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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157239
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】光造形用樹脂組成物及び光造形物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/00 20060101AFI20221006BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20221006BHJP
【FI】
C08F290/00
B29C64/124
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061351
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 奈緒子
【テーマコード(参考)】
4F213
4J127
【Fターム(参考)】
4F213AA33
4F213AA42
4F213AA43
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL24
4J127AA03
4J127BA01
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC15
4J127BD292
4J127BD342
4J127BD471
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BE591
4J127BE59Y
4J127BF141
4J127BF14X
4J127BF201
4J127BF20X
4J127BF621
4J127BF62X
4J127BF781
4J127BF78X
4J127BG141
4J127BG14X
4J127BG251
4J127BG25X
4J127CB161
4J127DA18
4J127DA27
4J127EA12
4J127FA06
(57)【要約】
【課題】耐熱性に優れ、さらに耐衝撃性も良好な光造形物を製造できる光造形用樹脂組成物、及び耐熱性に優れ、さらに耐衝撃性も良好な光造形物を提供する。
【解決手段】以下の(A)~(D)成分を含有する光造形用樹脂組成物。
(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレート化合物
(B)成分:単官能アクリレート
(C)成分:(SiO4/2)で表されるQ単位を必須とし、ケイ素に結合した(メタ)アクリロイル基を有するオルガノポリシロキサン
(D)成分:光ラジカル重合開始剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)~(D)成分を含有する、光造形用樹脂組成物。
(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレート化合物
(B)成分:単官能アクリレート
(C)成分:(SiO4/2)で表されるQ単位を必須とし、ケイ素に結合した(メタ)アクリロイル基を有するオルガノポリシロキサン
(D)成分:光ラジカル重合開始剤
【請求項2】
前記(A)成分が、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する、請求項1に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)成分の含有量が、前記(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.01~5質量部である、請求項1又は2に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1~15質量部である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)成分の分子量1000当たりの、ケイ素に結合した(メタ)アクリロイル官能基の数が、3.3~5.3個である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)成分が、赤外吸収スペクトル分析において、波数1030~1060cm-1の領域に、Si-O伸縮振動の最大吸収波数を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項7】
前記(C)成分の25℃における粘度が、10~100,000mPa・sである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項8】
前記(C)成分が、空気以外何も入っていない状態の1Lナス型フラスコにおいて圧力0.15torrの排気能力を有する真空ポンプを用いて、200gの該オルガノポリシロキサンを1Lナス型フラスコに入れ、減圧下、内温110℃で2時間加熱した際、該オルガノポリシロキサン成分の質量減少が10g以下である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項9】
前記(C)成分が、下記式[1]で示されるオルガノポリシロキサンである、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光造形用樹脂組成物。
(RSiO1/2M1(RSiO1/2M2(RSiO2/2D1(RSiO2/2D2(R10SiO3/2T1(RSiO3/2T2(SiO4/2(O1/211Y1(O1/2Y2 ・・・[1]
ここで、上記式[1]中、
~R、R~R10はそれぞれ独立して有機官能基、反応性官能基、又は、水素原子から選択される基であり、
~R、R、R、及び、R10は(メタ)アクリロイル基を含まない。Rは(メタ)アクリロイル基を含む有機基であり、同一でも異なっていてもよく、
11は、(メタ)アクリロイル基を含まず、炭素数1~20の有機基、及び水素原子から選択される基であり、
係数M1、D1、T1、Qは、それぞれ0以上0.6未満であり、
M1が0.09以上0.5以下、かつ前記係数Qが0.04以上0.4以下であり、
M2+D2+T2>0.25、M1+M2+D1+D2+T1+T2+Q=1であり、
係数Y1が0以上0.25以下およびY2は、0又は正の値である。
【請求項10】
前記(C)成分が、上記式[1]で示されるオルガノポリシロキサンであり、
上記式[1]中の(メタ)アクリロイル基を含む有機基Rが、下記式[2]、[3]、[4]及び[5]で表される群から選択された1種又は2種以上の官能基を1分子中に有する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光造形用樹脂組成物。
【化1】
但し、式[3]及び[5]中、Xは、分岐構造、及び/又は、環状構造を含んでいてもよい2価の有機官能基である。また、ケイ素原子とXが結合している場合、Xの末端であり、ケイ素と直結する原子は、炭素原子である。また、ケイ素に直結した酸素原子とXが結合している場合、Xの末端であり、酸素原子と直結する原子は、炭素原子である。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の光造形用樹脂組成物を光硬化させた、光造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光造形用樹脂組成物及び光造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
光造形用樹脂組成物を用い、光を照射することにより硬化させて、3次元の造形物(光造形物)を成形する技術は、光造形法として知られている。
光造形用樹脂組成物は、例えばフィルム用途のように異なる性質を持った樹脂で製造されたフィルムを積層させて機能性を上げるといった手法が取れないため、従来の樹脂組成物より多機能性が求められる傾向がある。近年、光造形用樹脂組成物は数多く提案されているが、耐熱性及び耐衝撃性は多く要求されている性質である。
【0003】
この様な分野に用いられる高い耐熱性有する樹脂材料として、架橋構造を含む樹脂が挙げられる。特許文献1では、架橋構造を含む樹脂組成物が開示されており、高い耐熱性を実現している。
特許文献2には、柔軟性を有する重合体を含む樹脂組成物が開示されており、高い耐衝撃性を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-238597号公報
【特許文献2】特開平01-204915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1の樹脂組成物は、耐熱性は向上されているものの、耐衝撃性の向上については、考慮されておらず、耐衝撃性については、未だ不十分であり、改良が必要であった。また、特許文献2の樹脂組成物は、柔軟性を有する重合体を加えたことにより、耐衝撃性については向上されているものの樹脂が本来持つ耐熱性については、低下してしまっており、改良が必要であった。
このように、従来の技術では耐熱性と耐衝撃性のようにトレードオフの関係となる特性を両立させた樹脂組成物を製造することが期待されていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、耐熱性に優れ、さらに耐衝撃性も良好な光造形物を製造できる光造形用樹脂組成物、及び耐熱性に優れ、さらに耐衝撃性も良好な光造形物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、(A)成分としてウレタン(メタ)アクリレート化合物、(B)成分として単官能アクリレート、(C)成分として(SiO4/2)で表されるQ単位を必須とし、ケイ素に結合した(メタ)アクリロイル基を有するオルガノポリシロキサン、(D)成分として光ラジカル重合開始剤を含有する光造形用樹脂組成物が、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]の態様を有する。
[1] 以下の(A)~(D)成分を含有する、光造形用樹脂組成物。
(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレート化合物
(B)成分:単官能アクリレート
(C)成分:(SiO4/2)で表されるQ単位を必須とし、ケイ素に結合した(メタ)アクリロイル基を有するオルガノポリシロキサン
(D)成分:光ラジカル重合開始剤
[2] 前記(A)成分が、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する、[1]に記載の光造形用樹脂組成物。
[3] 前記(D)成分の含有量が、前記(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.01~5質量部である、[1]又は[2]に記載の光造形用樹脂組成物。
[4] 前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1~15質量部である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物。
[5] 前記(C)成分の分子量1000当たりの、ケイ素に結合した(メタ)アクリロイル官能基の数が、3.3~5.3個である、[1]乃至[4]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物。
[6] 前記(C)成分が、赤外吸収スペクトル分析において、波数1030~1060cm-1の領域に、Si-O伸縮振動の最大吸収波数を有する、[1]乃至[5]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物。
[7] 前記(C)成分の25℃における粘度が、10~100,000mPa・sである、[1]乃至[6]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物。
[8] 前記(C)成分が、空気以外何も入っていない状態の1Lナス型フラスコにおいて圧力0.15torrの排気能力を有する真空ポンプを用いて、200gの該オルガノポリシロキサンを1Lナス型フラスコに入れ、減圧下、内温110℃で2時間加熱した際、該オルガノポリシロキサン成分の質量減少が10g以下である、[1]乃至[7]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物。
[9] 前記(C)成分が、下記式[1]で示されるオルガノポリシロキサンである、[1]乃至[8]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物。
(RSiO1/2M1(RSiO1/2M2(RSiO2/2D1(RSiO2/2D2(R10SiO3/2T1(RSiO3/2T2(SiO4/2(O1/211Y1(O1/2Y2 ・・・[1]
ここで、上記式[1]中、
~R、R~R10はそれぞれ独立して有機官能基、反応性官能基、又は、水素原子から選択される基であり、
~R、R、R、及び、R10は(メタ)アクリロイル基を含まない。Rは(メタ)アクリロイル基を含む有機基であり、同一でも異なっていてもよく、
11は、(メタ)アクリロイル基を含まず、炭素数1~20の有機基、及び水素原子から選択される基であり、
係数M1、D1、T1、Qは、それぞれ0以上0.6未満であり、
M1が0.09以上0.5以下、かつ前記係数Qが0.04以上0.4以下であり、
M2+D2+T2>0.25、M1+M2+D1+D2+T1+T2+Q=1であり、
係数Y1が0以上0.25以下およびY2は、0又は正の値である。
[10] 前記(C)成分が、上記式[1]で示されるオルガノポリシロキサンであり、
上記式[1]中の(メタ)アクリロイル基を含む有機基Rが、下記式[2]、[3]、[4]及び[5]で表される群から選択された1種又は2種以上の官能基を1分子中に有する、[1]乃至[9]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物。
【化1】
但し、式[3]及び[5]中、Xは、分岐構造、及び/又は、環状構造を含んでいてもよい2価の有機官能基である。また、ケイ素原子とXが結合している場合、Xの末端であり、ケイ素と直結する原子は、炭素原子である。また、ケイ素に直結した酸素原子とXが結合している場合、Xの末端であり、酸素原子と直結する原子は、炭素原子である。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物を光硬化させた、光造形物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光造形用樹脂組成物によれば、耐熱性に優れ、さらに耐衝撃性も良好な光造形物を製造できる。また、本発明の光造形物は、耐熱性に優れ、さらに耐衝撃性も良好となる。
【0009】
<本発明が効果を奏する理由>
本発明が効果を奏する理由については、未だ明らかでないが、以下のように推察される。
つまり、本発明の光造形用樹脂組成物は、T単位にメタクリロイル基を導入したオルガノポリシロキサンを用いている。また、そのような光造形用樹脂組成物を光造形物とすると、高架橋密度とすることができ、構造強度が増しているため、耐熱性に優れ、さらに耐衝撃性も良好な光造形物となると推察される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸の総称である。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸又はメタクリル酸」、「(メタ)アクリロイル基」は「アクリロイル基又はメタクリロイル基」、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」、「(メタ)アクリルアミド」は「アクリルアミド又はメタクリルアミド」をそれぞれ意味する。
【0011】
(光造形用樹脂組成物)
本発明の光造形用樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)(以下、「(A)成分」ともいう。)と、単官能アクリレート(B)(以下、「(B)成分」ともいう。)と、(SiO4/2)で表されるQ単位を必須とし、ケイ素に結合した(メタ)アクリロイル基を有するオルガノポリシロキサン(C)(以下、「(C)成分」ともいう。)と、光ラジカル重合開始剤(D)(以下、「(D)成分」ともいう。)と、を含有する。
【0012】
<(A)成分>
本発明の(A)成分は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物である。ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリロイル基と、ウレタン結合とを有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、分子内に平均で1~7個の(メタ)アクリロイル基と、少なくとも2つのウレタン結合とを有する化合物が挙げられる。
【0013】
これらのウレタン(メタ)アクリレート化合物の中でも、硬化後の架橋度が上がることにより耐熱性が良好となるため、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。また、硬化後の架橋度が適度になり、耐衝撃性が良好となるため、5つ以下の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、4つ以下の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。さらに、水素結合により硬化物の耐衝撃性が良好となるため、少なくとも3つのウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。また、樹脂組成物の粘度が適度となり取り扱いやすくなることから、20個以下のウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、16個以下のウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。
【0014】
より具体的には、(A)成分は、分子内に少なくとも1個以上のアミド基、及び2個以上のNCO反応性ヒドロキシル基を有するアミドヒドロキシ化合物(a1)(以下、「(a1)成分」ともいう)と、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のジオール(a2)(以下、「(a2)成分」ともいう)と、有機ジイソシアネート化合物(a3)(以下、「(a3)成分」ともいう)と、ヒドロキシル基含有アクリル酸エステル(a4)(以下、「(a4)成分」ともいう)との付加反応により合成することができる。
【0015】
(a1)成分は、環状ヒドロキシカルボン酸エステルとアンモニア、又は少なくとも1個の第一級もしくは第二級アミノ窒素を含む化合物との反応生成物である。これらの中でも、環状ヒドロキシカルボン酸エステルと少なくとも1個の第一級又は第二級アミノ窒素を含む化合物との反応生成物が好ましく、環状ヒドロキシカルボン酸エステルと少なくとも1個の第二級アミノ窒素を含む化合物との反応生成物が特に好ましい。
【0016】
環状ヒドロキシカルボン酸エステルの具体例としては、例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、これらの中でも、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトンが好ましく、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンが特に好ましい。
【0017】
少なくとも1個の第一級アミノ窒素を含む化合物の具体例としては、例えば、エタノールアミン、2-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、6-アミノ-1-ヘキサノール、1,4-ジアミノブタン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,10-ジアミノデカン等が挙げられる。これらの中でも、エタノールアミン、2-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、6-アミノ-1-ヘキサノール、1,4-ジアミノブタン、1,2-ジアミノシクロヘキサンが好ましく、エタノールアミン、2-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、6-アミノ-1-ヘキサノール、1,4-ジアミノブタンがより好ましく、エタノールアミン、2-アミノ-1-ブタノールがさらに好ましく、エタノールアミンが特に好ましい。
【0018】
少なくとも1個の第二級アミノ窒素を含む化合物の具体例としては、例えば、ジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン等が挙げられる。これらの中でも、ジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミンが特に好ましい。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
環状ヒドロキシカルボン酸エステルと少なくとも1個の第一級又は第二級アミノ窒素を含む化合物との反応は、当モル量の両者を混合し、約80~100℃で8~24時間加熱することにより行われる。
このようにして得られる(a1)成分の中でも、4-ヒドロキシ-N-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルブタナミドが特に好ましい。
【0020】
(a2)成分は、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のジオールである。
このようなポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、及びポリカーボネートジオールとしては、種々市販されているものが適用でき、その具体例としては、以下のとおりである。
【0021】
ポリエーテルジオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、ポリプロピレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、ポリブチレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、1-メチルブチレングリコール(繰り返し単位数:6~20)等が挙げられる。
ポリエステルジオールとしては、ポリカプロラクトンジオール、アルキレン(炭素数2~10)ジオールのカプロラクトン付加(繰り返し単位数:2~10)ジオール、フタル酸とアルキレンジオールから誘導されたポリエステルジオール、マレイン酸とアルキレンジオールから誘導されたポリエステルジオール、フマル酸とアルキレンジオールから誘導されたポリエステルジオール等が挙げられる。
【0022】
ポリカーボネートジオールとしては、ポリカーボネートジオール(炭素数4~6の脂肪族骨格)等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の耐衝撃性の観点から、ポリエチレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、ポリプロピレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、ポリブチレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、ポリカプロラクトンジオール、アルキレン(炭素数2~10)ジオールのカプロラクトン付加(繰り返し単位数:2~10)ジオール、フタル酸とアルキレンジオールから誘導されたポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール(炭素数4~6の脂肪族骨格)が好ましく、ポリブチレングリコール(繰り返し単位数:6~20)、ポリカプロラクトンジオール、アルキレン(炭素数2~10)ジオールのカプロラクトン付加(繰り返し単位数:2~10)ジオールが特に好ましい。
【0023】
また、質量平均分子量は、特に限定されないが、硬化物の耐衝撃性の観点から、下限が300以上であることが好ましく、400以上であることがより好ましく、500以上であることがさらに好ましい。また、樹脂組成物の粘度が適度となり取り扱いやすくなることから、上限が2000以下のものが好ましく、1500以下のものがより好ましく、1200以下のものがさらに好ましい。
【0024】
これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。ジオールを用いるのは、3官能以上のポリオールであると、製造時に架橋、ゲル化しやすい為である。
(a3)成分である有機ジイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート、メチレンビス(3-クロロ-4-イソシアナトフェニル)、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、トリス(4-イソシアナトフェニル)メタン、1,2-キシレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、1,2-水添キシレンジイソシアネート、1,4-水添キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の耐熱性や耐衝撃性が良好となることから、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,2-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,2-水添キシレンジイソシアネート、1,4-水添キシレンジイソシアネートが好ましく、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート、1,2-水添キシリレンジイソシアネート、1,4-水添キシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂環族骨格のものがさらに好ましい。
【0025】
(a4)成分であるヒドロキシル基含有アクリル酸エステルは、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリレート基、及び少なくとも1個のNCO反応性ヒドロキシル基を有し、製造したポリウレタン前駆体の末端に付加して、(A)成分にラジカル反応性を付与する。
ヒドロキシル基含有アクリル酸エステル(a4)の具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、およびこれらのカプロラクトンの付加物が挙げられる。また、これらの中でも、硬化物の耐熱性や耐衝撃性が良好となることから、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートさらに好ましい。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
(A)成分の合成方法としては、例えば、(a1)成分と(a2)成分の総ヒドロキシル基含有当量で0.9モル当量を合成釜内に仕込み、これに加熱・攪拌下で、(a3)成分2.0モル当量を滴下することで、前駆体のイソシアネート末端ポリウレタンが得られる。これに更に(a4)成分1.1~1.3モル当量分を滴下、加熱付加することにより、(A)成分が得られる。ここで、モル当量とは、使用化合物のモル数と官能基数を乗じた数を言う。
【0027】
本発明において、(A)成分中、(a1)~(a4)の使用比率は、モル当量で、(a3):[(a1)+(a2)]:(a4)=2.0:0.5~4.0:0.5~4.0であり、(a1):(a2)=0.2~1.0:1.0~0.2である。
ここでモル当量とは、分子内に少なくとも1個以上のアミド基及び少なくとも2個のNCO反応性ヒドロキシル基を有するアミドヒドロキシ化合物(a1)、及び、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のジオール(a2)の場合は、分子内のヒドロキシル基数と使用モル数を乗じた数を指す。また、有機ジイソシアネート化合物(a3)の場合は、分子内のNCO基数と使用モル数を乗じたものを指す。また、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリレート基、及び少なくとも1個のNCO反応性ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸のヒドロキシ基含有アルキルエステル(a4)の場合は使用モル数を指す。
【0028】
(A)成分は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
(A)成分の含有量は、ラジカル重合成分の総質量に対し、30質量%以上が好ましく、32質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。また、60質量%以下が好ましく、58質量%以下がより好ましく、55質量%以下がさらに好ましい。(A)成分の含有量が上記範囲内であると、耐熱性、耐衝撃性及び靱性に優れる。
【0029】
(A)成分に含まれるその他の任意成分としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0030】
<(B)成分>
本発明の(B)成分は、単官能アクリレートである。
(B)成分の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
芳香族ビニル化合物:スチレン、α-メチルスチレン、α-クロロスチレン、ビニルトルエン等;
ビニルエステル化合物:酢酸ビニル、酪酸ビニル、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アジピン酸ジビニル等;
ビニルエーテル化合物:エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等;
アリル化合物:アリルグリシジルエーテル等;
(メタ)アクリルアミド:(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等;
モノ(メタ)アクリレート:(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸モルフォリル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル等。
(B)成分としては、耐熱性が高いという観点から、これらの中でも、芳香族ビニル化合物、ビニルエステル化合物、(メタ)アクリルアミド、モノ(メタ)アクリレートが好ましく、ビニルエステル化合物、(メタ)アクリルアミド、モノ(メタ)アクリレートがより好ましく、(メタ)アクリルアミド、モノ(メタ)アクリレートがさらに好ましく、(メタ)アクリルアミドが最も好ましい。
【0031】
(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(B)成分の含有量は、ラジカル重合成分の総質量、つまり本発明の(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、30質量%以上が好ましく、32質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。また、70質量%以下が好ましく、68質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましい。
(B)成分の含有量が上記範囲内であると、耐熱性、耐衝撃性及び靱性に優れる。
【0032】
<(C)成分>
本発明の(C)成分は、(SiO4/2)で表されるQ単位を必須とし、ケイ素に結合した(メタ)アクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンである。
【0033】
(オルガノポリシロキサンの構造)
(一般式で表す構造)
本発明で用いられるオルガノポリシロキサンは、以下の式[1]で示される。
(RSiO1/2M1(RSiO1/2M2(RSiO2/2D1(RSiO2/2D2(R10SiO3/2T1(RSiO3/2T2(SiO4/2(O1/211Y1(O1/2Y2 ・・・[1]
【0034】
ここで、上記式[1]中、R~R、R~R10は独立して有機官能基、反応性官能基、及び水素原子から選択される基である。また、R~R、R、R、R10は(メタ)アクリロイル基を含まず、Rは(メタ)アクリロイル基を含む有機基であり、同一でも異なっていてもよく、R11は、(メタ)アクリロイル基を含まず、炭素数1~20の有機基、及び水素原子から選択される基である。
また、係数M1、D1、T1、Qは、それぞれ0以上0.6未満であり、M1+M2>0、T1+T2+Q>0、M2+D2+T2>0.25、M1+M2+D1+D2+T1+T2+Q=1であり、係数Y1およびY2は、0又は正の値である。
【0035】
以下、式[1]の説明を行う。
式[1]において、係数のM1、M2は、ケイ素原子に結合した酸素原子が一つである、いわゆるM単位の割合を示す。同様にD1、D2はケイ素原子に結合した酸素原子が二つであるD単位の割合を示し、T1、T2はケイ素原子に結合した酸素原子が三つであるT単位の割合を示し、Qはケイ素原子に酸素原子が4つ結合しているQ単位の割合を示す。
またM2、D2、T2はケイ素原子にR、すなわち(メタ)アクリロイル基を含む有機基が結合しているM単位、D単位、T単位の割合をそれぞれ示す。
そしてM1+M2>0は、M単位を必須とすることを意味する。
T1+T2+Q>0は、T単位またはQ単位を必須とすることを意味する。
そしてM2+D2+T2>0.25とM1+M2+D1+D2+T1+T2+Q=1は、ケイ素原子にRすなわち(メタ)アクリロイル基を含む有機基が結合しているM単位、D単位、T単位の割合が、M単位、D単位、T単位、Q単位の全体に対し、25mol%を超えることを意味する。
またY1は、ケイ素に結合したアルコキシ基、又は、シラノール基の含有量であることを意味する。
Y2は、ケイ素に結合した(メタ)アクリロイル基を含む有機基の含有量を意味する。
【0036】
本発明の効果の一つである硬化物の耐熱性と耐衝撃性を向上させるためには、(メタ)アクリロイル基を有する単位の割合であるM2+D2+T2が0.25を超えるものであり、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上であり、さらに好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.6以上である。また、(メタ)アクリロイル基の含有量を高める観点、及び、液の保存安定性を高める観点から、M単位またはT単位に(メタ)アクリロイル基が存在することが好ましいため、M2+T2≧0.4であることも好ましく、より好ましくはM2+T2が0.5以上、さらに好ましくは0.6以上である。また、M2+D2+T2またはM2+T2をこれらの範囲とすることで、他の樹脂との相溶性が向上する点でも好ましい。
【0037】
また、Rを有さないM単位の割合であるM1も存在していること、つまりM1>0であることが好ましい。その理由は、オルガノポリシロキサンのアルコキシ基及びシラノール基をM単位で置換することで、オルガノポリシロキサンの保存安定性を改善し、粘度を低粘度にするためであるが、Rのような嵩高い基が修飾されたオルガノポリシロキサンにおいては、アルコキシ基及びシラノール基をM単位によって置換する際、立体障害の少ないM単位がケイ素原子に近づきやすく、Rを有さないM単位が置換に有利である。立体障害の観点からは、RからRは、特にメチル基や水素原子が好ましく、保存安定性の観点から、メチル基が最も好ましい。置換量については、保存安定性の観点から、好ましくは係数M1が0.09以上であり、また、通常0.6以下であり、0.5以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましい。
【0038】
また本発明は、(メタ)アクリロイル基の含有量を高める観点、及び、液の保存安定性を高める観点から、好ましくはMQレジン、MTQレジン、MTレジンであることが好ましく、D単位はこれらのレジンに適度な柔軟性を付与するために組み込むこともできる。
耐衝撃性の高い材とするためには、D1≦0.1であることが好ましく、より好ましくはD1≦0.05である。
【0039】
Q単位はケイ素が最も酸化された形態であり、オルガノポリシロキサンの構造に含まれることで、耐熱性を高くすることができる。したがって、Q単位を構造に有するMQレジン、MTQレジンが好ましく、Q単位の含有量としては、好ましくは係数Qが0より大きく、好ましくは0.04以上であり、上限としては通常0.6以下であり、Q単位が多い場合、固体あるいは粘度が高くなり、ハンドリング性が低下するため、より好ましくは0.4以下である。
【0040】
また、(O1/211)は、ケイ素に結合したアルコキシ基、又は、シラノール基であり、それぞれオルガノポリシロキサンの粘度を制御することができ、成形に適した粘度に調整できる。シラノール基は粘度を増加させる効果があり、シラノール基をアルコキシ基とすることで粘度を低下させる効果がある。
係数Y1は、0又は正の値である。係数Y1の範囲は、成形に必要な粘度調整の観点から通常0以上であり、0.01以上であることが好ましく、保存安定性や硬化収縮の観点から、通常0.25以下であり、0.2以下が好ましく、より好ましくは0.1以下である。
【0041】
係数Y2は、ケイ素に酸素原子を介して結合した(メタ)アクリロイル基を含む有機基の含有量であり、屈折率及びアッベ数の増加に寄与するため、オルガノポリシロキサンの構造に組み込むことができる。M2+D2+T2>0.25のかわりにY2>0.25とすることで、他の樹脂との相溶性に優れる。すなわち、本発明の別の形態として、式[1]において、M2+D2+T2>0.25の要件をY2>0.25で代替する形態であってよい。但し、(メタ)アクリロイルオキシ基がケイ素についた化合物は水により加水分解し、脱離しやすいため、吸水率が高くなることがあり、水分の影響を受けにくい方法で使用することが好ましい。
すなわち、(メタ)アクリロイルオキシ修飾のQレジン、Tレジン、MQレジン、MTレジン、MTQレジン、および、それらとD単位からなるオルガノポリシロキサンとすることができる。
【0042】
(R-R11について)
次に置換基の説明を行う。
本発明において、Rは(メタ)アクリロイル基で置換された有機基である。好ましいものとしては、下記式[2]、[3]、[4]、及び、[5]で表される群から選択された1種又は2種以上の官能基を1分子中に有するものだが、より好ましくは、アクリロイルオキシプロピル基、アクリロイルオキシオクチル基、メタクリロイルオキシプロピル基、メタクリロイルオキシオクチル基であり、その中でもアクリロイルオキシプロピル基、メタクリロイルオキシプロピル基が好ましい。
【0043】
【化2】
【0044】
ただし、式[3]及び[5]中、Xは、2価の有機官能基であり、分岐構造、および/又は、環状構造を含んでいてもよい。また、Xは、炭素、及び、水素の他に、酸素、窒素、リン、硫黄、及びハロゲンからなる群から選択されるいずれかを含んでいてもよい。また、ケイ素原子とXが結合している場合、Xの末端でありケイ素原子と直結する原子は炭素原子である。また、ケイ素原子に直結した酸素原子とXが結合している場合、Xの末端であり酸素原子と直結する原子は炭素原子である。例えば、炭素数1~20の二価の分岐構造や環状構造を含んでいてもよい炭化水素基や、ポリアルキレングリコールなどが好適に用いられる。
【0045】
なお、本発明においては、M単位、D単位、T単位を構成するそれぞれのユニットは、すべて同一であることを要しない。つまり割合がM1であるユニット(RSiO1/2)の中で、たとえばあるRは水素原子であり、あるRはメチル基であるような、異なった構造をもっていてもよい。これは他のR、Xにも共通である。
【0046】
また、RからR、RからR10はそれぞれ独立して有機官能基、及び、反応性官能基、及び、水素原子から選択される基である。
上記反応性官能基としては、アルケニル基、SiH基、環状エーテル基、アルコールなどの水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基等が好適である。但し、RからR、R、R、R10は(メタ)アクリロイル基を含まない。これは、例えば、RからRが(メタ)アクリロイル基を含む有機基である場合、M1割合部分とM2割合部分の区別がつかなくなるため、このように規定している。
一方、M2割合部分にあるR、Rは、(メタ)アクリロイル基を含む有機基であってもこのような問題は生じないため、この制限を受けることはない。D1割合部分、T1割合部分についても同様の理由で、R、R、R10は(メタ)アクリロイル基を含まない。
【0047】
からR、RからR10は、それぞれ独立してメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基、カルバゾール基、フェネチレン基などの芳香族性官能基、フラニル基、ポリアルキレングリコール基などのエーテル基であることが好ましく、より好ましくはメチル基、フェニル基又は水素原子である。
11は、(メタ)アクリロイル基を含まず、炭素数1~20の有機基、及び水素原子から選択される基を表す。このうち好ましくはメチル基である。
【0048】
(オルガノポリシロキサンのその他の特性)
本実施形態のオルガノポリシロキサンの好ましい特性としては、25℃(常圧下)で液状であることが好ましい。常圧とは大気圧に等しい圧力をいい、ほぼ一気圧である。また、液体とは流動性のある状態をいう。25℃における粘度としては、ハンドリングの観点からE型粘度計により測定した値が、10~100,000mPa・sであることが好ましい。通常25℃において5mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上、より好ましくは100mPa・s以上であり、また通常20000mPa・s以下、好ましくは2000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下である。粘度をこの範囲にすることで、重合開始剤やアクリル樹脂などの他の成分と混和させやすく、適度な流動性を担保した硬化性樹脂組成物となるため、加工が容易になる。
【0049】
また、液状であるためには、ゲルパーミエーションカラムクロマトグラフィー(GPC)測定において、ポリスチレン換算した数平均分子量が通常10,000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは2500以下であることが好ましい。さらに同じ液状でもより好ましくは、低分子量成分が少ないことが好ましく、数平均分子量が通常600以上、好ましくは800以上、より好ましくは900以上、特に1,000以上であることが好ましい。低分子量成分が多いと液状になりやすいが、硬化した際の弾性率が低くなることがあり、さらに、温度が変化した際、弾性率が著しく変化することがあり、上述の範囲にすることで光学部材が温度変化で劣化しにくくなる。
【0050】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)は、下記条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として示すことができる。試料はテトラヒドロフランで約10質量%に希釈した液を用い、測定前に0.45μmのフィルターにて濾過したものを用いる。
・装置:TOSOH HLC-8220
・GPCカラム:KF-G、KF-401HQ、KF-402HQ、KF-402.5HQ(昭和電工(株)製)
・カラム温度:40℃
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流量:0.3mL/分
【0051】
この低分子量成分の含有量を確認する手法として、圧力0.15Torrの排気能力を有する真空ポンプにて減圧下、内温110℃で2時間加熱した際のオルガノポリシロキサンの質量減少を測定する方法があり、低沸点成分の含有量は5質量%以下であることが好ましい。
より具体的には、以下の手順で測定することができる。H-NMRを測定し、有機溶媒等、オルガノポリシロキサン以外の成分の質量を算出する。1Lナス型フラスコに16×3.5mmオーバル型PTFE回転子を入れ、それらの重さを測定する。その後、オルガノポリシロキサンを該ナス型フラスコに入れ、質量を測定する。この際、オルガノポリシロキサンの仕込み量は200gが好ましい。オイルバスにてナス型フラスコを加熱し、マグネチックスターラにより回転子を回して液面が流動する程度に撹拌し、オイル式真空ポンプにて減圧する。この際の圧力は、0.2~0.1torrが好ましく、マノメータにより、圧力が0.15torrとなるように減圧することが好ましい。2時間後、室温まで冷却し、窒素ガスにより大気圧に戻し、ナス型フラスコに付着したオイルを十分にふき取り、ナス型フラスコに入った状態のオルガノポリシロキサンの質量を測定し、先に測定していたナス型フラスコと回転子の重さを差引き、該操作により揮発した質量を算出する。該操作後のオルガノポリシロキサンのH-NMRを測定し、有機溶媒等、オルガノポリシロキサン以外の成分の質量を算出する。揮発した質量からオルガノポリシロキサン以外の成分の量を差引き、オルガノポリシロキサンの揮発量を算出する。オルガノポリシロキサンの質量減少は仕込み量を200gとした際、10g以下であることが好ましい。
なお、オルガノポリシロキサン以外の成分が10質量%以上含まれている場合、オルガノポリシロキサン以外の成分の揮発により、内温が下がり、オルガノポリシロキサンが揮発しにくくなるため、オルガノポリシロキサン以外の成分が10質量%以上含有している場合は、温度60℃に加熱し、圧力10torrにて減圧して、オルガノポリシロキサン以外の成分を1質量%未満に除去した上で実施することが好ましい。
【0052】
(オルガノポリシロキサンの製造方法)
本実施形態のオルガノポリシロキサンは、汎用的に生産されているケイ素原料を加水分解縮合することで得ることができるが、製造に用いることができる原料を以下に例示する。
M単位源の一例として、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルシラノール、ジメチルメトキシシラン、テトラメチルジシロキサン、テトラメチルジシラザン、ジメチルビニルシラノール、ジメチルビニルメトキシシラン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3
-ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルメタクリロイルオキシプロピルシラノール、ジメチルメタクリロイルオキシプロピルメトキシシラン、1,3-ジメタクリロイルオキシプロピルテトラメチルジシロキサン、ジメチルグリシジルオキシプロピルシラノール、ジメチルグリシジルオキシプロピルメトキシシラン、1,3-ジグリシジルオキシプロ
ピルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシラザン、ジメチルフェニルシラノール、ジメチルメトキシフェニルシラン、1,4-ビス(ジメチルメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジメチルエトキシシリル)ベンゼン、及び、上記列挙した化合物中、シラノール性水酸基もしくはアルコキシ基を含有するものについて、シラノール性水酸基もしくはアルコキシ基の代わりにハロゲンが結合した化合物群等を用いることができ、特に、ヘキサメチルジシロキサンを好適に用いることができる。また、屈折率を上昇させる目的で芳香族化合物を含有する上記化合物を用いる事も好ましい。
【0053】
D単位源の一例として、ジメチルジシラノール、ジメチルジメトキシシラン、テトラメチルジシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマー、メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、メチルジメトキシフェニルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、メチルフェニルジシラノール、1,4-ビス(メチルジメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(メチルジエトキシシリル)ベンゼン、及び、上記列挙した化合物のシラノール性水酸基もしくはアルコキシ基の代わりにハロゲンが結合した化合物群、及び、これらの重合物等を用いることができ、特に、ジメチルジメトキシシランを好適に用いることができる。また、屈折率を上昇させる目的で芳香族化合物を含有する上記化合物を用いる事も好ましい。
【0054】
T単位源の一例として、トリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等のC1~C20の長鎖アルコキシ基が修飾されたトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、8-メクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、8-アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、8-グリシジルオキシオクチルトリメトキシシラン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、及び、これらのメトキシシラン化合物以外にも、エトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、シラノール化合物、クロロシラン化合物、ヒドロシリルシラン化合物、及び、これらの重合物を用いることができ、特に、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、8-メクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、8-アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランを好適に用いることができる。
弾性率を向上させる目的では、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを含有することが好ましい。弾性率の向上に加え、硬化性を高め、アッベ数を向上させる目的では、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。破断強度を向上させる目的では、8-メクリロイルオキシオクチルトリメトキシシランを含有することが好ましい。破断強度の向上に加え、硬化性を高め、アッベ数を向上させる目的では、8-アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシランが好ましい。熱衝撃によるクラックを抑制するため、弾性率を低下させる場合には、アッベ数を高値に維持することが可能なデシルトリメトキシシラン、或いは、炭素数1~20の直鎖有機基が修飾されたトリアルコキシシランを含有することが好ましい。アルコキシシランの種類としては、他の成分との反応速度差や反応系中の溶媒への溶解性に合わせて選択することが好ましい。メトキシシラン類は、反応速度が速く、高極性溶媒との組み合わせが好ましい。また、系中で発生したメタノールを分離する目的でヘキサン等の非極性溶媒を用いることも好ましい。エトキシシラン類は、反応速度はメトキシシラン類より劣るが、低極性溶媒とも相溶性が良いため、特にトルエン等の低極性溶媒の反応で用いることが好ましい。また、低極性の成分と混合する際にもエトキシシラン類を用いることが好ましい。また、屈折率を上昇させる目的で芳香族化合物を含有する上記化合物を用いる事も好ましい。これらT単位は1種類のみを他のM単位、D単位、Q単位へ含有させてもよく、2種類以上を含有させてもよい。弾性率を調整する目的では、8-メクリロイルオキシオクチルトリメトキシシランとデシルトリメトキシシランを含有することが好ましい。
【0055】
Q単位源の一例としては、テトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テトラフェニルオキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリエトキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシトリブトキシシラン、モノメトキシトリペンチルオキシシラン、モノメトキシトリフェニルオキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、トリプロポキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノブトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、トリエトキシモノプロポキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、トリブトキシモノプロポキシシラン、ジメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジブトキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジブトキシモノエトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシモノエトキシモノプロポキシモノブトキシシランなどのアルコキシシラン、またはアリールオキシシラン、テトラメトキシシランオリゴマーとして、三菱化学株式会社製メチルシリケートMS51、MS56、MS57、MS60、テトラエトキシシランオリゴマーとして多摩化学株式会社製エチルシリケートオリゴマーES40、ES48などを用いることができ、特に、メチルシリケートMS51が好適である。
【0056】
これらのケイ素原料を加水分解縮合する触媒としては、酸触媒、塩基触媒、或いは、無機塩を使用することができ、特に、酸触媒を好適に用いることができる。
酸触媒の一例としては、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、メタクリル酸、アクリル酸などを用いることができ、特に、塩酸を好適に用いることができる。
塩基触媒の一例としては、アンモニア、ヘキサメチルジシラザン、トリエチルアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ジアザビシクロウンデセン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどを用いることができ、特に、水酸化カリウムが好適である。
無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウムなどを用いることができ、特に塩化ナトリウムが好適である。
【0057】
加水分解縮合反応時に使用する溶媒の一例としては、テトラヒドロフラン、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ヘキサン、ヘプタンなどを用いることができ、特に、テトラヒドロフランが好ましく、生成物の溶解性次第では2種類以上の溶媒を用いてもよく、特に、トルエン及びメタノールの混合液、又は、テトラヒドロフラン及びメタノールの混合液が好ましい。
【0058】
MTレジンの製造方法としては、各MT単位原料を始めから一緒に混合し、触媒により加水分解縮合するM単位の同時添加でもよく、T単位原料を予め加水分解縮合した後に、M単位原料を添加し、加水分解縮合するM単位の後添加でもよいが、低分子成分の生成量を抑制する観点から、M単位の後添加が好ましい。
【0059】
加水分解縮合せずに残存したアルコキシ基やシラノール基については、必要に応じて、有機酸あるいはアルコールにより置換してもよく、有機酸の一例としては、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸を用いることができ、アルコールの一例としては、(メタ)アクリロイル基を含まない基として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、及び、それらの構造異性体を用いることができ、(メタ)アクリロイル基を含む基としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを用いることができ、安定性の観点から、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0060】
MTQレジンの製造方法としては、各MTQ単位原料を始めから一緒に混合し、触媒により加水分解縮合するM単位の同時添加でもよく、TQ単位原料を予め加水分解縮合した後に、M単位原料を添加し、加水分解縮合するM単位の後添加でもよく、T単位原料とM単位原料とを予め加水分解縮合し、Q単位原料とM単位原料についても予め加水分解縮合しておき、それら加水分解縮合物同士を混合して、更に加水分解縮合する多段階合成を行ってもよいが、低分子成分の生成量を抑制する観点では、M単位の後添加、あるいは、多段階合成が好ましい。
【0061】
加水分解縮合せずに残存したアルコキシ基やシラノール基については、必要に応じて、有機酸あるいはアルコールにより置換してもよい。有機酸の一例としては、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸を用いることができる。アルコールの一例としては、(メタ)アクリロイル基を含まない基として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、及び、それらの構造異性体を用いることができる。(メタ)アクリロイル基を含む基としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを用いることができる。安定性の観点から、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0062】
MQレジンの製造方法としては、各MQ単位原料を始めから一緒に混合し、触媒により加水分解縮合するM単位の同時添加でもよく、Q単位原料を予め加水分解縮合した後に、M単位原料を添加し、加水分解縮合するM単位の後添加でもよいが、低分子成分の生成量を抑制する観点では、後添加が好ましく、さらに好ましくは、予め加水分解縮合がされたシリケートを原料として用いることである。
【0063】
加水分解縮合せずに残存したアルコキシ基やシラノール基については、必要に応じて、有機酸あるいはアルコールにより置換してもよい。有機酸の一例としては、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸を用いることができる。アルコールの一例としては、(メタ)アクリロイル基を含まない基として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、及び、それらの構造異性体を用いることができる。(メタ)アクリロイル基を含む基としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを用いることができる。安定性の観点から、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0064】
また、M単位にヒドロシリル基を有する原料を用いてMQレジンを加水分解縮合した後、Karstedt触媒等の白金触媒により、ビニル化合物をヒドロシリル化により修飾することも好ましい。
【0065】
Qレジンの製造方法としては、有機酸あるいはアルコールと触媒を混合し、Q単位原料の末端アルコキシ基を有機酸あるいはアルコールと置換することで合成することができる。
有機酸の一例としては、アクリル酸、メタクリル酸を用いることができ、アルコールの一例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを用いることができ、安定性の観点から、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0066】
また、これらMTレジン、MTQレジン、MQレジン、QレジンをD単位原料と加水分解縮合することで、靱性を付与することができる。
また、これらMTレジン、MTQレジン、MQレジン、Qレジンは、籠型シルセスキオキサンのような剛直な構造である場合、硬化物は硬く、脆い性状となり、ハンダリフロー工程時に応力緩和しにくく、硬化物にヒビが入ることがあるため、籠型構造でないことが好ましい。籠型構造である場合、赤外吸収スペクトル分析において、波数1070~1150cm-1の領域にSi-O伸縮振動の吸収ピークを有するため、上記波数領域にSi-O伸縮振動の最大吸収波数を有さないことで、籠型シルセスキオキサンのような極端に硬くなる構造を避けることが出来る。なお、波数1070~1150cm-1の領域に、Si-O以外の有機分子由来の特性吸収帯が存在してもよい。有機分子由来の特性吸収帯の例としては、ヒドロキシル基のC-O由来、エステルのC-O-C由来、酸無水物のC-O-C由来、エーテルのC-O-C由来、アミンのC-N由来、スルホン酸、スルホキシド、フッ素化合物C-F由来、リン化合物のP=O又はP-O由来、無機塩SO 2-又はClO に起因するものが、吸収強度の高い構造として知られている。これらとSi-O伸縮振動との帰属を取り違えないように注意しなければならない。
【0067】
加水分解に使用する水の物質量としては、MDTQ単位に含まれるアルコキシ基の総物質量に対して、0.5当量以上が好ましく、0.8当量以上がより好ましく、1.1当量以上がさらに好ましい。水の種類の一例としては、市販の塩酸等に含まれる水でもよく、蒸留やイオン交換樹脂により精製した水を用いてもよい。
本実施形態のオルガノポリシロキサンとして、好ましい構造としては、MTレジン、あるいは、MTQレジン、MQレジンであり、特に、MTQレジンが好ましい。
【0068】
<(D)成分>
(D)成分は、光ラジカル重合開始剤である。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
チオキサントン類:ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4-フェニルベンゾフェノン、t-ブチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等;
アセトフェノン類:ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン等;
ベンゾインエーテル類:ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等;
アシルホスフィンオキサイド類:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等;
その他の化合物:メチルベンゾイルホルメート、1,7-ビスアクリジニルヘプタン、9-フェニルアクリジンなどが挙げられる。
【0069】
これらの中でも、チオキサントン類、アセトフェノン類、ベンゾインエーテル類、アシルホスフィンオキサイド類が好ましく、チオキサントン類、アセトフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類がより好ましく、アセトフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類がさらに好ましい。
これら光ラジカル重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
(D)成分の含有量は、ラジカル重合成分、本発明の(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.01~5質量部が好ましく、0.05~4質量部がより好ましい。(D)成分の含有量が上記下限値以上であれば、硬化性に優れる。また、(D)成分の含有量が上記上限値以下であれば、光造形用樹脂組成物より得られる光造形物の着色性に優れる。
【0071】
<その他の成分>
その他の任意成分としては、例えば、光増感剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光剤、連鎖移動剤等の添加剤;水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合物等の溶剤などが挙げられる。
【0072】
<光造形物の特性>
(荷重たわみ温度(HDT))
本発明の光造形用樹脂組成物によって造形される造形物の荷重たわみ温度(HDT)の下限は、特に限定されないが、耐熱性の観点から、80℃以上が好ましく、82℃以上がより好ましく、84℃以上がさらに好ましく、86℃以上が特に好ましい。
【0073】
(アイゾット衝撃強度(Izod))
本発明の光造形用樹脂組成物によって造形される造形物のアイゾット衝撃強度(Izod)の下限は、特に限定されないが、耐衝撃性の観点から、45J/m以上が好ましく、50J/m以上がより好ましく、52J/m以上がさらに好ましく、54J/m以上が特に好ましい。
また、上限は、特に限定されないが、造形性の観点から、70J/m以上が好ましく、60J/m以上がより好ましい。
【0074】
(降伏強度)
本発明の光造形用樹脂組成物によって造形される造形物の降伏強度の下限は、特に限定されないが、造形性の観点から25MPa以上が好ましく、30MPa以上がより好ましく、35MPa以上がさらに好ましい。
また、上限は、特に限定されないが、通常100MPa以下である。
【0075】
(破断伸度)
本発明の光造形用樹脂組成物によって造形される造形物の破断伸度の下限は、特に限定されないが、造形性の観点から50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましく、95%以上が最も好ましい。
また、上限は、特に限定されないが、通常200%以下である。
【0076】
(貯蔵弾性率)
本発明の光造形用樹脂組成物によって造形される造形物の貯蔵弾性率の下限は、特に限定されないが、造形性の観点から900MPa以上が好ましく、1000MPa以上がより好ましく、1100MPa以上がさらに好ましく、1300MPa以上が特に好ましく、1400MPa以上が最も好ましい。
また、上限は、特に限定されないが、通常2000MPa以下である。
【0077】
<光造形用樹脂組成物の製造方法>
本発明の光造形用樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と、必要に応じて任意成分とを混合することにより得られる。
【0078】
<光造形物>
本発明の光造形物は、上述した本発明の光造形用樹脂組成物を光硬化させてなるものである。
なお、製造する光造形物の構造、形状、大きさ等は特に制限されるものではなく、用途に応じて適宜設計することができる。
【0079】
光造形物の製造方法としては、公知の光造形法(光学的立体造形法)を採用することができるが、例えば、本発明の光造形用樹脂組成物からなる薄膜を形成する工程と、該薄膜に対して光エネルギーを選択的に照射し硬化させる工程とを複数回繰り返すことにより、硬化した薄膜を複数積層させ、所望の形状の光造形物を製造する光学的立体造形法が好適である。
【0080】
なお、光学的立体造形法により製造された光造形物をそのまま製品としてもよいし、さらに、光照射や加熱によるポストキュアなどを行い、その機械的特性や形状安定性などを向上させたものを製品としてもよい。
【0081】
薄膜を硬化させるために照射する光線としては、Arレーザー、He-Cdレーザー、He-Neレーザー、ArFエキシマレーザー、CO2レーザー、Nd:YAGレーザー、半導体レーザー、Dyeレーザー等から出射されるレーザー光線;キセノンランプ、メタルハライドランプ、水銀灯、蛍光灯等から出射される紫外線等の活性エネルギー光線などが好適である。これらの中でも特にレーザー光線が好適である。レーザー光線によれば、照射エネルギーを高くすることができ、硬化時間を短縮化できることに加えて、ビーム形状を小さくすることができるので、1回の光照射面積を小さくすることができ、造形精度の高い光造形物を得ることができる。
【0082】
以上説明した本発明の光造形物は、本発明の光造形用樹脂組成物を光硬化させてなるものであり、難燃性に優れる。
本発明の光造形物は、設計の途中で外観デザインを検証するためのモデル、部品の機能性をチェックするためのモデル、実部品として機械製品等に組み込み、性能をチェックするためのモデル、樹脂型、金型を制作するためのベースモデル、試作金型用の直接型等の作製などの用途に適用することができる。より具体的には、精密部品、電気・電子部品、家具、建築構造物、自動車用部品、各種容器類、鋳物、金型、母型などのためのモデルや加工用モデルなどの製作等の用途に適用することができる。特に、繰り返し疲労試験用部品の試作、例えば家電製品の嵌合部分の設計、複雑な構造の機械的強度解析企用部品の製造などに極めて有用である。
【実施例0083】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、それらは本発明の説明を目的とするものであって、本発明をこれらの態様に限定することを意図したものではない。
【0084】
<実施例1~3、比較例1~3>
表1に示す各成分を、表2に示す配合組成で混合し、光造形用樹脂組成物を得た。
ガラス板上に、シリコーンシート枠(内寸127×13mm、厚み3mm)を固定し、得られた光造形用樹脂組成物を流し込んだ。次いで、もう一枚のガラス板でカバーをし、FUSIONランプで1000mJ/cmの照射量を当て、光造形物を得た。これを荷重たわみ温度、アイゾット衝撃強度試験の試験片とする。
ガラス板上に得られた光造形用樹脂組成物を流し込んだ。次いで、もう一枚のガラス板でカバーをし、FUSIONランプで1000mJ/cmの照射量を当て、光造形物を得た。これを引張試験の試験片とする。
得られた試験片について、以下のようにして試験片の荷重たわみ温度、アイゾット衝撃強度、引張試験を評価した。結果を表3に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
(ウレタンアクリレートの合成)
(A)成分として使用したウレタンアクリレートは、以下の手順で合成した。反応の終点は、残存イソシアネート当量が1%未満となった時点とした。
(1)攪拌機、温度調節器、温度計、及び凝縮器を備えた内容積5Lの三つ口フラスコに、(a3)成分としてジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート1060g(4.0モル当量)、及び添加物としてジブチル錫ジラウレート0.7gを仕込み、ウォーターバスで内温が70℃になるように加熱した。
(2)別途、(a1)成分として4-ヒドロキシ-N-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルブタナミド193g(1.1モル当量)と、(a2)成分としてポリブチレングリコール(繰り返し単位数:12、平均分子量:865)1200g(1.4モル当量)とを均一に混合溶解させた液を、側管付きの滴下ロートに仕込み、これを上記(1)のフラスコ中の内容物に対して滴下した。この際、上記(1)のフラスコ中の内容物を攪拌しつつ、フラスコ内温を65~75℃に保持し、4時間かけて等速滴下した。さらに、滴下終了後、同温度で2時間攪拌して反応させた。
(3)別途、(a4)成分として2-ヒドロキシエチルアクリレート522g(4.5モル当量)と添加物としてハイドロキノンモノメチルエーテル2.5gとを均一に混合溶解させた液を、別の滴下ロートに仕込んだ。この内容物を、(2)のフラスコ内容物を75℃まで降温させた後、フラスコ内温を55~65℃に保持しながら2時間かけて等速滴下し、さらにフラスコ内容物の温度を75~85℃に保持し、4時間反応させることで、無色透明のウレタンアクリレートを得た。
【0088】
(オルガノポリシロキサンの合成方法)
(C)成分として使用したオルガノポリシロキサンは以下の手順で合成した。
オルガノポリシロキサン原料として、三菱ケミカル株式会社製メチルシリケートMS51を52g、信越化学工業株式会社製3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランKBM503を1300g、及び溶媒として、トルエンを749g、メタノールを749g、触媒および水として、1N塩酸345gとメタノール345gの混合物を使用し、15℃から40℃を維持しながら加水分解縮合した。その後、Nusil Technology社製ヘキサメチルジシロキサンを582g添加して攪拌した後、1N水酸化カリウム水溶液を380g添加した。次いで、脱塩水により水酸化カリウムを除去した後、蒸留操作により溶媒及び水分を除去し、その後、濾過することによって目的の液状オルガノポリシロキサンを1140g得た。
【0089】
得られたオルガノポリシロキサンをガスクロマトグラフィーにより分析し、トルエン及びメタノール、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランのピークが検出されないことを確認した。得られたオルガノポリシロキサンは、H-NMRおよび29Si-NMR、GPC、E型粘度計、及び、屈折率計により物性の測定を実施した。得られた物性はそれぞれ、GPC測定により、数平均分子量(Mn)は1,315、重量平均分子量(Mw)は1,430、分散度(Mw/Mn)は1.087であり、H-NMR測定および29H-NMR測定により、メタクリロイル基の含有量は4.29mmol/g、トリメチルシロキシ基の含有量は2.72mmol/g、メトキシ基の含有量は0.25mmol/g、シラノール基の含有量は0.42mmol/gであり、M単位:T単位:Q単位=37.4mol%:56.8mol%:5.9mol%であり、E型粘度計での測定により、粘度349.9mPa・sであり、屈折率計による測定により、屈折率1.4583であった。
さらに、IR測定によりSiO由来の最大吸収波数は1047cm-1であり、主構造は籠型でないことが示唆された。本手法で合成したオルガノポリシロキサンは、籠型構造でない、或いは、籠型構造のオルガノポリシロキサンが存在してもIR測定で籠型の特徴のピークが出ない程度の少量であることが分かった。
【0090】
(オルガノポリシロキサンの物性の測定方法)
1.H-NMRの測定方法
測定対象のオルガノポリシロキサンを50mg秤量し、内部標準として15mgのトルエンを添加した。さらに重クロロホルムを入れて1gに溶解し、NMR試料管へ入れ、400MHz H-NMR(日本電子株式会社製AL-400)にてRelaxation Delayを20秒で測定した。各成分のシグナル強度と内部標準のトルエンのシグナル強度との比率、及び、秤量値により、官能基含有量を見積もった。
【0091】
2.29Si-NMRの測定方法
・装置:日本電子株式会社製JNM-ECS400、TUNABLE(10):Siフリー、AT10プローブ
・測定条件:Relaxation Delay/15秒、SCAN回数/1024回、測定モード/非ゲーテッドデカップルパルス法(NNE)、スピン/なし、測定温度/25℃
・試料の調製:重クロロホルムにTris(2,4-pentanedionato)chromiumIIIが0.5質量%になるよう添加し、29Si-NMR測定用溶媒を得た。測定対象のオルガノポリシロキサンを1.5g秤量し、上記29Si-NMR測定用溶媒を2.5ml入れて溶解し、10mmΦテフロン(登録商標)製NMR試料管へ入れた。
・構成単位の算出:ケイ素の各単位のシグナル強度を測定し、上記H-NMRで測定したシグナル強度との比率、及び、官能基含有量との比率から、ケイ素単位の構成比率を算出した。
【0092】
3.分子量の測定
各オルガノポリシロキサンの数平均分子量Mnおよび重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として示した。試料はテトラヒドロフランで約10質量%に希釈した液を用い、測定前に0.45μmの目開きのフィルターにて濾過したものを用いた。
・装置:TOSOH HLC-8220 GPC
・カラム:KF‐G、KF‐401HQ、KF‐402HQ、KF‐402.5HQ(昭和電工(株)製)
・カラム温度:40℃
・溶離液:テトラヒドロフラン、流量0.3mL/分
【0093】
4.屈折率の測定
(株)アタゴ製、Refractometer RX-7000αを用いて、20℃にてナトリウムD線の波長での屈折率を測定した。
【0094】
5.粘度の測定
ブルックフィールド社製RV型粘度計「RVDV-2 +Pro」を用いて、温度25℃における値を測定した。
【0095】
6.ガスクロマトグラフィーの測定方法
・装置:(株)島津製作所製、ガスクロマトグラフGC-14B
・カラム:Agilent Technologies株式会社製、DB-5
・injection温度:290℃
・昇温方法:50℃から290℃へ10℃/分で昇温
【0096】
7.赤外吸収スペクトル測定方法(IR測定)
・フーリエ変換赤外分光法 Fourier Transform Infrared Spectroscopy
・装置:Thermo Fisher Scientific社製 Nic-Plan
・分解能:4cm-1
・積算回数:64回
ATR法(Attenuated Total Reflection:全反射測定法)により、オルガノポリシロキサンの極大吸収波数を測定した。
【0097】
(荷重たわみ温度(HDT)の測定方法)
耐熱性の指標として、ASTM D648に準拠して、樹脂成形体の試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ3mm)を作製し、試験片の荷重たわみ温度(以下、「HDT」と示す)(℃)を測定した。
【0098】
(耐熱性の評価)
・AAA:HDTが86℃以上である。
・AA:HDTが83℃以上86℃未満である。
・A:HDTが80℃以上83℃未満である。
・B:HDTが80℃未満である。
【0099】
(アイゾット衝撃強度(Izod)の測定方法)
厚さ6.35±2mmの試験片に切り欠き(ノッチ)を付け、ノッチ付きアイゾッド衝撃試験片を作製し、ASTM D256に準拠してアイゾット衝撃試験を行った。
【0100】
(耐衝撃性の評価)
・AA:アイゾット衝撃試験結果が52.0J/m以上である。
・A:アイゾット衝撃試験結果が45.0J/m以上52.0J/m未満である。
・B:アイゾット衝撃試験結果が38.0J/m以上45.0J/m未満である。
・C:アイゾット衝撃試験結果が38.0J/m未満である。
【0101】
(引張試験)
強度の指標として、厚さ0.3mmのダンベル片を作成し、ISO 527、JIS K7127(引張速度5mm/min、試験片幅5mm、チャック間距離20mm)に準拠して引張試験を行い、降伏強度、破断伸度、弾性率を測定した。
【0102】
(造形性評価)
・AA:降伏強度が30MPa以上であり、破断伸度が90%以上であり、貯蔵弾性率が900MPa以上である。
・A:降伏強度が30MPa以上であり、破断伸度が70%以上90%未満であり、貯蔵弾性率が900MPa以上である。
・B:降伏強度が30MPa未満もしくは、破断伸度が70%未満もしくは貯蔵弾性率が900MPa未満である。
【0103】
(総合評価)
・AAA:評価がBまたはCである項目がない。
・AA:評価がBまたはCである項目がない。
・A:評価がBまたはCである項目がない。
・B:評価がBである項目が1つある。
・C:評価がCである項目が1つある。
【0104】
【表3】