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特開2022-157212歪補償装置、歪補償方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157212
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】歪補償装置、歪補償方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/32 20060101AFI20221006BHJP
   H03F 3/20 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H03F1/32
H03F3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061311
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大内 拓
(72)【発明者】
【氏名】日比野 勉
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 禎央
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA41
5J500AC21
5J500AF17
5J500AM11
5J500NG03
5J500NG06
5J500NM02
(57)【要約】
【課題】比較的少ない記憶容量にて、確度が高い歪補償特性を得る。
【解決手段】電力増幅器の非線形歪を補償する歪補償装置であって、歪補償の基準情報に基づいて入力信号の歪補償を実行して予歪補償信号を生成し予歪補償信号を電力増幅器に出力し、入力信号を指定された条件でサンプリングして入力信号サンプル系列を生成し電力増幅器の出力信号を指定された条件でサンプリングして出力信号サンプル系列を生成し各サンプル系列内のピーク電力値を選別し、各サンプル系列及びピーク電力値をそれぞれ少なくとも2つ保存する保存領域を有し保存の際にはピーク電力値同士の比較の結果を基に保存領域を切り替えて上書し、保存された少なくとも2つの各サンプル系列のうちピーク電力値を含む所定の条件に基づいて各サンプル系列を選択し該選択した各サンプル系列に基づいて基準情報を生成し歪補償部に出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力増幅器の非線形歪を補償する歪補償装置であって、
歪補償の基準情報に基づいて、入力信号の歪補償を実行して予歪補償信号を生成し、前記予歪補償信号を前記電力増幅器に出力する歪補償部と、
前記入力信号を指定された条件でサンプリングして入力信号サンプル系列を生成し、前記電力増幅器の出力信号を指定された条件でサンプリングして出力信号サンプル系列を生成するサンプリング部と、
前記生成された入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、各サンプル系列内のピーク電力値を選別する高電力選別部と、
前記入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力値をそれぞれ少なくとも2つ保存する保存領域を有し、保存の際には、ピーク電力値同士の比較の結果を基に保存領域を切り替えて上書きする保存部と、
前記保存部に保存された少なくとも2つの入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、ピーク電力値を含む所定の条件に基づいて入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を選択し、該選択した入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列に基づいて、前記基準情報を生成し、前記歪補償部に出力する歪補償基準情報生成部と、
を備える歪補償装置。
【請求項2】
前記保存部は、前記入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力値をそれぞれ2つ保存する保存領域を有し、
前記歪補償基準情報生成部は、前記保存部に保存された2つの入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、より高いピーク電力を有する入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を選択し、該選択した入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列に基づいて、前記基準情報を生成する
請求項1に記載の歪補償装置。
【請求項3】
前記保存部は、前記入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力値をそれぞれ3つ以上保存する保存領域を有し、
前記歪補償基準情報生成部は、複数の前記基準情報を生成し、生成した複数の前記基準情報のうち前記所定の条件に基づいて選択した一つを前記歪補償部に出力する
請求項1に記載の歪補償装置。
【請求項4】
前記保存部は、前記入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力値をそれぞれ3つ以上保存する保存領域を有し、
前記保存領域に対する保存と、前記ピーク電力値の比較とを同一期間に行う
請求項1に記載の歪補償装置。
【請求項5】
前記サンプリング部は、指定された条件として、サンプリングの間隔を変更可能に構成されている
請求項1~4のいずれか一つに記載の歪補償装置。
【請求項6】
前記サンプリング部、前記高電力選別部、前記保存部、及び前記歪補償基準情報生成部のうち少なくとも一つの設定を変更する制御部を備える
請求項1~5のいずれか一つに記載の歪補償装置。
【請求項7】
電力増幅器の非線形歪を補償する歪補償方法であって、
歪補償の基準情報に基づいて、入力信号の歪補償を実行して予歪補償信号を生成し、前記予歪補償信号を前記電力増幅器に出力する歪補償ステップと、
前記入力信号を指定された条件でサンプリングして入力信号サンプル系列を生成し、前記電力増幅器の出力信号を指定された条件で取り込んで出力信号サンプル系列を生成するサンプリングステップと、
前記生成された入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、各サンプル系列内のピーク電力値を選別する高電力選別ステップと、
前記入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力をそれぞれ少なくとも2つを保存領域に保存し、保存の際には、ピーク電力値同士の比較の結果を基に保存領域を切り替えて上書きする保存ステップと、
前記保存された少なくとも2つの入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、ピーク電力値を含む所定の条件に基づいて入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を選択し、該選択した入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列に基づいて、前記基準情報を生成して出力する歪補償基準生成ステップと、
を備える歪補償方法。
【請求項8】
プロセッサに、電力増幅器の非線形歪を補償する歪補償方法を実行させるプログラムであって、
前記歪補償方法は、
歪補償の基準情報に基づいて、入力信号の歪補償を実行して予歪補償信号を生成し、前記予歪補償信号を前記電力増幅器に出力する歪補償ステップと、
前記入力信号を指定された条件でサンプリングして入力信号サンプル系列を生成し、前記電力増幅器の出力信号を指定された条件で取り込んで出力信号サンプル系列を生成するサンプリングステップと、
前記生成された入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、各サンプル系列内のピーク電力値を選別する高電力選別ステップと、
前記入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力をそれぞれ少なくとも2つを保存領域に保存し、保存の際には、ピーク電力値同士の比較の結果を基に保存領域を切り替えて上書きする保存ステップと、
前記保存された少なくとも2つの入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、ピーク電力値を含む所定の条件に基づいて入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を選択し、該選択した入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列に基づいて、前記基準情報を生成して出力する歪補償基準生成ステップと、
を備えるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪補償装置、歪補償方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば移動通信システムにおける無線送信機では、入力信号を増幅して出力する電力増幅器が実装される。この電力増幅器は、非線形な入出力特性を持つことが知られている。電力増幅器の非線形な入出力特性は、通信品質の低下や他の通信システムへの妨害の原因になる。この対策として、入力信号にあらかじめ電力増幅器の非線形特性の逆特性を与えることで、非線形歪を補償する歪補償技術(プリディストーション)が用いられる。
【0003】
歪補償技術は、例えば、歪補償多項式の係数に基づいて、電力増幅器の入力信号の歪補償を実行して予歪補償信号を生成し、予歪補償信号を電力増幅器に出力することで実行される。歪補償多項式の係数は、電力増幅器への入力信号及び電力増幅器の出力信号に基づいて、電力増幅器の逆特性から生成される。入力信号の電力レベルの全範囲に適応可能な歪補償多項式の係数を正確に決定するためには、取り得る最大のピーク電力を含む入力信号及びそれに対応する出力信号が必要となる。しかし、取り得る最大のピーク電力を含む入力信号が常に通信信号に含まれているとは限らず、ランダムに発生することから、入力信号の全電力範囲を含むデータ系列を選択的に取得する方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、時間的に連続したデータ系列を複数取得して保存し、その複数のサンプル系列からピーク電力が高い入力信号を含むサンプル系列を選別する手法が提案されている。また、特許文献2には、電力が閾値未満のときは歪補償の係数(例えば多項式の係数)の更新を行わず、閾値以上のときは係数の更新を行う手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-231387号公報
【特許文献2】特開2016-46725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の手法では、時間的に連続したデータ系列を複数取得して保存するため、歪補償の係数の確度を上げるためには、大きな記憶容量が要求され、高コスト化につながるといった課題がある。また、特許文献2の手法では、電力が閾値以上であったとして抽出されたデータ系列としても、最適な歪補償の係数が得られる保証がないといった課題がある。たとえば、閾値以上の電力であったとしても、取り得る最大のピーク電力との差が大きい場合には最適な歪補償の係数が得られ難い。一方、閾値を大きく設定しすぎると、更新の頻度が下がるため、歪補償の係数の確度が低くなるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、比較的少ない記憶容量にて、確度が高い歪補償特性を得ることができる歪補償装置、歪補償方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、電力増幅器の非線形歪を補償する歪補償装置であって、歪補償の基準情報に基づいて、入力信号の歪補償を実行して予歪補償信号を生成し、前記予歪補償信号を前記電力増幅器に出力する歪補償部と、前記入力信号を指定された条件でサンプリングして入力信号サンプル系列を生成し、前記電力増幅器の出力信号を指定された条件でサンプリングして出力信号サンプル系列を生成するサンプリング部と、前記生成された入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、各サンプル系列内のピーク電力値を選別する高電力選別部と、前記入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力値をそれぞれ少なくとも2つ保存する保存領域を有し、保存の際には、ピーク電力値同士の比較の結果を基に保存領域を切り替えて上書きする保存部と、前記保存部に保存された少なくとも2つの入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、ピーク電力値を含む所定の条件に基づいて入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を選択し、該選択した入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列に基づいて、前記基準情報を生成し、前記歪補償部に出力する歪補償基準情報生成部と、を備える歪補償装置である。
【0009】
前記保存部は、前記入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力値をそれぞれ2つ保存する保存領域を有し、前記歪補償基準情報生成部は、前記保存部に保存された2つの入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、より高いピーク電力を有する入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を選択し、該選択した入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列に基づいて、前記基準情報を生成するものでもよい。
【0010】
前記保存部は、前記入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力値をそれぞれ3つ以上保存する保存領域を有し、前記歪補償基準情報生成部は、複数の前記基準情報を生成し、生成した複数の前記基準情報のうち前記所定の条件に基づいて選択した一つを前記歪補償部に出力するものでもよい。
【0011】
前記保存部は、前記入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力値をそれぞれ3つ以上保存する保存領域を有し、前記保存領域に対する保存と、前記ピーク電力値の比較とを同一期間に行うものでもよい。
【0012】
前記サンプリング部は、指定された条件として、サンプリングの間隔を変更可能に構成されているものでもよい。
【0013】
前記サンプリング部、前記高電力選別部、前記保存部、及び前記歪補償基準情報生成部のうち少なくとも一つの設定を変更する制御部を備えるものでもよい。
【0014】
本発明の一態様は、電力増幅器の非線形歪を補償する歪補償方法であって、歪補償の基準情報に基づいて、入力信号の歪補償を実行して予歪補償信号を生成し、前記予歪補償信号を前記電力増幅器に出力する歪補償ステップと、前記入力信号を指定された条件でサンプリングして入力信号サンプル系列を生成し、前記電力増幅器の出力信号を指定された条件で取り込んで出力信号サンプル系列を生成するサンプリングステップと、前記生成された入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、各サンプル系列内のピーク電力値を選別する高電力選別ステップと、前記入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力をそれぞれ少なくとも2つを保存領域に保存し、保存の際には、ピーク電力値同士の比較の結果を基に保存領域を切り替えて上書きする保存ステップと、前記保存された少なくとも2つの入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、ピーク電力値を含む所定の条件に基づいて入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を選択し、該選択した入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列に基づいて、前記基準情報を生成して出力する歪補償基準生成ステップと、を備える歪補償方法である。
【0015】
本発明の一態様は、プロセッサに、電力増幅器の非線形歪を補償する歪補償方法を実行させるプログラムであって、前記歪補償方法は、歪補償の基準情報に基づいて、入力信号の歪補償を実行して予歪補償信号を生成し、前記予歪補償信号を前記電力増幅器に出力する歪補償ステップと、前記入力信号を指定された条件でサンプリングして入力信号サンプル系列を生成し、前記電力増幅器の出力信号を指定された条件で取り込んで出力信号サンプル系列を生成するサンプリングステップと、前記生成された入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、各サンプル系列内のピーク電力値を選別する高電力選別ステップと、前記入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力をそれぞれ少なくとも2つを保存領域に保存し、保存の際には、ピーク電力値同士の比較の結果を基に保存領域を切り替えて上書きする保存ステップと、前記保存された少なくとも2つの入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、ピーク電力値を含む所定の条件に基づいて入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を選択し、該選択した入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列に基づいて、前記基準情報を生成して出力する歪補償基準生成ステップと、を備えるプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る歪補償装置、歪補償方法及びプログラムでは、比較的少ない記憶容量にて、確度が高い歪補償多項式の係数を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態1に係る歪補償装置の構成を説明する図である。
図2図2は、図1に示す歪補償装置の演算部の構成を説明する図である。
図3図3は、図1に示す歪補償装置における歪補償方法のデータ処理のタイミングチャートの一例を示す図である。
図4図4は、図1に示す歪補償装置における歪補償方法の一例を示すフロー図である。
図5図5は、実施形態2に係る歪補償装置における歪補償方法の一例を示すフロー図である。
図6図6は、実施形態3に係る歪補償装置における歪補償方法の一例を示すフロー図である。
図7図7は、実施形態4に係る歪補償装置における歪補償方法のデータ処理のタイミングチャートの一例を示す図である。
図8図8は、実施形態4に係る歪補償装置における歪補償方法の一例を示すフロー図である。
図9図9は、実施形態5に係る歪補償装置の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には適宜同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略している。
【0019】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る歪補償装置の構成を説明する図である。歪補償装置1は、電力増幅器2の前段に設けられる。歪補償装置1は、通信信号である入力信号に、入力信号に応じて電力増幅器2の歪特性を減殺する補償特性を与えて予歪補償信号を生成し、電力増幅器2に出力する。これにより、歪補償装置1は、電力増幅器2の非線形歪を補償する。
【0020】
歪補償装置1は、ハードウェアとして、プロセッサとメモリとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)などを単独または適宜組み合わせたものであり、演算処理を行う。メモリは、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)などの、プロセッサが演算処理を行う際の作業スペースを提供したりプログラムやデータを記憶したりする半導体メモリを用いて構成できる。
【0021】
歪補償装置1は、さらに、信号処理のためのアナログ/デジタル変換器、デジタル/アナログ変換器、不要な周波数成分を除去するためのデジタルフィルタ、及び周波数変換処理部などを含んでいる。
【0022】
歪補償装置1の機能は、例えばプロセッサがメモリから読み出したプログラムを実行することによってハードウェアとソフトウェアとが協働して実現されてもよいし、ハードウェアの機能として実現されてもよい。
【0023】
歪補償装置1は、機能部として、歪補償部11と、演算部12とを備える。また、図2に示すように、演算部12は、機能部として、サンプリング部121と、高電力選別部122と、保存部123と、歪補償基準情報生成部124とを備えている。
【0024】
歪補償部11は、歪補償基準情報生成部124が生成する歪補償の基準情報に基づいて、入力信号の歪補償を実行して予歪補償信号を生成し、この予歪補償信号を電力増幅器2に出力する歪補償ステップを実行する。すなわち、歪補償部11は、入力信号に、電力増幅器2の歪特性の逆特性を与えて予歪補償信号を生成する。
【0025】
歪補償部11は、歪補償のための多項式を備えている。歪補償部11は、入力信号に対して、その振幅及び位相に多項式近似による補償特性を与える。さらに、歪補償部11は、入力信号に対して、FIR(Finite Impulse Response)フィルタまたはIIR(Infinite Impulse Response)フィルタによってメモリ効果補償用の補償特性を与えてもよい。これによって歪補償部11は、電力増幅器2における歪を減殺し、歪補償を実行することができる。
【0026】
演算部12は、入力信号の一部と出力信号の一部とが入力され、これらの入力に基づいて、与えた逆特性の誤差を算出し、その誤差が減るように、歪補償部11が補償特性を算出する際に用いる歪補償の基準情報(以下、歪補償基準情報または基準情報と記載する場合がある)を出力する。
【0027】
具体的に、演算部12では、サンプリング部121が、入力信号を指定された条件でサンプリングして入力信号サンプル系列を生成し、出力信号を指定された条件でサンプリングして出力信号サンプル系列を作成するサンプリングステップを実行する。
【0028】
また、高電力選別部122は、生成された入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、各サンプル系列内のピーク電力値を検知して選別する高電力選別ステップを実行する。具体的には、例えば、高電力選別部122は、入力信号サンプル系列内のピーク電力値Vp1を検知して選別し、出力信号サンプル系列内のピーク電力値Vp2を検知して選別する。
【0029】
また、保存部123は、入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力値をそれぞれ少なくとも2つ保存する保存領域を有している。なお、本実施形態1では保存領域は2つとする。従って、例えば、保存部123は、1つの入力信号サンプル系列とそこから選別したピーク電力値Vp11とその1つの入力信号サンプル系列に対応する出力信号サンプル系列とそこから選別したピーク電力値Vp21、および、別の1つの入力信号サンプル系列とそこから選別したピーク電力値Vp21とその別の1つの入力信号サンプル系列に対応する出力信号サンプル系列とそこから選別したピーク電力値Vp22、を保存する。そして、保存部123は、保存の際には、ピーク電力値同士の比較の結果を基に保存領域を切り替えて上書きする保存ステップを実行する。
【0030】
そして、歪補償基準情報生成部124は、保存部123に保存された2つの入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、ピーク電力値を含む所定の条件に基づいて入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を選択し、該選択した入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列に基づいて基準情報を生成し、歪補償部11に出力する歪補償基準生成ステップを実行する。
【0031】
上記のサンプリングステップ、高電力選別ステップ、保存ステップ、及び歪補償基準生成ステップは、たとえば、プログラムが歪補償方法としてプロセッサに実行させる。
【0032】
歪補償装置1におけるデータ処理を、図3のタイミングチャート及び図4のフロー図を参照して説明する。
【0033】
図4に示すように、保存部123は、入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力値をそれぞれ2つ保存する保存領域を初期化する(ステップS101)。以下、ピーク電力値の2つの保存領域をPeak#0、Peak#1とする。以下、Peak#0、Peak#1とは、保存領域を意味する場合と、保存領域に保存されたピーク電力値自体を意味する場合とがある。初期化の際には、Peak#0、Peak#1をそれぞれ「0」とし、初回は保存番号を#0と指定する。
【0034】
一方、サンプリング部121は、指定された条件として、オフセット時間(ofs)及びデータサンプリング時間(Period)にて、サンプリングを行う。オフセット時間(ofs)は、サンプリングの間隔を意味する。ofsやPeriodは、例えば入力信号(例えばLTE(Long Term Evolution)の信号)の特徴などに応じて適宜設定される。
【0035】
サンプリングは、図3に示すように、時刻t11にキャプチャプロセスがスタートし、時刻t11から時間間隔がofsで等間隔のofs#1、ofs#2、・・・、ofs#Xの時刻に、Periodの時間だけ行われる。これにより、サンプリング部121は、入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を生成する。ここで、Xは、2以上の整数であるが、値が大きい方がサンプリングの回数が多くなるので補償特性の確度が高くなる。ただし、多すぎても確度は或る程度以上は高くなりにくいので、要求確度等に応じて適宜設定されるべきである。
【0036】
保存部123は、入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を保存領域であるbase addr(base addr#0またはbase addr#1)に保存するが、指定された保存番号を有する保存領域(初回はbase addr#0)に保存する(ステップS102)。
【0037】
高電力選別部122は、保存された入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、各サンプル系列内のピーク電力値を検知して選別する。
【0038】
保存部123は、ピーク電力値を、指定された保存番号を有する保存領域であるPeak#0に保存する(ステップS103)。
【0039】
保存部123は、Peak#0に保存されている値とPeak#1に保存されている値とを比較し、条件式「Peak#0>Peak#1」が成立しているかを判定する(ステップS104)。成立しない場合(ステップS104、No)には、保存部123は保存番号を#0と指定する(ステップS105)が、初回は必ず成立する(ステップS104、Yes)ので、保存部123は保存番号を#1と指定する(ステップS106)。
【0040】
つづいて、保存部123は、サンプリングが既定回数((X-1)回)以上実行されたかを判定する(ステップS107)、既定回数以上実行されていないと判定した場合(ステップS107、No)、データ処理はステップS102に戻る。
【0041】
以降、ステップS102、S103、S104が繰り返し実行されるが、ステップS104では、既に保存されたピーク電力値との比較で、条件式「Peak#0>Peak#1」に応じて保存領域を切り替えられ、低いピーク電力値が保存された領域に、新しいピーク電力値が上書きされることとなる。
【0042】
ステップS104は、図3において、「Lowest Peak Detection」と記載される、ドット模様で示した時間帯に実行される。図3において、たとえば、下向きの矢印とともに示される「Peak#0 ofs#0」とは、時刻t11からofs#0のオフセット時間だけ経過した時刻から始まるデータサンプリング時間(Period)にて、Peak#0の保存領域に保存されることを意味する。また、上向きの矢印とともに示される「base addr#1」とは、保存部123が保存番号を#1に設定した場合は、次のサンプリングの際にはbase addr#1にサンプル系列が保存されることを意味する。
【0043】
そして、保存部123は、サンプリングが既定回数以上実行されたと判定した場合(ステップS107、Yes)、図3のキャプチャプロセスは終了する(図3の時刻t12)。その後、データ処理はステップS108に進む。
【0044】
ステップS108では、歪補償基準情報生成部124は、Peak#0及びPeak#1のうち、より高いピーク電力値である保存番号に対応するbase addrに保存されたサンプル系列、すなわち入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を選択し、選択した入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列に基づいて、基準情報を生成し、歪補償部に出力する。より高いピーク電力を有するサンプル系列を選択することは、ピーク電力を含む所定の条件の一例である。
【0045】
以上のように構成された歪補償装置1及び歪補償方法によれば、2つという少ない保存領域よって、必要な記憶容量を最小限にしつつ、ピーク電力値の高いサンプル系列を選択することができる。その結果、比較的少ない記憶容量にて、確度が高い歪補償特性を得ることができる。
【0046】
(実施形態2)
実施形態2に係る歪補償装置は、図1、2に示す実施形態1に係る歪補償装置1と同様に構成される。ただし、実施形態1とは異なり、実施形態2に係る歪補償装置は、保存部123が、入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力値をそれぞれ3つ以上保存する保存領域を有し、歪補償基準情報生成部124が、複数の基準情報を生成し、生成した複数の基準情報のうち所定の条件に基づいて選択した一つを歪補償部11に出力する。
【0047】
図5は、実施形態2に係る歪補償装置における歪補償方法の一例を示すフロー図である。保存部123は、入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力値をそれぞれ複数((N+1)とする)だけ保存する保存領域を初期化する(ステップS201)。初期化の際には、Peak#0~Peak#Nをいずれも「0」とし、初回は保存番号を#0と指定する。
【0048】
保存部123は、入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を保存領域であるbase addrに保存する。このとき、複数の保存領域のうちどこに保存するかは適宜指定されるが、たとえば保存番号が小さい順に、base addr#0~base addr#Nに順次保存する(ステップS202)。
【0049】
高電力選別部122は、保存された入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、各サンプル系列内のピーク電力値を検知して選別する。
【0050】
保存部123は、ピーク電力値を保存領域であるPeakに保存する。このとき、複数の保存領域のうちどこに保存するかは適宜指定されるが、たとえば保存番号が小さい順にPeak#0~Peak#Nに順次保存する(ステップS203)。
【0051】
保存部123は、Peak#0~Peak#Nに保存されている値を比較し、最も低いピーク電力値を判定し、そのピーク電力値が保存された保存番号を次の保存番号に指定する(ステップS204)。最も低いピーク電力値を判定し、そのピーク電力値が保存された保存番号を次の保存番号に指定することは、保存の際には、ピーク電力値同士の比較の結果を基に保存領域を切り替えることの一例である。
【0052】
つづいて、保存部123は、サンプリングが既定回数(たとえば(X-1)回)以上実行されたかを判定する(ステップS205)、既定回数以上実行されていないと判定した場合(ステップS205、No)、データ処理はステップS202に戻る。
【0053】
以降、ステップS202、S203、S204が繰り返し実行されるが、ステップS204では、既に保存されたピーク電力値との比較で、最も低いピーク電力値が保存された保存番号の保存領域に切り替えられ、最も低いピーク電力値が保存された保存領域に新しいピーク電力値が上書きされることとなる。
【0054】
そして、保存部123は、サンプリングが既定回数以上実行されたと判定した場合(ステップS205、Yes)、データ処理はステップS206に進む。
【0055】
ステップS206では、歪補償基準情報生成部124は、base addr#0~base addr#Nに保存された全てのサンプル系列、すなわち入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列に基づいて、複数の基準情報を生成し、その中から所定の条件に基づいて選択した最も適切な一つを歪補償部11に出力する。
【0056】
ここで、所定の条件は、様々な観点から設定することができる。たとえば、入力信号の電力ピーク値のみをデータ選別の基準とした場合、ある極端なデータを反映した歪補償係数になることがある(過反応と呼ぶ)。これは、サンプル系列の電力ピーク値だけでなく、サンプル系列の平均値や標準偏差なども歪補償特性の確度に影響するためである。
【0057】
そこで、所定の条件として、サンプル系列の電力ピーク値に加え、サンプル系列の平均値や標準偏差などの統計量を含めることで、より確度の高い歪補償特性を得ることができる。
【0058】
以上のように構成された実施形態2に係る歪補償装置及び歪補償方法によれば、比較的少ない記憶容量にて、より確度が高い歪補償特性を得ることができる。
【0059】
(実施形態3)
実施形態3に係る歪補償装置は、実施形態1に係る歪補償装置1と同様に構成される。ただし、実施形態1とは異なり、実施形態3に係る歪補償装置は、サンプリング部121が、指定された条件として、サンプリングの間隔を変更可能に構成されている。すなわち、サンプリングの間隔は、実施形態1、2では、定数のオフセット時間(ofs)であるが、実施形態3では、変更可能であり、具体的には互いに異なる値であるofs_aまたはofs_bの2つの値とすることができる。
【0060】
図6は、実施形態3に係る歪補償装置における歪補償方法の一例を示すフロー図である。保存部123が、入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力をそれぞれ2つ保存する保存領域を初期化するとともに、サンプリング部121が、オフセット時間を初期化する(ステップS301)。初期化の際には、保存部123は、Peak#0、Peak#1をそれぞれ「0」とし、初回は保存番号を#0と指定する。また、サンプリング部121は、オフセット時間をofs_aにする。
【0061】
保存部123は、入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を保存領域であるbase addrに保存するが、保存の際には、指定された保存番号を有する保存領域(初回はbase addr#0)に保存する(ステップS302)。
【0062】
高電力選別部122は、生成され保存された入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、各サンプル系列内のピーク電力値を検知して選別する。
【0063】
保存部123は、ピーク電力値を、指定された保存番号を有する保存領域であるPeak#0に保存する(ステップS303)。
【0064】
保存部123は、Peak#0に保存されている値とPeak#1に保存されている値とを比較し、条件式「Peak#0>Peak#1」が成立しているかを判定する(ステップS304)。成立しない場合(ステップS304、No)には、保存部123は保存番号を#0と指定(ステップS305)が、初回は必ず成立する(ステップS304、Yes)ので、保存部123は保存番号を#1と指定する(ステップS306)。
【0065】
つづいて、保存部123は、サンプリングが既定回数(たとえば(X-1)回)以上実行されたかを判定する(ステップS307)、既定回数以上実行されていないと判定した場合(ステップS107、No)、データ処理はステップS302に戻る。
【0066】
以降、ステップS302、S303、S304が繰り返し実行されるが、ステップS304では、既に保存されたピーク電力値との比較で、条件式「Peak#0>Peak#1」に応じて保存領域を切り替えられ、低いピーク電力値が保存された保存領域に新しいピーク電力値が上書きされることとなる。
【0067】
そして、保存部123は、サンプリングが既定回数以上実行されたと判定した場合(ステップS307、Yes)、データ処理はステップS308に進む。
【0068】
ステップS308では、サンプリング部121は、オフセット時間がofs_aかを判定する。ofs_aであれば(ステップS308、Yes)、サンプリング部121は、オフセット時間をofs_bに変更する(ステップS309)。
【0069】
以降、オフセット時間がofs_bの条件にて、ステップS302、S303、S304、S305、S306、及びS307が適宜実行される。そして、保存部123は、オフセット時間がofs_bの条件にてサンプリングが既定回数以上実行されたと判定した場合(ステップS307、Yes)、データ処理はステップS308に進む。
【0070】
ステップS308では、サンプリング部121は、オフセット時間がofs_aかを判定するが、ここではofs_aではないので(ステップS308、No)、データ処理はステップS309に進む。
【0071】
ステップS309では、歪補償基準情報生成部124は、Peak#0及びPeak#1のうち、より高いピーク電力値である保存番号に対応するbase addrに保存されたサンプル系列、すなわち入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を選択し、選択した入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列に基づいて、基準情報を生成し、歪補償部に出力する。
【0072】
ここで、入力信号に周期性がある場合、ofsと入力信号の周期とが偶然一致すると、周期性のある信号の一部しか取得できない可能性がある。これに対して、実施形態3に係る歪補償装置及び歪補償方法によれば、互いに異なるofs_a及びofs_bでサンプリングを行うため、信号の周期性に起因したデータの取得漏れが少なくなるという効果が得られる。
【0073】
また、実施形態3に係る歪補償装置及び歪補償方法によれば、上記の効果に加え、実施形態1と同様に、比較的少ない記憶容量にて、確度が高い歪補償特性を得ることができる。
【0074】
また、実施形態3に係る歪補償装置及び歪補償方法の変形例として、実施形態2と同様に保存領域の数を設定し、生成した複数の基準情報から選択した一つを歪補償部11に出力するように構成することもできる。これにより、上記の効果に加え、比較的少ない記憶容量にて、より確度が高い歪補償特性を得ることができる。
【0075】
また、実施形態3に係る歪補償装置及び歪補償方法のさらなる変形例として、実施形態2と同様に保存領域の数を設定する場合に複数のofs毎に保存領域を分けたり、ofsを常にランダムに変更したりするように構成することもできる。
【0076】
(実施形態4)
実施形態4に係る歪補償装置は、実施形態1に係る歪補償装置1と同様に構成される。ただし、実施形態4に係る歪補償装置は、保存部123がピーク電力値に基づいて保存番号を指定するタイミングが実施形態1とは異なる。具体的には、保存部123では、保存領域に対する保存と、ピーク電力値の比較とを同一期間に行う。したがって、サンプル系列のデータを保存する期間に、保存番号で指定された保存領域以外の保存領域に保存されているピーク電力値の比較を行い、次の保存番号を決定する。
【0077】
実施形態4に係る歪補償装置におけるデータ処理を、図7のタイミングチャート及び図8のフロー図を参照して説明する。なお、実施形態4では、保存部123は、入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力をそれぞれ3つ保存する保存領域を有するものとする。
【0078】
図7に示すように、保存部123は、入力信号サンプル系列、出力信号サンプル系列、及びピーク電力値をそれぞれ3つ保存する保存領域を初期化する(ステップS401)。以下、ピーク電力値の3つの保存領域をPeak#0、Peak#1、Peak#2とする。初期化の際には、Peak#0、Peak#1、及びPeak#2をそれぞれ「0」とし、初回は保存番号を#0と指定する。
【0079】
一方、サンプリング部121は、指定された条件として、オフセット時間(ofs)とデータサンプリング時間(Period)にて、サンプリングを行う。サンプリングは、時刻t21にキャプチャプロセスがスタートし、時刻t21から時間間隔がofsで等間隔のofs#1、ofs#2、・・・、ofs#Xの時刻に、Periodの時間だけ行われる。実施形態4の場合は、ofsとPeriodとが等しく設定されている。これにより、サンプリング部121は、入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を作成する。
【0080】
本実施形態4では、保存部123は、入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を保存領域であるbase addrに保存するが、保存の際には、指定された保存番号を有する保存領域(初回はbase addr#0)に保存する(ステップS402)。
【0081】
高電力選別部122は、保存された入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列のうち、各サンプル系列内のピーク電力値を検知して選別する。
【0082】
保存部123は、ピーク電力値を指定された保存番号を有する保存領域であるPeak#0に保存する(ステップS403)。
【0083】
保存部123は、ステップS402、S403と同じ期間に、保存番号#0で指定された保存領域Peak#0以外の保存領域であるPeak#1及びPeak#2に保存されているピーク電力値を比較し、ピーク電力値が最小の番号(#1または#2)を判定し、その番号を次の保存番号として指定する(ステップS404)。
【0084】
つづいて、保存部123は、サンプリングが既定回数(たとえば(X-1)回)以上実行されたかを判定する(ステップS405)、既定回数以上実行されていないと判定した場合(ステップS405、No)、データ処理はステップS402及びS404の直前に戻る。
【0085】
以降、ステップS402、S403、S404が繰り返し実行されるが、ステップS403では、ステップS404にて保存番号が指定された、低いピーク電力値が保存された保存領域に新しいピーク電力値が上書きされることとなる。
【0086】
ステップS402、S403は図7における「Period」の期間に実行され、ステップS404は「Lowest Peak Detection」と記載される時間帯に実行される。そして、例えば、符号Aで示される期間には、保存番号#0と保存番号#1との間でピーク電力値が比較され、保存番号#1が最小のピーク電力値と判定されて保存番号が#1と指定されるが、これと同時に保存番号#2に保存される。また、例えば、符号Aに続く符号Bで示される期間には、保存番号#0と保存番号#2との間でピーク電力値が比較され、同時に保存番号#1に保存される。
【0087】
そして、保存部123は、サンプリングが既定回数以上実行されたと判定した場合(ステップS405、Yes)、図7のキャプチャプロセスは終了する(図3の時刻t22)。その後、データ処理はステップS405に進む。
【0088】
ステップS405では、歪補償基準情報生成部124は、Peak#0~Peak#2のうち、より高いピーク電力値である保存番号に対応するbase addrに保存されたサンプル系列、すなわち入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を選択し、選択した入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列に基づいて、基準情報を生成し、歪補償部に出力する。
【0089】
以上のように構成された実施形態4に係る歪補償装置及び歪補償方法によれば、図3図8との比較からも分かるように、Periodの期間が連続しており、時間的に連続なデータ系列の取得が可能である。その結果、データの取得漏れがなくなり、より確度が高い歪補償特性を得ることができる。
【0090】
なお、実施形態4に係る歪補償装置及び歪補償方法の変形例として、ofsがPeriodよりも大きく設定されていてもよい。この場合、データサンプリング時間の間に間隔ができるが、その間隔は図3のような場合よりも短くすることができる。その結果、データの取得漏れが少なくなり、より確度が高い歪補償特性を得ることができる。
【0091】
(実施形態5)
図9は、実施形態5に係る歪補償装置の構成を説明する図である。実施形態5に係る歪補償装置1Aは、実施形態1に係る歪補償装置1に制御部13を追加した構成を有する。なお、図9では歪補償部11は図示を省略している。
【0092】
機能部としての制御部13は、演算部12のサンプリング部121、高電力選別部122、保存部123、及び歪補償基準情報生成部124のうち少なくとも一つの設定を変更する機能を有する。変更する設定は、例えば、サンプリング部121におけるオフセット時間、保存部123における保存領域の数、または歪補償基準情報生成部124の動作に関わる設定などである。歪補償基準情報生成部124の動作に関わる設定とは、例えば、入力信号サンプル系列及び出力信号サンプル系列を選択する際の条件の設定などである。
【0093】
歪補償装置1Aは、設定変更によって、実施形態1~4に係る歪補償装置のいずれとしても動作可能である。その結果、歪補償装置1Aは、例えば歪補償装置1Aの設置される環境や入力信号の特徴に合わせて最適な動作をするように構成することができる。なお、設定の変更は随時可能であるが、例えば歪補償装置1Aの製造、出荷時や、メインテナンス時に行われる。
【0094】
例えば、歪補償装置1Aにおける設定変更を、歪補償装置1Aの設置される環境に合わせて行う例としては、歪補償装置1Aと電力増幅器2とを備える無線送信機が、建物内部における不感帯を解消するためのリピータとして利用される場合がある。例えば建物が商業用ビルである場合、建物や建物に入居する店舗の営業時間や営業日などの場合は人が多いのでデータトラフィックが多く、営業時間外であれば建物内はほぼ無人となり、データトラフィックがほとんど発生しなくなる。この場合、歪補償装置1Aは、データトラフィックが基準よりも少ない時刻の場合は、オフセット時間を大きくする設定変更するまたはサンプリング自体を停止するなどの、歪補償装置1Aの負荷を減らす設定をしてもよい。この設定は、例えば時間帯に応じて制御部13が自動的に変更してもよいし、オペレーターが変更してもよい。
【0095】
また、例えば建物がオフィスビルである場合、建物に入居するオフィスに勤務する社員の出社率や出社人数に応じて、歪補償装置1Aの設定を変更してもよい。
【0096】
歪補償装置1Aにおける設定変更を、歪補償装置1Aの設置される環境に合わせて行う別の例としては、歪補償装置1Aと電力増幅器2とを備える無線送信機が、列車のトンネルの内部における不感帯を解消するためのリピータとして利用される場合がある。この場合、列車の運行状態に応じてデータトラフィックが変化をするので、歪補償装置1Aは、データトラフィックが基準よりも少ない時刻の場合は、歪補償装置1Aの負荷を減らす設定をしてもよい。この設定も、例えば時間帯に応じて制御部13が自動的に変更してもよいし、オペレーターが変更してもよい。
【0097】
なお、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0098】
1、1A :歪補償装置
2 :電力増幅器
11 :歪補償部
12 :演算部
13 :制御部
121 :サンプリング部
122 :高電力選別部
123 :保存部
124 :歪補償基準情報生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9