(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157637
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤
(51)【国際特許分類】
G03F 7/40 20060101AFI20221006BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G03F7/40 511
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061973
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】志垣 修平
(72)【発明者】
【氏名】柴山 亘
【テーマコード(参考)】
2H196
2H197
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196HA34
2H197CA09
2H197JA15
2H197JA17
(57)【要約】
【課題】高エッチング耐性を有し、かつ、レジストパターン間への良好な埋め込み性と、レジストパターンのライン部とスペース部で平坦化性に優れる硬化膜を形成できる、パターン反転材料及び該材料を用いる反転パターン形成方法を提供すること。
【解決手段】(A)加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンであって、それが有するシラノール基の少なくとも一部がキャッピングされている変性ポリシロキサンと、(B)硬化触媒と、(C)レジスト膜にダメージを与えない有機溶剤、とを含む、シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤及び該被覆剤を用いた反転パターン形成方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンであって、それが有するシラノール基の少なくとも一部がキャッピングされている変性ポリシロキサンと、
(B)硬化触媒と、
(C)レジスト膜にダメージを与えない有機溶剤、
とを含む、
シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤。
【請求項2】
上記(C)有機溶剤が、レジスト膜に対して難溶解性を示す疎水性アルコールを含む、
請求項1に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤。
【請求項3】
上記(C)有機溶剤が、ArF用レジスト材料からなるレジスト膜と60秒間接触させたとき、接触前のレジスト膜の膜厚に対する接触後のレジスト膜の膜厚の減少率が10%以下となる疎水性アルコールを含む、請求項2に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤。
【請求項4】
上記(A)変性ポリシロキサン中の全ケイ素原子に対するシラノール基の割合が50モル%以下である、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤。
【請求項5】
上記(A)変性ポリシロキサンが
上記加水分解縮合物が有するシラノール基の少なくとも一部がアルコール変性された加水分解縮合物の変性物、
上記加水分解縮合物が有するシラノール基の少なくとも一部がアセタール保護された加水分解縮合物の変性物、及び、
上記加水分解縮合物とアルコールの脱水反応物からなる群から選択される少なくとも一種を含む、
請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤。
【請求項6】
上記アルコールが1価アルコールである、請求項5に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤。
【請求項7】
上記(A)変性ポリシロキサンが、上記加水分解縮合物とアルコールの脱水反応物を含む、請求項5又は請求項6に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤。
【請求項8】
上記加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンが、下記式(1)で表される少なくとも1種の加水分解性シランを含む加水分解性シランの加水分解縮合物である、請求項1乃至請求項7のうちいずれか一項に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤。
【化1】
(式中、
R
1は、ケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換さ
れていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アリール基、置換されていてもよいハロゲン化アラルキル基、置換されていてもよいアルコキシアルキル基、置換されていてもよいアルコキシアリール基、置換されていてもよいアルコキシアラルキル基、もしくは置換されていてもよいアルケニル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
R
2は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、
aは0乃至3の整数を表す。)
【請求項9】
上記加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンが、
上記式(1)中のaが1である加水分解性シラン(ii)の加水分解縮合物、又は、
上記式(1)中のaが0である加水分解性シラン(i)と上記式(1)中のaが1である加水分解性シラン(ii)との共加水分解縮合物である、
請求項8に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤。
【請求項10】
上記加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンが、
上記加水分解性シラン(i):上記加水分解性シラン(ii)を、モル比にて20:80乃至40:60の割合で有する共加水分解縮合物である、
請求項9に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤。
【請求項11】
上記レジスト膜が、ArF用レジスト材料からなる膜である、請求項1乃至請求項10のうちいずれか一項に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤。
【請求項12】
基板上にレジスト膜を形成する工程、
光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、
現像中又は現像後のパターンが形成されたレジスト膜上に、請求項1乃至請求項11のうちいずれか一項に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤を塗布し、焼成して硬化膜を形成する工程、
上記硬化膜の表面をドライエッチングによりエッチバッグして、パターンが形成されたレジスト膜のレジストパターン表面を露出させる工程、
上記パターン化されたレジスト膜をウェットエッチングにより除去し、パターンを反転する工程、を含む、
反転パターン形成方法。
【請求項13】
上記パターンを反転する工程において、有機溶媒を用いたウェットエッチングにより上記パターン化されたレジスト膜を除去する、
請求項12に記載の反転パターン形成方法。
【請求項14】
上記硬化膜を形成する工程において、焼成温度は80℃乃至180℃である、請求項12又は請求項13に記載の反転パターン形成方法。
【請求項15】
請求項12乃至請求項14のうちいずれか一項に記載の反転パターン形成方法を用いる、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパターン反転材料及び該反転材料を用いたパターン反転方法に関し、詳細には、該反転材料にてレジストパターンを被覆・充填した後、ドライエッチングとウェットエッチングにより該レジストパターンを除去し反転パターンを形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造分野では、基板上に微細なパターンを形成し、このパターンに従ってエッチングを行い、基板を加工する技術が広く用いられている。
リソグラフィー技術の進展に伴い微細パターン化が進み、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーが用いられ、更に電子線やEUV(極端紫外線)を用いた露光技術が検討されている。
【0003】
パターン形成技術の一つとして、パターン反転法がある。この技術は、まず半導体基板上にレジストパターンを形成した後、該レジストパターンをシリコン系塗布液(反転材料)で被覆し、レジストパターン間を該塗布液で充填し、これを焼成して塗膜を形成する。その後シリコン含有塗膜の上部をフッ素系ガスでエッチングすることによりエッチバックしてレジストパターン上部を露出させ、続いてガスを変え酸素系ガスによりレジストパターンエッチングを除去すると、消失したレジストパターンに代わりシリコン系塗膜に由来するシリコン系のパターンが残り、パターンの反転が行われる。この反転パターンが形成されたシリコン系膜をエッチングマスクとして、その下層や基板のエッチングを行うと反転パターンが転写され、基板上にパターンが形成される。
このような反転パターンの形成に使用する材料として、ポリシロキサンを含有する組成物が提案されている(特許文献1乃至特許文献4)。
また、レジストパターンを光照射して後に使用する反転材料に含まれる有機溶剤への耐性を付与した後、非シリコーン系樹脂を含む反転材料で該レジストパターン間を充填し、アルカリ性ウェットエッチングにより、該反転材料の上部のエッチバックと、該レジストパターンの除去を行う方法も提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/145808号
【特許文献2】国際公開第2017/145809号
【特許文献3】国際公開第2018/066515号
【特許文献4】国際公開第2018/043407号
【特許文献5】特開2009-211036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ドライエッチングによるパターン反転技術においては、反転パターンを形成するシリコン系塗膜においてエッチングガスに対する耐性が必要となる。ドライエッチング耐性が不足するシリコン系塗膜ではパターン反転できず、反転できたとしても、反転パターン側壁が損傷を受け、矩形な反転パターンを得ることが難しい。また十分なドライエッチング耐性を確保するべく高ケイ素含有率の材料を使用すると、レジストパターンへの埋め込み性や上記塗膜の平坦化性が失われる虞がある。
またウェットエッチングによる反転材料のエッチバックを行う場合、特殊なウェット薬液と該ウェット薬液に対して溶解する特殊な反転材料の設計が必要となる。
【0006】
本発明は、高エッチング耐性を有し、かつ、レジストパターン間への良好な埋め込み性と、レジストパターンのライン部とスペース部で平坦化性に優れる硬化膜を形成できる、パターン反転材料及び該材料を用いる反転パターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1観点として
(A)加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンであって、それが有するシラノール基の少なくとも一部がキャッピングされている変性ポリシロキサンと、
(B)硬化触媒と、
(C)レジスト膜にダメージを与えない有機溶剤、
とを含む、
シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤に関する。
第2観点として、上記(C)有機溶剤が、レジスト膜に対して難溶解性を示す疎水性アルコールを含む、第1観点に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤に関する。
第3観点として、上記(C)有機溶剤が、ArF用レジスト材料からなるレジスト膜と60秒間接触させたとき、接触前のレジスト膜の膜厚に対する接触後のレジスト膜の膜厚の減少率が10%以下となる疎水性アルコールを含む、第2観点に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤に関する。
第4観点として、上記(A)変性ポリシロキサン中の全ケイ素原子に対するシラノール基の割合が50モル%以下である、第1観点乃至第3観点のうちいずれか一項に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤に関する。
第5観点として、上記(A)変性ポリシロキサンが
上記加水分解縮合物が有するシラノール基の少なくとも一部がアルコール変性された加水分解縮合物の変性物、
上記加水分解縮合物が有するシラノール基の少なくとも一部がアセタール保護された加水分解縮合物の変性物、及び、
上記加水分解縮合物とアルコールの脱水反応物からなる群から選択される少なくとも一種を含む、
第1観点乃至第4観点のうちいずれか一項に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤に関する。
第6観点として、上記アルコールが1価アルコールである、第5観点に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤に関する。
第7観点として、上記(A)変性ポリシロキサンが、上記加水分解縮合物とアルコールの脱水反応物を含む、第5観点又は第6観点に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤に関する。
第8観点として、上記加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンが、下記式(1)で表される少なくとも1種の加水分解性シランを含む加水分解性シランの加水分解縮合物である、第1観点乃至第7観点のうちいずれか一項に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤に関する。
【化1】
(式中、
R
1は、ケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換さ
れていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アリール基、置換されていてもよいハロゲン化アラルキル基、置換されていてもよいアルコキシアルキル基、置換されていてもよいアルコキシアリール基、置換されていてもよいアルコキシアラルキル基、もしくは置換されていてもよいアルケニル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
R
2は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、
aは0乃至3の整数を表す。)
第9観点として、上記加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンが、上記式(1)中のaが1である加水分解性シラン(ii)の加水分解縮合物、又は、上記式(1)中のaが0である加水分解性シラン(i)と上記式(1)中のaが1である加水分解性シラン(ii)との共加水分解縮合物である、第8観点に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤に関する。
第10観点として、上記加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンが、上記加水分解性シラン(i):上記加水分解性シラン(ii)を、モル比にて20:80乃至40:60の割合で有する共加水分解縮合物である、第8観点に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤に関する。
第11観点として、上記レジスト膜が、ArF用レジスト材料からなる膜である、第1観点乃至第10観点のうちいずれか一項に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤に関する。
第12観点として、基板上にレジスト膜を形成する工程、
光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、
現像中又は現像後のパターンが形成されたレジスト膜上に、請求項1乃至請求項11のうちいずれか一項に記載のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤を塗布し、焼成して硬化膜を形成する工程、
上記硬化膜の表面をドライエッチングによりエッチバッグして、パターンが形成されたレジスト膜のレジストパターン表面を露出させる工程、
上記パターン化されたレジスト膜をウェットエッチングにより除去し、パターンを反転する工程、を含む、反転パターン形成方法に関する。
第13観点として、上記パターンを反転する工程において、有機溶媒を用いたウェットエッチングにより上記パターン化されたレジスト膜を除去する、第12観点に記載の反転パターン形成方法に関する。
第14観点として、上記硬化膜を形成する工程において、焼成温度は80℃乃至180℃である、第12観点又は第13観点に記載の反転パターン形成方法に関する。
第15観点として、第12観点乃至第14観点のうちいずれか一項に記載の反転パターン形成方法を用いる、半導体装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レジストパターン間への良好な埋め込み性と、レジストパターンのライン部とスペース部における平坦化性に優れ、またレジストパターンのウェットエッチングに対して高い耐性を有する硬化膜を形成できる、シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤を提供することができる。
また本発明のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤は、比較的低温の焼成条件であっても硬化膜を形成できるため、高温焼成による下層のレジストパターン溶解などのパターン崩れを起こすことなく、レジストパターンへの埋め込み・被覆を行うことができ、良好な形状の反転パターンを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、段差基板上に例1のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤から作製した例3の硬化膜の断面SEM写真を示す図である。
【
図2】
図2は、段差基板上に例2のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤から作製した例4の硬化膜の断面SEM写真を示す図である。
【
図3】
図3は、パターン反転評価において、例1のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤にてレジストパターン被覆後のエッチバック(レジストの頭出し)後の断面SEM写真を示す図である。
【
図4】
図4は、パターン反転評価において、レジストパターンのウェットエッチング除去後における、反転パターンの断面SEM写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤]
本発明は、反転パターンを利用したパターンの形成方法に使用するパターン反転材料を対象とし、(A)加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンであって、それが有するシラノール基の少なくとも一部がキャッピングされている変性ポリシロキサンと、(B)硬化触媒と、(C)レジスト膜にダメージを与えない有機溶剤とを必須として含む、シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤(以下、単に「パターン反転用被覆剤」ともいう)に関する。
【0011】
(A)変性ポリシロキサン
本発明で使用する(A)変性ポリシロキサンは、ポリシロキサン中のシラノール基の一部がキャッピング(変性)されているポリシロキサンを指し、例えばシラノール基の一部がアルコール変性された又はアセタール保護されたポリシロキサン変性物を指す。
より具体的には、上記(A)変性ポリシロキサンは、加水分解性シランの加水分解縮合物(以下、単に「加水分解縮合物」又は「縮合物」ともいう)からなるポリシロキサンであって、それが有するシラノール基の少なくとも一部がキャッピングされたポリシロキサンを指す。
【0012】
上記変性ポリシロキサンや、変性前の(未変性)のポリシロキサンは、かご型、ラダー型、直鎖型、分岐型のいずれの主鎖を有する構造であるものとすることができる。さらにこれらポリシロキサンとして、市販のポリシロキサンを使用することができる。
【0013】
また上記変性ポリシロキサンは、その重量平均分子量を、例えば500乃至1,000,000の範囲とすることができ、パターン反転用被覆剤中での変性ポリシロキサンの析出等を抑制する観点等からは、重量平均分子量を500,000以下、より好ましくは250,000以下、より一層好ましくは100,000以下とすることができ、保存安定性と塗布性の両立の観点等からは、好ましくは700以上、より好ましくは1,000以上とすることができる。
これらの重量平均分子量は、GPC分析によるポリスチレン換算にて得られる分子量である。GPC分析は、例えばGPC装置(商品名HLC-8220GPC、東ソー株式会社製)、GPCカラム(商品名Shodex(登録商標)KF803L、KF802、KF801、昭和電工株式会社製)、カラム温度を40℃とし、溶離液(溶出溶媒)としてテトラヒドロフランを用い、流量(流速)は1.0mL/minとし、標準試料はポリスチレン(昭和電工株式会社製)を用いて行うことができる。
【0014】
上記(A)変性ポリシロキサンにおいて、全ケイ素原子に対するシラノール基の割合を50モル%以下、例えば40モル%以下、又は5乃至40モル%、又は10乃至25モル%とすることができる。すなわち、全ケイ素原子に対するシラノール基の割合が上記範囲となるように、上記シラノール基をキャッピングしてシラノール基量を調整することができる。
上記範囲にシラノール基量を調整することにより、本発明のパターン反転用被覆剤でレジストパターンを被覆したとき、平坦化された塗布面及び硬化膜を得ることができる。
また上記(A)変性ポリシロキサンにおいて、全ケイ素原子に対するキャッピングの割合(キャッピングしたシラノール基の割合)は、例えば20モル%乃至40モル%とすることができる。
【0015】
なお本明細書において平坦化とは、レジストパターンに塗布した場合、レジストのパターンが存在する部分(ライン部)と、パターンが存在しない部分(スペース部)において、その上部に存在する塗布された被覆物の膜厚差が少ないことを意味する。本発明では、例えばライン部の溝深さ(段差)h1に対する、ライン部とスペース部の膜厚差(高低差)h2の比として定義される凹凸度(%)[=(h2/h1)×100]が50%未満、例えば40%未満であるものを平坦化性が良好であると評価できる。
【0016】
上記変性ポリシロキサンは、一例として、上記加水分解縮合物が有するシラノール基の少なくとも一部がアルコール変性された又はアセタール保護された変性ポリシロキサンを挙げることができる。
例えば上記変性ポリシロキサンは、上記の加水分解性シランの加水分解縮合物において、該縮合物が有するシラノール基の少なくとも一部とアルコールのヒドロキシ基との反応により得られる反応生成物、該縮合物とアルコールとの脱水反応物、また、該縮合物が有するシラノール基の少なくとも一部をアセタール基で保護した変性物等を挙げることができる。
【0017】
上記アルコールとしては1価のアルコールを用いることができる。例えば炭素原子数3乃至10の1価アルコールを挙げることができ、直鎖アルコールよりも分岐状アルコールを好ましく用いることができる。
上記アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、tert-アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-3-ペンタノール、シクロペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-ジエチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール(メチルイソブチルカルビノール)、4-メチル-3-ペンタノール及びシクロヘキサノールが挙げられる。
また例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル(1-ブトキシ-2-プロパノール)等のアルコキシ基含有アルコールを用いることができる。
これらの中でも、好適なものとして、2-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール(メチルイソブチルカルビノール)等を挙げることができる。
【0018】
上記縮合物が有するシラノール基と、アルコールのヒドロキシ基との反応は、ポリシロキサンとアルコールと接触させ、温度40乃至160℃、例えば120℃にて、0.1乃至48時間、例えば24時間反応させることで、シラノール基がキャッピングされた変性ポリシロキサンが得られる。この時、キャッピング剤のアルコールは、(A)変性ポリシロキサンを含有するパターン反転用被覆剤において溶媒として使用することができる。
【0019】
また上記加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンとアルコールとの脱水反応物は、触媒である酸の存在下、上記ポリシロキサンをアルコールと反応させ、シラノール基をアルコールにてキャッピングし、脱水により生じた生成水を、反応系外に除去することにより製造することができる。
上記の酸は、酸解離定数(pka)が-1乃至5、好ましくは4乃至5である有機酸を用いることができる。例えば、酸は、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、安息香酸、イソ酪酸、酢酸等、中でも安息香酸、イソ酪酸、酢酸等を例示することができる。
また、酸は、70乃至160℃の沸点を有する酸を用いることができ、例えば、トリフルオロ酢酸、イソ酪酸、酢酸、硝酸等が挙げられる。
このように上記の酸としては、酸解離定数(pka)が4乃至5であるか、又は沸点が70乃至160℃であるか、いずれかの物性を有するものが好ましい。即ち、酸性度が弱いものか、又は酸性度は強くても沸点が低いものを用いることができる。
そして、酸としては酸解離定数、沸点の性質からいずれの性質を利用することも可能である。例えば、両方の性質を持つ酢酸を好ましく用いることができる。
【0020】
また上記シラノール基のアセタール保護はビニルエーテルを用いて、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ノルマルブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、及びシクロヘキシルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル化合物や、2,3-ジヒドロフラン、4-メチル-2,3-ジヒドロフラン、及び2,3-ジヒドロ-4H-ピラン等の環状ビニルエーテル化合物を用いることができる。特に、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン、又は2,3-ジヒドロフランが好ましく用いることができる。
上記シラノール基のアセタール保護は、上記加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンと、上記ビニルエーテルと、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の非プロトン性溶媒を用い、ピリジウムパラトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸等の触媒を用いて実施できる。
【0021】
なおこれらシラノール基のアルコールによるキャッピングやアセタール保護は、後述する加水分解性シランの加水分解及び縮合と同時に行ってもよい。
【0022】
上記加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサン、すなわち変性前のポリシロキサンとして、例えば、後述する式(1)で表される少なくとも1種の加水分解性シランを含む加水分解性シランの加水分解縮合物を用いることができる。
上記加水分解縮合物に係る加水分解性シランは、一種又は二種以上の加水分解性シランを含むことができる。
また、本発明において、上記加水分解性シランの「加水分解縮合物」、すなわち加水分解縮合の生成物には、縮合が完全に完了した縮合物であるポリオルガノシロキサンポリマーだけでなく、縮合が完全に完了しない部分加水分解縮合物であるポリオルガノシロキサンポリマーも包含される。このような部分加水分解縮合物も、縮合が完全に完了した縮合物と同様、加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合によって得られたポリマーであるが、部分的に加水分解で止まり、縮合しておらず、それ故、Si-OH基が残存しているものである。また、本発明の当該パターン反転用被覆剤には、加水分解縮合物の他に、未縮合の加水分解物(完全加水分解物、部分加水分解物)や、モノマー(加水分解性シラン化合物)が残存していてもよい。
なお、本明細書において、「加水分解性シラン」を単に「シラン化合物」とも称することがある。
【0023】
【化2】
式(1)中、R
1は、ケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アリール基、置換されていてもよいハロゲン化アラルキル基、置換されていてもよいアルコキシアルキル基、置換されていてもよいアルコキシアリール基、置換されていてもよいアルコキシアラルキル基、もしくは置換されていてもよいアルケニル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせを表し、R
2は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、aは0乃至3の整数を表す。
【0024】
上記(変性前の)ポリシロキサンは、上記式(1)中のaが1である加水分解性シラン(ii)の加水分解縮合物、又は、式(1)中のaが0である加水分解性シラン(i)と式(1)中のaが1である加水分解性シラン(ii)との共加水分解縮合物を用いることができる。
上記(変性前の)ポリシロキサンは、加水分解性シラン(i):加水分解性シラン(ii)がモル比として0:100乃至50:50、又は10:90乃至50:50、例えば20:80乃至40:60の割合の範囲で用いることができる。
【0025】
上記式(1)中、アルキル基として、例えば直鎖又は分枝を有する炭素原子数1乃至10のアルキル基が挙げられ、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基及び1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられる。
【0026】
また環状アルキル基を用いることもでき、例えば炭素原子数3乃至10の環状アルキル基として、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-
ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等のシクロアルキル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基及びビシクロデシル基等の架橋環式のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0027】
アリール基は、フェニル基、縮合環芳香族炭化水素化合物の水素原子を一つ取り除いて誘導される1価の基、環連結芳香族炭化水素化合物の水素原子を一つ取り除いて誘導される1価の基のいずれでもよく、その炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
例えばアリ-ル基として炭素原子数6乃至20のアリール基が挙げられ、一例としてフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基、1-ナフタセニル基、2-ナフタセニル基、5-ナフタセニル基、2-クリセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、ペンタセニル基、ベンゾピレニル基、トリフェニレニル基;ビフェニル-2-イル基(o-ビフェニリル基)、ビフェニル-3-イル基(m-ビフェニリル基)、ビフェニル-4-イル基(p-ビフェニリル基)、パラテルフェニル-4-イル基、メタテルフェニル-4-イル基、オルトテルフェニル-4-イル基、1,1’-ビナフチル-2-イル基、2,2’-ビナフチル-1-イル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
アラルキル基は、アリール基が置換したアルキル基であり、このようなアリール基及びアルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。アラルキル基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
アラルキル基の具体例としては、フェニルメチル基(ベンジル基)、2-フェニルエチレン基、3-フェニル-n-プロピル基、4-フェニル-n-ブチル基、5-フェニル-n-ペンチル基、6-フェニル-n-ヘキシル基、7-フェニル-n-ヘプチル基、8-フェニル-n-オクチル基、9-フェニル-n-ノニル基、10-フェニル-n-デシル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
上記ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基は、1以上のハロゲン原子により置換されたアルキル基、アリール基、アラルキル基であり、このようなアルキル基、アリール基及びアラルキル基の具体例としては上述したものと同じものが挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0030】
上記ハロゲン化アルキル基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。
ハロゲン化アルキル基の具体例としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル基、ペ
ンタフルオロエチル基、3-ブロモプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル基、3-ブロモ-2-メチルプロピル基、4-ブロモブチル基、パーフルオロペンチル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
上記ハロゲン化アリール基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
ハロゲン化アリール基の具体例としては、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,3-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,5-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、3,4-ジフルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、2,3,4-トリフルオロフェニル基、2,3,5-トリフルオロフェニル基、2,3,6-トリフルオロフェニル基、2,4,5-トリフルオロフェニル基、2,4,6-トリフルオロフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基、2,3,4,5-テトラフルオロフェニル基、2,3,4,6-テトラフルオロフェニル基、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2-フルオロ-1-ナフチル基、3-フルオロ-1-ナフチル基、4-フルオロ-1-ナフチル基、6-フルオロ-1-ナフチル基、7-フルオロ-1-ナフチル基、8-フルオロ-1-ナフチル基、4,5-ジフルオロ-1-ナフチル基、5,7-ジフルオロ-1-ナフチル基、5,8-ジフルオロ-1-ナフチル基、5,6,7,8-テトラフルオロ-1-ナフチル基、ヘプタフルオロ-1-ナフチル基、1-フルオロ-2-ナフチル基、5-フルオロ-2-ナフチル基、6-フルオロ-2-ナフチル基、7-フルオロ-2-ナフチル基、5,7-ジフルオロ-2-ナフチル基、ヘプタフルオロ-2-ナフチル基等が挙げられ、またこれらの基におけるフッ素原子(フルオロ基)が塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)、ヨウ素原子(ヨード基)に任意に置換された基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
上記ハロゲン化アラルキル基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
ハロゲン化アラルキル基の具体例としては、2-フルオロベンジル基、3-フルオロベンジル基、4-フルオロベンジル基、2,3-ジフルオロベンジル基、2,4-ジフルオロベンジル基、2,5-ジフルオロベンジル基、2,6-ジフルオロベンジル基、3,4-ジフルオロベンジル基、3,5-ジフルオロベンジル基、2,3,4-トリフルオロベンジル基、2,3,5-トリフルオロベンジル基、2,3,6-トリフルオロベンジル基、2,4,5-トリフルオロベンジル基、2,4,6-トリフルオロベンジル基、2,3,4,5-テトラフルオロベンジル基、2,3,4,6-テトラフルオロベンジル基、2,3,5,6-テトラフルオロベンジル基、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル基等が挙げられ、またこれらの基におけるフッ素原子(フルオロ基)が塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)、ヨウ素原子(ヨード基)に任意に置換された基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
上記アルコキシアルキル基、アルコキシアリール基、アルコキシアラルキル基は、1以上のアルコキシ基により置換されたアルキル基、アリール基、アラルキル基であり、このようなアルキル基、アリール基及びアラルキル基の具体例としては上述したものと同じものが挙げられる。
【0034】
上記アルコキシ基としては、炭素原子数1乃至20の直鎖、分岐、環状のアルキル部分を有するアルコキシ基が挙げられる。直鎖又は分枝を有するアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチロキシ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジ
メチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシロキシ基、1-メチル-n-ペンチロキシ基、2-メチル-n-ペンチロキシ基、3-メチル-n-ペンチロキシ基、4-メチル-n-ペンチロキシ基、1,1-ジメチル-n-ブトキシ基、1,2-ジメチル-n-ブトキシ基、1,3-ジメチル-n-ブトキシ基、2,2-ジメチル-n-ブトキシ基、2,3-ジメチル-n-ブトキシ基、3,3-ジメチル-n-ブトキシ基、1-エチル-n-ブトキシ基、2-エチル-n-ブトキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1,2,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロポキシ基及び1-エチル-2-メチル-n-プロポキシ基等が挙げられる。また環状のアルコキシ基としては、例えばシクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、1-メチル-シクロプロポキシ基、2-メチル-シクロプロポキシ基、シクロペンチロキシ基、1-メチル-シクロブトキシ基、2-メチル-シクロブトキシ基、3-メチル-シクロブトキシ基、1,2-ジメチル-シクロプロポキシ基、2,3-ジメチル-シクロプロポキシ基、1-エチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-シクロプロポキシ基、シクロヘキシロキシ基、1-メチル-シクロペンチロキシ基、2-メチル-シクロペンチロキシ基、3-メチル-シクロペンチロキシ基、1-エチル-シクロブトキシ基、2-エチル-シクロブトキシ基、3-エチル-シクロブトキシ基、1,2-ジメチル-シクロブトキシ基、1,3-ジメチル-シクロブトキシ基、2,2-ジメチル-シクロブトキシ基、2,3-ジメチル-シクロブトキシ基、2,4-ジメチル-シクロブトキシ基、3,3-ジメチル-シクロブトキシ基、1-n-プロピル-シクロプロポキシ基、2-n-プロピル-シクロプロポキシ基、1-i-プロピル-シクロプロポキシ基、2-i-プロピル-シクロプロポキシ基、1,2,2-トリメチル-シクロプロポキシ基、1,2,3-トリメチル-シクロプロポキシ基、2,2,3-トリメチル-シクロプロポキシ基、1-エチル-2-メチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-1-メチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-2-メチル-シクロプロポキシ基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロポキシ基等が挙げられる。
【0035】
上記アルコキシアルキル基の具体例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1-エトキシエチル基、2-エトキシエチル基、エトキシメチル基等の低級(炭素原子数5以下程度)アルキルオキシ低級(炭素原子数5以下程度)アルキル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記アルコキシアリール基の具体例としては、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-(1-エトキシ)フェニル基、3-(1-エトキシ)フェニル基、4-(1-エトキシ)フェニル基、2-(2-エトキシ)フェニル基、3-(2-エトキシ)フェニル基、4-(2-エトキシ)フェニル基、2-メトキシナフタレン-1-イル基、3-メトキシナフタレン-1-イル基、4-メトキシナフタレン-1-イル基、5-メトキシナフタレン-1-イル基、6-メトキシナフタレン-1-イル基、7-メトキシナフタレン-1-イル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記アルコキシアラルキル基の具体例としては、3-(メトキシフェニル)ベンジル基、4-(メトキシフェニル)ベンジル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
上記アルケニル基としては炭素原子数2乃至10のアルケニル基が挙げられ、例えばエテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3
-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、2-n-プロピル-2-プロペニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1,1-ジメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-3-ブテニル基、1-メチル-2-エチル-2-プロペニル基、1-s-ブチルエテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-2-ブテニル基、1,3-ジメチル-3-ブテニル基、1-i-ブチルエテニル基、2,2-ジメチル-3-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-3-ブテニル基、2-i-プロピル-2-プロペニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、1-n-プロピル-1-プロペニル基、1-n-プロピル-2-プロペニル基、2-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル基、1-t-ブチルエテニル基、1-メチル-1-エチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基、1-i-プロピル-1-プロペニル基、1-i-プロピル-2-プロペニル基、1-メチル-2-シクロペンテニル基、1-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-2-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-4-シクロペンテニル基、2-メチル-5-シクロペンテニル基、2-メチレン-シクロペンチル基、3-メチル-1-シクロペンテニル基、3-メチル-2-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-4-シクロペンテニル基、3-メチル-5-シクロペンテニル基、3-メチレン-シクロペンチル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等が挙げられ、またビシクロへプテニル基(ノルボルニル基)等の架橋環式のアルケニル基も挙げることができる。
【0037】
また、上記アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアリール基、アルコキシアラルキル基、アルケニル基における置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基、アルコキシアルキル基、アリールオキシ基、アルコキシアリール基、アルコキシアラルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基等が挙げられ、これらの具体例及びそれらの好適な炭素原子数としては、上述又は後述のものと同じものが挙げられる。
また上記置換基において挙げたアリールオキシ基は、アリール基が酸素原子(-O-)を介して結合する基であり、このようなアリール基の具体例としては上述したものと同じものが挙げられる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下であり、その具体例としては、フェノキシ基、ナフタレン-2-イルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、置換基が2以上存在する場合、置換基同士が結合して環を形成してもよい。
【0038】
上記エポキシ基を有する有機基としては、グリシドキシメチル基、グリシドキシエチル基、グリシドキシプロピル基、グリシドキシブチル基、エポキシシクロヘキシル基等が挙げられる。
上記アクリロイル基を有する有機基としては、アクリロイルメチル基、アクリロイルエチル基、アクリロイルプロピル基等が挙げられる。
上記メタクリロイル基を有する有機基としては、メタクリロイルメチル基、メタクリロイルエチル基、メタクリロイルプロピル基等が挙げられる。
上記メルカプト基を有する有機基としては、エチルメルカプト基、ブチルメルカプト基、ヘキシルメルカプト基、オクチルメルカプト基、メルカプトフェニル基等が挙げられる。
上記アミノ基を含む有機基としては、アミノ基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノフェニル基、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基等が挙げられるがこれらに限定されない。
上記アルコキシ基を含む有機基としては、例えばメトキシメチル基、メトキシエチル基が挙げられるがこれらに限定されない。ただし、アルコキシ基が直接ケイ素原子に結合する基は除かれる。
上記スルホニル基を含む有機基としては、例えばスルホニルアルキル基や、スルホニルアリール基が挙げられるがこれらに限定されない。
上記シアノ基を有する有機基としては、シアノエチル基、シアノプロピル基、シアノフェニル基、チオシアネート基等が挙げられる。
【0039】
上記アラルキルオキシ基は、アラルキルアルコールのヒドロキシ基から水素原子を取り除いて誘導される基であり、このようなアラルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
上記アラルキルオキシ基の炭素原子数は特に限定されるものではないが、例えば40以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下とすることができる。
上記アラルキルオキシ基の具体例としては、フェニルメチルオキシ基(ベンジルオキシ基)、2-フェニルエチレンオキシ基、3-フェニル-n-プロピルオキシ基、4-フェニル-n-ブチルオキシ基、5-フェニル-n-ペンチルオキシ基、6-フェニル-n-ヘキシルオキシ基、7-フェニル-n-ヘプチルオキシ基、8-フェニル-n-オクチルオキシ基、9-フェニル-n-ノニルオキシ基、10-フェニル-n-デシルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
アシルオキシ基は、カルボン酸化合物のカルボキシル基(-COOH)から水素原子を取り除いて誘導される基であり、典型的には、アルキルカルボン酸、アリールカルボン酸又はアラルキルカルボン酸のカルボキシル基から水素原子を取り除いて誘導されるアルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基又はアラルキルカルボニルオキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。このようなアルキルカルボン酸、アリールカルボン酸及びアラルキルカルボン酸におけるアルキル基、アリール基及びアラルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
上記アシルオキシ基の具体例としては、炭素原子数2乃至20のアシルオキシ基が挙げられ、例えばメチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、i-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、i-ブチルカルボニルオキシ基、s-ブチルカルボニルオキシ基、t-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、n-ヘキシルカルボニルオキシ基、1-メチ
ル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、4-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-エチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2,2-トリメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-2-メチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、及びトシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0041】
上記式(1)で表される加水分解性シランは、式(1)中、aが0であるテトラアルコキシシラン、式(1)中aが1であるメチルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン又はフェニルトリアルコキシシラン、式(1)中aが2であるジメチルジアルコキシシランのうちいずれかを含んでいることが好ましい。
中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等を好ましく用いることができる。
本発明において、例えば、上記式(1)で表される加水分解性シランとして、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランと、メチルトリメトキシシラン又はメチルトリエトキシシランとを、モル比として20:80乃至40:60の割合の範囲で用いることができる。
【0042】
加水分解シランの加水分解縮合物は、上述のシラン化合物(加水分解性シラン)を加水分解及び縮合することで得られる。
上記シラン化合物(加水分解性シラン)は、ケイ素原子に直接結合するアルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子を、すなわち式(1)における-Si-R2基であるアルコキシシリル基、アラルキルオキシシリル基、アシロキシシリル基、ハロゲン化シリル基(以下、加水分解性基と称する)を含む。
これら加水分解性基の加水分解には、加水分解性基の1モル当たり、通常0.1乃至100モル、例えば0.5乃至100モル、好ましくは1乃至10モルの水を用いる。
加水分解及び縮合の際、反応を促進する目的等で、加水分解触媒を用いてもよいし、用いずに加水分解及び縮合を行ってもよい。加水分解触媒を用いる場合は、加水分解性基の1モル当たり、通常0.0001乃至10モル、好ましくは0.001乃至1モルの加水分解触媒を用いることができる。
加水分解と縮合を行う際の反応温度は、通常、室温以上、加水分解に用いられ得る有機溶媒の常圧での還流温度以下の範囲であり、例えば20乃至110℃、また例えば20乃至80℃とすることができる。
加水分解は完全に加水分解を行う、すなわち、全ての加水分解性基をシラノール基に変えてもよいし、部分加水分解する、即ち未反応の加水分解基を残してもよい。
加水分解し縮合させる際に使用可能な加水分解触媒としては、金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基を挙げることができる。
【0043】
加水分解触媒としての金属キレート化合物は、例えばトリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-n-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-i-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-n-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-sec-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-t-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-n-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-n-ブト
キシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-sec-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-t-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-n-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-i-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-n-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-sec-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-t-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-n-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-i-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-n-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-sec-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-t-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-n-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-n-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-sec-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-t-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-n-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-i-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-n-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-sec-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-t-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等のチタンキレート化合物;トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-n-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-i-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-n-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-sec-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-t-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-n-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-n-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-sec-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-t-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-n-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-i-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-n-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-sec-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-t-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-n-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-i-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-n-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-sec-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-t-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-n-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-n-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-sec-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-t-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-n-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-i-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-n
-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-sec-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-t-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物;などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0044】
加水分解触媒としての有機酸は、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p-アミノ安息香酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0045】
加水分解触媒としての無機酸は、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0046】
加水分解触媒としての有機塩基は、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0047】
加水分解触媒としての無機塩基は、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0048】
これらの触媒のうち、金属キレート化合物、有機酸、無機酸が好ましく、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
なお本発明では、加水分解触媒として硝酸を好適に用いることができる。硝酸を使用することにより、加水分解及び縮合の後の反応溶液の保存安定性を向上させることができ、特に、加水分解縮合物の分子量変化を抑制することができる。
また、前述の通り、硝酸は、加水分解縮合物の変性物を得る際、例えばシラノール基のアルコールによるキャッピングの際にも使用し得るため、加水分解性シランの加水分解及び縮合と、加水分解縮合物のアルコールキャッピングの双方の反応に寄与できるものとなり得る観点からも好ましい。
【0050】
加水分解及び縮合をする際、溶媒として有機溶媒を用いてもよく、その具体例としては、例えばn-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘ
キサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンセン、i-プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール(メチルイソブチルカルビノール)、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、n-ヘプタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール等のモノアルコール系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン等のケトン系溶媒;エチルエーテル、i-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1-メトキシ-2-プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(1-エトキシ-2-プロパノール)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(1-メトキシ-2-プロパノールモノアセテート)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレ
ングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、エチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のエステル系溶媒;N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の含窒素系溶媒;硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3-プロパンスルトン等の含硫黄系溶媒等を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの溶媒は1種又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0051】
これら有機溶媒のなかでも、後述する(C)レジスト膜にダメージを与えない有機溶剤としても寄与できる観点から、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンセン、i-プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール(メチルイソブチルカルビノール)、sec-ヘキサノール、sec-ヘプタノール、ヘプタノール-3、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール(ジメチルイソブチルカルビノール)、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール等のモノアルコール系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒を挙げることができる。
【0052】
加水分解及び縮合反応の終了後、反応溶液をそのまま又は希釈若しくは濃縮し、それを中和し、イオン交換樹脂を用いて処理することで、加水分解及び縮合に用いた酸や塩基等の加水分解触媒を取り除くことができる。また、このような処理の前又は後に、減圧蒸留等によって、反応溶液から副生成物のアルコールや水、用いた加水分解触媒等を除去することができる。
【0053】
上記加水分解縮合物に対して、前述したシラノール基のアルコールによる変性やアセタール保護によるキャッピング処理を行い、変性ポリシロキサンを得る。なお前述したように、上記キャッピング処理は、加水分解性シランの加水分解及び縮合と同時に行ってもよいし、同時に行った後、キャッピング割合(シラノール基量)を調整するために、さらにキャッピング処理を行うことができる。
【0054】
このようにして得られた変性ポリシロキサンは、有機溶媒中に溶解しているワニスの形態として得られ、これをそのまま後述するパターン反転用被覆剤の調製に用いることができる。すなわち、上記反応溶液をそのまま(あるいは希釈して)パターン反転用被覆剤の調製に用いることができ、このとき、加水分解及び縮合に用いた加水分解触媒、キャッピング処理に用いたアルコールや酸、ビニルエーテルや、副生成物等は本発明の効果を損な
わない限り反応溶液に残存していてもよい。
得られたワニスは溶媒置換してもよいし、また適宜溶媒で希釈してもよい。なお得られたワニスは、その保存安定性が悪くなければ、有機溶媒を留去し、固形分濃度100%とすることもできる。
上記ワニスの溶媒置換や希釈等に用いる有機溶媒は、加水分解性シランの加水分解及び縮合反応に用いた有機溶媒と同じでも異なってもよい。この希釈用溶媒は、特に限定されず、1種でも2種以上でも任意に選択して用いることができる。
【0055】
(B)硬化触媒
本発明のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤は、(B)硬化触媒を含む。(B)硬化触媒を含むことにより、該パターン反転用被覆剤から形成した硬化膜は、後述するレジストパターンの除去に使用する有機溶剤に対して耐性を有するものとなる。また(B)硬化触媒の配合により、該パターン反転用被覆剤を焼成した際に硬化が促進され、比較的低温条件であっても硬化させることができる。
【0056】
上記硬化触媒としては、アンモニウム塩、ホスフィン類、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等を用いることができる。なお硬化触媒の一例として記載した下記の塩類は、塩の形態にて添加してもよいし、上記組成物中において塩を形成するもの(添加時には別化合物として添加され、系内で塩を形成するもの)のいずれであってもよい。
【0057】
上記アンモニウム塩としては、式(D-1):
【化3】
(式中、m
aは2乃至11の整数を、n
aは2乃至3の整数を、R
21はアルキル基又はアリール基を、Y
-は陰イオンを表す。)で表される構造を有する第4級アンモニウム塩、
式(D-2):
【化4】
(式中、R
22、R
23、R
24及びR
25はアルキル基又はアリール基を、Nは窒素原子を、Y
-は陰イオンを表し、且つR
22、R
23、R
24、及びR
25はそれぞれ窒素原子と結合されているものである)で表される構造を有する第4級アンモニウム塩、
式(D-3):
【化5】
(式中、R
26及びR
27はアルキル基又はアリール基を、Nは窒素原子を、Y
-は陰イオンを表す)で表される構造を有する第4級アンモニウム塩、
式(D-4):
【化6】
(式中、R
28はアルキル基又はアリール基を、Nは窒素原子を、Y
-は陰イオンを表す)で表される構造を有する第4級アンモニウム塩、
式(D-5):
【化7】
(式中、R
29及びR
30はアルキル基又はアリール基を、Nは窒素原子を、Y
-は陰イオンを表す)で表される構造を有する第4級アンモニウム塩、
式(D-6):
【化8】
(式中、m
aは2乃至11の整数を、n
aは2乃至3の整数を、Hは水素原子を、Nは窒素原子を、Y
-は陰イオンを表す)で表される構造を有する第3級アンモニウム塩を挙げることができる。
【0058】
また、上記ホスホニウム塩としては、式(D-7):
【化9】
(式中、R
31、R
32、R
33、及びR
34はアルキル基又はアリール基を、Pはリン原子を、Y
-は陰イオンを表し、且つR
31、R
32、R
33、及びR
34はそれぞれリン原子と結合されているものである)で表される第4級ホスホニウム塩を挙げることができる。
【0059】
また、上記スルホニウム塩としては、式(D-8):
【化10】
(式中、R
35、R
36、及びR
37はアルキル基又はアリール基を、Sは硫黄原子を、Y
-は陰イオンを表し、且つR
35、R
36、及びR
37はそれぞれ硫黄原子と結合されているものである)で表される第3級スルホニウム塩を挙げることができる。
【0060】
上記の式(D-1)の化合物は、アミンから誘導される第4級アンモニウム塩であり、maは2乃至11の整数を示し、naは2乃至3の整数を示す。この第4級アンモニウム塩のR21は炭素原子数1乃至18、好ましくは2乃至10のアルキル基、又は炭素原子数6乃至18のアリール基を示し、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖アルキル基や、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ジシクロペンタジエニル基等が挙げられる。また陰イオン(Y-)は、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)等のハロゲン化物イオンや、カルボキシラート(-COO-)、スルホナト(-SO3
-)、アルコラート(-O-)等の酸基を挙げることができる。
【0061】
上記の式(D-2)の化合物は、R22R23R24R25N+Y-で示される第4級アンモニウム塩である。この第4級アンモニウム塩のR22、R23、R24及びR25は炭素原子数1乃至18のアルキル基、又は炭素原子数6乃至18のアリール基である。陰イオン(Y-)は、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)等のハロゲン化物イオンや、カルボキシラート(-COO-)、スルホナト(-SO3
-)、アルコラート(-O-)等の酸基を挙げることができる。この第4級アンモニウム塩は、市販品で入手することが可能であり、例えばテトラメチルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムアセテート、塩化トリエチルベンジルアンモニウム、臭化トリエチルベンジルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化トリブチルベンジルアンモニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム等が例示される。
【0062】
上記の式(D-3)の化合物は、1-置換イミダゾールから誘導される第4級アンモニウム塩であり、R26及びR27の炭素原子数は1乃至18であり、R26及びR27の炭素原子数の総和が7以上であることが好ましい。例えばR26はメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、ベンジル基を、R27はベンジル基、オクチル基、オクタデシル基を例示することができる。陰イオン(Y-)は、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)等のハロゲン化物イオンや、カルボキシラート(-COO-)、スルホナト(-SO3
-)、アルコラート(-O-)等の酸基を挙げることができる。この化合物は、市販品で入手することもできるが、例えば1-メチルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール等のイミダゾール系化合物と、臭化ベンジル、臭化メチル等のハロゲン化アルキルやハロゲン化アリールを反応させて製造することができる。
【0063】
上記の式(D-4)の化合物は、ピリジンから誘導される第4級アンモニウム塩であり
、R28は炭素原子数1乃至18、好ましくは炭素原子数4乃至18のアルキル基、又は炭素原子数6乃至18のアリール基であり、例えばブチル基、オクチル基、ベンジル基、ラウリル基を例示することができる。陰イオン(Y-)は、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)等のハロゲン化物イオンや、カルボキシラート(-COO-)、スルホナト(-SO3
-)、アルコラート(-O-)等の酸基を挙げることができる。この化合物は、市販品として入手することもできるが、例えばピリジンと、塩化ラウリル、塩化ベンジル、臭化ベンジル、臭化メチル、臭化オクチル等のハロゲン化アルキル、又はハロゲン化アリールを反応させて製造することができる。この化合物は例えば、塩化N-ラウリルピリジニウム、臭化N-ベンジルピリジニウム等を例示することができる。
【0064】
上記の式(D-5)の化合物は、ピコリン等に代表される置換ピリジンから誘導される第4級アンモニウム塩であり、R29は炭素原子数1乃至18、好ましくは炭素原子数4乃至18のアルキル基、又は炭素原子数6乃至18のアリール基であり、例えばメチル基、オクチル基、ラウリル基、ベンジル基等を例示することができる。R30は炭素原子数1乃至18のアルキル基、又は炭素原子数6乃至18のアリール基であり、例えばピコリンから誘導される第4級アンモニウムである場合には、R30はメチル基である。陰イオン(Y-)は、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)等のハロゲン化物イオンや、カルボキシラート(-COO-)、スルホナト(-SO3
-)、アルコラート(-O-)等の酸基を挙げることができる。この化合物は市販品として入手することもできるが、例えばピコリン等の置換ピリジンと、臭化メチル、臭化オクチル、塩化ラウリル、塩化ベンジル、臭化ベンジル等のハロゲン化アルキル、又はハロゲン化アリールを反応させて製造することができる。この化合物は例えば、N-ベンジルピコリニウムクロリド、N-ベンジルピコリニウムブロミド、N-ラウリルピコリニウムクロリド等を例示することができる。
【0065】
上記の式(D-6)の化合物は、アミンから誘導される第3級アンモニウム塩であり、maは2乃至11の整数を示し、naは2乃至3の整数を示す。また陰イオン(Y-)は、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)等のハロゲン化物イオンや、カルボキシラート(-COO-)、スルホナト(-SO3
-)、アルコラート(-O-)等の酸基を挙げることができる。本化合物は、アミンとカルボン酸やフェノール等の弱酸との反応によって製造することができる。カルボン酸としてはギ酸や酢酸が挙げられ、ギ酸を使用した場合は、陰イオン(Y-)は(HCOO-)であり、酢酸を使用した場合は、陰イオン(Y-)は(CH3COO-)である。またフェノールを使用した場合は、陰イオン(Y-)は(C6H5O-)である。
【0066】
上記の式(D-7)の化合物は、R31R32R33R34P+Y-の構造を有する第4級ホスホニウム塩である。R31、R32、R33、及びR34は炭素原子数1乃至18のアルキル基、又は炭素原子数6乃至18のアリール基であり、好ましくはR31乃至R34の4つの置換基の内で3つがフェニル基又は置換されたフェニル基であり、例えばフェニル基やトリル基を例示することができ、また残りの1つは炭素原子数1乃至18のアルキル基、炭素原子数6乃至18のアリール基である。また陰イオン(Y-)は、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)等のハロゲン化物イオンや、カルボキシラート(-COO-)、スルホナト(-SO3
-)、アルコラート(-O-)等の酸基を挙げることができる。この化合物は市販品として入手することが可能であり、例えばハロゲン化テトラn-ブチルホスホニウム、ハロゲン化テトラn-プロピルホスホニウム等のハロゲン化テトラアルキルホスホニウム、ハロゲン化トリエチルベンジルホスホニウム等のハロゲン化トリアルキルベンジルホスホニウム、ハロゲン化トリフェニルメチルホスホニウム、ハロゲン化トリフェニルエチルホスホニウム等のハロゲン化トリフェニルモノアルキルホスホニウム、ハロゲン化トリフェニルベンジルホスホニウム、
ハロゲン化テトラフェニルホスホニウム、ハロゲン化トリトリルモノアリールホスホニウム、或いはハロゲン化トリトリルモノアルキルホスホニウム(以上、ハロゲン原子は塩素原子又は臭素原子)が挙げられる。特に、ハロゲン化トリフェニルメチルホスホニウム、ハロゲン化トリフェニルエチルホスホニウム等のハロゲン化トリフェニルモノアルキルホスホニウム、ハロゲン化トリフェニルベンジルホスホニウム等のハロゲン化トリフェニルモノアリールホスホニウム、ハロゲン化トリトリルモノフェニルホスホニウム等のハロゲン化トリトリルモノアリールホスホニウムや、ハロゲン化トリトリルモノメチルホスホニウム等のハロゲン化トリトリルモノアルキルホスホニウム(ハロゲン原子は塩素原子又は臭素原子)が好ましい。
【0067】
また、ホスフィン類としては、メチルホスフィン、エチルホスフィン、プロピルホスフィン、イソプロピルホスフィン、イソブチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第一ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジイソプロピルホスフィン、ジイソアミルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第二ホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン等の第三ホスフィンが挙げられる。
【0068】
上記の式(D-8)の化合物は、R35R36R37S+Y-の構造を有する第3級スルホニウム塩である。R35、R36、及びR37は炭素原子数1乃至18のアルキル基又は炭素原子数6乃至18のアリール基であり、好ましくはR35乃至R37の3つの置換基の内で2つがフェニル基又は置換されたフェニル基であり、例えばフェニル基やトリル基を例示することができ、また残りの1つは炭素原子数1乃至18のアルキル基、又は炭素原子数6乃至18のアリール基である。また陰イオン(Y-)は、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)等のハロゲン化物イオンや、カルボキシラート(-COO-)、スルホナト(-SO3
-)、アルコラート(-O-)、マレイン酸アニオン、硝酸アニオン等の酸基を挙げることができる。この化合物は市販品として入手することが可能であり、例えばハロゲン化トリn-ブチルスルホニウム、ハロゲン化トリn-プロピルスルホニウム等のハロゲン化トリアルキルスルホニウム、ハロゲン化ジエチルベンジルスルホニウム等のハロゲン化ジアルキルベンジルスルホニウム、ハロゲン化ジフェニルメチルスルホニウム、ハロゲン化ジフェニルエチルスルホニウム等のハロゲン化ジフェニルモノアルキルスルホニウム、ハロゲン化トリフェニルスルホニウム(以上、ハロゲン原子は塩素原子又は臭素原子)、トリn-ブチルスルホニウムカルボキシラート、トリn-プロピルスルホニウムカルボキシラート等のトリアルキルスルホニウムカルボキシラート、ジエチルベンジルスルホニウムカルボキシラート等のジアルキルベンジルスルホニウムカルボキシラート、ジフェニルメチルスルホニウムカルボキシラート、ジフェニルエチルスルホニウムカルボキシラート等のジフェニルモノアルキルスルホニウムカルボキシラート、トリフェニルスルホニウムカルボキシラートが挙げられる。また、ハロゲン化トリフェニルスルホニウム、トリフェニルスルホニウムカルボキシラートが好ましく用いることができる。
【0069】
また、本発明では硬化触媒として窒素含有シラン化合物を添加することができる。窒素含有シラン化合物としてはN-(3-トリエトキシシリプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール等のイミダゾール環含有シラン化合物が挙げられる。
【0070】
(B)硬化触媒は、(A)変性ポリシロキサン100質量部に対して、0.1質量部乃至20質量部、または0.5質量部乃至10質量部、または1質量部乃至5質量部である。
【0071】
(C)レジスト膜にダメージを与えない有機溶剤
本発明のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤に使用される(C)有機溶剤は、
上記(A)変性ポリシロキサン、(B)硬化触媒、並びに後述するその他成分を溶解・混和でき、かつ、レジスト膜にダメージを与えない有機溶剤である。
本明細書において「レジスト膜にダメージを与えない有機溶剤」とは、本発明の上記平坦化性パターン反転用被覆剤をレジスト膜(レジストパターン)上に塗布した際に、該レジスト膜を溶解しない(難溶解性を示す)有機溶剤を指す。
こうした有機溶剤をパターン反転用被覆剤において採用することにより、下層のレジスト膜(レジストパターン)とのインターミキシングを起こさず、また、事前にレジスト膜(レジストパターン)の耐溶剤性を高める処理、例えば、露光等の処理が不要となる。
【0072】
例えば(C)有機溶剤としては、レジスト膜に対して難溶解性を示す疎水性アルコールが挙げられる。上記難溶解性の指標として、例えば、対象となるレジスト膜と60秒間接触させた際の該レジスト膜の膜厚の減少値(減少率)を採用することができる。例えば上記疎水性アルコールとして、ArF用レジスト材料からなるレジスト膜と60秒間接触させた場合、接触前のレジスト膜厚に比べて接触後の膜厚の減少値が10nm以下、或いは、接触前のレジスト膜厚に対して接触後の膜厚の減少率が10%以下となる、疎水性をアルコールを挙げることができる。
より具体的には、例えば、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンセン、i-プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール(2-プロパノール)、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、4-メチル-2-ペンタノール(メチルイソブチルカルビノール)、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール等のモノアルコール系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒を挙げることができる。
これらの中でも、前述のポリシロキサンのキャッピングに使用するアルコールとして、また加水分解・縮合時に使用する溶媒としても使用できるという観点から、2-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール(メチルイソブチルカルビノール)等を好ましく挙げることができる。
【0073】
なお、本発明の効果を損なわない範囲において、上記(C)有機溶剤以外のその他溶剤を含んでいてもよい。このようなその他溶剤としては、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、2-エチルブタノール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール等のモノアルコール系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンタンジオール-2,4、2-メチルペンタンジオール-2,4、ヘキサンジオール-2,5、ヘプタンジオール-2,4、2-エチルヘキサンジオール-1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系溶媒;メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジ
オン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン等のケトン系溶媒;エチルエーテル、i-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のエステル系溶媒;N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン等の含窒素系溶媒;硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3-プロパンスルトン等の含硫黄系溶媒等を挙げることができる。
【0074】
本発明のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤は、上記(A)変性ポリシロキサン、(B)硬化触媒、(C)レジスト膜にダメージを与えない有機溶剤を含み、所望により後述するその他成分を含み得るものである。
上記平坦化性パターン反転用被覆剤における固形分の濃度は、当該被覆剤の全質量に対して、例えば0.1乃至50質量%、0.1乃至30質量%、0.1乃至25質量%、0.5乃至20.0質量%とすることができる。なお上記固形分とは、当該被覆剤の全成分から(C)有機溶剤(及びその他有機溶剤)を除いた成分を指す。
固形分中の上記(A)変性ポリシロキサンの含有量は、通常20質量%以上100質量%未満であるが、上述した本発明の効果を再現性よく得る観点等から、その下限値は、好ましくは50質量%、より好ましくは60質量%、より一層好ましくは70質量%、更に好ましくは80質量%であり、その上限値は、好ましくは99質量%であり、その余を、
後述の添加剤とすることができる。
また当該パターン反転用被覆剤は、好ましくはpH2~5を有し、より好ましくはpH3~4を有する。
【0075】
上記パターン反転用被覆剤は、上記(A)変性ポリシロキサンと(B)硬化触媒と(C)レジスト膜にダメージを与えない有機溶剤、さらに所望により後述するその他成分とを混合することで製造できる。この際、(A)変性ポリシロキサンを含む溶液を予め準備し、この溶液を、(B)硬化触媒と(C)レジスト膜にダメージを与えない有機溶剤や、その他の成分と混合してもよい。また、(A)変性ポリシロキサンを調製時の反応溶液をそのまま上記パターン反転用被覆剤の調製に用いることもできる。
混合順序は特に限定されるものではない。例えば、(A)変性ポリシロキサンを含む溶液に、(B)硬化触媒と(C)レジスト膜にダメージを与えない有機溶剤を加えて混合し、その混合物にその他の成分を加えてもよく、(A)変性ポリシロキサンを含む溶液と、(B)硬化触媒と、(C)レジスト膜にダメージを与えない有機溶剤、そしてその他の成分を同時に混合してもよい。
必要であれば、最後に更に(C)レジスト膜にダメージを与えない有機溶剤を追加で加えたり、(C)レジスト膜にダメージを与えない有機溶剤に比較的溶けやすい一部の成分を混合物中に含めずにおき、最後にそれを加えたりしてもよいが、構成成分の凝集や分離を抑制し、均一性に優れる組成物を再現性よく調製する観点から、(A)変性ポリシロキサンが良好に溶解した溶液を予め準備し、これを用いて組成物を調製することが好ましい。なお、(A)変性ポリシロキサンは、共に混ぜられる(B)硬化触媒と(C)レジスト膜にダメージを与えない有機溶剤の種類や量、またその他の成分の量や性質等によっては、これらが混ぜられた際に凝集又は沈殿する可能性がある点に留意する。
また、(A)変性ポリシロキサンが溶解した溶液を用いて組成物を調製する場合、最終的に得られる組成物中の(A)変性ポリシロキサンが所望の量となるように、(A)変性ポリシロキサンの溶液の濃度やその使用量を決める必要がある点も留意する。
組成物の調製において、成分が分解したり変質したりしない範囲で、適宜加熱してもよい。
【0076】
本発明において、上記パターン反転用被覆剤を製造する途中の段階において、又は全ての成分を混合した後に、サブマイクロメートルオーダーのフィルタ等を用いてろ過してもよい。なおこのとき用いられるフィルタの材料種は問わないが、例えばナイロン製フィルタ、フッ素樹脂製フィルタ等を用いることができる。
【0077】
本発明のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤には、種々の添加剤を配合可能である。
上記添加剤としては、例えば、架橋剤、架橋触媒、安定化剤(有機酸、水、アルコール等)、有機ポリマー化合物、光酸発生剤(オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ジスルホニルジアゾメタン化合物等)、界面活性剤(ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、UV硬化型界面活性剤等)、レオロジー調整剤、接着補助剤等、レジスト下層膜や、反射防止膜、パターン反転用膜など、半導体装置の製造に使用され得る各種膜を形成する材料(組成物)に配合される公知の添加剤を挙げることができる。
なお以下に各種添加剤を例示するが、これらに限定されるものではない。
【0078】
<界面活性剤>
界面活性剤は、上記シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤をレジストパターン上に塗布した際に、ピンホール、ストレーション等の発生を抑制するのに有効である。上記界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、UV硬化型界面活性剤等が挙げられ
る。より具体的には、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、商品名エフトップ(登録商標)EF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株)(旧(株)トーケムプロダクツ)製)、商品名メガファック(登録商標)F171、F173、R-08、R-30、R-30N、R-40LM(DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431(スリーエムジャパン(株)製)、商品名アサヒガード(登録商標)AG710(AGC(株)製)、サーフロン(登録商標)S-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(AGCセイミケミカル(株)製)等のフッ素系界面活性剤、及びオルガノシロキサンポリマ-KP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
界面活性剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
界面活性剤が使用される場合、その配合量は、例えば(A)変性ポリシロキサンの質量に対して、通常0.0001~5質量%であり、好ましくは0.001~4質量%、より好ましくは0.01~3質量%とすることができる
【0079】
<レオロジー調整剤>
上記レオロジー調整剤は、主に上記シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤の流動性を向上させ、特にベーキング工程において、形成される膜の膜厚均一性の向上や、ホール内部への組成物の充填性を高める目的で添加される。具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジi-ブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルi-デシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジ-i-ブチルアジペート、ジ-i-オクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、またはノルマルブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体等を挙げることができる。
これらのレオロジー調整剤が使用される場合、その添加量は、上記シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤の全固形分に対して通常30質量%未満である。
【0080】
[反転パターン形成方法]
本発明は、上記シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤をリバース材料(パターン反転材料)として用いたパターン反転方法、すなわち反転パターン形成方法も対象とする。
上記パターン反転方法は、通常、基板上にレジスト膜を形成する工程(1);光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程(2);現像中又は現像後のパターンが形成されたレジスト膜上に、上記シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤を塗布し、焼成して硬化膜を形成する工程(3);上記硬化膜の表面をドライエッチングによりエッチバッグして、パターンが形成されたレジスト膜のレジストパターン表面を露出させる工程(4);そして、上記パターン化されたレジスト膜をウェットエッチングにより除去し、パターンを反転する工程(5)を含む。
上記のとおり、本発明のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤はレジストパターン上被覆するための被覆剤であり、より詳細にはラインアンドスペースのレジストパターン上に被覆するための被覆剤である。上記被覆剤は粗と密なパターンエリア(ライン部)のレイアウトを有するレジストパターン上に被覆する。
また、上記レジストパターンは、ナノインプリントで形成されたパターンを用いることもできる。
【0081】
<工程(1)>
本発明のパターン反転方法に使用する基板としては、精密集積回路素子の製造に使用される基板〔例えば、酸化珪素膜、窒化珪素膜又は酸化窒化珪素膜で被覆されたシリコンウエハー等の半導体基板、窒化珪素基板、石英基板、ガラス基板(無アルカリガラス、低アルカリガラス、結晶化ガラスを含む。)、ITO(インジウムスズ酸化物)膜やIZO(インジウム亜鉛酸化物)膜が形成されたガラス基板、プラスチック(ポリイミド、PET等)基板、低誘電率材料(low-k材料)被覆基板、フレキシブル基板等〕などが挙げられる。
これら基板上に、スピンコート法、ディップ法、フローコート法、インクジェット法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の適当な塗布方法により、塗布型レジスト材料(例えばフォトレジスト膜形成用組成物)を塗布し、焼成することにより、フォトレジスト材料の層(レジスト膜)を形成する。焼成条件は、例えば焼成温度70乃至150℃で、焼成時間0.5乃至5分間とすることができる。
レジスト膜の膜厚は、例えば10nm~10,000nmであり、又は100nm~2,000nmであり、又は200nm~1,000nmであり、又は30nm~200nmである。
【0082】
工程(1)においてレジスト膜の形成に使用されるフォトレジスト材料としては、露光に使用される光(例えば、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー等)に感光するものであれば特に限定はされず、ネガ型フォトレジスト材料及びポジ型フォトレジスト材料のいずれも使用できる。例えば、ノボラック樹脂と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト材料、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト材料、酸により分解してフォトレジスト材料のアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト材料、及び酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジスト材料のアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト材料等がある。
市販品として入手可能な具体例としては、シプレー社製商品名APEX-E、住友化学(株)製商品名PAR710、JSR(株)製;商品名AR2772JN、及び信越化学工業(株)製商品名SEPR430等が挙げられるが、これらに限定されない。また、例えば、Proc.SPIE,Vol.3999,330-334(2000)、Proc.SPIE,Vol.3999,357-364(2000)、やProc.SPIE,Vol.3999,365-374(2000)に記載されているような、含フッ素原子ポリマー系フォトレジスト材料を挙げることができる。
【0083】
また、上記レジスト膜には、フォトレジスト膜に替えて電子線リソグラフィー用レジスト膜(電子線レジスト膜とも称する)、又はEUVリソグラフィー用レジスト膜(EUVレジスト膜とも称する)を用いることができる。
上記電子線レジスト材料としては、ネガ型材料、ポジ型材料のいずれも使用できる。その具体例としては、酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる化学増幅型レジスト材料、アルカリ可溶性バインダーと酸発生剤と
酸により分解してレジスト材料のアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト材料、酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーと酸により分解してレジスト材料のアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト材料、電子線によって分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる非化学増幅型レジスト材料、電子線によって切断されアルカリ溶解速度を変化させる部位を有するバインダーからなる非化学増幅型レジスト材料などがある。これらの電子線レジスト材料を用いた場合も、照射源を電子線としてフォトレジスト材料を用いた場合と同様にレジスト膜のパターンを形成することができる。
また上記EUVレジスト材料としては、メタクリレート樹脂系レジスト材料を用いることができる。
【0084】
これらの中でも、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト材料、例えばアクリル系フォトレジスト材料、メタクリル系フォトレジスト、特にアクリル系又はメタクリル系のポジ型フォトレジスト材料を好ましく用いることができる。
【0085】
なお、工程(1)は、基板上にレジスト膜を形成する前に、基板上にレジスト下層膜を形成する段階を含む工程(1-1)とすることができる。ここでレジスト下層膜は反射防止や有機系のハードマスク機能を有するものである。この場合、レジスト膜の形成は、半導体基板上にレジスト下層膜を形成した後に実施される。
【0086】
また、工程(1-1)は、基板上にレジスト下層膜を形成する段階と、該下層膜上にケイ素のハードマスクを形成する段階と、該ハードマスク上にレジスト膜を形成する段階を含む工程とすることができる。
【0087】
上記工程(1-1)で用いられるレジスト下層膜は、上層レジスト膜の露光時の乱反射を防止するものであり、また、レジスト膜との密着性を向上する目的で用いるものであり、例えばアクリル系樹脂やノボラック系樹脂を用いることができる。レジスト下層膜は半導体基板上に膜厚1乃至1,000nmの被膜を形成することができる。
【0088】
また、工程(1-1)に用いられるレジスト下層膜は、有機樹脂を用いたハードマスクであり、炭素含有量が高く水素含有量が低い材料が用いられる。例えばポリビニルナフタレン系樹脂、カルバゾールノボラック樹脂、フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等が挙げられる。これらは半導体基板上に膜厚5乃至1,000nmで被膜を形成することができる。
【0089】
また上記工程(1-1)に用いられるケイ素のハードマスクとしては、加水分解性シランを加水分解して得られたポリシロキサンを用いることができる。例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、及びフェニルトリエトキシシランを加水分解し得られるポリシロキサンを例示することができる。これらは上記レジスト下層膜の上に膜厚5乃至200nmで被膜を形成することができる。
【0090】
<工程(2)>
続いて工程(2)として、所定のマスクを通して露光(光又は電子線の照射)を行い、現像して、レジストパターンを形成する。
まず上記レジスト膜に対して、所定のマスク(レクチル)を通して露光を行う。露光には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、F2エキシマレーザー(波長157nm)、EUV(波長13.5nm)、電子線等を使用することができる。
露光後、必要に応じて露光後加熱(post exposure bake)を行なうこともできる。露光後加熱は、加熱温度70℃~150℃、加熱時間0.3分間~10分間から適宜選択された条件で行われる。
【0091】
次いで、現像液(例えばアルカリ現像液)によって現像が行なわれる。これにより、例えばポジ型フォトレジスト膜が使用された場合は、露光された部分のフォトレジスト膜が除去され、フォトレジスト膜のパターンが形成される。
現像液(アルカリ現像液)としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液(アルカリ現像液)等を例として挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件としては、温度5乃至50℃、時間10秒乃至600秒から適宜選択される。
【0092】
<工程(3)>
続いて、工程(3)として、現像中又は現像後のパターンが形成されたレジスト膜上に、上記シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤を塗布し、焼成して硬化膜を形成する。本工程により、形成されたレジストパターン内に、パターン反転用被覆剤が埋め込まれることとなる。
【0093】
上記塗布法としては上述の方法を採用できる。
また焼成条件としては、焼成温度80℃乃至150℃、焼成時間0.5乃至2分間である。なお、膜厚の分布に偏りがなく、高い均一性を発現させたり、また硬化触媒による反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよい。なお本発明にあっては前述の(B)硬化触媒の配合により、焼成時にパターン反転用被覆剤の硬化が促進され、上記の比較的低温の焼成条件であっても硬化膜が得られる。焼成温度を上記範囲よりも高くすると、膜の硬化は促進されるものの、下層のレジスト膜に含まれるバインダのガラス転移点以上の温度となる虞があり、その場合、レジスト膜が溶融するなどの不具合が生じる虞がある。
焼成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、大気、窒素等の不活性ガス、真空中等の適切な雰囲気下で溶媒を蒸発させればよい。
硬化膜の膜厚は下層のレジストパターンを被覆する厚さに適宜調整され、例えば、10乃至1,000nmであり、または20乃至500nmであり、または50乃至300nmであり、または100乃至200nmであり、または10乃至100nmである。
【0094】
なお上記硬化膜の形成時に使用するシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤として、ナイロンフィルタろ過したシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤を用いることができる。ここでナイロンフィルタろ過したシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤とは、該被覆剤を製造する途中の段階において、又は全ての成分を混合した後に、ナイロンフィ
ルタろ過を行った被覆剤を指す。
【0095】
<工程(4)>
工程(3)後、本発明のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤の硬化膜の表面をエッチバックして、レジストパターン表面(レジストのパターンが存在する部分(ライン部))を露出させる。
本工程により、レジストパターン表面(レジストのパターンが存在する部分(ライン部))と上記硬化膜の表面が一致し、レジストパターンと硬化膜のガスエッチング速度の違
いから、レジスト成分のみを除去し、硬化膜の成分が残り、結果的にパターンの反転が生じる。
エッチバックは、硬化膜を除去できるガスによりドライエッチングにて実施され、例えば、テトラフルオロメタン(CF4)、パーフルオロシクロブタン(C4F8)、パーフルオロプロパン(C3F8)、トリフルオロメタン、ジフルオロメタン(CH2F2)等のフッ素系ガスによって実施される。
【0096】
<工程(5)>
工程(5)では、レジストパターン(パターン化されたレジスト膜)をエッチング除去してパターンを反転させる。
本工程により、当初のレジストパターンを除去し、シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤に含まれていたパターン反転形成用ポリマー(変性ポリシロキサンの硬化物)によるリバースパターンが形成される。
【0097】
本発明では、レジスト膜の除去をウェットエッチングによって除去することを特徴とする。
レジスト膜の除去をドライエッチングにて行う場合、上記硬化膜においてエッチングガスに対する耐性が必要となる。上述したように、反転材料のドライエッチング耐性を上げるべくケイ素含有率を高めると、レジストパターンへの埋め込み性や平坦化性が失われる虞がある。
また、ドライエッチングによるレジスト膜の除去では、反転パターンのパターントップ(表面)や側壁の形状に不具合を生じ得、矩形の反転パターンを得ることが難しく、さらには、レジスト膜だけでなく、その下の層にまでエッチング対象が及ぶ場合もある。
本発明ではレジスト膜の除去手段としてウェットエッチングを採用することにより、非硬化膜であるレジスト膜を選択的に除去することができる。
【0098】
上記レジストパターンのウェットエッチングに使用する薬液としては、例えばレジストパターンの現像時に現像液として使用可能な有機溶媒を用いることができる。
上記薬液(有機溶媒)としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2-エトキシブチルアセテート、4-エトキシブチルアセテート、4-プロポキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオ
ン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート等を例として挙げることができ、これらは1種を単独で、また2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、これらの薬液に界面活性剤などを加えることもできる。
【0099】
ウェットエッチングの条件としては、温度は20℃乃至80℃、時間は10秒~600秒から適宜選択される。
【0100】
本発明では上述したように基板上にレジストパターンを形成し、そのレジストパターンを本発明のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤で被覆する。これによりレジストパターン間にシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤が充填され、その後焼成し、硬化膜を形成する。その後該硬化膜の上部をフッ素系ガスでエッチングによりエッチバックしてレジストパターン上部を露出させ、そしてレジストパターンをウェットエッチングにより除去することにより、レジストパターンが消失しシリコン系硬化膜に由来するシリコン系のパターンが残り、パターンの反転が行われる。
【0101】
上記エッチバックの際にシリコン系硬化膜表面がある一定水準で平坦化されていない場合は、レジストパターンの表面が露出するまでエッチバックした時に、レジストパターンのライン部上部と埋め込まれたスペース部が水平にならず、パターンを反転した後も一定の水平な反転パターンが得られない。これは後に行われる下層のエッチングにおいて不均一な下層の加工につながるため好ましくない。
本発明のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤は、ポリシロキサン中のシラノール基をキャッピングにした変性ポリシロキサンを用いることで、半導体基板上に形成されたレジストパターンを該被覆剤で被覆する際に良好な埋め込み性を有する平坦な被覆面が得られ、良好なパターンの反転が行われる。
また本発明のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤は、硬化触媒とレジスト膜にダメージを与えない有機溶剤を用いることにより、レジストパターンの被覆時にレジストパターン形状への悪影響を抑制でき、レジストパターンの除去に際してはウェットエッチングを選択でき、非硬化膜であるレジスト膜を選択的に除去することができる。
【0102】
以上説明した本発明のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤と、本発明の反転パターン形成方法により、反転パターン(リバースパターン)が得られ、これを用いて好適に半導体基板を加工することができる。したがって本発明は、上記反転パターン形成方法を用いる半導体素子の製造方法も対象とする。
【実施例0103】
以下、例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記例示のみに限定されるものではない。
【0104】
なお以下に示す試料の物性の分析に使用した装置及び条件は、以下のとおりである。
(1)分子量測定
本発明で用いるポリシロキサンの分子量は、GPC分析によるポリスチレン換算で得られる分子量である。
GPCの測定条件は、例えばGPC装置(商品名HLC-8220GPC、東ソー株式会社製)、GPCカラム(商品名Shodex(登録商標)KF803L、KF802、KF801、昭和電工株式会社製)、カラム温度は40℃、溶離液(溶出溶媒)はテトラヒドロフラン、流量(流速)は1.0mL/min、標準試料はポリスチレン(昭和電工株式会社製)を用いて行うことができる。
(2)1H-NMR
JEOL製核磁気共鳴装置1H-NMR(400MHz)、溶媒はd6-Acetoneを用いて評価した。
【0105】
[ポリマー(変性ポリシロキサン)の合成]
<合成例1>
テトラエトキシシラン22.2g(30mol%)、メチルトリエトキシシラン44.4g(70mol%)およびアセトン100gを500mLのフラスコに入れ、そのフラスコ内の混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、0.01mol/Lの硝酸水溶液21.2gをその混合溶液に滴下した。
滴下後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で20時間反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、その反応溶液に4-メチル-2-ペンタノールを100g加え、アセトン、水及び硝酸、並びに反応副生物であるエタノールを反応溶液から減圧留去し濃縮して、共加水分解縮合物(ポリマー)の4-メチル-2-ペンタノール溶液を得た。固形分濃度が13質量%となるように適宜4-メチル-2-ペンタノールを加えて調整した。
上記ポリマー溶液15gに対し酢酸を20mg加えた。120℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で48時間反応させた。GPCによる重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で4,000であった。
得られたポリシロキサンは、シラノール基の一部が4-メチル-2-ペンタノールでキャッピングされたポリシロキサン(変性ポリシロキサンP1)であった。
【0106】
<合成例2>
テトラエトキシシラン64.7g(60mol%)、メチルトリエトキシシラン36.9g(40mol%)およびアセトン100gを500mLのフラスコに入れ、そのフラスコ内の混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、0.01mol/Lの硝酸水溶液32.6gをその混合溶液に滴下した。
滴下後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で20時間反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、その反応溶液に4-メチル-2-ペンタノールを100g加え、アセトン、水及び硝酸、並びに反応副生物であるエタノールを反応溶液から減圧留去し濃縮して、共加水分解縮合物(ポリマー)の4-メチル-2-ペンタノール溶液を得た。
上記ポリマー溶液を140℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で24時間反応させた。固形分濃度が13質量%となるように適宜4-メチル-2-ペンタノールを加えて調整した。GPCによる重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で4,000であった。
得られたポリシロキサンは、シラノール基の一部が4-メチル-2-ペンタノールでキャッピングされたポリシロキサン(変性ポリシロキサンP2)であった。
【0107】
〔シラノール基比率及びキャッピング比率の算出〕
ポリマー中のシラノール基比率及びキャッピング比率は1H NMRにて算出した。測定はJNM-ECA500(JEOL製)を用いて行った。まずメチルトリエトキシシランのメチルプロトンの化学シフト値(0.0-0.3ppm)の積分比を取り基準とした。
4-メチル-2-ペンタノールのメチンプロトンの化学シフト値は3.8ppm付近に検出されるが、シラノール基との脱水縮合反応によりケイ素原子と結合を形成した場合、すなわちシラノール基の4-メチル-2-ペンタノールによるキャッピング反応が起こった場合、メチンプロトンの化学シフト値が4.2ppm付近に移動する。キャッピング反応後、4.2ppm付近に移動したメチンプロトンの積分比を測定し、先に測定したメチルトリエトキシシランのメチルプロトンの積分比を比較することで、ポリマー中のケイ素
原子1個に対するシラノール基比率(残存率)及び4-メチル-2-ペンタノールのキャッピング比率を算出した。
【0108】
合成例1および比較合成例1で作成した変性ポリシロキサンP1、CP1を用いて、該ポリシロキサン中のシラノール基比率、4-メチル-2-ペンタノールのキャッピング比率を算出した。得られた結果を表1に示す。なお表1中、4-メチル-2-ペンタノールをMIBCと略記する。
【0109】
【0110】
[塗布液の調製]
上記合成例で得られた変性ポリシロキサン(P1、P2)、硬化触媒(ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド)、及び溶媒を表2に示す割合で混合して、例1及び例2のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤(塗布液)を得た。表2中の各添加量は質量部で示した。
なお、変性ポリシロキサン(ポリマー)は上記合成例で得た変性ポリシロキサンを含む溶液として用い、ここに硬化触媒を添加し、溶媒をさらに添加して塗布液を調整しているが、表2に示すポリマーの含有割合は、ポリマー溶液ではなく、ポリマー溶液から溶剤を除いた固形分の含有割合を示す。
表2中、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリドをBTEAC、4-メチル-2-ペンタノールをMIBCと略記する。
【0111】
【0112】
[平坦化性及び埋め込み性評価]
例1及び例2の各シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤(塗布液)について、下記手順にて平坦化性及び埋め込み性を評価した。
段差基板(エリア(a)溝の深さ220nm、溝の幅50nm-エリア(b)溝(パターン)なし-エリア(c)溝の深さ220nm、溝の幅800nm、からなる連続パターンを有する基板)上に、スピンコーターを用いて、回転数1,500rpm、60秒間の条件にて、例1又は例2のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤を塗布し、その後140℃のホットプレート上で1分間乾燥して、例3又は例4の硬化膜を得た。該硬化膜
の膜厚は120nmとした。
次いで、得られた硬化膜について、断面SEMにより断面の形状を観察し、平坦化性を評価した。平坦化性は、上記段差基板の溝パターンを観察し、溝底部を基準として最も膜厚の低い箇所と最も膜厚が高い箇所の膜厚を測定し、これらから膜厚差を算出した。膜厚差が少ないものほど平坦化性が良好と評価できる。
また、断面SEMより溝内部の空隙等の有無を確認し、埋め込み不良(空隙)が確認されたものは不良、埋め込み不良が確認されないものは良好と評価した。
得られた結果を表3に示す。また評価に使用した硬化膜の断面SEM写真(倍率:10万倍)を
図1(例3)及び
図2(例4)にそれぞれ示す。なお各図において、(a)、(b)、(c)は、それぞれ上記エリア(a)溝の深さ220nm、溝の幅50nm、(bエリア(b)溝(パターン)なし(段差基板のライン部)、エリア(c)溝の深さ220nm、溝の幅800nmに対応する。
【0113】
【0114】
表3並びに
図1に示すように、例1のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤は溝への埋込性が良好であり、例2と比べてより平坦化性に優れる例3の硬化膜が得られた。
例2の被覆剤は、溝中に空隙(
図2(a)の溝中、黒い斑点)が観察され、例1の被覆剤と比べて膜厚差が大きい結果となった(
図1(c)及び
図2(c)参照)。
【0115】
[パターン反転評価]
<フォトレジストパターンの形成>
レジスト下層膜材料(ARC29A、日産化学(株)製)をスピナーによりシリコンウエハー上に塗布した。該シリコンウエハーをホットプレート上に配置し、205℃で1分間加熱し、膜厚80nmのレジスト下層膜を形成した。このレジスト下層膜の上に、市販のアクリル系フォトレジスト溶液をスピナーにより塗布し、ホットプレート上で110℃にて90秒間加熱してフォトレジスト膜(膜厚0.12μm)を形成した。
次いで、スキャナー((株)ニコン製、NSR-S307E)を用い、フォトマスクを通してArF露光を行った。フォトマスクは形成すべきレジストパターンに応じて選ばれる。露光後、ホットプレート上にて、110℃で90秒間露光後加熱(PEB)を行い、冷却後、工業規格の60秒シングルパドル式工程にて、現像液として2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像した。
以上の工程を経て、目的とするレジストパターン(65nm線幅の1:1のラインアンドスペースパターン)を形成した。
【0116】
<レジストパターン埋め込みプロセス>
シリコンウエハー上に形成されたレジストパターン(65nm線幅の1:1のラインアンドスペースパターン)上に、例1のシリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤(塗布液)をスピナーを用いて塗布し、140℃で1秒間焼成し、レジストパターンを被覆した硬化膜を得た。
【0117】
<レジストのエッチバックおよびレジストのウェット除去プロセス>
上記レジストパターンを被覆した硬化膜について、平行平板型RIE装置 RIE-2
00NL((株)SUMCO製)を用いて、レジストの頭出し(レジストパターン表面の露出)を行った。CF
4(流量50sccm)単一ガスを用いたドライエッチングにより103秒間エッチング処理し、レジストパターンの上部を露出させた(断面SEM写真(倍率:10万倍):
図3)。
その後、60℃に加熱したOK73シンナー(東京応化工業(株)製)に該ウエハーを180秒間浸漬させ、レジストのウェット除去を実施した(断面SEM写真(倍率:10万倍):
図4)。
反転パターンが得られたなかったものを不良、良好な反転パターンが得られたものを良好と評価した。得られた結果を表4に示す。
【0118】
【0119】
表4及び
図3及び
図4に示すように、上記手順によってレジストの頭出し、そしてレジストのウェット除去が確認され、良好な反転パターンが得られたことが確認できた。