(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156959
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】歩行支援機
(51)【国際特許分類】
A61H 3/00 20060101AFI20221006BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61H3/00 B
B25J11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060909
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 明人
【テーマコード(参考)】
3C707
4C046
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707HS27
3C707HT33
3C707XK02
3C707XK06
3C707XK12
3C707XK27
3C707XK45
4C046AA25
4C046AA42
4C046BB07
4C046CC01
4C046DD02
4C046DD06
4C046DD12
4C046DD15
4C046DD38
4C046DD39
4C046DD41
4C046FF02
4C046FF12
4C046FF25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】受動歩行を基礎とした歩行支援機における歩行支援機能等の諸機能を更に向上させる技術を提供する。
【解決手段】歩行支援機1は、股関節付近の側方に配される第1軸部3と、大腿部U11の側方に配される第1リンク部4と、第1リンク部4の上端側を保持しつつ、第1軸部3を中心として前後方向に回転可能な保持部5と、保持部5に固定され保持部5と共に第1軸部3を中心として回転可能な弾性変位部6と、追従部64が圧縮バネにより付勢された状態で圧接されると共に、第1軸部3からの距離が周方向に沿って変化するカム面を有し、第1軸部3を中心として利用者Uの前後方向に回転可能な回動部7と、回動部7から外側に延びた形をなし、利用者Uの歩行動作に伴う慣性揺動により、圧縮バネが圧縮されるように回動部7と共に一方向X1に回転する揺動部8とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の股関節付近の側方に配される第1軸部と、
前記利用者の大腿部の側方に配される第1リンク部と、
前記第1リンク部の上端側を保持しつつ、前記第1軸部を中心として前記利用者の前後方向に回転可能な保持部と、
圧縮バネ、前記圧縮バネの一端と当接し前記一端の位置を決定する決定部、前記圧縮バネの他端と当接し前記圧縮バネの伸縮に応じて変位する変位部、及び前記変位部に接続される追従部を有し、前記保持部に固定され前記保持部と共に前記第1軸部を中心として回転可能な弾性変位部と、
前記追従部が前記圧縮バネにより付勢された状態で圧接されると共に、前記第1軸部からの距離が周方向に沿って変化するカム面を有し、前記第1軸部を中心として前記利用者の前後方向に回転可能な回動部と、
前記回動部から外側に延びた形をなし、前記利用者の歩行動作に伴う慣性揺動により、前記圧縮バネが圧縮されるように前記回動部と共に一方向に回転する揺動部とを備える歩行支援機。
【請求項2】
前記揺動部の前記慣性揺動が、前記利用者の遊脚の着地に伴うものであり、
前記第1リンク部が配される前記大腿部が、前方に振り出される際に、前記圧縮バネに蓄えられた弾性エネルギーが、前記第1リンク部を前方に振り出す方向に回転させる運動エネルギーに変換される請求項1に記載の歩行支援機。
【請求項3】
前記利用者が静止している状態において、前記揺動部による重力モーメントと、前記圧縮バネで付勢された前記追従部によるトルクとが釣り合うことで、前記揺動部が静止する請求項1又は請求項2に記載の歩行支援機。
【請求項4】
前記揺動部は、前記回動部から外側に延びたアーム部、及び前記アーム部に取り付けられる錘部を有する請求項1~請求項3の何れか一項に記載の歩行支援機。
【請求項5】
前記アーム部は、前記回動部から後方側に延びている請求項4に記載の歩行支援機。
【請求項6】
前記利用者の一方の脚に装着される請求項1~請求項5の何れか一項に記載の歩行支援機と、
前記利用者の他方の脚に装着される請求項1~請求項5の何れか一項に記載の歩行支援機とを備える歩行支援機。
【請求項7】
利用者の股関節付近の側方に配される第1軸部と、
前記利用者の大腿部の側方に配される第1リンク部と、
圧縮バネ、前記圧縮バネの一端と当接し前記一端の位置を決定する決定部、前記圧縮バネの他端と当接し前記圧縮バネの伸縮に応じて変位する変位部、及び前記変位部に接続される追従部を有する弾性変位部と、
前記追従部が前記圧縮バネにより付勢された状態で圧接されると共に、前記第1軸部からの距離が周方向に沿って変化するカム面を有し、前記第1軸部を中心として前記利用者の前後方向に回転可能であり、前記第1リンク部の上端側を保持する保持部と、
前記弾性変位部が固定され、前記弾性変位部と共に前記第1軸部を中心として前記利用者の前後方向に回転可能な回動部と、
前記回動部から外側に延びた形をなし、前記利用者の歩行動作に伴う慣性揺動により、前記圧縮バネが圧縮されるように前記回動部と共に一方向に回転する揺動部とを備える歩行支援機。
【請求項8】
前記揺動部の前記慣性揺動が、前記利用者の遊脚の着地に伴うものであり、
前記第1リンク部が配される前記大腿部が、前方に振り出される際に、前記圧縮バネに蓄えられた弾性エネルギーが、前記第1リンク部を前方に振り出す方向に回転させる運動エネルギーに変換される請求項7に記載の歩行支援機。
【請求項9】
前記利用者が静止している状態において、前記揺動部による重力モーメントと、前記圧縮バネで付勢された前記追従部によるトルクとが釣り合うことで、前記揺動部が静止する請求項7又は請求項8に記載の歩行支援機。
【請求項10】
前記揺動部は、前記回動部から外側に延びたアーム部、及び前記アーム部に取り付けられる錘部を有する請求項7~請求項9の何れか一項に記載の歩行支援機。
【請求項11】
前記アーム部は、前記回動部から後方側に延びている請求項10に記載の歩行支援機。
【請求項12】
前記利用者の一方の脚に装着される請求項7~請求項11の何れか一項に記載の歩行支援機と、
前記利用者の他方の脚に装着される請求項7~請求項11の何れか一項に記載の歩行支援機とを備える歩行支援機。
【請求項13】
前記利用者の腰に装着され、前記第1軸部を保持する腰装着部を備える請求項1~請求項12の何れか一項に記載の歩行支援機。
【請求項14】
前記第1リンク部の下端側を保持しつつ、前記利用者の大腿部又は下腿部に装着される脚装着部を備える請求項1~請求項13の何れか一項に記載の歩行支援機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行支援機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に示されるように、利用者の脚に装着させて歩行を支援する歩行支援機が知られている。この歩行支援機は、人の自然な歩行に最も近い歩行原理である受動歩行を基礎として、本願発明者により開発されたものである。
【0003】
受動歩行型の歩行支援機は、利用者(例えば、中程度以上の歩行障害者)の歩行時の姿勢を支えることを主目的とした装具とは全く異なり、利用者(例えば、軽度の歩行障害者)が自身の脚で歩行する際の「脚の振り出し動作」を支援(アシスト)するものである。このような歩行支援の手法は、人が自然な歩行を行う上で重要な「脚の振り出し動作」に着目したものであり、本願発明者によって初めて提唱され、近年、特に注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/092162号
【特許文献2】特開2016-39865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、受動歩行を基礎とした歩行支援機の更なる歩行支援機能の向上が求められている。
【0006】
本発明の目的は、受動歩行を基礎とした歩行支援機における歩行支援機能等の諸機能を更に向上させる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1> 利用者の股関節付近の側方に配される第1軸部と、前記利用者の大腿部の側方に配される第1リンク部と、前記第1リンク部の上端側を保持しつつ、前記第1軸部を中心として前記利用者の前後方向に回転可能な保持部と、圧縮バネ、前記圧縮バネの一端と当接し前記一端の位置を決定する決定部、前記圧縮バネの他端と当接し前記圧縮バネの伸縮に応じて変位する変位部、及び前記変位部に接続される追従部を有し、前記保持部に固定され前記保持部と共に前記第1軸部を中心として回転可能な弾性変位部と、前記追従部が前記圧縮バネにより付勢された状態で圧接されると共に、前記第1軸部からの距離が周方向に沿って変化するカム面を有し、前記第1軸部を中心として前記利用者の前後方向に回転可能な回動部と、前記回動部から外側に延びた形をなし、前記利用者の歩行動作に伴う慣性揺動により、前記圧縮バネが圧縮されるように前記回動部と共に一方向に回転する揺動部とを備える歩行支援機。
【0008】
<2> 前記揺動部の前記慣性揺動が、前記利用者の遊脚の着地に伴うものであり、 前記第1リンク部が配される前記大腿部が、前方に振り出される際に、前記圧縮バネに蓄えられた弾性エネルギーが、前記第1リンク部を前方に振り出す方向に回転させる運動エネルギーに変換される前記<1>に記載の歩行支援機。
【0009】
<3> 前記利用者が静止している状態において、前記揺動部による重力モーメントと、前記圧縮バネで付勢された前記追従部によるトルクとが釣り合うことで、前記揺動部が静止する前記<1>又は<2>に記載の歩行支援機。
【0010】
<4> 前記揺動部は、前記回動部から外側に延びたアーム部、及び前記アーム部に取り付けられる錘部を有する前記<1>~<3>の何れか1つに記載の歩行支援機。
【0011】
<5> 前記アーム部は、前記回動部から後方側に延びている前記<4>に記載の歩行支援機。
【0012】
<6> 前記利用者の一方の脚に装着される前記<1>~<5>の何れか1つに記載の歩行支援機と、前記利用者の他方の脚に装着される前記<1>~<5>の何れか1つに記載の歩行支援機とを備える歩行支援機。
【0013】
<7> 利用者の股関節付近の側方に配される第1軸部と、前記利用者の大腿部の側方に配される第1リンク部と、圧縮バネ、前記圧縮バネの一端と当接し前記一端の位置を決定する決定部、前記圧縮バネの他端と当接し前記圧縮バネの伸縮に応じて変位する変位部、及び前記変位部に接続される追従部を有する弾性変位部と、前記追従部が前記圧縮バネにより付勢された状態で圧接されると共に、前記第1軸部からの距離が周方向に沿って変化するカム面を有し、前記第1軸部を中心として前記利用者の前後方向に回転可能であり、前記第1リンク部の上端側を保持する保持部と、前記弾性変位部が固定され、前記弾性変位部と共に前記第1軸部を中心として前記利用者の前後方向に回転可能な回動部と、前記回動部から外側に延びた形をなし、前記利用者の歩行動作に伴う慣性揺動により、前記圧縮バネが圧縮されるように前記回動部と共に一方向に回転する揺動部とを備える歩行支援機。
【0014】
<8> 前記揺動部の前記慣性揺動が、前記利用者の遊脚の着地に伴うものであり、 前記第1リンク部が配される前記大腿部が、前方に振り出される際に、前記圧縮バネに蓄えられた弾性エネルギーが、前記第1リンク部を前方に振り出す方向に回転させる運動エネルギーに変換される前記<7>に記載の歩行支援機。
【0015】
<9> 前記利用者が静止している状態において、前記揺動部による重力モーメントと、前記圧縮バネで付勢された前記追従部によるトルクとが釣り合うことで、前記揺動部が静止する前記<7>又は<8>に記載の歩行支援機。
【0016】
<10> 前記揺動部は、前記回動部から外側に延びたアーム部、及び前記アーム部に取り付けられる錘部を有する前記<7>~<9>の何れか1つに記載の歩行支援機。
【0017】
<11> 前記アーム部は、前記回動部から後方側に延びている前記<10>に記載の歩行支援機。
【0018】
<12> 前記利用者の一方の脚に装着される前記<7>~<11>の何れか1つに記載の歩行支援機と、前記利用者の他方の脚に装着される前記<7>~<11>の何れか1つに記載の歩行支援機とを備える歩行支援機。
【0019】
<13> 前記利用者の腰に装着され、前記第1軸部を保持する腰装着部を備える前記<1>~<12>の何れか1つに記載の歩行支援機。
【0020】
<14> 前記第1リンク部の下端側を保持しつつ、前記利用者の大腿部又は下腿部に装着される脚装着部を備える前記<1>~<13>の何れか1つに記載の歩行支援機。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、受動歩行を基礎とした歩行支援機における歩行支援機能等の諸機能を更に向上させる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態1に係る歩行支援機が利用者の右脚に装着された状態を示す説明図
【
図5】右脚に歩行支援機を装着した利用者が、左脚を前方へ振り出して着地した状態を示す説明図
【
図6】揺動部の慣性揺動と、それに伴って変位するカムフォロアとの関係を示す歩行支援機の断面図
【
図7】右脚に歩行支援機を装着した利用者が、右脚を前方へ振り出して着地した状態を示す説明図
【
図18】実施形態12に係る歩行支援機の第1軸部付近の分解断面図
【
図19】実施形態12に係る歩行支援機の第1軸部付近の断面図
【
図20】実施形態13に係る歩行支援機の第1軸部付近の説明図
【
図27】実施形態20に係る歩行支援機が利用者の右脚に装着された状態を示す説明図
【
図31】右脚に歩行支援機を装着した利用者が、左脚を前方へ振り出して着地した状態を示す説明図
【
図32】揺動部の慣性揺動と、それに伴って変位するカムフォロアとの関係を示す歩行支援機の断面図
【
図33】右脚に歩行支援機を装着した利用者が、右脚を前方へ振り出して着地した状態を示す説明図
【
図44】実施形態31に係る歩行支援機の第1軸部付近の分解断面図
【
図45】実施形態31に係る歩行支援機の第1軸部付近の断面図
【
図46】実施形態32に係る歩行支援機の第1軸部付近の説明図
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態1>
本発明の実施形態1に係る歩行支援機1を、
図1~
図7を参照しつつ説明する。
図1は、実施形態1に係る歩行支援機1が利用者Uの右脚U1に装着された状態を示す説明図であり、
図2は、実施形態1の歩行支援機1の斜視図であり、
図3は、
図2のA-A線断面図であり、
図4は、
図2のB-B線断面図である。
図1における右側を「前方側(前側)」とし、同図左側を「後方側(後側)」とし、同図上側を「上方側(上側)」とし、同図下側を「下方側(下側)」として、歩行支援機1を説明する。なお、歩行支援機1の前後方向及び上下方向は、利用者Uの前後方向及び上下方向にそれぞれ対応している。
【0024】
本実施形態の歩行支援機1は、利用者Uの右脚U1に装着して使用される右脚U1用の歩行支援機1であり、例えば、利用者の右脚U1が患脚であり、左脚U2が健脚である場合に利用される。
【0025】
人(健常者)の歩行動作は、健脚である双方の脚(右脚、左脚)が協働することで実現される。これに対して、一方の脚が患脚である非健常者の場合、他方の脚が健脚であっても、その人(非健常者)の歩行動作は、患脚を庇うような不自然なものとなる。つまり、一方の脚が患脚となれば、たとえ他方の脚が健脚であっても、歩行動作は、両脚とも不自然なものとなる。本実施形態では、歩行支援機1を患脚である右脚U1に装着しているが、他の実施形態においては、右脚U1が健脚であり、左脚U2が患脚である利用者Uの右脚U1に歩行支援機1を装着してもよい。
【0026】
歩行支援機1は、主として、腰装着部2、第1軸部3、第1リンク部4、保持部5、弾性変位部6、回動部7、揺動部8、脚装着部9を備えている。
【0027】
腰装着部2は、歩行支援機1を利用者Uの腰U3に固定するための部材であり、主として、腰装着ベルト21、腰宛部22、懸架部23を備えている。
【0028】
腰装着ベルト21は、腰U3の周りに巻かれる形で利用者Uに装着される。腰装着ベルト21は、皮、布、プラスチック等によって帯状に形成されたベルト状部材21aと、ベルト状部材21aの締め付け具合を調整しながら固定できるバックル21bとを有しており、一般的なベルトと同様の方法で腰U3に取り付けられる。バックル21bとしては、ピンバックル、無段階固定型のバックル等の公知のバックが用いられる。
【0029】
腰宛部22は、腰装着ベルト21と第1軸部3等との間を繋ぎつつ、第1軸部3が利用者Uの股関節付近の側方に配されるように、腰U3の側方に宛がわれる部材である。腰宛部22は、全体的には、可撓性を備えた概ね板状をなしており、歩行時の腰U3の動きに合わせて、ある程度、変形可能である。このような腰宛部22は、例えば、合成樹脂製の板材等で構成されてもよい。腰宛部22の上部側には、ベルト貫通孔22aが設けられており、このベルト貫通孔22aにベルト状部材21aが通されることによって、腰宛部22が腰装着部2に取り付けられる。なお、ベルト状部材21aと腰宛部22との取り付け方法は、これに限られず、他の取り付け方法であってもよい。また、腰宛部22の下部側には、
図3に示されるように、第1軸部3が挿通される孔部を含む軸孔部22bが設けられている。第1軸部3は、軸孔部22bの孔部に挿通されて、回転自在な状態で保持される。
【0030】
懸架部23は、腰宛部22よりも前方側において、腰装着ベルト21と第1軸部3等との間に架設される部材である。懸架部23の上部側は、腰宛部22よりも前方側に配置されており、腰宛部22から離されている。これに対して、腰宛部22の下部側は、腰宛部22と一体的に形成されており、腰宛部22と繋がっている。このような懸架部23と、腰装着ベルト21と、腰宛部22とにより、略逆三角形が形成される。そして、そのような略逆三角形の下側の頂角の位置に、第1軸部3が配置されることで、第1軸部3が所定箇所(股関節付近の側方)に配置され易くなっている。懸架部23は、腰宛部22と同様、全体的には、可撓性を備えた概ね板状の部材(例えば、合成樹脂製の板材等)により構成される。なお、本実施形態の懸架部23は、2つの帯状部分からなる。具体的には、懸架部23の上部側を構成し、かつ上部側がベルト状部材21aに対して回転可能な状態で固定される第1懸架部23aと、懸架部23の下部側を構成し、かつ上部側が第1懸架部23aに対して回転可能な状態で固定されると共に、下部側が腰宛部22に対して一体的に繋がっている第2懸架部23bとからなる。ベルト状部材21a及び第1懸架部23aは、軸状の連結部23cを介して互いに回転可能な状態で固定され、第1懸架部23a及び第2懸架部23bは、軸状の連結部23dを介して互いに回転可能な状態で固定される。
【0031】
第1軸部3は、保持部5や回動部7等を、利用者Uの前後方向に回転可能な状態で支持する軸部であり、上記のように腰装着部2に取り付けられた状態で、利用者Uの股関節付近の側方に配される。なお、第1軸部3の軸方向は、左右方向(紙面に対して垂直な方向)に沿った状態となっている。
【0032】
第1軸部3は、左右方向に延びた軸本体部31と、軸本体部31の一方の端部31aに取り付けられる抜け止め部32と、抜け止め部32を軸本体部31の端部31aに取り付ける際に利用されるネジ33とを備えている。本実施形態の軸本体部31は、保持部5と一体的に形成されており、軸本体部31の他方の端部31b側が、保持部5と繋がっている。軸本体部31は、全体的には、左右方向(一方向)に延びた円柱状をなしており、その軸本体部31の中心側に、軸方向に沿ったネジ孔31cが形成されている。軸本体部31は、腰宛部22に設けられている軸孔部22bに挿通されることで、腰装着部2に取り付けられる。このように軸本体部31は、軸孔部22bに挿通された状態で、後述するように保持部5や回動部7等を、回転可能な状態で支持する。抜け止め部32は、軸本体部31の直径よりも大きな直径を備える円盤状をなし、その中心側に貫通孔部32aが設けられている。抜け止め部32は、ネジ33が貫通孔部32aに挿通され、かつネジ孔31cにねじ込まれることにより、軸本体部31の端部31aに取り付けられる。腰宛部22には、軸本体部31が挿通される軸孔部22bの周りに、円盤状の抜け止め部32を収容するための凹部状の収容部22cが形成されている。なお、後述するように、第1軸部3の軸本体部31の周り等には、摩擦低減部材34が設けられている。
【0033】
第1リンク部4は、主として、歩行支援機1が利用者Uに装着された際に、脚(本実施形態の場合、右脚U1)の大腿部U11の外側の側方(以下、「外側方」と称する)に配される部分である。第1リンク部4は、互いに間隔を保ちつつ平行に並んだ2本の棒状部材41を備えている。棒状部材41は、
図1に示されるように、利用者Uが起立した状態において、長手方向が、概ね上下方向に沿う形で配される。棒状部材41の上端41a側(つまり、第1リンク部4の上端4a側)は、後述する保持部5によって保持(固定)される。また、棒状部材41の下端41b側(つまり、第1リンク部4の下端4b側)は、後述する脚装着部9によって保持(固定)される。
【0034】
第1リンク部4を構成する棒状部材41は、適度な剛性(強度)と共に、適度な弾性を備えている。このような棒状部材41を備えた第1リンク部4は、歩行支援機1の利用時等に受ける長手方向に沿った力(例えば、第1リンク部4を長手方向に沿って引っ張るように働く力や、長手方向に沿って圧縮するように働く力)に対して、十分な剛性等を備えており、第1リンク部4の破断や折れ曲がりが防止される。また、第1リンク部4の長手方向における両端部(上端及び下端)が互いに近付くように歩行支援機1の利用時等において力が加えられても、第1リンク部4は、十分な剛性等を備えているため、折れ曲がりが防止される。また、第1リンク部4は、長手方向に沿った軸線(回転軸)を中心として捻じるような力が加えられると、第1リンク部4は、捻じれるように弾性変形することができる。
【0035】
棒状部材41を構成する素材としては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の剛性の合成樹脂(剛性樹脂)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の繊維強化プラスチック(FRP)等が挙げられる。棒状部材41を軸線に対して垂直な方向に切断した際の断面形状は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はなく、四角形、三角形等の多角形、円形、楕円形等であってもよい。また、棒状部材41として、中空の筒状部材(パイプ状部材)を使用してもよい。
【0036】
脚装着部9は、第1リンク部4の下端4b側を保持しつつ、利用者Uの右脚U1の大腿部U11又は下腿部U12に装着される部材である。本実施形態では、脚装着部9が下腿部U12に装着される場合を例示する。脚装着部9は、主として、下端保持部91、回転接続部92、第2リンク部93、脚装着ベルト94を備えている。
【0037】
下端保持部91は、第1リンク部4の下端4b側を保持(固定)する部材であり、その下端保持部91の下端側に、回転接続部92が取り付けられている。回転接続部92は、第1リンク部4の下端4b側を保持する下端保持部91と、その下端保持部91の下方に配される第2リンク部93との間に配され、第1リンク部4及び第2リンク部93を、互いに回転可能な状態で接続する。そのため、第2リンク部93は、回転接続部92を中心として前後方向に回転することができる。
【0038】
第2リンク部93は、主として、上端保持部93aと、下端保持部93bと、それらの間に配される2本の棒状部材(不図示)とを備えている。棒状部材を構成する素材は、第1リンク部4の棒状部材41と同様であってもよい。第2リンク部93は、
図1に示されるように、利用者Uが起立した状態において、長手方向が概ね上下方向に沿う形で配される。
【0039】
第2リンク部93は、棒状部材の長手方向において伸縮可能であり、利用者Uの体格に合わせて脚装着ベルト94の装着位置を調整することができる。上端保持部93aは、互いに間隔を保ちつつ平行に並んだ2本の棒状部材の各上端側を、長手方向にスライド可能な状態で保持する。また、下端保持部93bは、2本の棒状部材の各下端側を、長手方向にスライド可能な状態で保持する。
図1等には、第2リンク部93が最も縮んで、2本の棒状部材が上端保持部93a及び下端保持部93bの内部に収容されている状態が示されている。
【0040】
脚装着ベルト94は、全体的には、環状をなし、利用者Uの下腿部U12の周りに巻かれる形で、下腿部U12に装着される。脚装着ベルト94を構成する素材としては、例えば、伸縮可能な帯状のゴム、合成樹脂、布、皮革等が挙げられ、特に制限されない。なお、脚装着ベルト94は、第2リンク部93の下端保持部93bに対して、脚宛部95を介して取り付けられる。脚宛部95は、下端保持部93bに固定されると共に、下腿部U12の外側方に宛がわれる部分であり、合成樹脂等で構成される。脚宛部95は、概ね前後方向に貫通するように設定された通し孔95aを備えており、その通し孔95aに脚装着ベルト94が通されることで、脚装着ベルト94が脚宛部95に取り付けられる。
【0041】
このような脚装着部9が、第1リンク部4の下端4b側に取り付けられることにより、第1リンク部4が、利用者Uの右脚U1の動きに連動して、第1軸部3を中心として前後方向に回転することができる。
【0042】
保持部5は、第1リンク部4の上端4a側を保持しつつ、第1軸部3を中心として前後方向(利用者Uの前後方向)に回転可能な部材である。保持部5は、主として、保持本体部51と、ハウジング部52とを備えている。
【0043】
保持本体部51は、第1リンク部4の上端4a側を保持(固定)する部材であり、主に保持部5の下側部分を構成する。ハウジング部52は、全体的には、概ね浅底のカップ状(容器状)をなしており、その内側に後述する回動部7が収容される。ハウジング部52は、上下方向に沿って広がった概ね円形板状(円盤状)のハウジング本体部52aと、そのハウジング本体部52aの周縁から、利用者U側に向かって延びた周壁部52bとを備えている。ハウジング本体部52aのうち、利用者U側を向く面52a1側に、第1軸部3の軸本体部31が立設されている。保持部5は、このように第1軸部3の軸本体部31と固定されているため、第1軸部3を中心として、利用者Uの前後方向に回転自在な状態となっている。なお、保持部5には、後述する弾性変位部6が固定されている。保持部5を構成する素材としては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、金属又は合金からなる金属系材料、合成樹脂等が挙げられる。本実施形態の場合、保持部5は、金属系材料かなる。
【0044】
弾性変位部6は、後述する回動部7が備えるカム部73のカム面73aと共に、第1軸部3の周りに関節トルクを発生させる。弾性変位部6は、主として、圧縮バネ61、決定部62、変位部63、カムフォロア(追従部の一例)64、収容部65を備えている。
【0045】
圧縮バネ61は、所定のバネ係数を備えたコイル状のもの(圧縮コイルバネ)からなり、筒状をなした収容部65内に収容されている。収容部65内に収容されている圧縮バネ61の一端には、金属製の円柱状の決定部62が配されている。決定部62は、圧縮バネ61の一端と当接するように、収容部65内に配されている。決定部62の外周面には、螺旋状のネジ外周面62aが形成されており、このネジ外周面62aが、収容部65の内周面に形成されている螺旋状のネジ内周面65aと螺合することによって、決定部62が筒状の収容部65内で固定される。なお、決定部62の端面には、マイナス溝(不図示)が形成されており、この溝にマイナスドライバ等の工具が差し込まれて、決定部62が回転されると、決定部62が収容部65内を上昇又は下降して、圧縮バネ61の端部位置(つまり、圧縮バネ61のバネ圧縮量)が調節される。なお、筒状をなした収容部65の一方の端部(先端部)には、蓋部66が収容部65に対して着脱可能な状態で取り付けられている。蓋部66は、収容部65の先端部にある開口部65bを塞ぐものであり、ネジ内周面65aと螺合可能なネジ面を外周面に備えている。決定部62の位置(つまり、圧縮バネ61の端部位置)を調節する際は、適宜、蓋部66が、収容部65から取り外され、調節後は、再度、収容部65の開口部65bを塞ぐように取り付けられる。
【0046】
変位部63は、筒状の収容部65の他方の端部側(基部側)に配されており、圧縮バネ61の他端と当接して、決定部62との間で圧縮バネ61を挟む構成となっている。また、変位部63は、収容部65内を圧縮バネ61の伸縮方向(収容部65の軸方向、圧縮バネ61の軸方向)に沿って変位する部分となっている。この変位部63には、ローラ部64aを備えたカムフォロア(追従部の一例)64が取り付けられている。カムフォロア64は、圧縮バネ61に付勢された状態で、カム面73aの形状に沿って追従するように移動可能である。特に、カムフォロア64は、カム面73a上を移動する際、摺動摩擦が低減等される。ローラ部64aは、変位部63に固定されている軸部64bに対して、回転自在な状態で取り付けられており、後述する回動部7が備えるカム面73aに、圧縮バネ61で付勢された状態で圧接される。ローラ部64aは、回転するカム面73aの形状に応じて、収容部65の軸方向(回動部7の径方向)に沿って上昇又は下降する。ローラ部64aが上昇した場合、カムフォロア64と共に変位部63が上昇し、圧縮バネ61が圧縮される。これに対して、ローラ部64aが下降した場合、カムフォロア64と共に変位部63が下降し、圧縮バネ61が弾性復帰して伸長する。
【0047】
なお、収容部65の基部側に、カムフォロア64のローラ部64aを収容するカムフォロア収容部67が設けられている。このカムフォロア収容部67には、カムフォロア64のローラ部64aが、収容部65の軸方向(圧縮バネ61の伸縮方向、軸方向)に沿って変位(昇降)できるように収容されている。なお、収容部65は、圧縮バネ61等を収容した状態で、上述した保持部5のハウジング部52(ハウジング本体部52a)に対して、一体的に形成されている。また、カムフォロア収容部67も、ハウジング部52(ハウジング本体部52a)に対して、一体的に形成されている。このように収容部65及びカムフォロア収容部67は、保持部5に固定されている。
【0048】
回動部7は、カムフォロア64のローラ部64aが圧接されると共に、第1軸部3からの距離が周方向に沿って変化するカム面73aを有し、第1軸部3を中心として利用者Uの前後方向に回転可能な部材である。回動部7は、全体的には、平面視で略円形をなした板状部材であり、金属又は合金からなる金属系材料を所定形状に加工したものからなる。回動部7は、主として、板状の回動本体部71と、回動本体部71を厚み方向に貫通する形で設けられ、第1軸部3の軸本体部31が挿通される軸孔部72と、回動本体部71の周縁部の一部からなるカム部73とを備えている。
【0049】
回動部7は、軸孔部72に、第1軸部3が挿通された状態で、保持部5のハウジング部52内に収容される。回動部7は、このように軸孔部72に第1軸部3が挿通されることで、第1軸部3を中心として利用者Uの前後方向に回転自在な状態となっている。
【0050】
なお、軸孔部72の内周面と、第1軸部3の軸本体部31の外周面との間には、それらの間の摩擦抵抗を低減等することを目的とした合成樹脂製の摩擦低減部材34が設けられている。摩擦低減部材34は、筒状をなした第1摩擦低減部34aと、第1摩擦低減部34aの一端から外側に環状に張り出した第2摩擦低減部34bとを備えている。第1摩擦低減部34aは、軸本体部31に外嵌する形で取り付けられる部分であり、軸本体部31の外周面と、軸孔部72の内周面との間の摩擦抵抗を低減する。第2摩擦低減部34bは、軸本体部31の端部31aに取り付けられている抜け止め部32と、凹部状の収容部22cとの間で挟まれる形で、収容部22cに収容され、第1軸部3の抜け止め部32と、収容部22cとの間の摩擦抵抗を低減する。
【0051】
カム部73は、回動本体部71に対して一体的に形成されており、回動本体部71と同様の金属系材料から構成されている。回動本体部71は、略円形状であり、その周縁部分が略円弧状をなしている。この回動本体部71の略円弧状の周縁部の一部に割り当てられる形で、カム部73が形成されている。そして、このカム部73の外周面が、カムフォロア64のローラ部64aが圧接されるカム面73aとなっている。つまり、カム面73aは、第1軸部3に対して回転可能(回転自在)な状態で軸支されている回動部7に設けられている。なお、カム部73が形成されていない回動本体部71の略円弧状の周縁部を非カム部74と称する。この非カム部74において、後述する揺動部8が回動部7に対して一体的に固定される。
【0052】
カム部73は、
図4に示されるように、略半円弧状をなしており、第1軸部3の中心Oから、外周面(カム面73a)までの距離が、前方から後方にかけて周方向に亘って漸次、大きくなるように設定されている。また、本実施形態では、
図4に示されるように、歩行支援機1が静止している状態において、後述する重力下でカム部73が前方の斜め下方を向く姿勢で釣り合って、回動部7が第1軸部3に軸支されている。
【0053】
例えば、
図4に示されるように、カム部73の前側寄りの部分におけるカム面73aと中心Oとの距離(回動部7の半径)r1と、それよりも後側寄りの部分におけるカム面73aと中心Oとの距離(回動部7の半径)r2とを比べると、距離r2の方が大きくなっている。中心Oとカム面73aまでの距離(回動部7の半径)が大きくなるにしたがって、圧縮バネ61のバネ圧縮量が大きくなり、その結果、第1軸部3の周りに発生するトルクも大きくなる。
【0054】
外側(利用者Uの反対側)を向く回動部7の第1表面7aには、軸孔部72の周りを取り囲むように環状の摩擦低減部材75が設けられている。この摩擦低減部材75は、回動部7の第1表面7aと、保持部5のハウジング部52(ハウジング本体部52a)における利用者U側を向く面52a1との間の摩擦抵抗を低減すること等を目的としたものであり、回動部7(回動本体部71)の第1表面7a側に設けられている環状の凹溝76内に収容される形で回動本体部71に取り付けられている。摩擦低減部材75は、上述した摩擦低減部材34と同様、合成樹脂等からなる。また、内側(利用者U側)を向く回動部7の第2表面7bには、軸孔部72の周りを取り囲むように環状の摩擦低減部材77が設けられている。この摩擦低減部材77は、回動部7の第2表面7bと、外側を向く腰宛部22の表面22dの間の摩擦抵抗を低減すること等を目的としたものであり、回動部7(回動本体部71)の第2表面7b側に設けられている環状の凹溝78内に収容される形で回動本体部71に取り付けられている。摩擦低減部材77も、摩擦低減部材75と同様、合成樹脂等からなる。
【0055】
揺動部8は、回動部7に固定されており、回動部7と共に、第1軸部3を中心として一方向及びその逆方向の双方に回転できるように構成されている。この揺動部8は、人の骨盤の動きを模擬する形で、人(利用者U)の股関節付近を軸中心として上下に回転揺動する。
【0056】
なお、ハウジング部52の周縁には、上述したように周壁部52bが設けられているものの、その周壁部52bは、回転揺動する揺動部8と接触しない箇所に設定されている。ハウジング部52(ハウジング本体部52a)の周縁の一部に、開口部51c(
図6参照)が設けられており、その開口部51c内で揺動部8が揺動する。
【0057】
揺動部8は、全体的には、回動部7から外側に延びた長手状の部材からなる。揺動部8は、利用者Uが起立した状態で静止している場合に、回動部7の後側に配される非カム部74から後方に向かいつつ、水平方向Hよりも幾分、斜め上側に延びたような形をなしている。このような揺動部8は、長手状のアーム部81と、そのアーム部81の先端側に取り付けられる錘部82とを備えている。
【0058】
アーム部81は、回動部7から外側(後方側)に延びた長手状の部分であり、回動部7の非カム部74から後方に向かいつつ、水平方向Hよりも幾分、斜め上側に延びたような形をなしている。アーム部81の基部81aは、回動部7(非カム部74)に対して一体的に固定されている。本実施形態のアーム部81は、回動部7と同様、金属系材料により構成される。なお、他の実施形態においては、予め別部品として用意されたアーム部81を、回動部7に対して後付けする形で固定してもよい。また、アーム部81の先端部81bには、錘部82が固定されている。アーム部81の先端部81bのうち、利用者U側を向く内側面上に、凹部状に窪んだ取付部81cが設けられており、その取付部81cに、錘部82の端部が嵌め込まれる形で、錘部82がアーム部81の先端部81bに取り付けられている。錘部82とアーム部81の先端部81bとは、互いに公知の固定方法(例えば、ボルト締め、接着剤による固定等)で固定されてもよい。
【0059】
本実施形態の錘部82は、左右方向に延びた円柱状をなしている。なお、錘部82の形状、大きさ(例えば、長さL1、直径L2)、重さ(質量)等の諸条件は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜、設定される。
【0060】
なお、「回動部7に対する揺動部8の配置箇所」、「回動部7に対するカム面73a(カム部73)の配置箇所」、及び「カム面73aに圧接させるカムフォロア64(ローラ部64a)の配置箇所」等は、歩行支援機1が利用者Uの脚(右脚U1)にアシスト力を加える向き等を考慮して、適宜、決定される。本実施形態の場合、歩行支援機1が装着された利用者Uの右脚U1が前方へ振り出されるように、歩行支援機1がアシストできるように、「回動部7に対する揺動部8の配置箇所」、「回動部7に対するカム面73a(カム部73)の配置箇所」、及び「カム面73aに圧接させるカムフォロア64(ローラ部64a)の配置箇所」等が設定されている。
【0061】
次いで、歩行支援機1の動作等について説明する。
図1には、静止した状態の揺動部8が示されている。
図1に示されるように、起立した利用者Uが静止している状態において、揺動部8による重力モーメントと、圧縮バネ61で付勢されたカムフォロア64によるトルクとが釣り合うことで、揺動部8が、回動部7(非カム部74)から後方に向かいつつ、水平方向Hよりも幾分、斜め上側に向かう姿勢で静止する。
【0062】
このように静止した状態の揺動部8は、利用者Uの歩行動作に伴って慣性揺動する。具体的には、利用者Uの歩行動作に伴う慣性揺動により、第1軸部3を中心として、圧縮バネ61が圧縮されるように回動部7と共に下降する方向(一方向の一例)に回転する。また、揺動部8は、圧縮バネ61が弾性復帰する際に回動部7と共に上昇する方向(逆方向の一例)に回転する。
【0063】
図5は、右脚U1に歩行支援機1を装着した利用者Uが、左脚U2を前方へ振り出して着地した状態を示す説明図であり、
図6は、揺動部8の慣性揺動と、それに伴って変位するカムフォロア64との関係を示す歩行支援機1の断面図である。
【0064】
本明細書において、揺動部8が下降する際に回転する方向(下降方向、
図5及び
図6等の矢印X1)を、「正転方向」と称し、揺動部8が上昇する際に回転する方向(上昇方向、
図6の矢印X2)を、「反転方向」と称する。なお、正転方向(下降方向)は、
図5等において、反時計回りの矢印X1により示され、反転方向(上昇方向)は、
図6において、時計回りの矢印X2により示される。
【0065】
なお、揺動部8が回動部7と共に一方向(下降方向、正転方向)に回転する際、追従部(カムフォロア)64が相対的に逆方向(反転方向)に回転するようにカム面73aを移動することで圧縮バネ61が圧縮される。また、揺動部8が回動部7と共に逆方向(上昇方向、反転方向)に回転する際、追従部(カムフォロア)64が相対的に一方向(正転方向)に回転するようにカム面73aを移動することで圧縮バネ61が弾性復帰する。
【0066】
図5には、利用者Uの左脚U2が地面(床面)から離れて遊脚となり、そのような左脚U2が前方へ振り出して着地した状態が示されている。左脚U2が着地すると、その着地に伴う慣性揺動により、揺動部8が回動部7と共に正転方向X1に回転する。その際、着地した左脚U2の後方にある右脚U1は、未だ地面(床面)から離れずに接地したままの状態である。つまり、左脚U2が着地して、利用者Uの身体と地面(床面)とが衝突してしばらくは、両脚とも接地した両脚支持期となっている。
【0067】
上記のように、左脚U2の着地に伴う慣性揺動により、揺動部8が正転方向X1に回転すると、揺動部8と共に回動部7のカム面73aも正転方向に回転するため、カムフォロア64のローラ部64aが圧接される箇所におけるカム面73aと、第1軸部3の中心Oとの間の距離Rが、カム面73aの回転に伴って徐々に大きくなるように回動部7の径方向に沿って変化する。このように距離(回動部7の半径)Rが変化すると、ローラ部64aは、第1軸部3の中心Oから外側へ遠ざかるように変位する。ローラ部64aがこのように変位する際に、圧縮バネ61が圧縮され、その圧縮バネ61に弾性エネルギーが蓄えられた状態となる。このように揺動部8は、利用者Uの着地に伴う慣性揺動により、圧縮バネ61が圧縮されるように回動部7と共に正転方向(下降方向)X1に回転する。
【0068】
なお、揺動部8は、上記のように正転方向X1に回転した後、圧縮された圧縮バネ61が弾性復帰する際に、回動部7と共に保持部5に対して相対的に反転方向X2に回転する。その際、カムフォロア64のローラ部64aが圧接される箇所におけるカム面73aと、第1軸部3の中心Oとの間の距離Rは、揺動部8が正転方向X1に回転する場合とは逆に、カム面73aの回転に伴って徐々に小さくなるように変化する。このように距離Rが変化すると、ローラ部64aは、第1軸部3の中心Oに近付くように回動部7の径方向に沿って変位する。ローラ部64aがこのように変位する際に、圧縮バネ61が元の長さまで伸びると共に、圧縮バネ61で付勢されたローラ部64aがカム面73aを押すことにより、圧縮バネ61に蓄えられていた弾性エネルギーが、第1リンク部4を前方に振り出す方向に回転させる運動エネルギーに変換される。
【0069】
本実施形態の右脚U1用の歩行支援機1は、右脚U1の振り出し動作を支援するものであり、上記のように左脚U2が前方に振り出されて着地することで、右脚U1に歩行支援機から力(アシスト力)が加えられる。
【0070】
ところで、上述した両脚支持期では、後方の脚(右脚U1)は地面から離れていないものの、徐々に膝が曲がり始めて大腿部U11の振り出しが始まる状態である。この大腿部U11の振り出しの速度と、第1リンク部4の速度との兼ね合いで、歩行支援機1による脚(右脚U1)の振り出し動作を支援(アシスト)する仕方が変わる。また、圧縮バネ61の条件(バネ係数等)でも変化する。
【0071】
例えば、圧縮バネ61のバネ係数が小さく、圧縮バネ61が伸縮方向において柔らかい場合、歩行支援機1は、主として、圧縮バネ61が弾性復帰する形で、利用者Uの脚(右脚U1)にアシスト力を加えることになる。また、圧縮バネ61のバネ係数が大きく、圧縮バネ61が伸縮方向において硬い場合、歩行支援機1は、主として、揺動部8の慣性揺動が、直接的に第1リンク部4を前方に振り出す方向に回転させ、利用者Uの脚(右脚U1)にアシスト力を加えることになる。
【0072】
また、利用者Uの脚の振り出し動作が遅い場合、圧縮バネ61に蓄えられる弾性エネルギーが大きくなり、右脚U1の振り出し動作を支援するアシスト力も大きくなる。例えば、利用者Uが、歩行動作が容易ではない障害者や高齢者の場合に、脚の振り出し動作が遅くなる。この場合、歩行支援機1は、主として、圧縮バネ61が弾性復帰する形で、歩行動作が容易ではない利用者Uの脚(右脚U1)に大きなアシスト力を加えることになる。
【0073】
また、利用者Uの脚の動きが瞬間的に止まるような場合、圧縮バネ61の圧縮量が、通常の歩行時よりも大きくなる。このような場合も、歩行支援機1は、主として、圧縮バネ61が弾性復帰する形で、利用者Uの脚(右脚U1)にアシスト力を加えることになる。
【0074】
これに対して、利用者Uの脚の振り出し動作が速い場合、圧縮バネ61に蓄えられる弾性エネルギーが小さくなる。ただし、圧縮バネ61に蓄えられる弾性エネルギーは小さいものの、錘部82を有する揺動部8が、所謂「振り子」のように重力下において素早く振られるため、揺動部8及び第1リンク部4が同調する形で、脚(右脚U1)の振り出し動作が支援される。
【0075】
要するに、本実施形態の歩行支援機1では、揺動部8の慣性揺動が、利用者Uの遊脚の着地に伴うものであり(例えば、歩行支援機1が装着されていない左脚U2(遊脚)の着地に伴うものであり)、第1リンク部4が配される右脚U1の大腿部U11が、前方に振り出される際に、圧縮バネ61に蓄えられた弾性エネルギーが、第1リンク部4を前方に振り出す方向に回転させる運動エネルギーに変換される。
【0076】
図7は、右脚U1に歩行支援機1を装着した利用者Uが、右脚U1を前方へ振り出して着地した状態を示す説明図である。歩行支援機1は、
図7に示されるように、右脚U1を前方へ振り出して着地した場合も、その右脚U1の着地に伴う慣性揺動により、揺動部8が回動部7と共に正転方向(下降方向)X1に回転するが、
図7に示されるような状態では、カムフォロア64のローラ部64aが圧接される箇所におけるカム面73aと、第1軸部3の中心Oとの間の距離(回動部7の半径)Rがかなり小さくなっており、圧縮バネ61がほとんど圧縮されず、その圧縮バネ61に弾性エネルギーが蓄えられない状態となる。なお、後述する実施形態9等の場合は、歩行支援機が両脚に装着されており、常に左右どちらかの圧縮バネ61が圧縮され、その圧縮バネ61に弾性エネルギーが蓄えられた状態となる。本実施形態の歩行支援機1では、右脚U1は、両脚支持期の後、単脚支持期となるため、脚の振り出し動作を支援するアシスト機能は不要となる。
【0077】
以上のような本実施形態の歩行支援機1において、利用者Uの遊脚の着地時に、利用者Uが地面(床面)から受ける衝撃力は、揺動部8の錘部82の重さ(質量)と比べて数倍以上の大きさである。そのため、歩行支援機1は、例えば、従来の受動歩行型の歩行支援機と比べて、圧縮バネ61を押し縮める力が大きいと言える。また、歩行支援機1は、従来の受動歩行型の歩行支援機と比べて、脚の振り出し動作を支援するアシスト力の変化量が大きく、しかも、そのアシスト力が利用者Uの脚(右脚U1)に対して、瞬発的に加えられる。なお、従来の歩行支援機では、本実施形態の歩行支援機1と比べて、アシスト力が利用者Uの脚に対して緩やかに加えられる。このように本実施形態の歩行支援機1は、従来の歩行支援機と比べて、利用者Uの脚(右脚U1)に加えられるアシスト力が質的に異なっている。
【0078】
また、本実施形態の歩行支援機1では、アシスト力の変化量が大きく、そのアシスト力が利用者Uの脚(右脚U1)に対して、瞬発的に加えられる。そのため、アシスト力が加えられるタイミングが分かり易くなり、例えば、利用者Uが感覚鈍麻の場合でも、歩行支援機1からのアシスト力を感じやすいという利点がある。
【0079】
なお、従来の受動歩行型の歩行支援機では、第1軸部の周りに関節トルクを発生させるためのカム・バネ機構のカムプレート(圧縮バネに付勢されたカムフォロアが圧接されるカム面を含む)を、利用者Uの身体側(腰の側部付近)に、所定の取付板等を利用してしっかりと固定する必要があった。しかしながら、従来の歩行支援機では、カム・バネ機構により発生する関節トルクが直接的に身体側に作用し、歩行支援機を利用者Uの腰に固定するための腰装着部が所定の位置から時間経過と共にずれてしまうことがあった。その結果、カム・バネ機構により発生する関節トルクが低下等することがあった。これに対して、本実施形態の歩行支援機1では、カム面73aを含む回動部7は、第1軸部3を中心として回転可能な状態となっており、利用者Uの身体側に固定する必要がない。したがって、本実施形態の歩行支援機1は、歩行時に、カム・バネ機構(圧縮バネ61に付勢されたカムフォロア64と、そのカムフォロア64が圧接されるカム面73aを含む回動部7等からなる機構)により、安定的に、トルクを発生させることができる。
【0080】
<実施形態2>
次いで、本発明の実施形態2を、
図8を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「A」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図8は、実施形態2に係る歩行支援機1Aの断面図である。
図8には、
図4に示される実施形態1の歩行支援機1に対応した箇所の歩行支援機1Aが示されており、揺動部8Aによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア64Aによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部8Aが示されている。なお、以降の実施形態の説明において、特に断りがない限り、図の右側が、歩行支援機の前方側(前側)であり、図の左側が、歩行支援機の後方側(後側)であり、図の上側が、歩行支援機の上方側(上側)であり、図の下側が、歩行支援機の下方側(下側)である。
【0081】
本実施形態の歩行支援機1Aは、実施形態1と同様、全体的には、回動部7Aから後方側に延びた形(回動部7Aから外側に延びた形の一例)の揺動部8Aを備えている。ただし、本実施形態の場合、回動部7Aに対する揺動部8Aの配置箇所、及び揺動部8Aの形状等が、実施形態1と異なっている。
【0082】
具体的には、揺動部8Aは、静止した状態の回動部7Aの上側部分から上方に延びつつ、途中で折れ曲がって後方に真っすぐに延びた形のアーム部81Aと、そのアーム部81Aの先端部81Abに取り付けられる錘部82Aとを備えている。アーム部81Aの基部81Aaは、静止した状態の回動部7Aの上側部分に配される非カム部74Aに対して一体的に固定されている。
【0083】
本実施形態の歩行支援機1Aも、実施形態1と同様、脚が前方へ振り出されて着地した状態で、揺動部8Aが、第1軸部3Aを中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように回動部7Aと共に、正転方向X1に回転し、かつ弾性変位部6Aが備える圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部7Aと共に反転方向X2に回転するように揺動(回転揺動)する。揺動部8Aは、回転揺動する際、実施形態1と同様、ハウジング部52Aの周壁部52Abと接触(衝突)しないように、周壁部52Abが設けられていない開口部51Ac内を移動する。
【0084】
なお、本実施形態の歩行支援機1Aの揺動部8A以外の各構成(例えば、保持部5Aの保持本体部51A、第1軸部3A、弾性変位部6A、第1リンク部(不図示)、回動部7Aが備えるカム部73A(カム面73Aa)等)は、実施形態1と同様であり、腰装着部(不図示)を用いて利用者に装着される。
【0085】
本実施形態の歩行支援機1Aのように、本発明の目的を損なわない限り、揺動部8Aのアーム部81Aの配置箇所を、回動部7Aの非カム部74Aにおいて、適宜、変更してもよい。
【0086】
<実施形態3>
次いで、本発明の実施形態3を、
図9を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「B」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図9は、実施形態3に係る歩行支援機1Bの断面図である。
図9には、
図4に示される実施形態1の歩行支援機1に対応した箇所の歩行支援機1Bが示されており、揺動部8Bによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア64Bによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部8Bが示されている。
【0087】
本実施形態の歩行支援機1Bは、実施形態1と同様、全体的には、回動部7Bから後方側に延びた形(回動部7Bから外側に延びた形の一例)の揺動部8Bを備えている。ただし、本実施形態の揺動部8Bは、実施形態1とは異なり、板バネ(弾性体)からなるアーム部81Bを備えている。アーム部81Bは、短冊状の金属片からなり、その基部81Baは、回動部7Bの非カム部74Bに設けられた溝部74B1に挿し込まれる形で取り付けられている。また、アーム部81Bの先端部81Bbは、錘部82Bに設けられている溝部82B1に挿し込まれる形で取り付けられている。このような揺動部8Bは、上下方向に撓むように弾性変形可能である。
【0088】
本実施形態の歩行支援機1Bも、実施形態1と同様、脚が前方へ振り出されて着地した状態で、揺動部8Bが、第1軸部3Bを中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように回動部7Bと共に、正転方向X1に回転し、かつ弾性変位部6Bが備える圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部7Bと共に反転方向X2に回転するように揺動(回転揺動)する。揺動部8Bは、回転揺動する際、実施形態1と同様、ハウジング部52Bの周壁部52Bbと接触(衝突)しないように、周壁部52Bbが設けられていない開口部51Bc内を移動する。
【0089】
特に、本実施形態の歩行支援機1Bでは、揺動部8Bが慣性揺動する際、板バネからなるアーム部81Bが、基部81Ba側を支点として上下に撓む。このようにアーム部81B自体が撓むことにより、揺動部8Bの慣性揺動を回動部7Bに対してゆっくりと滑らかに作用させることができる。
【0090】
なお、本実施形態の歩行支援機1Bの揺動部8B以外の各構成(例えば、保持部5Bの保持本体部51B、第1軸部3B、弾性変位部6B、第1リンク部(不図示)、回動部7Bが備えるカム部73B(カム面73Ba)等)は、実施形態1と同様であり、腰装着部(不図示)を用いて利用者に装着される。
【0091】
本実施形態の歩行支援機1Bのように、本発明の目的を損なわない限り、揺動部8Bのアーム部81Bを板バネ(弾性体)で構成してもよい。
【0092】
<実施形態4>
次いで、本発明の実施形態4を、
図10を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「C」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図10は、実施形態4に係る歩行支援機1Cの断面図である。
図10には、
図4に示される実施形態1の歩行支援機1に対応した箇所の歩行支援機1Cが示されており、揺動部8Cによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア64Cによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部8Cが示されている。
【0093】
本実施形態の歩行支援機1Cは、実施形態1と同様、全体的には、回動部7Cから後方側に延びた形(回動部7Cから外側に延びた形の一例)の揺動部8Cを備えている。ただし、本実施形態の揺動部8Cは、実施形態1とは異なり、揺動部8C全体が錘部82Cにより構成されている。つまり、錘部82C自体が、アーム部のような形をなしている。なお、アーム状に延びた錘部82Cの基部82Caは、回動部7Cの非カム部74Cに固定されている。
【0094】
本実施形態の歩行支援機1Cも、実施形態1と同様、脚が前方へ振り出されて着地した状態で、揺動部8Cが、第1軸部3Cを中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように回動部7Cと共に、正転方向X1に回転し、かつ弾性変位部6Cが備える圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部7Cと共に反転方向X2に回転するように揺動(回転揺動)する。揺動部8Cは、回転揺動する際、実施形態1と同様、ハウジング部52Cの周壁部52Cbと接触(衝突)しないように、周壁部52Cbが設けられていない開口部51Cc内を移動する。
【0095】
なお、本実施形態の歩行支援機1Cの揺動部8C以外の各構成(例えば、保持部5Cの保持本体部51C、第1軸部3C、弾性変位部6C、第1リンク部(不図示)、回動部7Cが備えるカム部73C(カム面73Ca)等)は、実施形態1と同様であり、腰装着部(不図示)を用いて利用者に装着される。
【0096】
本実施形態の歩行支援機1Cのように、本発明の目的を損なわない限り、揺動部8C全体を、アーム状の錘部82Cで構成してもよい。
【0097】
<実施形態5>
次いで、本発明の実施形態5を、
図11を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「D」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図11は、実施形態5に係る歩行支援機1Dの断面図である。
図11には、
図4に示される実施形態1の歩行支援機1に対応した箇所の歩行支援機1Dが示されており、揺動部8Dによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア64Dによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部8Dが示されている。
【0098】
本実施形態の歩行支援機1Dは、実施形態1と同様、全体的には、回動部7Dから後方側に延びた形(回動部7Dから外側に延びた形の一例)の揺動部8Dを備えている。ただし、本実施形態の揺動部8Dは、実施形態1とは異なり、揺動部8Dの先端側が、動物の「しっぽ」のような形をした部分(慣性体)を備えている。この揺動部8Dは、回動部7Dの非カム部74Dに一体的に固定されるアーム部81Dと、そのアーム部81Dの先端側に取り付けられるしっぽ状の錘部82Dとを備えている。
【0099】
しっぽ状の錘部(慣性体)82Dは、例えば、ゴム、エラストマー等の柔軟性(可撓性)を備えた部材により構成され、錘部82Dの基部82Da側を支点として、上下、前後、左右等に、慣性で揺動することができる。
【0100】
本実施形態の歩行支援機1Dも、実施形態1と同様、脚が前方へ振り出されて着地した状態で、揺動部8Dが、第1軸部3Dを中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように回動部7Dと共に、正転方向X1に回転し、かつ弾性変位部6Dが備える圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部7Dと共に反転方向X2に回転するように揺動(回転揺動)する。
【0101】
なお、本実施形態の歩行支援機1Dの揺動部8D以外の各構成(例えば、保持部5Dの保持本体部51D、第1軸部3D、弾性変位部6D、第1リンク部(不図示)、回動部7Dが備えるカム部73D(カム面73Da)等)は、実施形態1と同様であり、腰装着部(不図示)を用いて利用者に装着される。
【0102】
本実施形態の歩行支援機1Dのように、本発明の目的を損なわない限り、揺動部8Dに、しっぽ状の錘部(慣性体)82Dを用いてもよい。
【0103】
<実施形態6>
次いで、本発明の実施形態6を、
図12を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「E」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図12は、実施形態6に係る歩行支援機1Eの断面図である。
図12には、
図4に示される実施形態1の歩行支援機1に対応した箇所の歩行支援機1Eが示されており、揺動部8Eによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア64Eによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部8Eが示されている。
【0104】
本実施形態の歩行支援機1Eは、実施形態1と同様、全体的には、回動部7Eから後方側に延びた形(回動部7Eから外側に延びた形の一例)の揺動部8Eを備えている。ただし、本実施形態の場合、揺動部8Eは、アーム部81Eに対する錘部82Eの設置個所を変更できるように構成されている。
【0105】
アーム部81Eは、回動部7Eから後方側に延びた棒状をなしており、その基部81Eaは、回動部7Eの非カム部74Eに対して一体的に固定されている。錘部82Eは、内側に貫通孔部82Eaを有する筒状をなしており、その貫通孔部82Eaに、アーム部81Eが先端部81Eb側から挿し込まれることで、錘部82Eがアーム部81Eに外嵌される形で取り付けられる。錘部82Eは、アーム部81Eの長手方向に沿って移動可能であり、アーム部81Eに対する錘部82Eの設置個所が変更されることで、第1軸部3Eと錘部82Eとの間の距離を、適宜、調整することができる。
【0106】
本実施形態の歩行支援機1Eの揺動部8E以外の各構成(例えば、回動部7Eが備えるカム部73E(カム面73Ea)等)は、実施形態1と同様であり、腰装着部(不図示)を用いて利用者に装着される。
【0107】
本実施形態の歩行支援機1Eも、実施形態1と同様、利用者の歩行動作の伴い、正転方向X1及び反転方向X2に、揺動部8Eが慣性揺動(回転揺動)する。このように、本発明の目的を損なわない限り、揺動部8Eの錘部82Eの設置個所を適宜、変更できるようにしてもよい。
【0108】
<実施形態7>
次いで、本発明の実施形態7を、
図13を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「F」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図13は、実施形態7に係る歩行支援機1Fの断面図である。
図13には、
図4に示される実施形態1の歩行支援機1に対応した箇所の歩行支援機1Fが示されており、揺動部8Fによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア64Fによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部8Fが示されている(ただし、錘部82Fは浮遊状態を示す)。
【0109】
本実施形態の歩行支援機1Fは、実施形態1と同様、全体的には、回動部7Fから後方側に延びた形(回動部7Fから外側に延びた形の一例)の揺動部8Fを備えている。ただし、本実施形態の揺動部8Fは、錘部82Fが、アーム部81Fの先端部81Fbに設けられた収容室81Fc内を上下に移動できるように構成されている。
【0110】
アーム部81Fは、全体的には、回動部7Fから後方側に延びた棒状をなしており、その基部81Faは、回動部7Fの非カム部74Fに対して一体的に固定されている。アーム部81Fの先端部81Fbは、全体的には、アーム部81Fの基部81Fa側に対して上側に垂直に延びた形をなしており、その内部に、錘部82Fが上下方向に沿って移動できるような空間を含む収容室81Fcが形成されている。
【0111】
本実施形態の歩行支援機1Fの揺動部8F以外の各構成(例えば、回動部7Fが備えるカム部73F(カム面73Fa)等)は、実施形態1と同様であり、腰装着部(不図示)を用いて利用者に装着される。
【0112】
本実施形態の歩行支援機1Fも、実施形態1と同様、利用者の歩行動作の伴い、正転方向X1及び反転方向X2に、揺動部8Fが慣性揺動(回転揺動)する。特に、本実施形態の場合、揺動部8Fが回転揺動する際、収容室81Fc内の錘部82Fも慣性で、上下方向に移動し、歩行状態に応じて収容室81Fcの上下面に衝突する。このように、本発明の目的を損なわない限り、揺動部8Fの錘部82Fを、収容室81Fc内で移動できるように構成してもよい。
【0113】
<実施形態8>
次いで、本発明の実施形態8を、
図14を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「G」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図14は、実施形態8に係る歩行支援機1Gの断面図である。
図14には、
図4に示される実施形態1の歩行支援機1に対応した箇所の歩行支援機1Gが示されており、揺動部8Gによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア64Gによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部8Gが示されている。
【0114】
本実施形態の歩行支援機1Gは、実施形態1と同様、全体的には、回動部7Gから後方側に延びた形(回動部7Gから外側に延びた形の一例)の揺動部8Gを備えている。ただし、本実施形態の揺動部8Gは、錘部82Gが、アーム部81Gの先端部81Gbに設けられた収容室81Gc内を、モータ83Gの動力を利用して、上下に移動できるように構成されている。本実施形態の場合、回転揺動する揺動部8Gとは関係なく、錘部82Gを動かすことができる。
【0115】
アーム部81Gは、全体的には、回動部7Gから後方側に延びた棒状をなしており、その基部81Gaは、回動部7Gの非カム部74Gに対して一体的に固定されている。アーム部81Gの先端部81Gbは、全体的には、アーム部81Gの基部81Ga側に対して上側に垂直に延びた形をなしており、その内部に、錘部82Gが上下方向に沿って移動できるような空間を含む収容室81Gcが形成されている。そして、先端部81Gbの上側に、モータ(動力源)83Gが設置されており、そのモータ83Gの出力を、錘部82Gに伝達する伝達機構83Gaが、モータ83Gと錘部82Gとを繋ぐように配されている。
【0116】
本実施形態の歩行支援機1Gの揺動部8G以外の各構成(例えば、回動部7Gが備えるカム部73G(カム面73Ga)等)は、実施形態1と同様であり、腰装着部(不図示)を用いて利用者に装着される。
【0117】
本実施形態の歩行支援機1Gも、実施形態1と同様、利用者の歩行動作の伴い、正転方向X1及び反転方向X2に、揺動部8Gが慣性揺動(回転揺動)する。特に、本実施形態の場合、揺動部8Gが回転揺動する際、その回転揺動する揺動部8G全体の動きに合わせて、収容室81Gc内の錘部82Gをモータ83Gの動力により上下方向に移動させたり、その回転揺動する揺動部8G全体の動きとは関係なく、強制的に移動(強制振動)させたりする。このように、本発明の目的を損なわない限り、揺動部8Gの錘部82Gを、モータ83Gの動力を利用して、収容室81Gc内を予め定められているプログラムにより任意に移動できるように構成してもよい。
【0118】
<実施形態9>
次いで、本発明の実施形態9を、
図15を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「H」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図15は、実施形態9に係る歩行支援機1Hの上面図である。本実施形態の歩行支援機1Hは、両脚用であり、利用者の右脚に右脚用の歩行支援機1H1が装着され、利用者の左脚に左脚用の歩行支援機1H2が装着される。右脚用の歩行支援機1H1と、左脚用の歩行支援機1H2とは、1つの腰装着部2Hの腰装着ベルト21Hに対して、腰宛部22H等を利用して取り付けられている。このような腰装着ベルト21H(腰装着部2H)を利用して、両脚用の歩行支援機1Hにおける各脚用の歩行支援機1H1,1H2が、各脚(右脚、左脚)に装着される。
【0119】
右脚用の歩行支援機1H1は、右脚の振り出し動作を支援するものであり、基本的な構成は、実施形態1と同様である。左脚用の歩行支援機1H2は、左脚の振り出し動作を支援するものであり、形状が左右対称であること以外は、右脚用の歩行支援機1H1と同様の機能を備えている。
【0120】
両脚用の歩行支援機1Hでは、利用者の歩行時において、遊脚が着地する度に、双方の歩行支援機1H1,1H2の揺動部8Hが、慣性により、第1軸部(不図示)を中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように正転方向に回転すると共に、圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部(不図示)と共に反転方向に回転するように回転揺動する。着地した脚が、右脚の場合、左脚に装着された歩行支援機1H2により、左脚の振り出し動作が支援される。また、着地した脚が、左脚の場合、右脚に装着された歩行支援機1H1により、右脚の振り出し動作が支援される。
【0121】
本実施形態のように、片脚用の歩行支援機1H1,1H2を、それぞれ右脚及び左脚に装着する両脚用の歩行支援機1Hを用いてもよい。
【0122】
なお、他の実施形態においては、右脚用の歩行支援機における揺動部の錘部の重さと、左脚用の歩行支援機における揺動部の錘部の重さとを、互いに異なるように設定してもよい。
【0123】
<実施形態10>
次いで、本発明の実施形態10を、
図16を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「I」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図16は、実施形態10に係る歩行支援機1Iの上面図である。本実施形態の歩行支援機1Iは、実施形態9と同様、両脚用であり、利用者の右脚に右脚用の歩行支援機1I1が装着され、利用者の左脚に左脚用の歩行支援機1I2が装着される。本実施形態の歩行支援機1I1は、右脚用の歩行支援機1I1の揺動部8Iと、左脚用の歩行支援機1I2の揺動部8Iとを、連結部材83Iを利用して互いに結合したものからなる。
【0124】
連結部材83Iは、左右方向に延びた棒状の部材(剛体)であり、一方の端部83I1が、利用者Uの右側に配される揺動部8Iのアーム部81Iに固定され、他方の端部83I2が、利用者Uの左側に配される揺動部8Iのアーム部81Iに固定されている。連結部材83Iは、利用者Uの後方側において、利用者Uの腰や臀部等と接触しない箇所に設けられる。
【0125】
本実施形態の両脚用の歩行支援機1Iは、左右の歩行支援機1I1,1I2における各揺動部8I(アーム部81I)が、剛体である連結部材83Iによって繋がっているため、左右の揺動部8I同士が、利用者の歩行動作に応じて、一体的に、慣性揺動(回転揺動)する。このように左右の揺動部8I同士が、一体的に揺動するように構成した両脚用の歩行支援機1Iを使用してもよい。
【0126】
なお、他の実施形態においては、両脚用の歩行支援機において、右脚用の歩行支援機の揺動部(アーム部)と、左脚用の歩行支援機の揺動部(アーム部)とを、棒状又は紐状等の弾性体(例えば、ゴム、エラストマー等の弾性体)からなる連結部材を利用して、左右の揺動部同士を接続してもよい。
【0127】
<実施形態11>
次いで、本発明の実施形態11を、
図17を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「J」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図17は、実施形態11に係る歩行支援機1Jの上面図である。本実施形態の歩行支援機1Jは、実施形態9等と同様、両脚用であり、利用者の右脚に右脚用の歩行支援機1J1が装着され、利用者の左脚に左脚用の歩行支援機1J2が装着される。本実施形態の歩行支援機1Jは、右脚用の歩行支援機1J1の揺動部8Jと、左脚用の歩行支援機1J2の揺動部8Jとが、連結部材83Jを利用して互いに結合すると共に、その連結部材83Jに、共通化された錘部82Jが取り付けられている。
【0128】
連結部材83Jは、左右方向に延びた棒状の部材(剛体)であり、一方の端部83J1が、利用者Uの右側に配される揺動部8Jのアーム部81Jの先端部に固定され、他方の端部83J2が、利用者Uの左側に配される揺動部8Jのアーム部81Jの先端部に固定されている。連結部材83Jは、利用者Uの後方側において、利用者Uの腰や臀部等と接触しない箇所に設けられる。連結部材83Jは、利用者Uの後方側において、左右方向に沿って水平に配されており、その連結部材83Jの中央部分に、錘部82Jが取り付けられている。
【0129】
本実施形態の両脚用の歩行支援機1Jは、左右の歩行支援機1J1,1J2における各揺動部8J(アーム部81J)が、剛体である連結部材83Jによって繋がっているため、左右の揺動部8J同士が、利用者の歩行動作に応じて、一体的に、慣性揺動(回転揺動)する。このように左右の揺動部8J同士が、一体的に揺動するように構成した両脚用の歩行支援機1Jを使用してもよい。また、本実施形態のように、左右の揺動部8Jにおける錘部82Jを、共通化してもよい。
【0130】
<実施形態12>
次いで、本発明の実施形態12を、
図18及び
図19を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「K」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図18は、実施形態12に係る歩行支援機1Kの第1軸部3K付近の分解断面図であり、
図19は、実施形態12に係る歩行支援機1Kの第1軸部3K付近の断面図である。本実施形態の歩行支援機1Kは、実施形態1と同様、右脚用の歩行支援機1Kであり、
図18及び
図19には、前側から見た状態の歩行支援機1Kの断面構成が示されている。
【0131】
本実施形態の歩行支援機1Kは、第1軸部3Kを、腰装着部2Kに取り付ける構造が、実施形態1と異なっている。本実施形態の腰装着部2Kは、実施形態1のような腰宛部を備えておらず、腰装着ベルト21K(ベルト状部材21Ka)に対して第1軸部3Kが取り付けられる構成となっている。第1軸部3Kは、腰装着ベルト21Kの表面に固定された板状の台座部35Kと、その台座部35Kの表面35Ka上に立設されたピン状の中軸部36Kと、保持部5Kと一体的に形成され、かつ中軸部36Kが挿し込まれる軸孔部31Kcを含む軸本体部31Kとを備えている。
【0132】
第1軸部3Kは、台座部35Kに立設された中軸部36Kが、軸本体部31Kの軸孔部31Kcに挿し込まれることにより、腰装着部2K(腰装着ベルト21K)に取り付けられる。なお、軸本体部31Kは、回動部7Kの軸孔部72Kに挿通された状態で、中軸部36Kが軸孔部31Kcに挿し込まれる。このような第1軸部3Kは、台座部35Kに立設された中軸部36Kを中心として回転自在な状態となっている。そして、回動部7Kは、そのような第1軸部3Kを中心として回転自在な状態となっている。また、第1リンク部4Kの上端側を保持する保持部5Kは、第1軸部3Kを中心として回転自在な状態となっている。
【0133】
第1軸部3Kは、利用者の股関節付近の側方に配されるように、腰装着部2K(腰装着ベルト21K)が、利用者の腰に装着される。
【0134】
本実施形態の歩行支援機1Kのように、第1軸部3Kを、腰装着ベルト21Kに対して、直接、取り付ける構造であってもよい。
【0135】
<実施形態13>
次いで、本発明の実施形態13を、
図20を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「L」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図20は、実施形態13に係る歩行支援機1Lの第1軸部3L付近の説明図である。なお、
図20の右側が、歩行支援機1Lの前側(前方側)であり、同図の左側が、歩行支援機1Lの後側(後方側)である。本実施形態の歩行支援機1Lは、実施形態12と同様、第1軸部3Lが、腰装着部2Lの腰装着ベルト21L(ベルト状部材21La)に対して直接、取り付けられる構成である。ただし、本実施形態の歩行支援機1Lでは、腰装着ベルト21Lに設けられているピン状の中軸部36Lの位置を、上下方向及び前後方向に移動させることができる。
【0136】
中軸部36Lは、実施形態12と同様、台座部35Lの表面に立設されているものの、台座部35Lは、ベルト状部材21Laの表面ではなく、ベルト状部材21Laの内部に設けられている。しかも、台座部35Lは、ベルト状部材21Laの内部を、ある程度、前後上下に移動できるように、ベルト状部材21Laの内部に収容されている。ベルト状部材21Laの表面には、台座部35Lの表面の一部を露出させる十字状の溝部24Lが形成されており、その溝部24Lから外側に向かって中軸部36Lが突出した状態になっている。中軸部36Lは、十字状の溝部24Lに沿って、上下方向及び前後方向に移動することができる。このように本実施形態の歩行支援機1Lでは、中軸部36Lの設置箇所を移動させることができ、揺動部8L、回動部7L及び第1リンク部4Lの回転動作を損なわず、第1軸部3Lの位置を上下方向及び前後方向に自在に移動させることができる。
【0137】
<実施形態14>
次いで、本発明の実施形態14を、
図21を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「M」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図21は、実施形態14に係る歩行支援機1Mの上面図である。本実施形態の歩行支援機1Mは、実施形態9等と同様、両脚用であり、利用者Uの右脚に右脚用の歩行支援機1M1が装着され、利用者の左脚に左脚用の歩行支援機1M2が装着される。本実施形態の歩行支援機1Mは、実施形態11と同様、右脚用の歩行支援機1M1の揺動部8Mと、左脚用の歩行支援機1M2の揺動部8Mとが、連結部材83Mを利用して互いに結合すると共に、その連結部材83Mに、共通化された錘部82Mが取り付けられている。
【0138】
特に、本実施形態の歩行支援機1Mは、利用者Uへの装着方法が、実施形態1等とは異なっている。具体的には、互いに連結部材83Mで繋がった右脚用の歩行支援機1M1と、左脚用の歩行支援機1M2との間で、利用者Uの腰U3を左右両側から挟み込む形で、歩行支援機1Mが装着される。本実施形態の場合、左右の各歩行支援機1M1,1M2にそれぞれ、腰装着部2Mが備えるパッド状の腰宛部25Mが設けられており、それらの腰宛部25Mに、それぞれ第1軸部(不図示)が固定されている。
【0139】
本実施形態の両脚用の歩行支援機1Mは、左右の歩行支援機1M1,1M2における各揺動部8M(アーム部81M)が、剛体である連結部材83Mによって繋がっているため、左右の揺動部8M同士が、利用者の歩行動作に応じて、一体的に、慣性揺動(回転揺動)する。また、本実施形態の両脚用の歩行支援機1Mは、利用者Uの腰U3に対して、所謂「ヘッドホン」のように、左右両側から挟み込む形で取り付けることが可能であり、装着が容易である。
【0140】
<実施形態15>
次いで、本発明の実施形態15を、
図22を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「N」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図22は、実施形態15に係る歩行支援機1Nの断面図である。
図22には、
図4に示される実施形態1の歩行支援機1に対応した箇所の歩行支援機1Nが示されており、揺動部8Nによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア64Nによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部8Nが示されている。
【0141】
本実施形態の歩行支援機1Nは、実施形態1と同様、全体的には、回動部7Nから後方側に延びた形(回動部7Nから外側に延びた形の一例)の揺動部8Nを備えている。ただし、本実施形態の場合、回動部7Nのカム面73Naに圧接させるカムフォロア64N(ローラ部64Na)の配置箇所等が、実施形態1と異なっている。
【0142】
具体的には、歩行支援機1Nが
図22に示されるように静止した状態において、カムフォロア64N等を備える弾性変位部6Nが、保持部5Nの後方側に配置されているため、カム面73Naの周方向における揺動部8Nと、カムフォロア64N(ローラ部64Na)との間隔(距離)が、実施形態1よりも小さくなっている。なお、揺動部8Nは、実施形態1と同様、アーム部81Nと、アーム部81Nの先端部81Nbに取り付けられる錘部82とを備えており、アーム部81Nの基部81Naが、回動部7Nの非カム部74Nに対して一体的に固定されている。
【0143】
本実施形態の歩行支援機1Nも、実施形態1と同様、脚が前方へ振り出されて着地した状態で、揺動部8Nが、第1軸部3Nを中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように回動部7Nと共に、正転方向X1に回転し、かつ弾性変位部6Nが備える圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部7Nと共に反転方向X2に回転するように揺動(回転揺動)する。揺動部8Nは、回転揺動する際、実施形態1と同様、ハウジング部52Nの周壁部52Nbと接触(衝突)しないように、周壁部52Nbが設けられていない開口部51Nc内を移動する。本実施形態の歩行支援機1Nは、実施形態1と同様、腰装着部(不図示)を用いて利用者に装着される。
【0144】
本実施形態の歩行支援機1Nのように、本発明の目的を損なわない限り、カム面73Naに対するカムフォロア64N(ローラ部64Na)の配置箇所等を、適宜、変更してもよい。
【0145】
<実施形態16>
次いで、本発明の実施形態16を、
図23を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「P」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図23は、実施形態16に係る歩行支援機1Pの断面図である。
図23には、
図4に示される実施形態1の歩行支援機1に対応した箇所の歩行支援機1Pが示されており、揺動部8Pによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア64Pによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部8Pが示されている。
【0146】
本実施形態の歩行支援機1Pは、実施形態1とは異なり、回動部7Pから前方側に延びた形(回動部7Pから外側に延びた形の一例)の揺動部8Pを備えている。揺動部8Pは、回動部7Pから前方側に延びたアーム部81Pと、そのアーム部81Pの先端部81Pbに取り付けられる錘部82Pとを備えている。アーム部81Pの基部81Paは、静止した状態の回動部7Pの前側部分に配される非カム部74Pに対して一体的に固定されている。
【0147】
本実施形態の歩行支援機1Pは、脚が前方へ振り出されて着地した状態で、揺動部8Pが、第1軸部3Pを中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように回動部7Pと共に、正転方向X11に回転し、かつ弾性変位部6Pが備える圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部7Pと共に反転方向X12に回転するように揺動(回転揺動)する。本実施形態においては、
図23において、時計回りに回転する方向が、正転方向X11であり、反時計回りに回転する方向が、反転方向X12である。なお、本実施形態の歩行支援機1Pのその他の構成は、実施形態1と同様である。
【0148】
本実施形態の歩行支援機1Pは、右脚U1用であり、右脚U1の振り出し動作を支援する。具体的には、右脚U1は、両脚支持期の後、単脚支持期となるため、利用者Uの体を支持した右脚U1を前倒(腰を前に押し出す)させるように、力(アシスト力)が加えられる。
【0149】
本実施形態の歩行支援機1Pのように、本発明の目的を損なわない限り、揺動部8Pを、回動部7Pから前方側に延びた形に設定してもよい。
【0150】
<実施形態17>
次いで、本発明の実施形態17を、
図24を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「Q」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図24は、実施形態17に係る歩行支援機1Qの断面図である。
図24には、
図4に示される実施形態1の歩行支援機1に対応した箇所の歩行支援機1Qが示されている。
【0151】
本実施形態の歩行支援機1Qは、実施形態1とは異なり、脚が前方へ振り出されて着地した際の前進方向の運動の減速時に、揺動部8Qが慣性により、回転揺動するように構成されている。本実施形態の場合、揺動部8Qは、回動部7Qの上側部分から上方に向かって延びたアーム部81Qと、そのアーム部81Qの先端部81Qbに取り受けられる錘部82Qとを備えている。アーム部81Qの基部81Qaは、回動部7Qの非カム部74Qに対して一体的に固定されている。
【0152】
本実施形態の歩行支援機1Qは、脚が前方へ振り出されて着地した際の前進方向の運動の減速時に、揺動部8Qが、第1軸部3Qを中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように回動部7Qと共に、正転方向X21に回転し、かつ弾性変位部6Qが備える圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部7Qと共に反転方向X22に回転するように揺動(回転揺動)する。本実施形態では、
図24に示されるように、時計回りに回転する方向が、正転方向X21であり、反時計回りに回転する方向が、反転方向X22である。なお、本実施形態の歩行支援機1Qのその他の構成は、実施形態1と同様である。
【0153】
本実施形態の歩行支援機1Qは、右脚U1用であり、右脚U1に歩行支援機1Qを装着した利用者Uが、右脚U1を前方へ振り出して着地した際の前進方向の運動の減速時に、右脚U1に歩行支援機1Qから力(アシスト力)が加えられる。具体的には、右脚U1は、両脚支持期の後、単脚支持期となるため、利用者Uの体を支持した右脚U1を前倒させる(腰を前に押し出す)ように、力(アシスト力)が加えられる。
【0154】
つまり、本実施形態では、揺動部8Qの慣性揺動が、大腿部U11に第1リンク部4Qが配されている方の利用者Uの右脚U1が前方に振り出されて着地した際の前進方向の減速時に伴うものであり、着地している利用者U1の右脚U1を前倒させるように、圧縮バネ(不図示)に蓄えられた弾性エネルギーが、第1リンク部4Qを後方に振り戻す方向に回転させる運動エネルギーに変換される。
【0155】
本実施形態の歩行支援機1Qのように、本発明の目的を損なわない限り、歩行の減速時に、慣性揺動する揺動部8Qを備えてもよい。
【0156】
<実施形態18>
次いで、本発明の実施形態18を、
図25を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「R」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図25は、実施形態18に係る歩行支援機1Rの断面図である。
図25には、
図4に示される実施形態1の歩行支援機1に対応した箇所の歩行支援機1Rが示されている。
【0157】
本実施形態の場合、揺動部8Rは、回動部7Rの下側部分から下方に向かって延びたアーム部81Rと、そのアーム部81Rの先端部81Rbに取り受けられる錘部82Rとを備えている。本実施形態の錘部82Rは、利用者や第1リンク部4Rの棒状部材41Rと干渉(衝突)しないように、アーム部81Rの先端部81Rb側から外側(
図25の紙面手前側)に延びた形をなしている。また、アーム部81Rの基部81Raは、回動部7Rの非カム部74Rに対して一体的に固定されている。
【0158】
本実施形態の歩行支援機1Rは、歩行中に利用者Uが減速した場合(脚が前方へ振り出されて着地した際の前進方向の運動の減速時)、揺動部8Rが、第1軸部3Rを中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように回動部7Rと共に、正転方向X31に回転し、かつ弾性変位部6Rが備える圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部7Rと共に反転方向X32に回転するように揺動(回転揺動)する。本実施形態では、
図25に示されるように、反時計回りに回転する方向が、正転方向X31であり、時計回りに回転する方向が、反転方向X32である。なお、本実施形態の歩行支援機1Rのその他の構成は、実施形態1と同様である。
【0159】
本実施形態の歩行支援機1Rは、右脚U1用であり、特に単脚支持期における歩行中の減速と言った歩行変動に対して、右脚U1に歩行支援機1Rから力(アシスト力)が加えられる。
【0160】
本実施形態の歩行支援機1Rのように、本発明の目的を損なわない限り、歩行の減速時に、慣性揺動する揺動部8Rを備えてもよい。
【0161】
<参考例19>
次いで、本発明の参考例19を、
図26を参照しつつ説明する。本参考例において、実施形態1と対応する各構成は、実施形態1の各構成を表す符号に、更に符号「S」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図26は、参考例19に係る歩行支援機1Sの断面図である。
図26には、
図4に示される実施形態1の歩行支援機1に対応した箇所の歩行支援機1Sが示されている。
【0162】
本参考例の歩行支援機1Sは、歩行時の動作に伴う慣性ではなく、歩行支援機1Sを装着した利用者を介助する介助者Yが、揺動部8Sを操作することで、利用者の歩行動作を支援するものである。
【0163】
本参考例の揺動部8Sは、回動部7Sの上側部分から上方に向かって延びたアーム部81Sと、そのアーム部81Sの先端側の部分からなり、介助者Yが把持する把持部85Sとを備えている。アーム部81Sの基部81Saは、回動部7Sの非カム部74Sに対して一体的に固定されている。
【0164】
本参考例の歩行支援機1Sは、
図26に示されるように、介助者Yが、把持部85Sを把持しつつ、揺動部8Sが正転方向X41に回転するように力を加えると、弾性変位部6Sが備える圧縮バネ(不図示)が圧縮されて、圧縮バネに弾性エネルギーが蓄えられる。その状態を介助者Yが保持すると、弾性変位部6Sが備える圧縮バネが弾性復帰する際に、保持部5Sが前方に振り出す方向に回転することで、歩行支援機1Sを装着した利用者の右脚の振り出し動作が支援される。
【0165】
<実施形態20>
次いで、本発明の実施形態20に係る歩行支援機101を、
図27~
図33を参照しつつ説明する。
図27は、実施形態20に係る歩行支援機101が利用者Uの右脚U1に装着された状態を示す説明図であり、
図28は、実施形態20の歩行支援機101の斜視図であり、
図29は、
図27のC-C線断面図であり、
図30は、
図27のD-D線断面図である。
図27における右側を「前方側(前側)」とし、同図左側を「後方側(後側)」とし、同図上側を「上方側(上側)」とし、同図下側を「下方側(下側)」として、歩行支援機101を説明する。なお、歩行支援機101の前後方向及び上下方向は、利用者Uの前後方向及び上下方向にそれぞれ対応している。
【0166】
本実施形態の歩行支援機101は、実施形態1と同様、利用者Uの右脚U1に装着して使用される右脚U1用の歩行支援機101である。
【0167】
歩行支援機101は、主として、腰装着部102、第1軸部103、第1リンク部104、保持部105、弾性変位部106、回動部107、揺動部108、脚装着部109を備えている。
【0168】
腰装着部102は、歩行支援機1を利用者Uの腰U3に固定するための部材であり、主として、腰装着ベルト121、腰宛部122、懸架部123を備えている。
【0169】
腰装着ベルト121は、腰U3の周りに巻かれる形で利用者Uに装着される。腰装着ベルト121は、皮、布、プラスチック等によって帯状に形成されたベルト状部材121aと、ベルト状部材121aの締め付け具合を調整しながら固定できるバックル121bとを有しており、一般的なベルトと同様の方法で腰U3に取り付けられる。バックル121bとしては、ピンバックル、無段階固定型のバックル等の公知のバックが用いられる。
【0170】
腰宛部122は、腰装着ベルト121と第1軸部103等との間を繋ぎつつ、第1軸部103が利用者Uの股関節付近の側方に配されるように、腰U3の側方に宛がわれる部材である。腰宛部122は、全体的には、可撓性を備えた概ね板状をなしており、歩行時の腰U3の動きに合わせて、ある程度、変形可能である。このような腰宛部122は、例えば、合成樹脂製の板材等で構成されてもよい。腰宛部122の上部側には、ベルト貫通孔122aが設けられており、このベルト貫通孔122aにベルト状部材121aが通されることによって、腰宛部122が腰装着部102に取り付けられる。なお、ベルト状部材121aと腰宛部122との取り付け方法は、これに限られず、他の取り付け方法であってもよい。また、腰宛部122の下部側には、
図29に示されるように、第1軸部103が挿通される孔部を含む軸孔部122bが設けられている。第1軸部103は、軸孔部122bの孔部に挿通されて、回転自在な状態で保持される。
【0171】
懸架部123は、腰宛部122よりも前方側において、腰装着ベルト121と第1軸部103等との間に架設される部材である。懸架部123の上部側は、腰宛部122よりも前方側に配置されており、腰宛部122から離されている。これに対して、腰宛部122の下部側は、腰宛部122と一体的に形成されており、腰宛部122と繋がっている。このような懸架部123と、腰装着ベルト121と、腰宛部122とにより、略逆三角形が形成される。そして、そのような略逆三角形の下側の頂角の位置に、第1軸部103が配置されることで、第1軸部103が所定箇所(股関節付近の側方)に配置され易くなっている。懸架部123は、腰宛部122と同様、全体的には、可撓性を備えた概ね板状の部材(例えば、合成樹脂製の板材等)により構成される。なお、本実施形態の懸架部123は、2つの帯状部分からなる。具体的には、懸架部123の上部側を構成し、かつ上部側がベルト状部材121aに対して回転可能な状態で固定される第1懸架部123aと、懸架部123の下部側を構成し、かつ上部側が第1懸架部123aに対して回転可能な状態で固定されると共に、下部側が腰宛部122に対して一体的に繋がっている第2懸架部123bとからなる。ベルト状部材121a及び第1懸架部123aは、軸状の連結部123cを介して互いに回転可能な状態で固定され、第1懸架部123a及び第2懸架部123bは、軸状の連結部123dを介して互いに回転可能な状態で固定される。
【0172】
第1軸部103は、保持部105や回動部107等を、利用者Uの前後方向に回転可能な状態で支持する軸部であり、上記のように腰装着部102に取り付けられた状態で、利用者Uの股関節付近の側方に配される。なお、第1軸部103の軸方向は、左右方向(紙面に対して垂直な方向)に沿った状態となっている。
【0173】
第1軸部103は、左右方向に延びた軸本体部131と、軸本体部131の一方の端部131aに取り付けられる抜け止め部132と、抜け止め部132を軸本体部131の端部131aに取り付ける際に利用されるネジ133とを備えている。本実施形態の軸本体部131は、回動部107と一体的に形成されており、軸本体部131の他方の端部131b側が、回動部107と繋がっている。軸本体部131は、全体的には、左右方向(一方向)に延びた円柱状をなしており、その軸本体部131の中心側に、軸方向に沿ったネジ孔131cが形成されている。軸本体部131は、腰宛部122に設けられている軸孔部122bに挿通されることで、腰装着部102に取り付けられる。このように軸本体部131は、軸孔部122bに挿通された状態で、後述するように保持部105や回動部107等を、回転可能な状態で支持する。抜け止め部132は、軸本体部131の直径よりも大きな直径を備える円盤状をなし、その中心側に貫通孔部132aが設けられている。抜け止め部132は、ネジ133が貫通孔部132aに挿通され、かつネジ孔131cにねじ込まれることにより、軸本体部131の端部131aに取り付けられる。腰宛部122には、軸本体部131が挿通される軸孔部122bの周りに、円盤状の抜け止め部132を収容するための凹部状の収容部122cが形成されている。なお、後述するように、第1軸部103の軸本体部131の周り等には、摩擦低減部材134が設けられている。
【0174】
第1リンク部104は、主として、歩行支援機101が利用者Uに装着された際に、脚(本実施形態の場合、右脚U1)の大腿部U11の外側の側方(以下、「外側方」と称する)に配される部分である。第1リンク部104は、互いに間隔を保ちつつ平行に並んだ2本の棒状部材141を備えている。棒状部材141は、
図27に示されるように、利用者Uが起立した状態において、長手方向が、概ね上下方向に沿う形で配される。棒状部材141の上端141a側(つまり、第1リンク部104の上端104a側)は、後述する保持部105によって保持(固定)される。また、棒状部材141の下端141b側(つまり、第1リンク部104の下端104b側)は、後述する脚装着部109によって保持(固定)される。
【0175】
第1リンク部104を構成する棒状部材141は、適度な剛性(強度)と共に、適度な弾性を備えている。このような棒状部材141を備えた第1リンク部104は、歩行支援機101の利用時等に受ける長手方向に沿った力(例えば、第1リンク部104を長手方向に沿って引っ張るように働く力や、長手方向に沿って圧縮するように働く力)に対して、十分な剛性等を備えており、第1リンク部104の破断や折れ曲がりが防止される。また、第1リンク部104の長手方向における両端部(上端及び下端)が互いに近付くように歩行支援機101の利用時等において力が加えられても、第1リンク部104は、十分な剛性等を備えているため、折れ曲がりが防止される。また、第1リンク部104は、長手方向に沿った軸線(回転軸)を中心として捻じるような力が加えられると、第1リンク部104は、捻じれるように弾性変形することができる。
【0176】
棒状部材141を構成する素材としては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の剛性の合成樹脂(剛性樹脂)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の繊維強化プラスチック(FRP)等が挙げられる。棒状部材141を軸線に対して垂直な方向に切断した際の断面形状は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はなく、四角形、三角形等の多角形、円形、楕円形等であってもよい。また、棒状部材141として、中空の筒状部材(パイプ状部材)を使用してもよい。
【0177】
脚装着部109は、第1リンク部104の下端104b側を保持しつつ、利用者Uの右脚U1の大腿部U11又は下腿部U12に装着される部材である。本実施形態では、脚装着部109が下腿部U12に装着される場合を例示する。脚装着部109は、主として、下端保持部191、回転接続部192、第2リンク部193、脚装着ベルト194を備えている。
【0178】
下端保持部191は、第1リンク部104の下端104b側を保持(固定)する部材であり、その下端保持部191の下端側に、回転接続部191が取り付けられている。回転接続部192は、第1リンク部104の下端104b側を保持する下端保持部191と、その下端保持部191の下方に配される第2リンク部193との間に配され、第1リンク部104及び第2リンク部193を、互いに回転可能な状態で接続する。そのため、第2リンク部193は、回転接続部191を中心として前後方向に回転することができる。
【0179】
第2リンク部193は、主として、上端保持部193aと、下端保持部193bと、それらの間に配される2本の棒状部材(不図示)とを備えている。棒状部材を構成する素材は、第1リンク部104の棒状部材141と同様であってもよい。第2リンク部193は、
図27に示されるように、利用者Uが起立した状態において、長手方向が概ね上下方向に沿う形で配される。
【0180】
第2リンク部193は、棒状部材の長手方向において伸縮可能であり、利用者Uの体格に合わせて脚装着ベルト194の装着位置を調整することができる。上端保持部193aは、互いに間隔を保ちつつ平行に並んだ2本の棒状部材の各上端側を、長手方向にスライド可能な状態で保持する。また、下端保持部193bは、2本の棒状部材の各下端側を、長手方向にスライド可能な状態で保持する。
図1等には、第2リンク部193が最も縮んで、2本の棒状部材が上端保持部193a及び下端保持部193bの内部に収容されている状態が示されている。
【0181】
脚装着ベルト194は、全体的には、環状をなし、利用者Uの下腿部U12の周りに巻かれる形で、下腿部U12に装着される。脚装着ベルト194を構成する素材としては、例えば、伸縮可能な帯状のゴム、合成樹脂、布、皮革等が挙げられ、特に制限されない。なお、脚装着ベルト194は、第2リンク部193の下端保持部193bに対して、脚宛部195を介して取り付けられる。脚宛部195は、下端保持部193bに固定されると共に、下腿部U12の外側方に宛がわれる部分であり、合成樹脂等で構成される。脚宛部195は、概ね前後方向に貫通するように設定された通し孔195aを備えており、その通し孔195aに脚装着ベルト194が通されることで、脚装着ベルト194が脚宛部195に取り付けられる。
【0182】
このような脚装着部109が、第1リンク部104の下端104b側に取り付けられることにより、第1リンク部104が、利用者Uの右脚U1の動きに連動して、第1軸部103を中心として前後方向に回転することができる。
【0183】
保持部105は、カムフォロア164が圧接されると共に、第1軸部103からの距離が周方向に沿って変化するカム面153aを有し、第1軸部103を中心として利用者Uの前後方向に回転可能であり、第1リンク部104の上端104a側を保持する部材である。保持部105は、主として、保持本体部151と、カム板152とを備えている。
【0184】
保持本体部151は、第1リンク部104の上端104a側を保持(固定)する部材であり、主に保持部105の下側部分を構成する。カム板152は、保持部105の上側部分を構成し、全体的には、平面視で略円形状をなした板状部材である。カム板152は、金属又は合金からなる金属系材料を所定形状に加工したものからなる。カム板152は、略円弧状をなした周縁部を備えており、そのような略円弧状の周縁部の一部に割り当てられる形で、カム部153が形成されている。カム部153は、カム板152に対して一体的に形成されており、カム部153の外周面に、後述するカムフォロア164のローラ部164aが圧接されると共に、第1軸部103からの距離が周方向に沿って変化するカム面153aが形成されている。また、カム板152は、厚み方向に貫通する形で設けられ、第1軸部103の軸本体部131が挿通される軸孔部154を備えている。
【0185】
このような保持部105は、軸孔部154に、第1軸部103が挿通された状態で、第1リンク部104の上端104a側を保持しつつ、第1軸部103を中心として利用者Uの前後方向に回転自在な状態となっている。つまり、カム面153aは、第1軸部103に対して回転可能(回転自在)な状態で軸支されている保持部105に設けられていると言える。なお。保持部105は、軸孔部154に第1軸部103が挿通された状態で、後述する容器状の回動部107内に収容される。
【0186】
軸孔部154の内周面と、第1軸部103の軸本体部131の外周面との間には、それらの間の摩擦抵抗を低減等することを目的とした合成樹脂製の摩擦低減部材134が設けられている。摩擦低減部材134は、筒状をなした第1摩擦低減部134aと、第1摩擦低減部134aの一端から外側に環状に張り出した第2摩擦低減部134bとを備えている。第1摩擦低減部134aは、軸本体部131に外嵌する形で取り付けられる部分であり、軸本体部131の外周面と、軸孔部154の内周面との間の摩擦抵抗を低減する。第2摩擦低減部134bは、軸本体部131の端部131aに取り付けられている抜け止め部132と、凹部状の収容部122cとの間で挟まれる形で、収容部122cに収容され、第1軸部103の抜け止め部132と、収容部122cとの間の摩擦抵抗を低減する。
【0187】
カム部153は、
図30に示されるように、第1軸部103の中心Oから、外周面(カム面153a)までの距離が、前方から後方にかけて周方向に亘って漸次、大きくなるように設定されている。また、本実施形態では、
図30に示されるように、歩行支援機101が静止している状態において、後述する重力下でカム部153が後方の斜め上方を向く姿勢で釣り合って、保持部105が第1軸部103に軸支されている。なお、カム部153が形成されていないカム板152の略円弧状の周縁部を、非カム部155と称する。
【0188】
例えば、
図30に示されるように、カム部153の上側寄りの部分におけるカム面153aと中心Oとの距離(カム板152の半径)r101と、それよりも後側寄りの部分におけるカム面153aと中心Oとの距離(カム板152の半径)r102とを比べると、距離r102の方が大きくなっている。中心Oとカム面153aまでの距離(カム板152の半径)が大きくなるにしたがって、後述する圧縮バネ161のバネ圧縮量が大きくなり、その結果、第1軸部103の周りに発生するトルクも大きくなる。
【0189】
図29に示されるように、外側(利用者Uの反対側)を向くカム板152の第1表面152aには、軸孔部154の周りを取り囲むように環状の摩擦低減部材156が設けられている。この摩擦低減部材156は、カム板152の第1表面152aと、後述する回動部107の利用者U側を向く面107aとの間の摩擦抵抗を低減すること等を目的としたものであり、カム板152の第1表面152a側に設けられている環状の凹溝157内に収容される形でカム板152に取り付けられている。摩擦低減部材156は、上述した摩擦低減部材134と同様、合成樹脂等からなる。また、内側(利用者U側)を向くカム板152の第2表面152bには、軸孔部154の周りを取り囲むように環状の摩擦低減部材158が設けられている。この摩擦低減部材158は、カム板152の第2表面152bと、外側を向く腰宛部122の表面122dの間の摩擦抵抗を低減すること等を目的としたものであり、カム板152の第2表面152b側に設けられている環状の凹溝159内に収容される形でカム板152に取り付けられている。摩擦低減部材158も、摩擦低減部材156と同様、合成樹脂等からなる。
【0190】
回動部107は、第1軸部103を中心として利用者Uの前後方向に回転可能であり、後述する弾性変位部106が固定される部材である。回動部107は、全体的には、概ね浅底のカップ状(容器状)をなしており、その内側に保持部105のカム板152が収容される。回動部107は、上下方向に沿って広がった概ね円形板状(円盤状)の回動本体部171と、その回動本体部171の周縁から、利用者U側に向かって延びた周壁部172とを備えている。回動本体部171のうち、利用者U側を向く面107a側に、第1軸部103の軸本体部131が立設されている。回動部107は、このように第1軸部103の軸本体部131と固定されているため、第1軸部103を中心として、利用者Uの前後方向に回転自在な状態となっている。なお、回動部107には、後述する弾性変位部106が固定されている。回動部107を構成する素材としては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、金属又は合金からなる金属系材料、合成樹脂等が挙げられる。本実施形態の場合、回動部107は、金属系材料かなる。
【0191】
弾性変位部106は、カム板152(保持部105)が備えるカム面153a(カム部153)と共に、第1軸部103の周りに関節トルクを発生させる。弾性変位部106は、主として、圧縮バネ161、決定部162、変位部163、カムフォロア164、収容部165を備えている。
【0192】
圧縮バネ161は、所定のバネ係数を備えたコイル状のもの(圧縮コイルバネ)からなり、筒状をなした収容部165内に収容されている。収容部165内に収容されている圧縮バネ161の一端には、金属製の円柱状の決定部162が配されている。決定部162は、圧縮バネ161の一端と当接するように、収容部165内に配されている。決定部162の外周面には、螺旋状のネジ外周面162aが形成されており、このネジ外周面162aが、収容部165の内周面に形成されている螺旋状のネジ内周面165aと螺合することによって、決定部162が筒状の収容部165内で固定される。なお、決定部162の端面には、マイナス溝(不図示)が形成されており、この溝にマイナスドライバ等の工具が差し込まれて、決定部162が回転されると、決定部162が収容部165内を上昇又は下降して、圧縮バネ161の端部位置(つまり、圧縮バネ161のバネ圧縮量)が調節される。なお、筒状をなした収容部165の一方の端部(先端部)には、蓋部166が収容部165に対して着脱可能な状態で取り付けられている。蓋部166は、収容部165の先端部にある開口部165bを塞ぐものであり、ネジ内周面165aと螺合可能なネジ面を外周面に備えている。決定部162の位置(つまり、圧縮バネ161の端部位置)を調節する際は、適宜、蓋部166が、収容部165から取り外され、調節後は、再度、収容部165の開口部165bを塞ぐように取り付けられる。
【0193】
変位部163は、筒状の収容部165の他方の端部側(基部側)に配されており、圧縮バネ161の他端と当接して、決定部162との間で圧縮バネ161を挟む構成となっている。また、変位部163は、収容部165内を圧縮バネ161の伸縮方向(収容部165の軸方向、圧縮バネ161の軸方向)に沿って変位する部分となっている。この変位部163には、ローラ部164aを備えたカムフォロア(追従部の一例)164が取り付けられている。カムフォロア164は、圧縮バネ161に付勢された状態で、カム面153aの形状に沿って追従するように移動可能である。特に、カムフォロア164は、カム面153a上を移動する際、摺動摩擦が低減等される。ローラ部164aは、変位部163に固定されている軸部164bに対して、回転自在な状態で取り付けられており、カム板152が備えるカム面153aに、圧縮バネ161で付勢された状態で圧接される。ローラ部164aは、回転するカム面153aの形状に応じて、収容部165の軸方向(カム板152の径方向)に沿って上昇又は下降する。ローラ部164aが上昇した場合、カムフォロア164と共に変位部163が上昇し、圧縮バネ161が圧縮される。これに対して、ローラ部164aが下降した場合、カムフォロア164と共に変位部163が下降し、圧縮バネ161が弾性復帰して伸長する。
【0194】
なお、収容部165の基部側に、カムフォロア164のローラ部164aを収容するカムフォロア収容部167が設けられている。このカムフォロア収容部167には、カムフォロア164のローラ部164aが、収容部165の軸方向(圧縮バネ161の伸縮方向、軸方向)に沿って変位(昇降)できるように収容されている。なお、収容部165は、圧縮バネ161等を収容した状態で、回動部107(回動本体部171)に対して、一体的に形成されている。また、カムフォロア収容部67も、回動部107(回動本体部171)に対して、一体的に形成されている。このように収容部165及びカムフォロア収容部167は、回動部107に固定されている。
【0195】
揺動部108は、回動部107から外側に延びた形をなし、回動部107と共に、第1軸部103を中心として一方向及びその逆方向の双方に回転できるように構成されている。この揺動部108は、人の骨盤の動きを模擬する形で、人(利用者U)の股関節付近を軸中心として上下に回転揺動する。
【0196】
揺動部108は、全体的には、回動部107の外側に延びた長手状の部材からなる。揺動部108は、利用者Uが起立した状態で静止している場合に、回動部107の後側に配される周壁部172から後方に向かいつつ、水平方向Hよりも幾分、斜め上側に延びたような形をなしている。このような揺動部108は、長手状のアーム部181と、そのアーム部181の先端側に取り付けられる錘部182とを備えている。
【0197】
アーム部181は、回動部107の周壁部172から外側(後方側)に延びた長手状の部分であり、水平方向Hよりも幾分、斜め上側に延びたような形をなしている。アーム部181の基部181aは、回動部107に対して一体的に固定されている。本実施形態のアーム部181は、回動部107と同様、金属系材料により構成される。なお、他の実施形態においては、予め別部品として用意されたアーム部181を、回動部107に対して後付けする形で固定してもよい。また、アーム部181の先端部181bには、錘部182が固定されている。アーム部181の先端部181bのうち、利用者U側を向く内側面上に、凹部状に窪んだ取付部181cが設けられており、その取付部181cに、錘部182の端部が嵌め込まれる形で、錘部182がアーム部181の先端部181bに取り付けられている。なお錘部182とアーム部181の先端部181bとは、互いに公知の固定方法(例えば、ボルト締め、接着剤による固定等)で固定されてもよい。
【0198】
本実施形態の錘部182は、左右方向に延びた円柱状をなしている。なお、錘部182の形状、大きさ(例えば、長さL1、直径L2)、重さ(質量)等の諸条件は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜、設定される。
【0199】
なお、「回動部107に対する揺動部108の配置箇所」、「回動部107に対するカム面153a(カム部153)の配置箇所」、及び「カム面153aに圧接させるカムフォロア164(ローラ部164a)の配置箇所」等は、歩行支援機101が利用者Uの脚(右脚U1)にアシスト力を加える向き等を考慮して、適宜、決定される。本実施形態の場合、歩行支援機101が装着された利用者Uの右脚U1が前方へ振り出されるように、歩行支援機101がアシストできるように、「回動部107に対する揺動部108の配置箇所」、「回動部107に対するカム面153a(カム部153)の配置箇所」、及び「カム面153aに圧接させるカムフォロア164(ローラ部164a)の配置箇所」等が設定されている。
【0200】
本実施形態の歩行支援機101では、
図27等に示されるように、弾性変位部106と揺動部108とが、同一直線上に沿うように一体的に形成されており、歩行支援機101の弾性変位部106や揺動部108付近の構造がコンパクト化されている。
【0201】
次いで、歩行支援機101の動作等について説明する。
図27には、静止した状態の揺動部108が示されている。
図27に示されるように、起立した利用者Uが静止している状態において、揺動部108による重力モーメントと、圧縮バネ161で付勢されたカムフォロア164によるトルクとが釣り合うことで、揺動部108が、回動部107から後方に向かいつつ、水平方向Hよりも幾分、斜め上側に向かう姿勢で静止する。
【0202】
このように静止した状態の揺動部108は、利用者Uの歩行動作に伴って慣性揺動する。具体的には、利用者Uの歩行動作に伴う慣性揺動により、第1軸部103を中心として、圧縮バネ161が圧縮されるように回動部107と共に下降する方向(一方向の一例)に回転する。また、圧縮バネ161が弾性復帰する際に回動部107と共に上昇する方向(逆方向の一例)に回転する。
【0203】
図31は、右脚U1に歩行支援機101を装着した利用者Uが、左脚U2を前方へ振り出して着地した状態を示す説明図であり、
図32は、揺動部108の慣性揺動と、それに伴って変位するカムフォロア164との関係を示す歩行支援機101の断面図である。
【0204】
揺動部108が下降する際に回転する方向(下降方向、
図31及び
図32等の矢印X1)を、「正転方向」と称し、揺動部108が上昇する際に回転する方向(上昇方向、
図32の矢印X2)を、「反転方向」と称する。なお、正転方向(下降方向)は、
図31等において、反時計回りの矢印X1により示され、反転方向(上昇方向)は、
図32において、時計回りの矢印X2により示される。
【0205】
なお、揺動部108が回動部107と共に一方向(下降方向、正転方向)に回転する際、追従部(カムフォロア)164が相対的に逆方向(反転方向)に回転するようにカム面153aを移動することで圧縮バネ161が圧縮される。また、揺動部108が回動部107と共に逆方向(上昇方向、反転方向)に回転する際、追従部(カムフォロア)164が相対的に一方向(正転方向)に回転するようにカム面153aを移動することで圧縮バネ161が弾性復帰する。
【0206】
図31には、利用者Uの左脚U2が地面(床面)から離れて遊脚となり、そのような左脚U2が前方へ振り出されて着地した状態が示されている。左脚U2が着地すると、その着地に伴う慣性揺動により、揺動部108が回動部107と共に正転方向X1に回転する。その際、着地した左脚U2の後方にある右脚U1は、未だ地面(床面)から離れずに接地したままの状態である。つまり、左脚U1が着地して、利用者Uの身体と地面(床面)とが衝突してしばらくは、両脚とも接地した両脚支持期となっている。
【0207】
上記のように、左脚U2の着地に伴う慣性により、揺動部108が正転方向X1に回転すると、揺動部108と共にカムフォロア164(ローラ部164a)の配置箇所(圧接箇所)も正転方向X1に回転するため、カムフォロア164のローラ部164aが圧接される箇所におけるカム面153aと、第1軸部103の中心Oとの間の距離Rが、カムフォロア164(ローラ部164a)の配置箇所の回転に伴って徐々に大きくなるようにカム板152(回動部107)の径方向に沿って変化する。このように距離R1が変化すると、ローラ部164aは、第1軸部103の中心Oから外側へ遠ざかるように変位する。ローラ部164aがこのように変位する際に、圧縮バネ161が圧縮され、その圧縮バネ161に弾性エネルギーが蓄えられた状態となる。このように揺動部108は、利用者Uの遊脚の着地に伴う慣性により、圧縮バネ161が圧縮されるように回動部107と共に正転方向(下降方向)X1に回転する。
【0208】
なお、揺動部108は、上記のように正転方向X1に回転した後、圧縮された圧縮バネ161が弾性復帰する際に、回動部107と共に保持部105に対して相対的に反転方向X2に回転する。その際、カムフォロア164(ローラ部164a)の配置箇所(圧接箇所)も反転方向X2に回転するため、カムフォロア164のローラ部164aが圧接される箇所におけるカム面153aと、第1軸部103の中心Oとの間の距離R1は、揺動部108が正転方向X1に回転する場合とは逆に、カムフォロア164(ローラ部164a)の配置箇所の回転に伴って徐々に小さくなるように変化する。このように距離R1が変化すると、ローラ部164aは、第1軸部103の中心Oに近付くようにカム板152(回動部107)の径方向に沿って変位する。ローラ部164aがこのように変位する際に、圧縮バネ161が元の長さまで伸びると共に、圧縮バネ161で付勢されたローラ部164aがカム面153aを押すことにより、圧縮バネ161に蓄えられていた弾性エネルギーが、第1リンク部104を前方に振り出す方向に回転させる運動エネルギーに変換される。
【0209】
本実施形態の右脚U1用の歩行支援機101は、右脚U1の振り出し動作を支援するものであり、上記のように左脚U2が前方へ振り出されて着地した状態で、右脚U1に歩行支援機から力(アシスト力)が加えられる。
【0210】
ところで、上述した両脚支持期では、後方の脚(右脚U1)は地面から離れていないものの、徐々に膝が曲がり始めて大腿部U11の振り出しが始まる状態である。この大腿部U11の振り出しの速度と、揺動部108と共に、第1リンク部104の速度との兼ね合いで、歩行支援機101による脚(右脚U1)の振り出し動作を支援(アシスト)する仕方が変わる。また、圧縮バネ161の条件(バネ係数等)でも変化する。
【0211】
例えば、圧縮バネ161のバネ係数が小さく、圧縮バネ161が伸縮方向において柔らかい場合、歩行支援機101は、主として、圧縮バネ161が弾性復帰する形で、利用者Uの脚(右脚U1)にアシスト力を加えることになる。また、圧縮バネ161のバネ係数が大きく、圧縮バネ161が伸縮方向において硬い場合、歩行支援機101は、主として、揺動部108の慣性揺動が、直接的に第1リンク部104を前方に振り出す方向に回転させ、利用者Uの脚(右脚U1)にアシスト力を加えることになる。
【0212】
また、利用者Uの脚の振り出し動作が遅い場合、圧縮バネ161に蓄えられる弾性エネルギーが大きくなり、右脚U1の振り出し動作を支援するアシスト力も大きくなる。例えば、利用者Uが、歩行動作が容易ではない障害者や高齢者の場合に、脚の振り出し動作が遅くなる。この場合、歩行支援機101は、主として、圧縮バネ161が弾性復帰する形で、歩行動作が容易ではない利用者Uの脚(右脚U1)に大きなアシスト力を加えることになる。
【0213】
また、利用者Uの脚の動きが瞬間的に止まるような場合、圧縮バネ161の圧縮量が、通常の歩行時よりも大きくなる。このような場合も、歩行支援機101は、主として、圧縮バネ161が弾性復帰する形で、利用者Uの脚(右脚U1)にアシスト力を加えることになる。
【0214】
これに対して、利用者Uの脚の振り出し動作が速い場合、圧縮バネ161に蓄えられる弾性エネルギーが小さくなる。ただし、圧縮バネ161に蓄えられる弾性エネルギーは小さいものの、錘部182を有する揺動部108が、所謂「振り子」のように重力下において素早く振られるため、揺動部108及び第1リンク部104が同調する形で、脚(右脚U1)の振り出し動作が支援される。
【0215】
要するに、本実施形態の歩行支援機101では、揺動部108の慣性揺動が、利用者Uの遊脚の着地に伴うものであり(例えば、歩行支援機101が装着されていない左脚U2(遊脚)の着地に伴うものであり)、第1リンク部104が配される右脚U1の大腿部U11が、前方に振り出される際に、圧縮バネ161に蓄えられた弾性エネルギーが、第1リンク部104を前方に振り出す方向に回転させる運動エネルギーに変換される。
【0216】
図33は、右脚U1に歩行支援機101を装着した利用者Uが、右脚U1を前方へ振り出して着地した状態を示す説明図である。歩行支援機101は、
図33に示されるように、右脚U1を前方へ振り出して着地した場合も、その右脚U1の着地に伴う慣性揺動により、揺動部108が回動部107と共に正転方向(下降方向)X1に回転するが、
図33に示されるような状態では、カムフォロア164のローラ部164aが圧接される箇所におけるカム面153aと、第1軸部103の中心Oとの間の距離(カム板152の半径)R1がかなり小さくなっており、圧縮バネ161がほとんど圧縮されず、その圧縮バネ161に弾性エネルギーが蓄えられない状態となる。なお、後述する実施形態28等の場合は、歩行支援機が両脚に装着されており、常に左右どちらかの圧縮バネ161が圧縮され、その圧縮バネ161に弾性エネルギーが蓄えられた状態となる。本実施形態の歩行支援機101では、右脚U1は、両脚支持期の後、単脚支持期となるため、脚の振り出し動作を支援するアシスト機能は不要となる。
【0217】
以上のような本実施形態の歩行支援機101において、利用者Uの遊脚の着地時に、利用者Uが地面(床面)から受ける衝撃力は、揺動部108の錘部182の重さ(質量)と比べて数倍以上の大きさである。そのため、歩行支援機101は、例えば、従来の受動歩行型の歩行支援機と比べて、圧縮バネ161を押し縮める力が大きいと言える。また、歩行支援機101は、従来の受動歩行型の歩行支援機と比べて、脚の振り出し動作を支援するアシスト力の変化量が大きく、しかも、そのアシスト力が利用者Uの脚(右脚U1)に対して、瞬発的に加えられる。なお、従来の歩行支援機では、本実施形態の歩行支援機101と比べて、アシスト力が利用者Uの脚に対して緩やかに加えられる。このように本実施形態の歩行支援機101は、従来の歩行支援機と比べて、利用者Uの脚(右脚U1)に加えられるアシスト力が質的に異なっている。
【0218】
また、本実施形態の歩行支援機101では、アシスト力の変化量が大きく、そのアシスト力が利用者Uの脚(右脚U1)に対して、瞬発的に加えられる。そのため、アシスト力が加えられるタイミングが分かり易くなり、例えば、利用者Uが感覚鈍麻の場合でも、歩行支援機101からのアシスト力を感じやすいという利点がある。
【0219】
なお、従来の受動歩行型の歩行支援機では、第1軸部の周りに関節トルクを発生させるためのカム・バネ機構のカムプレート(圧縮バネに付勢されたカムフォロアが圧接されるカム面を含む)を、利用者Uの身体側(腰の側部付近)に、所定の取付板等を利用してしっかりと固定する必要があった。しかしながら、従来の歩行支援機では、カム・バネ機構により発生する関節トルクが直接的に身体側に作用し、歩行支援機を利用者Uの腰に固定するための腰装着部が所定の位置から時間経過と共にずれてしまうことがあった。その結果、カム・バネ機構により発生する関節トルクが低下等することがあった。これに対して、本実施形態の歩行支援機101では、カム面153aを含む保持部105(カム板152)は、第1軸部103を中心として回転可能な状態となっており、利用者Uの身体側に固定する必要がない。したがって、本実施形態の歩行支援機101は、歩行時に、カム・バネ機構(圧縮バネ161に付勢されたカムフォロア164と、そのカムフォロア164が圧接されるカム面153aを含む保持部105(カム板152)等からなる機構)により、安定的に、トルクを発生させることができる。
【0220】
<実施形態21>
次いで、本発明の実施形態21を、
図34を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「A」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図34は、実施形態21に係る歩行支援機101Aの断面図である。
図34には、
図30に示される実施形態20の歩行支援機101に対応した箇所の歩行支援機101Aが示されており、揺動部108Aによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア164Aによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部108Aが示されている。なお、以降の実施形態の説明において、特に断りがない限り、図の右側が、歩行支援機の前方側(前側)であり、図の左側が、歩行支援機の後方側(後側)であり、図の上側が、歩行支援機の上方側(上側)であり、図の下側が、歩行支援機の下方側(下側)である。
【0221】
本実施形態の歩行支援機101Aは、実施形態20と同様、全体的には、回動部107Aから後方側に延びた形(回動部107Aから外側に延びた形の一例)の揺動部108Aを備えている。ただし、本実施形態の場合、回動部107Aに対する揺動部108Aの配置箇所、及び揺動部108Aの形状等が、実施形態20と異なっている。
【0222】
具体的には、揺動部108Aは、静止した状態の回動部107Aの上側部分から上方に延びつつ、途中で折れ曲がって後方に真っすぐに延びた形のアーム部181Aと、そのアーム部181Aの先端部181Abに取り付けられる錘部182Aとを備えている。アーム部181Aの基部181Aaは、静止した状態の回動部107Aの上側部分に配される周壁部172Aに対して一体的に固定されている。また、周壁部172Aに対する揺動部108Aの配置箇所と、カムフォロア164Aの配置箇所とが互いに離されている。
【0223】
本実施形態の歩行支援機101Aも、実施形態20と同様、脚が前方へ振り出されて着地した状態で、揺動部108Aが、第1軸部103Aを中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように回動部107Aと共に、正転方向X1に回転し、かつ弾性変位部106Aが備える圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部107Aと共に反転方向X2に回転するように揺動(回転揺動)する。
【0224】
なお、本実施形態の歩行支援機101Aにおけるその他の各構成(例えば、保持部105Aの保持本体部151A、カム板152Aが備えるカム面153Aa、第1軸部103A、弾性変位部106A、第1リンク部(不図示)等)は、実施形態1と同様であり、腰装着部(不図示)を用いて利用者に装着される。
【0225】
本実施形態の歩行支援機101Aのように、本発明の目的を損なわない限り、揺動部108Aのアーム部181Aの配置箇所を、回動部107Aの周壁部172Aにおいて、適宜、変更してもよい。
【0226】
<実施形態22>
次いで、本発明の実施形態22を、
図35を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「B」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図35は、実施形態22に係る歩行支援機101Bの断面図である。
図35には、
図30に示される実施形態20の歩行支援機101に対応した箇所の歩行支援機101Bが示されており、揺動部108Bによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア164Bによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部108Bが示されている。
【0227】
本実施形態の歩行支援機101Bは、実施形態20と同様、全体的には、回動部107Bから後方側に延びた形(回動部107Bから外側に延びた形の一例)の揺動部108Bを備えている。ただし、本実施形態の揺動部108Bは、実施形態20とは異なり、板バネ(弾性体)からなるアーム部181Bを備えている。アーム部181Bは、短冊状の金属片からなり、その基部は、回動部107Bの周壁部172Bに設けられている。また、アーム部181Bの先端部181Bbは、錘部182Bに設けられている溝部182B1に挿し込まれる形で取り付けられている。このような揺動部108Bは、上下方向に撓むように弾性変形可能である。
【0228】
本実施形態の歩行支援機101Bも、実施形態20と同様、脚が前方へ振り出されて着地した状態で、揺動部108Bが、第1軸部103Bを中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように回動部107Bと共に、正転方向X1に回転し、かつ弾性変位部106Bが備える圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部107Bと共に反転方向X2に回転するように揺動(回転揺動)する。
【0229】
特に、本実施形態の歩行支援機101Bでは、揺動部108Bが慣性揺動する際、板バネからなるアーム部181Bが、基部側を支点として上下に撓む。このようにアーム部181B自体が撓むことにより、揺動部108Bの慣性揺動を回動部107Bに対してゆっくりと滑らかに作用させることができる。
【0230】
なお、本実施形態の歩行支援機101Bにおけるその他の各構成(例えば、保持部105Bの保持本体部151B、カム板152Bが備えるカム面153Ba、第1軸部103B、弾性変位部106B、第1リンク部(不図示)等)は、実施形態1と同様であり、腰装着部(不図示)を用いて利用者に装着される。
【0231】
本実施形態の歩行支援機101Bのように、本発明の目的を損なわない限り、揺動部108Bのアーム部181Bを板バネ(弾性体)で構成してもよい。
【0232】
<実施形態23>
次いで、本発明の実施形態23を、
図36を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「C」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図36は、実施形態23に係る歩行支援機101Cの断面図である。
図36には、
図30に示される実施形態20の歩行支援機101に対応した箇所の歩行支援機101Cが示されており、揺動部108Cによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア164Cによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部108Cが示されている。
【0233】
本実施形態の歩行支援機101Cは、実施形態20と同様、全体的には、回動部107Cから後方側に延びた形(回動部107Cから外側に延びた形の一例)の揺動部108Cを備えている。ただし、本実施形態の揺動部108Cは、実施形態20とは異なり、揺動部108C全体が錘部182Cにより構成されている。つまり、錘部182C自体が、アーム部のような形をなしている。なお、アーム状に延びた錘部182Cの基部は、回動部107Cの周壁部172Cに固定されている。
【0234】
本実施形態の歩行支援機101Cも、実施形態20と同様、脚が前方へ振り出されて着地した状態で、揺動部108Cが、第1軸部103Cを中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように回動部107Cと共に、正転方向X1に回転し、かつ弾性変位部106Cが備える圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部107Cと共に反転方向X2に回転するように揺動(回転揺動)する。
【0235】
なお、本実施形態の歩行支援機101Cにおけるその他の各構成(例えば、保持部105Cの保持本体部151C、カム板152Cが備えるカム面153Ca、第1軸部103C、弾性変位部106C、第1リンク部(不図示)等)は、実施形態1と同様であり、腰装着部(不図示)を用いて利用者に装着される。
【0236】
本実施形態の歩行支援機101Cのように、本発明の目的を損なわない限り、揺動部108C全体を、アーム状の錘部182Cで構成してもよい。
【0237】
<実施形態24>
次いで、本発明の実施形態24を、
図37を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「D」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図37は、実施形態24に係る歩行支援機101Dの断面図である。
図37には、
図30に示される実施形態20の歩行支援機101に対応した箇所の歩行支援機101Dが示されており、揺動部108Dによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア164Dによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部108Dが示されている。
【0238】
本実施形態の歩行支援機101Dは、実施形態20と同様、全体的には、回動部107Dから後方側に延びた形(回動部107Dから外側に延びた形の一例)の揺動部108Dを備えている。ただし、本実施形態の揺動部108Dは、実施形態20とは異なり、揺動部108Dの先端側が、動物の「しっぽ」のような形をした部分(慣性体)を備えている。この揺動部108Dは、回動部107Dの周壁部172Dに一体的に固定されるアーム部181Dと、そのアーム部181Dの先端側に取り付けられるしっぽ状の錘部182Dとを備えている。
【0239】
しっぽ状の錘部(慣性体)182Dは、例えば、ゴム、エラストマー等の柔軟性(可撓性)を備えた部材により構成され、錘部182Dの基部側を支点として、上下、前後、左右等に、慣性で揺動することができる。
【0240】
本実施形態の歩行支援機101Dも、実施形態20と同様、脚が前方へ振り出されて着地した状態で、揺動部108Dが、第1軸部103Dを中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように回動部107Dと共に、正転方向X1に回転し、かつ弾性変位部106Dが備える圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部107Dと共に反転方向X2に回転するように揺動(回転揺動)する。
【0241】
なお、本実施形態の歩行支援機101Dにおけるその他の各構成(例えば、保持部105Dの保持本体部151D、カム板152Dが備えるカム面153Da、第1軸部103D、弾性変位部106D、第1リンク部(不図示)等)は、実施形態1と同様であり、腰装着部(不図示)を用いて利用者に装着される。
【0242】
本実施形態の歩行支援機101Dのように、本発明の目的を損なわない限り、揺動部108Dに、しっぽ状の錘部(慣性体)182Dを用いてもよい。
【0243】
<実施形態25>
次いで、本発明の実施形態25を、
図38を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「E」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図38は、実施形態25に係る歩行支援機101Eの断面図である。
図38には、
図30に示される実施形態20の歩行支援機101に対応した箇所の歩行支援機101Eが示されており、揺動部108Eによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア164Eによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部108Eが示されている。
【0244】
本実施形態の歩行支援機101Eは、実施形態20と同様、全体的には、回動部107Eから後方側に延びた形(回動部107Eから外側に延びた形の一例)の揺動部108Eを備えている。ただし、本実施形態の場合、揺動部108Eは、アーム部181Eに対する錘部182Eの設置個所を変更できるように構成されている。
【0245】
アーム部181Eは、回動部107Eから後方側に延びた棒状をなしており、その基部は、回動部107Eの周壁部172Eに対して一体的に固定されている。錘部182Eは、内側に貫通孔部182Eaを有する筒状をなしており、その貫通孔部182Eaに、アーム部181Eが先端部181Eb側から挿し込まれることで、錘部182Eがアーム部181Eに外嵌される形で取り付けられる。錘部182Eは、アーム部181Eの長手方向に沿って移動可能であり、アーム部181Eに対する錘部182Eの設置個所が変更されることで、第1軸部103Eと錘部182Eとの間の距離を、適宜、調整することができる。
【0246】
本実施形態の歩行支援機101Eにおけるその他の各構成(例えば、保持部105Eの保持本体部151E、カム板152Eが備えるカム面153Ea、第1軸部103E、弾性変位部106E、第1リンク部(不図示)等)は、実施形態1と同様であり、腰装着部(不図示)を用いて利用者に装着される。
【0247】
本実施形態の歩行支援機101Eも、実施形態20と同様、利用者の歩行動作の伴い、正転方向X1及び反転方向X2に、揺動部108Eが慣性揺動(回転揺動)する。このように、本発明の目的を損なわない限り、揺動部108Eの錘部182Eの設置個所を適宜、変更できるようにしてもよい。
【0248】
<実施形態26>
次いで、本発明の実施形態26を、
図39を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「F」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図39は、実施形態26に係る歩行支援機101Fの断面図である。
図39には、
図30に示される実施形態20の歩行支援機101に対応した箇所の歩行支援機101Fが示されており、揺動部108Fによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア164Fによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部108Fが示されている(ただし、錘部182Fは浮遊状態を示す)。
【0249】
本実施形態の歩行支援機101Fは、実施形態20と同様、全体的には、回動部107Fから後方側に延びた形(回動部107Fから外側に延びた形の一例)の揺動部108Fを備えている。ただし、本実施形態の揺動部108Fは、錘部182Fが、アーム部181Fの先端部181Fbに設けられた収容室181Fc内を上下に移動できるように構成されている。
【0250】
アーム部181Fは、全体的には、回動部107Fから後方側に延びた棒状をなしており、その基部は、回動部107Fの周壁部172Fに対して一体的に固定されている。アーム部181Fの先端部181Fbは、全体的には、アーム部181Fの基部側に対して上側に垂直に延びた形をなしており、その内部に、錘部182Fが上下方向に沿って移動できるような空間を含む収容室181Fcが形成されている。
【0251】
本実施形態の歩行支援機101Fにおけるその他の各構成(例えば、保持部105Fの保持本体部151F、カム板152Fが備えるカム面153Fa、第1軸部103F、弾性変位部106F、第1リンク部(不図示)等)は、実施形態1と同様であり、腰装着部(不図示)を用いて利用者に装着される。
【0252】
本実施形態の歩行支援機101Fも、実施形態20と同様、利用者の歩行動作の伴い、正転方向X1及び反転方向X2に、揺動部108Fが慣性揺動(回転揺動)する。特に、本実施形態の場合、揺動部108Fが回転揺動する際、収容室181Fc内の錘部182Fも慣性で、上下方向に移動し、歩行状態に応じて収容室181Fcの上下面に衝突する。このように、本発明の目的を損なわない限り、揺動部108Fの錘部182Fを、収容室181Fc内で移動できるように構成してもよい。
【0253】
<実施形態27>
次いで、本発明の実施形態27を、
図40を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「G」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図40は、実施形態27に係る歩行支援機101Gの断面図である。
図40には、
図30に示される実施形態20の歩行支援機101に対応した箇所の歩行支援機101Gが示されており、揺動部108Gによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア164Gによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部108Gが示されている。
【0254】
本実施形態の歩行支援機101Gは、実施形態20と同様、全体的には、回動部107Gから後方側に延びた形(回動部107Gから外側に延びた形の一例)の揺動部108Gを備えている。ただし、本実施形態の揺動部108Gは、錘部182Gが、アーム部181Gの先端部181Gbに設けられた収容室181Gc内を、モータ183Gの動力を利用して、上下に移動できるように構成されている。本実施形態の場合、回転揺動する揺動部108Gとは関係なく、錘部182Gを動かすことができる。
【0255】
アーム部181Gは、全体的には、回動部107Gから後方側に延びた棒状をなしており、その基部は、回動部107Gの周壁部172Gに対して一体的に固定されている。アーム部181Gの先端部181Gbは、全体的には、アーム部181Gの基部側に対して上側に垂直に延びた形をなしており、その内部に、錘部182Gが上下方向に沿って移動できるような空間を含む収容室181Gcが形成されている。そして、先端部181Gbの上側に、モータ(動力源)183Gが設置されており、そのモータ183Gの出力を、錘部182Gに伝達する伝達機構183Gaが、モータ183Gと錘部182Gとを繋ぐように配されている。
【0256】
本実施形態の歩行支援機101Gにおけるその他の各構成(例えば、保持部105Gの保持本体部151G、カム板152Gが備えるカム面153Ga、第1軸部103G、弾性変位部106G、第1リンク部(不図示)等)は、実施形態1と同様であり、腰装着部(不図示)を用いて利用者に装着される。
【0257】
本実施形態の歩行支援機101Gも、実施形態20と同様、利用者の歩行動作の伴い、正転方向X1及び反転方向X2に、揺動部108Gが慣性揺動(回転揺動)する。特に、本実施形態の場合、揺動部108Gが回転揺動する際、その回転揺動する揺動部108G全体の動きに合わせて、収容室181Gc内の錘部182Gをモータ183Gの動力により上下方向に移動させたり、その回転揺動する揺動部108G全体の動きとは関係なく、強制的に移動(強制振動)させたりする。このように、本発明の目的を損なわない限り、揺動部108Gの錘部182Gを、モータ183Gの動力を利用して、収容室181Gc内を予め定められているプログラムにより任意に移動できるように構成してもよい。
【0258】
<実施形態28>
次いで、本発明の実施形態28を、
図41を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「H」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図41は、実施形態28に係る歩行支援機101Hの上面図である。本実施形態の歩行支援機101Hは、両脚用であり、利用者の右脚に右脚用の歩行支援機101H1が装着され、利用者の左脚に左脚用の歩行支援機101H2が装着される。右脚用の歩行支援機101H1と、左脚用の歩行支援機101H2とは、1つの腰装着部102Hの腰装着ベルト121Hに対して、腰宛部122H等を利用して取り付けられている。このような腰装着ベルト121H(腰装着部102H)を利用して、両脚用の歩行支援機101Hにおける各脚用の歩行支援機101H1,101H2が、各脚(右脚、左脚)に装着される。
【0259】
右脚用の歩行支援機101H1は、右脚の振り出し動作を支援するものであり、基本的な構成は、実施形態20と同様である。左脚用の歩行支援機101H2は、左脚の振り出し動作を支援するものであり、形状が左右対称であること以外は、右脚用の歩行支援機101H1と同様の機能を備えている。
【0260】
両脚用の歩行支援機101Hでは、利用者の歩行時において、遊脚が着地する度に、双方の歩行支援機101H1,101H2の揺動部108Hが、慣性により、第1軸部(不図示)を中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように正転方向に回転すると共に、圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部(不図示)と共に反転方向に回転するように回転揺動する。着地した脚が、右脚の場合、左脚に装着された歩行支援機101H2により、左脚の振り出し動作が支援される。また、着地した脚が、左脚の場合、右脚に装着された歩行支援機101H1により、右脚の振り出し動作が支援される。
【0261】
本実施形態のように、片脚用の歩行支援機101H1,101H2を、それぞれ右脚及び左脚に装着する両脚用の歩行支援機101Hを用いてもよい。
【0262】
なお、他の実施形態においては、右脚用の歩行支援機における揺動部の錘部の重さと、左脚用の歩行支援機における揺動部の錘部の重さとを、互いに異なるように設定してもよい。
【0263】
<実施形態29>
次いで、本発明の実施形態29を、
図42を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「I」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図42は、実施形態29に係る歩行支援機101Iの上面図である。本実施形態の歩行支援機101Iは、実施形態28と同様、両脚用であり、利用者の右脚に右脚用の歩行支援機101I1が装着され、利用者の左脚に左脚用の歩行支援機101I2が装着される。本実施形態の歩行支援機101I1は、右脚用の歩行支援機101I1の揺動部108Iと、左脚用の歩行支援機101I2の揺動部108Iとを、連結部材183Iを利用して互いに結合したものからなる。
【0264】
連結部材183Iは、左右方向に延びた棒状の部材(剛体)であり、一方の端部183I1が、利用者Uの右側に配される揺動部18Iのアーム部181Iに固定され、他方の端部183I2が、利用者Uの左側に配される揺動部108Iのアーム部181Iに固定されている。連結部材183Iは、利用者Uの後方側において、利用者Uの腰や臀部等と接触しない箇所に設けられる。
【0265】
本実施形態の両脚用の歩行支援機101Iは、左右の歩行支援機101I1,101I2における各揺動部108I(アーム部181I)が、剛体である連結部材183Iによって繋がっているため、左右の揺動部18I同士が、利用者の歩行動作に応じて、一体的に、慣性揺動(回転揺動)する。このように左右の揺動部18I同士が、一体的に揺動するように構成した両脚用の歩行支援機101Iを使用してもよい。
【0266】
なお、他の実施形態においては、両脚用の歩行支援機において、右脚用の歩行支援機の揺動部(アーム部)と、左脚用の歩行支援機の揺動部(アーム部)とを、棒状又は紐状等の弾性体(例えば、ゴム、エラストマー等の弾性体)からなる連結部材を利用して、左右の揺動部同士を接続してもよい。
【0267】
<実施形態30>
次いで、本発明の実施形態30を、
図43を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「J」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図43は、実施形態30に係る歩行支援機101Jの上面図である。本実施形態の歩行支援機101Jは、実施形態28等と同様、両脚用であり、利用者の右脚に右脚用の歩行支援機101J1が装着され、利用者の左脚に左脚用の歩行支援機101J2が装着される。本実施形態の歩行支援機101Jは、右脚用の歩行支援機101J1の揺動部108Jと、左脚用の歩行支援機101J2の揺動部108Jとが、連結部材183Jを利用して互いに結合すると共に、その連結部材183Jに、共通化された錘部182Jが取り付けられている。
【0268】
連結部材183Jは、左右方向に延びた棒状の部材(剛体)であり、一方の端部183J1が、利用者Uの右側に配される揺動部108Jのアーム部181Jの先端部に固定され、他方の端部183J2が、利用者Uの左側に配される揺動部108Jのアーム部181Jの先端部に固定されている。連結部材183Jは、利用者Uの後方側において、利用者Uの腰や臀部等と接触しない箇所に設けられる。連結部材183Jは、利用者Uの後方側において、左右方向に沿って水平に配されており、その連結部材183Jの中央部分に、錘部182Jが取り付けられている。
【0269】
本実施形態の両脚用の歩行支援機101Jは、左右の歩行支援機101J1,101J2における各揺動部108J(アーム部181J)が、剛体である連結部材183Jによって繋がっているため、左右の揺動部108J同士が、利用者の歩行動作に応じて、一体的に、慣性揺動(回転揺動)する。このように左右の揺動部108J同士が、一体的に揺動するように構成した両脚用の歩行支援機101Jを使用してもよい。また、本実施形態のように、左右の揺動部108Jにおける錘部182Jを、共通化してもよい。
【0270】
<実施形態31>
次いで、本発明の実施形態31を、
図44及び
図45を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「K」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図44は、実施形態31に係る歩行支援機101Kの第1軸部103K付近の分解断面図であり、
図45は、実施形態31に係る歩行支援機101Kの第1軸部103K付近の断面図である。本実施形態の歩行支援機101Kは、実施形態20と同様、右脚用の歩行支援機101Kであり、
図44及び
図45には、前側から見た状態の歩行支援機101Kの断面構成が示されている。
【0271】
本実施形態の歩行支援機101Kは、第1軸部103Kを、腰装着部102Kに取り付ける構造が、実施形態20と異なっている。本実施形態の腰装着部102Kは、実施形態20のような腰宛部を備えておらず、腰装着ベルト121K(ベルト状部材121Ka)に対して第1軸部103Kが取り付けられる構成となっている。第1軸部103Kは、腰装着ベルト121Kの表面に固定された板状の台座部135Kと、その台座部135Kの表面135Ka上に立設されたピン状の中軸部136Kと、保持部105Kと一体的に形成され、かつ中軸部136Kが挿し込まれる軸孔部131Kcを含む軸本体部131Kとを備えている。
【0272】
第1軸部103Kは、台座部135Kに立設された中軸部136Kが、軸本体部131Kの軸孔部131Kcに挿し込まれることにより、腰装着部102K(腰装着ベルト121K)に取り付けられる。なお、軸本体部131Kは、保持部105K(カム板152K)の軸孔部154Kに挿通された状態で、中軸部136Kが軸孔部131Kcに挿し込まれる。このような第1軸部103Kは、台座部135Kに立設された中軸部136Kを中心として回転自在な状態となっている。そして、回動部107Kは、そのような第1軸部103Kを中心として回転自在な状態となっている。また、第1リンク部104Kの上端側を保持する保持部105Kは、第1軸部103Kを中心として回転自在な状態となっている。
【0273】
第1軸部103Kは、利用者の股関節付近の側方に配されるように、腰装着部102K(腰装着ベルト121K)が、利用者の腰に装着される。
【0274】
本実施形態の歩行支援機101Kのように、第1軸部103Kを、腰装着ベルト121Kに対して、直接、取り付ける構造であってもよい。
【0275】
<実施形態32>
次いで、本発明の実施形態32を、
図46を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「L」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図46は、実施形態32に係る歩行支援機101Lの第1軸部103L付近の説明図である。なお、
図46の右側が、歩行支援機101Lの前側(前方側)であり、同図の左側が、歩行支援機101Lの後側(後方側)である。本実施形態の歩行支援機101Lは、実施形態31と同様、第1軸部103Lが、腰装着部102Lの腰装着ベルト121L(ベルト状部材121La)に対して直接、取り付けられる構成である。ただし、本実施形態の歩行支援機101Lでは、腰装着ベルト121Lに設けられているピン状の中軸部136Lの位置を、上下方向及び前後方向に移動させることができる。
【0276】
中軸部136Lは、実施形態31と同様、台座部135Lの表面に立設されているものの、台座部135Lは、ベルト状部材121Laの表面ではなく、ベルト状部材121Laの内部に設けられている。しかも、台座部135Lは、ベルト状部材121Laの内部を、ある程度、前後上下に移動できるように、ベルト状部材121Laの内部に収容されている。ベルト状部材121Laの表面には、台座部135Lの表面の一部を露出させる十字状の溝部124Lが形成されており、その溝部124Lから外側に向かって中軸部136Lが突出した状態になっている。中軸部136Lは、十字状の溝部124Lに沿って、上下方向及び前後方向に移動することができる。このように本実施形態の歩行支援機101Lでは、中軸部136Lの設置箇所を移動させることができ、揺動部108L、回動部107L及び第1リンク部104Lの回転動作を損なわず、第1軸部103Lの位置を上下方向及び前後方向に自在に移動させることができる。
【0277】
<実施形態33>
次いで、本発明の実施形態33を、
図47を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「M」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図47は、実施形態33に係る歩行支援機101Mの上面図である。本実施形態の歩行支援機101Mは、実施形態28等と同様、両脚用であり、利用者Uの右脚に右脚用の歩行支援機101M1が装着され、利用者の左脚に左脚用の歩行支援機101M2が装着される。本実施形態の歩行支援機101Mは、実施形態30と同様、右脚用の歩行支援機101M1の揺動部108Mと、左脚用の歩行支援機101M2の揺動部108Mとが、連結部材183Mを利用して互いに結合すると共に、その連結部材183Mに、共通化された錘部182Mが取り付けられている。
【0278】
特に、本実施形態の歩行支援機101Mは、利用者Uへの装着方法が、実施形態20等とは異なっている。具体的には、互いに連結部材183Mで繋がった右脚用の歩行支援機101M1と、左脚用の歩行支援機101M2との間で、利用者Uの腰U3を左右両側から挟み込む形で、歩行支援機101Mが装着される。本実施形態の場合、左右の各歩行支援機101M1,101M2にそれぞれ、腰装着部102Mが備えるパッド状の腰宛部125Mが設けられており、それらの腰宛部125Mに、それぞれ第1軸部(不図示)が固定されている。
【0279】
本実施形態の両脚用の歩行支援機101Mは、左右の歩行支援機101M1,101M2における各揺動部108M(アーム部181M)が、剛体である連結部材183Mによって繋がっているため、左右の揺動部108M同士が、利用者の歩行動作に応じて、一体的に、慣性揺動(回転揺動)する。また、本実施形態の両脚用の歩行支援機101Mは、利用者Uの腰U3に対して、所謂「ヘッドホン」のように、左右両側から挟み込む形で取り付けることが可能であり、装着が容易である。
【0280】
<実施形態34>
次いで、本発明の実施形態34を、
図48を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「N」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図48は、実施形態34に係る歩行支援機101Nの断面図である。
図48には、
図30に示される実施形態20の歩行支援機101に対応した箇所の歩行支援機101Nが示されており、揺動部108Nによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア164Nによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部108Nが示されている。
【0281】
本実施形態の歩行支援機101Nは、実施形態20と同様、全体的には、回動部107Nから後方側に延びた形(回動部107Nから外側に延びた形の一例)の揺動部108Nを備えている。ただし、本実施形態の場合、保持部105N(カム板152N)のカム面153Naに圧接させるカムフォロア164N(ローラ部164Na)の配置箇所等が、実施形態20と異なっている。
【0282】
具体的には、歩行支援機101Nが
図48に示されるように静止した状態において、カムフォロア164N等を備える弾性変位部106Nが、回動部107Nの前方側に配置されているため、カム面153Naの周方向における揺動部108Nと、カムフォロア164N(ローラ部164Na)との間隔(距離)が、実施形態20よりも長くなっている。なお、カム板152Nにおける第1軸部103Nの中心Oとカム面153Naとの間の距離は、
図48に示される状態において、時計回りに徐々に小さくなるように設定されている。なお、揺動部108Nは、実施形態1と同様、アーム部181Nと、アーム部181Nの先端部181Nbに取り付けられる錘部182とを備えており、アーム部181Nの基部181Naが、回動部107Nの周壁部172Nに対して一体的に固定されている。
【0283】
本実施形態の歩行支援機101Nも、実施形態1と同様、脚が前方へ振り出されて着地した状態で、揺動部108Nが、第1軸部103Nを中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように回動部107Nと共に、正転方向X1に回転し、かつ弾性変位部106Nが備える圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部107Nと共に反転方向X2に回転するように揺動(回転揺動)する。なお、本実施形態のその他の各構成は、実施形態20と同様であり、腰装着部(不図示)を用いて利用者に装着される。
【0284】
本実施形態の歩行支援機101Nのように、本発明の目的を損なわない限り、カム面153Naに対するカムフォロア164N(ローラ部164Na)の配置箇所、及びカム面153Naの形状等を、適宜、変更してもよい。
【0285】
<実施形態35>
次いで、本発明の実施形態35を、
図49を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「P」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図49は、実施形態35に係る歩行支援機101Pの断面図である。
図49には、
図30に示される実施形態20の歩行支援機101に対応した箇所の歩行支援機101Pが示されており、揺動部108Pによる重力モーメントと、圧縮バネ(不図示)で付勢されたカムフォロア164Pによるトルクとが釣り合うことで静止した状態の揺動部108Pが示されている。
【0286】
本実施形態の歩行支援機101Pは、実施形態20とは異なり、回動部107Pから前方側に延びた形(回動部107Pから外側に延びた形の一例)の揺動部108Pを備えている。揺動部108Pは、回動部107Pから前方側に延びたアーム部181Pと、そのアーム部181Pの先端部181Pbに取り付けられる錘部182Pとを備えている。アーム部181Pの基部181Paは、静止した状態の回動部107Pの前側部分に配される周壁部172Pに対して一体的に固定されている。
【0287】
本実施形態の歩行支援機101Pは、脚が前方へ振り出されて着地した状態で、揺動部108Pが、第1軸部103Pを中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように回動部107Pと共に、正転方向X11に回転し、かつ弾性変位部106Pが備える圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部107Pと共に反転方向X12に回転するように揺動(回転揺動)する。本実施形態においては、
図49において、時計回りに回転する方向が、正転方向X11であり、反時計回りに回転する方向が、反転方向X12である。なお、本実施形態の歩行支援機101Pのその他の構成は、実施形態20と同様である。
【0288】
本実施形態の歩行支援機101Pは、右脚U1用であり、右脚U1の振り出し動作を支援する。具体的には、右脚U1は、両脚支持期の後、単脚支持期となるため、利用者Uの体を支持した右脚U1を前倒(腰を前に押し出す)させるように、力(アシスト力)が加えられる。
【0289】
本実施形態の歩行支援機101Pのように、本発明の目的を損なわない限り、揺動部108Pを、回動部107Pから前方側に延びた形に設定してもよい。
【0290】
<実施形態36>
次いで、本発明の実施形態36を、
図50を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「Q」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図50は、実施形態36に係る歩行支援機101Qの断面図である。
図50には、
図30に示される実施形態20の歩行支援機101に対応した箇所の歩行支援機101Qが示されている。
【0291】
本実施形態の歩行支援機101Qは、実施形態1とは異なり、脚が前方へ振り出されて着地した際の前進方向の運動の減速時に、揺動部198Qが慣性により、回転揺動するように構成されている。本実施形態の場合、揺動部108Qは、回動部107Qの上側部分から上方に向かって延びたアーム部181Qと、そのアーム部181Qの先端部181Qbに取り受けられる錘部182Qとを備えている。アーム部181Qの基部81Qaは、回動部107Qの周壁部172Qに対して一体的に固定されている。
【0292】
本実施形態の歩行支援機101Qは、脚が前方へ振り出されて着地した際の前進方向の運動の減速時に、揺動部108Qが、第1軸部103Qを中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように回動部107Qと共に、正転方向X21に回転し、かつ弾性変位部106Qが備える圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部107Qと共に反転方向X22に回転するように揺動(回転揺動)する。本実施形態では、
図50に示されるように、時計回りに回転する方向が、正転方向X21であり、反時計回りに回転する方向が、反転方向X22である。なお、本実施形態の歩行支援機101Qのその他の構成は、実施形態20と同様である。
【0293】
本実施形態の歩行支援機101Qは、右脚U1用であり、右脚U1に歩行支援機101Qを装着した利用者Uが、右脚U1を前方へ振り出して着地した際の前進方向の運動の減速時に、右脚U1に歩行支援機101Qから力(アシスト力)が加えられる。具体的には、右脚U1は、両脚支持期の後、単脚支持期となるため、利用者Uの体を支持した右脚U1を前倒させる(腰を前に押し出す)ように、力(アシスト力)が加えられる。
【0294】
つまり、本実施形態では、揺動部108Qの慣性揺動が、大腿部U11に第1リンク部104Qが配されている方の利用者Uの右脚U1が前方に振り出されて着地した際の前進方向の減速時に伴うものであり、着地している利用者Uの右脚U1を前倒させるように、圧縮バネ(不図示)に蓄えられた弾性エネルギーが、第1リンク部104Qを後方に振り戻す方向に回転させる運動エネルギーに変換される。
【0295】
本実施形態の歩行支援機101Qのように、本発明の目的を損なわない限り、歩行の減速時に、慣性揺動する揺動部108Qを備えてもよい。
【0296】
<実施形態37>
次いで、本発明の実施形態37を、
図51を参照しつつ説明する。本実施形態において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「R」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図51は、実施形態37に係る歩行支援機101Rの断面図である。
図51には、
図30に示される実施形態20の歩行支援機101に対応した箇所の歩行支援機101Rが示されている。
【0297】
本実施形態の場合、揺動部108Rは、回動部107Rの下側部分から下方に向かって延びたアーム部181Rと、そのアーム部181Rの先端部181Rbに取り受けられる錘部182Rとを備えている。アーム部181Rは、第1リンク部104R(棒状部材141R)や保持部105R(保持本体部151R)等と干渉(衝突)しないように、第1リンク部104R等よりも外側(
図51の紙面手前側)に配置されている。また、アーム部181Rの基部181Raは、回動部107Rに対して一体的に固定されている。
【0298】
本実施形態の歩行支援機101Rは、歩行中に利用者Uが減速した場合(脚が前方へ振り出されて着地した際の前進方向の運動の減速時)、揺動部108Rが、第1軸部103Rを中心として、圧縮バネ(不図示)が圧縮されるように回動部107Rと共に、正転方向X31に回転し、かつ弾性変位部106Rが備える圧縮バネ(不図示)が弾性復帰する際に回動部107Rと共に反転方向X32に回転するように揺動(回転揺動)する。本実施形態では、
図51に示されるように、反時計回りに回転する方向が、正転方向X31であり、時計回りに回転する方向が、反転方向X32である。なお、本実施形態の歩行支援機101Rのその他の構成は、実施形態20と同様である。
【0299】
本実施形態の歩行支援機101Rは、右脚U1用であり、特に単脚支持期における歩行中の減速と言った歩行変動に対して、右脚U1に歩行支援機101Rから力(アシスト力)が加えられる。
【0300】
本実施形態の歩行支援機101Rのように、本発明の目的を損なわない限り、歩行の減速時に、慣性揺動する揺動部108Rを備えてもよい。
【0301】
<参考例38>
次いで、本発明の参考例38を、
図52を参照しつつ説明する。本参考例において、実施形態20と対応する各構成は、実施形態20の各構成を表す符号に、更に符号「S」を追加して表し、適宜、説明を省略する。
図52は、参考例38に係る歩行支援機101Sの断面図である。
図52には、
図30に示される実施形態20の歩行支援機101に対応した箇所の歩行支援機101Sが示されている。
【0302】
本参考例の歩行支援機101Sは、歩行時の動作に伴う慣性ではなく、歩行支援機101Sを装着した利用者を介助する介助者Yが、揺動部108Sを操作することで、利用者の歩行動作を支援するものである。
【0303】
本参考例の揺動部108Sは、回動部107Sの上側部分から上方に向かって延びたアーム部181Sと、そのアーム部181Sの先端側の部分からなり、介助者Yが把持する把持部185Sとを備えている。アーム部181Sの基部181Saは、回動部107Sの周壁部172Sに対して一体的に固定されている。
【0304】
本参考例の歩行支援機101Sは、
図52に示されるように、介助者Yが、把持部185Sを把持しつつ、揺動部108Sが正転方向X41に回転するように力を加えると、弾性変位部106Sが備える圧縮バネ(不図示)が圧縮されて、圧縮バネに弾性エネルギーが蓄えられる。その状態を介助者Yが保持すると、弾性変位部106Sが備える圧縮バネが弾性復帰する際に、保持部105Sが前方に振り出す方向に回転することで、歩行支援機101Sを装着した利用者の右脚の振り出し動作が支援される。
【0305】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0306】
(1)他の実施形態においては、揺動部の錘部として、重さを加えることのみを目的としたもの(所謂、一般的な錘)以外に、バッテリ、電子回路基板等の機器類等の他の目的で使用される物の重さ(質量)を利用してもよい。
【0307】
(2)他の実施形態においては、各実施形態の歩行支援機と、従来の受動歩行型の歩行支援機とを組み合わせて使用してもよい。例えば、従来の受動歩行型の歩行支援機のトルク発生装置を、各実施形態の歩行支援機の回動部や保持部に積層する形で取り付け、第1リンク部を前方へ振り出すためのアシスト力を発生させる装置を、本実施形態の歩行支援機と、従来の歩行支援機のトルク発生装置とで切り替えられるように構成してもよい。
【0308】
(3)上記実施形態1,20等において、揺動部は、人の骨盤の動きを模擬する形で、人(利用者)の股関節付近を軸中心として上下に回転揺動する。そのため、他の実施形態において、揺動部に所定のセンサ(例えば、姿勢センサ、加速度センサ)を揺動部のアーム部や錘部に取り付け、人の骨盤の動きを模擬した揺動部の動きをセンシングしてもよい。
【符号の説明】
【0309】
1…歩行支援機、2…腰装着部、3…第1軸部、4…第1リンク部、5…保持部、6,…弾性変位部、61…圧縮バネ、62…決定部、63…変位部、64…追従部、7…回動部、73a…カム面、8…揺動部、9…脚装着部、101…歩行支援機、102…腰装着部、103…第1軸部、104…第1リンク部、105…保持部、153a…カム面、106…弾性変位部、107…回動部、108…揺動部、109…脚装着部、U…利用者、X1…正転方向(一方向)、X2…反転方向(逆方向)