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特開2022-15747新規化合物、光ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合性組成物
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  • 特開-新規化合物、光ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合性組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015747
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】新規化合物、光ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合性組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 251/66 20060101AFI20220114BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
C07C251/66 CSP
C08F2/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118792
(22)【出願日】2020-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119079
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 佐保子
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 萌子
(72)【発明者】
【氏名】佐原 豪
(72)【発明者】
【氏名】平井 良学
【テーマコード(参考)】
4H006
4J011
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB80
4J011QA24
4J011SA65
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J011WA02
4J011WA05
4J011WA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】h線(405nm)領域において高い感度を示す新規な化合物の提供。
【解決手段】例えば下記式で示される化合物。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
(式中、Xは、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルキニル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換のアシルオキシ基、置換もしくは未置換のアルキルスルファニル基、置換もしくは未置換のアリールスルファニル基、置換もしくは未置換のアルキルスルフィニル基、置換もしくは未置換のアリールスルフィニル基、置換もしくは未置換のアルキルスルホニル基、置換もしくは未置換のアリールスルホニル基、置換もしくは未置換のアシル基、置換もしくは未置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは未置換のカルバモイル基、置換もしくは未置換のスルファモイル基又は置換もしくは未置換のアミノ基であり、
Aは、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは未置換のアリールオキシカルボニル基又は置換もしくは未置換のカルバモイル基であり、
1~R5は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルキニル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換のアルキルスルファニル基、置換もしくは未置換のアリールスルファニル基、置換もしくは未置換のアルキルスルフィニル基、置換もしくは未置換のアリールスルフィニル基、置換もしくは未置換のアミノ基又は置換もしくは未置換のアシル基であり、R1~R5のうち隣接する2つの基は一緒になって、環式基を形成していてもよく、
6は、水素原子であり、
7は、水素原子、シアノ基、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルキニル基又は置換もしくは未置換の複素環基である。)
で示される化合物。
【請求項2】
請求項1記載の式(1)で示される化合物からなる光ラジカル重合開始剤。
【請求項3】
請求項2記載の光ラジカル重合開始剤及びラジカル重合性化合物を含む、光ラジカル重合性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、ラジカル重合開始剤及びラジカル重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合性樹脂に光ラジカル重合開始剤を加え、光照射により、硬化させる技術は、生産性、環境保全、エネルギー効率等において優れており、塗料、印刷インキ、接着剤、ソルダーレジストやエッチングレジスト等のプリント配線板用感光材料、バッファーコートや再配線層等の半導体用感光材料、カラーフィルターといった光学材料等の様々な用途に広く用いられている。
【0003】
中でも、ソルダーレジストやエッチングレジスト等のプリント配線板用の感光材料においては、レジスト膜に要求されるパターンの解像性や厚みの観点から、i線(365nm)領域の感度に着目して光ラジカル重合開始剤の開発が進められてきた経緯がある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】大和 真樹著 「光重合開始剤の現状と課題」、日本印刷学会誌、2003年、第40巻、第3号、168~175頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような、フォトリソグラフィー法によるパターン形成では、パターン形成膜の深部における感度不足や現像時のパターン剥離といった不具合を改善するため、光ラジカル重合剤として、深部感光性に優れるh線(405nm)領域に高感度の光ラジカル重合開始剤の開発が希求されている。
本発明者らは、h線(405nm)領域における感度に着目して研究を行い、特定の構造を有する化合物が、h線(405nm)領域において高い感度を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1]式(1):
【化1】
(式中、Xは、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルキニル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換のアシルオキシ基、置換もしくは未置換のアルキルスルファニル基、置換もしくは未置換のアリールスルファニル基、置換もしくは未置換のアルキルスルフィニル基、置換もしくは未置換のアリールスルフィニル基、置換もしくは未置換のアルキルスルホニル基、置換もしくは未置換のアリールスルホニル基、置換もしくは未置換のアシル基、置換もしくは未置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは未置換のカルバモイル基、置換もしくは未置換のスルファモイル基又は置換もしくは未置換のアミノ基であり、
Aは、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは未置換のアリールオキシカルボニル基又は置換もしくは未置換のカルバモイル基であり、
1~R5は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルキニル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換のアルキルスルファニル基、置換もしくは未置換のアリールスルファニル基、置換もしくは未置換のアルキルスルフィニル基、置換もしくは未置換のアリールスルフィニル基、置換もしくは未置換のアミノ基又は置換もしくは未置換のアシル基であり、R1~R5のうち隣接する2つの基は一緒になって、環式基を形成していてもよく、
6は、水素原子であり、
7は、水素原子、シアノ基、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルキニル基又は置換もしくは未置換の複素環基である。)
で示される化合物。
[2]上記[1]の式(1)で示される化合物からなる光ラジカル重合開始剤。
[3]上記[2]の光ラジカル重合開始剤及びラジカル重合性化合物を含む、光ラジカル重合性組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、h線(405nm)領域において高い感度を示す新規な化合物が、当該化合物からなる光ラジカル重合剤、当該光ラジカル重合剤を含む光ラジカル重合性組成物とともに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例における各化合物の吸収スペクトルを表す図である。
図2】実施例における硬化性試験の模式図である。
【0009】
本発明の化合物は、下記式(1)で示される。
【化2】
(式中、Xは、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルキニル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換のアシルオキシ基、置換もしくは未置換のアルキルスルファニル基、置換もしくは未置換のアリールスルファニル基、置換もしくは未置換のアルキルスルフィニル基、置換もしくは未置換のアリールスルフィニル基、置換もしくは未置換のアルキルスルホニル基、置換もしくは未置換のアリールスルホニル基、置換もしくは未置換のアシル基、置換もしくは未置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは未置換のカルバモイル基、置換もしくは未置換のスルファモイル基又は置換もしくは未置換のアミノ基であり、
Aは、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは未置換のアリールオキシカルボニル基又は置換もしくは未置換のカルバモイル基であり、
1~R5は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルキニル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換のアルキルスルファニル基、置換もしくは未置換のアリールスルファニル基、置換もしくは未置換のアルキルスルフィニル基、置換もしくは未置換のアリールスルフィニル基、置換もしくは未置換のアミノ基又は置換もしくは未置換のアシル基であり、R1~R5のうち隣接する2つの基は一緒になって、環式基を形成していてもよく、
6は、水素原子であり、
7は、水素原子、シアノ基、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルキニル基又は置換もしくは未置換の複素環基である。)
【0010】
ここで、置換もしくは未置換のアルキル基としては、炭素原子数1~18のアルキル基が好ましく、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、tert-オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4-デシルシクロヘキシル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
置換もしくは未置換のアリール基置としては、炭素原子数6~18の単環又は縮合多環アリール基が挙げられ、具体例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-アンスリル基、9-フェナントリル基、1-ピレニル基、5-ナフタセニル基、1-インデニル基、2-アズレニル基、1-アセナフチル基、9-フルオレニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
置換もしくは未置換のアルケニル基としては、炭素原子数2~10のアルケニル基が好ましく、具体例としては、ビニル基、アリル基、スチリル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
置換基もしくは未置換のアルキニル基としては、炭素原子数2~10のアルキニル基が好ましく、具体例としては、エチニル基、プロピニル基、プロパルギル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
置換もしくは未置換のアルコキシ基としては、炭素原子数1~18のアルコキシ基が挙げられ、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ボロニルオキシ基、4-デシルシクロヘキシルオキシ基、2-テトラヒドロフラニルオキシ基、2-テトラヒドロフラニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
置換もしくは未置換のアリールオキシ基としては、炭素原子数6~18のアリールオキシ基が挙げられ、具体例としては、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、9-アンスリルオキシ基、9-フェナントリルオキシ基、1-ピレニルオキシ基、5-ナフタセニルオキシ基、1-インデニルオキシ基、2-アズレニルオキシ基、1-アセナフチルオキシ基、9-フルオレニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
置換もしくは未置換の複素環基としては、炭素原子数3~18の複素環基が挙げられ、具体例としては、2-フラニル基、2-チエニル基、2-インドリル基、3-インドリル基、2-ベンゾフリル基、2-ベンゾチエニル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、9-アクリジニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
置換もしくは未置換の複素環オキシ基としては、炭素原子数3~18の複素環オキシ基が挙げられ、具体例としては、2-フラニルオキシ基、2-チエニルオキシ基、2-インドリルオキシ基、3-インドリルオキシ基、2-ベンゾフリルオキシ基、2-ベンゾチエニルオキシ基、2-カルバゾリルオキシ基、3-カルバゾリルオキシ基、4-カルバゾリルオキシ基、9-アクリジニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
置換もしくは未置換のアシルオキシ基としては、炭素原子数2~20のアシルオキシ基が挙げられ、具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、トリフルオロメチルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、1-ナフチルカルボニルオキシ基、2-ナフチルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
置換もしくは未置換のアルキルスルファニル基としては、炭素原子数1~18のアルキルスルファニル基が挙げられ、具体例としては、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、プロピルスルファニル基、ブチルスルファニル基、ペンチルスルファニル基、ヘキシルスルファニル基、オクチルスルファニル基、デシルスルファニル基、ドデシルスルファニル基、オクタデシルスルファニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
置換もしくは未置換のアリールスルファニル基としては、炭素原子数6~18のアリールスルファニル基が挙げられ、具体例としては、フェニルスルファニル基、1-ナフチルスルファニル基、2-ナフチルスルファニル基、9-アンスリルスルファニル基、9-フェナントリルスルファニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
置換もしくは未置換のアルキルスルファニル基としては、炭素原子数1~20のアルキルスルファニル基が挙げられ、具体的には、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、プロピルスルファニル基、イソプロピルスルファニル基、ブチルスルファニル基、ヘキシルスルファニル基、シクロヘキシルスルファニル基、オクチルスルファニル基、2-エチルヘキシルスルファニル基、デカノイルスルファニル基、ドデカノイルスルファニル基、オクタデカノイルスルファニル基、シアノメチルスルファニル基、メトキシメチルスルファニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
置換もしくは未置換のアリールスルファニル基としては、炭素原子数6~30のアリールスルファニル基が挙げられ、具体例としては、フェニルスルファニル基、1-ナフチルスルファニル基、2-ナフチルスルファニル基、2-クロロフェニルスルファニル基、2-メチルフェニルスルファニル基、2-メトキシフェニルスルファニル基、2-ブトキシフェニルスルファニル基、3-クロロフェニルスルファニル基、3-トリフルオロメチルフェニルスルファニル基、3-シアノフェニルスルファニル基、3-ニトロフェニルスルファニル基、4-フルオロフェニルスルファニル基、4-シアノフェニルスルファニル基、4-メトキシフェニルスルファニル基、4-メチルスルファニルフェニルスルファニル基、4-フェニルスルファニルフェニルスルファニル基、4-ジメチルアミノフェニルスルファニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
置換もしくは未置換のアルキルスルフィニル基としては、炭素原子数1~20のアルキルスルフィニル基が好ましく、具体例としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、ヘキシルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、オクチルスルフィニル基、2-エチルヘキシルスルフィニル基、デカノイルスルフィニル基、ドデカノイルスルフィニル基、オクタデカノイルスルフィニル基、シアノメチルスルフィニル基、メトキシメチルスルフィニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
置換もしくは未置換のアリールスルフィニル基としては、炭素原子数6~30のアリールスルフィニル基が挙げられ、具体例としては、フェニルスルフィニル基、1-ナフチルスルフィニル基、2-ナフチルスルフィニル基、2-クロロフェニルスルフィニル基、2-メチルフェニルスルフィニル基、2-メトキシフェニルスルフィニル基、2-ブトキシフェニルスルフィニル基、3-クロロフェニルスルフィニル基、3-トリフルオロメチルフェニルスルフィニル基、3-シアノフェニルスルフィニル基、3-ニトロフェニルスルフィニル基、4-フルオロフェニルスルフィニル基、4-シアノフェニルスルフィニル基、4-メトキシフェニルスルフィニル基、4-メチルスルファニルフェニルスルフィニル基、4-フェニルスルファニルフェニルスルフィニル基、4-ジメチルアミノフェニルスルフィニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
置換もしくは未置換のアルキルスルホニル基としては、炭素原子数1~20のアルキルスルホニル基が挙げられ、具体例としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、2-エチルヘキシルスルホニル基、デカノイルスルホニル基、ドデカノイルスルホニル基、オクタデカノイルスルホニル基、シアノメチルスルホニル基、メトキシメチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
置換もしくは未置換のアリールスルホニル基としては、炭素原子数6~30のアリールスルホニル基が挙げられ、具体例としては、フェニルスルホニル基、1-ナフチルスルホニル基、2-ナフチルスルホニル基、2-クロロフェニルスルホニル基、2-メチルフェニルスルホニル基、2-メトキシフェニルスルホニル基、2-ブトキシフェニルスルホニル基、3-クロロフェニルスルホニル基、3-トリフルオロメチルフェニルスルホニル基、3-シアノフェニルスルホニル基、3-ニトロフェニルスルホニル基、4-フルオロフェニルスルホニル基、4-シアノフェニルスルホニル基、4-メトキシフェニルスルホニル基、4-メチルスルファニルフェニルスルホニル基、4-フェニルスルファニルフェニルスルホニル基、4-ジメチルアミノフェニルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
置換もしくは未置換のアシル基としては、炭素原子数2~20のアシル基が挙げられ、具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、トリフルオロメチルカルボニル基、ペンタノイル基、ベンゾイル基、1-ナフトイル基、2-ナフトイル基、4-メチルスルファニルベンゾイル基、4-フェニルスルファニルベンゾイル基、4-ジメチルアミノベンゾイル基、4-ジエチルアミノベンゾイル基、2-クロロベンゾイル基、2-メチルベンゾイル基、2-メトキシベンゾイル基、2-ブトキシベンゾイル基、3-クロロベンゾイル基、3-トリフルオロメチルベンゾイル基、3-シアノベンゾイル基、3-ニトロベンゾイル基、4-フルオロベンゾイル基、4-シアノベンゾイル基、4-メトキシベンゾイル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
置換もしくは未置換のアルコキシカルボニル基としては、炭素原子数2~20のアルコキシカルボニル基が挙げられ、具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、1-ナフチルオキシカルボニル基、2-ナフチルオキシカルボニル基、4-メチルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4-フェニルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4-ジメチルアミノフェニルオキシカルボニル基、4-ジエチルアミノフェニルオキシカルボニル基、2-クロロフェニルオキシカルボニル基、2-メチルフェニルオキシカルボニル基、2-メトキシフェニルオキシカルボニル基、2-ブトキシフェニルオキシカルボニル基、3-クロロフェニルオキシカルボニル基、3-トリフルオロメチルフェニルオキシカルボニル基、3-シアノフェニルオキシカルボニル基、3-ニトロフェニルオキシカルボニル基、4-フルオロフェニルオキシカルボニル基、4-シアノフェニルオキシカルボニル基、4-メトキシフェニルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
置換もしくは未置換のカルバモイル基としては、炭素原子数1~30のカルバモイル基が挙げられ、具体例としては、N-メチルカルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、N-プロピルカルバモイル基、N-ブチルカルバモイル基、N-ヘキシルカルバモイル基、N-シクロヘキシルカルバモイル基、N-オクチルカルバモイル基、N-デシルカルバモイル基、N-オクタデシルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基、N-2-メチルフェニルカルバモイル基、N-2-クロロフェニルカルバモイル基、N-2-イソプロポキシフェニルカルバモイル基、N-2-(2-エチルヘキシル)フェニルカルバモイル基、N-3-クロロフェニルカルバモイル基、N-3-ニトロフェニルカルバモイル基、N-3-シアノフェニルカルバモイル基、N-4-メトキシフェニルカルバモイル基、N-4-シアノフェニルカルバモイル基、N-4-メチルスルファニルフェニルカルバモイル基、N-4-フェニルスルファニルフェニルカルバモイル基、N-メチル-N-フェニルカルバモイル基、N、N-ジメチルカルバモイル基、N、N-ジブチルカルバモイル基、N、N-ジフェニルカルバモイル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
置換もしくは未置換のスルファモイル基としては、炭素原子数0~30のスルファモイル基が挙げられ、具体例としては、スルファモイル基、N-アルキルスルファモイル基、N-アリールスルファモイル基、N、N-ジアルキルスルファモイル基、N、N-ジアリールスルファモイル基、N-アルキル-N-アリールスルファモオイル基等が挙げられる。より具体的には、N-メチルスルファモイル基、N-エチルスルファモイル基、N-プロピルスルファモイル基、N-ブチルスルファモイル基、N-ヘキシルスルファモイル基、N-シクロヘキシルスルファモイル基、N-オクチルスルファモイル基、N-2-エチルヘキシルスルファモイル基、N-デシルスルファモイル基、N-オクタデシルスルファモイル基、N-フェニルスルファモイル基、N-2-メチルフェニルスルファモイル基、N-2-クロロフェニルスルファモイル基、N-2-メトキシフェニルスルファモイル基、N-2-イソプロポキシフェニルスルファモイル基、N-3-クロロフェニルスルファモイル基、N-3-ニトロフェニルスルファモイル基、N-3-シアノフェニルスルファモイル基、N-4-メトキシフェニルスルファモイル基、N-4-シアノフェニルスルファモイル基、N-4-ジメチルアミノフェニルスルファモイル基、N-4-メチルスルファニルフェニルスルファモイル基、N-4-フェニルスルファニルフェニルスルファモイル基、N-メチル-N-フェニルスルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、N,N-ジブチルスルファモイル基、N,N-ジフェニルスルファモイル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
置換もしくは未置換のアミノ基としては、総炭素原子数0~50のアミノ基が挙げられ、具体例としては、-NH2、N-アルキルアミノ基、N-アリールアミノ基、N-アシルアミノ基、N-スルホニルアミノ基、N,N-ジアルキルアミノ基、N,N-ジアリールアミノ基、N-アルキル-N-アリールアミノ基、N,N-ジスルホニルアミノ基等が挙げられる。より具体的には、N-メチルアミノ基、N-エチルアミノ基、N-プロピルアミノ基、N-イソプロピルアミノ基、N-ブチルアミノ基、N-tert-ブチルアミノ基、N-ヘキシルアミノ基、N-シクロヘキシルアミノ基、N-オクチルアミノ基、N-2-エチルヘキシルアミノ基、N-デシルアミノ基、N-オクタデシルアミノ基、N-ベンジルアミノ基、N-フェニルアミノ基、N-2-メチルフェニルアミノ基、N-2-クロロフェニルアミノ基、N-2-メトキシフェニルアミノ基、N-2-イソプロポキシフェニルアミノ基、N-2-(2-エチルヘキシル)フェニルアミノ基、N-3-クロロフェニルアミノ基、N-3-ニトロフェニルアミノ基、N-3-シアノフェニルアミノ基、N-3-トリフルオロメチルフェニルアミノ基、N-4-メトキシフェニルアミノ基、N-4-シアノフェニルアミノ基、N-4-トリフルオロメチルフェニルアミノ基、N-4-メチルスルファニルフェニルアミノ基、N-4-フェニルスルファニルフェニルアミノ基、N-4-ジメチルアミノフェニルアミノ基、N-メチル-N-フェニルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N,N-ジブチルアミノ基、N,N-ジフェニルアミノ基、N,N-ジアセチルアミノ基、N,N-ジベンゾイルアミノ基、N,N-(ジブチルカルボニル)アミノ基、N,N-(ジメチルスルホニル)アミノ基、N,N-(ジエチルスルホニル)アミノ基、N,N-(ジブチルスルホニル)アミノ基、N,N-(ジフェニルスルホニル)アミノ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
環式基としては、環構成原子数が3~20の環式基が挙げられ、環は炭素環であっても、ヘテロ原子(酸素原子、窒素原子、硫黄原子等)を含む複素環であってもよい。また、環は、単環であっても、縮合環であってもよい。
【0033】
前述した基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
そのような置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p-トリルオキシ基等のアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メトキサリル基等のアシル基、メチルスルファニル基、tert-ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基、フェニルスルファニル基、p-トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基、メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基等のジアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、p-トリルアミノ基等のアリールアミノ基、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、p-トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基等のアリール基、フリル基、チエニル基等の複素環基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p-トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基、トリメチルアンモニウミル基、ジメチルスルホニウミル基、トリフェニルフェナシルホスホニウミル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
Xは、光照射により発生するラジカル活性種の反応性や移動性に優れることから、未置換のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基である。
【0035】
Aは、化合物合成の観点から、未置換のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0036】
1~R5は、化合物合成の観点から、R1~R5の全てが水素原子であるか、R1~R5のうち1又は2箇所が水素原子以外の置換基であり、その他が水素原子であることが好ましい。
【0037】
水素原子以外の置換基の導入による化合物の吸収波長の影響は、導入される位置がR3が最も大きく、次いでR1、R5が大きく、次いでR2、R4の順(影響大 R3>R1、R5>R2、R4 影響小)である点から、R3、R1、R5が水素原子以外の置換基であることが好ましく、より好ましくはR3が水素原子以外の置換基である。R3が水素原子以外の置換基であり、その他が水素原子である化合物は、化合物合成の点からも好適である。
【0038】
置換基としては、一般的に知られているハメット則におけるパラ位の置換基定数σが0.25以下の置換基が好ましく、具体的には、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換のアミノ基等が挙げられる。パラ位の置換基定数σが低いほど、化合物としての吸収波長が長波長側にシフトすることが期待される点から、パラ位の置換基定数σが0以下の置換基がより好ましく、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換のアミノ基等である。さらに好ましくは、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアミノ基である。
【0039】
6は水素原子であり、R7は、化合物合成の観点から水素原子又は未置換のアルキル基が好ましく、より好ましくは水素原子である。
【0040】
<式(1)の化合物の合成方法>
式(1)の化合物は、下記のようにして合成することができる(スキーム1)。スキーム1中、R6は水素原子として表示されている。
【0041】
【化3】
【0042】
(ステップA1:保護基による保護)
例えばパラトルエンスルホン酸等を用いた酸性条件下で、アルコール又はオルトエステル等のアルコール源とジケトンである化合物(a)を反応させる。
その際、化合物(a)1モルに対する、アルコール源は1モル以上であることが好ましく、1.1~1.5モルがより好ましい。
反応温度は、特に限定されないが、室温(25℃)付近が好ましい。反応は無溶媒で行うことが好ましいが、溶媒を用いてもよい。ただし、アルコール源に相当する溶媒を除くこととする。
反応後は炭酸カリウム等の塩基でクエンチし、ろ過で固体を取り除き、不純物を減圧留去、もしくは蒸留により化合物(b)を得ることができる。
【0043】
(ステップA2:アルドール縮合)
例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド等を用いた塩基性条件下で、上記反応で得られた化合物(b)と化合物(c)を反応させる。
その際、化合物(c)1モルに対する、化合物(b)は1モル以上であることが好ましく、1.2~1.5モルがより好ましい。
反応温度は、室温から、反応性に応じて還流条件までの範囲で調整することができる。
反応は溶媒の存在下で行われ、溶媒としては水とアルコール類(メタノール等)の混合溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等の極性溶媒を用いることができる。アセトン等、カルボニル基を含む溶媒は副反応の原因となり得るため、それ以外の溶媒を使用することが好ましい。
反応後は酢酸エチル等の溶媒により抽出、水による洗浄で塩基を除去し、有機層の溶媒を留去し化合物(d)を得ることができる。さらにシリカゲルクロマトグラフィー等で精製してもよい。
【0044】
(ステップA3:脱保護)
例えばパラトルエンスルホン酸等を用いた酸性条件下で、化合物(d)を加水分解する。
反応は、溶媒の存在下で行われ、溶媒としては、アセトン、トルエン、テトラヒドロフラン等を用いることができる。これらの溶媒は、水との混合溶媒であってもよい。
反応温度は、室温から、反応性に応じて還流条件までの範囲で調整することができる。
反応後は、酢酸エチル等の溶媒により抽出、水による洗浄で塩基を除去し、有機層の溶媒を留去し化合物(e)を得ることができる。さらにシリカゲルクロマトグラフィー等で精製してもよい。
【0045】
(ステップA4:オキシム化)
塩酸ヒドロキシルアミン等のヒドロキシルアミン類と上記で得られた化合物(e)を反応させる。ヒドロキシルアミン類と化合物(e)は、モル比で0.8:1.2~1.2:0.8とすることができ、約1;1とすることが好ましい。
反応は、溶媒の存在下で行われ、溶媒としては、アルコール類、アルコールと水の混合溶媒を用いることができる。
反応温度は、特に限定されないが、室温が好ましい。
反応後は、酢酸エチル等の溶媒により抽出、水による洗浄で塩基を除去し、有機層の溶媒を留去し化合物(f)を得ることができる。さらにシリカゲルクロマトグラフィー等で精製してもよい。
【0046】
(ステップA5:アシル化)
例えばトリエチルアミン、ピリジン等のアミンを用いた塩基性条件下で、目的とする式(1)の化合物の構造に対応する無水カルボン酸又は酸塩化物と、化合物(f)を反応させる。
化合物(f)に対し、無水カルボン酸又は酸塩化物は過剰量で用いることが好ましく、化合物(f)1モルに対し、1モル超とすることができ、1.2~1.5モルが好ましい。
反応は、溶媒の存在下で行われ、溶媒としてはジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒を用いることができる。アルコール類以外の溶媒を用いることが好ましい。
反応温度は、特に限定されないが、0℃~50℃とすることができ、0℃~室温で調整することが好ましい。
反応後は、酢酸エチル等の溶媒により抽出、水による洗浄で塩基を除去し、有機層の溶媒を留去し目的物である式(1)の化合物を得ることができる。さらにシリカゲルクロマトグラフィー等で精製してもよい。
【0047】
上記ステップA3の反応に代えて、以下の反応を行ってもよい(ステップA3’)。
【化4】
【0048】
(ステップA3’:脱保護)
ヨウ素触媒を用い、化合物(d)の脱保護を行う。
反応は、溶媒の存在下で行われ、溶媒としては、アセトンが好ましい。
反応温度は、室温から、反応性に応じて還流条件までの範囲で調整することができる。
反応後は、酢酸エチル等の溶媒により抽出、チオ硫酸ナトリウム水溶液及び水による洗浄で触媒を除去し、有機層の溶媒を留去して化合物(e)を得ることができる。さらにシリカゲルクロマトグラフィー等で精製してもよい。
【0049】
式(1)の化合物は、以下のようにして合成してもよい(スキームB)
【化5】
【0050】
(ステップB1)
例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド等を用いた塩基性条件下で、化合物(c)と化合物(a’)を反応させる。
その際、化合物(c)1モルに対する、化合物(a’)は1モル以上であることが好ましく、1.2~2.0モルがより好ましい。
反応温度は、室温から、反応性に応じて還流条件までの範囲で調整することができる。
反応は溶媒の存在下で行われ、溶媒としては水とアルコール類(エタノール等)の混合溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等の極性溶媒を用いることができる。アセトン等、カルボニル基を含む溶媒は副反応の原因となり得るため、それ以外の溶媒を使用することが好ましい。
反応後は酢酸エチル等の溶媒により抽出、水による洗浄で塩基を除去し、有機層の溶媒を留去し化合物(e’)を得ることができる。さらにシリカゲルクロマトグラフィー等で精製してもよい。
【0051】
(ステップB2)
ナトリウムメトキシド等を用いた塩基性条件下、もしくは塩化水素等を用いた酸性条件下で、亜硝酸イソアミルと化合物(e’)を反応させる。
その際、化合物(e’)1モルに対する、亜硝酸イソアミルは1モル以上であることが好ましく、1.2~1.5モルがより好ましい。
反応温度は、室温から、反応性に応じて還流条件までの範囲で調整することができる。
反応は溶媒の存在下で行われ、溶媒としてはテトラヒドロフラン等が好ましい。
反応後は、酢酸エチル等の溶媒により抽出、水による洗浄で塩基を除去し、有機層の溶媒を留去し目的物である式(1)の化合物を得ることができる。さらにシリカゲルクロマトグラフィー等で精製してもよい。
【0052】
(ステップB3)
ステップB3は、スキーム1のステップA5と同様であり、化合物(f)と目的とする式(1)の化合物の構造に対応する無水カルボン酸又は酸塩化物とを反応させて、式(1)の化合物を調製するステップである。
【0053】
<光ラジカル重合開始剤>
本発明は、式(1)の化合物からなる光ラジカル重合開始剤に関する。式(1)の化合物は、h線(405nm)領域において高い感度を示す。このような性質によれば、例えば、i線(365nm)領域に感度を有する光ラジカル重合開始剤と組み合わせて用いることで、フォトリソグラフィーにおいて深部の感光性を調整することが容易となり、浅部から深部に亘って寸法が安定したパターン形成を得ることができる。さらに、パターン深部の光硬化性が向上することで、微細なパターンデザインであっても現像処理によってパターンの剥離が生じ難くなり、安定した生産性を実現することができる。
式(1)からなる光ラジカル重合開始剤を、i線(365nm)領域に優れた吸収特性を有する従来のラジカル重合開始剤と組み合わせる場合は、照射する光源の波長分布、感光材としての吸収波長に応じて、各光ラジカル重合開始剤の配合量を最適化することができる。
【0054】
<光ラジカル重合性組成物>
本発明は、本発明の光ラジカル重合開始剤及びラジカル重合性化合物を含む光ラジカル重合性組成物に関する。
ラジカル重合性化合物は、特に限定されない。例えばエチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられ、例えば、不飽和カルボン酸及びそれらの塩、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ポリウレタン等が挙げられる。
【0055】
本発明の光ラジカル重合性組成物は、上述したi線(365nm)領域に感度を有する光ラジカル重合開始剤を含む、従来の光ラジカル重合開始剤を併用することができる。また、増感剤、重合促進剤、連鎖移動剤、熱重合抑制剤等を含むことができる。
【0056】
本発明の光ラジカル重合性組成物は、活性エネルギー線の照射により重合し、重合物とすることができる。本発明の光ラジカル重合開始剤は、h線領域に吸収特性を有するため、光源として紫外線LED、紫外線レーザー、超高圧水銀灯が有用である。しかしながら、これらに限られず、活性エネルギー線は、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯タングステンランプ、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザ、ヘリウムネオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、各種半導体レーザー、YAGレーザー、発光ダイオード、CRT光源、プラズマ光源、電子線、γ線、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、F2レーザー等の各種光源であることができる。
【0057】
本発明の光ラジカル重合性組成物は、塗料、印刷インキ、接着剤、ソルダーレジストやエッチングレジスト等のプリント配線板用感光材料、バッファーコートや再配線層等の半導体用感光材料、カラーフィルターといった光学材料をはじめとする用途に使用することができる。
【実施例0058】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例によって何ら限定されない。
【0059】
[実施例1:化合物1の合成]
下記式:
【化6】
で示す化合物(化合物1)を以下のようにして調製した。
【0060】
<ジアセチルのアセタール保護>
【化7】
【0061】
100mLナスフラスコに、オルトギ酸トリエチル52.1mL(313mmol)、ジアセチル25.0mL (285mmol)を加え攪拌し、さらにp-トルエンスルホン酸490mg(2.85mmol)を加えて室温(25℃)で4時間攪拌した。炭酸カリウム1.97g(14.2mmol)を加えてクエンチし、ろ過で固体を取り除いたのち、不純物を減圧留去して褐色のオイルとして生成物40.0gを得た。1H NMRスペクトルにより、目的物が得られたことを確認した。
【0062】
1H NMR (400 MHz, Acetone-d6): δ1.13(6H,t,O-CH2-CH3), 2.13(3H,s,CO-CH3), 3.43(4H,m,O-CH2)
【0063】
<アルドール縮合>
【化8】
【0064】
300mLナスフラスコに、10%水酸化ナトリウム水溶液113g、エタノール100mLを加え攪拌したのち、上記で得られた3,3-ジエトキシ-2-ブタノン10.8g(67.7mmol)、4-ジエチルアミノベンズアルデヒド10.0g(56.4mmol)を加え室温で27時間攪拌した。酢酸エチルで抽出し、水で3回洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムにより乾燥、溶媒留去し粗生成物17.4gを得た。粗生成物をメタノールに溶解し、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて分液ロート内で混合した。十分混合したのち、水を加え、酢酸エチルにより抽出した。溶媒留去し、橙色のオイルとして生成物15.5gを得た。1H NMRスペクトルにより、目的物が得られたことを確認した。
【0065】
1H NMR (400 MHz, Acetone-d6): δ1.15(12H,m,N-CH2-CH3, O-CH2-CH3), 1.35(3H,s,C-CH3), 3.4-3.6(8H,m,N-CH2-CH3, O-CH2-CH3), 3.43(4H,m,O-CH2), 6.71(2H,d,Ph), 7.14(1H,d,Ph-CH=CH), 7.48(2H,d,Ph), 7.55(1H,d,Ph-CH=CH)
【0066】
<脱保護>
【化9】
【0067】
100mLナスフラスコに、保護体15.5g(47.6mmol)、アセトン150mL、p-トルエンスルホン酸9.83g(57.1mmol)を加え、40 ℃で15時間攪拌した。溶媒留去して水を加え、酢酸エチルで抽出したのち水で3度洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去を行い粗生成物6.3 gを得た。うち3.00gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、主生成物を橙色固体として得た。生成物の1H NMRにより、目的物が得られたことを確認した。収量1.67g(収率56%)であった。
【0068】
1H NMR (400 MHz, Acetone-d6): δ1.16(6H,m,N-CH2-CH3), 2.32(3H,s,CO-CH3), 3.46(4H,q,N-CH2-CH3), 6.73(2H,d,Ph), 7.06(1H,d,Ph-CH=CH), 7.57(2H,d,Ph), 7.65(1H,m,Ph-CH=CH)
【0069】
<オキシム化>
【化10】
【0070】
300mLナスフラスコに、塩酸ヒドロキシルアミン425mg(6.1mmol)、酢酸ナトリウム502mg(6.11mmol)、70%エタノール水溶液150mL、上記により得られた5-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)ペンタ-4-エン-2,3-ジオン1500mg(6.11mmol)を加え室温で攪拌した。1.5時間後攪拌を停止し、溶媒留去したのち酢酸エチルで抽出し、水で3回洗浄を行った。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去し生成物を橙色固体として得た。生成物の1H NMRスペクトルにより、目的物が得られたことを確認した。収量1.60g(収率100%)であった。
【0071】
1H NMR (400 MHz, Acetone-d6): δ1.16(6H,m,N-CH2-CH3), 1.94(3H,d,C(=N-OH)-CH3), 3.46(4H,q,N-CH2-CH3), 6.73(2H,d,Ph), 7.40(1H,d,Ph-CH=CH), 7.46(2H,d,Ph), 7.57(1H,d,Ph-CH=CH)
【0072】
<アセチル化>
【化11】
【0073】
100mL2口フラスコに、5-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)ペンタ-4-エン-2,3-ジオン オキシム500mg(1.92mmol)を加えてから、真空ポンプを用いて窒素置換した。脱水ジクロロメタン10mLを加えて室温で攪拌しながら、ピリジン309μL(3.84mmol)を加え、続いて無水酢酸218μL(2.30mmol)を滴下し攪拌した。7時間後攪拌を停止し、水で3回洗浄を行った。無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち、溶媒留去して生成物を褐色のオイルとして得た。生成物の1H NMRスペクトルにより、目的物である化合物1が得られたことを確認した。収量573mg(収率99%)であった。
【0074】
1H NMR (400 MHz, Acetone-d6): δ1.08(6H,t,N-CH2-CH3), 2.07,2.25(6H,s,C(=N-OH)-CH3,OC(=O)-CH3), 3.37(4H,q,N-CH2-CH3), 6.67(2H,d,Ph), 7.18(2H,d,Ph-CH=CH), 7.51(2H,d,Ph), 7.65(1H,d,Ph-CH=CH)
【0075】
[実施例2:化合物2の合成]
下記式:
【化12】
で示す化合物(化合物2)を以下のようにして調製した。
【0076】
<ジアセチルのアセタール保護>
化合物1の合成と同様にして、ジアセチルをアセタール保護し、3,3-ジエトキシ-2-ブタノンを調製した。
【0077】
<アルドール縮合>
【化13】
【0078】
100mLナスフラスコに、10%水酸化ナトリウム水溶液10.7g、エタノール27mLを加え攪拌したのち、上記で得られた3,3-ジエトキシ-2-ブタノン2.58g(16.1mmol)、4-ジメチルアミノベンズアルデヒド2.00g(13.4mmol)を加え室温で29時間攪拌した。酢酸エチルで抽出し、水で3回洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムにより乾燥、溶媒留去し粗生成物3.40gを得た。粗生成物をメタノールに溶解し、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて分液ロート内で混合した。十分混合したのち、水を加え、酢酸エチルにより抽出した。溶媒留去し、橙色のオイルとして生成物を得た。1H NMRスペクトルにより、目的物が得られたことを確認した。 収量1.74g(収率53%)であった。
【0079】
1H NMR (400 MHz, acetone-d6): δ1.16(6H,t,C-CH2-CH3), 1.35(3H,s,C-CH3), 3.01(6H,s,N-CH3), 3.48(4H,m,C-CH2-CH3), 6.73(2H,d,Ph), 7.16(1H,d,Ph-CH=CH), 7.52(2H,d,Ph), 7.57(1H,d,Ph-CH=CH)
【0080】
<脱保護>
【化14】
【0081】
100mLナスフラスコに、上記で得られた保護体1.00g(3.81mmol)、アセトン20mL、ヨウ素96.7mg(0.381mmol)を加え、45 ℃で20時間攪拌した。反応容器に5wt%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、溶媒を留去した。析出した固体をろ過し、水、ヘキサンで表面を洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、生成物を橙色固体として得た。生成物の1H NMRにより、目的物が得られたことを確認した。収量694mg(収率84%)であった。
【0082】
1H-NMR (400 MHz, ACETONE-D6) δ 7.68 (d, J = 16.0 Hz, 1H,Ph-CH=CH), 7.59 (d, J = 8.7 Hz, 2H,Ph), 7.09 (d, J = 15.6 Hz, 1H,Ph-CH=CH), 6.75 (d, J = 9.2 Hz, 2H,Ph), 3.09-3.03 (6H,N-CH3), 2.35-2.30 (3H,CO-CH3)
【0083】
<オキシム化>
【化15】
【0084】
100mLナスフラスコに、塩酸ヒドロキシルアミン95.1mg(1.38mmol)、酢酸ナトリウム113mg(1.38mmol)、メタノール36g、上記により得られたジケトン体300mg(1.38mmol)を加え45℃で攪拌した。1時間後攪拌を停止し、溶媒留去したのち酢酸エチルで抽出し、水で3回洗浄を行った。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物を橙色固体として得た。生成物の1H NMRスペクトルにより、目的物が得られたことを確認した。収量194mg(収率60%)であった。
【0085】
1H-NMR (400 MHz, ACETONE-D6) δ 11.23 (s, 1H,N-OH), 7.61 (d, J = 16.0 Hz, 1H, Ph-CH=CH), 7.52 (d, J = 8.7 Hz, 2H,Ph), 7.46 (d, J = 15.6 Hz, 1H, Ph-CH=CH), 6.76 (d, J = 9.2 Hz, 2H,Ph), 3.04 (s, 6H, N-CH3), 1.99 (3H,s, C(=N)-CH3)
【0086】
<アセチル化>
【化16】
【0087】
100mLナスフラスコに、オキシム体194mg(0.431mmol)を加え、脱水N,N-ジメチルホルムアミド5mLを加えて室温で攪拌し、ピリジン69.4μL(0.861mmol)を加え、続いて無水酢酸48.8μL(0.517mmol)を滴下し攪拌した。5時間後攪拌を停止し、水で3回洗浄を行った。無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち、溶媒留去して生成物を橙色固体として得た。生成物の1H NMRスペクトルにより、目的物である化合物2が得られたことを確認した。収量229mg(収率97%)であった。
【0088】
1H NMR (400 MHz, ACETONE-D6) δ 7.74 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 7.59 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 6.79 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 3.07 (s, 6H), 2.30 (s, 3H), 2.14 (s, 3H)
【0089】
[比較例1:化合物3(比較化合物)の合成]
下記式:
【化17】
で示す化合物(化合物3)を以下のようにして調製した。
【0090】
<アルドール縮合>
【化18】
【0091】
50mLナスフラスコに、カリウムtert-ブトキシド2.00g(17.8mmol)、超脱水メタノール15mL、4-ジエチルアミノベンズアルデヒド3.54g(19.9mmol)を加え、固体が溶解するまで攪拌したのち、アセトン5mL(68.0mmol)を加え加熱を開始した。還流下で30分攪拌したのち、50%酢酸水溶液でクエンチし、溶媒留去した。酢酸エチルで抽出し、水で2回洗浄を行った。無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去し、粗生成物を4.2g得た。うち2.05 gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色オイルとして主生成物を得た。主生成物の1H NMRスペクトルにより、主目的物が得られたことを確認した。収量1.64 g(収率78%)であった。
【0092】
1H NMR (400 MHz, Acetone-d6): δ1.18(6H,t,CH2-CH3), 2.25(3H,s,CO-CH3), 3.46(4H,q,N-CH2-CH3), 6.51(1H,d,Ph-CH=CH), 6.72(2H,d,Ph), 7.5(3H,m,Ph,Ph-CH=CH)
【0093】
<オキシム化>
【化19】
【0094】
300mLナスフラスコに、塩酸ヒドロキシルアミン640mg(9.20mmol)、酢酸ナトリウム755mg(9.20mmol)、70%エタノール水溶液30mL、4-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)ブタ-3-エン-2-オン1000mg(4.60mmol)を加え室温で攪拌した。6.5時間後攪拌を停止し、溶媒留去したのち酢酸エチルで抽出し、水で3回洗浄を行った。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒留去することで橙色固体として生成物を得た。生成物の1H NMRスペクトルにより、目的物が得られたことを確認した。収量701mg(収率70%)であった。
【0095】
1H NMR (400 MHz, Acetone-d6): δ1.12(6H,t,N-CH2-CH3), 1.99(3H,s,C(=NOH)-CH3), 3.38(4H,q,N-CH2-CH3), 6.58(1H,d,PH-CH=CH), 6.65(2H,d,Ph), 6.8(1H,d,Ph-CH=CH), 7.32(2H,d,Ph), 9.91(1H,s,OH)
【0096】
<アセチル化>
【化20】
【0097】
100mL2口フラスコに、4-フェニルブタ-3-エン-2-オン オキシム480mg(2.20mmol)、脱水ジクロロメタン10mL、トリエチルアミン0.296mL(2.64mmol)を加え氷浴中で攪拌した。塩化アセチルの乾燥ジクロロメタン溶液(2.64mmol/5mL)を氷浴中で5分間かけ滴下し、15分間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄を行った。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒留去したのち、再結晶(溶媒:酢酸エチル/ヘキサン)により精製し黄色固体として目的物を得た。生成物の1H NMRスペクトルにより、目的物である化合物3が得られたことを確認した。収量229mg(収率38%)であった。
【0098】
1H NMR (400 MHz, Acetone-d6): δ1.13(6H,t,N-CH2-CH3), 2.1-2.2(6H,s,C(=N)-CH3,C(=O)CH3), 3.41(4H,q,N-CH2-CH3), 6.62(1H,d,PH-CH=CH), 6.68(2H,d,Ph), 7.11(1H,d,Ph-CH=CH), 7.42(2H,d,Ph)
【0099】
[吸収特性の試験]
実施例1の化合物1、実施例2の化合物、比較例1の化合物3及び比較例2の化合物4(BASF社製Irgacure OXE02)の吸収スペクトルを測定した。化合物4は、以下の化学式を有する。
【化21】
【0100】
測定は、各化合物について、濃度が20μMとなるようにアセトニトリルに溶解させ、得られた溶液について分光光度計(日本分光株式会社製、製品名紫外可視近赤外分光光度計V―570)を用いて、250~500nmの範囲の吸収スペクトルを測定した。図1に結果を示す。
【0101】
図1に示されるように、実施例1の化合物1は434nmに、実施例2の化合物2は420nmに極大吸収波長を示し、i線領域の吸収が低かった。
【0102】
[硬化性試験]
光ラジカル重合開始剤として、実施例1の化合物1、比較例1の化合物3及び比較例2の化合物4(BASF社製Irgacure OXE02)を使用して組成物を調製し、硬化試験を行った。
【0103】
組成物の調製は、以下のようにして行った。
トリメチロールプロパンアクリレート(TMPTA)100質量部に対し、上記で得られた実施例1の化合物1、比較例1の化合物3及び比較例2の化合物4をそれぞれ1質量部加え、各組成物の溶液を調製した。
各溶液を用いて、図2に示す試験を行った。2枚のスライドガラス(7.6cm×2.6cm、
厚み1.2mm)を用意し、上記で得られた各溶液30mgをスパチュラによって、片方のスライ
ドガラスの端部から5cm×2.6cmの部分を塗布し(図2(A))、もう一枚をその上に被
せたのち、手で圧力を加え密着させた(図2(B))。重ねたスライドガラスに露光機(三永電機製作所製UVE-251S、朝日分光株式会社製水銀輝線用バンドパスフィルター装着)でh線(405nm)の光を照射した。露光後、図2(C)に示すように、スライドガラス2枚を手で面方向にずらした。図2(D)の左側に示すようにスライドガラスがずれた場合、未硬化と判断し、露光量を増やしていき、図2(D)の右側に示すようにスライドガラスが動かなくなった露光量を硬化性の指標として利用した。h線の露光量は、予め積算光量計(アイテックシステム製)で照射時間と光量を測定した結果を用いて、h線の照射時間から換算した値である。
結果を表1に示す。表1には、h線(405nm)に代えてi線(365nm)を照射した場合の測定結果をあわせて示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示されるように、実施例1の化合物1は、比較例2の化合物3及び比較例2の化合物4に比べて、h線照射により、短時間の照射で硬化した。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明によれば、h線(405nm)領域において高い感度を示す新規な化合物が、当該化合物からなる光ラジカル重合剤、当該光ラジカル重合剤を含む光ラジカル重合性組成物とともに提供される。光ラジカル重合性組成物は、塗料、印刷インキ、接着剤、ソルダーレジストやエッチングレジスト等のプリント配線板用感光材料、バッファーコートや再配線層等の半導体用感光材料、カラーフィルターをはじめとする用途における使用が期待でき、産業上の有用性が高い。
【符号の説明】
【0107】
1 スライドガラス
2 組成物の溶液の塗布部分
図1
図2