(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157652
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】焼却灰の輸送システム及び焼却灰の輸送方法
(51)【国際特許分類】
B65G 69/20 20060101AFI20221006BHJP
B65F 5/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B65G69/20
B65F5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062000
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 智彦
(72)【発明者】
【氏名】大石 千幸
【テーマコード(参考)】
3E025
3F078
【Fターム(参考)】
3E025AA04
3E025AA06
3E025BA02
3E025CA01
3E025CA02
3E025CA10
3E025DC02
3E025EA03
3E025EA10
3F078AA10
3F078CA04
3F078EA01
3F078EA04
3F078EA14
(57)【要約】
【課題】焼却灰を効率的にかつ安定して輸送することができ、更に輸送コストを大幅に削減することができる焼却灰の輸送システム及び焼却灰の輸送方法を提供する。
【解決手段】加湿された焼却灰Aを、水分含有量が所定条件を満たすように調整された焼却灰Bとする焼却灰処理手段と、車両及び船舶から選択される1種以上である輸送手段と、を有し、前記焼却灰処理手段が、前記焼却灰Aから水分を除去する水分調整手段を含み、前記焼却灰Bを、密閉容器に収容することなく前記輸送手段に積載して輸送する、焼却灰の輸送システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加湿された焼却灰Aを、水分含有量が所定条件を満たすように調整された焼却灰Bとする焼却灰処理手段と、
車両及び船舶から選択される1種以上である輸送手段と、
を有し、
前記焼却灰処理手段が、前記焼却灰Aから水分を除去する水分調整手段を含み、
前記焼却灰Bを、密閉容器に収容することなく前記輸送手段に積載して輸送する、焼却灰の輸送システム。
【請求項2】
前記焼却灰処理手段が、前記水分調整手段の後に前記焼却灰A中の水分含有量を測定する計測手段と、前記計測手段において計測された水分含有量が所定条件を満たさない焼却灰Aを、前記水分調整手段に戻す返送手段と、を更に備える、請求項1に記載の輸送システム。
【請求項3】
前記所定条件が、IMSBCコードにおける運送許容水分値以下である、請求項1または請求項2に記載の輸送システム。
【請求項4】
前記水分調整手段が、前記焼却灰Aに生石灰を添加する生石灰添加手段を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の輸送システム。
【請求項5】
前記水分調整手段が、前記焼却灰Aの粒度を調整する粒度調整手段、及び、粒度が調整された焼却灰Aを搬送する搬送手段を更に含む、請求項4に記載の輸送システム。
【請求項6】
前記粒度調整手段が、前記焼却灰Bの粒径が20mm以下となるように、前記焼却灰Aを粉砕し分級する手段である、請求項5に記載の輸送システム。
【請求項7】
前記焼却灰A中の金属を含む異物を除去する異物除去手段を更に備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の輸送システム。
【請求項8】
加湿された焼却灰Aから水分を除去することにより、水分含有量が所定条件を満たすように調整された焼却灰Bとする工程と、
前記焼却灰Bを密閉容器に収容することなく車両及び船舶から選択される1種以上に積載して、前記焼却灰Bを輸送する工程と、
を含む焼却灰の輸送方法。
【請求項9】
前記焼却灰Aから水分を除去する工程の後に、前記水分含有量を測定する工程を更に有し、前記水分含有量が所定条件を満たさない場合に、前記水分を除去する工程を再度実施する、請求項8に記載の輸送方法。
【請求項10】
前記所定条件が、IMSBCコードにおける運送許容水分値以下である、請求項8または請求項9に記載の輸送方法。
【請求項11】
前記水分を除去する工程が、前記焼却灰Aに生石灰を添加する工程を含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の輸送方法。
【請求項12】
前記焼却灰A100質量部に対して2質量部以上6質量部以下の割合で、前記焼却灰Aに前記生石灰を添加する、請求項11に記載の輸送方法。
【請求項13】
前記水分を除去する工程が、前記焼却灰Aの粒度を調整する工程、及び、粒度が調整された焼却灰Aを搬送する工程を更に含む、請求項11または請求項12に記載の輸送方法。
【請求項14】
前記粒度を調整する工程が、前記焼却灰Bの粒径が20mm以下となるように、前記焼却灰Aを粉砕し分級する工程である請求項13に記載の輸送方法。
【請求項15】
前記焼却灰A中の金属を含む異物を除去する工程を更に有する、請求項8~14のいずれか1項に記載の輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却施設等から発生する焼却灰の輸送システム及び輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への負荷軽減や、埋め立て地の確保が困難な状況を踏まえ、焼却施設等で廃棄物を燃焼させることにより発生する焼却灰をセメント原料に利用することが進められている(例えば、特許文献1)。
【0003】
焼却灰は、飛散を防止するために、焼却施設で水が散布される。従って、焼却施設から搬出される焼却灰は加湿により水分を多く含むために、輸送時の振動により焼却灰から水が分離する(以下、この現象を「液状化」と称する。)。液状化により発生した水の漏洩を防止するために、輸送の際には焼却灰をコンテナ等の密封容器に収容することが一般的となっている。水分を含んだ焼却灰を収容した密封容器は、船舶、車両等でセメント工場などの受入施設に輸送される(例えば、特許文献2)。受入施設(セメント工場)において、焼却灰から異物や金属などの不要物を除去する処理が施された後、原料としてセメント製造に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-80106号公報
【特許文献2】特開2006-273568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようなコンテナ等の密封容器を用いた輸送では、容器の分だけ積載重量が大きくなってしまい、燃料コストが高く、輸送時のCO2排出量が多いという欠点があった。
【0006】
また、輸送中に液状化が発生すると、浮き出た水の移動により重量バランスが変動するため、安定した輸送が難しくなるという問題があった。このことから、加湿された焼却灰を一度に大量輸送することは困難となっていた。特に船舶による輸送では、事故防止の観点から、振動により液状化する含水物質の積載に関して種々の規制が設けられている(IMSBCコード参照)。液状化する含水物質は、IMSBCコードで「種別A」に分類され、その輸送には、対策を施した船舶が必要とされている。このことから、焼却灰をいわゆる「ばら積み貨物船」で輸送することが困難となっていた。
【0007】
特許文献2に記載の方法では、密閉したコンテナに焼却灰を充填するために大掛かりな設備が必要となり、輸送に多大なコストを要するという原因となっていた。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、焼却灰を効率的にかつ安定して輸送することができ、更に輸送コストを大幅に削減することができる焼却灰の輸送システム及び焼却灰の輸送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが検討した結果、焼却施設で加湿された焼却灰から水分を除去し、所定の水分含有量に調整することで、輸送時に焼却灰の飛散を防止しながら液状化の発生を防止でき、このような焼却灰をコンテナ等の密封容器に収容せず直接車両や船舶に積載しても、安定して輸送することが可能であることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、上記課題を解決するために、本発明は、以下の<1>~<15>を提供する。
<1> 加湿された焼却灰Aを、水分含有量が所定条件を満たすように調整された焼却灰Bとする焼却灰処理手段と、車両及び船舶から選択される1種以上である輸送手段と、を有し、前記焼却灰処理手段が、前記焼却灰Aから水分を除去する水分調整手段を含み、前記焼却灰Bを、密閉容器に収容することなく前記輸送手段に積載して輸送する、焼却灰の輸送システム。
<2> 前記焼却灰処理手段が、前記水分調整手段の後に前記焼却灰A中の水分含有量を測定する計測手段と、前記計測手段において計測された水分含有量が所定条件を満たさない焼却灰Aを、前記水分調整手段に戻す返送手段と、を更に備える、<1>に記載の輸送システム。
<3> 前記所定条件が、IMSBCコードにおける運送許容水分値以下である、<1>または<2>に記載の輸送システム。
<4> 前記水分調整手段が、前記焼却灰Aに生石灰を添加する生石灰添加手段を含む、<1>~<3>のいずれかに記載の輸送システム。
<5> 前記水分調整手段が、前記焼却灰Aの粒度を調整する粒度調整手段、及び、粒度が調整された焼却灰Aを搬送する搬送手段を更に含む、<4>に記載の輸送システム。
<6> 前記粒度調整手段が、前記焼却灰Bの粒径が20mm以下となるように、前記焼却灰Aを粉砕し分級する手段である、<5>に記載の輸送システム。
<7> 前記焼却灰A中の金属を含む異物を除去する異物除去手段を更に備える、<1>~<6>のいずれかに記載の輸送システム。
【0011】
<8>加湿された焼却灰Aから水分を除去することにより、水分含有量が所定条件を満たすように調整された焼却灰Bとする工程と、前記焼却灰Bを密閉容器に収容することなく車両及び船舶から選択される1種以上に積載して、前記焼却灰Bを輸送する工程と、を含む焼却灰の輸送方法。
<9> 前記焼却灰Aから水分を除去する工程の後に、前記水分含有量を測定する工程を更に有し、前記水分含有量が所定条件を満たさない場合に、前記水分を除去する工程を再度実施する、<8>に記載の輸送方法。
<10> 前記所定条件が、IMSBCコードにおける運送許容水分値以下である、<8>または<9>に記載の輸送方法。
<11> 前記水分を除去する工程が、前記焼却灰Aに生石灰を添加する工程を含む、<8>~<10>のいずれかに記載の輸送方法。
<12> 前記焼却灰A100質量部に対して2質量部以上6質量部以下の割合で、前記焼却灰Aに前記生石灰を添加する、<11>に記載の輸送方法。
<13> 前記水分を除去する工程が、前記焼却灰Aの粒度を調整する工程、及び、粒度が調整された焼却灰Aを搬送する工程を更に含む、<11>または<12>に記載の輸送方法。
<14> 前記粒度を調整する工程が、前記焼却灰Bの粒径が20mm以下となるように、前記焼却灰Aを粉砕し分級する工程である<13>に記載の輸送方法。
<15> 前記焼却灰A中の金属を含む異物を除去する工程を更に有する、<8>~<14>のいずれかに記載の輸送方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明に依れば、輸送時の振動による液状化の発生が防止できるため、コンテナ等の密閉容器に焼却灰を収容することなく、輸送手段に直接積載することができる。この結果、焼却灰を効率的に輸送することができ、更に輸送コストを大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る焼却灰の輸送システムを説明するための概略構成図である。
【
図2】焼却灰Bを船舶に積載する方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の焼却灰の輸送システム及び焼却灰の輸送方法について、詳細に説明する。
[焼却灰の輸送システム]
本発明の焼却灰の輸送システムは、加湿された焼却灰Aを、水分含有量が所定条件を満たすように調整された焼却灰Bとする焼却灰処理手段と、車両及び船舶から選択される1種以上である輸送手段と、を有し、前記焼却灰処理手段が、前記焼却灰Aから水分を除去する水分調整手段を含み、前記焼却灰Bを、密閉容器に収容することなく前記輸送手段に積載して輸送するシステムである。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る焼却灰の輸送システムを説明するための概略構成図である。
図1の焼却灰の輸送システム1は、焼却施設2、搬出手段3、焼却灰処理手段10、輸送手段30、及び、最終処理施設31を有する。
【0016】
焼却施設2は、ごみ等の廃棄物を焼却処理し、焼却灰を排出する設備である。焼却施設2において、生成した焼却灰に水が散布され、焼却灰が加湿される(焼却灰A)。
本明細書において、「焼却灰A」とは、焼却施設で加湿された焼却灰だけでなく、焼却灰処理手段で水分調整されつつも水分値が後述する条件を満たさないものも含めるものとする。
【0017】
搬出手段3は、加湿された焼却灰Aを焼却施設2から搬出し、焼却灰処理手段10に運搬する手段である。搬出手段3は、車両及び船舶から選択される1種以上である。車両としては、
図1に示すトラックなどの自動車の他、鉄道が挙げられる。
なお、焼却施設2内に焼却灰処理手段10を設ける場合には、搬出手段を省略することができる。
【0018】
焼却灰処理手段10は、焼却灰Aから水分を除去して、水分含有量が所定条件を満たすように調整された焼却灰(焼却灰B)とする設備である。燃焼灰処理手段10は、焼却灰Bの水分含有量を、IMSBCコードにおける運送許容水分値以下を満たす値に調整することが好ましい。
「IMSBCコードにおける運送許容水分値」とは、IMSBCコード附録2第1.1節中、1.1.4.4「Determination of moisture content」に規定される「Transportable moisture limit」であり、流動水分値(Frow moisture point、FMP)の90%の値と定義される。本発明における「流動水分値」は、IMSBCコード附録2第1.2節「Penetration test procedure」に従って測定される値である。以下では、「IMSBCコードにおける運送許容水分値」を、単に「運送許容水分値」と称することがある。
【0019】
焼却灰処理手段10は、焼却灰Aから水分を除去する水分調整手段を備える。本発明において、水分調整手段は、少なくとも生石灰添加手段を含む。焼却灰Aに生石灰を添加することにより、焼却灰Aに含まれる水分と生石灰とが反応する。また、前記反応に伴い発生する反応熱により焼却灰Aから水分が蒸発する。この結果、焼却灰Aから効率的に水分が除去され、所定条件を満たす水分含有量の焼却灰Bを効率的に得ることができる。
【0020】
水分調整手段は、粒度調整手段及び搬送手段を更に含んでもよい。
粒度調整手段は、焼却灰Aを粉砕し分級することにより、焼却灰Aの粒度を調整する手段である。焼却灰Aの粒度が粉砕及び分級されることにより、焼却灰Aの粒径が小さくなり表面積が増大するので、焼却灰Aからの水分除去が促進される。これにより、所定の水分含有量(具体的に、運送許容水分値以下)である焼却灰(焼却灰B)を得ることができる。焼却灰Bの水分含有量を適切に調整することにより、輸送時における液状化の発生を防止できるため、密閉容器に焼却灰Bを収容することなく輸送することができる。焼却灰の飛散防止、輸送効率などを更に考慮すると、水分含有量は、運送許容水分値以下を満たしつつ、32質量%以下とすることが好ましく、28質量%以下とすることがより好ましい。ただし、焼却灰の飛散防止のためには、水分含有量は17質量%以上とすることが好ましい。
【0021】
本発明において、粒度調整手段は、焼却灰Bの粒径が所定値以下となるように、焼却灰Aの粒度を調整する。より詳細には、粒度調整手段は、焼却灰Bの粒径が20mm以下(焼却灰Bの粒径が最大でも20mm)となるように、焼却灰Aを粉砕し分級することが好ましい。
搬送手段は、粒度調整手段にて粒度調整された焼却灰Aを、焼却灰処理手段10内で次工程の各手段に搬送する。焼却灰Aが搬送手段により搬送されている間に、粒度調整により表面積が大きくなった焼却灰Aが大気に晒されることで、焼却灰Aから水分が除去することにより、所定条件を満たす水分含有量の焼却灰Bとすることができる。
【0022】
焼却灰処理手段10は、前記水分調整手段の後に計測手段及び返送手段を更に備えることが好ましい。計測手段及び返送手段を備えることにより、所定条件を満たす水分含有量の焼却灰Bを確実に得ることができる。
計測手段は、水分調整手段の後段に設けられ、水分調整手段を通過した焼却灰Aの水分含有量を測定する手段である。計測手段は、インラインで焼却灰の水分含有量を計測する手段であっても良く、サンプリングされた焼却灰の水分含有量を計測する手段(オフラインで計測する手段)であっても良い。
返送手段は、計測手段を通過した焼却灰Aのうち、水分含有量が所定条件を満たさない焼却灰を水分調整手段に戻す手段である。
【0023】
焼却灰処理手段10は、焼却灰A中に含まれる異物を除去する異物除去手段を更に備えていても良い。焼却灰Aには、異物として、鉄などの磁性金属、アルミニウム、銅、ステンレス等の非磁性金属、石やコンクリート片などが含まれる。異物除去手段により、不要物である異物を含まない焼却灰Bとすることができる。このような焼却灰Bを輸送することによって、輸送効率を向上させ、輸送コストを削減することができる。また、最終処理施設で、異物を除去する必要がなくなる。
焼却灰Aから磁性金属を除去する手段としては、磁選機などが挙げられる。焼却灰Aから非磁性金属を除去する手段としては、渦電流選別機(ECS)、高磁力選別機などが挙げられる。石やコンクリート片などはセメント原料として使用可能であるが、破砕機で破砕できなかったものは篩にて除去する。
【0024】
焼却灰処理手段の具体的構成を、一例を示しながら以下で説明する。
図1に示す焼却灰処理手段10は、焼却灰が流れる方向に順に、集積場(集積手段)11、第1の篩(粒度調整手段、異物除去手段)12、磁選機(異物除去手段)13、渦電流選別機(異物除去手段)14、ホッパ(生石灰添加手段)15、クラッシャ(粒度調整手段)16、第2の篩(粒度調整手段)17、及び、水分計測器(計測手段)19を備える。
【0025】
集積場11は、搬出手段3から焼却灰Aを受け入れ、焼却灰Aを集積する設備である。集積場11には、1つまたは複数の焼却施設2から搬出された焼却灰Aが集められる。集積場11は、屋外スペースであっても良く、倉庫、タンクなどの設備であっても良い。
焼却施設2内に焼却灰処理手段10が設けられる場合には、集積場11を省略することができる。
【0026】
第1の篩12は、焼却灰Aの中から篩の目開き以下の粒径である焼却灰Aを選別する。第1の篩12は、後段に供給される焼却灰Aの粒度を調整するとともに、比較的大きな異物を除去する役割を有する。40mmより大きい異物を第1の篩12で捕集し、40mm以下の焼却灰Aを通過させることが好ましい。すなわち、第1の篩12は、粒度調整手段でもあり、異物除去手段でもある。第1の篩12において、焼却灰Aが篩上で振動したり篩を通過する際に空気と接触し、これにより焼却灰表面から水分を蒸発させることができる。また、第1の篩12により、粗大な異物を除去することができ、後段の磁選機13及び渦電流選別機14を用いた異物除去を効率的に行うことができ、焼却灰Bの品質を向上させることができる。
本発明においては、上述の目的を達成できるのであれば、第1の篩12を他の分級手段に置換可能である。他の分級手段としては、例えば、グリズリ、トロンメルが挙げられる。
なお、焼却施設2から受け入れた焼却灰Aの性状や、最終処理設備31が要求する焼却灰Bの品質によっては、第1の篩を省略することができる。
【0027】
磁選機13は、焼却灰A中から磁性金属を除去する装置である。渦電流選別機14は、焼却灰A中から非磁性の金属を除去する手段である。磁選機及び渦電流選別機としては、公知の装置を使用することができる。
なお、焼却施設2から受け入れた焼却灰Aの性状や、最終処理設備31が要求する焼却灰Bの品質によっては、磁選機及び渦電流選別機を省略することができる。
【0028】
ホッパ15は、焼却灰Aに生石灰を添加する装置である。生石灰添加手段は、ホッパに限定されず、フィーダ、フレキシブルコンテナバッグなどであっても良い。焼却灰Aに生石灰が添加されることにより、焼却灰Aが水分計測器19までに搬送される間に、焼却灰Aと生石灰とが混合する。このとき、生石灰が焼却灰A中の水分と反応するとともに、反応熱により焼却灰Aから水分が蒸発することにより、焼却灰Aからの水分除去が促進される。
生石灰の形状は、塊状、粒状、粉体状など、形態は特に限定されない。焼却灰Aと接触させて焼却灰Aの水分を効率的に除去するためには、粒径が10mm以下の生石灰を用いることが好ましい。本発明においては、例えば、土壌改質用の生石灰を用いることができる。
【0029】
ホッパ15は、水分計測器19の上流側であり、かつ、焼却灰Aからの水分除去の目的が達成できるのであれば、設置位置は限定されない。焼却灰Aと生石灰との接触確率を高め、より効率的に生石灰による水分除去を行うとの観点では、ホッパ15は、異物除去手段よりも下流側に設置されていることが好ましい。一方、焼却灰Aと生石灰とが接触する時間が長い程、焼却灰Aからの水分除去を効果的に行うことができる点では、ホッパ15は、焼却灰処理施設10の中でもより上流に設置されることが好ましい。
具体的に、ホッパ15は、
図1に示すように、渦電流選別機14通過後のベルトコンベア(搬送手段)18cの途中経路上に設けられることが特に好ましい。
図1に示す位置であれば、異物が除去された焼却灰Aに対して生石灰を添加できるとともに、ベルトコンベア18c~18eでの搬送中、クラッシャ16の通過中、及び、第2の篩17の通過中に、焼却灰Aと生石灰とが良好に混合されるため、効果的に焼却灰Aから水分が除去される。クラッシャ16に生石灰が直接投入される構成としても、上記と同様の効果を得ることができる。異物が除去された焼却灰Aと生石灰との接触確率を高めるとの観点では、ベルトコンベア18d~18eの途中経路や、第2の篩17上に、ホッパを設置する構成としても良い。また、焼却灰Aと生石灰との接触時間を長くするとの観点では、渦電流選別機14よりも上流側にホッパを設置する構成としても良い。また、集積場11に集積されている焼却灰Aに生石灰添加手段から生石灰を添加し、重機などで混合する構成としても良い。
【0030】
クラッシャ16は、異物が除去された焼却灰Aを更に粉砕する。第2の篩17は、クラッシャ16で粉砕された焼却灰Aの中から篩の目開き以下の粒径である焼却灰Aを選別する。クラッシャ16及び第2の篩17は、焼却灰Bの粒径を調整するとともに、表面積を大きくして焼却灰からの水分除去を効率的に進行させる役割を果たす。
本発明においては、粉砕機としては特に限定されず、公知の物を使用することができる。また、上述の目的を達成できるのであれば、第2の篩17を他の分級手段に置換可能である。他の分級手段としては、例えば、風力選別機等が挙げられる。
【0031】
焼却灰Aからの水分の蒸発のしやすさ、輸送手段30に積載した場合の焼却灰Bの充填性、最終処理施設31での焼却灰Bの取り扱い性などを考慮して、第2の篩17の目開きを選択することができる。本発明においては、焼却灰Bの粒径が20mm以下(粒径が最大で20mm)となるように、クラッシャ16及び第2の篩17で分級及び粉砕を行うことが好ましい。本発明では、焼却灰Bの粒径が、好ましくは10mm以下となるように分級及び粉砕を行うと良い。なお、蒸発による水分調整のしやすさ、及び、輸送中等での焼却灰Bの飛散防止等の観点から、焼却灰Bの最大粒径が5mm以上となるように、第2の篩17の目開きを選択することが好ましい。
【0032】
図1において、集積場11、第1の篩12、磁選機13、渦電流選別機14、クラッシャ16、及び、第2の篩17は、この順で、ベルココンベア(搬送手段)18a~18dにより連絡されている。なお、搬送手段としては、ベルトコンベア、チェーンコンベア、スクリューコンベア、バケットコンベア、及び、これらの組み合わせを採用することができる。
【0033】
第2の篩17の篩下に、所定の粒径以下に調整された焼却灰を搬送するベルトコンベア(搬送手段)18eが設けられる。ベルトコンベア18eの途中経路において、水分計測器19が設けられる。水分計測器19は、ベルトコンベア18eの上部に設置される。水分計測器19は1箇所に設置されても良く、複数個所に設置されても良い。複数個所に設置される場合、水分計測器19がベルトコンベア18eの幅方向に並べて設置されても良い。また、水分計測器19が流れ方向に並べて設置されても良い。水分計測器19は、例えば赤外線水分計である。
【0034】
水分計測器19の下流側に、返送手段20としてダンパ21及びベルトコンベア22が設置される。ダンパ21の切り替えにより、ベルトコンベア18eを流れる焼却灰をベルトコンベア22に流すことができる。
【0035】
図1の構成において、ベルトコンベア22の他方端は、クラッシャ16に連絡する。なお、ベルトコンベア22の連絡先は、後述する効果を奏するのであれば、ダンパ21より上流側の如何なる箇所とすることが可能である。ただし、焼却灰の処理効率及びベルトコンベア22の設置スペースなどを考慮すると、ベルトコンベア22は、クラッシャ16、渦電流選別機14とクラッシャ16との間のベルトコンベア18c、クラッシャ16と第2の篩17との間のベルトコンベア18d、第2の篩17、水分計測器19よりも上流側のベルトコンベア18eの何れかと連絡することが好ましい。焼却灰からの水分除去に粉砕時の熱を利用できるという観点から、ベルトコンベア22は、クラッシャ16またはベルトコンベア18cに連絡することが特に好ましい。
【0036】
図1は、オンラインで焼却灰Aの水分を計測する構成であるが、本発明ではオフラインで焼却灰Aの水分を計測しても良い。この場合、第2の篩17を通過した焼却灰を回収し、回収物からサンプルを採取する。採取したサンプルの水分含有量を計測する。計測手段としては、赤外線水分計などの赤外分光法を用いた計測手段、加熱乾燥法を用いた手段などが挙げられる。
また、本発明では、返送手段としてのダンパは省略することができる。
【0037】
本発明の焼却灰処理手段10では、水分計測器19よりも上流に、焼却灰Aを乾燥させる乾燥手段が設けられていても良い。乾燥手段を設けることにより、焼却灰Aからの水分除去を更に促進させることができる。乾燥手段としては、温風器、ベルトコンベアタイプの加熱乾燥機、回転式乾燥機などが挙げられる。ただし、処理コスト削減及びCO2排出量削減の観点からは、乾燥手段を省略することが好ましい。
【0038】
輸送手段30は、焼却灰Bを焼却灰処理手段10から搬出し、最終処理施設31に輸送する手段である。このとき、焼却灰Bは、コンテナ等の密閉容器に収容されることなく輸送手段30により輸送される。これにより、焼却灰は、従来に比べて簡易な方法によって、効率的かつ安定して最終処理施設31に輸送することが可能となる。また、最終処理施設31への輸送コストを大幅に削減することができる。
輸送手段30は、具体的には、車両及び船舶から選択される1種以上である。輸送手段30としての車両は、焼却灰Bを平積み可能な荷台を有する車両であり、例えばトラック、貨物車(鉄道)などが挙げられる。輸送中の飛散防止の観点から、天蓋または帆掛けを有する車両であることが好ましい。船舶としては、ガット船、平船などのばら積み貨物船が挙げられる。本発明においては、大量輸送の観点から、輸送手段として船舶を選択することが特に好ましい。
【0039】
最終処理施設31は、焼却灰Bを利用または処理する設備である。例えば、セメント工場、溶融施設が挙げられる。
【0040】
[焼却灰の輸送方法]
本発明の焼却灰の輸送方法は、加湿された焼却灰Aから水分を除去することにより、水分含有量が所定条件を満たすように調整された焼却灰Bとする工程と、前記焼却灰Bを密閉容器に収容することなく車両及び船舶から選択される1種以上に積載して、前記焼却灰Bを輸送する工程と、を含む。
【0041】
本発明における焼却灰の輸送方法を、
図1及び
図2を参照しながら下記で説明する。
<焼却灰Aの生成>
焼却施設2において、家庭ごみ、事業系一般廃棄物等の廃棄物が焼却処理され、焼却灰が生成する。生成した焼却灰は乾燥状態である。飛散防止等のため、生成した焼却灰に水が散布される。これにより、加湿された焼却灰Aとなる。焼却灰Aは、水分含有量が20質量%以上40質量%以下程度に加湿された粉体状または塊状である。
【0042】
<焼却灰Aの搬出工程>
搬出手段3である車両や船舶に、焼却灰Aが積載される。焼却灰Aは加湿されているため、焼却施設2においてコンテナ等の密閉容器に焼却灰Aが充填され、該密閉容器が車両の荷台や船舶に積載されることが好ましい。こうすることにより、運搬時の振動による液状化の発生を防止することができる。
搬出手段3は、焼却施設2から焼却灰A(密閉容器)を焼却灰処理手段10に運搬する。
【0043】
焼却灰処理手段10に運搬された焼却灰Aは、集積場11に集められる。本発明では、焼却灰処理手段10は、複数の焼却施設2から焼却灰Aを受け入れることができる。この場合、集積場11において、複数の焼却施設2から集積された焼却灰Aが混合されても良い。
【0044】
集積場11に集積された焼却灰Aについて、水分含有量が測定される。具体的に、集積場11に集積された焼却灰Aを採取し、異物除去を行ってから、水分含有量が測定される。水分含有量は、赤外線水分計などを用いることにより、測定される。
集積場11に集積された焼却灰Aの水分含有量は、運送許容水分値と対比される。焼却灰Aの水分含有量が運送許容水分値を超える場合、焼却灰Aに対して後述の各工程が実施される。これにより、輸送工程中の振動で液状化の発生を防止できる。ここで判断基準に用いる「運送許容水分値」は、事前に複数のサンプルについて取得した値とする。具体的に、複数のサンプル(金属等の異物が除去された焼却灰A)について、IMSBCコード附録2第1.2節「Penetration test procedure」に準拠して流動水分値を測定し、その流動水分値の90%となる値(各サンプルの運送許容水分値)を取得する。判断基準に用いる「運送許容水分値」は、複数のサンプルから得た値の最低値としても良く、複数のサンプルのうちの平均値としても良い。あるいは、集積場11に集積された焼却灰Aを採取し、異物除去を行ってから上記と同様の方法で取得された運送許容水分値を、上記判断基準に用いても良い。
また、集積場11に集積された焼却灰Aの水分含有量が、運送許容水分値以下であっても32質量%を超える場合も、同様に焼却灰Aに対して後述の各工程が実施されることが好ましい。これにより、余剰の水分が除去されて輸送手段に積載される焼却灰量を実質的に増やすことができるので、輸送効率を高めることができる。
【0045】
<水分含有量調整工程>
集積された焼却灰A(加湿された焼却灰A)が集積場11から第1の篩12に搬送される。焼却灰Aは、第1の篩12により分級される(粒度調整工程)。また、篩上に残る比較的大きな粒子及び塊が除去される(異物除去工程)。ここで除去される粒子及び塊は、焼却灰Aの中から燃焼が不十分であった廃棄物や、金属などの異物等である。
第1の篩12では、篩下で回収される焼却灰Aの粒径が40mm以下となるように、焼却灰Aの粒度が調整されることが好ましい。上記粒径に調整することにより、粗大な異物を確実に除去できるとともに、後段の磁選機及び渦電流選別機での異物を効率的に行うことができる。ただし、第1の篩12の目開きが小さ過ぎると、焼却灰Bの回収率が低下する。このため、第1の篩で選別する焼却灰Aの最大粒径が40mmとなるように、第1の篩を選定することが好ましい。
第1の篩12を通過した焼却灰Aは、ベルトコンベア18aで磁選機13に搬送される(搬送工程)。
【0046】
磁選機13により、焼却灰A中に含まれる磁性金属(鉄など)が除去される(異物除去工程)。磁選機13を通過した焼却灰Aは、ベルトコンベア18bにより渦電流選別機14に搬送される(搬送工程)。渦電流選別機14により、焼却灰A中に含まれる非磁性金属(アルミニウム、銅など)が除去される(異物除去工程)。
【0047】
上記異物除去工程により、焼却灰Aから異物が除去された結果、後述するように不要物が除去された焼却灰が輸送されることになるので、輸送効率が向上して輸送コストが低減するとともに、輸送によるCO2排出量も削減することができる。
【0048】
渦電流選別機14を通過した焼却灰Aは、ベルトコンベア18cでクラッシャ16に搬送される(搬送工程)。
図1の構成では、ベルトコンベア18cで搬送される焼却灰Aに対して、ホッパ15から生石灰が添加される(生石灰添加工程)。生石灰の添加割合は、焼却灰A100質量部に対して2質量部以上6質量部以下であることが好ましい。上記添加割合とすることにより、焼却灰Aから効果的に水分を除去することができ、かつ、輸送物中の焼却灰の割合が高くなるので、輸送効率が良好となる。また、最終処理施設31がセメント工場であり、焼却灰がセメント原料に利用される場合には、生石灰もセメント原料となる。上記添加割合であれば、セメントの製造プロセスに支障を与えることなく、焼却灰をセメント製造に有効に利用することができる。なお、生石灰の添加割合を表す場合の「焼却灰A」とは、金属等の異物が除去された後の焼却灰Aである。具体的に、少なくとも第1の篩12を通過した後の焼却灰Aであり、特に磁選機13及び渦電流選別機14を通過した後の焼却灰Aである。
【0049】
クラッシャ16において、異物が除去された焼却灰Aが粉砕される(粒度調整工程)。クラッシャ16から排出された焼却灰Aは、ベルトコンベア18dで第2の篩17に搬送される(搬送工程)。
本発明において、搬送工程がベルトコンベアの場合、その搬送距離は全長で50m以上200m以下とすることが好ましく、100m以上200m以下とすることがより好ましい。また、焼却灰Aがベルトコンベアで搬送されている時間は、10分以上30分以下とすることが好ましく、20分以上30分以下とすることが好ましい。
【0050】
第2の篩17において、粉砕された焼却灰Aが分級される(粒度調整工程)。篩上に残留する焼却灰Aは回収され、ベルトコンベア(不図示)によりクラッシャ16に戻される。第2の篩17を通過した焼却灰は、ベルトコンベア18eで下流に搬送される(搬送工程)。
【0051】
本発明では、焼却灰処理手段10での処理により回収される焼却灰Bの粒径が所定値以下となるように、クラッシャ16での粉砕及び第2の篩17での分級による焼却灰Aの粒度調整が行われることが好ましい。得られる焼却灰Bの粒径に応じて、第2の篩17の目開きを選定する。第2の篩17の目開きは、水分含有量の調整のしやすさ、輸送手段での充填性、搬送の容易性、及び、最終処理施設での焼却灰Bの要求仕様などに応じて設定される。具体的に、焼却灰Bの粒径が20mm以下(すなわち、粒径が最大で20mm)となるように、焼却灰Aの粉砕及び分級を行うことが好ましい。本発明では、焼却灰Bの粒径がより好適には10mm以下なるように、粒度調整を行うことが好ましい。ただし、第2の篩17での目開きが小さすぎると、篩上の焼却灰量が増加するなど篩効率の低下などが起こりやすくなる。このことから、第2の篩を通過する焼却灰の最大粒径は、5mm以上であることが好ましい。
【0052】
本発明における焼却灰処理手段10では、第1の篩12及び第2の篩17(粒度調整工程)において、篩上で振動したり篩を通過する際に、焼却灰Aが空気と接触する。これにより、焼却灰表面から水分が蒸発しやすくなり、焼却灰Aから水分が除去される。また、クラッシャ16で焼却灰が粉砕される際に発生する熱によっても、焼却灰表面からの水分蒸発により焼却灰Aから水分が除去される。ベルトコンベア18a~18eでの搬送(搬送工程)で、焼却灰Aが空気と接触することによっても、焼却灰表面からの水分蒸発により焼却灰Aから水分が除去される。特に、クラッシャ16により焼却灰Aが粉砕されることにより、焼却灰Aの表面積が増大するので、クラッシャ16より下流の第2の篩17及びベルトコンベア18eでの焼却灰Aからの水分除去が更に促進される。なお、
図1の焼却灰処理手段では、磁選機13及び渦電流選別機14で異物除去を行う工程(異物除去工程)においても、焼却灰Aが空気と接触して、水分が除去され得る。この結果、所定の水分含有量に調整された焼却灰を、焼却灰Bとすることができる。
【0053】
水分計測器19は、ベルトコンベア18eで搬送される焼却灰Aの水分含有量をインラインで測定する(計測工程)。水分計測器19で計測される水分含有量の値が所定条件を満たす場合、ダンパ21は動作せず、焼却灰はベルトコンベア18eを流れ、収集される。収集された焼却灰を、焼却灰Bとする。
水分計測器19で計測される水分含有量の値が所定条件を満たさない場合、ダンパ21の切り替えが行われ、焼却灰Aがベルトコンベア22に移され、クラッシャ16に返送される(返送工程)。クラッシャ16に戻された焼却灰Aは、渦電流選別機14から流れてきた焼却灰Aとともに、再度クラッシャ16で粉砕され、第2の篩17で分級される。すなわち、返送された焼却灰Aがベルトコンベア22、クラッシャ16、第2の篩17及びベルトコンベア18eを通過する間に、焼却灰Aから水分が更に除去されることになる。水分計測器19での計測値が所定条件を満たすまで、返送工程が繰り返される。
【0054】
ここで、上述の所定条件は、後述の輸送工程において液状化の発生を防止することができる水分含有量に設定する。すなわち、上記所定条件は、運送許容水分値以下とすることが好ましい。ここで判断基準に用いる「運送許容水分値」は、上述したように事前に複数のサンプルを用いて設定された運送許容水分値であっても良く、集積場11に集積されている焼却灰Aについて取得した運送許容水分値であっても良い。
具体的に、水分計測器19は、ベルトコンベア18eを流れる焼却灰Aの水分含有量を測定する。焼却灰Aの水分含有量が所定条件を満たす(運送許容水分値以下である)場合、ダンパ21は動作せず、焼却灰はベルトコンベア18eを流れ、収集される。焼却灰Aの水分含有量が所定条件を満たさない(運送許容水分値を超える)場合、ダンパ21の切り替えが行われ、焼却灰Aがベルトコンベア22に移され、クラッシャ16に返送される。この工程の結果、後述の輸送工程において液状化の発生を防止できる焼却灰Bを得ることができる。
【0055】
なお、本発明では、焼却灰の水分含有量をオフラインで計測しても良い。オフラインでの計測の場合、第2の篩17を通過した焼却灰を回収し、回収物からサンプルを採取する。サンプルの水分含有量を、水分計測器で計測する(計測工程)。計測方法としては、赤外分光法、加熱乾燥法などが挙げられる。水分計測器で計測される水分含有量の値が所定条件を満たす(運送流動水分値以下である)場合、回収物を焼却灰Bとする。水分計測器で計測される水分含有量の値が所定条件を満たさない(運送許容水分値を超える)場合、回収物はクラッシャ16に返送される(返送工程)。オフライン計測の場合も、水分計測器での計測値が所定条件を満たすまで、上記返送工程が繰り返される。
【0056】
<焼却灰Bの輸送工程>
図1に、輸送工程の例を示す。焼却灰Bは、輸送手段30に積載される。焼却灰Bは、密閉容器に充填されることなく、トラック30aの荷台、鉄道(貨物車)の荷台、船舶(ガット船、平船などのばら積み貨物船)30bの船倉などにそのままの状態で積載される。
【0057】
積載方法としては特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。
図2は、焼却灰Bを船舶に積載する方法を説明する概略図である。符号41は、港40に接岸する船舶である。符号43は、積載コンベアである。積載コンベア43の一方端は港40の岸壁側に位置し、他方端は船舶41の船倉42上に位置する。積載コンベア43の他方端には、シュート45が接続される。シュート45の積載コンベア43と反対側の端部には、スカート46が設置される。
焼却灰Bは、ホイルローダー47により積載コンベア43の一方端まで搬送され、積載コンベア43のベルトコンベア44上に供給される。焼却灰Bは、シュート45を通じて船倉42内に充填される。スカート46により、焼却灰Bの飛散を防止しながら、焼却灰Bを船倉42に均して積載することができる。
【0058】
焼却灰Bを積載した輸送手段30は、焼却灰処理手段10から最終処理設備31に焼却灰Bを搬送する。
図1では、焼却灰Bを積載したトラック30aは、最終処理設備31に直接乗り入れ、最終処理設備31で焼却灰Bを荷下ろしする。焼却灰Bを積載した船舶30bは、最終処理設備31に近い港まで運行する。当該港にて、焼却灰Bは船舶30bからトラック30aに移され最終処理設備31まで焼却灰Bを運搬する。本発明において、輸送工程は
図1に限定されない。例えば、焼却灰Bを積載した鉄道で最終処理設備に近い駅まで輸送し、その後焼却灰Bをトラックに積み替えて最終処理設備まで運搬しても良い。または、鉄道または船舶が、最終処理設備まで焼却灰Bを輸送しても良い。
【0059】
本発明においては、焼却灰Bは水分含有量が所定条件(具体的に、運送許容水分値以下)を満たすように調整されているので、輸送工程中の振動で液状化の発生を防止できる。このため、
図2に例示されるように、密閉容器に収容することなく、船舶に焼却灰Bを平積み等で積載して輸送することが可能となる。トラックや鉄道などの車両に積載する場合も、密閉容器に収容する必要がない。また、密閉容器分の積載重量が削減されるので、輸送による燃料コスト及びCO
2排出量を大幅に削減することができる。更に、液状化の懸念がないため、輸送中に積荷の重心移動が発生せず、安定して輸送することが可能となる。
焼却灰Bは、焼却施設から搬出された焼却灰Aから水分が除去されている。また、最終処理施設31で利用または処理する際に不要な異物が除去されている。すなわち、不要物をあらかじめ除去した焼却灰を輸送するので、輸送効率が向上して輸送コストが低減するとともに、輸送によるCO
2排出量も削減することができる。また、焼却灰のハンドリング性が改善されて、焼却灰処理手段内の各装置、輸送手段の荷台、焼却灰Bの搬送に利用する重機や装置(例えば
図2)などに焼却灰が付着することを抑制できる。
更に、焼却灰Bの粒度を調整することによって粒径が小さくなっていることから、高い充填率で積載することができ、この点からも輸送効率を向上させることができる。
【実施例0060】
焼却灰の水分含有量と液状化の発生との関係性の評価を行った。上述した焼却灰処理手段の各工程に近似した状況で焼却灰を処理し、評価を行った。
【0061】
[試料]
(1)焼却灰A
3種類の焼却灰を準備した。各焼却灰について、磁石を用い磁性金属の除去を行った後、渦電流選別機にて非磁性金属の除去を行った。更に、金属除去後の焼却灰を篩(目開き:5mm)で分級し、篩下の焼却灰を試料(焼却灰A-1~A-3)として回収した。
(2)焼却灰B
焼却灰A-1~A-3に、生石灰を添加し、十分に混合した。焼却灰100質量部に対する生石灰の添加量は、焼却灰A-1の場合は2.9質量部、焼却灰A-2の場合は5.3質量部、焼却灰A-3の場合は4.0質量部とした。混合後の焼却灰を、それぞれ焼却灰B-1~B-3とした。
【0062】
[評価方法]
(1)水分含有量の測定
焼却灰A-1~A-3、及び、焼却灰B-1~B-3の水分含有量を、加熱乾燥法により測定した。結果を表1に示す。
(2)流動水分値の測定、運送許容水分値の算出
焼却灰A-1~A-3、及び、焼却灰B-1~B-3について、IMSBCコード附録2第1.2節「Penetration test procedure」により流動水分値を測定した。なお、焼却灰の状態で流動水分値が測定できない場合は、流動水分値が得られるまで水分を添加した後、流動水分値の測定を行った。また、得られた流動水分値の90%の値を運送許容水分値とした。各焼却灰の流動水分値及び運送許容水分値を表1に示す。
(3)液状化可能性の判定
焼却灰に振動を与えた場合に液状化が発生するか否かを、水分含有量及び運送許容水分値から以下の指標により判定した。表1に、「あり」及び「なし」の判定結果を示す。
可能性「あり」:水分含有量>運送許容水分値
可能性「なし」:水分含有量≦運送許容水分値
【0063】
【0064】
焼却灰A-1~A-3はいずれも、水分含有量が運送許容水分値よりも高い値であった。このため、焼却灰A-1~A-3は、流動化する可能性があると判定された。一方、焼却灰B-1~B-3はいずれも、処理により水分含有量が低減され、運送許容水分値よりも低い水分含有量となった。従って、焼却灰B-1~B-3は、輸送時に振動が与えられた場合であっても液状化の可能性がないと言える。