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特開2022-157564重合性組成物、光硬化性接着剤、硬化物の製造方法及び硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157564
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】重合性組成物、光硬化性接着剤、硬化物の製造方法及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/36 20060101AFI20221006BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20221006BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20221006BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221006BHJP
   C09J 163/04 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C08G59/36
C08G59/68
C09J163/00
C09J11/06
C09J163/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061857
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 尭大
(72)【発明者】
【氏名】板野 和幸
(72)【発明者】
【氏名】松土 和彦
【テーマコード(参考)】
4J036
4J040
【Fターム(参考)】
4J036AA04
4J036AB07
4J036AF03
4J036AF06
4J036AJ05
4J036AJ08
4J036AJ14
4J036GA22
4J036HA02
4J036JA06
4J040EC071
4J040JB08
4J040KA13
4J040LA06
4J040LA07
4J040MA05
4J040MB05
4J040PA32
(57)【要約】
【課題】低粘度であり、耐湿熱性及び接着力に優れた硬化物が得られる重合性組成物を提供すること。
【解決手段】カチオン重合性化合物(A)及び光カチオン重合開始剤(B)を含有する重合性組成物であって、カチオン重合性化合物(A)が、エポキシポリマー(A1)及び単官能エポキシ化合物(A2)を含有する重合性組成物である。前記カチオン重合性化合物(A)は、脂肪族エポキシ化合物(A3)を含むことも好ましく、オキセタン化合物(A4)を含むことも好ましく、脂環式エポキシ化合物(A6)を含むことも好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性化合物(A)及び光カチオン重合開始剤(B)を含有する重合性組成物であって、
カチオン重合性化合物(A)が、エポキシポリマー(A1)及び単官能エポキシ化合物(A2)を含有する重合性組成物。
【請求項2】
エポキシポリマー(A1)が、下記一般式(I)で表される構成単位を有するポリマーである請求項1に記載の重合性組成物。
【化1】
式中、Arは、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、
は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~10の複素環基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30の複素環含有基、又は前記炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が下記<群A>より選ばれる2価の基により置換された基、若しくは前記炭素原子数3~30の複素環含有基中のメチレン基の1つ以上が下記<群A>より選ばれる2価の基により置換された基を表し、
、Y及びYは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい2価の炭素原子数1~20の炭化水素基又は該炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が下記<群A>より選ばれる2価の基により置換された基であり、
aは、0~4の整数を表し、
bは、0~4の整数を表し、
cは、0~4の整数を表し、
a+bは1~4であり、a+b+cは1~4である。
<群A>:-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR11-、-NR12CO-、-S-
11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。
【請求項3】
が、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリーレン基である請求項2に記載の重合性組成物。
【請求項4】
カチオン重合性化合物(A)が、脂肪族エポキシ化合物(A3)を含有する請求項1~3の何れか一項に記載の重合性組成物。
【請求項5】
カチオン重合性化合物(A)が、オキセタン化合物(A4)を含有する請求項1~4の何れか一項に記載の重合性組成物。
【請求項6】
カチオン重合性化合物(A)が、脂環式エポキシ化合物(A6)を含有する請求項1~5の何れか一項に記載の重合性組成物。
【請求項7】
エポキシポリマー(A1)のエポキシ当量が、180g/eq.以上350g/eq.未満である請求項1~6の何れか一項に記載の重合性組成物。
【請求項8】
単官能エポキシ化合物(A2)のエポキシ当量が、150g/eq.以上500g/eq.未満である請求項1~7の何れか一項に記載の重合性組成物。
【請求項9】
エポキシポリマー(A1)の含有量が、カチオン重合性化合物(A)100質量部中に5質量部以上50質量部未満である請求項1~8の何れか一項に記載の重合性組成物。
【請求項10】
単官能エポキシ化合物(A2)の含有量が、カチオン重合性化合物(A)100質量部中に0.5質量部以上50質量部未満である請求項1~9の何れか一項に記載の重合性組成物。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の重合性組成物を含有する光硬化性接着剤。
【請求項12】
請求項1~10の何れか一項に記載の重合性組成物に対して、活性エネルギー線を照射する工程、又は加熱する工程を含む硬化物の製造方法。
【請求項13】
請求項1~10の何れか一項に記載の重合性組成物の硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン重合性化合物を含有する重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン重合性組成物は、インキ、塗料、各種コーティング剤、接着剤、光学部材等の分野において用いられている。
例えば、下記特許文献1~3には、種々の光硬化性接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-236389号公報
【特許文献2】特開2012-149262号公報
【特許文献3】国際公開第2008/111584号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、低粘度であり、耐湿熱性及び接着力に優れた硬化物が得られる重合性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、カチオン重合性化合物としてエポキシポリマーと単官能エポキシ化合物とを併用することで、耐湿熱性及び接着力に優れた硬化物を与える重合性組成物が得られることを見出し、本発明に至った。
【0006】
本発明は、カチオン重合性化合物(A)及び光カチオン重合開始剤(B)を含有する重合性組成物であって、カチオン重合性化合物(A)が、エポキシポリマー(A1)及び単官能エポキシ化合物(A2)を含有する重合性組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の重合性組成物は、低粘度であり、硬化物が耐湿熱性及び接着力に優れたものであるため、接着剤用途として特に有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の重合性組成物について説明する。
本発明の重合性組成物は、カチオン重合性化合物(A)としてエポキシポリマー(A1)及び単官能エポキシ化合物(A2)を含有する。
【0009】
エポキシポリマー(A1)は、特定のノボラック構造を有する多官能エポキシ化合物であることが好ましく、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノール-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、及びノボラック構造の主鎖にアラルキル基を導入したアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0010】
本発明において、エポキシポリマー(A1)が下記一般式(I)で表される構成単位を有する重合性組成物は、耐湿熱性及び接着力に優れた硬化物が得られるため好ましい。
【0011】
【化1】
式中、Arは、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、
は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~10の複素環基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30の複素環含有基、又は前記炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が下記<群A>より選ばれる2価の基により置換された基、若しくは前記炭素原子数3~30の複素環含有基中のメチレン基の1つ以上が下記<群A>より選ばれる2価の基により置換された基を表し、
、Y及びYは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素原子数1~20の炭化水素基又は該炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が下記<群A>より選ばれる2価の基により置換された基であり、
aは、0~4の整数を表し、
bは、0~4の整数を表し、
cは、0~4の整数を表し、
a+bは1~4であり、a+b+cは1~4である。
<群A>:-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NR11-、-NR12CO-、-S-
11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。
【0012】
一般式(I)中のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0013】
一般式(I)中の炭素原子数1~20の炭化水素基は、炭素原子及び水素原子からなる炭素原子数1~20の基である。炭素原子数1~20の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基及び炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環含有基が挙げられる。
【0014】
一般式(I)中の炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基及び炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基等が挙げられる。
【0015】
炭素原子数1~20のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。直鎖のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、iso-アミル、tert-アミル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチルが挙げられる。分岐のアルキル基としては、iso-プロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、iso-ブチル、iso-ペンチル、tert-ペンチル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、iso-ヘプチル、tert-ヘプチル、iso-オクチル、tert-オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、へブロタデシル、オクタデシル等が挙げられる。
【0016】
炭素原子数3~20のシクロアルキル基としては、炭素原子数3~20の飽和単環式アルキル基、炭素原子数3~20の飽和多環式アルキル基、及びこれらの基の環中の水素原子の1つ以上がアルキル基で置換された炭素原子数4~20の基が挙げられる。前記飽和単環式アルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシル等が挙げられる。前記飽和多環式アルキル基としては、アダマンチル、デカハイドロナフチル、オクタヒドロペンタレン及びビシクロ[1.1.1]ペンタニル等が挙げられる。飽和単環式又は飽和多環式アルキル基の環中の水素原子を置換するアルキル基としては、前記炭素原子数1~20のアルキル基として例示した基が挙げられる。飽和多環式アルキル基の環中の水素原子の1つ以上が、アルキル基で置換された基としては、例えば、ボルニル等が挙げられる。
【0017】
炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基とは、アルキル基の水素原子が、シクロアルキル基で置換された炭素原子数4~20の基を意味する。シクロアルキルアルキル基中のシクロアルキル基は単環であってもよく、多環であってもよい。シクロアルキル基が単環である炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル、2-シクロブチルエチル、3-シクロペンチルプロピル、4-シクロヘキシルブチル、シクロヘプチルメチル、シクロオクチルメチル、2-シクロノニルエチル及び2-シクロデシルエチル等が挙げられる。シクロアルキル基が多環である炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基としては、3-3-アダマンチルプロピル及びデカハイドロナフチルプロピル等が挙げられる。
【0018】
一般式(I)中の炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環含有基は、芳香族炭化水素環を含み、複素環を含まない炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基を有していてもよい。芳香族炭化水素環含有基としては、例えば、炭素原子数6~20のアリール基及び炭素原子数7~20のアリールアルキル基が挙げられる。
【0019】
炭素原子数6~20のアリール基は、単環構造であってもよく、縮合環構造であってもよく、更に2つの芳香族炭化水素環が連結したものであってもよい。炭素原子数6~20の縮合環構造のアリール基としては、2つ以上の芳香族炭化水素環が縮合した構造である炭素原子数7~20の炭化水素型芳香族縮合環基等が挙げられる。
【0020】
炭素原子数6~20の単環構造のアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、エチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル等が挙げられる。炭素原子数7~20の炭化水素型芳香族縮合環基としては、例えば、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ピレニル、フルオレニル及びインデノフルオレニル等が挙げられる。
【0021】
2つの芳香族炭化水素環が連結したアリール基は、2つの単環構造の芳香族炭化水素環が連結したものであってもよく、単環構造の芳香族炭化水素環と縮合環構造の芳香族炭化水素環とが連結したものであってもよく、縮合環構造の芳香族炭化水素環と縮合環構造の芳香族炭化水素環とが連結したものであってもよい。
2つの芳香族炭化水素環を連結する連結基としては、単結合、スルフィド基(-S-)及びカルボニル基等が挙げられる。
2つの単環構造の芳香族炭化水素環が連結したアリール基としては、例えば、ビフェニル、ジフェニルスルフィド、ベンゾイルフェニル等が挙げられる。
【0022】
炭素原子数7~20のアリールアルキル基は、アルキル基中の水素原子の1つ以上がアリール基で置換された基である。炭素原子数7~20のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フルオレニル、インデニル、9-フルオレニルメチル、α-メチルベンジル、α,α-ジメチルベンジル、フェニルエチル及びナフチルプロピル基等が挙げられる。
【0023】
炭素原子数1~20の炭化水素基が有していてもよい置換基としては、硬化性が良好になることから、互いに反応することで、炭素-炭素共有結合を形成することができる反応性基を有する基が好ましい。反応性基としては、例えば、グリシジルエーテル基、シクロアルケンオキサイド基などのエポキシ基;アクリル基、メタクリル基、ビニル基、ビニルエーテル基等のエチレン性不飽和基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基及びイソシアネート基等が挙げられる。反応性基の中でも、接着性が良好なことから、グリシジルエーテル基、シクロアルケンオキサイド基が好ましく、耐熱性が良好なことから、グリシジルエーテル基が特に好ましい。反応性基を有する基の反応性基以外の部分については、炭素原子数1~15の炭化水素基又は炭素原子数1~15の炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が上記<群A>より選ばれる2価の基により置換された基であり、該炭素原子数1~15の炭化水素基は、上記炭素原子数1~20の炭化水素基として例示したものの中から、炭素原子数が1~15のものが挙げられる。
【0024】
2価の炭素原子数1~20の炭化水素基としては、前記炭素原子数1~20の炭化水素基から水素原子を1つ除いた基が挙げられ、例えば、アルキレン基及びアリーレン基等が挙げられ、これらの基は前記炭素原子数1~20の炭化水素基と同様の置換基を有していてもよい。
【0025】
一般式(I)中の炭素原子数2~10の複素環基は、複素環式化合物から水素原子を1つ除いた基である。複素環基は、単環構造であってもよく、縮合環構造であってもよい。炭素原子数2~10の縮合環構造の複素環基としては、複素環と、複素環又は炭化水素環とが縮合した構造である炭素原子数3~10の複素環含有縮合環基等が挙げられる。具体的な複素環基としては、例えば、ピリジル、キノリル、チアゾリル、テトラヒドロフラニル、ジオキソラニル、テトラヒドロピラニル、メチルチオフェニル、ヘキシルチオフェニル、ベンゾチオフェニル、ピロリル、ピロリジニル、イミダゾリル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピリミジニ、フリル、チエニル、ベンゾオキサゾール-2-イル、チアゾリル、イソチアゾリ、オキサゾリル、イソオキサゾリル、モルホルニル等が挙げられる。
複素環基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH又は-SOH等が挙げられる。
【0026】
一般式(I)中の炭素原子数3~30の複素環含有基は、炭化水素基中の水素原子の1つ以上が複素環基で置換された炭素原子数3~30の基である。複素環基としては、前記炭素原子数2~10の複素環基として例示した基が挙げられる。炭化水素基としては、前記炭素原子数1~20の炭化水素基が挙げられる。
複素環含有基は、芳香族炭化水素環含有基を有していてもよく、脂肪族炭化水素基を有していてもよく、置換基を有していてもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH又は-SOH等が挙げられる。
また、炭素原子数3~30の複素環含有基の「炭素原子数3~30」は、複素環含有基全体の炭素原子数をいうものである。
【0027】
炭素原子数1~20の炭化水素基及び炭素原子数3~30の複素環含有基中のメチレン基の2つ以上が前記<群A>より選ばれる2価の基により置換された基は、該2価の基が隣り合う構造を有しない。
【0028】
本発明において、基の炭素原子数は、基中の水素原子が置換基で置換されている場合、その置換後の基の炭素原子数を規定する。例えば、前記炭素原子数1~20のアルキル基の水素原子が置換されている場合、炭素原子数1~20とは、水素原子が置換された後の炭素原子数を指し、水素原子が置換される前の炭素原子数を指すのではない。
また、本発明において、所定の炭素原子数の基中のメチレン基が2価の基で置き換えられた基の炭素原子数は、その置換前の基の炭素原子数を規定する。例えば、炭素原子数1~20のアルキル基中のメチレン基が2価の基で置き換えられた基の場合、炭素原子数1~20とは、アルキル基中のメチレン基が2価の基で置き換えられる前の炭素原子数を指し、置き換えられた後の炭素原子数を指すのではない。
【0029】
前記一般式(I)中の、Yが、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環含有基から水素原子を1つ除いた基であるものが好ましく、なかでも、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリーレン基である重合性組成物は、耐湿熱性及び接着力に優れる硬化物が得られるため好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基及びナフチレン基が挙げられる。フェニレン基は、低粘度でハンドリングに優れた重合性組成物が得られるので好ましく、ビフェニレン基は、接着性が特に良好で、耐熱性及び耐湿熱性にも優れた硬化物が得られる重合性組成物となるので好ましい。
【0030】
前記一般式(I)中の、Y及びYが、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基及であるものが好ましく、なかでも、炭素原子数1~20のアルキレン基であるものが好ましく、特に、炭素原子数1~10のアルキレン基であるものが好ましく、なかでも特に炭素原子数1~5のアルキレン基であるものは、耐湿熱性に優れる硬化物が得られるため好ましい。
【0031】
前記一般式(I)中のaが1~4、bが0~3、Cが0~3の整数であるものが好ましく、中でもaが1~2の整数であり、cが0~2の整数である重合性組成物は、耐湿熱性及び接着力により優れた硬化物が得られるため好ましく、特にaが1であり、cが0である重合性組成物が好ましい。
【0032】
本発明において、前記一般式(I)で表される構成単位が下記一般式(I-a)で表される構成単位である重合性組成物は、耐湿熱性及び接着力により優れた硬化物が得られるため好ましい。
【0033】
【化2】
式中、Rは、炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表し、
は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリーレン基を表し、
は、2価の炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
dは、1~4の整数を表し、
eは、0~3の整数を表し、
d+eは1~4である。
【0034】
エポキシポリマー(A1)の構成単位の具体例としては、以下の構成単位が挙げられる。
【0035】
【化3】
【0036】
本発明において、エポキシポリマー(A1)のエポキシ当量が180g/eq.以上350g/eq.未満の重合性組成物は、低露光量で硬化し、耐熱性に優れる硬化物が得られることから好ましい。エポキシ当量は、200g/eq.以上325g/eq.未満であることがより好ましく、220g/eq.以上300g/eq.であることが特に好ましい。
【0037】
エポキシポリマー(A1)は、市販品を用いることができ、例えば、エピクロンN-660、エピクロンN-730、エピクロンN-865(DIC製)、NC-2000L、NC-3000、NC-7000L(日本化薬製)等が挙げられる。
【0038】
単官能エポキシ化合物(A2)は、エポキシ基を1つのみ有し、脂環式エポキシ基を有しない化合物である。脂環式エポキシ基とは、シクロアルケンオキサイド構造を指す。
単官能エポキシ化合物(A2)としては、単官能芳香族エポキシ化合物及び単官能脂肪族エポキシ化合物が挙げられる。
【0039】
単官能芳香族エポキシ化合物とは、エポキシ基を1つのみ有し、芳香族環を有するエポキシ化合物であり、その具体例としては、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール等、少なくとも1つの芳香族環を有する1価フェノール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のモノグリシジルエーテル化物、安息香酸やトルイル酸、ナフトエ酸等の安息香酸類のグリシジルエステル、スチレンオキサイドのエポキシ化物等が挙げられる。
【0040】
単官能脂肪族エポキシ化合物とは、エポキシ基を1つのみ有し、芳香族環及び脂環式エポキシ基を有しないエポキシ化合物であり、例えば、脂肪族アルコールのグリシジルエーテル化物、アルキルカルボン酸のグリシジルエステル等が挙げられる。代表的な化合物として、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、C12~13混合アルキルグリシジルエーテル、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、及び高級脂肪酸のグリシジルエステル等が挙げられる。
【0041】
本発明において、単官能エポキシ化合物(A2)のエポキシ当量が150g/eq.以上500g/eq.未満の重合性組成物は、低粘度でハンドリング性に優れ、耐湿熱性に優れた硬化物が得られるので好ましい。エポキシ当量は、160g/eq.以上475g/eq.未満であることがより好ましく、170g/eq.以上450g/eq.未満であることが特に好ましい。
【0042】
単官能エポキシ化合物(A2)は、市販品を用いることもでき、例えば、デナコールEX-121、デナコールEX-141、デナコールEX-142、デナコールEX-145、デナコールEX-146、デナコールEX-147、デナコールEX-171(ナガセケムテックス製)、アデカグリシロールED-501、アデカグリシロールED-502、アデカグリシロールED-509S、アデカグリシロールED-529(ADEKA製)、エポライトM-1230(共栄社化学製)、エポゴーセ2EH(四日市合成製)、Cardolite LITE513E(Cardolite製)等が挙げられる。
【0043】
重合性組成物の固形分100質量部中にカチオン重合性化合物(A)を50質量部以上99質量部未満含有する重合性組成物は、耐湿熱性に優れた硬化物が得られるので好ましく、75質量部以上97質量部未満がより好ましく、85質量部以上95質量部未満が特に好ましい。ここでいう固形分とは、重合性組成物全体の質量部より後述する溶媒の質量部を除いた質量部を指す。
【0044】
本発明において、カチオン重合性化合物(A)100質量部中に、エポキシポリマー(A1)を5質量部以上50質量部未満含有する重合性組成物は、耐湿熱性に優れた硬化物が得られるので好ましい。エポキシポリマー(A1)の含有量は、低粘度と耐熱性の両立のため、10質量部以上40質量部未満であることが特に好ましい。
【0045】
本発明において、カチオン重合性化合物(A)100質量部中に、単官能エポキシ化合物(A2)を0.5質量部以上50質量部以下含有する重合性組成物は、低粘度でハンドリングに優れ、耐湿熱性に優れた硬化物が得られるので好ましい。単官能エポキシ化合物(A2)の含有量は、1.0質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、低粘度と耐熱性の両立のため、5質量部以上30質量部以下であることが特に好ましい。
【0046】
前記カチオン重合性化合物(A)は、低粘度でハンドリング性に優れた重合性組成物が得られるので、脂肪族エポキシ化合物(A3)を含むことが好ましい。
【0047】
脂肪族エポキシ化合物(A3)は、少なくとも2つのエポキシ基を有し、芳香族環及び脂環式エポキシ基を有しない化合物であり、例えば、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル化物、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル等の多官能エポキシ化合物が挙げられる。代表的な化合物として、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのグリシジルエーテル、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル化物、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0048】
脂肪族エポキシ化合物(A3)は、市販品を用いることもでき、例えば、デナコールEX-810、デナコールEX-861、デナコールEX-211、デナコールEX-252、デナコールEX-614、デナコールEX-313、デナコールEX-512、デナコールEX-321(ナガセケムテックス製)、アデカレジンEP-4088S、アデカグリシロールED-503G、アデカグリシロールED-506、アデカグリシロールED-523T、アデカグリシロールED-505、(ADEKA製)、エポライト40E、エポライト70P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF、エポライト4000(共栄社化学製)等が挙げられる。
【0049】
本発明において、カチオン重合性化合物(A)100質量部中に、脂肪族エポキシ化合物(A3)を10質量部以上50質量部未満含有する重合性組成物は、低粘度でハンドリング性に優れることから好ましい。脂肪族エポキシ化合物(A3)の含有量は、低粘度と耐熱性の両立のため、15質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
【0050】
前記カチオン重合性化合物(A)は、硬化性が良好な重合性組成物が得られるので、オキセタン化合物(A4)を含むことが好ましい。
【0051】
オキセタン化合物(A4)は、少なくとも1つのオキセタニル基を有し、エポキシ基を有しない化合物であり、オキセタニル基を1つ有する化合物としては、例えば、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(メトキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(4-ヒドロキシブチロキシメチル)オキセタン等が挙げられ、オキセタニル基を2つ有する化合物としては、例えば、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、3-エチル-3-(3-エチル-3-オキセタニルメチルオキシメチル)オキセタン、キシリレンビスオキセタン等が挙げられる。
【0052】
オキセタン化合物(A4)は、市販品を用いることもでき、例えば、アロンオキセタンOXT-121、OXT-221、EXOH、POX、OXA、OXT-101、OXT-211、OXT-212(東亞合成製)、エタナコールOXBP、OXTP(宇部興産製)等が挙げられる。
【0053】
本発明において、カチオン重合性化合物(A)100質量部中に、オキセタン化合物(A4)を1質量部以上30質量部以下含有する重合性組成物は、硬化性が良好なので好ましい。オキセタン化合物(A4)の含有量は、硬化性、接着性及び耐熱性の両立のため、15質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
【0054】
前記カチオン重合性化合物(A)は、芳香族エポキシ化合物(A5)を含んでもよい。
芳香族エポキシ化合物(A5)は、芳香族環及び少なくとも2つのエポキシ基を有する、エポキシポリマー(A1)以外の化合物であり、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はこれらに更にアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテル化物;レゾルシノールやハイドロキノン、カテコール等の2個以上のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物のグリシジルエーテル;ベンゼンジメタノールやベンゼンジエタノール、ベンゼンジブタノール等のアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル化物;フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の2個以上のカルボン酸を有する多塩基酸芳香族化合物のグリシジルエステル等が挙げられる。
【0055】
芳香族エポキシ化合物(A5)は、市販品を用いることもでき、例えば、デナコールEX-201(ナガセケムテックス製)、オグソールPG-100、オグソールEG-200、オグソールEG-280、オグソールCG-500(大阪ガスケミカル製)、エピクロン830、エピクロン840(DIC製)、アデカレジンEP-4100、アデカレジンEP-4900(ADEKA製)、YX-4000(三菱ケミカル製)、等が挙げられる。
【0056】
前記カチオン重合性化合物(A)は、低粘度でハンドリングが容易であり、硬化性が良好な重合性組成物が得られるので、脂環式エポキシ化合物(A6)を含むことが好ましい。
【0057】
脂環式エポキシ化合物(A6)は、シクロアルケンオキサイド構造を有し、芳香族環を有しない化合物である。
シクロアルケンオキサイド構造は、シクロヘキセン環含有化合物やシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド構造やシクロペンテンオキサイド構造のように、脂肪族環とエポキシ環とが環構造の一部を共有する構造である。
【0058】
脂環式エポキシ化合物のうち、シクロアルケンオキサイド構造を1つ有する化合物としては、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-2-エポキシエチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0059】
脂環式エポキシ化合物(A6)は、市販品を用いることができ、例えば、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2000、セロキサイド3000(ダイセル製)、LDO(シムライズ製)が挙げられる。
【0060】
本発明において、カチオン重合性化合物(A)100質量部中に、脂環式エポキシ化合物(A6)を0.5質量部以上15質量部以下含有する重合性組成物は、低粘度でハンドリングが容易であり、硬化性が良好であるため好ましい。脂環式エポキシ化合物(A6)の含有量は、硬化性、接着性及び耐熱性の両立のため、1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0061】
本発明の重合性組成物は、光カチオン重合開始剤(B)を含有する。
光カチオン重合開始剤(B)とは、光の照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出させることが可能な化合物であればどのようなものでもよいが、光の照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩、又はその誘導体が、硬化性に優れた重合性組成物が得られるので好ましい。
【0062】
オニウム塩である複塩又はその誘導体としては、例えば、下記一般式(i)で表される陽イオンと陰イオンの塩が挙げられる。
[A]m+[B]m- (i)
【0063】
ここで、陽イオン[A]m+はオニウムであり、その構造は、例えば、下記一般式で表すことができる。
[(R21Q]m+ (ii)
上記一般式(ii)中、R21は炭素原子数が1~60であり、炭素原子以外の原子をいくつ含んでいてもよい有機基を表す。
xは1~5の整数を表す。
x個のR21は各々独立で、同一でも異なっていてもよい。
x個のR21のうち、少なくとも1つが、芳香環を有する上記有機基を表す。
QはS、N、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、F及びN=Nからなる群から選ばれる原子又は原子団を表す。また、陽イオン[A]m+中のQの原子価をqとしたとき、m=x-qなる関係が成り立つことが必要である。ただし、N=Nは原子価0として扱う。
【0064】
また、陰イオン[B]m-は、ハロゲン化物錯体であることが好ましく、その構造は、例えば、下記一般式(iii)で表すことができる。
[LXm- (iii)
上記一般式(iii)中、Lはハロゲン化物錯体の中心原子である金属又は半金属(Metalloid)を表し、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn又はCoである。
Xはハロゲン原子を表す。
yは3~7の整数を表す。また、陰イオン[B]m-中のLの原子価をpとしたとき、m=y-pなる関係が成り立つことが必要である。
【0065】
上記一般式(iii)の陰イオン[LXm-の具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(CB]、テトラフルオロボレート(BF、ヘキサフルオロホスフェート(PF、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF、ヘキサフルオロアルセネート(AsF、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl、トリス(ペンタフルオロメチル)トリフルオロリン酸イオン(FAPアニオン)等が挙げられる。
【0066】
また、陰イオン[B]m-は、下記一般式(iv)で表される構造であってもよい。
[LXy-1(OH)]m- (iv)
ここで、L、X及びbは上記と同様である。
また、その他の陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CFSO、フルオロスルホン酸イオン(FSO、トルエンスルホン酸陰イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオン、カンファースルフォネート、ノナフロロブタンスルフォネート、ヘキサデカフロロオクタンスルフォネート、テトラアリールボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0067】
本発明においては、このようなオニウム塩の中でも、より硬化性に優れた重合性組成物となるため、下記群I又は群IIで表されるトリフェニルスルホニウムカチオン等のスルホニウムカチオンと、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の陰イオンとのスルホニウム塩が好ましい。
【0068】
【化4】
【0069】
【化5】
【0070】
本発明において、カチオン重合性化合物(A)100質量部に対して、光カチオン重合開始剤(B)を1質量部以上20質量部以下含有する組成物は、硬化性が良好であるため好ましい。光カチオン重合開始剤(B)の含有量は、硬化性と耐熱性の両立のため、2質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0071】
光カチオン重合開始剤(B)は、市販品を用いることができ、例えば、カヤラッドPCI-220、カヤラッドPCI-620(日本化薬製)、UVI-6990(ダウ・ケミカル製)、アデカアデカアークルズSP-150、アデカオプトマーSP-170(ADEKA製)、CI-5102、CIT-1370、CIT-1682、CIP-1866S、CIP-2048S、CIP-2064S(日本曹達製)、DPI-101、DPI-102、DPI-103、DPI-105、MPI-103、MPI-105、BBI-101、BBI-102、BBI-103、BBI-105、TPS-101、TPS-102、TPS-103、TPS-105、MDS-103、MDS-105、DTS-102、DTS-103(みどり化学製)、PI-2074(ローディア製)、CPI-100P(サンアプロ製)等が挙げられる。
【0072】
本発明の重合性組成物には、各成分を溶解または分散し得る溶媒を用いることができる。溶媒とは、上述した成分に分類されない25℃1気圧下で液体の化合物である。溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル、テキサノール等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、イソ-又はn-プロパノール、イソ-又はn-ブタノール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート等のエーテルエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等のBTX系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テレピン油、D-リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;プロピレンカーボネート、カルビトール系溶媒、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられ、これらの溶媒は2種以上の混合溶媒として使用することもできる。
【0073】
本発明の重合性組成物は、必要に応じて他のモノマー、他の重合開始剤、無機フィラー、有機フィラー、顔料、染料などの着色剤、光増感剤、消泡剤、増粘剤、界面活性剤、レベリング剤、難燃剤、チクソ剤、希釈剤、可塑剤、安定剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、静電防止剤、流動調整剤、接着促進剤等の各種樹脂添加物等を添加することができる。
ただし、接着性が不良となるため、本発明の重合性組成物はラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含有しないことが好ましい。
【0074】
本発明の重合性組成物における溶媒の含有量は、重合性組成物100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下が好ましく、10質量部以下が特に好ましい。溶媒の含有量が上記の範囲内の場合、基材に与えるダメージが小さいことから好ましい。
【0075】
本発明の重合性組成物における、カチオン重合性化合物(A)及び光カチオン重合開始剤(B)以外の任意成分の合計量は、本発明の用途等にもよるが、本発明の効果を一層高める観点から、カチオン重合性化合物(A)100質量部に対して20質量部以下とすることが好ましく、任意成分添加による性能向上と本発明の特徴の両立のため、10質量部以下とすることが特に好ましい。
【0076】
本発明の重合性組成物の具体的な用途としては、メガネ、撮像用レンズに代表される光学材料、塗料、コーティング剤、ライニング剤、インキ、レジスト、液状レジスト、接着剤、印刷版、絶縁ワニス、絶縁シート、積層板、プリント基盤、半導体装置用・LEDパッケージ用・液晶注入口用・有機EL用・光素子用・電気絶縁用・電子部品用・分離膜用等の封止剤、成形材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め剤、半導体用・太陽池用等のパッシベーション膜、層間絶縁膜、保護膜、液晶表示装置のバックライトに使用されるプリズムレンズシート、プロジェクションテレビ等のスクリーンに使用されるフレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシート等のレンズシートのレンズ部、またはこのようなシートを用いたバックライト等、マイクロレンズ等の光学レンズ、光学素子、光コネクター、光導波路、光学的造形用注型剤等を挙げることができ、例えばコーティング剤として適用できる基材としては金属、木材、ゴム、プラスチック、ガラス、セラミック製品等を挙げることができる。
特に、本発明の重合性組成物は、低粘度であり、耐湿熱性及び接着力に優れた硬化物が得られるため接着剤として有用である。
【実施例0077】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
[実施例1~18、比較例1~7]
表1~3に示した配合で各成分を混合して重合性組成物を調製し、粘度、光学特性、初期接着性、接着性、耐湿熱性及び耐熱性の評価を行った。評価結果を表1~3に示す。
表中の各成分は以下の通りである。
【0079】
【化6】
【0080】
【化7】
【0081】
【化8】
【0082】
【化9】
【0083】
【化10】
【0084】
【化11】
【0085】
【化12】
【0086】
<評価方法>
(粘度)
実施例及び比較例で得られた重合性組成物の製造直後の粘度μを、25℃の雰囲気下で粘度計(コーンプレート型粘度計(東機産業製TVE-22L))を用いて測定し、以下の基準で評価した。粘度が低いほど、ハンドリング性に優れることから好ましく、S~Bであればハンドリング性に問題がないと判断できる。
S:μ≦35mPa・s
A:35mPa・s<μ≦60mPa・s
B:60mPa・s<μ≦150mPa・s
C:150mPa・s<μ
【0087】
(光学特性)
実施例及び比較例で得られた重合性組成物を、それぞれガラス板に厚さ50μmで塗布し、もう一枚のガラスを貼り合わせて高圧Hgランプで1000mJ/cmの光を照射し、150℃で1時間加熱して試験片を得た。得られた試験片のb*を紫外可視近赤外分光光度計V-670(日本分光社製)を用いて測定し、以下の基準で評価した。b*が小さいほど光学特性に優れることから好ましく、A~Bであると、光学特性に特に優れていると判断できる。
A:b*≦5
B:5<b*≦10以下
C:10<b*
【0088】
(初期接着性)
光学特性の評価に使用した試験片と同様の方法で得た試験片について、30℃、50%RH、大気圧の条件下で3分静置した後に、試験片を2.0cm幅に切り出して評価用サンプルを得た。この評価用サンプルを用いて90°ピール試験を行い、以下の基準で評価した。初期接着性が高いほど、硬化性に優れることから好ましく、S~Bであると、硬化性に特に優れていると判断できる。
S:2.5N/2cm以上又は基材破壊
A:1.5N/2cm以上2.5N/2cm未満
B:0.5N/2cm以上1.5N/2cm未満
C:0.5N/2cm未満
【0089】
(接着性)
光学特性の評価に使用した試験片と同様の方法で得た試験片について、30℃、50%RH、大気圧の条件下で12時間放置した後に、試験片を2.0cm幅に切り出して評価用サンプルを得た。この評価用サンプルを用いて90°ピール試験を行い、以下の基準で評価した。接着性が高いほど、接着剤として優れることから好ましく、S~Aであれば接着剤として、特に有用であると判断できる。
S:2.5N/2cm以上又は基材破壊
A:1.5N/2cm以上2.5N/2cm未満
B:0.5N/2cm以上1.5N/2cm未満
C:0.5N/2cm未満
【0090】
(耐湿熱性)
光学特性の評価に使用した試験片と同様の方法で得た試験片について、85℃、85%Rh、大気圧の条件下で500時間放置した後に、試験片を2.0cm幅に切り出して評価用サンプルを得た。この評価用サンプルを用いて90°ピール試験を行い、以下の基準で評価した。接着性が高いほど、耐湿熱性に優れることから好ましく、S~Aであれば耐湿熱性に特に優れていると判断できる。
S:1.5N/2cm以上
A:1.0N/2cm以上1.5N/2cm未満
B:0.5N/2cm以上1.0N/2cm未満
C:0.5N/2cm未満
【0091】
(耐熱性)
光学特性の評価に使用した試験片と同様の方法で得た試験片について、b*を紫外可視近赤外分光光度計V-670(日本分光社製)を用いて測定した。200℃、85%Rh、大気圧の条件下で500時間放置した後に、b*を再度測定して初期のb*との差Δb*を算出し、以下の基準で評価した。Δb*が小さいほど耐熱性に優れていることから好ましく、S~Aであれば耐熱性に特に優れていると判断できる。
S:Δb*<3
A:3≦Δb*<5
B:5≦Δb*<8
C:8≦Δb*
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
表1~3に示した通り、本発明の重合性組成物は、低粘度でハンドリング性に優れ、硬化性にも優れるものである。また、本発明の重合性組成物の硬化物は、接着力、耐湿熱性及び耐熱性に優れるため、接着剤用途として特に有用なものである。