(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156771
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】微粒子捕捉用フィルタ、微粒子捕捉用フィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 39/20 20060101AFI20221006BHJP
C03B 33/09 20060101ALI20221006BHJP
B23K 26/382 20140101ALI20221006BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B01D39/20 B
C03B33/09
B23K26/382
B01D39/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060626
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岩田 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】眞下 尚洋
(72)【発明者】
【氏名】龍腰 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】小▲高▼ 秀文
【テーマコード(参考)】
4D019
4E168
4G015
【Fターム(参考)】
4D019AA03
4D019BA04
4D019BA13
4D019BB08
4D019BB09
4D019BC20
4D019BD01
4D019CB06
4E168AD12
4E168DA43
4E168FD01
4E168JA14
4E168JA17
4G015FA09
4G015FB01
(57)【要約】
【課題】レーザ加工技術を利用して製造することが可能な構成を有する、微粒子捕捉用フィルタを提供する。
【解決手段】微粒子捕捉用フィルタであって、第1の表面および第2の表面を有し、厚さが50μm以上である透明な本体と、該本体の前記第1の表面から前記第2の表面まで貫通する複数の貫通孔と、を有し、前記第2の表面からの深さが10μmの位置を基準深さD
Sと定め、各貫通孔において、前記基準深さD
Sにおける最小断面寸法)をφ
Pとし、前記基準深さD
Sと前記第2の表面との間における最小断面寸法をφ
Qとしたとき、φ
Q≦0.6μmであり、φ
Q/φ
P≦0.5である、微粒子捕捉用フィルタ。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子捕捉用フィルタであって、
第1の表面および第2の表面を有し、厚さが50μm以上である透明な本体と、
該本体の前記第1の表面から前記第2の表面まで貫通する複数の貫通孔と、
を有し、
前記第2の表面からの深さが10μmの位置を基準深さDSと定め、
各貫通孔において、前記基準深さDSにおける最小断面寸法をφPとし、前記基準深さDSと前記第2の表面との間における最小断面寸法をφQとしたとき、
φQ≦0.6μmであり、φQ/φP≦0.5である、微粒子捕捉用フィルタ。
【請求項2】
前記φQは、0.2μm以上である、請求項1に記載の微粒子捕捉用フィルタ。
【請求項3】
各貫通孔において、前記第1の表面における最小断面寸法をφ1としたとき、5μm≦φ1≦50μmである、請求項1または2に記載の微粒子捕捉用フィルタ。
【請求項4】
各貫通孔において、前記第2の表面における最小断面寸法をφ2としたとき、
0.2μm≦φ2≦5μmである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の微粒子捕捉用フィルタ。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記第1の表面から前記基準深さDSまで、最小断面寸法が単調に減少する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の微粒子捕捉用フィルタ。
【請求項6】
前記最小断面寸法φQが得られる位置は、前記第2の表面からの深さが、0以上、5μm未満の範囲にある、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の微粒子捕捉用フィルタ。
【請求項7】
当該微粒子捕捉用フィルタは、検査領域を有し、
該検査領域には、100個/mm2以上の前記貫通孔が設置されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の微粒子捕捉用フィルタ。
【請求項8】
前記本体は、基材およびコーティング層を有し、
前記第2の表面は、前記コーティング層の表面である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の微粒子捕捉用フィルタ。
【請求項9】
前記基材は、ガラスまたは樹脂で構成される、請求項8に記載の微粒子捕捉用フィルタ。
【請求項10】
前記コーティング層は、厚さが1μm~5μmの範囲である、請求項8または9に記載の微粒子捕捉用フィルタ。
【請求項11】
微粒子捕捉用フィルタの製造方法であって、
(I)相互に対向する第1の表面および第2の表面を有する透明な基材を準備する工程と、
(II)前記基材の前記第1の表面にレーザ光を照射し、前記基材に前記第1の表面から前記第2の表面まで貫通する、複数の基材貫通孔を形成する工程と、
(III)前記基材の前記第2の表面にコーティング層を設置して、前記基材および前記コーティング層を貫通する複数の貫通孔を形成する工程と、
を有する、製造方法。
【請求項12】
前記(II)の工程の前に、
前記基材の前記第1の表面に、吸収層を設置する工程
を有する、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記(II)の工程後に、
前記基材を湿式エッチング処理する工程
を有する、請求項11または12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記基材貫通孔は、100個/mm2以上の密度で配置される、請求項11乃至13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記コーティング層の表面からの深さが10μmの位置を基準深さDSと定め、
各貫通孔において、前記基準深さDSにおける最小断面寸法をφPとし、前記コーティング層の前記表面における最小断面寸法をφ2とし、前記基準深さDSと前記コーティング層の前記表面との間における最小断面寸法をφQとしたとき、
φQ≦0.6μmであり、φQ/φP≦0.5である、請求項11乃至14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記基材は、厚さが50μm以上である、請求項11乃至15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記基材は、ガラスまたは樹脂で構成される、請求項11乃至16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記コーティング層の厚さは、1μm~5μmの範囲である、請求項11乃至17のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子捕捉用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
溶液中に含まれる異物を適切に捕獲することが可能な微粒子捕捉用フィルタは、医療施設、医薬品製造工場、および高清浄度クリーンルームなど、多くの分野でニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2010/087483号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
微粒子捕捉用フィルタの一構成例として、フィルタの溶液流路の一部に微細な貫通孔を設け、該貫通孔内に微粒子を捕捉させる方式が考えられる。
【0005】
また、そのような微粒子捕捉用フィルタを量産する際に、レーザ加工技術を利用することが考えられる。レーザ加工技術では、被処理体に対して、高い寸法精度で多数の貫通孔を迅速に形成できるためである(例えば、特許文献1)。
【0006】
ただし、微粒子捕捉用フィルタでは、微粒子を確実に捕捉するため、例えば0.6μm以下程度の、極めて微細な貫通孔(微細貫通孔)を形成する必要がある。しかしながら、一般に、レーザ加工技術では、厚さ50μm以上の被処理体に形成される孔の直径は、2μm程度が限界である。このため、高い精度で前述のような微粒子捕捉用の貫通孔を形成することは容易ではない。
【0007】
特に、微粒子捕捉用フィルタでは、例えば、1mm×1mmの検査領域に、1,000個以上の大量の貫通孔を形成する必要が生じ得る。しかしながら、そのような微小な検査領域に対して、レーザ加工法技術により、直径が2μm未満の貫通孔を大量に形成することは極めて難しい。
【0008】
このような背景により、これまで、レーザ加工技術を用いて微粒子捕捉用フィルタを製造した例は、ほとんど認められない。しかしながら、レーザ加工技術を用いて微粒子捕捉用フィルタを製造することができれば、品質や製造コストの点で好ましいと考えられる。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、レーザ加工技術を利用して製造することが可能な構成を有する、微粒子捕捉用フィルタを提供することを目的とする。また、本発明では、そのような微粒子捕捉用フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、微粒子捕捉用フィルタであって、
第1の表面および第2の表面を有し、厚さが50μm以上である透明な本体と、
該本体の前記第1の表面から前記第2の表面まで貫通する複数の貫通孔と、
を有し、
前記第2の表面からの深さが10μmの位置を基準深さDSと定め、
各貫通孔において、前記基準深さDSにおける最小断面寸法)をφPとし、前記基準深さDSと前記第2の表面との間における最小断面寸法をφQとしたとき、
φQ≦0.6μmであり、φQ/φP≦0.5である、微粒子捕捉用フィルタが提供される。
【0011】
また、本発明では、微粒子捕捉用フィルタの製造方法であって、
(I)相互に対向する第1の表面および第2の表面を有する透明な基材を準備する工程と、
(II)前記基材の前記第1の表面にレーザ光を照射し、前記基材に前記第1の表面から前記第2の表面まで貫通する、複数の基材貫通孔を形成する工程と、
(III)前記基材の前記第2の表面にコーティング層を設置して、前記基材および前記コーティング層を貫通する複数の貫通孔を形成する工程と、
を有する、製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、レーザ加工技術を利用して製造することが可能な構成を有する、微粒子捕捉用フィルタを提供することができる。また、本発明では、そのような微粒子捕捉用フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタを模式的に示した上面図である。
【
図2】
図1に示した本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタの検査領域の断面の一例を模式的に示した図である。
【
図3】基材内の基材貫通孔の別の断面を模式的に示した図である。
【
図4】本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタの製造方法のフローの一例を模式的に示した図である。
【
図5】本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタの製造方法の一工程を模式的に示した図である。
【
図6】本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタの製造方法の一工程を模式的に示した図である。
【
図7】本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタの製造方法の一工程を模式的に示した図である。
【
図8】本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタの製造方法の一工程を模式的に示した図である。
【
図9】実施例に係るサンプルに形成された貫通孔の断面の一例を示した写真である。
【
図10】別の実施例に係るサンプルに形成された貫通孔の断面の一例を示した写真である。
【
図11】さらに別の実施例に係るサンプルに形成された貫通孔の断面の一例を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0015】
本発明の一実施形態では、微粒子捕捉用フィルタであって、
第1の表面および第2の表面を有し、厚さが50μm以上である透明な本体と、
該本体の前記第1の表面から前記第2の表面まで貫通する複数の貫通孔と、
を有し、
前記第2の表面からの深さが10μmの位置を基準深さDSと定め、
各貫通孔において、前記基準深さDSにおける最小断面寸法)をφPとし、前記基準深さDSと前記第2の表面との間における最小断面寸法をφQとしたとき、
φQ≦0.6μmであり、φQ/φP≦0.5である、微粒子捕捉用フィルタが提供される。
【0016】
前述のように、レーザ加工技術では、厚さ50μm以上の被処理体に形成される孔の直径は、2μm程度が限界であり、高い精度でより微細な孔を形成することは容易ではない。特に、微小な検査領域に対して、レーザ加工法技術により、直径が2μm未満の貫通孔を大量に形成することは極めて難しい。
【0017】
この点、本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタは、上記のような構成を有する。このような構成を有する微粒子捕捉用フィルタは、後に詳しく示すように、50μm以上の厚さを有するものの、レーザ加工技術を利用して製造することができる。
【0018】
従って、本発明の一実施形態では、高品質および低製造コストで、微粒子捕捉用フィルタを製造することができる。
【0019】
(本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタ)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について、より詳しく説明する。
【0020】
図1および
図2には、本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタの一構成例を模式的に示す。
図1には、本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタ(以下、「第1のフィルタ」と称する)の上面図が示されている。
【0021】
図1に示すように、第1のフィルタ100は、透明な本体110を有する。本体110は、第1の表面112および第2の表面114を有する。本体110には、検査領域120が配置される。
【0022】
なお、
図1に示した例では、第1のフィルタ100は、上面視、略円形の形態を有する。ただし、第1のフィルタ100の形態は、特に限られず、例えば、楕円形、三角形、四角形、または五角形以上の多角形であってもよい。
【0023】
また、
図1に示した例では、検査領域120は、上面視、本体110の略中央に、略正方形状に配置されている。しかしながら、これは単なる一例に過ぎない。検査領域120は、本体110の非中央部分に配置されてもよい。また、検査領域120は、非正方形状、例えば、円形状、楕円形状、矩形状、または五角形以上の多角形状に配置されてもよい。
【0024】
また、検査領域120の数は、必ずしも1箇所に限られず、検査領域120は、本体110の複数の箇所に設けられてもよい。
【0025】
さらに、
図1では、検査領域120が矩形状の枠により、明確に表されている。しかしながら、第1のフィルタ100において、目視では、検査領域120と非検査領域の境界が明確に識別できない場合も、しばしばあり得ることに留意する必要がある。
【0026】
図1の左側の丸枠内には、検査領域120の一部を拡大して示す。この枠内に示すように、検査領域120には、多数の貫通孔122が形成されている。
【0027】
検査領域120における貫通孔122の密度は、特に限られないが、例えば、100個/mm2以上である。
【0028】
貫通孔122の二次元配列の形態は、特に限られない。貫通孔122は、規則的に配列されても、ランダムに配列されてもよい。
【0029】
また、貫通孔122が規則的に配列される場合、配列の態様およびピッチなどは、特に限られない。例えば、
図1に示したように、貫通孔122は、縦横に規則的に配列されてもよい。ピッチは、例えば、10μm~100μmの範囲であってもよい。
【0030】
図2には、本体110の検査領域120の断面の一例を模式的に示す。
図2には、複数の貫通孔122の長手中心軸に沿った断面が示されている。
【0031】
図2に示すように、本体110は、基材140と、該基材140の一方の表面に形成されたコーティング層150とを有する。本体110の第1の表面112は、基材140のコーティング層150が設置されていない側の表面に対応し、第2の表面114は、コーティング層の表面に対応する。
【0032】
図2において、破線D
iは、基材140とコーティング層150の間の境界を表す。ただし、実際には、この境界D
iが不明瞭な場合もしばしば生じ得る。
【0033】
本体110には、多数の貫通孔122が含まれる。各貫通孔122は、本体110の第1の表面112の側に、第1の開口125を有し、第2の表面114に第2の開口127を有する。
【0034】
各貫通孔122は、基材140およびコーティング層150の両方を貫通することにより、形成されている。従って、貫通孔122の第1の開口125は、基材140側の開口であり、第2の開口127は、コーティング層150側の開口である。
【0035】
各貫通孔122において、特に、基材140側の部分を「基材貫通孔132a」と称し、コーティング層150側の部分を「コーティング層貫通孔132b」と称する。
【0036】
図2に示した例では、各貫通孔122において、基材貫通孔132aは、テーパー形状を有し、第1の開口125から境界D
iまで、「最小断面寸法」が単調に減少する。
【0037】
ここで、「(貫通孔の)最小断面寸法」とは、貫通孔122の長手中心軸を通る断面において、対向する側壁同士の最も小さい距離を意味する。従って、貫通孔の断面が円形の場合、「最小断面寸法」は、直径を表し、楕円の場合、「最小断面寸法」は、短軸の寸法を表す。
【0038】
また、正確には、第1の開口125および第2の開口127は、「貫通孔の断面」ではない。しかしながら、本願では、これらの開口125、127の寸法を表す際にも、「最小断面寸法」と言う用語を使用する。
【0039】
図2に示した例では、基材貫通孔132aのテーパー角度θは、例えば、65゜~89゜の範囲である。ここで、基材貫通孔132aのテーパー角度θは、第1の表面112の法線と、基材貫通孔132aの側壁とのなす角で表される。
【0040】
再度
図2を参照すると、貫通孔122のコーティング層貫通孔132bは、基材貫通孔132aに比べて、より複雑な断面形状を有する。
【0041】
例えば、
図2に示した例では、コーティング層貫通孔132bは、境界D
iから第2の表面114の間(ただし、境界D
iは含まない)に、最小断面寸法が最小となる狭窄部154を有する断面形状を有する。すなわち、狭窄部154の最小断面寸法をφ
Qとした場合、φ
Qは、貫通孔122の間で最も小さな最小断面寸法を示す。
【0042】
ここで、各貫通孔122において、本体110の第2の表面114から深さ10μmの位置を「基準深さ」と称し、D
Sで表す。
図2に示すように、基準深さD
Sは、境界D
iよりも本体110の第2の表面114から遠い位置にある。また、基準深さD
Sでの貫通孔122の最小断面寸法をφ
Pで表す。
【0043】
第1のフィルタ100では、上記のように規定される最小断面寸法φPおよびφQを用いた場合、各貫通孔122が
φQ≦0.6μm、および
φQ/φP≦0.5
を満たすという特徴を有する。
【0044】
特に、φQ/φP≦0.4であってもよい。
【0045】
第1のフィルタ100は、一般的なレーザ加工方法では形成することが難しかった、最小断面寸法φQ≦0.6μmを満たす狭窄部154を、各貫通孔122の内部(または第2の表面114)に有する。
【0046】
従って、第1のフィルタ100は、例えば、粒径が0.6μm超程度の微細な微粒子を捕捉するフィルタとして、利用することができる。
【0047】
また、第1のフィルタ100において、基材貫通孔132aの部分は、一般的なレーザ加工技術を用いて形成することができる。レーザ加工技術では、同等の形状の基材貫通孔132aを高精度に形成できる。このため、第1のフィルタ100は、高品質かつ低コストで製造することができる。
【0048】
さらに、第1のフィルタ100では、各貫通孔122において、狭窄部154の深さ位置を、第2の表面114から境界Di(ただし、境界Diの位置は除く)までのいずれかの箇所に揃えることができる。この場合、いずれの貫通孔122においても、ほぼ同等の深さ位置で微粒子を捕捉することが可能となり、微粒子の検出が容易となる。
【0049】
(本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタの各部分)
次に、本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタの各部分について、より詳しく説明する。
【0050】
なお、ここでは、明確化のため、本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタとして、前述の第1のフィルタ100を例に、その各部分について説明する。従って、各部分を表す際には、
図1および
図2に示した参照符号を使用する。
【0051】
(本体110)
図1に示した例では、本体110は、上面視、略円形の形態を有する。ただし、本体110)の形態は、特に限られず、例えば、楕円形、三角形、四角形、または五角形以上の多角形であってもよい。
【0052】
本体110は、透明な材料で構成される。ここで、「透明」とは、波長360nm~830nmにおける平均透過率が80%以上であることを意味する。
【0053】
従って、第1のフィルタ100を用いた場合、赤外線分光分析法、ラマン分光分析法、光学顕微鏡、および蛍光顕微鏡など、一般的な光学的手法により、微粒子を検出することができる。
【0054】
本体110の厚さは、50μm以上であり、60μm以上であることが好ましい。なお、本体110には、特に厚さの上限はないが、本体110の厚さは、例えば、1mm以下であってもよい。
【0055】
本体110の第1の開口125の最小断面寸法をφ1としたとき、φ1は、5μm≦φ1≦50μmであることが好ましい。
【0056】
また、本体110の第2の開口127の最小断面寸法をφ2としたとき、φ1は、0.2μm≦φ2≦5μmであることが好ましい。
【0057】
また、狭窄部154の最小断面寸法φQは、0.2μm以上であることが好ましい。
【0058】
なお、前述のように、レーザ加工技術のみでは、最小断面寸法が0.6μm以下の貫通孔を形成することは難しい。
【0059】
しかしながら、本体110は、基材140およびコーティング層150を有する。従って、第1のフィルタ100では、本体110に、最小断面寸法φQが0.6μm以下の狭窄部154を有する貫通孔122を形成できる。
【0060】
狭窄部154の第2の表面114からの深さをdとしたとき、狭窄部154は、0≦d<5μmの範囲に存在してもよい。なお、狭窄部154は、第2の表面114にあってもよいが、境界Diとは異なる位置に存在する。
【0061】
本体110の検査領域120には、100個/mm2以上の密度で貫通孔122が形成されていることが好ましい。貫通孔122の密度は、500個/mm2~15,000個/mm2の範囲であることがより好ましい。
【0062】
(基材140)
本体110の一部を構成する基材140の種類は、特に限られない。基材140は、例えば、ガラスまたは樹脂のような透明材料で構成されてもよい。
【0063】
基材140の厚さは、50μm以上であることが好ましい。また、基材140の厚さは、例えば、1mm以下であってもよい。
【0064】
なお、
図2に示した基材貫通孔132aの断面形状は、単なる一例であり、基材貫通孔132aは、異なる断面を有してもよい。例えば、基材貫通孔132aは、
図3に示すような断面形状を有してもよい。
【0065】
図3には、基材貫通孔132aの別の断面を模式的に示す。なお、
図3には、本体110のうち、基材140の部分のみが示されており、コーティング層150は示されていない。
【0066】
図3に示すように、この基材貫通孔132aは、基材140の内部に基材狭窄部148を有する。基材貫通孔132aは、この基材狭窄部148から、基材140のそれぞれの表面に向かって、「最小断面寸法」が増加するような形状を有する。
【0067】
このような断面形態を有する基材貫通孔132aは、後述するように、微細な貫通孔を有する基材140を湿式エッチング処理した際に、生じ易い。
【0068】
このように、本発明の一実施形態において、基材貫通孔132aの断面形状は、特に限られないことに留意する必要がある。
【0069】
(コーティング層150)
コーティング層150の種類は、透明である限り、特に限られない。
【0070】
コーティング層150の材料としては、透明であれば特に問われないが、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウムを主とする材料が低屈折率であり透過率を高く保てる点で好ましい。またシリカ、酸化ハフニウム、酸化タンタル、フッ化マグネシウムを主とする材料が紫外域での消衰係数が小さい点で好ましい。
【0071】
コーティング層150は、特に、シリカまたはフッ化マグネシウムで構成されることが、屈折率が低く、消衰係数が広い波長域で低い点で好ましい。
【0072】
コーティング層150の厚さは、特に限られないが、例えば、0.1μm~5μmの範囲であることが好ましい。
【0073】
なお、コーティング層の厚さは、最大10μm以下である。従って、本体110の第2の表面114から境界Diまでの深さは、第2の表面114から基準深さDSまでの距離よりと等しいか、あるいはより小さい。
【0074】
以上、第1のフィルタ100を例に、本発明の一実施形態について説明した。
【0075】
しかしながら、上記記載は、単なる一例であり、本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタは、他の形態を有してもよい。
【0076】
例えば、
図2に示した例では、第1のフィルタ100のコーティング層貫通孔132bは、狭窄部154から第2の表面114に向かって、最小断面寸法が徐々に増加する。しかしながら、これとは異なり、コーティング層貫通孔132bは、境界D
iから第2の表面114に向かって、最小断面寸法が徐々に減少する形態を有してもよい。その場合、第2の開口127の最小断面寸法がφ
Qとなる。
【0077】
また、例えば、コーティング層貫通孔132bは、その一部に、コーティング層の厚さ方向と平行に延在するストレート部分を有してもよい。
【0078】
すなわち、本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタにおいて、基材貫通孔132aおよびコーティング層貫通孔132bは、前述の特徴を有する限り、いかなる形状を有してもよい。
【0079】
さらに、上記記載では、透明な本体に貫通孔が形成されている場合を例に、本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタについて説明した。しかしながら、本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタは、貫通孔の代わりにスリットを有してもよい。
【0080】
(本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタの製造方法)
次に、
図4~
図8を参照して、本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタの製造方法の例について説明する。
【0081】
図4には、本発明の一実施形態による微粒子捕捉用フィルタの製造方法(以下、「第1の方法」と称する)のフローを模式的に示す。
【0082】
図4に示すように、第1の方法は、
(1)相互に対向する第1の表面および第2の表面を有する透明な基材を準備する工程(工程S110)と、
(2)前記基材の前記第1の表面にレーザ光を照射し、前記基材に前記第1の表面から前記第2の表面まで貫通する、複数の基材貫通孔を形成する工程(工程S120)と、
(3)前記基材の前記第2の表面にコーティング層を設置して、前記基材および前記コーティング層を貫通する複数の貫通孔を形成する工程(工程S130)と、
を有する。
【0083】
以下、
図5~
図8も参照して、各工程について説明する。なお、ここでは、微粒子捕捉用フィルタとして、前述の
図1および
図2に示した第1のフィルタを例に、その製造方法について説明する。従って、微粒子捕捉用フィルタの各部分を参照する際には、
図1および
図2に示した参照符号を使用する。
【0084】
(工程S110)
まず、透明な基材140が準備される。
【0085】
図5には、基材140の斜視図を示す。基材140は、第1の表面142および第2の表面144を有する。
【0086】
なお、
図5に示した例では、第1の表面142および第2の表面144は、略円形の形状を有する。しかしながら、第1の表面142および第2の表面144の形状は、特に限られない。第1の表面142および第2の表面144は、例えば、楕円形、三角形、矩形、または五角形以上の多角形等の形状を有してもよい。
【0087】
基材140は、透明である限り、いかなる材料で構成されてもよい。基材140は、例えば、ガラスまたは樹脂で構成されてもよい。
【0088】
基材140の厚さは、50μm以上であることが好ましい。
【0089】
なお、次の工程S120の前に、基材140の第1の表面142に、吸収材が設置されてもよい。吸収材を設置した場合、基材140に照射されるレーザ光のエネルギーをより効率的に吸収することができる。従って、次の工程S120において、より低いエネルギーで高品質にレーザ加工を実施することが可能となる。
【0090】
ただし、吸収材220の設置は任意である。
【0091】
図6には、基材140の第1の表面142に吸収材220が設置された状態を模式的に示す。
【0092】
吸収層220は、利用されるパルスレーザの少なくとも一部のエネルギーを吸収する機能を有する限り、その材料は特に限られない。吸収層110は、例えば合成樹脂インクやカーボンブラック等を含む顔料であってもよい。
【0093】
(工程S120)
次に、基材140の第1の表面142の側からレーザ光が照射され、基材貫通孔132aが形成される。
【0094】
レーザ光の種類は、特に限られないが、UVレーザが好ましい。
【0095】
レーザ光は、例えば、短パルスレーザであってもよい。
【0096】
図7には、基材貫通孔132aが形成された基材140の断面を模式的に示す。なお、
図7において、吸収材220は省略されている。
【0097】
レーザ光の照射により、基材140には、第1の表面142から第2の表面144まで延在する、複数の基材貫通孔132aが形成される。
【0098】
図7に示すように、レーザ光照射により形成された基材貫通孔132aは、断面が第1の表面142から第2の表面144に向かってテーパー化された形状を有する傾向がある。
【0099】
テーパー角度θ1は、例えば、65゜~89゜の範囲である。
【0100】
各基材貫通孔132aは、基材140の第1の表面142に第1の開口226aを有し、第2の表面144に第2の開口226bを有する。
【0101】
第1の開口226aの最小断面寸法は、例えば、4μm~30μmの範囲であり、4μm~15μmの範囲であることが好ましい。
【0102】
また、第2の開口226bの最小断面寸法は、例えば、2μm~10μmの範囲であり、2μm~5μmの範囲であることが好ましい。
【0103】
形成される基材貫通孔132aの数は、特に限られない。微粒子捕捉用フィルタに利用される場合、基材貫通孔132aの密度は、例えば、100個/mm2以上であり、500個/mm2~15,000個/mm2の範囲であることが好ましい。
【0104】
基材貫通孔132aの形成後に、基材140を湿式エッチング処理してもよい。
【0105】
湿式エッチングを行うことにより、吸収材220およびレーザ加工の際に生じたデブリ等を除去できる。
【0106】
例えば、基材140がガラスの場合、湿式エッチング処理は、フッ酸溶液中で実施されてもよい。
【0107】
なお、湿式エッチング処理を実施した場合、しばしば、基材貫通孔132aの形状が変化し得る。例えば、基材貫通孔132aの第1の開口226aは、4.1μm~30.1μmの範囲に変化し得る。また、第2の開口226bの最小断面寸法は、例えば、2.1μm~10.1μmの範囲に変化し得る。
【0108】
また、基材貫通孔132aの断面の形状も、大きく分けて2通りの態様で変化し得る。
【0109】
第1の態様では、テーパー角度θ1が維持されたまま、基材貫通孔132aの断面寸法が拡張される。
【0110】
第2の態様では、前述の
図3に示したような断面形状が得られる。すなわち、基材貫通孔132aは、第1の表面142と第2の表面144との間に、基材狭窄部148を有するような形状となる。
【0111】
図3に示したような断面形態は、基材140の厚さが厚い場合、ならびに/または第1の開口226aおよび第2の開口226bの寸法が小さい場合に生じ易い。
【0112】
すなわち、第1の開口226aおよび第2の開口226bの寸法が小さい場合、エッチング溶液が基材貫通孔132aの内部に十分に浸透することが難しくなる。その場合、基材貫通孔132aの両表面142、144に近い部分が選択的にエッチングされ、
図3に示したような基材狭窄部148を有する基材貫通孔132aが形成される。
【0113】
基材140の厚さが厚い場合も、同様である。
【0114】
このように、湿式エッチング処理の前後で、基材貫通孔132aの形状が変化し得る。しかしながら、本願では、湿式エッチング処理後の基材貫通孔132aを、そのまま「基材貫通孔132a」と称する。
【0115】
また、湿式エッチングにより、基材140の第1の表面142および第2の表面144がエッチングされると、それぞれ別の表面(新生面)が露出される。
【0116】
しかしながら、基材140の第1の表面142および第2の表面144のエッチング量は僅かである。従って、ここでは、湿式エッチング処理以降も、基材140のそれぞれの露出表面を、そのまま、「第1の表面142」および「第2の表面144」と称することにする。
【0117】
(工程S130)
次に、基材140の第2の表面144に、コーティング層が設置される。
【0118】
この工程は、基材貫通孔132aの先端の寸法および形状を調整するために実施される。
【0119】
コーティング層の設置方法は、特に限られない。
【0120】
コーティング層は、例えば、スパッタ法または蒸着法等により、基材140の第2の表面144上に設置されてもよい。
【0121】
スパッタ法または蒸着法では、基材貫通孔132aが閉塞される可能性を有意に低減でき、基材貫通孔132aと連通されたコーティング層貫通孔132bを有するコーティング層を適切に形成することができる。
【0122】
前述のように、コーティング層の種類は、特に限られない。コーティング層は、例えば、シリカ、アルミナ、MgO、MgF、またはTa2O5等で構成されてもよい。
【0123】
コーティング層の厚さは、最大でも10μm以下であり、例えば、0.1μm~5μmの範囲である。
【0124】
図8には、基材140の第2の表面144に、コーティング層150を設置した後の状態を模式的に示す。なお、
図8において、破線L1は、基材140とコーティング層150の境界、すなわちD
iを表す。ただし、境界D
iは、しばしば、光学顕微鏡および電子顕微鏡では認識することは難しい場合がある。
【0125】
図8に示すように、コーティング層150は、各基材貫通孔132aに対応するコーティング層貫通孔132bを有するように形成される。換言すれば、コーティング層150のコーティング層貫通孔132bは、基材140内に形成された基材貫通孔132aを、コーティング層150の表面152まで延在させるように形成される。
【0126】
これにより、基材140の第1の表面142からコーティング層150の表面152まで貫通する、貫通孔122を形成することができる。
【0127】
貫通孔122は、コーティング層150の表面152の側に第3の開口240cを有する。
【0128】
第3の開口240cの最小断面寸法φ2は、0.2μm~5μmの範囲である。
【0129】
このように、第1の方法では、基材140の第1の表面142から、コーティング層150の表面152にわたる複数の貫通孔122を形成することができる。
【0130】
これらの貫通孔122は、前述のように規定される最小断面寸法φPおよびφQを用いた場合、
φQ≦0.6μm、および
φQ/φP≦0.5
を満たす。
【0131】
ここで、φ
Pは、基準深さDsの位置(
図8には示されていない)での貫通孔122の最小断面寸法である。
【0132】
また、貫通孔122において、最小断面寸法φQが得られる位置は、第3の開口240c部分であってもよい。この場合、φ2=φQである。
【0133】
第1の方法では、一般的なレーザ加工方法では形成することが難しかった、最小断面寸法φQ≦0.6μmを満たす狭窄部154を、各貫通孔122の内部(またはコーティング層150の表面152)に形成することができる。
【0134】
従って、第1の方法で製造されたフィルタは、例えば、粒径が0.6μm超程度の微細な微粒子を捕捉するフィルタとして、利用することができる。
【0135】
また、第1の方法では、基材貫通孔132aの部分は、一般的なレーザ加工技術を用いて形成することができる。このため、第1の方法では、高品質かつ低コストで微粒子捕捉用フィルタを製造することができる。
【0136】
さらに、第1の方法では、各貫通孔122において、狭窄部154の深さ位置を、コーティング層150の表面152から境界Di(ただし、境界Diの位置は除く)までのいずれかの箇所に揃えることができる。この場合、いずれの貫通孔122においても、ほぼ同等の深さ位置で微粒子を捕捉することが可能となり、微粒子の検出が容易となる。
【実施例0137】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、以下の記載において、例1~例3は、実施例であり、例11は、比較例である。
【0138】
(例1)
以下の方法により、評価用サンプルを作製した。
【0139】
まず、相互に対向する第1の表面および第2の表面を有する基材を準備した。基材は、厚さ200μmのガラス基板とした。
【0140】
次に、この基材の第1の表面の側にレーザ光を照射して、複数の貫通孔(基材貫通孔)を形成した。レーザ光には、パルス波のレーザを使用した。
【0141】
次に、スパッタリング法により、基材の第2の表面にコーティング層を成膜した。コーティング層は、厚さが3.1μmのシリカ層とした。成膜後に、基材からコーティング層まで貫通する貫通孔が得られた。
【0142】
これにより、評価用サンプル(以下、「サンプル1」と称する)が作製された。
【0143】
サンプル1の貫通孔において、基材の側の第1の開口の最小断面寸法φ1、およびコーティングの側の第2の開口の最小断面寸法φ2を測定した。その結果、φ1=8.0μm、φ2=3.4μmであった。
【0144】
(例2)
例1と同様の方法により、評価用サンプルを作製した。ただし、この例2では、コーティング層の厚さは、4.3μmとした。
【0145】
作製された評価用サンプルを「サンプル2」と称する。
【0146】
サンプル2の貫通孔において、基材の側の第1の開口の最小断面寸法φ1、およびコーティングの側の第2の開口の最小断面寸法φ2を測定した。その結果、φ1=8.0μm、φ2=2.7μmであった。
【0147】
(例3)
例1と同様の方法により、評価用サンプルを作製した。ただし、この例3では、コーティング層の厚さは、4.9μmとした。
【0148】
作製された評価用サンプルを「サンプル3」と称する。
【0149】
サンプル3の貫通孔において、基材の側の第1の開口の最小断面寸法φ1、およびコーティングの側の第2の開口の最小断面寸法φ2を測定した。その結果、φ1=8.0μm、φ2=2.8μmであった。
【0150】
(例11)
例1と同様の方法により、ガラス基板に基材貫通孔を形成し、これを評価用サンプルとして使用した。すなわち、例11では、シリカ層のコーティングを実施しなかった。
【0151】
得られた評価用サンプルを「サンプル11」と称する。
【0152】
サンプル11の貫通孔において、基材の側の第1の開口の最小断面寸法φ1、およびコーティングの側の第2の開口の最小断面寸法φ2を測定した。その結果、φ1=8.0μm、φ2=2.0μmであった。
【0153】
以下の表1には、各サンプルの作製条件をまとめて示した。
【0154】
【表1】
(断面評価)
作製された各サンプルを、いくつかの貫通孔の長手中心軸を通る断面で切断し、評価用試料を作製した。また、評価用試料を用いて、以下の寸法を測定した:
基準深さD
S(コーティング層の表面から10μmの位置)における貫通孔の最小断面寸法φ
P、および
貫通孔の狭窄部における最小断面寸法φ
Q。
【0155】
ここで、狭窄部は、貫通孔の最小断面寸法が最も小さくなる深さ位置として定められる。
【0156】
なお、サンプル11を除き、狭窄部の位置は、コーティング層の内部であった。一方、サンプル11では、狭窄部は、基材の第2の表面であった。
【0157】
図9~
図11には、それぞれ、サンプル1~サンプル3におけるコーティング層側の貫通孔の断面の一例を示す。
【0158】
なお、
図9~
図11において、一部が白っぽく見えるのは、光の反射によるものであり、そのような部分は、必ずしも貫通孔の輪郭線に対応していないことに留意する必要がある。特に、コーティング層内の狭窄部近傍には、白く尖って見える領域があるが、これは、貫通孔の先端ではない。いずれの図においても、貫通孔は、コーティング層の表面に開口を有する。
【0159】
以下の表2には、各評価用試料において得られた各寸法をまとめて示す。
【0160】
【表2】
測定の結果から、サンプル1~サンプル3では、コーティング層内に、最小断面寸法φ
Qが0.6μm以下の狭窄部が形成されていることがわかった。
【0161】
また、サンプル1~サンプル3では、比φQ/φPが0.5以下であることがわかった。