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特開2022-157906有機電界発光素子に用いるトリアジン化合物
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  • 特開-有機電界発光素子に用いるトリアジン化合物 図1
  • 特開-有機電界発光素子に用いるトリアジン化合物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157906
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】有機電界発光素子に用いるトリアジン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/10 20060101AFI20221006BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221006BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
C07D401/10 CSP
H05B33/22 B
H05B33/14 B
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062403
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】山縣 拓也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 仁志
(72)【発明者】
【氏名】相原 秀典
(72)【発明者】
【氏名】新井 信道
【テーマコード(参考)】
3K107
4C063
4H039
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107CC22
3K107DD59
3K107DD68
3K107DD74
3K107DD78
4C063AA01
4C063BB06
4C063CC43
4C063DD12
4C063EE10
4H039CA41
4H039CD90
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い発光効率及び長寿命特性を高次元に発揮する有機電界発光素子の形成に資するトリアジン化合物、該トリアジン化合物を含む有機電界発光素子用材料及び有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】式(1)で示されるトリアジン化合物。

【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるトリアジン化合物:
【化1】
式中、
Ar及びArは、各々独立に、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、フェニルナフチル基又はナフチルフェニル基を表し、これらの基は、フッ素原子、メチル基及びシアノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい;
Arは、メチル基およびフェニル基からなる群より選ばれる1つ以上で置換されていてもよい多環式芳香族基を表す;
Arは、フェニル基、アザフェニル基、ジアザフェニル基、アザナフチル基又はジアザナフチル基を表し、これらの基はメチル基およびフェニル基からなる群より選ばれる1つ以上で置換されていてもよい;
は、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基又は2,7-ナフチレン基を表す;
は、フェニレン基、ナフチレン基、アザフェニレン基、ジアザフェニレン基、アザナフチレン基又はジアザナフチレン基を表す;
pは、1又は2を表す;
ただし、pが2のとき、2つのXは同一又は相異なっていてもよい;
qは、0、1又は2を表す;
ただし、qが2のとき、2つのXは同一又は相異なっていてもよい。
【請求項2】
Ar及びArが、各々独立に、フェニル基又はビフェニリル基である請求項1に記載のトリアジン化合物。
【請求項3】
前記多環式芳香族基が、2環式、3環式又は4環式の多環式芳香族基である、請求項1又は2に記載のトリアジン化合物。
【請求項4】
前記多環式芳香族基が、3環式又は4環式の多環式芳香族基である、請求項1から3のいずれか1項に記載のトリアジン化合物。
【請求項5】
前記多環式芳香族基が、炭化水素系芳香族基、含窒素6員環芳香族基又は含カルコゲン芳香族基である、請求項1から4のいずれか1項に記載のトリアジン化合物。
【請求項6】
前記炭化水素系芳香族基が、9-フェナントリル基、9,9-ジメチルフルオレン-2-イル基又は2-トリフェニレニル基であり、
前記含窒素6員環芳香族基が、1,10-フェナントロリニル基であり、
前記含カルコゲン芳香族基が、ジベンゾフラニル基である、請求項5に記載のトリアジン化合物。
【請求項7】
Arが、
フェニル基、又は、
メチル基およびフェニル基からなる群より選ばれる1つ以上で置換されていてもよいアザフェニル基である、請求項1から6のいずれか1項に記載のトリアジン化合物。
【請求項8】
Arが、ピリジル基である請求項1から7のいずれか1項に記載のトリアジン化合物。
【請求項9】
が、1,3-フェニレン基又は1,4-フェニレン基である請求項1から8のいずれか1項に記載のトリアジン化合物。
【請求項10】
が、フェニレン基である請求項1から9いずれか1項に記載のトリアジン化合物。
【請求項11】
pが、1である請求項1から10のいずれか1項に記載のトリアジン化合物。
【請求項12】
qが、0又は1である、請求項1から11のいずれか1項に記載のトリアジン化合物。
【請求項13】
Ar及びArがフェニル基であり、
Arが9-フェナントリル基であり、
Arが3-ピリジル基であり、
が1,3-フェニレン基又は1,4-フェニレン基であり、
qが0であり、
pが1である、請求項1に記載のトリアジン化合物。
【請求項14】
式(2)で表されるトリアジン中間体と、式(3)で表される化合物とを、パラジウム触媒の存在下にカップリング反応させることを含む、式(1)で表されるトリアジン化合物の製造方法:
【化2】
式中、
Ar及びArは、各々独立に、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、フェニルナフチル基又はナフチルフェニル基を表し、これらの基は、フッ素原子、メチル基及びシアノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい;
Arは、メチル基およびフェニル基からなる群より選ばれる1つ以上で置換されていてもよい多環式芳香族基を表す;
Arは、フェニル基、アザフェニル基、ジアザフェニル基、アザナフチル基又はジアザナフチル基を表し、これらの基はメチル基およびフェニル基からなる群より選ばれる1つ以上で置換されていてもよい;
は、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基又は2,7-ナフチレン基を表す;
は、フェニレン基、ナフチレン基、アザフェニレン基、ジアザフェニレン基、アザナフチレン基又はジアザナフチレン基を表す;
pは、1又は2を表す;
ただし、pが2のとき、2つのXは同一又は相異なっていてもよい;
qは、0、1又は2を表す;
ただし、qが2のとき、2つのXは同一又は相異なっていてもよい;
Mは、ZnZ、MgZ、Sn(Z、又はB(OZを表す;
及びZは、各々独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す;
は、同一又は相異なって、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、3つのZは同一又は相異なっていてもよい;
は、同一又は相異なって、水素原子、炭素数1から4のアルキル基又はフェニル基を表し、2つのZは同一又は相異なっていてもよい;
2つの(OZ)基は一体となってホウ素原子とともに環を形成していてもよい;
Yは、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基又はヨウ素原子を表す。
【請求項15】
Mが、B(OZである請求項14に記載のトリアジン化合物の製造方法。
【請求項16】
前記パラジウム触媒が、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム触媒である、請求項14又は15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記第三級ホスフィンが、トリフェニルホスフィン又は2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニルである、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項1から13のいずれか1項に記載のトリアジン化合物を含有する、有機電界発光素子用材料。
【請求項19】
請求項1から13のいずれか1項に記載のトリアジン化合物を含有する、有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トリアジン化合物、該トリアジン化合物を含む有機電界発光素子用材料及び有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、小型モバイル用途を中心に実用化が始まっている。しかしながら、更なる用途拡大には性能向上が必須であり、高い発光効率特性、長寿命特性を有する材料が求められている。
【0003】
特許文献1は、高効率で駆動電圧を低減できる有機電界発光素子用の材料であるトリアジン化合物を開示している。
特許文献2は、高効率で駆動電圧を低減できる有機電界発光素子用の材料であるトリアジン化合物を開示している。
特許文献3は、高い耐熱性を有し、駆動電圧を低減できる有機電界発光素子用の材料であるトリアジン化合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-178931号公報
【特許文献2】韓国公開特許公報1666751号
【特許文献3】特開2011-63584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、用途の拡大、使用可能な環境の拡大に対する市場からの要求は非常に強く、高い発光効率及び長寿命特性の2つの特性に関して、特許文献1、2及び3にかかるトリアジン化合物はこれらを十分に満たしているとはいえず、前記2つ特性をさらなる高次元で達成した材が求められている。
【0006】
そこで、本開示の一態様は、高い発光効率及び長寿命特性を高次元に発揮する有機電界発光素子の形成に資するトリアジン化合物を提供することに向けられている。
また、本開示の他の態様は、上記トリアジン化合物を含む有機電界発光素子用材料を提供することに向けられている。
さらに、本開示のさらに他の態様は、高い発光効率及び長寿命特性を高次元に発揮する有機電界発光素子を提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、式(1)で表されるトリアジン化合物が提供される:
【0008】
【化1】
【0009】
式中、
Ar及びArは、各々独立に、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、フェニルナフチル基又はナフチルフェニル基を表し、これらの基は、フッ素原子、メチル基及びシアノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい;
Arは、メチル基およびフェニル基からなる群より選ばれる1つ以上で置換されていてもよい多環式芳香族基を表す;
Arは、フェニル基、アザフェニル基、ジアザフェニル基、アザナフチル基又はジアザナフチル基を表し、これらの基はメチル基およびフェニル基からなる群より選ばれる1つ以上で置換されていてもよい;
は、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基又は2,7-ナフチレン基を表す;
は、フェニレン基、ナフチレン基、アザフェニレン基、ジアザフェニレン基、アザナフチレン基又はジアザナフチレン基を表す;
pは、1又は2を表す;
ただし、pが2のとき、2つのXは同一又は相異なっていてもよい;
qは、0、1又は2を表す;
ただし、qが2のとき、2つのXは同一又は相異なっていてもよい。
【0010】
本開示の他の態様によれば、上記トリアジン化合物を含有する有機電界発光素子用材料が提供される。
【0011】
本開示のさらに他の態様によれば、上記トリアジン化合物を含有する有機電界発光素子が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、高い発光効率及び長寿命特性を高次元に発揮する有機電界発光素子の形成に資するトリアジン化合物を提供することができる。また、本開示の他の態様によれば、上記トリアジン化合物を含む有機電界発光素子用材料を提供することができる。さらに、本開示のさらに他の態様によれば、高い発光効率及び長寿命特性を高次元に発揮する有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一態様にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
図2】本開示の一態様にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の他の積層構成の例(素子実施例-1の構成)を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の一態様にかかるトリアジン化合物について詳細に説明する。
【0015】
<トリアジン化合物>
本開示の一態様にかかるトリアジン化合物は、式(1)で表されるトリアジン化合物である:
【0016】
【化2】
【0017】
式中、
Ar及びArは、各々独立に、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、フェニルナフチル基又はナフチルフェニル基を表し、これらの基は、フッ素原子、メチル基及びシアノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい;
Arは、メチル基およびフェニル基からなる群より選ばれる1つ以上で置換されていてもよい多環式芳香族基を表す;
Arは、フェニル基、アザフェニル基、ジアザフェニル基、アザナフチル基又はジアザナフチル基を表し、これらの基はメチル基およびフェニル基からなる群より選ばれる1つ以上で置換されていてもよい;
は、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基又は2,7-ナフチレン基を表す;
は、フェニレン基、ナフチレン基、アザフェニレン基、ジアザフェニレン基、アザナフチレン基又はジアザナフチレン基を表す;
pは、1又は2を表す;
ただし、pが2のとき、2つのXは同一又は相異なっていてもよい;
qは、0、1又は2を表す;
ただし、qが2のとき、2つのXは同一又は相異なっていてもよい。
【0018】
以下、式(1)で示されるトリアジン化合物を、トリアジン化合物(1)と称することもある。トリアジン化合物(1)における置換基の定義及びその好ましい具体例は、それぞれ以下のとおりである。
【0019】
[Ar及びArについて]
Ar及びArは、各々独立に、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、フェニルナフチル基又はナフチルフェニル基を表し、これらの基は、フッ素原子、メチル基及びシアノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0020】
Ar及びArとしては、各々独立に、例えば、フェニル基、p-トリル基、m-トリル基、o-トリル基、2,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、メシチル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ビフェニル-2-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-4-イル基、3-メチルビフェニル-4-イル基、2’-メチルビフェニル-4-イル基、4’-メチルビフェニル-4-イル基、2,2’-ジメチルビフェニル-4-イル基、6-メチルビフェニル-3-イル基、5-メチルビフェニル-3-イル基、2’-メチルビフェニル-3-イル基、4’-メチルビフェニル-3-イル基、6,2’-ジメチルビフェニル-3-イル基、5-メチルビフェニル-2-イル基、6-メチルビフェニル-2-イル基、2’-メチルビフェニル-2-イル基、4’-メチルビフェニル-2-イル基、6,2’-ジメチルビフェニル-2-イル基、4-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、2-フルオロフェニル基、4-シアノフェニル基、3-シアノフェニル基、2-シアノフェニル基等が挙げられる。
【0021】
トリアジン化合物(1)が電子輸送特性に優れる点で、Ar及びArが、各々独立に、フェニル基又はビフェニリル基であることが好ましく、フェニル基又は4-ビフェニリル基であることがより好ましい。
【0022】
[Arについて]
式(1)中、Arは、メチル基およびフェニル基からなる群より選ばれる1つ以上で置換されていてもよい多環式芳香族基を表す。
【0023】
トリアジン化合物(1)の合成が容易な点で、多環式芳香族基としては2環式、3環式若しくは4環式の多環式芳香族基が好ましく、3環式若しくは4環式の多環式芳香族基がより好ましい。
【0024】
トリアジン化合物(1)がより高性能な有機電界発光素子の形成に資するものとなる点で、多環式芳香族基は、炭化水素系芳香族基、含窒素6員環芳香族基又は含カルコゲン芳香族基であることが好ましい。
【0025】
芳香族炭化水素基としては、例えば、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、トリフェニレニル基又はフルオランテニル基等が挙げられる。トリアジン化合物(1)がより高性能な有機電界発光素子の形成に資するものとなる点で、芳香族炭化水素としてはフェナントリル基、フルオレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基が好ましく、9-フェナントリル基、9,9-ジメチルフルオレン-2-イル基、2-トリフェニレニル基であることがより好ましい。
【0026】
含窒素芳香族基としては、例えば、アザナフチル基、ジアザナフチル基、ベンゾ[b]キノリル基、ベンゾ[c]キノリル基、ベンゾ[f]キノリル基、ベンゾ[g]キノリル基、ベンゾ[h]キノリル基、フェナジニル基、フェナントロリニル基、アザピレニル基、ジアザピレニル基、アザトリフェニレニル基、ジアザトリフェニレニル基等が挙げられる。トリアジン化合物(1)の合成が容易な点で、含窒素6員環芳香族基としては、アザナフチル基、フェナントロリニル基が好ましく、フェナントロリニル基がより好ましく、1,10-フェナントロリニル基がさらに好ましい。
【0027】
含カルコゲン芳香族基としては、例えば、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラニル基、ベンゾナフトフラニル基、ベンゾナフトチオフェニル基、キサンテニル基、ベンゾキサンテニル基等が挙げられる。トリアジン化合物(1)の合成が容易な点で、含カルコゲン芳香族基としては、ジベンゾフラニル基であることが好ましい。
【0028】
[Arについて]
Arは、フェニル基、アザフェニル基、ジアザフェニル基、アザナフチル基又はジアザナフチル基を表し、これらの基はメチル基およびフェニル基からなる群より選ばれる1つ以上で置換されていてもよい。
【0029】
アザフェニル基、ジアザフェニル基、アザナフチル基又はジアザナフチル基としては、例えば、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基又はキナゾリニル基等が挙げられる。
【0030】
トリアジン化合物(1)がより高性能な有機電界発光素子の形成に資するものとなる点で、Arが、
フェニル基、又は、
メチル基およびフェニル基からなる群より選ばれる1つ以上で置換されていてもよいアザフェニル基であることが好ましい。
Arが、ピリジル基であることがより好ましい。
【0031】
[Xについて]
は、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基又は2,7-ナフチレン基を表す。
【0032】
トリアジン化合物(1)がより高性能な有機電界発光素子の形成に資するものとなる点で、Xが、フェニレン基であることが好ましく、1,3-フェニレン基又は1,4-フェニレン基であることがより好ましい。
【0033】
[Xについて]
は、フェニレン基、ナフチレン基、アザフェニレン基、ジアザフェニレン基、アザナフチレン基又はジアザナフチレン基を表す。
【0034】
としては、例えば、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、2,3-ピリジレン基、2,4-ピリジレン基、2,5-ピリジレン基、2,6-ピリジレン基、2,4-ピリミジレン基、2,5-ピリミジレン基、2,5-ピラジレン基、1,2-ナフチレン基、1,3-ナフチレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、1,6-ナフチレン基、1,7-ナフチレン基、1,8-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基、2,4-ナフチレン基、2,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、2,7-ナフチレン基、2,8-ナフチレン基、2,3-キノリレン基、2,4-キノリレン基、2,5-キノリレン基、2,6-キノリレン基、2,7-キノリレン基、2,8-キノリレン基、3,4-キノリレン基、3,5-キノリレン基、3,6-キノリレン基、3,7-キノリレン基、3,8-キノリレン基、4,5-キノリレン基、4,6-キノリレン基、4,7-キノリレン基、4,8-キノリレン基、5,8-キノリレン基、2,3-キノキサリレン基、2,5-キノキサリレン基、2,6-キノキサリレン基、2,4-キナゾリレン基、2,5-キナゾリレン基、2,6-キナゾリレン基等が挙げられる。
【0035】
トリアジン化合物(1)がより高性能な有機電界発光素子の形成に資するものとなる点で、Xが、フェニレン基であることが好ましく、1,2-フェニレン基、1,4-フェニレン基であることがより好ましい。
【0036】
[pについて]
pは1又は2を表す。ただし、pが2のとき、2つのXは同一又は相異なっていてもよい。
トリアジン化合物(1)がより高性能な有機電界発光素子の形成に資するものとなる点で、pが、1であることがより好ましい。
【0037】
[qについて]
qは0、1又は2を表す。ただし、pが2のとき、2つのXは同一又は相異なっていてもよい。
トリアジン化合物(1)の合成が容易な点で、qが、0又は1であることがより好ましい。
【0038】
[トリアジン化合物(1)の好ましい態様]
Ar及びArがフェニル基であり、
Arが9-フェナントリル基であり、
Arが3-ピリジル基であり、
が1,3-フェニレン基又は1,4-フェニレン基であり、
qが0であり、
pが1であることが好ましい。
【0039】
[トリアジン化合物(1)の具体例]
トリアジン化合物(1)の具体例としては、以下の(1-1)から(1-93)を例示できるが、本開示はこれらに限定されるものではない。有機電界発光素子における電子輸送材としての性能がよい点で、トリアジン化合物(1)としては1-1又は1-46で示される化合物が好ましい。
【0040】
【化3】
【0041】
【化4】
【0042】
【化5】
【0043】
【化6】
【0044】
【化7】
【0045】
【化8】
【0046】
【化9】
【0047】
【化10】
【0048】
【化11】
【0049】
【化12】
【0050】
【化13】
【0051】
次にトリアジン化合物(1)の製造方法について説明する。
トリアジン化合物(1)は、以下の合成経路に示される方法で製造可能である。
すなわち、本開示の一態様にかかるトリアジン化合物の製造方法は、式(2)で表されるトリアジン中間体と、式(3)で表される化合物とを、パラジウム触媒の存在下にカップリング反応させることを含む:
【0052】
【化14】
【0053】
式中、
Ar、Ar、Ar、Ar、X、X、p及びqは、前記と同じ意味を表す;
Yは、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基又はヨウ素原子を表す;
Mは、ZnZ、MgZ、Sn(Z、又はB(OZを表す;
及びZは、各々独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す;
は、同一又は相異なって、炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基を表し、3つのZは同一又は相異なっていてもよい;
は、同一又は相異なって、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基を表し、2つのZは同一又は相異なっていてもよい
2つの(OZ)基は一体となってホウ素原子とともに環を形成していてもよい。
【0054】
Mは、これらの中でもトリアジン化合物(1)の合成が容易な点で、B(OZが好ましい。
【0055】
ZnZ、MgZとしては、特に限定されるものではないが、ZnCl、ZnBr、ZnI、MgCl、MgBr及びMgI等が例示できる。
Sn(Zとしては、特に限定されるものではないが、例えば、Sn(Me)、Sn(Bu)等が例示できる。
B(OZとしては、特に限定されるものではないが、例えば、B(OH)、B(OMe)、B(OPr)、B(OBu)、B(OPh)等を例示することができる。なお、Meはメチル基、Prはイソプロピル基、Buはブチル基、Phはフェニル基を示す。また、2つの(OZ)基が一体となってホウ素原子とともに環を形成している場合のB(OZの例としては、特に限定されるものではないが、例えば、次の(I)から(VI)で表される基が例示でき、収率がよい点で(II)で表される基が好ましい。
【0056】
【化15】
【0057】
合成経路におけるカップリング反応は、式(2)で表されるトリアジン化合物と、式(3)で表されるハロゲン化合物とをパラジウム触媒の存在下で反応させ、トリアジン化合物(1)を製造する工程である。合成経路は、鈴木-宮浦反応、根岸反応、玉尾-熊田反応、スティレ反応等の、一般的なカップリング反応の反応条件を適用することにより、収率よく目的物を得ることができる。合成経路に鈴木-宮浦反応の反応条件を適用する場合は、塩基存在下で行うことが好ましい。。
カップリング反応に用いられるトリアジン化合物は、例えば国際公開第2017/052259号に開示されている方法に従い製造することができる。また市販品を用いても良い。
カップリング反応に用いられるハロゲン化化合物は、例えば韓国公開特許公報2015/122343号に従い、製造することができる。また、市販品を用いてもよい。用いるハロゲン化化合物のモル当量に特に制限は無いが、反応収率がよい点で、トリアジン化合物に対して0.5~3.0モル当量を用いることが好ましい。
【0058】
Yで表される基としては、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基又はヨウ素原子が挙げられる。トリアジン化合物(1)の収率がよい点で、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基が好ましい。
【0059】
合成経路で用いることのできるパラジウム触媒としては、特に限定されるものではないが、具体的には、
塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、硝酸パラジウム等のパラジウム塩;
π-アリルパラジウムクロリドダイマー、パラジウムアセチルアセトナト、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム等の錯化合物;及び、
ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム等の第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体;
を例示することができる。
【0060】
第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体は、パラジウム塩又は錯化合物に第三級ホスフィンを添加し、反応系中で調製することもできる。この際用いることのできる第三級ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリシクロへキシルホスフィン、t-ブチルジフェニルホスフィン、9,9-ジメチル-4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、2-(ジフェニルホスフィノ)-2’-(N,N-ジメチルアミノ)ビフェニル、2-(ジ-t-ブチルホスフィノ)ビフェニル、2-(ジシクロへキシルホスフィノ)ビフェニル、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリ(2-フリル)ホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリス(2,5-キシリル)ホスフィン、(±)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル等が例示できる。
【0061】
これらの中でも、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体が収率のよい点で好ましく、2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル又はトリフェニルホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体がより好ましい。
【0062】
第三級ホスフィンとパラジウム塩又は錯化合物とのモル比は1:10~10:1の範囲にあることが好ましく、収率がよい点で1:2~3:1の範囲にあることがより好ましい。合成経路で用いるパラジウム触媒の量に制限はないが、収率がよい点で、パラジウム触媒のモル当量はトリアジン化合物に対して0.005~0.5モル当量の範囲にあることが好ましい。
【0063】
合成経路は、塩基を添加して実施してもよく、用いられる塩基としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム等の金属炭酸塩;酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等の金属酢酸塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等の金属リン酸塩;フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等の金属フッ化物塩;ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムイソプロピルオキシド、カリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド;等を挙げることができる。中でも反応収率がよい点で、金属炭酸塩又は金属リン酸塩が好ましく、炭酸カリウム又はリン酸カリウムがより好ましい。塩基の量に特に制限は無いが、反応収率がよい点で、塩基とトリアジン化合物とのモル比は、1:2~10:1の範囲にあることが好ましく、1:1~4:1の範囲にあることがより好ましい。
【0064】
合成経路は溶媒中で実施することができ、該溶媒としては、水;ジイソプロピルエ-テル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ-ラクトン等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド;N,N,N’,N’-テトラメチルウレア(TMU)、N,N’-ジメチルプロピレンウレア(DMPU)等のウレア;ジメチルスルホキシド(DMSO);及び、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2,2-トリフルオロエタノール等のアルコール;等を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はない。これらのうち、反応収率がよい点で水、エーテル、アミド、アルコール又はこれらの混合溶媒が好ましく、THFと水の混合溶媒がより好ましい。
【0065】
合成経路は、0℃~200℃から適宜選択された温度にて実施することができ、反応収率がよい点で40℃~150℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
合成経路は、反応の終了後に通常の処理をすることで得られる。必要に応じて、再結晶、カラムクロマトグラフィー、昇華又は分取HPLC等で精製してもよい。
【0066】
トリアジン化合物(1)は、例えば、有機電界発光素子や光電素子等の有機電子素子用途に用いることができる。
【0067】
<有機電界発光素子用材料>
本開示の一態様にかかる有機電界発光素子用材料は、トリアジン化合物(1)を含有する。
トリアジン化合物(1)は、例えば、有機電界発光素子用電子輸送材料として用いることができる。トリアジン化合物(1)を含む有機電界発光素子用材料は、高い発光効率及び長寿命特性を高次元に発揮し、種々の用途で利用可能な有機電界発光素子の作製に資するものである。
【0068】
<有機電界発光素子>
以下、トリアジン化合物(1)を含む有機電界発光素子について説明する。
有機電界発光素子は、トリアジン化合物(1)を含有する。
【0069】
有機電界発光素子の構成については特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す(i)~(v)の構成が挙げられる。
(i):陽極/発光層/陰極
(ii):陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(iii):陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iv):陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(v):陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0070】
トリアジン化合物(1)は、上記のいずれの層に含まれていてもよいが、有機電界発光素子の発光特性に優れる点で、発光層及び該発光層と陰極との間の層からなる群より選ばれる1層以上に含まれることが好ましい。
【0071】
したがって、上記(i)~(v)に示された構成の場合、トリアジン化合物(1)が、発光層、電子輸送層及び電子注入層からなる群より選ばれる1層以上に含まれることが好ましい。
【0072】
以下、有機電界発光素子を、上記(v)の構成を例に挙げて、図1を参照しながらより詳細に説明する。
【0073】
なお、図1に示す有機電界発光素子100は、いわゆるボトムエミッション型の素子構成を有するものであるが、有機電界発光素子はボトムエミッション型の素子構成に限定されるものではない。すなわち、有機電界発光素子は、トップエミッション型など、他の公知の素子構成であってもよい。
【0074】
図1は、トリアジン化合物(1)を含む有機電界発光素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【0075】
有機電界発光素子100は、基板1、陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6、電子注入層7及び陰極8をこの順で具える。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。例えば、発光層5と電子輸送層6との間に正孔阻止層が設けられていてもよく、正孔注入層3が省略され、陽極2上に正孔輸送層4が直接設けられていてもよい。
【0076】
また、例えば電子注入層の機能と電子輸送層の機能とを単一の層で併せ持つ電子注入・輸送層のような、複数の層が有する機能を併せ持った単一の層を、当該複数の層の代わりに具えた構成であってもよい。さらに、例えば単層の正孔輸送層4、単層の電子輸送層6が、それぞれ複数層からなっていてもよい。
【0077】
<<トリアジン化合物(1)を含有する層>>
【0078】
図1に示される構成例において有機電界発光素子100は、発光層5、電子輸送層6及び電子注入層7からなる群より選ばれる1層以上にトリアジン化合物(1)を含む。電子輸送層6がトリアジン化合物(1)を含むことが好ましい。なお、トリアジン化合物(1)は、有機電界発光素子が具える複数の層に含まれていてもよい。
【0079】
以下、電子輸送層6がトリアジン化合物(1)を含む有機電界発光素子100について説明する。
【0080】
[基板1]
基板1としては、当業者が当該部位に通常用いる基板であれば特に限定はなく、例えば、ガラス板、石英板、プラスチック板、プラスチックフィルムなどが挙げられる。これらの中でも、ガラス板、石英板、光透過性プラスチックフィルムが好ましい。
【0081】
光透過性プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルムが挙げられる。
【0082】
なお、基板1側から発光が取り出される構成の場合、基板1は当該発光の波長に対して透明である。
【0083】
[陽極2]
基板1上(正孔注入層3側)には陽極2が設けられている。
【0084】
陽極の材料としては、仕事関数の大きい(例えば4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物が挙げられる。陽極の材料の具体例としては、Auなどの金属;CuI、酸化インジウム-スズ(ITO;Indium Tin Oxide)、SnO、ZnOなどの導電性透明材料が挙げられる。
【0085】
発光が陽極を通過して取り出される構成の有機電界発光素子の場合、陽極は当該発光を通すか又は実質的に通す導電性透明材料で形成される。
【0086】
[正孔注入層3、正孔輸送層4]
陽極2と発光層5との間には、陽極2側から、正孔注入層3、正孔輸送層4がこの順で設けられている。
【0087】
正孔注入層3、正孔輸送層4は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔注入層3、正孔輸送層4を陽極2と発光層5の間に介在させることによって、より低い電界で多くの正孔が発光層5に注入される。
【0088】
また、正孔注入層3、正孔輸送層4は、電子障壁性の層としても機能する。すなわち、陰極8から注入され、電子注入層7及び/又は電子輸送層6より発光層5に輸送された電子は、発光層5と正孔注入層3及び/又は正孔輸送層4との界面に存在する電子の障壁により、正孔注入層3及び/又は正孔輸送層4に漏れることが抑制される。その結果、該電子が発光層5内の界面に累積され、発光効率が向上する等の効果をもたらし、発光性能の優れた有機電界発光素子が得られる。
【0089】
正孔注入層3、正孔輸送層4の材料としては、正孔注入性、正孔輸送性、電子障壁性の少なくとも1つを有するものである。正孔注入層3、正孔輸送層4の材料は、有機化合物、無機物のいずれであってもよい。
【0090】
正孔注入層3、正孔輸送層4の材料の具体例としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物などが挙げられる。
【0091】
これらの中でも、有機電界発光素子の性能がよい点で、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物が好ましく、特に芳香族第三級アミン化合物が好ましい。
【0092】
芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノフェニル、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(m-トリル)-〔1,1’-ビフェニル〕-4,4’-ジアミン(TPD)、2,2-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラ-p-トリル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(4-メトキシフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノジフェニルエ-テル、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)クオ-ドリフェニル、N,N,N-トリ(p-トリル)アミン、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-〔4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4-N,N-ジフェニルアミノ-(2-ジフェニルビニル)ベンゼン、3-メトキシ-4’-N,N-ジフェニルアミノスチルベンゼン、N-フェニルカルバゾ-ル、4,4’-ビス〔N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、4,4’,4’’-トリス〔N-(m-トリル)-N-フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)などが挙げられる。
【0093】
また、p型-Si、p型-SiCなどの無機化合物も正孔注入層3の材料、正孔輸送層4の材料の一例として挙げることができる。
【0094】
正孔注入層3、正孔輸送層4は、一種又は二種以上の材料からなる単構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0095】
[発光層5]
正孔輸送層4と電子輸送層6との間には、発光層5が設けられている。
【0096】
発光層5の材料、すなわち発光材料としては、燐光発光材料、蛍光発光材料、熱活性化遅延蛍光発光材料が挙げられる。発光層5では電子・正孔対が再結合し、その結果として発光が生じる。
【0097】
発光層5は、単一の低分子材料又は単一のポリマー材料からなっていてもよいが、より一般的には、ゲスト化合物でドーピングされたホスト材料からなっている。発光は主としてドーパントから生じ、任意の色を有することができる。
【0098】
ホスト材料としては、例えば、ビフェニリル基、フルオレニル基、トリフェニルシリル基、カルバゾール基、ピレニル基、アントリル基を有する化合物が挙げられる。より具体的には、DPVBi(4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)-1,1’-ビフェニル)、BCzVBi(4,4’-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)1,1’-ビフェニル)、TBADN(2-ターシャリーブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン)、ADN(9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン)、CBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、CDBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)-2,2’-ジメチルビフェニル)、2-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-9-[4-(4-フェニルフェニルキナゾリン-2-イル)カルバゾール、9,10-ビス(ビフェニル)アントラセン等が挙げられる。
【0099】
蛍光ドーパントとしては、例えば、アントラセン、ピレン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物、ホウ素化合物、環状アミン化合物等が挙げられる。蛍光ドーパントはこれらから選ばれる2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0100】
燐光ドーパントとしては、例えば、イリジウム、白金、パラジウム、オスミウム等の金属錯体が挙げられる。
【0101】
蛍光ドーパント、燐光ドーパントの具体例としては、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム)、DPAVBi(4,4’-ビス[4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]ビフェニル)、ペリレン、ビス[2-(4-n-ヘキシルフェニル)キノリン](アセチルアセトナート)イリジウム(III)、Ir(PPy)(トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III))、FIrPic(ビス(3,5-ジフルオロ-2-(2-ピリジル)フェニル-(2-カルボキシピリジル)イリジウム(III)))等が挙げられる。
【0102】
また、上記発光材料は発光層5のみに含有されることに限定されるものではない。例えば、上記発光材料は、発光層5に隣接した層(正孔輸送層4、又は電子輸送層6)が含有していてもよい。これによってさらに有機電界発光素子100の発光効率を高めることができる。
【0103】
発光層は5、一種又は二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0104】
[電子輸送層6]
発光層5と電子注入層7との間には、電子輸送層6が設けられている。
【0105】
電子輸送層6は、陰極8より注入された電子を発光層に伝達する機能を有する。電子輸送層7を陰極8と発光層5との間に介在させることによって、電子がより低い電界で発光層5に注入される。
【0106】
電子輸送層6は、前述したとおり、トリアジン化合物(1)を含むことが好ましい。また、電子輸送層6は、トリアジン化合物(1)に加えてさらに従来公知の電子輸送材料から選ばれる1種以上を含んでいてもよい。
【0107】
なお、トリアジン化合物(1)が電子輸送層6に含まれず、他の層に含まれる場合は、従来公知の電子輸送材料から選ばれる1種以上を、電子輸送層6を構成する電子輸送材料として用いることができる。
【0108】
従来公知の電子輸送性材料としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、遷移金属化合物、亜鉛族元素化合物、土類金属化合物等が挙げられる。アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、遷移金属化合物、亜鉛族元素化合物、土類金属化合物等としては、例えば、8-ヒドロキシキノリナートリチウム(Liq)、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリナート)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)(o-クレゾラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)-1-ナフトラートアルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)-2-ナフトラートガリウム等のキレート型アリールオキシド等が挙げられる。
【0109】
電子輸送層6は、一種又は二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0110】
有機電界発光素子100においては、電子注入性を向上させ、素子特性(例えば、発光効率、低電圧駆動、又は高耐久性)を向上させる目的で、電子注入層7を設けてもよい。
【0111】
[電子注入層7]
電子輸送層6と陰極8との間には、電子注入層7が設けられている。電子注入層7は、陰極より注入された電子を発光層5に伝達する機能を有する。電子注入層を陰極8と発光層5との間に介在させることによって、電子がより低い電界で発光層5に注入される。
【0112】
電子注入層7の材料としては、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等の有機化合物が挙げられる。
【0113】
また、電子注入層7の材料としては、SiO、AlO、SiN、SiON、AlON、GeO、LiO、LiON、TiO、TiON、TaO、TaON、TaN、LiF、C、Ybなどの各種酸化物、フッ化物、窒化物、酸化窒化物等の無機化合物も挙げられる。
【0114】
[陰極8]
電子注入層7上には陰極8が設けられている。陽極8を通過した発光のみが取り出される構成の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、陰極8は任意の導電性材料から形成することができる。
【0115】
陰極8の材料としては、例えば、仕事関数の小さい金属(以下、電子注入性金属とも称する)、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。ここで、仕事関数の小さい金属とは、例えば、4eV以下の金属である。
【0116】
陰極8の材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属などが挙げられる。
【0117】
これらの中で、電子注入性及び酸化などに対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物などが好ましい。
【0118】
[各層の形成方法]
以上説明した、電極(陽極、陰極)を除く各層は、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett method)法などの公知の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。各層の材料は、それ単独で用いてもよく、必要に応じて結着樹脂などの材料、溶剤と共に用いてもよい。
【0119】
このようにして形成された各層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm~5μmの範囲である。
【0120】
陽極1及び陰極8は、電極材料を蒸着やスパッタリングなどの方法によって薄膜化することにより、形成することができる。蒸着やスパッタリングの際に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよく、蒸着やスパッタリングなどによって薄膜を形成した後、フォトリソグラフィー等で所望の形状のパターンを形成してもよい。
【0121】
陽極1及び陰極8の膜厚は、1μm以下であることが好ましく、10nm以上200nm以下であることがより好ましい。
【0122】
なお、トリアジン化合物(1)を含む層を形成するは、上記の従来公知の電子輸送性材料と併用してもよい。したがって、例えば、トリアジン化合物(1)と従来公知の電子輸送性材料とを共蒸着してもよく、トリアジン化合物(1)の層に従来公知の電子輸送性材料の層を積層してもよい。
【0123】
有機電界発光素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像をスクリーン等に投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。
【0124】
動画再生用の表示装置として有機電界発光素を使用する場合、駆動方式としては、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式であってもよく、アクティブマトリクス方式であってもよい。また、異なる発光色を有する有機電界発光素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
【0125】
トリアジン化合物(1)は、電子輸送層として用いた際に従来公知のトリアジン化合物に比べて、駆動電圧及び発光効率が顕著に優れる有機電界発光素子を提供することができる。
【0126】
このため有機電界発光素子の駆動安定性の向上や、発光効率の向上等の効果が期待される。なおかつ、トリアジン化合物(1)は、その特徴的な骨格から、化学的安定性が高く、有機電界発光素子の長寿命化に寄与することが可能である。
【0127】
トリアジン化合物(1)は、有機電界発光素子の電子輸送層として用いることで素子の低電圧駆動、高効率化及び長寿命化のいずれも高次元に達成可能なトリアジン化合物を提供することができる。さらに、トリアジン化合物(1)を用いた、高効率化及び長寿命化を高次元に発揮し得る有機電界発光素子を提供することができる。
【実施例0128】
以下、本開示を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本開示はこれら実施例により何ら限定して解釈されるものではない。また試薬類は市販品を用いた。
【0129】
H-NMR測定]
H-NMRの測定には、Bruker ASCEND 400(400MHz;BRUKER製)又はBruker ULTRASHIELD Plus 400(400MHz;BRUKER製)を用いた。H-NMRは、重クロロホルム(CDCl)又は重ジメチルスルホキシド(DMSO-d)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。
【0130】
[発光特性測定]
有機電界発光素子の発光特性は、25℃環境下、各実施例(後述)で作製した素子に直流電流を印加し、輝度計 BM-9(製品名、トプコンテクノハウス社製)を用いて評価した。
【0131】
合成実施例-1
【化16】
【0132】
アルゴン雰囲気下、3-(9-フェナントリル)-5-(3-ピリジル)フェニル トリフルオロメタンスルホン酸(4.99g,10mmol)、2,4-ジフェニル-6-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-1,3,5-トリアジン(3.48g,8.0mmol)、酢酸パラジウム(54mg,0.24mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(229mg,0.48mmol)をテトラヒドロフラン(80mL)に溶解させた。ここに2M-炭酸カリウム水溶液(12mL)を加え、80℃で24時間撹拌した。室温まで放冷後、水及びメタノールを加え、懸濁させ、濾過を行った。残渣を水及びメタノールで洗浄し、粗生成物を得た。粗生成物をクロロホルムに溶解させ、活性炭を加え、30分間撹拌した。セライト濾過により活性炭を取り除いた後、減圧下で溶媒を留去した。得られた固体を再結晶(トルエン)により精製することで2-[3’-(フェナントレン-9-イル)-5’-(ピリジン-3-イル)-(1,1’-ビフェニル)-4-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(化合物 1-1)の白色固体を得た(3.81g,75%)。
【0133】
H-NMR(CDCl)δ(ppm):9.04(d,J=1.7,1H),8.90(d,J=8.5Hz,2H),8.76-8.85(m,6H),8.67(dd,J=4.8,1.6Hz,1H),8.04-8.07(m,2H),8.01(t,J=1.7Hz,1H),7.93-7.97(m,4H),7.85(s,1H),7.83(t,J=1.6Hz,1H),7.70-7.75(m,2H),7.57-7.68(m,8H),7.42-7.46(m,1H).
【0134】
合成実施例-2
【化17】
【0135】
アルゴン雰囲気下、2,4-ビフェニリル-6-{3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル}-1,3,5-トリアジン(3.50g,8.0mmol)、3-(9-フェナントリル)-5-(3-ピリジル)フェニル トリフルオロメタンスルホン酸(4.60g,9.6mmol)、酢酸パラジウム(54mg,0.24mmol)、2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(228mg,0.48mmol)をTHF(80mL)に懸濁した。この懸濁液に2M-炭酸カリウム水溶液(12mL)を加え、15時間加熱還流した。室温まで放冷後、反応混合物に水及びメタノールを加え、析出した固体をろ取した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム)、次いで再結晶(トルエン)により精製することで、目的の2-[3’-(フェナントレン-9-イル)-5’-(ピリジン-3-イル)-(1,1’-ビフェニル)-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(化合物 1-46)を得た(4.10g,80%)。
【0136】
H-NMR(CDCl)δ(ppm):9.10(t,J=1.6Hz,1H),9.05(dd,J=2.4,0.7Hz,1H),8.82-8.85(m,2H),8.76-8.80(m,5H),8.66(dd,J=1.6,4.8Hz,1H),8.13(dd,J=8.2,1.0Hz,1H),8.07(ddd,J=7.9,2.3,1.7Hz,1H),8.02(t,J=1.7Hz,1H),7.99(t,J=1.6Hz,1H),7.95-7.98(m,2H),7.87(s,1H),7.85(t,J=1.6Hz,1H),7.66-7.76(m,3H),7.55-7.65(m,8H),7.44(ddd,J=8.0,4.8,0.7Hz,1H).
【0137】
参考例-1
【化18】
【0138】
アルゴン雰囲気下、3-ブロモ-5-クロロフェノール(10.0g,48mmol)、9-フェナントレンボロン酸(15.0g,68mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.67g,1.4mmol)を1,4-ジオキサン(100mL)に懸濁した。この懸濁液に5M-水酸化ナトリウム水溶液(29mL)を加え、100℃で16時間撹拌した。この反応混合物に水及びクロロホルムを加えた。有機層を分離し、ここに硫酸ナトリウムを加えた。硫酸ナトリウムをろ別し、ろ液を減圧乾固した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル=20/1)で精製し、目的の3-クロロ-5-(フェナントレン-9-イル)フェノールを褐色固体として得た(14.2g,97%)。
【0139】
H-NMR(CDCl)δ(ppm):8.77(d,J=8.2Hz,1H),8.72(d,J=8.2Hz,1H),7.88-7.91(m,2H),7.60-7.71(m,4H),7.54-7.58(m,1H),7.12(t,J=1.7Hz,1H),6.96(t,J=1.7Hz,1H),6.89-6.91(m,1H),5.28(brs,1H).
【0140】
参考例-2
【化19】
【0141】
アルゴン雰囲気下、3-クロロ-5-(9-フェナントリル)フェノール(6.60g,22mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(11.0g,43mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(496mg,0.54mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピルビフェニル(1.03g,2.2mmol)、酢酸カリウム(8.50g,87mmol)をジオキサン(216mL)に懸濁させ、110℃で24時間撹拌した。放冷後、得られた混合物をクロロホルムで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、3-(フェナントレン-9-イル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノールの白色固体を得た(収量8.50g,収率99%)。
【0142】
H-NMR(CDCl)δ(ppm):8.70-8.77(m,2H),7.86-7.93(m,2H),7.51-7.69(m,6H),7.34(dd,J=2.6,0.8Hz,1H),7.12-7.14(m,1H),4.95(s,1H),1.35(s,12H).
【0143】
参考例-3
【化20】
【0144】
アルゴン雰囲気下、3-(フェナントレン-9-イル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノール(8.50g,21mmol)、3-ブロモピリジン(3.1mL,32mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(496mg,0.43mmol)をテトラヒドロフラン(214mL)に溶解させた。ここに2M-炭酸ナトリウム水溶液(43mL)を加え、80℃で一晩撹拌した。室温まで冷却後、クロロホルムを加え懸濁させ、濾過を行った。残渣を水、メタノール及びクロロホルムで洗浄し、3-(フェナントレン-9-イル)-5-(ピリジン-3-イル)フェノールの白色固体を得た(6.30g,85%)。
【0145】
H-NMR(DMSO-d)δ(ppm):9.96(br,1H),8.87-8.96(m,3H),8.58(dd,J=4.7,1.5Hz,1H),8.12(dt,J=8.0,1.9Hz,1H),8.05(d,J=7.8,1H),7.97(d,J=7.4,1H),7.88(s,1H),7.63-7.77(m,4H),7.47-7.51(m,1H),7.30(s,1H),7.21(t,J=1.9Hz,1H),7.00(s,1H).
【0146】
参考例-3
【化21】
【0147】
アルゴン雰囲気下、3-(9-フェナントリル)-5-(3-ピリジル)フェノール(6.30g,18mmol)、ピリジン(2.9mL)をジクロロメタン(36mL)に溶解させ、そこにトリフルオロメタンスルホン酸無水物(3.6mL,21mmol)を滴下して加え、室温で一晩撹拌した。反応終了後、得られた混合物をクロロホルムで抽出し、水及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィーによる精製を行い、3-(9-フェナントリル)-5-(3-ピリジル)フェニルトリフルオロメタンスルホン酸の白色固体を得た(6.7g,77%)。
【0148】
H-NMR(CDCl)δ(ppm):8.92(d,J=2.4,1H),8.82(d,J=8.2Hz,1H),8.75(d,J=7.9Hz,1H),8.68(dd,J=4.8,1.6Hz,1H),7.92-7.96(m,2H),7.87(d,J=8.2Hz,1H),7.81(t,J=1.5Hz,1H),7.70-7.74(m,3H),7.64-7.68(m,1H),7.58-7.62(m,2H),7.52-7.53(m,1H),7.41-7.45(m,1H).
【0149】
参考例-4
【化22】
【0150】
4,6-ジフェニル-2-[5-(9-フェナントリル)-3-(3-ピリジル)フェニル]-1,3,5-トリアジン(ETL-1)を特開2011-63584号公報の実施例6に記載の方法にて合成した。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):9.22(s,1H),9.14(s,1H),9.13(d,J=5.4Hz,1H),8.89(d,J=8.4Hz,1H),8.83(d,J=8.4Hz,1H),8.80(d,J=7.1Hz,4H),8.60(d,J=8.1Hz,1H),8.05(s,1H),8.02(d,J=7.1Hz,1H),7.96(d,J=8.1Hz,1H),7.90(brt,J=6.5Hz,1H),7.90(s,1H),7.76-7.80(m,2H),7.72(t,J=7.0Hz,1H),7.59-7.67(m,8H)..
【0151】
ついで、得られた化合物を用いて素子評価を実施した。
【0152】
[電子輸送層6としての評価]
素子実施例-1(図2参照)
(基板1、陽極2の用意)
陽極2をその表面に備えた基板1として、2mm幅の酸化インジウム-スズ(ITO)膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。ついで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
【0153】
(真空蒸着の準備)
洗浄後の表面処理が施された基板上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
まず、真空蒸着槽内に前記ガラス基板を導入し、1.0×10-4Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。なお、各有機材料は抵抗加熱方式により成膜した。
【0154】
(正孔注入層3の作製)
昇華精製したN-[1,1’-ビフェニル]-4-イル-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾ-ル-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミンと1,2,3-トリス[(4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)メチレン]シクロプロパンとを99:1(質量比)の割合で10nm成膜し、正孔注入3を作製した。成膜速度は0.1nm/秒の速度であった。
【0155】
(第一正孔輸送層41の作製)
昇華精製したN-[1,1’-ビフェニル]-4-イル-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミンを0.2nm/秒の速度で85nm成膜し、第一正孔輸送層41を作製した。
【0156】
(第二正孔輸送層42の作製)
昇華精製したN-フェニル-N-(9,9-ジフェニルフルオレン-2-イル)-N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)アミンを0.15nm/秒の速度で5nm成膜し、第二正孔輸送層42を作製した。
【0157】
(発光層5の作製)
昇華精製した3-(10-フェニル-9-アントリル)-ジベンゾフランと2,7-ビス[N,N-ジ-(4-tertブチルフェニル)]アミノ-ビスベンゾフラノ-9,9’-スピロフルオレンとを95:5(質量比)の割合で20nm成膜し、発光層5を作製した。成膜速度は0.1nm/秒であった。
【0158】
(正孔阻止層9の作製)
昇華精製した2-[3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)[1,1’-ビフェニル]-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンを0.05nm/秒の速度で6nm成膜し、正孔阻止層9を作製した。
【0159】
(電子輸送層6の作製)
合成実施例-1で合成した2-[3’-(フェナントレン-9-イル)-5’-(ピリジン-3-イル)-(1,1’-ビフェニル)-4-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(化合物 1-1)及び8-ヒドロキシキノリノラートリチウム(以下、Liq)を50:50(質量比)の割合で25nm成膜し、電子輸送層6を作製した。成膜速度は0.15nm/秒であった。
【0160】
(電子注入層7の作製)
Liqを0.02nm/秒の速度で2nm成膜し、電子注入層7を作製した。
【0161】
(陰極8の作製)
最後に、基板1上のITOストライプ(陽極2)と直行するようにメタルマスクを配し、陰極8を成膜した。陰極は、銀/マグネシウム(質量比1/10)と銀とを、この順番で、それぞれ80nmと20nmとで成膜し、2層構造とした。銀/マグネシウムの成膜速度は0.5nm/秒、銀の成膜速度は成膜速度0.2nm/秒であった。
【0162】
以上により、図2に示すような発光面積4mm有機電界発光素子100を作製した。なお、それぞれの膜厚は、触針式膜厚測定計(DEKTAK、Bruker社製)で測定した。
さらに、この素子を酸素及び水分濃度1ppm以下の窒素雰囲気グローブボックス内で封止した。封止は、ガラス製の封止キャップと成膜基板(素子)とを、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製)を用いて行った。
【0163】
素子実施例―2
素子実施例-1において、電子輸送層6に、合成実施例-2で合成した2-[3’-(フェナントレン-9-イル)-5’-(ピリジン-3-イル)-(1,1’-ビフェニル)-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(化合物 1-46)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)する代わりに、化合物A-49及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)した以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製した。
素子参考例-1
【0164】
素子実施例-1において、電子輸送層6に、2-[3’-(フェナントレン-9-イル)-5’-(ピリジン-3-イル)-(1,1’-ビフェニル)-4-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(化合物 1-1)及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)する代わりに、ETL-1及びLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜(成膜速度0.15nm/秒)した以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製した。
【0165】
作製した有機電界発光素子に直流電流を印加し、上記発光特性測定に記載した方法に従って発光特性を評価した。
【0166】
発光特性として、電流密度10mA/cmを流した時の電流効率(cd/A)を測定し、連続点灯時の素子寿命を測定した。当該素子寿命は初期輝度を1000cd/mで駆動したときの連続点灯時の輝度減衰時間を測定し、輝度(cd/m)が5%減じるまでに要した時間を測定した。なお、電流効率(cd/A)及び寿命の値は、素子参考例-1を100とした時の相対値で表した。結果を表1に示す。
【0167】
【表1】
【符号の説明】
【0168】
1.基板
2.陽極
3.正孔注入層
4.正孔輸送層
5.発光層
6.電子輸送層
7.電子注入層
8.陰極
9.正孔阻止層
51.第一の正孔輸送層
52.第二の正孔輸送層
100.有機電界発光素子
図1
図2