(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157914
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】冷凍機油組成物及び冷凍機用混合組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20221006BHJP
C10M 105/38 20060101ALI20221006BHJP
C10M 107/24 20060101ALI20221006BHJP
C10M 107/34 20060101ALI20221006BHJP
C10M 129/72 20060101ALI20221006BHJP
C10M 159/08 20060101ALI20221006BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20221006BHJP
C10M 129/18 20060101ALN20221006BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20221006BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M105/38
C10M107/24
C10M107/34
C10M129/72
C10M159/08
C09K5/04 F
C10M129/18
C10N30:08
C10N40:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062425
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 知也
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02C
4H104BB09C
4H104BB31C
4H104BB32C
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104BE07C
4H104CB02A
4H104CB14A
4H104CJ02C
4H104DA06C
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB13
4H104EB20
4H104LA04
4H104PA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】冷媒中の不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)の比率を増加させた場合であっても、酸価の上昇を効果的に抑制できる冷凍機油組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)
C
xF
yH
z・・・(1)[式(1)中、xは2~6、yは1~11、zは1~11の整数であり、分子中に炭素-炭素不飽和結合を1以上有する。]で表される化合物から選択される1種以上の不飽和フッ化炭化水素化合物を含む冷媒に用いられ、
ポリアルキレングリコール類、ポリビニルエーテル類、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体、及びポリオールエステル類からなる群から選択される基油(A)と、下記要件(B1)、(B2)を満たすエポキシ化合物(B)を含む冷凍機油組成物。
(B1)分子中に少なくとも1つの下記式(1)で表される2価基を有する。
(B2)分子中に少なくとも1つのエステル基を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
C
xF
yH
z・・・(1)
[前記一般式(1)中、xは2~6、yは1~11、zは1~11の整数であり、分子中に炭素-炭素不飽和結合を1以上有する。]で表される化合物から選択される1種以上の不飽和フッ化炭化水素化合物を含む冷媒に用いられる冷凍機油組成物であって、
ポリアルキレングリコール類、ポリビニルエーテル類、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体、及びポリオールエステル類からなる群から選択される基油(A)と、エポキシ化合物(B)とを含有し、
前記エポキシ化合物(B)が、下記要件(B1)及び(B2)を満たす、冷凍機油組成物。
(B1)分子中に少なくとも1つの下記式(1)で表される2価基を有する。
【化1】
(B2)分子中に少なくとも1つのエステル基を有する。
【請求項2】
前記エポキシ化合物(B)の分子量が、300以上である、請求項1に記載の冷凍機油組成物。
【請求項3】
前記エポキシ化合物(B)の含有量が、前記冷凍機油組成物の全量基準で、0.10質量%以上である、請求項1又は2に記載の冷凍機油組成物。
【請求項4】
前記エポキシ化合物(B)は、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂環式カルボン酸エステル及びエポキシ化植物油からなる群から選択される1種以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の冷凍機油組成物。
【請求項5】
前記エポキシ化脂肪酸エステルが、下記一般式(1-1)で表されるものである請求項4に記載の冷凍機油組成物。
【化2】
(式(1-1)中、R
1は、炭素数4~20の炭化水素基であり、R
2は、炭素数1~10の炭化水素基であり、pは1~3の整数であり、nは0~12の整数であり、mは1~3の整数である。mが2以上の場合、複数存在する[]内の構造は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項6】
前記エポキシ化脂環式カルボン酸エステルが、下記一般式(1-2)で表されるものである請求項4に記載の冷凍機油組成物。
【化3】
(式(1-2)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数4~20の炭化水素基である。)
【請求項7】
前記エポキシ化植物油が、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化米ぬか油及びエポキシ化綿実油からなる群から選択される1種以上である請求項4に記載の冷凍機油組成物。
【請求項8】
さらに、グリシジルエーテル化合物(C)を含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の冷凍機油組成物。
【請求項9】
前記エポキシ化合物(B)と前記グリシジルエーテル化合物(C)との含有比率[(B)/(C)]が、質量比で、0.050以上5.0以下である、請求項8に記載の冷凍機油組成物。
【請求項10】
さらに、酸化防止剤、安定化剤、極圧剤、及び消泡剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を含有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の冷凍機油組成物。
【請求項11】
前記不飽和フッ化炭化水素化合物が、R1234ze、R1234yf、及びR1234yeからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の冷凍機油組成物。
【請求項12】
前記冷媒が、前記不飽和フッ化炭化水素化合物のみからなる、請求項1~11のいずれか1項に記載の冷凍機油組成物。
【請求項13】
下記一般式(1)
CxFyHz・・・(1)
[前記一般式(1)中、xは2~6、yは1~11、zは1~11の整数であり、分子中に炭素-炭素不飽和結合を1以上有する。]で表される化合物から選択される1種以上の不飽和フッ化炭化水素化合物を含む冷媒と、請求項1~12のいずれか1項に記載の冷凍機油組成物とを含有する、冷凍機用混合組成物。
【請求項14】
下記一般式(1)
C
xF
yH
z・・・(1)
[前記一般式(1)中、xは2~6、yは1~11、zは1~11の整数であり、分子中に炭素-炭素不飽和結合を1以上有する。]で表される化合物から選択される1種以上の不飽和フッ化炭化水素化合物を含む冷媒に用いられる冷凍機油組成物の製造方法であって、
ポリアルキレングリコール類、ポリビニルエーテル類、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体、及びポリオールエステル類からなる群から選択される基油(A)と、エポキシ化合物(B)とを混合する工程を含み、
前記エポキシ化合物(B)が、下記要件(B1)及び(B2)を満たす、冷凍機油組成物の製造方法。
(B1)分子中に少なくとも1つの下記式(1)で表される2価基を有する。
【化4】
(B2)分子中に少なくとも1つのエステル基を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機油組成物及び冷凍機用混合組成物に関する。
なお、本明細書において、「冷凍機用混合組成物」とは、「冷凍機油組成物」と「冷媒」とを混合した組成物を指す。
【背景技術】
【0002】
冷凍機、例えば圧縮型冷凍機は、一般に、少なくとも圧縮機、凝縮器、膨張機構(例えば膨張弁等)、及び蒸発器を含み、密閉された系内を、冷凍機用混合組成物が循環する構造を有する。
【0003】
圧縮型冷凍機等の冷凍機に用いられる冷媒としては、従来多く使用されていたハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)に代わり、環境負荷の低いフッ化炭化水素化合物が使用されつつある。当該フッ化炭化水素化合物としては、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)、ジフルオロメタン(R32)、及び1,1-ジフルオロエタン(R152a)等の飽和フッ化炭化水素化合物(Hydro-Fluoro-Carbon;以下、「HFC」ともいう)が使用されつつある。
また、地球温暖化係数(GWP)が低い、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)、及び1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ye)等の不飽和フッ化炭化水素化合物(Hydro-Fluoro-Olefin;以下、「HFO」ともいう)の使用も検討されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)は、地球温暖化係数(GWP)が低いという利点を有する一方で、飽和フッ化炭化水素化合物(HFC)と比較して、高温での熱安定性に劣るという欠点を有している。そのため、冷媒中における不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)の含有量が増加すると、冷凍機油組成物の酸価が上昇しやすいという問題がある。
【0006】
また、近年、冷凍機はコンパクト化や高性能化等が進み、その運転条件は以前に増して過酷になっている。そのため、冷凍機油組成物には、これまで以上に高度な品質が要求されている。例えば、冷凍機のコンパクト化に伴って機器内の冷凍機油組成物の使用量の減少が進む一方で、運転条件の過酷化による圧縮機の摺動部における摩擦熱等によって、局所的に高温になる箇所が発生しやすくなっている。このような箇所に冷凍機用混合組成物が晒されると、冷凍機油組成物の酸価がより上昇しやすい状況となる。
【0007】
そこで、冷媒中の不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)の含有量を増加させた場合であっても、酸価の上昇を効果的に抑制できる冷凍機油組成物の創出が望まれている。
【0008】
本発明は、かかる要望に鑑みてなされたものであって、冷媒中の不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)の含有量を増加させた場合であっても、酸価の上昇を効果的に抑制できる冷凍機油組成物、及び当該冷凍機油組成物を含む冷凍機用混合組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、特定のエポキシ化合物を含有する冷凍機油組成物が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記[1]~[3]に関する。
[1] 下記一般式(1)
C
xF
yH
z・・・(1)
[前記一般式(1)中、xは2~6、yは1~11、zは1~11の整数であり、分子中に炭素-炭素不飽和結合を1以上有する。]で表される化合物から選択される1種以上の不飽和フッ化炭化水素化合物を含む冷媒に用いられる冷凍機油組成物であって、
ポリアルキレングリコール類、ポリビニルエーテル類、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体、及びポリオールエステル類からなる群から選択される基油(A)と、エポキシ化合物(B)とを含有し、
前記エポキシ化合物(B)が、下記要件(B1)及び(B2)を満たす、冷凍機油組成物。
(B1)分子中に少なくとも1つの下記式(1)で表される2価基を有する。
【化1】
(B2)分子中に少なくとも1つのエステル基を有する。
[2] 下記一般式(1)
C
xF
yH
z・・・(1)
[前記一般式(1)中、xは2~6、yは1~11、zは1~11の整数であり、分子中に炭素-炭素不飽和結合を1以上有する。]で表される化合物から選択される1種以上の不飽和フッ化炭化水素化合物を含む冷媒と、[1]に記載の冷凍機油組成物とを含有する、冷凍機用混合組成物。
[3] 下記一般式(1)
C
xF
yH
z・・・(1)
[前記一般式(1)中、xは2~6、yは1~11、zは1~11の整数であり、分子中に炭素-炭素不飽和結合を1以上有する。]で表される化合物から選択される1種以上の不飽和フッ化炭化水素化合物を含む冷媒に用いられる冷凍機油組成物の製造方法であって、
ポリアルキレングリコール類、ポリビニルエーテル類、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体、及びポリオールエステル類からなる群から選択される基油(A)と、エポキシ化合物(B)とを混合する工程を含み、
前記エポキシ化合物(B)が、下記要件(B1)及び(B2)を満たす、冷凍機油組成物の製造方法。
(B1)分子中に少なくとも1つの下記式(1)で表される2価基を有する。
【化2】
(B2)分子中に少なくとも1つのエステル基を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷媒中の不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)の含有量を増加させた場合であっても、酸価の上昇を効果的に抑制できる冷凍機油組成物、及び当該冷凍機油組成物を含む冷凍機用混合組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に記載された数値範囲の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「A~B」及び「C~D」が記載されている場合、「A~D」及び「C~B」の数値範囲も、本発明の範囲に含まれる。
また、本明細書に記載された数値範囲「下限値~上限値」は、特に断りのない限り、下限値以上、上限値以下であることを意味する。
また、本明細書において、実施例の数値は、上限値又は下限値として用いられ得る数値である。
【0013】
[冷凍機油組成物の態様]
本実施形態の冷凍機油組成物は、下記一般式(1)
C
xF
yH
z・・・(1)
[前記一般式(1)中、xは2~6、yは1~11、zは1~11の整数であり、分子中に炭素-炭素不飽和結合を1以上有する。]で表される化合物から選択される1種以上の不飽和フッ化炭化水素化合物を含む冷媒に用いられる冷凍機油組成物である。
本実施形態の冷凍機油組成物は、基油(A)と、エポキシ化合物(B)とを含有する。そして、エポキシ化合物(B)が、下記要件(B1)及び(B2)を満たす。
(B1)分子中に少なくとも1つの下記式(1)で表される2価基を有する。
【化3】
(B2)分子中に少なくとも1つのエステル基を有する。
【0014】
本発明者は、冷媒中における不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)の含有量が増加すると、冷凍機油組成物の酸価が上昇しやすくなる要因の一つが、高温環境下において不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)が分解することにより生じるフッ素分であるとの考えに基づき、種々検討を重ねた。
その結果、特定の要件を満たすエポキシ化合物(B)を含有する冷凍機油組成物が、高温環境下における不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)の分解により生じるフッ素分に起因する冷凍機油組成物中のフッ素濃度の上昇を抑制して、冷凍機油組成物の酸価上昇を抑制できることを見出すに至った。
【0015】
本発明の効果が奏される機構については、以下のように推察される。
すなわち、分子末端にエポキシ基を有する構造を有するエポキシ化合物と比較して、分子の内部にエポキシ基を有する上記エポキシ化合物(B)は、不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)を分解しにくい。このため、特に高温環境下においては不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)が分解することにより生じるフッ素分(例えば、フッ化水素酸等)を発生させにくく、また、発生してしまった微量のフッ素分はエポキシ化合物(B)中のエポキシ基と反応してエポキシ化合物(B)中に捕捉される。
すなわち、エポキシ化合物(B)を用いることで、HFOを分解しにくく、その結果、冷凍機油組成物へのフッ素分の溶出が抑制され、かつ溶出したフッ素分を捕捉可能であるため、冷凍機油組成物の酸価上昇を抑制できるものと推察される。
【0016】
なお、以降の説明では、「基油(A)」及び「エポキシ化合物(B)」を、それぞれ「成分(A)」及び「成分(B)」ともいう。
【0017】
本実施形態の冷凍機油組成物は、成分(A)及び成分(B)のみから構成されていてもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)及び成分(B)以外の他の成分を含有していてもよい。
本実施形態の冷凍機油組成物において、成分(A)及び成分(B)の合計含有量は、冷凍機油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは80質量%~100質量%、より好ましくは85質量%~100質量%、更に好ましくは90質量%~100質量%である。
【0018】
以下、本実施形態の冷凍機油組成物が含有する各成分について、詳細に説明する。
【0019】
<基油(A)>
本実施形態の冷凍機油組成物は、基油(A)を含有する。
本実施形態の冷凍機油組成物において、基油(A)の含有量は、冷凍機油組成物として要求される長期的な安定性の観点から、冷凍機油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは85.0質量%以上、より好ましくは90.0質量%以上、更に好ましくは92.0質量%以上である。また、冷凍機油組成物中におけるエポキシ化合物(B)の含有量を確保しやすくする観点、さらにはエポキシ化合物(B)以外の添加剤の含有量を確保しやすくする観点から、好ましくは99.0質量%以下、より好ましくは98.5質量%以下、更に好ましくは98.0質量%以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは85.0質量%~99.0質量%、より好ましくは90.0質量%~98.5質量%、更に好ましくは92.0質量%~98.0質量%である。
【0020】
基油(A)としては、冷凍機油組成物において通常用いられる基油を、特に制限なく用いることができる。例えば、基油(A)として、合成油及び鉱油からなる群から選択される1種以上を用いることができる。
ここで、本実施形態の冷凍機油組成物において、エポキシ化合物(B)の溶解性の観点から、基油(A)は合成油であることが好ましい。
また、合成油の中でも、冷凍機油組成物の熱安定性向上の観点から、基油(A)は、ポリアルキレングリコール類(以下、「PAG」ともいう)、ポリビニルエーテル類(以下、「PVE」ともいう)、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体(以下、「ECP」ともいう)、及びポリオールエステル類(以下、「POE」ともいう)からなる群から選択される1種以上の基油(以下、「基油(A1)」ともいう)を含むことが好ましい。
さらに、冷媒との相溶性向上の観点、耐加水分解性向上の観点、及び冷凍機油組成物の熱安定性のさらなる向上の観点から、基油(A)は、PAG及びPVEからなる群から選択される1種以上の基油(以下、「基油(A2)」ともいう)を含むことがより好ましい。
以下、PAG、PVE、ECP、及びPOEについて、詳細に説明する。
【0021】
(ポリアルキレングリコール類(PAG))
PAGとしては、冷凍機油組成物において、基油として用いられているPAGを、特に制限なく使用することができるが、下記一般式(A-1)で表される重合体(A-1)であることが好ましい。
R13a-[(OR14a)p-OR15a]q (A-1)
なお、基油(A)中にPAGが含まれる場合、PAGは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
上記一般式(A-1)中、R13aは、水素原子、炭素数1~10の1価の炭化水素基、炭素数2~10のアシル基、炭素数1~10の2~6価の炭化水素基又は置換若しくは無置換の環形成原子数3~10の複素環基を示し、R14aは、炭素数2~4のアルキレン基を示し、R15aは、水素原子、炭素数1~10の1価の炭化水素基、炭素数2~10のアシル基又は置換若しくは無置換の環形成原子数3~10の複素環基を示す。
複素環基が有していてもよい置換基としては、炭素数1~10(好ましくは1~6、より好ましくは1~3)のアルキル基;環形成炭素数3~10(好ましくは3~8、より好ましくは5又は6)のシクロアルキル基;環形成炭素数6~18(好ましくは6~12)のアリール基;ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;アミノ基等が挙げられる。
これらの置換基は、更に上述の任意の置換基により置換されていてもよい。
【0023】
qは、1~6の整数であり、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1である。
なお、qは、上記一般式(A-1)中のR13aの結合部位の数に応じて定められる。例えば、R13aがアルキル基又はアシル基の場合には、qは1となり、R13aが炭化水素基又は複素環基であり、該基の価数が2、3、4、5、又は6価である場合、qはそれぞれ2、3、4、5、又は6となる。
pは、OR14aの繰り返し単位の数であって、通常1以上であり、好ましくはp×qが6~80となる数である。なお、pの値は、基油(A)の40℃動粘度を適切な範囲に調整するために適宜設定される値であり、40℃動粘度が適切な範囲となるように調整されていれば、特に制限されない。
なお、複数のR14aは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、qが2以上の場合、1分子中の複数のR15aは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0024】
R13a及びR15aで表される上記1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種プロピルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種プロピルフェニル基、各種トリメチルフェニル基、各種ブチルフェニル基、各種ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基、各種フェニルプロピル基、各種フェニルブチル基等のアリールアルキル基;等が挙げられる。なお、上記アルキル基は直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよい。
ここで、「各種」とは「直鎖状、分岐鎖状、又は環状」の炭化水素基であることを表し、例えば、「各種ブチル基」とは、「n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基」等の各種ブチル基を表す。また、環状構造を有する基については、オルト体、メタ体、パラ体等の位置異性体を含むことを示し、以下、同様である。
R13a及びR15aで表される1価の炭化水素基の炭素数は、冷媒との相溶性の観点から、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~3である。
【0025】
R13a及びR15aで表される上記炭素数2~10のアシル基が有する炭化水素基部分は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよい。該アルキル基部分としては、上述のR13a及びR15aで表される炭化水素基のうち炭素数1~9のものが挙げられる。
R13a及びR15aで表されるアシル基の炭素数は、冷媒との相溶性の観点から、好ましくは2~8、より好ましくは2~6である。
【0026】
R13aで表される上記2~6価の炭化水素基としては、上述のR13aで表される1価の炭化水素基から更に水素原子を1~5個除いた残基、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,2,3-トリヒドロキシシクロヘキサン、1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサン等の多価アルコールから水酸基を除いた残基等が挙げられる。
R13aで表される2~6価のアシル基の炭素数は、冷媒との相溶性の観点から、好ましくは2~10、より好ましくは2~6である。
【0027】
R13a及びR15aで表される上記複素環基としては、酸素原子含有複素環基又は硫黄原子含有複素環基が好ましい。なお、該複素環基は、飽和環であってもよく不飽和環であってもよい。
上記酸素原子含有複素環基としては、エチレンオキシド、1,3-プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ヘキサメチレンオキシド等の酸素原子含有飽和複素環;アセチレンオキシド、フラン、ピラン、オキシシクロヘプタトリエン、イソベンゾフラン、イソクロメン等の酸素原子含有不飽和複素環が有する水素原子を1~6個除いた残基等が挙げられる。
また、上記硫黄原子含有複素環基としては、エチレンスルフィド、トリメチレンスルフィド、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン、ヘキサメチレンスルフィド等の硫黄原子含有飽和複素環、アセチレンスルフィド、チオフェン、チアピラン、チオトリピリデン等の硫黄原子含有不飽和複素環等が有する水素原子を1~6個除いた残基が挙げられる。
【0028】
R13a及びR15aで表される上記複素環基は、置換基を有していてもよく、該置換基が上記一般式(A-1)中の酸素原子と結合してもよい。該置換基としては、上述のとおりであるが、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
上記複素環基の環形成原子数は、冷媒との相溶性の観点から、好ましくは3~10、より好ましくは3~6である。
【0029】
R14aで表される上記アルキレン基としては、ジメチレン基(-CH2CH2-)、エチレン基(-CH(CH3)-)等の炭素数2のアルキレン基;トリメチレン基(-CH2CH2CH2-)、プロピレン基(-CH(CH3)CH2-)、プロピリデン基(-CHCH2CH3-)、イソプロピリデン基(-C(CH3)2-)等の炭素数3のアルキレン基;テトラメチレン基(-CH2CH2CH2CH2-)、1-メチルトリメチレン基(-CH(CH3)CH2CH2-)、2-メチルトリメチレン基(-CH2CH(CH3)CH2-)、ブチレン基(-C(CH3)2CH2-)等の炭素数4のアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、R14aとしては、プロピレン基(-CH(CH3)CH2-)が好ましい。
【0030】
なお、上記一般式(A-1)で表される重合体(A-1)において、オキシプロピレン単位(-OCH(CH3)CH2-)の含有量は、重合体(A-1)中のオキシアルキレン(OR14a)の全量(100モル%)基準で、好ましくは50モル%以上、より好ましくは65モル%以上、更に好ましくは80モル%以上である。
【0031】
上記一般式(A-1)で表される重合体(A-1)の中でも、下記一般式(A-1-i)で表されるポリオキシプロピレングリコールジメチルエーテル、下記一般式(A-1-ii)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジメチルエーテル、下記一般式(A-1-iii)で表されるポリオキシプロピレングリコールモノブチルエーテル、下記一般式(A-1-iv)で表されるポリオキシプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びポリオキシプロピレングリコールジアセテートからなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0032】
【化4】
(式(A-1-i)中、p1は、1以上の数を示し、好ましくは6~80の数である。)
【0033】
【化5】
(式(A-1-ii)中、p2及びp3は、各々独立に、1以上の数を示し、好ましくはp2+p3の値が6~80となる数である。)
【0034】
【化6】
(式(A-1-iii)中、p4は、1以上の数を示し、好ましくは6~80の数である。)
【0035】
【化7】
(式(A-1-iv)中、p5は、1以上の数を示し、好ましくは6~80の数である。)
【0036】
なお、上記一般式(A-1-i)中のp1、上記一般式(A-1-ii)中のp2及びp3、上記一般式(A-1-iii)中のp4、並びに上記一般式(A-1-iv)中のp5は、基油(A)に要求される動粘度に応じて適宜選択すればよい。
【0037】
(ポリビニルエーテル類(PVE))
PVEは、ビニルエーテル由来の構成単位を1種以上有する重合体であり、冷凍機油組成物において、基油として用いられているPVEを、特に制限なく使用することができる。
なお、基油(A)中にPVEが含まれる場合、PVEは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
PVEは、冷媒との相溶性の観点から、ビニルエーテル由来の構成単位を1種以上有し、側鎖に炭素数1~4のアルキル基を有する重合体が好ましい。該アルキル基としては、冷媒との相溶性をより向上させる観点から、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0038】
PVEは、下記一般式(A-2)で表される構成単位を1種以上有する重合体(A-2)であることが好ましい。
【0039】
【0040】
式(A-2)中、R1a、R2a、及びR3aは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基を示す。R4aは、炭素数2~10の2価の炭化水素基を示す。R5aは、炭素数1~10の炭化水素基を示す。rは、OR4aの繰り返し単位の数であって、通常0~10であるが、好ましくは0~5、より好ましくは0~3、更に好ましくは0である。なお、上記一般式(A-2)で表される構成単位中にOR4aが複数存在する場合、複数のOR4aは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0041】
R1a、R2a及びR3aで表される炭素数1~8の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基等のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基等のアリールアルキル基;等が挙げられる。
【0042】
R1a、R2a、及びR3aで表される炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~3である。
R1a、R2a、及びR3aは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0043】
R4aで表される炭素数2~10の2価の炭化水素基としては、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種ヘプチレン基、各種オクチレン基、各種ノニレン基、各種デシレン基等の2価の脂肪族基;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン等の二価の脂環式基;各種フェニレン基、各種メチルフェニレン基、各種エチルフェニレン基、各種ジメチルフェニレン基、各種ナフチレン等の2価の芳香族基;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等のアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分と芳香族部分とにそれぞれ一価の結合部位を有する2価のアルキル芳香族基;キシレン、ジエチルベンゼン等のポリアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分に結合部位を有する2価のアルキル芳香族基;等が挙げられる。
R4aで表される炭化水素基の炭素数は、好ましくは2~6、より好ましくは2~4である。
R4aは、炭素数2~10の2価の脂肪族基が好ましく、炭素数2~4の2価の脂肪族基がより好ましい。
【0044】
R5aで表される炭素数1~10の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種プロピルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種プロピルフェニル基、各種トリメチルフェニル基、各種ブチルフェニル基、各種ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基、各種フェニルプロピル基、各種フェニルブチル基等のアリールアルキル基;等が挙げられる。
R5aで表される炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~8、より好ましくは1~6である。
R5aは、冷媒との相溶性をより向上させる観点から、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましく、メチル基がより更に好ましい。
【0045】
上記一般式(A-2)で表される構成単位の単位数(重合度数)は、基油(A)に要求される動粘度に応じて適宜選択される。
また、上記一般式(A-2)で表される構成単位を有する重合体は、該構成単位を1種のみ有する単独重合体であってもよく、該構成単位を2種以上有する共重合体であってもよい。なお、重合体が共重合体である場合、共重合の形態としては、特に制限はなく、ブロック共重合体、ランダム共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0046】
重合体(A-2)の末端部分には、飽和の炭化水素、エーテル、アルコール、ケトン、アミド、ニトリル等に由来する一価の基を導入してもよい。これらの中でも、重合体(A-2)は、一方の末端部分が下記一般式(A-2-i)で表される基であることが好ましい。
【0047】
【0048】
式(A-2-i)中、*は上記一般式(A-2)で表される構成単位中の炭素原子との結合位置を示す。
式(A-2-i)中、R6a、R7a、及びR8aは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基を示し、水素原子又は炭素数1~6の炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
R6a、R7a、及びR8aで表される炭素数1~8の炭化水素基としては、上記一般式(A-2)中のR1a、R2a、及びR3aで表される炭素数1~8の炭化水素基として列挙したものと同じものが挙げられる。
【0049】
上記式(A-2-i)中、R9aは、炭素数2~10の2価の炭化水素基を示し、炭素数2~6の2価の炭化水素基が好ましく、炭素数2~4の2価の脂肪族基がより好ましい。
上記式(A-2-i)中、r1は、OR9aの繰り返し単位の数であって、通常0~10であるが、好ましくは0~5、より好ましくは0~3、更に好ましくは0である。なお、上記一般式(A-2-i)で表される構成単位中にOR9aが複数存在する場合、複数のOR9aは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
R9aで表される炭素数2~10の2価の炭化水素基としては、上記一般式(A-2)中のR4aで表される炭素数2~10の2価の炭化水素基として列挙したものと同じものが挙げられる。
【0050】
式(A-2-i)中、R10aは、炭素数1~10の炭化水素基を示し、炭素数1~8の炭化水素基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましい。
なお、R10aとしては、上記一般式(A-2-i)中のr1が0である場合には、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、r1が1以上である場合には、炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
R10aで表される炭素数1~10の炭化水素基としては、上記一般式(A-2)中のR5aで表される炭素数1~10の炭化水素基として列挙したものと同じものが挙げられる。
【0051】
また、重合体(A-2)について、一方の末端部分が上記一般式(A-2-i)で表される基であるとき、他方の末端部分としては、上記一般式(A-2-i)で表される基、下記一般式(A-2-ii)で表される基、下記一般式(A-2-iii)で表される基、及びオレフィン性不飽和結合を有する基のいずれかであることが好ましい。
【0052】
【0053】
式(A-2-ii)及び(A-2-iii)中、R6a、R7a、R8a、R9a、R10a、及びr1は、上記一般式(A-2-i)中の規定と同じである。また、式(A-2-ii)中、R11a、R12a、及びr2は、それぞれ上記一般式(A-2-i)中のR9a、R10a及びr1の規定と同じである。
【0054】
(ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体(ECP))
ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体(ECP)としては、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルに由来の構成単位と、ポリビニルエーテルに由来の構成単位とを有する共重合体であればよい。
なお、「ポリ(オキシ)アルキレングリコール」とは、ポリアルキレングリコール及びポリオキシアルキレングリコールの両方を指す。
また、基油(A)中にECPが含まれる場合、ECPは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
当該ECPの中でも、次の一般式(A-3-i)で表される共重合体(A-3-i)又は一般式(A-3-ii)で表される共重合体(A-3-ii)であることが好ましい。
【0055】
【0056】
一般式(A-3-i)及び(A-3-ii)中、R1c、R2c、及びR3cは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上8以下の炭化水素基を示す。
R4cは、各々独立に、炭素数1~10の炭化水素基を示す。
R5cは、各々独立に、炭素数2~4のアルキレン基を示す。
R6cは、各々独立に、水素原子、炭素数1~20以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数3~20の脂環式基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~24の芳香族基、炭素数2~20のアシル基、又は炭素数2~50の酸素含有炭化水素基を示す。
なお、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、及びR6cが複数存在する場合、構成単位ごとにそれぞれ同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
XC及びYCは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、又は炭素数1~20の炭化水素基を示す。
【0057】
一般式(A-3-i)及び(A-3-ii)中のvは、OR5cで表される単位の数の平均値であって、1以上の数を示し、好ましくは1~50の数である。OR5cが複数存在する場合、複数のOR5cは、それぞれ同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。なお、「OR5c」は、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルに由来の構成単位を示すものである。
一般式(A-3-i)中のuは、0以上の数を示し、好ましくは0~50の数であり、wは、1以上の数を示し、好ましくは1~50の数である。
一般式(A-3-ii)中のx及びyは、それぞれ独立に、1以上の数を示し、好ましくは1~50の数である。
なお、上記v、u、w、x、yの値は、基油(A)に要求される水酸基価に応じて調整されていればよく、特に制限はない。
【0058】
なお、共重合体(A-3-i)及び共重合体(A-3-ii)の共重合の形態としては、特に制限はなく、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよく、又はグラフト共重合体であってもよい。
【0059】
R1c、R2c、及びR3cとして選択し得る炭素数1~8の炭化水素基としては、一般式(A-1)中のR1a、R2a、及びR3aとして選択し得る炭素数1~8の1価の炭化水素基と同じものが挙げられる。
R1c、R2c、及びR3cとして選択し得る前記炭化水素基の炭素数としては、好ましくは1~8、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~3である。
R1c、R2c、及びR3cとしては、それぞれ独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1~8のアルキル基、より好ましくは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基、更に好ましくは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。
また、R1c、R2c、及びR3cの少なくとも一つが水素原子であることが好ましく、R1c、R2c、及びR3cの全てが水素原子であることがより好ましい。
【0060】
R4cとして選択し得る炭素数1~10の炭化水素基としては、一般式(A-2)中のR5aとして選択し得る炭素数1~10の炭化水素基と同じものが挙げられる。
R4cとして選択し得る前記炭化水素基の炭素数としては、好ましくは1~8、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~4である。
【0061】
R5cとして選択し得る前記アルキレン基としては、一般式(A-1)中のR14aとして選択し得る炭素数2以上4以下のアルキレン基と同じものが挙げられ、好ましくはプロピレン基(-CH(CH3)CH2-)である。
なお、共重合体(A-3-i)又は共重合体(A-3-ii)において、オキシプロピレン単位(-OCH(CH3)CH2-)の含有量は、共重合体(A-3-i)又は共重合体(A-3-ii)中のポリ(オキシ)アルキレングリコール若しくはそのモノエーテルに由来の構成単位であるオキシアルキレン(OR5c)の全量(100モル%)基準で、好ましくは50モル%以上100モル%以下、より好ましくは65モル%以上100モル%以下、更に好ましくは80モル%以上100モル%以下である。
【0062】
R6cとして選択し得る炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基等が挙げられる。
当該アルキル基との炭素数としては、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~3である。
【0063】
R6cとして選択し得る環形成炭素数3~20の脂環式基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。
当該脂環式基の環形成炭素数としては、好ましくは3~10、より好ましくは3~8、更に好ましくは3~6である。
なお、当該脂環式基は、前述の置換基を有していてもよく、当該置換基としては、アルキル基が好ましい。
【0064】
R6cとして選択し得る環形成炭素数6~24の芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基等が挙げられる。
当該芳香族基の環形成炭素数としては、好ましくは6~18、より好ましくは6~12である。
なお、当該芳香族基は、前述の置換基を有していてもよく、当該置換基としては、アルキル基が好ましい。
【0065】
R6cとして選択し得る環形成炭素数2~20のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピパロイル基、ベンゾイル基、トルオイル基等が挙げられる。
当該アシル基の炭素数としては、好ましくは2~10、好ましくは2~8、更に好ましくは2~6である。
【0066】
R6cとして選択し得る炭素数2~50の酸素含有炭化水素基としては、例えば、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、1,1-ビスメトキシプロピル基、1,2-ビスメトキシプロピル基、エトキシプロピル基、(2-メトキシエトキシ)プロピル基、(1-メチル-2-メトキシ)プロピル基等が挙げられる。
当該炭素含有炭化水素基の炭素数としては、好ましくは2~20、より好ましくは2~10、更に好ましくは2~6である。
【0067】
XC、YCとして選択し得る炭素数1~20の炭化水素基としては、炭素数1~20(好ましくは1~10、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~3)のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数3~20(好ましくは3~10、より好ましくは3~8、更に好ましくは3~6)のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換のナフチル基、炭素数7~20(好ましくは7~13)のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0068】
(ポリオールエステル類(POE))
POEとしては、例えば、ジオール又はポリオールと、脂肪酸とのエステルが挙げられる。なお、基油(A)中にPOEが含まれる場合、POEは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
POEは、ジオール又は水酸基数が3~20のポリオールと、炭素数3~20の脂肪酸とのエステルが好ましい。
【0069】
ジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。
【0070】
ポリオールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)、トリ-(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2~20量体)、1,3,5-ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレンジトース等の糖類;並びに、これらの部分エーテル化物、メチルグルコシド(配糖体)等が挙げられる。
これらの中でも、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)、トリ-(ペンタエリスリトール)等のヒンダードアルコールが好ましい。なお、ヒンダードアルコールとは、4つの炭素原子に結合する4級炭素原子を有するアルコールを意味する。
【0071】
脂肪酸の炭素数としては、潤滑性能の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、より更に好ましくは8以上であり、また、冷媒との相溶性の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下である。
なお、上記の脂肪酸の炭素数には、該脂肪酸が有するカルボキシ基(-COOH)の炭素原子も含まれる。
また、脂肪酸としては、直鎖状脂肪酸又は分岐鎖状脂肪酸のいずれであってもよいが、潤滑性能の観点から、直鎖状脂肪酸が好ましく、加水分解安定性の観点から、分岐鎖状脂肪酸が好ましい。更に、脂肪酸は、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。
【0072】
脂肪酸としては、イソ酪酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、オレイン酸等の直鎖又は分岐鎖のもの、あるいはα炭素原子が4級であるいわゆるネオ酸等が挙げられる。
更に具体的には、イソ酪酸、吉草酸(n-ペンタン酸)、カプロン酸(n-ヘキサン酸)、エナント酸(n-ヘプタン酸)、カプリル酸(n-オクタン酸)、ペラルゴン酸(n-ノナン酸)、カプリン酸(n-デカン酸)、オレイン酸(cis-9-オクタデセン酸)、イソペンタン酸(3-メチルブタン酸)、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸等が好ましい。
【0073】
POEとしては、ポリオールが有する複数の水酸基の一部がエステル化されずに残った部分エステルであってもよく、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであってもよい。また、POEは、部分エステルと完全エステルの混合物であってもよいが、完全エステルであることが好ましい。
【0074】
POEとしては、より加水分解安定性に優れる観点から、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ-(ペンタエリスリトール)、トリ-(ペンタエリスリトール)等のヒンダードアルコールのエステルが好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトールのエステルがより好ましく、更に冷媒との相溶性及び加水分解安定性が特に優れる観点から、ペンタエリスリトールのエステルが更に好ましい。
【0075】
好ましいPOEの具体例としては、ネオペンチルグリコールと、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の脂肪酸とのジエステル;トリメチロールエタンと、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の脂肪酸とのトリエステル;トリメチロールプロパンと、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の脂肪酸とのトリエステル;トリメチロールブタンと、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の脂肪酸とのトリエステル;ペンタエリスリトールと、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の脂肪酸とのテトラエステル等が挙げられる。
【0076】
なお、2種以上の脂肪酸とのエステルとは、1種の脂肪酸とポリオールのエステルを2種以上混合したものでもよい。POEの中でも、低温特性の向上、及び冷媒との相溶性の観点から、2種以上の混合脂肪酸とポリオールのエステルが好ましい。
【0077】
(基油(A)の好ましい態様)
本実施形態の冷凍機油組成物において、基油(A)の主成分は、凍機油組成物として要求される長期的な安定性の観点から、上記基油(A1)が好ましく、上記基油(A2)がより好ましい。なお、本明細書における「主成分」とは、最も含有率が多い成分を意味する。
基油(A)中における、基油(A1)又は基油(A2)の含有量は、基油(A)の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、更に好ましくは70質量%~100質量%、より更に好ましくは80質量%~100質量%、更になお好ましくは90質量%~100質量%であり、より一層好ましくは100質量%である。
【0078】
ここで、基油(A1)は、PAG、PVE、ECP、又はPOEであること(すなわち、PAG、PVE、ECP、又はPOEのみからなること)が好ましい。
したがって、基油(A)中における、PAG、PVE、ECP、又はPOEの含有量は、基油(A)の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、更に好ましくは70質量%~100質量%、より更に好ましくは80質量%~100質量%、更になお好ましくは90質量%~100質量%であり、より一層好ましくは100質量%である。
【0079】
また、基油(A2)は、冷凍機油組成物として要求される長期的な安定性の観点から、PAG又はPVEであること(すなわち、PAG又はPVEのみからなること)が好ましい。
したがって、基油(A)中における、PAG又はPVEの含有量は、基油(A)の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、更に好ましくは70質量%~100質量%、より更に好ましくは80質量%~100質量%、更になお好ましくは90質量%~100質量%であり、より一層好ましくは100質量%である。
【0080】
(他の基油)
基油(A)は、本発明の効果を損なわない範囲内で、さらに他の基油を含有してもよい。
他の基油としては、鉱油並びに前述のPVE、PAG、ECP、及びPOEには該当しない合成油からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0081】
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、若しくはナフテン系原油を常圧蒸留するか、又は原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等のうちの1つ以上の処理を行って精製した油、鉱油系ワックスを異性化することによって製造される油等が挙げられる。
なお、鉱油が基油(A)中に含まれる場合、鉱油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
前述のPVE、PAG、ECP、及びPOEには該当しない合成油としては、例えば、ポリエステル類、ポリカーボネート類、α-オレフィンオリゴマーの水素化物、脂環式炭化水素化合物、アルキル化芳香族炭化水素化合物、フィシャートロプシュプロセス等により製造されるGTL WAX(ガストゥリキッド ワックス)を異性化することによって製造される油が挙げられる。
なお、前述のPVE、PAG、ECP、及びPOEには該当しない合成油が基油(A)中に含まれる場合、当該合成油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
なお、本実施形態の冷凍機油組成物において、エポキシ化合物(B)の溶解性の観点から、鉱油の含有量は少ないことが好ましい。具体的には、鉱油の含有量は、基油(A)の全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、より更に好ましくは鉱油を含有しないことである。
【0084】
(基油(A)の100℃動粘度)
基油(A)の100℃動粘度は、潤滑性能(耐荷重性能)及びシール性向上の観点から、好ましくは3mm2/s以上、より好ましくは4mm2/s以上、更に好ましくは5mm2/s以上である。また、冷媒との相溶性向上の観点から、好ましくは50mm2/s以下、より好ましくは40mm2/s以下、更に好ましくは30mm2/s以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは3mm2/s~50mm2/s、より好ましくは4mm2/s~40mm2/s、更に好ましくは5mm2/s~30mm2/sである。
本明細書において、基油(A)の100℃動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定した値である。
【0085】
(基油(A)の水酸基価)
基油(A)の水酸基価は、冷凍機油組成物の熱安定性向上の観点から、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは25mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。また、通常、0.5mgKOH/g以上である。
本明細書において、基油(A)の水酸基価は、JIS K0070:1992に準拠して、中和滴定法により測定した値である。
【0086】
(基油(A)の数平均分子量(Mn))
基油(A)の数平均分子量(Mn)は、潤滑性能(耐荷重性能)及びシール性向上の観点から、好ましくは300以上、より好ましくは400以上、更に好ましくは500以上である。また、冷媒との相溶性向上の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは7,000以下、更に好ましくは5,000以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは300~10,000、より好ましくは400~7,000、更に好ましくは500~5,000である。
本明細書において、基油(A)の数平均分子量(Mn)は、後述する実施例に記載の方法により測定した値である。
【0087】
<エポキシ化合物(B)>
本実施形態の冷凍機油組成物は、下記要件(B1)及び(B2)を満たすエポキシ化合物(B)を含有する。
(B1)分子中に少なくとも1つの下記式(1)で表される2価基を有する。
【化12】
(B2)分子中に少なくとも1つのエステル基を有する。
【0088】
エポキシ化合物(B)が有する上記式(1)で表される基は、分子末端にエポキシ基を有する構造を有するエポキシ化合物と比較して、不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)を分解しにくく、高温環境下において不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)が分解することにより生じるフッ素分(例えば、フッ化水素酸等)を発生させにくく、また、発生した微量のフッ素分はエポキシ化合物(B)中のエポキシ基と反応してエポキシ化合物(B)中に捕捉される。これらの機能によって、冷凍機油組成物へのフッ素分の溶出が抑制され、かつ溶出したフッ素分を捕捉可能であるため、冷凍機油組成物の酸価上昇を抑制できるものと推察される。
【0089】
上記エポキシ化合物(B)は、分子量が300以上のものであると、エポキシ基の反応性を適度に抑えることができ、不飽和フッ化炭化水素化合物の分解を抑制することができるとともに、基油への溶解性が向上するため好ましく、350以上のものであることがより好ましい。
また、エポキシ化合物(B)の分子量は、冷凍機油への溶解性と安定性評価後のスラッジ生成の観点から、2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。
【0090】
本実施形態の冷凍機油組成物においては、冷凍機油組成物の酸価上昇を抑制する効果をより発揮させやすくする観点から、エポキシ化合物(B)の含有量は、冷凍機油組成物の全量基準(100質量%)基準で、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.20質量%以上、更に好ましくは0.50質量%以上、より更に好ましくは1.00質量%以上である。なお、エポキシ化合物(B)の含有量の上限値については、特に制限されないが、添加量に見合った効果を得る観点から、好ましくは10.00質量%以下、より好ましくは7.00質量%以下、更に好ましくは5.00質量%以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは0.10質量%~10.00質量%、より好ましくは0.20質量%~7.00質量%、更に好ましくは0.50質量%~5.00質量%、より更に好ましくは1.00質量%~5.00質量%である。
【0091】
本実施形態において、エポキシ化合物(B)は、上記二つの要件を満たすものからなる群から選択される1種以上を、特に制限なく使用することができる。
エポキシ化合物(B)の具体例としては、上記要件(B1)及び(B2)を満たす、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂環式カルボン酸エステル、エポキシ化植物油等が挙げられる。
【0092】
(エポキシ化脂肪酸エステル)
上記エポキシ化脂肪酸エステルとしては、炭素数8~30(好ましくは炭素数12~20)の脂肪酸と、炭素数1~8のアルコール、フェノール、又は炭素数7~14のアルキルフェノールとのエステルをエポキシ化したものなどが例示できる。
【0093】
上記エポキシ化脂肪酸エステルとしては、冷凍機油組成物の酸価の上昇を効果的に抑制できる観点から、下記一般式(1-1)で表されるものが好ましく用いられる。
【化13】
(式(1-1)中、R
1は、炭素数4~20の炭化水素基であり、R
2は、炭素数1~10の炭化水素基であり、pは1~3の整数であり、nは0~12の整数であり、mは1~3の整数である。mが2以上の場合、複数存在する[]内の構造は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
上記炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種プロピルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種プロピルフェニル基、各種トリメチルフェニル基、各種ブチルフェニル基、各種ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基、各種フェニルプロピル基、各種フェニルブチル基等のアリールアルキル基;等より、それぞれ炭素数が該当するものが挙げられる。
上記(1-1)で表されるエポキシ化脂肪酸エステル中、R
1が、炭素数5~12のアルキル基であり、R
2が、炭素数1~6のアルキル基であり、pが1であり、nが1~10の整数であり、mが1又は2であるものが好ましい。
【0094】
上記エポキシ化脂肪酸エステルの具体例としては、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノレン酸又はステアリン酸の、ブチルエステル、ヘキシルエステル、2-エチルヘキシルエステル、ベンジルエステル、シクロヘキシルエステル、メトキシエチルエステル、オクチルエステル、フェニルエステル又はブチルフェニルエステルをエポキシ化したものが挙げられる。
上記エポキシ化植物油の市販品としては、新日本理化株式会社製のサンソサイザーE-6000、三和合成化学株式会社製のケミサイザーT-5000等が挙げられる。
【0095】
(エポキシ化脂環式カルボン酸エステル)
上記エポキシ化脂環式カルボン酸エステルとしては、環炭素数5~12の脂環式カルボン酸と、炭素数1~8のアルコール、フェノール、又は炭素数7~14のアルキルフェノールとのエステルをエポキシ化したものなどが例示でき、上記脂環式カルボン酸はモノカルボン酸であってもジカルボン酸であってもよい。
【0096】
上記エポキシ化脂環式カルボン酸エステルとしては、冷凍機油組成物の酸価の上昇を効果的に抑制できる観点から、下記一般式(1-2)で表されるものが好ましく用いられる。
【化14】
(式(1-2)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数4~20の炭化水素基である。)
上記炭化水素基の具体例としては、式(1-1)における炭化水素基として挙げられたものより、炭素数が該当するものが挙げられる。
上記(1-2)で表されるエポキシ化脂環式カルボン酸エステル中、R
3及びR
4が、それぞれ独立に、炭素数6~12のアルキル基であるものが好ましい。
【0097】
上記エポキシ化脂環式カルボン酸エステルの具体例としては、エポキシ化脂環式ジカルボン酸エステルが挙げられ、より具体的には4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジ2-エチルヘキシルが挙げられる。
上記エポキシ化脂環式カルボン酸エステルの市販品としては、新日本理化株式会社製のサンソサイザーE-PS等が挙げられる。
【0098】
(エポキシ化植物油)
上記エポキシ化植物油としては、大豆油、亜麻仁油、米ぬか油、綿実油等の植物油をエポキシ化したものなどが例示できる。
【0099】
上記エポキシ化植物油としては、冷凍機油組成物の酸価の上昇を効果的に抑制できる観点から、下記一般式(1-3)で表される基を有するものが好ましく用いられ、より具体的には、下記一般式(1-3)で表される基を1つ以上有するグリセリンエステルが好ましく、下記一般式(1-3)で表される基を1つ以上有するトリグリセリドがより好ましく、下記一般式(1-3)で表される基を2つ以上有するトリグリセリドがさらに好ましい。
【化15】
(式(1-3)中、R
1は、炭素数4~20の炭化水素基であり、pは1~3の整数であり、nは0~12の整数であり、mは1~3の整数である。mが2以上の場合、複数存在する[]内の構造は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
上記R
1の詳細は、上記式(1-1)におけるものと同様である。
上記(1-3)で表される基においては、R
1が、炭素数5~12のアルキル基であり、pが1であり、nが1~10の整数であり、mが1又は2であるものが好ましい。
【0100】
上記エポキシ化植物油の市販品としては、新日本理化株式会社製のサンソサイザーE-2000H、三和合成化学株式会社製のケミサイザーSE-80、ケミサイザーSE-100、ケミサイザーT-3000N、ケミサイザーLE-3000、ケミサイザーT-2000、日油株式会社製のニューサイザー510R、株式会社ADEKA製のアデカサイザーO-180A等が挙げられる。
【0101】
<グリシジルエーテル化合物(C)>
本実施形態の冷凍機油組成物は、さらにグリシジルエーテル化合物(C)を含有してもよい。
グリシジルエーテル化合物(C)としては、炭素数が、通常3~30、好ましくは4~24、より好ましくは6~16の脂肪族モノ又は多価アルコール、あるいは水酸基を1個以上含有する芳香族化合物由来のグリシジルエーテルが挙げられる。脂肪族モノ又は多価アルコールは、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、また飽和若しくは不飽和のいずれでもよいが、飽和脂肪族モノアルコールであることが好ましい。
なお、脂肪族多価アルコールや水酸基を2個以上含有する芳香族化合物の場合、冷凍機油組成物の安定性の観点から、水酸基の全てがグリシジルエーテル化されていることが好ましい。
グリシジルエーテル化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル等が挙げられ、これらの中では、特に直鎖状、分岐状、環状の炭素数6~16の飽和脂肪族モノアルコール由来のグリシジルエーテル(すなわち、アルキル基の炭素数が6~16のアルキルグリシジルエーテル)がより好ましい。このようなグリシジルエーテルとしては、例えば2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、イソノニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ミリスチルグリシジルエーテルなどが挙げられ、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルが最も好ましい。2-エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテルを使用することで、冷凍機油組成物の酸価の上昇を適切に防止して、高温下での酸化安定性をより良好にしやすくなる。
【0102】
グリシジルエーテル化合物(C)の含有量は、冷凍機油組成物の全量基準で、好ましくは0.10~10.00質量%である。グリシジルエーテル化合物(C)の含有量を0.10質量%以上とすることで、冷凍機油組成物中の酸を適切に捕捉して、効果的に冷凍機油組成物の酸価の上昇を防止でき、高温安定性を高めやすくなる。また、10.00質量%以下とすることで含有量に見合った効果を奏することが可能である。
また、グリシジルエーテル化合物(C)の上記含有量は、より好ましくは0.4質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。また、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下である。これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、より好ましくは0.4質量%~5質量%、更に好ましくは0.5質量%~4質量%、より更に好ましくは0.5質量%~3質量%である。なお、グリシジルエーテル化合物(C)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0103】
<エポキシ化合物(B)とグリシジルエーテル化合物(C)との含有比率>
本実施形態の冷凍機油組成物において、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、エポキシ化合物(B)とグリシジルエーテル化合物(C)との含有比率[(B)/(C)]は、質量比で、好ましくは0.050以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.20以上であり、また、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.5以下、更に好ましくは2.5以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは0.050~5.0、より好ましくは0.10~3.5、更に好ましくは0.20~2.5である。
【0104】
<その他添加剤>
本実施形態の冷凍機油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記成分(A)、(B)及び(C)以外のその他添加剤を更に含有してもよい。
その他添加剤としては、酸化防止剤、安定化剤、極圧剤及び消泡剤からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
これらの添加剤の合計含有量は、冷凍機油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%、更に好ましくは0.1質量%~3質量%である。
【0105】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、好ましくは、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(DBPC)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)等が挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては、フェニル-α-ナフチルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤の中でも2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(DBPC)が好ましい。
酸化防止剤の含有量は、安定性及び酸化防止性能の観点から、冷凍機油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは0.01質量%~5質量%、より好ましくは0.05質量%~3質量%、更に好ましくは0.1質量%~1質量%である。
【0106】
(安定化剤)
安定化剤としては、脂肪族不飽和化合物、二重結合を有するテルペン類等が挙げられる。
上記脂肪族不飽和化合物としては、不飽和炭化水素が好ましく、具体的には、オレフィン;ジエン、トリエン等のポリエン等が挙げられる。オレフィンとしては、酸素との反応性の観点から、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン等のα-オレフィンが好ましい。
上記以外の脂肪族不飽和化合物としては、酸素との反応性の観点から、分子式C20H30Oで表されるビタミンA((2E,4E,6E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセ-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエン-1-オール)等の共役二重結合を有する不飽和脂肪族アルコールが好ましい。
二重結合を有するテルペン類としては、二重結合を有するテルペン系炭化水素が好ましく、酸素との反応性の観点から、α-ピネン、β-ピネン、α-ファルネセン(C15H24:3,7,11-トリメチルドデカ-1,3,6,10-テトラエン)及びβ-ファルネセン(C15H24:7,11-ジメチル-3-メチリデンドデカ-1,6,10-トリエン)がより好ましい。
安定化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
(極圧剤)
前記極圧剤としては、リン系極圧剤、カルボン酸の金属塩、及び硫黄系極圧剤が好ましい。
リン系極圧剤としては、例えば、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、及びこれらのアミン塩等が挙げられる。
これらの中でも、極圧性及び摩擦特性の向上の観点から、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリチオフェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、及び2-エチルヘキシルジフェニルホスファイトから選ばれる1種以上が好ましく、トリクレジルホスフェート(TCP)がより好ましい。
カルボン酸の金属塩としては、例えば、炭素数3~60(好ましくは3~30)のカルボン酸の金属塩等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数12~30の脂肪酸、及び炭素数3~30のジカルボン酸の金属塩から選ばれる1種以上が好ましい。
また、金属塩を構成する金属としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、アルカリ金属がより好ましい。
硫黄系極圧剤としては、例えば、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリサルファイド、チオカーバメート類、チオテルペン類、ジアルキルチオジプロピオネート類等が挙げられる。
極圧剤の含有量は、潤滑性及び安定性の観点から、冷凍機油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.001~5質量%、より好ましくは0.005~3質量%である。
【0108】
(消泡剤)
消泡剤としては、例えば、シリコーン油、及びフッ素化シリコーン油等のシリコーン系消泡剤等が挙げられる。
【0109】
[冷凍機油組成物の製造方法]
上記の冷凍機油組成物を製造する方法は、特に制限されない。
例えば、本実施形態の冷凍機油組成物の製造方法は、下記一般式(1)
CxFyHz・・・(1)
[前記一般式(1)中、xは2~6、yは1~11、zは1~11の整数であり、分子中に炭素-炭素不飽和結合を1以上有する。]で表される化合物から選択される1種以上の不飽和フッ化炭化水素化合物を含む冷媒に用いられる冷凍機油組成物の製造方法であって、
基油(A)と、エポキシ化合物(B)と、を混合する工程を含み、
前記エポキシ化合物(B)が、下記要件(B1)及び(B2)を満たす、冷凍機油組成物の製造方法である。
(B1)分子中に少なくとも1つのオキシラン-2,3-ジイル基を有する。
(B2)分子中に少なくとも1つのエステル基を有する。
上記各成分を混合する方法としては、特に制限はないが、例えば、基油(A)に、エポキシ化合物(B)を配合する工程を有する方法が挙げられる。グリシジルエーテル化合物(C)、及びその他添加剤は、それぞれエポキシ化合物(B)と同時に基油(A)に配合してもよいし、別々に配合してもよい。なお、各成分は、希釈油等を加えて溶液(分散体)の形態とした上で配合してもよい。各成分を配合した後、公知の方法により、撹拌して均一に分散させることが好ましい。
【0110】
[冷凍機油組成物の物性]
本実施形態において、冷凍機油組成物が有する、後述する実施例に記載のオートクレーブ試験後の物性値は、以下のとおりである。
【0111】
<酸価>
後述する実施例に記載のオートクレーブ試験後の冷凍機油組成物の酸価は、好ましくは0.15mgKOH/g以下、より好ましくは0.10mgKOH/g以下である。
【0112】
<フッ素量>
後述する実施例に記載のオートクレーブ試験後の冷凍機油組成物中のフッ素量は、冷凍機油組成物の全量基準で、好ましくは15質量ppm以下、より好ましくは10質量ppm以下、更に好ましくは7質量ppm以下である。
【0113】
[冷凍機用混合組成物]
上記の冷凍機油組成物は、冷媒と混合し、冷凍機用混合組成物として使用される。
すなわち、冷凍機用混合組成物は、上記の冷凍機油組成物と、冷媒とを含有する。
以下、冷媒について説明する。
【0114】
<冷媒>
本実施形態において用いられる冷媒は、下記一般式(1)
CxFyHz・・・(1)
[前記一般式(1)中、xは2~6、yは1~11、zは1~11の整数であり、分子中に炭素-炭素不飽和結合を1以上有する。]で表される化合物から選択される1種以上の不飽和フッ化炭化水素化合物を含む冷媒である。
【0115】
上記一般式(1)は、分子中の元素の種類と数を表しており、具体的には炭素原子Cの数が2~6の不飽和フッ化炭化水素化合物を表している。炭素数が2~6の不飽和フッ化炭化水素化合物は、冷媒として要求される沸点、凝固点、蒸発潜熱などの物理的、化学的性質を有する。
上記一般式(1)において、Cxで表されるx個の炭素原子の結合形態は、炭素-炭素単結合、炭素-炭素二重結合等の不飽和結合などがある。炭素-炭素の不飽和結合は、安定性の点から、炭素-炭素二重結合であることが好ましく、不飽和フッ化炭化水素化合物は、分子中に炭素-炭素二重結合等の不飽和結合を1以上有し、その数は1であるものが好ましい。すなわち、Cxで表されるx個の炭素原子の結合形態の少なくとも1つは、炭素-炭素二重結合であることがより好ましい。
【0116】
上記の不飽和フッ化炭化水素化合物として好ましくは、例えば、炭素数2~6の直鎖状又は分岐状の鎖状オレフィンや炭素数4~6の環状オレフィンのフッ化物を挙げることができる。
具体的には、1~3個のフッ素原子が導入されたエチレンのフッ化物、1~5個のフッ素原子が導入されたプロペンのフッ化物、1~7個のフッ素原子が導入されたブテンのフッ化物、1~9個のフッ素原子が導入されたペンテンのフッ化物、1~11個のフッ素原子が導入されたヘキセンのフッ化物、1~5個のフッ素原子が導入されたシクロブテンのフッ化物、1~7個のフッ素原子が導入されたシクロペンテンのフッ化物、1~9個のフッ素原子が導入されたシクロヘキセンのフッ化物などが挙げられる。
これらの中でも、プロペンのフッ化物が好ましく、フッ素原子が3~5個導入されたプロペンがより好ましい。具体的には、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)、及び1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ye)から選択される1種以上が好ましく、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)がより好ましい。
上記の不飽和フッ化炭化水素化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)、及び1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ye)から選択される1種のみを単独で用いてもよい。
【0117】
(他の冷媒)
本実施形態において、冷媒は、上記一般式(1)に示す不飽和フッ化炭化水素化合物に加えて、他の化合物を必要に応じて含む混合冷媒であってもよく、例えば飽和フッ化炭化水素化合物を含んでもよい。
飽和フッ化炭化水素化合物としては、好ましくは炭素数1~4のアルカンのフッ化物、より好ましくは炭素数1~3のアルカンのフッ化物、更に好ましくは炭素数1又は2のアルカン(メタン又はエタン)のフッ化物である。該メタン又はエタンのフッ化物としては、トリフルオロメタン(R23)、ジフルオロメタン(R32)、1,1-ジフルオロエタン(R152a)、1,1,1-トリフルオロエタン(R143a)、1,1,2-トリフルオロエタン(R143)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(R134)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(R125)等が挙げられ、これらの中でも、ジフルオロメタン及び1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタンが好ましい。
これらの飽和フッ化炭化水素化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0118】
また、冷媒は、自然系冷媒を含んでもよい。自然系冷媒としては、炭化水素系冷媒(HC)、二酸化炭素(CO2、炭酸ガス)、及びアンモニア等が挙げられる。これらの自然系冷媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
前記炭化水素系冷媒としては、好ましくは炭素数1以上8以下の炭化水素、より好ましくは炭素数1以上5以下の炭化水素、更に好ましくは炭素数3以上5以下の炭化水素である。炭素数が8以下であると、冷媒の沸点が高くなり過ぎず冷媒として好ましい。該炭化水素系冷媒としては、メタン、エタン、エチレン、プロパン(R290)、シクロプロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン(R600a)、2-メチルブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタンイソブタン、及びノルマルヘキサンからなる群より選ばれる1種以上が挙げられ、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
(冷媒中の不飽和フッ化炭化水素化合物の含有量)
本実施形態において、冷媒は、上記一般式(1)で表される不飽和フッ化炭化水素化合物を含む。
上記一般式(1)で表される不飽和フッ化炭化水素化合物の含有量は、冷媒の全量基準で、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、更に好ましくは70質量%~100質量%、より更に好ましくは80質量%~100質量%、更になお好ましくは90質量%~100質量%、一層好ましくは100質量%である。
本実施形態の冷凍機油組成物は、このように不飽和フッ化炭化水素化合物の含有量が多い冷媒であっても、酸価上昇の抑制効果に優れる。
【0120】
(冷媒及び冷凍機油組成物の使用量)
本実施形態の冷凍機用混合組成物において、冷媒及び冷凍機油組成物の使用量は、冷凍機油組成物と冷媒との質量比[(冷凍機油組成物)/(冷媒)]で、好ましくは1/99~90/10、より好ましくは5/95~70/30である。冷凍機油組成物と冷媒との質量比を該範囲内とすると、潤滑性及び冷凍機における好適な冷凍能力を得ることができる。
【0121】
[冷凍機油組成物及び冷凍機用混合組成物の用途]
上記の冷凍機油組成物及び冷凍機用混合組成物は、例えば、空調機、冷蔵庫、自動販売機、ショーケース、冷凍システム、給湯システム、又は暖房システムに用いることが好ましい。なお、空調機としては、開放型カーエアコン、電動カーエアコン等のカーエアコン;ガスヒートポンプ(GHP)エアコン;等が挙げられる。
【0122】
[提供される本発明の一態様]
本発明の一態様では、下記[1]~[11]が提供される。
[1] 下記一般式(1)
C
xF
yH
z・・・(1)
[前記一般式(1)中、xは2~6、yは1~11、zは1~11の整数であり、分子中に炭素-炭素不飽和結合を1以上有する。]で表される化合物から選択される1種以上の不飽和フッ化炭化水素化合物を含む冷媒に用いられる冷凍機油組成物であって、
ポリアルキレングリコール類、ポリビニルエーテル類、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体、及びポリオールエステル類からなる群から選択される基油(A)と、エポキシ化合物(B)とを含有し、
前記エポキシ化合物(B)が、下記要件(B1)及び(B2)を満たす、冷凍機油組成物。
(B1)分子中に少なくとも1つの下記式(1)で表される2価基を有する。
【化16】
(B2)分子中に少なくとも1つのエステル基を有する。
[2] 前記エポキシ化合物(B)の分子量が、300以上である、[1]に記載の冷凍機油組成物。
[3] 前記エポキシ化合物(B)の含有量が、前記冷凍機油組成物の全量基準で、0.10質量%以上である、[1]又は[2]に記載の冷凍機油組成物。
[4] 前記エポキシ化合物(B)は、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂環式カルボン酸エステル及びエポキシ化植物油からなる群から選択される1種以上である[1]~[3]のいずれかに記載の冷凍機油組成物。
[5] 前記エポキシ化脂肪酸エステルが、下記一般式(1-1)で表されるものである[4]に記載の冷凍機油組成物。
【化17】
(式(1-1)中、R
1は、炭素数4~20の炭化水素基であり、R
2は、炭素数1~10の炭化水素基であり、pは1~3の整数であり、nは0~12の整数であり、mは1~3の整数である。mが2以上の場合、複数存在する[]内の構造は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
[6] 前記エポキシ化脂環式カルボン酸エステルが、下記一般式(1-2)で表されるものである[4]に記載の冷凍機油組成物。
【化18】
(式(1-2)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数4~20の炭化水素基である。)
[7] 前記エポキシ化植物油が、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化米ぬか油及びエポキシ化綿実油からなる群から選択される1種以上である[4]に記載の冷凍機油組成物。
[8] さらに、グリシジルエーテル化合物(C)を含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の冷凍機油組成物。
[9] 前記エポキシ化合物(B)と前記グリシジルエーテル化合物(C)との含有比率[(B)/(C)]が、質量比で、0.050以上5.0以下である、[8]に記載の冷凍機油組成物。
[10] さらに、酸化防止剤、安定化剤、極圧剤、及び消泡剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を含有する、[1]~[9]のいずれかに記載の冷凍機油組成物。
[11] 前記不飽和フッ化炭化水素化合物が、R1234ze、R1234yf、及びR1234yeからなる群から選択される1種以上を含む、[1]~[10]のいずれかに記載の冷凍機油組成物。
[12] 前記冷媒が、前記不飽和フッ化炭化水素化合物のみからなる、[1]~[11]のいずれかに記載の冷凍機油組成物。
[13] 下記一般式(1)
C
xF
yH
z・・・(1)
[前記一般式(1)中、xは2~6、yは1~11、zは1~11の整数であり、分子中に炭素-炭素不飽和結合を1以上有する。]で表される化合物から選択される1種以上の不飽和フッ化炭化水素化合物を含む冷媒と、[1]~[12]のいずれかに記載の冷凍機油組成物とを含有する、冷凍機用混合組成物。
[14] 下記一般式(1)
C
xF
yH
z・・・(1)
[前記一般式(1)中、xは2~6、yは1~11、zは1~11の整数であり、分子中に炭素-炭素不飽和結合を1以上有する。]で表される化合物から選択される1種以上の不飽和フッ化炭化水素化合物を含む冷媒に用いられる冷凍機油組成物の製造方法であって、
ポリアルキレングリコール類、ポリビニルエーテル類、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体、及びポリオールエステル類からなる群から選択される基油(A)と、エポキシ化合物(B)とを混合する工程を含み、
前記エポキシ化合物(B)が、下記要件(B1)及び(B2)を満たす、冷凍機油組成物の製造方法。
(B1)分子中に少なくとも1つの下記式(1)で表される2価基を有する。
【化19】
(B2)分子中に少なくとも1つのエステル基を有する。
【実施例0123】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0124】
[各種物性値の測定方法]
各実施例及び各比較例で用いた各原料並びに各実施例及び各比較例の冷凍機油組成物の各性状の測定は、以下に示す要領に従って行ったものである。
(1)100℃動粘度
基油(A)の100℃動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定した。
(2)水酸基価
基油(A)のJIS K0070:1992に準拠して、中和滴定法により測定した。
(3)数平均分子量(Mn)
基油(A)の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)装置を用いて測定した。
GPCは、カラムとして東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultiporeHZ-M」2本を順次連結したものを用い、テトラヒドロフランを溶離液として、検出器に屈折率検出器(RI検出器)を用いて測定を行い、ポリスチレンを標準試料として数平均分子量(Mn)を求めた。
【0125】
[冷凍機油組成物の調製に用いた各成分の詳細]
冷凍機油組成物の調製に用いた各成分の詳細について、以下に示す。
【0126】
<基油(A)>
・「PVE1」:ポリビニルエーテル(ポリエチルビニルエーテル(PEVE)とポリイソブチルビニルエーテル(PIBVE)との共重合体、共重合比(PEVE/PIBVE)=9/1(モル比))、100℃動粘度=8.4mm2/s、水酸基価=1mgKOH/g、数平均分子量=940
・「PVE2」:ポリエチルビニルエーテル、100℃動粘度=8.6mm2/s、水酸基価=1mgKOH/g、数平均分子量=1100
・「PAG」:ポリオキシプロピレングリコール、100℃動粘度=10.3mm2/s、水酸基価=6mgKOH/g、数平均分子量=1,020
・「ECP」:ポリプロピレングリコール(PPG)とポリエチルビニルエーテル(PEV)との共重合体(PPG/PEV=5/5(モル比))、100℃動粘度=10.5mm2/s、水酸基価=1mgKOH/g、数平均分子量=870
・「POE」:ペンタエリスリト-ルとオクタン酸(C8酸)及びノナン酸(C9酸)の混合物とのエステル(C8酸/C9酸=1/1.1(モル比))、100℃動粘度=8.5mm2/s、水酸基価=1mgKOH/g、数平均分子量=670
【0127】
<エポキシ化合物(B)>
・「エポキシ化合物1」:下記式で表されるエポキシ化大豆油、分子量:933、サンソサイザー E-2000H(新日本理化株式会社製)
【化20】
・「エポキシ化合物2」:エポキシ化大豆油、分子量:947、ニューサイザー 510R(日油株式会社製)
【化21】
・「エポキシ化合物3」:エポキシ化大豆油、ケミサイザー SE-100(三和合成化学株式会社製)
・「エポキシ化合物4」:エポキシ化亜麻仁油、アデカサイザー O-180A(株式会社ADEKA製)
・「エポキシ化合物5」:エポキシ化米油((C
17H
33OCO)
3O
3C
3H
5)、分子量:933、ケミサイザー SE-80(三和合成化学株式会社製)
・「エポキシ化合物6」:下記式で表されるエポキシ化脂肪酸エステル、分子量:411、サンソサイザー E-6000(新日本理化株式会社製)
【化22】
・「エポキシ化合物7」:下記式で表されるエポキシ化脂環式カルボン酸エステル、分子量:411、サンソサイザー E-PS(新日本理化株式会社製)
【化23】
・「エポキシ化合物8」:エポキシ化脂肪酸エステル(C
17H
33OCOOC
8H
17)、分子量:411、ケミサイザー T-5000(三和合成化学株式会社製)
・「エポキシ化合物9」:エポキシ化脂肪酸エステル(C
22H
42O
3)、分子量:355、ケミサイザー T-3000N(三和合成化学株式会社製)
・「エポキシ化合物10」:エポキシ化脂肪酸エステル(C
22H
44O
4)、分子量:371、ケミサイザー LE-3000(三和合成化学株式会社製)
・「エポキシ化合物11」:エポキシ化脂肪酸エステル(C
19H
36O
3)、分子量:312、ケミサイザー T-2000(三和合成化学株式会社製)
<エポキシ化αオレフィン>
・「エポキシ化αオレフィン1」:C12、C14混合エポキシ化αオレフィン
・「エポキシ化αオレフィン2」:C16エポキシ化αオレフィン
【0128】
<グリシジルエーテル化合物(C)>
グリシジルエーテル化合物(C)として、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルを用いた。
【0129】
<その他添加剤>
・酸化防止剤:ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(DBPC)
・安定化剤:β-ピネン
・その他:極圧剤(トリクレジルホスフェート)、シリコーン系消泡剤
【0130】
[実施例1~34、比較例1~16]
上記各成分を混合して表1~3に示す組成の冷凍機油組成物を調製し、以下に説明するオートクレーブ試験を行った。
なお、表1~3中の配合組成の数値単位は、「質量%」である。
【0131】
<オートクレーブ試験>
JIS K2211:2009の附属書Cに準拠して行った。具体的には、内容積200mLのオートクレーブに、実施例1~34及び比較例1~16の冷凍機油組成物30gとR1234yf30gとを混合した冷凍機用混合組成物(水分含有量2,000ppm)と、鉄、銅、及びアルミニウムからなる金属触媒とを封入した。次いで、真空引きを行ってから、温度175℃の条件にて336時間保持した後、油外観及び触媒外観(変質の有無)と、析出物の有無(析出物がある場合にはその色)とを目視観察した。
なお、油外観は、ASTM色で評価し、0.5以下(L0.5)と判断されるものを油外観が良好であると判断し、0.5よりも大きい(L1.0、L1.5等)と判断されるものを油外観が不良であると判断した。
また、以下に説明する方法で、冷凍機油組成物の酸価及び冷凍機油組成物中のフッ素量を評価した。
【0132】
(冷凍機油組成物の酸価の評価)
JIS K2501:2003に準じ、指示薬光度滴定法(左記JIS規格における付属書1参照)により測定した。
【0133】
(冷凍機油組成物中のフッ素量の評価)
冷凍機油組成物中のフッ素量は、オートクレーブ試験後の冷凍機用混合組成物から冷媒を分離し、JIS K 0127:2013(イオンクロマトグラフ分析通則)に準じ、冷凍機油組成物中のフッ素イオン(F-)を検出して測定した。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
表1~3より、以下のことがわかる。
エポキシ化合物(B)を含有する、実施例1~34の冷凍機油組成物は、オートクレーブ試験後の冷凍機油組成物の酸価の上昇の抑制効果に優れ、試験後の冷凍機油組成物中のフッ素量も少ないことがわかる。
特に、エポキシ化αオレフィンを3.00質量%配合した比較例3の冷凍機油組成物よりも、同じ量のエポキシ化合物(B)を配合した実施例3、6、9、13及び14の冷凍機油組成物の方が、オートクレーブ試験後の冷凍機油組成物の酸価の上昇の抑制効果に極めて優れており、試験後の冷凍機油組成物中のフッ素量も少ないことがわかる。
以上の結果から、エポキシ化合物(B)が、冷媒の分解を抑止し、また冷媒の分解により冷凍機油組成物中に溶出したフッ素(F-)を捕捉し、冷凍機油組成物中のフッ素(F-)量を減らす作用によって、冷凍機油組成物の酸価の上昇を抑制しているものと推察される。