(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157594
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物、半導体封止材、及び、半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/04 20060101AFI20221006BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C08G59/04
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061905
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢本 和久
(72)【発明者】
【氏名】青山 和賢
(72)【発明者】
【氏名】秋元 源祐
【テーマコード(参考)】
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4J036AA01
4J036AC01
4J036DB05
4J036DB06
4J036JA06
4J036JA07
4J036JA11
4M109AA01
4M109CA01
4M109CA21
4M109EA03
4M109EB02
4M109EB03
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB07
4M109EB13
4M109EB15
4M109EB18
4M109EC04
4M109EC05
4M109EC07
4M109EC09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】その硬化物の高耐熱性、低吸湿性、高密着性、内部応力緩和性(熱時低弾性率)、及び、低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)に寄与できるエポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物、前記硬化物を含む半導体封止材、前記半導体封止材を含む半導体装置を提供する。
【解決手段】ジヒドロキシビフェニル1モルに対して、1.5~8モルの芳香族ビニル化合物との反応物と、エピクロルヒドリンと、を反応させることにより得られ、下記一般式(1)で表されることを特徴とするエポキシ樹脂による。
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素、または、α-メチルベンジル基を表し、Gは、グリシジル基を表す。p及びqは、それぞれ独立に、0~4の数を示し、p+qは、平均値として1.5~8である。また、nは0~5の数を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジヒドロキシビフェニル1モルに対して、1.5~8モルの芳香族ビニル化合物との反応物と、エピクロルヒドリンと、を反応させることにより得られ、下記一般式(1)で表されることを特徴とするエポキシ樹脂。
【化1】
(但し、上記一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素、または、α-メチルベンジル基を表し、Gは、グリシジル基を表す。p及びqは、それぞれ独立に、0~4の数を示し、p+qは、平均値として1.5~8である。また、nは0~5の数を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載のエポキシ樹脂、及び、硬化剤を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物。
【請求項4】
請求項3に記載の硬化物を含むことを特徴とする半導体封止材。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体封止材を含むことを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物、半導体封止材、及び、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びその硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、高耐熱性、耐湿性、低粘性等の諸物性に優れる点から半導体封止材やプリント回路基板などの電子材料、導電性接着剤、その他接着剤、複合材料用マトリックス、塗料、フォトレジスト材料、顕色材料等で広く用いられている。
【0003】
近年、半導体封止材料の分野では、BGA、CSPといった表面実装パッケージへの移行、更に鉛フリー半田への対応により、リフロー処理温度が高温化するに至り、これまでに増して、耐湿耐半田性、つまり低吸湿性かつ高耐熱性に優れる封止樹脂材料が求められている。
【0004】
また、半導体封止材料の分野において、高温環境下での接合信頼性の高い銅ワイヤの採用が進んでいる。しかしながら、銅ワイヤは従来の金ワイヤよりも腐食されやすいため、封止樹脂とリードフレーム界面に剥離などの界面劣化が生じると、毛細管現象により剥離部分に水分が集中し、チップやワイヤボンディング接合部を腐食させる問題が生じる。更に、高温でのリフロー工程において水分が急激に膨張し、クラック発生の要因となるため、封止樹脂特性として、リフロー工程時のリードフレーム界面の剥離低減が必須であり、リードフレームとの接着力向上(高密着性)や内部応力緩和性に寄与する熱時低弾性率が強く求められている。
【0005】
さらに、電子機器における信号の高速化及び高周波数化に伴い、伝送損失の抑制が課題となっており、半導体封止材料にも誘電率及び誘電正接が共に十分に低い樹脂材料の適応が求められている。
【0006】
かかる要求特性に応えるため、電子部品封止材料用のフェノール樹脂、及び、エポキシ樹脂としては、例えば、フェノール樹脂とベンジルクロライド等のベンジル化剤を反応させたベンジル化フェノール樹脂、及び、前記ベンジル化フェノール樹脂をエピハロヒドリンと反応させたエポキシ樹脂を用いたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献1におけるフェノール樹脂とエポキシ樹脂の場合、吸湿率など、ある程度の改善がみられるものの、近年要求されるその他の特性レベルは十分ではなかった。
【0008】
このように、半導体封止材料の分野において、とりわけ、高耐熱性、低吸湿性、高密着性、内部応力緩和性(熱時低弾性率)、及び、低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)を十分に具備した半導体封止材用に使用できるエポキシ樹脂や、これを用いたエポキシ樹脂組成物が存在しないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、高耐熱性、低吸湿性、高密着性、内部応力緩和性(熱時低弾性率)、及び、低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)に寄与できるエポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物、前記硬化物を含む半導体封止材、前記半導体封止材を含む半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ジヒドロキシビフェニルに芳香族ビニル化合物を反応させることにより得られる特定構造のエポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂を含有し、高耐熱性、低吸湿性、高密着性、内部応力緩和性(熱時低弾性率)、低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)に寄与できるエポキシ樹脂組成物、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物、前記硬化物を含む半導体封止材、前記半導体封止材を含む半導体装置を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、ジヒドロキシビフェニル1モルに対して、1.5~8モルの芳香族ビニル化合物との反応物と、エピクロルヒドリンと、を反応させることにより得られ、下記一般式(1)で表されることを特徴とするエポキシ樹脂に関する。
【化1】
(但し、上記一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素、または、α-メチルベンジル基を表し、Gは、グリシジル基を表す。p及びqは、それぞれ独立に、0~4の数を示し、p+qは、平均値として1.5~8である。また、nは0~5の数を示す。)
【0013】
本発明は、前記エポキシ樹脂、及び、硬化剤を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物に関する。
【0014】
本発明は、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物に関する。
【0015】
本発明は、前記硬化物を含むことを特徴とする半導体封止材に関する。
【0016】
本発明は、前記半導体封止材を含むことを特徴とする半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物は、高耐熱性(高ガラス転移温度)、低吸湿性(低吸湿率)、高密着性、内部応力緩和性(熱時低弾性率)、低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)に優れるため、前記硬化物を含む半導体封止材や、前記半導体封止材を含む半導体装置は、従来には想定できなかった有利な効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
<エポキシ樹脂>
本発明は、ジヒドロキシビフェニル1モルに対して、1.5~8モルの芳香族ビニル化合物との反応物と、エピクロルヒドリンと、を反応させることにより得られ、下記一般式(1)で表されることを特徴とするエポキシ樹脂に関する。
【化2】
但し、上記一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素、または、α-メチルベンジル基を表し、Gは、グリシジル基を表す。p及びqは、それぞれ独立に、0~4の数を示し、p+qは、平均値として1.5~8である。また、nは0~5の数を示す。
前記エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物を用いた硬化物は、高耐熱性(高ガラス転移温度)、低吸湿性(低吸湿率)、高密着性、内部応力緩和性(熱時低弾性率)、低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)を発揮でき、半導体封止材料の分野において、非常に有用となる。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂は、上記一般式(1)で表される。ここで、上記一般式(1)中のR1及びR2は、それぞれ独立に、水素、または、α-メチルベンジル基を表される置換基である。また、低吸湿性、低誘電特性の観点からは、α-メチルベンジル基の置換基が好ましい。なお、上記一般式(1)において、R1及びR2は、同じであっても、異なっていてもよく、R1又はR2が複数ある場合も、同じであっても、異なっていてもよい。
【0021】
上記一般式(1)中のp及びqは、それぞれ独立に、0~4の数を示し、p+qは、平均値として1.5~8である。また、前記p及びqは、それぞれ独立に、1.5~7の数であることが好ましく、1.8~6の数であることがより好ましい。前記p及びqが、前記範囲内であると、反応性、高耐熱性、低吸湿性、低誘電特性のバランスが良好となり、好ましい。
【0022】
上記一般式(1)中のnは0~5の数を示し、好ましくは平均値(数平均)として、0~4であり、より好ましくは0~3である。前記nが、前記範囲内であると、低粘度で成形性に優れ、好ましい。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂は、ジヒドロキシビフェニル1モルに対して、1.5~8モルの芳香族ビニル化合物との反応物を中間体(前駆体)として得られるものであり、更に、前記反応物とエピクロルヒドリンとを反応させることにより、前記エポキシ樹脂を製造することができる。また、上記一般式(1)中のR1及びR2として挙がっているα-メチルベンジル基で表される置換基は、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン)から生ずる基である。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂の中間体(前駆体)となる前記反応物は、下記一般式(2)で表されることが好ましい。下記一般式(2)において、R
1、R
2、p及びqは、上記一般式(1)のR
1、R
2、p及びqと同様である。
【化3】
【0025】
上記一般式(2)で表される前記反応物は、単一の化合物を主成分とするものであってもよいし、R1及びR2が異なると共に、p及びqも異なる成分の混合物であっても良い。
【0026】
前記反応物は、ジヒドロキシビフェニルに、芳香族ビニル化合物を反応させることにより製造することができるが、ジヒドロキシビフェニル1モルに対する芳香族ビニル化合物の反応量は、1.5~8モルの範囲であり、好ましくは、1.5~7モルであり、より好ましくは、1.8~6である。前記配合割合で反応することにより、芳香族ビニル化合物の反応量が前記範囲を下回る場合に比べて、前記反応物を使用したエポキシ樹脂を用いて得られる硬化物は、架橋点間距離を伸長させることができ、熱時弾性率を低く抑えることができ、内部応力緩和にとって、有用となる。また、通常架橋点間距離が伸長させると、架橋密度が低下するため、ガラス転移温度(Tg)が低くなり、耐熱性が下がる傾向にあるが、本発明においては、高Tg(高耐熱性)を維持することができ、従来からは予測できない効果を発揮でき、有用である。
【0027】
一方、ジヒドロキシビフェニルと芳香族ビニル化合物を反応させる際の反応原料として使用量は、目的とする置換モル数(ジヒドロキシビフェニル1モルに対する、置換基のモル数)とほぼ対応するので、それによって使用量を定めればよい。なお、いずれかの原料が未反応で残る反応条件を採用することもできるが、この場合でもジヒドロキシビフェニル1モルに対する芳香族ビニル化合物の使用量は、1.5~8モルの範囲とすることがよい。いずれかの原料が未反応で残る場合は、それを分離することが望ましいが、少量であれば残存したままでも差し支えない。また、芳香族ビニル化合物を8モル以上使用すると、未反応の芳香族ビニル化合物が残存したり、芳香族ビニル化合物の重合体が生成することがあり、エポキシ樹脂としての耐熱性や難燃性を低下させる原因となる。
【0028】
前記ジヒドロキシビフェニルとしては、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、2,4’-ジヒドロキシビフェニル等を用いることができ、耐熱性に優れるという観点から、4,4’-ジヒドロキシビフェニルが好ましい。
【0029】
前記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体(p-ジメチルシリルスチレン、p-ビニルフェニルメチルスルフィド、p-ヘキシニルスチレン、p-メトキシスチレン、p-t-ブチルジメチルシロキシスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン等)、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1-ジフェニルエチレン等を用いることができ、内部応力緩和性(熱時低弾性率)に優れるという観点から、スチレン、α-メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0030】
前記芳香族ビニル化合物として、特に前記スチレンの含有率としては、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。前記スチレンの含有率を60質量%以上とすることで、耐熱性の向上と内部応力緩和性(熱時低弾性率)に優れるため、好ましい。
【0031】
また、前記芳香族ビニル化合物の中、α-メチルスチレンのように、嵩高い構造を有するものを使用することで、分子の剛直性が増大し、分子運動が抑制され、ガラス転移温度(Tg)の向上をより発揮できることが推測される。
【0032】
前記ジヒドロキシビフェニルと前記芳香族ビニル化合物との反応は、酸触媒等を使用する反応方法等が採用できる。この反応により、ジヒドロキシビフェニルのベンゼン環に上記置換基(α-メチルベンジル基等)が置換された前記反応物が得られる。ジヒドロキシビフェニルと芳香族ビニル化合物との反応終了後は、必要に応じて、触媒又は未反応成分の除去をして、次のエポキシ化反応を実施することができる。ただし、エポキシ化反応を阻害しない場合には、未反応成分や酸触媒のような中和可能な成分は除去しなくともよく、また、エポキシ化反応後に行われる洗浄、蒸留等の精製工程で除去される場合やエポキシ樹脂に含まれても差し支えない場合も、除去しなくてもよい。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂は、上記一般式(2)で表される前記反応物を中間体(前駆体)として得た後、前記反応物とエピクロルヒドリンとを反応させることにより得られる。
【0034】
前記反応物とエピクロルヒドリンとの反応には、前記反応物中の水酸基1当量に対して、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を、0.8~1.5当量配合することが好ましく、より好ましくは0.85~1.2当量配合する。この範囲であれば、残存する加水分解性塩素の量を低減でき、好ましい。前記アルカリ金属水酸化物としては、水溶液、アルコール溶液又は固体の状態で使用される。
【0035】
前記反応に際しては、前記反応物に対して、過剰量のエピクロルヒドリンを使用することが好ましい。通常、前記反応物中の水酸基1当量に対して、エピクロルヒドリンを1.5~15当量使用されるが、好ましくは1.5~8当量の範囲である。この範囲であれば、生産効率を高め、エポキシ樹脂の高分子量体の生成を抑制し、粘度上昇も抑制でき、作業性に優れたものとなる。
【0036】
反応温度は、加水分解性塩素量を低減でき、高純度化が可能となることから、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、85℃以下が更に好ましい。
【0037】
反応の際、四級アンモニウム塩あるいはジメチルスルホキシド、ジグライム等の極性溶媒を用いてもよい。四級アンモニウム塩としては、例えばテトラメチルアンモニウムクロライド、テチラブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド等があり、その添加量としては、前記反応物に対して、0.1~2質量%の範囲が好ましい。この範囲であれば、四級アンモニウム塩添加の効果が十分に得られ、加水分解性塩素の生成を抑制でき、高純度化が可能となる。また、極性溶媒の添加量としては、前記反応物に対して、10~200質量%の範囲が好ましい。この範囲であれば、添加の効果が十分に得られ、容積効率を低下させることなく、経済上好ましい。
【0038】
反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンや溶媒を留去し、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し、水洗して無機塩や残存溶媒を除去し、次いで溶剤を留去することによりエポキシ樹脂とすることができる。
【0039】
また、得られたエポキシ樹脂を更に、残存する加水分解性塩素に対して、1~30倍量の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を加え、再閉環反応が行われる。この際の反応温度は、通常、100℃以下であり、好ましくは90℃以下である。
【0040】
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、200~600g/当量であることが好ましく、220~500g/当量であることがより好ましく、240~400g/当量であることが更に好ましい。前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が前記範囲内であると、エポキシ樹脂が硬化剤と反応する際に発生する2級水酸基の発生が抑えられ、得られる硬化物の耐熱性と低吸湿性、低誘電特性(特に低誘電正接)、及び、密着性等に起因する耐リフロー性にも優れることから好ましい。ここでのエポキシ当量の測定は、JIS K7236に基づいて測定されるものである。
【0041】
前記エポキシ樹脂の溶融粘度は、10dPa・s以下であることが好ましく、0.01~5dPa・sであることがより好ましく、0.05~3dPa・sであることが更に好ましい。前記エポキシ樹脂の溶融粘度が前記範囲内であると、低粘度で流動性、及び、作業性に優れるため、得られる硬化物の成形性などにも優れることから好ましい。ここでの溶融粘度は、ASTM D4287に準拠し、ICI粘度計にて測定されるものである。
【0042】
前記エポキシ樹脂の軟化点は、30~200℃であることが好ましく、50~150℃であることがより好ましい。前記エポキシ樹脂の軟化点が前記範囲内であると、成形性に優れることから好ましい。ここでの軟化点は、JIS K7234(環球法)に基づき測定されるものである。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂は、上記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂を含み、前記エポキシ樹脂を主成分(50質量%以上)とするエポキシ樹脂であることが好ましい。同様に、本発明のエポキシ樹脂の中間体となる前記反応物は、上記一般式(2)で表される前記反応物を含み、前記反応物を主成分(50質量%以上)とすることが好ましい。
【0044】
<エポキシ樹脂組成物の調製>
本発明は、前記エポキシ樹脂、及び、硬化剤を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物に関する。前記エポキシ樹脂組成物が、前記エポキシ樹脂を含有し、得られる硬化物は、高耐熱性、低吸湿性、高密着性、内部応力緩和性(熱時低弾性率)、及び、低誘電特性を具備することができ、好ましい。
【0045】
なお、前記エポキシ樹脂組成物には、前記エポキシ樹脂以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、前記エポキシ樹脂以外の他の樹脂を併用することができる。例えば、前記エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂、活性エステル、マレイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリマレイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂、シアン酸エステル樹脂、スチレン無水マレイン酸樹脂、ジアリルビスフェノールやトリアリルイソシアヌレート等のアリル基含有樹脂、ポリリン酸エステル、リン酸エステル-カーボネート共重合体等が挙げられる。これらの他の樹脂は、前記エポキシ樹脂に加えて、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂のエポキシ基と架橋反応が可能な硬化剤を、特に制限なく使用できる。前記硬化剤としては、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤等が挙げられる。前記硬化剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
前記フェノール硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェニロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール性水酸基含有化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール性水酸基含有化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール性水酸基含有化合物)等の多価フェノール性水酸基含有化合物が挙げられる。中でも、耐熱性、絶縁信頼性、難燃性の観点から、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、トリフェニロールメタン樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂などがより好ましい。なお、前記フェノール性水酸基を含有する化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
前記アミン硬化剤としては、ジエチレントリアミン(DTA)、トリエチレンテトラミン(TTA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジプロプレンジアミン(DPDA)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、N-アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン(MDA)、イソフオロンジアミン(IPDA)、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3-BAC)、ピペリジン、N,N’-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン等の脂肪族アミン;m-キシレンジアミン(XDA)、メタンフェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、ベンジルメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の芳香族アミン等が挙げられる。
【0049】
前記酸無水物硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0050】
前記エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂の使用量に対する前記硬化剤を含有するフェノール硬化剤の使用量の官能基当量比(例えば、フェノール硬化剤の水酸基総量/エポキシ樹脂のエポキシ基総量)は、0.3~1.5であることがより好ましく、0.5~1であることがより好ましい。前記官能基当量比が前記範囲内であると、得られる硬化物が、硬化性、耐熱性の点で優れることから好ましい。
【0051】
<溶媒>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、無溶剤で調製しても構わないし、溶媒を含んでいてもよい。前記溶媒は、エポキシ樹脂組成物の粘度を調整する機能等を有する。
【0052】
前記溶媒の具体例としては、特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のエステル系溶剤;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
前記溶媒の使用量としては、エポキシ樹脂組成物の全質量に対して、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。溶媒の使用量が10質量%以上であると、ハンドリング性に優れることから好ましい。一方、溶媒の使用量が90質量%以下であると、経済性の観点から好ましい。
【0054】
<添加剤>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤、難燃剤、無機充填剤、シランカップリング剤、離型剤、顔料、着色剤、乳化剤等の種々の添加剤を配合することができる。
【0055】
<硬化促進剤>
前記硬化促進剤としては、特に制限されないが、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、尿素系硬化促進剤等が挙げられる。なお、前記硬化促進剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
前記リン系硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリパラトリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の有機ホスフィン化合物;トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト等の有機ホスファイト化合物;エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムジシアナミド、ブチルフェニルホスホニウムジシアナミド、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩等のホスホニウム塩等が挙げられる。
【0057】
前記アミン系硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(4-ジメチルアミノピリジン、DMAP)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-ノネン-5(DBN)等が挙げられる。
【0058】
前記イミダゾール系硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン等が挙げられる。
【0059】
前記グアニジン系硬化促進剤としては、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-ブチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド等が挙げられる。
【0060】
前記尿素系硬化促進剤としては、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、クロロフェニル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロルフェニル)-1,1-ジメチル尿素等が挙げられる。
【0061】
上述の硬化促進剤のうち、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤を用いることが硬化性の観点から好ましく、絶縁信頼性の観点から、リン系硬化促進剤が特に好ましい。
【0062】
前記硬化促進剤の使用量は、所望の硬化性を得るために適宜調整できるが、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤の混合物の合計量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の使用量が前記範囲内にあると、硬化性、及び、絶縁信頼性に優れ、好ましい。
【0063】
<難燃剤>
前記難燃剤としては、特に制限されないが、無機リン系難燃剤、有機リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。なお、難燃剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
前記無機リン系難燃剤としては、特に制限されないが、赤リン;リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム;リン酸アミド等が挙げられる。
【0065】
前記有機リン系難燃剤としては、特に制限されないが、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ブチルピロホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、(2-ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート等のリン酸エステル;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジフェニルホスフィンオキシド等ジフェニルホスフィン;10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(1,4-ジオキシナフタレン)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル-1,4-ジオキシナフタリン、1,4-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール、1,5-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール等のリン含有フェノール;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5-ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状リン化合物;前記リン酸エステル、前記ジフェニルホスフィン、前記リン含有フェノールと、エポキシ樹脂やアルデヒド化合物、フェノール化合物と反応させて得られる化合物等が挙げられる。
【0066】
前記ハロゲン系難燃剤としては、特に制限されないが、臭素化ポリスチレン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールAビス(ジブロモプロピルエーテル)、1,2-ビス(テトラブロモフタルイミド)、2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、テトラブロモフタル酸等が挙げられる。
【0067】
前記難燃剤の使用量は、前記エポキシ樹脂100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましい。難燃剤の使用量が前記範囲内であると、難燃性を付与でき、好ましい。
【0068】
<無機充填剤>
前記無機充填剤としては、特に制限されないが、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、カーボンブラック等が挙げられる。これらのうち、シリカを用いることが好ましい。この際、シリカとしては、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が用いられうる。なお、前記無機充填剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
また、前記無機充填剤は、必要に応じて表面処理されていてもよい。この際、使用されうる表面処理剤としては、特に制限されないが、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が使用されうる。表面処理剤の具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0070】
前記無機充填剤の使用量は、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との混合物の合計量100質量部に対して、100~2000質量部であることが好ましく、400~1800質量部であることがより好ましい。無機充填剤の使用量が前記範囲内にあると、低熱膨張性、難燃性、及び、絶縁信頼性に優れ、好ましい。
【0071】
また、本発明の特性を損なわない範囲であれば、前記無機充填剤に加えて、有機充填剤を配合することができる。前記有機充填剤としては、例えば、ポリアミド粒子等が挙げられる。
【0072】
<硬化物>
本発明は、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物に関する。前記硬化物は、前記エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物を用いて得られるため、高耐熱性、低吸湿性、高密着性、内部応力緩和性(熱時低弾性率)、及び、低誘電特性に優れ、有用である。特に、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物は、内部応力緩和性(熱時低弾性率)、及び、低誘電特性に優れるため、半導体封止材用途に好適に用いることができる。
【0073】
前記エポキシ樹脂組成物を硬化反応させた硬化物を得る方法としては、例えば、加熱硬化する際の加熱温度は、特に制限されないが、150~250℃であり、加熱時間としては、1~10時間であることが好ましい。
【0074】
<半導体封止材>
本発明は、前記硬化物を含むことを特徴とする半導体封止材に関する。前記エポキシ樹脂組成物を用いて得られる半導体封止材は、前記エポキシ樹脂を含有することで、得られる硬化物は、高耐熱性、低吸湿性、高密着性、内部応力緩和性(熱時低弾性率)、及び、低誘電特性を具備することができ、好ましい。
【0075】
前記半導体封止材を得る方法としては、前記エポキシ樹脂組成物に、更に任意成分である添加剤を必要に応じて加え、押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法などが挙げられる。
【0076】
<半導体装置>
本発明は、前記半導体封止材を含むことを特徴とする半導体装置に関する。前記エポキシ樹脂組成物を用いた硬化物を含む半導体封止材を含む半導体装置は、高耐熱性、低吸湿性、高密着性、内部応力緩和性(熱時低弾性率)、及び、低誘電特性を具備することができ、好ましい。
【0077】
前記半導体装置を得る方法としては、前記半導体封止材を注型、または、トランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに150~250℃で、1~10時間の間、加熱硬化する方法が挙げられる。
【0078】
<その他の用途>
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、高耐熱性、低吸湿性、高密着性、内部応力緩和性(熱時低弾性率)、及び、低誘電特性などに優れることから、半導体封止材や半導体装置だけでなく、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、接着剤やレジスト材料などに好適に使用できる。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂など、各種用途にも好適に使用可能であり、用途においては、これらに限定されるものではない。
【実施例0079】
以下に実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの範囲に限定されるものではない。なお、物性・特性の測定・評価は、以下の通り実施し、配合内容、及び、評価結果を表1~表3に示した。
【0080】
<軟化点>
JIS K7234(環球法)に準拠して、軟化点(℃)を測定した。
【0081】
<エポキシ当量の測定>
JIS K 7236に基づいて測定した。
【0082】
<150℃における溶融粘度測定法>
ASTM D4287に準拠し、ICI粘度計にて測定した。
【0083】
<GPCの測定>
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 :前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%であり、テトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0084】
〔合成例1〕
〔エポキシ樹脂中間体(1)の合成〕
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌機を取り付けたフラスコに、4,4’-ジヒドロキシビフェニル186.2g(1.0モル)とトルエン208.3gを仕込み、p-トルエンスルホン酸4.2gを加えて、110℃まで昇温した。スチレン416.6(4.0モル)gを2時間かけて滴下し、そのまま110℃で2時間反応させた。反応終了後、80℃まで降温し、20質量%水酸化ナトリウム水溶液を使用して中和した。トルエンを加熱減圧下に除去し、エポキシ樹脂中間体(1)542.5gを得た。得られたエポキシ樹脂中間体(1)の外観は固形、水酸基当量は316g/当量であった。エポキシ樹脂中間体(1)のGPCチャートを
図1に示した。
【0085】
〔実施例1〕
〔エポキシ樹脂(1)の合成〕
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、合成例1で得られたエポキシ樹脂中間体(1)316.0g(水酸基1.0当量)、エピクロルヒドリン740.0g(8.0当量)、n-ブタノール158.0gを仕込み溶解させた。60℃に昇温した後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液220.0g(1.1当量)を5時間かけて滴下した。その後、同条件で0.5時間撹拌を続けた。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留によって留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン744.0gを加え溶解した。更にこの溶液に20質量%水酸化ナトリウム水溶液5.0gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水372.0gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去してエポキシ樹脂(1)334.9gを得た。得られたエポキシ樹脂(1)の溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は1.1dPa・s、軟化点は72℃、エポキシ当量は384g/当量であった。得られたエポキシ樹脂(1)のGPCチャートを
図2に示した。
【0086】
〔合成例2〕
〔エポキシ樹脂中間体(2)の合成〕
スチレンを208.3(2.0モル)gに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、エポキシ樹脂中間体(2)374.8gを得た。エポキシ樹脂中間体(2)の外観は固形、水酸基当量は187g/当量であった。エポキシ樹脂中間体(2)のGPCチャートを
図3に示した。
【0087】
〔実施例2〕
〔エポキシ樹脂(2)の合成〕
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、合成例2で得られたエポキシ樹脂中間体(2)187.0g(水酸基1.0当量)、エピクロルヒドリン740.0g(8.0当量)、n-ブタノール158.0gを仕込み溶解させた。60℃に昇温した後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液220.0g(1.1当量)を5時間かけて滴下した。その後、同条件で0.5時間撹拌を続けた。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留によって留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン486.0gを加え溶解した。更にこの溶液に20質量%水酸化ナトリウム水溶液5.0gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水243.0gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去してエポキシ樹脂(2)228.4gを得た。得られたエポキシ樹脂(2)の溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は0.7dPa・s、軟化点は107℃、エポキシ当量は267g/当量であった。得られたエポキシ樹脂(2)のGPCチャートを
図4に示した。
【0088】
〔合成例3〕
〔エポキシ樹脂中間体(3)の合成〕
合成例1のスチレンを104.2(1.0モル)gに変更した以外は同様の操作を行い、エポキシ樹脂中間体(3)278.4gを得た。得られたエポキシ樹脂中間体(3)の外観は固形、水酸基当量は145g/当量であった。エポキシ樹脂中間体(3)のGPCチャートを
図5に示した。
【0089】
〔比較例1〕
〔エポキシ樹脂(3)の合成〕
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、合成例3で得られたエポキシ樹脂中間体(3)145.0g(水酸基1.0当量)、エピクロルヒドリン740.0g(8.0当量)、n-ブタノール158.0gを仕込み溶解させた。60℃に昇温した後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液220.0g(1.1当量)を5時間かけて滴下した。その後、同条件で0.5時間撹拌を続けた。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留によって留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン402.0gを加え溶解した。更にこの溶液に20質量%水酸化ナトリウム水溶液5.0gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水201.0gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去してエポキシ樹脂(3)192.9gを得た。得られたエポキシ樹脂(3)の溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は0.3dPa・s、軟化点は109℃、エポキシ当量は231g/当量であった。得られたエポキシ樹脂(3)のGPCチャートを
図6に示した。
【0090】
〔エポキシ樹脂(4)〕
エポキシ樹脂(4)として、市販品である、日本化薬株式会社製の商品名「NC-3000」(溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃):1.3dPa・s、軟化点:60℃、エポキシ当量:275g/当量)を使用した。
【0091】
<半導体封止用エポキシ樹脂組成物の調製>
表1に示した原材料を用いて、表2に示した組成で配合し、2本ロールを用いて、90℃で5分間溶融混練をすることで、半導体封止用エポキシ樹脂組成物を調製した。
これら各々の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、以下に示す方法にて、硬化物を作製し、以下のとおりの方法で評価した。その評価結果を表3に示した。
【0092】
【0093】
【0094】
<試験片(ガラス転移温度、熱時弾性率、吸湿率)の作製>
上記で得られた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を、硬化物の厚さが2.4mmになるように常圧プレス中で150℃、10分間の条件で硬化させた後、アフターキュアを175℃、5時間することで評価用硬化物を得た。
【0095】
<耐熱性(ガラス転移温度)>
得られた硬化物を5mm×54mmの大きさに切り出し、レオメトリック社製「固体粘弾性測定装置RSAII」を用い、レクタンギュラーテンション法によるDMA(動的粘弾性)測定により、試験片の弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度(Tg)(℃)として測定し、耐熱性を評価した。測定条件は周波数1Hz、昇温速度が3℃/分とした。なお、評価結果の値が高い方がよく、○であれば、実用上問題なく使用できる。
[ガラス転移温度の評価基準]
〇:130℃以上
×:130℃未満
【0096】
<260℃の貯蔵弾性率(熱時弾性率)>
得られた硬化物を5mm×54mmの大きさに切り出し、レオメトリック社製「固体粘弾性測定装置RSAII」を用い、レクタンギュラーテンション法によるDMA(動的粘弾性)測定により、260℃の貯蔵弾性率(熱時弾性率)(MPa)を測定し、評価した。なお、評価結果の値が低い方がよく、◎または○であれば、実用上問題なく使用できる。
[熱時弾性率の評価基準]
◎:5未満
〇:5以上~20未満
×:20以上
【0097】
<低吸湿性(吸湿率)>
得られた硬化物を75mm×25mmの大きさに切り出し、これを吸湿率用の試験片とした。吸湿率の評価は、下記式に基づき、吸湿率(%)を測定・計算し、吸湿性を評価した。測定条件としては、吸湿前と、温度/湿度:85℃/85%の環境下に300時間放置した後(吸湿後)に基づき、測定した。なお、評価結果の値が低い方がよく、◎または○であれば、実用上問題なく使用できる。
吸湿率(%)=[(試験後の試験片の質量-試験前の試験片の質量)/(試験前の試験片の質量)]×100
[吸湿率の評価基準]
◎:0.9%未満
〇:0.9%以上~1.0%未満
×:1.0%以上
【0098】
<試験片(誘電率、誘電正接)の作製>
上記で得られたエポキシ樹脂組成物を、硬化物の厚さが1.6mmになるように常圧プレス中で150℃、10分間の条件で硬化させた後、アフターキュアを175℃、5時間することで評価用の硬化物を得た。
【0099】
<誘電特性(誘電率・誘電正接)>
得られた硬化物を90mm×2mmの大きさに切り出し、105℃で2時間加熱真空乾燥させた後、温度23℃、湿度50%の室内に24時間保管したものを試験片とした。アジレント・テクノロジー株式会社製「ネットワークアナライザE8362C」を用い、空洞共振法により試験片の1GHzでの誘電率、及び、誘電正接を測定し、誘電特性を評価した。なお、評価結果の値が低い方がよく、◎または○であれば、実用上問題なく使用できる。
[誘電率の評価基準]
◎:3.0未満
〇:3.0以上~3.2未満
×:3.2以上
[誘電正接の評価基準]
◎:0.015未満
〇:0.015以上~0.020未満
×:0.020以上
【0100】
<試験片(ピール強度)の作製とピール強度の評価(密着性)>
得られた硬化物を100mm×10mmの大きさに切り出し、これをピール強度評価の試験片とした。測定条件としては、25℃の環境下で、剥離角度90度、剥離速度50mm/minでピール強度(N/m)を測定し、密着性を評価した。なお、評価結果の値が高い方がよく、◎または○であれば、実用上問題なく使用できる。
[ピール強度の評価基準]
◎:1.2N/m以上
〇:1.2N/m未満~1.0N/m以上
×:1.0N/m未満
【0101】
【0102】
上記表3の評価結果より、全ての実施例において得られた半導体封止用エポキシ樹脂組成物(ブレンド品)は、高耐熱性で、熱時弾性率が低く抑えられ、内部応力緩和性に優れ、また、低吸湿性、低誘電特性、及び、高密着性に優れる硬化物であり、半導体封止用途に適していることが確認できた。
【0103】
一方、上記表3の評価結果より、比較例1においては、スチレンの配合割合が所望の範囲を下回り、この比較例1の生成物であるエポキシ樹脂を使用した比較例2においては、熱時弾性率が高く、吸湿率が高く、低誘電特性や高密着性についても、満足できなかった。特に、吸湿率が高くなった理由としては、使用したエポキシ樹脂(3)が、他のエポキシ樹脂よりもエポキシ当量が低く、硬化反応の際に2級水酸基濃度が高くなったことに基づくものと推定される。また、比較例3においては、エポキシ樹脂としてビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(スチレン変性されていない)を使用したため、熱時弾性率が高く、低誘電特性や高密着性についても満足できず、実施例と比べて、特性が劣ることが確認された。
本発明のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物を使用し得られる硬化物は、高耐熱性、低吸湿性、高密着性、内部応力緩和性(熱時低弾性率)、及び、低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)に優れることから、半導体封止材や半導体装置だけでなく、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、接着剤やレジスト材料などに好適に使用できる。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂など、各種用途にも好適に使用可能である。