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2022-156972表面被覆酸化チタン粉体、分散液、化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156972
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】表面被覆酸化チタン粉体、分散液、化粧料
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/047 20060101AFI20221006BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20221006BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20221006BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20221006BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20221006BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C01G23/047
A61K8/02
A61K8/29
A61Q19/00
A61K8/26
A61K8/25
C09C3/06
C09D17/00
C09C3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060934
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】八久保 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直子
(72)【発明者】
【氏名】根矢 直
【テーマコード(参考)】
4C083
4G047
4J037
【Fターム(参考)】
4C083AB241
4C083AB242
4C083BB25
4C083CC12
4C083DD16
4C083DD39
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE11
4G047CA02
4G047CB09
4G047CC01
4G047CC03
4G047CD03
4G047CD07
4J037AA22
4J037CA12
4J037CA23
4J037CB10
4J037CB23
4J037DD02
4J037DD05
4J037DD06
4J037DD07
4J037DD23
4J037EE03
4J037FF23
(57)【要約】
【課題】酸化チタン粉体の光触媒活性を充分に抑制した表面被覆酸化チタン粉体、並びに、それを含む分散液および化粧料を提供する。
【解決手段】本発明の表面被覆酸化チタン粉体は、無機材料で表面が被覆された酸化チタン粉体であって、細孔径が100nm以下の細孔容量を測定した場合に、無機材料1cm当たりの細孔容量(mL/cm)が6.0以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機材料で表面が被覆された酸化チタン粉体であって、
細孔径が100nm以下の細孔容量を測定した場合に、前記無機材料の1cm当たりの細孔容量(mL/cm)が6.0以下である、表面被覆酸化チタン粉体。
【請求項2】
前記無機材料は、少なくともケイ素化合物およびアルミニウム化合物を含む、請求項1に記載の表面被覆酸化チタン粉体。
【請求項3】
前記酸化チタン粉体の結晶相がアナターゼ型である、請求項1または2に記載の表面被覆酸化チタン粉体。
【請求項4】
前記無機材料が、前記酸化チタンと前記無機材料の合計体積に対して、5体積%以上20体積%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の表面被覆酸化チタン粉体。
【請求項5】
有機材料を表面に有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の表面被覆酸化チタン粉体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の表面被覆酸化チタン粉体と、分散媒と、を含む、分散液。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の表面被覆酸化チタン粉体と、化粧品基剤と、を含む、化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面被覆酸化チタン粉体、並びに、それを含む分散液および化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン粒子は、光反射特性、紫外線遮蔽特性、隠蔽力に優れる。そのため、サブミクロンサイズからミクロンサイズの酸化チタン粒子は、ファンデーション等の化粧料に使用されている。
化粧料に用いられる光散乱性能の高い酸化チタン粒子としては、アナターゼ型で、多面体形状の酸化チタン粒子が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、酸化チタン粒子は、光触媒活性を有する。そのため、酸化チタン粒子は、化粧料に含まれる油剤を変質させる。そこで、酸化チタン粒子の光触媒活性を抑制するために、酸化チタン粒子の表面を、酸化ケイ素と無機化合物で被覆処理した、表面被覆酸化チタン粒子が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-076798号公報
【特許文献2】特開2021-011396号公報
【特許文献3】特表2017-528563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光触媒活性をより抑制することができる表面被覆酸化チタン粉体が求められていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、酸化チタン粉体の光触媒活性を充分に抑制した表面被覆酸化チタン粉体、並びに、それを含む分散液および化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、無機材料で表面が被覆された酸化チタン粉体であって、
細孔径が100nm以下の細孔容量を測定した場合に、上記無機材料の1cm当たりの細孔容量(mL/cm)が6.0以下である、表面被覆酸化チタン粉体を提供する。
【0008】
本発明の一態様は、前記無機材料が、少なくともケイ素化合物およびアルミニウム化合物を含んでもよい。
【0009】
本発明の一態様は、上記酸化チタン粉体の結晶相がアナターゼ型であってもよい。
【0010】
本発明の一態様は、前記無機材料が、前記酸化チタンと前記無機材料の合計体積に対して、5体積%以上20体積%以下であってもよい。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、上記表面被覆酸化チタン粉体と、分散媒と、を含む、分散液を提供する。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、上記表面被覆酸化チタン粉体と、化粧品基剤と、を含む、化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、酸化チタン粉体の光触媒活性を充分に抑制した表面被覆酸化チタン粉体、並びに、それを含む分散液および化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の表面被覆酸化チタン粉体、並びに、それを含む分散液および化粧料の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0015】
[表面被覆酸化チタン粉体]
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体は、無機材料で表面が被覆された酸化チタン粉体である。すなわち、本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体は、酸化チタン粉体と、当該酸化チタン粉体の表面を被覆する無機材料とを含む。また、本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体は、細孔径が100nm以下の細孔容量を測定した場合に、上記無機材料の1cm当たりの細孔容量(mL/cm)が6.0以下である。
なお、「無機材料が酸化チタン粉体の表面を被覆する」とは、酸化チタン粉体を構成する酸化チタン粒子の表面に、無機材料が付着していることを意味する。
【0016】
(無機材料の1cm当たりの細孔容量(mL/cm)の測定方法)
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体において、上記無機材料の1cm当たりの細孔容量(mL/cm)は、細孔径が100nm以下の細孔容量と、表面被覆酸化チタン粉体における上記酸化チタンと上記無機材料の質量を測定することで算出することができる。
【0017】
(酸化チタンと無機材料の含有量)
表面被覆酸化チタン粉体中のTiと無機材料を構成する元素の含有量は、ICP発光分光分析装置(ICP-AES)で測定することができる。得られた元素の含有量を、適宜化合物の分子量を用いて換算することで、表面被覆酸化チタン粉体中の酸化チタンと無機材料の質量%をそれぞれ算出することができる。
得られた質量%を、真密度を用いて体積に換算することで、酸化チタンと無機材料の体積%をそれぞれ算出することができる。
算出した無機材料の質量%を、表面被覆酸化チタン粉体(酸化チタンと無機材料)の質量%で除することで、無機材料の質量分率を算出することができる。
また、算出した無機材料の体積%を、表面被覆酸化チタン粉体(酸化チタンと無機材料)の体積%で除することで、無機材料の体積分率を算出することができる。
また、上記無機材料の質量%を上記無機材料の体積%で除することで、上記無機材料の密度(g/cm)も算出することができる。
【0018】
細孔径が100nm以下の細孔容量(mL/g)は、比表面積測定装置(商品名:Belsorp-miniII、マイクロトラック・ベノレ社製)で吸着等温線を測定し、BJH法により、細孔径100nm以下の細孔容量Aを測定することにより得られる。
【0019】
得られた細孔容量A(mL/g)は、表面被覆酸化チタン粉体1g当たりの細孔容量で
ある。そこで、細孔容量Aを上記で算出した無機材料の質量分率で除することで、無機材料1g当たりの細孔容量B(mL/g)を算出することができる。
次いで、細孔容量B(mL/g)に上記で得られた無機材料の密度を掛けることで、無機材料1cm当たりの細孔容量C(mL/cm)を算出することができる。
【0020】
100nm以下の細孔容量を測定する理由は、酸化チタン粒子の表面を被覆する無機材料により形成される被膜の緻密さを測定するためである。すなわち、100nm以下の細孔は、酸化チタン粒子の表面を被覆している被膜に生じる。それに対して、100nmを超える細孔は、表面被覆酸化チタン粒子同士の間隙であると推測される。したがって、上記記無機材料による被覆が緻密になされているかは、100nm以下の細孔容量を測定することによって確認することができる。
そして、上記無機材料の1cm当たりの細孔容量C(mL/cm)を算出することで、無機材料により形成された酸化チタン粒子表面の被膜の緻密さを測定することができる。
すなわち、上記細孔容量C(mL/cm)が小さくなればなるほど、無機材料により形成された被膜が緻密であるため、酸化チタン粒子の光触媒活性を抑制することができる。
【0021】
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体において、上記無機材料1cm当たりの細孔容量(mL/cm)は6.0以下であり、5.5以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましい。前記の値の下限値は、0.5以上であってもよく、1.0以上であってもよく、1.5以上であってもよい。前記の細孔容量が6.0を超えると、緻密な表面被覆が酸化チタン粉体に施されておらず、光触媒活性の抑制が不充分となるため好ましくない。
【0022】
上記無機材料は、酸化チタンと無機材料の合計体積に対して、5体積%以上20体積%以下であることが好ましく、5体積%以上15体積%以下であることがより好ましく、5体積%以上10体積%以下であることがさらに好ましい。5体積%未満の場合、酸化チタンの光触媒活性の抑制が不充分となるため好ましくない。一方で、無機材料の含有量が20体積%を超えると、表面被覆酸化チタン粉体中に存在する無機材料の量が多くなる。そのため、所望の散乱特性を得るために、化粧料への表面被覆酸化チタン粉体の配合量を増やすことが必要となり、処方の自由度が低下するため好ましくない。
【0023】
上記無機材料は、酸化チタンと無機材料の合計質量に対して、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上8質量%以下であることがさらに好ましい。1質量%未満の場合、酸化チタンの光触媒活性の抑制が不充分となるため好ましくない。一方、無機材料の含有量が15質量%を超えると、表面被覆酸化チタン粉体中に存在する無機材料の量が多くなる。そのため、所望の散乱特性を得るために、化粧料への表面被覆酸化チタン粉体の配合量を増やすことが必要となり、処方の自由度が低下するため好ましくない。
【0024】
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体の比表面積は、5m/g以上かつ15m/g以下であることが好ましく、5m/g以上かつ13m/g以下であることがより好ましい。
表面被覆酸化チタン粉体のBET比表面積が5m/g以上15m/g以下であると、隠蔽力と透明感を有しながら、酸化チタン粒子特有の青白さをより低減させることができる点で有利である。また、表面被覆酸化チタン粉体のBET比表面積が5m/g以上であれば、光散乱が抑制され、透明感が向上する。一方、表面被覆酸化チタン粉体のBET比表面積が15m/g以下であれば、短波長の光散乱強度が長波長の光散乱強度と比較して減少し、青白さが低減する。
【0025】
BET比表面積の測定方法としては、例えば、全自動比表面積測定装置(商品名:BELSORP-MiniII、マイクロトラック・ベル社製)を用い、BET多点法による窒素吸着等温線から測定する方法が挙げられる。
【0026】
(粒度分布)
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体の一次粒子径の体積粒度分布の累積体積百分率が10%の場合の値(d10)を、累積体積百分率が50%の場合の値(d50)で除した値(d10/d50)(以下、「d10/d50」と略記する場合がある。)は、0.3以上1以下であることが好ましい。d10/d50の下限は、0.4以上であってもよく、0.5以上であってもよい。d10/d50の上限は、0.9以下であってもよく、0.8以下であってもよく、0.7以下であってもよい。
d10/d50が上記範囲であることにより、化粧料に配合された場合に、より隠蔽力に優れた化粧料が得られる。
【0027】
d10、d50は、以下の手順で求められる。50個の表面被覆酸化チタン粉体の一次粒子径を測定する。測定された前記一次粒子径を3乗し、定数を掛けて体積とする。定数は表面被覆酸化チタン粉体の形状に応じて適宜決定すればよい。例を挙げると、八以上の面を有する多面体形状の場合の定数は0.145であり、球状の場合の定数は4.19(4π/3)である。測定された前記一次粒子径と、計算により求めた体積値を用いて、前記一次粒子径の体積粒度分布を算出する。d10は累積10%時の、d50は累積50%時の前記一次粒子径を意味する。
【0028】
ここで、表面被覆酸化チタン粉体の一次粒子径とは、表面被覆酸化チタン粉体の最長の直線部分(最大長径)を意味する。例えば、球状の表面被覆酸化チタン粉体の一次粒子径は直径を意味する。例えば、棒状の表面被覆酸化チタン粉体の一次粒子径は、長手方向の最長の直線部分を意味する。例えば、八面体状の表面被覆酸化チタン粉体の一次粒子径は、向かい合う2個の頂点を結ぶ線分(以下、「頂点間距離」と称することがある。)の最大値を意味する。なお、前記向かい合う2個の頂点は、隣り合う頂点ではない。すなわち、前記2個の頂点において、頂点と頂点を結ぶ線分は、粒子の表面を通らず、粒子の内部を通る線分である。互いに最も遠い位置にある頂点の組み合わせによって、前記最大値が得られる。
【0029】
表面被覆酸化チタン粉体の一次粒子径は、以下の方法で求められる。本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した場合に、表面被覆酸化チタン粉体を所定数、例えば、200個、100個、あるいは50個を選び出す。そして、これら表面被覆酸化チタン粉体各々の最長の直線部分(最大長径)を測定することにより得ることができる。
なお、表面被覆酸化チタン粒子同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している表面被覆酸化チタン粒子(一次粒子)を測定し、一次粒子径とする。
また、表面被覆酸化チタン粒子の形状が破損している場合で、破損前の形状が推測できる場合には、破損前の粒子の形状で一次粒子径を測定する。
【0030】
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体のd50は、上記のBET比表面積に調整するためには、100nm以上1000nm以下であることが好ましく、150nm以上800nm以下であることがより好ましく、200nm以上700nm以下であることがさらに好ましく、250nm以上600nm以下であることが最も好ましい。なお、d50は、本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体の平均一次粒子径に相当する。
【0031】
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体中における酸化チタンの含有率は85質量%以上99質量%以下であることが好ましく、90質量%以上かつ98質量%以下であることがより好ましい。酸化チタンの含有率が85質量%以上であることにより、所望の光散乱効果を得ることができる。一方、酸化チタンの含有率が99質量%以下であることにより、光触媒活性を抑制することができる。
【0032】
光触媒活性が抑制されているかどうかを確認する方法として、疑似太陽光照射前後の色差ΔEを測定する方法がある。
具体的には、以下の測定方法で光触媒活性が抑制されているかを確認することができる。
【0033】
表面被覆酸化チタン粉体3gと1,3-ブタンジオール4gを混合した混合物を作製する。得られた混合物を分光光度計用の組み立て石英セル(型式:AB20・UV-0.5、GLサイエンス社製)に挟み込み、色度(L、a、b)を紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、型番:V-770)で積分球を用いて測定する。
次いで、上記混合物を含む組み立て石英セルに、キセノンランプ(岩崎電気社製小型光照射試験装置 EYE SUN-CUBE Xenon)により、積算光量5000kJ/mの疑似太陽光を照射する。
照射後の上記組み立て石英セルを上記分光光度計に再度セットし、色度(L、a、b)を測定する。
次いで、疑似太陽光照射前後の色度(L、a、b)の変化である色差ΔEを、下記一般式(1)で算出する。
色差ΔE=((ΔL+(Δa+(Δb1/2・・・(1)
【0034】
光触媒活性が抑制されている表面被覆酸化チタン粉体はΔEが小さい。そのため、本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体の色差ΔEは、5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましい。色差ΔEの下限値は0であることが好ましいが、0.5であってもよく、1.0であってもよい。
【0035】
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体の二次粒子径は、1μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上9μm以下であることがより好ましく、1μm以上8μm以下であることがさらに好ましい。
二次粒子の平均粒子径が1μm以上10μm以下であると、肌に塗布した時にざらつき感が抑制され、感触に優れる点で好ましい。
二次粒子の平均粒子径が1μm未満では、平均一次粒子径が小さくなってしまい、隠蔽力や透明感が得られなくなるため、好ましくない。一方、二次粒子の平均粒子径が10μmを超えると肌に塗布した時にざらつき感があり、感触が悪くなるため好ましくない。
なお、本実施形態における感触とは、例えば、酸化チタン粉体を配合した化粧料を肌に塗布した時に、その化粧料が塗布された肌に手指で触れた感触のことである。
【0036】
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体の「平均二次粒子径」とは、以下の方法で求められる数値である。すなわち、本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体を、粒度分布測定装置 MASTERSIZER3000(Malvern社製)を用いて、乾式測定する。得られた粒度分布の累積体積百分率が50%の場合の粒子径(d50)が、本実施形態の平均二次粒子径である。
【0037】
(酸化チタン粉体)
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体に含まれる酸化チタン粉体は、酸化チタン粒子の集合体である。酸化チタン粒子は、化粧料で使用されるものであれば特に限定されない。
なお、本実施形態の酸化チタン粒子は、異元素がドープされた酸化チタン粒子を含まない。
【0038】
本実施形態の酸化チタン粉体の結晶相は、アナターゼ型であることが好ましい。アナターゼ型の酸化チタン粉体を含む化粧料は、肌に塗布された場合に、隠蔽力がより高まり、化粧品基剤と混合した場合に、人の肌の色味に近い色が得られる点で有利である。
【0039】
表面被覆酸化チタン粉体がアナターゼ型であることは、例えば、X線回折装置(商品名:X’Pert PRO、スペクトリス社製)により確認することができる。X線回折装置による測定結果が、アナターゼ単相であれば、表面被覆酸化チタン粉体がアナターゼ型である。
【0040】
本実施形態の酸化チタン粉体は、単結晶の酸化チタン粒子の集合体であることが好ましい。
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体が、単結晶の酸化チタン粒子で構成されると、表面被覆酸化チタン粉体の屈折率が向上して光散乱性に優れる。そのため、化粧料に配合されたときに、隠蔽力を向上させることができ、肌を見る角度により色の見え方が異なる現象が抑制される。
ここで、酸化チタン粉体の結晶性、すなわち、酸化チタン粒子が単結晶であるか否かは、以下の方法により確認することができる。
【0041】
(結晶性(単結晶と多結晶の判別方法))
酸化チタン粒子が単結晶か多結晶であるかは、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)を用いて、粒子の結晶軸を観察することにより確認することができる。結晶のどの位置であっても、結晶軸の方向が変わらないものは単結晶であり、結晶の位置によって結晶軸の方向が変わるものは多結晶である。
【0042】
(BET比表面積)
本実施形態の酸化チタン粉体のBET比表面積は、5m/g以上15m/g以下であることが好ましく、5m/g以上13m/g以下であることがより好ましい。
酸化チタン粉体のBET比表面積が5m/g以上15m/g以下であると、隠蔽力と透明感を有しながら、酸化チタン粒子特有の青白さをより低減させることができる点で有利である。また、表面被覆酸化チタン粉体のBET比表面積が5m/g以上であれば、光散乱が抑制され、透明感が向上する。一方、表面被覆酸化チタン粉体のBET比表面積が15m/g以下であれば、短波長の光散乱強度が長波長の光散乱強度と比較して減少し、青白さが低減する。
【0043】
BET比表面積の測定方法としては、例えば、全自動比表面積測定装置(商品名:BELSORP-MiniII、マイクロトラック・ベル社製)を用い、BET多点法による窒素吸着等温線から測定する方法が挙げられる。
【0044】
(粒度分布)
上記酸化チタン粒子の一次粒子径の体積粒度分布の累積体積百分率が10%の場合の値(d10)を、累積体積百分率が50%の場合の値(d50)で除した値(d10/d50)(以下、「d10/d50」と略記する場合がある。)は、0.3以上1以下であることが好ましい。d10/d50の下限は、0.4以上であってもよく、0.5以上であってもよい。d10/d50の上限は、0.9以下であってもよく、0.8以下であってもよく、0.7以下であってもよく、0.6以下であってもよい。
d10/d50が上記範囲であることにより、化粧料に配合された場合に、より隠蔽力に優れた化粧料が得られる。
【0045】
d10、d50は、以下の手順で求められる。50個の酸化チタン粒子の一次粒子径を測定する。測定された前記一次粒子径を3乗し、定数を掛けて体積とする。定数は酸化チタン粒子の形状に応じて適宜決定すればよい。例を挙げると、八以上の面を有する多面体形状の場合の定数は0.145であり、球状の場合の定数は4.19(4π/3)である。測定された前記一次粒子径と、計算により求めた体積値を用いて、前記一次粒子径の体積粒度分布を算出する。d10は累積10%時の、d50は累積50%時の前記一次粒子径を意味する。
【0046】
ここで、酸化チタン粒子の一次粒子径とは、酸化チタン粒子の最長の直線部分(最大長径)を意味する。例えば、球状の酸化チタン粒子の一次粒子径は直径を意味する。例えば、棒状の酸化チタン粒子の一次粒子径は、長手方向の最長の直線部分を意味する。例えば、八面体状の酸化チタン粒子の一次粒子径は、向かい合う2個の頂点を結ぶ線分(以下、「頂点間距離」と称することがある。)の最大値を意味する。なお、前記向かい合う2個の頂点は、隣り合う頂点ではない。すなわち、前記2個の頂点において、頂点と頂点を結ぶ線分は、粒子の表面を通らず、粒子の内部を通る線分である。互いに最も遠い位置にある頂点の組み合わせによって、前記最大値が得られる。
【0047】
酸化チタン粒子の一次粒子径は、以下の方法で求められる。本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した場合に、酸化チタン粒子を所定数、例えば、200個、100個、あるいは50個を選び出す。そして、これら酸化チタン粒子各々の最長の直線部分(最大長径)を測定することにより得ることができる。
なお、酸化チタン粒子同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している酸化チタン粒子(一次粒子)を測定し、一次粒子径とする。
また、酸化チタン粒子の形状が破損している場合で、破損前の形状が推測できる場合には、破損前の粒子の形状で一次粒子径を測定する。
【0048】
(結晶化度)
本実施形態の酸化チタン粉体は、結晶化度が0.95以上であることが好ましく、0.96以上であることがより好ましく、0.97以上であることがさらに好ましく、0.98以上であることが最も好ましい。本実施形態の酸化チタン粉体の結晶化度の上限は、1.0である。
結晶化度が0.95以上であると、酸化チタン粒子の屈折率が高くなり光散乱強度が増大し、少ない添加量で光を散乱させることができるため、化粧料に配合した場合、肌を見る角度によって色の見え方が異なる現象が抑制される。
【0049】
酸化チタン粉体の結晶化度は、X線回折(X-ray diffraction、XRD)により測定することができる。詳細には、まず、X線回折装置(商品名:X’Pert PRO MPS、PANalytical社製)を用いて、X線源としてCuKα線を用い、出力は45kV、40mAで、回折角2θが20°から30°の範囲でX線強度を測定する。得られたX線回折パターンを、結晶質部分(ピーク)と非晶質部分(ハロー)のプロファイルフィッティングを行って、それぞれの積分強度を算出する。全積分強度に占める結晶質部分の積分強度の割合を結晶化度とする。
【0050】
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体における酸化チタン粒子の形状は、八以上の面を有する多面体形状を含むことが好ましい。
酸化チタン粒子の形状が、八以上の面を有することにより、光を広範囲に散乱することができる。このため、表面被覆酸化チタン粉体を含む化粧料が肌に塗布された時に、肌を見る角度により色の見え方が異なる現象が抑制される。
【0051】
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体中における八以上の面を有する多面体形状の酸化チタン粒子の含有率は、後述する方法によって算出される個数%で表わされる。すなわち、表面被覆酸化チタン粉体中の八以上の面を有する多面体形状の酸化チタン粒子の含有率は、50個数%以上であることが好ましく、60個数%以上であってもよく、70個数%以上であってもよい。表面被覆酸化チタン粉体中の八以上の面を有する多面体形状の酸化チタン粒子の含有率の上限は70個数%であってもよく、80個数%であってもよく、90個数%であってもよく、100個数%であってもよい。
表面被覆酸化チタン粉体中における八以上の面を有する多面体形状の酸化チタン粒子の含有率が50個数%以上であると、表面被覆酸化チタン粉体を含む化粧料を肌に塗布した場合に、肌を見る角度により色の見え方が異なる現象が抑制される。また、優れた隠蔽力と、透明感を有しながら、酸化チタン粒子特有の青白さをより低減することができる点で好ましい。
【0052】
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体中における八以上の面を有する多面体形状の酸化チタン粒子の含有率、すなわち、個数%は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)により、表面被覆酸化チタン粉体に含まれる酸化チタン粒子を50個観察し、この50個に含まれる八以上の面を有する多面体形状の酸化チタン粒子の数を数えることにより算出した値である。
【0053】
八以上の面を有する多面体形状は、任意に選択できる。多面体形状を有する粒子とは、複数の面を持つ粒子である。多面体形状としては、例えば、八面体状、十面体状、十二面体状、二十四面体状、星型状等の形状が挙げられる。多面体形状の各面は、実質的に全てが同じ形であってもよく、または、2種等の複数の互いに異なる形の面を含んでもよい。
多面体形状は、正多面体形状であってもよく、その他の多面体形状であってもよい。多面体形状の具体例としては、例えば、正八面体や双四角錐等の形状が挙げられる。これらの中でも、広範囲にわたって光を散乱できる点において、八面体状が好ましい。
多面体形状には、多面体の角が丸っぽくなっており、全体的または一部が丸みを帯びた形状のものも含む。
多面体形状には、多面体形状の粒子が一部破損した形状も含まれる。すなわち、多面体形状の粒子と類似する形状を有し、この形状が破損によって多面体形状の粒子から形成されたことが推測される場合には、多面体形状の粒子とみなすこととする。
また、多面体形状の粒子同士が凝集した凝集粒子も含まれる。
【0054】
(無機材料)
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体は、無機材料を表面に有している。
上記無機材料としては、酸化チタン粉体の光触媒活性を抑制できるものであれば特に限定されない。上記無機材料は酸化物であってもよく、水酸化物であってもよい。上記無機材料は亜鉛、チタン、セリウム、鉄、マグネシウム、カルシウム、ケイ素およびアルミニウムの群から選択される少なくとも1種の酸化物であってもよく、水酸化物であってもよい。上記無機材料は水和物であってもよい。
上記無機材料は、光触媒活性が抑制されやすい点において、ケイ素化合物およびアルミニウム化合物を含むことが好ましい。
ケイ素化合物としては、例えば、シリカ、水和シリカ等が挙げられる。
アルミニウム化合物としては、例えば、水酸化アルミニウム、アルミナ、アルミナ水和物等が挙げられる。
【0055】
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体は、無機材料に加えて、有機材料を表面に有していてもよい。本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体は、無機材料に加えて、有機材料を表面に有することにより、化粧料への配合がより容易となるため好ましい。
【0056】
有機材料としては、例えば、シリコーン化合物、オルガノポリシロキサン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステル、有機チタネート化合物、界面活性剤、非シリコーン化合物等が挙げられる。これらの有機材料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
シリコーン化合物としては、例えば、シリコーンオイル、アルキルシラン、フルオロアルキルシラン、メチコン、ハイドロゲンジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、(アクリレーツ/アクリル酸トリデシル/メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、トリエトキシカプリリルシラン等が挙げられる。
シリコーンオイルとしては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
アルキルシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
フルオロアルキルシランとしては、例えば、トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
また、シリコーン化合物としては、化合物の単量体でもよく、共重合体であってもよい。
これらのシリコーン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0059】
脂肪酸石鹸としては、例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0060】
脂肪酸エステルとしては、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0061】
有機チタネート化合物としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ドデシル)ベンゼンスルホニルチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ-トリ(ジオクチル)ホスフェイトチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ-トリネオドデカノイルチタネート等が挙げられる。
【0062】
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体によれば、酸化チタン粒子の光触媒活性を充分に抑制することができる。したがって、本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体を含む化粧料が肌に塗布された場合に、油剤が変質することを抑制できる。また、本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体によれば、表面被覆酸化チタン粉体を含む化粧料が肌に塗布された場合に、隠蔽力に加えて、透明感にも優れ、酸化チタン粒子特有の青白さが低減された、自然な仕上がりを得ることができる。
【0063】
[表面被覆酸化チタン粉体の製造方法]
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体の製造方法は、酸化チタンの表面に無機材料による緻密な被膜を形成できる方法であれば特に限定されない。
無機材料による緻密な被膜を形成するためには、例えば、無機材料の析出反応速度を遅くする方法が挙げられる。
以下では、ケイ素化合物とアルミニウム化合物で酸化チタン粉体を表面処理する場合について詳述する。
【0064】
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体の製造方法は、酸化チタン粉体を水中に懸濁させる工程と、上記懸濁液にケイ酸アルカリ金属塩を添加し、酸を加えて中和して、酸化チタン粒子の表面にケイ素化合物を析出させる工程と、さらに、酸性のアルミニウム化合物を添加し、アルカリを加えてpHを3以上5以下に調整して熟成させる工程と、さらにアルカリを加えてpHを7に調整する工程と、熱処理する工程を有していてもよい。
本実施形態の表面被覆チタン粉体の製造方法は、酸化チタン粉体を水中に懸濁させる工程と、上記懸濁液にケイ酸アルカリ金属塩を添加し、酸を加えて中和して、酸化チタン粒子の表面にケイ素化合物を析出させる工程と、さらに、塩基性のアルミニウム化合物を添加し、酸を加えてpHを9以上11以下として熟成させる工程と、さらに酸を加えてpHを7に調整する工程と、熱処理する工程を有していてもよい。
【0065】
上記酸性のアルミニウム化合物としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等を用いることができる。
上記塩基性のアルミニウム化合物としては、例えば、アルミン酸ナトリウム等を用いることができる。
【0066】
本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体の製造方法は、アルミニウム化合物をアルカリまたは酸で中和する工程において、pHを所定の範囲にして熟成することで、アルミニウム化合物の析出反応速度を制御した。この析出反応速度の制御により、光触媒活性を抑制できる緻密な表面被覆がなされることを見出した。
【0067】
熟成時間は、アルミニウム化合物の被覆量により適宜調整すればよいが、50分以上であってもよく、1時間以上であってもよく、2時間以上であってもよい。熟成時間の上限は限定されないが、10時間以下であってもよく、8時間以下であってもよく、6時間以下であってもよく、4時間以下であってもよい。
【0068】
反応温度は室温であってもよく、懸濁液を加温して行ってもよい。懸濁液の反応温度は25℃であってもよく、40℃であってもよく、60℃であってもよく、80℃であってもよく、90℃であってもよい。
また、懸濁液を適宜撹拌しながら、ケイ酸アルカリ金属塩やアルミニウム化合物を添加してもよく、添加後も撹拌を継続してもよい。
【0069】
pHを7に調整し、反応が終了した後は、ろ過などにより反応液を固液分離し、固体(ケーキ)を回収する。回収したケーキは洗浄してもよい。
回収したケーキを熱処理することで、本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体を得ることができる。
【0070】
熱処理温度は、ケイ素化合物やアルミニウム化合物が緻密な被膜を形成できる温度であればよく、例えば、400℃以上800℃以下であってもよい。なお、ケーキを乾燥させてから熱処理を行ってもよい。
【0071】
表面被覆酸化チタン粉体は、熱処理工程の前後に、解砕機により解砕される工程を有していてもよい。解砕工程は、表面被覆酸化チタン粉体の平均二次粒子径が1μm以上10μm以下となるように解砕されるのが好ましい。解砕機としては、例えば、ピンミル、ハンマーミル、ジェットミル、インペラーミル等が挙げられる。
【0072】
[分散液]
本実施形態の分散液は、本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体と、分散媒と、を含む。本実施形態の分散液は、必要に応じてその他の成分を含有する。
本実施形態の分散液は、低粘度の液状であっても、高粘度のペースト状であってもよい。
【0073】
本実施形態の分散液における酸化チタン粉体の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0074】
(分散媒)
分散媒は、化粧料に配合できるものであれば、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。分散媒としては、例えば、水、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、炭化水素、アミド類、ポリシロキサン類、ポリシロキサン類の変性体、炭化水素油、エステル油、高級脂肪酸、高級アルコール等が挙げられる。これらの分散媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、オクタノール、グリセリン等が挙げられる。
【0076】
エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0077】
エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0078】
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0079】
炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン等の環状炭化水素等が挙げられる。
【0080】
アミド類としては、例えば、ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0081】
ポリシロキサン類としては、例えば、鎖状ポリシロキサン類、環状ポリシロキサン類等が挙げられる。
鎖状ポリシロキサン類としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
環状ポリシロキサン類としては、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。
【0082】
ポリシロキサン類の変性体としては、例えば、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0083】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン等が挙げられる。
【0084】
エステル油としては、例えば、イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート等が挙げられる。
【0085】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0086】
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール等が挙げられる。
【0087】
(その他の成分)
その他の成分は、本実施形態の分散液の効果を損なわなければ、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
その他の成分としては、例えば、分散剤、安定剤、水溶性バインダー、増粘剤、油溶性防腐剤、紫外線吸収剤、油溶性薬剤、油溶性色素類、油溶性蛋白質類、植物油、動物油等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
分散液における分散媒の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。分散媒の含有量は、本実施形態の分散液全量に対して、10質量%以上99質量%以下であることが好ましく、20質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。
【0089】
本実施形態の分散液によれば、本実施形態の分散液を含む化粧料が肌に塗布された場合に、肌を見る角度により色の見え方が異なる現象が抑制される。また、本実施形態の分散液によれば、酸化チタン粉体を含む化粧料が肌に塗布された場合に、隠蔽力に加えて、透明感にも優れ、酸化チタン粒子特有の青白さが低減された、自然な仕上がりを得ることができる。
【0090】
[分散液の製造方法]
本実施形態の分散液の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。本実施形態の分散液の製造方法としては、例えば、本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体を、分散媒に対して、分散装置で機械的に分散させて、分散液を製造する方法等が挙げられる。
分散装置としては、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、サンドミル、ボールミル、ロールミル等が挙げられる。
【0091】
[化粧料]
本実施形態の化粧料は、本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体と、化粧品基剤と、を含む。本実施形態の化粧料は、必要に応じてその他の成分を含有する。
【0092】
化粧料における酸化チタン粉体の含有量は、化粧料全体に対して、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0093】
(化粧品基剤)
化粧品基剤としては、化粧料に通常用いられるものの中から適宜選択することができ、例えば、タルク、マイカ等が挙げられる。これらの化粧品基剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
化粧料における化粧品基剤の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0095】
(その他の成分)
本実施形態の化粧料は、本実施形態の表面被覆酸化チタン粉体、および化粧品基剤以外にも、本実施形態の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有することができる。
【0096】
その他の成分は、化粧料に通常用いられるものの中から適宜選択することができる。その他の成分としては、例えば、溶媒、油剤、界面活性剤、保湿剤、有機紫外線吸収剤、酸化防止剤、増粘剤、香料、着色剤、生理活性成分、抗菌剤等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
化粧料におけるその他の成分の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0097】
本実施形態の化粧料の製造方法は、特に限定されず、目的に応じて、適宜選択することができる。本実施形態の化粧料の製造方法は、例えば、表面被覆酸化チタン粉体を化粧品基剤と混合し、その他の成分を混合して製造する方法、既存の化粧料に、表面被覆酸化チタン粉体を混合して製造する方法、分散液を化粧品基剤と混合し、その他の成分を混合して製造する方法、既存の化粧料に分散液を混合して製造する方法等が挙げられる。
【0098】
(形態)
本実施形態の化粧料の形態は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。本実施形態の化粧料の形態は、例えば、粉末状、粉末固形状、固形状、液状、ジェル状等が挙げられる。なお、化粧料の形態が液状、ジェル状の場合、化粧料の分散形態は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。ジェル状の化粧料の分散形態としては、例えば、油中水型(W/O型)エマルジョン、水中油型(O/W型)エマルジョン、油型等が挙げられる。
【0099】
本実施形態の化粧料としては、例えば、ベースメイク、マニキュア、口紅等が挙げられる。これらの中でも、ベースメイクが好ましい。
ベースメイクとしては、例えば、主に肌の凹凸を軽減させる用途に用いられる化粧下地、主に肌の色味を整える用途に用いられるファンデーション、主にファンデーションの肌への定着を向上させる用途に用いられるフェイスパウダー等が挙げられる。
【0100】
本実施形態の化粧料によれば、肌に塗布した場合に、肌を見る角度によって色の見え方が異なる現象を抑制することができる。また、本実施形態の化粧料によれば、隠蔽力に優れ、透明感を有しながら、酸化チタン粒子特有の青白さを低減できる。
【実施例0101】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0102】
[実施例1]
(表面被覆酸化チタン粉体の作製)
酸化チタン粒子(住友大阪セメント社製、平均一次粒子径400nm、アナターゼ型)30gと、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液5gと、純水65gとを高速撹拌機で懸濁させて、酸化チタンスラリーを調製した。
この酸化チタンスラリーを250mLのビーカーに投入し、80℃の湯浴中で激しく撹拌しながら、SiO換算で15質量%のケイ酸ナトリウム水溶液を5g滴下した。この酸化チタンスラリーに、0.5mol/L硫酸水溶液をpHが5となるまで滴下し、そのまま1時間熟成した。
次いで、この酸化チタンスラリーに、Al換算で15質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液を6.6g滴下した。この酸化チタンスラリーに、0.5mol/L硫酸水溶液をpHが10となるまで滴下し、そのまま1時間熟成した。熟成後、80℃の湯浴から、酸化チタンスラリーを入れたビーカーを取り出し、酸化チタンスラリーの温度が室温となるまで自然冷却した。
冷却した酸化チタンスラリーに、0.5mol/L硫酸水溶液をpHが7となるまで滴下した。
その後、酸化チタンスラリーをろ過してケーキを回収し、回収したケーキを純水で洗浄した。
純水で洗浄したケーキを、120℃にて12時間乾燥した後、500℃にて1時間熱処理して、実施例1の表面被覆酸化チタン粉体を得た。
【0103】
[実施例2]
アルミン酸ナトリウム水溶液を滴下した後、酸化チタンスラリーのpHが9となるまで、硫酸水溶液を滴下したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の表面被覆酸化チタン粉体を得た。
【0104】
[実施例3]
アルミン酸ナトリウム水溶液の代わりに、Al換算で6.5質量%の硫酸アルミニウム水溶液を滴下した後、酸化チタンスラリーのpHが4となるまで、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、冷却した酸化チタンスラリーに、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液をpHが7となるまで滴下したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の表面被覆酸化チタン粉体を得た。
【0105】
[実施例4]
ケイ酸ナトリウム水溶液の滴下量を3.6g、アルミン酸ナトリウム水溶液の滴下量を4.5gとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の表面被覆酸化チタン粉体を得た。
【0106】
[比較例1]
アルミン酸ナトリウム水溶液を滴下した後、酸化チタンスラリーのpHが8となるまで、硫酸水溶液を滴下したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の表面被覆酸化チタン粉体を得た。
【0107】
[比較例2]
ケイ酸ナトリウム水溶液の滴下量を3.6g、アルミン酸ナトリウム水溶液の滴下量を4.5gとし、アルミン酸ナトリウム水溶液を滴下した後、酸化チタンスラリーのpHが11.5となるまで、硫酸水溶液を滴下したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の表面被覆酸化チタン粉体を得た。
【0108】
[評価]
(細孔容量)
実施例1~実施例4および比較例1、比較例2の表面被覆酸化チタン粉体について、比表面積測定装置(商品名:Belsorp-miniII、マイクロトラック・ベノレ社製)で吸着等温線を測定し、BJH法により、細孔径100nmまでの細孔容量A(mL/g)を測定した。結果を表1に示す。細孔容量Aは、表面被覆酸化チタン粉体1g当たりの細孔容量(mL)である。
【0109】
(含有量)
実施例1~実施例4および比較例1、比較例2の表面被覆酸化チタン粉体について、ICP発光分光分析装置(ICP-AES)(商品名CIROS-120 EOP:株式会社リガク社製)で、Ti、Si、Alの含有量を以下の方法で測定した。
試料0.1gを白金坩堝に入れ、700℃の電気炉で熱処理した。次いでこの坩堝に四ホウ酸リチウム2gを加え、925℃の電気炉で溶融した。
この溶融した試料を白金坩堝ごとトールビーカーに入れ、温水70mLおよび硝酸10mLを加え撹拌溶融した。この溶解液を検液として、ICP-AESにてTi、Si、Alの量を測定した。
これらの測定値を元に、Tiは酸化チタン、Siは酸化ケイ素、Alは水酸化アルミニウムに換算して、表面被覆酸化チタン粉体中に含有される、酸化チタン、シリカ、水酸化アルミニウムの含有量(質量)を算出した。ついで、これらの質量から、それぞれの真密度を使用して、酸化チタン、シリカ、水酸化アルミニウムの体積を算出した。
酸化チタンの真密度は4.2g/cm、シリカの真密度は2.7g/cm、水酸化アルミニウムの真密度は2.4g/cmとして算出した。
次いで、無機材料(シリカと水酸化アルミニウム)の密度を算出した。
次いで、細孔容量Aを無機材料の質量分率で除することにより、無機材料1g当たりの細孔容量B(mL/g)を算出した。
次いで、細孔容量Bに無機材料の密度を掛けることにより、無機材料1cm当たりの細孔容量C(mL/cm)を算出した。結果を表1に示す。
【0110】
(光触媒活性)
表面被覆酸化チタン粉体3gと1,3-ブタンジオール4gを混合した混合物を、分光光度計用の組み立て石英セル(型式:AB20・UV-0.5、GLサイエンス社製)に挟み込み、キセノンランプ(岩崎電気社製小型光照射試験装置 EYE SUN-CUBE Xenon)により疑似太陽光を5000kJ/m照射した。疑似太陽光の照射量は、デルタオーム社製照度計HD2102.2 測定プローブ LP471RADを用いて、波長400nm~1050nmの光を測定して確認した。
照射前後の色度(L、a、b)を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、型番:V-770)で積分球を用いて測定し、色差ΔE=((ΔL+(Δa+(Δbの平方根)を算出した。結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
表1の結果から、実施例1~実施例4表面被覆酸化チタン粉体は、比較例1、比較例2の表面被覆酸化チタン粉体と比較して、酸化チタン粒子の光触媒活性が抑制されていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の表面被覆酸化チタン粉体は、酸化チタン粒子の光触媒活性が抑制されている。そのため、ファンデーション等のベースメイク化粧料に用いた場合に、化粧崩れを抑制することができる。また、本発明の表面被覆酸化チタン粉体は、白色顔料としての性能にも優れるため、白色インキ等の工業用途に用いることもでき、その工業的価値は大きい。