂である請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記化合物(A)が四員環を有する化合物である請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項5】
波長650~950nmに、極大値の吸光係数が1.0×10L/(mоl・cm)以上である吸収ピークを少なくとも1つ以上有する化合物(A)、および、アルコキシシリル基を有する樹脂(B’)を含む樹脂組成物。
【請求項6】
さらに重合開始剤を含む請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記重合開始剤が、酸または熱酸発生剤である請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂(B’)は、アルコキシシリル基含有モノマー単位の含有割合が30質量%以上である請求項5~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記アルコキシシリル基が、ジアルコキシシリル基、及び/又は、トリアルコキシシリル基である請求項5~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記樹脂(B’)がアクリル系樹脂である請求項5~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記化合物(A)が四員環を有する化合物である請求項5~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項5~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成される、シロキサン結合を含む架橋樹脂層を備えたフィルム。
【請求項13】
基材フィルムの少なくとも片側に、請求項1、2、3、4及び12のうちのいずれか1項に記載のフィルムを備えた積層フィルム。
【請求項14】
前記基材フィルムがポリエステルフィルムである請求項13に記載の積層フィルム。
【請求項15】
前記基材フィルムがポリイミドフィルムである請求項13に記載の積層フィルム。
【請求項16】
請求項13~15のいずれか1項に記載の積層フィルムの少なくとも片面に機能層を備えた機能性フィルム。
【請求項17】
前記機能層がハードコート層である請求項16に記載の機能性フィルム。
【請求項18】
前記機能層が粘着層である請求項16に記載の機能性フィルム。
【請求項19】
請求項16~18のいずれか1項に記載の機能性フィルムを備えた赤外線カットフィルタ。
【請求項20】
請求項16~18のいずれか1項に記載の機能性フィルムを備えた赤外線透過フィルタ。
【請求項21】
請求項16~18のいずれか1項に記載の機能性フィルムを備えた赤外線センサ。
【請求項22】
請求項13~15のいずれか1項に記載の積層フィルム、または、請求項16~18のいずれか1項に記載の機能性フィルムを備えた画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の波長を吸収することができるフィルム、積層フィルム及び機能性フィルム、並びに、それらを形成するのに用いることができる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などには、カラー画像の固体撮像素子である、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)が用いられている。これら固体撮像素子の受光部には、赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードが用いられている。そのため、固体撮像素子においては、近赤外線カットフィルタを使用して視感度補正を行うことがある。
【0003】
光学機器などの分野では、近赤外線カットフィルタなどのように、特定波長を吸収するフィルタが利用されている。そのような特定波長を吸収するフィルタは、特定波長を吸収する色素化合物を含有する組成物を用いて作製されるのが一般的である。
【0004】
この種の用途に用いられる色素化合物に関しては、例えば特許文献1において、赤外線カットフィルタを製造するための着色硬化性組成物として、所定の構造を有する近赤外線吸収性色素と光架橋性高分子を含む着色硬化性組成物が開示されており、該着色硬化性組成物を、露光処理又は加熱処理によって硬化処理して光吸収層を形成する旨が開示されている。
【0005】
特許文献2には、可視光領域の光を高い透過率で透過させつつ、赤色~近赤外領域の光を選択的に吸収することができるというスクアリリウム化合物と熱硬化性樹脂とを含む樹脂組成物を、例えば150℃以上に加熱して硬化させて光吸収層を備えた学フィルタを作製することが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、近赤外の短波長側の領域の全領域においてバランスよく遮蔽し、かつ、可視領域の光を透過する色素組成物及びこれを用いた光学フィルタとして、スクアリリウム系色素を含有する着色組成物であって、前記スクアリリウム系色素が、波長650~900nmの範囲内において極大吸収波長が50nm以上異なるスクアリリウム化合物を3種類以上含む混合物であることを特徴とする色素組成物及びそれを用いた光学フィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-45391号公報
【特許文献2】特開2019-31638号公報
【特許文献3】特開2020-172614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、色素化合物を含有する光吸収層上に機能層を積層することがあるため、該光吸収層には耐溶剤性が求められる。
前記特許文献1及び2に開示されているように、色素を含む組成物を、光又は熱などによって硬化させて光吸収層を形成すると、光吸収層の耐溶剤性を高めることができる。よって、例えば、光吸収層上に、機能層を形成するための樹脂組成物(溶剤含有)などをコーティングした場合であっても、該光吸収層がコーティング溶剤に相溶するのを防ぐことができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、紫外線などの光照射によって光吸収層を硬化させた場合、色素化合物としてスクアリリウム系色素などを用いた場合には、色素化合物の光学色素活性が失活する場合があることが分かってきた。
また、特許文献2に開示されているように、150℃以上の高温での熱処理を行って光吸収層を硬化させた場合も、色素化合物としてスクアリリウム系色素などを用いた場合には、色素化合物の色素骨格が切断されて光学色素活性が失活する場合があることが分かってきた。
【0010】
そこで本発明は、耐溶剤性に優れ、色素化合物の色素活性を維持することができ、特定の波長、例えば近赤外波長を吸収することができるフィルム、および、該フィルムを形成するのに好適な樹脂組成物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、波長650~950nmに、極大値の吸光係数が1.0×10L/(mоl・cm)以上である吸収ピークを少なくとも1つ以上有する化合物(A)、および、シロキサン結合を含む架橋樹脂(B)を含む架橋樹脂層を備えたフィルムを提案する。
【0012】
本発明はまた、波長650~950nmに、極大値の吸光係数が1.0×10L/(mоl・cm)以上である吸収ピークを少なくとも1つ以上有する化合物(A)、および、アルコキシシリル基を有する樹脂(B’)を含む樹脂組成物を提案する。
【0013】
本発明はまた、前記記載の樹脂組成物から得られる、シロキサン結合を含む架橋樹脂層を備えたフィルムを提案する。
【0014】
本発明はまた、基材フィルムの少なくとも片側に、前記記載のフィルムを備えた積層フィルムを提案する。
【0015】
本発明はまた、前記積層フィルムの少なくとも片面に機能層を備えた機能性フィルム、並びに、該機能性フィルムを備えた画像表示装置を提案する。
【発明の効果】
【0016】
本発明が提案する樹脂組成物によれば、色素化合物の色素活性を失活させないように樹脂組成物を架橋させることができ、例えば本発明が提案するフィルムを形成することができる。よって、本発明が提案する樹脂組成物及びフィルムによれば、耐溶剤性に優れており、しかも、色素化合物の色素活性を維持することができ、特定の波長、例えば近赤外波長を吸収することができるフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】画像表示装置の構成例を示す。
図2】本発明の機能性フィルムの一例を用いた偏光板の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態の例に限定されるものではない。
【0019】
<<本フィルム>>
本発明の実施形態の一例に係るフィルム(「本フィルム」とも称する)は、波長650~950nmに、極大値の吸光係数が1.0×10L/(mоl・cm)以上である吸収ピークを少なくとも1つ以上有する化合物(「色素化合物」とも称する)(A)、および、シロキサン結合を含む架橋樹脂(B)を含む架橋樹脂層(「本架橋樹脂層」とも称する)を備えたフィルムである。
【0020】
<本架橋樹脂層>
本フィルムにおける本架橋樹脂層は、架橋構造を有する架橋樹脂(B)を含み、架橋構造を備えているから、耐溶剤性に優れている。よって、例えば本架橋樹脂層上に、溶剤を含む組成物、例えば機能層を形成するための組成物を塗布したとしても、色素化合物(A)を含む本架橋樹脂層が当該組成物に相溶するのを防ぐことができる。
また、本架橋樹脂層が含有する色素化合物(A)は、波長650~950nmに、極大値の吸光係数が1.0×10L/(mоl・cm)以上である吸収ピークを少なくとも1つ以上有しているから、本架橋樹脂層を形成する際の処理によって、光学色素活性を失活せず維持できていることを確認できる。
【0021】
(色素化合物(A))
色素化合物(A)は、波長650~950nmに、極大値の吸光係数が1.0×10L/(mоl・cm)以上である吸収ピークを少なくとも1つ以上有する化合物であればよい。よって、その範囲に前記吸収ピークが1つ有していてもよいし、2つ有していてもよいし、2つ以上有していてもよい。
前記吸収ピークは、例えば波長650~680nmに1つ以上存在してもよいし、波長680~760nmに1つ以上存在してもよいし、波長760~850nmに1つ以上存在してもよいし、また、波長850~950nmに1つ以上存在してもよい。
【0022】
波長650~950nmに存在する吸収ピークの極大値の吸光係数は、5.0×10L/(mоl・cm)以上であるのが好ましく、その中でも1.0×10L/(mоl・cm)以上であるのがさらに好ましい。また、上限値は限定されないが、3.0×10L/(mоl・cm)以下である。
【0023】
色素化合物(A)、すなわち、波長650~950nmに、極大値の吸光係数が1.0×10L/(mоl・cm)以上である吸収ピークを少なくとも1つ以上有する化合物としては、例えば、スクアリリウム化合物、ジインモニウム化合物、フタロシアニン化合物、ジチオール金属錯体化合物、ナフタロシアニン化合物、アゾ化合物、ポリメチン化合物、アントラキノン化合物、ピリリウム化合物、チオピリリウム化合物、クロコニウム化合物、テトラデヒドオコリン化合物、トリフェニルメタン化合物などを挙げることができる。これらの化合物は、単独で使用してもよいし、また2種以上を組み合わせて混合して使用してもよい。
【0024】
色素化合物(A)はさらに、波長550nm以下における透過率が、70%以上であることが好ましく、中でも80%以上、その中でも85%以上、その中でも90%以上(100%を含む)ことがさらに好ましい。波長550nm以下における透過率を前記範囲とすることで、本フィルムの視感度補正能が向上する傾向がある。
【0025】
色素化合物(A)はさらに、例えば波長650~900nmを吸収して遮蔽する機能を持たせる観点からは、波長650~900nm全域において吸収性を有するのが好ましい。よって、波長650~900nmにおける吸光係数の最低値が1.0×10L/(mоl・cm)以上、中でも5.0×10L/(mоl・cm)以上、その中でも1.0×10L/(mоl・cm)以上であるのがさらに好ましい。
【0026】
本フィルムにおいては、前述のように、吸収させたい波長に応じて、色素化合物の種類、並びに色素化合物の組み合わせなどを適宜選択して採用することができる。
【0027】
また、構造が比較的不安定で、紫外線などの光照射や、150℃以上の加熱によって、構造が壊れる可能性がある色素化合物(A)、例えば四員環構造を有する色素化合物(A)は、本発明の効果をより一層享受できる点から好ましい。
さらにその中でも、近赤外域の吸収が大きく、可視光域の透過率も高いという観点から、色素化合物(A)は、スクアリリウム化合物を含むのが好ましい。
【0028】
なお、色素化合物(A)の吸収ピークの極大値並びに吸光係数(モル吸光係数)は、当該色素化合物を、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン等の溶媒に溶解させた溶液を作製して、紫外可視分光光度計を用いた吸収スペクトルから得ることができる。色素化合物(A)に対する溶媒としてはテトラヒドロフランが好ましい。
前記極大値の吸光係数(モル吸光係数)についても、同様にして測定することができる。
【0029】
[スクアリリウム化合物]
次に、色素化合物(A)の代表例として、スクアリリウム化合物について詳述する。
【0030】
スクアリリウム化合物は、波長650~950nmに、極大値の吸光係数が1.0×10L/(mоl・cm)以上である吸収ピークを少なくとも1つ以上有しており、さらには、波長600nm以下の可視光領域における副吸収が少なく、波長680~900nmにおいて吸収極大すなわち吸収ピークを有する。そのため、色素としてスクアリリウム化合物を用いることにより、近赤外光の遮蔽性と可視領域における透過性が両立可能である近赤外線カットフィルムを得ることができる。
また、スクアリリウム化合物は、後述するように、2つのカルボニル基からなる四員環を有しており、その側鎖の種類を選択することにより、吸収波長を変えることができることが知られている。よって、上述のように、前記側鎖を選択することにより、吸収させたい波長に調整することが可能である点からも、スクアリリウム化合物は色素化合物(A)として好ましい化合物である。
さらに、スクアリリウム化合物は、四員環を有する構造であり、紫外線などの光照射や、150℃以上の加熱によって、構造が壊れる可能性があるから、本発明の効果をより一層享受できる点からも好ましい化合物である。
【0031】
本発明において「スクアリリウム化合物」とは、下記式(1)で示されるように、少なくとも2つのカルボニル基からなる四員環を有する化合物を言う。例えば、中央に四員環を有し、その左右に環を有するものを挙げることができる。左右の環は同一のものでも異なるものでもよく、対称スクアリリウム化合物であっても非対称スクアリリウム化合物であってもよい。
スクアリリウム化合物は、四員環を有する化合物であり、その構造は比較的不安定であるため、150℃以上の加熱及び光照射によって構造が不安定になる。そのため、色素化合物(A)としてスクアリリウム化合物を用いる場合には特に、本架橋樹脂層を形成する際は、150℃以上の加熱及び光照射を避けるのが好ましい。
【0032】
本発明において「スクアリリウム化合物」とは、下記式(1)で示されるように、少なくとも2つのカルボニル基からなる四員環を有する化合物を言う。例えば、中央に四員環を有し、その左右に環を有するものを挙げることができる。左右の環は同一のものでも異なるものでもよく、対称スクアリリウム化合物であっても非対称スクアリリウム化合物であってもよい。
【0033】
【0034】
式(1)中、R1は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
式(1)中のナフタレン環は、任意の置換基を有していてもよく、さらに縮合環を形成していてもよい。
式(1)中のAは置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
【0035】
スクアリリウム化合物は、インドレニル基から誘導される特定の基を有することで吸収ピークが長波長化し、近赤外領域の遮蔽性が良好になると考えられ、また、色素構造の共役系を増やすことでH会合も強くなり、分子内の自由回転が制約されることとなって、可視領域の透過性が良好になると考えられる。
また、スクアリリウム化合物は、Aとして、置換基を有していてもよい芳香族環を有するものであるが、芳香族環による共役拡張による電子過剰官能基として働くことで、Aに由来する吸収極大を近赤外に有するものとなると考えられる。特に、前記Aが、アミノ基を有する芳香族環基、置換基を有していてもよいアミノ基を有するインドレニル基、置換基を有していてもよい七員環以上の非ベンゼノイド基、縮合芳香族環基などの場合には、窒素原子による電子供与性の効果や特定の芳香族環の共役拡張による電子過剰官能基としての働きによって、Aに由来する吸収極大を近赤外領域の所望の波長域に有するものとなると考えられる。
【0036】
スクアリリウム化合物は、前記特定の基に由来する吸収極大と、前記Aに由来する吸収極大とを有することで、それらによって近赤外領域における吸収帯が幅広で吸光度の高いものとなると考えられる。例えば近赤外線カットフィルタにおいて、このスクアリリウム化合物を用いることで、近赤外領域の全領域を遮蔽するのに必要なスクアリリウム化合物の種類数を減らすことができ、それによってスクアリリウム化合物の含有割合も低減され、近赤外領域の遮蔽性と可視領域の透過性を両立可能な近赤外線カットフィルタを得ることができると考えられる。
【0037】
前記式(1)中のR1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
【0038】
前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状、又はそれらを組み合わせたもののいずれでもよく、四角酸部との立体障害を避ける観点から直鎖状のものであることが好ましい。
前記脂肪族炭化水素基の炭素数は特に限定されないが、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましく、4以上が特に好ましく、また、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで単離がしやすくなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで有機溶媒への溶解性が良好となる傾向がある。
【0039】
前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などを挙げることができ、安定性及び溶解性の観点からはアルキル基が好ましい。
前記脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、1-プロピル基、2-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-へキシル基、1-オクチル基などを挙げることができ、これらの中でもインドレニル基から誘導される特定の基の安定性の観点から炭素数4~6のアルキル基が好ましく、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基がより好ましく、1-ブチル基がさらに好ましい。
【0040】
脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、水酸基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、エチレングリコール基、フッ素原子などを挙げることができ、これらの中でもインドレニル基から誘導される特定の基の安定性の観点から無置換であることが好ましい。
【0041】
一方で、前記芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基や芳香族複素環基を挙げることができ、可視領域の副吸収を抑える観点から芳香族炭化水素環基が好ましい。
芳香族環基の炭素数は特に限定されないが、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、7以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることでスクアリリウム化合物の安定性が良好となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで近赤外領域の極大吸収波長を所望なものにできる傾向がある。
【0042】
前記芳香族炭化水素環基における環としては、単環でも縮合環でもよく、可視領域の副吸収を抑える観点からは単環が好ましい。
前記芳香族炭化水素環基の具体例としては、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基を挙げることができる。これらの中でも可視領域の副吸収を抑える観点から1個の遊離原子価を有するベンゼン環が好ましい。
【0043】
前記芳香族複素環基における環としては、単環でも縮合環でもよく、可視領域の副吸収を抑える観点からは単環が好ましい。
前記芳香族複素環基としては例えば、1個の遊離原子価を有する、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、フロピロール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環などの基を挙げることができる。これらの中でも近赤外の吸収極大を調整できる観点から1個の遊離原子価を有するピロール環、チオフェン環が好ましい。
【0044】
前記芳香族環基が有していてもよい置換基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、水酸基、ジロリジン環基、アルコキシ基、アルキル基、フッ素原子などを挙げることができ、これらの中でも近赤外領域の極大吸収波長を所望なものにできるとの観点から無置換であることが好ましい。
【0045】
前記式(1)中のナフタレン環は、任意の置換基を有していてもよく、さらに縮合環を形成していてもよい。
この任意の置換基としては、アルキル基、ジアルキルアミノ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子などを挙げることができ、これらの中でも合成容易性やスクアリリウム化合物の安定性の観点から無置換が好ましい。
また、任意の置換基と縮合環を形成した場合の具体例としては、下記一般式(1’)で表されるものなどを挙げることができる。
【0046】
【0047】
式(1’)中のR1及びAは、前記一般式(1)と同義である。
【0048】
前記式(1’)中のAは、置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
当該芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基や芳香族複素環基を挙げることができ、スクアリリウム化合物の安定性の観点から芳香族炭化水素環基が好ましい。
前記芳香族環基の炭素数は特に限定されないが、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、7以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで極大吸収波長が長波長化する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで溶解性が良好となる傾向がある。
【0049】
前記芳香族炭化水素環基における環としては、単環でも縮合環でもよく、可視領域の副吸収を抑える観点からは単環が好ましい。
前記芳香族炭化水素環基の具体例としては、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環、アズレン環などの基を挙げることができる。これらの中でも溶解性の観点から1個の遊離原子価を有するベンゼン環や1個の遊離原子価を有するアズレン環が好ましい。
【0050】
前記芳香族複素環基における環としては、単環でも縮合環でもよく、可視領域の副吸収を抑える観点からは単環が好ましい。
前記芳香族複素環基としては例えば、1個の遊離原子価を有する、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、フロピロール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、などの基を挙げることができる。これらの中でも電子供与性の高さの観点から1個の遊離原子価を有するピリジン環、1個の遊離原子価を有するチオフェン環が好ましい。
【0051】
芳香族環基が有していてもよい置換基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、水酸基、アルキル基、ジロリジン環基、非ベンゼノイド芳香族環基、ハロゲン原子などを挙げることができ、これらの中でも可視領域における副吸収を抑える観点からジアルキルアミノ基、アルキル基、ジロリジン環基、非ベンゼノイド芳香族環基であることが好ましい。これらの置換基の中でもジアルキルアミノ基、ジロリジン環基、非ベンゼノイド芳香族環基のような、平面性が高く、電子リッチな置換基であれば、近赤外領域の遮蔽性が良好で、可視領域の副吸収が抑えられる効果が高くなる傾向があり好ましい。
【0052】
前記式(1)及び(1’)におけるAは、置換基を有していてもよい芳香族環基であるが、長波長化の観点から、該置換基のHammett定数のσp値がゼロより小さい値であることが好ましい。
Hammett定数σpとしては、Chem.Rev.91巻、165-195頁(1991年)に掲載されている値を用い、置換位置に関わらず、上記文献中のσpのデータを用いて定義する。
【0053】
前記置換基のHammett定数のσp値は、-0.40以下が好ましく、-0.50以下がより好ましく、-0.55以下がさらに好ましく、また、-0.90以上が好ましく、-0.87以上がより好ましく、-0.85以上がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで所望の長波長化できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで近赤外線領域の吸収の位置のチューニングができる傾向がある。
【0054】
前記置換基の具体例としては以下のものを挙げることができる。( )内の数値はHammett定数のσp値を表す。
メチルアミノ基(-0.70)、エチルアミノ基(-0.61)などの炭素数1~12のモノアルキルアミノ基;フェニルアミノ基(-0.56)などの炭素数6~15のモノアリールアミノ基;ジメチルアミノ基(-0.83)、ジエチルアミノ基(-0.72)などの炭素数2~20のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基(-0.67)などの炭素数12~30のジアリールアミノ基。
【0055】
以下、スクアリリウム化合物の具体例を挙げる。スクアリリウム化合物は以下のように共鳴構造を複数書くことができるが、これらは特に断らない限り同義である。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
スクアリリウム化合物は、公知の方法で製造することができる。例えばTop.Heterocycl.Chem.14,133-181(2008)に記載の方法に準じて製造することができる。
【0060】
スクアリリウム化合物は、極大値の吸光係数が1.0×10L/(mоl・cm)以上である吸収ピークを、波長650~950nmの範囲内、特に680~900nmの範囲内に1つ以上有する色素化合物である。
【0061】
なお、吸収ピークの極大吸収波長は、前述の通り、スクアリリウム化合物をテトラヒドロフラン、ジクロロメタン等の溶媒に溶解させた溶液を作製して測定した吸収スペクトルから算出することができる。溶媒としてはテトラヒドロフランを用いるのが好ましい。スクアリリウム化合物が、置換基の結合位置が異なる異性体の混合物である場合、前記極大吸収波長は混合物の吸収スペクトルにおける値である。
【0062】
スクアリリウム化合物において、波長650~950nmの範囲内、特に680~900nmの範囲内における前記吸収ピークの数は、特に限定されない。前記吸収ピークの数は、前述の吸収スペクトルから算出することができる。
なお、波長650~950nmにおける前記吸収ピークの数は、吸収スペクトルに含まれる吸収ピークのうち、その極大吸収波長が波長650~950nmに含まれるものの数を意味する。
【0063】
また、スクアリリウム化合物の波長550nm以下における透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましく、また、この透過率は通常100%以下である。透過率を前記下限値以上とすることで、フィルムの視感度補正能を向上する傾向がある。
透過率は前述の吸収スペクトルから算出することができる。
【0064】
色素化合物(A)として、上記構造を有するスクアリリウム化合物を用いることで、本フィルムの視感度補正能が良好となるので、好ましい。
【0065】
(色素化合物(A)の含有量)
本架橋樹脂層中の色素化合物(A)の含有割合は、特に限定されない。中でも、本架橋樹脂層を構成する全固形分に対して0.01質量%以上であるのが好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。その一方、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下であるのが特に好ましい。
色素化合物(A)の含有割合を上記範囲にすることで、信頼性が向上しやすい、あるいは色素化合物の析出防止などの利点を有する。
【0066】
また、本架橋樹脂層において、色素化合物(A)の含有割合は、架橋樹脂(B)100質量部に対して0.01質量部以上であるのが好ましく、0.05質量部以上であるのがより好ましく、0.1質量部以上であるのがさらに好ましい。その一方、20質量部以下であるのが好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下であるのが特に好ましい。
色素化合物(A)の含有割合を上記範囲にすることで、信頼性が向上しやすい、あるいは色素化合物の析出防止などの利点を有する。
【0067】
(架橋樹脂(B))
架橋樹脂(B)は、本架橋樹脂層の主成分樹脂である。上述のように、色素化合物(A)を含有する層である本架橋樹脂層が架橋構造を有することで、硬度が高まるばかりか、耐溶剤性にも優れたものとなり、例えば本架橋樹脂層に、溶剤を含む組成物、例えば機能層を形成するための組成物を塗布したとしても、色素化合物(A)を含む本架橋樹脂層が当該組成物へ相溶するのを防ぐことができる。
【0068】
なお、前記「主成分樹脂」とは、本樹脂組成物及び本架橋樹脂層を構成する樹脂の中で最も質量割合の高い樹脂を言う。例えば本樹脂組成物及び本架橋樹脂層を構成する樹脂のうち50質量%以上、特に70質量%以上、中でも80質量%以上(100質量%を含む)を占める樹脂である。
【0069】
架橋樹脂(B)は、シロキサン結合を含む架橋樹脂である。
シロキサン結合は、200℃という高温になってもその結合が壊れることがなく、化学的に安定しており、耐熱性、耐候性に優れているという特徴を有している。また、透明性を阻害しない点でも好ましい。
シロキサン結合は、後述するアルコキシシリル基同士の反応により形成することができる。
【0070】
シロキサン結合を含む架橋樹脂としては、例えばポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂;ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼイン;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体;スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体;スチレン-アルキッド樹脂、シリコン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂など、これら透明性を有する樹脂であって、且つ、シロキサン結合を含む樹脂を挙げることができる。
中でも、透明性や加工性の観点から、シロキサン結合を含むアクリル樹脂が特に好ましい。
【0071】
本架橋樹脂層及び架橋樹脂(B)が架橋されているか否か、すなわち架橋構造を有するか否かは、後述するように、TOFSIMSやIRなどの装置を用いて結晶構造を分析して架橋構造の有無を判断することができる。但し、このような方法に限定するものではない。
また、架橋樹脂(B)が、シロキサン結合を含んでいるか否かは、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)による有機構造解析などの手法により判断することができる。但し、このような方法に限定するものではない。
【0072】
(その他の成分)
本架橋樹脂層は、必要に応じて、上記色素化合物(A)および架橋樹脂(B)以外の他の成分を含んでいてもよい。
当該他の成分としては、例えば三フッ化ホウ素、熱重合開始剤、酸増殖剤、シラン系あるいはチタネート系のカップリング剤、可塑剤、希釈剤、シリコーン化合物等の可撓性付与剤、分散剤、湿潤剤、着色剤、顔料、染料、無機質充填剤等の無機添加剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤、酸化防止剤、脱泡剤、離型剤、流れ調整剤等を配合してもよい。
【0073】
<本架橋樹脂層の形成方法及び本樹脂組成物>
本架橋樹脂層は、例えば、前記色素化合物(A)、および、アルコキシシリル基を有する樹脂(B’)、さらに必要に応じて、重合開始剤、架橋剤、溶媒などを含有する樹脂組成物(「本樹脂組成物」とも称する)を用いて形成することができる。但し、この製造方法に限定されるものではない。
【0074】
本架橋樹脂層は、例えば本樹脂組成物を塗布し、必要に応じて150℃未満、特に100℃未満の温度に加熱して乾燥させた後、さらに必要に応じて150℃未満、特に100℃未満の温度に加熱して、アルコキシシリル基を有する樹脂(B’)を加水分解させて脱水縮合させることにより、形成することができる。但し、この製造方法に限定されるものではない。
【0075】
(樹脂(B’))
アルコキシシリル基を有する樹脂(B’)は、加水分解による脱水縮合によって架橋することで、シロキサン結合を有する架橋樹脂となる。
このように、樹脂(B’)は、加水分解による脱水縮合によって架橋させることができるから、色素化合物(A)に熱ダメージを与える温度、具体的には、150℃以上に加熱することなく、樹脂(B’)を架橋させることができる。よって、色素化合物(A)の色素活性を失活させないように、樹脂(B’)を架橋させて本架橋樹脂層を形成することができる。
【0076】
アルコキシシリル基を有する樹脂(B’)としては、例えばポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂;ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼイン;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体;スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体;スチレン-アルキッド樹脂、シリコン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂など、これら透明性を有する樹脂にアルコキシシリル基を導入した樹脂を挙げることができる。
中でも、透明性や加工性の観点から、アルコキシシリル基を導入したアクリル樹脂、すなわち、アルコキシシリル基含有アクリル樹脂が特に好ましい。
【0077】
前記樹脂(B’)が有するアルコキシシリル基は、架橋性の観点から、ジアルコキシシリル基、及び/又は、トリアルコキシシリル基であるのが好ましい。
【0078】
[アルコキシシリル基含有アクリル樹脂]
アルコキシシリル基含有アクリル樹脂は、アクリル系単量体と、アルコキシシリル基含有単量体とをラジカル共重合して得ることができる。
【0079】
前記アクリル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)メタクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
特に炭素数4以上のアルキル基および/又はシクロアルキル基を有するメタクリル酸エステルを60質量%以上使用すると膜安定性が大きく向上する。
【0080】
他方、前記アルコキシシリル基含有単量体は、特に限定されないが、一般式(2)で示されるアルコキシシリル基含有単量体(c1)を用いることが好ましい。
アルコキシシリル基含有単量体(c1)は、一般式(2)で示される有機けい素化合物で、2又は3個のアルコキシ基を有し、反応性二重結合を有する化合物である。
【0081】
(3-a)SiX (2)
【0082】
式(2)中、Rは重合性二重結合を有する1価有機基、Rは炭素数1~4のアルキル基、Xは炭素数1~4のアルコキシ基、aは2又は3である。
【0083】
アルコキシシリル基含有単量体(c1)の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジブトキシシランなどを挙げることができ、これらを1種又は2種以上併用して用いることができる。これらの中でも加水分解の観点から、ビニルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0084】
アルコキシシリル基を有する樹脂(B’)のアルコキシシリル基導入率、すなわち、アルコキシシリル基含有モノマー単位の含有割合は、耐溶剤性の面から、30質量%以上であるのが好ましく、35質量%以上であるのがより好ましく、40質量%以上であるのがさらに好ましい。その一方、膜柔軟性の面から、70質量%以下であるのが好ましく、65以下がより好ましく、60質量%以下であるのが特に好ましい。
【0085】
アルコキシシリル基を有する樹脂(B’)の質量平均分子量は、機械的物性の観点から、1000以上であるのが好ましく、中でも3000以上、その中でも5000以上であるのがさらに好ましい。他方、加工性の観点から、300000以下であるのが好ましく、中でも200000以下、その中でも100000以下であるのがさらに好ましい。
【0086】
アルコキシシリル基を有する樹脂(B’)のガラス転移温度は、耐熱性の観点から、80℃以上であるのが好ましく、中でも90℃以上、その中でも100℃以上であるのがさらに好ましい。また、上限値は限定されないが、150℃以下である。
【0087】
なお、本発明において、樹脂(B’)のガラス転移温度は、当該樹脂を構成するモノマーの質量分率およびガラス転移温度から、下のFOXの式を用いて計算されたものである。実施例で示す値も同様である。
1/Tg=W1/T1+W2/T2+・・・Wn/Tn
この式中、Tgは理論ガラス転移温度(K)であり、W1、W2・・・Wnは各モノマーの質量分率であり、T1、T2・・・Tnは各モノマーの実測ガラス転移温度(K)である。
【0088】
本樹脂組成物において、アルコキシシリル基を有する樹脂(B’)の含有量は、色素化合物の析出防止の観点から、色素化合物(A)の含有量100質量部に対して500質量部以上であるのが好ましく、中でも1000質量部以上、その中でも1.0×10質量部以上であるのがさらに好ましい。他方、信頼性向上の観点から、1.0×10質量部以下であるのが好ましく、中でも5.0×10質量部以下、その中でも1.0×10質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0089】
(重合開始剤)
本樹脂組成物は、必要に応じて、重合開始剤として、アルコキシシリル基を有する樹脂(B’)の加水分解乃至脱水縮合反応を促進させることができるものを添加するのが好ましい。そのようなものとして、酸、又は、熱酸発生剤を挙げることができる。
【0090】
熱酸発生剤は、加熱することにより酸(下記酸の例示参照)を発生する化合物であり、発生した酸を触媒とした重合反応あるいは架橋反応により硬化性化合物を短時間に確実に重合させることができる。また、熱酸発生剤は、熱潜在性に優れており、貯蔵安定性を損なわない点でも優れている。
【0091】
熱酸発生剤としては、例えばスルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩などのオニウム塩等のイオン性の熱酸発生剤や、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、スルホンベンゾトリアゾール化合物等の非イオン性の熱酸発生剤を挙げることができる。
これらの中でも、活性化温度範囲が150℃未満、中でも100℃未満に存在する熱酸発生剤が好ましい。
【0092】
重合開始剤として熱酸発生剤を配合する場合、熱酸発生剤の配合量は、架橋性の観点から、アルコキシシリル基を有する樹脂(B’)100質量部に対して0.4質量部以上であるのが好ましく、中でも0.8質量部以上、その中でも1.0質量部以上であるのがさらに好ましい。他方、ブリードアウト抑制の観点から、10質量部以下であるのが好ましく、中でも8質量部以下、その中でも5質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0093】
他方、酸としては、塩酸、ホウ酸、硝酸、硫酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸のようなアリールスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸のようなパーフルオロアルキルスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、および、ブタンスルホン酸のようなアルキルスルホン酸、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、六フッ化アンチモン等を挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
【0094】
重合開始剤として酸を配合する場合、酸を多量に配合し過ぎると、本樹脂組成物としての安定性を維持することができないため、酸の配合量を抑え、その代わりに架橋剤を配合するのが好ましい。
かかる観点から、重合開始剤として酸を配合する場合、酸の配合量は、架橋性の観点から、アルコキシシリル基を有する樹脂(B’)100質量部に対して0.01質量部以上であるのが好ましく、中でも0.05質量部以上、その中でも0.1質量部以上であるのがさらに好ましい。他方、液安定性の観点から、5質量部以下であるのが好ましく、中でも3質量部以下、その中でも1質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0095】
(架橋剤)
本樹脂組成物は、必要に応じて、架橋剤を配合するのが好ましい。架橋剤を配合することにより、本架橋樹脂層の架橋度を高めることができ、本架橋樹脂層をより硬く形成することができる。また、上述のように、重合開始剤の配合量を抑えたい場合に架橋剤を配合することで、本架橋樹脂層の架橋度を所望の範囲に高めることができる。
【0096】
本樹脂組成物に用いる架橋剤としては、例えば、シリケートオリゴマー、などを挙げることができる。
【0097】
本樹脂組成物に架橋剤を配合する場合、架橋性の観点から、アルコキシシリル基を有する樹脂(B’)100質量部に対して1質量部以上であるのが好ましく、中でも2質量部以上、その中でも3質量部以上であるのがさらに好ましい。他方、膜柔軟性の観点から、20質量部以下であるのが好ましく、中でも15質量部以下、その中でも10質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0098】
(溶媒)
溶媒としては、通常の溶媒を用いることができる。例えばトルエン、ベンゼン及びキシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;トリクロロエタン、テトラクロロエチレンなどの有機塩素化合物などを挙げることができる。これらの溶媒は、1種単独で、又は2種以上を適宜混合して用いることができる。但し、これらに限定するものではない。
これらの溶媒の使用量は、例えば、アルコキシシリル基を有する樹脂(B’)100質量部に対して10~1000質量部の範囲で適宜調整すればよい。
【0099】
(その他成分)
本樹脂組成物は、必要に応じて、三フッ化ホウ素、熱重合開始剤、酸増殖剤、シラン系あるいはチタネート系のカップリング剤、可塑剤、希釈剤、シリコーン化合物等の可撓性付与剤、分散剤、湿潤剤、着色剤、顔料、染料、無機質充填剤等の無機添加剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤、酸化防止剤、脱泡剤、離型剤、流れ調整剤等を配合してもよい。
【0100】
(厚さ)
本架橋樹脂層の厚さは、均質な層とし、且つ色素化合物(A)が有する光吸収特性を好適に発揮させる観点から、0.1μm以上が好ましく、中でも0.5μm以上、その中でも1.0μm以上であるのがさらに好ましい。他方、隣の層との接着性確保の観点から、25μm以下であるのが好ましく、中でも20μm以下、その中でも15μm以下であるのがさらに好ましい。
【0101】
<本フィルムの積層構成>
本フィルムは、本架橋樹脂層を備えていれば、他の層を備えることは任意に可能である。
他の層としては、例えば後述する基材フィルムや各種機能層、その他の層を挙げることができる。
【0102】
<本フィルムの製造方法>
本架橋樹脂層を形成する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶融押出し成形法(Tダイ法、インフレーション法を含む)、カレンダー加工法、ロール加工法、押出成型加工法、ブロー成型法、インフレーション成型法、溶融流延法、加圧成型加工法、ペースト加工法、粉体成型法、及び塗布法などの方法で本樹脂組成物を積層すればよい。
これらの中でも、色素化合物(A)が耐熱性に乏しい性質を有するため、また簡便な方法であることから、架橋樹脂層の形成には塗布法を用いることが好ましい。
【0103】
本樹脂組成物を塗布する方法(塗布法式)としては、例えば、リバースグラビアコート方式、ダイレクトグラビアコート方式、ロールコート方式、ダイコート方式、バーコート方式、及びカーテンコート方式などを挙げることができる。なお、塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著1979年発行に記載例がある。
【0104】
このように本樹脂組成物を塗布した後、必要に応じて150℃未満、特に100℃未満の温度に加熱して乾燥させた後、さらに必要に応じて150℃未満、特に100℃未満の温度に加熱して、アルコキシシリル基を有する樹脂(B’)を加水分解させて脱水縮合させることにより、本架橋樹脂層を形成することができる。
【0105】
<<本積層フィルム>>
本発明の実施形態の一例に係る積層フィルム(「本積層フィルム」とも称する)は、基材フィルム(「本基材フィルム」とも称する)の少なくとも片側に、本フィルムを備えた積層フィルムである。
【0106】
<本基材フィルム>
本基材フィルムは、単層構成であっても、多層構成であってもよい。
本基材フィルムが多層構成の場合、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよい。
多層から構成される例として、例えば、内層、中間層、及び外層を有する3層から構成されていてもよく、3層以上から構成されていてもよい。
【0107】
本基材フィルムは、単層構成であっても、多層構成であっても、各層の主成分樹脂は、加熱により軟化する性質を有する熱可塑性樹脂であれば、特に限定されない。
本基材フィルムは、樹脂組成物を形成しない側の面には、本発明の主旨を損なわない範囲において、その他の層として易接着層、帯電防止層、オリゴマー析出防止層などの機能層を、所望する用途に応じて形成することができる。
【0108】
(熱可塑性樹脂)
本基材フィルムを構成する各層の主成分樹脂としての前記熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂;ポリアミド、アラミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリグリコール酸、ポリスチレン、スチレン共重合ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート;等を挙げることができる。
これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、或いは2種以上を併用して混合樹脂としてもよい。
【0109】
なお、上記「各層の主成分樹脂」とは、本基材フィルムの各層を構成する樹脂のうち最も含有割合の多い樹脂を意味し、例えば本基材フィルムを構成する各層を構成する樹脂のうち50質量%以上、特に70質量%以上、中でも80質量%以上(100質量%を含む)を占める樹脂である。
【0110】
各層の主成分樹脂は、中でもポリエステル又はポリイミド(PI)であるのが好ましい。このようなフィルムを「ポリエステルフィルム」又は「ポリイミドフィルム」と称する。
本基材フィルムを構成する各層は、その主成分樹脂がポリエステル又はポリイミドであれば、ポリエステル又はポリイミド以外のその他の樹脂或いは樹脂以外の成分を含有していてもよい。
中でも、本積層フィルムを光学用途に用いる場合、本基材フィルムは、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルムが好適に用いられる。
【0111】
(ポリエステル)
本基材フィルムを構成する各層の主成分樹脂としてのポリエステル(「本ポリエステル」と称する)は、ホモポリエステルであっても、共重合ポリエステルであってもよい。
【0112】
本ポリエステルが、ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などを挙げることができる。
前記脂肪族グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
【0113】
他方、本ポリエステルが、共重合ポリエステルである場合、そのジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、セバシン酸などの一種または2種以上を挙げることができる。他方、そのグリコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または2種以上を挙げることができる。
【0114】
代表的なポリエステルの具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)を例示することができる。中でも、PET、PENが取扱い性の点で好ましい。
なお、本基材フィルムを構成する各層の主成分樹脂が、例えばポリエチレンテレフタレートである場合、そのフィルムを「ポリエチレンテレフタレートフィルム」と称する。他の樹脂が各層の主成分樹脂である場合も同様である。
【0115】
(ポリイミド)
本基材フィルムは、ポリイミドフィルムも好適である。
前記ポリイミドのイミド化に関しては、例えばジアミンとジアンヒドリド、特に芳香族ジアンヒドリドと芳香族ジアミンとを1:1の当量比でポリアミド酸重合した後にイミド化する方法を例示することができる。
当該芳香族ジアンヒドリドとしては、例えば2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物(TDA)、ピロメリット酸二無水物(1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、及びビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物(SiDA)などを例示することができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
また、前記芳香族ジアミンとしては、例えばオキシジアニリン(ODA)、p-フェニレンジアミン(pPDA)、m-フェニレンジアミン(mPDA)、p-メチレンジアニリン(pMDA)、m-メチレンジアニリン(mMDA)、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)、シクロヘキサンジアミン(13CHD、14CHD)、及びビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(DBOH)などを例示することができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0116】
(他の成分)
本基材フィルムには、所望する用途に応じて、可塑剤、造膜助剤、増粘剤、顔料、顔料分散剤、耐候性改良剤、及び熱安定剤などの添加剤を含有してもよい。
【0117】
(厚み)
本基材フィルムの厚みは、ハンドリング性の観点から9μm以上であるのが好ましく、中でも12μm以上、その中でも18μm以上、その中でも特に20μm以上であるのがさらに好ましい。その一方、薄膜化の観点から、100μm以下であるのが好ましく、中でも80μm以下、中でも50μm以下であるのがさらに好ましい。
【0118】
(本基材フィルムの製法)
本基材フィルムは、例えば樹脂組成物を溶融製膜方法や溶液製膜方法によりフィルム形状にすることにより形成することができる。多層構造の場合は、共押出してもよい。
また、一軸延伸又は二軸延伸したものであってもよい。剛性の点からは、二軸延伸フィルムが好ましい。
【0119】
本基材フィルムは、架橋樹脂層を形成する前、或いは、その他の層を形成する前に、予め、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理を施してもよい。
【0120】
<本積層フィルムの製造方法>
本積層フィルムは、本基材フィルムの少なくとも片面に、本樹脂組成物を例えば塗布して、本樹脂組成物を硬化させて本架橋樹脂層を形成することで、本積層フィルムを作製することができる。但し、本積層フィルムの製造方法をこの方法に限定するものではない。
【0121】
本積層フィルムは、例えば、視感度補正を目的とした、光学フィルムとして用いることができる。本積層フィルムを用いれば、光吸収特性が良好であるために、効率良く視感度補正することができる。
但し、本積層フィルムの用途をかかる用途に限定するものではない。
【0122】
<本積層フィルムの特性>
本積層フィルムは、次のような特性を備えることができる。
【0123】
(光吸収特性)
本積層フィルムは、最大吸収波長が650~720nmに存在するのが好ましく、中でも670~700nmに存在するのがさらに好ましい。
ここで「最大吸収波長」とは、分光吸収スペクトルにおいて、複数の吸収ピークすなわち吸収極大が存在する場合、その中で最大のピーク強度すなわち吸光度を示す吸収ピークのピーク強度すなわち吸収極大波長を意味する。
本積層フィルムの最大吸収波長は、スクアリリウム化合物の種類のほか、光重合開始剤の種類や硬化方法などによって上記範囲に調整することができる。但し、これに限定するものではない。
【0124】
(透過率)
本積層フィルムは、特定の波長、例えば400~550nmおよび750~950nmの波長域の光透過率が80%以上であり、特定の波長、例えば670~680nmの波長域の光透過率が10%以下であるのが好ましい。
本積層フィルムの透過率が、この範囲であることによって、特定の波長を透過し、特定の波長を吸収することができる。
本積層フィルムにおいて、透過率を上記のように調整するには、例えば、色素化合物の種類の選択と組み合わせなどによって調整することができる。但し、これに限定するものではない。
【0125】
(耐溶剤性)
本積層フィルムは、架橋樹脂層自体が緻密な架橋構造を形成することができるため、耐溶剤性を良好とすることができる。
【0126】
<<本機能性フィルム>>
本発明の実施形態の一例に係る機能性フィルム(「本機能性フィルム」とも称する)は、本フィルム又は本積層フィルムの少なくとも片面側、例えば本架橋樹脂層側に機能層を備えたフィルムである。
【0127】
当該機能層とは、色素化合物(A)に由来する機能、例えば光吸収特性などとは異なる機能を有する層のことを指している。
当該機能層の具体例としては、例えばハードコート層、粘着剤層などを代表例として挙げることができる。
【0128】
<ハードコート層>
前記ハードコート層の形成に用いられる樹脂は、主として紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂に代表される活性エネルギー線硬化型樹脂である。この他にも高硬度、高耐擦傷性、基材との密着性、透明性など、ハードコートとして必要な物理的強度と光学的性能を有するものであれば、特に限定されるわけではない。また、これらは単独で用いてもよいし、他の成分(モノマーあるいはプレポリマー)と混合して用いてもよく、目的や用途に応じ、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、表面改質剤など樹脂以外のその他成分を併用してもよい。
【0129】
<粘着剤層>
前記粘着剤層の形成に用いられる粘着剤は、従来から公知の粘着剤を適宜選択して使用できる。例えばアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤などの透明性を有する粘着剤によって形成される。
なお、粘着剤層の厚みは、通常15~50μm程度である。厚みが薄すぎると粘着力(接着力)が弱くなり、厚過ぎるとコスト高となる上、粘着剤による糊汚れが発生し易くなる傾向にあるので、好ましくは20~30μmである。
【0130】
本機能性フィルムは、例えば、視感度補正を目的とした、光学フィルムとして用いることができる。本機能性フィルムを用いれば、光吸収特性が良好であるために、効率良く視感度補正することができる。
但し、本機能性フィルムの用途をかかる用途に限定するものではない。
【0131】
<<用途>>
本フィルム、本積層フィルム又は本機能フィルムは、例えば、青色発光LEDと、緑色及び赤色発光の蛍光体とで構成された白色LEDをバックライト光源に用いた画像表示装置において、バックライトに含まれる赤外光を遮断する目的、周辺機器の誤作動を防止する目的、各着色画素に加えて赤外の画素を形成する目的などで用いることができる。また、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子に用いることで、指紋認証や顔認証に優れた赤外線センサを作製することもできる。これら以外の用途にも利用可能である。
【0132】
<本画像表示装置>
次に、本積層フィルム又は本機能性フィルムの用途の一例として、画像表示装置(「本画像表示装置」と称する)の構成例について説明する。但し、本積層フィル又は本機能性フィルムの用途が以下の構成例に何ら限定されるものではない。
【0133】
本画像表示装置は、前記白色LEDから画像表示面に至る途中の何れかの位置に、本積層フィルム又は本機能性フィルムを備えたものであればよい。
本画像表示装置の構成例としては、例えば、バックライト/プリズムシート/偏光板/表示面(タッチパネル)からなる構成を挙げることができ、特に本画像表示装置の構成例としては、図1に示すように、バックライト/プリズムシート/偏光板/液晶層/電極又は配光膜/カラーフィルター/ガラス基板/偏光板/表示面(タッチパネル)からなる構成例などを挙げることができる。
この際、前記偏光板として、本積層フィルム又は本機能性フィルムの本基材フィルムが、接着層を介して、偏光子の片側に貼り合わされ、機能層が、接着層を介して、保護フィルムに貼り合わされてなる構成を備えた偏光板を挙げる。
但し、本画像表示装置の構成を上記構成例に限定するものではない。
【0134】
また、バックライトとプリズムシートの間、プリズムシートと偏光板の間には、拡散シート、DBEF(Dual Brightness Enhancement Film)などを配置してもよい。
また、図1に示すように、バックライトと液晶層との間には、ガラス基板、偏向板、プリズムシート、拡散シートなどのうちのいずれかの部材が少なくとも1種類以上配置されていてもよい。各部材の配置される順序は表示装置の特性に応じて、適宜選択可能である。
【0135】
(バックライト部材)
前記バックライト部材の光源としては、例えば、青色発光LEDと、緑色及び赤色発光の蛍光体とで構成された白色LED光源をバックライト光源に用いたものを挙げることができる。但し、これに限定するものではない。
そして、例えば、前記白色LED光源と、当該白色LED光源から発する点光または線光を面光へと変換する導光板と、導光板上に配置され導光板から照射された光を拡散及び集光させる光学シート等と、導光板の下部に配置され導光板の下部方向へ進行する光を液晶セル方向へ反射させる反射シートを含む構成例をバックライト部材の構成例として挙げることができる。
当該バックライト部材は、液晶セルの反視認側に配置され、液晶セルの背面側から光を照射することができる。
前記光学シート等は、光を拡散させる拡散シートと、光を集光させる集光シートと、前記集光シートを保護するための保護シートを含んでいてもよい。
【0136】
なお、上記LED光源としては、青色LEDと赤色・緑色蛍光体(RG蛍光体)とを組み合わせて白色光を生成するLED光源(B-RG方式)及び青色LEDとイットリウム・アルミニウム・ガーネット蛍光体(YAG蛍光体)とを組み合わせて白色光を生成するLED光源(B-YAG方式)を好ましく挙げることができる。
RG蛍光体としては、青色光を吸収して赤色蛍光と緑色蛍光を発光する蛍光体であればよい。例えば、特開2003-141905号公報に記載の従来公知のRG蛍光体を用いることができる。
YAG蛍光体としては、青色光を吸収して緑色蛍光を発光する蛍光体であればよく、例えば、特開2008-218486号公報に記載の従来公知のYAG蛍光体を用いることができる。
【0137】
白色LED光源は、導光板の表側と裏側以外の面(端面)に配置(サイドライト型面光源)してもよいし、導光板の裏側に配置(直下型面光源)してもよい。サイドライト型面光源のなかでも、導光板の一側面だけに白色LED光源を配置したエッジライト型面光源は、小型化の可能な観点から好ましい。
【0138】
(導光板)
導光板(側面から入れた光を拡散させ、表面に均一の光を出す薄く光るパネル)や、例えば図1で示されるプリズムシートや拡散シートなどは、従来公知の熱可塑性樹脂等を用いることができる。
当該熱可塑性樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は、一種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0139】
(偏光板)
バックライト側偏光板及び画像表示面側偏光板は、特定の振動方向(偏光軸)の直線偏光のみを通過させる機能を有する部材である。通常、バックライト側偏光板と画像表示面側偏光板は、その偏光軸が互いに直交するように配置される。バックライト部材から射出した非偏光のうち特定の振動方向の直線偏光だけがバックライト側偏光板を通過し、射出し、液晶セルに入射する。次いで、液晶セルに入射した偏光のうち一部は、液晶セルを通過中に偏光軸(振動方向)が90°又は-90°変えられた直線偏光になり、射出し、画像表示面側偏光板に入射する。そして、液晶セルを通過中に偏光軸(振動方向)が90°又は-90°変えられた直線偏光だけが画像表示面側偏光板を通過し、画像表示光となって射出される。
偏光板としては、従来公知の画像表示装置に用いられている偏光板を用いることができる。偏光板は、上述したような偏光特性を有する偏光子のみから構成されている態様や当該偏光子の一面側にのみ保護フィルムが設けられている態様でもよい。ただし、通常、保護フィルム/偏光子/保護フィルムのように偏光子を保護フィルムで挟んだ構成を有する。
【0140】
本発明においては、前述のように、前記偏光板の保護フィルムの一つを置き換えて、ハードコート層付きの本機能性フィルム(機能層が外側)に接着層を介して、偏光子の片側に貼り合わされ、もう一方に接着層を介して、保護フィルムが貼り合わされた偏光板としてもよい(図2)。このように、本機能性フィルムと、偏光子とを組み合わせて積層して偏光板を構成することができるように、本機能性フィルムと、偏光子とを備えた偏光板を構成することができる。
【0141】
(液晶セル)
前記液晶セルは、従来の画像表示装置の液晶セルと同様の構成であり、一般的には、駆動基盤、液晶層、カラーフィルターで構成される。
液晶セルは、例えば、カラーフィルターと、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)基板等の駆動基板とを対向させて1~10μm程度の間隙部を設け、当該間隙部内に液晶化合物を充填して液晶層を形成し、その周囲をシール材で密封した構造を有する。カラーフィルターと対向する電極基板の内面側には液晶を配向させるための液晶配向膜が設けられる。
【0142】
(カラーフィルター)
前記カラーフィルターは、例えば、赤(R)緑(G)青(B)の画素(着色層)を所定の二次元パターン状に配列し、各画素間をブラックマトリクス(BM)層で仕切った構成を有している。
画像表示装置の駆動方式としては、特に限定されず、一般的な画像表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、上記したTFT方式以外に、例えば、TN(Twisted Nematic)方式、IPS(In-Plane Switching)方式、OCB(Optically Compensated Bend)方式、及びMVA(Multi-domain Vertical Alignment)方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
液晶層の液晶化合物としては、画像表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0143】
<画像表示装置>
本積層フィルム又は本機能性フィルムは、画像表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などの画像表示装置に用いることもできる。例えば、本積層フィルム又は本機能性フィルムを、画像表示装置のバックライト(例えば白色発光ダイオード(白色LED))に含まれる赤外光を遮断する目的、周辺機器の誤作動を防止する目的、各着色画素に加えて赤外の画素を形成する目的で用いることができる。
【0144】
画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。
有機EL素子のタンデム構造については、特開2003-45676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線-高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集-」、技術情報協会、326-328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430nm-485nm)、緑色領域(530nm-580nm)及び黄色領域(580nm-620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加え更に赤色領域(650nm-700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。
【0145】
<赤外線センサ>
本積層フィルム又は本機能性フィルムは、赤外線センサに用いることも可能である。
当該赤外線センサの構成例としては、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はない。例えば特開2018-45011号公報の[0201]~[0207]に記載の態様を挙げることができる。
【0146】
<<語句の説明>>
本発明において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【0147】
また、本発明において「シート」とは、シート、フィルム、テープを概念的に包含するものである。
【実施例0148】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0149】
〔基材フィルムF1〕
三菱ケミカル製二軸延伸PETフィルム(T600Eタイプ、厚さ23μm)
【0150】
〔色素化合物(A)〕
実施例及び比較例で用いた色素化合物(A)としての「化合物-1」は、次のようにして合成した。
特開2002-363434号公報の実施例に記載の方法に準拠して、化合物-1(スクアリリウム化合物)を合成した。
【0151】
化合物-1について、テトラヒドロフランを溶媒として、分光光度計を用いて吸光度を測定したところ、674nmに吸収ピークの極大値を有し、該極大値のモル吸光係数は3.6×10L/(mоl・cm)であった。
また、波長650~950nmにおける、極大値の吸光係数が1.0×10L/(mоl・cm)以上のピークの数は1つであり、波長500nm以下における透過率は90%であった。
【0152】
<実施例1>
基材フィルムF1上に下記樹脂組成物1をバーコーターにて塗布し、恒温槽より80℃、2分乾燥後、恒温槽により80℃、24時間の加熱処理を行って、下記樹脂組成物1を脱水縮合により架橋させて厚み13μmの架橋樹脂層を形成し、基材フィルムF1上に架橋樹脂層を備えた積層フィルム(サンプル)を得た。
【0153】
(樹脂組成物1)
(A)色素化合物:化合物-1:0.24質量部
(B)バインダー樹脂:アルコキシシリル基含有アクリル樹脂(B-1):質量平均分子量19,000、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン由来アルコキシシリル基導入量44.5質量%、ガラス転移温度105℃:100質量部
(C)重合開始剤:熱酸発生剤:K-PURE CXC-1612(楠本化成株式会社):ヘキサフルオロアンチモン酸の4級アンモニウム塩、活性化温度80~110℃:2.0質量部
(D)溶媒:テトラヒドロフラン(THF)92.5質量部及びメトキシプロパノールプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)139質量部の混合溶媒
【0154】
<実施例2>
実施例1において、樹脂組成物1を樹脂組成物2に変更した以外は、実施例1と同様に製造し、積層フィルム(サンプル)を得た。
【0155】
(樹脂組成物2)
(A)色素化合物:化合物-1:0.24質量部
(B)バインダー樹脂:アルコキシシリル基含有アクリル樹脂(B-1):質量平均分子量19,000、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン由来アルコキシシリル基導入量44.5質量%、ガラス転移温度105℃:100質量部
(C)重合開始剤:熱酸発生剤:K-PURE CXC-1821(楠本化成株式会社):ホウ酸の4級アンモニウム塩、活性化温度80~110℃:2.0質量部
(D)溶媒:テトラヒドロフラン(THF)92.5質量部及びメトキシプロパノールプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)139質量部の混合溶媒
【0156】
<実施例3>
実施例1において、樹脂組成物1を樹脂組成物3に変更した以外は、実施例1と同様に製造し、積層フィルム(サンプル)を得た。
【0157】
(樹脂組成物3)
(A)色素化合物:化合物-1:0.24質量部
(B)バインダー樹脂:アルコキシシリル基含有アクリル樹脂(B-2):質量平均分子量35,000、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン由来アルコキシシリル基導入量51.3質量%、ガラス転移温度105℃:100質量部
(C)重合開始剤:熱酸発生剤:K-PURE CXC-1612(楠本化成株式会社):ヘキサフルオロアンチモン酸の4級アンモニウム塩、活性化温度80~110℃:2.0質量部
(D)溶媒:テトラヒドロフラン(THF)92.5質量部及びメトキシプロパノールプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)139質量部の混合溶媒
【0158】
<実施例4>
実施例1において、樹脂組成物1を樹脂組成物4に変更した以外は、実施例1と同様に製造し、積層フィルム(サンプル)を得た。
【0159】
(樹脂組成物4)
(A)色素化合物:化合物-1:0.32質量部
(B)バインダー樹脂:アルコキシシリル基含有アクリル樹脂(B-1):質量平均分子量19,000、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン由来アルコキシシリル基導入量44.5質量%、ガラス転移温度105℃:100質量部
(C)重合開始剤:2mol/L塩酸水溶液:3.2質量部
(D)架橋剤:MKCシリケートMS56(三菱ケミカル株式会社):テトラメトキシシランの部分加水分解オリゴマー(SiO2含有量56.0±1.0質量%):6.1質量部
(E)溶媒テトラヒドロフラン(THF)224質量部及びメトキシプロパノールプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)336質量部の混合溶媒
【0160】
<実施例5>
実施例1において、基材フィルムをポリイミドフィルム(厚さ30μm)に変更した以外は、実施例1と同様に製造し、積層フィルム(サンプル)を得た。
【0161】
<比較例1>
実施例1において、樹脂組成物1を樹脂組成物6に変更し、かつ、80℃、2分で乾燥後、高圧水銀灯を用いて、積算光量が400mJ/cmになるように波長250~340nmの紫外線を照射した以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、積層フィルム(サンプル)を得た。
【0162】
(樹脂組成物6)
(A)色素化合物:化合物-1:0.24質量部
(B)バインダー樹脂:アクリル樹脂(B-3):KAYARAD DPCA-60(日本化薬株式会社):100質量部
(C)光開始剤:IRGACURE184(日本触媒製):10質量部
(D)溶媒:テトラヒドロフラン(THF):233質量部
【0163】
実施例・比較例で得た積層フィルムについて以下の評価を行い、結果を表1に示した。
【0164】
(1)塗布性
実施例1~5及び比較例1において、樹脂組成物1~6をそれぞれバーコーターにて塗布した後、その表面状態を目視にて観察して次の基準で評価した。
〇(合格):塗布ムラ(スジ、はじきなど)がない。
×(不合格):塗布ムラ(スジ、はじきなど)がある。
【0165】
(2)光透過性、色素活性
分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス 紫外可視近赤外分光光度計 型式名:U-4100)を用いて、架橋樹脂層面側を測定面として、測定波長400~1200nmにおける積層フィルム(サンプル)の光透過率を測定した。
そして、この際、表1に示した各波長毎に光透過性を、次の基準で評価した。
〇:光透過率が80~100%の場合。
△:10%超で80%未満の場合。
×:0~10%の場合。
【0166】
また、色素活性について、次の基準で評価した。
「有り」:架橋樹脂層の形成前後において、650~750nmにおける光透過性に変化がない場合を、色素化合物の色素活性は失われていないと評価した。
「なし」:架橋樹脂層の形成前後において、650~750nmにおける光透過性に変化があった場合を、色素化合物の色素活性は失われていたと評価した。
【0167】
(3)耐溶剤性
積層フィルム(サンプル)の架橋樹脂層の表面に評価用溶剤1gを滴下し、5秒経過後にラビングテスター(キムワイプ使用)で50往復ラビング処理を行った。
全ての積層フィルム(サンプル)について、評価用溶媒として、酢酸エチル及びエタノールのそれぞれを用いてそれぞれ評価した。
2種類の評価用溶媒について、2種類とも塗膜の外観に変化がないものを「○(合格)」と評価し、1種類でも塗膜の外観に変化が生じたものを「×(不合格)」と評価した。
【0168】
【表1】
【0169】
実施例1~5で得られた積層フィルム(サンプル)は、アルコキシシリル基を有する樹脂を、加水分解させて脱水縮合により架橋させて架橋樹脂層を形成したものであり、該架橋樹脂層は、シロキサン結合を有する樹脂からなる架橋構造を備えたものとなっている。該架橋樹脂層が架橋構造を有している点は、耐溶剤性の観点からも確認できる。
【0170】
実施例1~5で得られた積層フィルム(サンプル)はいずれも、耐溶剤性に優れており、特定の波長を吸収する性質を示すことから、色素化合物の色素活性を失活せず維持したまま耐溶剤性を備えるフィルムであることが分かった。
これに対し、比較例1は、特定の波長を吸収する性質を示さないことから、色素化合物の色素活性は失活したことが確認できる。これは、紫外線照射によって色素化合物が失活した結果であると推測することができる。
【0171】
上記実施例及びこれまで本発明者が行ってきた試験結果による知見から、色素化合物と、シロキサン結合を含む架橋樹脂を含む架橋樹脂層を備えたフィルムであれば、色素化合物の色素活性を失活させないように硬化させることができ、耐溶剤性に優れ、特定の波長を吸収することができるものと理解することができる。
そしてこの際、色素化合物として、波長650~950nmに、極大値の吸光係数が1.0×10L/(mоl・cm)以上の吸収ピークを有する化合物を用いることにより、近赤外領域(波長650~1100nm)吸収して遮蔽することができるフィルムとすることができ、例えば近赤外線カットフィルタとして利用することができる。
図1
図2