(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157579
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】重合体、重合体の製造方法、潤滑油添加剤及び潤滑油
(51)【国際特許分類】
C10M 145/14 20060101AFI20221006BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20221006BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20221006BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20221006BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20221006BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
C10M145/14
C10N20:04
C10N20:00 Z
C10N30:02
C10N40:04
C10N40:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061874
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】福田 広輝
(72)【発明者】
【氏名】松村 一成
(72)【発明者】
【氏名】望月 克史
(72)【発明者】
【氏名】内田 久夫
(72)【発明者】
【氏名】芝谷 治美
(72)【発明者】
【氏名】新納 洋
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104CB08C
4H104EA03C
4H104EA08C
4H104LA01
4H104PA02
4H104PA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】実用温度域以上の高温域における増粘効果が高く、実用温度付近の増粘効果が低い重合体を提供する。
【解決手段】質量平均分子量が1,600,000以上であり、モル分岐度が2以上150以下である、重合体であって、好ましくは、構成単位として、少なくとも2種以上の(メタ)アクリレート単量体単位を含む重合体であり、(メタ)アクリレート単量体単位の合計割合が20質量部以上である重合体。前記重合体を潤滑油添加剤として使用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量平均分子量が1,600,000以上であり、
モル分岐度(B3w)が2以上150以下である、重合体。
【請求項2】
質量平均分子量が8,000,000以下である、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
構成単位として、(メタ)アクリレート単量体単位を含む、請求項1又は2に記載の重合体。
【請求項4】
構成単位として、少なくとも2種以上の(メタ)アクリレート単量体単位を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の重合体。
【請求項5】
重合体を構成する構成単位100質量部に対する前記(メタ)アクリレート単量体単位の合計割合が20質量部以上である、請求項3又は4に記載の重合体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の重合体である、潤滑油添加剤。
【請求項7】
請求項6に記載の潤滑油添加剤を含む、潤滑油。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の重合体の製造方法であって、
ラジカル重合により製造する、重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体、重合体の製造方法、潤滑油添加剤及び潤滑油に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に使用される潤滑油や作動油等は、使用領域において一定の粘度が保たれることが望まれている。潤滑油や作動油は、部材を保護できる一定の粘度が必要とされる一方、粘度が高いと摩擦による作動性の低下や燃費性能の低下が問題となる。
【0003】
近年は自動車の燃費向上の要求が高まっており、潤滑油等は低粘度化が進んでいる。低粘度潤滑油では、温度の向上に伴って粘度がさらに低下するため、高温時に必要粘度を保つことが出来るよう、粘度指数向上剤が添加されている。
【0004】
このため、例えば、特許文献1及び特許文献2には、長鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレート系ポリマーからなる粘度指数向上剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-203913号公報
【特許文献2】特開平10-298576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃費向上のためには、低温時の粘度はできるだけ低粘度化し、高温時には部材を保護するために必要な粘度を保つことが重要である。そのため、低温時には増粘効果が低く、高温時には増粘効果が高い添加剤が必要である。しかしながら、本発明者等の検討によると、特許文献1及び特許文献2に記載される粘度指数向上剤は、高温時における粘度指数向上効果が充分でない場合があることが判明した。
【0007】
そこで、本発明は、実用温度域以上の高温域における増粘効果が高く、実用温度付近の増粘効果が低い重合体、重合体の製造方法、潤滑油添加剤及び潤滑油を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は下記を要旨とする。
[1] 質量平均分子量が1,600,000以上であり、
モル分岐度(B3w)が2以上150以下である、重合体。
[2] 質量平均分子量が8,000,000以下である、[1]に記載の重合体。
[3] 構成単位として、(メタ)アクリレート単量体単位を含む、[1]又は[2]に記載の重合体。
[4] 構成単位として、少なくとも2種以上の(メタ)アクリレート単量体単位を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の重合体。
[5] 重合体を構成する構成単位100質量部に対する前記(メタ)アクリレート単量体単位の合計割合が20質量部以上である、[3]又は[4]に記載の重合体。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の重合体である、潤滑油添加剤。
[7] [6]に記載の潤滑油添加剤を含む、潤滑油。
[8] [1]~[5]のいずれか1項に記載の重合体の製造方法であって、
ラジカル重合により製造する、重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の重合体は、実用温度域以上の高温域における増粘効果が高く、実用温度付近の増粘効果が低い。
本発明の重合体の製造方法は、上述した重合体が得られる。
本発明の潤滑油添加剤及び潤滑油は、実用温度域以上の高温域における増粘効果が高く、実用温度付近の増粘効果が低い。
【0010】
本発明の重合体によれば、これらは高温における増粘効果が高く、良好な粘度挙動を示す粘度指数向上剤として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の説明に限定されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0012】
また、本発明において、「単量体」とは、重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物を意味する。
「単量体単位」とは、単量体1分子が重合することによって形成される、単量体に基づく構成単位を意味する。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味するものとする。
また、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0013】
本発明の重合体は、質量平均分子量(Mw)が1,600,000以上であり、モル分岐度(B3w)が2以上150以下である。なお、本発明においてモル分岐度(B3w)は、静的光散乱法により測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の<モル分岐度(B3w)>に記載された方法により測定することができる。
【0014】
重合体が当該構成を満たすことにより、重合体を潤滑油添加剤として使用した際に、実用温度域以上の高温域における増粘効果は高く、40℃や実用温度付近の増粘効果が低い重合体を提供することができる。このメカニズムは明らかではないが、下記の理由が考えられる。
【0015】
重合体が適度な分岐構造を有すると、実用温度では溶媒である潤滑油に溶解しない分子鎖(幹)を実用温度でも潤滑油中に溶解する分子鎖(枝)で分散させることができる。分散している重合体の分子鎖(幹)は、実用温度以上の温度では溶解することになる。重合体が溶解すると溶液中で分子鎖の絡み合いが生じるが、重合体の分子量が大きくなる程、上記の溶液中での分子鎖の絡み合いは生じやすくなる。溶液中での分子鎖の絡み合いが生じると、溶液粘度が向上する。そのため、重合体が当該構成を満たすと、実用温度以上の高温域において増粘効果が高く、実用温度付近の増粘効果が低くなる。
【0016】
上記のなかでも、重合体の質量平均分子量(Mw)は、高温における粘度挙動をより良好なものとできることから、2,000,000以上であることが好ましく、3,000,000以上であることが特に好ましい。一方、ベースオイルへの溶解性および粘度指数を良好なものとできることから、重合体の質量平均分子量(Mw)は、8,000,000以下が好ましく、7,000,000以下であることがより好ましく、6,000,000以下であることがさらに好ましく、5,000,000以下であることが特に好ましい。なお、重合体の質量平均分子量(Mw)は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0017】
重合体の分岐度(Bn)は、上記のなかでも、高温における粘度挙動を良好なものとできることから、8以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、30以上であることが特に好ましい。一方、ベースオイルへの溶解性の観点から、該分岐度Bnは130以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましく、80以下であることが特に好ましい。
【0018】
重合体の質量平均分子量(Mw)の分布は、特段の制限はないが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で、「TSK-GEL GMH HR-H(20)」(7.8mmΦ×300mm)のカラムを使用して、ポリメチルメタクリレートを標準物質に用い測定した、ポリマー組成物の微分分子量分布曲線における、分子量1,600,000以上の重合体に由来するピーク面積が重合体全体に由来するピーク面積の10%以上であることが好ましく、12%以上であることがさらに好ましく、14%以上であることが特に好ましい。
【0019】
一方、質量平均分子量(Mw)が2,000,000以上の重合体に由来するピーク面積が、重合体全体に由来するピーク面積の80%以下であることが好ましく、70%以下であることがさらに好ましく、60%以下であることが特に好ましい。
【0020】
また、重合体のZ平均分子量(Mz)は、特段の制限はなく、高温における粘度挙動を良好なものとできることから、3,000,000以上であることが好ましく、5,000,000以上であることがより好ましく、8,000,000以上であることがさらに好ましい。一方、ベースオイルへの溶解性および粘度指数を良好なものとできることから、重合体のZ平均分子量(Mz)は、100,000,000未満が好ましく、800,000,000以下がより好ましく、700,000,000以下であることがさらに好ましい。なお、重合体のZ平均分子量(Mz)は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0021】
重合体を構成する単量体単位は、特定の質量平均分子量及び特定の分岐度(Bn)を有する限りにおいて特段の制限はなく、例えば、(メタ)アクリル系単量体単位、カルボキシル基含有ビニル系単量体単位、酸無水物基含有ビニル系単量体、不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体単位、アミノ基含有ビニル系単量体単位、アミド基含有ビニル系単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、又は、オレフィン系単量体単位が挙げられる。
【0022】
これらのなかでも、重合体は、共重合体であることが好ましい。また、重合体は、少なくとも(メタ)アクリルレート単量体単位を含む(メタ)アクリル系重合体であることが好ましい。
【0023】
なお、(メタ)アクリレート単量体は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味する。(メタ)アクリレート単量体としては、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリル系共重合体は、2種以上の(メタ)アクリレート単量体を含んで構成されていてもよい。また、(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリレート単量体以外の単量体をさらに含んで構成されていてもよい。以下、(メタ)アクリル系重合体の好ましい例について説明する。
【0025】
なかでも、重合体を構成する構成単位100質量部に対する(メタ)アクリレート単量体単位の割合が20質量部以上であることが好ましく、35質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることがさらに好ましく、70質量部以上であることが特に好ましく、80質量部以上であることが殊更好ましく、90質量部以上であることが特に好ましく、一方、上限は100質量部である。
【0026】
(メタ)アクリレートとしては、特段の制限はないが、例えば、炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル、アミド基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0027】
炭化水素含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、特段の制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸3,5,5-トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、テルペンアクリレートやその誘導体、水添ロジンアクリレートやその誘導体、(メタ)アクリル酸ドコシル等が挙げられる。
【0028】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、特段の制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、グリセロール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、特段の制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル等が挙げられる。
【0030】
アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、特段の制限はなく、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
アミド基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、特段の制限はなく、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0032】
上記のなかでもは、重合体は、単量体単位として、アルキル基の炭素数が5~14のアルキルメタクリレートa1(以下、単にアルキルメタクリレートa1と称す場合がある)と、アルキル基の炭素数が5~14のアルキルアクリレートa2(以下、単にアルキルアクリレートa2と称す場合がある)と、及びアルキル基の炭素数が1~4のアルキルアクリレートa3(以下、単にアルキルアクリレートa3と称す場合がある)と、を含む共重合体であることが好ましい。
【0033】
アルキルメタクリレートa1としては、例えば、n-ペンチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、n-ヘプチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレート、n-デシルメタクリレート、n-ウンデシルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレート、n-トリデシルメタクリレート、n-テトラデシルメタクリレート等の直鎖状のアルキル基を有するメタクリレート;イソアミルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、i-ノニルメタクリレート、i-デシルメタクリレート、3-i-プロピルヘプチルメタクリレート、i-ウンデシルメタクリレート、2-t-ブチルヘプチルメタアクリレート、i-ドデシルメタクリレート、i-トリデシルメタクリレート、i-テトラデシルメタクリレート等の分岐状のアルキル基を有するメタクリレート;シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテノキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート等の環状のアルキル基を有するメタクリレート等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0034】
なかでも、アルキルメタクリレートa1は、粘度指数の向上効果が優れることから、アルキル基の炭素数が8以上の直鎖状あるいは分岐状のアルキルメタクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が10以上の直鎖状あるいは分岐状のアルキルメタクリレートがより好ましく、アルキル基の炭素数が12以上の直鎖状あるいは分岐状のアルキルメタクリレートがさらに好ましい。一方、アルキルメタクリレートa1は、溶解性の観点から、アルキル基の炭素数が18以下の直鎖状あるいは分岐状のアルキルメタクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が16以下の直鎖状あるいは分岐状のアルキルメタクリレートがより好ましく、アルキル基の炭素数が14以下の直鎖状あるいは分岐状のアルキルメタクリレートがさらに好ましい。
【0035】
また、ベースオイルの粘度指数を良好なものとすることから、重合体の総質量に対するアルキルメタクリレートa1の割合は1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、一方、ベースオイルへの溶解性向上のために、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。
【0036】
アルキルアクリレートa2としては、例えば、n-ペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-ヘプチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、n-デシルアクリレート、n-ウンデシルアクリレート、n-ドデシルアクリレート、n-トリデシルアクリレート、n-テトラデシルアクリレート等の直鎖状のアルキル基を有するアクリレート;i-アミルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、i-ノニルアクリレート、i-デシルアクリレート、3-i-プロピルヘプチルアクリレート、i-ウンデシルアクリレート、2-t-ブチルヘプチルアアクリレート、i-ドデシルアクリレート、i-トリデシルアクリレート、i-テトラデシルメタクリレート等の分岐状のアルキル基を有するメタクリレート;シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテノキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、アダマンチルアクリレート等の環状のアルキル基を有するアクリレート等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0037】
なかでも、アルキルアクリレートa2は、粘度指数の向上効果が優れることから、アルキル基の炭素数が8以上の直鎖状あるいは分岐状のアルキルアクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が10以上の直鎖状あるいは分岐状のアルキルアクリレートがより好ましく、アルキル基の炭素数が12以上の直鎖状あるいは分岐状のアルキルアクリレートがさらに好ましい。一方、アルキルアクリレートa2は、溶解性の観点から、アルキル基の炭素数が18以下の直鎖状あるいは分岐状のアルキルアクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が16以下の直鎖状あるいは分岐状のアルキルアクリレートがより好ましく、アルキル基の炭素数が14以下の直鎖状あるいは分岐状のアルキルアクリレートがさらに好ましい。
【0038】
また、ベースオイルの粘度指数を良好とすることから、重合体の総質量に対するアルキルアクリレートa2の割合は1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、一方、ベースオイルへの溶解性を向上するために、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。
【0039】
アルキルアクリレートa3としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート等の直鎖状のアルキル基を有するアクリレート;i-プロピルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート等の分岐状のアルキル基を有するアクリレート等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0040】
なかでも、粘度指数の向上効果が優れることから、アルキル基の炭素数が2以上のアルキルアクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が3以上のアルキルアクリレートがより好ましく、炭素数が4のアルキルアクリレートがさらに好ましい。
【0041】
また、ベースオイルの粘度指数を良好なものとすることから、重合体の総質量に対するアルキルアクリレートa3の割合は、30質量部以上であることが好ましく、35質量部以上であることがより好ましく、40質量部以上であることがさらに好ましく、一方、ベースオイルへの溶解性を向上するために、80質量部以下が好ましく、75質量部以下がより好ましく、70質量部以下がさらに好ましい。
【0042】
また、上述の通り、(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリレート単位以外のその他の単量体単位を含有していてもよい。
【0043】
その他の単量体単位のビニル単量体としては、特段の制限はないが、カルボキシル基含有ビニル単量体、酸無水物基含有ビニル単量体、不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体、アミノ基含有ビニル系単量体、芳香族ビニル単量体又はオレフィン系単量体が挙げられる。
【0044】
カルボキシル基含有ビニル単量体としては、特段の制限はなく、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノオクチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル等が挙げられる。
【0045】
酸無水物基含有ビニル単量体としては、特段の制限はなく、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0046】
不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体としては、特段の制限はなく、例えば、ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネート、ジパーフルオロシクロヘキシルフマレート等が挙げられる。
【0047】
アミノ基含有ビニル単量体としては、特段の制限はなく、例えば、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、N-ビニルピロール、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアミノスチレン等が挙げられる。
【0048】
アミド基含有ビニル単量体としては、特段の制限はなく、例えば、マレイン酸アミド、マレイミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、イソプロピオニルアミド、N-ビニルヒドロキシアセトアミド等が挙げられる。
【0049】
芳香族ビニル単量体としては、特段の制限はなく、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α―エチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、4-エチルスチレン、4-イソプロピルスチレン、4-ブチルスチレン、4-フェニルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ベンジルスチレン、p-メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン、テトラブロモスチレン、4-クロチルベンゼン、インデンおよび2-ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0050】
オレフィン系単量体としては、特段の制限はなく、例えば、エチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブテン、ノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
これらは2種以上を併用してもよい。
【0051】
基油(ベースオイル)への溶解性及び粘度指数の向上の両立のために、重合体の総質量に対する(メタ)アクリル系単量体以外のその他の単量体の割合は、80質量部以下が好ましく、65質量部以下であることがより好ましく、50質量部以下であることがさらに好ましく、30質量部以下であることが特に好ましく、20質量部以下であることが殊更好ましく、10質量部以下であることが特に好ましく、一方、下限は0質量部である。
【0052】
重合体としては、上述の通り共重合体であることが好ましいが、なかでも、ベースオイルに対する溶解性が異なる複数の構成単位を含むことで粘度指数を良好なものとしやすくできることから、グラフト共重合体であることが好ましい。
【0053】
重合体がグラフト共重合体の場合、該重合体はビニル系ラジカル重合性単量体m1由来の構成単位と、m1とは異なるマクロモノマーM由来の構成単位を含むことが好ましい。なお、本発明において、マクロモノマーMとは、ビニル系ラジカル重合性基を有する単量体m2由来の構成単位を2以上含み、末端にラジカル重合性基を有する化合物を意味し、マクロモノマーMは2種以上を併用してもよい。
【0054】
単量体m1及びm2は、それぞれ、上述で挙げた上述の、(メタ)アクリル系単量体、カルボキシル基含有ビニル単量体、酸無水物基含有ビニル単量体、不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体、アミノ基含有ビニル単量体、アミド基含有ビニル単量体、芳香族ビニ単量体、オレフィン系単量体が挙げられる。
【0055】
なお、グラフト共重合体は、アルキルメタクリレートa1、アルキルアクリレートa2及びアルキルアクリレートa3と、を含むことが好ましいが、アルキルメタクリレートa1、アルキルアクリレートa2及びアルキルアクリレートa3は、それぞれ単量体m1とマクロモノマーMのいずれか一方に含まれてもよく、両方に含まれてもよいが、ベースオイルへの溶解性の調整が容易であることから、ビニル系ラジカル重合性単量体m1が、アルキルアクリレートa2及びアルキルアクリレートa3を含むことが好ましい。
【0056】
また、前記単量体m2は、上記のなかでも、粘度指数の向上効果が優れることから、アルキル基の炭素数が5以上のアルキルメタクリレートを含むことが好ましく、ベースオイルへの溶解性に優れることから、アルキルメタクリレートa1を含むことがさらに好ましい。
【0057】
さらにマクロモノマーMは、前記単量体m1とのラジカル重合性の点から、以下の式(1)で示される構造が好ましい。
【0058】
【0059】
式(1)中、X1~Xn-1は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はCH2OHを示す。Y1~Ynは、モノマー構成単位である(m2)成分のビニル基に結合する置換基であり、例えば、OR1、ハロゲン原子、COR2、COOR3、CN、CONR4R5、NHCOR6、又はR7を示し、R1~R7はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等を示す。Zは末端基を表し、nは2~10000の整数を表す。なお、末端基のZは、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子及びラジカル重合開始剤に由来する基が挙げられる。
【0060】
ベースオイルへの溶解性および粘度指数を良好なものとできることから、マクロモノマーMのゲル浸透クロマトグラフィーで測定した数平均分子量は、500以上が好ましく、1000以上がより好ましく、2000以上が特に好ましい。一方、マクロモノマーMのゲル浸透クロマトグラフィーで測定した数平均分子量は、30000以下が好ましく、25000以下がより好ましく、20000以下が特に好ましい。
【0061】
マクロモノマーMは、公知の方法で製造したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。マクロモノマーMの製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法(米国特許4680352号明細書)、α‐ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法(国際公開88/04304号)、重合性基を化学的に結合させる方法(特開昭60-133007号公報及び米国特許5147952号明細書)及び熱分解による方法(特開平11-240854号公報)が挙げられる。
【0062】
製造工程数が少なく、連鎖移動定数の高い触媒を使用する点でコバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。コバルト連鎖移動剤は連鎖移動定数が高いため、少量の添加で分子量が制御されたマクロモノマーを得ることができる。
コバルト連鎖移動剤としては、公知のコバルト錯体が使用できる。前記コバルト連鎖移動剤の量は、ビニル系ラジカル重合性単量体m2の100質量部に対して、0.00001~0.1質量部が好ましく、0.00001~0.05質量部であることがより好ましく、0.0001~0.02質量部であることが特に好ましい。
【0063】
次に重合体の製造方法の一例を示す。
重合体は、ベースオイル中で、マクロモノマーと、マクロモノマー以外のビニル系ラジカル重合性単量体を含む単量体混合物を、公知の方法で重合することで製造できる。ベースオイルとしては、SK社製のYUBASE3等のAPI規格GroupIIIのオイル、YUBASE4等のAPI規格GroupIIIプラスのオイル等が挙げられる。
【0064】
マクロモノマーは、ベースオイル中で、コバルト連鎖移動剤を用いて、ビニル系ラジカル重合性単量体を含む単量体混合物を重合したマクロモノマーである。コバルト連鎖移動剤は連鎖移動定数が高いため、少量の添加で分子量が制御されたマクロモノマーを得ることができる。またマクロモノマーは、アルキルメタクリレートa1を構成単位として含むことが好ましい。
ビニル系ラジカル重合性単量体としては、重合性単量体m1が挙げられ、アルキルアクリレートa2及びアルキルアクリレートa3を含むことが好ましい。
【0065】
本発明では、マクロモノマーとマクロモノマー以外のビニル系ラジカル重合性単量体を含む単量体混合物を重合することで、ジブロック共重合体やグラフト共重合体等の構造の異なる重合体の混合物である本発明の重合体組成物が得られる。
【0066】
また、重合は公知の条件で行えばよいが、重合時の発熱抑制効果に特に優れることから、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマーを用いることが好ましい。
【0067】
本実施形態に係る重合体は、産業機械、ロボット、自動車等のモビリティで使用されるエンジンオイル、ギヤオイル、作動油等の潤滑油に添加する潤滑油添加剤として使用できる。
エンジンオイル、ギヤオイル、作動油等のベースオイルとしては、原油から精製された鉱物系基油や、化学的に合成された合成油が挙げられ、例えば、SK社製のYUBASE3等のAPI規格GroupIIIのベースオイル、SK社製のYUBASE4等のAPI規格GroupIIIプラス等のベースオイル等が挙げられる。
【0068】
また、該潤滑油添加剤は、潤滑油の粘度指数向上剤として好適に使用できる。粘度指数向上剤は、添加による粘度の上昇の程度が高温では大きく、低温では小さい程よい。例えば、エンジンに使用する場合、実用温度よりも高温(150℃)、実用温度(例えば100℃)、エンジン始動時の温度(例えば40℃)での粘度が添加による粘度上昇の程度の指標として用いられる。
【0069】
粘度指数向上剤は、添加による粘度の上昇の程度が、150℃で最も大きく、150℃より低い温度では小さい程よい。したがって、150℃での粘度が等しいサンプルにおいて、100℃の粘度を比較した際、100℃の粘度との差が小さい程、よい粘度挙動であるといえる。
150℃の粘度と100℃の粘度との差(粘度差)としては、24×10-4Pa・s以下であることが好ましく、21×10-4Pa・s以下であることがより好ましく、18×10-4Pa・sであることがさらに好ましい。
【0070】
本実施形態に係る重合体を含む潤滑油組成物は、その他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤としては、酸化防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤、腐食防止剤、さび止め剤、極圧剤、油性向上剤、消泡剤、乳化剤、摩耗調整剤、防かび剤、抗乳化剤等が挙げられる。
【0071】
潤滑油組成物に含まれる本実施形態に係る重合体の含有量は、潤滑油組成物の全質量を100質量部した際に、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがさらに好ましく、0.1質量部以上であることが特に好ましく、一方、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが特に好ましい。潤滑油添加剤の含有量を0.01質量部以上とすることで潤滑油組成物の粘度指数が改善され、30質量部以下とすることで、潤滑油組成物の低温における動粘度が抑制され、燃費が改善される。
なお、潤滑油組成物は、本実施形態に係る重合体以外の他の重合体をさらに含有していてもよい。
【実施例0072】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳しく説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を表す。評価は以下の方法によって測定した。
【0073】
<マクロモノマーMの分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製 HLC-8320)を用いて測定した。マクロモノマーMのテトラヒドロフラン溶液0.2質量%を調整後、東ソー株式会社製カラム(TSK GUARD COLUMN SUPER HZ-L(内径4.6mm、長さ35mm)と2本のTSK-GEL SUPER HZM-N(内径6.0、長さ150mm)を直列に接続)が装着された装置に上記の溶液10μlを注入し、流量:0.35ml/分、溶離液:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の条件で測定し、標準PMMA換算にて質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を算出した。
【0074】
<重合体の分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製 HLC-8220)を用いて測定した。重合体組成物のテトラヒドロフラン溶液0.2質量%を調整後、東ソー社製カラム「TSK-GEL GMH HR-H(20)」(内径7.8mm、長さ300mm)、TSKguardcolumn SuperHZ-H(内径4.6mm、長さ3.5cm)が装着された装置に上記の溶液10μlを注入し、流量0.6ml/分、溶離液:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の条件で測定した。標準物質として、ポリメチルメタクリレート(Mp(ピーク分子量)=2,100,000、1,100,000、600,000、300,000、122,300、51,000、35,000、11,800、4,900、1,950の10種;American Polymer Standard製)を用い、Z平均分子量(Mz)、質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、ピークトップ分子量(Mp)、を算出した。
【0075】
<溶液粘度>
回転式レオメーター(Thermo社製、商品名;HAAKE MARS 60)を用いて測定した。測定には、半径50mm、傾度1°のコーンプレートを用いた。本実施例で得られた重合体組成物の150℃における粘度が0.0037Pa・sとなるようにベースオイルで濃度調整を実施し、ギャップを0.098mm、せん断速度を200/s、昇温速度を10℃/分、温度範囲を25℃~150℃で測定した。
【0076】
<モル分岐度(B3w)>
テトラヒドロフラン(THF;富士フイルム和光純薬社製試薬特級、BHT300ppm含有)を溶媒として、濃度が5mg/mLの重合体組成物の原液を調製した。この原液をTHFで希釈して、濃度が約0.1から0.5mg/mLまで5水準の測定溶液を調製した。測定溶液は、細孔径0.5μmのPTFE製メンブランフィルター(ADVANTEC社製、DISMIC-25JP)で繰り返し3回ろ過した。大塚電子社製の静的光散乱光度計SLS-6500を用いて静的光散乱(Static Light Scattering、SLS)測定を行い、重量平均分子量Mw、Z-平均慣性自乗半径Rg2および第2ビリアル係数A2を求めた。散乱角度θは20°から150°まで10°間隔、測定は25℃である。装置の較正にはトルエン(東京化成社製、分光光度計グレード)を用いた。
また、同じ測定溶液を用い、大塚電子社製の示差屈折率計DRM-3000で屈折率濃度増分dn/dcを測定した。測定は25℃である。直鎖ポリマーのZ-平均完成二乗半径Rg2Lとの比較によって求めた収縮因子gを用いて、Zimm-Stockmayerのランダム3官能分岐式より、モル分岐度B3wを求めた。
【0077】
また、実施例において使用した化合物は下記の通りである。
・SLMA:炭素数12のアルキルメタクリレートと、炭素数13のアルキルメタクリレートの混合物(三菱ケミカル社製、商品名:アクリエステルSL)
・Co触媒:以下の製造例1で得られたコバルト連鎖移動剤
・α-メチルスチレンダイマー:α-メチルスチレンダイマー(日油社製、商品名:ノフマーMSD)
・LA:ドデシルアクリレート
・BA:n-ブチルアクリレート
・LMA:ドデシルメタクリレート
・BMA:n-ブチルメタクリレート
・MMA:メチルメタクリレート
・ベースオイルA:商品名YUBASE4(SK社製)
・ベースオイルB:商品名YUBASE3(SK社製)
・ベースオイルC:商品名YUBASE4+(SK社製)
【0078】
[製造例1]
(Co錯体(コバルト連鎖移動剤)の合成)
撹拌装置を備えた合成装置中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬社製、和光特級)2.00g(8.03mmol)、及びジフェニルグリオキシム(東京化成社製、EPグレード)3.86g(16.1mmol)、及び予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル100mlを入れ、25℃で2時間撹拌した。
【0079】
次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(東京化成社製、EPグレード)20mlを加え、更に6時間撹拌した。得られたものを濾過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、100MPa以下で、20℃において12時間乾燥し、茶褐色固体のCo錯体(1)5.02g(7.93mmol、収率99質量%)を得た。
【0080】
[製造例2]
攪拌機、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、ベースオイルAを50部、アクリエステルSLを50部、製造例1で作製したCo錯体を0.0025部加え、攪拌しながら窒素をバブリングして溶存酸素を除いた。液温を85℃に昇温した後、アクリエステルSLを50部と、重合開始である1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーオクタO)0.5部からなる混合液を4時間かけて滴下した。さらに、85℃で1時間保持した後、35部のベースオイルAと0.4部のパーオクタOからなる混合液を加え、95℃に昇温した。液温度を95℃で4時間保持した後、冷却し、マクロモノマーM1を54質量%含有する溶液を得た。得られたマクロモノマーM1のGPCの結果を表1に示した。
【0081】
[製造例3]
攪拌機、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、トルエンを100部、メチルメタクリレートを2部、製造例1で作製したCo錯体を0.0004部加え、攪拌した。アクリエステルSLを100部加え、攪拌しながら窒素をバブリングして溶存酸素を除いた。液温を80℃に昇温した後、重合開始である2,2’―アゾビス(イソブチロニトリル)(富士フイルム和光純薬社製、商品名:2,2’―アゾビス(イソブチロニトリル))を0.5部加え、5時間保持した後、冷却し、マクロモノマーM2を50質量%含有する溶液を得た。テトラヒドロフラン800部を加え、得られた溶液をメタノール10000部へ攪拌しながら滴下した。得られた混合液体をデカンテーションすることで、マクロモノマーM2の固体を得た。得られたマクロモノマーM2のGPCの結果を表1に示した。
【0082】
[製造例4]
Co錯体の量を表1の量に変更した以外は、製造例2と同様にして、マクロモノマーM3を得た。得られたマクロモノマーM3のGPCの結果を表1に示した。
【0083】
【0084】
<実施例1>
攪拌機、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、ベースオイルAを6.9部、製造例2で得られたマクロモノマーM1のベースオイルA溶液を47.6部、アクリル酸n-ブチルを60部、アクリル酸ドデシルを15部、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)を0.015部、連鎖移動剤として、α-メチルスチレンダイマー(日油社製、商品名:ノフマーMSD)を0.01部加え、攪拌しながら窒素をバブリングして溶存酸素を除いた。液温を85℃に昇温し、85℃で2時間保持した後にベースオイルA(40部)とパーブチルO(0.015部)の混合液を2時間かけて滴下した。さらに、85℃で1時間保持した後、ベースオイルA(67.5部)とパーオクタO(0.5部)からなる混合液を加え、95℃に昇温し、液温度を95℃で1時間保持した。ベースオイルA(46.7部)を加えた後に冷却し、潤滑油添加剤を35質量%含有するベースオイルA溶液を得た。得られた潤滑油添加剤の各評価結果を表2に示した。
【0085】
<実施例2>
攪拌機、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、トルエンを25部、製造例3で得られたマクロモノマーM2の固体を35部、アクリル酸n-ブチルを41部、アクリル酸ドデシルを17.5部、メタクリル酸n-ブチルを4.5部、メタクリル酸ドデシルを2部、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬社製)を0.225部加え、攪拌しながら窒素をバブリングして溶存酸素を除いた。液温を55℃に昇温し、55℃で7時間保持した。冷却し、テトラヒドロフランを1250部加え、得られた溶液をメタノール15000部へ攪拌しながら滴下した。得られた混合液体をデカンテーションすることで、潤滑油添加剤の固体を得た。得られた潤滑油添加剤の各評価結果、及びモル分岐度B3wの推定値を表2に示した。
【0086】
<実施例3>
ビニル系ラジカル重合性単量体、マクロモノマーの量を表2の量に変更した以外は、実施例2と同様にして、潤滑油添加剤を得た。得られた潤滑油添加剤の各評価結果、及びモル分岐度B3wの推定値を表2に示した。
【0087】
<比較例1>
攪拌機、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、ベースオイルAを78.7部、アクリエステルSLを25部、アクリル酸n-ブチルを52部、アクリル酸ドデシルを23部、重合開始剤としてパーブチルOを0.03部、連鎖移動剤としてノフマーMSDを0.02部加え、攪拌しながら窒素をバブリングして溶存酸素を除いた。液温を85℃に昇温し、85℃で2時間保持した後にベースオイルA(40部)とパーブチルO(0.015)部の混合液を2時間かけて滴下した。さらに、85℃で1時間保持した後、ベースオイルA(67部)とパーオクタO(0.5部)からなる混合液を加え、95℃に昇温した。液温度を95℃で1時間保持した後、冷却し、(メタ)アクリル系重合体を35質量%含有する溶液を得た。得られた潤滑油添加剤の評価結果を表2に示した。
【0088】
<比較例2、3>
ビニル系ラジカル重合性単量体、α-メチルスチレンダイマーの量を表2の量に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合体を得た。得られた重合体の評価結果を表2に示した。
【0089】
【0090】
表2に示すように、実施例1~3は、PMMA換算GPCによる質量平均分子量(Mw)が1,600,000以上であり、静的光散乱法により測定したモル分岐度(B3w)が2以上150以下であるため、ベースオイルCへの溶解性に優れ、且つ、ベースオイルC溶液の100~150℃の粘度の差が24×10-4Pa・s以下と小さいため、高温時の潤滑油の粘度指数向上剤として好適であることが確認できた。