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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157535
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】包装材料
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20221006BHJP
   B32B 5/16 20060101ALI20221006BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B5/16
B32B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061815
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000206233
【氏名又は名称】大成ラミック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 侑哉
(72)【発明者】
【氏名】粟田 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】新井 宏一
(72)【発明者】
【氏名】上田 優一郎
(72)【発明者】
【氏名】桑垣 傳美
(72)【発明者】
【氏名】高橋 章仁
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA35
3E086BA44
3E086BB51
3E086BB59
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA29
4F100AA20C
4F100AK42A
4F100AK63B
4F100AK63E
4F100AT00A
4F100DC11C
4F100DD07B
4F100DE01C
4F100EC032
4F100EH17B
4F100EH46C
4F100EJ40B
4F100GB15
4F100GB16
4F100GB23
4F100JB06C
4F100JL12B
(57)【要約】
【課題】強固なシール性を有しつつ、液状の内容物が常に接していても高い付着防止効果を発揮できる包装材料を提供する。
【解決手段】内容物の付着を抑制又は防止できる包装材料であって、熱接着性を有する下地層と、前記下地層の表面の少なくとも一部に形成された機能層とを含み、(1)前記下地層は、a)平均高さ30μm以上、b)互いに隣り合う凹凸間隔が250μm以下、c)凹凸を構成する凸部の数が1.5×10~5.5×10個/mであるエンボス構造を有し、(2)前記機能層は、疎水性微粒子を乾燥重量で0.4~1.5g/m含むことを特徴とする包装材料。
に係る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の付着を抑制又は防止できる包装材料であって、
熱接着性を有する下地層と、前記下地層の表面の少なくとも一部に形成された機能層とを含み、
(1)前記下地層は、a)平均高さ30μm以上、b)互いに隣り合う凹凸間隔が250μm以下、c)凹凸を構成する凸部の数が1.5×10~5.5×10個/mであるエンボス構造を有し、
(2)前記機能層は、疎水性微粒子を乾燥重量で0.4~1.5g/m含む、
ことを特徴とする包装材料。
【請求項2】
下地層上において、機能層が形成されている領域と機能層が形成されていない領域を有し、機能層が形成されていない領域では下地層表面が外部に露出している、請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
請求項1又は2に包装材料の下地層どうしが熱接着されてなる袋体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な包装材料に関する。特に、本発明は、内容物(被包装物)が付着し難い包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、飲料品、医薬品、化粧品等の各種の製品においては、例えば液体・固体調味料、ヨーグルト、ゼリー、プリン、液体洗剤、練り歯磨き、レトルト食品、シロップ、ドレッシング、洗顔クリーム等の様々な内容物が包装体により包装されている。これら包装体は、それぞれの内容物に応じた機能を有する包装材料が用いられている。これらの包装材料の中でも、樹脂製フィルム、アルミ箔等を積層して得られる袋体も、包装材料の一形態として汎用されている。
【0003】
例えば、食品収容用の袋体を例にとると、コンビニエンスストア、スーパーマーケット等で販売されている醤油、ソース、ケチャップ、ドレッシング等の調味料類、弁当類、惣菜類、洋菓子・和菓子等の菓子類、アイスクリーム、ペットフード等の加工食品は、種々の包装材料によって包装されている。
【0004】
ところが、これらの包装材料の中でも、例えば醤油、ソース等のように、水分を多量に含む調味液においては、その一部が包装材料の内面に付着してしまうため、それを取り出す際に全量が取り出しにくくなる。
【0005】
このため、調味液等の内容物が包装材料に付着しにくい包装材料がこれまでに種々提案されている。
【0006】
例えば、少なくとも、基材層/熱接着層/付着防止層が順次積層されてなる包装材料であって、前記熱接着層の表面に、球形粒子又は不定形粒子が分散されて凹凸が形成され、前記付着防止層が、疎水性酸化物微粒子と無機バインダー樹脂からなり、前記凹凸を覆うように積層され、前記付着防止層の表面の算術平均粗さRaが、Ra>5μmであることを特徴とする包装材料が知られている(特許文献1)。
【0007】
また例えば、第1の基材及び第2の基材を準備する工程と、前記第1の基材の一方の面に、撥水性微粒子を含む塗工液を塗布する工程と、前記第1の基材の前記塗工液を塗布した面と、前記第2の基材とが向かい合うように、前記第1の基材と前記第2の基材とを加圧加熱し、積層する工程と、積層した前記第1の基材と前記第2の基材とを剥離する工程と、を含むことを特徴とする製造方法により撥水性積層体を提供する方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-46983号公報
【特許文献2】特開2019-63692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の包装材料は、撥水層にバインダーを含有しているため、例えば水分が多くて粘性の高い食材に対しては十分な付着防止効果が得られない。このため、内容物を袋から取り出しにくくなるほか、取り出せたとしても内容物の一部が当該袋内面に付着して残留し、収量のロス分が多くなってしまう。
【0010】
特許文献2に記載の包装材料では、高い付着防止効果と高い密着強度が得られるものの、一部の撥水層どうしをシールして製袋化した場合には、撥水層が接着性を阻害するために実用上十分なシール強度が得られず、輸送時・取り扱い時に破袋してしまうおそれがある。
【0011】
しかも、これらの従来技術の包装材料は、製造直後の初期の付着防止効果が良好であったとしても、内容物を充填した後、輸送時等において振動を受けたり、内容物が撥水層に繰り返し衝突することにより、付着防止性が経時的に低下するという問題がある。
【0012】
従って、本発明の主な目的は、強固なシール性を有しつつ、液状の内容物が常に接していても高い付着防止効果を持続できる包装材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、これらの従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する包装材料が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
1. 内容物の付着を抑制又は防止できる包装材料であって、
熱接着性を有する下地層と、前記下地層の表面の少なくとも一部に形成された機能層とを含み、
(1)前記下地層は、a)平均高さ30μm以上、b)互いに隣り合う凹凸間隔が250μm以下、c)凹凸を構成する凸部の数が1.5×10~5.5×10個/mであるエンボス構造を有し、
(2)前記機能層は、疎水性微粒子を乾燥重量で0.4~1.5g/m含む、
ことを特徴とする包装材料。
2. 下地層上において、機能層が形成されている領域と機能層が形成されていない領域を有し、機能層が形成されていない領域では下地層表面が外部に露出している、前記項1に記載の包装材料。
3. 前記項1又は2に包装材料の下地層どうしが熱接着されてなる袋体。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、強固なシール性を有しつつ、液状の内容物が常に接していても高い付着防止効果を持続できる包装材料を提供することができる。
【0016】
特に、本発明の包装材料では、予め特定の凹凸構造を有する下地層の当該凹凸表面上に形成された機能層をもつ袋体を作製できるため、後工程で機能層等を形成する場合に比して、袋体全体(特に隅部)にわたってより均質な付着防止機能を有する袋体を提供することができる。
【0017】
さらに、本発明の包装材料は、機能層が袋体内面に配置されるように袋体を形成する場合は、液状の内容物が機能層に常に接していても、機能層が有する撥水性等により、内容物をはじくことができるので、内容物をほとんど残留させることなく、取り出すことができる。従って、例えば、調味液等の食品が常に接触するような状態で袋体中に収容されたとしても、調味料等の袋体内面への付着を効果的に抑制ないしは防止することができる。特に、上記のように、特定の凹凸構造を有する下地層の当該凹凸面上に機能層が形成されているので、機能層が輸送時の振動あるいは内容物との衝突に耐えることができる結果、優れた付着防止効果を持続させることができる。
【0018】
また同時に、本発明包装材料では、シール強度にも優れているため、それを用いた袋体を含む製品の保存時、輸送時及び使用時にわたり、内容物をより確実に維持することができる。
【0019】
このような特徴をもつ包装材料は、食品のほか、医薬品、化粧品、工業品用途等における収容袋等としても幅広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の包装材料の基本的な層構成を示す模式図である。
図2】本発明の包装材料を用いて袋体を作製する手順例を示す図である。
図3】本発明の包装材料を用いて作製された三方袋の概略図である。
図4】実施例で作製された袋体(連結体)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.包装材料(本発明材料)
本発明材料は、内容物の付着を抑制又は防止できる包装材料であって、
熱接着性を有する下地層と、前記下地層の表面の少なくとも一部に形成された機能層とを含み、
(1)前記下地層は、a)平均高さ30μm以上、b)互いに隣り合う凹凸間隔が250μm以下、c)凹凸を構成する凸部の数が1.5×10~5.5×10個/mであるエンボス構造を有し、
(2)前記機能層は、疎水性微粒子を乾燥重量で0.4~1.5g/m含む、
ことを特徴とする。
【0022】
(A)基本層構成について
本発明材料の代表的な層構成を図1に示す。本発明材料10は、凹凸表面からなるエンボス構造を有する下地層11の当該凹凸表面上に疎水性微粒子12aを含む機能層12が形成されている。また、本発明材料では、図1に示すように、下地層11の下層として基材層13を有していても良い。
【0023】
また、図1に示すように、疎水性微粒子12aは、その複数が互いに固着して三次元網目状構造を形成してなる多孔質層となっていることが好ましい。これにより、より高い付着防止効果を達成することができる。
【0024】
なお、各層は互いに直に接した状態で積層されていることが好ましいが、本発明の効果を妨げない範囲内で他の層を含んでいても良い。以下、各層について説明する。
【0025】
(B)各層について
基材層
基材層は、任意的な層であるが、下地層を支持するための層として好適に用いることができる。
【0026】
基材層としては、限定的ではないが、樹脂フィルム(「樹脂系基材フィルム」ともいう。)を好適に用いることができる。樹脂の材質としては、特に限定されず、公知又は市販の袋体に採用されている樹脂成分を採用することができる。従って、例えば合成樹脂の少なくとも1種を挙げることができる。
【0027】
上記の合成樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6,ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル系樹脂等を例示することができる。また、これらの樹脂は、ホモポリマー又はコポリマーのいずれであっても良い。例えば、ポリオレフィン系樹脂としては、オレフィン単量体の共重合体からなるコポリマーを好適に使用することができるが、本発明の効果を妨げない範囲内でオレフィン以外のモノマーとのコポリマーであっても良い。
【0028】
本発明では、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂の少なくとも1種の合成樹脂を含んでいることが好ましい。従って、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66等を好適に用いることができる。これらは、いずれも公知又は市販のものを用いることもできる。
【0029】
上記樹脂フィルムは、前記のような樹脂成分を主成分として(特に通常50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは95~99重量%)含むフィルムであれば良いが、本発明の効果を妨げない範囲内において他の成分(フィラー、着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤等)等が含まれていても良い。また例えば、他の樹脂成分が混合された混合樹脂フィルムのほか、ポリマーアロイフィルム等であっても良い。
【0030】
また、樹脂フィルムは、無延伸又は延伸のいずれでも良い。例えば、強度、耐熱性等が重視される食品、喫食用途等の場合、延伸されたフィルム(特に二軸延伸フィルム)であることが好ましい。本発明では、主にシール性(耐熱性)、印刷適性等の観点から二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを好適に用いることができる。
【0031】
樹脂フィルムは、単層タイプであっても良いし、複数の層が積層されてなる多層タイプであっても良い。多層タイプの場合、複数のフィルムが貼り合わせられた構造であると、例えば抗菌性、ガスバリア性、酸素・水分吸収性等を高めることができるので、より高付加価値化が図れる点で望ましい。
【0032】
多層タイプのフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリオレフィンフィルムの少なくとも一方の面に他の層が1層又は2層以上形成されてなる積層体を樹脂系基材フィルムとして用いることができる。他の層としては、例えば印刷層、オーバーコート層、接着剤層、プライマーコート層、アンカーコート層、防滑剤層、滑剤層、防曇剤層、ガスバリア層、調湿層、ガス吸収層等が挙げられる。従って、例えば樹脂フィルムが内容物と接する側の面とは反対の面(すなわち、袋状にシールした場合に外部に露出する側の面)に、印刷層、オーバーコート層等を積層したり、あるいは各種フィルムを適宜積層することができる。
【0033】
特に、本発明において、樹脂フィルムとして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム又は二軸延伸ポリスチレンフィルムを用いる場合も、単層タイプ又は多層タイプのいずれの形態でも使用することができる。特に、多層タイプのフィルムとしては、例えば二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム又はポリスチレン系フィルムとその少なくとも一方の面に形成されているヒートシール層を含む積層体を樹脂系基材フィルムとして好適に用いることができる。例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムを基材とする場合、特に印刷層、接着剤層及び二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムを順に含む積層体を樹脂フィルムとして好適に用いることができる。
【0034】
接着剤層を形成する場合、使用できる接着剤としては、特に食品用途で使用できるものであれば限定的ではなく、例えばラミネート接着剤等を好適に用いることができる。ラミネート接着剤の成分としては、例えばポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。
【0035】
また、接着剤の性状も、特に限定されず、例えば溶剤型、無溶剤型、水性型等のいずれも使用することができる。例えば、本発明では、2枚以上のポリエチレンテレフタレート系フィルムをポリウレタン系ラミネート接着剤層を介して積層されてなる積層体を樹脂系基材フィルムとして好適に用いることができる。また、フィルムは、必要に応じて疎水性粒子を含む塗工液を塗布・乾燥した後に、その面とは反対面を他基材とラミネートしてから製袋することもできる。
【0036】
下地層
本発明では、下地層を樹脂系基材フィルムと機能層との間に介在させ、その表面に微細な凹凸形状を形成することで、機能層の形成面積の向上、機能層の定着力向上を図ることができる。また、凹凸形状と撥水作用との相乗的な作用により内容物と袋内面との接触面積を少なくすることができるので、より高い非付着性を得ることができる。
【0037】
下地層は、a)平均高さ30μm以上、b)互いに隣り合う凹凸間隔が250μm以下、c)凹凸を構成する凸部の数が1.5×10~5.5×10個/mであるエンボス構造を有する。
【0038】
前記a)の平均高さは、通常30μm以上であり、好ましくは30~100μmである。平均高さの測定方法は、ミクロトームを用いて断面を露出させて断面サンプル5個を作製した後、顕微鏡観察を行う。各断面サンプルを光学顕微鏡で観察し、任意に選んだ断面部分1点を観察し、凹部と凸部の高低差を測定する。凸部の両端の凹部の高さに違いがある場合は低い方を基準として高低差を計測する。上記の1点×5の合計値に対する算術平均値を「平均高さ」とすることができる。
【0039】
前記b)の互いに隣り合う凹凸間隔は、250μm以下であり、好ましくは1~250μmである。凹凸間隔の測定方法は、作製したフィルムの顕微鏡観察を行い、1つの視野内で任意に選んだ凸部の頂点10点を観察し、1つの頂点に最も遠い凸部の頂点との距離をそれぞれ計測する。これらの算術平均値を「凹凸間隔」とすることができる。
【0040】
前記c)の凹凸を構成する凸部の数は、1.5×10~5.5×10個/mであり、好ましくは1.8×10~5.2×10個/mである。凸部の数の測定方法は、作製したフィルムの顕微鏡観察を行い、視野内の任意で選んだ平面視上の凸部1個中の対角線の長さ(縦a、横b)を計測し、凸部を四角柱とみなして凸部1個の面積を算出する方法(a×b)に従って1m当たりの凸部の個数を算出することができる。
【0041】
これら上記a)~c)の条件を全て満たすエンボス構造を備えることにより、高いヒートシール性とともに、持続性の高い付着防止効果(例えば撥水性)を確実に達成することができる。
【0042】
下地層に含まれる樹脂成分としては、公知の接着性の樹脂成分を含む接着剤等を使用することができる。例えば、公知又は市販のシーラントフィルムの構成成分のほか、ラッカータイプ接着剤、イージーピール接着剤、ホットメルト接着剤等の接着剤に用いられる成分を採用することができる。
【0043】
具体的な接着性の樹脂成分としては、限定的でなく、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂等の接着剤等を挙げることができる。より具体的には、a)低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマ-樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、アクリル-塩酢ビ共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマ-、ポリブテンポリマ-、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、b)これらのポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ-ル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂のほか、c)ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。さらに、これらのブレンド樹脂、これらを構成するモノマーの組合せを含む共重合体、変性樹脂等も例示することができる。
【0044】
下地層中における接着性樹脂成分の含有量としては、用いる接着性樹脂成分の種類等に応じて適宜設定すれば良く、例えば60~97重量%程度とすれば良いが、これに限定されない。従って、70~90重量%程度に設定することもできる。
【0045】
また、上記接着性樹脂成分にて構成されたシーラントフィルムを前記「基材層」にて示した接着剤層を介して貼り合わせても良い。
【0046】
下地層表面に微細な凹凸を形成する方法として、限定的ではないが、エンボス加工を好適に採用することができる。エンボス加工の方法としては、以下のような方法があげられる。例えば、a)シーラント層樹脂を押し出し加工する際に、エンボス彫刻を表面に加工した冷却ロールを用いて圧着冷却し、エンボスを成型する方法、b)下地層を形成した後、フィルムを加熱しながらエンボス彫刻を表面に加工したロールにて圧着成型し、その後冷却する方法、c)下地層単体のフィルムにエンボス成型を行ってから貼り合わせる方法等がある。
【0047】
エンボスパターンは、所定の凹凸が形成される限り、特に限定されず、例えばストライプ状、格子状、ドット状等の各種のパターンをそれぞれ採用することができる。
【0048】
機能層
機能層は撥水性を発揮することによって付着防止層として機能するものである。そのために疎水性微粒子を含む。これにより、本発明材料には撥水性が付与され、水分が多くて粘性の高い内容物であっても、付着等をより効果的に抑制ないしは防止することができる。具体的には、本発明材料による袋体に入れる内容物が、脂肪分が少なく、水分が多い食品の場合には、下地層表面に疎水性微粒子を塗工すれば良い。
【0049】
疎水性粒子としては、特に制限されないが、本発明材料による袋体を食品容器として使用する場合には、食品用に適するという点より、一次粒子径がナノサイズの疎水性微粒子を好適に用いることができる。
【0050】
疎水性微粒子としては、特に限定されないが、例えば酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の粒子(粉末)の少なくとも1種を好適に用いることができる。より好ましくは、酸化ケイ素粒子であることが好ましい。これらの粒子は、特に平均一次粒子径が5~50nmであることが好ましく、特に7~30nmであることがより好ましい。
【0051】
疎水性微粒子は、三次元網目状構造を有する多孔質層を形成していることが好ましく、その厚みは0.1~5μm程度が好ましく、特に0.2~2.5μm程度がさらに好ましい。このようなポーラスな層状態で付着することにより、当該層に空気を多く含むことができ、より優れた非付着性を発揮することができる。
【0052】
なお、疎水性微粒子の一次粒子平均径の測定は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡を用いて実施することができる。より具体的には、平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で撮影し、その写真上で200個以上の粒子の直径を測定し、その算術平均値を算出することによって求めることができる。
【0053】
機能層中における疎水性粒子の含有量は、限定的ではないが、通常は10~100重量%であることが好ましい。これらの粒子の含有量を100重量%に近づければそれだけ高い撥水性を得ることができる。
【0054】
機能層の形成方法は、特に限定されないが、特に溶媒中に疎水性微粒子が分散した分散液(塗工液)を下地層の表面の一部又は全部に塗布し、乾燥する工程を含む方法によって好適に実施することができる。塗工液は機能層を均質に形成するため塗布前に凝集体を分散処理することが好ましい。
【0055】
塗工液に使用する溶媒は特に制限されず、水、エタノール等のように食品製造で使用されている溶媒を1種又は2種以上で使用することができる。
【0056】
塗工液中における疎水性微粒子の含有量は特に制限されないが、一般的には2~200g/L(リットル)程度の範囲内で適宜設定することが好ましい。
【0057】
塗工液を下地層上に塗布する方法は、特に限定されず、例えばロールコーティング、グラビアコーティング、バーコート、ドクターブレードコーティング、コンマコーター、刷毛塗り等の公知の方法を適宜採用することができる。なお、疎水性微粒子は、分散媒中に混ぜられていると、より均一に塗工することができる。グラビアコーティングであれば、予めシール部分に塗工液を塗布しないようにした版を用いて機能層をシール部に形成しないようにすることが好ましい。
【0058】
塗布量(乾燥後重量)は、所望の撥水性に応じて適宜設定できるが、通常は0.4~1.5g/m程度とし、特に0.6~1.0g/mとすることが好ましい。上記範囲内に設定することによって、より確実に付着防止性粒子からなる多孔質層を形成することができる結果、より優れた非付着性が長期にわたって得ることができる上、微粒子の脱落抑制、コスト等の点でもいっそう有利となる。
【0059】
塗布後は、塗布面を乾燥することにより、樹脂系基材フィルム上に付着防止性粒子が付着してなるフィルムを得る。乾燥方法は、特に制限されず、自然乾燥又は加熱乾燥のいずれであっても良い。加熱乾燥する場合は、通常は60~190℃、特に80~150℃とすれば良い。加熱時間は、加熱温度等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は3~30秒程度とすれば良い。
【0060】
塗布面の撥水性は、通常は純水(25℃)の接触角が140度以上、特に150度以上であることが好ましい。
【0061】
2.包装材料の製造方法
本発明材料は、前記「1.包装材料」で説明したようにして各層を形成し、積層することによって製造することができる。
【0062】
各層の形成については、例えば予め成形したフィルムを積層する方法、塗工液を塗布する方法等を適宜採用すれば良い。
【0063】
また、各層の積層は、限定的でなく、例えば接着剤層を介して接合する方法、同時押出し成形により積層する方法、各層に対して塗工液を塗布する方法等のいずれも適宜採用することができる。これらは、組み合わせて適用することもできる。
【0064】
3.包装材料の使用
本発明材料は、一般の包装材料と同様にして用いることができるが、特に被包装物が機能層に接するように包装する場合に好適に用いることができる。
【0065】
包装する場合の形態としては、限定的でなく、包装シートとして用いる形態、容器に成形して用いる形態、製袋して袋体として用いる形態等のいずれであっても良い。これらの場合も、被包装物が機能層に接するように、容器、袋体等の内面に機能層が配置されるように設計することが好ましい。
【0066】
また、袋体としても、特にその形態に制限はなく、例えば二方袋、三方袋、ピロー袋(合掌袋)、ガゼット袋、底ガゼット袋、パウチ(スタンディングパウチ)袋、スタンドチャック袋、サイドシール袋、ボトムシール袋等のいずれであっても良い。
【0067】
図2には、本発明材料を用いて三方袋を作製する例を示す。図2Aは平面図、図2Bは側面図である。図2A及び図2Bに示す矩形状の本発明材料10,10の2枚を用意する。次いで、図2Cのように、互いの機能層どうしが向かい合うようにして重ねる。その状態で所定のヒートシール領域Sを熱圧着させることによって、ヒートシール領域Sが接着される。この場合も機能層12は、熱圧着により下地層に埋まることによって下地層が露出し、2枚の本発明材料の下地層どうしが接着されることになる。
【0068】
その結果、図3Aに示すように、ヒートシール領域Sが接着された三方袋を作製することができる。図3Aの側面(開口部)から見た状態を図3Bに示す。図3Bに示すように、空間領域(開口部)aに内容物(被包装物)を充填することができる。内容物を充填した後は、前記と同様の手順で開口部の機能層どうしを圧着させてヒートシールすることによって内容物を密封することができる。
【0069】
ヒートシール領域S上にある機能層は、ヒートシール時に下地層に埋没されるが、それ以外の領域の機能層はそのまま露出した状態で存置される。このため、袋体の空間領域aの内面は実質的にすべて機能層12に覆われた状態になっている。これにより、内容物の収容中においては内容物が機能層12に接した状態であっても、取り出す際には内容物が機能層12にはじかれてそのほとんど全てを取り出すことができる。
【0070】
なお、本発明における「密封」とは、包装体の内部と外部とが実質的に遮断された状態をいう。従って、例えば、内容物が外部へ出ない限り、微量の気体等の出入りは許容される。
【0071】
被包装物としては、特に限定されず、食品をはじめとして、化学品、医薬、化粧品等の包装に好適に用いることができる。特に、付着防止性が要求される液状の被包装物に好適に用いることができる。例えば、醤油、ソース、ドレッシング、タレ等の液体調味料を収容する袋体として好適に用いることができる。
【実施例0072】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0073】
実施例1
(1)中間層/下地層の作製
Tダイ押出機を用いてコート下地となるフィルムを作製した。基材層として厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下「12μmPET」と呼称する。)を用いた。このPETに対し、中間層として厚さ25μmの直鎖状低密度ポリエチレン(以下「25μmLLDPE」と呼称する。)を積層した後、前記LLDPE上に下地層として厚さ85μmの直鎖状低密度ポリエチレン(以下「85μmLLDPE」と呼称する。)をTダイよりシート状に押し出して製膜しながら、エンボス形状が彫刻されている冷却ロールにて圧着冷却した。このようにして「基材層PET12μm/中間層LLDPE25μm/下地層LLDPE85μm」(凹凸高さ30μm、凹凸頂点間隔(フィルム流れ方向)130μm、凹凸頂点間隔(フィルム幅方向)150μm)からなる積層体を作製した。
(2)機能層の形成
エタノール93gに疎水性酸化物微粒子として市販の疎水性シリカ粒子(平均一次粒子径:7nm)7gを添加して30分間室温で攪拌して撥水コート液を調製した。このコート液を前記積層体の下地層表面に乾燥後重量0.6g/mとなるように塗工し、続いて160℃のオーブン中で10秒間(3m/min)加熱乾燥させてエタノールを蒸発させることにより機能層を形成し、包装材料(幅150mmの帯状体)を得た。
(3)充填及び製袋工程
前記包装材料を使用し、液体・粘体充填機を用いて市販の醤油(キッコーマン食品製の濃口醤油)10gの連続充填を行いながら製袋を行った。
より具体的には、機能層どうしが対向するように前記包装材料を長尺方向に折り目を入れて筒状体とした後、長尺方向に折り目を入れた後、縦シールを施して筒状体とし、ノズルから筒状体に醤油を順次注入しつつ、醤油をかみ込みながら横シールを施すことによって、図4に示すように三方シールし、袋入り醤油の連結体40(袋サンプル)を作製した。連結体40は、折り目43と垂直の横シール41と、折り目43と平行の縦シール42が施されており、そのシール内に内容物である醤油44が充填されている。
縦シール条件は、温度135℃、圧力左80kPa/右50kPaとした。横シール条件は、温度132℃、圧力左380kPa/右340kPaとした。シール巾は、縦シール8mm及び横シール13mmとした。成型した袋サイズは、それぞれ縦47mm×横75mm(シール巾含む)の三方シール形態とし、充填速度5m/min(製袋能力108袋/min)にて実施した。シール巾は、縦シール8mm及び横シール13mmとした。
【0074】
実施例2
上記(2)機能層の形成において、横シール部分には機能層が形成されないように包装材料を作製したほかは、実施例1と同様にして包装材料を作製し、充填及び製袋工程を実施することによって袋サンプルを作製した。
【0075】
実施例3
上記(1)中間層/下地層の作成において、下地層表面を凹凸高さ40μm、凹凸頂点間隔(フィルム流れ方向)230μm、凹凸頂点間隔(フィルム幅方向)240μmとした他は実施例1と同様にして袋サンプルを得た。
【0076】
比較例1
上記(1)中間層/下地層の作成において、平滑な冷却ロールにて圧着冷却した他は実施例1と同様にして袋サンプルを得た。
【0077】
比較例2
上記(1)中間層/下地層の作成において、下地表面の凹凸高さを20μmとした他は実施例1と同様にして袋サンプルを得た。
【0078】
比較例3
上記(1)中間層/下地層の作成において、下地層表面を凹凸高さ20μmとした他は実施例3と同様にして袋サンプルを得た。
【0079】
比較例4
上記(1)中間層/下地層の作成において、下地層表面を凹凸高さ30μm、凹凸頂点間隔(フィルム流れ方向)290μm、凹凸頂点間隔(フィルム幅方向)290μmとし、凹凸形状が異なる他は実施例1と同様にして袋サンプルを得た。
【0080】
比較例5
上記(2)機能層の形成において、機能層が乾燥後重量2.0g/mとなるように塗工した他は実施例1と同様にして袋サンプルを得た。
【0081】
比較例6
上記(2)機能層の形成において、機能層が乾燥後重量0.3g/mとなるように塗工した他は実施例1と同様にして袋サンプルを得た。
【0082】
試験例1
各実施例及び比較例で得られた各袋サンプルについて以下のとおり評価を行った。表1に各サンプルの表面粗さ及び試験結果を示す。
【0083】
(1)初期撥水性
マイクロピペット(pipetman P20、GILSON社製)にマイクロピペットチップ(アイビスピペットチップ、アイビス社製)40を装着して、キッコーマン食品製の濃口醤油を製袋前のサンプル表面に静かに滴下した。傾けて滞りなく滑落するサンプルは「○」、一部でも付着するサンプルは「×」と評価した。
【0084】
(2)撥水維持性
実施例及び比較例で得られた袋サンプルの撥水維持性試験を実施した。具体的には、作成した袋サンプルを振動試験機(アイデックス株式会社製 TRANSPORTATION TESTER BF-30U)を用いて1分40秒間(10Hz-10秒・15Hz-10秒・20Hz-10秒・25Hz-10秒・30Hz-10秒を2回繰り返して上下往復振動)、2.2mm振幅(上下方向)、加速度約2Gの条件にて振動させた後、袋サンプルを手指で開封し、袋サンプル内面に付着した醤油(付着面積)を目視で判定した。内容物が接する面において、付着領域が0~10%未満のサンプルを「◎」、10~30%未満のサンプルを「○」、30~100%のサンプルを「×」とした。
【0085】
(3)輸送試験
実施例及び比較例で得られた袋サンプルの撥水維持性試験を実施した。具体的には、作成した袋サンプルを振動試験機(アイデックス株式会社製 TRANSPORTATION TESTER BF-30U)を用いて1分40秒間(10Hz-10秒・15Hz-10秒・20Hz-10秒・25Hz-10秒・30Hz-10秒を2回繰り返して上下往復振動)、2.2mm振幅(上下方向)、加速度約2Gの条件にて振動させた後、袋サンプルを手指で開封し、袋サンプル内面に付着した醤油(付着面積)を目視で判定した。内容物が接する面において、付着領域が0~10%未満のサンプルを「〇」、10~30%未満のサンプルを「△」、30~100%のサンプルを「×」とした。
【0086】
(4)耐圧試験(シール強度)
実施例及び比較例で得られた袋サンプルのシール性評価として耐圧性能の試験を実施した。加圧装置にて袋サンプルを挟み込み、荷重:100kgf/袋、時間:1分の負荷を掛けた後、袋サンプルのシール部分を目視で確認した。シール部分に後退も見られず外観が変化しなかった場合は「◎」、シール部分に後退が見られたがシール部分に後退が見られたが破袋しなかった場合は「○」、破袋した場合は「×」と評価した。
【0087】
【表1】
【0088】
表1の結果からも明らかなように、所定の凹凸を有する下地層を備えた実施例では、高いシール強度とともに、優れた撥水性を実現できることがわかる。


図1
図2
図3
図4